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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024040945
(43)【公開日】2024-03-26
(54)【発明の名称】画像処理装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240318BHJP
【FI】
A61B6/00 350Z
A61B6/00 333
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145619
(22)【出願日】2022-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知幸
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA01
4C093AA26
4C093CA18
4C093EA07
4C093EB12
4C093EB13
4C093EB17
4C093EB20
4C093FD03
4C093FF11
4C093FF16
4C093FF25
4C093FF34
4C093FG16
(57)【要約】
【課題】画像処理装置、方法およびプログラムにおいて、骨の状態を正しく評価できるようにする。
【解決手段】プロセッサは、被写体の少なくとも骨成分が抽出された骨部画像において、骨折および人工物を除外して評価の対象となる対象骨を特定し、対象骨に基づいて被写体の骨の状態を表す評価結果を導出する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
被写体の少なくとも骨成分が抽出された骨部画像において、骨折および人工物を除外して評価の対象となる対象骨を特定し、
前記対象骨に基づいて前記被写体の骨の状態を表す評価結果を導出する画像処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、エネルギー分布が異なる放射線により前記被写体を撮影することにより取得された第1の放射線画像および第2の放射線画像から前記骨部画像を導出する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記対象骨の骨密度、前記対象骨の微細構造の情報、前記対象骨に隣接する骨との関係性の少なくとも1つを前記骨の状態を表す指標として導出し、前記指標に基づいて前記評価結果を導出する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記対象骨における前記骨密度の代表値を前記指標として導出する請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記対象骨における予め定められた方向の複数のライン毎に前記骨密度の前記代表値を導出し、前記ライン毎の前記代表値の代表値を前記指標として導出する請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記対象骨が強調された前記骨部画像および前記評価結果を表示する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
被写体の少なくとも骨成分が抽出された骨部画像において、骨折および人工物を除外して評価の対象となる対象骨を特定し、
前記対象骨に基づいて前記被写体の骨の状態を表す評価結果を導出する画像処理方法。
【請求項8】
被写体の少なくとも骨成分が抽出された骨部画像において、骨折および人工物を除外して評価の対象となる対象骨を特定する手順と、
前記対象骨に基づいて前記被写体の骨の状態を表す評価結果を導出する手順とをコンピュータに実行させる画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
骨粗鬆症等の骨系疾患は外観からは発見することができず、骨折して初めて発見される。とくに骨粗鬆症が多く見られる大腿骨および椎骨の骨折は、患者が寝たきりとなる可能性が高い。寝たきりになった場合の5年生存率は、癌の5年生存率よりも低いことが知られている。このため、骨折が発生する前に治療が必要な骨粗鬆症患者を見つけることが望まれている。
【0003】
一方、骨系疾患において、骨密度の診断に用いられる代表的な骨塩定量方法の1つにDXA法(Dual X-ray Absorptiometry)が知られている。また、エネルギーサブトラクション処理により被写体の骨部を表す骨部画像および軟部を表す軟部画像を取得し、骨部画像から骨塩量すなわち骨密度を導出し、軟部画像から筋肉量を導出し、骨塩量および筋肉量に基づいて被写体の骨折リスクを評価する手法が提案されている(特許文献1参照)。また、被検体の骨密度および骨梁から構成される海綿状構造の特性を数値化した構造パラメータに基づいて被検体の骨折リスクを示す評価値を算出する手法も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/166561号
【特許文献2】国際公開第2016/129682号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
骨折リスクを判定するために必要な骨密度を骨部画像を用いて評価するに際し、すでに骨折している骨、または骨折の治療に用いるスクリュー等の人工物が写る領域が含まれると、患者本来の正しい骨密度を算出できない。例えば、すでに圧迫骨折している領域は、つぶれることにより見かけ上の骨密度が大きくなる。また、人工物は骨よりも高密度の素材であることが多いため、例えばある領域の骨密度の平均値を求める際に、その領域に人工物が含まれると、骨密度が過大に評価されることとなる。このように、骨の状態を正しく評価できないと、骨折リスク、さらには骨粗鬆症の治療に使用する薬についての薬効等を正しく判定できない。
【0006】
本開示は上記事情に鑑みなされたものであり、骨の状態を正しく評価できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による画像処理装置は、少なくとも1つのプロセッサを備え、プロセッサは、被写体の少なくとも骨成分が抽出された骨部画像において、骨折および人工物を除外して評価の対象となる対象骨を特定し、
対象骨に基づいて被写体の骨の状態を表す評価結果を導出する。
【0008】
「少なくとも骨成分が抽出された骨部画像」とは、骨部以外に放射線の減弱が骨部と同程度の物体が抽出された画像であることを意味する。放射線の減弱が骨部と同程度の物体としては、例えば骨部に埋め込まれた金属等の人工物が挙げられる。
【0009】
なお、本開示による画像処理装置においては、プロセッサは、エネルギー分布が異なる放射線により被写体を撮影することにより取得された第1の放射線画像および第2の放射線画像から骨部画像を導出するものであってもよい。
【0010】
また、本開示による画像処理装置においては、プロセッサは、対象骨の骨密度、対象骨の微細構造の情報、対象骨に隣接する骨との関係性の少なくとも1つを骨の状態を表す指標として導出し、指標に基づいて評価結果を導出するものであってもよい。
【0011】
また、本開示による画像処理装置においては、プロセッサは、対象骨における骨密度の代表値を指標として導出するものであってもよい。
【0012】
この場合、プロセッサは、対象骨における予め定められた方向の複数のライン毎に骨密度の代表値を導出し、ライン毎の代表値の代表値を指標として導出するようにしてもよい。
【0013】
また、本開示による画像処理装置においては、プロセッサは、対象骨が強調された骨部画像および評価結果を表示するものであってもよい。
【0014】
本開示による画像処理方法は、被写体の少なくとも骨成分が抽出された骨部画像において、骨折および人工物を除外して評価の対象となる対象骨を特定し、
対象骨に基づいて被写体の骨の状態を表す評価結果を導出する。
【0015】
本開示による画像処理プログラムは、被写体の少なくとも骨成分が抽出された骨部画像において、骨折および人工物を除外して評価の対象となる対象骨を特定する手順と、
対象骨に基づいて被写体の骨の状態を表す評価結果を導出する手順とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、骨の状態を正しく評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の実施形態による画像処理装置を適用した放射線画像撮影システムの構成を示す概略ブロック図
図2】本実施形態による画像処理装置の概略構成を示す図
図3】本実施形態による画像処理装置の機能的な構成を示す図
図4】骨部画像を示す図
図5】本実施形態において用いられるニューラルネットワークの例を示す図
図6】圧迫骨折した第2腰椎を含む骨部画像を示す図
図7】人工物を含む骨部画像を示す図
図8】学習済みモデル23Aの学習に使用される教師データを示す図
図9】圧迫骨折した第3腰椎を含む骨部画像を示す図
図10】学習済みモデル24Aの学習に使用される教師データを示す図
図11】体厚に対する骨部と軟部とのコントラストの関係を示す図
図12】補正係数を取得するためのルックアップテーブルを示す図
図13】ライン毎の骨密度の代表値の導出を説明するための図
図14】骨の位置関係の評価結果の導出を説明するための図
図15】評価結果の表示画面を示す図
図16】本実施形態において行われる処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。図1は本開示の実施形態による画像処理装置を適用した放射線画像撮影システムの構成を示す概略ブロック図である。図1に示すように、本実施形態による放射線画像撮影システムは、撮影装置1と、本実施形態による画像処理装置10とを備える。
【0019】
撮影装置1は、第1の放射線検出器5および第2の放射線検出器6に、放射線源3から発せられ、被写体Hを透過したX線等の放射線を、それぞれエネルギーを変えて照射するいわゆる1ショット法によるエネルギーサブトラクションを行うための撮影装置である。撮影時においては、図1に示すように、放射線源3に近い側から順に、第1の放射線検出器5、銅板等からなる放射線エネルギー変換フィルタ7、および第2の放射線検出器6を配置して、放射線源3を駆動させる。なお、第1および第2の放射線検出器5,6と放射線エネルギー変換フィルタ7とは密着されている。
【0020】
これにより、第1の放射線検出器5においては、いわゆる軟線も含む低エネルギーの放射線による被写体Hの第1の放射線画像G1が取得される。また、第2の放射線検出器6においては、軟線が除かれた高エネルギーの放射線による被写体Hの第2の放射線画像G2が取得される。第1および第2の放射線画像は、画像処理装置10に入力される。
【0021】
第1および第2の放射線検出器5,6は、放射線画像の記録および読み出しを繰り返して行うことができるものであり、放射線の照射を直接受けて電荷を発生する、いわゆる直接型の放射線検出器を用いてもよいし、放射線を一旦可視光に変換し、その可視光を電荷信号に変換する、いわゆる間接型の放射線検出器を用いるようにしてもよい。また、放射線画像信号の読出方式としては、TFT(thin film transistor)スイッチをオン・オフさせることによって放射線画像信号が読み出される、いわゆるTFT読出方式のもの、または読取り光を照射することによって放射線画像信号が読み出される、いわゆる光読出方式のものを用いることが望ましいが、これに限らずその他のものを用いるようにしてもよい。
【0022】
次いで、本実施形態に係る画像処理装置について説明する。まず、図2を参照して、本実施形態に係る画像処理装置のハードウェア構成を説明する。図2に示すように、画像処理装置10は、ワークステーション、サーバコンピュータおよびパーソナルコンピュータ等のコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)11、不揮発性のストレージ13、および一時記憶領域としてのメモリ16を備える。また、画像処理装置10は、液晶ディスプレイ等のディスプレイ14、キーボードおよびマウス等の入力デバイス15、並びに不図示のネットワークに接続されるネットワークI/F(InterFace)17を備える。CPU11、ストレージ13、ディスプレイ14、入力デバイス15、メモリ16およびネットワークI/F17は、バス18に接続される。なお、CPU11は、本開示におけるプロセッサの一例である。
【0023】
ストレージ13は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、およびフラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としてのストレージ13には、画像処理装置10にインストールされた画像処理プログラム12が記憶される。CPU11は、ストレージ13から画像処理プログラム12を読み出してメモリ16に展開し、展開した画像処理プログラム12を実行する。
【0024】
なお、画像処理プログラム12は、ネットワークに接続されたサーバコンピュータの記憶装置、あるいはネットワークストレージに、外部からアクセス可能な状態で記憶され、要求に応じて画像処理装置10を構成するコンピュータにダウンロードされ、インストールされる。または、DVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の記録媒体に記録されて配布され、その記録媒体から画像処理装置10を構成するコンピュータにインストールされる。
【0025】
次いで、本実施形態による画像処理装置の機能的な構成を説明する。図3は、本実施形態による画像処理装置の機能的な構成を示す図である。図3に示すように、画像処理装置10は、画像取得部21、骨部画像導出部22、対象骨特定部23、評価部24および表示制御部25を備える。そして、CPU11は、画像処理プログラム12を実行することにより、画像取得部21、骨部画像導出部22、対象骨特定部23、評価部24および表示制御部25として機能する。
【0026】
画像取得部21は、撮影装置1に被写体Hのエネルギーサブトラクション撮影を行わせることにより、第1および第2の放射線検出器5,6から、被写体Hの第1の放射線画像G1および第2の放射線画像G2を取得する。第1の放射線画像G1および第2の放射線画像G2の取得に際しては、撮影線量、線質、管電圧、放射線源3と第1および第2の放射線検出器5,6の表面との距離であるSID(Source Image receptor Distance)、放射線源3と被写体Hの表面との距離であるSOD(Source Object Distance)、並びに散乱線除去グリッドの有無等の撮影条件が設定される。
【0027】
SODおよびSIDについては、後述するように体厚分布の算出に用いられる。SODについては、例えば、TOF(Time Of Flight)カメラで取得することが好ましい。SIDについては、例えば、ポテンショメーター、超音波距離計およびレーザー距離計等で取得することが好ましい。
【0028】
撮影条件は、操作者による入力デバイス15からの入力により設定すればよい。
【0029】
骨部画像導出部22は、画像取得部21が取得した第1放射線画像G1および第2放射線画像G2から、被写体Hの骨部領域が抽出された骨部画像Gbを導出する。図4には、骨部画像導出部22が導出した骨部画像Gbの一例を示す。なお、一般的に骨密度の測定には大腿骨頸部および腰椎が用いられる。このため、図4に示した骨部画像Gbは、被写体Hの大腿骨頸部および腰椎の一部を含むように撮影を行って得られた第1放射線画像G1および第2放射線画像G2により生成された骨部画像Gbを示している。
【0030】
骨部画像導出部22は、第1放射線画像G1および第2放射線画像G2に対して、下記の式(1)に示すように、相対応する画素間で重み付け減算を行うことにより、第1放射線画像G1および第2放射線画像G2に含まれる被写体Hの骨部のみが抽出された骨部画像Gbを生成する。なお、下記式(1)におけるμbは軟部および骨部の減弱係数に基づいて決定される重み付け係数であり、x、yは骨部画像Gbの各画素の座標である。なお、式(1)により導出される骨部画像Gbには、骨部のみならず、減弱係数が骨部と同程度の物体も含まれる。減弱係数が骨部と同程度の物体としては、例えば骨折等の治療のために骨部に埋め込まれた金属が挙げられる。
Gb(x,y)=G1(x,y)-μb×G2(x,y) (1)
【0031】
ここで、第1の放射線画像G1および第2の放射線画像G2の各々には、被写体Hを透過した放射線の一次線成分以外に、被写体H内において散乱された放射線に基づく散乱線成分が含まれる。このため、第1の放射線画像G1および第2の放射線画像G2から散乱線成分を除去することが好ましい。散乱線成分を除去する手法はとくに限定されないが、例えば特開2015-043959号公報に記載された方法を適用して、第1の放射線画像G1および第2の放射線画像G2から散乱線成分を除去してもよい。特開2015-043959号公報に記載された手法等を用いる場合、被写体Hの体厚分布の導出および散乱線成分を除去するための散乱線成分の導出が同時に行われる。
【0032】
以下、第1の放射線画像G1からの散乱線成分の除去について説明するが、第2の放射線画像G2からの散乱線成分の除去も同様に行うことができる。まず、骨部画像導出部22は、初期体厚分布T0(x,y)を有する被写体Hの仮想モデルを取得する。仮想モデルは、初期体厚分布T0(x,y)に従った体厚が、第1の放射線画像G1の各画素の座標位置に対応付けられた、被写体Hを仮想的に表すデータである。なお、初期体厚分布T0(x,y)を有する被写体Hの仮想モデルは、画像処理装置10のストレージ13に予め記憶されていてもよい。また、骨部画像導出部22は、撮影条件に含まれるSIDとSODに基づいて、被写体Hの体厚分布T(x、y)を算出してもよい。この場合、初期体厚分布T0(x,y)は、SIDからSODを減算することにより求めることができる。
【0033】
次に、骨部画像導出部22は、仮想モデルに基づいて、仮想モデルの撮影により得られる一次線画像を推定した推定一次線画像と、仮想モデルの撮影により得られる散乱線画像を推定した推定散乱線画像とを合成した画像を、被写体Hの撮影により得られた第1の放射線画像G1を推定した推定画像として生成する。
【0034】
次に、骨部画像導出部22は、推定画像と第1の放射線画像G1との違いが小さくなるように仮想モデルの初期体厚分布T0(x,y)を修正する。骨部画像導出部22は、推定画像と第1の放射線画像G1との違いが予め定められた終了条件を満たすまで推定画像の生成および体厚分布の修正を繰り返し行う。骨部画像導出部22は、終了条件を満たした際の体厚分布を、被写体Hの体厚分布T(x,y)として導出する。また、骨部画像導出部22は、終了条件を満たした際の散乱線成分を第1の放射線画像G1から減算することにより、第1の放射線画像G1に含まれる散乱線成分を除去する。そして、骨部画像導出部22は、散乱線成分が除去された第1および第2の放射線画像G1,G2を用いて骨部画像Gbを導出する。
【0035】
対象骨特定部23は、評価の対象となる対象骨を特定する。本実施形態においては、対象骨特定部23は、骨部画像Gbにおいて、骨折および人工物を除外して対象骨を特定する。本実施形態においては対象骨特定部23は腰椎を対象骨に特定するものとする。このために、本実施形態においては、骨折および人工物を含まない、正常な腰椎を抽出するようにニューラルネットワークを機械学習することにより構築された学習済みモデル23Aを用いる。なお、対象骨を大腿骨とする場合であっても、骨折および人工物を含まない正常な大腿骨を抽出するようにニューラルネットワークを機械学習することにより構築された学習済みモデルを用いるようにすればよい。また、骨折は骨折した部分、すなわち骨折部を意味し、「骨折を除外する」とは、骨部画像Gbにおける骨折した部分を除外すること、骨折した部分を含む領域を除外すること、あるいは骨折した部分を含む骨自体を除外することを含む。
【0036】
本実施形態において使用される学習済みモデル23Aを構築するニューラルネットワークとしては、単純パーセプトロン、多層パーセプトロン、ディープニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、ディープビリーフネットワーク、リカレントニューラルネットワーク、および確率的ニューラルネットワーク等が挙げられる。例えば、本実施形態においては、ニューラルネットワークとして畳み込みニューラルネットワークを用いるものとする。
【0037】
図5は、本実施形態において用いられるニューラルネットワークの例を示す図である。図5に示すように、ニューラルネットワーク30は、入力層31、中間層32および出力層33を備える。中間層32は、例えば、複数の畳み込み層35、複数のプーリング層36および全結合層37を備える。ニューラルネットワーク30では、出力層33の前段に全結合層37が存在している。そして、ニューラルネットワーク30では、入力層31と全結合層37との間において、畳み込み層35とプーリング層36とが交互に配置されている。
【0038】
なお、ニューラルネットワーク30の構成は図5の例に限定されるものではない。例えば、ニューラルネットワーク30は、入力層31と全結合層37との間に、1つの畳み込み層35と1つのプーリング層36とを備えるものであってもよい。
【0039】
学習済みモデル23Aは、骨折および人工物の検出のために、正常な骨のみを含む腰椎の画像を教師データとして用いて、ニューラルネットワークを機械学習することにより構築される。
【0040】
例えば、図6に示すように第2腰椎L2が圧迫骨折している場合、第2腰椎L2は体軸方向において小さくなるように変形し、さらに骨密度が上昇して正常な骨と比較して輝度が高くなる。また、図7に示すように第3腰椎L3にボルトが含まれる場合、ボルトは金属であるため、ボルトの像38は正常な骨よりも輝度が高くなる。
【0041】
学習済みモデル23Aは正常な骨の特徴を学習することにより骨部画像Gbから正常な腰椎を抽出する。図8は学習済みモデル23Aの学習に使用される教師データを示す図である。図8に示すように、教師データ40は、学習用データ41および正解データ42からなる。学習用データ41は正常な腰椎のみを含む骨部画像である。正解データ42は学習用データ41における正常な腰椎の領域をマスクした画像である。そして、このような教師データ40を多数用いてニューラルネットワークを機械学習することにより、骨部画像が入力されると正常な腰椎を抽出するように学習済みモデル23Aが構築される。
【0042】
このような学習済みモデル23Aを用いて骨部画像Gbから腰椎を抽出させた場合において、抽出された骨は骨折も人工物も含まない正常な骨となる。すなわち、このような学習済みモデル23Aを用いることにより、図6に示す骨部画像Gbのうちの第2腰椎L2以外の腰椎が抽出される。また、図7に示す骨部画像Gbのうちの人工物を含む第3腰椎L3以外の腰椎が抽出される。したがって、対象骨特定部23は、骨部画像Gbから抽出された腰椎のうち、学習済みモデル23Aにより検出された腰椎を、骨折および人工物を含まない対象骨に特定する。
【0043】
なお、骨折を抽出するあるいは人工物を含む腰椎を抽出するように学習済みモデルを構築してもよい。この場合、対象骨特定部23は、このように構築された学習済みモデルを用いて骨部画像Gbにおける骨折あるいは人工物を含む腰椎を特定し、これ以外の腰椎を対象骨として特定する。また、第1放射線画像G1または第2の放射線画像G2から、人工物のみを検出するように学習済みモデルを構築してもよい。この場合、骨部画像Gbを生成する前に人工物が存在する領域を特定しておき、骨部画像Gbを生成した後、特定しておいた領域を除外する、もしくは特定した領域を含む骨を除外して対象骨を特定すればよい。
【0044】
また、対象骨特定部23は、腰椎の形状に基づいて対象骨を特定するようにしてもよい。例えば、腰椎は正面から見た場合、体軸方向における中心線に対して左右対称な形状であるが、図9に示すように第3腰椎L3が圧迫骨折している場合、左右の対称性が失われる。このため、対象骨特定部23は、骨部画像Gbから抽出した腰椎について左右対称性を表す指標を導出し、指標に基づいて左右対称性が損なわれた腰椎を特定し、特定した腰椎以外の腰椎を対象骨に特定するようにしてもよい。ここで、抽出した腰椎の体軸方向における中心線から腰椎の左右の外側の輪郭までの距離を導出し、中心線から右方向の距離と左方向の距離との差分を左右対称性を表す指標として用いることができる。左右対称性を表す指標が予め定められたしきい値よりも大きい場合、その腰椎は骨折している可能性が高いことから対象骨には特定しないようにすることができる。なお、左右対称性を表す指標としては、体軸方向における中心線の左右の骨領域面積の差分等を用いるようにしてもよい。
【0045】
また、対象骨特定部23は、骨部画像Gbから抽出した腰椎のそれぞれについて、上側および下側の腰椎の少なくとも一方との面積の差分を導出し、差分に基づいて対象骨を特定するようにしてもよい。ここで、骨部画像Gbに含まれる腰椎の大きさは上下に隣接する腰椎の大きさとほぼ同一である。一方、圧迫骨折が発生している場合、その腰椎の高さは上下に隣接する腰椎の高さよりも小さくなる。このため、対象骨特定部23は、骨部画像Gbから抽出した腰椎のそれぞれについて例えば上側の腰椎との面積の差分を導出し、差分が予め定められたしきい値以下となった場合、その腰椎は圧迫骨折しているものとして、対象骨に特定しないようにしてもよい。
【0046】
また、対象骨特定部23は、骨部画像Gbから抽出した腰椎のそれぞれについて、高さと幅との比率を導出し、上側および下側の腰椎について導出した高さと幅との比率との比較結果に基づいて対象骨を特定するようにしてもよい。ここで、骨部画像Gbに含まれる腰椎の大きさは上下に隣接する腰椎の形状とほぼ同一である。一方、図6に示すように圧迫骨折が発生している場合、その腰椎の高さと幅との比率は正常な腰椎の高さと幅との比率とは大きく異なるものとなる。このため、対象骨特定部23は、骨部画像Gbから抽出した腰椎のそれぞれについて例えば上側の腰椎との比率の差分を導出し、差分が予め定められたしきい値以上となった場合、その腰椎は圧迫骨折しているものとして、対象骨に特定しないようにしてもよい。
【0047】
評価部24は、対象骨に基づいて被写体Hの骨の状態を表す評価結果を導出する。本実施形態において、評価部24は、骨部画像Gbにおける対象骨の領域の画像、すなわち対象骨の画素値の分布が入力されると、骨粗鬆症らしさを表す評価値を出力する学習済みモデル24Aを有する。学習済みモデル24Aは、骨粗鬆症でない患者の骨部画像から抽出された腰椎の画像(以下正常な腰椎の画像とする)および骨粗鬆症患者の腰椎の画像を教師データとして用いてニューラルネットワークを機械学習することにより構築される。図10は学習済みモデル24Aを学習する教師データの例を示す図である。図10に示すように、学習済みモデル24Aを学習するための教師データとしては、正常な腰椎を表す第1の教師データ51および骨粗鬆症の腰椎を表す第2の教師データ52が用いられる。正常な腰椎は骨梁の微細構造が密であるが、骨粗鬆症の腰椎は骨梁の微細構造が正常な腰椎と比較して粗である。
【0048】
ニューラルネットワークは第1の教師データ51が入力された場合の出力が0となるように機械学習され、第2の教師データ52が入力された場合の出力が1となるように機械学習される。これにより、入力された腰椎の画像が骨粗鬆症である場合には1に近い値の評価値が出力されるように学習済みモデル24Aが構築される。この場合、ニューラルネットワークは腰椎の画像の画素値の分布および骨梁の微細構造を学習し、これにより、腰椎の画像の画素値の分布および微細構造から骨粗鬆症らしさを表す評価値を出力するように学習済みモデル24Aが構築される。
【0049】
なお、評価部24は、学習済みモデル24Aが出力した評価値そのものを評価結果として用いてもよく、評価値をしきい値と比較することにより骨粗鬆症の有無を評価結果として用いてもよい。
【0050】
また、評価部24は、対象骨についての骨密度を導出し、骨密度に基づいて評価結果を導出するようにしてもよい。この場合、評価部24は、骨部画像Gbにおける対象骨の領域の各画素値Gb(x,y)を、基準撮影条件により取得した場合の骨部画像の画素値に変換することにより各画素に対応する骨密度B(x,y)を導出する。具体的には、評価部24は、後述するルックアップテーブル(図示省略)から取得される補正係数を用いて、骨部画像Gbにおける対象骨の領域の各画素値Gb(x,y)を補正することにより画素毎の骨密度B(x,y)を導出する。
【0051】
ここで、放射線源3における管電圧が高く、放射線源3から放射される放射線が高エネルギーであるほど、放射線画像における軟部と骨部とのコントラストが小さくなる。また、放射線が被写体Hを透過する過程において、放射線の低エネルギー成分が被写体Hに吸収され、放射線が高エネルギー化するビームハードニングが生じる。ビームハードニングによる放射線の高エネルギー化は、被写体Hの体厚が大きいほど大きくなる。
【0052】
図11は被写体Hの体厚に対する骨部と軟部とのコントラストの関係を示す図である。なお、図11においては、80kV、90kVおよび100kVの3つの管電圧における、被写体Hの体厚に対する骨部と軟部とのコントラストの関係を示している。図11に示すように、管電圧が高いほどコントラストは低くなる。また、被写体Hの体厚がある値を超えると、体厚が大きいほどコントラストは低くなる。なお、骨部画像Gbにおける骨部領域の画素値Gb(x,y)が大きいほど、骨部と軟部とのコントラストは大きくなる。このため、図11に示す関係は、骨部画像Gbにおける骨部領域の画素値Gb(x,y)が大きいほど、高コントラスト側にシフトすることとなる。
【0053】
本実施形態において、骨部画像Gbにおける、撮影時の管電圧に応じたコントラストの相違、およびビームハードニングの影響によるコントラストの低下を補正するための補正係数を取得するためのルックアップテーブル(図示省略)が、ストレージ13に記憶されている。補正係数は、骨部画像Gbの各画素値Gb(x,y)を補正するための係数である。
【0054】
図12は、ストレージ13に記憶されるルックアップテーブルの一例を示す図である。図12において、基準撮影条件を、管電圧90kVに設定したルックアップテーブルLUT1が例示されている。図12に示すようにルックアップテーブルLUT1において、管電圧が大きいほど、かつ被写体の体厚が大きいほど、大きい補正係数が設定されている。図12に示す例において、基準撮影条件が管電圧90kVであるため、管電圧が90kVで体厚が0の場合に、補正係数が1となっている。なお、図12において、ルックアップテーブルLUT1を2次元で示しているが、補正係数は骨部領域の画素値に応じて異なる。このため、ルックアップテーブルLUT1は、実際には骨部領域の画素値を表す軸が加わった3次元のテーブルとなる。
【0055】
評価部24は、被写体Hの体厚分布T(x,y)およびストレージ13に記憶された管電圧の設定値を含む撮影条件に応じた画素毎の補正係数C0(x,y)を、ルックアップテーブルLUT1から抽出する。そして、評価部24は、下記の式(2)に示すように、骨部画像Gbにおける対象骨の領域の各画素値Gb(x,y)に対して、補正係数C0(x,y)を乗算することにより、対象骨の領域の画素毎の骨密度B(x,y)を導出する。これにより、骨密度B(x,y)を画素値とする骨密度画像Bが導出される。このようにして導出された骨密度B(x,y)は、基準撮影条件である90kVの管電圧により被写体Hを撮影することにより取得され、かつビームハードニングの影響が除去された放射線画像に含まれる骨部領域の骨部の画素値を表すものとなる。
B(x,y)=C0(x,y)×Gb(x,y) (2)
【0056】
なお、評価部24は、骨部画像Gbの各画素の低周波成分を導出し、低周波成分に基づいて骨密度B(x,y)を導出してもよい。
【0057】
そして評価部24は、対象骨領域の各画素の骨密度B(x,y)の代表値を評価結果として導出する。代表値としては、合計値、平均値、中間値、最大値または最小値を用いることができる。また、対象骨が複数ある場合には対象骨毎に評価結果を導出してもよく、対象骨毎の代表値の代表値を評価結果として導出してもよい。なお、代表値が骨の状態を表す指標の一例である。
【0058】
また、骨密度の代表値を用いて骨粗鬆症の有無を判別した結果を評価結果として用いてもよい。この場合において、評価部24は、骨密度の代表値が予め定められたしきい値以下の場合に骨粗鬆症と判別するようにすればよい。ここで、骨密度がYAM値(Young Adult Mean;若年成人平均値)の70%以下のとき、骨粗鬆症と判定される。このため、しきい値としては、YAM値の70%に相当する値を用いるようにすればよい。
【0059】
ここで、対象骨領域の各画素の骨密度の対象骨領域についての総和を対象骨の評価結果として導出した場合、評価結果はその対象骨の骨量に相当する。しかしながら、対象骨の局所的な骨の輪郭が本来の輪郭からずれると骨密度の総和が変動する。一方、対象骨領域の各画素の骨密度の平均を導出した場合、対象骨の局所的な輪郭が本来の輪郭からずれていても、評価結果への影響は小さい。しかしながら、撮影時のポジショニングがずれて、撮影方向に対して腰椎が体軸方向における中心軸周りに回転すると、骨部画像Gbにおける腰椎の面積が変動したり画素値が変動したりするため、平均値が変動する。
【0060】
このため、評価部24は、対象骨領域において骨密度のx方向またはy方向のライン毎の代表値を導出し、ライン毎の代表値の代表値を評価結果として導出してもよい。例えば、図13に示すように、第3腰椎L3のx方向においては、体軸方向すなわちy方向のポジショニングのずれによる面積変動の影響を軽減するために骨密度の総和を導出し、y方向には、輪郭のずれの影響を軽減するために骨密度の総和の平均を導出し、これを評価結果として用いるようにしてもよい。なお、ライン毎の骨密度の総和の平均を導出する場合には、各ラインの骨密度の総和から大きく外れている外れ値を除外するようにしてもよい。また、ライン毎の骨密度の総和が大きすぎる、小さすぎる場合は、対象骨が正しく検出されていない可能性があるため、例えば、ライン毎の骨密度の総和の上下20%を平均の計算から除外するようにしてもよい。
【0061】
また、上述した学習済みモデル24Aを構築する際に、教師データとして骨密度画像を用いるようにしてもよい。この場合、対象骨領域の骨密度画像を入力することにより骨粗鬆症らしさを表す評価値を出力するように学習済みモデル24Aを構築するようにすればよい。
【0062】
また、評価部24は、骨密度画像における対象骨の海綿骨領域を抽出し、海綿骨領域における骨密度の分散値を評価結果として導出してもよい。ここで、海綿骨領域における骨密度の分散値は骨梁の微細構造の粗密の程度を表す評価値となる。骨密度の分散値が骨の状態を表す指標の一例である。
【0063】
また、評価部24は、対象骨と対象骨に隣接する骨との位置関係を評価結果として導出するものであってもよい。例えば図14に示すように、側湾症の患者の骨部画像Gbに関して、対象骨が腰椎L3とする。そして、評価部24は、腰椎L3の重心g3および腰椎L3の上側の腰椎L4の重心g4を導出し、重心g3,g4のx方向における位置の差分値を導出する。そして、位置の差分値が予め定められたしきい値以上の場合、対象骨の上部にある椎骨から均等に力が加わらないことから、骨折のリスクが高いとの評価結果を出力するようにしてもよい。また、差分値そのものを位置関係の評価結果として用いてもよい。差分値が骨の状態を表す指標の一例である。
【0064】
また、評価部24は、骨密度の代表値、骨密度の分散値および位置関係の評価結果(すなわち上述した重心g3,g4のx方向における位置の差分値)に基づいて、骨粗鬆症らしさを表す評価値を評価結果として導出するものであってもよい。この場合、骨密度の代表値、骨密度の分散値および位置関係の評価結果を多次元のベクトルとして使用し、骨粗鬆症であるか否かを区別する多次元平面上の境界を機械学習により設定する手法を用いることができる。この場合、骨粗鬆症の場合の骨密度の代表値、骨密度の分散値および位置関係の評価結果、並びに正常な場合の骨密度の代表値、骨密度の分散値および位置関係の評価結果を教師データとして用いてニューラルネットワークを機械学習することにより、上記多次元ベクトルから骨粗鬆症であるか否かを判別するための学習済みモデルを構築することができる。
【0065】
表示制御部25は、評価部24が導出した評価結果をディスプレイ14に表示する。図15は評価結果の表示画面を示す図である。図15に示すように、表示画面60には骨密度画像61および評価結果62が表示されている。骨密度画像61に代えて骨部画像Gbを表示してもよい。なお、評価結果62としては、骨粗鬆症の有無および対象骨についての骨密度の代表値(単位はg/cm2)が表示されている。
【0066】
図15に示すように、骨密度画像61においては評価結果を導出した対象骨が強調されている。すなわち、圧迫骨折している第2腰椎L2以外の腰椎が強調されている。なお、図15においては、対象骨にハッチングを付与することにより対象骨を強調しているが、これに限定されるものではない。対象骨を線で囲んだり、色を付与する等によって対象骨を強調するようにしてもよい。
【0067】
次いで、本実施形態において行われる処理について説明する。図16は本実施形態において行われる処理を示すフローチャートである。まず、画像取得部21が、撮影装置1に撮影を行わせてエネルギー分布が互いに異なる第1および第2の放射線画像G1,G2を取得する(ステップST1)。次いで、骨部画像導出部22が、画像取得部21が取得した第1放射線画像G1および第2放射線画像G2から、被写体Hの骨部領域を表す骨部画像Gbを導出する(ステップST2)。
【0068】
続いて、対象骨特定部23が、骨部画像Gbにおいて、骨折および人工物を除外して評価の対象となる対象骨を特定する(ステップST3)。そして、評価部24が対象骨に基づいて被写体Hの骨の状態を表す評価結果を導出する(ステップST4)。さらに、表示制御部25が、評価結果を表示し(ステップST5)、処理を終了する。
【0069】
このように、本実施形態においては、骨折および人工物を除外して対象骨を特定し、対象骨に基づいて被写体Hの骨の状態を表す評価結果を導出するようにした。このため、骨折および人工物に影響されることなく、被写体Hの骨の状態を正しく評価することができる。
【0070】
なお、評価部24は、同一被写体についての評価結果を経時で評価するようにしてもよい。例えば、骨粗鬆症の治療のために投薬を受けている患者について、過去の評価結果と最新の評価結果とを比較することにより薬効を評価するようにしてもよい。
【0071】
また、評価部24は、評価結果としてさらに骨折リスクを導出するようにしてもよい。この場合、例えば特表平09-508813号公報に記載されたように学習済みモデルを用いて骨折リスクを導出する手法を用いることができる。また、国際公開第2020/054738号に記載されたように演算式を用いて骨折確率を導出する手法等を用いることができる。
【0072】
なお、上記実施形態においては、エネルギーサブトラクション処理を行うに際し、1ショット法により第1および第2の放射線画像G1,G2を取得しているが、これに限定されるものではない。1つの放射線検出器のみ用いて撮影を2回行う、いわゆる2ショット法により第1および第2の放射線画像G1,G2を取得してもよい。2ショット法の場合、被写体Hの体動により、第1の放射線画像G1および第2の放射線画像G2に含まれる被写体Hの位置がずれる可能性がある。このため、第1の放射線画像G1および第2の放射線画像G2において、被写体の位置合わせを行った上で、本実施形態の処理を行うことが好ましい。
【0073】
また、上記実施形態においては、第1および第2の放射線検出器5,6を用いて被写体Hを撮影するシステムにおいて取得した第1および第2の放射線画像を用いて、内臓脂肪量分布を導出しているが、放射線検出器に代えて、蓄積性蛍光体シートを用いて取得した第1および第2の放射線画像G1,G2を用いて内臓脂肪量分布を導出するようにしてもよい。この場合、2枚の蓄積性蛍光体シートを重ねて被写体Hを透過した放射線を照射して、被写体Hの放射線画像情報を各蓄積性蛍光体シートに蓄積記録し、各蓄積性蛍光体シートから放射線画像情報を光電的に読み取ることにより第1および第2の放射線画像G1,G2を取得すればよい。なお、蓄積性蛍光体シートを用いて第1および第2の放射線画像G1,G2を取得する場合にも、2ショット法を用いるようにしてもよい。
【0074】
また、上記実施形態における放射線は、とくに限定されるものではなく、X線の他、α線またはγ線等を用いることができる。
【0075】
また、上記実施形態において、例えば、画像取得部21、骨部画像導出部22、対象骨特定部23、評価部24および表示制御部25といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device :PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0076】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせまたはCPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0077】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントおよびサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアとの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0078】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(Circuitry)を用いることができる。
【0079】
以下、本開示の付記項を記載する。
(付記項1)
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
被写体の少なくとも骨成分が抽出された骨部画像において、骨折および人工物を除外して評価の対象となる対象骨を特定し、
前記対象骨に基づいて前記被写体の骨の状態を表す評価結果を導出する画像処理装置。
(付記項2)
前記プロセッサは、エネルギー分布が異なる放射線により前記被写体を撮影することにより取得された第1の放射線画像および第2の放射線画像から前記骨部画像を導出する付記項1に記載の画像処理装置。
(付記項3)
前記プロセッサは、前記対象骨の骨密度、前記対象骨の微細構造の情報、前記対象骨に隣接する骨との関係性の少なくとも1つを前記骨の状態を表す指標として導出し、前記指標に基づいて前記評価結果を導出する付記項1または2に記載の画像処理装置。
(付記項4)
前記プロセッサは、前記対象骨における前記骨密度の代表値を前記指標として導出する付記項3に記載の画像処理装置。
(付記項5)
前記プロセッサは、前記対象骨における予め定められた方向の複数のライン毎に前記骨密度の前記代表値を導出し、前記ライン毎の前記代表値の代表値を前記指標として導出する付記項4に記載の画像処理装置。
(付記項6)
前記プロセッサは、前記対象骨が強調された前記骨部画像および前記評価結果を表示する付記項1から5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
(付記項7)
被写体の少なくとも骨成分が抽出された骨部画像において、骨折および人工物を除外して評価の対象となる対象骨を特定し、
前記対象骨に基づいて前記被写体の骨の状態を表す評価結果を導出する画像処理方法。
(付記項8)
被写体の少なくとも骨成分が抽出された骨部画像において、骨折および人工物を除外して評価の対象となる対象骨を特定する手順と、
前記対象骨に基づいて前記被写体の骨の状態を表す評価結果を導出する手順とをコンピュータに実行させる画像処理プログラム。
【符号の説明】
【0080】
1 撮影装置
3 放射線源
5、6 放射線検出器
7 放射線エネルギー変換フィルタ
10 画像処理装置
11 CPU
12 画像処理プログラム
13 ストレージ
14 ディスプレイ
15 入力デバイス
16 メモリ
17 ネットワークI/F
18 バス
21 画像取得部
22 骨部画像導出部
23 対象骨特定部
24 評価部
25 表示制御部
30 ニューラルネットワーク
31 入力層
32 中間層
33 出力層
35 畳み込み層
36 プーリング層
38 ボルトの像
40 教師データ
41 学習用データ
42 正解データ
51 第1の教師データ
52 第2の教師データ
60 評価結果の表示画面
61 骨密度画像
62 評価結果
G1 第1の放射線画像
G2 第2の放射線画像
Gb 骨部画像
g3,g4 重心
H 被写体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16