(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041420
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】成膜装置、成膜方法及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
C23C14/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146238
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岡 健
(72)【発明者】
【氏名】市原 正浩
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029DB12
4K029DB18
(57)【要約】
【課題】基板に対して移動しながら成膜を行う蒸発源において、蒸着材料の蒸着レートの安定性低下を抑制する技術を提供すること。
【解決手段】成膜装置は、蒸着材料を収容する加熱可能な材料容器を有し、移動しながら基板に対して成膜を行う蒸発源と、蒸発源の移動を制御する制御手段と、を備える。制御手段は、蒸発源が基板に成膜する成膜範囲及び成膜範囲の領域外である非成膜範囲において、蒸発源を移動させ、非成膜範囲において、材料容器内の蒸着材料に振動を与える振動付与動作を蒸発源に実行させる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着材料を収容する加熱可能な材料容器を有し、移動しながら基板に対して成膜を行う蒸発源と、
前記蒸発源の移動を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記蒸発源が前記基板に成膜する成膜範囲及び前記成膜範囲の領域外である非成膜範囲において、前記蒸発源を移動させることが可能であり、
前記制御手段は、前記非成膜範囲での前記蒸発源の移動において、前記材料容器内の前記蒸着材料に振動を与える振動付与動作を前記蒸発源に実行させる、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記制御手段は、前記振動付与動作において、前記蒸発源が加速又は減速の少なくともいずれかを繰り返すように、前記蒸発源を移動させる、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
請求項2に記載の成膜装置であって、
前記制御手段は、前記振動付与動作において、前記蒸発源が所定の方向に移動しながら加速及び減速を繰り返すように、前記蒸発源を移動させる、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
請求項3に記載の成膜装置であって、
前記制御手段は、
前記成膜範囲において、前記蒸発源を第1の方向に移動させる第1の移動制御と、
前記非成膜範囲において、前記蒸発源を前記第1の方向に交差する第2の方向に移動させる第2の移動制御と、
を実行可能である、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
請求項4に記載の成膜装置であって、
前記制御手段は、前記第1の移動制御と前記第2の移動制御との間に、前記非成膜範囲において前記蒸発源を前記第1の方向に移動させながら前記蒸発源に前記振動付与動作を実行させる、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項6】
請求項4に記載の成膜装置であって、
前記制御手段は、前記第2の移動制御において前記蒸発源に前記振動付与動作を実行させる、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
請求項1に記載の成膜装置であって、
前記制御手段は、前記振動付与動作において、前記蒸発源が前進及び後退を繰り返すように、前記蒸発源を移動させる、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の成膜装置であって、
前記蒸発源は、前記非成膜範囲において第1の加速度で第1の速度まで加速した状態で前記成膜範囲に進入し、
前記振動付与動作において前記材料容器内の前記蒸着材料に振動を与えるために前記蒸発源にかかる加速度の絶対値は、前記第1の加速度よりも大きい、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の成膜装置であって、
前記蒸発源は、前記成膜範囲において第1の速度で移動しながら成膜を行い、
前記振動付与動作において、前記第1の速度よりも大きい速度と、前記第1の速度よりも小さい速度との間で加減速を繰り返す、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか一項に記載の成膜装置であって、
前記基板は半導体ウエハである、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項11】
蒸着材料を収容する加熱可能な材料容器を有し、移動しながら基板に対して成膜を行う蒸発源と、
前記蒸発源の移動を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記蒸発源が前記基板に成膜する成膜範囲及び前記成膜範囲の領域外である非成膜範囲において、前記蒸発源を移動させることが可能であり、
前記制御手段は、前記非成膜範囲において所定の方向に移動しながら加速又は減速の少なくともいずれかを繰り返すように、前記蒸発源を移動させる制御を実行する、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項12】
蒸着材料を収容する加熱可能な材料容器を有する蒸発源を備えた成膜装置の成膜方法であって、
前記蒸発源が移動しながら基板に対して成膜を行う成膜工程と、
前記蒸発源の移動を制御する制御工程と、を含み、
前記制御工程では、前記蒸発源が前記基板に成膜する成膜範囲及び前記成膜範囲の領域外である非成膜範囲において、前記蒸発源を移動させることが可能であり、
前記制御工程では、前記蒸発源が前記非成膜範囲において所定の方向に移動しながら加速又は減速の少なくともいずれかを繰り返すように、前記蒸発源を移動させる制御を実行する、
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項13】
蒸着材料を収容する加熱可能な材料容器を有する蒸発源を備えた成膜装置の成膜方法であって、
前記蒸発源が移動しながら基板に対して成膜を行う成膜工程と、
前記蒸発源の移動を制御する制御工程と、を含み、
前記制御工程では、前記蒸発源が前記基板に成膜する成膜範囲及び前記成膜範囲の領域外である非成膜範囲において、前記蒸発源を移動させることが可能であり、
前記制御工程では、前記非成膜範囲での前記蒸発源の移動において、前記材料容器内の前記蒸着材料に振動を与える振動付与動作を前記蒸発源に実行させる、
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の成膜方法により基板に成膜を行うことを含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、成膜方法及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(organic electro-luminescence:OEL)表示装置等の製造設備として、基板に対する成膜を行う装置が知られている。一例として、特許文献1には、有機化合物などの蒸着材料を収容する容器を備えた蒸着源が基板に対して移動しながら蒸着を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蒸発源において容器に収容された蒸着材料は、例えば容器壁面からの輻射熱を受けることで昇華して容器から放出される。しかしながら、容器内の蒸着材料が少なくなると、輻射熱の影響により蒸着材料の形状が不安定な状態となり蒸着材料が崩れてしまう恐れがある。崩れた蒸着材料が容器壁面に接触すると、輻射熱の影響で蒸着材料の突沸が生じ、蒸着材料の蒸着レートに影響を及ぼすことがある。とりわけ、基板に対して移動しながら成膜を行う蒸発源においては、成膜中に容器が移動しているため、蒸着材料が崩れることによる突沸の発生頻度が高くなることが考えられる。
【0005】
本発明は、基板に対して移動しながら成膜を行う蒸発源において、蒸着材料の突沸の発生を抑制して蒸着材料の蒸着レートの安定性低下を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
蒸着材料を収容する加熱可能な材料容器を有し、移動しながら基板に対して成膜を行う蒸発源と、
前記蒸発源の移動を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記蒸発源が前記基板に成膜する成膜範囲及び前記成膜範囲の領域外である非成膜範囲において、前記蒸発源を移動させることが可能であり、
前記制御手段は、前記非成膜範囲での前記蒸発源の移動において、前記材料容器内の前記蒸着材料に振動を与える振動付与動作を前記蒸発源に実行させる、
ことを特徴とする成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板に対して移動しながら成膜を行う蒸発源において、蒸着材料の突沸の発生を抑制して蒸着材料の蒸着レートの安定性低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る成膜システムのレイアウト図である。
【
図2】一実施形態に係る成膜装置の構成を模式的に示す正面図である。
【
図3】一実施形態に係る蒸発源の構成を模式的に示す断面図である。
【
図4】一実施形態に係る移動ユニットの構成を模式的に示す平面図である。
【
図5】蒸発源の移動範囲及び基板Wの成膜エリアを説明するための図である。
【
図7】材料容器内の蒸着材料の突沸について説明するための図である。
【
図9】材料容器内の蒸着材料の突沸の抑制について説明するための図である。
【
図12】(A)は有機EL表示装置の全体図、(B)は1画素の断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
また、各図において矢印Zは上下方向(重力方向)を示し、矢印X及び矢印Yは互いに直交する水平方向を示す。
【0011】
<第一実施形態>
<成膜システムの概要(
図1)>
図1は成膜システム1のレイアウト図である。成膜システム1は基板Wに対して成膜する装置である。例えば複数の成膜システム1がX方向に沿って並んで設けられることで、電子デバイスの製造ラインが構成される。電子デバイスとしては、例えば、VR-HMD(Virtual Reality Head Mount Display)用の有機EL表示装置の表示パネルが挙げられる。VR-HMD用の表示パネルの製造ラインとして成膜システム1が用いられる場合、成膜システム1は基板Wとしての半導体ウエハに有機EL素子の形成のための成膜を行う。成膜システム1によって成膜が行われた半導体ウエハは、下流の工程で素子形成領域の間の領域(スクライブ領域)に沿って切り出され、複数の小さなサイズのパネルが形成される。半導体ウエハとしては、シリコンウエハ、シリコンカーバイドウエハ等が挙げられる。成膜システム1は、パス室21a、21bと、基板搬送室22と、成膜室23と、マスク搬送室24と、マスクストック室25と、ロードロック室26と、制御部4とを含む。
【0012】
パス室21aには、成膜システム1において成膜が行われる基板Wが搬入される。基板搬送室22には、基板Wを搬送する搬送ロボット221が設けられる。搬送ロボット221は、パス室21aに搬入された基板Wを成膜室23に搬送する。成膜室23に搬送された基板Wには、後述の成膜装置3により成膜処理が施される。また、基板搬送室22の搬送ロボット221は、成膜室23において成膜処理が終了した基板Wをパス室21bに搬入する。パス室21bに搬入された基板Wは、成膜システム1の外部に搬出される。なお、成膜システム1が複数並んで設けられる場合には、基板Wの流れ方向(X方向)で上流側の成膜システム1のパス室21bが下流側の成膜システム1のパス室21aを兼ねていてもよい。また、マスク搬送室24には、マスクMを搬送する不図示の搬送ロボットが設けられている。マスクストック室25には、成膜室23での成膜処理に用いられるマスクMがストックされる。ロードロック室26は、成膜システム1の各室内を大気開放することなくマスクMの出し入れを行うための室である。成膜システム1で用いられるマスクMは、ロードロック室26を介して成膜システム1の外部から搬入される。マスク搬送室24の搬送ロボットは、成膜室23、マスク搬送室24、マスクストック室25及びロードロック室26の間でマスクMの搬送を行う。
【0013】
また、成膜システム1は、各構成要素の動作を制御する制御部4を含む。例えば、制御部4は、CPUに代表されるプロセッサ、RAM、ROM等のメモリ及び各種インタフェースを有する1つ以上の制御装置を含む。例えば、制御部4の各制御装置は、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することで、成膜システム1における各種の処理を実現する。なお、例えば成膜システム1を統括的に制御するホストコンピュータ等が、成膜システム1の各構成要素の動作を直接制御する態様も採用可能である。
【0014】
また、成膜システム1を構成する各室の内部は、不図示の真空ポンプ等の排気機構により真空状態に維持される。なお、本実施形態において「真空」とは、大気圧より低い圧力の気体で満たされた状態、換言すれば減圧状態をいう。
【0015】
<成膜装置(
図2)>
図2は、一実施形態に係る成膜装置3の構成を模式的に示す正面図である。成膜装置3は、基板支持部31と、マスク支持部32と、マグネット33と、蒸発源34a~34cと、移動ユニット35と、制限板36と、防着板37と、アライメントカメラ38と、を含む。以下、蒸発源34a~34cについて特に区別しない場合に蒸発源34と表記する。
【0016】
基板支持部31は、基板Wを支持する。本実施形態では基板支持部31は静電チャックであり、基板Wを吸着して支持する。しかしながら、基板支持部31としては公知の技術を適宜採用可能である。例えば、基板支持部31は、複数の受け爪によって基板Wの縁を下側から支持してもよいし、粘着チャック等によって基板Wを吸着して支持してもよい。
【0017】
マスク支持部32は、マスクMを支持する。本実施形態では、マスク支持部32は、受け爪321によってマスクMを下側から支持する。マグネット33は、マスク支持部32に支持されたマスクMを磁力で引きつけることによって、基板WとマスクMとの密着性を向上させるためのものである。また、基板支持部31又はマスク支持部32の少なくとも一方は、ボールねじ機構等の公知の機構により上下方向に移動可能に構成されてもよい。これにより、基板WとマスクMとの接近及び離間を行うことができる。
【0018】
蒸発源34は、移動しながら蒸着材料を放出して基板Wに成膜を行う。移動ユニット35は、蒸発源34を移動する。蒸発源34及び移動ユニット35については後述する。
【0019】
制限板36は、蒸発源34から放出される蒸着材料の放出範囲を制限するための板である。防着板37は、蒸発源34から放出された蒸着材料の基板W等への付着を抑制する板である。防着板37は、蒸着材料の基板W等への付着を許容する開状態(
図2の状態)と、蒸着材料の基板W等への付着を抑制するために基板Wの下方に位置する閉状態との間でX方向に変位可能である。
【0020】
アライメントカメラ38は、基板WとマスクMとのアライメントに用いられるカメラである。本実施形態では、成膜装置3は、基板支持部31に支持された基板Wとマスク支持部32に支持されたマスクMの相対位置を調整するための不図示のアライメント機構を含む。例えば、制御部4は、アライメントカメラ38の撮影画像から基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークを検出して基板W及びマスクMの位置関係を特定する。そして、制御部4は、基板W及びマスクMの位置関係が所定の条件を満たすように、アライメント機構を制御してこれらの位置関係を調整する。
【0021】
<蒸発源(
図2~
図3)>
蒸発源34についてさらに説明する。
図3は、蒸発源34の構成を模式的に示す断面図である。蒸発源34は、材料容器341(るつぼ)と、加熱部342とを含む。
【0022】
材料容器341は、内部に蒸着材料を収容する。材料容器341の上部には、蒸発又は昇華した蒸着材料が放出される放出部3411が形成されている。放出部3411は、本実施形態では材料容器341の上面に形成された開口(放出口)だが、筒状の部材等であってもよい。また、放出部3411が材料容器341に設けられてもよい。
【0023】
加熱部342は、材料容器341に収容された蒸着材料を加熱する。加熱部342は、材料容器341を覆うように設けられる。本実施形態では加熱部342として電熱線を用いたシーズヒータが使用されており、
図3にはシーズヒータの電熱線が材料容器341の周囲に巻き付けられたときの断面が示されている。
【0024】
加熱部342による蒸着材料の加熱は、制御部4によって制御される。
図2に示すように、本実施形態では、蒸発源34a~34cは、それぞれ独立に材料容器341及び加熱部342を有している。よって、制御部4は、蒸発源34a~34cによる蒸着材料の蒸発をそれぞれ独立に制御することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、X方向に離間した複数(3つ)の蒸発源34a~34cが設けられている。しかしながら、蒸発源34の数は2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。また、複数の蒸発源34が収容する蒸着材料は同一であってよいし、一部の蒸発源34が他と異なる蒸着材料を収容してもよいし、全ての蒸発源34が互いに異なる材料を収容してもよい。例えばこれらの蒸発源34a~34cのうち、X方向において中央の蒸発源34bがホスト材料を収容し、その両側の蒸発源34a、34cがドーパント材料を収容してもよい。これにより、ホスト材料の蒸着粒子とドーパント材料の蒸着粒子とを共蒸着して、発光層を形成することができる。
【0026】
<移動ユニット(
図2、
図4)>
図2及び
図4を参照し、移動ユニット35について説明する。
図4は、移動ユニット35の構成を模式的に示す平面図である。移動ユニット35は、一対の可動レール351と、一対の固定レール352と、アーム部材353と、アーム部材354と、駆動源355とを有する。アーム部材353の一端は駆動源355に連結されており、駆動源355によって旋回する。アーム部材353の他端はアーム部材354の一端と回動自在に連結されており、アーム部材354の他端は蒸発源34の底部に回動自在に連結されている。
【0027】
一対の可動レール351は、蒸発源34のX方向の移動を案内する。各可動レール351はX方向に延設されており、一対の可動レール351は互いにY方向に離間している。一対の固定レール352は、一対の可動レール351のY方向の移動を案内する。各固定レール352は、移動不能に固定されており、X方向に延設されている。一対の固定レール352は互いにX方向に離間している。駆動源355の駆動により、アーム部材353及びアーム部材354の姿勢が変化することによって、蒸発源34は基板Wの下方においてXY方向に移動することができる。
【0028】
<蒸発源の成膜範囲及び基板の成膜エリア(
図5~
図6)>
図5は、蒸発源34の移動範囲及び基板Wの成膜エリアを説明するための図である。本実施形態では、蒸発源34は移動ユニット35によりX方向(第1の方向)に移動しながら基板Wに対して成膜を行う。
【0029】
蒸発源34のX方向の移動範囲は、蒸発源34から放出された蒸着材料が基板Wに付着する成膜範囲R1と、成膜範囲外の非成膜範囲R2に分けられる。なお、
図5では、蒸発源34a~34cのX方向の中心位置を基準として各範囲が境界づけられている。成膜範囲R1は、基板Wの成膜エリアA1と、基板Wの高さにおいて蒸発源34から放出された蒸着材料が到達する領域である有効成膜エリアA2とがX方向に重複する範囲である。また、非成膜範囲R2は、成膜エリアA1と、有効成膜エリアA2とがX方向に重複しない範囲である。また、非成膜範囲R2は、成膜範囲R1のX方向負側の非成膜範囲R21と、成膜範囲R1のX方向正側の非成膜範囲R22とを含む。
【0030】
図5の例では、蒸発源34のX方向の位置POS2と位置POS3との間が成膜範囲R1となる。また、位置POS2と位置POS2よりX方向負側の位置POS1との間が非成膜範囲R21となり、位置POS3と位置POS3よりX方向正側の位置POS4が非成膜範囲R22となる。
【0031】
例えば、蒸発源34は、移動ユニット35によってX方向正側に向かって移動しながら成膜する場合、まず非成膜範囲R21において成膜時の速度まで加速する。そして、蒸発源34は、速度が一定になった状態で成膜範囲R1に進入する。その後、蒸発源34は、非成膜範囲R22に進入してから減速する。これで、1回(1スキャン)分の成膜が終了する。このように、非成膜範囲R2において加速及び減速を行うことによって、成膜範囲R1における速度を一定にすることができる。よって、基板Wに形成される薄膜のX方向の厚さのばらつきを抑制することができる。
【0032】
図6は、成膜時の蒸発源34の移動経路を示す図である。基板Wには、複数の素子形成領域w1が形成されている。蒸発源34は、全ての素子形成領域w1に対して成膜を行うために、X方向に移動しながらの成膜(スキャン成膜)と、非成膜範囲でのY方向(第2の方向)の移動(スライド)とを繰り返す。
図6の例では、成膜エリアA1は4つのエリアA11~A14に分けられる。蒸発源34は、1回のスキャン成膜ごとに4つのエリアA11~A14のうちの1つのエリアに対して成膜を行う。
【0033】
<蒸着材料の突沸(
図7)>
図7は、材料容器341内の蒸着材料の突沸について説明するための図である。状態ST1は材料容器341内に蒸着材料を補充した後の状態であり、状態ST2は成膜処理の実行により材料容器341内の蒸着材料の一部が放出された状態である。材料容器341に収容された蒸着材料は、加熱部342により加熱された容器壁面からの輻射熱を受けることで昇華又は蒸発して容器から放出される。材料容器341内の蒸着材料は容器壁面に接した(或いは近接した)部分から先に放出されていくことになるため、蒸着が進むと蒸着材料の形状が不安定な状態となり蒸着材料が崩れてしまう恐れがある。崩れた蒸着材料が容器壁面に接触すると、輻射熱の影響で蒸着材料の突沸が生じ、蒸着材料の蒸着レートに影響を及ぼすことがある。とりわけ、本実施形態のように基板に対して移動しながら成膜を行う蒸発源においては、成膜中に容器が移動しているため、蒸着材料が崩れることによる突沸の発生頻度が高くなることが考えられる。そこで、本実施形態では、以下の動作を行うことで蒸着材料の突沸を抑制する。
【0034】
<動作説明(
図8)>
図8は、蒸発源34の動作を説明するための図である。グラフ801は、X方向への1回の成膜における、時刻に対するX方向の速度を示すグラフである。グラフ802は、時刻に対するX方向の加速度を示すグラフである。ここで、時刻t0は、蒸発源34が移動を開始する時刻である。このとき、蒸発源34は、初期位置としての位置POS1に位置しているものとする。また、時刻t1は、蒸発源34が位置POS2に到達した時刻である。時刻t2は、蒸発源34が位置POS3に到達した時刻である。時刻t3は、蒸発源34が位置POS4に到達した時刻である。つまり、蒸発源34は、時刻t0~t1、及びt2~3において非成膜範囲R2を移動し、時刻t1~t2において成膜範囲R1を移動している。また、本実施形態では、制御部4が移動ユニット35を制御することによって、蒸発源34が以下で説明するように動作する。
【0035】
時刻t0~t1において、蒸発源34は、非成膜範囲R21内で成膜時の速度v1まで加速する。ここでは、蒸発源34の加速度a1は一定値(<0)であるが、蒸発源34のか速度は一定でなくてもよい。蒸発源34が位置POS2に到達する前に蒸発源34が速度v1となるので、蒸発源34は基板Wへの成膜の開始時から一定の速度で移動でき、基板Wに形成される膜の膜厚の変動を抑制することができる。その後、時刻t1~t2において、蒸発源34は、成膜範囲R1を一定の速度v1で移動する。
【0036】
時刻t2~t3において、蒸発源34は、非成膜範囲R22を移動する。このとき、蒸発源34は、加速と減速を繰り返した後に停止する。これは、蒸発源34の材料容器341に収容された蒸着材料に振動を与えるための動作(振動付与動作と表記することがある)である。すなわち、制御部4は、非成膜範囲R22において、材料容器341内の蒸着材料に振動が与える振動付与動作を蒸発源34に実行させる。このように、本実施形態によれば、制御部4による制御によって実行される蒸発源34の振動付与動作によって、蒸着材料の形状を均質化して、蒸着材料の突沸を抑制することができる。
【0037】
図9は、材料容器341内の蒸着材料の突沸の抑制について説明するための図である。材料容器341内の蒸着材料の形状が不安定になった状態(状態ST2)で、蒸発源34の加速及び減速によって蒸着材料に振動が与えられると、蒸着材料の形状が均質化される(状態ST3)これにより、蒸着材料が崩れて材料容器341の壁面に接触することによる突沸の発生を抑制することができる。なお、状態ST2から状態ST3へ移行する過程で蒸着材料が崩れて材料容器341の壁面に接触することも考えられる。しかし、本実施形態では、材料容器341内の蒸着材料に振動を与えるための動作が非成膜範囲R2において行われる。よって、蒸発源34が成膜範囲R1に進入する際には蒸着材料の形状が均質化した状態(状態ST3)となっているので、基板Wに対する成膜を行っている間に蒸着材料の突沸が発生することを抑制することができる。すなわち、成膜結果に対する蒸着材料の突沸の影響を低減することができる。
【0038】
また、本実施形態では、振動付与動作において蒸発源34にかかる加速度a2の絶対値は、前述した加速度a1の絶対値よりも大きい。これにより、材料容器341内の蒸着材料に対して効果的に振動を与えることができる。また、本実施形態では、振動付与動作において、蒸発源34は、成膜時の速度v1よりも大きい速度v2と、速度v1よりも小さい速度v3(=0)との間で加減速を繰り返す。このような蒸発源34の動作によっても、材料容器341内の蒸着材料に対して効果的に振動を与えることができる。なお、速度v3は0より大きい値であってもよい。
【0039】
<他の実施形態>
図10は、蒸発源の動作を説明するための図である。詳しくは、蒸発源34の材料容器341内の蒸着材料に対する振動付与動作の他の例を示す図である。グラフ1001~1004は、X方向への1回の成膜における、時刻に対するX方向の速度を示すグラフである。
【0040】
グラフ1001は、蒸発源34の加速は行わずに、減速を繰り返す例を示している。このような速度変化によっても、材料容器341内の蒸着材料に対して振動を与えることができる。このように、材料容器341内の蒸着材料に対して振動を与える動作として、加速又は減速の少なくともいずれかが繰り返されてもよい。一例として、非成膜範囲R21において蒸発源34が速度v1に達するまでに、減速を行わずに加速と等速での移動を繰り返してもよい。
【0041】
グラフ1002は、蒸発源34の急減速を1回のみ行う例を示している。すなわち、蒸発源34を急停止させることによって、材料容器341内の蒸着材料に対して振動を与える。このとき、減速度の値(加速度の絶対値)を、加速度a1(
図8)の値よりも大きくなるように設定してもよい。成膜開始時や方向切り替え時等のいわゆる通常の成膜動作における加速又は減速よりも大きな加減又は減速を行うことによって、材料容器341内の蒸着材料に対して効果的に振動を与えることができる。
【0042】
グラフ1003は、加速及び減速を行いながら、平均としては徐々に減速していく例を示している。このように、加速及び減速を繰り返す際の速度の極大値及び極小値は一定でなくてもよい。
【0043】
グラフ1004は、蒸発源34が前進及び後退を繰り返す例を示している。すなわち、蒸発源34は、例えばX方向正側に進みながら振動付与動作を行うのではなく、所定の位置で前進及び後退を繰り返すことによって振動付与動作を行ってもよい。或いは、前進及び後退を繰り返しながら、トータルで前進する態様も採用可能である。
【0044】
また、グラフ1001~1004においては、蒸発源34が成膜範囲R1を通過した後の非成膜範囲R22において振動付与動作を行う例が示されている。しかし、振動付与動作が成膜範囲R1へ進入する前の非成膜範囲R21で行われてもよいし、非成膜範囲R21及び非成膜範囲R22の両方で行われてもよい。
【0045】
また、
図8及び
図10の例では、蒸発源34がX方向に進みながらX方向の加速及び減速を行うことによって材料容器341内の蒸着材料に振動を付与している。しかしながら、蒸発源34は、Y方向の加速及び減速によって蒸着材料に振動を付与してもよい。すなわち、蒸発源34が非成膜範囲R2において所定の方向に移動しながら加速又は減速することによって、材料容器341内の蒸着材料に振動が与えられてもよい。
【0046】
図11は、蒸発源の動作を説明するための図である。詳しくは、蒸発源34の材料容器341内の蒸着材料に対する振動付与動作の他の例を示す図である。
図11は、成膜システム1を上方から見た場合の、蒸発源34の移動経路とマスクMとの位置関係を模式的に示している。この例では、蒸発源34は、成膜範囲R1の通過後に、位置POS3から位置POS4へX方向に移動しながらY方向の正側及び負側への移動を交互に繰り返している。このように、主な進行方向とは交差する方向に加速及び減速を繰り返すことによって、材料容器341内の蒸着材料に振動を付与してもよい。
【0047】
また、蒸発源34は、例えば
図11の位置POS1又は位置POS4においてY方向に移動しながら振動付与動作を行ってもよい。すなわち、Y方向に移動しながら、X方向又はY方向への加減速を繰り返すことによって材料容器341内の蒸着材料に対して振動を付与してもよい。
【0048】
また、上記実施形態の成膜装置3は基板Wとしての半導体ウエハに対して成膜を行うが、他の種類の基板に成膜を行う成膜装置に対しても上記実施形態の特徴を適用可能である。例えば、第6世代(G6)のフルサイズ(約1500mm×約1850mm)又はハーフカットサイズ(約1500mm×約925mm)の矩形の基板等大型のガラス基板等に対して成膜を行う成膜装置であってもよい。
【0049】
<電子デバイスの製造方法>
次に、電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
【0050】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図12(A)は有機EL表示装置50の全体図、
図12(B)は1画素の断面構造を示す図である。
【0051】
図12(A)に示すように、有機EL表示装置50の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。
【0052】
なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。カラー有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの複数の副画素の組み合わせにより画素52が構成されている。画素52は、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子の3種類の副画素の組み合わせで構成されることが多いが、これに限定はされない。画素52は少なくとも1種類の副画素を含めばよく、2種類以上の副画素を含むことが好ましく、3種類以上の副画素を含むことがより好ましい。画素52を構成する副画素としては、例えば、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子と黄色(Y)発光素子の4種類の副画素の組み合わせでもよい。
【0053】
図12(B)は、
図12(A)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板53上に、第1の電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、赤色層56R・緑色層56G・青色層56Bのいずれかと、電子輸送層57と、第2の電極(陰極)58と、を備える有機EL素子で構成される複数の副画素を有している。これらのうち、正孔輸送層55、赤色層56R、緑色層56G、青色層56B、電子輸送層57が有機層に当たる。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0054】
また、第1の電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2の電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bにわたって共通で形成されていてもよいし、発光素子ごとに形成されていてもよい。すなわち、
図12(B)に示すように正孔輸送層55が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成された上に赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bが副画素領域ごとに分離して形成され、さらにその上に電子輸送層57と第2の電極58が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成されていてもよい。
【0055】
なお、近接した第1の電極54の間でのショートを防ぐために、第1の電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層60が設けられている。
【0056】
図12(B)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を有する複数の層で形成されてもよい。また、第1の電極54と正孔輸送層55との間には第1の電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成してもよい。同様に、第2の電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層を形成してもよい。
【0057】
赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bのそれぞれは、単一の発光層で形成されていてもよいし、複数の層を積層することで形成されていてもよい。例えば、赤色層56Rを2層で構成し、上側の層を赤色の発光層で形成し、下側の層を正孔輸送層又は電子ブロック層で形成してもよい。あるいは、下側の層を赤色の発光層で形成し、上側の層を電子輸送層又は正孔ブロック層で形成してもよい。このように発光層の下側又は上側に層を設けることで、発光層における発光位置を調整し、光路長を調整することによって、発光素子の色純度を向上させる効果がある。
【0058】
なお、ここでは赤色層56Rの例を示したが、緑色層56Gや青色層56Bでも同様の構造を採用してもよい。また、積層数は2層以上としてもよい。さらに、発光層と電子ブロック層のように異なる材料の層が積層されてもよいし、例えば発光層を2層以上積層するなど、同じ材料の層が積層されてもよい。
【0059】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。ここでは、赤色層56Rが下側層56R1と上側層56R2の2層からなり、緑色層56Gと青色層56Bは単一の発光層からなる場合を想定する。
【0060】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1の電極54が形成された基板53を準備する。なお、基板53の材質は特に限定はされず、ガラス、プラスチック、金属などで構成することができる。本実施形態においては、基板53として、ガラス基板上にポリイミドのフィルムが積層された基板を用いる。
【0061】
第1の電極54が形成された基板53の上にアクリル又はポリイミド等の樹脂層をバーコートやスピンコートでコートし、樹脂層をリソグラフィ法により、第1の電極54が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層59を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0062】
絶縁層59がパターニングされた基板53を第1の成膜室に搬入し、正孔輸送層55を、表示領域の第1電極54の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層55は、最終的に1つ1つの有機EL表示装置のパネル部分となる表示領域51ごとに開口が形成されたマスクを用いて成膜される。
【0063】
次に、正孔輸送層55までが形成された基板53を第2の成膜室に搬入する。基板53とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、正孔輸送層55の上の、基板53の赤色を発する素子を配置する部分(赤色の副画素を形成する領域)に、赤色層56Rを成膜する。ここで、第2の成膜室で用いるマスクは、有機EL表示装置の副画素となる基板53上における複数の領域のうち、赤色の副画素となる複数の領域にのみ開口が形成された高精細マスクである。これにより、赤色発光層を含む赤色層56Rは、基板53上の複数の副画素となる領域のうちの赤色の副画素となる領域のみに成膜される。換言すれば、赤色層56Rは、基板53上の複数の副画素となる領域のうちの青色の副画素となる領域や緑色の副画素となる領域には成膜されずに、赤色の副画素となる領域に選択的に成膜される。
【0064】
赤色層56Rの成膜と同様に、第3の成膜室において緑色層56Gを成膜し、さらに第4の成膜室において青色層56Bを成膜する。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bの成膜が完了した後、第5の成膜室において表示領域51の全体に電子輸送層57を成膜する。電子輸送層57は、3色の層56R、56G、56Bに共通の層として形成される。
【0065】
電子輸送層57までが形成された基板を第6の成膜室に移動し、第2電極58を成膜する。本実施形態では、第1の成膜室~第6の成膜室では真空蒸着によって各層の成膜を行う。しかし、本発明はこれに限定はされず、例えば第6の成膜室における第2電極58の成膜はスパッタによって成膜するようにしてもよい。その後、第2電極68までが形成された基板を封止装置に移動してプラズマCVDによって保護層60を成膜して(封止工程)、有機EL表示装置50が完成する。なお、ここでは保護層60をCVD法によって形成するものとしたが、これに限定はされず、ALD法やインクジェット法によって形成してもよい。
【0066】
ここで、第1の成膜室~第6の成膜室での成膜は、形成されるそれぞれの層のパターンに対応した開口が形成されたマスクを用いて成膜される。成膜の際には、基板53とマスクとの相対的な位置調整(アライメント)を行った後に、マスクの上に基板53を載置して成膜が行われる。
【0067】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0068】
1:成膜システム、23:成膜室、3:成膜装置、34:蒸発源、35:移動ユニット