(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042428
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】SiCエピタキシャルウェハ及びSiCエピタキシャルウェハの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20240321BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240321BHJP
C30B 25/20 20060101ALI20240321BHJP
C30B 29/36 20060101ALI20240321BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L21/205
C30B25/20
C30B29/36 A
C23C16/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147136
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137017
【弁理士】
【氏名又は名称】眞島 竜一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 健勝
(72)【発明者】
【氏名】金田一 麟平
(72)【発明者】
【氏名】大内 まり絵
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
5F152
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077AB01
4G077AB09
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5F152NQ02
(57)【要約】
【課題】キャリア濃度の面内均一性の高いSiCエピタキシャルウェハ及びSiCエピタキシャルウェハの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態にかかるSiCエピタキシャルウェハは、SiC基板と、前記SiC基板に積層されたSiCエピタキシャル層と、を備え、前記SiCエピタキシャル層のキャリア濃度均一性は3.8%未満であり、前記キャリア濃度均一性は、平面視した際の前記SiCエピタキシャル層の中心を通る直線に沿って測定された前記SiCエピタキシャル層のキャリア濃度の最大値と最小値との差を平均値で割った値である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC基板と、前記SiC基板に積層されたSiCエピタキシャル層と、を備え、
前記SiCエピタキシャル層のキャリア濃度均一性は3.8%未満であり、
前記キャリア濃度均一性は、平面視した際の前記SiCエピタキシャル層の中心を通る直線に沿って測定された前記SiCエピタキシャル層のキャリア濃度の最大値と最小値との差を平均値で割った値である、SiCエピタキシャルウェハ。
【請求項2】
前記SiC基板の直径が149mm以上である、請求項1に記載のSiCエピタキシャルウェハ。
【請求項3】
前記SiC基板の直径が199mm以上である、請求項1に記載のSiCエピタキシャルウェハ。
【請求項4】
SiC基板の一面に、SiCエピタキシャル層を成膜する成膜工程を有し、
前記SiCエピタキシャル層の成長速度は、61μm/h以上であり、
前記SiCエピタキシャル層の内側領域は、前記成膜工程における成膜温度が、前記内側領域内の平均温度に対して±1℃未満であり、
前記SiCエピタキシャル層の外側領域は、前記成膜工程における成膜温度が、前記内側領域の最外周の温度より2℃以上10℃未満低く、
前記内側領域は、中心位置が前記SiC基板の中心と一致し直径が前記SiC基板の直径の80%の同心円より内側の領域であり、
前記外側領域は、前記内側領域より外側の領域である、SiCエピタキシャルウェハの製造方法。
【請求項5】
前記SiC基板の直径が149mm以上である、請求項4に記載のSiCエピタキシャルウェハの製造方法。
【請求項6】
前記SiC基板の直径が199mm以上である、請求項4に記載のSiCエピタキシャルウェハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiCエピタキシャルウェハ及びSiCエピタキシャルウェハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて絶縁破壊電界が1桁大きく、バンドギャップが3倍大きい。また、炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて熱伝導率が3倍程度高い等の特性を有する。そのため炭化珪素(SiC)は、パワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイス等への応用が期待されている。このため、近年、上記のような半導体デバイスにSiCエピタキシャルウェハが用いられるようになっている。
【0003】
SiCエピタキシャルウェハは、SiC基板の表面にSiCエピタキシャル層を積層することで得られる。以下、SiCエピタキシャル層を積層前の基板をSiC基板と称し、SiCエピタキシャル層を積層後の基板をSiCエピタキシャルウェハと称する。SiC基板は、SiCインゴットから切り出される。
【0004】
SiCエピタキシャルウェハのキャリア濃度は、半導体デバイスの素子特性に影響を及ぼす。SiCエピタキシャルウェハのキャリア濃度の面内均一性が低いと、同じSiCエピタキシャルウェハから加工された半導体デバイスであっても、素子特性がばらつく。素子特性のバラツキを抑え、製品歩留まりを高めるために、キャリア濃度の面内均一性が高いSiCエピタキシャルウェハが求められている。
【0005】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、キャリア濃度の面内均一性の高いSiCエピタキシャルウェハが開示されている。例えば、特許文献1には、キャリアガスをアンモニアガスとし、ガスの流量を低くすることで、SiCエピタキシャルウェハのキャリア濃度の面内均一性が高まることが記載されている。また例えば、特許文献2には、炭化ケイ素基板の温度分布を調整することで、キャリア濃度の面内均一性が高まることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6969628号公報
【特許文献2】特開第2017-84989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SiCエピタキシャルウェハのキャリア濃度の面内均一性をさらに高めることが求められている。SiCエピタキシャルウェハのキャリア濃度は、最外周から数ミリ程度内側までのいわゆるエッジエクスクルージョン領域の近傍において特異的に高くなる又は低くなり、外周に向かうほどその変化が顕著になる傾向にある。当該キャリア濃度の特異的な変化をより抑制することで、SiCエピタキシャルウェハのキャリア濃度の面内均一性をさらに高めることが求められている。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、キャリア濃度の面内均一性の高いSiCエピタキシャルウェハ及びSiCエピタキシャルウェハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、SiCエピタキシャル層の成長速度を高め、かつ、SiCエピタキシャル層の面内の温度分布を調整することで、SiCエピタキシャルウェハのキャリア濃度の面内均一性をさらに高めることができることを見出した。本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0010】
(1)第1の態様にかかるSiCエピタキシャルウェハは、SiC基板と、前記SiC基板に積層されたSiCエピタキシャル層と、を備える。前記SiCエピタキシャル層のキャリア濃度均一性は3.8%未満である。前記キャリア濃度均一性は、平面視した際の前記SiCエピタキシャル層の中心を通る直線に沿って測定された前記SiCエピタキシャル層のキャリア濃度の最大値と最小値との差を平均値で割った値である。
【0011】
(2)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハにおいて、前記SiC基板の直径が149mm以上でもよい。
【0012】
(3)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハにおいて、前記SiC基板の直径が199mm以上でもよい。
【0013】
(4)第2の態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、SiC基板の一面に、SiCエピタキシャル層を成膜する成膜工程を有する。前記SiCエピタキシャル層の成長速度は、61μm/h以上である。前記SiCエピタキシャル層の内側領域は、前記成膜工程における成膜温度が、前記内側領域内の平均温度に対して温度差が±1℃未満である。前記SiCエピタキシャル層の外側領域は、前記成膜工程における成膜温度が、前記内側領域の最外周の温度より2℃以上10℃未満低い。前記内側領域は、中心位置が前記SiC基板の中心と一致し直径が前記SiC基板の直径の80%の同心円より内側の領域である。前記外側領域は、前記内側領域より外側の領域である。
【0014】
(5)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法において、前記SiC基板の直径が149mm以上でもよい。
【0015】
(6)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法において、前記SiC基板の直径が199mm以上でもよい。
【発明の効果】
【0016】
上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハは、キャリア濃度の面内均一性が高い。また上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハを用いること、キャリア濃度の面内均一性の高いSiCエピタキシャルウェハが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの断面図である。
【
図2】本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの平面図である。
【
図3】本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの成膜装置の一例の模式図である。
【
図4】本実施形態に係るSiCエピタキシャル層の成膜工程を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態にかかるSiC基板等について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本実施形態の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材質、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0019】
まず方向について規定する。SiC基板の広がる面内の一方向をx方向とし、同じ面内でx方向と直交する方向をy方向とする。x方向は、例えば、<11-20>方向である。y方向は、例えば、<1-100>方向である。z方向は、SiC基板に対して垂直な方向であり、x方向及びy方向と直交する。
【0020】
「SiCエピタキシャルウェハ」
図1は、本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハ10の断面図である。SiCエピタキシャルウェハ10は、SiC基板1とSiCエピタキシャル層2とを備える。
図2は、本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハ10の平面図である。
図2は、SiCエピタキシャルウェハ10のSiCエピタキシャル層2側の面をz方向から平面視した図である。
【0021】
SiC基板1は、例えば、n型SiCである。SiC基板1のポリタイプは、特に問わず、2H、3C、4H、6Hのいずれでもよい。SiC基板1は、例えば、4H-SiCである。
【0022】
SiC基板1の平面視形状は略円形である。SiC基板1は、結晶軸の方向を把握するためのオリエンテーションフラットOFもしくはノッチを有してもよい。SiC基板1の直径は、特に問わない。SiC基板1の直径は、例えば、149mm以上151mm以下である。SiC基板1の直径は、例えば、199mm以上201mm以下でもよいし、249mm以上251mm以下でもよいし、299mm以上301mm以下でもよい。SiC基板1の直径は、例えば、149mm以上でもよいし、199mm以上でもよいし、249mm以上でもよいし、299mm以上でもよい。
【0023】
SiCエピタキシャル層2は、不純物がドープされたSiCである。SiCエピタキシャル層2は、例えば、導電型を決定する不純物として窒素を含む。SiCエピタキシャル層2は、窒素の他に、ボロン等の不純物を含んでもよい。SiCエピタキシャル層2は、例えば、n型SiCである。
【0024】
SiCエピタキシャル層2のキャリア濃度の平均値は、例えば、1.0×1014cm-3以上9.0×1016cm-3以下であり、好ましくは1.0×1014cm-3以上9.0×1015cm-3以下である。ここでキャリア濃度は、実効キャリア濃度である。実効キャリア濃度は、ドナー濃度とアクセプタ濃度との差の絶対値である。
【0025】
SiCエピタキシャル層2のキャリア濃度は、例えば、水銀プローブ(Hg-CV)法、二次イオン質量分析(SIMS)法で測定できる。Hg-CV法は、ドナー濃度とアクセプタ濃度の差を実効キャリア濃度として測定する。二次イオン質量分析法(SIMS)は、厚み方向に層を削りながら、飛び出してきた二次イオンの質量分析をする方法である。質量分析からドーピング濃度を測定できる。
【0026】
SiCエピタキシャル層2のキャリア濃度は、例えば、平面視した際のSiCエピタキシャル層2の中心Cを通る直線Lに沿って測定する。直線Lは、例えば、<11-20>方向に延びる線である。直線Lは、<1-100>方向に延びる線でもよい。また直線Lは複数であってもよい。例えば、SiCエピタキシャル層2のキャリア濃度を、中心Cを原点とする十字の方向に延びる線に沿って測定してもよい。またSiCエピタキシャルウェハ10の最外周の近傍はデバイス取得領域外であるため、最外周から5mm未満の位置は、測定点に含めない。ここで、SiCエピタキシャルウェハ10の最外周は、ベベル部(外周端の傾斜部)を含むウェハ全体の最外周である。キャリア濃度の測定は、直線L上に、中心Cから等間隔に行ってもよいし、間隔が変わってもよい。キャリア濃度の測定は、10mm間隔で行ってもよいし、15mm間隔で行ってもよいし、20mm間隔で行ってもよいし、25mm間隔で行ってもよいし、30mm間隔で行ってもよい。
【0027】
SiCエピタキシャル層2のキャリア濃度均一性は、3.8%未満である。SiCエピタキシャル層2のキャリア濃度均一性は、好ましくは3.0%以下である。SiCエピタキシャル層2のキャリア濃度均一性は、さらに好ましくは1.0%以下である。キャリア濃度均一性は、z方向から平面視した際のSiCエピタキシャル層2の中心Cを通る直線Lに沿って測定されたSiCエピタキシャル層2のキャリア濃度の最大値と最小値との差を平均値で割って求められる。
【0028】
一例として、SiC基板1の直径が150mm(6インチ)の場合、中心Cを基準として<11-20>方向に延びる直線Lに沿って、中心及び中心から±15mm、±30mm、±45mm、±60mm、±70mmのそれぞれの位置でキャリア濃度を測定し、これらの測定点におけるそれぞれのキャリア濃度からキャリア濃度均一性を求める。
【0029】
また例えば、SiC基板1の直径が200mm(8インチ)の場合、中心Cを基準として<11-20>方向に延びる直線Lに沿って、中心及び中心から±20mm、±40mm、±60mm、±80mm、±95mmのそれぞれの位置でキャリア濃度を測定し、これらの測定点におけるそれぞれのキャリア濃度からキャリア濃度均一性を求める。
【0030】
また例えば、SiC基板1の直径が250mm(10インチ)の場合、中心Cを基準として<11-20>方向に延びる直線Lに沿って、中心及び中心から±25mm、±50mm、±75mm、±100mm、±120mmのそれぞれの位置でキャリア濃度を測定し、これらの測定点におけるそれぞれのキャリア濃度からキャリア濃度均一性を求める。
【0031】
また例えば、SiC基板1の直径が300mm(12インチ)の場合、中心Cを基準として<11-20>方向に延びる直線Lに沿って、中心及び中心から±30mm、±60mm、±90mm、±120mm、±145mmのそれぞれの位置でキャリア濃度を測定し、これらの測定点におけるそれぞれのキャリア濃度からキャリア濃度均一性を求める。
【0032】
本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハ10は、SiCエピタキシャル層2のキャリア濃度均一性が3.8%未満である。キャリア濃度均一性は、値がゼロに近いほど、面内方向におけるキャリア濃度の均一性が高いことを示す。本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハ10から切り出されたSiCデバイスは、キャリア濃度のばらつきが小さく、素子特性のばらつきが小さい。
【0033】
また本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハ10は、面内におけるキャリア濃度のばらつきが小さいため、信頼性試験の一部を省略できる。面内におけるキャリア濃度のばらつきが大きい場合、SiCエピタキシャルウェハ10の面内の複数箇所に対して、信頼性試験を行う必要がある。これに対し、面内におけるキャリア濃度のばらつきが小さい場合は、代表する1点に対して信頼性試験を行えばよい。例えば、SiCエピタキシャル層2のキャリア濃度均一性が3.8%以上である場合において3点(例えば、中心、半径の2分の1、半径の5mm内側)で信頼性試験を行っていた場合でも、キャリア濃度均一性が3.0%以下のSiCエピタキシャル層2であれば2点(例えば、中心、半径の5mm内側)で信頼性試験を行えばよく、キャリア濃度均一性が1.0%以下であれば1点(例えば、中心)で信頼性試験を行えばよくなる場合がある。信頼性試験は様々な項目がある。測定点毎に、複数の試験項目の測定を行うと、それだけ時間もコストもかかる。これに対し、本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハ10は、信頼性試験の一部を省略でき、低コストとなる。
【0034】
「SiCエピタキシャルウェハの製造方法」
SiCエピタキシャルウェハの製造方法は、SiC基板1の準備工程と、SiCエピタキシャル層2の成膜工程と、を有する。
【0035】
まずSiC基板1を準備する。SiC基板1は、SiCインゴットを所定の厚みでスライスすることで得られる。例えば、SiC基板1の主面が(0001)面に対して0.4°以上5°以下のオフセット角を有するように、SiCインゴットをスライスする。SiCインゴットは、例えば、昇華法で作製される。SiC基板1は、販売されているものを購入してもよい。SiC基板1の直径は、特に問わない。SiC基板1の直径は、例えば、149mm以上151mm以下である。SiC基板1の直径は、例えば、199mm以上201mm以下でもよいし、249mm以上251mm以下でもよいし、299mm以上301mm以下でもよい。SiC基板1の直径は、例えば、149mm以上でもよいし、199mm以上でもよいし、249mm以上でもよいし、299mm以上でもよい。
【0036】
次いで、SiC基板1上にSiCエピタキシャル層2を成膜する成膜工程を行う。SiCエピタキシャル層2は、例えば、CVD法で成膜される。
【0037】
図3は、第1実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハ10の成膜装置100の一例の模式図である。成膜装置100は、例えば、チャンバー20と支持体30とサセプタ40と下部ヒーター50と上部ヒーター60とを有する。
図3は、SiC基板1がサセプタ40に載置された状態を示す。成膜装置100は、SiC基板1の載置面の上方にガス供給口22がある縦型炉である。
【0038】
チャンバー20は、例えば、本体21とガス供給口22とガス排出口23とを有する。
本体21は、成膜空間Sを取り囲む。ガス供給口22は、成膜ガスGを成膜空間Sに供給する入口である。ガス供給口22は、例えば、SiC基板1の載置面の上方にある。ガス排出口23は、成膜空間S内に滞留した成膜ガスG等を排出する出口である。ガス排出口23は、例えば、SiC基板1の載置面より下方にある。成膜ガスGは、例えば、Si系ガス、C系ガス、パージガス、ドーパントガスである。
【0039】
Si系ガスは、分子内にSiを含む原料ガスである。Si系ガスは、例えば、シラン(SiH4)、ジクロロシラン(SiH2Cl2)、トリクロロシラン(SiHCl3)、テトラクロロシラン(SiCl4)等である。C系ガスは、例えばプロパン(C3H8)、エチレン(C2H4)等である。ドーパントガスは、キャリアとなる元素を含むガスである。ドーパントガスは、例えば、窒素、アンモニア等である。パージガスは、これらのガスをSiC基板1に搬送するガスであり、SiCに対して不活性な水素等である。
【0040】
支持体30は、SiC基板1を支持する。支持体30は、軸中心に回転可能である。SiC基板1は、例えば、サセプタ40にSiC基板1が載置された状態で、支持体30に載置される。サセプタ40は、SiC基板1を載置した状態で、チャンバー20内に搬送される。下部ヒーター50は、例えば、支持体30内にあり、SiC基板1を加熱する。上部ヒーター60は、チャンバー20の上部を加熱する。成膜空間S内に露出する部材は、例えば、カーボン部材であり、表面がSiC又はTaCで被覆されていてもよい。成膜工程は、例えば、
図3に示す縦型炉で行われる。
【0041】
成膜工程では、SiCエピタキシャル層2の成膜温度を制御する。成膜温度は、SiCエピタキシャル層2の内側領域A1と外側領域A2のそれぞれを制御する。
図4は、本実施形態に係るSiCエピタキシャル層2の成膜工程を説明するための模式図である。
【0042】
内側領域A1は、中心位置が前記SiC基板1の中心と一致し直径が前記SiC基板1の直径の80%の同心円より内側の領域である。例えば、SiC基板1の直径が150mm(6インチ)の場合、半径60mmの同心円より内側の領域が内側領域A1である。例えば、SiC基板1の直径が200mm(8インチ)の場合、半径80mmの同心円より内側の領域が内側領域A1である。例えば、SiC基板1の直径が250mm(10インチ)の場合、半径100mmの同心円より内側の領域が内側領域A1である。例えば、SiC基板1の直径が300mm(12インチ)の場合、半径120mmの同心円より内側の領域が内側領域A1である。外側領域A2は、内側領域A1より外側に位置する領域である。
【0043】
成膜工程において、内側領域A1の成膜温度は、内側領域A1内の平均温度に対する温度差が±1℃未満となるように制御する。内側領域A1の成膜温度は、例えば、下部ヒーター50の出力を調整することで制御できる。またこの他、サセプタの構造や輻射率等を調整して内側領域A1の成膜温度を調整してもよいし、上部ヒーター60の出力を調整して内側領域A1の成膜温度を調整してもよい。
【0044】
また成膜工程において、外側領域A2の成膜温度は、内側領域A1の最外周の温度より2℃以上10℃未満低くなるように制御する。すなわち、外側領域A2の成膜温度は、内側領域A1の最外周の温度より2℃以上低くし、10℃以上低くなることが無いように制御する。内側領域A1の最外周の温度は、例えば、内側領域A1の最外周上のいくつかの測定点における成膜温度の平均値である。外側領域A2の成膜温度は、内側領域A1の成膜温度と同様の方法で調整できる。
【0045】
成膜工程における成膜温度は、例えば、放射温度計によって測定できる。また、計算機によるシミュレーション結果を用いて、成膜工程における成膜温度を求めても良い。
【0046】
成膜工程では、SiCエピタキシャル層2の成長速度も制御する。SiCエピタキシャル層2の成長速度は、61μm/h以上とする。SiCエピタキシャル層2の成長速度は、原料ガス(Si系ガス及びC系ガス)の供給量、サセプタ40の温度等を調整することで変更可能である。SiCエピタキシャル層2の成長速度は、例えば、成膜前後のウエハ厚さの差及び成膜時間から算出できる。
【0047】
SiCエピタキシャル層2の成長速度を早くすることで、SiCエピタキシャル層2に、導電型を決定する元素と異なるボロン等の元素が不純物として取り込まれることを抑制できる。例えば、キャリア濃度と同じ全ての測定点において、ボロンとアルミがそれぞれ1.0×1014cm-3以下にすることができる。さらに内側領域の温度差を±1℃と小さく、外側領域を内側領域よりも2℃以上10℃未満低くし、ウエハ全面における対流を制御することで、導電型を決定する元素と異なるボロン等の元素が不純物として取り込まれる量を制御することができる。例えば、キャリア濃度と同じ全ての測定点において、ボロンとアルミがそれぞれ1.0×1013cm-3以上1.0×1014cm-3以下にすることができる。これらの元素はチャンバー20から供給される元素であり、SiCエピタキシャル層2に取り込まれると、実効的なキャリア濃度が変動してしまう。導電型を決定する元素と異なる元素がSiCエピタキシャル層2へ取り込まれることを抑制することで、実効的なキャリア濃度の変動を抑制することができる。例えば、SiCエピタキシャル層2のキャリア濃度の平均値が1.0×1016cm-3の場合、ボロン及びアルミが1.0×1013cm-3以上1.0×1014cm-3以下であれば実行的なキャリア濃度の変動は0.1%以上1%以下となり、実効的なキャリア濃度に与える影響が小さくなる。また、導電型を決定する元素と異なるボロン等の元素は、SiCエピタキシャル層2に含まれる量が少ない程キャリアライフタイムは長くなる傾向がある。一方で、キャリアライフタイムが長すぎると、バイポーラデバイスにおいては、スイッチング特性が悪化し、スイッチング損失が増加する場合がある。キャリア濃度と同じ全ての測定点において、ボロンとアルミをそれぞれ1.0×1013cm-3以上1.0×1014cm-3以下に制御することで、デバイスにおけるキャリアライフタイムをより安定化することができる。
【0048】
またこの他、成膜工程では、SiCエピタキシャル層2に供給されるガス流量を制御する。ガス流量を制御するガスは、例えば、Si系ガス、C系ガス、パージガス、ドーパントガスである。ガス流量を制御することで、SiCエピタキシャル層2内のキャリア濃度のばらつきを小さくできる。
【0049】
本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、SiCエピタキシャル層2の成膜温度及び成長速度を調整することで、SiCエピタキシャルウェハ10の面内におけるキャリア濃度のばらつきを小さくできる。上述のように、面内におけるキャリア濃度のばらつきが小さいSiCエピタキシャルウェハ10は、信頼性試験を省略でき、各種装置の電源等に使われる高耐圧の半導体デバイス用の基板として好適に用いることができる。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【実施例0051】
「実施例1」
直径が150mmのSiC基板1を準備した。
図3に示す成膜装置100と同様の縦型炉を用いてSiC基板1上にSiCエピタキシャル層2を成膜した。そして成膜後のSiCエピタキシャル層2の厚さを赤外分光光度計で測定した。成膜後のSiCエピタキシャル層2の厚さは、SiCエピタキシャルウェハ10の中心Cを基準に、<1-100>方向に0mm、15mm、30mm、45mm、60mm、70mmの6点のそれぞれで測定した。上記6点の平均厚さを成膜時間で除することによって求められるSiCエピタキシャル層2の成長速度は、61μm/h以上とした。
【0052】
また成膜工程における内側領域A1及び外側領域A2の成膜温度は、計算機を用いたシミュレーションによって求めた。シミュレーションによって求められるSiCエピタキシャルウェハ10の各位置の温度は、放射温度計を用いて実測定される温度と、略一致する。成膜温度は、SiCエピタキシャルウェハ10の中心Cを基準に、<1-100>方向に1mm間隔で求めた。内側領域A1内の各測定点の成膜温度は、これらの測定点の平均温度に対して±1℃未満であった。また成膜時の外側領域A2の成膜温度は、内側領域A1の最外周の温度より3.3℃低かった。外側領域A2の成膜温度は、中心Cから<1-100>方向に70mm離れた位置の温度とした。内側領域A1の最外周の温度は、中心Cから<1-100>方向に60mm離れた位置の温度とした。
【0053】
そして成膜後のSiCエピタキシャル層2のキャリア濃度を測定した。キャリア濃度は、SiCエピタキシャルウェハ10の中心Cを基準に、<1-100>方向に0mm、15mm、30mm、45mm、60mm、70mmの6点のそれぞれで測定した。測定点のキャリア濃度の最大値と最小値の差を平均値で割り、キャリア濃度均一性を求めた。実施例1のSiCエピタキシャルウェハ10のキャリア濃度均一性は、2.4%であった。
【0054】
「比較例1」
比較例1は、SiCエピタキシャル層2の成長速度を61μm/h未満とした点が実施例1と異なる。また比較例1は、成膜時の外側領域A2の成膜温度が内側領域A1の最外周の温度より2.9℃低かった。比較例1のその他の条件は、実施例1と同じとして、比較例1のSiCエピタキシャルウェハ10のキャリア濃度均一性を求めた。比較例1のSiCエピタキシャルウェハ10のキャリア濃度均一性は、5.0%であった。
【0055】
「比較例2」
比較例2は、外側領域A2の成膜温度を変更した点が実施例1と異なる。比較例2は、成膜時の外側領域A2の成膜温度が内側領域A1の最外周の温度より1.97℃低かった。比較例2のその他の条件は、実施例1と同じとして、比較例2のSiCエピタキシャルウェハ10のキャリア濃度均一性を求めた。比較例2のSiCエピタキシャルウェハ10のキャリア濃度均一性は、12.9%であった。
【0056】
以下の表1に、実施例1、比較例1及び比較例2の結果をまとめた。表1の内側領域の列は、内側領域内の平均温度に対する各測定点の温度差である。表1の外側領域の列は、内側領域の最外周の温度を基準とした温度差である。
【0057】
【0058】
成長速度及び成膜温度が制御された実施例1は、比較例1及び2よりキャリア濃度均一性の値が低く、キャリア濃度の面内バラツキが小さい。比較例1は、成長速度が遅く、最外周近傍にボロン等の導電型を決定する元素以外の元素が取り込まれたことにより、キャリア濃度が面内にばらついていると思われる。比較例2は、内側領域と外側領域との成膜温度差が所定値以下であり、キャリア濃度が面内にばらついていると思われる。
【0059】
「実施例2」
実施例2は、内側領域の最外周の温度に対する外側領域の温度を変更した点が実施例1と異なる。実施例2では、成膜工程における外側領域の成膜温度が内側領域の最外周の温度より2℃以上10℃未満低くなるように設定した。実施例1及び実施例2の測定結果を
図5にまとめた。
【0060】
実施例2に示すように、成長速度が所定値以上で、内側領域と外側領域との温度差が所定値以上であれば、キャリア濃度均一性の値を低くできることが確認できた。
1…SiC基板、2…SiCエピタキシャル層、10…SiCエピタキシャルウェハ、C…中心、L…直線、20…チャンバー、21…本体、22…ガス供給口、23…ガス排出口、30…支持体、40…サセプタ、50…下部ヒーター、60…上部ヒーター、100…成膜装置、A1…内側領域、A2…外側領域