(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041251
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】電子部品接合方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20240319BHJP
B22F 7/08 20060101ALI20240319BHJP
B22F 3/14 20060101ALI20240319BHJP
C22C 21/00 20060101ALI20240319BHJP
B22F 1/107 20220101ALI20240319BHJP
【FI】
H01L21/52 D
B22F7/08 C
B22F3/14 A
C22C21/00 M
C22C21/00 A
B22F1/107
C22C21/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145954
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000224798
【氏名又は名称】DOWAホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】陳 伝▲トウ▼
(72)【発明者】
【氏名】小山内 英世
(72)【発明者】
【氏名】小林 幸司
【テーマコード(参考)】
4K018
5F047
【Fターム(参考)】
4K018AA02
4K018BA01
4K018BB01
4K018BB04
4K018BD04
4K018EA01
4K018JA36
4K018KA33
5F047AA17
5F047BA21
5F047BA53
5F047BB11
5F047BB16
(57)【要約】
【課題】従来より高い接合強度でアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板上に電子部品を接合することができる、電子部品接合方法を提供する。
【解決手段】アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板10の一方の面をブラスト処理することによって、算術平均粗さRaが1.7μm以上でビッカース硬さHVが30~50になるように表面処理し、その金属板の一方の面に銀ペーストを塗布して電子部品14を配置した後、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層12を形成し、この銀接合層12によって電子部品14を金属板10の一方の面に接合することによって電子部品搭載基板を製造する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板の一方の面をブラスト処理することによって、金属板の一方の面の算術平均粗さRaが1.7μm以上でビッカース硬さHVが30~50になるように表面処理した後、その金属板の一方の面に銀ペーストを塗布して電子部品を配置し、その後、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層によって電子部品を金属板の一方の面に接合することを特徴とする、電子部品接合方法。
【請求項2】
前記焼結が、前記金属板に対して前記電子部品を加圧しながら加熱することによって行われることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品接合方法。
【請求項3】
前記ブラスト処理の前処理として、前記金属板の一方の面を水酸化ナトリウム水溶液で化学研磨することを特徴とする、請求項1に記載の電子部品接合方法。
【請求項4】
前記ブラスト処理の後処理として、前記金属板の一方の面を硝酸水溶液に浸漬することを特徴とする、請求項1に記載の電子部品接合方法。
【請求項5】
前記金属板が、アルミニウム純度99.0%以上の純アルミニウムからなることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品接合方法。
【請求項6】
前記ブラスト処理前の前記金属板の一方の面のビッカース硬さが25~40であることを特徴とする、請求項5に記載の電子部品接合方法。
【請求項7】
前記金属板が、0.15質量%以下のSiと、1.2~1.7質量%のFeと、0.05質量%以下のCuを含み、Mn、Mg、Cr、Zn、Ga、V、Ni、B、Zrをそれぞれ0.05質量%以下で合計0.15質量%以下含み、残部がAlと不可避不純物であるアルミニウム合金からなることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品接合方法。
【請求項8】
前記ブラスト処理前の前記金属板の一方の面のビッカース硬さが20~30であることを特徴とする、請求項7に記載の電子部品接合方法。
【請求項9】
前記電子部品の前記金属板の一方の面に接合される面が、前記銀ペーストで接合可能な金属で覆われていることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品接合方法に関し、特に、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板がセラミックス基板に接合した金属-セラミックス接合基板の金属板の一方の面に半導体チップなどの電子部品が取り付けられた電子部品搭載基板などを製造する際に、金属板の一方の面に電子部品を接合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車、電車、工作機械などの大電流を制御するために、パワーモジュールが使用されている。従来のパワーモジュールでは、ベース板と呼ばれている金属板または複合材の一方の面に金属-セラミックス絶縁基板が固定され、この金属-セラミックス絶縁基板の金属板上に半導体チップが半田付けにより固定されている。
【0003】
近年、銀微粒子を含む銀ペーストを接合材として使用し、被接合物間に接合材を介在させ、被接合物間に圧力を加えながら所定時間加熱して、接合材中の銀を焼結させて、被接合物同士を接合することが提案されており(例えば、特許文献1参照)、このような接合材を半田の代わりに使用して、金属-セラミックス絶縁基板の金属板上に半導体チップなどの電子部品を固定する試みがなされている。
【0004】
しかし、特許文献1の銀微粒子を含む銀ペーストを接合材として使用する場合、銅からなる被接合物や、金、銀、パラジウムなどの高価な貴金属でめっきされた被接合物でなければ、十分な接合強度を得ることができなかった。そのため、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる(電子部品搭載用)金属板がセラミックス基板に接合された金属-セラミックス絶縁基板や、その金属板がニッケルまたはニッケル合金でめっきされた金属-セラミックス絶縁基板の場合には、特許文献1の銀微粒子を含む銀ペーストを接合材として使用して、(電子部品搭載用)金属板上に十分な接合強度で半導体チップなどの電子部品を接合することができなかった。
【0005】
このような問題を解消するため、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板の一方の面に電子部品が搭載された電子部品搭載基板の製造方法において、金属板の一方の面の表面粗さが0.2μm以上になるように表面加工を行い、その面に銀ペーストを塗布して電子部品を配置した後、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層によって電子部品を金属板の一方の面に接合することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-80147号公報(段落番号0014-0020)
【特許文献2】特開2014-130989号公報(段落番号0008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2の方法では、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板上に電子部品を接合する強度が十分ではない場合があることがわかった。そのため、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板上にさらに十分な接合強度で電子部品を接合することが望まれている。
【0008】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、従来より高い接合強度でアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板上に電子部品を接合することができる、電子部品接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板の一方の面を(ブラスト処理によって算術平均粗さRaが1.7μm以上でビッカース硬さHVが30~50になるように)表面処理した後、その金属板の一方の面に銀ペーストを塗布して電子部品を配置し、その後、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層によって電子部品を金属板の一方の面に接合することにより、従来より高い接合強度でアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板上に電子部品を接合することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明による電子部品接合方法は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板の一方の面をブラスト処理することによって、金属板の算術平均粗さRaが1.7μm以上でビッカース硬さHVが30~50になるように表面処理した後、その金属板の一方の面に銀ペーストを塗布して電子部品を配置し、その後、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層によって電子部品を金属板の一方の面に接合することを特徴とする。
【0011】
この電子部品接合方法において、銀ペースト中の銀の焼結は、金属板に対して電子部品を加圧しながら加熱することによって行うのが好ましい。また、ブラスト処理の前処理として、金属板の一方の面を水酸化ナトリウム水溶液で化学研磨するのが好ましく、ブラスト処理の後処理として、金属板の一方の面を硝酸水溶液に浸漬するのが好ましい。また、金属板がアルミニウムからなる場合には、アルミニウム純度99.0%以上の純アルミニウムからなるのが好ましく、金属板の一方の面のビッカース硬さが25~40であるのが好ましい。また、金属板がアルミニウム合金からなる場合には、0.15質量%以下のSiと、1.2~1.7質量%のFeと、0.05質量%以下のCuを含み、Mn、Mg、Cr、Zn、Ga、V、Ni、B、Zrをそれぞれ0.05質量%以下で合計0.15質量%以下含み、残部がAlと不可避不純物であるアルミニウム合金であるのが好ましく、金属板の一方の面のビッカース硬さが20~30であるのが好ましい。さらに、電子部品の金属板の一方の面に接合される面が、銀ペーストで接合可能な金属で覆われているのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来より高い接合強度でアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板上に電子部品を接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による電子部品接合方法の実施の形態により電子部品を金属板に接合した電子部品搭載基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明による電子部品接合方法の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明による電子部品接合方法の実施の形態では、
図1および
図2に示すような電子部品搭載基板などを製造する際に、金属板の一方の面に電子部品を接合する。
【0016】
図1および
図2に示す電子部品搭載基板では、平面形状が略矩形の(電子部品搭載用)金属板10の一方の面に、(銀の焼結体を含む)銀接合層12により電子部品14が接合されている。また、金属板10の他方の面に、平面形状が略矩形のセラミックス基板16の一方の面を接合し、このセラミックス基板16の他方の面に、平面形状が略矩形の放熱用金属板(金属ベース板)18を接合してもよい。なお、金属板10は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、金属板10の一方の面(電子部品14が接合される面)が(ブラスト処理によって算術平均粗さRaが1.7μm以上でビッカース硬さHVが30~50になるように)表面処理されている。また、電子部品14の金属板10の一方の面に接合される面が、金、銀、銅およびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属またはこれらの合金のように、銀接合層12で接合可能な金属で覆われているのが好ましい。
【0017】
本発明による電子部品接合方法の実施の形態によって
図1および
図2に示すような電子部品搭載基板を製造する場合、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板10の一方の面を粗化および硬化させるように表面処理(ブラスト処理によって算術平均粗さRaが1.7μm以上(好ましくは1.8~2.5μm)でビッカース硬さHVが30~50(好ましくは31~50、さらに好ましくは40~50)になるように表面処理)し、その金属板10の一方の面に銀ペーストを塗布して電子部品14を配置した後、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層12を形成し、この銀接合層12によって電子部品14を金属板10の一方の面に接合する。
【0018】
なお、金属板10がアルミニウムからなる場合には、純アルミニウム(アルミニウム純度が好ましくは99.0%以上、さらに好ましくは99.5%以上の純アルミニウム)からなるのが好ましく、金属板10の一方の面のビッカース硬さは、好ましくは25~40、さらに好ましくは30~40である。また、金属板10がアルミニウム合金からなる場合には、0.15質量%以下のSiと、1.2~1.7質量%のFeと、0.05質量%以下のCuを含み、Mn、Mg、Cr、Zn、Ga、V、Ni、B、Zrをそれぞれ0.05質量%以下で合計0.15質量%以下含み、残部がAlと不可避不純物であるアルミニウム合金であるのが好ましく、金属板10の一方の面のビッカース硬さが20~30であるのが好ましい。
【0019】
また、ブラスト処理の前処理として、金属板10の一方の面を水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性の薬液で化学研磨してもよく、ブラスト処理の後処理として、金属板10の一方の面を硝酸水溶液に浸漬してもよい。水酸化ナトリウム水溶液による化学研磨は、2~4%の水酸化ナトリウム水溶液に10~50秒間浸漬することによって行うのが好ましく、硝酸水溶液への浸漬は、50~68%の硝酸水溶液に10~50秒間浸漬することによって行うのが好ましく、ブラスト処理は、液体中に微粒子を含む研磨材スラリーを金属板の表面に噴射するウエットブラスト処理によって行うのが好ましい。
【0020】
また、銀ペースト中の銀の焼結は、金属板10に対して電子部品14を加圧しながら加熱することによって行うのが好ましい。この焼結の際の加熱温度は、250~400℃であるのが好ましく、280~370℃であるのがさらに好ましい。また、この焼結の際の加熱時間は、30~60分間であるのが好ましい。また、この焼結の際に加圧する圧力は、0.5~4MPaであるのが好ましく、1~3MPaであるのがさらに好ましい。
【0021】
また、金属板10の他方の面に、平面形状が略矩形のセラミックス基板16の一方の面を接合し、このセラミックス基板16の他方の面に、平面形状が略矩形の放熱用金属板(金属ベース板)18を接合してもよい。この場合、これらの金属板10とセラミックス基板16の間およびセラミックス基板16と金属ベース板18の間の接合の後、金属板10の一方の面(電子部品14が接合される面)に上記の表面処理を行い、その金属板の一方の面に銀ペーストを塗布して電子部品14を配置した後、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層12を形成し、この銀接合層12によって電子部品14を金属板10の一方の面に接合すればよい。
【0022】
なお、金属板10とセラミックス基板16の間およびセラミックス基板16と金属ベース板18の間の接合では、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板10と金属ベース板18をそれぞれセラミックス基板16に直接接合してもよいが、アルミニウム合金などからなる公知のろう材により、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板10と金属ベース板18をそれぞれセラミックス基板16にろう接してもよい。
【0023】
また、銀ペーストとして、400℃以下の温度で焼結可能な銀微粒子を含むペーストを使用することができ、例えば、炭素数8以下(好ましくは6~8)の有機化合物で被覆された平均一次粒子径1~200nmの銀微粒子が分散媒(好ましくは極性溶媒)に分散した接合材(例えば、DOWAエレクトロニクス株式会社製のPA-HT-1503M-C)を使用することができる。このような銀微粒子が分散した分散媒に平均一次粒径(D50径)(累積50質量%粒径)が0.5~3.0μmの銀粒子がさらに分散した接合材(例えば、DOWAエレクトロニクス株式会社製のPA-HT-1001L)を使用してもよい。
【0024】
本発明による電子部品接合方法の実施の形態では、銀ペースト中の銀の焼結の際に0.5~4MPa(好ましくは1~3MPa)程度の低い圧力で加圧しながら250~400℃程度の低温で加熱した場合でも、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属板上に(接合部に空隙などの接合欠陥が殆どなく)十分な接合強度で電子部品を接合することができる。
【0025】
なお、本明細書中において、「算術平均粗さRa」および「最大高さRz」は、それぞれJIS B0601(2001年)に基づいて算出した算術平均粗さRaおよび最大高さRzをいう。また、「銀粒子の平均一次粒径(D50径)(累積50質量%粒径)」とは、レーザー回折法により測定した銀粒子の50%粒径(D50径)(累積50質量%粒径)をいい、「銀粒子の平均一次粒径(D50径)(累積50体積%粒径)」とは、レーザー回折法により測定した銀粒子の50%粒径(D50径)(累積50体積%粒径)をいい、「銀微粒子の平均一次粒子径」とは、透過型電子顕微鏡写真(TEM像)による銀微粒子の一次粒子径の平均値をいう。
【実施例0026】
以下、本発明による電子部品接合方法の実施例について詳細に説明する。
【0027】
[実施例1]
(電子部品搭載用)金属板として、40mm×40mm×1mmの大きさのアルミニウム合金(A8021)(0.15質量%以下のSiと、1.2~1.7質量%のFeと、0.05質量%以下のCuを含み、Mn、Mg、Cr、Zn、Ga、V、Ni、B、Zrをそれぞれ0.05質量%以下で合計0.15質量%以下含み、残部がAlと不可避不純物であるアルミニウム合金)からなるビッカース硬さHVが24.9の金属板を用意し、この金属板を常温で3%水酸化ナトリウム水溶液に30秒間浸漬して化学研磨し、ウエットブラスト装置(マコー株式会社製の型番NFR-737)により金属板の表面をウエットブラスト処理し、金属板を65.7%硝酸水溶液に30秒間浸漬することによって、金属板の表面処理を行った。なお、ウエットブラスト装置の処理条件として、エアー圧0.2MPa、処理速度10m/秒、投射距離20mm、投射角度90°とし、水中に砥粒として中心粒径180μmのメラミン樹脂#80/100を18体積%含む研磨材スラリーを使用した。この表面処理後の金属板の表面について、超深度表面形状測定顕微鏡(株式会社キーエンス製のVK-8500)の線粗さ測定機能を使用して、金属板の表面の任意の100μm×100μmの正方形の領域の1辺に平行な長さ100μmの任意の直線に沿った線粗さを測定した結果から、JIS B0601(2001年)に基づいて表面粗さ(算術平均粗さRaと最大高さRz)を算出した。その結果、表面処理後の金属板の表面の算術平均粗さRaは1.99μm、最大高さRzは8.71μmであった。また、表面処理後の金属板の表面について、微小硬さ試験機(株式会社ミツトヨ製のHM-221)を使用して、試験力(圧子を押し付ける荷重)が100gf(10.2N)になるまでの時間(負荷所要時間)を4秒間、試験力100gfを加える時間(保持時間)を5秒間、試験力が0gfになるまでの時間(降荷所要時間)を4秒間として、JIS Z2244(ビッカース硬さ試験-試験方法)に準じてビッカース硬さHVを測定した。その結果、表面処理後の金属板の表面のビッカース硬さHV33.2であった。
【0028】
また、平均一次粒径(D50径)(累積50体積%粒径)が6μmのフレーク状銀粒子と、エーテル系溶媒(株式会社ダイセル製のCELTOL IA)とを質量比(フレーク状銀粒子:エーテル系溶媒)が13:1になるように混合して銀ペーストを作製した。
次に、表面処理後の金属板の電子部品搭載部分に、上記の銀ペーストを厚さ100μmになるように塗布し、その上に電子部品として底面(裏面)にスパッタリングにより厚さ100nmのTi皮膜と厚さ1μmのAg皮膜がこの順で形成された(3mm×3mmの大きさの)SiCチップを配置し、大気中において、2MPaで加圧しながら、80℃で10分間、120℃で10分間、190℃で10分間予備加熱した後に、300℃で60分間加熱して、金属板にSiCチップを接合した。
【0029】
このようにして作製した電子部品搭載金属板を5mm×5mmの大きさに細断し、シェア強度測定機(株式会社アドウェルズ製のSPST2000N)を使用して、金属板からSiCチップが剥がれたときの力を測定し、シェア強度(接合強度)を求めたところ、26.8MPa以上であり、非常に強固に接合していた。
【0030】
[実施例2]
(電子部品搭載用)金属板として、35mm×35mm×1mmの大きさのアルミニウム純度99.50%以上の純アルミニウム(A1050)からなるビッカース硬さHVが37.2の金属板を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、表面処理後の金属板の表面粗さ(算術平均粗さRaと最大高さRz)を算出し、表面処理後の金属板の表面のビッカース硬さHVを測定し、電子部品搭載金属板を作製してシェア強度を求めた。その結果、Raは1.98μm、Rzは8.74μmであり、ビッカース硬さHVは43.1であった。また、シェア強度は32.3MPaであり、非常に強度に接合していた。
【0031】
[実施例3]
金属板を硝酸水溶液に浸漬しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、表面処理後の金属板の表面粗さ(算術平均粗さRaと最大高さRz)を算出し、表面処理後の金属板の表面のビッカース硬さHVを測定し、電子部品搭載金属板を作製してシェア強度を求めた。その結果、Raは1.96μm、Rzは8.65μmであり、ビッカース硬さHVは33.1であった。また、シェア強度は32.4MPaであり、非常に強度に接合していた。
【0032】
[実施例4]
金属板を硝酸水溶液に浸漬しなかった以外は、実施例2と同様の方法により、表面処理後の金属板の表面粗さ(算術平均粗さRaと最大高さRz)を算出し、表面処理後の金属板の表面のビッカース硬さHVを測定し、電子部品搭載金属板を作製してシェア強度を求めた。その結果、Raは1.84μm、Rzは8.31μmであり、ビッカース硬さHVは43.1であった。また、シェア強度は31.5MPaであり、非常に強度に接合していた。
【0033】
[比較例1]
実施例1と同様の金属板を使用し、表面処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、金属板の表面粗さ(算術平均粗さRaと最大高さRz)を算出し、金属板の表面のビッカース硬さHVを測定し、電子部品搭載金属板を作製してシェア強度を求めた。その結果、Raは0.35μm、Rzは1.55μmであり、ビッカース硬さHVは24.9であった。また、シェア強度は16.4MPaであり、接合強度が弱かった。
【0034】
[比較例2]
実施例2と同様の金属板を使用し、表面処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法により、金属板の表面粗さ(算術平均粗さRaと最大高さRz)を算出し、金属板の表面のビッカース硬さHVを測定し、電子部品搭載金属板を作製してシェア強度を求めた。その結果、Raは0.49μm、Rzは2.34μmであり、ビッカース硬さHVは37.2であった。また、シェア強度は27.0MPaであり、接合強度が弱かった。