(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040863
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】放射線発生装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240318BHJP
A61B 6/08 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
A61B6/00 320R
A61B6/08 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145493
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北野 浩一
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093CA16
4C093FA52
4C093FA59
4C093FB09
(57)【要約】
【課題】撮影距離に応じた放射線の照射条件の設定を支援することができる放射線発生装置を提供する。
【解決手段】放射線発生装置は、放射線を出射する線源部と、少なくとも1つのプロセッサと、を有する。プロセッサは、通信可能に接続された放射線検出装置までの距離を示す距離情報を取得し、線源部から出射される放射線に基づく放射線画像を放射線検出装置を用いて撮影する際の放射線の照射条件を距離情報に基づいて導出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を出射する線源部と、
少なくとも1つのプロセッサと、
を有し、
前記プロセッサは、
通信可能に接続された放射線検出装置までの距離を示す距離情報を取得し、
前記線源部から出射される放射線に基づく放射線画像を前記放射線検出装置を用いて撮影する際の放射線の照射条件を前記距離情報に基づいて導出する
放射線発生装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記放射線検出装置との間で送受信される無線信号に基づいて前記放射線検出装置までの距離を導出する
請求項1に記載の放射線発生装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記放射線検出装置までの距離の導出を断続的に行い、
前記放射線検出装置までの距離の変動に応じて前記照射条件を更新する
請求項2に記載の放射線発生装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記放射線検出装置までの距離の変動量が閾値以上である場合に、前記照射条件を更新する
請求項3に記載の放射線発生装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記変動量を、複数回に亘って導出された距離の平均値に基づいて導出する
請求項4に記載の放射線発生装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記放射線検出装置までの距離と前記照射条件との対応関係を示す関係情報に基づいて、前記距離情報によって示される距離に対応する前記照射条件を導出する
請求項1に記載の放射線発生装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記放射線画像の撮影メニューを示す撮影メニュー情報を取得し、
前記撮影メニュー情報及び前記距離情報に基づいて前記照射条件を導出する
請求項1に記載の放射線発生装置。
【請求項8】
表示部を更に備え、
前記プロセッサは、前記距離情報に基づいて導出した前記照射条件を前記表示部に表示させる
請求項1に記載の放射線発生装置。
【請求項9】
前記線源部から出射される放射線の出射方向を撮影方向とする可視光画像を撮影するカメラを更に含み、
前記プロセッサは、前記放射線画像の撮影範囲を示す情報を前記可視光画像に重畳させて前記表示部に表示させる
請求項8に記載の放射線発生装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記放射線画像の撮影範囲を示す情報を前記距離情報によって示される距離に応じて変化させる
請求項9に記載の放射線発生装置。
【請求項11】
可搬型である
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の放射線発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、放射線発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線発生装置と放射線検出装置とを含むシステムに関する技術として、以下のものが知られている。例えば特許文献1には、第1の無線通信手段を有する放射線発生装置と、第1の無線通信手段と無線通信が可能な第2の無線通信手段を有する放射線検出装置と、を含む放射線撮像システムが記載されている。放射線の照射後に、放射線発生装置から放射線検出装置に対して撮影実施情報が送信される。撮影した放射線照射画像に対して、撮影実施情報を対応させた画像データが生成される。画像データは放射線検出装置の筐体内に設けられた情報保存手段に保存される。
【0003】
特許文献2には、放射線を発生する放射線発生部および放射線の出射を制御する出射制御部を有する放射線発生装置と、被検体を透過した放射線を検出する放射線検出器を有する放射線検出装置とを備えた放射線照射検出システムが記載されている。放射線検出装置は、放射線の出射を許可する出射許可信号を無線信号として出力する第1の無線通信部を有する。放射線発生装置は、出射許可信号を受け付ける第2の無線通信部を有する。出射制御部が、出射許可信号を受け付けた際、パルス状の放射線を出射させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-223539号公報
【特許文献2】特開2018-183397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放射線を出射する可搬型の放射線発生装置及び放射線を検出して放射線画像を生成する可搬型の放射線検出装置は、病院等の医療施設のみならず在宅療養者宅においても使用されている。放射線画像の撮影においては、患者の撮影部位、撮影姿勢、撮影方向等に応じて、適切な撮影距離(放射線発生装置と放射線検出装置との間の距離)及び放射線の照射条件(管電流、照射時間、管電圧)が定められる。しかしながら、在宅診療の現場では、十分な撮影距離を確保することが困難な場合がある。実際の撮影距離が推奨値からずれた場合には、これに合わせて放射線の照射条件も変更することが好ましい。しかしながら、撮影距離に応じて放射線の照射条件を変更するといった対応を、現場の医師が臨機応変に行うことは容易ではない。
【0006】
開示の技術は、上記の点に鑑みてなされたものであり、撮影距離に応じた放射線の照射条件の設定を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術に係る放射線発生装置は、放射線を出射する線源部と、少なくとも1つのプロセッサと、を有する。プロセッサは、通信可能に接続された放射線検出装置までの距離を示す距離情報を取得し、線源部から出射される放射線に基づく放射線画像を放射線検出装置を用いて撮影する際の放射線の照射条件を距離情報に基づいて導出する。
【0008】
プロセッサは、放射線検出装置との間で送受信される無線信号に基づいて放射線検出装置までの距離を導出してもよい。プロセッサは、放射線検出装置までの距離の導出を断続的に行ってもよく、放射線検出装置までの距離の変動に応じて照射条件を更新してもよい。プロセッサは、放射線検出装置までの距離の変動量が閾値以上である場合に、照射条件を更新してもよい。プロセッサは、変動量を、複数回に亘って導出された距離の平均値に基づいて導出してもよい。プロセッサは、放射線検出装置までの距離と照射条件との対応関係を示す関係情報に基づいて、距離情報によって示される距離に対応する照射条件を導出してもよい。プロセッサは、放射線画像の撮影メニューを示す撮影メニュー情報を取得し、撮影メニュー情報及び距離情報に基づいて照射条件を導出してもよい。
【0009】
放射線発生装置は、表示部を更に備えていてもよく、プロセッサは、距離情報に基づいて導出した照射条件を表示部に表示させてもよい。放射線発生装置は、線源部から出射される放射線の出射方向を撮影方向とする可視光画像を撮影するカメラを更に含んでいてもよい。プロセッサは、放射線画像の撮影範囲を示す情報を可視光画像に重畳させて表示部に表示させてもよい。プロセッサは、放射線画像の撮影範囲を示す情報を距離情報によって示される距離に応じて変化させてもよい。放射線発生装置は、可搬型であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、撮影距離に応じた放射線の照射条件の設定を支援することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】開示の技術の実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】開示の技術の実施形態に係る放射線発生装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】開示の技術の実施形態に係る放射線発生装置の機能的な構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】開示の技術の実施形態に係る参照テーブルの一例を示す図である。
【
図5】開示の技術の実施形態に係る表示部の表示画面の一例を示す図である。
【
図6】放射線画像撮影時における被写体のポジションの一例を示す図である。
【
図7】開示の技術の実施形態に係る照射条件導出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】開示の技術の実施形態に係る放射線発生装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図9】開示の技術の実施形態に係る表示部の表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、開示の技術の実施形態に係る放射線画像撮影システム100の構成の一例を示す図である。放射線画像撮影システム100は、放射線発生装置10、放射線検出装置20及びコンソール30を含んで構成されている。放射線発生装置10、放射線検出装置20及びコンソール30は、いずれも可搬型であり、病院等の医療施設のみならず在宅療養者宅に持ち込んで使用することが可能である。放射線発生装置10は、放射線画像を撮影するための放射線を出射する。放射線は、例えばエックス線である。放射線発生装置10の詳細については後述する。
【0014】
放射線検出装置20は、放射線発生装置10から出射される放射線を検出して放射線画像を生成する。放射線検出装置20は、所謂FPD(Flat Panel Detector)と称されるものであり、放射線に応じた電荷を蓄積する複数の画素が二次元マトリックス状に配列された検出パネル(図示せず)を有する。放射線検出装置20は、放射線の照射開始を検出すると画素に電荷を蓄積させる蓄積動作を開始し、放射線の照射終了を検出すると、画素に蓄積された電荷を電気信号として読み出す読み出し動作を開始する。放射線検出装置20は、画素から読み出した電荷に基づいて放射線画像を生成する。
【0015】
放射線検出装置20は、放射線発生装置10及びコンソール30との間で無線通信を行うための無線通信モジュール(図示せず)を有する。放射線検出装置20は、放射線画像の撮影に先立って、放射線画像の撮影メニューを示す撮影メニュー情報を、無線通信によってコンソール30から取得する。撮影メニュー情報には、被写体(患者)の撮影部位、撮影姿勢及び撮影方向を示す情報が含まれる。撮影部位は、例えば、胸部、頭部、頸部、腹部、腰部、肩、肘、手、膝及び足首等である。撮影姿勢は、例えば、立位、臥位、座位等である。撮影方向は、例えば、正面、背面及び側面等である。放射線検出装置20は、コンソール30から受信した撮影メニュー情報を無線通信によって放射線発生装置10に送信する。また、放射線検出装置20は、生成した放射線画像を無線通信によってコンソール30に送信する。
【0016】
コンソール30は、例えばノート型又はタブレット型のコンピュータである。コンソール30は、各種画面を表示するディスプレイ31、キーボードおよびマウス等の入力デバイス32、放射線検出装置20から送信された放射線画像を保存するためのハードディスク等の記憶媒体(図示せず)、放射線検出装置20との間で無線通信を行うための無線通信モジュール(図示せず)を有する。コンソール30のディスプレイ31には、複数種の撮影メニューが選択可能な形態で表示される。ユーザは、コンソール30の入力デバイス32を操作して、複数種の撮影メニューのうち、撮影オーダーで指定された撮影手技と一致する1つの撮影メニューを選択する。選択された撮影メニューを示す撮影メニュー情報は、無線通信によって放射線検出装置20に送信される。コンソール30のディスプレイ31には、放射線検出装置20から送信された放射線画像を表示せることも可能である。
【0017】
図2は、放射線発生装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。放射線発生装置10は、線源部11、ハンドスイッチ12、表示部13、操作ボタン14、無線通信モジュール15、プロセッサ16、RAM(Random Access Memory)17及び不揮発性メモリ18有する。
【0018】
線源部11は、放射線管および照射野限定器を有する(いずれも図示せず)。放射線管には、フィラメント、ターゲット、グリッド電極等(いずれも図示せず)が設けられている。陰極であるフィラメントと陽極であるターゲットの間には電圧が印加される。フィラメントとターゲットの間に印加される電圧は管電圧と称される。フィラメントは、印加された管電圧に応じた熱電子をターゲットに向けて放出する。ターゲットは、フィラメントからの熱電子の衝突によって放射線を出射する。グリッド電極は、フィラメントとターゲットの間に配置されている。グリッド電極は、印加電圧に応じて、フィラメントからターゲットに向かう熱電子の流量を変更する。このフィラメントからターゲットに向かう熱電子の流量は管電流と称される。
【0019】
照射野限定器はコリメータとも称され、放射線管から出射された放射線の照射野を限定する。照射野限定器は、例えば、放射線を遮蔽する鉛等の4枚の遮蔽板が四角形の各辺上に配置され、放射線を透過させる四角形の出射開口が中央部に形成された構成である。照射野限定器は、各遮蔽板の位置を変更することで出射開口の大きさを変化させ、これにより放射線の照射野を変更する。
【0020】
ハンドスイッチ12は、線源部11に放射線の出射を開始させる際にユーザによって操作されるスイッチである。
【0021】
表示部13は、各種情報を表示するためのディスプレイである。表示部13は、
図5に示すように、放射線発生装置10の背面に設けられている。表示部13には、例えば放射線の照射条件が表示される。
【0022】
操作ボタン14は、放射線発生装置10を手動で操作する際に操作される。操作ボタン14は、放射線発生装置10の背面に設けられている。操作ボタン14は、例えば
図5に示すように、電源ボタン14A、管電圧及び管電流を調整するための調整ボタン14B、照射野を設定するための照射野設定ボタン14C等を含み得る。
【0023】
無線通信モジュール15は、放射線検出装置20との間で無線通信を行うためのコントローラー及びソフトウェアを含む電子部品である。放射線発生装置10、放射線検出装置20及びコンソール30の相互間における無線通信は、例えばWi-Fi規格又はBluetooth(登録商標)規格に準拠するものであってもよい。
【0024】
不揮発性メモリ18は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体である。不揮発性メモリ18には、参照テーブル200及び照射条件導出プログラム201が格納されている。RAM17は、プロセッサ16が処理を実行するためのワークメモリである。プロセッサ16は、不揮発性メモリ18に格納されている照射条件導出プログラム201をRAM17へロードし、照射条件導出プログラム201にしたがって処理を実行する。参照テーブル200は、プロセッサ16が照射条件導出プログラム201に従って放射線の照射条件を導出する際に参照されるテーブルである。参照テーブル200は、開示の技術における「関係情報」一例である。参照テーブル200の詳細については後述する。
【0025】
図3は、プロセッサ16が照射条件導出プログラム201に従って照射条件導出処理(
図6参照)を行う場合における放射線発生装置10の機能的な構成の一例を示す機能ブロック図である。プロセッサ16は、照射条件導出プログラム201を実行することにより、通信制御部41、情報取得部42、距離導出部43、照射条件導出部44及び表示処理部45として機能する。
【0026】
通信制御部41は、無線通信モジュール15を作動させて放射線検出装置20との間で通信リンクを確立する。本実施形態において、放射線検出装置20が無線通信におけるアクセスポイントとして機能する。放射線発生装置10と放射線検出装置20との間での通信リンクの確立は、以下の手順に従う。はじめに、通信制御部41は、利用できる周波数帯域をスキャンする。通信制御部41は、アクセスポイントとして機能する放射線検出装置20から送信されるビーコン信号に含まれる情報をもとに、利用できるチャネルの情報、及びSSID(Service Set Identifier)の情報を取得する。次に、通信制御部41及び放射線検出装置20は、お互いに一致するSSIDであるかを確認する。次に、通信制御部41及び放射線検出装置20は、お互いに認証パケットを用いて認証を行う。次に、通信制御部41は、放射線検出装置20に向けてアソシエーション要求を行う。アソシエーション要求を受信した放射線検出装置20は、アソシエーション応答を行う。以上の処理を実行することで、放射線発生装置10と放射線検出装置20との間で通信リンクが確立され、両者の間でデータ通信が可能となる。放射線検出装置20は、コンソール30から受信した撮影メニュー情報を通信リンクを通じて放射線発生装置10に送信する。
【0027】
情報取得部42は、放射線検出装置20から送信される撮影メニュー情報を取得する。上記したように、撮影メニュー情報には、被写体(患者)の撮影部位、撮影姿勢及び撮影方向を示す情報が含まれる。
【0028】
距離導出部43は、通信リンクが確立されることにより通信可能に接続された放射線検出装置20との間で送受信される無線信号に基づいて、放射線発生装置10から放射線検出装置20までの距離(撮影距離)を導出する。具体的には、距離導出部43は、通信可能に接続された放射線検出装置20から送信されるビーコン信号の電波強度に基づいて放射線発生装置10から放射線検出装置20までの距離を導出する。放射線発生装置10から放射線検出装置20までの距離が短くなる程、ビーコン信号の電波強度は高くなる。なお、ビーコン信号には、放射線検出装置20のSSID、チャネル(周波数)情報などが含まれる。距離導出部43は、導出した距離を示す距離情報を生成する。距離情報は、例えば「134cm」のように物理量で示されるものであってもよいし、「1」、「2」、「3」のように距離に応じた階級値で示されるものであってもよい。
【0029】
照射条件導出部44は、情報取得部42によって取得された撮影メニュー情報及び距離導出部43によって導出された距離を示す距離情報に基づいて、線源部11から出射される放射線に基づく放射線画像を放射線検出装置20を用いて撮影する際の放射線の照射撮影条件を導出する。照射条件導出部44は、不揮発性メモリ18に格納されている参照テーブル200を参照して照射条件を導出する。
【0030】
図4は、参照テーブル200の一例を示す図である。参照テーブル200は、撮影メニューと放射線発生装置10から放射線検出装置20までの距離との組み合わせと、放射線の照射条件とを対応付けたテーブルである。撮影メニューには、撮影部位、撮影姿勢及び撮影方向が含まれる。照射条件には、管電圧、管電流及び照射時間が含まれる。照射条件導出部44は、撮影メニュー情報によって示される撮影メニューと、距離情報によって示される放射線検出装置20までの距離との組み合わせに対応する照射条件を、参照テーブル200を参照することによって導出する。例えば、撮影メニュー情報によって示される撮影部位が「胸部」、撮影姿勢が「臥位」、撮影方向が「正面」であり、距離情報によって示される放射線検出装置20までの距離が「150cm」である場合、照射条件導出部44は、参照テーブル200に基づいて、管電圧「120kV」、管電流「270mA」、照射時間「7mS」を照射条件として導出する。なお、照射条件として管電流時間積を適用することも可能である。
【0031】
表示処理部45は、照射条件導出部44によって導出された放射線の照射条件を表示部13に表示させる処理を行う。
図5は、照射条件が表示された表示部13の表示画面の一例を示す図である。ユーザは、調整ボタン14Bを操作することによって、表示部13に表示された照射条件を調整することが可能である。照射条件導出部44によって導出された照射条件またはユーザによって調整された照射条件が、放射線画像を撮影する際の照射条件として設定される。
【0032】
放射線画像の撮影に先立って、被写体(患者)のポジショニングが行われる。
図6は、撮影部位が「腹部」、撮影姿勢が「臥位」、撮影方向が「正面」である場合の被写体300のポジションの一例を示す図である。
図6に示すように、被写体300は、寝台(ベッド)301の上で仰向けの状態とされる。放射線発生装置10は、放射線の照射野が被写体300の撮影部位である腹部を含むように位置決めされる。放射線発生装置10は、図示しない保持具によって保持され、位置決めされた位置に固定される。放射線検出装置20は、被写体300と寝台301との間に挿入され、放射線の検出領域が放射線の照射野を含むように放射線発生装置10の直下に位置決めされる。
【0033】
図7は、プロセッサ16が、照射条件導出プログラム201を実行することによって実施される照射条件導出処理の流れの一例を示すフローチャートである。照射条件導出プログラムは、被写体のポジショニングが完了した後に、ユーザが操作ボタン14を操作すること等によって処理の開始を指示した場合に実行される。
【0034】
ステップS1において通信制御部41は、無線通信モジュール15を作動させて放射線検出装置20との間で通信リンクを確立する。
【0035】
ステップS2において情報取得部42は、ステップS1において確立された通信リンクを通じて放射線検出装置20から送信される撮影メニュー情報を取得する。
【0036】
ステップS3において距離導出部43は、ステップS1において確立された通信リンクを通じて放射線検出装置20との間で送受信される無線信号に基づいて放射線発生装置10から放射線検出装置20までの距離を導出する。具体的には、距離導出部43は、放射線検出装置20から送信されるビーコン信号の電波強度に基づいて放射線発生装置10から放射線検出装置20までの距離を導出する。距離導出部43は、導出した距離を示す距離情報を生成する。
【0037】
ステップS4において照射条件導出部44は、ステップS2において取得された撮影メニュー情報及びステップS3において導出された距離を示す距離情報に基づいて、線源部11から出射される放射線に基づく放射線画像を放射線検出装置20を用いて撮影する際の放射線の照射撮影条件を導出する。照射条件導出部44は、不揮発性メモリ18に格納されている参照テーブル200を参照して照射条件を導出する。
【0038】
ステップS5において表示処理部45は、ステップS4において導出された放射線の照射条件を表示部13に表示させる処理を行う。ユーザは、調整ボタン14Bを操作することによって、表示部13に表示された照射条件を調整することが可能である。照射条件導出部44によって導出された照射条件またはユーザによって調整された照射条件が、放射線画像を撮影する際の照射条件として設定される。
【0039】
その後、ユーザがハンドスイッチ12を操作することで、線源部11から、設定された照射条件にしたがって放射線が出射され、放射線検出装置20において放射線画像が生成される。放射線画像は、放射線検出装置20とコンソール30との間で確立された通信リンクを通じてコンソール30に送信される。
【0040】
以上のように、開示の技術の実施形態に係る放射線発生装置10は、通信可能に接続された放射線検出装置20までの距離を示す距離情報を取得する。本実施形態においては、放射線発生装置10が、放射線検出装置20との間で送受信される無線信号に基づいて放射線検出装置20までの距離を導出することで距離情報が取得される。放射線発生装置10は、線源部11から出射される放射線に基づく放射線画像を放射線検出装置20を用いて撮影する際の放射線の照射撮影条件を距離情報に基づいて導出する。
【0041】
開示の技術の実施形態に係る放射線発生装置10、放射線検出装置20及びコンソール30は、いずれも可搬型であり、病院等の医療施設のみならず在宅療養者宅においても使用することが可能である。放射線画像の撮影においては、患者の撮影部位、撮影姿勢、撮影方向等に応じて、適切な撮影距離及び放射線の照射条件(管電流、照射時間、管電圧)が定められる。しかしながら、在宅診療の現場では、十分な撮影距離を確保することが困難な場合がある。実際の撮影距離が推奨値からずれた場合には、これに合わせて放射線の照射条件も変更することが好ましい。しかしながら、撮影距離に応じて放射線の照射条件を変更するといった対応を、現場の医師が臨機応変に行うことは容易ではない。
【0042】
開示の技術の実施形態に係る放射線発生装置10によれば、放射線発生装置10と放射線検出装置20との間の距離(撮影距離)がリアルタイムで導出され、距離情報が取得される。そして、この距離情報に基づいて、撮影距離に応じた適切な放射線の照射条件が導出される。これにより、例えば、在宅診療の現場において、撮影距離が推奨値からずれた場合においても、実際の撮影距離に応じた適切な照射条件を導出することができる。すなわち、開示の技術の実施形態に係る放射線発生装置10によれば、撮影距離に応じた放射線の照射条件の設定を支援することが可能となる。
【0043】
また、放射線発生装置10から放射線検出装置20までの距離は、放射線発生装置10と放射線検出装置20との間で確立された通信リンクを利用して導出される。これにより、専用の測距手段を設けることなくリアルタイム測距を実現することができる。
【0044】
ここで、放射線画像を撮影する際には、放射線発生装置10は保持具によって固定されることが推奨される。しかしながら、在宅医療の現場では、保持具の設置が困難な場合があり、医師の手で放射線発生装置10を把持した状態で放射線画像の撮影が行われることが想定される。この場合、放射線発生装置10から放射線検出装置20までの距離(撮影距離)が不安定となるおそれがある。したがって、照射条件を撮影距離の変動に追従させることが好ましい。そこで、距離導出部43は、放射線検出装置20までの距離の導出を断続的(例えば、1秒~数秒毎)に行う。照射条件導出部44は、距離導出部43よって導出される距離の変動に応じて照射条件を更新する。
【0045】
照射条件導出部44は、放射線検出装置20までの距離の変動量が閾値以上である場合に、照射条件を更新してもよい。この場合、照射条件導出部44は、放射線検出装置20までの距離の変動量を、複数回に亘って導出された距離の平均値に基づいて導出してもよい。これにより、放射線検出装置20までの距離の変動に伴って照射条件の更新が頻繁に生じることを抑制することができる。
【0046】
なお、本実施形態においては、放射線発生装置10が放射線検出装置20までの距離の導出及び距離情報の生成を行う場合を例示したが、放射線検出装置20が、放射線発生装置10までの距離の導出及び距離情報の生成を行ってもよい。この場合、放射線発生装置10は、放射線検出装置20から送信される距離情報を取得する。
【0047】
また、本実施形態においては、通信可能に接続された放射線検出装置20から送信されるビーコン信号の電波強度に基づいて放射線発生装置10と放射線検出装置20との間の距離(撮影距離)を導出する態様を例示したが、この態様に限定されない。例えば、UWB信号(Ultra Wide Band)を用いた測距手法によって放射線検出装置20と放射線発生装置10との間の距離を導出してもよい。例えば、放射線検出装置20からパルス幅がナノ秒オーダーのUWB信号を送信し、このUWB信号を放射線発生装置10の距離導出部43が受信する。距離導出部43は、UWB信号の伝搬時間(TOA:Time of Arrival)を計測し、伝搬時間と光速の積を、放射線検出装置20と放射線発生装置10との間の距離(撮影距離)として導出する。UWB信号を用いた測距手法によれば、ビーコン信号の電波強度に基づく測距手法よりも高い精度で測距を行うことが可能である。放射線検出装置20及び放射線発生装置10は、それぞれ、UWB信号を送受信する専用の送受信器を備えていてもよい。また、無線信号を用いた測距手法として、特開2006-158845に記載の技術を適用することも可能である。
【0048】
また、本実施形態においては、撮影メニュー情報及び距離情報の双方に基づいて、放射線の照射条件を導出する場合を例示したが、距離情報のみに基づいて放射線の照射条件を導出してもよい。この場合、参照テーブル200に代えて、撮影距離と撮影条件(管電流、照射時間、管電圧)との関係を示す関係式を用いて、距離情報によって示される距離に応じた照射条件を導出してもよい。
【0049】
また、本実施形態においては、放射線発生装置10、放射線検出装置20及びコンソール30がいずれも可搬型である場合を例示したが、これらの各装置の形態は特に限定されるものではない。
【0050】
[第2の実施形態]
図8は、開示の技術の第2の実施形態に係る放射線発生装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。第2の実施形態に係る放射線発生装置10は、カメラ19を更に含む点が上記した第1の実施形態に係る放射線発生装置10(
図2参照)と異なる。カメラ19は、線源部11から出射される放射線の出射方向を撮影方向とする可視光画像を撮影する。本実施形態に係る放射線発生装置10の機能的な構成は、第1の実施形態に係る放射線発生装置10(
図3参照)と同様である。
【0051】
本実施形態において、表示処理部45は、放射線画像の撮影範囲を示す情報を、カメラ19によって撮影された可視光画像に重畳させて表示部13に表示させる。放射線画像の撮影範囲は、線源部11から出射される放射線の照射範囲ともいえる。
図9には、表示部13において、放射線画像の撮影範囲を示す情報としての枠線400が、カメラ19によって撮影された被写体の可視光画像401に重畳して表示部13に表示されている様子が例示されている。表示処理部45は、放射線画像の撮影範囲を示す情報を距離情報によって示される距離に応じて変化させる。すなわち、表示処理部45は、距離導出部43によって導出された放射線検出装置20までの距離(撮影距離)に基づいて枠線400の大きさを定める。線源部11から出射される放射線は、広がりながら進行するので、放射線検出装置20までの距離が長くなる程、放射線画像の撮影範囲(照射範囲)は広くなる。したがって、表示処理部45は、距離導出部43によって導出される距離が長くなる程、表示部13に表示させる枠線400の大きさを大きくする。本実施形態に係る放射線発生装置10によれば、
図9に例示するような表示を、例えば被写体のポジショニング時に行うことで、ポジショニング作業を支援することが可能となる。
【0052】
上記の実施形態において、例えば、通信制御部41、情報取得部42、距離導出部43、照射条件導出部及び表示処理部45といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU及びGPUに加えて、FPGA等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0053】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0054】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System on Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0055】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0056】
また、上記実施形態では、照射条件導出プログラム201が不揮発性メモリ18に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。これらのプログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、これらのプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。つまり、本実施形態で説明したプログラム(すなわち、プログラム製品)は、記録媒体で提供するほか、外部のコンピュータから配信する形態であっても良い。
【0057】
以上の第1及び第2の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0058】
(付記1)
放射線を出射する線源部と、
少なくとも1つのプロセッサと、
を有し、
前記プロセッサは、
通信可能に接続された放射線検出装置までの距離を示す距離情報を取得し、
前記線源部から出射される放射線に基づく放射線画像を前記放射線検出装置を用いて撮影する際の放射線の照射条件を前記距離情報に基づいて導出する
放射線発生装置。
【0059】
(付記2)
前記プロセッサは、前記放射線検出装置との間で送受信される無線信号に基づいて前記放射線検出装置までの距離を導出する
付記1に記載の放射線発生装置。
【0060】
(付記3)
前記プロセッサは、
【0061】
前記放射線検出装置までの距離の導出を断続的に行い、
前記放射線検出装置までの距離の変動に応じて前記照射条件を更新する
付記1又は付記2に記載の放射線発生装置。
【0062】
(付記4)
前記プロセッサは、前記放射線検出装置までの距離の変動量が閾値以上である場合に、前記照射条件を更新する
付記3に記載の放射線発生装置。
【0063】
(付記5)
前記プロセッサは、前記変動量を、複数回に亘って導出された距離の平均値に基づいて導出する
付記4に記載の放射線発生装置。
【0064】
(付記6)
前記プロセッサは、
前記放射線検出装置までの距離と前記照射条件との対応関係を示す関係情報に基づいて、前記距離情報によって示される距離に対応する前記照射条件を導出する
付記1から付記5のいずれか1つに記載の放射線発生装置。
【0065】
(付記7)
前記プロセッサは、
前記放射線画像の撮影メニューを示す撮影メニュー情報を取得し、
前記撮影メニュー情報及び前記距離情報に基づいて前記照射条件を導出する
付記1から付記6のいずれか1つに記載の放射線発生装置。
【0066】
(付記8)
表示部を更に備え、
前記プロセッサは、前記距離情報に基づいて導出した前記照射条件を前記表示部に表示させる
付記1から付記7のいずれか1つに記載の放射線発生装置。
【0067】
(付記9)
前記線源部から出射される放射線の出射方向を撮影方向とする可視光画像を撮影するカメラを更に含み、
前記プロセッサは、前記放射線画像の撮影範囲を示す情報を前記可視光画像に重畳させて前記表示部に表示させる
付記8に記載の放射線発生装置。
【0068】
(付記10)
前記プロセッサは、前記放射線画像の撮影範囲を示す情報を前記距離情報によって示される距離に応じて変化させる
付記9に記載の放射線発生装置。
【0069】
(付記11)
可搬型である
付記1から付記10のいずれか1つに記載の放射線発生装置。
【符号の説明】
【0070】
10 放射線発生装置
11 線源部
12 ハンドスイッチ
13 表示部
14 操作ボタン
14A 電源ボタン
14B 調整ボタン
14C 照射野設定ボタン
15 無線通信モジュール
16 プロセッサ
17 RAM
18 不揮発性メモリ
19 カメラ
20 放射線検出装置
30 コンソール
31 ディスプレイ
32 入力デバイス
41 通信制御部
42 情報取得部
43 距離導出部
44 照射条件導出部
45 表示処理部
100 放射線画像撮影システム
200 参照テーブル
201 照射条件導出プログラム
300 被写体
301 寝台
400 枠線
401 可視光画像