(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042473
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物、および、プリント配線板
(51)【国際特許分類】
C08F 220/20 20060101AFI20240321BHJP
C08F 220/26 20060101ALI20240321BHJP
C09D 4/00 20060101ALI20240321BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20240321BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
C08F220/20
C08F220/26
C09D4/00
C09D4/02
H05K3/28 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147220
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 秀之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和也
(72)【発明者】
【氏名】荒井 康昭
(72)【発明者】
【氏名】嶋宮 真梨子
(72)【発明者】
【氏名】小澤 咲月
【テーマコード(参考)】
4J038
4J100
5E314
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】 (修正有)
【課題】にじみやだれが抑制されており、かつ、レベリング性が良好である、硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】25~60℃の少なくともいずれかの温度における粘度が50~200mPa・sである、硬化性組成物。(メタ)アクリル基を2つ有する(メタ)アクリレートモノマー、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー、エーテル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、およびエポキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも1の活性エネルギー線硬化性モノマーを含有する、前記硬化性組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
25~60℃の少なくともいずれかの温度における粘度が50~200mPa・sである、硬化性組成物。
【請求項2】
活性エネルギー線硬化性モノマーを含有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記活性エネルギー線硬化性モノマーが、25℃における粘度が100mPa・s以下であり、かつ、沸点が70℃以上である活性エネルギー線硬化性モノマーを含有する、請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記活性エネルギー線硬化性モノマーを40質量%以上含有する、請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記活性エネルギー線硬化性モノマーが、(メタ)アクリル基を2つ有する(メタ)アクリレートモノマー、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー、エーテル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、および、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも1を含有する、請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
さらにイソシアヌレート骨格を有する(ブロック)イソシアネート化合物を含有する、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
CZ処理済み銅ベタ基板にウェット膜厚30μmで塗布し、塗布後10秒以内に高圧水銀灯にて800mJ/cm2で光照射を行った場合に、塗膜の端部のにじみの幅の長さが光学顕微鏡(50倍)で観察して30μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
インクジェット印刷に使用される、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性組成物から得られることを特徴とする、硬化物。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化物を備えることを特徴とする、プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、硬化物、および、プリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
ソルダーレジストは、プリント配線板や半導体パッケージ用基板の表層部分に使用され、基板上に形成された回路パターンを、熱、湿気等の外部からの衝撃やストレスから保護する役割を果たしている。
【0003】
基板をソルダーレジストで被膜する方法としては、従来からスクリーン印刷法等が知られている。スクリーン印刷法による被膜形成方法では、現像等、処理工程が多く、作業も煩雑であることから、近年ではインクジェット法により必要な箇所に硬化性組成物を直接塗布する方法も採用されるようになってきた。インクジェット法では、スクリーンメッシュやフォトマスク等を作製する必要がなく、スクリーン印刷法等に比べて工程数も削減できるため、コスト削減という観点から大きなメリットがある。
【0004】
インクジェット法においてピエゾ方式を採用した場合、ノズルに接続する微小な圧力室の壁を圧電(ピエゾ)素子で変形させることで圧力室容積を変化させ、圧力室を満たすインクを加圧してノズルからインク液滴を噴射することになる。このため、圧力室内に充填される硬化性組成物の粘度は、低粘度であることが要求される。
【0005】
特許文献1では、基板に対する濡れ広がり性に優れる光硬化性インクジェットインクとして、有機溶媒と、シクロアルキルおよびシクロアルキレンからなる群より選ばれる少なくとも1種を有し、かつ、ウレタン結合を有さない多官能(メタ)アクリレートと、界面活性剤と、光重合開始剤とを含有する光硬化性インクジェットインクであって、前記有機溶媒の含有量が光硬化性インクジェットインク100重量%に対して40~98重量%であって、25℃における粘度が1.0~30mPa・sである、光硬化性インクジェットインクが開示されている。
【0006】
他方で、硬化性組成物を低粘度にするにあたっては、高粘度化合物やフィラーの添加量を少なくすることがある。この場合に、基板上に着弾した硬化性組成物が基板に浸み込むことによるにじみや塗布後の硬化性樹脂組成物のだれが生じるという問題が生じうる。かかる問題に対応するために、基板に撥液処理を施す方法等がとられることがある。しかしながら、撥液処理では、撥液の廃液が生じたり、工程数が増えたり等するため、コストおよびSDGsの観点から好ましくなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、基板に塗布した場合に、にじみやだれが抑制されており、かつ、レベリング性が良好である、硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、25~60℃の少なくともいずれかの温度における粘度が50~200mPa・sである硬化性組成物を基板に塗布した場合、にじみやだれが抑制されており、レベリング性が良好であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の態様による硬化性組成物は、25~60℃の少なくともいずれかの温度における粘度が50~200mPa・sであることを特徴とする。本発明の態様による硬化性組成物は、にじみやだれが抑制されており、レベリング性が良好であるため、インクジェット印刷に使用する硬化性組成物としても好適である。
【0011】
本発明の態様における硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性モノマーを含有する。
【0012】
また本発明の態様において上述の活性エネルギー線硬化性モノマーは、25℃における粘度が100mPa・s以下であり、かつ、沸点が70℃以上である活性エネルギー線硬化性モノマーを含有することが好ましい。
【0013】
さらに本発明の態様による硬化性組成物は、上述の活性エネルギー線硬化性モノマーを40質量%以上含有することが好ましい。
【0014】
また本発明の態様において上述の活性エネルギー線硬化性モノマーは、(メタ)アクリロイル基を2つ有する(メタ)アクリレートモノマー、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー、エーテル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、および、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0015】
本発明の態様による硬化性組成物は、さらにイソシアヌレート骨格を有する(ブロック)イソシアネート化合物を含有していてもよい。
【0016】
さらに本発明の態様による硬化性組成物は、CZ処理済み銅ベタ基板にウェット膜厚30μmで塗布し、塗布後10秒以内に高圧水銀灯にて800mJ/cm2の光照射を行った場合に、塗膜の端部のにじみの幅の長さが光学顕微鏡(50倍)で観察して30μm以下であることが好ましい。
【0017】
本発明の態様による硬化性組成物は、インクジェット印刷に使用することができる。
【0018】
本発明の別の態様による硬化物は、上述の硬化性組成物を硬化させて得られることを特徴とする。
【0019】
本発明のさらに別の態様によるプリント配線板は、上述の硬化物を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記態様によれば、基板に塗布した場合に、にじみやだれが抑制されており、かつ、レベリング性が良好である、硬化性組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施態様に限定されるものではない。
【0022】
本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」、「メタクリレート」およびこれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0023】
また本明細書において「粘度」とは、JIS Z 8803の「10 円すい-平板形回転粘度計による粘度測定方法」に準じて、所定の温度、100rpm、30秒値とし、コーン・ロータとして1°34’×R24を用いたコーンプレート型粘度計(TVE-33H、東機産業株式会社製)にて測定した値をいう。
【0024】
[1.硬化性組成物]
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、25~60℃の少なくともいずれかの温度における粘度が50~200mPa・sである。粘度の調整方法としては特に限定されないが、例えば、本実施形態に係る硬化性組成物において、後記する活性エネルギー線硬化性モノマーの種類や配合量を適宜調整する方法、後記する熱硬化性化合物の種類や配合量を適宜調整する方法、平均粒径が1μm以下であるナノフィラーを配合したりする方法等が挙げられる。
【0025】
<活性エネルギー線硬化性モノマー>
本実施形態に係る硬化性組成物は、25℃における粘度が100mPa・s以下で、かつ、沸点が70℃以上である活性エネルギー線硬化性モノマーを含有する。
【0026】
上記活性エネルギー線硬化性モノマーとしては、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーであればよく、公知慣用のものを使用することができる。エチレン性不飽和二重結合としては、例えば、ビニル基、アリル基等のアルケニル基を有するアルケニル基含有基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0027】
上記活性エネルギー線硬化性モノマーのうち、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を2つ有する(メタ)アクリレートモノマー、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー、エーテル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
上記活性エネルギー線硬化性モノマーは、光硬化した場合に適度な架橋度、密着性、弾性を持たせるという観点から、(メタ)アクリロイル基を2つ有する(メタ)アクリレートモノマー、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー、エーテル基を有する(メタ)アクリレートモノマー、および、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなる群から選択される少なくとも1つ以上であることが好ましい。
【0029】
上記活性エネルギー線硬化性モノマーの配合量は、硬化性組成物の粘度の調整を図り、硬化性組成物を基板に塗布した際のにじみやだれを改善するという観点から、硬化性組成物中において固形分換算で、40~90質量%であることが好ましく、45~80質量%であることがより好ましく、50~75質量%であることがさらに好ましく、50~70質量%であることがさらにより好ましい。
【0030】
<<(メタ)アクリロイル基を2つ有する(メタ)アクリレートモノマー>>
硬化性組成物を光硬化した場合に適度に架橋させる点から、(メタ)アクリロイル基を2つ有する(メタ)アクリレートモノマーを用いることが出来る。(メタ)アクリロイル基を2つ有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの(メタ)アクリロイル基を2つ有する(メタ)アクリレートモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
(メタ)アクリロイル基を2つ有する(メタ)アクリレートモノマーの市販品としては、例えば、ライトアクリレート1,6-HX-A、1,9-ND-A(共栄社化学株式会社製)、HDDA、DPGDA、TPGDA(ダイセル・オルネクス株式会社製)、ビスコート#195、#230、#230D、#260、#310HP(大阪有機化学工業株式会社製)、アロニックスM-220、M-225、M-270、M-240(東亞合成株式会社製)等が挙げられる。
【0032】
<<水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー>>
硬化性組成物を光硬化した場合に適度に架橋させる点から、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを用いることが出来る。水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、1-((メタ)アクリロイルオキシ)-3-((メタ)アクリロイルオキシ)-2-プロパノール等が挙げられる。
これらの水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの市販品としては、例えば、アロニックスM-5700(東亞合成株式会社製)、4HBA、CHDMMA(三菱ケミカル株式会社製)、BHEA、HPA、HEMA、HPMA(株式会社日本触媒製)等が挙げられる。
【0034】
<<エーテル基を有する(メタ)アクリレートモノマー>>
硬化性組成物の粘度を調整できる点から、エーテル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを用いることが出来る。エーテル基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、クレジルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)エチル、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、3-エトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのエーテル基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、1種と単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
エーテル基を有する(メタ)アクリレートモノマーの市販品としては、例えば、ビスコート#150、#155、#160、#190、#192、#MTG、2-MTA(大阪有機化学工業株式会社製)、M-20G、M-40G、M-90G、M-130G、PHE-1G、AMP-20GY(新中村化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0036】
<<エポキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマー>>
硬化性組成物の密着性を向上させる点から、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーを用いることが出来る。エポキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのエポキシ基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
本実施形態に係る硬化性組成物は、25℃における粘度が100mPa・s以下で、かつ、沸点が70度以上である上記の活性エネルギー線硬化性モノマー以外にも、25℃における粘度が100mPa・sより大きい活性エネルギー線硬化性モノマーを含んでいてもよい。
【0038】
<<25℃における粘度が100mPa・sより大きい活性エネルギー線硬化性モノマー>>
本実施形態に係る硬化性組成物に用いる25℃における粘度が100mPa・sより大きい活性エネルギー線硬化性モノマーとしては、特に限定されず、公知慣用のものを用いればよい。
上記活性エネルギー線硬化性モノマーの配合量は、本実施形態に係る硬化性組成物の25~60℃の少なくともいずれかの温度における粘度を50~200mPa・sに調整するという観点から、硬化性組成物中において固形分換算で、0超~40質量%であることが好ましく、1~30質量%であることがより好ましい。
【0039】
上記活性エネルギー線硬化性モノマーとしては、例えば、新中村工業株式会社製のA-1000PER、A-3000PER、A-1206PE、A-612PE、A-DOG、A-DCP、A-BPE-300、A-BPE-10、A-BPE-20、A-BPE-30、A-BPE-2、A-BPE-3、A-B1206PE、A-TMPT、A-TMPT-3EO、AT-20E、AT30E、A-TMPT-6PO、A-GLY-3E、A-GLE-9E、A-GLY-20E、A-9300、A-9200、A-9300-1CL、A-9300-3CL、A-TMM-3、ATM-4EL、ATM-4E、AD-TMP-L、A-DPH、A-9550、A-DPH-6E、A-HBR-5、A-PG5027E等が挙げられる。
これらの活性エネルギー線硬化性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
<硬化性組成物の任意成分>
本実施形態に係る硬化性組成物は、上記の活性エネルギー線硬化性モノマー以外にも、光重合開始剤、ナノフィラー、その他の添加成分等を含んでいてもよい。
【0041】
以下では、熱硬化性化合物、光重合開始剤、ナノフィラー、その他の添加成分について説明する。
【0042】
<<熱硬化性化合物>>
本実施形態に係る硬化性組成物に用いる熱硬化性化合物としては、特に限定されず、公知慣用のものを用いればよく、例えば、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、オキセタン化合物、メラミン化合物、フェノール化合物等が挙げられる。
熱硬化性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱硬化性化合物の配合量は、本実施形態に係る硬化性組成物の25~60℃の少なくともいずれかの温度における粘度を50~200mPa・sに調整するという観点から、硬化性組成物中において固形分換算で、0超~30質量%であることが好ましく、1~25質量%であることがより好ましい。
【0043】
本実施形態に係る硬化性組成物に用いる熱硬化性化合物としては、硬化性や硬化物の強靭性を向上させるという観点から、イソシアネート化合物および、エポキ樹脂が好ましく、イソシアネート化合物の中でも、保存安定性に優れることからブロックイソシアネート化合物が好ましく、耐熱性付与の点からイソシアヌレート骨格を有する(ブロック)イソシアネート化合物がより好ましい。
【0044】
<<<イソシアネート化合物>>>
イソシアネート化合物としては、芳香族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物、または、脂環式イソシアネート化合物を用いてもよい。
芳香族イソシアネート化合物としては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、4,4’,4”―トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族イソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、等が挙げられる。
脂環式イソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0045】
さらにイソシアネート化合物として、上述のイソシアネート化合物のアダクト体、ビューレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。
これらのイソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
<<<ブロックイソシアネート化合物>>>
ブロックイソシアネート化合物は、上記イソシアネート化合物の一部または全部のイソシアネート基をブロック剤と反応させたもので、加熱することにより保護基(ブロック剤の残基)が解離してイソシアネート基を生成する。
【0047】
イソシアネート基をブロック(保護)するために使用するブロック剤としては、イソシアネート基と反応してイソシアネート基を保護し、加熱時に解離してイソシアネート基を生成するものであればよく、その種類は特に限定されない。
【0048】
イソシアネート基のブロック剤としては、例えば、フェノール系ブロック剤、ラクタム系ブロック剤、活性メチレン系ブロック剤、アルコール系ブロック剤、オキシム系ブロック剤、ピラゾール系ブロック剤、メルカプタン系ブロック剤、酸アミド系ブロック剤、アミン系ブロック剤、イミン系ブロック剤、尿素系ブロック剤等が挙げられる。
これらの中でも、オキシム系ブロック剤、活性メチレン系ブロック剤、アルコール系ブロック剤およびピラゾール系ブロック剤が好ましく、オキシムブロック剤およびピラゾール系ブロック剤がより好ましい。
イソシアネート基のブロック剤として、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
<<イソシアヌレート骨格を有する(ブロック)イソシアネート化合物>>
(ブロック)イソシアネート化合物としては、本実施形態に係る硬化性組成物の25~60℃の少なくともいずれかの温度における粘度を50~200mPa・sに調整するという観点から、イソシアヌレート骨格を有する(ブロック)イソシアネート化合物を用いてもよい。
【0050】
イソシアヌレート骨格は、各種芳香族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物、脂環式イソシアネート化合物等のイソシアネート基同士を環化三量化して得ることができる。イソシアヌレート骨格を有する(ブロック)イソシアネート化合物としては、各種ジイソシアネート化合物またはトリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を環化三量化させたものが好ましい。
また上記イソシアネート化合物中のイソシアネート基をブロックするために使用されるブロック剤としては、イソシアネート基と反応してイソシアネート基を保護し、加熱時に解離してイソシアネート基を生成するものであればよく、その種類は特に限定されない。
【0051】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、エチル(2,6-ジイソシアネート)ヘキサノエート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカメチレンジイソシアネート、2,2,4-または2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;1,3-または1,4-ビス(イソシアネートメチルシクロヘキサン)、1,3-または1,4-ジイソシアネートシクロヘキサン、3-イソシアネート-メチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、2,5-または2,6-ジイソシアネートメチルノルボルナン等の脂肪族ジイソシアネート化合物;m-またはp-フェニレンジイソシアネート、トリレン-2,4-または2,6-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(2-イソシアネート-2-プロピル)ベンゼン、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネート-3,3’-ジメチルジフェニル、3-メチル-ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’-ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、などが挙げられる。
また、トリイソシアネート化合物としては、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、2-イソシアネートエチル(2,6-ジイソシアネート)ヘキサノエート等の脂肪族トリイソシアネート化合物;2,5-または2,6-ジイソシアネートメチル-2-イソシアネートプロピルノルボルナン等の脂環族トリイソシアネート化合物;トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート等の芳香族トリイソシアネート化合物、などが挙げられる。
イソシアヌレート骨格を有する(ブロック)イソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
イソシアヌレート骨格を有する(ブロック)イソシアネート化合物の市販品としては、例えば、デュラネートTPA-100、TKA-100、MFA-75B、MHG-80B、TUL-100、TLA-100、TSA-100、TSS-100、TSE-100、SBL-100(旭化成株式会社製)、BI-7951、BI-7982、BI-7992、DP9C/437(株式会社GSIクレオス製)等が挙げられる。
【0053】
<<光重合開始剤>>
本実施形態に係る硬化性組成物に用いる光重合開始剤としては、特に限定されず、公知慣用のものを用いればよい。
上記光重合開始剤の配合量は、硬化性組成物中において固形分換算で、0超~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましい。
【0054】
上記光重合開始剤としては、例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィン酸エチル、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。
これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
アミノアセトフェノン系光重合開始剤の市販品としては、例えば、Omnirad 907、369、369E、379(IGM Resins B.V.社製)等が挙げられる。
またアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の市販品としては、例えば、Omnirad 819(IGM Resins B.V.社製)等が挙げられる。
【0056】
<<ナノフィラー>>
本実施形態に係る硬化性組成物に用いるナノフィラーとしては、特に限定されず、公知慣用のものを用いればよい。
フィラーとしては、シリカ(ナノシリカ)、等が挙げられる。
【0057】
ナノフィラーの平均粒径としては、特に限定されず、本実施形態に係る硬化性組成物の25~60℃の少なくともいずれかの温度における粘度を50~200mPa・sに調整するという観点から、1μm以下のものを用いることができる。なお、平均粒径とは、体積平均粒径を意味し、粒子の全体積を100%として粒径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。また上記平均粒径は平均一次粒径を意味する。
【0058】
<<その他の添加成分>>
本実施形態に係る硬化性組成物には、必要に応じてさらに、光開始助剤、シアネート化合物、エストラマー、メルカプト化合物、ウレタン化触媒、チキソ化剤、密着促進剤、ブロック共重合体、連鎖移動剤、重合禁止剤、銅害防止剤、酸化防止剤、防錆剤、有機ベントナイト、モンモリロナイト等の増粘剤、メラミン等の熱硬化触媒、カーボンブラック等の着色剤、シリコン系・フッ素系・高分子系の消泡剤およびレベリング剤の少なくとも1種、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤、フォスフィン酸塩、リン酸エステル誘導体、フォスファゼン化合物等のリン化合物等の難燃剤等の成分を配合することができる。これらは、電子材料の分野において公知慣用のものを使用することができる。なお、本発明の硬化性組成物には、粘度調整のために溶剤を用いてもよいが、硬化後の膜厚低下を防ぐために、その添加量は少ないことが好ましい。
【0059】
<硬化性組成物の製造方法>
本実施形態に係る硬化性組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記各成分を所定の割合で配合後、室温にて、三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、または、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または混合して製造することができる。また、前記混練または混合の前に、必要に応じて、予備混練または予備混合してもよい。
【0060】
上記製造方法により製造された硬化性組成物は、25~60℃の少なくともいずれかの温度における粘度が50~200mPa・sである。硬化性組成物の粘度が、上記範囲にあることにより、インクジェット法により基板上に良好に吐出でき、さらににじみやだれを抑制しつつ、レベリング性よく基板上に塗布することができる。
【0061】
本実施形態に係る硬化性組成物のにじみについては、例えば、以下の方法で評価することができる。
まず下記方法によりCZ処理済み銅ベタ基板を作製する。
・150mm×95mm×1.6mmの大きさの銅張積層板上の35μmの銅箔に対して、メック株式会社製のメックエッチボンドCZ-8101を用いてエッチングレート1μmでCZ処理(粗化処理)し、得られた34μmの銅箔に対して、さらにメック株式会社製のメックエッチボンドCL-8300を用いて防錆処理をする。これをCZ処理済み銅ベタ基板として用いる。
次に下記方法によりCZ処理済み銅ベタ基板に硬化性組成物を塗布し、にじみを観察する。
・CZ処理済み銅ベタ基板に、硬化性組成物をアプリケーター(ERICHSEN社製)によりウェット膜厚30μmで塗布する。塗布後10秒以内に高圧水銀灯(株式会社オーク製作所製、HMW-713)にて光照射し、それぞれの基板における光照射量が800mJ/cm2となるようにする。上記硬化性組成物の塗膜の端部を光学顕微鏡(50倍)にてにじみの有無、および、にじみがある場合には端部の任意の5箇所に関してその幅の長さを観察し、その平均値を算出する。
【0062】
本実施形態に係る硬化性組成物は、上記方法でにじみを観察した場合に、にじみがないか、または、にじみがある場合であっても、にじみの幅の長さが30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。にじみが上記範囲にあることで、だれを抑制することができる。
【0063】
本実施形態に係る硬化性組成物は、硬化被膜、特に永久被膜の形成等に使用され、絶縁材料として好適に用いることができる。絶縁材料としては、ソルダーレジスト、層間絶縁材、カバーレイ、ソルダーダム形成用のものが挙げられる。本実施形態に係る硬化性組成物は、中でもソルダーレジストとして好適に用いることができる。また本実施形態に係る硬化性組成物は、半導体ウエハの保護膜を形成するために使用してもよい。
【0064】
[2.硬化物]
本実施形態に係る硬化物は、上記硬化性組成物を基板に塗布して、硬化させたものであり、以下の手順で作製される。
硬化性組成物を基板に塗布する方法としては、例えば、有機溶剤を用いて適した粘度に調整して、基板上に、インクジェット法、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、ディスペンサー法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法等を用いて塗布する方法があり、特に制限されるものではないが、高精細なパターニング、および、工程数を減らす、という観点から、インクジェットプリンターのノズルから硬化性組成物を吐出して、基板上の所望の位置に付着させるインクジェット法を用いることが好ましい。
このため、本実施形態に係る硬化物は、インクジェット印刷により作製された塗膜を硬化させたものであることが好ましい。インクジェットプリンターとしては、オンデマンド・ピエゾ方式のインクジェットプリンターが好適に用いられ、ノズルを室温、又は約60℃以下に加温して塗布することができる。
【0065】
基板としては、あらかじめ銅等により回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不織布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド・シアネート等を用いた高周波回路用銅張積層板等の材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板等を挙げることができる。
【0066】
上記塗膜に対して、例えば、活性エネルギー線を照射するか、または、100~250℃の温度で加熱することにより、硬化物を得ることができる。
【0067】
インクジェット印刷法における塗膜への活性エネルギー線の照射は、例えばプリントヘッドの側面に高圧水銀灯、メタルハライドランプ、紫外線LED等の光源を取り付け、プリントヘッドもしくは基板を動かすことによる操作を行うことで行うことができる。この場合、印刷と、活性エネルギー線の照射とをほぼ同時に行うことができる。
【0068】
活性エネルギー線照射の光源としては、LED、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ等が適当である。その他、電子線、α線、β線、γ線、X線、中性子線等も利用可能である。また照射光源は1つまたは2つ以上で、2つ以上の場合は異なる波長の光源を組み合わせて使用することも可能である。
活性エネルギー線の照射量は、塗膜の膜厚によっても異なるが、一般には10~10000mJ/cm2であり、20~2000mJ/cm2が好ましく、100~2000mJ/cm2がより好ましい。
【0069】
加熱は、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン等、上記による空気加熱方式の熱源を備えたものを用いて乾燥機内の熱風を向流接触させる方法、および、ノズルより支持体に吹き付ける方法を用いて行うことができる。
【0070】
[3.プリント配線板]
本実施形態に係るプリント配線板は、上記硬化性組成物から得られる硬化物を備えたものである。
本実施形態に係る硬化性組成物をプリント配線板の基板等に塗布して形成された塗膜を硬化することで、硬化物を備えるプリント配線板を作製することができる。
【実施例0071】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0072】
[1.硬化性組成物の調製]
表1に示す各成分を表1に示す含有量(単位:質量部)配合し、これをディゾルバーで撹拌した。その後、ビーズミルを用いてジルコニアビーズにて分散を2時間行い、実施例1~5および比較例1~6の硬化性組成物を得た。
なお、ビーズミルとしては、コニカル型K-8(ビューラー社株式会社製)を使用し、回転数1200rpm、吐出量20%、ビーズ粒径0.65mm、充填率88%の条件にて混練した。
【0073】
表1記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
<活性エネルギー線硬化性モノマー>
≪25℃における粘度が100mPa・s以下で、かつ、沸点が70℃以下である活性エネルギー線硬化性モノマー≫
・DPGDA(ダイセル・オルネクス株式会社製):ジプロピレングリコールジアクリレート(25℃における粘度:10mPa・s)
・HDDA(ダイセル・オルネクス株式会社製):1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(25℃における粘度:8mPa・s)
・4HBA(三菱ケミカル株式会社製):4-ヒドロキシブチルアクリレート(25℃における粘度:5.5mPa・s)
・PO-A(共栄社化学株式会社製):フェノキシエチルアクリレート(25℃における粘度:9mPa・s)
≪25℃における粘度が100mPa・s以上の活性エネルギー線硬化性モノマー≫
・A-BPE-4(新中村化学工業株式会社製):エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(25℃における粘度:1,100mPa・s)
<その他の成分>
・SBL-100(旭化成株式会社製):イソシアヌレート型ブロックイソシアネート
・Omnirad 379(IGM Resins B.V.社製):2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン
・Omnirad 819(IGM Resins B.V.社製):ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド
・MA-100(三菱ケミカル株式会社製):カーボンブラック
・メラミン(日産化学株式会社製):1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン
・BYK-307(ビックケミー・ジャパン株式会社製):シリコン系添加剤
【0074】
【0075】
[2.硬化性組成物の所定の温度における粘度の測定]
実施例1~5および比較例1~6に記載の硬化性組成物について、それぞれ表2記載の所定の温度における粘度を測定した。粘度は、JIS Z 8803の「10 円すい-平板形回転粘度計による粘度測定方法」に準じて100rpm、30秒値とし、コーン・ロータとして1°34’×R24を用いたコーンプレート型粘度計(TVE-33H、東機産業株式会社製)にて測定した。その結果を表2に示す。
【0076】
[3.にじみ、だれ、および、レベリング性の評価]
<試験基板の作製>
150mm×95mm×1.6mmの大きさの銅張積層板上の35μmの銅箔に対して、メック株式会社製のメックエッチボンドCZ-8101を用いてエッチングレート1μmでCZ処理(粗化処理)し、得られた34μmの銅箔に対して、さらにメック株式会社製のメックエッチボンドCL-8300を用いて防錆処理し、これを基板(CZ処理済み銅ベタ基板)として用いた。
CZ処理済み銅ベタ基板に、実施例1~5および比較例1~6の硬化性組成物を、アプリケーター(ERICHSEN社製)を用いてそれぞれ表2に記載の所定の温度においてウェット膜厚30μmとして塗布した。塗布後10秒以内に高圧水銀灯(株式会社オーク製作所製、HMW-713)にて光照射し、それぞれの基板における光照射量が800mJ/cm2となるようにした。
作製した各基板を以下試験基板として用いた。
【0077】
試験基板上に形成された塗膜の端部の任意の5箇所を光学顕微鏡(50倍)で観察し、その平均値を下記基準に従ってにじみについて評価した。その結果を表2に示す。
◎:にじみなし(にじみの幅の長さが15μm以下)
○:にじみなし(にじみの幅の長さが30μm以下)
△:にじみあり(にじみの幅の長さが30μmより大きく100μm以下)
×:にじみあり(にじみの幅の長さが100μmより大きい)
【0078】
試験基板を45度に傾けて1分経過後、試験基板上の塗膜からだれがあるか目視により観察し、下記基準に従ってだれについて評価した。その結果を表2に示す。
○:だれなし
×:だれあり
【0079】
<レベリング性の評価>
試験基板上の塗膜の状態を目視にて確認し、下記基準に従ってレベリング性について評価した。その結果を表2に示す。
○:凹凸がない(すなわち、塗膜が平滑である)
×:凹凸がある(すなわち、塗膜が平滑でない)
【0080】
【0081】
表2に示す結果から明らかなとおり、塗布時の温度における硬化性組成物の粘度が50~200mPa・sである実施例1~5の硬化性組成物は、にじみやだれが抑制されており、レベリング性も良好な結果を与えた。
これに対して、塗布時の温度における硬化性組成物の粘度が50mPa・sより小さい比較例1~3の硬化性組成物は、レベリング性は悪くはなかったものの、にじみやだれが生じた。また塗布時の温度における硬化性組成物の粘度が200mPa・sより大きい比較例4および5の硬化性組成物は、にじみやだれは抑制されていたものの、塗膜に凹凸が認められレベリング性が悪かった。