(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043072
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】検査装置、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240322BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
G06T7/00 610C
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148058
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】浅香 沙織
(72)【発明者】
【氏名】井上 広
(72)【発明者】
【氏名】佐川 研太
(72)【発明者】
【氏名】坂田 幸辰
(72)【発明者】
【氏名】平井 隆介
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA56
2G051AB02
2G051AC21
2G051EA12
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096FA32
5L096FA39
5L096FA60
5L096FA62
5L096FA69
5L096GA08
5L096GA55
(57)【要約】
【課題】誤検出を低減すること。
【解決手段】一実施形態に係る検査装置は、設計画像取得部と、撮影画像取得部と、画像処理部とを備える。設計画像取得部は、設計ソフトウェアによって作成された設計データに基づく設計画像を取得する。撮影画像取得部は、設計データに基づいて作成された検査対象を撮影した撮影画像を取得する。画像処理部は、設計画像から参照画像を作成する際に用いられる画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれに起因する位置ずれを補正した補正済み参照画像または前記位置ずれを含むように処理した処理済み撮影画像を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設計ソフトウェアによって作成された設計データに基づく設計画像を取得する設計画像取得部と、
前記設計データに基づいて作成された検査対象を撮影した撮影画像を取得する撮影画像取得部と、
前記設計画像から参照画像を作成する際に用いられる画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれに起因する位置ずれを補正した補正済み参照画像または前記位置ずれを含むように処理した処理済み撮影画像を生成する画像処理部と
を具備する、検査装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、
前記設計画像と前記撮影画像とに基づいて前記画像変換フィルタを算出する画像変換フィルタ算出部と、
前記画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれ量に基づいて補正値を算出し、前記補正値を用いて前記画像変換フィルタを補正することによって補正済み画像変換フィルタを生成する補正部と、
前記設計画像と前記補正済み画像変換フィルタとに基づいて前記補正済み参照画像を生成する参照画像生成部と
を具備する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記撮影画像と前記補正済み参照画像とに基づいて誤差情報を生成する誤差情報生成部
を更に具備する、請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記誤差情報に基づく検査結果を表示させる表示制御部
を更に具備する、請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、
前記設計画像と前記撮影画像とに基づいて前記画像変換フィルタを算出する画像変換フィルタ算出部と、
前記設計画像と前記画像変換フィルタとに基づいて前記参照画像を生成する参照画像生成部と、
前記画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれ量に基づいて補正値を算出し、前記補正値を用いて前記参照画像を補正することによって前記補正済み参照画像を生成する補正部と
を具備する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項6】
前記撮影画像と前記補正済み参照画像とに基づいて誤差情報を生成する誤差情報生成部
を更に具備する、請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記誤差情報生成部は、前記参照画像に更に基づいて前記誤差情報を生成し、
前記誤差情報は、前記撮影画像と前記参照画像とに基づく第1の誤差情報および前記撮影画像と前記補正済み参照画像とに基づく第2の誤差情報を含む、
請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記誤差情報に基づく検査結果を表示させる表示制御部
を更に具備する、請求項7に記載の検査装置。
【請求項9】
前記画像処理部は、
前記設計画像と前記撮影画像とに基づいて前記画像変換フィルタを算出する画像変換フィルタ算出部と、
前記設計画像と前記画像変換フィルタとに基づいて前記参照画像を生成する参照画像生成部と、
前記画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれ量に基づいて補正値を算出し、前記補正値を用いて前記撮影画像を処理することによって前記処理済み撮影画像を生成する補正部と
を具備する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項10】
前記参照画像と前記処理済み撮影画像とに基づいて誤差情報を生成する誤差情報生成部
を更に具備する、請求項9に記載の検査装置。
【請求項11】
前記誤差情報生成部は、前記撮影画像に更に基づいて前記誤差情報を生成し、
前記誤差情報は、前記参照画像と前記撮影画像とに基づく第1の誤差情報および前記参照画像と前記処理済み撮影画像とに基づく第2の誤差情報を含む、
請求項10に記載の検査装置。
【請求項12】
前記誤差情報に基づく検査結果を表示させる表示制御部
を更に具備する、請求項11に記載の検査装置。
【請求項13】
前記画像変換フィルタは、複数のフィルタを有し、
前記補正部は、前記複数のフィルタそれぞれの中心位置と重心位置とから算出した複数のずれ量に基づいて前記補正値を算出する、
請求項2から請求項12までのいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項14】
前記補正部は、前記複数のずれ量の合計値、平均値、最大値、最小値、中央値、または最頻値を前記補正値として算出する、
請求項13に記載の検査装置。
【請求項15】
前記補正部は、前記複数のずれ量の絶対値の最大値または最小値を前記補正値として算出する、
請求項13に記載の検査装置。
【請求項16】
前記複数のフィルタは、それぞれ重みを有し、
前記補正部は、前記複数のずれ量のそれぞれに対応する前記複数のフィルタの重みに基づいて前記補正値を算出する、
請求項15に記載の検査装置。
【請求項17】
設計ソフトウェアによって作成された設計データに基づく設計画像を取得することと、
前記設計データに基づいて作成された検査対象を撮影した撮影画像を取得することと、
前記設計画像から参照画像を作成する際に用いられる画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれに起因する位置ずれを補正した補正済み参照画像または前記位置ずれを含むように処理した処理済み撮影画像を生成することと
を具備する、検査方法。
【請求項18】
コンピュータを
設計ソフトウェアによって作成された設計データに基づく設計画像を取得する手段と、
前記設計データに基づいて作成された検査対象を撮影した撮影画像を取得する手段と、
前記設計画像から参照画像を作成する際に用いられる画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれに起因する位置ずれを補正した補正済み参照画像または前記位置ずれを含むように処理した処理済み撮影画像を生成する手段
として機能させるための検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検査装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスなどの大規模集積回路の製造において、回路パターンが形成される原版となるマスク(フォトマスク)に欠陥がないことを検査することは、歩留まりの低下を抑制するために重要である。フォトマスクの検査方法の一つに、Die to Database検査がある。Die to Database検査は、作成したフォトマスクの回路パターンが撮影された撮影画像と、フォトマスクの設計データの回路パターンに基づいて撮影画像を仮想的に生成した参照画像とを比較し、差が大きい部分をフォトマスクに含まれる欠陥として検出する検査である。この検査は、単純に2枚の画像を比較するだけでよく、原理的に簡単なため、様々な検査装置に実装されている。
【0003】
Die to Database検査では、欠陥が混入していないフォトマスクの撮影画像を忠実に再現するように、フォトマスクの設計データから参照画像を生成することが重要である。なぜなら、2枚の画像の差分の原因が、フォトマスク作成時に欠陥が混入したためか、参照画像の再現性が低いためかの区別がつかなく、もし後者であれば欠陥の誤検出の可能性が高くなるためである。
【0004】
参照画像の生成方法としては、例えば、設計データから回路パターンの有無に応じた2値化画像を作成し、撮像系の光学特性によるエッジボケを撮影画像のエッジパターンから類推して求めた点広がり関数(Point Spread Funciton:PSF)を、2値化画像に畳み込んで参照画像を生成することが知られている。つまり、撮影画像に含まれる光学ボケが、線形演算である畳み込み演算で再現されている。しかし、撮影画像によっては、撮影環境やレンズの収差によって、エッジパターンにおいて上りエッジと下りエッジで非対称な歪みを生じることがあり、対称的なPSFでは非対称な歪みを表現することはできない。
【0005】
そこで、2次元のPSFにおいて、上下左右それぞれ別々のPSFを算出し合成した非対称なPSFを利用することによって、撮影画像におけるエッジパターンの非対称な歪みに対応する技術が知られている。
【0006】
しかし、この技術では、生成した非対称なPSFを表す変換フィルタの重心位置が中心位置からずれてしまう場合があり、このような変換フィルタから生成した参照画像は、画像全体で位置ずれが発生する。そのため、参照画像と撮影画像との誤差が大きくなり、検査における誤検出が増加してしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、誤検出を低減することができる検査装置、方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係る検査装置は、設計画像取得部と、撮影画像取得部と、画像処理部とを備える。設計画像取得部は、設計ソフトウェアによって作成された設計データに基づく設計画像を取得する。撮影画像取得部は、設計データに基づいて作成された検査対象を撮影した撮影画像を取得する。画像処理部は、設計画像から参照画像を作成する際に用いられる画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれに起因する位置ずれを補正した補正済み参照画像または前記位置ずれを含むように処理した処理済み撮影画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る検査装置の構成を例示するブロック図。
【
図2】第1の実施形態における各画像のラインプロファイルを比較する説明図。
【
図3】
図1の検査装置の動作を例示するフローチャート。
【
図4】
図3のフローチャートの参照画像生成処理を例示するフローチャート。
【
図5】第2の実施形態に係る検査装置の構成を例示するブロック図。
【
図6】
図5の検査装置の参照画像生成処理を例示するフローチャート。
【
図7】第3の実施形態に係る検査装置の構成を例示するブロック図。
【
図8】第3の実施形態における各画像のラインプロファイルを比較する説明図。
【
図9】
図7の検査装置の動作を例示するフローチャート。
【
図10】一実施形態に係るコンピュータのハードウェア構成を例示するブロック図。
【
図11】従来の検査装置における各画像のラインプロファイルを比較する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、検査装置の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る検査装置100の構成例を示す図である。検査装置100は、設計画像取得部110と、撮影画像取得部120と、画像処理部130と、誤差情報生成部140と、表示制御部150とを備える。検査装置100は、検査対象(例えば、フォトマスク)の欠陥を検査するための装置である。
【0013】
設計画像取得部110は、設計ソフトウェアによって作成された設計データに基づく設計画像を取得する。設計画像取得部110は、取得した設計画像を画像処理部130へと出力する。
【0014】
設計ソフトウェアは、例えば、CAD(Computer Aidded Design)のようなコンピュータ設計用のソフトウェアである。設計においては、要求される機能を実現する機能設計や、回路図を作成する論理設計、素子の配置や配線レイアウトする物理設計などの工程を経てマスク作成用の設計データが作成される。尚、設計データは、検査対象を作成する際に用いられる。
【0015】
設計画像は、設計データのパターンに基づいた画像である。具体的には、設計画像は、例えば、Die to Database検査と同様に、設計データのパターンの有無に応じた2値化画像である。尚、設計画像は、検査対象の構造を示すだけに限らず、例えば、検査対象の素材を示してもよいし、検査対象の色を付与してもよい。
【0016】
撮影画像取得部120は、設計データに基づいて作成された検査対象を撮影した撮影画像を取得する。撮影画像取得部120は、取得した撮影画像を画像処理部130および誤差情報生成部140へと出力する。
【0017】
検査対象は、例えば、設計データに基づいて電子ビーム露光装置などで作成されたフォトマスクである。撮影画像は、光学カメラなどの撮影装置などを用いて検査対象を撮影することによって取得される。撮影画像は、例えば、グレースケール画像またはカラー画像である。
【0018】
なお、撮影装置は、電子顕微鏡およびX線撮影カメラ、或いはそれらに原理的に類似するカメラでもよい。即ち、撮影装置は、光源から光(電磁波)を検査対象にスキャン照射し、透過または反射された光(電磁波)がセンサに到達したときの強度などに応じて画素値に変換することで、検査対象を画像化するものである。光源は、例えば、DUV(Deep Ultraviolet:遠紫外光)レーザである。センサは、CMOSセンサなどと同様な2次元アレイ状に撮像素子を並べられたものを用いる。これらの光源およびセンサは、検査対象のパターンの細かさに応じて、光の波長やセンサアレイの配置を適切に定められるものとする。
【0019】
画像処理部130は、設計画像取得部110から設計画像を受け取り、撮影画像取得部120から撮影画像を受け取る。画像処理部130は、設計画像から参照画像を作成する際に用いられる画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれに起因する位置ずれを補正した補正済み参照画像を生成する。画像処理部130は、生成した補正済み参照画像を誤差情報生成部140へと出力する。
【0020】
具体的には、画像処理部130は、画像変換フィルタ算出部131と、フィルタ補正部132と、参照画像生成部133とを備える。
【0021】
画像変換フィルタ算出部131は、設計画像と撮影画像とに基づいて画像変換フィルタを算出する。画像変換フィルタは、例えば、矩形フィルタである。画像変換フィルタ算出部131は、算出した画像変換フィルタをフィルタ補正部132へと出力する。
【0022】
具体的には、画像変換フィルタ算出部131は、例えば、設計画像と撮影画像とのそれぞれを、高速フーリエ変換を用いて周波数領域に変換し、光学伝達関数(Optical Transfer Function:OTF)を算出してから空間領域に戻すことによって画像変換フィルタを算出する。また例えば、画像変換フィルタ算出部131は、予め設定された変換モデルのパラメータを機械学習によって決定することによって画像変換フィルタを算出してもよい。機械学習として、DNN(Deep Neural Network)が用いられてもよい。
【0023】
画像変換フィルタは、非対称フィルタであり、対称フィルタを含むものとする。非対称フィルタは、例えば、カーネルの各係数が回転非対称となっているフィルタである。また、非対称フィルタは、カーネルの各係数に基づいて算出される重心位置がカーネルの中心位置とずれているフィルタを含む。また、画像変換フィルタは、一つ以上のフィルタを有する。即ち、画像変換フィルタは、複数のフィルタを有してもよい。
【0024】
フィルタ補正部132は、画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれ量に基づいて補正値を算出し、補正値を用いて画像変換フィルタを補正することによって補正済み画像変換フィルタを生成する。フィルタ補正部132は、生成した補正済み画像変換フィルタを参照画像生成部133へと出力する。
【0025】
具体的には、フィルタ補正部132は、画像変換フィルタにおける二次元位置をX={x,y}tとすると、重心位置G={xg,yg}tを、例えば以下の式(1)を用いて算出する。
【0026】
【0027】
式(1)において、f(X)は画像変換フィルタの係数を示し、tapxはPSFのx方向のタップ数を示し、tapyはPSFのy方向のタップ数を示す。
【0028】
フィルタ補正部132は、画像変換フィルタの中心位置C={xc,yc}tを、例えば以下の式(2)を用いて算出する。
【0029】
【0030】
以下では、画像変換フィルタが一つのフィルタを有する場合の補正値の算出と、複数のフィルタを有する場合の補正値の算出とについてそれぞれ説明する。
【0031】
画像変換フィルタが一つのフィルタを有する場合、フィルタ補正部132は、補正値D={xd,yd}tを、例えば以下の式(3)を用いて算出する。
【0032】
【0033】
式(3)によれば、補正値は、画像変換フィルタの重心位置と中心位置との差分(差分値)として算出される。この場合、画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれは、上記差分値に相当する。
【0034】
画像変換フィルタが複数(N>1、以降「N個」とも称する)のフィルタを有する場合、フィルタ補正部132は、複数のフィルタそれぞれの中心位置と重心位置とから算出した複数のずれ量(例えば、差分値)に基づいて一つの補正値を算出する。複数の差分値から算出される一つの補正値として、例えば、合計値、平均値、最大値、最小値、中央値、および最頻値の6つがある。以降では、算出される一つの補正値をDoutとする。
【0035】
補正値が合計値である場合、フィルタ補正部132は、例えば以下の式(4)を用いて補正値を算出する。
【0036】
【0037】
式(4)によれば、補正値は、N個の差分値の総和として算出される。
【0038】
補正値が平均値である場合、フィルタ補正部132は、例えば以下の式(5)を用いて補正値を算出する。
【0039】
【0040】
式(5)によれば、補正値は、N個の差分値の平均として算出される。
【0041】
補正値が最大値である場合、フィルタ補正部132は、例えば以下の式(6)を用いて補正値を算出する。
【0042】
【0043】
式(6)において、max()は、N個の差分値のうちの最大値を抽出する関数である。よって、式(6)では、補正値は、N個の差分値のうちの最大値として算出される。尚、各差分値の符号を考慮しない場合、フィルタ補正部132は、例えば、以下の式(7)を用いて、N個の差分値の絶対値のうちの最大値を補正値として算出してもよい。
【0044】
【0045】
補正値が最小値である場合、フィルタ補正部132は、例えば以下の式(8)を用いて補正値を算出する。
【0046】
【0047】
式(8)において、min()は、N個の差分値のうちの最小値を抽出する関数である。よって、式(8)では、補正値は、N個の差分値のうちの最小値として算出される。尚、各差分値の符号を考慮しない場合、フィルタ補正部132は、例えば、以下の式(9)を用いて、N個の差分値の絶対値のうちの最小値を補正値として算出してもよい。
【0048】
【0049】
補正値が中央値である場合、フィルタ補正部132は、例えば以下の式(10)を用いて補正値を算出する。
【0050】
【0051】
式(10)において、median()は、N個の差分値のうちの中央値を抽出する関数である。よって、式(10)では、補正値は、N個の差分値のうちの中央値として算出される。
【0052】
補正値が最頻値である場合、フィルタ補正部132は、例えば以下の式(11)を用いて補正値を算出する。
【0053】
【0054】
式(11)において、mode()は、N個の差分値のうちの最頻値を抽出する関数である。よって、式(11)では、補正値は、N個の差分値のうちの最頻値として算出される。
【0055】
さらに、これら複数のフィルタは、それぞれ重みを有していてもよい。フィルタに設定される重みは、予め設定されてもよいし、撮影画像に応じて機械学習などによって設定されてもよい。また、複数のフィルタにそれぞれ設定される重みは、それぞれの重みの合計が所定の数(例えば1)となるように設定されてもよい。
【0056】
フィルタに重みづけがされている場合、補正値は、各フィルタの重みWに基づいて算出される。以下では、一例として、フィルタに重みづけがされている合計値の算出(重み付け加算(加重平均))について説明する。フィルタ補正部132は、例えば以下の式(12)を用いて重みづけ加算を行う。尚、複数のフィルタにそれぞれ設定される重みの合計は1であるものとする。
【0057】
【0058】
式(12)によれば、補正値は、N個の差分値の加重平均として算出される。
【0059】
なお、複数の差分値から一つの補正値を算出する場合において、x方向およびy方向は、それぞれ同じ算出方法を用いてもよいし、それぞれ異なる算出方法を用いてもよい。
【0060】
フィルタ補正部132は、上記で算出した補正値を用いて画像変換フィルタの重心位置を中心位置に補正する。フィルタ補正部132は、新たな重心位置Gnew={xgn,ygn}tを、例えば以下の式(13)を用いて算出する。
【0061】
【0062】
フィルタ補正部132は、新たなフィルタ係数fnew(x)を、例えば以下の式(14)を用いて算出する。
【0063】
【0064】
以上より、フィルタ補正部132は、新たな重心位置と新たなフィルタ係数とを用いて補正済み画像変換フィルタを生成する。
【0065】
なお、新たなフィルタ係数の算出において、補正値が小数である場合、フィルタ補正部132は、補間フィルタを用いて新たなフィルタ係数を算出してもよい。補間フィルタとして、例えば、最近傍補間(Nearest neighbor)、線形補間(Bilinear)、および双三次補間(Bicubic)がある。また、画像変換フィルタの変換モデルがある場合、フィルタ補正部132は、変換モデルに基づいて補正値だけずらしたフィルタ係数を新たなフィルタ係数として算出してもよい。また、フィルタ補正部132は、補正値が予め設定した閾値以下となるように、重心位置の補正を繰り返し実行してもよい。
【0066】
参照画像生成部133は、設計画像と補正済み画像変換フィルタとに基づいて補正済み参照画像を生成する。具体的には、参照画像生成部133は、設計画像と補正済み画像変換フィルタとの畳み込み演算によって、補正済み参照画像を生成する。参照画像生成部133は、生成した補正済み参照画像を誤差情報生成部140へと出力する。尚、参照画像生成部133は、畳み込み演算に限らずフーリエ変換を用いて補正済み参照画像を生成してもよい。
【0067】
なお、補正済み参照画像は、設計画像に限らず、設計画像を微分することによって得られる微分画像、設計画像の一部を拡大した拡大画像、或いは設計画像の色成分のみを抽出した抽出画像などを用いて生成されてもよい。また、複数のフィルタを有する補正済み画像変換フィルタを用いる場合、補正済み参照画像の生成に用いられる被処理画像(例えば、設計画像、微分画像、拡大画像および抽出画像)と、複数のフィルタのうちの一つ以上のフィルタとが予め関連付けられていてもよい。即ち、参照画像生成部133は、被処理画像の特性に応じたフィルタを用いて参照画像を生成してもよい。
【0068】
また例えば、参照画像生成部133は、複数の被処理画像からそれぞれ生成された補正済み参照画像を合成することによって合成参照画像を生成してもよい。参照画像生成部133は、撮影画像との誤差が小さくなる被処理画像とフィルタとの組み合わせを機械学習などで選択し、選択した組み合わせに基づいて補正済み参照画像を生成してもよい。
【0069】
誤差情報生成部140は、撮影画像取得部120から撮影画像を受け取り、画像処理部130から補正済み参照画像を受け取る。誤差情報生成部140は、撮影画像と補正済み参照画像とに基づいて誤差情報を生成する。誤差情報生成部140は、生成した誤差情報を表示制御部150へと出力する。
【0070】
具体的には、誤差情報生成部140は、撮影画像と補正済み参照画像とを差分処理することによって誤差を算出する。差分処理は、例えば、単純な差分だけでなく、最大誤差、最小誤差、絶対値最大誤差、平均誤差、平均二乗誤差(Mean Squared Error:MSE)、および平均二乗誤差平方根(Root Mean Squared Error:RMSE)でもよい。
【0071】
また、誤差情報生成部140は、設計画像に対応付けられている回路情報に基づいて誤差を算出してもよい。回路情報は、例えば、設計画像における回路部分の領域とその他の部分の領域との情報を含む。その他の部分は、例えば、ベタパターンの領域および製品として利用される領域以外の製造上必要となる領域である。
【0072】
なお、誤差情報生成部140は、誤差情報を画像処理部130へと出力してもよい。例えば、機械学習を用いて被処理画像とフィルタとの組み合わせを選択する場合、画像処理部130は、誤差情報を用いてフィードバックすることによって、最適な組み合わせを選択するようにしてもよい。
【0073】
表示制御部150は、誤差情報生成部140から誤差情報を受け取る。表示制御部150は、誤差情報に基づく検査結果を表示させる。検査結果の表示先は、例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display)などの表示装置である。この表示装置は、検査装置100が備えていてもよい。尚、表示制御部150は、ネットワークを通じて検査結果を転送し、外部の端末(例えば、タブレット端末)に検査結果を表示させてもよい。また、表示制御部150は、検査結果を生成することから、検査結果生成部と呼ばれてもよい。
【0074】
検査結果には、例えば、(1)差分画像、(2)閾値以上の誤差表示、(3)ヒートマップ、(4)ヒストグラム、および(5)拡大表示の五つの表示形態がある。表示制御部150は、これら五つの表示形態のうちの少なくとも一つを表示させる。以下、それぞれの表示形態について説明する。
【0075】
(1)差分画像
表示制御部150は、撮影画像と補正済み参照画像との差分から得られる差分画像を表示させる。差分画像は、画素毎に算出された数値(画素値)の正負を反映させてもよいし、画素値の絶対値を反映させてもよい。このように、差分画像を表示させることによって、ユーザは、欠陥部分の確認を行うことができる。
【0076】
(2)閾値以上の誤差表示
表示制御部150は、誤差情報に基づいて予め設定した閾値以上の誤差が生じている領域(部分)を画像上で強調して表示させる。誤差を強調する画像は、例えば、参照画像、撮影画像、および差分画像である。誤差の強調表示は、例えば、誤差が生じている部分の色づけである。さらに、表示制御部150は、誤差が生じている部分の座標情報を表示してもよい。このように、誤差が生じている部分を表示させることにより、ユーザは、欠陥部分の特定を行うことができる。
【0077】
(3)ヒートマップ
表示制御部150は、誤差情報に基づくヒートマップを画像上に重ね合わせて表示させる。ヒートマップは、誤差の強度を色の濃淡などに応じて可視化した画像である。ヒートマップを重ね合わせる画像は、例えば、参照画像、撮影画像、および差分画像である。このように、ヒートマップを用いることにより、ユーザは、欠陥部分の確認を容易に行うことができる。
【0078】
(4)ヒストグラム
表示制御部150は、誤差情報に基づくヒストグラムを表示させる。ヒストグラムは、例えば、各誤差値に対する画素数を棒グラフなどで示したものである。また、撮影画像が複数ある場合、ヒストグラムとして、各誤差値に対する画像数を棒グラフなどで示してもよい。このように、ヒストグラムを表示させることによって、ユーザは、誤差平均、分散、または外れ値などを確認することができる。
【0079】
(5)拡大表示
表示制御部150は、誤差の大きい部分の画像を拡大して表示させる。拡大する画像は、例えば、参照画像、撮影画像、および差分画像である。このように、拡大画像を表示させることによって、ユーザは、誤差が生じている部分をより詳細に確認することができる。
【0080】
以上、第1の実施形態に係る検査装置100の構成について説明した。次に、従来の検査装置と、第1の実施形態に係る検査装置100との違いについて、
図11および
図2を用いて説明する。
【0081】
図11は、従来の検査装置における各画像のラインプロファイルを比較する説明図である。従来の検査装置は、本実施形態のような位置ずれを補正する機能がないものとする。
図11には、設計画像のラインプロファイル10、参照画像(位置ずれ有り)のラインプロファイル20、および撮影画像のラインプロファイル30がそれぞれ示されている。また、それぞれのラインプロファイルには重心位置が示されており、ラインプロファイル10には重心位置11、ラインプロファイル20には重心位置21、およびラインプロファイル30には重心位置31が示されている。
【0082】
図11のように、設計画像に対して、重心位置が中心位置からずれた画像変換フィルタを適応すると、位置ずれが有る参照画像が生成される。
図11では、設計画像における重心位置11および撮影画像における重心位置31は、それぞれ中心位置に揃っているが、参照画像における重心位置21は中心位置からずれており、参照画像と撮影画像との間に位置ずれ(gap)がある。検査装置は参照画像と撮影画像との差分によって誤差を検出するため、このような位置ずれは、誤検出を増加させる要因となる。
【0083】
図2は、第1の実施形態における各画像のラインプロファイルを比較する説明図である。
図2には、設計画像のラインプロファイル10、参照画像(位置補正済)のラインプロファイル200、および撮影画像のラインプロファイル30がそれぞれ示されている。更に、ラインプロファイル200との比較として参照画像(位置ずれ有り)のラインプロファイル20も示されている。また、
図11と同様に、ラインプロファイル10には重心位置11、ラインプロファイル200には重心位置201、ラインプロファイル20には重心位置21、ラインプロファイル30には重心位置31がそれぞれ示されている。
【0084】
図2のように、第1の実施形態では、設計画像に対して、重心位置を中心位置に補正した画像変換フィルタを適応すると、位置ずれ(gap)が補正された参照画像が生成される。
図2では、設計画像における重心位置11、参照画像における重心位置201、および撮影画像における重心位置31は、それぞれ中心位置に揃っている。このように、位置ずれが補正されることによって、参照画像と撮影画像との重心位置が揃うことで両者の差分が小さくなり、検査装置100は、誤検出を低減させることができる。
【0085】
以上、従来の検査装置と、第1の実施形態に係る検査装置100との違いについて説明した。次に、検査装置100の動作について、
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0086】
図3は、検査装置100の動作を例示するフローチャートである。
図3のフローチャートは、検査装置100に設計画像および撮影画像が入力されてから検査結果が出力されるまでの一連の流れを示している。
【0087】
(ステップST110)
設計画像取得部110は、設計画像を取得する。
【0088】
(ステップST120)
設計画像が取得された後、撮影画像取得部120は、撮影画像を取得する。尚、ステップST120の処理は、ステップST110の処理の前に行われてもよいし、ステップST110の処理と同時に行われてもよい。
【0089】
(ステップST130)
撮影画像が取得された後、画像処理部130は、位置ずれを補正した補正済み参照画像を生成する。以降では、ステップST130の処理を「参照画像生成処理」と称する。参照画像生成処理の具体例について
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0090】
図4は、
図3のフローチャートの参照画像生成処理を例示するフローチャートである。
図4のフローチャートは、ステップST120から遷移する。
【0091】
(ステップST131)
設計画像が取得された後、画像変換フィルタ算出部131は、設計画像と撮影画像とに基づいて画像変換フィルタを算出する。
【0092】
(ステップST132)
画像変換フィルタが算出された後、フィルタ補正部132は、画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれ量に基づいて補正済み画像変換フィルタを生成する。具体的には、フィルタ補正部132は、ずれ量に基づいて補正値を算出し、算出した補正値を用いて画像変換フィルタを補正することによって補正済み画像変換フィルタを生成する。
【0093】
(ステップST133)
補正済み画像変換フィルタが生成された後、参照画像生成部133は、設計画像と画像変換フィルタとに基づいて位置ずれを補正した補正済み参照画像を生成する。ステップST133の後、処理はステップST140へ遷移する。
【0094】
(ステップST140)
補正済み参照画像が生成された後、誤差情報生成部140は、撮影画像と補正済み参照画像とに基づいて誤差情報を生成する。
【0095】
(ステップST150)
誤差情報が生成された後、表示制御部150は、誤差情報に基づく検査結果を表示させる。ステップST150の後、処理は終了する。
【0096】
以上説明したように、第1の実施形態に係る検査装置は、設計ソフトウェアによって作成された設計データに基づく設計画像を取得し、設計データに基づいて作成された検査対象を撮影した撮影画像を取得し、設計画像から参照画像を作成する際に用いられる画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれに起因する位置ずれを補正した補正済み参照画像を生成する。また、第1の実施形態に係る検査装置は、設計画像と撮影画像とに基づいて画像変換フィルタを算出し、画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれ量に基づいて補正値を算出し、補正値を用いて画像変換フィルタを補正することによって補正済み画像変換フィルタを生成し、設計画像と補正済み画像変換フィルタとに基づいて上記補正済み参照画像を生成する。従って、第1の実施形態に係る検査装置は、画像変換フィルタに起因する位置ずれを補正した参照画像を生成するにより、誤検出を低減することができる。
【0097】
(第2の実施形態)
第1の実施形態に係る検査装置は、画像処理部において、画像変換フィルタの位置ずれを補正し、位置ずれを補正した画像変換フィルタを用いて位置ずれ補正済みの参照画像を生成した。第2の実施形態に係る検査装置は、画像処理部において、位置ずれ補正前の画像変換フィルタを用いて参照画像を生成し、参照画像の位置ずれを補正することによって位置ずれが補正された参照画像を生成する。
【0098】
図5は、第2の実施形態に係る検査装置500の構成を例示するブロック図である。検査装置500は、設計画像取得部510と、撮影画像取得部520と、画像処理部530と、誤差情報生成部540と、表示制御部550とを備える。尚、設計画像取得部510、撮影画像取得部520、および表示制御部550は、
図1の設計画像取得部110、撮影画像取得部120、および表示制御部150と略同様の構成であるため説明を省略する。
【0099】
画像処理部530は、設計画像取得部510から設計画像を受け取り、撮影画像取得部520から撮影画像を受け取る。画像処理部530は、設計画像から参照画像を作成する際に用いられる画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれに起因する位置ずれを補正した補正済み参照画像を生成する。画像処理部530は、生成した補正済み参照画像を誤差情報生成部540へと出力する。尚、画像処理部530は、設計画像から生成された参照画像を誤差情報生成部540へと出力してもよい。
【0100】
具体的には、画像処理部530は、画像変換フィルタ算出部531と、参照画像生成部532と、参照画像補正部533とを備える。尚、画像変換フィルタ算出部531は、画像変換フィルタの出力先が参照画像生成部532および参照画像補正部533である点において、
図1の画像変換フィルタ算出部131と異なる。
【0101】
参照画像生成部532は、設計画像と画像変換フィルタとに基づいて参照画像を生成する。具体的には、参照画像生成部532は、設計画像と画像変換フィルタとの畳み込み演算によって、参照画像を生成する。参照画像生成部532は、生成した参照画像を参照画像補正部533へと出力する。尚、参照画像生成部532は、生成した参照画像を誤差情報生成部540へと出力してもよい。また、参照画像生成部532において生成される参照画像は、位置補正が行われていないため、補正前の参照画像と呼ばれてもよい。
【0102】
参照画像補正部533は、画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれ量に基づいて補正値を算出し、補正値を用いて参照画像を補正することによって補正済み参照画像を生成する。参照画像補正部533は、生成した補正済み参照画像を誤差情報生成部540へと出力する。
【0103】
具体的には、参照画像補正部533は、補正前の参照画像をRnaとした場合、補正済み参照画像Raを、例えば以下の式(15)を用いて算出する。
【0104】
【0105】
なお、補正済み参照画像の算出において、補正値が小数である場合、参照画像補正部533は、補間フィルタを用いて補正済み参照画像を算出してもよい。尚、補間フィルタは、第1の実施形態で説明したものと同様でよいため説明を省略する。
【0106】
誤差情報生成部540は、撮影画像取得部120から撮影画像を受け取り、画像処理部530から補正済み参照画像を受け取る。誤差情報生成部540は、撮影画像と補正済み参照画像とに基づいて誤差情報を生成する。誤差情報生成部540は、生成した誤差情報を表示制御部550へと出力する。
【0107】
また、誤差情報生成部540は、更に参照画像生成部532から参照画像(補正前の参照画像)を受け取ってもよい。この場合、誤差情報生成部540は、撮影画像と補正済み参照画像と、更に補正前の参照画像とに基づいて誤差情報を生成してもよい。例えば、誤差情報生成部540は、撮影画像と補正前の参照画像とに基づいて第1の誤差情報を生成し、撮影画像と補正済み参照画像とに基づいて第2の誤差情報を生成する。よって、誤差情報は、第1の誤差情報と第2の誤差情報とを含んでもよい。
【0108】
なお、第2の実施形態では、補正前の参照画像を生成することから、表示制御部550は、参照画像に関する位置補正前後の差分画像を検査結果として表示させてもよい。よって、検査結果には、第1の実施形態で述べた五つの表示形態に加えて、更に(6)位置補正前後の差分画像の表示形態が含まれてもよい。以下、この表示形態について説明する。
【0109】
(6)位置補正前後の差分画像
表示制御部550は、撮影画像と補正前の参照画像との差分から得られる第1の差分画像と、撮影画像と補正済み参照画像との差分から得られる第2の差分画像との二つを表示させる。表示制御部550は、例えば、二つの差分画像を上下または左右に並べて表示させてもよいし、ソフトウェアボタンなどを選択することによって二つの差分画像を切り替えて表示させてもよい。このように、位置補正前後の差分画像を表示させることによって、ユーザは、フィルタの種類によって発生しうる位置補正後の差分画像上での欠陥部分の消失を確認することができる。
【0110】
以上、第2の実施形態に係る検査装置500の構成について説明した。次に、検査装置500の参照画像生成処理について、
図6のフローチャートを用いて説明する。尚、検査装置500の動作は、
図3のフローチャートにおける、ステップST130の処理をステップST230の処理に置き換えたものである。
【0111】
図6は、検査装置500の参照画像生成処理を例示するフローチャートである。
図6のフローチャートは、ステップST230の処理に相当し、ステップST120から遷移する。
【0112】
(ステップST231)
設計画像が取得された後、画像変換フィルタ算出部531は、設計画像と撮影画像とに基づいて画像変換フィルタを算出する。
【0113】
(ステップST232)
画像変換フィルタが算出された後、参照画像生成部532は、設計画像と画像変換フィルタとに基づいて参照画像を生成する。
【0114】
(ステップST233)
参照画像が生成された後、参照画像補正部533は、画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれ量に基づいて位置ずれを補正した補正済み参照画像を生成する。具体的には、参照画像補正部533は、ずれ量に基づいて補正値を算出し、算出した補正値を用いて参照画像を補正することによって補正済み参照画像を生成する。ステップST233の後、処理はステップST140へ遷移する。
【0115】
以上説明したように、第2の実施形態に係る検査装置は、設計ソフトウェアによって作成された設計データに基づく設計画像を取得し、設計データに基づいて作成された検査対象を撮影した撮影画像を取得し、設計画像から参照画像を作成する際に用いられる画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれに起因する位置ずれを補正した補正済み参照画像を生成する。また、第2の実施形態に係る検査装置は、設計画像と撮影画像とに基づいて画像変換フィルタを算出し、設計画像と画像変換フィルタとに基づいて参照画像を生成し、画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれ量に基づいて補正値を算出し、補正値を用いて参照画像を補正することによって上記補正済み参照画像を生成する。従って、第2の実施形態に係る検査装置は、画像変換フィルタに起因する位置ずれを補正した参照画像を生成することにより、誤検出を低減することができる。
【0116】
(第3の実施形態)
第1の実施形態および第2の実施形態に係る検査装置は、画像処理部において、参照画像の位置ずれを補正することによって、補正済み参照画像と撮影画像との位置合わせを行った。第3の実施形態に係る検査装置は、画像処理部において、参照画像の位置ずれに関する補正値を用いて撮影画像を処理することによって、参照画像と処理済み撮影画像との位置合わせを行う。
【0117】
図7は、第3の実施形態に係る検査装置700の構成を例示するブロック図である。検査装置700は、設計画像取得部710と、撮影画像取得部720と、画像処理部730と、誤差情報生成部740と、表示制御部750とを備える。尚、設計画像取得部710は、
図1の設計画像取得部110、或いは
図5の設計画像取得部510と略同様の構成であるため説明を省略する。
【0118】
撮影画像取得部720は、設計データに基づいて作成された検査対象を撮影した撮影画像を取得する。撮影画像取得部720は、取得した撮影画像を画像処理部730へと出力する。尚、撮影画像取得部720は、取得した撮影画像を誤差情報生成部740へと出力してもよい。また、撮影画像取得部720において取得される撮影画像は、位置ずれを含ませる処理が行われていないため、処理前の撮影画像と呼ばれてもよい。
【0119】
画像処理部730は、設計画像取得部710から設計画像を受け取り、撮影画像取得部720から撮影画像を受け取る。画像処理部730は、設計画像から参照画像を生成する。また、画像処理部730は、設計画像から参照画像を作成する際に用いられる画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれに起因する位置ずれを含むように撮影画像を処理した処理済み撮影画像を生成する。画像処理部730は、参照画像および生成した処理済み撮影画像を誤差情報生成部740へと出力する。
【0120】
具体的には、画像処理部730は、画像変換フィルタ算出部731と、参照画像生成部732と、撮影画像処理部733とを備える。尚、画像変換フィルタ算出部731は、画像変換フィルタの出力先が参照画像生成部732および撮影画像処理部733である点において、
図1の画像変換フィルタ算出部131および
図5の画像変換フィルタ算出部531と異なる。また、参照画像生成部732は、参照画像の出力先が誤差情報生成部740である点において、
図5の参照画像生成部532と異なる。
【0121】
撮影画像処理部733は、画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれ量に基づいて補正値を算出し、補正値を用いて撮影画像を処理することによって処理済み撮影画像を生成する。撮影画像処理部733は、生成した処理済み撮影画像を誤差情報生成部740へと出力する。尚、撮影画像処理部733は、補正値を用いて撮影画像を処理することから補正部と呼ばれてもよい。
【0122】
具体的には、撮影画像処理部733は、処理前の撮影画像をInaとした場合、処理済み撮影画像Iaを、例えば以下の式(16)を用いて算出する。
【0123】
【0124】
式(16)によれば、処理済み撮影画像は、参照画像の位置ずれに起因する補正値に基づいて算出される。尚、処理済み撮影画像の算出において、補正値が小数である場合、撮影画像処理部733は、補間フィルタを用いて補正済み参照画像を算出してもよい。また、補間フィルタは、第1の実施形態で説明したものと同様でよいため説明を省略する。
【0125】
誤差情報生成部740は、画像処理部730から参照画像および処理済み撮影画像を受け取る。誤差情報生成部740は、参照画像と処理済み撮影画像とに基づいて誤差情報を生成する。誤差情報生成部740は、生成した誤差情報を表示制御部750へと出力する。
【0126】
また、誤差情報生成部740は、更に撮影画像取得部720から撮影画像(処理前の撮影画像)を受け取ってもよい。この場合、誤差情報生成部740は、参照画像と処理済み撮影画像と、更に処理前の撮影画像とに基づいて誤差情報を生成してもよい。例えば、誤差情報生成部740は、参照画像と処理前の撮影画像とに基づいて第1の誤差情報を生成し、参照画像と処理済み撮影画像とに基づいて第2の誤差情報を生成する。よって、誤差情報は、第1の誤差情報と第2の誤差情報とを含んでもよい。
【0127】
具体的には、誤差情報生成部740は、処理済み撮影画像と参照画像とを差分処理することによって誤差を算出する。尚、差分処理は、第1の実施形態で説明したものと同様でよいため説明を省略する。
【0128】
表示制御部750は、誤差情報生成部740から誤差情報を受け取る。表示制御部750は、誤差情報に基づく検査結果を表示させる。検査結果は、第1の実施形態で説明した五つの表示形態と略同様である。例えば、第1の実施形態では、補正済み参照画像に関する差分画像を主に表示させていたが、第3の実施形態では、処理済み撮影画像に関する差分画像を主に表示させる点について異なる。しかしながら、参照画像と撮影画像との重心位置を揃えるという点については同様のため、検査装置700は、誤検出を低減させることができる。
【0129】
なお、第3の実施形態では、処理前の撮影画像に関する誤差情報を生成してもよいことから、表示制御部750は、撮影画像に関する位置ずれ処理前後の差分画像を検査結果として表示させてもよい。よって、検査結果には、第1の実施形態で述べた五つの表示形態に加えて、更に(6’)位置ずれ処理前後の差分画像の表示形態が含まれてもよい。尚、第2の実施形態における表示形態の(6)と区別するため、第3の実施形態では(6’)としている。以下、この表示形態について説明する。
【0130】
(6’)位置ずれ処理前後の差分画像
表示制御部750は、参照画像と処理前の撮影画像との差分から得られる第1の差分画像と、参照画像と処理済み撮影画像との差分から得られる第2の差分画像との二つを表示させる。表示制御部750は、例えば、二つの差分画像を上下または左右に並べて表示させてもよいし、ソフトウェアボタンなどを選択することによって二つの差分画像を切り替えて表示させてもよい。このように、位置ずれ処理前後の差分画像を表示させることによって、ユーザは、フィルタの種類によって発生しうる位置ずれ処理後の差分画像上での欠陥部分の消失を確認することができる。
【0131】
以上、第3の実施形態に係る検査装置700の構成について説明した。次に、従来の検査装置と、第3の実施形態に係る検査装置700との違いについて、
図8を用いて説明する。尚、従来の検査装置は、第1の実施形態において
図11を用いて説明しているため、ここでの説明を省略する。
【0132】
図8は、第3の実施形態における各画像のラインプロファイルを比較する説明図である。
図8には、設計画像のラインプロファイル10、参照画像のラインプロファイル20、および撮影画像(位置ずれ処理済)のラインプロファイル800がそれぞれ示されている。更に、ラインプロファイル800との比較として位置ずれを含ませる処理前の撮影画像のラインプロファイル30も示されている。また、
図11と同様に、ラインプロファイル10には重心位置11、ラインプロファイル20には重心位置21、ラインプロファイル30には重心位置31、ラインプロファイル800には重心位置801がそれぞれ示されている。
【0133】
図8のように、第3の実施形態では、撮影画像に対して、参照画像に関する位置ずれ(gap)に基づく処理をすることによって、あえて位置ずれを含ませた撮影画像が生成される。これにより、
図8に示すように、参照画像における重心位置21および位置ずれ処理済みの撮影画像における重心位置801を揃えることができる。よって、参照画像および撮影画像が共に同様の位置ずれを含むことになるため、位置ずれに起因する両者の差分が小さくなり、検査装置700は、誤検出を低減させることができる。
【0134】
以上、従来の検査装置と、第3の実施形態に係る検査装置700との違いについて説明した。次に、検査装置700の動作について、
図9のフローチャートを用いて説明する。
【0135】
図9は、検査装置700の動作を例示するフローチャートである。
図9のフローチャートは、検査装置700に設計画像および撮影画像が入力されてから検査結果が出力されるまでの一連の流れを示している。
【0136】
(ステップST310)
設計画像取得部710は、設計画像を取得する。
【0137】
(ステップST320)
設計画像が取得された後、撮影画像取得部720は、撮影画像を取得する。尚、ステップST320の処理は、ステップST310の処理の前に行われてもよいし、ステップST310の処理と同時に行われてもよい。
【0138】
(ステップST330)
撮影画像が取得された後、画像変換フィルタ算出部731は、設計画像と撮影画像とに基づいて画像変換フィルタを算出する。
【0139】
(ステップST340)
画像変換フィルタが算出された後、参照画像生成部732は、設計画像と画像変換フィルタとに基づいて参照画像を生成する。
【0140】
(ステップST350)
参照画像が生成された後、撮影画像処理部733は、画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれ量に基づいて位置ずれを含むように処理した処理済み撮影画像を生成する。具体的には、撮影画像処理部733は、ずれ量に基づいて補正値を算出し、算出した補正値を用いて撮影画像を処理することによって処理済み撮影画像を生成する。
【0141】
(ステップST360)
処理済み撮影画像が生成された後、誤差情報生成部740は、参照画像と処理済み撮影画像とに基づいて誤差情報を生成する。
【0142】
(ステップST370)
誤差情報が生成された後、表示制御部750は、誤差情報に基づく検査結果を表示させる。ステップST370の後、処理は終了する。
【0143】
以上説明したように、第3の実施形態に係る検査装置は、設計ソフトウェアによって作成された設計データに基づく設計画像を取得し、設計データに基づいて作成された検査対象を撮影した撮影画像を取得し、設計画像から参照画像を作成する際に用いられる画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれに起因する位置ずれを含むように処理した処理済み撮影画像を生成する。また、第3の実施形態に係る検査装置は、設計画像と撮影画像とに基づいて画像変換フィルタを算出し、設計画像と画像変換フィルタとに基づいて参照画像を生成し、画像変換フィルタの中心位置と重心位置とのずれ量に基づいて補正値を算出し、補正値を用いて撮影画像を処理することによって処理済み撮影画像を生成する。従って、第3の実施形態に係る検査装置は、画像変換フィルタに起因する位置ずれを含むように処理した撮影画像を生成することにより、誤検出を低減することができる。
【0144】
(ハードウェア構成)
図10は、一実施形態に係るコンピュータ1000のハードウェア構成を例示するブロック図である。コンピュータ1000は、ハードウェアとして、CPU(Central Processing Unit)1010と、RAM(Random Access Memory)1020と、プログラムメモリ1030と、補助記憶装置1040と、入出力インタフェース1050とを備える。CPU1010は、バス1060を介して、RAM1020、プログラムメモリ1030、補助記憶装置1040、および入出力インタフェース1050と通信する。
【0145】
CPU1010は、汎用プロセッサの一例である。RAM1020は、ワーキングメモリとしてCPU1010に使用される。RAM1020は、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリを含む。プログラムメモリ1030は、検査プログラムなどを含む種々のプログラムを記憶する。プログラムメモリ1030として、例えば、ROM(Read-Only Memory)、補助記憶装置1040の一部、またはその組み合わせが使用される。補助記憶装置1040は、データを非一時的に記憶する。補助記憶装置1040は、HDDまたはSSDなどの不揮発性メモリを含む。
【0146】
入出力インタフェース1050は、他のデバイスと接続するためのインタフェースである。入出力インタフェース1050は、例えば、入力装置、撮影装置および表示装置との接続に使用される。
【0147】
プログラムメモリ1030に記憶されている各プログラムはコンピュータ実行可能命令を含む。プログラム(コンピュータ実行可能命令)は、CPU1010により実行されると、CPU1010に所定の処理を実行させる。例えば、検査プログラムなどは、CPU1010により実行されると、CPU1010に
図1、5、および7の各部に関して説明された一連の処理を実行させる。
【0148】
プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態でコンピュータ1000に提供されてよい。この場合、例えば、コンピュータ1000は、記憶媒体からデータを読み出すドライブ(図示せず)をさらに備え、記憶媒体からプログラムを取得する。記憶媒体の例は、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD-ROM、DVD-Rなど)、光磁気ディスク(MOなど)、半導体メモリを含む。また、プログラムを通信ネットワーク上のサーバに格納し、コンピュータ1000が入出力インタフェース1050を使用してサーバからプログラムをダウンロードするようにしてもよい。
【0149】
実施形態において説明される処理は、CPU1010などの汎用ハードウェアプロセッサがプログラムを実行することにより行われることに限らず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの専用ハードウェアプロセッサにより行われてもよい。処理回路(処理部)という語は、少なくとも一つの汎用ハードウェアプロセッサ、少なくとも一つの専用ハードウェアプロセッサ、または少なくとも一つの汎用ハードウェアプロセッサと少なくとも一つの専用ハードウェアプロセッサとの組み合わせを含む。
図10に示す例では、CPU1010、RAM1020、およびプログラムメモリ1030が処理回路に相当する。
【0150】
よって、以上の各実施形態によれば、誤検出を低減することができる。
【0151】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0152】
10…ラインプロファイル、11…重心位置、20…ラインプロファイル、21…重心位置、30…ラインプロファイル、31…重心位置、100…検査装置、100…検査装置、110…設計画像取得部、120…撮影画像取得部、130…画像処理部、131…画像変換フィルタ算出部、132…フィルタ補正部、133…参照画像生成部、140…誤差情報生成部、150…表示制御部、200…ラインプロファイル、201…重心位置、500…検査装置、500…検査装置、510…設計画像取得部、520…撮影画像取得部、530…画像処理部、531…画像変換フィルタ算出部、532…参照画像生成部、533…参照画像補正部、540…誤差情報生成部、550…表示制御部、700…検査装置、700…検査装置、710…設計画像取得部、720…撮影画像取得部、730…画像処理部、731…画像変換フィルタ算出部、732…参照画像生成部、733…撮影画像処理部、740…誤差情報生成部、750…表示制御部、1000…コンピュータ、1030…プログラムメモリ、1040…補助記憶装置、1050…入出力インタフェース、1060…バス。