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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042645
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ブレダーミックス
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20240321BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20240321BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20240321BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 E
A23L35/00
A23L5/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093822
(22)【出願日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2022147247
(32)【優先日】2022-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 未悠
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
4B036
【Fターム(参考)】
4B025LB06
4B025LG04
4B025LG18
4B025LG28
4B025LK07
4B025LP10
4B035LC03
4B035LC11
4B035LE17
4B035LG01
4B035LG02
4B035LG17
4B035LG21
4B035LG34
4B035LK05
4B035LK15
4B035LP02
4B035LP07
4B035LP27
4B036LH01
4B036LH03
4B036LH09
4B036LH12
4B036LH13
4B036LH22
4B036LK06
4B036LP02
4B036LP03
4B036LP13
(57)【要約】
【課題】少量の油を用いて調理したときに適切にガスを発生し、ディープフライした揚げ物食品のような良好な外観を有する揚げ物様食品の提供。
【解決手段】膨張剤と、穀粉類及び澱粉類からなる群より選択される1種以上とを含有し、該膨張剤は、ガス発生剤及び酸性剤を含有し、かつ第9版食品添加物公定書に記載される発生ガス測定法に従って測定したガス発生30秒後の発生ガス量が30~80mL/gである、ブレダーミックス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張剤と、穀粉類及び澱粉類からなる群より選択される1種以上とを含有し、
該膨張剤は、ガス発生剤及び酸性剤を含有し、かつ第9版食品添加物公定書に記載される発生ガス測定法に従って測定したガス発生30秒後の発生ガス量が30~80mL/gである、
ブレダーミックス。
【請求項2】
前記酸性剤がリン酸二水素ナトリウム、酒石酸水素カリウム及びグルコノデルタラクトンからなる群より選択される1種以上である、請求項1記載のブレダーミックス。
【請求項3】
前記ガス発生剤が炭酸水素ナトリウムである、請求項1記載のブレダーミックス。
【請求項4】
前記膨張剤を0.05~1.8質量%含有する、請求項1記載のブレダーミックス。
【請求項5】
膨張剤と、穀粉類及び澱粉類からなる群より選択される1種以上とを混合することを含み、
該膨張剤はガス発生剤及び酸性剤を含有し、かつ第9版食品添加物公定書に記載される発生ガス測定法に従って測定した発生ガス量が、ガス発生30秒後に30~80mL/gである、
ブレダーミックスの製造方法。
【請求項6】
前記ブレダーミックスが前記膨張剤を0.05~1.8質量%含有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項記載のブレダーミックスを具材に付着させることを含む、揚げ物様衣付き食品用素材の製造方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項記載のブレダーミックスを付着させた具材を油とともに炒め調理又は焼き調理することを含む、揚げ物様衣付き食品の製造方法。
【請求項9】
前記焼き調理が揚げ焼き調理である、請求項8記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレダーミックス、及びこれを用いる揚げ物様衣付き食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
から揚げ、天ぷらなどの揚げ物食品は、通常、野菜や食肉類等の具材に衣材を付着させて揚種を製造し、これを多量の熱した油中でディープフライすることで製造される。揚げ物食品は、揚げた衣の香ばしさと衣に覆われた具材のジューシーさを備えた美味な食品であるが、一方で、油分を多く含むため高カロリーである。また揚げ物食品は、調理に多量の油を用いるため準備や片付けに手間がかかる。
【0003】
より少量の油を用いて揚げ物食品のような外観や風味を有する食品を製造する試みが行われている。例えば、数~数十mLの油を用いて揚種を加熱する炒め調理、又は1~2cm程度の深さの油に揚種を浸して頻繁に返しながら加熱する揚げ焼き調理により、揚げ物様食品を製造する方法が知られている。しかし、少量の油で調理した揚げ物様食品は、調理中に衣同士の結着や衣の加熱ムラが生じがちであり、また揚げ物らしい外観の凹凸も不足しがちであることから、ディープフライした揚げ物食品と比べて外観や食感に劣ることが多い。特許文献1、2には、油ちょう時に衣同士が結着することがないから揚げ粉が開示されている。特許文献1のから揚げ粉は、粒径及び水溶性窒素指数(NSI)がそれぞれ特定範囲にある大豆粉を含有する。特許文献2のから揚げ粉は、粒径が特定範囲のデュラム小麦粉を含有する。
【0004】
揚げ物食品の衣材に膨張剤を加えることがある。膨張剤を含む衣材は、油ちょうにより加熱されるとガスを発生して膨張し、多孔質でサクミの高い衣となる。特許文献3には、膨張剤を含有するアメリカンドッグ用ミックスであって、該ミックス100gに40℃の水80mLを加えて撹拌したとき、撹拌開始から10分間で、前記膨張剤によるガス発生総量の理論値に対して45~55%の累積ガス量を発生するミックスが記載され、またこのミックスを用いると、外観及び食感が良好なアメリカンドッグが得られることが記載されている。特許文献4には、小麦粉由来の焼成粉砕物、潮解性食品素材、熱凝固性食品素材、油脂及び膨張剤を含有するノンフライ唐揚げ用ミックスにより、外観と食感の良いから揚げ様食品を製造できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-35791号公報
【特許文献2】特開2008-35792号公報
【特許文献3】特開2016-93115号公報
【特許文献4】特開2003-284518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
少量の油で揚げ物様食品を調理する場合、調理中に衣材が油で加熱される箇所と加熱されない箇所があるので、衣材の加熱ムラが起こる。このとき、衣材が膨張剤を含むと、該加熱ムラに起因して衣材からのガスの発生ムラが起こり、それが揚げ物様食品の外観及び食感に悪影響を及ぼす。
【0007】
本発明は、少量の油を用いて調理したときに適切にガスを発生し、ディープフライした揚げ物食品のような均一な色合いと凹凸のある良好な外観を有する揚げ物様衣付き食品を製造することができるブレダーミックスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、油ちょう調理に付した際に、調理開始後の早期に特定量のガスを発生する膨張剤を含有するブレダーミックスを用いることによって、少量の油を用いた調理で、ディープフライした揚げ物食品のような均一な色合いと凹凸のある良好な外観を有する揚げ物様衣付き食品を製造することができることを見出した。
【0009】
したがって、本発明は以下を提供する。
〔1〕膨張剤と、穀粉類及び澱粉類からなる群より選択される1種以上とを含有し、
該膨張剤は、ガス発生剤及び酸性剤を含有し、かつ第9版食品添加物公定書に記載される発生ガス測定法に従って測定したガス発生30秒後の発生ガス量が30~80mL/gである、
ブレダーミックス。
〔2〕前記酸性剤がリン酸二水素ナトリウム、酒石酸水素カリウム及びグルコノデルタラクトンからなる群より選択される1種以上である、〔1〕記載のブレダーミックス。
〔3〕前記ガス発生剤が炭酸水素ナトリウムである、〔1〕又は〔2〕記載のブレダーミックス。
〔4〕前記膨張剤を0.05~1.8質量%含有する、〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載のブレダーミックス。
〔5〕膨張剤と、穀粉類及び澱粉類からなる群より選択される1種以上とを混合することを含み、
該膨張剤はガス発生剤及び酸性剤を含有し、かつ第9版食品添加物公定書に記載される発生ガス測定法に従って測定した発生ガス量が、ガス発生30秒後に30~80mL/gである、
ブレダーミックスの製造方法。
〔6〕前記ブレダーミックスが前記膨張剤を0.05~1.8質量%含有する、〔5〕記載の方法。
〔7〕〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載のブレダーミックスを具材に付着させることを含む、揚げ物様衣付き食品用素材の製造方法。
〔8〕〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載のブレダーミックスを付着させた具材を油とともに炒め調理又は焼き調理することを含む、揚げ物様衣付き食品の製造方法。
〔9〕前記焼き調理が揚げ焼き調理である、〔8〕記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のブレダーミックスは、少量の油を用いて調理したときに適切な量とタイミングでガスを発生することができる。したがって、本発明のブレダーミックスによれば、少量の油を用いた調理により、ディープフライした揚げ物食品のような均一な色合いと凹凸のある良好な外観を有する揚げ物様衣付き食品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のブレダーミックスは、膨張剤を含有する。該膨張剤は、ガス発生剤と酸性剤を必須成分として含有する。
【0012】
前記ガス発生剤及び酸性剤は、食用に用いられるものを使用することができる。該ガス発生剤の例としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウムなどが挙げられ、これらのいずれか1種以上を用いることができる。該酸性剤の例としては、酒石酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カルシウム、酒石酸、ミョウバン、フマル酸、リン酸ナトリウム、グルコノデルタラクトン、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性リン酸アルミニウムナトリウムなどが挙げられ、これらのいずれか1種又はいずれか2種以上を組み合わせて用いることができる。あるいは、本発明で用いる膨張剤は、市販の膨張剤を適宜選択して組み合わせたものや、市販のガス発生剤と酸性剤を適宜選択して組み合わせたものであってもよい。
【0013】
本発明で用いる膨張剤は、特定のガス発生能力を有する点に特徴を有する。本明細書において、膨張剤の発生ガス能力は、第9版 食品添加物公定書(2018年、厚生労働省 消費者庁)に記載される発生ガス測定法(以下、「公定法」ともいう)に従って測定した、ガス発生30秒後の発生ガス量(ガス発生開始から30秒後までに発生したガスの累積量)として規定される。該公定法は、第9版 食品添加物公定書の「32.発生ガス測定法」に記載されている、合成膨張剤から発生するガス量を測定する方法である。なお、前記の第9版 食品添加物公定書に記載される公定法では、ガス発生3分後の発生ガス量(ガス発生開始からから3分後までに発生したガスの累積量)を測定するが、本発明で用いる膨張剤の発生ガス量は、公定法の手順に従って、ただしガス発生30秒後の発生ガス量を測定して得られた値である。
【0014】
より詳細には、本発明で用いる膨張剤についての、公定法に従うガス発生30秒後の発生ガス量の測定手順は以下のとおりである。
(装置)
以下の器具を準備する。
A:ガス発生用丸底フラスコ(容量約300mL)
B:水浴
C:酸滴加漏斗
D:冷却器
E:三方コック
F:外とう管付ガスビュレット(容量約300mLで1mLごとに目盛を付けたもの)
G:水準瓶(容量約400mL)
H:温度計
器具を配置して測定装置を構築する。器具の配置は、第9版 食品添加物公定書「発生ガス測定法」に従う。大まかに説明すると次のとおりである:AはB中に設置される。AにCが接続される。またAは、D及びEを順に介して、Fと接続される。Fの下部にはゴム管が接続され、これを介してFとGが接続される。またFには、内部の温度を測定するためHが設置される。
【0015】
(置換溶液の調製)
塩化ナトリウム100gを量り、水350mLを加えて溶かし、炭酸水素ナトリウム1gを加え、メチルオレンジ試液に対してわずかに酸性を呈するまで塩酸(1→3)を加える。
【0016】
(手順)
1.水100mLを入れたAに、試料(膨張剤)2.0gを投入し、装置を連結し、Eを開放にして、Gを上下して内部の置換溶液を移動させ、Fの目盛のゼロに合わせる。Dに水を流し、Eを回してD及びFを貫通させた後、Cから塩酸(1→3)20mLを滴加し、直ちにCのコックを閉じ、時々フラスコAを緩やかに振り動かしながら、75℃の水浴B中で加熱し、F中の液面の低下に応じてGを下げる。30秒後にF及びGの液面を平衡にしたときの液面の目盛V(mL)を読み、同時にHで発生ガスの温度t℃を読み取る。次式により標準状態における発生ガス量V(mL)を求める。別に空試験値v(mL)を求めて補正する。
【数1】
【0017】
本発明で用いる膨張剤は、前記公定法に従って測定した発生ガス量が、ガス発生30秒後に30~80mL/g、好ましくは40~80mL/g、さらに好ましくは40~70mL/gである。このようなガス発生能力を有する膨張剤を含有するブレダーミックスで衣付けした具材は、少量の油を用いて、必要に応じて頻繁に反転させながら、加熱調理することにより、加熱されている箇所の衣が適度にガス発生して膨化し、多孔質化した状態で硬化する一方、その近傍の衣が発生したガスにより荒らされることがない。
【0018】
前記のガス発生能力を有する膨張剤は、前述したガス発生剤と酸性剤、又は市販の膨張剤を適宜組み合わせて試料とし、これを公定法に従って測定することで、過度の試行錯誤をすることなく選択することができる。膨張剤のガス発生能力を前記の範囲に調整しやすいため、酸性剤としては、リン酸二水素ナトリウム、酒石酸水素カリウム及びグルコノデルタラクトンからなる群より選択される1種以上を用いることが好ましい。
【0019】
本発明で用いる膨張剤は、必要に応じて、前述したガス発生剤と酸性剤以外の成分、例えば賦形剤、遮断剤等を含有していてもよい。
【0020】
本発明のブレダーミックスにおける前記膨張剤の含有量は、該ミックスの全質量中、例えば0.05~1.8質量%、好ましくは0.1~1.5質量%、より好ましくは0.3~1.2質量%、さらに好ましくは0.5~1.0質量%である。該ミックスにおける膨張剤の含有量が少なすぎると、衣の膨化が少なく食感が硬くなる場合があり、他方、該ミックスにおける膨張剤の含有量が多すぎると、衣が脂っぽくなったり、調理中に衣が弾けて油跳ねしやすくなる場合がある。
【0021】
本発明のブレダーミックスは、主体となる成分として、穀粉類及び澱粉類からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。該穀粉類の例としては、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム小麦粉等の小麦粉、米粉、大麦粉などが挙げられるが、これらに限定されない。該澱粉類の例としては、馬鈴薯澱粉、米澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、甘藷澱粉等の未加工澱粉、及びこれらの加工澱粉が挙げられるが、これらに限定されない。上記に挙げた穀粉類及び澱粉類は、いずれか1種又はいずれか2種以上を組み合わせて使用することができる。好ましくは、本発明のブレダーミックスは、小麦粉及び馬鈴薯澱粉からなる群より選択される1種以上を含有する。本発明のブレダーミックスにおける該穀粉類及び澱粉類の合計含有量は、該ミックスの全質量中、例えば99.95質量%以下であればよく、好ましくは50~99.9質量%、より好ましくは60~99.7質量%、さらに好ましくは70~99.5質量%である。
【0022】
本発明のブレダーミックスには、前記の膨張剤、穀粉類及び澱粉類の他に、揚げ物用衣材に従来用いられているその他の原料、例えば、糖類、蛋白質類、食物繊維、増粘剤、乳化剤、香辛料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料などを含有していてもよい。これらのその他の原料は、いずれか1種又はいずれか2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明のブレダーミックスにおける該その他の原材料の含有量は、組成物の全質量に対して、好ましくは49.9質量%以下、より好ましくは39.9質量%以下、さらに好ましくは29.9質量%以下である。
【0023】
本発明のブレダーミックスは、前記の膨張剤、穀粉類及び澱粉類からなる群より選択される少なくとも1種、及び必要に応じて前記その他の原料を混合することで製造することができる。本発明のブレダーミックスは、基本的には粉体状の組成物であるが、一部に大きな粒や小片が含まれていてもよい。本発明のブレダーミックスは、種々の揚げ物食品や揚げ物様衣付き食品の製造に衣材として使用することができる。好ましくは、本発明のブレダーミックスは、炒め調理や揚げ焼き調理のような少量の油を用いた加熱調理によって製造される揚げ物様衣付き食品用の衣材として使用される。本発明のブレダーミックスは、まぶしタイプの衣材として用いられる。
【0024】
本発明のブレダーミックスを用いて揚げ物食品や揚げ物様衣付き食品を製造することができる。本発明のブレダーミックスを用いた揚げ物食品の製造方法は、該ブレダーミックスを付着させた具材を、ディープフライすることを含む。本発明のブレダーミックスを用いた揚げ物様衣付き食品の製造方法は、該ブレダーミックスを付着させた具材を、少量の油を用いて加熱調理すること、例えば油とともに炒め調理又は焼き調理すること、好ましくは揚げ焼き調理すること、を含む。より詳細には、該ブレダーミックスを具材の表面に付着させ、揚げ物食品又は揚げ物様衣付き食品用の素材を調製する。次いで、該素材をディープフライすることで揚げ物食品を製造する。あるいは、該素材を上記のとおり油とともに加熱調理することで揚げ物様衣付き食品を製造する。
【0025】
本発明のブレダーミックスを付着させる具材には、揚げ物食品に用いられる具材を使用することができる。該具材の例としては、鶏肉、豚肉等の肉類、魚、イカ、タコ、貝等の魚介類、野菜類、キノコ類などが挙げられるが、これらに制限されない。該具材のサイズは特に制限されない。また具材に対する本発明のブレダーミックスの付着性を増すために、具材には、該ブレダーミックスを付着させる前に、予め小麦粉、澱粉等の打ち粉をまぶしてもよい。あるいは、具材には、該ブレダーミックスを付着させる前に、予め水、調味液、卵液、バッター液等を付着させてもよい。
【0026】
一実施形態においては、本発明のブレダーミックスの粉体をブレダーとして具材表面に付着させる。該粉体のブレダーを具材に付着させる操作としては、ブレダーを具材に付着させるための一般的な操作、例えば、1)具材の上からブレダーを振り掛ける操作、2)ブレダー及び具材を袋の中に投入し、該袋の開口部を閉じた状態で振盪する操作、3)皿等の比較的広い容器にブレダーを敷詰め、その上で具材を転がす操作又はその上から具材をブレダーに押し付ける操作、などが挙げられる。必要に応じて、具材に該ブレダーをよりなじませるために、該ブレダーを付着させた具材を、加熱調理前に5~15分間程度静置してもよい。
【0027】
別の一実施形態においては、本発明のブレダーミックスの粉体と水性液体との混合物からなるダマ状ブレダーが調製される。該ダマ状ブレダーは、本発明のブレダーミックスの粉体を、水性液体と混合してダマ状に成形したものである。例えば、本発明のブレダーミックスの粉体と水性液体をさじ等でよく攪拌するか、又は袋内でよく振盪することなどにより、ダマ成形することができる。該ダマ状ブレダーの調製に用いる水性液体としては、清水、蒸留水、酸性水、アルカリ水等の食用に用いられるものを使用することができる。該粉体に対する該水性液体の添加量は、ブレダーミックスの粉体100質量部に対して、好ましくは10~40質量部、より好ましくは15~35質量部である。
【0028】
前記ダマ状ブレダーは、前述した粉体ブレダーの具材への付着操作と同様の操作で具材に付着させることができる。該ダマ状ブレダーは、具材の表面で互いに接着してより強固な衣を形成することができるので、該ダマ状ブレダーを用いて得られた衣付き食品は、衣がより剥がれにくくなる。また、該ダマ状ブレダーから得られた衣は、よりサクサクとした軽い食感となる。
【0029】
本発明のブレダーミックスは、具材の表面の一部に付着させてもよいが、好ましくは具材の表面全体に付着させる。本発明のブレダーミックスは、具材100質量部に対して、粉体質量換算で、好ましくは10~50質量部、より好ましくは15~40質量部付着させる。前記ダマ状ブレダーを用いる場合、具材に付着した該ダマ状ブレダーに含まれる本発明のブレダーミックスの粉体質量換算での量が上記の値になるように、該ダマ状ブレダーを具材に付着させればよい。
【0030】
本発明のブレダーミックスを付着させた具材は、揚げ物食品又は揚げ物様衣付き食品用の素材として、直ちに加熱調理してもよく、又は冷蔵もしくは冷凍保存してもよい。該素材をディープフライすることで、揚げ物食品が製造される。あるいは、該素材を少量の油を用いて加熱調理することで、揚げ物様衣付き食品が製造される。好ましくは、本発明のブレダーミックスを付着させた具材は、揚げ物様衣付き食品用素材として使用され、該素材は、油とともに炒めるか又は焼きにより調理される。揚げ物様衣付き食品の外観向上の点では揚げ焼きが好ましい。例えば、該揚げ焼きの場合、フライパン等の浅鍋に、該揚げ物様衣付き食品用素材の高さの1/4~1/2が浸るような量、例えば1~2cm程度の深さの量の油を入れて加熱し、そこに該素材を投入して、必要に応じて時々素材を返しながら、加熱調理すればよい。また例えば、炒める場合、フライパン等の浅鍋に数~数十mLの油を入れて加熱し、そこに該素材を投入して炒め調理すればよい。
【実施例0031】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0032】
(試験例1)
1)膨張剤の調製
表1に示すガス発生剤と酸性剤を含む膨張剤1~6を調製した。表中における膨張剤のガス発生量は、前記の公定法に従って測定した、ガス発生30秒後のガス発生量を表す。
【0033】
【表1】
【0034】
2)ブレダーミックスの製造
表2に示す原料を均一になるまで混合し、粉体のブレダーミックスを製造した。
【0035】
3)揚げ物様衣付き食品の製造
鶏むね肉1枚を3分割し、余分な皮を除いて1個80gになるよう成形し、醤油、酒、しょうが汁を含む調味液で下味をつけた。この鶏肉に対し、前記2)で製造したブレダーミックスを、該鶏肉1個あたり16gまぶして付着させた。フライパンに油を深さ1cmに張り170℃に加熱した。衣付けした鶏肉をフライパンに入れ、20秒ごとに返しながら、3分30秒間揚げ焼きして揚げ物様衣付き食品(唐揚げ様食品)を製造した。製造した食品の色合い及び表面の状態を、10名の専門パネルにより下記評価基準に従って評価し、10名の評価の平均値を求めた。その結果を表2に示す。
【0036】
<評価基準>
(色合い)
5:揚げ物と同等に表面全体が均一に黄金色になっており、極めて良好。
4:揚げ物と同様に表面全体が黄金色になっており、良好。
3:部分的に色むらがあるが、許容範囲。
2:部分的に色むらがあり、かつ部分的に色が濃い部分があり、不良。
1:表面全体に色むらがあり、各所に色が濃い部分があり、極めて不良。
(表面状態)
5:揚げ物と同等に表面全体に凹凸があり、極めて良好。
4:揚げ物と同様に表面のほぼ全体に凹凸があり、良好。
3:表面の一部に衣が平坦な部分かあるが、許容範囲。
2:表面の20~40%に衣が平坦な部分か衣が剥がれた個所があり、不良。
1:表面の40%超に衣が平坦な部分か衣が剥がれた個所があり、極めて不良。
【0037】
【表2】
【0038】
(試験例2)
試験例1の2)と同様の手順で表3に示す組成のブレダーミックスの粉体を製造した。
製造したブレダーミックスを用いて、試験例1の3)と同様の手順で唐揚げ様食品を製造し、評価した。結果を表3に示す。
【0039】
【表3】