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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043260
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】防音材の設置位置最適化方法
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/172 20060101AFI20240322BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240322BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
G10K11/172
F16F15/02 C
G10K11/16 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148349
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】駒村 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 雄也
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】米丘 梨玖
【テーマコード(参考)】
3J048
5D061
【Fターム(参考)】
3J048AD07
3J048BB06
3J048BF06
3J048CB22
3J048EA38
5D061BB17
5D061CC04
5D061DD20
(57)【要約】
【課題】設置可能な防音材の質量制限がある条件下で、防音材の設置位置を最適化し、効果的に制振対象を制振する。
【解決手段】制振対象の構造体の情報から固有振動モードを求めることと、制振対象の構造体に設置可能な防音材の質量上限と、防音材の情報と、に基づいて、防音材の質量上限の範囲において構造体への防音材の設置位置を求めることと、を含む。防音材は、局所共振器または質量体であり、防音材の設置位置を求めることは、構造体の固有振動数が最小となることを目的関数として用いる、または防音材は局所共振器であり、防音材の設置位置を求めることは、固有振動モードにおける局所共振器によるエネルギー散逸の割合であるモード損失係数が最大となることを目的関数として用いる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制振対象の構造体の情報から固有振動モードを求めることと、
制振対象の前記構造体に設置可能な防音材の質量上限と、前記防音材の情報と、に基づいて、前記防音材の前記質量上限の範囲において前記構造体への前記防音材の設置位置を求めることと、
を含み、
前記防音材は、局所共振器または質量体であり、
前記防音材の設置位置を求めることは、前記構造体の固有振動数が最小となることを目的関数として用いる、防音材の設置位置最適化方法。
【請求項2】
制振対象の構造体の情報から固有振動モードを求めることと、
前記制振対象の前記構造体に設置可能な防音材の質量上限と、前記防音材の情報と、に基づいて、前記防音材の前記質量上限の範囲において前記構造体への前記防音材の設置位置を求めることと、
を含み、
前記防音材は、局所共振器であり、
前記防音材の設置位置を求めることは、前記固有振動モードにおける前記局所共振器によるエネルギー散逸の割合であるモード損失係数が最大となることを目的関数として用いる、防音材の設置位置最適化方法。
【請求項3】
前記モード損失係数は、前記局所共振器に空間固定の複素バネ定数を適用し、
或る自然数をiとし、
前記固有振動モードのうち、i次の前記固有振動モードに対する前記モード損失係数をηiとし、
固有値の虚部をIm(λr)、実部をRe(λr)とすると、
前記モード損失係数ηiは、前記虚部Im(λr)を前記実部Re(λr)で除した次式(1)で表される、
請求項2に記載の防音材の設置位置最適化方法。
【数1】
【請求項4】
前記制振対象の前記構造体の情報は、形状、密度、ヤング率、ポアソン比、固定条件、加振条件を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の防音材の設置位置最適化方法。
【請求項5】
前記固有振動モードは、前記制振対象の前記構造体の情報を用い、
前記制振対象の前記構造体と前記防音材からなる系の振動方程式を、有限要素法を用いて解くことで求める、
請求項1から3のいずれか一項に記載の防音材の設置位置最適化方法。
【請求項6】
前記防音材の情報は、密度および損失係数を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の防音材の設置位置最適化方法。
【請求項7】
前記防音材の設置位置を求めることは、
前記構造体において前記防音材を設置可能な領域を細分化することと、
細分化した前記領域を前記目的関数を用いて最適化を行うことと、
を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の防音材の設置位置最適化方法。
【請求項8】
前記防音材は、
ゴム弾性を有するシート状の基材と、
前記基材に設けられた共振部と、
を備え、
前記共振部は、基部と、前記基部に支持される錘部と、を有し、
前記錘部は、前記基部よりも大きな質量を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の防音材の設置位置最適化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音材の設置位置最適化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車をはじめとする種々の機械の高性能化・高燃費化や建造物の高層化が進んでおり、静音化と軽量化の両立が求められている。そのため、近年では軽量な防音手段の研究開発が進められている。
【0003】
防音材の一種である制振遮音材料の特性は、一般的に質量則に従う。すなわち、騒音低減量の指標として扱われる透過損失は、制振遮音材料の質量と弾性波や音波の周波数との積の対数により決定される。そのため、ある一定周波数の騒音の低減量をより大きくするためには、制振遮音材料の質量を増やさなければならない。しかしながら、制振遮音材料の質量を増やす方法では、機械や建造物の質量や設置箇所の制約により、騒音低減量に限界が生じる。
【0004】
制振遮音材料の質量増加の問題を解決するために、従来から、部材構造の改良がなされている。例えば、石膏ボード、コンクリート、鋼板、ガラス板、樹脂板等の剛性のある平板材を複数枚組み合わせて用いる方法や、石膏ボード等を用いて中空二重壁構造や中空三重壁構造とする方法等が知られている。また、本出願人は先に、質量則を凌駕する遮音性能を実現するために、ゴム弾性を有するシート及び基部と錘部を備えた、局所共振器を2次元で連結した制振遮音シート部材を提案した(特許文献1)。
【0005】
さらに、特許文献2には、振動検出手段と、振動発生手段と、を有するアクティブ制振装置が開示されている。特許文献3、4には、防音材として受動型の動吸振器が設置される構造の設計方法が開示されている。特許文献5には、受動型の動吸振器の設置位置及びその設計方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017/135409号
【特許文献2】特開2016-173164号公報
【特許文献3】特開2017-151866号公報
【特許文献4】特開2017-110747号公報
【特許文献5】特開昭62-233537号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】山本祟史,山田祟恭,泉井一浩,西脇眞二,”トポロジー最適化による薄板上の非拘束制振材の配置最適化”,日本機械学会論文集,Vol.80 No809(2014) pp.DR0016
【非特許文献2】中野陽平,竹澤晃弘,中川興也,北村充,”モード減衰比の向上を目的としたマルチマテリアルトポロジー最適化”,日本機械学会 Dynamics&Design Conference (2016)
【非特許文献3】Bendsoe M.P.and Sigmund O.“Topology Optimization―Theory, Methods, and Applications”, Springer(2003).
【非特許文献4】Krister Svanberg,” The method of moving asymptotes-a new method for structural optimization, International Journal for Numerical Methods in Engineering vol.24 359-373(1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
制振遮音材料は設置する場所によっても、質量あたりの制振量や遮音量が異なる。そのため、設置可能な制振遮音材料の質量に制限がある条件下で、効果的に制振・遮音を行うためには、制振遮音材料の設置位置を最適化することが重要となる。
【0009】
特許文献2には、装置の設置位置の最適化は記載されているが、振動検出手段と、振動発生手段と、を有するアクティブ制振装置であるため、局所共振器のようなパッシブ制振装置と比較して、装置の大型化および複雑化は避けられない。特許文献3、4には、局所共振器の一種である、受動型の動吸振器が設置される構成が開示されているが、設置位置の最適化には言及されていない。
【0010】
パッシブ型の制振遮音材料を制振対象に設置する場合は、振動の振幅が大きいところにあらかじめ設置することで効果的に制振することが可能である。制振対象の形状や固定条件が単純である場合は、制振遮音材料の効果的な設置位置を容易に推定可能だが、制振対象の形状や固定条件が複雑な場合は、制振遮音材料の効果的な設置位置を決定することは困難である。
【0011】
特許文献5では、受動型の動吸振器の設置位置及びその設計方法について記載されているが、各固有振動モードに対して一つの動吸振器を設置する設計方法である。実際に制振対象に制振遮音材料を設置する際は、設置可能な制振遮音材料の質量制限に加えて、設置可能な領域や高さに制限があることも多い。一つの固有振動モードに一つの制振遮音材料を設置するよりも、複数の制振遮音材料を設置した方が小型化や設置時の融通性において有利であるが、特許文献5の設計手法では一つの固有振動モードに複数の動吸振器を設置する場合のような位置最適化については対応することができない。
【0012】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、設置可能な防音材の質量制限がある条件下で、防音材の設置位置を最適化し、効果的に制振対象を制振することを目的とする。
より詳細には、設置可能な質量体や局所共振器の重量制限がある場合での、「制振対象の固有振動モードの固有振動数が最小となる」、または、「前記固有振動モードにおける前記局所共振器によるエネルギー散逸の割合であるモード損失係数が最大となる」ような、防音材の設置位置最適化方法を提供することで、複数の固有振動モードにわたって、複数個の局所共振器を設置する系においても効果的に制振対象を制振することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、制振対象の構造体の固有振動モードと、防音材の質量上限と、防音材の情報とに基づき、前記固有振動モードの固有周波数、またはモード損失係数を目的関数としてトポロジー最適化を行い、防音材の設置位置を求めることで、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
[1] 制振対象の構造体の情報から固有振動モードを求めることと、制振対象の前記構造体に設置可能な防音材の質量上限と、前記防音材の情報と、に基づいて、前記防音材の前記質量上限の範囲において前記構造体への前記防音材の設置位置を求めることと、を含み、前記防音材は、局所共振器または質量体であり、前記防音材の設置位置を求めることは、前記構造体の固有振動数が最小となることを目的関数として用いる、防音材の設置位置最適化方法。
[2] 制振対象の構造体の情報から固有振動モードを求めることと、前記制振対象の前記構造体に設置可能な防音材の質量上限と、前記防音材の情報と、に基づいて、前記防音材の前記質量上限の範囲において前記構造体への前記防音材の設置位置を求めることと、を含み、前記防音材は、局所共振器であり、前記防音材の設置位置を求めることは、前記固有振動モードにおける前記局所共振器によるエネルギー散逸の割合であるモード損失係数が最大となることを目的関数として用いる、防音材の設置位置最適化方法。
[3] 前記モード損失係数は、前記局所共振器に空間固定の複素バネ定数を適用し、或る自然数をiとし、前記固有振動モードのうち、i次の前記固有振動モードに対する前記モード損失係数をηiとし、固有値の虚部をIm(λr)、実部をRe(λr)とすると、前記モード損失係数ηiは、前記虚部Im(λr)を前記実部Re(λr)で除した次式(1)で表される、前記[2]に記載の防音材の設置位置最適化方法。
【数1】

[4] 前記制振対象の前記構造体の情報は、形状、密度、ヤング率、ポアソン比、固定条件、加振条件を含む、前記[1]から[3]のいずれか一項に記載の防音材の設置位置最適化方法。
[5] 前記固有振動モードは、前記制振対象の前記構造体の情報を用い、前記制振対象の前記構造体と前記防音材からなる系の振動方程式を、有限要素法を用いて解くことで求める、前記[1]から[4]のいずれか一項に記載の防音材の設置位置最適化方法。
[6] 前記防音材の情報は、密度および損失係数を含む、前記[1]から[5]のいずれか一項に記載の防音材の設置位置最適化方法。
[7] 前記防音材の設置位置を求めることは、前記構造体において前記防音材を設置可能な設置可能領域を細分化することと、細分化した前記設置可能領域を前記目的関数を用いて最適化を行うことと、を含む、前記[1]から[6]のいずれか一項に記載の防音材の設置位置最適化方法。
[8] 前記防音材は、ゴム弾性を有するシート状の基材と、前記基材に設けられた共振部と、を備え、前記共振部は、基部と、前記基部に支持される錘部と、を有し、前記錘部は、前記基部よりも大きな質量を有する、前記[1]から[7]のいずれか一項に記載の防音材の設置位置最適化方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、設置可能な質量体や局所共振器の重量制限がある場合での、「制振対象の固有振動モードの固有振動数が最小となる」防音材の設置位置最適化方法を提供できる。
【0016】
本発明では、設置可能な局所共振器の重量制限がある場合での、「局所共振器の設置による制振対象の固有振動モードの制振量が最大となる」ような、防音材の設置位置最適化方法を提供できる。
【0017】
本発明では、複数の固有振動モードに亘って、複数個の質量体または局所共振器を設置する系でも最適化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る設置位置最適化方法で防音材1が設置された、制振対象の構造体100の斜視図である。
図2】構造体100を第1面100a側から見た平面図である。
図3】防音材1の斜視図である。
図4】局所共振器1におけるユニットセルUCを示す平面図である。
図5】同ユニットセルUCの断面図である。
図6】第1実施形態に係る設置位置最適化方法を示すフローチャートである。
図7】構造体100の固有振動モードと固有振動数を模式的に示す斜視図である。
図8】局所共振器1Aの1次の固有振動モードと固有振動数を示す図である。
図9】局所共振器1Bの1次の固有振動モードと固有振動数を示す図である。
図10】第1実施形態における、各体積上限下での局所共振器1Aの最適設置位置と設置後の固有振動数を示す斜視図である。
図11】第1実施形態における、各体積上限下での局所共振器1Aの最適設置位置に局所共振器を設置した様子を示す斜視図である。
図12】第2実施形態に係る設置位置最適化方法を示すフローチャートである。
図13】第2実施形態の設置位置最適化方法において、図7に示した構造体100の1次固有振動モードを対象とし、各体積上限下での局所共振器1Bの最適設置位置を示す斜視図である。
図14】第2実施形態の設置位置最適化方法において、図7に示した構造体100の2次固有振動モードを対象とし、各体積上限下での局所共振器1Bの最適設置位置を示す斜視図である。
図15】構造体100の1次固有振動モードを対象とし、体積上限20%下での局所共振器1Bの最適設置位置に局所共振器1Bを設置した斜視図である。
図16】対象固有振動モードが1次の場合の各体積上限下での周波数応答を示すグラフである。
図17】ユニットセルの体積上限毎のQ値の逆数と目的関数の収束値をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の防音材の設置位置最適化方法の実施の形態を、図1から図17を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0020】
図1は、本発明に係る設置位置最適化方法で防音材1が設置された、制振対象の構造体100の斜視図である。
図1に示すように、防音材1は、構造体100の第1面100aに設置されている。防音材1が設置される第1面100aにおける位置は、後述するように、構造体100の固有振動モードの固有周波数またはモード損失係数を目的関数として用いたトポロジー最適化を行うことで求められる。
【0021】
[構造体]
構造体100は、防音材1を支持可能なものであれば特に限定されないが、遮音性能を高める観点から、防音材1よりも剛性の高いものが好ましい。
図2は、構造体100を第1面100a側から見た平面図である。
図2に示すように、制振対象である構造体100の形状、材質等は特に限定されない。
構造体100を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、金属板、合金板等が挙げられる。
例えば、汎用樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、アクリロニトリル-スチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレートが挙げられる。
エンジニアリングプラスチックの例としては、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、シンジオタクチックポリスチレン、非晶ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。また、これらは硬度を増強する強化材を含んでいても良い。構造体100の例としては、アルミニウム、鉄、ステンレス等の汎用金属、合金等が挙げられる。また、上述の樹脂、金属が積層されている被着体でも良い。本実施形態の構造体100は、一例として平面視が矩形状の鋼板である。
【0022】
本実施形態の構造体100は、孔部101と固定部102とを有する。孔部101は、平面視が円形であり、構造体100を厚さ方向に貫通する。孔部101は、構造体100における長辺および短辺の中央に配置されている。固定部102は、構造体100に対して厚さ方向に変位量0.001mを加振条件として変位加振される境界となる面である。固定部102は、構造体100における第1面100aと逆側の第2面100bに配置される。固定部102は、第2面100bにおける側縁に沿って間隔をあけて複数(図2では、10箇所)配置される。固定部102は、構造体100の4隅を含み、2つの長辺に沿って等間隔となる4箇所と2つの短辺に等間隔となる3箇所にそれぞれ配置される。
【0023】
本実施形態の構造体100は、短辺の寸法L1が250mmであり、長辺の寸法L2が300mmであり、厚さが5mmである。孔部101の直径は、70mmである。固定部102の直径は、20mmである。
構造体100の物性値は、密度が1.38[g/cm]、ヤング率が7800[MPa]、ポアソン比が0.35である。
【0024】
[防音材]
図3は、防音材1の斜視図である。
図3に示すように、防音材1は、基材10と、共振部11と、を有する。基材10は、ゴム弾性を有するシート状である。共振部11は、基材10の上面10aに設けられた突起部である。防音材1は、複数の共振部11を凹凸単位形状として含む凹凸構造を有している。共振部11は、騒音源から音波が入射された際に、ある周波数で局所的に振動する振動子(動吸振器)として機能するものである。すなわち、防音材1は、局所共振器である。以下の説明では、防音材を局所共振器1と称する。局所共振器1は、共振部11を有することにより、騒音源から音波が入射された際に有効質量が増加し、質量則を凌駕する高い遮音性能を得ることができる。
【0025】
共振部11は、図3に示すように、単一構造体からなる構成でもよく、図4および図5に示すように、基部20と、この基部20に支持され、且つ、この基部20より大きな質量を有する錘部21とを備える複合構造体から構成されていてもよい。本実施形態の共振部11は、錘部21が基部20内に埋設されたナット部材から構成されている。このような複合構造体では、凹凸構造が共振部として作用する場合、共振部11は、錘として働く錘部21の質量と、バネとして働く基部20のバネ定数により決定される共振周波数を持つ動吸振器として有効に機能する。
【0026】
局所共振器1においては、例えば構造体100側にある騒音源から音波が入射された際に、基材10および共振部11の少なくとも一方の共振が生じる。このとき、構造体100に作用する力の方向と基材10および共振部11の少なくとも一方に発生する加速度の方向とが逆となる周波数領域が存在可能となり、特定周波数の振動の一部または全部が打ち消されることで、特定周波数の振動がほぼ完全に存在しなくなる完全音響バンドギャップが生じる。そのため、基材10および共振部11の少なくとも一方の共振周波数付近において、振動の一部または全部が静止し、その結果、質量則を凌駕する高い遮音性能が得られる。このような原理を利用した遮音部材は、音響メタマテリアルと呼ばれている。
【0027】
局所共振器1のうち、共振部11における基部20および基材10は、化学架橋された天然ゴム或いは合成ゴム等の加硫系熱硬化性樹脂系エラストマー、ウレタン系熱硬化性樹脂系エラストマー、シリコーン系熱硬化性樹脂系エラストマー、フッ素系熱硬化性樹脂系エラストマー、アクリル系熱硬化性樹脂系エラストマー等の熱硬化性樹脂系エラストマー、アクリル系光硬化性エラストマー、シリコーン系光硬化性エラストマー、エポキシ系光硬化性エラストマー等の光硬化性エラストマー、オレフィン系熱硬化性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0028】
熱又は光硬化性エラストマー、及び熱可塑性エラストマーのさらなる具体例としては、ゴムが挙げられる。具体的には、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリエステルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、及びこれらの変性体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0029】
さらに、これらの中でも、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリエステルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム及びこれらの変性体が好ましく、シリコーンゴム、アクリルゴム及びこれらの変性体がより好ましい。これらの材料を用いることで、耐熱性や耐寒性に優れる傾向にある。
【0030】
局所共振器1は、所謂ゴム弾性を有するシートである限り、難燃剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
難燃剤は、可燃性の素材を燃え難くする又は発火しないようにするために配合される添加剤である。その具体例としては、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモベンゼン等の臭素化合物、トリフェニルホスフェート等のリン化合物、塩素化パラフィン等の塩素化合物、三酸化アンチモン等のアンチモン化合物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、メラミンシアヌレート等の窒素化合物、ホウ酸ナトリウム等のホウ素化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
また、酸化防止剤は、酸化劣化防止のために配合される添加剤である。その具体例としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
さらに、可塑剤は、柔軟性や耐候性を改良するために配合される添加剤である。その具体例としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、ポリエステル、リン酸エステル、クエン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、マレイン酸エステル、シリコーン油、鉱物油、植物油及びこれらの変性体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
さらに、着色剤として、色素や顔料等が挙げられる。
これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
図4は、局所共振器1におけるユニットセルUCを示す平面図である。図5は、ユニットセルUCの断面図である。
図4に示すように、局所共振器1においては、1つの共振部11と、当該共振部11の周囲に位置する平面視矩形状の基材10とを含む複数のユニットセルUCが設定される。ユニットセルUCは、制振対象の構造体100に対する局所共振器1の制振効果を検証するための基本ユニットである。本実施形態のユニットセルUCにおける基材10は、1辺が30mmの正方形であり、厚さが0.5mmである。図5に示すように、円柱状の共振部11の直径をA(mm)とし、基材10を含む共振部11の高さをB(mm)とし、錘部21の高さをC(mm)とする。制振効果の検証は、ユニットセルUCにおいて、下記の表1に示される上記の寸法A、B、Cと、錘部21の質量D(g)が異なる2つの局所共振器1A、1Bを一例として用いた。
【0032】
【表1】
【0033】
[設置位置最適化方法の第1実施形態]
続いて、局所共振器1の設置位置最適化方法の第1実施形態について、図6から図11を参照して説明する。図6は、第1実施形態に係る設置位置最適化方法を示すフローチャートである。
【0034】
局所共振器1の設置位置最適化方法は、制振対象の構造体100の情報から固有振動モードを求めることと、制振対象の構造体100に設置可能な局所共振器1の質量上限と、局所共振器1の情報と、に基づいて、局所共振器1の質量上限の範囲において構造体100への局所共振器1の設置位置を求めることと、を含み、局所共振器1の設置位置を求めることは、構造体100の固有振動数が最小となることを目的関数として用いる。
【0035】
ステップS1では、図2に示した制振対象の構造体100の情報から固有振動モードを求める。
固有振動モードは、制振対象の構造体100と局所共振器1からなる系の振動方程式を、有限要素法を用いて解くことで求められる。
固有振動モードを求めるための構造体100の情報は、形状、密度、ヤング率、ポアソン比、固定条件、加振条件を含む。
図7は、構造体100の固有振動数を模式的に示す斜視図である。図7には、1次の固有振動モードにおける固有振動数と、2次の固有振動モードにおける固有振動数とが示されている。
【0036】
ステップS2では、局所共振器1を選択する。
局所共振器1の選択は、一例として、ユニットセルUCにおいて、上記の寸法A、B、Cと、錘部21の質量D(g)が異なる2つの局所共振器1A、1Bから行われる。
なお、2つの局所共振器1A、1Bにおいて、ゴム製の基材10および共振部11が持つ損失係数の値は0.1とした。
図8には、上記局所共振器1Aの1次の固有振動モードと固有振動数が示されている。
図9には、上記局所共振器1Bの1次の固有振動モードと固有振動数が示されている。
【0037】
ステップS3では、構造体100に局所共振器1の質量を反映させる。
図2に示すように、構造体100は、本来突起物である共振部11を有する局所共振器1(小型動吸振器シート)の突起部分を無くし、質量はユニットセルUCを100%の質量制約(体積制約)で設置した際のものと等しく、損失係数が局所共振器1の基材10と等しい0.1とした、厚さ0.5mmの固定設計領域110(二点鎖線で示す)が設定される。
【0038】
固定設計領域110は、短辺の寸法L3が構造体100の寸法L1よりも10mm短い240mmであり、長辺は構造体100の寸法L2と同じ300mmであり、厚さは0.5mmである。また、固定設計領域110は、平面視が1辺30mmの正方形で厚さが0.5mmの六面体要素111によって、長辺方向が10個、短辺方向が8個、厚さ方向が1個の合計80個に分割される。六面体要素111は、孔部101に存在しないため、孔部101に位置する4個が減じられて、全体で76個の要素に離散化される。
【0039】
ステップS4では、固定設計領域110に対して、目的関数を用いてトポロジー最適化を行うことで、指定の質量制約下におけるユニットセルUCの最適な配置レイアウトが材料の密度分布として得られる。
【0040】
第1実施形態においては、ステップS4において、構造体100の固有振動数が最小となることを目的関数として用いる。
本実施形態では、局所共振器1が制振対象の構造体100に設置された系を対象として有限要素法によって解析する。その後に、解析結果から得られる固有振動モードの固有振動数を目的関数としてトポロジー最適化を行う。この際に必要なモード損失係数とトポロジー最適化について簡単に述べ、最適化問題を定式化する。
【0041】
本実施形態では、配置する局所共振器1の質量を指定の値(上限値)以下にするという制約条件の下で,制振対象の構造体100における固有振動モードの固有振動数を最小化するような材料の設置位置(配置レイアウト)を求めることを目標とする。よって、固定設計領域110における質量上限に対応する体積の上限値をVmaxとすると、本発明で対象とするトポロジー最適化問題は次のように定式化することができる。
【0042】
【数2】
【0043】
本実施形態では、局所共振器1を含む系の振動減衰の評価指標として、固有振動モードそれぞれにおける局所共振器1によるエネルギー散逸の割合であるモード損失係数を用いる。このため、対象の系における局所共振器1の部分には空間固定の複素バネ定数を適用する。このとき、或る自然数をiとし、固有振動モードのうち、i次の固有振動モードに対する系のモード損失係数をηiとし、固有値の虚部をIm(λr)、実部をRe(λr)とすると、モード損失係数ηiは、虚部Im(λr)を実部Re(λr)で除した次式(1)で表される(非特許文献1,2参照)。
【0044】
【数3】
【0045】
本実施形態では、設計空間の緩和手法として 、SIMP法(非特許文献3参照)を用いたトポロジー最適化を行う。SIMP法では、固定設計領域110をl個の領域に分割し、各々の分割された領域に対して下記の式(2)で表される密度関数ρj={ρ1,ρ2,…,ρl}を順次割り当てる。
0<ρi≦1、 for i=1,2,…,l …(2)
そして、下式(3)-(5)のように、各設計領域における材料物性を密度関数のべき乗によって定義する。ただし、Eはヤング率、ρは質量密度、ηは損失係数である。
【0046】
【数4】
【0047】
上記の式(3)-(5)において材料物性算出の式に用いられるpE、pρ、pηはペナルティ係数であり、それぞれpE=3、pρ=1、pη=1とした(非特許文献2参照)。
【0048】
本実施形態では設計変数である密度関数の更新にMMA(非特許文献4参照)を用いる。この場合、目的関数の設計変数に対する感度が必要となる。目的関数Fの設計変数ρjでの感度は、下式(10)で得られる。
【0049】
【数5】
【0050】
また、Φ†M=1に正規化されているとすると、下式(11)で表される。
【0051】
【数6】

【0052】
設置位置最適化方法においては、最初に対象とする固有モードを選択した後、設計変数 ρjを初期化する。次に最適化のステップkにおいて、有限要素法を用いて振動方程式を解き、固有値と固有モードを求める。この際、有限要素法は解析ソフト「COMSOL社製 Multiphysics 5.5」を用いて計算を行った。次に、「MATLAB(登録商標)」を用いて目的関数と体積制約の値を計算後、目的関数に対して収束判定をおこなう。ここで収束していれば最適化終了となるが、収束していなければ目的関数と体積制約に関する設計感度を計算する。その後、上述したMMAを用いて設計変数を更新し、ステップを k→k+1として繰り返し計算を行う。
【0053】
上記の固定設計領域110に対して、上述した目的関数を用いてトポロジー最適化を行うことにより、指定の体積制約下におけるユニットセルUCの最適な配置レイアウトが材料の最適密度分布として得られる。
【0054】
最適密度分布を求める際には、ステップS5において、76個に細分化された固定設計領域110のそれぞれの領域における密度関数の値に対して、0.5をしきい値として0または1に離散化させ、0.5を超えた領域を局所共振器1の設置位置とする。
【0055】
図10には、第1実施形態の設置位置最適化方法において、制振対象モードを1次振動モード、体積上限を10%、30%、50%としたときのそれぞれの局所共振器1Aの最適設置位置と設置後の固有振動数が示されている。図10で示した最適化結果と図7に示した1次振動モードから、最適な局所共振器1Aの設置レイアウトは、対象としたモードの振動における振動の大きな位置になっていることが確認できた。
【0056】
ステップS6では、離散化により密度関数の値が1の領域に局所共振器1を設置する。
図11は、第1実施形態の設置位置最適化方法で求めた最適な設置レイアウトに局所共振器1Aを配置した斜視図である。
図11に示される局所共振器1Aは、図3に示したように、アレイ状に複数のユニットセルUCが配列された局所共振器1Aのうち、設置位置最適化方法で求めた最適な設置レイアウトに応じた個数・配置のユニットセルUCを含む領域を選択して抜き出し、構造体100に設置されたものである。
アレイ状に複数のユニットセルUCが配列された局所共振器1を準備しておくことにより、設置位置最適化方法で求めた最適な設置レイアウトに応じて、高い汎用性でユニットセルUCを含む領域を選択して構造体100に設置することが可能になる。
【0057】
以上のように、本実施形態の設置位置最適化方法では、設置可能な局所共振器1の質量制限がある場合において、「制振対象の固有振動の固有振動数が最小となる」局所共振器1の最適な設置位置を決定することができる。
【0058】
[設置位置最適化方法の第2実施形態]
続いて、局所共振器1の設置位置最適化方法の第2実施形態について、図12から図17を参照して説明する。
これらの図において、図6から図11に示す第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略または簡略化する場合がある。
【0059】
図12は、第2実施形態に係る設置位置最適化方法を示すフローチャートである。
第2実施形態においては、第1実施形態におけるステップS4で構造体100の固有振動数が最小となることを目的関数する代わりに、ステップS14において、固有振動モードにおける局所共振器1によるエネルギー散逸の割合であるモード損失係数ηiが最大となることを目的関数として用いることにより、モード損失係数最大化トポロジー最適化を行う。
【0060】
本実施形態では、配置する局所共振器1の質量を指定の値(上限値)以下にするという制約条件の下で,モード損失係数ηiを最大化するような材料の配置レイアウトを求めることを目標とする。よって、固定設計領域110としての固定設計領域Ωdにおける質量に対応する体積の上限値をV0とすると、本発明で対象とするトポロジー最適化問題は次のように定式化することができる。
【0061】
【数7】
【0062】
上記の式において、ρminは、数値解析を行う中で特異性を回避するために設計変数に定める下限値であり、微小な正の定数である。本実施形態では、ρmin=0.001としている。
【0063】
上記の固定設計領域110に対して、上述した目的関数を用いてトポロジー最適化を行うことにより、指定の体積制約下におけるユニットセルUCの最適な配置レイアウトが材料の最適密度分布として得られる。その後に、上記第1実施形態と同様に、ステップS5において、ステップS5において、76個に細分化された固定設計領域110のそれぞれの領域における密度関数の値に対して、0.5を超えた領域を局所共振器1の設置位置とする。
【0064】
図13は、第2実施形態の設置位置最適化方法において、図7に示した構造体100の1次固有振動モードを対象とし、20%、30%、50%、70%の各体積上限下での局所共振器1Bの最適設置位置を示す斜視図である。
図14は、第2実施形態の設置位置最適化方法において、図7に示した構造体100の2次固有振動モードを対象とし、20%、30%、50%、70%の各体積上限下での局所共振器1Bの最適設置位置を示す斜視図である。
【0065】
図13および図14で示した最適化結果と図7に示した固有振動モードから、最適な局所共振器1Bの設置レイアウトは、対象としたモードの振動における振動の大きな位置になっていることが確認できた。
【0066】
ステップS6では、離散化により密度関数の値が1の領域に局所共振器1を設置する。
図15は、第2実施形態の設置位置最適化方法における、図7に示した構造体100の1次固有振動モードを対象とし、一例として、体積上限約20%下での局所共振器1Bの最適設置位置に局所共振器1Bを設置した斜視図である。
図15に示される局所共振器1においても、図3に示したように、アレイ状に複数のユニットセルUCが配列された局所共振器1Bのうち、設置位置最適化方法で求めた最適な設置レイアウトに応じた個数・配置のユニットセルUCを含む領域を選択して抜き出し、構造体100に設置することができる。
本実施形態においても、アレイ状に複数のユニットセルUCが配列された局所共振器1を準備しておくことにより、設置位置最適化方法で求めた最適な設置レイアウトに応じて、高い汎用性でユニットセルUCを含む領域を選択して構造体100に設置することが可能になる。
【0067】
ステップS7では、第2実施形態の設置位置最適化方法で得られた最適配置レイアウトを基にして、局所共振器1Bを構造体100上に設置した図15に示した詳細モデルを作成し周波数応答解析を行う。
【0068】
図16には、対象固有振動モードが1次の場合の各体積上限(100%;G1、50%;G2、30%;G3、20%;G4、10%;G5、0%;G6)下での周波数応答グラフが示されている。図16において、横軸は周波数[Hz]であり、縦軸は制振対象である構造体100の厚さ方向の振幅の平均値[m]である。
【0069】
ここで、制振効果を数値的に評価する為、それぞれの共振ピークで半値幅法によりQ値を算出し、その逆数をもって制振効果を評価する。
図17には、対象固有振動モードが1次の場合のユニットセルUCの体積上限毎のQ値の逆数と目的関数の収束値をプロットしたグラフが示されている。図17に示されるように、目的関数の収束値とQ値の逆数の間には相関があることが確認できた。
【0070】
以上のように、本実施形態の設置位置最適化方法では、設置可能な局所共振器1の質量制限がある場合において、「局所共振器1の設置による制振対象の固有振動モードの制振量が最大となる」ような、局所共振器1の最適な設置位置を決定することができる。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0072】
例えば、上記設置位置最適化方法の第1実施形態では、防音材が局所共振器1である構成を例示したが、この構成に限定されない。
防音材として構造体100に質量体である重錘を設置する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1…防音材(局所共振器)、 10…基材、 11…共振部、 20…基部、 21…錘部、 100…構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17