(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042149
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】食品工場における残渣処理システム
(51)【国際特許分類】
B09B 3/35 20220101AFI20240321BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20240321BHJP
B09B 101/70 20220101ALN20240321BHJP
【FI】
B09B3/35 ZAB
C02F11/00 Z
B09B101:70
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146646
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宅森 祐介
(72)【発明者】
【氏名】北野 壮輝
(72)【発明者】
【氏名】中野 謙司
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA04
4D004AC04
4D004CA04
4D004CA13
4D004CA48
4D004CB03
4D059AA07
4D059AA10
4D059BK11
4D059CA21
4D059CA22
4D059CA24
4D059CB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】食品工場における食品関係の廃棄物(食品残渣)を工場内に載置しておく時間を短くし、より迅速かつ容易に処理可能な方法を開発する。
【解決手段】食品残渣が発生する生産設備が設置される食品工場内において、当該食品工場の床スラブ1に1又は複数の開口部3を設け、当該開口部3に向かう勾配をもたせ、開口部3の下方においてディスポーザー5を経由する排出経路を備えた構成とする。これによって食品工場における残渣処理の好適化が可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品残渣が発生する生産設備が設置される食品工場内の残渣処理システムであって、前記食品工場の床スラブが1又は複数の開口部と当該開口部に向かう勾配を有し、開口部の下方においてディスポーザーを経由する排出経路を備えた、食品工場における残渣処理システム。
【請求項2】
前記排出経路に連続する排水処理場を備えた請求項1に記載の残渣処理システム。
【請求項3】
前記排出経路において排水処理場の前に油水分離槽を備えた請求項2に記載の残渣処理システム。
【請求項4】
前記生産設備が原料より加工食品を製造する生産ライン設備である請求項1に記載の残渣処理システム。
【請求項5】
前記加工食品が即席麺である請求項4に記載の残渣処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品工場における食品関係の廃棄物(食品残渣)を処理するための残渣処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品工場においては種々の食品関係の廃棄物(食品残渣)が生じる場合がある。食品残渣は生ごみである場合が多く、悪臭等の衛生環境の問題から処理を迅速に行うことが好ましい。従来まで当該廃棄物(食品残渣)を一時的に工場内で回収して集めておき、一定量ごとや一日ごとや半日又は所定時間ごとに当該廃棄物(食品残渣)を処理するという処理体制を採用したり、食品工場の外に持ち出してしばらく保管しておく場合も多かった。
【0003】
さらに、従来まで即席麺等のフライ食品を製造する食品工場において発生する廃棄物(食品残渣)については、
図6に示すような形態の処理を行っている場合もあった。
図6に示す食品工場における食品関係の廃棄物(食品残渣)の処理については、工場内で生じる食品残渣について、工場の床スラブに網羅状に設けられた排水ピットを通じて排水溝付近まで水等とともに押し流し、当該排水溝で網状部材によって大きめの食品残渣を取り除く方法を示している。
【0004】
そして、発生する大きめの食品残渣について、半日又は一日ごとに回収して処分することが必要であり、臭いの問題や工場内での当該作業が煩雑であるという問題もあった。
このような食品残渣を処理する方法として、例えば、以下の特許文献では食品工場における生ごみの乾燥処理装置等について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-189222号 一方、乾燥にはエネルギーを要するため他の処理方法の考えられるところである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者らは食品工場における食品関係の廃棄物(食品残渣)を工場内に載置しておく時間を短くし、より迅速かつ容易に処理可能な方法を開発することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討の結果、一般の台所等で汎用されている場合のあるディスポーザーと呼ばれる生ごみ処理方式を利用して、これを食品工場における利用する方法を着想した。
具体的には、食品工場の床スラブにおいて1又は複数の開口部を設けるとともに当該開口部に向かう勾配を形成させ、当該開口部の下方においてディスポーザーを設置し、当該ディスポーザー経由する排出経路を備えた、食品工場における残渣処理システムとする方法を開発した。
【0008】
すなわち、本願第一の発明は、
“食品残渣が発生する生産設備が設置される食品工場内の残渣処理システムであって、前記食品工場の床スラブが1又は複数の開口部と当該開口部に向かう勾配を有し、開口部の下方においてディスポーザーを経由する排出経路を備えた、食品工場における残渣処理システム。”、である。
【0009】
次に、前記排出経路については、これに連続して排水処理場を設けることが好ましい。
すなわち、本願第二の発明は、
“前記排出経路に連続する排水処理場を備えた請求項1に記載の残渣処理システム。”、である。
【0010】
次に、食品残渣が油分を含むものである場合である場合には、前記排水処理場の手前には、油水分離槽を設けることが好ましい。
すなわち、本願第三の発明は、
“前記排出経路において排水処理場の前に油水分離槽を備えた請求項2に記載の残渣処理システム。”、である。
【0011】
次に、前記生産設備については、原料より加工食品を連続的に製造するラインの生産ライン設備であると好適に本願発明を利用することができる。
すなわち、本願第四の発明は、
“前記生産設備が原料より加工食品を製造する生産ライン設備である請求項1に記載の残渣処理システム。”、である。
【0012】
次に、前記加工食品については、即席麺であると好適に本願発明を利用することができる。
すなわち、本願第五の発明は、
“前記加工食品が即席麺である請求項4に記載の残渣処理システム。”、である。
【発明の効果】
【0013】
本願発明を利用することによって、食品工場において発生する食品残渣を迅速に処理することが可能となる。これによって食品残渣から生じる悪臭等の問題を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第一の実施態様の残渣処理システムの全体を示す斜視模式図である。
【
図2】本発明の残渣処理システムのディスポーザーの配置例を示した図であり、(a)平面模式図、(b)側面の断面模式図である。
【
図3】本発明の残渣処理システムのディスポーザーの配置例を示した断面模式図である。
【
図4】従来までの残渣処理のための排水ピットの設置例を示した図であり、(a)平面模式図、(b)側面の断面模式図である。
【
図5】本発明の残渣処理システムのディスポーザーの配置例を示した図であり、(a)平面模式図、(b)側面の断面模式図である。
【
図6】従来までの残渣処理の方法を示す斜視模式図である。
【符号の説明】
【0015】
1 床スラブ
3 開口部
5 ディスポーザー
7 排出経路
9 中間槽
11 排水処理場
13 生産設備
15 排水ピット
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の食品工場における残渣処理システムの第一の実施態様の模式図である。特にフライ食品の製造工場における残渣処理システムの例を示している。より具体的には小麦粉から生麺を調整し、当該生麺をフライ処理してフライ麺塊を製造、即席麺を製造する食品工場の場合の例を示している。
図1に示す本願の食品工場における残渣処理システムの第一の実施態様においては、食品工場において、その床スラブ1に複数の開口部に向かう勾配を設け、当該開口部3の下方においてディスポーザー5を経由する排出経路を設けている。
さらに、
図1の実施態様においては、排出経路7が中間槽9とつながっており、当該中間槽9において油と水の二層に分離し、油槽は別途処理する態様としている。一方、下層の水層部分はポンプにより配管内を移送させ排水処理場11まで移動させて、当該排水処理場11で処理した後に下水に排出する態様を示している。 以下、本発明の内容について説明する。
【0017】
─食品工場─
本発明にいう食品工場とは、食品工場については例えば、加工食品の製造工場が挙げられる。具体的には、即席麺、即席ライス、生麺、チルド麺、冷凍麺、菓子、生菓子、洋菓子、ヨーグルト、フライ食品、練製品、ベーコン・ハム・ソーセージ等の食肉製品等が例として挙げられる。また、生野菜のカット工場や鶏、豚、牛等の食肉製品のカット工場も対象としている。特に、即席麺や即席ライス等の加工食品の製造工場において好適に利用することができる。
【0018】
─床スラブ─
本発明にいう床スラブ1とは建築物において床構造において面に垂直な重さを支える板状構造をいう。工場等の大規模な建築物の場合、コンクリートや鉄筋コンクリートの場合が多い。
また、本発明にいう床スラブ1の開口部3とは、当該床スラブ1に対して当該床スラブ1の下方に通じる経路を設けるための開口部分のことをいう。また、当該開口部3は床スラブ1に一箇所設ける態様であってもよいし、また、一定領域ごとに複数箇所設けることも可能である。対象となる食品工場の規模によって適宜対応することが可能である。
【0019】
また、後述するようにディスポーザー5を設置する必要性あると考えられる領域ごとに当該床スラブ1の開口部3を設けることも可能である。
例えば、
図2の態様であると、食品工場においては、食品の製造工程と包装工程まで含む場合がある。このような場合、食品の製造工程の生産設備が設置される領域のみに開口部3を設け、後述するようにディスポーザー5を配置することが可能である。
【0020】
─開口部に向かう勾配─
本願発明においては、前記床スラブ1の開口部3に向かう勾配を有する。すなわち、前記開口部3を低位置とする勾配をいう。前記の床スラブ1の所定領域を清掃等のために水を流した場合、当該開口部3に流れていく態様にしておくことが必要である。
尚、勾配を有する部分は食品工場の床スラブ全体である必要はなく、開口部の周辺部分であってもよいことは勿論である。すなわち、食品残渣が発生する領域のみに開口部に向かう勾配を設けておくことが可能である。
【0021】
また、上記勾配については全体として開口部3に向かう勾配であればよく、例えば、実際に傾斜している部分がすべてではなく、特定部分で傾斜を有しない部分又は逆に傾斜が反転する部分が一部に存在していたとしても、水を流す等した場合、当該開口部3に流れていく態様であれば本発明における勾配に含まれるものとする。例えば、
図3であると一部に傾斜を有さず平面状の領域があるが、このような場合であっても本願発明の勾配に含むものとなる。
生産設備13から発生する食品残渣はそのまま勾配上に生じる場合、水等で開口部3まで食品残渣を移動することができる。また、工場内の作業者が生産設備13から発生した食品残渣を当該勾配に容易に配置し、水等を流すことによって開口部3まで移動させることも可能となる。
【0022】
─当該開口部の下方に設けられたディスポーザー─
本発明においては、開口部3の下方部にディスポーザー5を設置する。当該ディスポーザー5によって食品工場において発生した食品残渣を適宜処理することができる。
本発明におけるディスポーザー5とはその種類は限定されるものではないが、概ね食品残渣を水と混合しつつ破砕して、水と共に流動化させるものであればよい。
【0023】
具体的なディスポ―ザー5の構成の例としては、モーター部分と生ごみ処理部を有し、水とともに投入された生ごみがターンテーブル上で攪拌され、ターンテーブル上に設けられているハンマー部と回転テーブルの周縁に設けられた壁面において食品残渣を破砕し、また、水とともに存在させることで液状化(流動化)させて壁面等に設けられたグリッド状の隙間から液状物として排出させるという態様が挙げられる。
通常、食品残渣等の生ごみの場合、ごみの収集・処理は、自治体の行政サービスとして行われていることが多く、収集日まで待つ必要等があったが、ディスポーザー5を利用することで生ごみを保管する必要がないため、悪臭、害虫等の環境の改善を図ることができる。
【0024】
また、大規模な食品工場の場合、大量の食品残渣(生ごみ)が発生する場合もあり、当該食品残渣(生ごみ)の処理が問題となる場合も多かった。
本発明の残渣処理システムを利用することで上記のような食品残渣(生ごみ)を随時処理できることになるため、悪臭等の環境問題を改善することができるという効果を奏することができる。
尚、本発明におけるディスポーザー5の構造については上記したものであれば勿論よいが、当該構造に限定されるものではなく、食品残渣(生ごみ)をその場で粉砕等して流動化させて配管等で流せることができれば特に限定されないものとする。
【0025】
さらに、本願発明においては、上記ディスポーザー5について食品工場において使用するものであり、大型のタイプであることが好ましい。また、複数のディスポーザー5を併用する構成であってもよいことは勿論である。
尚、上記のディスポーザーについては残渣が発生する際に適宜稼働すればよいことは勿論である。また、その他の必要なタイミングで稼働すればよい。
【0026】
─ディスポーザーを経由する排出経路─
本発明においては、前記ディスポーザー5を経由する排出経路7を有する。当該排出経路7については特に限定されるものではないが、ディスポーザーから排出される食品残渣を含む液状物を排出可能な経路であれば配管等の種々の態様を含む。
図1に示す本発明に第一の実施態様においては、油脂分を含むフライ食品の食品工場における残渣処理システムを示しているが、ディスポーザー5から排出された食品残渣を含む液状物は、排出経路7としての配管を経由して一旦中間槽9まで移動する。
【0027】
当該中間層9においては、液状物について上層の油層と下層の水層に分離させることができ、上昇側について適宜処分し、下層の水層側については排水処理場11まで移動させてから、工場内で排水処理を実施してから下水に排出する。
当該排水処理場11においては、不純物を取り除き、下水に放出するレベルまで浄化等する。尚、排水処理の方法としては、加圧浮上方式や凝集沈殿方式、生物処理方式等の種々の方法を採用することができる。
また、排水処理については、連続式又はバッチ式のいずれも可能であることは勿論である。
【0028】
─本願発明の他の効果─
以下に本願発明の他の効果について説明する。従来まで、食品工場における廃棄物(食品残渣)の処理については、工場内で生じる食品残渣について、工場の床スラブ1に網羅状に設けられた排水ピット15を通じて排水溝付近まで水等とともに押し流し、当該排水溝で網状部材によって大きめの食品残渣を取り除くタイプが利用されている場合があった。
図4に当該構成の模式図を示す。
【0029】
図4のタイプであると、床スラブ1に溝状の排水ピット15を格子状に設ける場合も多く、当該溝部が、生産設備の設置以外の部分まで床スラブ1の平面の利用を妨げている場合もあった。
一方、本願発明においては、
図5に示すように床スラブ1に対して、必要な領域にディスポーザー5に向かう傾斜を設けておくだけでよいため、生産設備の設置以外の部分まで床スラブ1の平面についてスペースの有効利用を図ることが可能となる。
このように本願発明の残渣処理システムを利用することで工場内の床スラブ1のスペースの有効利用を図ることができるという効果も奏することが可能となる。
【0030】
─即席麺を製造するための生産設備での利用─
本願発明については、食品工場として、加工食品の即席麺を製造するための生産設備で好適に利用することができる。
通常、即席麺を製造する生産工程については以下のようになる。まず、原料である小麦粉、澱粉等の粉体について水、食塩、かん水等と共に一般には、小麦粉・そば粉・澱粉等の原材料を入れ、練水(食塩、かんすい、増粘多糖類等を溶解したもの)を給水・混ねつ(混捏、ミキシング)し、ドウと称される麺生地を調製する。
【0031】
そして、調製後の麺生地(ドウ)を圧延機により麺帯に調製し複合する。複合後の麺帯を複数の圧延機により圧延し、圧延後の麺帯を切刃ロールにより切り出しする。
ここで、即席麺の場合には、切り出し後の生の麺線群をコンベア上に積層させて搬送し、当該麺線群を蒸煮(蒸し又は茹で)した後、必要に応じて着味や引っ張りの工程を経て複数の纏りに区分けしつつコンベア搬送し、当該複数の纏りを垂下させた状態でカットして、ホッパー等を介して、型枠に順次投入してから、当該型枠を油熱乾燥又は熱風乾燥してフライ処理された麺塊や熱風乾燥された麺塊を製造する。
【0032】
このようにして即席麺の麺塊を製造するが、当該即席麺の麺塊の製造の工程においては、切り出した生麺が食品残渣として発生したり、乾燥前・乾燥途中又は乾燥後の即席麺の麺塊の残渣が発生することも多い。
特に、油でフライするフライ麺の関係についての残渣について油分を含むためその処理が煩雑な場合も多い。
【0033】
本願発明の残渣処理システムを利用することで即席麺の製造工程で発生する食品残渣を迅速・好適に処理することが可能となる。
尚、食品工場としての即席麺の製造においては、即席麺塊の製造の工程に続いて当該麺塊をカップ状容器や軟包材に収納する工程、また、当該カップ状容器や軟包材に収納した商品を包装したり、段ボールに詰めたりする工程も含まれることも多いが、本発明における床スラブの開口部3、当該開口部3に向かう勾配及びディスポーザー5の各種構成については、麺塊の製造に関する生産設備が設置されている床スラブ1の領域にのみ設けておけばよい。
【0034】
さらに、麺塊を製造する工程のうちでも、廃棄すべき麺線等の食品残渣が発生する可能性の高い工程、例えば、生の麺線の切り出し・搬送領域や蒸煮前後の領域、又は蒸煮後の着味、麺線カット又はフライ処理の工程に関する生産設備を有する領域の床スラブ1に本願発明の構成を設けておいてもよいことは勿論である。