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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042215
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】X線分析装置およびX線分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/22 20180101AFI20240321BHJP
   G01N 23/223 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
G01N23/22
G01N23/223
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146775
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 春男
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA04
2G001BA14
2G001CA01
2G001JA09
2G001JA19
2G001KA01
2G001PA11
(57)【要約】
【課題】 大量の検査をより効率良く短時間に実施することが可能になるX線分析装置及びX線分析方法を提供すること。
【解決手段】 試料Sを載置する試料ステージ5と、試料ステージ上の照射ポイントPに一次X線X1を照射するX線源2と、一次X線が照射された試料から放射される二次X線X2を検出し、二次X線のエネルギー情報を含む信号を出力するX線検出器3と、試料ステージとX線源及びX線検出器とを移動させるステージ移動機構6とを備え、試料ステージが、試料が載置されている検査対象領域A1と、試料が載置されていない非検査対象領域A2とを有し、ステージ移動機構が、一次X線の照射時に照射ポイントを常に移動させ、非検査対象領域上を照射ポイントが移動する際の照射ポイントの移動を、検査対象領域上を照射ポイントが移動する際の照射ポイントの移動よりも速くする照射ポイントの移動速度の制御を行う。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を載置する試料ステージと、
前記試料ステージ上の照射ポイントに一次X線を照射するX線源と、
前記一次X線が照射された前記試料から放射される二次X線を検出し、前記二次X線のエネルギー情報を含む信号を出力するX線検出器と、
前記信号を分析する分析器と、
前記試料ステージと前記X線源及び前記X線検出器とを相対的に移動させて前記照射ポイントを移動可能なステージ移動機構とを備え、
前記試料ステージが、前記試料が載置されている検査対象領域と、前記試料が載置されていない非検査対象領域とを有し、
前記ステージ移動機構が、前記一次X線の照射時に前記照射ポイントを常に移動させ、前記非検査対象領域上を前記照射ポイントが移動する際の前記照射ポイントの移動を、前記検査対象領域上を前記照射ポイントが移動する際の前記照射ポイントの移動よりも速くする前記照射ポイントの移動速度の制御を行うことを特徴とするX線分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線分析装置において、
前記ステージ移動機構が、予め記憶された前記検査対象領域と前記非検査対象領域との座標位置に基づいて前記移動速度の制御を行うことを特徴とするX線分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載のX線分析装置において、
前記試料ステージ上を撮像するカメラ部を備え、
前記ステージ移動機構が、前記カメラ部で撮像した前記試料ステージ上の画像データにより求めた前記検査対象領域と前記非検査対象領域との位置に基づいて前記移動速度の制御を行うことを特徴とするX線分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載のX線分析装置において、
前記試料ステージが、前記試料よりも広く設定されていると共に前記検査対象領域を含んで前記試料を載置可能な載置可能領域を有し、
前記ステージ移動機構が、前記画像データにより、前記載置可能領域内においても前記試料が載置された前記検査対象領域と前記試料が載置されていない前記非検査対象領域との位置に基づいて前記移動速度の制御を行うことを特徴とするX線分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載のX線分析装置において、
前記試料ステージが、中心軸を中心に回転可能な円盤状であり、
前記検査対象領域が、前記試料ステージの外周に沿って互いに間隔を開けて並んで複数設けられ、
前記ステージ移動機構が、一回転する中で回転角に応じて前記試料ステージの回転速度を変えて前記移動速度の制御を行うことを特徴とするX線分析装置。
【請求項6】
X線分析装置によるX線分析方法であって、
前記X線分析装置が、試料を載置する試料ステージと、前記試料ステージ上の照射ポイントに一次X線を照射するX線源と、前記一次X線が照射された前記試料から放射される二次X線を検出し、前記二次X線のエネルギー情報を含む信号を出力するX線検出器と、前記信号を分析する分析器と、前記試料ステージと前記X線源及び前記X線検出器とを相対的に移動させて前記照射ポイントを移動可能なステージ移動機構とを備え、
前記試料ステージが、前記試料が載置されている検査対象領域と、前記試料が載置されていない非検査対象領域とを有し、
前記ステージ移動機構により、前記一次X線の照射時に前記照射ポイントを常に移動させ、前記非検査対象領域上を前記照射ポイントが移動する際の前記照射ポイントの移動を、前記検査対象領域上を前記照射ポイントが移動する際の前記照射ポイントの移動よりも速くする前記照射ポイントの移動速度の制御を行うことを特徴とするX線分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型電子部品等の試料中に含まれる金属元素の検出等が可能なX線分析装置及びX線分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線分析は試料を非破壊で分析することが可能であるという特性から、小型電子部品などの試料に一次X線(入射X線)を照射して、試料から放射される二次X線(蛍光X線等)を分析して、試料について元素の定量分析や、多層構造の膜厚等を分析する製品検査用途等に用いられている。
特に、製品検査用途の場合、短時間で多数の検査を行うことが求められることが多い。
【0003】
例えば、特許文献1では、試料に一次X線を照射可能なX線源と、試料から発生した二次X線を検出するX線検出部と、試料を搬送する試料搬送部と、X線検出部から出力された信号をエネルギー毎に弁別しエネルギー毎に入射回数を計数してX線強度としてスペクトルを得る分析器と、分析器で得られたスペクトルの特定の元素のエネルギーの二次X線強度と設定したX線強度の閾値とから試料搬送部で移動している試料が一次X線の照射位置を通過しているか否かを判断するX線分析装置が記載されている。
【0004】
このX線分析装置では、分析器で得られたスペクトルの特定の元素のエネルギーの二次X線強度と設定したX線強度の閾値とから試料搬送部で移動している試料が一次X線の照射位置を通過しているか否かを判断するので、一次X線照射領域に試料を配置するための位置調整機構や位置調整プロセスを廃し、小片の試料を静止させずに連続的に多数測定することが簡単な構成で可能なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022―13497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
特許文献1の技術では、試料を連続的に送りながら検査する場合、試料が載置されている検査対象領域が一次X線の照射ポイントを通過する時間が、検査が必要なX線量を取得するのに必要な時間と同じか、それよりも長くかかるように、試料の送り速度を設定する必要がある。そのため、検査対象領域が照射ポイントを通過している時間と、検査対象でない部分(非検査対象領域)が照射ポイントを通過している時間との比率を考えた場合、特に、検査対象領域が照射ポイントを通過している時間の比率が小さい場合は、検査対象でない部分(非検査対象領域)が照射ポイントを通過している時間が律速となり、検査の効率を上げることができないという不都合があった。特に、大量の試料を連続的に検査する場合では、検査の効率が悪くなってしまう。
【0007】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、大量の検査をより効率良く短時間に実施することが可能になるX線分析装置及びX線分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るX線分析装置は、試料を載置する試料ステージと、前記試料ステージ上の照射ポイントに一次X線を照射するX線源と、前記一次X線が照射された前記試料から放射される二次X線を検出し、前記二次X線のエネルギー情報を含む信号を出力するX線検出器と、前記信号を分析する分析器と、前記試料ステージと前記X線源及び前記X線検出器とを相対的に移動させて前記照射ポイントを移動可能なステージ移動機構とを備え、前記試料ステージが、前記試料が載置されている検査対象領域と、前記試料が載置されていない非検査対象領域とを有し、前記ステージ移動機構が、前記一次X線の照射時に前記照射ポイントを常に移動させ、前記非検査対象領域上を前記照射ポイントが移動する際の前記照射ポイントの移動を、前記検査対象領域上を前記照射ポイントが移動する際の前記照射ポイントの移動よりも速くする前記照射ポイントの移動速度の制御を行うことを特徴とする。
【0009】
このX線分析装置では、ステージ移動機構が、非検査対象領域上を照射ポイントが移動する際の照射ポイントの移動を、検査対象領域上を照射ポイントが移動する際の照射ポイントの移動よりも速くする照射ポイントの移動速度の制御を行うので、検査(分析)の必要が無い部分(非検査対象領域)を一次X線が通過するのに要する時間を減らすことができるため、一定速度で移動する場合に比べて、短時間で効率よく検査を実施することが可能になる。特に、互いに間隔を空けて載置された大量の試料を、一次X線の照射ポイントに対して連続的に通過させて検査(分析)する場合、試料の無い非検査対象領域で照射ポイントの移動速度を速く変調することで、非検査対象領域が多い程、検査時間の短縮効果を得ることができる。
【0010】
第2の発明に係るX線分析装置は、第1の発明において、前記ステージ移動機構が、予め記憶された前記検査対象領域と前記非検査対象領域との座標位置に基づいて前記移動速度の制御を行うことを特徴とする。
すなわち、このX線分析装置では、ステージ移動機構が、予め記憶された検査対象領域と非検査対象領域との座標位置に基づいて移動速度の制御を行うので、予め決まった座標位置に試料が載置され、明確に検査対象領域と非検査対象領域とを区別して移動速度を変更することができる。
【0011】
第3の発明に係るX線分析装置は、第1の発明において、前記試料ステージ上を撮像するカメラ部を備え、前記ステージ移動機構が、前記カメラ部で撮像した前記試料ステージ上の画像データにより求めた前記検査対象領域と前記非検査対象領域との位置に基づいて前記移動速度の制御を行うことを特徴とする。
すなわち、このX線分析装置では、ステージ移動機構が、カメラ部で撮像した試料ステージ上の画像データにより求めた検査対象領域と非検査対象領域との位置に基づいて移動速度の制御を行うので、たとえ試料ステージ上の任意の位置に試料を載置しても、画像データにより明確に検査対象領域と非検査対象領域とを区別して移動速度を変更することができる。
【0012】
第4の発明に係るX線分析装置は、第3の発明において、前記試料ステージが、前記試料よりも広く設定されていると共に前記検査対象領域を含んで前記試料を載置可能な載置可能領域を有し、前記ステージ移動機構が、前記画像データにより、前記載置可能領域内においても前記試料が載置された前記検査対象領域と前記試料が載置されていない前記非検査対象領域との位置に基づいて前記移動速度の制御を行うことを特徴とする。
すなわち、このX線分析装置では、ステージ移動機構が、画像データにより、載置可能領域内においても試料が載置された検査対象領域と試料が載置されていない非検査対象領域との位置に基づいて移動速度の制御を行うので、画像データにより、載置可能領域内においても明確に検査対象領域と非検査対象領域とを区別して移動速度を変更することができ、より効率化することができる。
【0013】
第5の発明に係るX線分析装置は、第1の発明において、前記試料ステージが、中心軸を中心に回転可能な円盤状であり、前記検査対象領域が、前記試料ステージの外周に沿って互いに間隔を開けて並んで複数設けられ、前記ステージ移動機構が、一回転する中で回転角に応じて前記試料ステージの回転速度を変えて前記移動速度の制御を行うことを特徴とする。
すなわち、このX線分析装置では、ステージ移動機構が、一回転する中で回転角に応じて試料ステージの回転速度を変えて移動速度の制御を行うので、円盤状の試料ステージでも容易に検査対象領域と非検査対象領域とを区別して移動速度を変更することができる。
【0014】
第6の発明に係るX線分析方法は、X線分析装置によるX線分析方法であって、前記X線分析装置が、試料を載置する試料ステージと、前記試料ステージ上の照射ポイントに一次X線を照射するX線源と、前記一次X線が照射された前記試料から放射される二次X線を検出し、前記二次X線のエネルギー情報を含む信号を出力するX線検出器と、前記信号を分析する分析器と、前記試料ステージと前記X線源及び前記X線検出器とを相対的に移動させて前記照射ポイントを移動可能なステージ移動機構とを備え、前記試料ステージが、前記試料が載置されている検査対象領域と、前記試料が載置されていない非検査対象領域とを有し、前記ステージ移動機構により、前記一次X線の照射時に前記照射ポイントを常に移動させ、前記非検査対象領域上を前記照射ポイントが移動する際の前記照射ポイントの移動を、前記検査対象領域上を前記照射ポイントが移動する際の前記照射ポイントの移動よりも速くする前記照射ポイントの移動速度の制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るX線分析装置及びX線分析方法によれば、ステージ移動機構が、非検査対象領域上を照射ポイントが移動する際の照射ポイントの移動を、検査対象領域上を照射ポイントが移動する際の照射ポイントの移動よりも速くする照射ポイントの移動速度の制御を行うので、非検査対象領域を一次X線が通過するのに要する時間を減らすことができるため、一定速度で移動する場合に比べて、短時間で効率よく検査を実施することが可能になる。
したがって、本発明のX線分析装置及びX線分析方法では、大量の試料でも、より効率良く検査を短時間に実施することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る第1実施形態のX線分析装置及びX線分析方法において、システム全体を示す構成図である。
図2】第1実施形態において、試料ステージ上の検査対象領域及び非検査対象領域に対する移動速度及びX線強度を示すグラフである。
図3】本発明に係る第2実施形態のX線分析装置及びX線分析方法において、システム全体を示す構成図である。
図4】第2実施形態において、試料ステージ上の検査対象領域,非検査対象領域及び載置可能領域を示す図である。
図5】本発明に係る第2実施形態のX線分析装置及びX線分析方法において、試料ステージ,X線源及びX線検出器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るX線分析装置及びX線分析方法の第1実施形態を、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0018】
第1実施形態のX線分析装置1は、図1に示すように、試料Sを載置する試料ステージ5と、試料ステージ5上の照射ポイントPに一次X線X1(入射X線)を照射するX線源2と、一次X線X1が照射された試料Sから放射される二次X線X2(蛍光X線や散乱X線等)を検出し、二次X線X2のエネルギー情報を含む信号を出力するX線検出器3と、信号を分析する分析器4と、試料ステージ5とX線源2及びX線検出器3とを相対的に移動させて照射ポイントPを移動可能なステージ移動機構6とを備えている。
【0019】
上記試料ステージ5は、図1及び図2に示すように、試料Sが載置されている検査対象領域A1と、試料Sが載置されていない非検査対象領域A2とを有している。
上記ステージ移動機構6は、一次X線X1の照射時に照射ポイントPを常に移動させ、非検査対象領域A2上を照射ポイントPが移動する際の照射ポイントPの移動を、検査対象領域A1上を照射ポイントPが移動する際の照射ポイントPの移動よりも速くする照射ポイントPの移動速度の制御を行う。
【0020】
このステージ移動機構6は、予め記憶された検査対象領域A1と非検査対象領域A2との座標位置に基づいて前記移動速度の制御を行う。
また、本実施形態のX線分析装置1は、試料Sに照射する一次X線X1の照射径を成形する一次X線調整部7と、X線分析器4に接続されたデータ処理部8とを備えている。
【0021】
上記X線源2は、試料ステージ5より上方に位置し、試料ステージ5上の任意の照射ポイントP1に一次X線X1を照射するX線管球である。X線源2は、例えば管球内のフィラメント(陰極)から発生した熱電子がフィラメント(陰極)とターゲット(陽極)との間に印加された電圧により加速され、ターゲット(W(タングステン)、Mo(モリブデン)、Rh(ロジウム)など)に衝突して発生したX線を一次X線X1としてベリリウム箔などの窓から出射するものである。
【0022】
上記X線検出器3は、試料ステージ5より上方に位置しつつX線源2と離間している。このX線検出器3は、試料Sから放射される二次X線X2を検出し、この二次X線X2のエネルギー情報を含む信号を出力する。X線検出器3は、例えば半導体検出器又は比例計数管などのエネルギー分散型X線検出器である。なお、X線検出器3として、波長分散型X線検出器を用いてもよい。
上記分析器4は、X線検出器3に接続されて出力された信号を分析する。分析器4は例えば、上記信号から電圧パルスの波高を得てエネルギースペクトルを生成する波高分析器(マルチチャンネルアナライザー)である。
【0023】
上記試料ステージ5は、数値制御可能な1軸又はそれ以上の多軸のリニアステージに載置されたパレットであって、ステージ移動機構6により、一定の搬送方向に連続的に移動可能となっている。
なお、試料ステージ5の表面材料は、試料Sから発生する二次X線X2のエネルギーに対して、試料ステージ5の表面から発生する二次X線X2のエネルギーと干渉しないものが選ばれる。例えば、試料Sが銅(Cu)やニッケル(Ni)で構成されている場合、試料ステージ5の表面の材料は、アルミニウム(Al)を用いる。なお、試料ステージ5に載置した試料Sの移動の軌跡は、一次X線X1が照射される照射ポイントPを通過するように配置される。
【0024】
また、試料ステージ5は、試料Sよりも広く設定されていると共に検査対象領域A1を含んで試料Sを載置可能な載置可能領域A3を有している。
上記載置可能領域A3は、試料ステージ5(パレット)の表面に形成した試料用穴である。この試料用穴である載置可能領域A3内に、試料Sが載置される。
なお、本実施形態では、ステージ移動機構6が、検査対象領域A1として載置可能領域A3の座標位置が予め記憶されており、前記移動速度の制御を行うように設定されている。
【0025】
本実施形態のX線分析方法では、上述したように、ステージ移動機構6により、図2に示すように、非検査対象領域A2上を照射ポイントPが移動する際の照射ポイントPの移動を、検査対象領域A1上を照射ポイントPが移動する際の照射ポイントPの移動よりも速くする照射ポイントPの移動速度の制御を行う。
【0026】
すなわち、例えば小片状の試料Sを試料ステージ5(パレット)の載置可能領域A3(試料用穴)に置き、一次X線X1の照射ポイントPを通過するように、ステージ移動機構6により試料ステージ5(パレット)を一定の搬送方向に移動させる。
このとき、X線源2は、試料ステージ5に対して垂直に一次X線X1を照射し、その一次X線X1の照射径は、載置可能領域A3(試料用穴)と同程度か、小さい再度とし、隣り合った載置可能領域A3に同時に照射されることが無いように設定される。
【0027】
上記載置可能領域A3(試料用穴)の座標値は、検査対象領域A1の座標値として事前にステージ移動機構6に記憶されており、試料ステージ5の移動範囲を、載置可能領域A3(検査対象領域A1)と、それ以外(非検査対象領域A2)とに分割し、それぞれの区間で異なる移動速度に設定される。
載置可能領域A3(検査対象領域A1)の移動速度は、試料Sの搬送方向(移動方向)の長さLと、X線分析に必要な照射時間Tとから、L/Tを越えないように設定される。また、非検査対象領域A2の移動速度は、試料ステージ5の制御の精度を保てる範囲で最高のスピードが選択される。
【0028】
このように本実施形態のX線分析装置1では、ステージ移動機構6が、非検査対象領域A2上を照射ポイントPが移動する際の照射ポイントPの移動を、検査対象領域A1上を照射ポイントPが移動する際の照射ポイントPの移動よりも速くする照射ポイントPの移動速度の制御を行うので、検査(分析)の必要が無い部分(非検査対象領域A2)を一次X線X1が通過するのに要する時間を減らすことができるため、一定速度で移動する場合に比べて、短時間で効率よく検査を実施することが可能になる。
【0029】
特に、互いに間隔を空けて載置された大量の試料Sを、一次X線X1の照射ポイントPに対して連続的に通過させて検査(分析)する場合、試料Sの無い非検査対象領域A2で照射ポイントPの移動速度を速く変調することで、非検査対象領域A2が多い程、検査時間の短縮効果を得ることができる。
また、ステージ移動機構6が、予め記憶された検査対象領域A1と非検査対象領域A2との座標位置に基づいて移動速度の制御を行うので、予め決まった座標位置に試料Sが載置され、明確に検査対象領域A1と非検査対象領域A2とを区別して移動速度を変更することができる。
【0030】
次に、本発明に係るX線分析装置及びX線分析方法の第2及び第3実施形態について、図3から図5を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0031】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、ステージ移動機構6が、予め記憶された検査対象領域A1と非検査対象領域A2との座標位置に基づいて前記移動速度の制御を行っているのに対し、第2実施形態のX線分析装置21及びX線分析方法では、図3及び図4に示すように、ステージ移動機構6が、カメラ部29で撮像した試料ステージ5上の画像データにより求めた検査対象領域A1と非検査対象領域A2との位置に基づいて前記移動速度の制御を行う点である。
【0032】
すなわち、第2実施形態のX線分析装置21は、試料ステージ5上を撮像するカメラ部29を備えている。
上記カメラ部29は、光学顕微鏡やCCDカメラ等を有しており、試料ステージ1より上方に位置つつX線源2と離間している。
カメラ部29は、撮像した画像データをステージ移動機構6に送信し、ステージ移動機構6は、画像データに基づいて画像認識により試料Sの位置を認識する。
【0033】
また、第2実施形態では、ステージ移動機構6が、図4に示すように、画像データにより、載置可能領域A3内においても試料Sが載置された検査対象領域A1と試料Sが載置されていない非検査対象領域A2との位置に基づいて前記移動速度の制御を行う点でも第1実施形態と異なっている。
【0034】
すなわち、第1実施形態では、載置可能領域A3(試料用穴)が検査対象領域A1と同じと仮定して移動速度の制御を行っているが、実際には、載置可能領域A3(試料用穴)よりも試料Sが小さいため、検査対象領域A1は載置可能領域A3よりも小さい領域となる。このため、第2実施形態では、載置可能領域A3(試料用穴)内においても、より詳細に試料Sが載置された検査対象領域A1と試料Sが載置されていない非検査対象領域A2とを画像データから区別して移動速度の制御を行っている。
【0035】
このように第2実施形態のX線分析装置21では、ステージ移動機構6が、カメラ部29で撮像した試料ステージ5上の画像データにより求めた検査対象領域A1と非検査対象領域A2との位置に基づいて移動速度の制御を行うので、たとえ試料ステージ5上の任意の位置に試料Sを載置しても、画像データにより明確に検査対象領域A1と非検査対象領域A2とを区別して移動速度を変更することができる。
【0036】
また、ステージ移動機構6が、画像データにより、載置可能領域A3内においても試料Sが載置された検査対象領域A1と試料Sが載置されていない非検査対象領域A2との位置に基づいて移動速度の制御を行うので、画像データにより、載置可能領域A3内においても明確に検査対象領域A1と非検査対象領域A2とを区別して移動速度を変更することができ、より効率化することができる。
【0037】
次に、第3実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、試料ステージ5が、ステージ移動機構6により、直線方向に連続的に移動可能となっているのに対し、第3実施形態のX線分析装置31及びX線分析方法では、図5に示すように、試料ステージ35が、中心軸を中心に回転可能な円盤状であり、検査対象領域A1が、試料ステージ35の外周に沿って互いに間隔を開けて並んで複数設けられ、ステージ移動機構36が、一回転する中で回転角に応じて試料ステージ35の回転速度を変えて前記移動速度の制御を行う点である。
【0038】
第3実施形態の試料ステージ35は、ベース板35aの中央に回転可能に載置された円盤状のターンテーブルである。
この試料ステージ35では、外周に沿って試料用穴である載置可能領域A3が互いに間隔を空けて複数形成されている。
また、ステージ移動機構36は、載置可能領域A3の位置(一回転する中で載置可能領域A3の位置に応じた回転角)に対応して円盤状の試料ステージ35を、回転速度を変えて回転駆動する。
【0039】
第3実施形態では、以下のようにX線分析が行われる。
まず、試料Sは、ベース板35aの一方側に設けられた導入路35bから試料ステージ35に搬送され、円盤状の試料ステージ35の載置可能領域A3内に導入される。
次に、ステージ移動機構36により試料ステージ35が回転されて試料Sが次々と載置可能領域A3内に導入される。
そして、照射ポイントPまで試料Sが移動し通過する際に、X線源2から一次X線X1が試料Sに照射されることで、X線分析が行われる。
【0040】
X線分析後、さらにステージ移動機構36により試料ステージ35が回転されて試料Sがベース板35aの他方側に設けられた排出路35cにまで移動したとき、排出路35cから外部へと搬送される。
上記ステージ移動機構36は、試料ステージ5を回転させる際に、載置可能領域A3が回転運動の特定の位相に存在することになり(本実施形態では、特定の回転角度毎に存在)、回転運動の位相により速度を制御している。
なお、回転運動の位相による回転速度の変調は、ステージ移動機構36にロータリーエンコーダ等を設けて電子的に行ってもよいし、カム機構等を設けて機械的に行ってもよい。
【0041】
このように第3実施形態のX線分析装置では、ステージ移動機構36が、一回転する中で回転角に応じて試料ステージ35の回転速度を変えて移動速度の制御を行うので、円盤状の試料ステージ35でも容易に検査対象領域A1と非検査対象領域A2とを区別して移動速度を変更することができる。
【0042】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記各実施形態は、例えばエネルギー分散型の蛍光X線分析装置であるが、本発明を、他の分析方式、例えば波長分散型の蛍光X線分析装置や、全反射蛍光X線分析装置に用いることもできる。
【符号の説明】
【0043】
1,21…X線分析装置、2…X線源、3…X線検出器、4…分析器、5,35…試料ステージ、6,36…ステージ移動機構、29…カメラ部、A1…検査対象領域、A2…非検査対象領域、A3…載置可能領域、S…試料、P…照射ポイント、X1…一次X線、X2…二次X線
図1
図2
図3
図4
図5