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特開2024-43010炊飯用油脂組成物、飯類の甘味強化方法、及び飯類の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043010
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】炊飯用油脂組成物、飯類の甘味強化方法、及び飯類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20240322BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20240322BHJP
【FI】
A23D9/00 506
A23L7/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022147979
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】田中 妙子
(72)【発明者】
【氏名】矢吹 美由希
(72)【発明者】
【氏名】倉坪 美奈
【テーマコード(参考)】
4B023
4B026
【Fターム(参考)】
4B023LC02
4B023LE11
4B023LK05
4B023LK11
4B023LP11
4B026DC01
4B026DG04
4B026DH10
4B026DK10
4B026DL02
4B026DX01
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、飯類の甘味を強化する炊飯用油脂組成物、さらに、飯類の甘味が強化された飯類、及び飯類の甘味が強化される飯類の製造方法を提供することである。
【解決手段】β-カロテン高含有油と、β-カロテン高含有油以外の油脂を、炊飯用油脂組成物中に合計90質量%以上含み、前記β-カロテン高含有油を、炊飯用油脂組成物中に1~35質量%含有し、前記β-カロテン高含有油が、β-カロテンを0.1~2質量ppm含む菜種油であり、β-カロテンを0.01~1.7質量ppm含有する、炊飯用油脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-カロテン高含有油と、β-カロテン高含有油以外の油脂を、炊飯用油脂組成物中に合計90質量%以上含み、
前記β-カロテン高含有油を、炊飯用油脂組成物中に1~35質量%含有し、
前記β-カロテン高含有油が、β-カロテンを0.1~2質量ppm含む菜種油であり、
β-カロテンを0.01~1.7質量ppm含有する、炊飯用油脂組成物。
【請求項2】
炊飯用油脂組成物中のβ-カロテンが、β-カロテン高含有油由来以外のβ-カロテンを0.001~1.0ppm含むものである、請求項1に記載の炊飯用油脂組成物。
【請求項3】
炊飯用油脂組成物中に乳化剤を0.01~10質量%含む、請求項1又は2に記載の炊飯用油脂組成物。
【請求項4】
生穀類100質量部に対して、請求項1又は2のいずれかに記載の炊飯用油脂組成物を0.1~5質量部添加して炊飯する、飯類の甘み強化方法。
【請求項5】
生穀類100質量部に対して、β-カロテン高含有油を0.001~1.75質量部添加するβ-カロテン添加工程を有し、
前記β-カロテン高含有油が、β-カロテンを0.1~2質量ppm含む菜種油であり、
生穀類100質量部に対するβ-カロテンの添加量が、0.00000001~0.000085質量部である、
飯類の製造方法
【請求項6】
β-カロテン添加工程において、β-カロテン高含有油由来以外のβ-カロテンを添加する、請求項5に記載の飯類の製造方法
【請求項7】
生穀類100質量部に対して、請求項1又は2のいずれかに記載の炊飯用油脂組成物を0.1~5質量部添加して炊飯するβ-カロテン添加工程を有する、飯類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飯類の甘味を強化する炊飯用油脂組成物、さらに、飯類の甘味が強化された飯類、及び飯類の甘味が強化される飯類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ご飯のおいしさは、甘味や粘り、ご飯の硬さ等によるものであり、甘味は高い方がよいとされることが多い。β-カロテン等のカロテノイドは脂溶性の抗酸化成分として用いられている。β-カロテンなどのカロテノイドは、甘い風味を有することが知れられており、食品へ配合することで、甘みを増強することが期待される。また、特許文献1には、食用油脂にカロテノイドを添加し、カロテノイドを分解する工程を施すことで、食品の甘味増強用組成物が開示されている。
【0003】
しかしながら、β-カロテンによる甘み強化効果・甘み付与効果が十分でなく、より強い甘み強化効果・甘み付与効果を有するものが求められている。また、カロテノイドは黄色、オレンジ色、赤色等の色素でもあり、白米等の食品にカロテノイドを多量に配合すると食品の色味が変化し、好ましくない場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再公表WO2020-090608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、飯類の甘味を強化する炊飯用油脂組成物、さらに、飯類の甘味を強化された飯類、及び飯類の甘味が強化される飯類の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、β-カロテン高含有油を特定量含有させ、飯類を炊飯する際のβ-カロテン量をコントロールすることにより、飯類の甘みが強化されることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の[1]~[7]を提供する。
[1] β-カロテン高含有油と、β-カロテン高含有油以外の油脂を、炊飯用油脂組成物中に合計90質量%以上含み、
前記β-カロテン高含有油を、炊飯用油脂組成物中に1~35質量%含有し、
前記β-カロテン高含有油が、β-カロテンを0.1~2質量ppm含む菜種油であり、
β-カロテンを0.01~1.7質量ppm含有する、炊飯用油脂組成物。
[2] 炊飯用油脂組成物中のβ-カロテンが、β-カロテン高含有油由来以外のβ-カロテンを0.001~1.0ppm含むものである、[1] の炊飯用油脂組成物。
[3] 炊飯用油脂組成物中に乳化剤を0.01~10質量%含む、[1]又は[2]の炊飯用油脂組成物。
[4] 生穀類100質量部に対して、[1]又は[2]のいずれかの炊飯用油脂組成物を0.1~5質量部添加して炊飯する、飯類の甘み強化方法。
[5] 生穀類100質量部に対して、β-カロテン高含有油を0.001~1.75質量部添加するβ-カロテン添加工程を有し、
前記β-カロテン高含有油が、β-カロテンを0.1~2質量ppm含む菜種油であり、
生穀類100質量部に対するβ-カロテンの添加量が、0.00000001~0.000085質量部である、
飯類の製造方法
[6] β-カロテン添加工程において、β-カロテン高含有油由来以外のβ-カロテンを添加する、[6]の飯類の製造方法
[7] 生穀類100質量部に対して、[1]又は[2]の炊飯用油脂組成物を0.1~5質量部添加して炊飯するβ-カロテン添加工程を有する、飯類の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、甘みが強化された飯類を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に例示説明する。なお、本発明の実施の形態において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。なお、以下で例示する好ましい態様やより好ましい態様等は、「好ましい」や「より好ましい」等の表現にかかわらず適宜相互に組み合わせて使用することができる。また、数値範囲の記載は例示であって、「好ましい」や「より好ましい」等の表現にかかわらず各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。さらに、「含有する」又は「含む」等の用語は、適宜「本質的になる」や「のみからなる」と読み替えてもよい。
【0010】
[炊飯用油脂組成物]
<β-カロテン>
本発明の炊飯用油脂組成物は、後述するβ-カロテン高含有油を含み、且つ、β-カロテンを0.01~1.7質量ppm含有する。単にβ-カロテンを含まない菜種油に、βカロテンを添加しても、甘み増強効果は限定的であり、本発明において、当該菜種油を用いることで、β-カロテンと当該菜種油中の未確定の他の成分との相乗効果により、甘みがより増強されていることが考えられる。炊飯用油脂組成物中のβ-カロテン量が、0.01質量ppm以上であれば、十分な甘みを有することができ、また、炊飯用油脂組成物中のβ-カロテン量が、1.7質量ppm以下であれば、炊飯用油脂組成物の着色も抑えられため、飯類の過度な着色、又は着色を抑えることができるので好ましい。炊飯用油脂組成物中のβ-カロテン量は0.01~1.0質量ppmであることが好ましく、0.02~0.5質量ppm含有することがより好ましく、0.05~0.2質量ppmであることがさらに好ましく、0.1~0.12質量ppmであることがことさらに好ましい。
【0011】
なお、本発明において、β-カロテン量は、高速液体クロマトグラフィー法で測定することができる。例えば、「食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号) 別添 栄養成分等の分析方法等」の「イ カロテン (2)高速液体クロマトグラフィー法」に準拠した方法を用いることができる。また、例えば、一般財団法人日本食品分析センター等で分析することができる。
【0012】
本発明の炊飯用油脂組成物は、β-カロテン高含有油以外に、β-カロテンを含むことが好ましい。炊飯用油脂組成物中のβ-カロテンの含有量が0.01~1.7質量ppmとする範囲で、β-カロテン高含有油以外に、β-カロテンを配合したものである場合、より高い甘み強化効果を得ることができる。β-カロテン高含有油由来以外のβ-カロテンを0.001~1.0ppm含むものであることが好ましく、0.05~0.8ppm含むもの0.08~0.2ppm含むものであることがより好ましく、0.08~0.5ppm含むものであることがさらに好ましい。
【0013】
<油脂>
本発明の炊飯用油脂組成物は、β-カロテン高含有油と、β-カロテン高含有油以外の油脂を、炊飯用油脂組成物中に合計90質量%以上を含む。
【0014】
(β-カロテン高含有油)
β-カロテン高含有油は、β-カロテンを0.1~2質量ppm含む菜種油である。当該菜種油中のβ-カロテンは、菜種原料由来であり、未添加のものである。通常の精製、特に通常の脱臭工程を経たものは、β-カロテンは未検出である。したがって、β-カロテンは、精製菜種油の精製度合いに影響されることがわかる。β-カロテン高含有油中のβ-カロテン量が0.1質量ppm以上であれば、β-カロテン高含有油中のβ-カロテンと相乗作用を有するβ-カロテン高含有油中の成分が適度に保たれるため、飯類の甘みを十分強化することができる。また、β-カロテン高含有油中のβ-カロテン量が2質量ppm以下であれば、炊飯用油脂組成物の着色も抑えられため、飯類の着色も抑えることができるので好ましい。
β-カロテン高含有油は、β-カロテンを0.1~1.5質量ppm含むことが好ましく、0.2~1質量ppm含むことがより好ましく、0.3~0.8質量ppm含むことがさらに好ましい。
【0015】
本発明で用いるβ-カロテン高含有油は、β-カロテン量を充足していれば、製造条件は特に限定するものではない。製造条件は、脱臭工程を経たものを用いることができ、また、任意の脱酸工程、脱色工程を経たものを用いることができる。なお、同じ製造条件で製造しても、精製油のβ-カロテン量が異なるため、脱臭条件を調整してβ-カロテン量を調整することが好ましい。また、β-カロテン量を充足している菜種油を選択して用いてもよい。なお、脱色工程において、白土量は0.05~0.5質量%が好ましく、0.05~0.3質量%がより好ましい。また、脱臭工程において、脱臭温度は、100~200℃が好ましく、100~150℃であることがより好ましい。また、脱臭工程時の圧力は400~4000Paが好ましく、550~2000Paがより好ましい。脱臭工程の水蒸気量は、1~3%が好ましい。
【0016】
本発明の炊飯用油脂組成物は、β-カロテン高含有油を、炊飯用油脂組成物中に1~35質量%含有する。この範囲であれば、炊飯用油脂組成物中のβ-カロテン量及びβ-カロテン高含有油中のβ-カロテンと相乗作用を有する成分が適度に保たれるため、飯類の甘みを十分強化することができる。また、炊飯用油脂組成物の着色も抑えられため、飯類の過度な着色又は着色を抑えることができる。β-カロテン高含有油は、炊飯用油脂組成物中に3~30質量%含有されることが好ましく、3~25質量%含有されることがより好ましく、5~20質量%含有されることがさらに好ましく、8~15質量%含有されることがことさらに好ましい。
【0017】
(β-カロテン高含有油以外の油脂)
本発明の炊飯用油脂組成物は、β-カロテン高含有油以外の油脂を含む、炊飯後の飯類のほぐれ性、艶、食感、風味等を改善するために、炊飯において一定の油脂量が必要であり、β-カロテン高含有油以外に油脂を補う必要がある。これらの油脂としては、前述のβ-カロテン高含有油以外の通常の動植物油及び/又は加工油脂を用いることができる。例えば、大豆油、菜種油、綿実油、ヒマワリ油、サフラワー油、コーン油、米油、ゴマ油、オリーブ油、えごま油、亜麻仁油、落花生油、ぶどう種子油、ヤシ油、パーム核油、パーム油等の植物油脂、乳脂、ラード等の動物油脂を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。また、パームオレイン、パームスーパーオレイン、パームミッドフラクション、パームステアリン等の植物油の分別油や、油脂あるいは油脂と脂肪酸低級アルコールエステルを原料にしたエステル交換油等を用いることができる。なお、エステル交換油は、エステル交換後に分別を行ったものも用いることができる。10℃で液状の油脂が好ましく、少なくとも脱臭工程を経た精製油脂であることが好ましい。また、中鎖脂肪酸トリグリセリドのような脂肪酸とグリセリンから合成された油脂も用いることができる。
【0018】
β-カロテン高含有油以外の油脂は、精製油であることが好ましく、脱色、脱臭工程を経たものであることが好ましい。また、油脂中のβ-カロテン量は、0.05質量ppm以下が好ましく、0.01質量ppm以下がより好ましく、検出されないことが最も好ましい。
【0019】
本発明の炊飯用油脂組成物は、β-カロテン高含有油と、β-カロテン高含有油以外の油脂を、炊飯用油脂組成物中に合計95質量%以上を含み、合計95質量%以上を含むことが好ましく、合計98質量%以上を含むことがより好ましい。また、本発明の炊飯用油脂組成物は、β-カロテン高含有油以外の油脂を、炊飯用油脂組成物中に65~99質量%含有することが好ましく、80~98質量%含有することが好ましく、80~97質量%含有することが好ましく、84~91質量%含有することが好ましい。
【0020】
<乳化剤>
本発明の炊飯用油脂組成物は、通常の炊飯用油脂組成物に用いられる乳化剤を含有することができる。乳化剤の添加目的は、炊飯時の油脂の分散性向上、飯類の艶の向上、飯類の付着抑制又は粘りの制御、飯類のかたさの調整、飯類の風味向上などが挙げられる。用いる乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリソルベート、レシチンなどが挙げられる。炊飯用油脂組成物中に乳化剤を0.01~10質量%含有することが好ましく、0.1~5質量%含有することがさらに好ましく、0.2~3質量%含有することがさらに好ましく、0.5~2質量%含有することがことさらに好ましい。
【0021】
<その他成分>
本発明の炊飯用油脂組成物は、上記成分以外にも、炊飯用油脂組成物に一般的に配合される原材料を使用することができる。具体的には、例えば、pH調整剤、調味剤、着色料、香料、酸化防止剤、糖類、糖アルコール類、安定剤等を使用することができる。これらの成分の量は、本発明の効果を損なわない限り任意の量とすることができるが、例えば、炊飯用油脂組成物中に5質量%以下含有させることができ、好ましくは0~3質量%、より好ましくは0~1質量%含有させることができる。
【0022】
[飯類の甘み強化方法]
本発明の飯類の甘み強化方法は、生穀類100質量部に対して、炊飯用油脂組成物を0.1~5質量部添加して炊飯する。炊飯用油脂組成物は、前述の[炊飯用油脂組成物]に記載されたものを用いることができる。
【0023】
<飯類及び生穀類>
本発明において、飯類は、生穀類を炊飯したものである。生穀類として、米、粟、ひえ、キヌア、麦を用いることができ、通常、米、粟、ひえ、麦は脱穀されている。本発明において、生穀類は、米を含むモノであることが好ましく、米量が50%以上であることがより好ましく、全てが米であることがさらに好ましい。米の種類や産地なども特に制限されない。例えば、ジャポニカ米、インディカ米、ジャバニカ米だけでなく、これらの交配品種等を用いることができる。また、生米の精米度合も特に制限されない。米は、白米だけでなく、玄米、五分づき米、発芽玄米、無洗米なども本発明で用いることができる。
【0024】
<添加及び炊飯>
本発明の飯類の甘み強化方法は、炊飯前の生穀類に前述の炊飯用油脂組成物を添加するが、炊飯は、生穀類に水と炊飯用油脂組成物を添加して行う。生穀類と水と炊飯用油脂組成物の添加順序は、特に限定されない。炊飯用油脂組成物の添加後に撹拌してもかまわないが、生穀物が破損することがあるので、強く撹拌しないことが好ましい。
本発明の飯類の甘み強化方法は、生穀類100質量部に対して、前述の炊飯用油脂組成物を0.1~5質量部添加する。この範囲であれば、本願の効果を十分発揮することができる。炊飯前の生穀類100質量部に対する前述の炊飯用油脂組成物の添加量は、0.3~2質量部がより好ましく、0.5~1.5質量部がさらに好ましい。
炊飯時の、水量、加熱温度、加熱時間等は通常の炊飯と同様に行う。
【0025】
[飯類の製造方法1]
本発明において、飯類は、一定量のβ-カロテン高含有油を含み、且つ、一定量のβ-カロテンを含むことで、飯類の甘みが強化されるものである。
したがって、本発明の飯類の製造方法は、生穀類100質量部に対して、β-カロテン高含有油を0.001~1.75質量部添加するβ-カロテン添加工程を有し、生穀類100質量部に対するβ-カロテンの添加量は、0.00000001~0.000085質量部である。この範囲であれば、飯類の甘みが強化され、また飯類の過度な着色又は着色も抑えられる。なお、β-カロテン高含有油は、β-カロテンを0.1~2質量ppm含む菜種油であり、前述の(β-カロテン高含有油)に記載のものを用いることができる。
【0026】
生穀類100質量部に対するβ-カロテン高含有油の添加量は、0.003~1.5質量部であることが好ましく、0.003~1.25質量部であることがより好ましく、0.005~1.0質量部であることがさらに好ましく、0.008~0.75質量部であることがことさらに好ましい。
【0027】
生穀類100質量部に対するβ-カロテンの添加量は、0.00000003~0.000073質量部であることが好ましく、0.00000003~0.000085質量部であることが好ましく、0.00000005~0.000060質量部であることが好ましく、0.00000008~0.000035質量部であることが好ましい。
【0028】
[飯類の製造方法2]
生穀類100質量部に対して、前述の炊飯用油脂組成物を0.1~5質量部添加して炊飯した場合に、飯類の甘みが強化される。炊飯前の生穀類100質量部に対する前述の炊飯用油脂組成物の添加量は、0.3~2質量部がより好ましく、0.5~1.5質量部がさらに好ましい。炊飯用油脂組成物は、前述の[炊飯用油脂組成物]に記載されたものを用いることができる。また、生穀類、炊飯時の条件等は、前述の[飯類の甘み強化方法]に記載されたとおりである。
【実施例0029】
次に、実施例、比較例及び参考例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。また。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
【0030】
[炊飯用油脂組成物(組成物1~13)]
表1~3の配合で、炊飯用油脂組成物を調整した。なお、使用した原料は下記のとおりである。
菜種サラダ油(日清オイリオグループ株式会社製:β-カロテン含量 0μg/100g:0.00質量ppm)、
β-カロテン高含有油(軽度精製菜種油、日清オイリオグループ株式会社製:β-カロテン含量 52μg/100g:0.52質量ppm)
β-カロテン 30%(β-カロテンを30質量%含有する添加物、「β-Carotene 30% FS」DSM株式会社製:β-カロテン含量 30g/100g:300,000質量ppm)
A-173E(ペンタグリセリントリオレエート、「サンソフトA-173E」太陽化学株式会社製:HLB7)
DO-100V(ジグリセリンモノオレエート、「ポエムDO-100V」理研ビタミン株式会社製:HLB7.3)
【0031】
<β-カロテン量>
菜種サラダ油、β-カロテン高含有油を「食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号) 別添 栄養成分等の分析方法等」の「イ カロテン (2)高速液体クロマトグラフィー法」に準拠した方法で測定し、β-カロテン量を得た。また、組成物中の総β-カロテン量は、菜種サラダ油、β-カロテン高含有油、β-カロテン30%の配合量から算出した。各含有量を表1~3に示した。
【0032】
[炊飯試験]
精白米を、精白米の1.4倍質量の水中で1時間浸漬させた。精白米100質量部に対して、1質量部の組成物を浸漬後に加えて、撹拌した。その後、電気炊飯器(パナソニック株式会社製「SR-FC107」)で炊きあげ、米飯をバットに移して、軽くほぐし、真空冷却器で30℃まで冷却した。
【0033】
<米飯の甘味(官能評価)>
上記で製造した米飯を食し、甘みの程度を評価した。なお、比較例1を1点、比較例2を2点とし、下記の基準で評価し、専門パネラー5人の合議で評価を決定した。評価結果を表1~3に示した。
1点:比較例1の甘み
2点:比較例1よりやや甘く感じ、比較例2の甘みの程度
3点:比較例2よりやや甘く感じる
4点:比較例2より甘く感じる
5点:比較例2よりかなり甘く感じる
【0034】
<米飯の甘味(SCS):味覚センサー(SCS)>
上記で製造した米飯100gをイオン交換水120gに加えて、30秒間撹拌した。その後ろ過し、ろ液(評価サンプル)を得た。評価サンプル80mlを、電子味覚システムASTREE(バージョン:V14.5、アルファ・モス・ジャパン社製/データ取得間隔1秒、分析時間120秒)で分析を行った。なお、甘味として用いたセンサーは、SCSであり、センサーで得られた数値が高いほど、甘味が強いことを示す。分析結果を表1~3に示した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】

【0038】
表1~3から、実施例1~13は、比較例1,2に比べて米飯の甘みが強化されていることが確認できる。
【0039】
β-カロテンを組成物(炊飯用油脂組成物)に含む比較例2は、含まない比較例1よりも米飯の甘みが強いことが確認できる。しかし、β-カロテン高含有油を用いた実施例1~13は、比較例1以上の甘み増強効果を有する。例えば、実施例1~3は、比較例2よりβ-カロテン量が少ないが、米飯の甘みは比較例2より強い。また、β-カロテン高含有油が、実施例3より少ない実施例2に、β-カロテンが実施例3と同程度になるようにβ-カロテンを添加した実施例5は、甘みも実施例3と同程度を実現できることがわかる。
【0040】
[組成物と米飯の色]
組成物5,6,10,11と実施例3,4,8,9の米飯の色を比較した。
<組成物の色>
「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法 2.2.1.1-2013 色(ロビボンド法)」に準拠して測定を行った。なお、測定器具は、ロビボンド自動比色計(PFX995;ティントメーター社)を用いた。また、使用セルは1インチセルを用い、スケールはLovibond RYBNを用いた。Y値(黄色)、R値(赤色)の結果を表4に示した。
【0041】
<米飯の外観>
蒸気で製造した米飯の外観を、以下の基準で評価を行った。なお、パネラー5人の合議で評価を決定した。評価結果を表4に示した。
◎:米飯が白色でかつ透明感がある
〇:米飯が白色であるが、やや透明感がない
△:米飯がやや黄みがかっている
×:米飯の着色が著しい
【0042】
【表4】
【0043】
実施例3,4の結果から明らかであるように、β-カロテン高含有油の量が多くなるに従い、組成物の着色が強くなり、米飯も着色する傾向にある。また、実施例8,9の結果からβ-カロテンの量が多くなるに従い、組成物の着色が強くなり、米飯も着色する傾向にある。実施例4は、米飯がやや黄色みを有しているが、著しい違和感があるわけではない。また、この程度の着色であれば、赤飯、炒飯等の着色した飯類であれば、まったく問題はない。