(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041095
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】音響信号出力装置
(51)【国際特許分類】
G10K 11/175 20060101AFI20240319BHJP
G10K 11/178 20060101ALI20240319BHJP
H04R 1/26 20060101ALI20240319BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G10K11/175
G10K11/178 150
H04R1/26
H04R1/10 101Z
H04R1/10 104Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145730
(22)【出願日】2022-09-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)ウェブサイト掲載日 2022年7月26日 ウェブサイトのアドレス ウェブサイト名:GREEN未来を企画するクラウドファンディング URL:https://greenfunding.jp/lab/projects/6208
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522237542
【氏名又は名称】NTTソノリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】加古 達也
(72)【発明者】
【氏名】千葉 大将
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 潤
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 広明
(72)【発明者】
【氏名】小林 和則
【テーマコード(参考)】
5D005
5D018
5D061
【Fターム(参考)】
5D005BA08
5D005BA12
5D018AC03
5D061FF01
(57)【要約】
【課題】周囲への音漏れを抑制可能な外耳道を密閉しない音響信号出力装置を提供する。
【解決手段】再生音響信号の周波数帯域が高周波数帯域と低周波数帯域とに分けられており、再生音響信号のうち高周波数帯域側の音響信号を放出する第1ドライバーユニットと、第1ドライバーユニットを内部に収容している筐体と、第1ドライバーユニットよりもサイズが大きく、再生音響信号のうち低周波数帯域側の音響信号を放出する第2ドライバーユニットと、を有する。第1,2ドライバーユニットの一方側から音響信号を第1,3音響信号が放出され、他方側から音響信号を第2,4音響信号が放出される。筐体の壁部には、第1音響信号を外部に導出する第1音孔と第2音響信号を外部に導出する第2音孔とが設けられている。放出された第3,4音響信号が第1,3音響信号の音漏れ成分を相殺する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響信号出力装置であって、
再生音響信号の周波数帯域が高周波数帯域と低周波数帯域とに分けられており、前記再生音響信号のうち前記高周波数帯域側の音響信号を放出する第1ドライバーユニットと、
前記第1ドライバーユニットを内部に収容している筐体と、
前記第1ドライバーユニットよりもサイズが大きく、前記再生音響信号のうち前記低周波数帯域側の音響信号を放出する第2ドライバーユニットと、を有し、
前記第1ドライバーユニットから一方側に放出される音響信号を第1音響信号とし、前記第1ドライバーユニットから他方側に放出される音響信号を第2音響信号とし、
前記第2ドライバーユニットから一方側に放出される音響信号を第3音響信号とし、前記第2ドライバーユニットから他方側に放出される音響信号を第4音響信号とし、
前記筐体の壁部には、前記第1音響信号を外部に導出する単数または複数の第1音孔と、前記第2音響信号を外部に導出する単数または複数の第2音孔とが設けられており、
前記第1音孔から前記第1音響信号が放出され、前記第2音孔から前記第2音響信号が放出され、前記第2ドライバーユニットから前記第3音響信号および前記第4音響信号が放出された場合における、前記第1音響信号および前記第3音響信号が到達する予め定めた第1地点を基準とした前記第1地点よりも前記音響信号出力装置から遠い第2地点での前記第1音響信号および前記第3音響信号の減衰率が、
前記第1地点を基準とした前記第2地点での音響信号の空気伝搬による減衰率よりも小さい予め定めた値
以下となるように設計されている、または、
前記第1地点を基準とした前記第2地点での前記第1音響信号および前記第3音響信号の減衰量が、
前記第1地点を基準とした前記第2地点での音響信号の空気伝搬による減衰量よりも大きい予め定めた値
以上となるように設計されている、
音響信号出力装置。
【請求項2】
請求項1の音響信号出力装置であって、
前記第1音孔または複数の前記第1音孔の中央が、特定の軸上または前記軸の近傍に配置されており、
前記第1ドライバーユニットは、前記軸に沿った一方側に前記第1音響信号を放出し、前記軸に沿った他方側に前記第2音響信号を放出する第1振動板を有し、
前記第2ドライバーユニットは、前記軸に沿った一方側に前記第3音響信号を放出し、前記軸に沿った他方側に前記第4音響信号を放出する第2振動板を有し、
前記第2振動板は、前記軸上または前記軸の近傍に配置されている、
音響信号出力装置。
【請求項3】
請求項1の音響信号出力装置であって、
前記第1音孔は、前記第1ドライバーユニットの第1方向側に配置されており、
前記第2ドライバーユニットは、前記筐体の外部空間に配置され、前記第1ドライバーユニットの第2方向側に配置されており、
前記第2方向は、前記第1方向の逆方向または略逆方向である、
音響信号出力装置。
【請求項4】
請求項3の音響信号出力装置であって、
貫通孔を有する遮蔽板をさらに有し、
前記遮蔽板は、前記筐体の外部空間における前記第2音孔よりも前記第1方向側に配置されており、
前記第1音孔または複数の前記第1音孔の中央は、特定の軸上または前記軸の近傍に配置されており、
前記貫通孔は、前記軸上または前記軸の近傍に配置されている、
音響信号出力装置。
【請求項5】
請求項1の音響信号出力装置であって、
前記第1ドライバーユニットは、一方側に前記第1音響信号を放出し、他方側に前記第2音響信号を放出する第1振動板を有し、
前記第2ドライバーユニットは、一方側に前記第3音響信号を放出し、他方側に前記第4音響信号を放出する第2振動板を有し、
前記第2振動板の径は前記第1振動板の径よりも大きく、
前記第1振動板の一方側から放出された前記第1音響信号が前記第2地点に到達するまでの伝搬距離と、前記第1振動板の他方側から放出された前記第2音響信号が前記第2地点に到達するまでの伝搬距離との差は、
前記第2振動板の一方側から放出された前記第3音響信号が前記第2地点に到達するまでの伝搬距離と、前記第2振動板の他方側から放出された前記第4音響信号が前記第2地点に到達するまでの伝搬距離との差よりも小さい、
音響信号出力装置。
【請求項6】
請求項1の音響信号出力装置であって、
前記第2音響信号は、前記第1音響信号の逆位相信号または逆位相信号の近似信号であり、
前記第4音響信号は、前記第3音響信号の逆位相信号または逆位相信号の近似信号であり、
前記第3音響信号は、前記第1音響信号の同位相信号または同位相信号の近似信号であり、
前記第4音響信号は、前記第2音響信号の同位相信号または同位相信号の近似信号である、音響信号出力装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れかの音響信号出力装置であって、
前記第2ドライバーユニットを内部に収容している第2筐体をさらに有し、
前記第2筐体の壁部には、前記第3音響信号を外部に導出する単数または複数の第3音孔と、前記第4音響信号を外部に導出する単数または複数の第4音孔とが設けられており、
前記第3音孔の開口面積は前記第1音孔の開口面積よりも大きい、音響信号出力装置。
【請求項8】
請求項1から6の何れかの音響信号出力装置であって、
前記第2ドライバーユニットを内部に収容している第2筐体をさらに有し、
前記第2筐体の壁部には、前記第3音響信号を外部に導出する単数または複数の第3音孔と、前記第4音響信号を外部に導出する単数または複数の第4音孔とが設けられており、
前記第4音孔の開口面積に対する前記第3音孔の開口面積の比率は、前記第2音孔の開口面積に対する前記第1音孔の開口面積の比率よりも大きい、音響信号出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響信号出力装置に関し、特に外耳道を密閉しない音響信号出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イヤホンやヘッドホンの装着による耳への負担増加が問題となっている。耳への負担を軽減するデバイスとして、外耳道を塞がないオープンイヤー型(開放型)のイヤホンやヘッドホンが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“WHAT ARE OPEN-EAR HEADPHONES?”、[online]、Bose Corporation、[2021年9月13日検索]、インターネット<https://www.bose.com/en_us/better_with_bose/open-ear-headphones.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、オープンイヤー型のイヤホンやヘッドホンは周囲への音漏れが大きいという問題がある。このような問題は、オープンイヤー型のイヤホンやヘッドホンに限られたものではなく、外耳道を密閉しない音響信号出力装置に共通する問題である。
【0005】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、周囲への音漏れを抑制可能な外耳道を密閉しない音響信号出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
再生音響信号の周波数帯域が高周波数帯域と低周波数帯域とに分けられており、再生音響信号のうち高周波数帯域側の音響信号を放出する第1ドライバーユニットと、第1ドライバーユニットを内部に収容している筐体と、第1ドライバーユニットよりもサイズが大きく、再生音響信号のうち低周波数帯域側の音響信号を放出する第2ドライバーユニットと、を有する音響信号出力装置が提供される。第1ドライバーユニットから一方側に放出される音響信号を第1音響信号とし、第1ドライバーユニットから他方側に放出される音響信号を第2音響信号とし、第2ドライバーユニットから一方側に放出される音響信号を第3音響信号とし、第2ドライバーユニットから他方側に放出される音響信号を第4音響信号とする。筐体の壁部には、第1音響信号を外部に導出する単数または複数の第1音孔と、第2音響信号を外部に導出する単数または複数の第2音孔とが設けられている。ここで、第1音孔から第1音響信号が放出され、第2音孔から第2音響信号が放出され、第2ドライバーユニットから第3音響信号および第4音響信号が放出された場合における、第1音響信号および第3音響信号が到達する予め定めた第1地点を基準とした第1地点よりも音響信号出力装置から遠い第2地点での第1音響信号および第3音響信号の減衰率が、第1地点を基準とした第2地点での音響信号の空気伝搬による減衰率よりも小さい予め定めた値以下となるように設計されている、または、第1地点を基準とした第2地点での第1音響信号および第3音響信号の減衰量が、第1地点を基準とした第2地点での音響信号の空気伝搬による減衰量よりも大きい予め定めた値以上となるように設計されている。
【発明の効果】
【0007】
この構造により、周囲への音漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、各実施形態のベースとなる音響信号出力装置の構成を例示した透過斜視図である。
【
図2】
図2Aは、各実施形態のベースとなる音響信号出力装置の構成を例示した透過平面図である。
図2Bは、各実施形態のベースとなる音響信号出力装置の構成を例示した透過正面図である。
図2Cは、各実施形態のベースとなる音響信号出力装置の構成を例示した底面図である。
【
図4】
図4は、音孔の配置を例示するための概念図である。
【
図5】
図5Aは、各実施形態のベースとなる音響信号出力装置の使用状態を例示するための図である。
図5Bは、各実施形態のベースとなる音響信号出力装置から発せられた音響信号の観測条件を例示するための図である。
【
図6】
図6は、
図5Bの位置P1で観測された音響信号の周波数特性を例示したグラフである。
【
図7】
図7は、
図5Bの位置P2で観測された音響信号の周波数特性を例示したグラフである。
【
図8】
図8は、位置P1で観測された音響信号と位置P2で観測された音響信号との差分例示したグラフである。
【
図9】
図9Aおよび
図9Bは音孔の面積比と音漏れとの関係を例示したグラフである。
【
図10】
図10は、第1実施形態の音響信号出力装置の構成を例示した透過斜視図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態の音響信号出力装置の構成を例示した透過平面図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態の音響信号出力装置の構成を例示した透過正面図である。
【
図13】
図13は、音孔およびドライバーユニットの配置を例示するための概念図である。
【
図14】
図14Aは、第1実施形態の音響信号出力装置の使用状態を例示するための図である。
図14Bは、入力信号を高周波数帯域信号と低周波数帯域信号に分離する信号分離装置の機能構成を例示するための図である。
【
図15】
図15は、第1実施形態の音響信号出力装置から発せられた音響信号の観測条件を例示するための図である。
【
図16】
図16Aは、
図15の位置P1で観測された音響信号の周波数特性を例示し、
図16Bは、
図15の位置P2で観測された音響信号の周波数特性を例示している。「2way」は、再生音響信号の周波数帯域が高周波数帯域と低周波数帯域とに分けられており、サイズの小さなドライバーユニットから高周波数帯域側の音響信号を放出し、サイズの大きなドライバーユニットから低周波数帯域側の音響信号を放出した場合の周波数特性を例示している。「WF Th.」は、周波数帯域を分けることなく、サイズの大きなドライバーユニットのみから音響信号を放出した場合の周波数特性を例示している。「TW Th.」は、周波数帯域を分けることなく、サイズの小さなドライバーユニットのみから音響信号を放出した場合の周波数特性を例示している。
【
図17】
図17Aは、
図15の位置P1で観測された音響信号の周波数特性を例示し、
図17Bは、
図15の位置P2で観測された音響信号の周波数特性を例示している。「2way」は、再生音響信号の周波数帯域が高周波数帯域と低周波数帯域とに分けられており、サイズの小さなドライバーユニットから高周波数帯域側の音響信号を放出し、サイズの大きなドライバーユニットから低周波数帯域側の音響信号を放出した場合の周波数特性を例示している。「WF NW」は、再生音響信号の周波数帯域が高周波数帯域と低周波数帯域とに分けられており、サイズの大きなドライバーユニットのみから低周波数帯域側の音響信号を放出した場合の周波数特性を例示している。「TW NW」は、再生音響信号の周波数帯域が高周波数帯域と低周波数帯域とに分けられており、サイズの小さなドライバーユニットのみから高周波数帯域側の音響信号を放出した場合の周波数特性を例示している。
【
図18】
図18は、遮蔽板を有する音響信号出力装置の構成を例示した透過平面図である。
【
図19】
図19は、遮蔽板を有する音響信号出力装置の構成を例示した透過正面図である。
【
図20】
図20は、音孔およびドライバーユニットの配置の変形例を例示するための概念図である。
【
図21】
図21は、音孔およびドライバーユニットの配置の変形例を例示するための概念図である。
【
図22】
図22は、音孔およびドライバーユニットの配置の変形例を例示するための概念図である。
【
図23】
図23は、音孔およびドライバーユニットの配置の変形例を例示するための概念図である。
【
図24】
図24は、第4実施形態の音響信号出力装置の構成を例示した透過斜視図である。
【
図25】
図25は、第4実施形態の音響信号出力装置の構成を例示した透過平面図である。
【
図26】
図26は、第4実施形態の音響信号出力装置の構成を例示した透過正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
[ベースとなる構成]
まず、各実施形態のベースとなる音響信号出力装置について説明する。
<構成>
各実施形態のベースとなる音響信号出力装置1は、利用者の外耳道を密閉せずに装着される音響聴取用の装置(例えば、オープンイヤー型(開放型)のイヤホン、ヘッドホン、設置型スピーカ、埋め込み型スピーカなど)である。
図1、
図2Aから
図2C、および
図3Aから
図3Cに例示するように、音響信号出力装置1は、再生装置から出力された出力信号(音響信号を表す電気信号)を音響信号に変換して出力するドライバーユニット11と、ドライバーユニット11を内部に収容している筐体12とを有する。
【0010】
<ドライバーユニット11>
ドライバーユニット(スピーカードライバーユニット、ドライバー)11は、入力された出力信号に基づく音響信号AC1第1音響信号)を一方側(D1方向側)へ放出(放音)し、音響信号AC1の逆位相信号(位相反転信号)または逆位相信号の近似信号である音響信号AC2(第2音響信号)を他方側(D2方向側)に放出する装置(スピーカー機能を持つ装置)である。すなわち、ドライバーユニット11から一方側(D1方向側)へ放出される音響信号を音響信号AC1(第1音響信号)と呼び、ドライバーユニット11から他方側(D2方向側)に放出される音響信号を音響信号AC2(第2音響信号)と呼ぶことにする。例えば、ドライバーユニット11は、振動によって一方の面113aから音響信号AC1をD1方向側に放出し、この振動によって他方の面113bから音響信号AC2をD2方向側に放出する振動板113を含む(
図2B)。この例のドライバーユニット11は、入力された出力信号に基づいて振動板113が振動することで、音響信号AC1を一方側の面111からD1方向側へ放出し、音響信号AC1の逆位相信号または逆位相信号の近似信号である音響信号AC2を他方側の側112からD2方向側へ放出する。すなわち、音響信号AC2は、音響信号AC1の放出に伴って副次的に放出されるものである。なお、D2方向(他方側)は、例えばD1方向(一方側)の逆方向であるが、D2方向が厳密にD1方向の逆方向である必要はなく、D2方向がD1方向と異なっていればよい。一方側(D1方向)と他方側(D2方向)との関係は、ドライバーユニット11の方式や形状に依存する。また、ドライバーユニット11の方式や形状によって、音響信号AC2が厳密に音響信号AC1の逆位相信号となる場合もあれば、音響信号AC2が音響信号AC1の逆位相信号の近似信号となる場合がある。例えば、音響信号AC1の逆位相信号の近似信号は、(1)音響信号AC1の逆位相信号の位相をシフトして得られる信号であってもよいし、(2)音響信号AC1の逆位相信号の振幅を変化(増幅または減衰)させて得られる信号であってもよいし、(3)音響信号AC1の逆位相信号の位相をシフトし、さらに振幅を変化させて得られる信号であってもよい。音響信号AC1の逆位相信号とその近似信号との位相差は、音響信号AC1の逆位相信号の一周期のδ
1%以下であることが望ましい。δ
1%の例は1%,3%,5%,10%,20%などである。また、音響信号AC1の逆位相信号の振幅とその近似信号の振幅との差分は、音響信号AC1の逆位相信号の振幅のδ
2%以下であることが望ましい。δ
2%の例は1%,3%,5%,10%,20%などである。なお、ドライバーユニット11の方式としては、ダイナミック型、バランスドアーマチェア型、ダイナミック型とバランスドアーマチュア型のハイブリッド型、コンデンサー型などを例示できる。また、ドライバーユニット11や振動板113の形状に限定はない。ここでは、説明の簡略化のため、ドライバーユニット11の外形が両端面を持つ略円筒形状であり、振動板113が略円盤形状である例を示すが、これは本発明を限定するものではない。例えば、ドライバーユニット11の外形が直方体形状などであってもよいし、振動板113がドーム形状などであってもよい。また、音響信号の例は、音楽、音声、効果音、環境音などの音である。
【0011】
<筐体12>
筐体12は、外側に壁部を持つ中空の部材であり、壁部に音孔121a,123aが設けられており、内部にドライバーユニット11を収納している。例えば、ドライバーユニット11は、筐体12内部のD1方向側の端部に固定されている。しかし、これは本発明を限定するものではない。筐体12の形状にも限定はないが、例えば、筐体12の形状が、D1方向に沿って伸びる軸線A1を中心とした回転対称(線対称)または略回転対称であることが望ましい。これにより、筐体12から放出される音のエネルギーの方向ごとのばらつきが小さくなるように音孔123a(詳細は後述)を設けることが容易となる。その結果、各方向に均一に音漏れを軽減することが容易になる。例えば、筐体12は、ドライバーユニット11の一方側(D1方向側)に配置された壁部121である第1端面と、ドライバーユニット11の他方側(D2方向側)に配置された壁部122である第2端面と、第1端面と第2端面とで挟まれた空間を、第1端面と第2端面とを通る軸線A1を中心に取り囲む壁部123である側面とを有する(
図2B,
図3B)。ここでは、説明の簡略化のため、筐体12が両端面を持つ略円筒形状である例を示す。例えば、壁部121と壁部122との間隔が10mmであり、壁部121,122が半径10mmの円形である。しかし、これらは一例であって本発明を限定するものではない。例えば、筐体12が、端部に壁部を持つ略ドーム型形状であってもよいし、中空の略立方体形状であってもよい、その他の立体形状であってもよい。また、筐体12を構成する材質にも限定はない。筐体12が合成樹脂や金属などの剛体によって構成されていてもよいし、ゴムなどの弾性体によって構成されていてもよい。以上のようにドライバーユニット11を内部に収容した筐体12は、例えば、エンクロージャ型のツイータースピーカーとして機能する。
【0012】
<音孔121a,123a>
上述のように、筐体12の壁部には、ドライバーユニット11から放出された音響信号AC1(第1音響信号)を外部に導出する音孔121a(第1音孔)と、ドライバーユニット11から放出された音響信号AC2(第2音響信号)を外部に導出する音孔123a(第2音孔)とが設けられている。音孔121aおよび音孔123aは、例えば、筐体12の壁部を貫通する貫通孔であるが、これは本発明を限定するものではない。音響信号AC1および音響信号AC2をそれぞれ外部に導出できるのであれば、音孔121aおよび音孔123aが貫通孔でなくてもよい。
【0013】
音孔121aから放出された音響信号AC1は利用者の外耳道に届き、利用者に聴取される。一方、音孔123aからは、音響信号AC1の逆位相信号または逆位相信号の近似信号である音響信号AC2が放出される。この音響信号AC2の一部は、音孔121aから放出された音響信号AC1の一部(音漏れ成分)を相殺する。すなわち、音孔121a(第1音孔)から音響信号AC1(第1音響信号)が放出され、音孔123a(第2音孔)から音響信号AC2(第2音響信号)が放出されることで、位置P1(第1地点)を基準とした位置P2(第2地点)での音響信号AC1(第1音響信号)の減衰率η11を予め定めた値ηth以下とすることができたり、位置P1(第1地点)を基準とした位置P2(第2地点)での音響信号AC1(第1音響信号)の減衰量η12を予め定めた値ωth以上とできたりする。ここで、位置P1(第1地点)は、音孔121a(第1音孔)から放出された音響信号AC1(第1音響信号)が到達する予め定められた地点である。一方、位置P2(第2地点)は、音響信号出力装置1からの距離が位置P1(第1地点)よりも遠い予め定められた地点である。予め定めた値ηthは、位置P1(第1地点)を基準とした位置P2(第2地点)での任意または特定の音響信号(音)の空気伝搬による減衰率η21よりも小さい値(低い値)である。また、予め定めた値ωthは、位置P1(第1地点)を基準とした位置P2(第2地点)での任意または特定の音響信号(音)の空気伝搬による減衰量η22よりも大きい値である。すなわち、音響信号出力装置1は、減衰率η11が、減衰率η21よりも小さい予め定めた値ηth以下となるように設計されているか、または、減衰量η12が、減衰量η22よりも大きい予め定めた値ωth以上となるように設計されている。なお、音響信号AC1は位置P1から位置P2まで空気伝搬され、この空気伝搬と音響信号AC2とに起因して減衰する。減衰率η11は、位置P1での音響信号AC1の大きさAMP1(AC1)に対する、空気伝搬と音響信号AC2とに起因して減衰した位置P2での音響信号AC1の大きさAMP2(AC1)の比率(AMP2(AC1)/AMP1(AC1))である。また、減衰量η12は、大きさAMP1(AC1)と大きさAMP2(AC1)との差分(|AMP1(AC1)-AMP2(AC1)|)である。一方、音響信号AC2を想定しない場合、位置P1から位置P2まで空気伝搬される任意または特定の音響信号ACarは、音響信号AC2に起因することなく、空気伝搬に起因して減衰する。減衰率η21は、位置P1での音響信号ACarの大きさAMP1(ACar)に対する、空気伝搬に起因して減衰(音響信号AC2に起因することなく減衰)した位置P2での音響信号ACarの大きさAMP2(ACar)の比率(AMP2(ACar)/AMP1(ACar))である。また、減衰量η22は、大きさAMP1(ACar)と大きさAMP2(ACar)との差分(|AMP1(ACar)-AMP2(ACar)|)である。なお、音響信号の大きさの例は、音響信号の音圧または音響信号のエネルギーなどである。また「音漏れ成分」とは、例えば、音孔121aから放出された音響信号AC1のうち、音響信号出力装置1を装着した利用者以外の領域(例えば、音響信号出力装置1を装着した利用者以外のヒト)に到来する可能性が高い成分を意味する。例えば、「音漏れ成分」は、音響信号AC1のうち、D1方向以外の方向に伝搬する成分を意味する。例えば、音孔121aからは主に音響信号AC1の直接波が放出され、第2音孔からは主に第2音響信号の直接波が放出される。音孔121aから放出された音響信号AC1の直接波の一部(音漏れ成分)は、音孔123aから放出された音響信号AC2の直接波の少なくとも一部と干渉することで相殺される。ただし、これは本発明を限定するものではなく、この相殺は直接波以外でも生じ得る。すなわち、音孔121aから放出された音響信号AC1の直接波および反射波の少なくとも一方である音漏れ成分が、音孔123aから放出された音響信号AC2の直接波および反射波の少なくとも一方によって相殺されることがある。これにより、音漏れを抑制できる。
【0014】
音孔121a,123aの配置構成を例示する。
ここで例示する音孔121a(第1音孔)は、ドライバーユニット11の一方側(音響信号AC1が放出される側であるD1方向側)に配置された壁部121の領域AR1(第1領域)に設けられている(
図1,
図2A,
図2B,
図3B)。すなわち、音孔121aは軸線A1に沿ったD1方向(第1方向)を向いて開口している。また、ここで例示する音孔123a(第2音孔)は、筐体12の壁部121の領域AR1(第1領域)とドライバーユニット11のD2方向側(音響信号AC2が放出される側である他方側)に配置された壁部122の領域AR2(第2領域)との間の領域ARに接する壁部123の領域AR3に設けられている。すなわち、筐体12の中央を基準とし、D1方向(第1方向)とD1方向の逆方向との間の方向をD12方向(第2方向)とすると(
図3B)、音孔121a(第1音孔)は、筐体12のD1方向側(第1方向側)に設けられており、音孔123a(第2音孔)は、筐体12のD12方向側(第2方向側)に設けられている。例えば、筐体12が、ドライバーユニット11の一方側(D1方向側)に配置された壁部121である第1端面と、ドライバーユニット11の他方側(D2方向側)に配置された壁部122である第2端面と、第1端面と第2端面とで挟まれた空間を、第1端面と第2端面とを通る音響信号AC1の放出方向(D1方向)に沿った軸線A1を中心に取り囲む壁部123である側面とを有する場合(
図2B,
図3B)、音孔121a(第1音孔)は第1端面に設けられており、音孔123a(第2音孔)は側面に設けられている。またこの例では、筐体12の壁部122側には音孔を設けない。筐体12の壁部122側に音孔を設けると、筐体12から放出される音響信号AC2の音圧レベルが音響信号AC1の音漏れ成分を相殺するために必要なレベルを超えてしまい、その過剰分が音漏れとして知覚されてしまうからである。
【0015】
図2A等に例示するように、ここで例示する音孔121aは、音響信号AC1の放出方向(D1方向)に沿った軸線A1上またはその近傍に配置されている。この例の軸線A1は、筐体12のドライバーユニット11の一方側(D1方向側)に配置された壁部121の領域AR1(第1領域)の中央または当該中央の近傍を通る。例えば、軸線A1は、筐体12の中央領域を通ってD1方向に延びる軸線である。すなわち、この例の音孔121aは、筐体12の壁部121の領域AR1の中央位置に設けられている。この例では、説明の簡略化のため、音孔121aの開放端の縁部の形状が円である(開放端が円形である)例を示す。このような音孔121aの半径は、例えば3.5mmである。しかし、これは本発明を限定しない。例えば、音孔121aの開放端の縁部の形状が楕円、四角形、三角形などその他の形状であってもよい。また、音孔121aの開放端が網目状になっていてもよい。言い換えると、音孔121aの開放端が複数の孔によって構成されていてもよい。またこの例では、説明の簡略化のため、筐体12の壁部121の領域AR1(第1領域)に1個の音孔121aが設けられている例を示す。しかし、これは本発明を限定しない。例えば、筐体12の壁部121の領域AR1(第1領域)に2個以上の音孔121aが設けられていてもよい。
【0016】
音孔123a(第2音孔)は、例えば、以下の観点を考慮した配置であることが望ましい。
(1)位置の観点:相殺しようとする音響信号AC1の音漏れ成分の伝搬経路に、音孔123aから放出された音響信号AC2の伝搬経路が重なるように音孔123aを配置する。
(2)面積の観点:音孔123aの開口面積に応じ、音孔123aから放出される音響信号AC2の伝搬領域および筐体12の周波数特性が異なる。また、筐体12の周波数特性は音孔123aから放出される音響信号AC2の周波数特性、すなわち各周波数での振幅に影響を与える。このような音孔123aから放出される音響信号AC2の伝搬領域および周波数特性を考慮し、音漏れ成分を相殺しようとする領域において、音漏れ成分が音孔123aから放出される音響信号AC2によって相殺されるように、音孔123aの開口面積を決定する。
以上の観点から、例えば、音孔123a(第2音孔)は、以下のように構成されることが望ましい。
例えば、
図2B,
図3A,
図3Cに例示するように、音孔123a(第2音孔)は、音響信号AC1(第1音響信号)の放出方向に沿った軸線A1を中心とした円周(円)C1に沿って複数設けられていることが望ましい。複数の音孔123aを円周C1に沿って設けた場合、音響信号AC2は音孔123aから外部に放射状(軸線A1を中心とした放射状)に放出される。ここで、音響信号AC1の音漏れ成分も音孔121aから外部に放射状(軸線A1を中心とした放射状)に放出される。そのため、複数の音孔123aを円周C1に沿って設けることで、音響信号AC2によって音響信号AC1の音漏れ成分を適切に相殺できる。ここでは、説明の簡略化のため、複数の音孔123aが円周C1上に設けられている例を示す。しかし、複数の音孔123aは円周C1に沿って設けられていればよく、必ずしも、すべての音孔123aが厳密に円周C1上に配置されていなくてもよい。
【0017】
また好ましくは、円周C1が複数の単位円弧領域に等分された場合に、単位円弧領域の何れかである第1円弧領域に沿って設けられている音孔123a(第2音孔)の開口面積の総和は、第1円弧領域を除く単位円弧領域の何れかである第2円弧領域に沿って設けられている音孔123a(第2音孔)の開口面積の総和と同一または略同一である。例えば、
図4に例示するように、円周C1が4個の単位円弧領域C1-1,…,C1-4に等分された場合、単位円弧領域C1-1,…,C1-4の何れかである第1円弧領域(例えば、単位円弧領域C1-1)に沿って設けられている音孔123a(第2音孔)の開口面積の総和は、第1円弧領域を除く単位円弧領域の何れかである第2円弧領域(例えば、単位円弧領域C1-2)に沿って設けられている音孔123a(第2音孔)の開口面積の総和と同一または略同一である。なお、ここでは説明の簡略化のために、円周C1が4個の単位円弧領域C1-1,…,C1-4に等分された例を示したが、これは本発明を限定するものではない。また、「α1とα2とが略同一」とは、α1とα2との差分がα1のβ%以下であることを意味する。β%の例は3%,5%,10%などである。これにより、第1円弧領域に沿って設けられている音孔123aから放出される音響信号AC2の音圧分布と、第2円弧領域に沿って設けられている音孔123aから放出される音響信号AC2の音圧分布とが、軸線A1に対して点対称または略点対称となる。好ましくは、各単位円弧領域に沿って設けられている音孔123a(第2音孔)の開口面積の単位円弧領域ごとの総和は、全て同一または略同一である。これにより、音孔123aから放出される音響信号AC2の音圧分布が軸線A1に対して点対称または略点対称となる。これにより、音響信号AC2によって音響信号AC1の音漏れ成分をより適切に相殺できる。
【0018】
より好ましくは、複数の音孔123aは、同一形状、同一サイズ、同一間隔で円周C1に沿って設けられていることが望ましい。例えば、横幅4mm、高さ3.5mmの複数の音孔123aの同一形状、同一サイズ、同一間隔で円周C1に沿って設けられている。複数の音孔123aが、同一形状、同一サイズ、同一間隔で円周C1に沿って設けられている場合、音響信号AC2によって音響信号AC1の音漏れ成分をより適切に相殺できる。しかし、これは本発明を限定するものではない。
【0019】
また好ましくは、音孔123a(第2音孔)は、ドライバーユニット11の他方側(D2方向側)に位置する領域ARに接する壁部に設けられている(
図3B)。これにより、ドライバーユニット11の他方側から放出される音響信号AC2の直接波が効率よく音孔123aから外部へ導出される。その結果、音響信号AC2によって音響信号AC1の音漏れ成分をより適切に相殺できる。
【0020】
ここでは、説明の簡略化のため、音孔123aの開放端の縁部の形状が四角形である場合(開放端が方形である場合)を例示するが、これは本発明を限定しない。例えば、音孔123aの開放端の縁部の形状が円、楕円、三角形などその他の形状であってもよい。また、音孔123aの開放端が網目状になっていてもよい。言い換えると、音孔123aの開放端が複数の孔によって構成されていてもよい。また、音孔123aの個数にも限定はなく、筐体12の壁部123の領域AR3に単数の音孔123aが設けられていてもよいし、複数の音孔123aが設けられていてもよい。
【0021】
音孔121a(第1音孔)の開口面積の総和S1に対する音孔123a(第2音孔)の開口面積の総和S2比率S2/S1は、2/3≦S2/S1≦4を満たすことが望ましい(詳細は後述する)。これにより、音響信号AC1の音漏れ成分を音響信号AC2によって適切に相殺できる。
【0022】
音漏れ抑制性能は、音孔123aが設けられている壁部123の面積と音孔123aの開口面積との比率にも依存する場合がある。例えば、筐体12が、ドライバーユニット11の一方側(D1方向側)に配置された壁部121である第1端面と、ドライバーユニット11の他方側(D2方向側)に配置された壁部122である第2端面と、第1端面と第2端面とで挟まれた空間を、第1端面と第2端面とを通る音響信号AC1の放出方向(D1方向)に沿った軸線A1を中心に取り囲む壁部123である側面とを有し、音孔121a(第1音孔)が第1端面に設けられており、音孔123a(第2音孔)が側面に設けられている場合を想定する(
図2B,
図3B)。このような場合、側面の総面積S
3に対する音孔123aの開口面積の総和S
2の比率S
2/S
3は、1/20≦S
2/S
3≦1/5であることが望ましい(詳細は後述する)。これにより、音響信号AC1の音漏れ成分を音響信号AC2によって適切に相殺できる。しかし、これは本発明を限定するものではない。
【0023】
<使用状態>
図5Aを用い、音響信号出力装置1の使用状態を例示する。
図5Aの例では、利用者1000の右耳1010と左耳1020とに音響信号出力装置1が1個ずつ装着される。耳への音響信号出力装置1の装着には任意の装着機構が用いられる。音響信号出力装置1は、それぞれD1方向側が利用者1000側に向けられる。再生装置100から出力された出力信号はそれぞれの音響信号出力装置1のドライバーユニット11に入力され、ドライバーユニット11は、D1方向側へ音響信号AC1を放出し、他方側へ音響信号AC2を放出する。音孔121aからは音響信号AC1が放出され、放出された音響信号AC1は右耳1010と左耳1020に入り、利用者1000に聴取される。一方、音孔123aからは、音響信号AC1の逆位相信号または逆位相信号の近似信号である音響信号AC2が放出される。この音響信号AC2の一部は、音孔121aから放出された音響信号AC1の一部(音漏れ成分)を相殺する。
【0024】
<実験結果>
音響信号出力装置1による音漏れ抑制効果を示す実験結果を示す。この実験では、
図5Bに示すように、ヒトの頭部を模したダミーヘッド1100の両耳に音響信号出力装置1装着し、位置P1およびP2で音響信号を観測した。この例における位置P1はダミーヘッド1100の左耳1120近傍(音響信号出力装置1近傍)の位置であり、位置P2は位置P1から外方に向かって15cm離れた位置である。
【0025】
図6に
図5Bの位置P1で観測された音響信号の周波数特性を例示し、
図7に
図5Bの位置P2で観測された音響信号の周波数特性を例示し、
図8に位置P1で観測された音響信号の周波数特性と位置P2で観測された音響信号の周波数特性との差分(各周波数の音圧レベルの差分)を例示する。横軸は周波数(Frequency [Hz])を示し、縦軸は音圧レベル(Sound pressure level (SPL) [dB])を示す。実線のグラフは音響信号出力装置1を用いた場合の周波数特性を例示し、破線のグラフは従来の音響信号出力装置(オープンイヤー型のイヤホン)を用いた場合の周波数特性を例示する。
図8に例示するように、この例の音響信号出力装置1を用いた場合、従来の音響信号出力装置を用いた場合に比べ、位置P1で観測された音響信号と位置P2で観測された音響信号の音圧との差分が大きいことが分かる。これは、音響信号出力装置1では、従来の音響信号出力装置に比べ、位置P2での音漏れを抑制できていることを示している。
【0026】
図9Aに、音孔121a(第1音孔)の開口面積の総和S
1に対する音孔123a(第2音孔)の開口面積の総和S
2比率S
2/S
1と、位置P1で観測された音響信号の周波数特性と位置P2で観測された音響信号の周波数特性との差分との関係を例示する。横軸は当該比率S
2/S
1を示し、縦軸は当該差分を表す音圧レベル(Sound pressure level (SPL) [dB])を示す。r12h6は音孔121aの個数が6個、音孔123aの個数が4個の場合の結果を例示し、r12h12は音21aの個数が12個、音孔123aの個数が4個の場合の結果を例示し、r45h35は音孔121aの個数が1個、音孔123aの個数が4個の場合の結果を例示する。
図9Aに例示するように、音孔121aの開口面積の総和S
1に対する音孔123aの開口面積の総和S
2比率S
2/S
1が2/3≦S
2/S
1≦4の範囲で、特に、位置P1で観測された音響信号と位置P2で観測された音響信号の音圧との差分が大きいことが分かる。これは、この範囲での音漏れ抑制効果が大きいことを示している。
【0027】
図9Bに、側面の総面積S
3に対する音孔123a(第2音孔)の開口面積の総和S
2の比率S
2/S
3と、位置P1で観測された音響信号の周波数特性と位置P2で観測された音響信号の周波数特性との差分との関係を例示する。横軸は当該比率S
2/S
3を示し、縦軸は当該差分を表す音圧レベル(Sound pressure level (SPL) [dB])を示す。r12h6、r12h12、r45h35の意味は
図9Aと同じである。
図9Bに例示するように、側面の総面積S
3に対する音孔123a(第2音孔)の開口面積の総和S
2の比率S
2/S
3が1/20≦S
2/S
3≦1/5の範囲で、特に、位置P1で観測された音響信号と位置P2で観測された音響信号の音圧との差分が大きいことが分かる。これは、この範囲での音漏れ抑制効果が大きいことを示している。
【0028】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態を説明する。
音響信号AC2で音響信号AC1の音漏れ成分を打ち消す場合、音響信号AC1と音響信号AC2の伝搬距離が互いに同一であることが理想的である。しかし、実際には音響信号AC1と音響信号AC2の放出位置は互いに異なり、これらの伝搬距離は互いに異なる。この伝搬距離の相違が大きいほど、音漏れを打ち消そうとする位置での音響信号AC1と音響信号AC2との位相ずれが大きくなり、音漏れ防止効果が低下してしまう。一般に、これらの伝搬距離の相違は筐体12やドライバーユニット11のサイズが大きいほど大きく、筐体12やドライバーユニット11のサイズが大きいほど音漏れ防止効果が低下してしまう。そのため、音漏れ防止のためには筐体12やドライバーユニット11のサイズは小さいほうが望ましい。しかし、筐体12やドライバーユニット11のサイズを小さくすると低域側の音圧を上げにくい。
【0029】
また、周波数が低いほど、上述の伝搬距離の相違の影響を受けにくいため、音漏れ防止効果は周波数が低いほど高い。一方で、低域側では、音響信号AC1の音漏れ成分だけではなく、聴取すべき再生音も音響信号AC2によって大きく減衰してしまうことがある。
【0030】
これらの理由により、上述のベースとなる音響信号出力装置では、音漏れを抑制しながら、低域の音圧を十分に得ることが困難な場合もある。
【0031】
以降では、音漏れを抑制しながら、低域の音圧を十分に得ることが可能な音響信号出力装置を説明する。なお、以降、これまで説明した事項との相違点を中心に説明し、既に説明した事項については説明を簡略化する場合がある。
【0032】
<構成>
本実施形態の音響信号出力装置10は、利用者の外耳道を密閉せずに装着される音響聴取用の装置(例えば、オープンイヤー型(開放型)のイヤホン、ヘッドホン、設置型スピーカ、埋め込み型スピーカなど)である。
図10から
図12に例示するように、本実施形態の音響信号出力装置10は、再生装置から出力された出力信号(再生音響信号を表す電気信号)を音響信号に変換して出力するサイズの小さなドライバーユニット11(スピーカードライバーユニット、ドライバー)と、出力信号を音響信号に変換して出力するサイズの大きなドライバーユニット15(スピーカードライバーユニット、ドライバー)と、ドライバーユニット11を内部に収容している筐体12とを有する。ドライバーユニット11および筐体12は、前述の音響信号出力装置1ものと同じものである。
【0033】
<ドライバーユニット11(第1ドライバーユニット)>
本実施形態では、再生音響信号の周波数帯域が高周波数帯域と低周波数帯域とに分けられており、ドライバーユニット11は再生音響信号のうち高周波数帯域側の音響信号を放出する。すなわち、ドライバーユニット11は、再生音響信号のうち主に高域の音響信号を扱う。再生装置から出力された出力信号は、高周波数側の高周波数帯域信号と、それよりも低周波数側の低周波数帯域信号とに分離され、このように分離された高周波数帯域信号がドライバーユニット11に入力される。なお、高周波数帯域信号と低周波数帯域信号のレベルが所定値以上の周波数帯域は、互いに重複していてもよいし、互いに重複していなくてもよい。ドライバーユニット11は、入力された高周波数帯域信号に基づく音響信号AC1(第1音響信号)を一方側(D1方向側)へ放出(放音)し、音響信号AC1の逆位相信号(位相反転信号)または逆位相信号の近似信号である音響信号AC2(第2音響信号)を他方側(D2方向側)に放出する装置(スピーカー機能を持つ装置)である。すなわち、ドライバーユニット11から一方側(D1方向側)へ放出される音響信号を音響信号AC1(第1音響信号)と呼び、ドライバーユニット11から他方側(D2方向側)に放出される音響信号を音響信号AC2(第2音響信号)と呼ぶことにする。例えば、ドライバーユニット11は、振動によって一方の面113aから音響信号AC1(第1音響信号)をD1方向側(一方側)に放出し、この振動によって他方の面113bから音響信号AC2(第2音響信号)をD2方向側(他方側)に放出する振動板113(第1振動板)を含む(
図12)。この例のドライバーユニット11は、入力された高周波数帯域信号に基づいて振動板113が振動することで、音響信号AC1を一方側の面111からD1方向側へ放出し、音響信号AC1の逆位相信号または逆位相信号の近似信号である音響信号AC2を他方側の側112からD2方向側へ放出する。その他は前述した通りである。
【0034】
<ドライバーユニット15(第2ドライバーユニット)>
ドライバーユニット15は、ドライバーユニット11よりもサイズが大きく、上述した再生音響信号のうち低周波数帯域側の音響信号を放出する。すなわち、ドライバーユニット15は、再生音響信号のうち主に低域の音響信号を扱う。これにより、ドライバーユニット11のみを用いる場合に比べて低域の音圧を得ることができる。上述のように出力信号から分離された低周波数帯域信号はドライバーユニット15に入力され、ドライバーユニット15は、入力された低周波数帯域信号に基づく音響信号AC3(第3音響信号)を一方側(D1方向側)へ放出(放音)し、音響信号AC3の逆位相信号(位相反転信号)または逆位相信号の近似信号である音響信号AC4(第4音響信号)を他方側(D2方向側)に放出する装置(スピーカー機能を持つ装置)である。すなわち、ドライバーユニット15から一方側(D1方向側)へ放出される音響信号を音響信号AC3(第3音響信号)と呼び、ドライバーユニット15から他方側(D2方向側)に放出される音響信号を音響信号AC4(第4音響信号)と呼ぶことにする。例えば、ドライバーユニット15は、振動によって一方の面153aから音響信号AC3(第3音響信号)をD1方向側(一方側)に放出し、この振動によって他方の面153bから音響信号AC4(第4音響信号)をD2方向側(他方側)に放出する振動板153(第2振動板)を含む(
図12)。この例のドライバーユニット15は、入力された低周波数帯域信号に基づいて振動板153が振動することで、音響信号AC3を一方側の面151からD1方向側へ放出し、音響信号AC3の逆位相信号または逆位相信号の近似信号である音響信号AC4を他方側の側152からD2方向側へ放出する。すなわち、音響信号AC4は、音響信号AC3の放出に伴って副次的に放出されるものである。音響信号AC3は、音響信号AC1の同位相信号または同位相信号の近似信号であり、音響信号AC4は、音響信号AC2の同位相信号または同位相信号の近似信号である。なお、ドライバーユニット15の方式や形状によって、音響信号AC4が厳密に音響信号AC3の逆位相信号となる場合もあれば、音響信号AC4が音響信号AC3の逆位相信号の近似信号となる場合がある。例えば、音響信号AC3の逆位相信号の近似信号は、(1)音響信号AC3の逆位相信号の位相をシフトして得られる信号であってもよいし、(2)音響信号AC3の逆位相信号の振幅を変化(増幅または減衰)させて得られる信号であってもよいし、(3)音響信号AC3の逆位相信号の位相をシフトし、さらに振幅を変化させて得られる信号であってもよい。音響信号AC3の逆位相信号とその近似信号との位相差は、音響信号AC3の逆位相信号の一周期のδ
3%以下であることが望ましい。δ
3%の例は1%,3%,5%,10%,20%などである。また、音響信号AC3の逆位相信号の振幅とその近似信号の振幅との差分は、音響信号AC3の逆位相信号の振幅のδ
4%以下であることが望ましい。δ
4%の例は1%,3%,5%,10%,20%などである。なお、ドライバーユニット15の方式としては、ダイナミック型、バランスドアーマチェア型、ダイナミック型とバランスドアーマチュア型のハイブリッド型、コンデンサー型などを例示できる。また、ドライバーユニット15や振動板153の形状に限定はない。本実施形態では、説明の簡略化のため、ドライバーユニット15の外形が両端面を持つ略円筒形状であり、振動板153が略円盤形状である例を示すが、これは本発明を限定するものではない。例えば、ドライバーユニット15の外形が直方体形状などであってもよいし、振動板153がドーム形状などであってもよい。
【0035】
上述のように、ドライバーユニット15は、ドライバーユニット11よりもサイズが大きい。例えば、ドライバーユニット11の直径(D1方向および/またはD2方向に直交する方向の直径)をS11とし、ドライバーユニット15の直径(D1方向および/またはD2方向に直交する方向の直径)をS21とすると、S21>S11を満たす(
図11)。例えば、S21はS11の2倍以上であり、S11が12mmであり、S21が35mmである。また例えば、振動板113の直径(D1方向および/またはD2方向に直交する方向の直径)をS12とし、振動板153の直径(D1方向および/またはD2方向に直交する方向の直径)をS22とすると、S22>S12を満たす(
図12)。例えば、S22はS12の2倍以上であり、S12が10mmであり、S22が30mmである。すなわち、振動板153(第2振動板)の径は、振動板113(第1振動板)の径よりも大きい。
【0036】
<筐体12>
筐体12は、外側に壁部を持つ中空の部材であり、壁部に音孔121a,123aが設けられており、内部にドライバーユニット11を収容している。例えば、ドライバーユニット11は、筐体12内部のD1方向側の端部に固定されている。しかし、これは本発明を限定するものではない。筐体12のサイズは、ドライバーユニット15のサイズよりも小さい。例えば、筐体12の直径(D1方向および/またはD2方向に直交する方向の直径)をS13とし、ドライバーユニット15の直径(D1方向および/またはD2方向に直交する方向の直径)をS21とすると、S21>S13を満たす(
図11)。その他は前述した通りである。
【0037】
なお、本実施形態のドライバーユニット15は、筐体12の外部空間に配置されており、その他の筐体にも収容されていない。すなわち、ドライバーユニット15(第2ドライバーユニット)は、筐体12の外部空間に開放されており、音響信号AC3(第3音響信号)および音響信号AC4(第4音響信号)は、ドライバーユニット15(第2ドライバーユニット)から、直接、筐体12の外部空間に放出される。このように、本実施形態のドライバーユニット15は筐体に収容されていないため、ドライバーユニット15を筐体に収容する場合と比べて自然な音質の音を再生できる。またドライバーユニット15を筐体に収容すると、この筐体と外耳道との位置関係に応じて聴取される音が変化し、眼鏡等によって正しく装着できないと十分な音質を確保できないことがある。しかし、筐体に収容されないドライバーユニット15ではこのような問題は生じない。また、ドライバーユニット15を筐体に収容した場合、十分な音質を確保するために、ヘッドバンド等によって筐体を耳にしっかり固定する必要がある。しかし、筐体に収容されないドライバーユニット15では、ドライバーユニット15の位置を或る程度固定すればよく、利用者はヘッドバンド等による痛みや締め付け感から解放される。
【0038】
音孔121aから放出された音響信号AC1およびドライバーユニット15の一方の面151(振動板153の一方の面153a側)から放出された音響信号AC3は利用者の外耳道に届き、利用者に聴取される。一方、音孔123aからは、音響信号AC1の逆位相信号または逆位相信号の近似信号である音響信号AC2が放出される。また、ドライバーユニット15の他方の面152(振動板153の他方の面153b側)からは、音響信号AC3の逆位相信号または逆位相信号の近似信号である音響信号AC4が放出される。放出された音響信号AC2および音響信号AC4の一部は、放出された音響信号AC1および音響信号AC3の一部(音漏れ成分)を相殺する。例えば、放出された音響信号AC2の一部は放出された音響信号AC1の一部を相殺し、放出された音響信号AC4の一部は放出された音響信号AC3の一部を相殺する。すなわち、音孔121a(第1音孔)から音響信号AC1(第1音響信号)が放出され、音孔123a(第2音孔)から音響信号AC2(第2音響信号)が放出され、ドライバーユニット15(第2ドライバーユニット)から音響信号AC3(第3音響信号)および音響信号AC4(第4音響信号)が放出されることで、位置P1(第1地点)を基準とした位置P2(第2地点)での音響信号AC1(第1音響信号)および音響信号AC3(第3音響信号)の減衰率η11を予め定めた値ηth以下とすることができたり、位置P1(第1地点)を基準とした位置P2(第2地点)での音響信号AC1(第1音響信号)および音響信号AC3(第3音響信号)の減衰量η12を予め定めた値ωth以上とできたりする。ここで、位置P1(第1地点)は、音孔121a(第1音孔)から放出された音響信号AC1(第1音響信号)およびドライバーユニット15の一方の面151から放出された音響信号AC3(第3音響信号)が到達する予め定められた地点である。一方、位置P2(第2地点)は、音響信号出力装置10からの距離が位置P1(第1地点)よりも遠い予め定められた地点である。予め定めた値ηthは、位置P1(第1地点)を基準とした位置P2(第2地点)での任意または特定の音響信号(音)の空気伝搬による減衰率η21よりも小さい値(低い値)である。また、予め定めた値ωthは、位置P1(第1地点)を基準とした位置P2(第2地点)での任意または特定の音響信号(音)の空気伝搬による減衰量η22よりも大きい値である。すなわち、本実施形態の音響信号出力装置10は、減衰率η11が、減衰率η21よりも小さい予め定めた値ηth以下となるように設計されているか、または、減衰量η12が、減衰量η22よりも大きい予め定めた値ωth以上となるように設計されている。なお、音響信号AC1および音響信号AC3は位置P1から位置P2まで空気伝搬され、この空気伝搬と音響信号AC2と音響信号AC4とに起因して減衰する。減衰率η11は、位置P1での音響信号AC1の大きさAMP1(AC1)に対する、空気伝搬と音響信号AC2と音響信号AC4とに起因して減衰した位置P2での音響信号AC1の大きさAMP2(AC1)の比率(AMP2(AC1)/AMP1(AC1))、または、位置P1での音響信号AC3の大きさAMP1(AC3)に対する、空気伝搬と音響信号AC2と音響信号AC4とに起因して減衰した位置P2での音響信号AC3の大きさAMP2(AC3)の比率(AMP2(AC3)/AMP1(AC13))である。また、減衰量η12は、大きさAMP1(AC1)と大きさAMP2(AC1)との差分(|AMP1(AC1)-AMP2(AC1)|)、または、大きさAMP1(AC3)と大きさAMP2(AC3)との差分(|AMP1(AC3)-AMP2(AC3)|)である。一方、音響信号AC2および音響信号AC4を想定しない場合、位置P1から位置P2まで空気伝搬される任意または特定の音響信号ACarは、音響信号AC2および音響信号AC4に起因することなく、空気伝搬に起因して減衰する。減衰率η21は、位置P1での音響信号ACarの大きさAMP1(ACar)に対する、空気伝搬に起因して減衰(音響信号AC2に起因することなく減衰)した位置P2での音響信号ACarの大きさAMP2(ACar)の比率(AMP2(ACar)/AMP1(ACar))である。また、減衰量η22は、大きさAMP1(ACar)と大きさAMP2(ACar)との差分(|AMP1(ACar)-AMP2(ACar)|)である。なお、音響信号の大きさの例は、音響信号の音圧または音響信号のエネルギーなどである。また「音漏れ成分」とは、例えば、音孔121aから放出された音響信号AC1およびドライバーユニット15の一方の面151から放出された音響信号AC3のうち、音響信号出力装置10を装着した利用者以外の領域(例えば、音響信号出力装置10を装着した利用者以外のヒト)に到来する可能性が高い成分を意味する。例えば、「音漏れ成分」は、音響信号AC1および音響信号AC3のうち、D1方向以外の方向に伝搬する成分を意味する。例えば、音孔121aからは主に音響信号AC1の直接波が放出され、第2音孔からは主に第2音響信号の直接波が放出され、ドライバーユニット15の一方の面151から音響信号AC3の直接波が放出され、ドライバーユニット15の他方の面152から音響信号AC4の直接波が放出される。音孔121aから放出された音響信号AC1の直接波の一部およびドライバーユニット15の一方の面151から音響信号AC3の直接波の一部(音漏れ成分)は、音孔123aから放出された音響信号AC2の直接波の少なくとも一部およびドライバーユニット15の他方の面152から音響信号AC4の直接波の少なくとも一部と干渉することで相殺される。ただし、これは本発明を限定するものではなく、この相殺は直接波以外でも生じ得る。すなわち、音孔121aから放出された音響信号AC1の直接波および反射波ならびにドライバーユニット15の一方の面151から音響信号AC3の直接波および反射波の少なくとも一方である音漏れ成分が、音孔123aから放出された音響信号AC2の直接波および反射波ならびにドライバーユニット15の他方の面152から音響信号AC4の少なくとも一方によって相殺されることがある。
【0039】
以上の構成により、音漏れを抑制できる。特に、ドライバーユニット11(第1ドライバーユニット)のサイズは、ドライバーユニット15(第2ドライバーユニット)のサイズよりも小さい。さらには、ドライバーユニット11を収容する筐体12のサイズは、ドライバーユニット15のサイズよりも小さい。そのため、ドライバーユニット11の振動板113(第1振動板)のD1方向側(一方側)から放出された音響信号AC1(第1音響信号)が位置P2(第2地点)に到達するまでの伝搬距離と、振動板113(第1振動板)のD2方向側(他方側)から放出された音響信号AC2(第2音響信号)が位置P2(第2地点)に到達するまでの伝搬距離との差は、ドライバーユニット15の振動板153(第2振動板)のD1方向側(一方側)から放出された音響信号AC3(第3音響信号)が位置P2(第2地点)に到達するまでの伝搬距離と、振動板153(第2振動板)のD2方向側(他方側)から放出された音響信号AC4(第4音響信号)が位置P2(第2地点)に到達するまでの伝搬距離との差よりも小さい。ここで、伝搬距離の差が小さいほど、位置P2での逆相波(音響信号AC2や音響信号AC4)と再生音(音響信号AC1や音響信号AC3)との位相ずれが小さくなり、音漏れ防止効果が向上する。そのため、サイズ面では、ドライバーユニット11を収容する筐体12側の方がドライバーユニット15側よりも音漏れ防止効果が高い。一方で、周波数が高いほど、伝搬距離の差の影響を受けやすいため、音漏れ防止効果は周波数が高いほど低下する傾向がある。ここで、ドライバーユニット11は、再生音響信号のうち主に高域の音響信号を担当し、ドライバーユニット15は、再生音響信号のうち主に低域の音響信号を担当する。そのため、周波数面では、ドライバーユニット15側の方がドライバーユニット11を収容する筐体12側よりも音漏れ防止効果が高い。これらのサイズ面および周波数面での音漏れ防止効果の特徴により、広い周波数帯域において十分な音漏れ防止効果を得ることができる。また、ドライバーユニット15を筐体に収容しないエンクロージャレス型とすることで、放出される音響信号の振幅を最大限に使用でき、中低域で音漏れ防止効果を最大化できる。なお、エンクロージャレス型のドライバーユニット15では、ドライバーユニット15から遠く離れると、低い周波数において、音漏れ成分だけではなく、聴取すべき再生音も逆位相波によって大きく減衰してしまうことがある。しかし、本実施形態の音響信号出力装置10は、外耳道を密閉せずに装着される音響聴取用の装置(例えば、オープンイヤー型のイヤホン、ヘッドホンなど)であり、ドライバーユニット15から外耳道までの距離は近い。よってこのような問題は生じにくい。また、ドライバーユニット15の振動板153(第2振動板)の径はドライバーユニット11の振動板(第1振動板)の径よりも大きいため、ドライバーユニット15側ではドライバーユニット11よりも低音の音圧を大きくすることができる。これらにより、音漏れを抑制しながら、低域の音圧を十分に得ることができる。
【0040】
<音孔121a,123aの配置構成>
音孔121a,123aの配置構成は、前述した通りである。なお、本実施形態でも、筐体12の壁部122側には音孔を設けないことが望ましい。筐体12の壁部122側に音孔を設けると、筐体12から放出される音響信号AC2の音圧レベルが音響信号AC1の音漏れ成分を相殺するために必要なレベルを超えてしまい、その過剰分が音漏れとして知覚されてしまう場合があるからである。しかし、筐体12の壁部122側に音孔123aを設けたとしても、音孔123aから放出される音響信号AC2がドライバーユニット15によって遮られ、その音圧レベルが音響信号AC1の音漏れ成分を相殺するために必要なレベルを超えない場合には、筐体12の壁部122側に音孔123aを設けてもよい。
【0041】
図10等に例示するように、本実施形態の音孔121aは、音響信号AC1の放出方向(D1方向)に沿った軸線A1上またはその近傍に配置されている。本実施形態の軸線A1は、筐体12のドライバーユニット11の一方側(D1方向側)に配置された壁部121の領域AR1(第1領域)の中央または当該中央の近傍を通る。例えば、軸線A1は、筐体12およびドライバーユニット15の中央領域を通ってD1方向に延びる軸線である。
【0042】
本実施形態の音孔123a(第2音孔)は、例えば、以下の観点を考慮した配置であることが望ましい。
(1)位置の観点:相殺しようとする音響信号AC1および音響信号AC3の音漏れ成分の伝搬経路に、音孔123aから放出された音響信号AC2の伝搬経路が重なるように音孔123aを配置する。
(2)面積の観点:音孔123aの開口面積に応じ、音孔123aから放出される音響信号AC2の伝搬領域および筐体12の周波数特性が異なる。また、筐体12の周波数特性は音孔123aから放出される音響信号AC2の周波数特性、すなわち各周波数での振幅に影響を与える。このような音孔123aから放出される音響信号AC2の伝搬領域および周波数特性を考慮し、音漏れ成分を相殺しようとする領域において、音漏れ成分が音孔123aから放出される音響信号AC2によって相殺されるように、音孔123aの開口面積を決定する。
【0043】
以上の観点から、例えば、音孔123a(第2音孔)は、以下のように構成されることが望ましい。
例えば、
図12に例示するように、本実施形態の音孔123a(第2音孔)は、音響信号AC1(第1音響信号)の放出方向に沿った軸線A1を中心とした円周(円)C1に沿って複数設けられていることが望ましい。複数の音孔123aを円周C1に沿って設けた場合、音響信号AC2は音孔123aから外部に放射状(軸線A1を中心とした放射状)に放出される。ここで、音響信号AC1の音漏れ成分も音孔121aから外部に放射状(軸線A1を中心とした放射状)に放出される。そのため、複数の音孔123aを円周C1に沿って設けることで、音響信号AC2によって音響信号AC1の音漏れ成分を適切に相殺できる。本実施形態では、説明の簡略化のため、複数の音孔123aが円周C1上に設けられている例を示す。しかし、複数の音孔123aは円周C1に沿って設けられていればよく、必ずしも、すべての音孔123aが厳密に円周C1上に配置されていなくてもよい。
【0044】
また好ましくは、円周C1が複数の単位円弧領域に等分された場合に、単位円弧領域の何れかである第1円弧領域に沿って設けられている音孔123a(第2音孔)の開口面積の総和は、第1円弧領域を除く単位円弧領域の何れかである第2円弧領域に沿って設けられている音孔123a(第2音孔)の開口面積の総和と同一または略同一である。例えば、
図13に例示するように、円周C1が4個の単位円弧領域C1-1,…,C1-4に等分された場合、単位円弧領域C1-1,…,C1-4の何れかである第1円弧領域(例えば、単位円弧領域C1-1)に沿って設けられている音孔123a(第2音孔)の開口面積の総和は、第1円弧領域を除く単位円弧領域の何れかである第2円弧領域(例えば、単位円弧領域C1-2)に沿って設けられている音孔123a(第2音孔)の開口面積の総和と同一または略同一である。なお、ここでは説明の簡略化のために、円周C1が4個の単位円弧領域C1-1,…,C1-4に等分された例を示したが、これは本発明を限定するものではない。また、「α1とα2とが略同一」とは、α1とα2との差分がα1のβ%以下であることを意味する。β%の例は3%,5%,10%などである。これにより、第1円弧領域に沿って設けられている音孔123aから放出される音響信号AC2の音圧分布と、第2円弧領域に沿って設けられている音孔123aから放出される音響信号AC2の音圧分布とが、軸線A1に対して点対称または略点対称となる。好ましくは、各単位円弧領域に沿って設けられている音孔123a(第2音孔)の開口面積の単位円弧領域ごとの総和は、全て同一または略同一である。これにより、音孔123aから放出される音響信号AC2の音圧分布が軸線A1に対して点対称または略点対称となる。これにより、音響信号AC2によって音響信号AC1および音響信号AC3の音漏れ成分をより適切に相殺できる。
【0045】
より好ましくは、複数の音孔123aは、同一形状、同一サイズ、同一間隔で円周C1に沿って設けられていることが望ましい。例えば、横幅4mm、高さ3.5mmの複数の音孔123aの同一形状、同一サイズ、同一間隔で円周C1に沿って設けられている。複数の音孔123aが、同一形状、同一サイズ、同一間隔で円周C1に沿って設けられている場合、音響信号AC2によって音響信号AC1および音響信号AC3の音漏れ成分をより適切に相殺できる。しかし、これは本発明を限定するものではない。
【0046】
また好ましくは、音孔123a(第2音孔)は、ドライバーユニット11の他方側(D2方向側)に位置する領域ARに接する壁部に設けられている(
図3B)。これにより、ドライバーユニット11の他方側から放出される音響信号AC2の直接波が効率よく音孔123aから外部へ導出される。その結果、音響信号AC2によって音響信号AC1および音響信号AC3の音漏れ成分をより適切に相殺できる。その他は前述の通りである。
【0047】
<筐体12およびドライバーユニット11,15の配置構成>
本実施形態では、ドライバーユニット11が収容された筐体12のD2方向側にドライバーユニット15を配置している(
図10,
図12)。すなわち、音響信号AC1を放出する筐体12の音孔121aは、ドライバーユニット11のD1方向側(第1方向側)に配置されており、ドライバーユニット15(第2ドライバーユニット)は、筐体12の外部空間に配置され、ドライバーユニット11のD2方向側(第2方向側)に配置されている。ここで、D2方向(第2方向)は、D1方向(第1方向)の逆方向または略逆方向である。これにより、筐体12からD2方向側に漏洩した音漏れ成分をドライバーユニット15で遮蔽することができる。特に、ドライバーユニット11が扱う高域(例えば、4kHz以上)では、筐体12から漏洩した音響信号AC1の音漏れ成分を音響信号AC2によって十分に打ち消すことができない場合がある。筐体12のD2方向側にサイズの大きなドライバーユニット15を配置することで、このような高域の音漏れも抑制できる。なお、ドライバーユニット15(第2ドライバーユニット)に対する筐体12の相対位置は固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。例えば、筐体12は、図示していない部材によって、ドライバーユニット15に固定されていてもよい。例えば、筐体12は、ドライバーユニット15に対する相対位置を調整可能なように(ドライバーユニット15に対する所望の相対位置に固定可能なように)に、図示していない部材によってドライバーユニット15に取り付けられていてもよい。
【0048】
また、筐体に収容されていないドライバーユニット15から放出された音響信号の音圧は、振動板153の中心軸上から外れると急激に低下する。また、ドライバーユニット11を収容した筐体12の音孔121aから放出される音響信号AC1の音圧も、音孔121aと振動板113とを通る軸線上(例えば、振動板113の中心軸上)から外れると低下する。そのため、ドライバーユニット11を収容した筐体12とドライバーユニット15とは同軸上に配置されることが望ましい。例えば、音孔121a(第1音孔)または複数の音孔121a(第1音孔)の中央が、軸線A1上(特定の軸上)または軸線A1(軸)の近傍に配置されており、ドライバーユニット11(第1ドライバーユニット)が、軸線A1(軸)に沿ったD1方向側(一方側)に音響信号AC1(第1音響信号)を放出し、軸線A1(軸)に沿ったD2方向側(他方側)に音響信号AC2(第2音響信号)を放出する振動板113(第1振動板)を有し、ドライバーユニット15(第2ドライバーユニット)は、軸線A1(軸)に沿ったD1方向側(一方側)に音響信号AC3(第3音響信号)を放出し、軸線A1(軸)に沿ったD2方向側(他方側)に音響信号AC4(第4音響信号)を放出する振動板153(第2振動板)を有し、振動板153(第2振動板)が軸線A1(軸)上または軸線A1(軸)の近傍に配置されていることが望ましい。これにより、ドライバーユニット11,15の音圧が最大となる位置に外耳道を配置することが可能となり、広い周波数帯域で十分な音圧の音響信号を利用者に提示できるからである。また、ドライバーユニット11を収容した筐体12とドライバーユニット15とが同軸上に配置されることで、ドライバーユニット11,15の間の距離を同軸上で変化させ、聴取させる音響信号の音圧や音漏れ量を調整することが容易になる。
【0049】
<使用状態>
図14Aおよび
図14Bを用い、音響信号出力装置10の使用状態を例示する。
図14Aの例では、利用者1000の右耳1010と左耳1020とに音響信号出力装置10が1個ずつ装着される。耳への音響信号出力装置10の装着には任意の装着機構が用いられる。音響信号出力装置10は、それぞれD1方向側が利用者1000側に向けられる。再生装置100から出力された出力信号は信号分離装置101に入力される。
図14Bに例示するように、信号分離装置101は入力された出力信号を高域側の高周波数帯域信号と低域側の低周波数帯域信号とに分離する。
図14Bの例では、出力信号は二つに分岐され、分岐された出力信号が、それぞれ、ハイパスフィルタ101aとローパスフィルタ101bとに入力される。ハイパスフィルタ101aは、入力された出力信号の低域側を減衰させて高周波数帯域信号を得て出力する。ローパスフィルタ101bは、入力された出力信号の高域側を減衰させて低周波数帯域信号を得て出力する。高周波数帯域信号は音響信号出力装置10のドライバーユニット11に入力され、ドライバーユニット11は、D1方向側へ音響信号AC1を放出し、他方側へ音響信号AC2を放出する。低周波数帯域信号は音響信号出力装置10のドライバーユニット15に入力され、ドライバーユニット15は、D1方向側へ音響信号AC3を放出し、他方側へ音響信号AC4を放出する。音孔121aからは音響信号AC1が放出され、放出された音響信号AC1の一部は右耳1010と左耳1020に入り、利用者1000に聴取される。またドライバーユニット15から放出された音響信号AC3の一部も右耳1010と左耳1020に入り、利用者1000に聴取される。一方、音孔123aからは、音響信号AC1の逆位相信号または逆位相信号の近似信号である音響信号AC2が放出される。またドライバーユニット15からは、音響信号AC3の逆位相信号または逆位相信号の近似信号である音響信号AC4が放出される。音響信号AC2および音響信号AC4の一部は、音孔121aからD2方向側に放出された音響信号AC1の一部およびドライバーユニット15からD2方向側に放出された音響信号AC3の一部(音漏れ成分)を相殺する。例えば、音響信号AC2の一部は、音孔121aからD2方向側に放出された音響信号AC1の一部を相殺し、音響信号AC4の一部は、ドライバーユニット15からD2方向側に放出された音響信号AC3の一部を相殺する。
【0050】
<実験結果>
本実施形態の音響信号出力装置10による音漏れ抑制効果を示す実験結果を示す。この実験では、
図15に示すように、ヒトの頭部を模したダミーヘッド1100の両耳に音響信号出力装置10装着し、位置P1およびP2で音響信号を観測した。この例における位置P1はダミーヘッド1100の左耳1120近傍(音響信号出力装置10近傍)の位置であり、位置P2は位置P1から外方に向かって15cm離れた位置である。
【0051】
この実験でも、再生装置100から出力された出力信号は信号分離装置101に入力され、ハイパスフィルタ101aとローパスフィルタ101bによって高域側の高周波数帯域信号と低域側の低周波数帯域信号とに分離される。実験では、1500Hzで‐24db/octのハイパスフィルタ101aと、1000Hzで‐24db/octのローパスフィルタ101bを用いた。高周波数帯域信号は音響信号出力装置10のドライバーユニット11に入力され、ドライバーユニット11は、D1方向側へ音響信号AC1を放出し、他方側へ音響信号AC2を放出する。低周波数帯域信号は音響信号出力装置10のドライバーユニット15に入力され、ドライバーユニット15は、D1方向側へ音響信号AC3を放出し、他方側へ音響信号AC4を放出する。
【0052】
図16Aは、
図15の位置P1で観測された音響信号の周波数特性を例示し、
図16Bは、
図15の位置P2で観測された音響信号の周波数特性を例示している。「2way」は、再生音響信号の周波数帯域が高周波数帯域と低周波数帯域とに分けられており、サイズの小さなドライバーユニット11から高周波数帯域側の音響信号を放出し、サイズの大きなドライバーユニット15から低周波数帯域側の音響信号を放出した場合の周波数特性を例示している。「WF Th.」は、周波数帯域を分けることなく、サイズの大きなドライバーユニット15のみから音響信号を放出した場合の周波数特性を例示している。「TW Th.」は、周波数帯域を分けることなく、サイズの小さなドライバーユニット11のみから音響信号を放出した場合の周波数特性を例示している。
図16Aに示すように、周波数帯域を分けていないにも関わらず、サイズの小さなドライバーユニット11のみでは、低域で十分な音圧が得られない。なお、TW Th.は、イコライザーによって低域を大幅に増強しているが、それにもかかわらず、低域で十分な音圧が得られない。また、
図16Bに例示するように、サイズの大きなドライバーユニット15のみでは、高域での音漏れが大きくなってしまう。例えば、1000-6000Hzの帯域で、2wayと比べてWF Th.は音圧が最大30dB高い。これに対し、サイズの小さなドライバーユニット11から高周波数帯域側の音響信号を放出し、サイズの大きなドライバーユニット15から低周波数帯域側の音響信号を放出した場合には、低域で十分な音圧を得られるとともに、高域を含む広い周波数帯域において音漏れを抑制できていることが分かる。
【0053】
図17Aも、
図15の位置P1で観測された音響信号の周波数特性を例示し、
図17Bは、
図15の位置P2で観測された音響信号の周波数特性を例示している。「2way」は、再生音響信号の周波数帯域が高周波数帯域と低周波数帯域とに分けられており、サイズの小さなドライバーユニット11から高周波数帯域側の音響信号を放出し、サイズの大きなドライバーユニット15から低周波数帯域側の音響信号を放出した場合の周波数特性を例示している。「WF NW」は、再生音響信号の周波数帯域が高周波数帯域と低周波数帯域とに分けられており、サイズの大きなドライバーユニット15のみから低周波数帯域側の音響信号を放出した場合の周波数特性を例示している。「TW NW」は、再生音響信号の周波数帯域が高周波数帯域と低周波数帯域とに分けられており、サイズの小さなドライバーユニット11のみから高周波数帯域側の音響信号を放出した場合の周波数特性を例示している。
図17Aに示すように、サイズの小さなドライバーユニット11のみでは低域で十分な音圧が得られず、サイズの大きなドライバーユニット15のみでは高域で十分な音圧が得られないが、これらを併用することで、低域および高域を含む広い周波数帯域において十分な音圧を得られる。また、
図17Bに例示するように、再生音響信号の周波数帯域を高周波数帯域と低周波数帯域とに分け、ドライバーユニット11とドライバーユニット15とからそれぞれ放出することで、高域を含む広い周波数帯域において音漏れを抑制できる。
【0054】
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態の変形であり、筐体12側にさらに遮蔽板16を設けるものである。
図18および
図19に例示するように、第2実施形態の音響信号出力装置10は、第1実施形態で説明した部位に加え、貫通孔16aを有する遮蔽板16をさらに有する。ここでは、環状(ドーナツ状)の遮蔽板16を例示するが、貫通孔16aを有するその他の板形状の遮蔽板16であってもよい。遮蔽板16は、筐体12の外部空間における音孔123a(第2音孔)よりもD1方向側(第1方向側)に配置されている。音孔121a(第1音孔)または複数の音孔121a(第1音孔)の中央は、軸線A1(特定の軸)上または軸線A1(軸)の近傍に配置されている。貫通孔16aは、軸線A1(特定の軸)上または軸線A1(軸)の近傍に配置されている。これにより、音孔123aから放出された音響信号AC2が利用者の外耳道に到達することを抑制でき、その結果、外耳道に到達する音響信号AC1が音響信号AC2によって打ち消されてしまうことを抑制できる。なお、
図18および
図19では、遮蔽板16のD1方向側の板面161が筐体12の壁部121の外面と同一平面または略同一平面上に配置されている例を示している。しかし、音孔123aよりもD1方向側に配置されるのであれば、遮蔽板16がその他の位置に配置されていてもよい。ただし、遮蔽板16のD2方向側の板面162が、筐体12の壁部121の外面よりもD2方向側に配置されていることが望ましい。これにより、音孔121aから放出された音響信号AC1が遮蔽板16の板面162で反射してD2方向に音漏れ成分として放出されてしまうことを防止できる。
【0055】
遮蔽板16や貫通孔16aの大きさは、外耳道に到達する音響信号の周波数特性や音圧と周囲に放出される音漏れ成分の音圧とが適切になるように適宜決定すればよい。貫通孔16aは、軸線A1上に配置されることが望ましく、より好ましくは貫通孔16aの中心が軸線A1上に配置されることが望ましい。これにより、外耳道に到達する音響信号を軸線A1に対して線対称または略線対称にでき、外耳道に対する音響信号出力装置10の位置ずれ方向による聴取音の変化を減らすことができるからである。
【0056】
[第3実施形態]
第1実施形態では、同一形状、同一サイズ、同一間隔の複数の音孔123a(第2音孔)が円周C1に沿って設けられている例を示した。しかし、これは本発明を限定しない。形状および/またはサイズおよび/または間隔の異なる複数の音孔123aが円周C1に沿って設けられていてもよい。
【0057】
また、このような場合であっても、円周C1が複数の単位円弧領域に等分された場合に、単位円弧領域の何れかである第1円弧領域に沿って設けられている音孔123a(第2音孔)の開口面積の総和は、第1円弧領域を除く単位円弧領域の何れかである第2円弧領域に沿って設けられている音孔123aの開口面積の総和と同一または略同一であることが好ましい。より好ましくは、各単位円弧領域に沿って設けられている音孔123aの開口面積の単位円弧領域ごとの総和は、全て同一または略同一であることが望ましい。
【0058】
複数の音孔123aが円周C1に沿っていればよく、必ずしもすべての音孔123aが厳密に円周C1上に配置されていなくてもよい。また、円周C1の位置は第1実施形態で例示したものに限定されず、軸線A1を中心とした円周であればよい。
【0059】
さらに、十分な音漏れ抑制効果を得られるのであれば、すべての音孔123aが円周C1に沿って配置されていなくてもよい。すなわち、一部の音孔123aが円周C1から外れた位置に配置されていてもよい。また、十分な音漏れ抑制効果を得られるのであれば、音孔123aの個数に限定はなく、1個の音孔123aが設けられていてもよい。
【0060】
[第3実施形態の変形例]
前述のように、筐体12の壁部121の領域AR1に複数個の音孔121aが設けられていてもよいし、音孔121aが筐体12の壁部121の領域AR1の中央(中央位置)からずれた偏心位置に偏っていてもよい。例えば、
図20に例示するように、領域AR1上の偏心位置(軸線A1からずれた軸線A1と平行な軸線A12上の位置)(以下、単に「偏心位置」という)に1個の音孔121aが設けられていてもよい。言い換えると、領域AR1に設けられた1個の音孔121aの位置が偏心位置に偏っていてもよい。或いは、
図21に例示するように、領域AR1に複数個の音孔121aが設けられており、それら複数個の音孔121aが軸線A1からずれた軸線A1と平行な軸線A12上の偏心位置に偏っていてもよい。言い換えると、領域AR1に設けられた複数個の音孔121aの位置が偏心位置に偏っていてもよい。このような場合、ドライバーユニット15(第2ドライバーユニット)も、この偏心位置に偏って配置されることが望ましい。例えば、音孔121a(第1音孔)または複数の音孔121a(第1音孔)の中央が、軸線A12上(特定の軸上)または軸線A12(軸)の近傍に配置されており、ドライバーユニット11(第1ドライバーユニット)が、軸線A12(軸)に沿ったD1方向側(一方側)に音響信号AC1(第1音響信号)を放出し、軸線A12(軸)に沿ったD2方向側(他方側)に音響信号AC2(第2音響信号)を放出する振動板113(第1振動板)を有し、ドライバーユニット15(第2ドライバーユニット)が軸線A12(軸)に沿ったD1方向側(一方側)に音響信号AC3(第3音響信号)を放出し、軸線A12(軸)に沿ったD2方向側(他方側)に音響信号AC4(第4音響信号)を放出する振動板153(第2振動板)を有し、振動板153(第2振動板)が軸線A12(軸)上または軸線A12(軸)の近傍に配置されてもよい。これにより、ドライバーユニット11,15の音圧が最大となる位置に外耳道を配置することが可能となり、広い周波数帯域で十分な音圧の音響信号を利用者に提示できる。
【0061】
単数または複数の音孔121aの位置やドライバーユニット15の位置が偏心位置に偏っている場合、それに応じて音孔123aの分布や開口面積が偏っていてもよい。例えば、
図20または
図21のように、領域AR1に設けられた単数または複数の音孔121aの位置が軸線A1からずれた軸線A12上の偏心位置に偏っており、
図22および
図23に例示するように、領域AR3に設けられている音孔121aの開口面積も軸線A12上の偏心位置側に偏っていてもよい。
図22の例では、軸線A12上の偏心位置から遠い単位円弧領域C1-3に沿って設けられている音孔123aの個数が、それよりも当該偏心位置に近い単位円弧領域C1-1に沿って設けられている音孔123aの個数よりも少ない。
図23の例では、軸線A12上の偏心位置から遠い単位円弧領域C1-3に沿って設けられている音孔123aの各開口面積が、それよりも当該偏心位置に近い単位円弧領域C1-1に沿って設けられている音孔123aの各開口面積よりも小さい。すなわち、円周C1が複数の単位円弧領域に等分された場合に、単位円弧領域の何れかである第1円弧領域(例えば、C1-3)に沿って設けられている音孔123a(第2音孔)の開口面積の総和は、第1円弧領域よりも偏心位置に近い単位円弧領域の何れかである第2円弧領域(例えば、C1-1)に沿って設けられている音孔123aの開口面積の総和よりも小さい。音孔121aの位置が偏心位置に偏っている場合、音孔121aから外部に放出される音響信号AC1の分布も偏心位置に偏っている。ここで、音孔123aの分布や開口面積も偏心位置に偏らせることで、音孔123aから外部に放出される音響信号AC2の分布も偏心位置に偏らせることができる。これにより、放出された音響信号AC2よって音響信号AC1の音漏れ成分を十分に相殺することができる。また、前述のように、ドライバーユニット15(第2ドライバーユニット)も、この偏心位置に偏って配置されることが望ましい。これにより、ドライバーユニット11,15の音圧が最大となる位置に外耳道を配置することが可能となり、広い周波数帯域で十分な音圧の音響信号を利用者に提示できるからである。
【0062】
さらに、第3実施形態において、さらに第2実施形態で説明した遮蔽板16が設けられてもよい。これにより、音孔123aから放出された音響信号AC2が利用者の外耳道に到達することを抑制でき、その結果、外耳道に到達する音響信号AC1が音響信号AC2によって打ち消されてしまうことを抑制できる。この場合、遮蔽板16も、この偏心位置に偏って配置されることが望ましい。例えば、遮蔽板16は、筐体12の外部空間における音孔123a(第2音孔)よりもD1方向側(第1方向側)に配置され、音孔121a(第1音孔)または複数の音孔121a(第1音孔)の中央は、軸線A12(特定の軸)上または軸線A12(軸)の近傍に配置され、貫通孔16aは、軸線A12(特定の軸)上または軸線A12(軸)の近傍に配置されることが望ましい。また、貫通孔16aは、軸線A12上に配置されることが望ましく、より好ましくは貫通孔16aの中心が軸線A12上に配置されることが望ましい。これにより、外耳道に到達する音響信号を軸線A12に対して線対称または略線対称にでき、外耳道に対する音響信号出力装置10の位置ずれ方向による聴取音の変化を減らすことができるからである。その他は、第2実施形態で説明した通りである。
【0063】
[第4実施形態]
第1実施形態から第3実施形態およびその変形例において、ドライバーユニット15(第2ドライバーユニット)が筐体に収容されていてもよい。
【0064】
<構成>
本実施形態の音響信号出力装置40も、利用者の外耳道を密閉せずに装着される音響聴取用の装置(例えば、オープンイヤー型(開放型)のイヤホン、ヘッドホン、設置型スピーカ、埋め込み型スピーカなど)である。
図24から
図27に例示するように、本実施形態の音響信号出力装置40は、再生装置から出力された出力信号(再生音響信号を表す電気信号)を音響信号に変換して出力するサイズの小さなドライバーユニット11と、出力信号を音響信号に変換して出力するサイズの大きなドライバーユニット15と、ドライバーユニット11を内部に収容している筐体12と、ドライバーユニット15を内部に収容している筐体42(第2筐体)とを有する。
【0065】
<筐体42>
筐体42(第2筐体)は、外側に壁部を持つ中空の部材であり、壁部に音孔421a,423aが設けられており、内部にドライバーユニット15を収容している。本実施形態の筐体42は、筐体12の外部空間に配置されている。ドライバーユニット15は、例えば、筐体42内部のD1方向側の端部に固定されている。しかし、これらは本発明を限定するものではない。ドライバーユニット15が収容された筐体42は、ドライバーユニット11が収容された筐体12のD2方向側に配置されている(
図26,
図27)。すなわち本実施形態でも、音響信号AC1を放出する筐体12の音孔121aは、ドライバーユニット11のD1方向側(第1方向側)に配置されており、ドライバーユニット15(第2ドライバーユニット)は、筐体12の外部空間に配置され、ドライバーユニット11のD2方向側(第2方向側)に配置されている。筐体42の形状には限定はないが、例えば、筐体42の形状が、D1方向に沿って伸びる軸線A1を中心とした回転対称(線対称)または略回転対称であることが望ましい。これにより、筐体42から放出される音のエネルギーの方向ごとのばらつきが小さくなるように音孔423aを設けることが容易となる。その結果、各方向に均一に音漏れを軽減することが容易になる。例えば、筐体42は、ドライバーユニット15の一方側(D1方向側)に配置された壁部421である第1端面と、ドライバーユニット15の他方側(D2方向側)に配置された壁部422である第2端面と、第1端面と第2端面とで挟まれた空間を、第1端面と第2端面とを通る軸線A1を中心に取り囲む壁部423である側面とを有する。本実施形態では、説明の簡略化のため、筐体42が両端面を持つ略円筒形状である例を示す。しかし、これらは一例であって本発明を限定するものではない。例えば、筐体42が、端部に壁部を持つ略ドーム型形状であってもよいし、中空の略立方体形状であってもよい、その他の立体形状であってもよい。また、筐体42を構成する材質にも限定はない。筐体42が合成樹脂や金属などの剛体によって構成されていてもよいし、ゴムなどの弾性体によって構成されていてもよい。筐体42の壁部には、ドライバーユニット15から放出された音響信号AC3(第3音響信号)を外部に導出する単数または複数の音孔321a(第3音孔)と、ドライバーユニット15から放出された音響信号AC4(第4音響信号)を外部に導出する単数または複数の音孔423a(第4音孔)とが設けられている。音孔421aおよび音孔423aは、例えば、筐体42の壁部を貫通する貫通孔であるが、これは本発明を限定するものではない。音響信号AC3および音響信号AC4をそれぞれ外部に導出できるのであれば、音孔421aおよび音孔423aが貫通孔でなくてもよい。
【0066】
本実施形態の音孔421a(第3音孔)は、ドライバーユニット15の一方側(音響信号AC3が放出される側であるD1方向側)に配置された壁部421の領域AR41に設けられている(
図24から
図27)。すなわち、音孔421aは軸線A1に沿ったD1方向(第1方向)を向いて開口している。言い換えると、音孔421aは筐体12およびドライバーユニット11側を向いて開口している。また、本実施形態の音孔423a(第4音孔)は、筐体42の壁部421の領域AR41とドライバーユニット15のD2方向側(音響信号AC4が放出される側である他方側)に配置された壁部422の領域AR42との間の領域AR40に接する壁部423の領域AR43に設けられている(
図27)。すなわち、筐体42の中央を基準とし、D1方向(第1方向)とD1方向の逆方向との間の方向をD42方向(第2方向)とすると、音孔421a(第3音孔)は、筐体42のD1方向側(第1方向側)に設けられており、音孔423a(第4音孔)は、筐体42のD42方向側(第2方向側)に設けられている。例えば、筐体42が、ドライバーユニット15の一方側(D1方向側)に配置された壁部421である第3端面と、ドライバーユニット15の他方側(D2方向側)に配置された壁部422である第4端面と、第3端面と第4端面とで挟まれた空間を、第3端面と第4端面とを通る音響信号AC3の放出方向(D1方向)に沿った軸線A1を中心に取り囲む壁部423である側面とを有する場合、音孔421a(第3音孔)は第3端面に設けられており、音孔423a(第4音孔)は側面に設けられている。また本実施形態では、筐体42の壁部422側には音孔を設けないことが望ましい。筐体42の壁部422側に音孔を設けると、筐体42から放出される音響信号AC4の音圧レベルが音響信号AC3の音漏れ成分を相殺するために必要なレベルを超えてしまい、その過剰分が音漏れとして知覚されてしまう場合があるからである。
【0067】
前述のように、筐体42の音孔421a,423aから放出される音響信号AC3,AC4は、再生音響信号のうち低周波数帯域側の音響信号である。一方、筐体12の音孔121a,123aから放出される音響信号AC1,AC2は、再生音響信号のうち高周波数帯域側の音響信号である。前述のように、周波数が低いほど音漏れ防止効果は高い。そのため、音孔421aから放出される音響信号AC3の音響信号AC4による音漏れ抑制効果は、音孔121aから放出される音響信号AC1の音響信号AC2による音漏れ抑制効果よりも大きい。そのため、筐体42の音孔421aの開口面積の総和を、筐体12の音孔121aの開口面積の総和よりも大きくしても、音孔421aから放出される音響信号AC3の音漏れの影響は小さい。一方、筐体42の音孔421aの開口面積の総和を大きくすることで、利用者に聴取される低域の音圧を高くすることができる。よって、好ましくは、筐体42の音孔421aの開口面積の総和(第3音孔の開口面積)は、筐体12の音孔121aの開口面積の総和(第1音孔の開口面積)よりも大きいことが望ましい。同様な理由から、筐体42の音孔423aの開口面積の総和S44に対する音孔421aの開口面積の総和S43の比率(第4音孔の開口面積に対する第3音孔の開口面積の比率)は、筐体12の音孔123aの開口面積の総和S42に対する音孔121aの開口面積の総和S41の比率(第2音孔の開口面積に対する第1音孔の開口面積の比率)よりも大きいこと(つまり、S43/S44>S41/S42)が望ましい。なお、本実施形態では、ドライバーユニット15が筐体42に収容されているが、音孔421aの開口面積を大きくとることができるため、自然な音質の音を再生できる。また、音孔421aの開口面積を大きくとることができるため、筐体42と外耳道との位置関係が変化しても聴取される音がさほど変化せず、多少装着状態にずれが生じても十分な音質を確保できる。
【0068】
筐体42に対する筐体12の相対位置は固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。例えば、筐体12は、図示していない部材によって、筐体42に固定されていてもよい。例えば、筐体12は、筐体42に対する相対位置を調整可能なように(筐体42に対する所望の相対位置に固定可能なように)に、図示していない部材によって筐体42に取り付けられていてもよい。筐体12と筐体42とが別体ではなく、筐体12と筐体42とが一体であってもよい。その他の筐体42の音孔421a,423aの配置構成は、第1実施形態から第3実施形態およびその変形例で説明した筐体12の音孔121a,123aの配置構成と同じである。
【0069】
音孔121aから放出された音響信号AC1および音孔421aから放出された音響信号AC3は利用者の外耳道に届き、利用者に聴取される。一方、音孔123aからは、音響信号AC1の逆位相信号または逆位相信号の近似信号である音響信号AC2が放出される。また音孔423aからは、音響信号AC3の逆位相信号または逆位相信号の近似信号である音響信号AC4が放出される。放出された音響信号AC2および音響信号AC4の一部は、放出された音響信号AC1および音響信号AC3の一部(音漏れ成分)を相殺する。これにより、音漏れを抑制できる。また、音響信号AC3によって低域の音圧を十分に得ることができる。その他の事項は、第1実施形態から第3実施形態およびその変形例で説明した通りである。
【0070】
[第4実施形態の変形例]
例えば、筐体12の音孔121a(第1音孔)または複数の音孔121a(第1音孔)の中央、および、筐体42の音孔421a(第3音孔)または複数の音孔421a(第3音孔)の中央が、軸線A1上(特定の軸上)または軸線A1(軸)の近傍に配置されていてもよい。これにより、音孔121aから放出される音響信号AC1および音孔421aから放出される音響信号AC3の音圧が最大となる位置に外耳道を配置することが可能となり、広い周波数帯域で十分な音圧の音響信号を利用者に提示できる。また、ドライバーユニット11とドライバーユニット15とが同軸上に配置されることで、ドライバーユニット11,15の間の距離を同軸上で変化させ、聴取させる音響信号の音圧や音漏れ量を調整することが容易になる。
【0071】
[その他の変形例]
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。本請求項に記載された発明の範囲を遺脱しない限り、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1,10,40 音響信号出力装置
11,15 ドライバーユニット
12,42 筐体
16 遮蔽板
113,153 振動板