(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041536
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20240319BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240319BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20240319BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H01L21/56 Z
H01L23/30 R
H01L21/60 311S
C08L63/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146411
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 育彦
(72)【発明者】
【氏名】濱上 弘行
(72)【発明者】
【氏名】関 皓平
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
5F044
5F061
【Fターム(参考)】
4J002CD05W
4J002CD13X
4J002DA038
4J002DJ016
4J002DJ017
4J002FD017
4J002FD098
4J002FD206
4J002GQ05
4M109AA01
4M109BA04
4M109CA05
4M109DB17
4M109EA02
5F044RR18
5F044RR19
5F061AA01
5F061BA04
5F061CA05
5F061DB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】素子と基板との間の接続部の強度に優れる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板1と、素子2と、基板1と素子2とを電気的に接続する接続部4と、素子2の周縁部に配置される補強材3と、を備える半導体装置の製造方法であって、素子2の周縁部に硬化性樹脂組成物を付与することと、下記式(1)を満たす温度T(℃)で前記硬化性樹脂組成物をプレヒートすることと、プレヒートの後の硬化性樹脂組成物を硬化させて補強材3を形成することと、を含む。
式(1):T
min-a≦T≦T
min+b
式中、T
minは硬化性樹脂組成物の溶融粘度が最小値となるときの温度(℃)であり、a及びbはそれぞれ独立に0以上5以下の数である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、素子と、前記基板と前記素子とを電気的に接続する接続部と、前記素子の周縁部に配置される補強材と、を備える半導体装置の製造方法であって、
前記素子の周縁部に硬化性樹脂組成物を付与することと、
下記式(1)を満たす温度T(℃)で前記硬化性樹脂組成物をプレヒートすることと、
前記プレヒートの後の硬化性樹脂組成物を硬化させて補強材を形成することと、を含む、半導体装置の製造方法。
式(1) Tmin-a≦T≦Tmin+b
式中、Tminは硬化性樹脂組成物の溶融粘度が最小値となるときの温度(℃)であり、a及びbはそれぞれ独立に0以上5以下の数である。
【請求項2】
前記硬化は、硬化性樹脂組成物の溶融粘度が最小値の115%~130%となる温度で前記硬化性樹脂組成物を加熱することを含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記補強材の一部は前記基板と前記素子との間に入り込んでいる、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記硬化性樹脂組成物はエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記補強材のガラス転移温度(Tg)は100℃以上であり、ガラス転移温度以下の温度領域における熱膨張係数(CTE1)は25ppm/℃以下であり、ガラス転移温度以上の温度領域における熱膨張係数(CTE2)は80ppm/℃以下である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な半導体パッケージの実装技術においては、半導体チップのような素子をはんだのような導電性の接続部を介して基板の上に配置し、さらに、接続部の周囲の空間がアンダーフィル材と呼ばれる樹脂材料で充填される。これらの樹脂材料は、使用目的に応じた要求を満たすように物性の改善が検討されている。例えば、特許文献1には、アミノフェノール型のエポキシ樹脂を含むことで硬化後の熱膨張率の上昇抑制と充填時の粘度低減とを両立させたアンダーフィル材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、第5世代移動通信規格(5G)技術の普及に伴って、通信機器等に使用される半導体パッケージの実装技術に新たな課題が生じている。たとえば、従来から使用されている樹脂材料が高周波数の電波の伝送効率を低下させる原因となって通信遅延などが発生する可能性が指摘されている。そこで、接続部の周囲の空間を樹脂材料で充填する代わりに素子の周縁部のみに補強材を配置する構成が検討されている。
【0005】
上記構成では接続部の周囲が樹脂材料で充填されないため、素子の周縁部に配置された補強材の膨張収縮に起因するひずみが接続部に生じて接続部が劣化するおそれがある。このため、上記構成では接続部の強度を充分に確保する必要がある。
上記事情に鑑み、本開示の一態様は、素子と基板との間の接続部の強度に優れる半導体装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>基板と、素子と、前記基板と前記素子とを電気的に接続する接続部と、前記素子の周縁部に配置される補強材と、を備える半導体装置の製造方法であって、
前記素子の周縁部に硬化性樹脂組成物を付与することと、
下記式(1)を満たす温度T(℃)で前記硬化性樹脂組成物をプレヒートすることと、
前記プレヒートの後の硬化性樹脂組成物を硬化させて補強材を形成することと、を含む、半導体装置の製造方法。
式(1) Tmin-a≦T≦Tmin+b
式中、Tminは硬化性樹脂組成物の溶融粘度が最小値となるときの温度(℃)であり、a及びbはそれぞれ独立に0以上5以下の数である。
<2>前記硬化は、硬化性樹脂組成物の溶融粘度が最小値の115%~130%となる温度で前記硬化性樹脂組成物を加熱することを含む、<1>に記載の半導体装置の製造方法。
<3>前記補強材の一部は前記基板と前記素子との間に入り込んでいる、<1>又は<2>に記載の半導体装置の製造方法。
<4>前記硬化性樹脂組成物はエポキシ樹脂を含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
<5>前記補強材のガラス転移温度(Tg)は100℃以上であり、ガラス転移温度以下の温度領域における熱膨張係数(CTE1)は25ppm/℃以下であり、ガラス転移温度以上の温度領域における熱膨張係数(CTE2)は80ppm/℃以下である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、素子と基板との間の接続部の強度に優れる半導体装置の製造方法及び半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】補強材の形状の具体例を模式的に示す断面図である。
【
図2】補強材の形状の具体例を模式的に示す平面図である。
【
図3】補強材の形状の具体例を模式的に示す平面図である。
【
図4】実施例で用いた硬化性樹脂組成物の溶融粘度の測定結果を示すグラフである。
【
図5】実施例における補強材の形成方法を模式的に示す平面図である。
【
図6】実施例における補強材の形成方法を模式的に示す断面図である。
【
図7】実施例で作製した半導体装置の冷熱衝撃試験結果から作成したワイブルプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0010】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0011】
本開示の半導体装置の製造方法は、
基板と、素子と、前記基板と前記素子とを電気的に接続する接続部と、前記素子の周縁部に配置される補強材と、を備える半導体装置の製造方法であって、
前記素子の周縁部に硬化性樹脂組成物を付与することと、
下記式(1)を満たす温度T(℃)で前記硬化性樹脂組成物をプレヒートすることと、
前記プレヒートの後の硬化性樹脂組成物を硬化させて補強材を形成することと、を含む。
式(1) Tmin-a≦T≦Tmin+b
式中、Tminは硬化性樹脂組成物の溶融粘度が最小値となるときの温度(℃)であり、a及びbはそれぞれ独立に0以上5以下の数である。
【0012】
本開示において「素子の周縁部」とは、基板の上に配置された素子を直上から平面視したときに、素子の輪郭又はその近傍(素子に相当する領域の内部及び外部のいずれかでも両方でもよい)に相当する部分を意味する。
本開示において硬化性樹脂組成物の「溶融粘度」とは、溶融した状態の硬化性樹脂組成物の粘度を意味する。
【0013】
本開示の方法では、素子の周縁部に付与された硬化性樹脂組成物を硬化させる前に、式(1)を満たす温度Tで前記硬化性樹脂組成物をプレヒートする。
温度Tでプレヒートされている硬化性樹脂組成物は粘度が低く、流動性が高い状態にあるため、素子の周縁部に付与された硬化性樹脂組成物の一部が基板と素子との間に入り込みやすい。すなわち、硬化性樹脂組成物を硬化させる前にプレヒートすることで、補強材の一部が基板と素子との間に入り込んだ状態の半導体素子を得ることができる。補強材の一部が基板と素子との間に入り込んだ状態の半導体素子は、補強材の膨張収縮に起因するひずみが接続部に与える影響を小さくでき、接続部の強度が充分に確保される。
【0014】
プレヒートの際に硬化性樹脂組成物を温度Tで加熱する時間は特に制限されず、硬化性樹脂組成物の物性等に応じて選択できる。
素子の周縁部に付与された硬化性樹脂組成物の形状を良好に保持する観点からは、硬化性樹脂組成物を温度Tで加熱する時間は10分以下であることが好ましい。
素子の周縁部に付与された硬化性樹脂組成物の一部を基板と素子との間に入り込ませる観点からは、硬化性樹脂組成物を温度Tで加熱する時間は2分以上であることが好ましい。
式(1)におけるa及びbは、それぞれ独立に0以上5以下の数である。a及びbは、それぞれ独立に2.5以下であってもよく、1.5以下であってもよい。
【0015】
本開示において、硬化性樹脂組成物の溶融粘度はレオメータ装置を用いて測定する。
具体的には、硬化性樹脂組成物の温度を常温(25℃付近)から昇温速度10℃/分、回転数1Hzの条件で上昇させたときの粘度を溶融温度として測定する。
レオメータ装置としては、例えば、HR-2(ティー・エイ・インスツルメント社製)を使用できる。
【0016】
プレヒートの後に硬化性樹脂組成物を硬化させる工程は、硬化性樹脂組成物の溶融粘度が最小値の115%~130%となる温度で硬化性樹脂組成物を加熱することを含むことが好ましい。
硬化性樹脂組成物の溶融粘度が最小値の115%以上となる温度で加熱することで、硬化の際の硬化性樹脂組成物の変形が抑制されて所望の形状の補強材を形成することができる。
硬化性樹脂組成物の溶融粘度が最小値の130%以下となる温度で加熱することで、硬化にかかる時間を短縮でき、生産性の向上が期待できる。
【0017】
硬化のための加熱の温度は、プレヒートのための加熱温度より高くても低くてもよい。周波数特性の変化を抑制する、硬化性樹脂組成物の素子と基板との接続部への接触を防ぐといった観点からは、硬化のための加熱の温度はプレヒートのための加熱温度よりも低いことが好ましい。
【0018】
必要に応じ、本開示の方法で使用する基板にプラズマ処理、コロナ処理、フレーム処理等の表面処理を施してもよい。
基板に表面処理を施すことで、例えば、硬化性樹脂組成物の濡れ性が向上し、プレヒート中に硬化性樹脂組成物が基板と素子との間に入り込みやすくなる。
【0019】
本開示の方法において、基板の上に素子を配置する方法は特に制限されず、一般的な方法から選択できる。
例えば、基板の上にはんだバンプ等の接続部を介して素子を配置した状態で加熱処理を行って基板と素子とを電気的に接続させ、次いで、素子の周縁部に補強材を配置してもよい。必要に応じ、素子の外周部を封止材でさらに封止してもよい。
【0020】
本開示の方法で製造される半導体装置において、素子の周縁部に配置される補強材の形状は、特に制限されない。
図1は、補強材の形状の例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、半導体装置10を構成する基板1と素子2とは接続部4により電気的に接続されている。また、素子2の周縁部には補強材3が配置されている。補強材3の一部は、基板1と素子2との間に入り込んでいる。
【0021】
補強材3は、素子の周縁部の全体に配置されても、部分的に配置されてもよい。
図4及び
図5は補強材が配置される位置の具体例を模式的に示す平面図である。補強材3は、
図4に示すように素子の周縁部に連続的に配置されても、
図5に示すように素子の周縁部に非連続的に配置されてもよい。
【0022】
基板と素子との間の距離(距離が一定でない場合は、素子の周縁部における距離)は特に制限されず、素子の大きさ、種類等に応じて選択できる。たとえば、50μm~1000μmの範囲から選択できる。
補強材の高さ(高さが一定でない場合は、高さの最大値)は特に制限されず、半導体装置の大きさ、種類等に応じて選択できる。たとえば、50μm~1000μmの範囲から選択できる。
補強材の幅(幅が一定でない場合は、幅の最大値)は特に制限されず、半導体装置の大きさ、種類等に応じて選択できる。たとえば、50μm~1000μmの範囲から選択できる。
【0023】
半導体装置における基板及び素子の種類は特に制限されず、半導体装置の用途等に応じて選択できる。
【0024】
本開示において、補強材は硬化性樹脂組成物を硬化して形成される。本開示において硬化性樹脂組成物とは、少なくとも硬化性樹脂を含み、必王に応じて他の成分を含む組成物を意味する。
【0025】
硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂として具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリル樹脂等の紫外線硬化性樹脂などが挙げられる。これらの中でもエポキシ樹脂が好ましい。
【0026】
所望の形状の補強材を素子の周縁部に形成する観点からは、硬化性樹脂組成物は25℃~50℃の範囲で液状であることが好ましい。
25℃~50℃の範囲で液状である硬化性樹脂組成物は、素子の周縁部の所望の領域に硬化性樹脂組成物を付与することが容易である。また、付与後に硬化性樹脂組成物を硬化させることで、素子の周縁部に硬化性樹脂組成物の硬化物が配置された構造を容易に形成することができる。
【0027】
本開示において「25℃~50℃の範囲で液状である」とは、25℃~50℃のいずれの温度においても液状であることを意味する。
【0028】
硬化性樹脂組成物の25℃~50℃における粘度は、10Pa・s以上であることが好ましく、20Pa・s以上であることがより好ましく、30Pa・s以上であることがさらに好ましい。
硬化性樹脂組成物の25℃~50℃における粘度が10Pa・s以上であると、所望の部位に補強材を付与した後に硬化させずに放置しても当初の形状が保持されやすい。
【0029】
硬化性樹脂組成物の25℃における粘度は300Pa・s以下であることが好ましく、250Pa・s以下であることがより好ましく、230Pa・s以下であることがさらに好ましい。
硬化性樹脂組成物の25℃における粘度が300Pa・s以下であると、硬化性樹脂組成物の付与をディスペンサー、スクリーン印刷機、インクジェット印刷機等の硬化性樹脂組成物を局所的に付与できる装置を用いて行うことができ、作業性に優れている。
【0030】
硬化性樹脂組成物の50℃における粘度は、特に制限されない。たとえば、200Pa・s以下であってもよく、180Pa・s以下であってもよく、150Pa・s以下であってもよい。
【0031】
硬化性樹脂組成物の粘度は、動的粘弾性測定装置を用いて実施例に記載した方法で測定される。
【0032】
硬化性樹脂組成物の硬化物の特性は特に制限されず、構造体の用途等に応じて選択できる。
【0033】
接続信頼性の観点からは、硬化性樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数(CTE1、ガラス転移温度以下の範囲におけるCTE)は25ppm/℃以下であることが好ましく、22ppm/℃以下であることがより好ましく、20ppm/℃以下であることがさらに好ましい。また、硬化性樹脂組成物の硬化物の熱膨張係数(CTE2、ガラス転移温度以上の範囲におけるCTE)は80ppm/℃以下であることが好ましく、75ppm/℃以下であることがより好ましく、70ppm/℃以下であることがさらに好ましい。
【0034】
耐熱性の観点からは、硬化性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)は100℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、140℃以上であることがさらに好ましい。
【0035】
本開示において硬化性樹脂組成物の硬化物のCTE1、CTE2及びTgは、実施例に記載した方法で測定される。
【0036】
硬化性樹脂組成物が硬化する温度(硬化温度)は特に制限されず、作業性の観点からは200℃以下であることが好ましく、170℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。また、硬化温度は70℃以上であることが好ましく、75℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましい。
【0037】
以下、硬化性樹脂組成物の一例として、エポキシ樹脂及び硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物について説明する。
エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂及び硬化剤の種類は特に制限されず、所望の物性等に応じて選択できる。
【0038】
エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び硬化剤として25℃で液状のものと25℃で固体のものを併用してもよい。例えば、25℃で液状のエポキシ樹脂と、25℃で固体の硬化剤とを含むものであってもよい。エポキシ樹脂及び硬化剤として25℃で液状のものと25℃で固体のものを併用することで、25℃~50℃の範囲で液状であり、25℃~50℃の範囲におけるチキソトロピック指数が1.0以上であるエポキシ樹脂組成物が得られやすい傾向にある。
【0039】
[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の種類は特に制限されない。例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、及びシロキサン系エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0040】
上記エポキシ樹脂の中でも、エポキシ樹脂組成物の特性のバランスの観点からはビスフェノール型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0041】
ビスフェノール型エポキシ樹脂として具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも25℃で液状のビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、25℃で液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。
25℃で液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、新日鉄住金化学株式会社の「エポトート YDF-8170C」が挙げられる。
【0042】
エポキシ樹脂組成物がビスフェノール型エポキシ樹脂を含む場合、そのエポキシ樹脂全体に占める割合は特に制限されず、エポキシ樹脂組成物の所望の特性に応じて選択できる。例えば、エポキシ樹脂全体の30質量%~100質量%であってもよく、40質量%~90質量%であってもよく、50質量%~70質量%であってもよい。
【0043】
グリシジルアミン型エポキシ樹脂として具体的には、ジグリシジルアミン型エポキシ樹脂、3官能以上のグリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも25℃で液状のグリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましく、25℃で液状の官能以上のグリシジルアミン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0044】
25℃で液状であるグリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、トリグリシジル-p-アミノフェノールが挙げられる。トリグリシジル-p-アミノフェノールの市販品としては、三菱ケミカル株式会社の「jER-630」及び「jER-630LSD」、並びに株式会社ADEKAの「EP-3950S」が挙げられる。
【0045】
エポキシ樹脂組成物がグリシジルアミン型エポキシ樹脂を含む場合、そのエポキシ樹脂全体に占める割合は特に制限されず、補強材の所望の特性に応じて選択できる。例えば、エポキシ樹脂全体の10質量%~100質量%であってもよく、20質量%~70質量%であってもよく、30質量%~50質量%であってもよい。
【0046】
[硬化剤]
エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤の種類は、特に制限されない。例えば、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
上記エポキシ樹脂の中でも、エポキシ樹脂組成物の特性のバランスの観点からはアミン硬化剤が好ましい。
アミン硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n-プロピルアミン、2-ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン等の脂肪族アミン化合物、ジエチルトルエンジアミン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2-メチルアニリン等の芳香族アミン化合物、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール等のイミダゾール化合物、イミダゾリン、2-メチルイミダゾリン、2-エチルイミダゾリン等のイミダゾリン化合物などが挙げられる。
【0048】
エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤は、25℃で液状であっても、25℃で固体であってもよい。ディスペンサー、スクリーン印刷機、インクジェット印刷機等を用いた付与のしやすさと形状保持性のバランスの観点からは、25℃で固体の硬化剤を用いることが好ましく、25℃で固体のアミン硬化剤を用いることがより好ましい。
【0049】
25℃で固体のアミン硬化剤としては、上述した脂肪族アミン化合物が挙げられる。25℃で固体のアミン硬化剤の市販品としては、株式会社T&K TOKAの「フジキュアー FXR-1020」、「フジキュアー FXR-1030」、「フジキュアー FXR-1081」及び「フジキュアー FXR-1121」が挙げられる。
【0050】
エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂と硬化剤との配合比は、それぞれの未反応分を少なく抑える関連からは、エポキシ樹脂のエポキシ基の数に対する硬化剤の官能基(アミン硬化剤の場合は活性水素)の数の比(硬化剤の官能基数/エポキシ樹脂のエポキシ基数)が0.5~2.0の範囲内となるように設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲内となるように設定されることがより好ましく、0.8~1.2の範囲内となるように設定されることがさらに好ましい。
【0051】
[無機フィラー]
硬化性樹脂組成物は、無機フィラーを含んでもよい。無機フィラーを含むことで、硬化性樹脂組成物の硬化物の熱膨張率の低減、熱伝導率の向上等が可能になる。
【0052】
無機フィラーとして具体的には、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等が挙げられる。
【0053】
上記無機フィラーの中でも、熱膨張率低減の観点からはシリカが好ましく、熱伝導性向上の観点からはアルミナが好ましい。無機フィラーは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
硬化性樹脂組成物に含まれる無機フィラーの含有率は、特に制限されない。硬化物の熱膨張率低減及び熱伝導率向上の観点からは、無機フィラーの含有率は硬化性樹脂組成物全体の40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。硬化性樹脂組成物の粘度上昇を抑制する観点からは、無機フィラーの含有率は補強材全体の90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることがさらに好ましい。
【0055】
無機フィラーが粒子状である場合、その平均粒子径は、特に制限されない。例えば、体積平均粒子径が0.05μm~20μmであることが好ましく、0.1μm~15μmであることがより好ましい。体積平均粒子径が0.05μm以上であると、補強材の粘度の上昇がより抑制される傾向にある。体積平均粒子径が20μm以下であると、狭い隙間への付与性がより向上する傾向にある。
【0056】
無機フィラーの体積平均粒子径は、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置により得られる体積基準の粒度分布において小径側からの体積の累積が50%となるときの粒子径(D50)とする。
【0057】
[各種添加剤]
硬化性樹脂組成物は、上述の成分に加えて、チキソ付与剤、硬化促進剤、応力緩和剤、カップリング剤、着色剤等の各種添加剤を含んでもよい。
硬化性樹脂組成物が硬化性樹脂、硬化剤及び無機フィラー以外の成分を含む場合、その合計含有率は硬化性樹脂組成物全体の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【実施例0058】
以下、本開示を実施例により具体的に説明するが、本開示の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
<実施例>
(樹脂組成物の調製)
表1に示す材料を混合し、樹脂組成物を調製した。各材料の詳細は下記のとおりである。エポキシ樹脂と硬化剤の配合割合は、エポキシ樹脂のエポキシ基数と硬化剤の活性水素数が等しくなるように設定した。調製した樹脂組成物又はその硬化物の物性を、下記に示す方法で測定した。結果を表1に示す。
【0060】
エポキシ樹脂1…25℃で液体のビスフェノールF型エポキシ樹脂
エポキシ樹脂2…25℃で液体のトリグリシジル-p-アミノフェノール
硬化剤…25℃で固体の低温硬化タイプの脂肪族アミン
チキソ付与剤…1次粒子径が10nm~20nmのアエロジルシリカ
無機フィラー…体積平均粒子径が30μmの球状シリカ
着色剤…カーボンブラック、商品名「MA-100」、三菱ケミカル株式会社
【0061】
(25℃での粘度の測定)
25℃の温度条件で、動的粘弾性測定装置(AR-2000、ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、10rpm(回転/分)における樹脂組成物の粘度を測定した。
【0062】
(溶融粘度の測定)
樹脂組成物の溶融粘度を、レオメータ装置(HR-2、ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、昇温速度10℃/分、回転数1Hzの条件で測定した。測定結果のグラフを
図4に示す。
図4に示すように、樹脂組成物の溶融粘度は90℃付近で最小値を示した。
【0063】
(CTE1、CTE2及びTgの測定)
樹脂組成物を120℃、15分で硬化処理して硬化物を得た。この硬化物を直径8mm、長さ20mmのサイズに切り出して、測定サンプルを作製した。
熱機械分析装置(TMA2940、TA instruments社製)を用いて、圧縮法にて0℃から240℃まで5℃/minで昇温したときの測定サンプルの長さの変化(線膨張係数)を測定し、測定温度10℃~30℃の範囲における線膨張係数の平均値をCTE1とし、測定温度180℃~200℃の範囲における線膨張係数の平均値をCTE2とした。また、100℃と200℃における接線の交点に対応する温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0064】
(貯蔵弾性率の測定)
樹脂組成物を、120℃、15分で硬化処理して硬化物を得た。この硬化物を60mm×10mm、厚さ2mmのサイズに切り出して、測定サンプルを作製した。
熱機械分析装置(Q800、TA instruments社製)を用いて、Dualcantilever beamモードで0℃から260℃まで3℃/min、周波数1Hzの条件で測定サンプルの貯蔵弾性率を測定した。
【0065】
【0066】
(半導体装置の作製)
調製した樹脂組成物と、基板と、素子とを用いて評価用の半導体装置を作製した。
基板としては、株式会社ウォルツ製のWALTS-KIT(WLP(S)300P/400P-2、30mm×30mm、厚さ978μm)を使用した。
素子としては、株式会社ウォルツ製のWLP TEG M2(0.4mm pitch BGA、6mm×6mm、厚さ725μm)を使用した。
【0067】
素子のはんだバンプにフラックス剤(千住金属工業株式会社製、SPARKLE FLUX WF-6400)を塗布した。次いで、フリップチップボンダー(東レ製、FC3000W)を用いて、基板の中心と素子の中心が一致するように、素子を基板の上に25℃にて仮実装した。次いで、リフロー装置(千住金属工業株式会社製、SNR-1065GT)を用いて、最高温度260℃の条件にてリフロー処理を行った。次いで、フラックス洗浄機(サクラ精機株式会社製、YWV-4635S)を用いて、80℃の水温にてフラックス剤を除去して、基板と素子とがはんだを介して接合した状態の構造体を得た。
【0068】
基板の上に配置された素子2の周縁部に配置される補強材3として、
図5に示す4つの領域にディスペンサー(武蔵エンジニアリング株式会社製、FAD2500)とノズル(武蔵エンジニアリング株製、TNPD-22G)を用いて樹脂組成物(25℃)を付与した。ディスペンサーの圧力は400kPaとし、速度は5mm/sとした。
ノズルの位置は、
図6に示すように素子2の上部とノズル5の先端との高低差aが300μmとなり、ノズル5のセンターと素子2の端部との間の距離bが500μmとなるように設定した。
ディスペンスの終了後、樹脂組成物の粘度が最低溶融粘度となる温度(90℃)で5分間の加熱処理を行った。その後、80℃で55分の加熱処理を行って樹脂組成物を硬化させ、半導体装置を作製した。
【0069】
<比較例>
ディスペンスの終了後、90℃での加熱処理を行わず、80℃で60分の加熱処理を行って樹脂組成物を硬化させたこと以外は実施例と同様にして、半導体装置を作製した。
【0070】
(接続信頼性の評価)
実施例及び比較例で作製した半導体装置の接続信頼性を、冷熱衝撃試験装置(楠本化成株式会社製、NT2031W)を用いて下記の方法で評価した。
試験前に、各サンプルの素子の外周部の初期抵抗値(R0)を測定する。次いで、冷熱衝撃試験装置を用いて、-55℃と125℃の各温度で15分保持することを繰り返す(100サイクル)試験を実施する。試験後に、サンプルの素子の外周部の抵抗値(Ri)を測定する。R0を基準としたときのRiの値が20%未満の上昇率であれば、サンプルに対して再度同様の試験を実施し、Riの上昇率が20%以上となったところで試験を終了する。
冷熱衝撃試験の結果からワイブルプロット図(
図7に示す)を作成し、20%累積故障時のサイクル数を算出した。結果を表2に示す。表2に示す値は各サンプルの平均値(n=3)である。
【0071】
(補強材の断面観察)
実施例及び比較例で作製した半導体装置を厚み方向に沿って切断し、基板と素子の間への補強材の入り込みの状態を観察した。結果を表2に示す。
【0072】
【0073】
表2に示すように、樹脂組成物の硬化前にプレヒートを行って作製した実施例の半導体装置は、樹脂組成物の硬化前にプレヒートを行わずに作製した比較例の半導体装置に比べて20%累積故障時のサイクル数が少なく、接続信頼性に優れていた。