(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000432
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】成膜方法及び弾性波デバイス
(51)【国際特許分類】
C23C 14/02 20060101AFI20231225BHJP
C23C 14/14 20060101ALI20231225BHJP
H03H 3/02 20060101ALI20231225BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20231225BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
C23C14/02 Z
C23C14/14 D
H03H3/02 B
H03H9/17 F
H01L21/302 105B
H01L21/302 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099198
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】沼田 幸展
(72)【発明者】
【氏名】藤長 徹志
(72)【発明者】
【氏名】大久保 裕夫
【テーマコード(参考)】
4K029
5F004
5J108
【Fターム(参考)】
4K029AA04
4K029BA02
4K029BA03
4K029BA58
4K029CA05
4K029CA06
4K029DC03
4K029FA03
5F004AA11
5F004BA20
5F004BB13
5F004CA02
5F004CA06
5F004DA23
5F004DB12
5J108BB08
5J108FF01
5J108KK01
5J108KK02
5J108MM11
(57)【要約】
【課題】窒化アルミニウム膜表面にタングステン膜を成膜したときの比抵抗値の上昇を可及的に抑制することができるタングステン膜の成膜方法を提供する。
【解決手段】本発明の成膜方法は、表面に、窒化アルミニウムを主成分とする薄膜が形成されたものを被処理基板Swとし、真空雰囲気中で被処理基板表面にタングステン膜を所定膜厚で成膜する工程を含み、窒化アルミニウム膜の表面を所定のエッチングレートでエッチングしてその表面を平坦化する前工程を更に含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、窒化アルミニウムを主成分とする薄膜が形成されたものを被処理基板とし、真空雰囲気中で被処理基板表面にタングステン膜を所定膜厚で成膜する工程を含む成膜方法において、
窒化アルミニウム膜の表面を所定のエッチングレートでエッチングしてその表面を平坦化する前工程を更に含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
前記前工程は、真空雰囲気中での希ガスのプラズマによるドライエッチングであり、同等のエッチング条件で熱酸化シリコン膜をドライエッチングしたときのエッチング量が283nm~1089nmの範囲になるように、前記窒化アルミニウム膜表面のエッチング量が設定されることを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
【請求項3】
前記前工程は、真空雰囲気中での希ガスのプラズマによるドライエッチングであり、同等のエッチング条件で熱酸化シリコン膜をドライエッチングしたときのエッチングレートが10nm/min~100nm/minの範囲になるように、前記窒化アルミニウム膜に対するエッチング条件が設定されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の成膜方法。
【請求項4】
基板に一方の面に圧電膜と電極膜とを有する弾性波デバイスにおいて、
圧電膜が、窒化アルミニウムを主成分とする薄膜であって、熱酸化シリコン膜をドライエッチングしたときのエッチングレートが10nm/min~100nm/minの範囲になるエッチング条件で希ガスのプラズマによるドライエッチングが施されてその表面が平坦化されたものであり、上部電極がタングステン膜で構成されることを特徴とする弾性波デバイス。
【請求項5】
前記窒化アルミニウム膜の表面の算術平均高さ(Sa)が1.0nm以下である請求項4記載の弾性波デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は 表面に、窒化アルミニウムを主成分とする薄膜が形成されたものを被処理基板とし、真空雰囲気中で被処理基板表面にタングステン膜を所定膜厚で成膜する工程を含む成膜方法及びこの成膜方法を実施して製作される弾性波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、通信機器には、電気信号に含まれるノイズを除去するため、その周波数帯域に応じてSAWデバイス(表面弾性波素子)やBAWデバイス(バルク弾性波素子)といったフィルタとして機能する弾性波デバイスが備えられる。例えば、BAWデバイスは、順次積層されるボトム電極膜、圧電膜及びトップ電極膜を有し、圧電膜としては、通常、窒化アルミニウム膜を主成分とする薄膜(AlN膜やScAlN膜)が用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、トップ電極膜としては、クロム、アルミニウム、チタン、銅、モリブデン、タングステン、タンタル(Ta)等の単層膜またはこれらの積層膜が用いられ、その中でも、高融点金属としてのタングステンは、電気機械結合係数(k)が大きく、しかも、比較的高温帯域でも圧電特性を保てることから、この種の電極膜として注目されている。このようなタングステンの電極膜の成膜には、生産性等を考慮して、タングステン製のターゲットを用いたスパッタリング法が一般に利用される。
【0004】
ここで、スパッタリング法により圧電膜としての窒化アルミニウム膜上にトップ電極膜としてのタングステン膜を成膜すると、例えば、シリコンウエハの表面に酸化シリコン膜を形成し、この酸化シリコン膜の表面にタングステン膜を成膜した場合と比較して、比抵抗値が上昇することが判明した。このような比抵抗値の上昇は、デバイスの微細化開発を阻害する要因となるため、比抵抗値の上昇を可及的に抑制する必要がある。
【0005】
そこで、本願の発明者らは、鋭意研究を重ね、次のことを知見するのに至った。即ち、窒化アルミニウム膜表面にタングステン膜を成膜すると、この成膜されたタングステン膜は、針状表面構造を持つ窒化アルミニウム表面に沿うように膜成長が生じ、結晶粒径が微細になる。タングステン膜を断面観察すると、窒化アルミニウム面の凹凸に沿って細かい柱状構造が観察された。単位体積あたりでのタングステン膜の細柱化は、結晶粒界の増加と同義であり、粒界の増加は電子の移動を妨げ、タングステン膜の電気特性悪化の原因となる。このようなタングステン膜の細柱化は、窒化アルミニウム膜表面(即ち、タングステン膜の成膜面)に微細な凹凸があることに起因するものと考えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、窒化アルミニウム膜表面にタングステン膜を成膜したときの比抵抗値の上昇を可及的に抑制することができるタングステン膜の成膜方法及び比抵抗値の低い弾性波デバイスを提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、表面に、窒化アルミニウムを主成分とする薄膜が形成されたものを被処理基板とし、真空雰囲気中で被処理基板表面にタングステン膜を所定膜厚で成膜する工程を含む成膜方法において、窒化アルミニウム膜の表面を所定のエッチングレートでエッチングしてその表面を平坦化する前工程を更に含むことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、表面に微細な凹凸がある窒化アルミニウム膜に対して所定範囲のエッチングレートやエッチング量でドライエッチングを施すと、電界集中により凸部が優先的にエッチングされて、窒化アルミニウム膜の表面が平坦化される。このように平担化された窒化アルミニウム膜の表面に、タングステン製のターゲットを用いたスパッタリング法によりタングステン膜を成膜すると、タングステン膜が前工程のないものと比較して太い針状構造となることで、比抵抗値の上昇が可及的に抑制される。この場合、同等のエッチング条件で熱酸化シリコン膜をドライエッチングしたときのエッチング量が283nm~1089nmの範囲になるように、前記窒化アルミニウム膜表面のエッチング量を設定することが好ましい。また、同等のエッチング条件で熱酸化シリコン膜をドライエッチングしたときのエッチングレートが10nm/min~100nm/minの範囲になるように、前記窒化アルミニウム膜に対するエッチング条件が設定されることが好ましい。これにより、窒化アルミニウム膜の表面の算術平均高さ(Sa)が0.4nm~0.8nmの範囲にできる。
【0010】
なお、熱酸化シリコン膜に対するエッチングレートが10nm/minより遅くなるようなエッチング条件でエッチングしても窒化アルミニウムがエッチングされない。一方、熱酸化シリコン膜に対するエッチングレートが100nm/minより速くなるエッチング条件でエッチングすると、むしろ窒化アルミニウム膜表面がエッチングによって荒れてしまう。また、アルゴンガスを導入したドライエッチング時の真空チャンバ内の圧力は、0.1Pa~5.0Paの範囲に設定される。圧力が0.1Paより低いと、スパッタリング時におけるVdc電圧の上昇で被処理基板に対するイオン衝撃が増加し、むしろ窒化アルミニウム膜の表面が荒れてしまう。一方、圧力が5.0Paより高くなるとエッチングレートが低くなり過ぎる。
【0011】
また、上記課題を解決するために、基板に一方の面に圧電膜と電極膜とを有する本発明の弾性波デバイスは、圧電膜が、窒化アルミニウムを主成分とする薄膜であって、熱酸化シリコン膜をドライエッチングしたときのエッチングレートが10nm/min~100nm/minの範囲になるエッチング条件で希ガスのプラズマによるドライエッチングが施されてその表面が平坦化されたものであり、上部電極がタングステン膜で構成されることを特徴とする。この場合、前記窒化アルミニウム膜の表面の算術平均高さ(Sa)が1.0nm以下であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の成膜方法を利用して製作される本実施形態の弾性波デバイスの模式断面図。
【
図2】バイアス電圧を印加してスパッタリング法によりタングステン膜を成膜したときの比抵抗値の変化を示すグラフ。
【
図3】本実施形態の前工程を実施できるドライエッチング装置の模式断面図。
【
図5】タングステン膜の表面観察画像であり、(a)がドライエッチングなし、(b)がドライエッチングありである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、弾性波デバイスをBAWデバイスとし、本発明の実施形態のタングステン膜の成膜方法及び弾性波デバイスの実施形態を説明する。
【0014】
図1を参照して、1は、物質の内部を伝播するバルク弾性波(BAW:Bulk Acoustic Wave)を利用したBAWデバイスであり、BAWデバイス1は、シリコンなどの半導体材料製の基板2を備え、基板2の一方の面には、ボトム電極膜3、圧電膜4及びトップ電極膜5が順次積層されている。ボトム電極膜3としては、クロム、アルミニウム、チタン、銅、モリブデン、タングステン、タンタル(Ta)等の単層膜またはこれらの積層膜が用いられる。そして、例えば、薄膜に応じたターゲットを用いるスパッタリング装置を利用して50nm~500nmの範囲の膜厚で成膜される。このようなスパッタリング装置を利用したボトム電極膜3の成膜としては公知のものが利用できるため、スパッタリング装置の構造やスパッタリング時の条件を含め、ここでは詳細な説明を省略する。
【0015】
圧電膜4としては、窒化アルミニウム膜を主成分とする薄膜(AlN膜やScAlN膜)が用いられる。窒化アルミニウム膜の成膜には、アルミニウム製のターゲットと反応ガスとしての窒素ガスを用いるスパッタリング装置を利用して反応性スパッタリング法により300nm~1000nmの範囲の膜厚で成膜される。また、トップ電極膜5としては、タングステン膜が用いられる。タングステン膜の成膜には、タングステン製のターゲットを用いるスパッタリング装置を利用して50nm~200nmの範囲の膜厚で成膜される。圧電膜4やトップ電極膜5に利用される成膜方法もまた、上記同様に、公知のものが利用できるため、スパッタリング装置の構造やスパッタリング時の条件を含め、ここでは詳細な説明を省略する。
【0016】
ここで、窒化アルミニウムの膜厚を40nm、1000nmとし、窒化アルミニウムの表面にタングステン膜(トップ電極膜5)を約70nmの膜厚で成膜すると、
図2に示すように、例えば、シリコンウエハに形成した酸化シリコン膜表面に、上記と同条件でスパッタリング法によりタングステン膜を成膜した場合と比較して、比抵抗値が上昇し、このとき、圧電膜4の膜厚が薄い場合の方がより顕著に比抵抗値の上昇を招くことが判明した。参考として、酸化シリコン膜表面にタングステン膜を成膜する際に、0,35W,60W,80W(13.56MHz)の各電力でシリコンウエハにバイアス電力を投入したところ、顕著な比抵抗値の変化は見られなかった。なお、
図2中、△は、圧電膜4の膜厚が40nmの場合、□は、圧電膜4の膜厚が1000nmの場合及び、◇は、シリコンウエハ表面に酸化シリコン膜を成膜した場合である。また、タングステン膜の成膜条件としては、タングステン製ターゲットへの投入電力を0.2kW、バイアス電力を60W、成膜時の真空チャンバ内の圧力を0.2Pa(アルゴンガス流量10sccm)、ターゲット-基板間の距離55mm,成膜時の基板温度400℃に設定した。このような比抵抗値の上昇を可及的に抑制するために、本実施形態の成膜方法では、次のドライエッチング装置6を用い、圧電膜4としての窒化アルミニウム膜の表面を所定のエッチングレートでドライエッチングして、その表面を平坦化する工程を設けることとした(前工程)。
【0017】
図3を参照して、ドライエッチング装置6は、ICP(誘導結合プラズマ)型のドライエッチング装置であり、ドライエッチング装置6は、上部開口61aを有する円筒状の真空チャンバ61を備える。真空チャンバ61の上部開口61aは、石英板で構成される誘電体窓62によってOリングを介して気密保持した状態で閉塞されている。誘電体窓62の上方には、複数段(本実施形態では2段)のループ状のアンテナコイル63が設けられ、アンテナコイル63には、高周波電源E1からの出力が接続されている。また、誘電体窓62とアンテナコイル63との間には、詳細には図示していないが、所謂スター電極64が配置されている。
【0018】
誘電体窓62の直下に位置させて真空チャンバ61内には、絶縁体65aを介してステージ65が設けられ、基板2表面にボトム電極膜3及び圧電膜4が形成されたもの被処理基板Swを保持することができる。ステージ2には、高周波電源E2からの出力が接続され、基板Swにバイアス電位を印加することができる。真空チャンバ1には、図示省略の真空ポンプに通じる排気管66が接続され、真空チャンバ61内を所定圧力に真空排気することができる。真空チャンバ61にはまた、図示省略の流量制御弁(例えばマスフローコントローラ)を介して各ガス源に通じるガス導入管67が接続され、所定の流量で希ガスにより構成されるエッチングガスを真空チャンバ1内に導入することができる。
【0019】
圧電膜4が成膜されたものを被処理基板Swとして、被処理基板Swの圧電膜4をドライエッチング装置6によりドライエッチングする場合、被処理基板Swをステージ65上に設置し、真空ポンプの真空排気により真空チャンバ1内を真空排気する。真空チャンバ1内が所定圧力(例えば、10-5Pa)に達すると、ガス導入管67を介してエッチングガスを導入し、高周波電源E1からアンテナコイル63に高周波電力を投入すると共に、高周波電源E2からステージ65に高周波電力を投入する。エッチングガスとしては、アルゴンガスが用いられるが、ネオン、キセノンやクリプトンといった他の希ガスを利用することができる。真空チャンバ61内に導入するエッチングガスの流量は、10sccm~100sccm(一定の排気速度で真空排気される真空チャンバ61内の圧力が0.1Pa~5.0Paの範囲に維持される)。また、高周波電源E1からアンテナコイル63に投入する高周波電力としては、周波数が12.5MHz~13.56MHz、電力が400W~800Wに設定される。一方、高周波電源E2からステージ65に投入する高周波電力としては、周波数が12.5MHz~13.56MHz、電力が50W~400Wに設定される。
【0020】
以上のエッチング条件により、圧電膜4に対するエッチングレートが、同等のエッチング条件で熱酸化シリコン膜をドライエッチングしたときのエッチングレート、即ち、熱酸化シリコン膜のエッチングレート換算で10nm/min~100nm/minの範囲となる。他方で、圧電膜4に対するエッチング量は、同等のエッチング条件で熱酸化シリコン膜をドライエッチングしたときのエッチング量が283nm~1089nmの範囲になるように、例えば、エッチング時間を適宜調整して設定される。熱酸化シリコン膜のエッチングレート換算で10nm/minより遅い場合、圧電膜4を効果的にエッチングできない一方で、100nm/minより速くなると、圧電膜4の表面がドライエッチングにより却って荒れてしまう。これにより、窒化アルミニウム膜の表面の平均高さ(Sa)は、0.4~0.8nmの範囲となる。また、アルゴンガスを導入したドライエッチング時の真空チャンバ61内の圧力は、0.1Pa~0.5Paの範囲に設定される。圧力が0.1Paより低い圧力では、Vdc電圧の上昇により圧電膜4へのイオン衝撃が増加し、圧電膜4の表面がドライエッチングにより却って荒れてしまう一方で、圧力が5.0Paより高くなると、エッチングレートが極端に遅くなってしまう。
【0021】
以上によれば、表面に微細な凹凸がある圧電膜4に対して所定範囲のエッチングレート及びエッチング量でドライエッチングを施すと、電界集中により凸部が優先的にエッチングされ、圧電膜4の表面が平坦化される(即ち、圧電膜4の表面が、太い針状構造のタングステン膜(トップ電極膜5)を成膜することに好適な所定の算術平均高さを持つものにできる)。このように平担化された窒化アルミニウム膜の表面に、タングステン製のターゲットを用いたスパッタリング法によりタングステン膜を成膜すると、タングステン膜が前工程のないものと比較して太い針状構造となることで、比抵抗値の上昇が可及的に抑制される。その結果、BAWデバイス1のトップ電極膜5として、電気機械結合係数(k)が大きいなどの利点があるタングステン膜を用いても、比抵抗値の上昇が可及的に抑制され、比抵抗値の低い弾性波デバイスを製作することができる。
【0022】
次に、本発明の効果を示す次の実験を行った。本実験では、被処理基板Swを、シリコン基板2表面にボトム電極膜3として350nmの膜厚でモリブデン膜を成膜し、モリブデン膜の表面に反応性スパッタリング法により825nmの膜厚で窒化アルミニウム膜を成膜したものとした。エッチング条件として、エッチングガスをアルゴンガスとし、また、高周波電源E1から投入する高周波電力を周波数13.6MHz、400W、高周波電源E2から投入する高周波電力を周波数12.5MHz、電力100Wに設定した。更に、ドライエッチング中、真空チャンバ61内の圧力が0.5Paに維持されるようにアルゴンガスの流量を設定した。このエッチング条件における窒化アルミニウムのエッチングレートは4.63nm/minであった。この場合、同等のエッチング条件で熱酸化シリコン膜をドライエッチングすると、エッチングレートは21.2nm/minであった。そして、ドライエッチング時間を517秒、800秒、1541秒、3082秒に夫々設定して窒化アルミニウム膜に対して室温にてドライエッチングを施した。つまり、窒化アルミニウムのエッチング量は40nm、61.7nm、119nm、238nmであり、熱酸化シリコン膜のエッチング量に換算すると183nm、283nm、545nm、1089nmであった。その後、公知のスパッタリング法により成膜し、窒化アルミニウム膜の表面にタングステン膜を70nmの膜厚で成膜した。
【0023】
図4は、ドライエッチング時間に対するタングステン膜の比抵抗値の平均値の変化を示すグラフである。これによれば、窒化アルミニウム膜に対して全くドライエッチングを施していない場合、タングステン膜の比抵抗値は14.5μΩcmであった。それに対して、ドライエッチングを施すと、ドライエッチング時間が長くなるのに従い、比抵抗値が低くなり、約3000secの時間で窒化アルミニウム膜に対してドライエッチングを施した場合、タングステン膜の比抵抗値が約10μΩcmまで比抵抗値が低くなることが確認された。また、成膜後のタングステン膜の表面状態を原子間力顕微鏡(AFM)により観察すると、窒化アルミニウム膜に対してドライエッチングを全く施していないものは、単結晶のような膜質となり、針状構造で内部に空間を多く持つことが判る(
図5(a)参照)。それに対して、約3000secの時間で窒化アルミニウム膜に対してドライエッチングを施した後に成膜したタングステン膜は、窒化アルミニウム膜の表面が平坦化されることで、ドライエッチングを全く施していないものと比較して太い針状構造となっていることが確認された。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、成膜工程の前工程としてドライエッチング法によるものを例に説明したが、窒化アルミニウム膜の表面の算術平均高さ(Sa)が0.4nm~0.8nmの範囲となるように圧電膜4の表面を平坦化する前工程を実施できるものであれば、これに限定されるものではなく、エッチング液として、KOHなどを利用したウエットエッチングやCMPなどを利用することもできる。ウエットエッチングの場合、エッチングレートが10nm/min~100nm/minの範囲に設定される。
【符号の説明】
【0025】
Sw…被処理基板、1…BAWデバイス(弾性波デバイス)、2…シリコン基板、3…ボトム電極膜、4…圧電膜(窒化アルミニウム膜)、5…トップ電極膜(タングステン膜)。