(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040928
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】光学ラインセンサ及びその製造方法、並びに、補正処理方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/193 20060101AFI20240318BHJP
H04N 1/031 20060101ALI20240318BHJP
【FI】
H04N1/193
H04N1/031
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145591
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(71)【出願人】
【識別番号】510192019
【氏名又は名称】株式会社ヴィーネックス
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】高田 大智
(72)【発明者】
【氏名】香川 幸大
【テーマコード(参考)】
5C051
5C072
【Fターム(参考)】
5C051AA01
5C051BA04
5C051DA04
5C051DB09
5C051DE12
5C072AA01
5C072EA07
5C072FA06
5C072FB03
5C072RA18
5C072UA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】レンズアレイの変形に基づく画像の誤差を好適に補正することができる光学ラインセンサ及びその製造方法、並びに、補正処理方法を提供する。
【解決手段】密着型光学ラインセンサ100において、基準画像を含む補正用読取画像30が、読取処理部110により読み取られた場合に、パラメータ記憶部120が補正用読取画像30に基づいて生成された搬送方向補正用パラメータを記憶する。搬送方向補正用パラメータは、n次関数(n≧3)を用いて、読取処理部110により読み取られた基準画像の近似曲線を算出することにより生成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に沿って搬送される対象物の画像をライン状に並べて配置された複数の撮像素子にレンズアレイを介して露光することにより読み取る光学ラインセンサであって、
前記複数の撮像素子からの入力信号に基づいて、前記対象物の画像を読み取る読取処理部と、
前記搬送方向に交差する方向に延びる基準画像を含む補正用読取画像が、前記対象物の画像として前記読取処理部により読み取られた場合に、当該補正用読取画像に基づいて生成された補正用パラメータを記憶するパラメータ記憶部と、
前記補正用読取画像とは異なる被読取画像が前記対象物の画像として前記読取処理部により読み取られるときに、当該被読取画像を前記補正用パラメータに基づいて補正する補正処理部とを備え、
前記補正用パラメータには、n次関数(n≧3)を用いて、前記読取処理部により読み取られた前記基準画像の近似曲線を算出することにより生成される搬送方向補正用パラメータが含まれる、光学ラインセンサ。
【請求項2】
前記基準画像は、前記搬送方向に直交するライン方向に延びるライン画像である、請求項1に記載の光学ラインセンサ。
【請求項3】
前記搬送方向補正用パラメータは、前記読取処理部により読み取られた前記補正用読取画像を各撮像素子に対応する複数の分割画像に分割し、各分割画像について、前記n次関数(n≧3)を用いて、前記読取処理部により読み取られた前記基準画像の近似曲線を算出することにより生成される、請求項1に記載の光学ラインセンサ。
【請求項4】
前記補正用読取画像は、前記ライン方向に等間隔で並べられた等間隔画像を含み、
前記補正用パラメータには、前記読取処理部により読み取られた前記補正用読取画像に基づいて、前記ライン方向に沿った前記等間隔画像のずれ量を算出することにより生成されるライン方向補正用パラメータが含まれる、請求項1に記載の光学ラインセンサ。
【請求項5】
前記パラメータ記憶部、及び、前記補正処理部は、前記補正用パラメータが書き込まれ、当該補正用パラメータに基づいて前記読取処理部により読み取られる前記被読取画像を補正するPLDにより構成されている、請求項1に記載の光学ラインセンサ。
【請求項6】
前記PLDが、FPGAにより構成されている、請求項5に記載の光学ラインセンサ。
【請求項7】
前記補正処理部は、前記補正用パラメータに基づいてサブピクセル処理によって補正する、請求項1に記載の光学ラインセンサ。
【請求項8】
前記光学ラインセンサが密着型である、請求項1に記載の光学ラインセンサ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の光学ラインセンサの製造方法であって、
前記補正用読取画像を前記対象物の画像として前記読取処理部により読み取らせる補正用読取工程と、
前記補正用読取画像に基づいて補正用パラメータを生成するパラメータ生成工程と、
前記パラメータ記憶部に前記補正用パラメータを書き込む書込工程とを含む、光学ラインセンサの製造方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の光学ラインセンサにおける補正処理方法であって、
前記被読取画像を前記対象物の画像として前記読取処理部により読み取らせる被読取画像読取工程と、
前記補正処理部において前記被読取画像を前記補正用パラメータに基づいて補正する補正工程とを含む、補正処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送方向に沿って搬送される対象物の画像をライン状に並べて配置された複数の撮像素子で読み取る光学ラインセンサ及びその製造方法、並びに、補正処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に例示されるような密着型光学ラインセンサ(CIS:Contact Image Sensor)には、一般的に、撮像素子としての受光ICチップが複数備えられている。各受光ICチップには、フォトダイオードなどの光電変換素子が一直線上に並べて複数配置されている。各受光ICチップは、マウンタと呼ばれる実装装置により、長尺の実装基板上に長さ方向に沿って配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような、密着型光学ラインセンサでは、レンズアレイを透過した光が各受光ICチップで受光される。レンズアレイは、複数のレンズとその複数のレンズを保持する保持部材から構成される。レンズアレイが密着型光学ラインセンサの筐体に実装されるとき、上記保持部材が変形することがある。具体的には、上記保持部材が長手方向を軸として捻じれたり、湾曲することがある。したがって、このような密着型光学ラインセンサで、対象物を読み取る場合、画像がずれることがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高解像度の撮像素子がライン状に複数並べて配置された構成において、レンズアレイの変形に基づく画像の誤差を好適に補正することができる光学ラインセンサ及びその製造方法、並びに、補正処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る光学ラインセンサは、搬送方向に沿って搬送される対象物の画像をライン状に並べて配置された複数の撮像素子にレンズアレイを介して露光することにより読み取る光学ラインセンサであって、読取処理部と、パラメータ記憶部と、補正処理部とを備える。前記読取処理部は、前記複数の撮像素子からの入力信号に基づいて、前記対象物の画像を読み取る。前記パラメータ記憶部は、前記搬送方向に交差する方向に延びる基準画像を含む補正用読取画像が、前記対象物の画像として前記読取処理部により読み取られた場合に、当該補正用読取画像に基づいて生成された補正用パラメータを記憶する。前記補正処理部は、前記補正用読取画像とは異なる被読取画像が前記対象物の画像として前記読取処理部により読み取られるときに、当該被読取画像を前記補正用パラメータに基づいて補正する。前記補正用パラメータには、搬送方向補正用パラメータが含まれる。前記搬送方向補正用パラメータは、n次関数(n≧3)を用いて、前記読取処理部により読み取られた前記基準画像の近似曲線を算出することにより生成される。
【0007】
このような構成によれば、基準画像を含む補正用読取画像に基づいて、搬送方向補正用パラメータを生成し、この搬送方向補正用パラメータに基づいてレンズアレイの変形に基づく被読取画像の誤差を好適に補正することができる。
【0008】
(2)前記基準画像は、前記搬送方向に直交するライン方向に延びるライン画像であってもよい。
【0009】
このような構成によれば、ライン画像を用いて搬送方向補正用パラメータを適切に算出することができるため、被読取画像の誤差をより好適に補正することができる。
【0010】
(3)前記搬送方向補正用パラメータは、前記読取処理部により読み取られた前記補正用読取画像を各撮像素子に対応する複数の分割画像に分割し、各分割画像について、前記n次関数(n≧3)を用いて、前記読取処理部により読み取られた前記基準画像の近似曲線を算出することにより生成されてもよい。
【0011】
このような構成によれば、分割画像別に搬送方向補正用パラメータを算出することができるため、被読取画像の誤差をより好適に補正することができる。
【0012】
(4)前記補正用読取画像は、前記ライン方向に等間隔で並べられた等間隔画像を含み、前記補正用パラメータには、前記読取処理部により読み取られた前記補正用読取画像に基づいて、前記ライン方向に沿った前記等間隔画像のずれ量を算出することにより生成されるライン方向補正用パラメータが含まれてもよい。
【0013】
このような構成によれば、等間隔画像を含む補正用読取画像に基づいて、ライン方向補正用パラメータを生成し、このライン方向補正用パラメータに基づいて、各撮像素子のずれに基づく被読取画像の誤差を好適に補正することができる。
【0014】
(5)前記パラメータ記憶部、及び、前記補正処理部は、前記補正用パラメータが書き込まれ、当該補正用パラメータに基づいて前記読取処理部により読み取られる前記被読取画像を補正するPLDにより構成されていてもよい。
【0015】
このような構成によれば、光学ラインセンサごとに異なる補正用パラメータをPLDに書き込み、当該補正用パラメータに基づいて被読取画像の誤差を好適に補正することができる。
【0016】
(6)前記PLDが、FPGAにより構成されていてもよい。
【0017】
このような構成によれば、補正用パラメータをFPGAに予め書き込み、当該FPGAにおいて補正された被読取画像を出力することができる。
【0018】
(7)前記補正処理部は、前記補正用パラメータに基づいてサブピクセル処理によって補正してもよい。
【0019】
このような構成によれば、サブピクセル処理を用いて、各撮像素子のずれに基づく被読取画像の誤差をさらに好適に補正することができる。
【0020】
(8)前記光学ラインセンサが密着型であってもよい。
【0021】
このような構成によれば、対象物と光学ラインセンサとの距離が近いため、光量のロスを少なくすることができる。すなわち、光学ラインセンサの消費電力を低下させることができる。
【0022】
(9)本発明に係る光学ラインセンサの製造方法は、前記光学ラインセンサの製造方法であって、補正用読取工程と、パラメータ生成工程と、書込工程とを含む。前記補正用読取工程では、前記補正用読取画像を前記対象物の画像として前記読取処理部により読み取らせる。前記パラメータ生成工程では、前記補正用読取画像に基づいて補正用パラメータを生成する。前記書込工程は、前記パラメータ記憶部に前記補正用パラメータを書き込む。
【0023】
このような構成によれば、光学ラインセンサごとに異なる補正用パラメータがパラメータ記憶部に予め書き込まれた光学ラインセンサを製造することができる。このような光学ラインセンサで被読取画像を読み取れば、補正用パラメータに基づいて被読取画像の誤差を好適に補正することができる。
【0024】
(10)本発明に係る補正処理方法は、前記光学ラインセンサにおける補正処理方法であって、被読取画像読取工程と、補正工程とを含む。前記被読取画像読取工程では、前記被読取画像を前記対象物の画像として前記読取処理部により読み取らせる。前記補正工程では、補正処理部において前記被読取画像を前記補正用パラメータに基づいて補正する。
【0025】
このような構成によれば、パラメータ記憶部に予め書き込まれた補正用パラメータに基づいて、被読取画像の誤差を好適に補正することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、高解像度の撮像素子がライン状に複数並べて配置された構成において、レンズアレイの変形に基づく画像の誤差を好適に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】第1実施形態における密着型光学ラインセンサの構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】第1実施形態における密着型光学ラインセンサの構成の他の例を示す概略断面図である。
【
図3A】第1実施形態における受光部の構成の一例を示す概略図である。
【
図3B】第1実施形態における受光部の構成の他の例を示す概略図である。
【
図4】第1実施形態における補正用読取画像の一例を示した図である。
【
図5】第1実施形態における密着型光学ラインセンサの電気的構成の一部を示すブロック図である。
【
図6】第1実施形態における補正用パラメータを生成する際の態様について説明するための図である。
【
図7】第1実施形態における補正用パラメータを生成する際の態様について説明するための図である。
【
図8】第1実施形態における補正処理を行う際の態様について説明するためのブロック図である。
【
図9】第1実施形態における補正処理の具体例について説明するための図である。
【
図10】第1実施形態の変形例における補正用読取画像の一例を示した図である。
【
図11】第1実施形態の変形例における補正用パラメータを生成する際の態様について説明するための図である。
【
図12】第1実施形態の変形例における補正用パラメータを生成する際の態様について説明するための図である。
【
図13】第2実施形態における補正用読取画像の一例を示した図である。
【
図14】第2実施形態における補正用パラメータを生成する際の態様について説明するための図である。
【
図15】第2実施形態における補正用パラメータを生成する際の態様について説明するための図である。
【
図16】第3実施形態における補正用読取画像の一例を示した図である。
【
図17】第3実施形態におけるレンズアレイの構成の一例を示す概略斜視図である。
【
図18】第3実施形態における補正用パラメータを生成する際の態様について説明するための図である。
【
図19】第3実施形態における補正用パラメータを生成する際の態様について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1.密着型光学ラインセンサの全体構成
図1は、第1実施形態における密着型光学ラインセンサ100の構成の一例を示す概略断面図であるが、第1実施形態では、密着型光学ラインセンサ100の構成は、密着型に限らない。この密着型光学ラインセンサ(CIS:Contact Image Sensor)100は、搬送方向(y方向)に沿って搬送される対象物の画像を読み取るものであり、読み取られた画像を補正して出力する機能を有している。対象物としては紙葉類を例示することができるが、これに限らず、任意の対象物の画像を読み取ることが可能である。
【0029】
この密着型光学ラインセンサ100は、筐体16と、対象物を照明するためのライン照明光源10と、そのライン照明光源10から焦点面20に向けて出射され対象物で反射した光を導くためのレンズアレイ11と、CIS基板13に実装されレンズアレイ11を透過した光を受光する受光部12とを備えている。対象物は焦点面20に沿って一方向(y方向)に搬送される。これらの筐体16、ライン照明光源10、受光部12、レンズアレイ11は、x方向、すなわち
図1の紙面に垂直な方向に延びており、
図1はx方向に垂直な断面を示している。
【0030】
ライン照明光源10は、焦点面20にある対象物に向けて光を出射するユニットである。出射される光の種類は、例えば可視光、及び、紫外光であり、さらに赤外光が出射されることもある。ただし、可視光のみがライン照明光源10から対象物に向けて出射されるような構成であってもよい。
【0031】
ライン照明光源10には、x方向(長手方向)に沿って延びる透明な導光体1が設けられている。導光体1の外側の各側面は、カバー部材2により保持されている。導光体1におけるx方向の一端又は両端には光源部(図示せず)が設けられており、光源部から導光体1内に入射した光は、光拡散パターンPにより拡散されて、導光体1におけるカバー部材2で覆われていない側面から出射される。
【0032】
ライン照明光源10から出射された光は、保護ガラス14を透過して焦点面20に集光される。保護ガラス14は、必ずしも必要ではなく省略することもできるが、使用中のごみの飛散や傷つきからライン照明光源10やレンズアレイ11を保護するために設置することが望ましい。保護ガラス14の材質はライン照明光源10から出射される光を透過させるものであればよく、例えばアクリル樹脂やシクロオレフィン系樹脂などといった透明な樹脂、あるいは、白板ガラス又はホウケイ酸ガラスなどであってもよい。
【0033】
ライン照明光源10の底面に対向して、光源部を固定するための光源用基板5が設置されている。この光源用基板5はフェノール、ガラスエポキシなどで形成された薄い絶縁板であり、その裏面に銅箔からなる配線パターンが形成されている。光源部の端子を光源用基板5の各所に形成された孔に挿入し、光源用基板5の裏面において半田などで配線パターンと接合することにより、光源部を光源用基板5に搭載し固定することができるとともに、所定の駆動電源(図示せず)から基板裏面の配線パターンを通して光源部に電力を供給することができる。
【0034】
レンズアレイ11は、対象物で反射された光を受光部12に結像する光学素子であり、ロッドレンズアレイにより構成することができる。第1実施形態では、レンズアレイ11の倍率は1(正立)に設定されている。焦点面20から受光部12までの任意の位置には、受光部12に紫外光が入らないように、紫外光を反射又は吸収することにより遮断する紫外光遮断フィルタ膜15が設けられていてもよい。
【0035】
受光部12は、CIS基板13に実装されており、対象物からの反射光を受光して光電変換により画像を読み取る複数の光電変換素子を含む。光電変換素子の材質、及び、構造は特に限定されるものではなく、アモルファスシリコン、結晶シリコン、CdS又はCdSeなどを用いたフォトダイオードやフォトトランジスタを配置したものであってもよい。第1実施形態では、複数の光電変換素子がx方向に一直線上に並べて配置された受光IC(Integrated Circuit)チップが、長尺のCIS基板13上に長さ方向(x方向)に沿って配置されている。また、必要に応じてCIS基板13上に駆動回路又は増幅回路などの電気回路、A/Dコンバータ、あるいは信号を外部に取り出すためのコネクタなどを実装することもできる。
【0036】
図2は、第1実施形態における密着型光学ラインセンサ100の構成の他の例を示す概略断面図である。
図1を参照し、ライン照明光源10から対象物に向けて光を照射し、対象物で反射した光を受光する反射型の密着型光学ラインセンサ100について説明した。ただし、第1実施形態では、反射型の密着型光学ラインセンサ100に限らず、
図2に示すように、ライン照明光源10を焦点面20に対して受光部12側とは反対側に配置して、ライン照明光源10から対象物に向けて出射され対象物を透過した光を受光する、透過型の密着型光学ラインセンサにも適用可能である。この場合、ライン照明光源10の位置が焦点面20の下側になる点のみが
図1の配置とは異なり、ライン照明光源10自体の構成は、
図1の構成と同様である。
【0037】
2.受光部の構成
図3Aは、第1実施形態における受光部12の構成の一例を示す概略図である。
図3Bは、第1実施形態における受光部12の構成の他の例を示す概略図である。
図3A、及び、
図3Bでは、受光部12、及び、CIS基板13をz方向に沿って見たときの底面図を示している。
【0038】
受光部12は、撮像素子としての受光ICチップ121を複数備えている。対象物の画像は、レンズアレイ11を介して複数の受光ICチップ121に露光されることにより読み取られる。複数の受光ICチップ121は、x方向に沿ってライン状に並べて配置されている。ここでの「ライン状」とは、
図3Aに示すようにx方向に沿った一直線上に複数の受光ICチップ121が配置された構成に限らず、
図3Bに示すようにx方向に平行な2つの直線上に複数の受光ICチップ121が千鳥状に配置された構成も含む概念である。
図3Bのように複数の受光ICチップ121を千鳥状に配置する場合には、各受光ICチップの端部が、隣接する受光ICチップの端部とy方向に重なるように配置されてもよい。
【0039】
各受光ICチップ121には、複数の光電変換素子(図示せず)がx方向に沿って一直線上に並べて配置されている。具体的には、各受光ICチップ121は、300個の光電変換素子を備えており、300画素で読み取りを行うことができる。本実施形態では、このような受光ICチップ121が、ライン状に10個並べて配置されている。ただし、受光ICチップ121の数や、各受光ICチップ121に備えられる光電変換素子の数は、上記のような数に限られるものではない。
【0040】
3.補正用読取画像の一例
第1実施形態では、密着型光学ラインセンサ100を製造する際に、補正用読取画像を受光部12で読み取らせることにより、補正用パラメータを生成する処理が行われる。補正用読取画像とは異なる被読取画像(実際の読取対象物)を読み取る際には、予め生成された補正用パラメータに基づいて補正処理が行われる。
【0041】
図4は、第1実施形態における補正用読取画像30の一例を示した図である。この例では、単色(白色)の無地平面に、黒色の補正用読取画像30が表されている。このような補正用読取画像30が表された用紙を対象物として焦点面20に沿って搬送し、当該補正用読取画像30を読み取ることにより、補正用パラメータを生成することができる。
【0042】
具体的に、補正用読取画像30は、y方向に直交する方向であるx方向(ライン方向)に延びるライン画像31、及び、x方向に等間隔で並べられた等間隔画像32を含む。ライン画像31は、x方向に沿って均一な太さで一直線上に表されている。等間隔画像32は、y方向に沿って延びるライン状の画像であり、複数の等間隔画像32がx方向に一定の間隔を隔てて平行に表されている。
【0043】
また、補正用読取画像30には、等間隔画像32とは別に倍率算出用画像33(33a、33b)が含まれる。倍率算出用画像33は、対を成す第1倍率算出用画像33a、及び、第2倍率算出用画像33bから構成される。第1倍率算出用画像33a、及び、第2倍率算出用画像33bは、y方向に沿って延びるライン状の画像であって、複数の第1倍率算出用画像33a、及び、複数の第2倍率算出用画像33bは、x方向に並べられるように表されている。
【0044】
複数の等間隔画像32間のピッチは、各受光ICチップ121の基板上の配置ピッチに対応している。つまり、1つの受光ICチップ121には、1つの等間隔画像32が対応付けられる。また、1つの受光ICチップ121には、1つの倍率算出用画像33が対応付けられる。つまり、1つの受光ICチップ121には、1つの第1倍率算出用画像33a、及び、1つの複数の第2倍率算出用画像33bが対応付けられる。各等間隔画像32の一端は、ライン画像31に結合している。また、各第1倍率算出用画像33a、及び、各第2倍率算出用画像33bも等間隔画像32と同様に一端がライン画像31に結合している。これにより、補正用読取画像30は、T字状の画像、及び、倍率算出用画像32から成る組合せ画像がx方向に連続的に結合された画像として表されている。組合せ画像の数は、受光ICチップ121の数(例えば10個)に対応している。
【0045】
また、等間隔画像32は、各受光ICチップ121におけるライン方向の中央部に対応付けられ、第1倍率算出用画像33a、及び、第2倍率算出用画像33bは、等間隔画像32をライン方向に挟むように、各受光ICチップ121に対応付けられる。等間隔画像32は、各受光ICチップ121におけるライン方向の中心位置に対応付けられていることが好ましい。また、第1倍率算出用画像33a、及び、第2倍率算出用画像33bは、各受光ICチップ121におけるライン方向の両端位置に対応付けられていることが好ましい。すなわち、各受光ICチップ121に対応する第1倍率算出用画像33a、及び、第2倍率算出用画像33bは、可能な限り間隔を隔てて配置されることが好ましい。
【0046】
ただし、補正用読取画像30は、
図4に示すような画像に限られるものではない。例えば等間隔画像32、及び、倍率算出用画像33は、ライン画像31に結合していなくてもよいし、y方向に対して傾斜する方向に沿って延びていてもよい。また、等間隔画像32、及び、倍率算出用画像33は、ライン状の画像ではなく、点状の画像などであってもよい。このように、補正用読取画像30は、複数の組合せ画像が結合された画像に限られるものではない。また、補正用読取画像30は黒色に限られるものではなく、補正用読取画像30が表される平面も白色以外の単色又は複数色であってもよい。さらに、各等間隔画像32は、受光ICチップ121におけるライン方向の中央部以外、たとえば、一方の端部に対応付けられてもよい。さらにまた、1つの受光ICチップ121に、1つの倍率算出用画像33が対応付けられるのであれば、複数の倍率算出用画像33の間隔は、特に限定されない。また、この場合、各倍率算出用画像33において、第1倍率算出用画像33a、及び、第2倍率算出用画像33bの間隔は、それぞれ異なってもよい。
【0047】
4.密着型光学ラインセンサの電気的構成
図5は、第1実施形態における密着型光学ラインセンサ100の電気的構成の一部を示すブロック図である。密着型光学ラインセンサ100は、上述したCIS基板13の他、FPGA基板17などを備えている。
【0048】
CIS基板13は、読取処理部110を構成している。読取処理部110は、密着型光学ラインセンサ100に備えられた機能的構成であり、CIS基板13は、複数の受光ICチップ121からの入力信号に基づいて、対象物の画像を読み取る読取処理部110として機能する。
図5に示すように、補正用読取画像30が対象物の画像として読取処理部110により読み取られた場合には、その補正用読取画像30を表すデータがCIS基板13からFPGA基板17に出力される。
【0049】
FPGA基板17は、パラメータ記憶部120、及び、補正処理部130を構成している。パラメータ記憶部120、及び、補正処理部130は、それぞれ密着型光学ラインセンサ100に備えられた機能的構成であり、FPGA基板17は、補正用読取画像30に基づいて生成された補正用パラメータを記憶するパラメータ記憶部120として機能するとともに、被読取画像を補正用パラメータに基づいて補正する補正処理部130として機能する。
【0050】
FPGA基板17には、FPGA(Field-Programmable Gate Array)が実装されている。FPGAは、製造後に購入者又は設計者がプログラム可能な集積回路であり、広義にはPLD(Programmable Logic Device)の一種である。
図5に示すように、補正用読取画像30が対象物の画像として読取処理部110により読み取られた場合には、補正用読取画像30を表すデータが、CIS基板13からFPGA基板17を介して補正用端末200に出力される。
【0051】
補正用端末200は、例えばパーソナルコンピュータにより構成されており、密着型光学ラインセンサ100に対して有線又は無線で通信可能である。補正用端末200は、補正用読取画像30を表すデータが入力された場合に、そのデータに基づいて補正用パラメータを生成する処理を行う。補正用端末200により生成された補正用パラメータは、パラメータ記憶部120としてのFPGA基板17上のFPGAに書き込まれて記憶される。
【0052】
このように、密着型光学ラインセンサ100を製造する際には、補正用読取画像30を対象物の画像として読取処理部110により読み取らせる(補正用読取工程)。そして、補正用読取画像30を表すデータが入力された補正用端末200において所定の操作が行われることにより、補正用読取画像30に基づいて補正用パラメータが生成される(パラメータ生成工程)。
【0053】
補正用端末200において生成された補正用パラメータは、補正用端末200から密着型光学ラインセンサ100に入力され、パラメータ記憶部120を構成するFPGA基板17上のFPGAに書き込まれる(書込工程)。パラメータ記憶部120としてのFPGAに書き込まれて保存された補正用パラメータは、当該FPGAが補正処理部130として機能する際に読み出される。
【0054】
5.補正用パラメータの生成
図6、及び、
図7は、第1実施形態における補正用パラメータを生成する際の態様について説明するための図である。
図6には、補正前の補正用読取画像30を構成するライン画像31、等間隔画像32及び倍率算出用画像33(33a、33b)が示されている。また、
図7には、補正用パラメータを用いて補正した後の補正画像40を構成するライン画像41、等間隔画像42及び倍率算出用画像43(43a、43b)が示されている。
【0055】
補正用読取画像30が読取処理部110により読み取られた場合、各受光ICチップ121の配置時のずれに起因して、
図6に示すように、ライン画像31の一部がy方向にずれる場合がある。また、同様に各受光ICチップ121の配置時のずれに起因して、等間隔画像32間のピッチPがx方向にずれる場合がある。さらに、同様に各受光ICチップ121の配置時のずれに起因して、組合せ画像がx方向に拡大される場合がある。ここでの、受光ICチップ121の配置時のずれには、受光ICチップ121が本来の位置からスライドしたうえで配置される概念、及び、受光ICチップ121がxy平面上で傾いた状態で配置される概念の少なくとも一方が含まれる。また、画像がy方向にずれることには、画像が本来の位置からy方向にスライドする概念、及び、画像にy方向へのスキュー変換が行われるようにx方向に対して傾く概念の少なくとも一方が含まれる。具体的に、受光ICチップ121のy方向へのスライドに起因して、画像がy方向にスライドする。また、受光ICチップ121のx方向へのスライドに起因して、画像がx方向にスライドする。さらに、受光ICチップ121がxy平面上で傾くことに起因して、画像がx方向に対して傾き、かつ、x方向の倍率Mが大きくなる。生成される補正用パラメータには、搬送方向のずれを補正するための搬送方向補正用パラメータと、ライン方向のずれを補正するためのライン方向補正用パラメータとが含まれる。
【0056】
搬送方向補正用パラメータは、
図6に破線で示すように、読取処理部110により読み取られた補正用読取画像30を各受光ICチップ121に対応する複数(10個)の分割画像に分割し、各分割画像について、y方向に沿ったライン画像31のずれ量、及び、x方向に対するライン画像31の傾きを算出することにより生成される。
【0057】
このとき、一次関数であるy=ax+bの式を用いて搬送方向補正用パラメータが生成される。「b」はy方向に沿ったライン画像31のずれ量を表しており、「a」はx方向に対するライン画像31の傾きを表している。上記のような一次関数に対して、各分割画像におけるライン画像31のxy座標を代入することにより、搬送方向補正用パラメータを生成することができる。
【0058】
ライン方向補正用パラメータは、読取処理部110により読み取られた等間隔画像32に基づいて、ライン方向に沿った等間隔画像32のずれ量を算出するとともに、読取処理部110により読み取られた倍率算出用画像33に基づいて、各受光ICチップ121により読み取られる画像の倍率を算出することにより生成される。
【0059】
ライン方向補正用パラメータは、具体的に、第1ライン方向補正用パラメータ、及び、第2ライン方向補正用パラメータを含む。
【0060】
第1ライン方向補正用パラメータは、等間隔画像32(等間隔画像42)に基づいて、ライン方向に沿った等間隔画像32(等間隔画像42)のずれ量を算出することにより生成される。第2ライン方向補正用パラメータは、読取処理部110により読み取られた各受光ICチップ121につき第1倍率算出用画像33aと第2倍率算出用画像33bとの距離に基づいて、各受光ICチップ121により読み取られる画像の倍率を算出することにより生成される。
【0061】
たとえば、読取処理部110により読み取られた補正用読取画像30(
図6参照)と、生成した搬送方向補正用パラメータと、生成した第2ライン方向補正用パラメータとに基づいて、y方向のずれ量と傾き、及び、x方向の倍率Mを補正した補正画像40(
図7参照)を生成する。その後、x方向に沿った等間隔画像42のずれ量を算出することにより第1ライン方向補正用パラメータが生成される。すなわち、このような場合、第1倍率算出用画像33a、及び、第2倍率算出用画像33bのそれぞれの距離が本来の距離となるように、第2ライン方向補正用パラメータが生成され、その後、等間隔画像42間のピッチPがx方向において一定となるように、第1ライン方向補正用パラメータが生成される。
【0062】
なお、
図6に示す例では、各分割画像におけるライン方向の中央部に等間隔画像32が存在する。そのため、x方向における倍率の変化は、等間隔画像32の位置の変位にあまり影響しない。一方で、各分割画像におけるライン方向の中央部に等間隔画像32が存在しない場合、x方向における倍率の変化は、等間隔画像32の位置の変位に大きく影響する。
【0063】
したがって、x方向の倍率の補正が必要されるとき、すなわち、ライン方向補正用パラメータに第2ライン方向補正用パラメータが含まれるとき、第1ライン方向補正用パラメータは、第2ライン方向補正用パラメータが反映された補正画像40を生成した後に、算出されるのが好ましい。
【0064】
6.補正処理方法
図8は、補正処理を行う際の態様について説明するためのブロック図である。
図8において、密着型光学ラインセンサ100の電気的構成は、
図5の場合と同様である。
【0065】
密着型光学ラインセンサ100をユーザが使用する際、ユーザは、被読取画像50を対象物の画像として読取処理部110により読み取らせる(被読取画像読取工程)。このとき、被読取画像50を表すデータが、CIS基板13からFPGA基板17に出力される。
【0066】
上述の通り、FPGA基板17上のFPGAには、補正用パラメータが予め書き込まれている。補正処理部130としてのFPGAでは、この補正用パラメータに基づいて被読取画像50が補正される(補正工程)。すなわち、搬送方向補正用パラメータにより被読取画像50のy方向のずれが補正されるとともに、ライン方向補正用パラメータにより被読取画像50のx方向のずれが補正される。
【0067】
ただし、第1実施形態では、搬送方向補正用パラメータは、必要に応じて修正される。たとえば、被読取画像50が対象物の画像として600dpi程度の解像度で読取処理部110により読み取られるとき、x方向、及び、y方向の画素ピッチが42μm程度となる。
【0068】
x方向の画素ピッチについては、受光ICチップ121の配置に依存する。一方で、y方向の画素ピッチについては、対象物の搬送速度、及び、対象物の露光時間に依存する。つまり、被読取画像50が対象物の画像として読取処理部110により読み取られるときの搬送速度、及び、露光時間の少なくとも一方が変化すると、y方向の画素ピッチが変化する。なお、露光時間は、受光部12が1ライン分の光量を蓄える蓄積時間を意味しており、露光時間が長くなれば、1ライン分の画像の読取時間が長くなる。
【0069】
そのため、たとえば、被読取画像50が対象物の画像として300dpi程度の解像度で読取処理部110により読み取られるとき、600dpi程度の解像度で読み取られる場合と比較して、対象物の搬送速度、及び、対象物の露光時間の一方が2倍とされ、y方向の画素ピッチが2倍になる。なお、解像度を変更する場合に限らず、画像の縦横比を変更する場合などにも、対象物の搬送速度、及び、露光時間の少なくとも一方が変化することがある。
【0070】
搬送方向補正用パラメータは、一次関数であるy=ax+bの式を用いて生成されるため、y方向の画素ピッチが変化すると、一次関数の係数a,bを修正しなければ、各分割画像について、適切な搬送方向補正用パラメータとすることができない。たとえば、上記のようにy方向の画素ピッチが2倍になる場合、一次関数としてy=2ax+2bの式となるように搬送方向補正用パラメータを修正する必要がある。
【0071】
したがって、第1実施形態では、搬送方向補正用パラメータは、被読取画像50が対象物の画像として読取処理部110により読み取られるときの搬送速度、及び、露光時間の少なくとも一方に基づいて修正される。具体的には、搬送方向補正用パラメータは、搬送速度、及び、露光時間の少なくとも一方に基づく定数が乗算されることにより修正される。すなわち、搬送方向補正用パラメータを生成する際に用いられる一次関数であるy=ax+bの式において、係数a,bに上記定数が乗算されることにより、搬送方向補正用パラメータが修正される。なお、光学ラインセンサ100は、たとえば、搬送機構と通信可能に接続されることで、搬送速度に関する情報を取得するが、この情報の取得方法は特に限定されない。
【0072】
また、第2ライン方向補正用パラメータに基づいて補正を行った場合、画像が縮小されるため、補正後の画像の一部が欠けることがある。そのため、このような場合は、周知の技術を用いて欠けた箇所を補間する補正がさらに行われてもよい。
【0073】
このように補正された被読取画像(補正画像)は、ユーザ端末300に出力される。ユーザ端末300は、例えばパーソナルコンピュータにより構成されており、密着型光学ラインセンサ100に対して有線又は無線で通信可能である。補正画像が入力されたユーザ端末300では、当該補正画像が表示又は印刷されてもよい。
【0074】
図9は、補正処理の具体例について説明するための図である。
図9(a)には、読取処理部110により読み取られた被読取画像50の一部が示されており、
図9(b)には、
図9(a)の被読取画像50の一部がFPGAにより補正された補正画像が示されている。
図9(a)及び
図9(b)において、ハッチングが施されている画素は、補正用読取画像30(ライン画像31)の一部を示している。
【0075】
FPGAから補正画像が出力される際には、当該FPGAに予め書き込まれている補正用パラメータ(搬送方向補正用パラメータ、及び、ライン方向補正用パラメータ)に基づく順序で各画素のデータが順次読み出され、ユーザ端末300に出力される。これにより、ユーザ端末300では、
図9(b)に示すように、ずれが補正された補正後の被読取画像(補正画像)が得られる。
【0076】
補正方法には、いわゆるサブピクセル処理が用いられてもよい。サブピクセル処理には、移動前の画素位置の周辺4画素の輝度値から移動後の輝度値を算出するバイリニア、又は、移動前の画素位置の周辺16画素の輝度値から移動後の輝度値を算出するバイキュービックなどが含まれていてもよい。また、補正方法には、ずれ量に基づいて画素を整数ピクセル移動させるニアレストネイバーなどの非サブピクセル処理が用いられてもよい。
【0077】
7.第1実施形態の変形例
第1実施形態の変形例では、補正用読取画像30、及び、補正用パラメータの算出方法を変更したこと以外は第1実施形態と同様である。そのため、この第1実施形態の変形例に関し、重複する説明は省略することがある。
【0078】
この変形例では、補正用読取画像30は、ライン画像31、等間隔画像32に加え、第1倍率算出用画像33a、及び、第2倍率算出用画像33bの一方を含み、等間隔画像32が、第1倍率算出用画像33a、及び、第2倍率算出用画像33bの他方と同じ役割を担う。つまり、この変形例では、倍率算出用画像33には、第1倍率算出用画像33a、及び、第2倍率算出用画像33bの一方しか含まれないため、倍率算出用画像33は、各受光ICチップ121に1つ対応付けられる。
【0079】
図10は、第1実施形態の変形例における補正用読取画像30の一例を示した図である。
図10に示す例では、補正用読取画像30が、ライン画像31、等間隔画像32、及び、第2倍率算出用画像33bを含み、等間隔画像32が第1倍率算出用画像33aと同じ役割を担う。以下、このような場合を例に挙げて、第1実施形態の変形例について説明する。
【0080】
図11、及び、
図12は、第1実施形態の変形例における補正用パラメータを生成する際の態様について説明するための図である。第1実施形態の変形例では、第2ライン方向補正用パラメータは、読取処理部110により読み取られた各受光ICチップ121につき1つの第2倍率算出用画像33bと等間隔画像32との距離に基づいて、各受光ICチップ121で読み取られる画像の倍率を算出することにより生成される。
【0081】
つまり、この変形例では、ライン方向補正用パラメータは、読取処理部110により読み取られた等間隔画像32に基づいて、ライン方向に沿った等間隔画像32のずれ量を算出するとともに、読取処理部により読み取られた各受光ICチップ121につき1つの第2倍率算出用画像33bと等間隔画像32との距離に基づいて、各受光ICチップ121に読み取られる画像の倍率を算出することにより生成される。
【0082】
第1実施形態の変形例では、たとえば、読取処理部110により読み取られた補正用読取画像30(
図11参照)と、生成した搬送方向補正用パラメータと、生成した第2ライン方向補正用パラメータとに基づいて、y方向のずれ量と傾き、及び、x方向の倍率Mを補正した補正画像40(
図12参照)を生成する。その後、x方向に沿った等間隔画像42のずれ量を算出することにより第1ライン方向補正用パラメータが生成される。すなわち、このような場合、等間隔画像32、及び、第2倍率算出用画像33bのそれぞれの距離が本来の距離となるように、第2ライン方向補正用パラメータが生成され、その後、等間隔画像42間のピッチPがx方向において一定となるように、第1ライン方向補正用パラメータが生成される。
【0083】
8.第2実施形態
第2実施形態では、補正用読取画像30、及び、補正用パラメータの算出方法を変更したこと以外は第1実施形態と同様である。そのため、この第2実施形態では、第1実施形態と重複する説明は省略することがある。
【0084】
図13は、第2実施形態の変形例における補正用読取画像30の一例を示した図である。第2実施形態では、補正用読取画像30は、ライン画像31、及び、等間隔画像32を含む。
【0085】
図14、及び、
図15は、第2実施形態における補正用パラメータを生成する際の態様について説明するための図である。ライン方向補正用パラメータは、第1ライン方向補正用パラメータだけを含む。つまり、第2実施形態のライン方向補正用パラメータは、等間隔画像32に基づいて、ライン方向に沿った等間隔画像32のずれ量を算出することにより生成される。
【0086】
第2実施形態では、たとえば、読取処理部110により読み取られた補正用読取画像30(
図14参照)と、生成した搬送方向補正用パラメータとに基づいて、y方向のずれ量と傾きを補正した補正画像40(
図15参照)を生成する。その後、x方向に沿った等間隔画像42のずれ量を算出することによりライン方向補正用パラメータが生成される。すなわち、このような場合、等間隔画像42間のピッチPがx方向において一定となるように、ライン方向補正用パラメータが生成される。
【0087】
9.第3実施形態
第3実施形態は、補正用読取画像30、及び、補正用パラメータの算出方法を変更したこと以外は第1実施形態、及び、第2実施形態と同様である。そのため、この第3実施形態では、第1実施形態、及び、第2実施形態と重複する説明は省略することがある。
【0088】
図16は、第3実施形態における補正用読取画像30の一例を示した図である。第3実施形態では、補正用読取画像30は、搬送方向と交差する方向に延びる基準画像34を含む。
図16に示す例では、基準画像34は、搬送方向に直交するライン方向に延びる画像、すなわち、ライン画像31と同様の画像である。なお、基準画像34は、搬送方向において互いに重ならないのであれば、曲がった画像であってもよい。また、第3実施形態では、補正用読取画像30は、等間隔画像32を含む。各等間隔画像32の一端は、基準画像34に結合している。ただし、等間隔画像32は省略されてもよい。
【0089】
図17は、第3実施形態におけるレンズアレイ11の構成の一例を示す概略斜視図である。レンズアレイ11は、複数のレンズ11a、及び、複数のレンズ11aを支持する支持部材11bを含む。レンズアレイ11は、変形した状態で密着型光学ラインセンサ100の本体に実装されることがある。ここでの変形した状態には、たとえば、長手方向を軸に捻じれた状態、及び、湾曲した状態等が該当する。このような場合、レンズ11aが傾くため、被読取画像がずれることがある。そのため、第3実施形態では、レンズアレイ11に起因する被読取画像のずれを補正可能とする。
【0090】
図18、及び、
図19は、第3実施形態の補正用パラメータを生成する際の態様について説明するための図である。第3実施形態では、搬送方向補正用パラメータは、n次関数(n≧3)を用いて、読取処理部110により読み取られた基準画像34の近似曲線を算出することにより生成される。
【0091】
具体的に、搬送方向補正用パラメータは、
図18に破線で示すように、読取処理部110により読み取られた補正用読取画像30を各受光ICチップ121に対応する複数(10個)の分割画像に分割し、各分割画像について、n次関数(n≧3)を用いて、読取処理部110により読み取られた基準画像34の近似曲線を算出することにより生成される。
【0092】
たとえば、基準画像34の近似曲線が3次式y=Ax3+Bx2+Cx+Dで表される場合、その近似曲線に対して、基準画像34のxy座標を代入することにより、搬送方向補正用パラメータを生成することができる。ただし、基準画像34の近似曲線は、3次式に限らず、4次式又は5次式などの他の補正式で表されてもよい。近似曲線の算出方法は、特に限定されるものではなく、最小二乗法などの周知の算出方法を用いて近似曲線を算出してもよい。
【0093】
また、ライン方向補正用パラメータは、第1ライン方向補正用パラメータだけを含む。つまり、第3実施形態のライン方向補正用パラメータは、等間隔画像32に基づいて、ライン方向に沿った等間隔画像32のずれ量を算出することにより生成される。なお、第3実施形態において、等間隔画像32のずれは、レンズアレイ11の変形に起因するものである。
【0094】
第3実施形態では、たとえば、読取処理部110により読み取られた補正用読取画像30(
図18参照)と、生成した搬送方向補正用パラメータとに基づいて、y方向のずれ量を補正した補正画像40(
図19参照)を生成する。その後、x方向に沿った等間隔画像42のずれ量を算出することによりライン方向補正用パラメータが生成される。
【0095】
なお、各実施形態で挙げた具体的な構成は一例であり、実際の製品に応じて適宜変更することが可能である。そのため、密着型光学ラインセンサ100の構成は、同様の作用効果が得られる範囲内で適宜変更されてもよい。また、上述した各実施形態については、必要に応じて適宜組み合わせても良い。
【0096】
9.作用効果
(1)各実施形態では、補正用読取画像30に基づいて搬送方向補正用パラメータ及びライン方向補正用パラメータを生成し、これらの補正用パラメータに基づいて各受光ICチップ121のずれに基づく被読取画像50の誤差を好適に補正することができる。
【0097】
(2)各実施形態では、密着型光学ラインセンサ100ごとに異なる補正用パラメータをPLDに書き込み、当該補正用パラメータに基づいて被読取画像50の誤差を好適に補正することができる。特に、PLDがFPGAにより構成されているため、補正用パラメータをFPGAに予め書き込み、当該FPGAにおいて補正された被読取画像50を出力することができる。
【0098】
(3)第1実施形態では、補正用読取画像に基づいて搬送方向補正用パラメータを生成する際に、一次関数を用いた演算により、搬送方向補正用パラメータを適切に算出することができ、さらに、被読取画像が対象物の画像として読取処理部110により読み取られるときの搬送速度、及び、露光時間の少なくとも一方に基づく定数を乗算することにより搬送方向補正用パラメータを適切に修正することができるため、各受光ICチップ121のずれに基づく被読取画像50の誤差をより好適に補正することができる。また、サブピクセル処理によって補正すれば、各受光ICチップ121のずれに基づく被読取画像50の誤差をさらに好適に補正することができる。
【0099】
(4)第2実施形態では、補正用読取画像に基づいて搬送方向補正用パラメータを生成する際に、一次関数を用いた演算により、搬送方向補正用パラメータを適切に算出することができるため、各受光ICチップ121のずれに基づく被読取画像50の誤差をより好適に補正することができる。また、サブピクセル処理によって補正すれば、各受光ICチップ121のずれに基づく被読取画像50の誤差をさらに好適に補正することができる。
【0100】
(5)第3実施形態では、補正用読取画像に基づいて搬送方向補正用パラメータを生成する際に、n次関数(n≧3)を用いた演算により、搬送方向補正用パラメータを適切に算出することができるため、各受光ICチップ121のずれに基づく被読取画像50の誤差をより好適に補正することができる。また、サブピクセル処理によって補正すれば、各受光ICチップ121のずれに基づく被読取画像50の誤差をさらに好適に補正することができる。
【符号の説明】
【0101】
12 受光部
13 CIS基板
17 FPGA基板
30 補正用読取画像
31 ライン画像
32 等間隔画像
33 倍率算出用画像
33a 第1倍率算出用画像
33b 第2倍率算出用画像
34 基準画像
40 補正画像
42 等間隔画像
43 倍率算出用画像
43a 第1倍率算出用画像
43b 第2倍率算出用画像
44 基準画像
50 被読取画像
100 密着型光学ラインセンサ
110 読取処理部
120 パラメータ記憶部
121 受光ICチップ
130 補正処理部