(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004285
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】マルチ荷電粒子ビーム描画方法及びマルチ荷電粒子ビーム描画装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
H01L21/30 541D
H01L21/30 541W
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103875
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 裕史
【テーマコード(参考)】
5F056
【Fターム(参考)】
5F056AA07
5F056AA20
5F056CB14
5F056CB22
5F056CD16
5F056EA02
5F056EA04
5F056EA05
5F056EA06
5F056EA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マルチビーム描画における位置ずれを低減。
【解決手段】第1方向の幅を有する照射領域34内でマルチビームを偏向させるとともに、照射領域を第1方向に直交する第2方向に移動させながら、試料面上の描画領域を第1方向に所定サイズの幅で分割した各ストライプ領域32を描画する工程と、第k番目のストライプ領域の描画中に、照射領域を第1方向に所定の拡張幅で拡張された第k番目の拡張領域を、マルチビームを偏向させるとともに第2方向に移動させながら描画する工程と、第k番目のストライプ領域と一部が重なるように、第k番目のストライプ領域から拡張幅とは異なるずらし量で第1方向にずらした第k+1番目のストライプ領域を描画する工程と、第k+1番目のストライプ領域を描画中に、照射領域を第1方向に拡張幅で拡張された第k+1番目の拡張領域を、マルチビームを偏向させるとともに第2方向に移動させながら描画する工程と、を備える。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計上のマルチ荷電粒子ビームの照射領域の第1の方向の幅が所定サイズである前記照射領域内で前記マルチ荷電粒子ビームを偏向させるとともに、前記照射領域を前記第1の方向に直交する第2の方向に移動させながら、試料面上の描画領域を前記第1の方向に前記所定サイズの幅で分割した各ストライプ領域を描画する工程と、
第k番目(kは1以上の整数)のストライプ領域の描画中に、前記照射領域を前記第1の方向に所定の拡張幅で拡張された第k番目の拡張領域を、前記マルチ荷電粒子ビームを偏向させるとともに前記第2の方向に移動させながら描画する工程と、
前記第k番目のストライプ領域と一部が重なるように、前記第k番目のストライプ領域から前記拡張幅とは異なるずらし量で前記第1の方向にずらした第k+1番目のストライプ領域を描画する工程と、
前記第k+1番目のストライプ領域を描画中に、前記照射領域を前記第1の方向に前記拡張幅で拡張された第k+1番目の拡張領域を、前記マルチ荷電粒子ビームを偏向させるとともに前記第2の方向に移動させながら描画する工程と、
を備えたことを特徴とするマルチ荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項2】
前記試料はステージ上に載置され、
前記第k番目のストライプ領域を描画中、前記ステージは、前記第2の方向の逆方向に移動し、前記照射領域が前記ステージの移動に追従するようにトラッキング制御が行われ、
前記照射領域の偏向は、前記トラッキング制御をリセットするトラッキングリセット時に行われることを特徴とする請求項1記載のマルチ荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項3】
前記各ストライプ領域内の前記マルチ荷電粒子ビームの前記試料面上におけるビーム間ピッチサイズで囲まれる各サブ照射領域内は、当該照射領域が偏向されていない状態で描画される画素と、当該照射領域が偏向された状態で描画される画素との組み合わせにより露光されることを特徴とする請求項1又は2記載のマルチ荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項4】
前記拡張幅は、前記ずらし量の1/2に設定されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のマルチ荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項5】
前記描画領域には、前記ずらし量でストライプ領域をずらしながら行う前記マルチ荷電粒子ビームの露光による多重描画が行われ、
前記第k番目のストライプ領域の描画中に前記第k番目の拡張領域で描画される画素と、前記k番目の拡張領域と重なり合う第k+n番目(nは2以上の整数)の拡張領域で描画される画素と、が重ならないように前記マルチ荷電粒子ビームの照射位置が制御されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のマルチ荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項6】
試料が載置されるステージと、マルチ荷電粒子ビームを偏向する偏向器と、を有し、前記マルチ荷電粒子ビームで前記試料にパターンを描画する描画機構と、
前記描画機構による描画動作を制御する描画制御部と、
を備え、
前記描画制御部は、
設計上のマルチ荷電粒子ビームの照射領域の第1の方向の幅が所定サイズである前記照射領域内で前記マルチ荷電粒子ビームを偏向させるとともに、前記照射領域を前記第1の方向に直交する第2の方向に移動させながら、試料面上の描画領域を第1の方向に前記所定サイズの幅で分割した各ストライプ領域を描画するように制御し、
前記第k番目のストライプ領域を描画中に、前記照射領域を前記第1の方向に所定の拡張幅で拡張された第k番目の拡張領域を、前記マルチ荷電粒子ビームを偏向させるとともに前記第2の方向に移動させながら描画するように制御し、
前記第k番目のストライプ領域と一部が重なるように、前記第k番目のストライプ領域から前記拡張幅とは異なるずらし量で前記第1の方向にずらした第k+1番目のストライプ領域を描画するように制御し、
前記第k+1番目のストライプ領域を描画中に、前記照射領域を前記第1の方向に前記拡張幅で拡張された第k+1番目の拡張領域を、前記マルチ荷電粒子ビームを偏向させるとともに前記第2の方向に移動させながら描画するように制御する、
ことを特徴とするマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ荷電粒子ビーム描画方法及びマルチ荷電粒子ビーム描画装置に係り、例えば、マルチビーム描画装置における基板面上で生じるビームアレイの位置ずれを補正する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、ウェハ等へ電子線を使って描画することが行われている。
【0003】
例えば、マルチビームを使った描画装置がある。1本の電子ビームで描画する場合に比べて、マルチビームを用いることで一度に多くのビームを照射できるのでスループットを大幅に向上させることができる。かかるマルチビーム方式の描画装置では、例えば、電子銃から放出された電子ビームを複数の穴を持ったマスクに通してマルチビームを形成し、各々、ブランキング制御され、遮蔽されなかった各ビームが光学系で縮小され、偏向器で偏向され試料上の所望の位置へと照射される。
【0004】
ここで、マルチビーム描画では、基板上に照射されるビームアレイ同士を高精度に繋ぎ合わせることが描画精度にとって重要となる。そのため、描画前にマークスキャンを行って基板上でのビームアレイ形状を測定する(例えば、特許文献1参照)。ビームアレイ形状のリニア成分のうち、y方向のずれを示すYYリニア成分と、y方向を維持しながらx方向にずれる斜めのずれを示すXYリニア成分は、y方向に照射領域をずらしながら行う多重描画のパス数(多重回数)を増やすことによって平均化効果を高めることができるものの、描画時間の増加を抑制するためには、パス数の増加分、ステージ速度を速くする必要が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様は、マルチビーム描画におけるビームアレイ形状のリニア成分のずれに伴う位置ずれを多重描画のパス数による平均化効果による低減よりもさらに低減することが可能な方法および描画装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のマルチ荷電粒子ビーム描画方法は、
設計上のマルチ荷電粒子ビームの照射領域の第1の方向の幅が所定サイズである照射領域内でマルチ荷電粒子ビームを偏向させるとともに、照射領域を第1の方向に直交する第2の方向に移動させながら、試料面上の描画領域を第1の方向に所定サイズの幅で分割した各ストライプ領域を描画する工程と、
第k番目(kは1以上の整数)のストライプ領域の描画中に、照射領域を第1の方向に所定の拡張幅で拡張された第k番目の拡張領域を、マルチ荷電粒子ビームを偏向させるとともに第2の方向に移動させながら描画する工程と、
第k番目のストライプ領域と一部が重なるように、第k番目のストライプ領域から拡張幅とは異なるずらし量で第1の方向にずらした第k+1番目のストライプ領域を描画する工程と、
第k+1番目のストライプ領域を描画中に、照射領域を第1の方向に拡張幅で拡張された第k+1番目の拡張領域を、マルチ荷電粒子ビームを偏向させるとともに第2の方向に移動させながら描画する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、試料はステージ上に載置され、
第k番目のストライプ領域を描画中、ステージは、第2の方向の逆方向に移動し、照射領域がステージの移動に追従するようにトラッキング制御が行われ、
照射領域の偏向は、トラッキング制御をリセットするトラッキングリセット時に行われると好適である。
【0009】
また、各ストライプ領域内のマルチ荷電粒子ビームの試料面上におけるビーム間ピッチサイズで囲まれる各サブ照射領域内は、当該照射領域が偏向されていない状態で描画される画素と、当該照射領域が偏向された状態で描画される画素との組み合わせにより露光されると好適である。
【0010】
また、拡張幅は、ずらし量の1/2に設定されると好適である。
【0011】
また、描画領域には、ずらし量でストライプ領域をずらしながら行うマルチ荷電粒子ビームの露光による多重描画が行われ、
第k番目のストライプ領域の描画中に第k番目の拡張領域で描画される画素と、k番目の拡張領域と重なり合う第k+n番目(nは2以上の整数)の拡張領域で描画される画素と、が重ならないようにマルチ荷電粒子ビームの照射位置が制御されると好適である。
【0012】
本発明の一態様のマルチ荷電粒子ビーム描画装置は、
試料が載置されるステージと、マルチ荷電粒子ビームを偏向する偏向器と、を有し、マルチ荷電粒子ビームで前記試料にパターンを描画する描画機構と、
描画機構による描画動作を制御する描画制御部と、
を備え、
描画制御部は、
設計上のマルチ荷電粒子ビームの照射領域の第1の方向の幅が所定サイズである照射領域内でマルチ荷電粒子ビームを偏向させるとともに、照射領域を第1の方向に直交する第2の方向に移動させながら、試料面上の描画領域を第1の方向に所定サイズの幅で分割した各ストライプ領域を描画するように制御し、
第k番目のストライプ領域を描画中に、照射領域を第1の方向に所定の拡張幅で拡張された第k番目の拡張領域を、マルチ荷電粒子ビームを偏向させるとともに第2の方向に移動させながら描画するように制御し、
第k番目のストライプ領域と一部が重なるように、第k番目のストライプ領域から拡張幅とは異なるずらし量で第1の方向にずらした第k+1番目のストライプ領域を描画するように制御し、
第k+1番目のストライプ領域を描画中に、照射領域を第1の方向に拡張幅で拡張された第k+1番目の拡張領域を、マルチ荷電粒子ビームを偏向させるとともに第2の方向に移動させながら描画するように制御する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、マルチビーム描画におけるビームアレイ形状のリニア成分のずれに伴う位置ずれを多重描画のパス数による平均化効果による低減よりもさらに低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
【
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
【
図3】実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の構成を示す断面図である。
【
図4】実施の形態1における描画動作の一例を説明するための概念図である。
【
図5】実施の形態1におけるリニア成分のパラメータを示す図である。
【
図6】実施の形態1の比較例におけるずらし多重描画を説明するための図である。
【
図7】実施の形態1の比較例におけるy方向の位置ずれ量の平均化の一例を説明するための図である。
【
図8】実施の形態1における描画方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
【
図9】実実施の形態1における描画シーケンスの一例の主偏向と副偏向のタイムチャートを示す図である。
【
図10】実施の形態1における描画シーケンスの一例の一部を示している。
【
図11】実施の形態1における描画シーケンスの一例の続き部分を示している。
【
図12】実施の形態1における描画シーケンスの他の一例の主偏向と副偏向のタイムチャートを示す図である。
【
図13】実施の形態1における描画シーケンスの他の一例の一部を示している。
【
図14】実施の形態1における描画シーケンスの他の一例の続き部分を示している。
【
図15】実施の形態1における描画シーケンスの他の一例の一部を示している。
【
図16】実施の形態1における描画シーケンスの他の一例の続き部分を示している。
【
図17】実施の形態1の比較例における順に描画される3つのストライプ領域で描画される画素の一例を示す図である。
【
図18】実施の形態1における順に描画される3つのストライプ領域で描画される画素の一例を示す図である。
【
図19】実施の形態1におけるy方向の位置ずれ量の平均化の一例を説明するための図である。
【
図20】実施の形態1における偏向器の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画機構150と制御系回路160を備えている。描画装置100は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の一例であると共に、マルチ荷電粒子ビーム露光装置の一例である。描画機構150は、電子鏡筒102(電子ビームカラム)と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、ブランキングアパーチャアレイ機構204、縮小レンズ205、制限アパーチャ基板206、対物レンズ207、主偏向器208、及び副偏向器209、が配置されている。
【0017】
描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時(露光時)には描画対象基板となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスク、或いは、半導体装置が製造される半導体基板(シリコンウェハ)等が含まれる。また、試料101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。XYステージ105上には、さらに、XYステージ105の位置測定用のミラー210が配置される。
【0018】
制御系回路160は、制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路130、デジタル・アナログ変換(DAC)アンプユニット132,134、レンズ制御回路136、ステージ制御機構138、ステージ位置測定器139及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142を有している。制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路130、レンズ制御回路136、ステージ制御機構138、ステージ位置測定器139及び記憶装置140,142は、図示しないバスを介して互いに接続されている。偏向制御回路130には、DACアンプユニット132,134及びブランキングアパーチャアレイ機構204が接続されている。副偏向器209は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ132を介して偏向制御回路130により制御される。主偏向器208は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ134を介して偏向制御回路130により制御される。照明レンズ202、縮小レンズ205、及び対物レンズ207といったレンズ群は、レンズ制御回路136により制御される。XYステージ105の位置はステージ制御機構138によって制御される図示しない各軸のモータの駆動によって制御される。ステージ位置測定器139は、ミラー210からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でXYステージ105の位置を測長する。
【0019】
制御計算機110内には、ずらし量設定部50,拡張幅設定部52、描画データ処理部70、描画制御部72、及び転送処理部74が配置される。ずらし量設定部50,拡張幅設定部52、描画データ処理部70、描画制御部72、及び転送処理部74といった各「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。ずらし量設定部50,拡張幅設定部52、描画データ処理部70、描画制御部72、及び転送処理部74に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
【0020】
描画装置100の描画動作は、描画制御部72によって制御される。また、各ショットの照射時間データの偏向制御回路130への転送処理は、転送処理部74によって制御される。
【0021】
また、描画装置100の外部から描画データ(チップデータ)が入力され、記憶装置140に格納される。チップデータには、チップパターンを構成する複数の図形パターンの情報が定義される。具体的には、図形パターン毎に、例えば、図形コード、座標、及びサイズ等が定義される。
【0022】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0023】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、縦(y方向)p列×横(x方向)q列(p,q≧2)の穴(開口部)22が所定の配列ピッチでマトリクス状に形成されている。
図2の例では、例えば、縦横(x,y方向)に512×512列の穴22が形成される場合を示している。穴22の数は、これに限るものではない。例えば、32×32列の穴22が形成される場合であっても構わない。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ直径の円形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチビーム20が形成されることになる。言い換えれば、成形アパーチャアレイ基板203は、マルチビーム20を形成する。
【0024】
図3は、実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の構成を示す断面図である。ブランキングアパーチャアレイ機構204は、
図3に示すように、支持台33上にシリコン等からなる半導体基板を用いたブランキングアパーチャアレイ基板31が配置される。ブランキングアパーチャアレイ基板31の中央部のメンブレン領域330には、
図2に示した成形アパーチャアレイ基板203の各穴22に対応する位置にマルチビーム20のそれぞれのビームの通過用の通過孔25(開口部)が開口される。そして、複数の通過孔25のうち対応する通過孔25を挟んで対向する位置に制御電極24と対向電極26の組(ブランカー:ブランキング偏向器)がそれぞれ配置される。また、各通過孔25の近傍のブランキングアパーチャアレイ基板31内部には、各通過孔25用の制御電極24に偏向電圧を印加する制御回路41(ロジック回路)が配置される。各ビーム用の対向電極26は、グランド接続される。
【0025】
制御回路41内には、図示しないアンプ(スイッチング回路の一例)が配置される。アンプの一例として、スイッチング回路となるCMOS(Complementary MOS)インバータ回路が配置される。CMOSインバータ回路の入力(IN)には、閾値電圧よりも低くなるL(low)電位(例えばグランド電位)と、閾値電圧以上となるH(high)電位(例えば、1.5V)とのいずれかが制御信号として印加される。実施の形態1では、CMOSインバータ回路の入力(IN)にL電位が印加される状態では、制御回路41に印加されるCMOSインバータ回路の出力(OUT)は正電位(Vdd)となり、対向電極26のグランド電位との電位差による電界により対応ビームを偏向し、制限アパーチャ基板206で遮蔽することでビームOFFになるように制御する。一方、CMOSインバータ回路の入力(IN)にH電位が印加される状態(アクティブ状態)では、CMOSインバータ回路の出力(OUT)はグランド電位となり、対向電極26のグランド電位との電位差が無くなり対応ビームを偏向しないので制限アパーチャ基板206を通過することでビームONになるように制御する。かかる偏向によってブランキング制御される。
【0026】
次に、描画機構150の動作の具体例について説明する。電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202によりほぼ垂直に成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、矩形の複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、例えば矩形形状のマルチビーム(複数の電子ビーム)20が形成される。かかるマルチビーム20は、ブランキングアパーチャアレイ機構204のそれぞれ対応するブランカー内を通過する。かかるブランカーは、それぞれ、設定された描画時間(照射時間)の間、ビームがON状態になるように個別に通過するビームをブランキング制御する。
【0027】
ブランキングアパーチャアレイ機構204を通過したマルチビーム20は、縮小レンズ205によって、縮小され、制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、ブランキングアパーチャアレイ機構204のブランカーによって偏向された電子ビームは、制限アパーチャ基板206の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板206によって遮蔽される。一方、ブランキングアパーチャアレイ機構204のブランカーによって偏向されなかった電子ビームは、
図1に示すように制限アパーチャ基板206の中心の穴を通過する。このように、制限アパーチャ基板206は、ブランキングアパーチャアレイ機構204のブランカーによってビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板206を通過したビームにより、1回分のショットの各ビームが形成される。制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20は、対物レンズ207により焦点が合わされ、所望の縮小率のパターン像となり、主偏向器208及び副偏向器209によって、制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20全体が同方向にまとめて偏向され、各ビームの試料101上のそれぞれの照射位置に照射される。また、例えばXYステージ105が連続移動している時、ビームの照射位置がXYステージ105の移動に追従するように主偏向器208によってトラッキング制御が行われる。一度に照射されるマルチビーム20は、理想的には成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22の配列ピッチに上述した所望の縮小率を乗じたピッチで並ぶことになる。
【0028】
図4は、実施の形態1における描画動作の一例を説明するための概念図である。
図4に示すように、試料101の描画領域30(太線)は、例えば、y方向に向かって所定の幅で短冊状の複数のストライプ領域32に仮想分割される。
図4の例では、試料101の描画領域30が、例えばy方向に、1回のマルチビーム20の照射で照射可能な設計上の照射領域34(描画フィールド)のサイズと実質同じ幅サイズで複数のストライプ領域32に分割された場合を示している。設計上のマルチビーム20の照射領域34のx方向のサイズは、x方向のビーム数×x方向のビーム間ピッチで定義できる。矩形の照射領域34のy方向のサイズは、y方向のビーム数×y方向のビーム間ピッチで定義できる。なお、設計上の照射領域は、ビームアレイの全部を描画に使うときのみならず一部を描画に使う場合も含む。
【0029】
ここで、後述するように、実施の形態1では、各ストライプ領域32を描画中に、y方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトするY偏向を行う。そのため、Y偏向された状態では、偏向される方向と逆方向のストライプ領域32の端部付近の領域に描画されずに残る箇所が生じてしまう。そのため、かかる箇所を描画するために、第1のストライプレイヤについては、
図4に示すように、描画領域30の端部から-y方向に1つ余分にストライプ領域32を設定すると好適である。これにより-y方向に1つ余分に設定されたストライプ領域32を描画中にY偏向された状態で上述した描画されずに残る箇所を描画できる。
【0030】
また、
図4の例では、y方向にストライプ領域32の幅の1/2のサイズのずらし量で位置をずらしながら多重描画を行う場合を示している。かかる場合のy方向へのずらし多重度Nは、N=2となる。そのため、第1のストライプレイヤからy方向にストライプ領域32の幅の1/2のサイズのずらし量で位置をずらした第2のストライプレイヤを設定する。このように、
図4の例では、第1のストライプレイヤと第2のストライプレイヤとの2つのストライプレイヤが設定される。以下、描画動作の一例を説明する。
【0031】
まず、XYステージ105を移動させて、第1のストライプレイヤの第1番目のストライプ領域32の左端、或いはさらに左側の位置にマルチビーム20の照射領域34が位置するように調整し、第1のストライプレイヤの第1番目のストライプ領域32の描画(多重描画の1パス目)が行われる。第1のストライプレイヤの第1番目のストライプ領域32を描画する際には、XYステージ105を例えば-x方向に移動させることにより、相対的にx方向へと描画を進めていく。XYステージ105は例えば等速で連続移動させる。第1のストライプレイヤの第1番目のストライプ領域32の描画終了後、ステージ位置を-y方向にストライプ領域32の幅の1/2のサイズのずらし量だけ移動させる。これにより、描画されるストライプ領域32をy方向にストライプ領域32の幅の1/2のサイズのずらし量だけずらす。
【0032】
そして、次に、第2のストライプレイヤの第1番目のストライプ領域32の左端、或いはさらに左側の位置にマルチビーム20の照射領域34が位置するように調整し、XYステージ105を例えば-x方向に移動させることにより、相対的にx方向へと描画を進めていくことにより、第2のストライプレイヤの第1番目のストライプ領域32の描画(多重描画の2パス目)が行われる。このように、描画されるストライプ領域32をy方向にストライプ領域32の幅の1/2のサイズのずらし量だけずらしながら、第1のストライプレイヤのストライプ領域32と第2のストライプレイヤのストライプ領域32とを交互に描画していくことで、y方向に2回ずつの多重描画を行う。
【0033】
各ストライプ領域32を描画中に、y方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトするY偏向については後述する。なお、x方向に描画を進める際にさらに多重描画を行っても構わない。
【0034】
また、
図4の例では、同じ方向に向かって各ストライプ領域32の描画を進める場合を示したが、これに限るものではない。例えば、x方向へと描画を進めたストライプ領域32の次に描画するストライプ領域32については、XYステージ105を例えばx方向に移動させることにより、-x方向に向かって描画を行う場合であっても構わない。このように交互に向きを変えながら描画することでステージ移動時間を短くでき、ひいては描画時間を短縮できる。1回のショットでは、成形アパーチャアレイ基板203の各穴22を通過することによって形成されたマルチビームによって、最大で各穴22と同数の複数のショットパターンが一度に形成される。
【0035】
また、
図4の例では、ストライプ領域32の幅の1/2のサイズのずらし量でy方向にずらしながら各ストライプレイヤのストライプ領域32を描画する、y方向に2回ずつの多重描画を行う場合を示したが、これに限るものではない。例えば、ストライプ領域32の幅の1/4のサイズのずらし量でy方向に位置をずらしながら多重描画を行う場合であっても構わない。かかる場合のy方向へのずらし多重度Nは、N=4となる。その他のずらし量であっても構わない。y方向へのずらし多重度はずらし量に応じて設定される。
【0036】
図5は、実施の形態1におけるリニア成分のパラメータを示す図である。
図5において、設計上の矩形のビームアレイ形状を点線で示している。XXリニア成分は、設計上のビームアレイ形状に対してx方向に広がる(或いは狭くなる)x方向のずれ成分を示す。YYリニア成分は、設計上のビームアレイ形状に対してy方向に広がる(或いは狭くなる)y方向のずれ成分を示す。XYリニア成分は、設計上のビームアレイ形状に対してy方向を維持しながらx方向にずれる斜めのずれ成分を示す。YXリニア成分は、設計上のビームアレイ形状に対してx方向を維持しながらy方向にずれる斜めのずれ成分を示す。そして、設計上のビームアレイ形状に対してx方向に広がる(或いは狭くなる)量に依存するリニア成分パラメータをA
XXで示す。設計上のビームアレイ形状に対してy方向に広がる(或いは狭くなる)量に依存するリニア成分パラメータをA
YYで示す。設計上のビームアレイ形状に対してy方向に延びる辺がx方向に傾く傾き量に依存するリニア成分パラメータをA
XYで示す。設計上のビームアレイ形状に対してx方向に延びる辺がy方向に傾く傾き量に依存するリニア成分パラメータをA
YXで示す。
【0037】
ビームアレイ形状内の各点のx座標Xは、設計上の座標(x,y)を用いて、次の式(1-1)で近似できる。同様に、ビームアレイ形状内の各点のy座標Yは、設計上の座標(x,y)を用いて、次の式(1-2)で近似できる。
(1-1) X=AXX・x+AXY・y
(1-2) Y=AYX・x+AYY・y
【0038】
図6は、実施の形態1の比較例におけるずらし多重描画を説明するための図である。
図6において設計上のビームアレイ形状(点線)は、設計上のマルチビーム20の照射領域34の形状と同じになる。
図6の例では、リニア成分YYとリニア成分XYのずれが生じたビームアレイ形状38(実線)が示されている。例えば、k番目のストライプ領域(例えば第1ストライプレイヤ)を描画した後は、設定されたずらし量でy方向に位置をずらしたk+1番目のストライプ領域(例えば第2ストライプレイヤ)を描画する。これにより、k番目のストライプ領域の上半分の領域は、2回の多重描画を行ったことになる。これにより、y方向の位置ずれ量が照射領域をずらした2回の描画で平均化され、1/2に低減される。
【0039】
図7は、実施の形態1の比較例におけるy方向の位置ずれ量の平均化の一例を説明するための図である。
図7の例では、例えばリニア成分YYのずれが生じたビームアレイ形状のマルチビーム20で多重描画した場合を示している。設計形状よりもy方向に広がる位置ずれが生じたビームアレイ形状の場合、ビームアレイ形状内の各位置のうち、y方向の中央部では位置ずれが生じない。y方向の端部では正の位置ずれが生じる。-y方向の端部では符号を反転させた同じ量の負の位置ずれが生じる。ストライプ領域32の幅の1/2のサイズのずらし量で多重描画する場合、
図7(a)に示す第1ストライプレイヤの描画(多重描画の1パス目)による位置ずれ量と、
図7(b)に示す第2ストライプレイヤの描画(多重描画の2パス目)による位置ずれ量とが合成されることによって平均化され、
図7(c)に示すように位置ずれ量の絶対値が1/2に低減できる。y方向に照射領域をずらしながら4回多重を行えば、位置ずれ量を1/4に低減できる。
【0040】
このように、y方向に照射領域をずらしながら行う多重描画のパス数(多重回数)を増やすことによって平均化効果を高めることができる。しかしながら、多重描画のパス数を増やすと、描画時間の増加につながる。描画時間の増加を抑制するためには、パス数の増加分、ステージ速度を速くする必要が生じてしまう。そこで、実施の形態1では、各ストライプ領域32を描画中に、y方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトするY偏向に行う。以下、具体的に説明する。
【0041】
図8は、実施の形態1における描画方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
図8において、実施の形態1における描画方法は、ずらし量設定工程(S102)と、拡張幅設定工程(S104)と、ストライプ領域描画及び拡張領域描画工程(S110)と、位置ずらし工程(S122)と、判定工程(S124)と、いう一連の工程を実施する。
【0042】
ストライプ描画及び拡張領域描画工程(S110)は、内部工程として、ショット工程(S112)と、主偏向シフト(Y偏向)工程(S114)と、ショット工程(S116)と、主偏向シフトリセット(Y偏向リセット)工程(S118)と、判定工程(S120)と、いう一連の工程を実施する。
【0043】
ずらし量設定工程(S102)として、ずらし量設定部50は、y方向に位置をずらしながら行う多重描画のずらし量を設定する。以下、
図4の例に合わせて、ストライプ領域32のy方向幅の1/2の量の場合を一例として説明する。
【0044】
拡張幅設定工程(S104)として、拡張幅設定部52は、Y偏向を行うことにより拡張するストライプ領域32の拡張領域の幅(拡張幅)を設定する。拡張幅は、ずらし量とは異なるサイズに設定される。拡張幅は、ずらし量よりも小さいサイズに設定されると好適である。拡張幅は、ずらし量の1/2に設定されるとより好ましい。
【0045】
ストライプ描画及び拡張領域描画工程(S110)として、まず、描画データ処理部70は、記憶装置140に格納されたチップデータ(描画データ)を読み込み、画素毎の照射時間データを生成する。照射時間データは、予め設定された描画シーケンスに沿ってショット順に並び替えられる。照射時間データは、記憶装置142に格納される。転送処理部74は、ショット順に照射時間データを偏向制御回路130に転送する。描画機構150は、マルチビーム20で試料101にパターンを描画する。描画制御部72は、描画機構150による描画動作を制御する。
【0046】
まず、描画制御部72による制御のもと、描画機構150は、描画対象の試料101の第k番目(kは1以上の整数)のストライプ領域32及び拡張領域にパターンを描画する。言い換えれば、描画機構150は、設計上のマルチビーム20の照射領域34のy方向(第1方向)の幅が所定サイズである照射領域34内でマルチビーム20を偏向させるとともに、照射領域34をy方向に直交するx方向(第2の方向)に移動させながら、試料101面上の描画領域をy方向に所定サイズの幅で分割した各ストライプ領域32を描画する。さらに、描画機構150は、第k番目(kは1以上の整数)のストライプ領域32の描画中に、照射領域をy方向に所定の拡張幅で拡張された第k番目の拡張領域34を、マルチビーム20を偏向させるとともにx方向に移動させながら描画する。さらに言い換えれば、描画機構150は、第k番目(kは1以上の整数)のストライプ領域32の描画中に、y方向に拡張幅分偏向させた照射領域34内でマルチビーム20を偏向しながら第k番目の拡張領域を描画する。具体的には、以下のように動作する。
【0047】
ショット工程(S112)として、描画制御部72による制御のもと、描画機構150は、マルチビーム20の照射領域34内でマルチビーム20を偏向しながら、y方向(第1の方向)の幅がマルチビーム20の設計上の照射領域34の幅サイズでy方向に直交するx方向(第2の方向)の幅がy方向の幅サイズよりも長い、試料101上の第k番目のストライプ領域32をマルチビーム20で描画する。
【0048】
図9は、実施の形態1における描画シーケンスの一例の主偏向と副偏向のタイムチャートを示す図である。
図10は、実施の形態1における描画シーケンスの一例の一部を示している。
図10の例では、4×4本のマルチビーム20を用いる場合を示している。また、試料面上においてx,y方向にマルチビーム20のビーム間ピッチのサイズで囲まれた矩形の領域で1つのサブ照射領域29(ピッチセル)を構成する。
図9及び
図10の例では、各サブ照射領域29は、例えば2×2画素で構成される場合を示している。
図9及び
図10の例では、かかるサブ照射領域29内を左下、右上、右下、及び左上の順で描画する描画シーケンスが用いられる。
図9及び
図10の例では、各サブ照射領域29内を4つの異なるビームで描画する場合を示している。
【0049】
各ストライプ領域32を描画中、XYステージ105は、照射領域34を相対的に移動させるため、照射領域34の移動方向とは逆方向である-x方向(若しくはx方向)に移動する。そして、各ストライプ領域32を描画中、マルチビーム20の照射領域34がXYステージ105の移動に追従するようにトラッキング制御が行われる。具体的には、例えば1画素を描画(露光)する間、照射領域34がXYステージ105の移動によって試料101との相対位置がずれないように、主偏向器208によってマルチビーム20全体をx方向に一括偏向することによって、照射領域34をXYステージ105の移動に追従させる。言い換えれば、トラッキング制御が行われる。
図10の例では、各サブ照射領域29内の1/4(照射に用いられるビーム本数分の1)の領域(1画素)を描画する間に、XYステージ105が、2画素分の距離Lだけ移動する速度で、連続移動する描画動作を行う場合を示している。
【0050】
ショットサイクルは、1回のビームショットの最大照射時間と偏向器のDACアンプの整定時間との合計時間となる。1画素の描画毎にトラッキングリセットを行うトラッキングサイクルは、1回のビームショットの最大照射時間と同じ時間を用いることができる。1回のビームショットの最大照射時間は、予め設定される。例えば、ドーズ変調等を含めた描画処理の全ショットにおいて最大となる照射時間を最大照射時間として設定すればよい。
【0051】
トラッキング制御は、例えば、主偏向器208によるx方向の偏向(主偏向X)により制御される。1回のトラッキングサイクルが終了するとトラッキングリセットして、前回のトラッキング開始位置に戻る。
図9及び
図10の例では、主偏向Xとして、マルチビーム20の1ショット毎に、トラッキング制御をリセットする。照射領域34内のマルチビーム20の照射位置のシフトは、副偏向器209によるx方向の偏向(副偏向X)とy方向の偏向(副偏向Y)との組み合わせにより制御される。
【0052】
そして、描画制御部72による制御のもと、描画機構150は、各ストライプ領域32を描画中に、さらに、マルチビーム20の照射領域34をビーム偏向によってy方向に移動させることにより、y方向に拡張したストライプ領域32の拡張領域37をマルチビーム20で描画する。各拡張領域37へのビーム偏向は、トラッキング制御をリセットするトラッキングリセット時に行われる。
図9及び
図10の例では、各サブ照射領域29内の4つの画素を照射する4回のショットのうち、3回目のショットと4回目のショットにおいて、拡張領域37の描画が行われる。
【0053】
図10(a)において、ショット1として、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の左下の画素を照射する。
【0054】
ショット1の最大照射時間が経過した時点でトラッキング制御をリセットする。ショット1のトラッキングサイクルの間にXYステージ105は2画素分の距離だけ移動している。よって、トラッキングリセットによって、照射領域34は、x方向に2画素分移動する。
【0055】
なお、ショット1にて、各サブ照射領域29の左下の画素の描画は終了している。そのため、トラッキングリセットした後に、次回のトラッキングサイクルにおいてまず副偏向器209は、各サブ照射領域29のまだ描画されていない右上の画素を描画するようにビームの描画位置を合わせる(シフトする)ように偏向する。
【0056】
図10(b)において、ショット2として、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の右上の画素を照射する。
【0057】
ショット2の最大照射時間が経過した時点でトラッキング制御をリセットする。ショット2のトラッキングサイクルの間にXYステージ105は2画素分の距離だけ移動している。よって、トラッキングリセットによって、照射領域34は、x方向に2画素分移動する。
【0058】
なお、ショット2にて、各サブ照射領域29の右上の画素の描画は終了している。そのため、トラッキングリセットした後に、次回のトラッキングサイクルにおいてまず副偏向器209は、各サブ照射領域29のまだ描画されていない右下の画素を描画するようにビームの描画位置を合わせる(シフトする)ように偏向する。
【0059】
主偏向シフト(Y偏向)工程(S114)として、ショット2後のトラッキングリセットに合わせて、設定された拡張幅だけ主偏向器208にてy方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトするように偏向する(Y偏向:主偏向Y)。言い換えれば、照射領域34の偏向は、トラッキング制御をリセットするトラッキングリセット時に行われる。
図10(b)の例では、拡張幅として、2画素分のサイズだけy方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトする。
【0060】
ショット工程(S116)として、Y偏向によりマルチビーム20の照射領域34がy方向に拡張幅だけ偏向された状態で、第k番目のストライプ領域32の描画と共に、y方向に拡張した第k番目のストライプ領域32の拡張領域37をマルチビーム20で描画する。言い換えれば、第k番目のストライプ領域32を描画中に、さらに、マルチビーム20の照射領域34をビーム偏向によってy方向に移動させることにより、y方向に拡張した第k番目のストライプ領域32の拡張領域37をマルチビーム20で描画する。具体的には、以下のように動作する。
【0061】
図10(c)に示すように、ショット3として、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の右下の画素を照射する。照射領域34のシフトによって、拡張領域37に照射位置が移動した各ビームが、第k番目のストライプ領域32の拡張領域37内の担当するサブ照射領域29の右下の画素を照射する。拡張領域37に照射位置が移動せずに第k番目のストライプ領域32内に照射位置が残った各ビームが、第k番目のストライプ領域32内の担当するサブ照射領域29の右下の画素を照射する。
【0062】
ショット3の最大照射時間が経過した時点でトラッキング制御をリセットする。ショット3のトラッキングサイクルの間にXYステージ105は2画素分の距離だけ移動している。よって、トラッキングリセットによって、照射領域34は、x方向に2画素分移動する。
【0063】
なお、ショット3にて、各サブ照射領域29の右下の画素の描画は終了している。そのため、トラッキングリセットした後に、次回のトラッキングサイクルにおいてまず副偏向器209は、各サブ照射領域29のまだ描画されていない左上の画素を描画するようにビームの描画位置を合わせる(シフトする)ように偏向する。
【0064】
図10(d)において、ショット4として、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の左上の画素を照射する。なお、ショット4では、Y偏向によりマルチビーム20の照射領域34がy方向に拡張幅だけ偏向された状態なので、第k番目のストライプ領域32を描画中に、さらに、第k番目のストライプ領域32の拡張領域37をマルチビーム20で描画する。具体的には、拡張領域37に照射位置が移動した各ビームが、第k番目のストライプ領域32の拡張領域37内の担当するサブ照射領域29の左上の画素を照射する。拡張領域37に照射位置が移動せずに第k番目のストライプ領域32内に照射位置が残った各ビームが、第k番目のストライプ領域32内の担当するサブ照射領域29の左上の画素を照射する。
【0065】
各ストライプ領域32内のマルチビーム20の試料101面上におけるビーム間ピッチサイズで囲まれる各サブ照射領域29内は、当該照射領域34が偏向されていない状態で描画される画素と、当該照射領域34が偏向された状態で描画される画素との組み合わせにより露光される。具体的には、各ストライプ領域32内のマルチビーム20の試料101面上におけるビーム間ピッチサイズで囲まれる各サブ照射領域29内は、当該ストライプ領域32の拡張領域37へのビーム偏向が為されていない状態でのビームショット(ここでは、ショット1とショット2)と当該ストライプ領域32の拡張領域37へのビーム偏向が為された状態でのビームショット(ここでは、ショット3とショット4)との組み合わせにより露光される。
【0066】
ショット4の最大照射時間が経過した時点でトラッキング制御をリセットする。ショット4のトラッキングサイクルの間にXYステージ105は2画素分の距離だけ移動している。よって、トラッキングリセットによって、照射領域34は、x方向に2画素分移動する。
【0067】
主偏向シフトリセット(Y偏向リセット)工程(S118)として、ショット4後のトラッキングリセットに合わせて、Y偏向によりマルチビーム20の照射領域34がy方向に拡張幅だけ偏向された状態をリセットする(Y偏向リセット)。Y偏向リセットによって、拡張幅だけ主偏向器208にて-y方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトするように偏向する。
【0068】
なお、ショット4にて、各サブ照射領域29の4つの画素の描画は終了している。そのため、トラッキングリセットした後に、次回のトラッキングサイクルにおいてまず副偏向器209は、各サブ照射領域29の最初に描画された左下の画素を描画するようにビームの描画位置を合わせる(シフトする)ように偏向する。
【0069】
判定工程(S120)として、描画制御部72は、第k番目のストライプ領域32の描画が終了したかどうかを判定する。終了した場合には、位置ずらし工程(S122)に進む。まだ、終了していない場合には、ショット工程(S112)に戻り、第k番目のストライプ領域32の描画が終了するまで、ショット工程(S112)から判定工程(S120)までを繰り返す。
図10(d)の状態では、まだ第k番目のストライプ領域32の描画が終了していないので、以下に説明するように、ショット工程(S112)から判定工程(S120)までを繰り返す。
【0070】
図11は、実施の形態1における描画シーケンスの一例の続き部分を示している。
図11の例では、
図10(d)から引き続く描画シーケンスの一例を示している。
【0071】
図11(a)において、ショット5として、ショット1と同様、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の左下の画素を照射する。
【0072】
ショット5の最大照射時間が経過した時点でトラッキング制御をリセットする。ショット5のトラッキングサイクルの間にXYステージ105は2画素分の距離だけ移動している。よって、トラッキングリセットによって、照射領域34は、x方向に2画素分移動する。
【0073】
なお、ショット5にて、各サブ照射領域29の左下の画素の描画は終了している。そのため、トラッキングリセットした後に、次回のトラッキングサイクルにおいてまず副偏向器209は、各サブ照射領域29のまだ描画されていない右上の画素を描画するようにビームの描画位置を合わせる(シフトする)ように偏向する。
【0074】
図11(b)において、ショット6として、ショット2と同様、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の右上の画素を照射する。
【0075】
ショット6の最大照射時間が経過した時点でトラッキング制御をリセットする。ショット2のトラッキングサイクルの間にXYステージ105は2画素分の距離だけ移動している。よって、トラッキングリセットによって、照射領域34は、x方向に2画素分移動する。
【0076】
なお、ショット6にて、各サブ照射領域29の右上の画素の描画は終了している。そのため、トラッキングリセットした後に、次回のトラッキングサイクルにおいてまず副偏向器209は、各サブ照射領域29のまだ描画されていない右下の画素を描画するようにビームの描画位置を合わせる(シフトする)ように偏向する。
【0077】
図11(b)の例では、さらに、トラッキングリセットに合わせて、設定された拡張幅だけ主偏向器208にてy方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトするように偏向する(Y偏向:主偏向Y)。
図11(b)の例では、拡張幅として、2画素分のサイズだけy方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトする。
【0078】
このように、ショット5,6は、ショット1,2と同様の動作を行う。言い換えれば、第k番目のストライプ領域32の描画が終了するまで、ショット1~4の動作を繰り返す。これにより、第k番目のストライプ領域32の描画と、第k番目のストライプ領域32の拡張領域37の描画とを行う。
図11(c)では、ショット8の実施後の状態を示している。
【0079】
以上により、第k番目のストライプ領域32の各画素が描画される。また、第k番目のストライプ領域32の拡張領域37の一部の画素が描画される。なお、Y偏向の偏向方向(y方向)と逆方向(-y方向)側の第k番目のストライプ領域32の端部から拡張幅と同じ幅分の第k番目のストライプ領域32の領域部分については、
図11(c)に示すように、Y偏向による照射領域34がy方向にシフトしたことによって描画されずに残る画素が存在することになる。描画されずに残る画素は、拡張領域37で描画される画素と対応する位置関係になる。
図11(c)の例では、拡張領域37の各サブ照射領域29の2×2の4つの画素のうち右下(ショット3+4(m-1))の画素と左上(ショット4+4(m-1))の画素が描画される。これに対応するように、第k番目のストライプ領域32の下部の描画されずに残る画素については、各サブ照射領域29の2×2の4つの画素のうち左下(ショット1+4(m-1))の画素と右上(ショット2+4(m-1))の画素となる。mは1以上の整数。
【0080】
位置ずらし工程(S122)として、描画制御部72により制御されたステージ制御機構138は、拡張領域37のy方向の幅サイズ(拡張幅)とは異なるずらし量で第k番目のストライプ領域32から第k番目のストライプ領域32と一部が重なるようにy方向にずらした第k+1番目のストライプ領域32にマルチビーム20の照射領域34が位置するようにXYステージ105を移動させる。ここでは、第k番目のストライプ領域32から、既に設定されたずらし量でy方向にずれた第k+1番目のストライプ領域32に、マルチビーム20の照射領域34が位置ずるようにXYステージ105を移動させる。
図10及び
図11の例では、ストライプ領域32のy方向幅の1/2がずらし量として設定される。第k番目のストライプ領域32が例えば第1ストライプレイヤであれば、第k+1番目のストライプ領域32は第2ストライプレイヤとなる。このように、ずらし量での位置ずらしによって、描画対象となるストライプ領域32のストライプレイヤが変更される。
【0081】
判定工程(S124)として、描画制御部72は、すべてのストライプ領域32の多重描画が終了したかどうかを判定する。まだ、多重描画が実施されていないストライプ領域32が残っている場合には、ストライプ描画及び拡張領域描画工程(S110)に戻り、すべてのストライプ領域32の多重描画が終了するまで、ストライプ描画及び拡張領域描画工程(S110)から判定工程(S124)までの各工程を繰り返す。
【0082】
よって、第k番目のストライプ領域32のストライプ描画及び拡張領域描画工程(S110)の次は、第k番目のストライプ領域32からずらし量だけy方向にずらした第k+1番目のストライプ領域32のストライプ描画及び拡張領域描画工程(S110)を実施する。言い換えれば、描画機構150は、第k番目のストライプ領域32と一部が重なるように、第k番目のストライプ領域から拡張幅とは異なるずらし量でy方向にずらした第k+1番目のストライプ領域32を描画する。さらに、描画機構150は、第k+1番目のストライプ領域を描画中に、照射領域34をy方向に拡張幅で拡張された第k+1番目の拡張領域を、マルチビーム20を偏向させるとともにx方向に移動させながら描画する。さらに言い換えれば、描画機構150は、第k+1番目のストライプ領域を描画中に、y方向に偏向させた照射領域34内でマルチビーム20を偏向しながら第k+1番目の拡張領域を描画する。以下、具体的に説明する。
【0083】
第k+1番目のストライプ領域32のショット工程(S112)では、描画制御部72による制御のもと、描画機構150は、拡張領域37のy方向の幅サイズとは異なるずらし量で第k番目のストライプ領域32から第k番目のストライプ領域32と一部が重なるようにy方向にずらした第k+1番目のストライプ領域32をマルチビーム20で描画する。描画の仕方は、第k番目のストライプ領域32を描画する場合と同様である。
【0084】
第k+1番目のストライプ領域32の主偏向シフト(Y偏向)工程(S114)では、ショット2後のトラッキングリセットに合わせて、設定された拡張幅だけ主偏向器208にてy方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトするように偏向する(Y偏向:主偏向Y)。
図10(b)の例では、拡張幅として、2画素分のサイズだけy方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトする。Y偏向の仕方は、第k番目のストライプ領域32を描画中に実施したY偏向の仕方と同様である。
【0085】
第k+1番目のストライプ領域32のショット工程(S116)において、描画制御部72による制御のもと、描画機構150は、Y偏向によりマルチビーム20の照射領域34がy方向に拡張幅だけ偏向された状態で、第k+1番目のストライプ領域32を描画中に、マルチビーム20の照射領域34をビーム偏向によってy方向に移動させることにより、y方向に拡張した第k+1番目のストライプ領域32の拡張領域37をマルチビーム20で描画する。描画の仕方は、第k番目のストライプ領域32を描画する場合と同様である。
【0086】
以上のように、第1ストライプレイヤのストライプ領域32と第2ストライプレイヤのストライプ領域32とを交互に並べた第1番目のストライプ領域32から第n番目のストライプ領域32(k=1~n)を順に描画することで、試料101の描画領域30には、設定されたずらし量でストライプ領域をずらしながら行うマルチビーム20の露光による多重描画が行われる。なお、
図9の各種偏向量は各時刻での偏向量の相対値を表しており絶対値を表すものではない。例えば主偏向Yは
図11の例ではゼロと+Y方向に2画素分の偏向量を切り変えてもよいし、-Y方向に1画素分、+Y方向に1画素分の偏向量を切り変えても良い。
【0087】
図12は、実施の形態1における描画シーケンスの他の一例の主偏向と副偏向のタイムチャートを示す図である。
図13は、実施の形態1における描画シーケンスの他の一例の一部を示している。
図14は、実施の形態1における描画シーケンスの他の一例の続き部分を示している。
図12~
図14の例では、
図9~
図11の例と同様、各ストライプ領域32を描画中に、さらに、マルチビーム20の照射領域34をビーム偏向によってy方向に移動させることにより、y方向に拡張したストライプ領域32の拡張領域37をマルチビーム20で描画する。各拡張領域37へのビーム偏向は、トラッキング制御をリセットするトラッキングリセット時に行われる。
図12~
図14の例では、各サブ照射領域29内の4つの画素を照射する4回のショットのうち、2回目のショットと3回目のショットにおいて、拡張領域37の描画が行われる。その他の点は、
図9~
図11の例と同様である。
【0088】
ショット工程(S112)として、
図13(a)に示すように、ショット1として、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の左下の画素を照射する。
【0089】
ショット1の最大照射時間が経過した時点でトラッキング制御をリセットする。ショット1のトラッキングサイクルの間にXYステージ105は2画素分の距離だけ移動している。よって、トラッキングリセットによって、照射領域34は、x方向に2画素分移動する。
【0090】
なお、ショット1にて、各サブ照射領域29の左下の画素の描画は終了している。そのため、トラッキングリセットした後に、次回のトラッキングサイクルにおいてまず副偏向器209は、各サブ照射領域29のまだ描画されていない右上の画素を描画するようにビームの描画位置を合わせる(シフトする)ように偏向する。
【0091】
主偏向シフト(Y偏向)工程(S114)として、ショット1後のトラッキングリセットに合わせて、設定された拡張幅だけ主偏向器208にてy方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトするように偏向する(Y偏向:主偏向Y)。
図13(a)の例では、拡張幅として、2画素分のサイズだけy方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトする。
【0092】
ショット工程(S116)として、描画制御部72による制御のもと、描画機構150は、Y偏向によりマルチビーム20の照射領域34がy方向に拡張幅だけ偏向された状態で、第k番目のストライプ領域32の描画と共に、y方向に拡張した第k番目のストライプ領域32の拡張領域37をマルチビーム20で描画する。
【0093】
図13(b)に示すように、ショット2として、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の右上の画素を照射する。照射領域34のシフトによって、拡張領域37に照射位置が移動した各ビームが、第k番目のストライプ領域32の拡張領域37内の担当するサブ照射領域29の右上の画素を照射する。拡張領域37に照射位置が移動せずに第k番目のストライプ領域32内に照射位置が残った各ビームが、第k番目のストライプ領域32内の担当するサブ照射領域29の右上の画素を照射する。
【0094】
ショット2の最大照射時間が経過した時点でトラッキング制御をリセットする。ショット1のトラッキングサイクルの間にXYステージ105は2画素分の距離だけ移動している。よって、トラッキングリセットによって、照射領域34は、x方向に2画素分移動する。
【0095】
図13(c)において、ショット3として、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の右下の画素を照射する。なお、ショット3では、Y偏向によりマルチビーム20の照射領域34がy方向に拡張幅だけ偏向された状態なので、第k番目のストライプ領域32を描画中に、さらに、第k番目のストライプ領域32の拡張領域37をマルチビーム20で描画する。具体的には、拡張領域37に照射位置が移動した各ビームが、第k番目のストライプ領域32の拡張領域37内の担当するサブ照射領域29の右下の画素を照射する。拡張領域37に照射位置が移動せずに第k番目のストライプ領域32内に照射位置が残った各ビームが、第k番目のストライプ領域32内の担当するサブ照射領域29の右下の画素を照射する。
【0096】
ショット3の最大照射時間が経過した時点でトラッキング制御をリセットする。ショット3のトラッキングサイクルの間にXYステージ105は2画素分の距離だけ移動している。よって、トラッキングリセットによって、照射領域34は、x方向に2画素分移動する。
【0097】
主偏向シフトリセット(Y偏向リセット)工程(S118)として、ショット3後のトラッキングリセットに合わせて、Y偏向によりマルチビーム20の照射領域34がy方向に拡張幅だけ偏向された状態をリセットする(Y偏向リセット)。Y偏向リセットによって、拡張幅だけ主偏向器208にて-y方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトするように偏向する。
【0098】
判定工程(S120)として、描画制御部72は、第k番目のストライプ領域32の描画が終了したかどうかを判定する。終了した場合には、位置ずらし工程(S122)に進む。まだ、終了していない場合には、ショット工程(S112)に戻り、第k番目のストライプ領域32の描画が終了するまで、ショット工程(S112)から判定工程(S120)までを繰り返す。
【0099】
図14(a)において、ショット4として、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の左上の画素を照射する。
【0100】
ショット4の最大照射時間が経過した時点でトラッキング制御をリセットする。ショット4のトラッキングサイクルの間にXYステージ105は2画素分の距離だけ移動している。よって、トラッキングリセットによって、照射領域34は、x方向に2画素分移動する。
【0101】
なお、ショット4にて、各サブ照射領域29の4つの画素の描画は終了している。そのため、トラッキングリセットした後に、次回のトラッキングサイクルにおいてまず副偏向器209は、各サブ照射領域29の最初に描画された左下の画素を描画するようにビームの描画位置を合わせる(シフトする)ように偏向する。
【0102】
図14(b)において、ショット5として、ショット1と同様、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の左下の画素を照射する。
【0103】
ショット5の最大照射時間が経過した時点でトラッキング制御をリセットする。ショット5のトラッキングサイクルの間にXYステージ105は2画素分の距離だけ移動している。よって、トラッキングリセットによって、照射領域34は、x方向に2画素分移動する。
【0104】
なお、ショット5にて、各サブ照射領域29の左下の画素の描画は終了している。そのため、トラッキングリセットした後に、次回のトラッキングサイクルにおいてまず副偏向器209は、各サブ照射領域29のまだ描画されていない右上の画素を描画するようにビームの描画位置を合わせる(シフトする)ように偏向する。
【0105】
主偏向シフト(Y偏向)工程(S114)として、ショット5後のトラッキングリセットに合わせて、設定された拡張幅だけ主偏向器208にてy方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトするように偏向する(Y偏向:主偏向Y)。
図14(b)の例では、拡張幅として、2画素分のサイズだけy方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトする。
【0106】
このように、ショット5は、ショット1と同様の動作を行う。言い換えれば、第k番目のストライプ領域32の描画が終了するまで、ショット1~4の動作を繰り返す。これにより、第k番目のストライプ領域32の描画と、第k番目のストライプ領域32の拡張領域37の描画とを行う。
図14(c)では、ショット8の実施後の状態を示している。
【0107】
以上により、第k番目のストライプ領域32の各画素が描画される。また、第k番目のストライプ領域32の拡張領域37の一部の画素が描画される。なお、Y偏向の偏向方向(y方向)と逆方向(-y方向)側の第k番目のストライプ領域32の端部から拡張幅と同じ幅分の第k番目のストライプ領域32の領域部分については、
図14(c)に示すように、Y偏向による照射領域34がy方向にシフトしたことによって描画されずに残る画素が存在することになる。ショット順序のうちY偏向しているショットが異なると、拡張領域37で描画される画素の位置が異なる。かかる場合でも、描画されずに残る画素は、拡張領域37で描画される画素と対応する位置関係になる。
図14(c)の例では、拡張領域37の各サブ照射領域29の2×2の4つの画素のうち右上(ショット2+4(m-1))の画素と右下(ショット3+4(m-1))の画素が描画される。これに対応するように、第k番目のストライプ領域32の下部の描画されずに残る画素については、各サブ照射領域29の2×2の4つの画素のうち左下(ショット1+4(m-1))の画素と左上(ショット4+4(m-1))の画素となる。
【0108】
位置ずらし工程(S122)として、描画制御部72により制御されたステージ制御機構138は、拡張領域37のy方向の幅サイズ(拡張幅)とは異なるずらし量で第k番目のストライプ領域32から第k番目のストライプ領域32と一部が重なるようにy方向にずらした第k+1番目のストライプ領域32にマルチビーム20の照射領域34が位置するようにXYステージ105を移動させる。
【0109】
判定工程(S124)として、描画制御部72は、すべてのストライプ領域32の多重描画が終了したかどうかを判定する。まだ、多重描画が実施されていないストライプ領域32が残っている場合には、ストライプ描画及び拡張領域描画工程(S110)に戻り、すべてのストライプ領域32の多重描画が終了するまで、ストライプ描画及び拡張領域描画工程(S110)から判定工程(S124)までの各工程を繰り返す。
【0110】
よって、第k番目のストライプ領域32のストライプ描画及び拡張領域描画工程(S110)の次は、第k番目のストライプ領域32からずらし量だけy方向にずらした第k+1番目のストライプ領域32のストライプ描画及び拡張領域描画工程(S110)を実施する。
【0111】
上述した例では、各サブ照射領域29が2×2の4画素で構成される場合を説明したが、これに限るものではない。以下、例えば、各サブ照射領域29が4×4の16画素で構成される場合を説明する。なお、各サブ照射領域29内の画素配列数は、さらに別の数であっても構わない。
【0112】
図15は、実施の形態1における描画シーケンスの他の一例の一部を示している。
図16は、実施の形態1における描画シーケンスの他の一例の続き部分を示している。
図15及び
図16の例では、2×2本のマルチビーム20を用いる場合を示している。また、各サブ照射領域29は、例えば4×4画素で構成される場合を示している。
図15、及び
図16の例では、各サブ照射領域29内を、例えば、左から1列目かつ下から1段目、左から3列目かつ下から3段目、左から3列目かつ下から1段目、左から1列目かつ下から3段目、左から2列目かつ下から2段目、左から4列目かつ下から2段目、左から4列目かつ下から4段目、左から2列目かつ下から4段目、左から2列目かつ下から1段目、左から4列目かつ下から3段目、左から4列目かつ下から1段目、左から2列目かつ下から3段目、左から1列目かつ下から2段目、左から3列目かつ下から2段目、左から3列目かつ下から4段目、及び左から1列目かつ下から4段目、の順で描画する描画シーケンスが用いられる。
図15及び
図16の例では、4×4の16画素のうち8画素を描画するまでを示している。
図15及び
図16の例では、各サブ照射領域29内を4つの異なるビームで描画する場合を示している。
【0113】
各ストライプ領域32を描画中、XYステージ105は、x方向(若しくは-x方向)に移動する。そして、各ストライプ領域32を描画中、マルチビーム20の照射領域34がXYステージ105の移動に追従するようにトラッキング制御が行われる。
図15及び
図16の例では、各サブ照射領域29内の1/4(照射に用いられるビーム本数分の1)の領域(4画素)を描画する間に、XYステージ105が、2画素分の距離だけ移動する速度で、連続移動する描画動作を行う場合を示している。
【0114】
そして、各ストライプ領域32を描画中に、さらに、マルチビーム20の照射領域34をビーム偏向によってy方向に移動させることにより、y方向に拡張したストライプ領域32の拡張領域37をマルチビーム20で描画する。各拡張領域37へのビーム偏向は、トラッキング制御をリセットするトラッキングリセット時に行われる。
図15及び
図16の例では、各サブ照射領域29内の16個の画素を照射する16回のショットのうち、9~16回目のショットにおいて、拡張領域37の描画が行われる。
【0115】
図15(a)において、ショット1として、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の左から1列目かつ下から1段目の画素を照射する。
【0116】
トラッキング制御が継続している間に、副偏向器209は、副偏向X,Yにて、各ビームの照射位置を担当するサブ照射領域29内の左から3列目かつ下から3段目にシフトする。
【0117】
図15(b)において、ショット2として、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の左から3列目かつ下から3段目の画素を照射する。
【0118】
トラッキング制御が継続している間に、副偏向器209は、副偏向X,Yにて、各ビームの照射位置を担当するサブ照射領域29内の左から3列目かつ下から1段目にシフトする。
【0119】
そして、図示しないショット3として、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の左から3列目かつ下から1段目の画素を照射する。
【0120】
トラッキング制御が継続している間に、副偏向器209は、副偏向X,Yにて、各ビームの照射位置を担当するサブ照射領域29内の左から1列目かつ下から3段目にシフトする。
【0121】
図15(c)において、ショット4として、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の左から1列目かつ下から3段目の画素を照射する。
【0122】
以上のように、4×4画素のサブ照射領域29では、1回目のトラッキング制御中に、サブ照射領域29内で副偏向位置をシフトしながら4ショット行うことにより、
図10(a)に示すショット1と同じ状態にできる。
【0123】
ショット4の最大照射時間が経過した時点でトラッキング制御をリセットする。ショット1~4のトラッキングサイクルの間にXYステージ105は2画素分の距離Lだけ移動している。よって、トラッキングリセットによって、照射領域34は、x方向に2画素分移動する。
【0124】
なお、トラッキングリセットした後に、次回のトラッキングサイクルにおいてまず副偏向器209は、各サブ照射領域29のまだ描画されていない左から2列目かつ下から2段目の画素を描画するようにビームの描画位置を合わせる(シフトする)ように偏向する。
【0125】
図16(b)において、ショット5として、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の左から2列目かつ下から2段目の画素を照射する。
【0126】
トラッキング制御が継続している間に、副偏向器209は、副偏向X,Yにて、各ビームの照射位置を担当するサブ照射領域29内の左から4列目かつ下から2段目にシフトする。
【0127】
図15(b)において、ショット6として、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の左から4列目かつ下から2段目の画素を照射する。
【0128】
トラッキング制御が継続している間に、副偏向器209は、副偏向X,Yにて、各ビームの照射位置を担当するサブ照射領域29内の左から4列目かつ下から4段目にシフトする。
【0129】
そして、図示しないショット7として、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の左から4列目かつ下から4段目の画素を照射する。
【0130】
トラッキング制御が継続している間に、副偏向器209は、副偏向X,Yにて、各ビームの照射位置を担当するサブ照射領域29内の左から2列目かつ下から4段目にシフトする。
【0131】
図16(c)において、ショット4として、主偏向Xにてトラッキング制御が行われている間に、各ビームが、マルチビーム20の照射領域34内の担当するサブ照射領域29内の左から2列目かつ下から4段目の画素を照射する。
【0132】
以上のように、4×4画素のサブ照射領域29では、2回目のトラッキング制御中に、サブ照射領域29内で副偏向位置をシフトしながら4ショット行うことにより、
図10(b)に示すショット2と同じ状態にできる。
【0133】
主偏向シフト(Y偏向)工程(S114)として、ショット8後のトラッキングリセットに合わせて、設定された拡張幅だけ主偏向器208にてy方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトするように偏向する(Y偏向:主偏向Y)。
図16(c)の例では、拡張幅として、2画素分のサイズだけy方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトする。
【0134】
そして、4×4画素のサブ照射領域29では、Y偏向によりマルチビーム20の照射領域34がy方向に拡張幅だけ偏向された状態で、図示しない3回目のトラッキング制御中に、サブ照射領域29内で副偏向位置をシフトしながら、左から2列目かつ下から1段目の画素、左から4列目かつ下から3段目の画素、左から4列目かつ下から1段目の画素、左から2列目かつ下から3段目の画素の4ショット(ショット9~12)を行うことにより、
図10(c)に示すショット3と同じ状態にできる。
【0135】
そして、4×4画素のサブ照射領域29では、Y偏向によりマルチビーム20の照射領域34がy方向に拡張幅だけ偏向された状態で、図示しない4回目のトラッキング制御中に、サブ照射領域29内で副偏向位置をシフトしながら、左から1列目かつ下から2段目の画素、左から3列目かつ下から2段目の画素、左から3列目かつ下から4段目の画素、及び左から1列目かつ下から4段目の画素の4ショット(ショット13~16)を行うことにより、
図10(d)に示すショット4と同じ状態にできる。
【0136】
ショット16の最大照射時間が経過した時点でトラッキング制御をリセットする。ショット13~16のトラッキングサイクルの間にXYステージ105は2画素分の距離Lだけ移動している。よって、トラッキングリセットによって、照射領域34は、x方向に2画素分移動する。
【0137】
主偏向シフトリセット(Y偏向リセット)工程(S118)として、ショット16後のトラッキングリセットに合わせて、Y偏向によりマルチビーム20の照射領域34がy方向に拡張幅だけ偏向された状態をリセットする(Y偏向リセット)。Y偏向リセットによって、拡張幅だけ主偏向器208にて-y方向にマルチビーム20の照射領域34をシフトするように偏向する。
【0138】
以上のショット1~16の動作を繰り返すことで、
図10及び
図11の例と同様の描画を行うことができる。
【0139】
そして、第k番目のストライプ領域32の描画が終了した後、位置ずらし工程(S122)として、拡張領域37のy方向の幅サイズ(拡張幅)とは異なるずらし量で第k番目のストライプ領域32から第k番目のストライプ領域32と一部が重なるようにy方向にずらした第k+1番目のストライプ領域32にマルチビーム20の照射領域34が位置するようにXYステージ105を移動させる。
【0140】
そして、第k+1番目のストライプ領域32について、第k番目のストライプ領域32の描画と同様の描画を行う。
【0141】
以上のように、第1ストライプレイヤのストライプ領域32と第2ストライプレイヤのストライプ領域32とを交互に並べた第1番目のストライプ領域32から第n番目のストライプ領域32(k=1~n)を順に描画することで、試料101の描画領域30には、設定されたずらし量でストライプ領域をずらしながら行うマルチビーム20の露光による多重描画が行われる。
【0142】
図17は、実施の形態1の比較例における順に描画される3つのストライプ領域で描画される画素の一例を示す図である。
図17の例では、第k番目のストライプ領域32を描画する場合の照射領域34と同サイズの矩形領域35内で描画される画素を示している。同様に、ずらし量Lでずらした第k+1番目のストライプ領域32を描画する場合の照射領域34と同サイズの矩形領域35内で描画される画素を示している。同様に、ずらし量Lでずらした第k+2番目のストライプ領域32を描画する場合の照射領域34と同サイズの矩形領域35内で描画される画素を示している。
図17の例では、ずらし量Lとして、ストライプ領域の幅の1/2のサイズを用いる場合を示している。
図17の例では、図面を見やすくするために、重ならないように各ストライプ領域の矩形領域35をx方向にずらして示しているが、x方向の位置は同じ位置の矩形領域35を示している。第k番目のストライプ領域32の矩形領域35の上半分の各画素は、y方向に照射領域34をずらした第k+1番目のストライプ領域32の矩形領域35の下半分の描画によって2回の多重描画になっている。同様に、第k+1番目のストライプ領域32の矩形領域35の上半分の各画素は、y方向に照射領域34をずらした第k+2番目のストライプ領域32の矩形領域35の下半分の描画によって2回の多重描画になっている。第k番目のストライプ領域32の矩形領域35の下半分についても、図示しない第k-1番目のストライプ領域32の矩形領域35の上半分の描画によって2回の多重描画になる。第k+2番目のストライプ領域32の矩形領域35の上半分についても、図示しない第k+3番目のストライプ領域32の矩形領域35の下半分の描画によって2回の多重描画になる。このように、比較例では、いずれの画素についてもy方向に照射領域34をずらした2回の多重描画になる。よって、
図7(c)に示したように、2回の平均化によりy方向の位置ずれ誤差を1/2にできる。
【0143】
図18は、実施の形態1における順に描画される3つのストライプ領域で描画される画素の一例を示す図である。
図18の例では、第k番目のストライプ領域32を描画する場合の照射領域34と同サイズの矩形領域35内で描画される画素と、第k番目のストライプ領域32の拡張領域37内で描画される画素とを示している。同様に、第k+1番目のストライプ領域32を描画する場合の照射領域34と同サイズの矩形領域35内で描画される画素と、第k+1番目のストライプ領域32の拡張領域37内で描画される画素とを示している。同様に、第k+2番目のストライプ領域32を描画する場合の照射領域34と同サイズの矩形領域35内で描画される画素と、第k+2番目のストライプ領域32の拡張領域37内で描画される画素とを示している。
図18の例では、図面を見やすくするために、重ならないように各ストライプ領域の矩形領域35をx方向にずらして示しているが、x方向の位置は同じ位置の矩形領域35を示している。
【0144】
第k番目のストライプ領域32の描画中と同時期に第k番目のストライプ領域32の拡張領域37で描画される画素と、第k番目のストライプ領域32と重ならずに隣接するストライプ領域32(
図18の例では、第k+2番目のストライプ領域32)を描画する場合の第k番目のストライプ領域32の拡張領域37に相当する領域部分の描画される画素と、が重ならないようにマルチビームの照射位置が制御される。言い換えれば、第k番目のストライプ領域32の描画中に第k番目の拡張領域で描画される画素と、k番目の拡張領域と重なり合う第k+n番目(nは2以上の整数)の拡張領域で描画される画素と、が重ならないようにマルチビーム20の照射位置が制御される。多重描画のずらし量Lがストライプ領域32の幅の1/2の場合には、第k番目のストライプ領域32の拡張領域37で描画されずに残る画素は、2つ隣の第k+2番目のストライプ領域32を描画する際に描画されることになる。なお、第k番目のストライプ領域32の拡張領域37で描画されずに残る画素を描画するストライプ領域32は、多重描画のずらし量Lに応じて変化する。例えば、多重描画のずらし量Lがストライプ領域32の幅の1/4に設定される場合には、第k番目のストライプ領域32の拡張領域37で描画されずに残る画素は、4つ隣の第k+4番目のストライプ領域32を描画する際に描画されることになる。
【0145】
第k番目のストライプ領域32の矩形領域35の上半分の各画素は、y方向に照射領域34をずらした第k+1番目のストライプ領域32の矩形領域35の下半分の描画によって2回の多重描画になっている。さらに、第k番目のストライプ領域32の矩形領域35の上半分の各画素は、Y偏向によって、周囲の画素(例えば、x方向に隣接する画素)は、y方向に照射領域34をずらした状態で描画される。同様に、第k+1番目のストライプ領域32の矩形領域35の下半分の各画素は、Y偏向によって、周囲の画素(例えば、x方向に隣接する画素)は、y方向に照射領域34をずらした状態で描画される。
なお、第k+1番目のストライプ領域32の矩形領域35の下半分の画素の一部はY偏向によって描画されない画素が存在するが、かかる画素は、図示しない第k-1番目のストライプ領域32の拡張領域37で描画される。よって、第k番目のストライプ領域32の矩形領域35の上半分の各画素は、y方向に2回の位置をずらした照射領域34で描画される2回の多重描画と、y方向に2回の位置をずらした照射領域34で描画される隣接画素との組み合わせとなる。よって、4回の平均化と同等の効果を発揮する。
【0146】
同様に、第k+1番目のストライプ領域32の矩形領域35の上半分の各画素は、y方向に照射領域34をずらした第k+2番目のストライプ領域32の矩形領域35の下半分の描画によって2回の多重描画になっている。さらに、第k+1番目のストライプ領域32の矩形領域35の上半分の各画素は、Y偏向によって、周囲の画素(例えば、x方向に隣接する画素)は、y方向に照射領域34をずらした状態で描画される。同様に、第k+2番目のストライプ領域32の矩形領域35の下半分の各画素は、Y偏向によって、周囲の画素(例えば、x方向に隣接する画素)は、y方向に照射領域34をずらした状態で描画される。よって、第k+1番目のストライプ領域32の矩形領域35の上半分の各画素は、y方向に2回の位置をずらした照射領域34で描画される2回の多重描画と、y方向に2回の位置をずらした照射領域34で描画される隣接画素との組み合わせとなる。よって、4回の平均化と同等の効果を発揮する。
【0147】
図19は、実施の形態1におけるy方向の位置ずれ量の平均化の一例を説明するための図である。
図19の例では、例えばリニア成分YYのずれが生じたビームアレイ形状のマルチビーム20で多重描画した場合を示している。設計形状よりもy方向に広がる位置ずれが生じたビームアレイ形状の場合、上述したようにビームアレイ形状内の各位置のうち、y方向の中央部では位置ずれが生じない。y方向の端部では正の位置ずれが生じる。-y方向の端部では符号を反転させた同じ量の負の位置ずれが生じる。各ストライプ領域32の描画中に拡張幅DでY偏向を行いながらストライプ領域32の幅の1/2のサイズのずらし量Lで多重描画する場合、
図19(a)に示す第1ストライプレイヤの描画(多重描画の1パス目)による位置ずれ量と、Y偏向でy方向に照射領域34の位置がずれた状態での第1ストライプレイヤの描画による位置ずれ量と、
図19(b)に示す第2ストライプレイヤの描画(多重描画の2パス目)による位置ずれ量と、Y偏向でy方向に照射領域34の位置がずれた状態での第2ストライプレイヤの描画による位置ずれ量と、が合成されることによって平均化される。多重描画のずらし量LとY偏向の拡張幅Dとを異なるサイズにすることで、
図19(c)に示すように4回の平均化ができる。よって、位置ずれ量の絶対値を
図7(c)の場合よりも小さくできる。さらに、拡張幅Dをずらし量Lの1/2に設定することで、4回の平均化による位置ずれ量の絶対値を1/4に低減できる。
【0148】
図20は、実施の形態1における偏向器の構成を説明するための図である。
図1の例では、
図20(a)に示すように、主偏向器と副偏向器との2段偏向により、マルチビーム20を偏向する。主偏向器208の各電極には、それぞれ主偏向アンプ(DACアンプ134)から電位が印加される。同様に、副偏向器の各電極には、それぞれ副偏向アンプ(DACアンプ132)から電位が印加される。上述したように、主偏向器208では、x方向のトラッキング制御(主偏向X)とy方向のY偏向制御(主偏向Y)を行う。副偏向器209で、サブ照射領域29内での各ビームの照射位置(2×2画素の左下、右上、右下、及び左上の各照射位置)のx方向の偏向制御(副偏向X)とサブ照射領域29内での各ビームの照射位置(2×2画素の左下、右上、右下、及び左上の各照射位置)のy方向の偏向制御(副偏向Y)とを行う。
【0149】
偏向器の構成はこれに限るものではない。例えば、
図20(b)に示すように1段の偏向器ですべての偏向制御を行っても良い。すなわち、かかる1段の偏向器で、x方向のトラッキング制御(主偏向X)とy方向のY偏向制御(主偏向Y)と、サブ照射領域29内での各ビームの照射位置(2×2画素の左下、右上、右下、及び左上の各照射位置)のx方向の偏向制御(副偏向X)とサブ照射領域29内での各ビームの照射位置(2×2画素の左下、右上、右下、及び左上の各照射位置)のy方向の偏向制御(副偏向Y)とを行う。
図20(b)に示す偏向器の各電極には、それぞれ偏向アンプから電位が印加される。
【0150】
或いは、例えば、
図20(c)に示すように3段の偏向器を用いて構成しても良い。例えば、マルチビーム20の軌道上の上流側から副偏向器、トラッキング偏向器、及び主偏向器の順で配置される。主偏向器の各電極には、それぞれ主偏向アンプから電位が印加される。トラッキング偏向器の各電極には、それぞれトラッキング偏向アンプから電位が印加される。副偏向器の各電極には、それぞれ副偏向アンプから電位が印加される。主偏向器では、y方向のY偏向制御(主偏向Y)を行う。トラッキング偏向器では、x方向のトラッキング制御(主偏向X)を行う。副偏向器209では、サブ照射領域29内での各ビームの照射位置(2×2画素の左下、右上、右下、及び左上の各照射位置)のx方向の偏向制御(副偏向X)とサブ照射領域29内での各ビームの照射位置(2×2画素の左下、右上、右下、及び左上の各照射位置)のy方向の偏向制御(副偏向Y)とを行う。
【0151】
以上のように、実施の形態1によれば、マルチビーム描画におけるビームアレイ形状のリニア成分のずれに伴う位置ずれを多重描画のパス数による平均化効果による低減よりもさらに低減できる。
【0152】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0153】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0154】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチ荷電粒子ビーム描画装置およびマルチ荷電粒子ビーム描画方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0155】
10 ビーム
20 マルチビーム
22 穴
23 電極
24 制御電極
25 通過孔
26 対向電極
36 画素
29 サブ照射領域
32 ストライプ領域
34 照射領域
41 制御回路
50 ずらし量設定部
52 拡張幅設定部
70 描画データ処理部
72 描画制御部
74 転送処理部
100 描画装置
101 試料
102 電子鏡筒
103 描画室
105 XYステージ
110 制御計算機
112 メモリ
130 偏向制御回路
132,134 DACアンプユニット
136 レンズ制御回路
138 ステージ制御機構
139 ステージ位置測定器
140,142 記憶装置
150 描画機構
160 制御系回路
200 電子ビーム
201 電子銃
202 照明レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
204 ブランキングアパーチャアレイ機構
205 縮小レンズ
206 制限アパーチャ基板
207 対物レンズ
208 主偏向器
209 副偏向器
210 ミラー
330 メンブレン領域