(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041538
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20240319BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20240319BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/316 A
H05H1/46 L
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146413
(22)【出願日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】舟木 克典
(72)【発明者】
【氏名】竹島 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】グエン ヴァン チュウ
【テーマコード(参考)】
2G084
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
2G084AA07
2G084AA13
2G084BB23
2G084BB27
2G084CC04
2G084CC05
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD55
2G084FF04
2G084FF07
2G084FF15
2G084FF38
5F045AB32
5F045AC11
5F045AC16
5F045AD10
5F045AD11
5F045AD12
5F045AE19
5F045AF03
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5F045DP03
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5F045EH02
5F045EH04
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5F045EH11
5F045EK07
5F058BC02
5F058BF73
5F058BG03
5F058BG04
5F058BJ06
5F058BJ07
(57)【要約】
【課題】石英容器の内周面に形成された水酸化ケイ素膜に起因した、石英容器のクラック発生に伴う石英容器の交換を抑制する技術を提供する。
【解決手段】この技術によれば、基板が配置される処理室が形成される石英容器と、処理室へ処理ガスを供給するガス供給部と、石英容器を囲むように螺旋状に設けられ、石英容器の内周面において水酸化ケイ素膜が形成される部分よりも水酸化ケイ素膜が形成されていない部分の石英容器の外周面との距離と比して大きく配され、高周波電源からの高周波電力が供給されて処理ガスをプラズマ励起するコイルと、プラズマ励起された処理ガスによって基板を処理するように、高周波電源及びガス供給部を制御することが可能なよう構成される制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が配置される処理室が形成される石英容器と、
前記処理室へ処理ガスを供給するガス供給部と、
前記石英容器を囲むように螺旋状に設けられ、前記石英容器の内周面において水酸化ケイ素膜が形成される部分よりも前記水酸化ケイ素膜が形成されていない部分の前記石英容器の外周面との距離と比して大きく配され、高周波電源からの高周波電力が供給されて前記処理ガスをプラズマ励起するコイルと、
プラズマ励起された前記処理ガスによって前記基板を処理するように、前記高周波電源及び前記ガス供給部を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記石英容器の内周面には、前記石英容器を保護する保護膜が形成されている、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記保護膜は窒化ケイ素膜である、
請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
円筒状の円筒部材が、
前記石英容器の内周面の一部分に沿うように、部分部材が、前記処理室に設けられている、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記部分部材は、前記石英容器の内周面において水酸化ケイ素膜が形成される部分に沿うように設けられている、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記部分部材は、石英により形成されている、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記石英容器において水酸化ケイ素膜が形成されている部分に近接した前記コイルの周面と、前記石英容器の外周面との距離が、予め決められた所定値以上とされている、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記石英容器において温度変化が大きい部分に近接した前記コイルの周面と、前記石英容器の外周面との距離が、予め決められた所定値以上とされている、
請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記石英容器において下端部分に近接した前記コイルの周面と、前記石英容器の外周面との距離が、予め決められた所定値以上とされている、
請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項10】
螺旋状のコイルに囲まれた石英容器に形成された処理室に基板を搬入する工程と、
前記石英容器の内周面において水酸化ケイ素膜が形成される部分に近接した前記コイルの周面と前記石英容器の外周面との距離を、予め決められた所定値以上とし、かつ、前記水酸化ケイ素膜が形成されていない部分に近接した前記コイルの周面と前記石英容器の外周面との距離と比して大きくする工程と、
前記処理室に処理ガスを供給する工程と、
前記コイルに高周波電力を供給することで、前記処理室に供給された前記処理ガスをプラズマ励起する工程と、
プラズマ励起された前記処理ガスにより、前記基板の処理を行う工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記石英容器の内周面において水酸化ケイ素膜が形成される部分に沿う部分部材が用いられる、
請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
内周面に前記石英容器を保護する保護膜が形成されている前記石英容器が用いられる、
請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
螺旋状のコイルに囲まれた石英容器に形成された処理室に基板を搬入する手順と、
前記石英容器の内周面において水酸化ケイ素膜が形成される部分に近接した前記コイルの周面と前記石英容器の外周面との距離を、予め決められた所定値以上とし、かつ、前記水酸化ケイ素膜が形成されていない部分に近接した前記コイルの周面と前記石英容器の外周面との距離と比して大きくする手順と、
前記処理室に処理ガスを供給する手順と、
前記コイルに高周波電力を供給することで、前記処理室に供給された前記処理ガスをプラズマ励起する手順と、
プラズマ励起された前記処理ガスにより、前記基板の処理を行う手順と、
をコンピュータにより基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項14】
前記石英容器の内周面において水酸化ケイ素膜が形成される部分に沿う部分部材が用いられる、
請求項13に記載のプログラム。
【請求項15】
内周面に前記石英容器を保護する保護膜が形成されている前記石英容器が用いられる、
請求項13に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラッシュメモリ等の半導体装置は高集積化の傾向にある。それに伴い、パターンサイズが著しく微細化されている。これらのパターンを形成する際、製造工程の一工程として、基板に酸化処理や窒化処理等の所定の処理を行う工程が実施される場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、プラズマ励起した処理ガスを用いて基板上に形成されたパターン表面を改質処理することが開示されている。
【特許文献1】国際公開 WO2019/082569
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構成では、基板を処理するときに、水酸化ケイ素膜が石英容器の内周面に形成されることがある。ここで、石英容器をメンテナンスするときに、石英容器の温度が低下する。石英容器の内周面に形成された水酸化ケイ素膜の厚さが付着していると、石英容器の温度の低下に伴って水酸化ケイ素膜に応力が作用し、微細なクラックが水酸化ケイ素膜に生じることがある。この水酸化ケイ素膜の微細なクラックが進展し、石英容器にクラックが生じて石英容器の交換を要することがある。
【0005】
本開示によれば、石英容器の内周面に形成された水酸化ケイ素膜に起因した、石英容器のクラック発生に伴う石英容器の交換を抑制する技術が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、基板が配置される処理室が形成される石英容器と、前記処理室へ処理ガスを供給するガス供給部と、前記石英容器を囲むように螺旋状に設けられ、前記石英容器の内周面において水酸化ケイ素膜が形成される部分よりも前記水酸化ケイ素膜が形成されていない部分の前記石英容器の外周面との距離と比して大きく配され、高周波電源からの高周波電力が供給されて前記処理ガスをプラズマ励起するコイルと、プラズマ励起された前記処理ガスによって前記基板を処理するように、前記高周波電源及び前記ガス供給部を制御することが可能なよう構成される制御部と、を備える技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、石英容器の内周面に形成された水酸化ケイ素膜に起因した、石英容器のクラック発生に伴う石英容器の交換が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に係る基板処理装置を示した概略構成図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る基板処理装置を示した拡大構成図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る基板処理装置の遮蔽板、及び共振コイル等を示した斜視図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る基板処理装置の共振コイルを示した斜視図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る基板処理装置の共振コイルの巻径、電流・電圧及び電界強度の関係等を示す説明図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る基板処理装置の移動部、及び遮蔽板等を示した平面図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る基板処理装置の移動部を示した斜視図である。
【
図8】本開示の実施形態に係る基板処理装置の移動部を示した斜視図である。
【
図9】本開示の実施形態に係る基板処理装置のコントローラの制御系を示した制御ブロック図である。
【
図10】本開示の実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示したフロー図である。
【
図11】本開示の実施形態に対する比較形態に係る基板処理装置を示した概略構成図である。
【
図12】本開示の実施形態に対する比較形態に係る基板処理装置を示した拡大構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態の一例を
図1~12に従って説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものである。また、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。さらに、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。また、図中に示す矢印Hは装置上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Wは装置幅方向(水平方向)を示し、矢印Dは装置奥行き方向(水平方向)を示す。
【0010】
(基板処理装置100)
本実施形態に係る基板処理装置100は、主に基板に形成された膜に対して酸化処理を行うように構成されている。
【0011】
基板処理装置100は、
図1に示されるように、ウエハ200をプラズマ処理する処理炉202を備えている。処理炉202には、処理室201を構成する処理容器203が設けられている。処理容器203は、ドーム型の上側容器210と、碗型の下側容器211とを備えている。さらに、基板処理装置100は、下側容器211の上端を覆うと共に貫通孔が形成されたベースプレート248を備えている。ウエハ200は、基板の一例である。
【0012】
上側容器210は、上下方向に延びる円筒状の円筒部(筒状部)210aを有し、上側容器210が下側容器211の上に被さることにより処理室201が形成される。上側容器210は、石英(SiO
2)で形成されており、下側容器211は、例えばアルミニウム(Al)で形成されている。また、
図2に示されるように、上側容器210の下端部分には、上側容器210の径方向の外側に突出するフランジ210bが全周に亘って形成されている。そして、このフランジ210bは、ベースプレート248に図示せぬ固定部材で固定されている。
【0013】
また、上側容器210の内周面には、上側容器210を保護する保護膜としての窒化ケイ素(SiN)膜が形成されている。上側容器210は、石英容器の一例である。
【0014】
さらに、
図1、
図2に示されるように、処理室201には、上側容器210の下端部分の内周面に沿うように、円筒状の円筒部材290が設けられている。この円筒部材290は、SiO
2で形成されており、ベースプレート248に取り付けられている。上側容器210の下端部分は、上側容器210の一部分の一例であって、円筒部材290は、部分部材の一例である。
【0015】
また、
図1に示されるように、下側容器211の下部側壁には、ゲートバルブ244が設けられている。ゲートバルブ244は、開いているとき、搬送機構(図示せず)を用いて、搬入出口245を介して、処理室201へウエハ200を搬入したり、処理室201の外部へウエハ200を搬出したりすることができるように構成されている。ゲートバルブ244は、閉まっているときには、処理室201の気密性を保持する仕切弁となるように構成されている。
【0016】
処理室201は、
図3に示されるように、周囲に共振コイル212が設けられているプラズマ生成空間201aと、プラズマ生成空間201aに連通し、ウエハ200が処理される基板処理空間201bとを有する。プラズマ生成空間201aは、プラズマが生成される空間であって、処理室の内、共振コイル212の下端より上方であって、且つ共振コイル212の上端より下方の空間を言う。一方、基板処理空間201bは、基板がプラズマを用いて処理される空間であって、共振コイル212の下端より下方の空間を言う。本実施形態では、プラズマ生成空間201aと基板処理空間201bの水平方向の径は略同一となるように構成されている。
【0017】
〔サセプタ217〕
ウエハ200を載置する基板載置部としてのサセプタ217は、
図1に示されるように、処理室201の底側中央に配置されている。
【0018】
サセプタ217の内部には、加熱機構としてのヒータ217bが一体的に埋め込まれている。ヒータ217bは、電力が供給されると、ウエハ200表面を例えば25℃から750℃程度まで加熱することができるように構成されている。
【0019】
また、サセプタ217には、サセプタを昇降させる駆動機構を備えるサセプタ昇降機構268が設けられている。さらに、サセプタ217には貫通孔217aが設けられると共に、下側容器211の底面にはウエハ突上げピン266が設けられている。サセプタ昇降機構268によりサセプタ217が下降させられたときには、ウエハ突上げピン266がサセプタ217とは非接触状態で、貫通孔217aを突き抜けるように構成されている。
【0020】
主に、サセプタ217及びヒータ217bにより、本実施形態に係る基板載置部が構成されている。
【0021】
〔ガス供給部230〕
ガス供給部230は、
図1に示されるように、処理室201の上方に設けられている。具体的には、処理室201の上方、つまり上側容器210の上部には、ガス供給ヘッド236が設けられている。ガス供給ヘッド236は、キャップ状の蓋体233と、ガス導入口234と、バッファ室237と、開口238と、遮蔽プレート240と、ガス吹出口239とを備え、反応ガスを処理室201へ供給できるように構成されている。
【0022】
ガス導入口234には、酸素含有ガスとしての酸素(O2)ガスを供給する酸素含有ガス供給管232aの下流端と、水素含有ガスとしての水素(H2)ガスを供給する水素含有ガス供給管232bの下流端と、不活性ガスとしての例えばアルゴン(Ar)ガスを供給する不活性ガス供給管232cと、が合流するように接続されている。
【0023】
酸素含有ガス供給管232aには、上流側から順に、流量制御装置としてのマスフローコントローラ(MFC)252a、開閉弁としてのバルブ253aが設けられている。水素含有ガス供給管232bには、上流側から順に、MFC252b、バルブ253bが設けられている。不活性ガス供給管232cには、上流側から順に、MFC252c、バルブ253cが設けられている。なお、基板処理装置100には含まれないが、酸素含有ガス供給管232aのMFC252aの上流側には、O2ガス供給源250aが設けられ、水素含有ガス供給管232bのMFC252bの上流側には、H2ガス供給源250bが設けられ、不活性ガス供給管232cのMFC252cの上流側には、Arガス供給源250cが設けられている。
【0024】
酸素含有ガス供給管232aと水素含有ガス供給管232bと不活性ガス供給管232cとが合流した下流側には、バルブ243aが設けられ、ガス導入口234の上流端に接続されている。
【0025】
主に、ガス供給ヘッド236(蓋体233、ガス導入口234、バッファ室237、開口238、遮蔽プレート240、ガス吹出口239)、酸素含有ガス供給管232a、水素含有ガス供給管232b、不活性ガス供給管232c、MFC252a,252b,252c、バルブ253a,253b,253c,243aにより、本実施形態に係るガス供給部230(ガス供給系)が構成されている。尚、O2ガス供給源250a、H2ガス供給源250b、Arガス供給源250cをガス供給系に含めても良い。
【0026】
〔排気部228〕
排気部228は、
図1に示されるように、処理室201の下方で、搬入出口245に対して水平方向で対向するように設けられている。具体的には、下側容器211の側壁には、処理室201から反応ガスを排気するガス排気口235が設けられている。ガス排気口235には、ガス排気管231の上流端が接続されている。ガス排気管231には、上流側から順に圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)242、開閉弁としてのバルブ243b、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。
【0027】
主に、ガス排気口235、ガス排気管231、APC242、バルブ243bにより、本実施形態に係る排気部228が構成されている。尚、真空ポンプ246を排気部228に含めても良い。
【0028】
〔プラズマ生成部216〕
プラズマ生成部216は、
図1に示されるように、主に、上側容器210の円筒部210aの外壁の外側に設けられている。具体的には、処理室201の外周部、すなわち上側容器210の側壁の外側には、処理室201を囲むように、螺旋状の共振コイル212が設けられている。換言すれば、円筒部210aの径方向(以下「容器径方向」)の外側(円筒部210aの中心から離れる側)から処理容器203を囲むように、螺旋状の共振コイルが設けられている。共振コイル212は、電極であってコイルの一例である。
【0029】
また、共振コイル212には、RF(Radio Frequency)センサ272、高周波電源273、高周波電源273のインピーダンスや出力周波数の整合を行う整合器274が接続される。
【0030】
-高周波電源273、RFセンサ272、整合器274-
高周波電源273は、共振コイル212に高周波電力(RF電力)を供給するものである。RFセンサ272は高周波電源273の出力側に設けられ、供給される高周波の進行波や反射波の情報をモニタするものである。RFセンサ272によってモニタされた反射波電力は整合器274に入力され、整合器274は、RFセンサ272から入力された反射波の情報に基づいて、反射波が最小となるよう、高周波電源273のインピーダンスや出力される高周波電力の周波数を制御するものである。
【0031】
高周波電源273は、発振周波数および出力を規定するための高周波発振回路およびプリアンプを含む電源制御手段(コントロール回路)と、所定の出力に増幅するための増幅器(出力回路)とを備えている。電源制御手段は、操作パネルを通じて予め設定された周波数および電力に関する出力条件に基づいて増幅器を制御する。増幅器は、共振コイル212に伝送線路を介して一定の高周波電力を供給する。
【0032】
-共振コイル212-
共振コイル212は、所定の波長の定在波を形成するため、一定の波長で共振するように巻径、巻回ピッチ、巻数が設定される。すなわち、共振コイル212の電気的長さは、高周波電源273から供給される高周波電力の所定周波数における1波長の整数倍(1倍、2倍、…)に相当する長さに設定される。換言すれば、基板処理装置100は、共振コイル212の電気的長さの整数倍の波長を有する高周波電力を電極に供給する高周波電源を273備える。
【0033】
具体的には、印加する電力や発生させる磁界強度または適用する装置の外形などを勘案し、共振コイル212は、例えば、800kHz~50MHz、0.5~5KWの高周波電力によって0.01~10ガウス程度の磁場を発生し得る様に、50~300mm
2の有効断面積であって且つ200~500mmのコイル直径とされ、プラズマ生成空間201a(
図3参照)を形成する部屋の外周側に2~60回程度巻回される。
【0034】
なお、本明細書における「800kHz~50MHz」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「800kHz~50MHz」とは「800kHz以上50MHz以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0035】
好適な実施例としては、例えば、周波数を13.56MHz、又は27.12MHzとする。本実施形態では、高周波電力の周波数を27.12MHz、共振コイル212の電気的長さを1波長の長さ(約11メートル)に設定している。共振コイル212の巻回ピッチは、例えば、24.5mm間隔で、等間隔となるように設けられる。また、共振コイル212の巻径(直径)はウエハ200の直径よりも大きくなるように設定される。本実施形態では、ウエハ200の直径を300mmとし、共振コイル212の巻径はウエハ200の直径よりも大き、例えば、500mmとなるように設けられる。
【0036】
共振コイル212を構成する素材としては、銅パイプ、銅の薄板、アルミニウムパイプ、アルミニウム薄板、ポリマーベルトに銅またはアルミニウムを蒸着した素材などが使用される。
【0037】
共振コイル212の両端は電気的に接地され、そのうちの少なくとも一端は、装置の最初の設置の際又は処理条件の変更の際に当該共振コイルの電気的長さを微調整するため、可動タップ213を介して接地される。
図1の符号214は他方の固定グランドを示す。さらに、装置の最初の設置の際又は処理条件の変更の際に共振コイル212のインピーダンスを微調整するため、共振コイル212の接地された両端の間には、可動タップ215によって給電部が構成される。
【0038】
また、共振コイル212は、
図4に示されるように、共振コイル212の巻径が、共振コイル212の下端側の可動タップ215(
図1参照)が設けられる第1の接地点302において拡張し、第1の接地点302において共振コイル212の線路上の他の区間とは異なるように構成されている。
【0039】
つまり、上側容器210の径方向において、
図1に示されるように、上側容器210の外周面と共振コイル212の周面との距離については、共振コイル212の下端部分が、共振コイル212の他の部分と比して大きくなっている(
図4参照)。換言すれば、共振コイル212の下端部分の周面と上側容器210の外周面との距離は、共振コイル212において他の部分の周面と上側容器210の外周面との距離と比して大きくなっている。本実施形態では、上側容器210の径方向において、共振コイル212の下端部分の周面と上側容器210の外周面との距離は、8mm以上とされている。8mmは、予め決められた所定値の一例である。
【0040】
-遮蔽板224-
遮蔽板224は、
図1に示されるように、容器径方向の外側から共振コイル212を覆い、共振コイル212によって生じる電界を遮蔽すると共に、共振回路の構成の一つである共振回路を構成するのに必要な容量成分(C成分)を共振コイル212との間に形成するために設けられている。
【0041】
具体的には、遮蔽板224は、アルミニウム合金などの導電性材料を用いて成形され、容器径方向の外側から共振コイル212を覆う円筒状の本体部225と、本体部225の上端に接続されると共に容器径方向の内側に延びる上側フランジ226とを有している。さらに、遮蔽板224は、本体部225の下端に接続されると共に容器径方向の内側に延びる下側フランジ227を有している。
【0042】
前述した共振コイル212は、下側フランジ227の上端面に鉛直に立設された複数のサポート229によって支持される。また、ベースプレート248に載せられると共に上側容器210が通る貫通孔が形成された支持プレート256が設けられており、遮蔽板224は、この支持プレート256によって下方から支持されている。換言すれば、支持プレート256は、遮蔽板224及び共振コイル212を下方から支持している。そして、遮蔽板224は、共振コイル212の外周から5~150mm程度隔てて配置される。
【0043】
主に、共振コイル212、RFセンサ272、整合器274により、本実施形態に係るプラズマ生成部216が構成されている。尚、プラズマ生成部として高周波電源273を含めても良い。
【0044】
ここで、本実施形態に係る装置のプラズマ生成原理および生成されるプラズマの性質について
図3、
図5を用いて説明する。
【0045】
共振コイル212によって構成されるプラズマ発生回路はRLCの並列共振回路で構成される。しかしながら、上記プラズマ発生回路においては、実際の共振コイル212の共振周波数は僅かながら変動する。これは、プラズマを発生させた場合、共振コイル212の電圧部とプラズマとの間の容量結合の変動や、プラズマ生成空間201aとプラズマとの間の誘導結合の変動、プラズマの励起状態等によるものである。
【0046】
そこで、本実施形態においては、整合器274が、RFセンサ272において検出されたプラズマが発生した際の共振コイル212からの反射波電力に基づいて、反射波電力が最小となる様に高周波電源273のインピーダンス或いは出力周波数を増加または減少させる。このようにして、プラズマ発生時の共振コイル212における共振のずれが電源側で補償される。
【0047】
このような構成により、本実施形態における共振コイル212では、
図3に示す様に、プラズマを含む当該共振コイルの実際の共振周波数による高周波電力が供給されるので(或いは、プラズマを含む当該共振コイルの実際のインピーダンスに整合するように高周波電力が供給されるので)、位相電圧と逆位相電圧が常に相殺される状態の定在波が形成される。共振コイル212の電気的長さが高周波電力の波長と同じ場合、コイルの電気的中点(電圧がゼロのノード)に最も高い位相電流が生起される。従って、電気的中点の近傍においては、処理室壁やサセプタ217との容量結合が殆どなく、電気的ポテンシャルの極めて低いドーナツ状の誘導プラズマが形成される。
【0048】
具体的には、
図5に示されるように、共振コイル212の両端(下端と上端)及び中点において電流の定在波の振幅は最大となる。電流の振幅が最大となる位置の近傍では高周波磁界が形成され、この高周波磁界により処理室201に供給された反応ガスである処理ガスのプラズマが生成される。以下、このように生成される処理ガスのプラズマをICP(Inductively Coupled Plasma)成分のプラズマと称する。ICP成分のプラズマは、共振コイル212の両端及び中点の近傍となる領域(破線で示された領域)にドーナツ状に集中的に生成される。
【0049】
一方、共振コイル212の両端(下端と上端)及び中点において電圧の定在波の振幅は最小(理想的にはゼロ)となり、その間の位置において振幅は最大となる。電圧の振幅が最大となる位置の近傍では、高周波電界が形成され、この高周波電界により処理ガスのプラズマが生成される。このように生成される処理ガスのプラズマをCCP(Capacitively Coupled Plasma)成分のプラズマと称する。CCP成分のプラズマは、上側容器210内の内周面に沿った空間のうち、共振コイル212の下端と中点の間、及び上端と中点の間の領域(点線で示された領域)のそれぞれにドーナツ状に集中的に生成される。
【0050】
CCP成分のプラズマからは、ラジカルやイオンなどの反応種や電子(電荷)が生成される。その際生成されたプラスの電子(電荷)は、CCP成分のプラズマを生成する電界によって上側容器210の内周面側に引き寄せられ、上側容器210の内周面はプラスの電子(電荷)でチャージされる。すると、CCP成分のプラズマが励起されることにより生成されたマイナスのイオン(特に、質量の大きいマイナスイオン)は、内周面にプラスの電子(電荷)によってチャージされた内周面に向かって加速し、衝突する。そのため、上側容器210 の内周面面がスパッタリングされる。このスパッタリングされた部分の上側容器210の内周面が削られる。
【0051】
〔移動部310〕
移動部310は、共振コイル212を処理容器203に対して移動させるように構成されている。先ず、共振コイル212を処理容器203に対して移動させる目的について説明する。
【0052】
共振コイル212の位置ばらつき、処理容器203の形状ばらつき等により、上側容器210の径方向において、上側容器210の外周面と共振コイル212の周面との距離が、予め決められた所定値に対して小さくなる場合がある。詳細は後述するが、このように上側容器210の外周面と共振コイル212の周面との距離が小さい場合に、ウエハ200を処理するときに、水酸化ケイ素(SiOH)膜が上側容器210の内周面に形成される。そして、このSiOH膜に起因して、上側容器210にクラックが発生することがある。
【0053】
共振コイル212を処理容器203に対して移動させる移動部310は、
図6に示されるように、ベースプレート248の上面248aに設けられており、第一移動部320と、第二移動部370とから構成されている。
【0054】
第一移動部320は、共振コイル212及び遮蔽板224を容器径方向である装置奥行方向に移動させ、第二移動部370は、共振コイル212及び遮蔽板224を容器径方向であると共に装置奥行方向に対して直交する装置幅方向に移動させるようになっている。
【0055】
-第一移動部320-
第一移動部320は、
図6に示されるように、ベースプレート248において装置奥行方向の手前側(紙面下側)で、かつ、装置幅方向の一方側(紙面左側)の部分に配置されている。この第一移動部320は、
図7に示されるように、共振コイル212に間接的に取り付けられると共に共振コイル212と一体となって移動する可動部322と、作動することで可動部322を移動させて可動部322の位置を調整する機構である調整部332と、ステッピングモータである駆動部340とを備えている。ここで、「一体となって移動する」とは、相対関係を変えることなく移動すると言う意味である。
【0056】
-第一移動部320の可動部322-
可動部322は、
図7に示されるように、本体部324と、本体部324に支持されている支持部328とを備えている。
【0057】
本体部324は、装置幅方向に延びる直方体状の基部324aと、基部324aから装置幅方向の一方側へ延びる板状の延設部324bとを有している。基部324aの下端部分は、ベースプレート248の上面248aに形成された案内溝248bに挿入されている。これにより、本体部324は、案内溝248bに案内されて装置奥行方向に移動するようになっている。また、基部324aの上面には、装置幅方向に延びる案内溝326が形成されている。
【0058】
さらに、延設部324bは、板厚方向を装置奥行方向とし、装置奥行方向から見て、装置幅方向に延びる矩形状とされている。この延設部324bには、装置奥行方向に貫通する雌ねじ330が形成されている。
【0059】
また、支持部328は、装置幅方向に延びる直方体状の基部328aと、基部328aから上方へ突出する円柱状の円柱部328bとを有している。基部328aの上端部を除いた部分は、本体部324の基部324aの上面に形成された案内溝326に挿入されている。これにより、支持部328は、案内溝326に案内されて装置幅方向に移動するようになっている。
【0060】
また、支持プレート256には、外周面256aから突出し、上下方向を板厚方向とした突出部258が形成されている。さらに、この突出部258には、上下方向に貫通する貫通孔258aが形成されている。そして、支持部328の円柱部328bは、この貫通孔258aに挿入されている。
【0061】
-第一移動部320の調整部332-
調整部332は、
図7に示されるように、装置奥行方向に延びるねじ軸334と、ねじ軸334を回転可能に支持する一対の支持板336とを備えている。
【0062】
ねじ軸334の外周面には雄ねじ334aが形成されており、ねじ軸334の雄ねじ334aは、本体部324の雌ねじ330に締め込まれている。そして、ねじ軸334、雌ねじ330、及び図示せぬボール等を含んで既知のボールねじ構造が形成されている。また、駆動部340は、ねじ軸334を回転させるように設けられている。
【0063】
この構成において、駆動部340がねじ軸334を一方向に回転させることで、第一移動部320が、共振コイル212及び遮蔽板224を処理容器203に対して装置奥行方向の奥側へ移動させる。具体的には、駆動部340がねじ軸334を一方向に回転させることで、本体部324及び支持部328が装置奥行方向の奥側に移動する。さらに、本体部324及び支持部328が装置奥行方向の奥側に移動することで、支持プレート256を介して共振コイル212及び遮蔽板224が装置奥行方向の奥側へ移動する。
【0064】
これに対して、駆動部340がねじ軸334を他方向に回転させることで、第一移動部320が、共振コイル212及び遮蔽板224を処理容器203に対して装置奥行方向の手前側へ移動させる。具体的には、駆動部340がねじ軸334を他方向に回転させることで、本体部324及び支持部328が装置奥行方向の手前側に移動する。さらに、本体部324及び支持部328が装置奥行方向の手前側に移動することで、支持プレート256を介して共振コイル212及び遮蔽板224が装置奥行方向の手前側へ移動する。このように、共振コイル212と遮蔽板224とは、一体となって移動する。
【0065】
なお、第二移動部370によって、共振コイル212及び遮蔽板224が装置幅方向に移動した場合であっても、支持部328が案内溝326に案内されて装置幅方向に移動することで、第二移動部370による共振コイル212及び遮蔽板224の移動を吸収することができる。
【0066】
-第二移動部370-
第二移動部370は、
図6に示されるように、ベースプレート248において装置奥行方向の奥側(紙面上側)で、かつ、装置幅方向の一方側(紙面左側)の部分に配置されている。
【0067】
この第二移動部370は、
図8に示されるように、共振コイル212に間接的に取り付けられると共に共振コイル212と一体となって移動する可動部372と、作動することで可動部372を移動させて可動部372の位置を調整する機構である調整部382と、ステッピングモータである駆動部390とを備えている。
【0068】
-第二移動部370の可動部372-
可動部372は、
図8に示されるように、本体部374と、本体部374に支持されている支持部378とを備えている。
【0069】
本体部374は、装置奥行方向に延びる直方体状の基部374aと、基部374aから装置奥行方向の奥側へ延びる板状の延設部374bとを有している。基部374aの下端部分は、ベースプレート248の上面248aに形成された案内溝248cに挿入されている。
【0070】
これにより、本体部374は、案内溝248cに案内されて装置幅方向に移動するようになっている。また、基部374aの上面には、装置奥行方向に延びる案内溝376が形成されている。
【0071】
さらに、延設部374bは、板厚方向を装置幅方向とし、装置幅方向から見て、装置奥行方向に延びる矩形状とされている。この延設部374bには、装置幅方向に貫通する雌ねじ380が形成されている。
【0072】
支持部378は、装置奥行方向に延びる直方体状の基部378aと、基部378aから上方へ突出する円柱状の円柱部378bとを有している。基部378aの上端部を除いた部分は、本体部374の基部374aの上面に形成された案内溝376に挿入されている。これにより、支持部378は、案内溝376に案内されて装置奥行方向に移動するようになっている。
【0073】
また、支持プレート256には、外周面256aから突出し、上下方向を板厚方向とした突出部260が形成されている。さらに、この突出部260には、上下方向に貫通する貫通孔260aが形成されている。そして、支持部378の円柱部378bは、この貫通孔260aに挿入されている。
【0074】
-第二移動部370の調整部382-
調整部382は、
図8に示されるように、装置幅方向に延びるねじ軸384と、ねじ軸384を回転可能に支持する一対の支持板386とを備えている。
【0075】
ねじ軸384の外周面には雄ねじ384aが形成されており、ねじ軸384の雄ねじ384aは、本体部374の雌ねじ380に締め込まれている。そして、ねじ軸384、雌ねじ380、及び図示せぬボール等を含んで既知のボールねじ構造が形成されている。また、駆動部390は、ねじ軸384を回転させるように設けられている。
【0076】
この構成において、駆動部390がねじ軸384を一方向に回転させることで、第二移動部370が、共振コイル212及び遮蔽板224を処理容器203に対して装置幅方向の一方側へ移動させる。具体的には、駆動部390がねじ軸384を一方向に回転させることで、本体部374及び支持部378が装置幅方向の一方側に移動する。さらに、本体部374及び支持部378が装置幅方向の一方側に移動することで、支持プレート256を介して共振コイル212及び遮蔽板224が装置幅方向の一方側へ移動する。
【0077】
これに対して、駆動部390がねじ軸384を他方向に回転させることで、第二移動部370が、共振コイル212及び遮蔽板224を処理容器203に対して装置幅方向の他方側へ移動させる。具体的には、駆動部390がねじ軸384を他方向に回転させることで、本体部374及び支持部378が装置幅方向の他方側に移動する。さらに、本体部374及び支持部378が装置幅方向の他方側に移動することで、支持プレート256を介して共振コイル212及び遮蔽板224が装置幅方向の他方側へ移動する。
【0078】
〔コントローラ221〕
コントローラ221は、
図1に示されるように、信号線Aを通じてAPC242、バルブ243b及び真空ポンプ246を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276を制御するように構成されている。さらに、コントローラ221は、信号線Dを通じてゲートバルブ244を、信号線Eを通じてRFセンサ272、高周波電源273及び整合器274を、信号線Fを通じてMFC252a~252c及びバルブ253a~253c,243aを、それぞれ制御するように構成されている。
【0079】
図9に示すように、コントローラ221は、CPU(Central Processing Unit)221a、RAM(Random Access Memory)221b、記憶装置221c、I/Oポート221dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM221b、記憶装置221c、I/Oポート221dは、内部バス221eを介して、CPU221aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ221には、例えばタッチパネルやディスプレイ等として構成された入出力装置222が接続されている。
【0080】
ここで、入出力装置222には、操作コマンドの入力、及び共振コイル212を移動させるための移動情報としての処理条件が入力されるようになっている。また、入出力装置222には、予め決められた基準位置に対する共振コイル212の移動量が表示されるようになっている。
【0081】
-記憶装置221c-
記憶装置221cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置221cには、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプログラムレシピ等が読み出し可能に格納されている。
【0082】
プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をCPU221aに実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプログラムレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プログラムレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM221bは、CPU221aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0083】
本実施形態では、記憶装置221cには、各処理条件が記憶されている。処理条件は、処理されるウエハ200の温度、処理室201の圧力、ウエハ200を処理する処理ガスの種類、ウエハ200を処理する処理ガスの流量、及び共振コイル212へ供給される電力の中で、少なくとも一個の条件を含む。
【0084】
-I/Oポート221d-
I/Oポート221dは、上述のMFC252a~252c、バルブ253a~253c、243a、243b、ゲートバルブ244、APCバルブ242、真空ポンプ246、RFセンサ272、高周波電源273、整合器274、サセプタ昇降機構268、ヒータ電力調整機構276、駆動部340、390等に接続されている。
【0085】
-CPU221a-
CPU221aは、記憶装置221cからの制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置222からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置221cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。CPU221aは、制御部の一例である。
【0086】
そして、CPU221aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、I/Oポート221d及び信号線Aを通じてAPCバルブ242の開度調整動作、バルブ243bの開閉動作、及び真空ポンプ246の起動・停止を制御するように構成されている。さらに、CPU221aは、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268の昇降動作を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276によるヒータ217bへの供給電力量調整動作(温度調整動作)を、信号線Dを通じてゲートバルブ244の開閉動作を、制御するように構成されている。また、CPU221aは、信号線Eを通じてRFセンサ272、整合器274及び高周波電源273の動作を、信号線Fを通じてMFC252a~252cによる各種ガスの流量調整動作、及びバルブ253a~253c、243aの開閉動作、等を制御するように構成されている。
【0087】
コントローラ221は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)223に格納された上述のプログラムをコンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置221cや外部記憶装置223は、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置221c単体のみを含む場合、外部記憶装置223単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合が有る。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置223を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0088】
(作用)
次に、基板処理装置100を用いて半導体装置を製造する方法について、比較形態に係る基板処理装置500を用いて半導体装置を製造する方法と比較しつつ、
図10に示すフロー図を用いて説明する。
【0089】
〔基板処理装置500の構成〕
先ず、比較形態に係る基板処理装置500の構成について、
図11、
図12を用いて本実施形態に係る基板処理装置100と異なる部分を主に説明する。基板処理装置500の上側容器210の内周面には、SiN膜が形成されていない。また、処理室201には、上側容器210の下端部分の内周面に沿う円筒部材が設けられていない。さらに、基板処理装置500においては、共振コイル212の下端部分の周面と上側容器210の外周面との距離については、共振コイル212の他の部分の周面と上側容器210の外周面との距離と同様となっている。換言すれば、基板処理装置500においては、上下方向において、上側容器210の外周面と共振コイル212の周面との距離が、同様となっている。これにより、基板処理装置500においては、共振コイル212の下端部分の周面と上側容器210の外周面との距離は、8mm未満とされている。
【0090】
さらに、基板処理装置500は、共振コイル212を処理容器203に対して移動させる移動部を備えていない。
【0091】
〔半導体装置の製造方法〕
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、例えばフラッシュメモリ等の半導体デバイスの製造工程の一工程として、前述の基板処理装置100、500を用いて実施される。以下の説明において、基板処理装置100、500を構成する各部の動作は、CPU221aにより制御される。
【0092】
また、本実施形態に係るプラズマ参加処理条件は、一例として、処理されるウエハ200の温度が600~800℃。処理室201の圧力が40~60Paとされ、供給されるH2ガス濃度が25~35%とされている。
【0093】
そして、基板処理装置100では、
図10に示すステップS100、S200、S300、S400、S500、S600、S700の順に工程が実施される。一方、基板処理装置500では、
図10に示すステップS100、S300、S400、S500、S600、S700の順に工程が実施される。
【0094】
なお、本実施形態に係る基板処理工程で処理されるウエハ200の表面には、例えば、少なくとも表面がシリコンの層で構成され、アスペクト比の高い凹凸部を有するトレンチが予め形成されている。本実施形態においては、トレンチの内壁に露出したシリコン層に対して、プラズマを用いた処理として酸化処理を行う。
【0095】
〔基板搬入工程S100〕
図10に示す基板搬入工程S100では、ウエハ200が処理室201に搬入される具体的には、
図1、
図11に示すサセプタ昇降機構268が、ウエハ200の搬送位置までサセプタ217を下降させて、サセプタ217の貫通孔217aにウエハ突上げピン266を貫通させる。
【0096】
続いて、ゲートバルブ244が開かれ、処理室201に隣接する真空搬送室から、ウエハ搬送機構(図示せず)を用いて処理室201にウエハ200が搬入される。搬入されたウエハ200は、サセプタ217の表面から突出したウエハ突上げピン266上に水平姿勢で支持される。処理室201にウエハ200が搬入されたら、ウエハ搬送機構が処理室201外へ退避し、ゲートバルブ244を閉じて処理室201が密閉される。そして、サセプタ昇降機構268がサセプタ217を上昇させることにより、ウエハ200はサセプタ217の上面に支持される。
【0097】
〔位置調整工程S200〕
位置調整工程S200では、予め計測された共振コイル212の下端部分の周面と上側容器210の外周面との距離情報に基づいて、第一移動部320が、共振コイル212を装置奥行方向に移動させ、第二移動部370が、共振コイル212を装置幅方向に移動させる。
【0098】
具体的には、距離情報に基づいて、
図7に示す駆動部340及び駆動部390が稼働する。駆動部340は、ねじ軸334を回転させる。ねじ軸334が回転することで、本体部324及び支持部328が装置奥行方向に移動する。さらに、本体部324及び支持部328が装置奥行方向に移動することで、支持プレート256を介して共振コイル212及び遮蔽板224が装置奥行方向に移動する。なお、支持部328が案内溝326に案内されて装置幅方向に移動することで、稼働する駆動部340によって、共振コイル212の装置幅方向の位置が規制されることはない。
【0099】
また、
図8に示す駆動部390は、ねじ軸384を回転させる。ねじ軸384が回転することで、本体部374及び支持部378が装置幅方向に移動する。さらに、本体部374及び支持部378が装置幅方向に移動することで、支持プレート256を介して共振コイル212及び遮蔽板224が装置幅方向に移動する。なお、支持部378が案内溝376に案内されて装置奥行方向に移動することで、稼働する駆動部390によって、共振コイル212の装置奥行方向の位置が規制されることはない。
【0100】
このように、共振コイル212を処理容器203の上側容器210に相対移動させることで、処理容器203の形状がばらついている場合であっても、共振コイル212の下端部分の周面と上側容器210の外周面との距離は、8mm以上とされる。
【0101】
そして、処理室201でウエハ200を処理している間は、駆動部340、390が非稼働状態とされる。換言すれば、処理室201でウエハ200を処理している間は、共振コイル212と処理容器203の上側容器210との相対関係は維持される。
【0102】
なお、予め計測された距離情報において、共振コイル212の下端部分の周面と上側容器210の外周面との距離が8mm以上とされている場合には、位置調整工程S200において、共振コイル212を処理容器203の上側容器210に相対移動させることはない。
【0103】
〔昇温・真空排気工程S300〕
昇温・真空排気工程S300では、処理室201に搬入されたウエハ200の昇温が行われる。
図1、
図11に示すヒータ217bは予め加熱されており、ヒータ217bが埋め込まれたサセプタ217上にウエハ200を保持することでウエハ200が加熱される。ここでは、ウエハ200が目標温度となるようウエハ200が加熱される。また、ウエハ200の昇温を行う間、真空ポンプ246がガス排気管231を介して処理室201を真空排気し、処理室201の圧力を所定の値とする。真空ポンプ246は、少なくとも後述の基板搬出工程S700が終了するまで稼働させておく。
【0104】
〔反応ガス供給工程S400〕
反応ガス供給工程S400では、反応ガスとして、酸素含有ガスであるO
2ガスと水素含有ガスであるH
2ガスの供給が開始される。具体的には、
図1、
図11に示すバルブ253a及び253bが開かれ、MFC252a及び252bにて流量制御しながら、処理室201へO
2ガス及びH
2ガスの供給が開始される。このとき、O
2ガスの流量が、例えば20~2000sccmの範囲内の所定値とされる。また、H
2ガスの流量が、例えば20~1000sccmの範囲内の所定値とされる。
【0105】
また、処理室201が目標圧力となるように、APC242の開度を調整して処理室201の排気が制御される。このように、処理室201を適度に排気しつつ、後述のプラズマ処理工程S500の終了時までO2ガス及びH2ガスの供給が継続される。
【0106】
〔プラズマ処理工程S500〕
処理室201の圧力が安定した後に、プラズマ処理工程S500では、
図1、
図11に示す共振コイル212に対して高周波電源273からRFセンサ272を介して、高周波電力の供給が開始される。本実施形態では、高周波電源273から共振コイル212に27.12MHzの高周波電力が供給される。共振コイル212に供給する高周波電力は、例えば100~5000Wの範囲内の所定の電力である。
【0107】
これにより、O
2ガス及びH
2ガスが供給されているプラズマ生成空間201a(
図3参照)に高周波電界が形成される。この電界により、プラズマ生成空間201aの共振コイル212の電気的中点に相当する高さ位置に、最も高いプラズマ密度を有するドーナツ状の誘導プラズマが励起される。プラズマ状のO
2ガス及びH
2ガスはプラズマ励起されて解離し、酸素を含む酸素ラジカル(酸素活性種)や酸素イオン、水素を含む水素ラジカル(水素活性種)や水素イオン、等の反応種が生成される。
【0108】
そして、基板処理空間201b(
図3参照)でサセプタ217上に保持されているウエハ200には、誘導プラズマにより生成されたラジカルとイオンがウエハ200の表面上のトレンチ内に供給される。供給されたラジカル及びイオンはトレンチの側壁と反応し、表面のシリコン層がシリコン酸化層へと改質される。
【0109】
その後、所定の処理時間、例えば10~300秒が経過したら、高周波電源273からの電力の供給が停止されて、処理室201におけるプラズマ放電が停止される。また、バルブ253a及び253bが閉められ、O2ガス及びH2ガスの処理室201への供給が停止される。以上により、プラズマ処理工程S500が終了する。
【0110】
ここで、基板処理装置100、500においては、H2ガスは、処理室201の上方部分から供給され、上側容器210の内周面に沿って下方へ流れてベースプレート248の上面248aに当たって流れ方向が変えられる。この流れ方向が変えられる部分で、H2ガスによどみが発生する。
【0111】
図11に示す基板処理装置500においては、共振コイル212の下端部分の周面と上側容器210の外周面との距離は、8mm未満とされている。このため、H
2ガスのよどみが生じた部分の誘導プラズマのプラズマ強度が強くなる。これにより、このよどんだ部分のH
2ガスが誘導プラズマと反応することで、SiOH膜が上側容器210の下端部分の内周面に形成される。なお、SiOH膜には3員環、4員環のものが含まれ、SiOH膜は、ランダム構造のSiO
2に対して不安定なもろい状態となっている。
【0112】
一方、
図1に示す基板処理装置100においては、共振コイル212の下端部分の周面と上側容器210の外周面との距離は、8mm以上とされて、共振コイル212の他の部分と比して大きくなっている。換言すると、上側容器210の内周面においてSiOH膜が形成される部分に近接した共振コイル212の周面と上側容器210の外周面との距離は、8mm以上とされ、共振コイル212の他の部分の共振コイル212の周面と上側容器210の外周面との距離と比して大きくなっている。さらに換言すると、上側容器210の内周面においてSiOH膜が形成される部分に近接した共振コイル212の周面と上側容器210の外周面との距離が、SiOH膜が形成されていない部分に近接した共振コイル212の周面と上側容器210の外周面との距離と比して大きくなっている。
【0113】
これにより、基板処理装置100においては、H2ガスのよどみが生じた部分の誘導プラズマのプラズマ強度が弱くなる。このため、円筒部材290の内周面の下端部分の内周面に形成されるSiOH膜の厚さは薄くなる。
【0114】
また、基板処理装置100においては、上側容器210の下端部分の内周面に沿うように、円筒状の円筒部材290が設けられている。この円筒部材290の内周面にSiOH膜が形成されることで、基板処理装置100の上側容器210の下端部分の内周面に形成されるSiOH膜の厚さは薄くなる。
【0115】
このように、基板処理装置100の上側容器210の下端部分の内周面に形成されたSiOH膜の厚さは、基板処理装置500の上側容器210の下端部分の内周面に形成されたSiOH膜の厚さと比して薄くなる。換言すれば、基板処理装置500の上側容器210の下端部分の内周面に形成されたSiOH膜の厚さは、基板処理装置100の上側容器210の下端部分の内周面に形成されたSiOH膜の厚さと比して厚くなる。
【0116】
なお、基板処理装置100においては、円筒部材290の内周面に形成されるSiOH膜の厚さについては、厚さ「0」を含む概念である。つまり、基板処理装置100においては、円筒部材290の内周面にSiOH膜が形成されない場合もある。
【0117】
〔真空排気工程S600〕
O
2ガス及びH
2ガスの供給を停止した後に、真空排気工程S600では、
図1、
図11に示すガス排気管231を介して処理室201内が真空排気される。これにより、処理室201のO
2ガスやH
2ガス、これらガスの反応により発生した排ガス等が処理室201の外部へと排気される。その後、APC242の開度を調整し、処理室201の圧力が、処理室201に隣接する真空搬送室(ウエハ200の搬出先。図示せず)と同じ圧力に調整される。
【0118】
〔基板搬出工程S700〕
処理室201が所定の圧力となった後に、基板搬出工程S700では、
図1、
図11に示すサセプタ217がウエハ200の搬送位置まで下降し、ウエハ突上げピン266上にウエハ200が支持される。そして、ゲートバルブ244が開かれ、ウエハ搬送機構を用いてウエハ200が処理室201の外部へ搬出される。以上により、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。
【0119】
〔メンテナンス工程〕
基板処理工程が複数回実施された後、基板処理装置100、500がメンテナンスされる。このメンテナンスの工程について説明する。
【0120】
-ヒータ217bへの電力供給の停止-
基板処理工程を終えた基板処理装置100、500では、ヒータ217bへの電力の供給が停止される。これにより、ヒータ217bに近接した上側容器210の下端部分の温度が最も低下する。換言すれば、共振コイル212の下端部分に近接した上側容器210の下端部分の温度変化が大きくなる。上側容器210の下端部分の温度変化が大きくなることで、上側容器210の下端部分の内周面に形成されたSiOH膜については、上側容器210に面している部分と、処理室201に面している部分とに温度差が生じる。
【0121】
ここで、基板処理装置500の上側容器210の下端部分の内周面に形成されたSiOH膜の厚さは、前述したように、基板処理装置100の上側容器210の下端部分の内周面に形成されたSiOH膜の厚さと比して厚い。このため、基板処理装置500においては、上側容器210に面している部分のSiOH膜と処理室201に面している部分のSiOH膜との温度差が大きくなる。そこで、基板処理装置500では、この温度差に起因して、SiOH膜にクラックが生じる。
【0122】
一方、基板処理装置100の上側容器210の下端部分の内周面に形成されたSiOH膜の厚さは、前述したように、基板処理装置500の上側容器210の下端部分の内周面に形成されたSiOH膜の厚さと比して薄い。このため、上側容器210に面している部分のSiOH膜と、処理室201に面している部分のSiOH膜との温度差が小さくなる。そこで、基板処理装置100では、この温度差に起因して、SiOH膜に生じるクラックの発生が抑制される。
【0123】
-大気圧復帰-
ヒータ217bへの電力供給が停止された後、処理室201の圧力が大気圧とされる。そして、大気圧復帰した基板処理装置100、500の各部に対してメンテナンスが実施される。
【0124】
ここで、処理室201の圧力が大気圧とされることで、上側容器210の側壁が板厚方向へ移動しようとし、
図2、
図12に示されるように、上側容器210においてフランジ210bの上方部分(図中部位g)に微少な変形が生じる。
【0125】
基板処理装置500では、この変形に起因して、SiOH膜に生じたクラックが進展して上側容器210に到達する。そして、上側容器210にクラックが生じる。
【0126】
一方、基板処理装置100では、前述したように、SiOH膜に生じるクラックの発生が抑制されている。このため、上側容器210においてフランジ210bの上方部分の変形に起因して生じる上側容器210のクラックの発生が抑制される。
【0127】
さらに、基板処理装置100では、上側容器210の内周面に、上側容器210を保護するSiN膜が形成されている。このため、SiOH膜にクラックが生じたとしても、SiOH膜のクラックが進展して生じる上側容器210のクラックの発生が抑制される。
【0128】
(まとめ)
本開示によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0129】
具体的には、以上説明したように、基板処理装置100においては、上側容器210の下端部分に近接した共振コイル212の周面と上側容器210の外周面との距離が、上側容器210の下端部分に近接していない共振コイル212の周面と上側容器210の外周面との距離と比して大きくなっている。換言すれば、上側容器210の内周面においてSiOH膜が形成される部分に近接した共振コイル212の周面と上側容器210の外周面との距離が、SiOH膜が形成されていない部分に近接した共振コイル212の周面と上側容器210の外周面との距離と比して大きくなっている。
【0130】
これにより、基板処理装置100の上側容器210の下端部分の内周面に形成されたSiOH膜の厚さは、基板処理装置500の上側容器210の下端部分の内周面に形成されたSiOH膜の厚さと比して薄くなる。このため、比較形態に係る基板処理装置500と比して、上側容器210の内周面に形成されたSiOH膜に起因した上側容器210のクラックの発生を抑制することができる。
【0131】
また、基板処理装置100においては、共振コイル212において下端部分を除く他の部分の周面と上側容器210の外周面との距離については、共振コイル212の下端部分の周面と上側容器210の外周面との距離と比して小さくなっている。このため、処理室201内のプラズマ分布を所望の分布にすることができる。
【0132】
また、基板処理装置100においては、上側容器210の内周面には、上側容器210を保護する保護膜としてのSiN膜が形成されている。このため、保護膜が形成されていない場合と比して、SiOH膜にクラックが生じたとしても、SiOH膜のクラックが進展して生じる上側容器210のクラックの発生を抑制することができる。換言すれば、保護膜が形成されていない場合と比して、SiOH膜にクラックが生じたとしても、上側容器210のクラックの発生を抑制することができる。
【0133】
また、基板処理装置100においては、上側容器210の内周面においてSiOH膜が形成される部分に沿うように、円筒部材290が設けられている。換言すれば、上側容器210の内周面の下端部分に沿うように、SiO2で形成された円筒部材290が設けられている。これにより、この円筒部材290の内周面にSiOH膜が形成されることで、上側容器210の下端部分の内周面に形成されるSiOH膜の厚さを薄くすることができる。
【0134】
また、基板処理装置100においては、共振コイル212の下端部分に近接した上側容器210の下端部分の温度変化が大きくなる。さらに、共振コイル212の下端部分の周面と上側容器210の外周面との距離が8mm以上とされている。つまり、上側容器210において温度変化が大きい部分に近接した共振コイル212の周面と、上側容器210の外周面との距離が8mm以上とされている。
【0135】
ここで、温度変化が大きい部分に形成されるSiOH膜の厚さが厚いと、前述したように、SiOH膜にクラックが生じやすい。しかし、上側容器210において温度変化が大きい部分に近接した共振コイル212の周面と、上側容器210の外周面との距離が8mm以上とされている。このため、上側容器210において温度変化が大きい部分にSiOH膜が形成されるのを抑制することで、SiOH膜に生じるクラックの発生を抑制することができる。
【0136】
また、半導体装置の製造方法、及びプログラムにおいては、上側容器210の外周面と共振コイル212の周面との距離を調整する位置調整工程が設けられている。これにより、例えば、共振コイル212の下端部分の周面と上側容器210の外周面との距離が8mm未満であっても、相対位置を調整することで、8mm以上とすることができる。
【0137】
なお、上記実施形態では特定の実施形態について詳細に説明したが、本開示は係る実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、共振コイル212を処理容器203に対して移動させることで、共振コイル212を処理容器203に対して相対移動させたが、処理容器203を共振コイル212に対して移動させることで、共振コイル212を処理容器203に対して相対移動させてもよい。
【0138】
また、上記実施形態では、上側容器210の内周面には、上側容器210を保護するSiN膜が形成されていたが、半導体装置の製造工程の中で、上側容器210の内周面にSiN膜を形成される工程を設けてもよい。
【0139】
また、上記実施形態では、上側容器210の内周面には、上側容器210を保護するSiN膜が形成されていたが、上側容器210を保護する保護膜であればよく、例えば、SiNを含有した保護膜等であればよい。
【0140】
また、上記実施形態では、円筒部材290は、SiO2を用いて形成されたが、半導体装置の製造工程の中で、SiOH膜が内周面に形成されればよく、円筒部材が、他の材料を用いて形成されてもよい。
【0141】
また、上記実施形成では特に説明しなかったが、上側容器210の外周面と共振コイル212との距離を、上側容器210の周方向で異なるせることで、処理室201内のプラズマ分布を所望の分布にする技術がある。このような技術を用いたときに、上側容器210の内周面において下側部分に近接した共振コイルと上側容器210の外周面との距離が8mm未満になることが考えられる。しかし、本開示の技術を用いることで、8mm以上が確保される。
【0142】
また、上記実施形態では、特に説明しなかったが、明細書中に特段の断りが無い限り、各要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0143】
また、上記実施形態では、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の実施形態に限定されず、例えば、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。また、上述の実施形態では、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0144】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の実施形態や変形例と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の実施形態や変形例と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0145】
100 基板処理装置
200 ウエハ(基板の一例)
201 処理室
210 上側容器(石英容器の一例)
212 共振コイル(コイルの一例)
221a CPU(制御部の一例)
230 ガス供給部