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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043278
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】制汗剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20240322BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20240322BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20240322BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20240322BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/25
A61K8/26
A61Q15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148376
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】木下 冬弥
(72)【発明者】
【氏名】吉村 典子
(72)【発明者】
【氏名】福寿 忠弘
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB221
4C083AB222
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC072
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC342
4C083AC442
4C083AC482
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083CC17
4C083EE06
4C083EE50
(57)【要約】
【課題】 制汗効果が良く、質感が良い制汗剤組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の制汗剤組成物は、疎水性シリカエアロゲルと、グリセリルアルキルエーテルと、制汗成分とを含有する制汗剤組成物であって、前記疎水性シリカエアロゲルの含有量が0.1~1.0質量%未満であり、前記グリセリルアルキルエーテルの含有量が0.1~10.0質量%であり、前記制汗成分の含有量が1.0~25.0質量%である。これらを組み合わせて配合することにより、各成分の相乗効果によって、制汗作用が良く、質感の良い制汗剤組成物を得ることができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性シリカエアロゲルと、グリセリルアルキルエーテルと、制汗成分とを含有する制汗剤組成物であって、
前記疎水性シリカエアロゲルの含有量が0.1~1.0質量%未満であり、
前記グリセリルアルキルエーテルの含有量が0.1~10.0質量%であり、
前記制汗成分の含有量が1.0~25.0質量%であることを特徴とする制汗剤組成物。
【請求項2】
前記疎水性シリカエアロゲルは、コールターカウンター法で測定した体積基準のメジアン径が1~200μm、比表面積が350~1000m/g、細孔容積が1~6ml/g、細孔半径のピーク値が3~40nmである請求項1に記載の制汗剤組成物。
【請求項3】
前記疎水性シリカエアロゲルが球状である請求項1又は2に記載の制汗剤組成物。
【請求項4】
前記疎水性シリカエアロゲルは、吸油量が400~800mL/100g、M値が20~60である請求項1又は2に記載の制汗剤組成物。
【請求項5】
前記グリセリルアルキルエーテルが、エチルヘキシルグリセリンである請求項1又は2に記載の制汗剤組成物。
【請求項6】
前記制汗成分が、クロロヒドロキシアルミニウム、又は、クロロヒドロキシアルミニウム・ジルコニウムとグリシンとの錯体から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の制汗剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制汗剤組成物に関する。更に詳しくは、制汗作用が良く、質感に優れた制汗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
汗腺は、発汗により体温調節を行う重要な器官であるが、発汗によって生じる臭いは不快感を生じる。汗によるべたつきや臭いによって生じる不快感を防止する化粧料として、制汗成分や抗菌成分を配合し、汗や臭いの発生を抑える制汗剤組成物が使用されている。
制汗剤組成物には、塗布時にさらさらとした感触を得るためにシリカが使用されている。ここで、配合するシリカとして、吸油量の高い疎水性シリカエアロゲルを1質量%~30質量%の配合することで、疎水性シリカエアロゲルが肌の皮脂や油分を効果的に吸収し、肌への密着性を高め、汗腺の閉塞効果を高めることを見出し、制汗作用を向上させた制汗剤組成物が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、「制汗作用」とは、汗の分泌を抑制する効果のことである。制汗作用が、「向上」、「良い」、「優れる」状態とは汗の分泌が抑制された状態にあることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-062424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、制汗剤組成物において、1質量%以上の疎水性シリカエアロゲルを配合すると、制汗剤組成物が増粘し、べたつきや塗りにくさが生じ、質感が悪くなる傾向があった。一方、疎水性シリカエアロゲルの配合量を少なくすると、制汗作用が落ちる傾向があった。従って、本発明は、制汗作用が良く、しかも、質感が良い制汗剤組成物を提供することを目的とする。
ここで、「質感」とは、制汗剤組成物の塗布時に使用者が感じる感触のことである。質感が「良い」とは使用時に感じる感触がべたつかず、滑らかで肌への密着性が良い快適な感触であり、「悪い」とは使用時にべたつきを感じ塗布しにくく、肌への密着性が悪い不快な状態である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った。そして制汗剤組成物として、疎水性シリカエアロゲルと、グリセリルアルキルエーテルと、制汗成分とを所定の含有量で組み合わせて配合することにより、各成分の相乗効果によって、制汗作用が良く、質感の良い制汗剤組成物を得ることができることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明の制汗剤組成物は、疎水性シリカエアロゲルと、グリセリルアルキルエーテルと、制汗成分とを含有する制汗剤組成物であって、前記疎水性シリカエアロゲルの含有量が0.1~1.0質量%未満であり、前記グリセリルアルキルエーテルの含有量が0.1~10.0質量%であり、前記制汗成分の含有量が1.0~25.0質量%である。
また、本発明の制汗剤組成物において、前記疎水性シリカエアロゲルは、コールターカウンター法で測定した体積基準のメジアン径が1~200μm、比表面積が350~1000m/g、細孔容積が1~6ml/g、細孔半径のピーク値が3~40nmであることが好ましい。
本発明の制汗剤組成物において、前記疎水性シリカエアロゲルが球状であることが好ましい。
本発明の制汗剤組成物において、前記疎水性シリカエアロゲルは、吸油量が400~800mL/100g、M値が20~60であることが好ましい。
本発明の制汗剤組成物において、前記グリセリルアルキルエーテルが、エチルヘキシルグリセリンであることが好ましい。
本発明の制汗剤組成物において、前記制汗成分が、クロロヒドロキシアルミニウム、又は、クロロヒドロキシアルミニウム・ジルコニウムとグリシンとの錯体から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の制汗剤組成物は、吸油量の高い疎水性シリカエアロゲルが、皮脂吸収と有効成分であるグリセリルアルキルエーテルの担持・徐放を行い、制汗成分が、皮脂の吸収された肌の汗腺に蓋をし、制汗作用を発揮し、更に、徐放されたグリセリルアルキルエーテルが、抗菌効果、保湿効果を発揮することで、各成分の相乗効果が発揮され、制汗作用、質感を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に示す形態は本発明の例示であり、本発明がこれらの形態に限定されるものではない。
以下、本発明について詳細に説明する。
[制汗剤組成物]
本発明の制汗剤組成物は、疎水性シリカエアロゲルと、グリセリルアルキルエーテルと、制汗成分とを含有する制汗剤組成物であって、前記疎水性シリカエアロゲルの含有量が0.1~1.0質量%未満であり、前記グリセリルアルキルエーテルの含有量が0.1~10.0質量%であり、前記制汗成分の含有量が1.0~25.0質量%である。
【0009】
<疎水性シリカエアロゲル>
本発明の制汗剤組成物に含まれる疎水性シリカエアロゲル(以下、単に「シリカエアロゲル」ともいう)は公知のものでよく、例えば、特開2018-177620号公報記載の方法により製造したものを使用することができる。
以下、本発明に使用されるシリカエアロゲルの好ましい性状について示す。
【0010】
(メジアン径)
本発明で用いるシリカエアロゲルは、コールターカウンター法による体積頻度の粒度分布におけるメジアン径(以下、単に「メジアン径」と記す場合がある)が1~30μmの範囲である。当該疎水性シリカエアロゲルのメジアン径がこの範囲にあることで、白浮きし難く、滑らかな触感の制汗剤組成物を得ることができる。また、肌との密着性の観点からもシリカエアロゲルの粒径は30μm以下であることが好ましい。当該メジアン径は1~20μmの範囲にあることが好ましく、5~20μmが特に好ましい。
シリカエアロゲルとしてメジアン径が1μm未満であると制汗剤組成物が増粘し、質感が悪化する傾向にある。メジアン径が30μmを超えるとエアゾール型の制汗剤組成物にした場合に目詰まりすることがある。
【0011】
(比表面積)
本発明において、前記シリカエアロゲルのBET法による比表面積(BET比表面積)は、好ましくは、350~1000m/gであり、更に好ましくは、400~850m/gである。BET比表面積がこの範囲内であると適度な粘度で滑らかな感触を有する制汗剤組成物を提供することができるので好ましい。比表面積がこの範囲を超えて小さい場合には、持続性を向上させる効果が小さい傾向にあり、比表面積がこの範囲を超えて大きい場合には、制汗剤組成物が増粘し、質感が悪化する傾向にある。
ここで、上記BET法による比表面積は、測定対象のサンプルを、1kPa以下の真空下において、200℃の温度で3時間以上乾燥させ、その後、液体窒素温度における窒素の吸着側のみの吸着等温線を取得し、BET法により解析して求めた値である。
【0012】
(平均円形度)
本発明において、シリカエアロゲルの粒子形状は特に制限されないが、球状であることが好ましく、その平均円形度が0.8以上であることが好ましく、特に、0.85以上であることが好ましい。上記平均円形度が0.8より大きくなって1に近くなるほど、個々の粒子は真球に近い形状となり、凝集粒子も少なくなる。よって平均円形度が高ければ化粧料添加剤として利用したときにローリング性が良くなり、優れた触感が得られる。
上記「平均円形度」とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、二次電子検出、低加速電圧(1kV~3kV)、倍率1000倍で観察したSEM像を得、個々の粒子について下記式(1)によって定義される値C(円形度)を求め(画像解析)、この円形度Cを2000個以上の粒子について相加平均値として出した値である(画像解析法)。この際、一個の凝集粒子を形成している粒子群は1粒子として計数する。
C=4πS/L (1)
上記式(1)において、Sは当該粒子が画像中に占める面積(投影面積)を表し、Lは画像中における当該粒子の外周部の長さ(周囲長)を表す。
【0013】
(M値)
上記シリカエアロゲルは、疎水性である。ここで、疎水性か否かは以下の方法で確認される。即ち、50mlのガラス製のサンプル瓶に25mlの水を入れ、そこへ試験対象とするシリカエアロゲル0.1gを添加して良く振り混ぜた後に、当該シリカエアロゲルの全量が、水に分散せず浮遊していることで確認できる。
上記シリカエアロゲルの疎水性の程度は、M値により測定することができる。当該M値の測定方法は、次の通りである。シリカエアロゲル0.2gを容量250mLのビーカー中の50mLの水に添加し、メタノールをビュレットから徐々に滴下する。この際ビーカー内の溶液をマグネティックスターラーで常時攪拌しておく。添加したシリカエアロゲルの全量が液中に懸濁された時点を終点とし、終点におけるビーカーの液体混合物のメタノールの容量百分率(%)がM値となる。
上記シリカエアロゲルの疎水性の指標であるM値は、20~60、好ましくは、30~50であることが好ましい。M値がこの範囲にあることで、制汗剤組成物の塗布後に形成される被膜に対して撥水性を与えることが可能となり、制汗作用が向上すると共に、被膜が外部からの水によって流れ落ちることを抑制することが可能となる。
【0014】
(シリル化)
上記M値を示すシリカエアロゲルにおいて、疎水性が付与される態様の具体例としては、シリル化剤で処理されていることにより、表面に有機シリル基が導入された形態を挙げることができる。当該有機シリル基としては前記したM値の範囲となりやすい点でトリメチルシリル基であることが好適である。
上記シリル化剤の具体例としては、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン等のクロロシラン類、モノメチルトリメトキシシラン、モノメチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等のシラザン類、ヘキサメチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等のシロキサン類、シロキサンオクタメチルシクロテトラシラザン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサンなどが挙げられる。そのうち、M値を前記した範囲に制御しやすい点で、クロロトリメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサンが特に好ましい。一般的には、上記シリル化剤とシリカエアロゲルのシラノール基とが反応し、シリカエアロゲルの表面に対応する疎水基が導入される。
【0015】
(細孔容積)
本発明で用いるシリカエアロゲルは、細孔容積が3~6mL/gであることが好ましい。下限値は、3.5mL/g以上、特に、4mL/g以上であることがより好ましい。また、上限は6mL/g以下であることがより好ましい。細孔容積がこの範囲内であると、抗菌成分の担持性に優れる効果を発揮するので好ましい。細孔容積がこの範囲よりも小さい場合には、空隙が小さくなり、抗菌成分を担持する量が小さくなる傾向にある。細孔容積がこの範囲を超えて大きい場合には、制汗剤組成物が増粘し、質感が悪化する傾向にある。
上記細孔容積は、上記のBET比表面積測定の際と同様に吸着等温線を取得し、BJH法(Barrett, E. P.; Joyner, L. G.; Halenda, P. P., J. Am. Chem. Soc. 73, 373 (1951)により解析して得られたものである(以下、「BJH細孔容積」ということがある。)。当該方法により測定される細孔は、半径1~100nmの細孔であり、この範囲の細孔の容積の積算値が本発明における細孔容積となる。
【0016】
(細孔半径のピーク、及び分布)
本発明で用いるシリカエアロゲルは、その細孔半径のピークが、好ましくは10~40nm、更に好ましくは10~30nmのものが推奨される。細孔半径のピークがこの範囲にシャープに存在していることにより、シリカエアロゲルの透明性が高くなる傾向にあり、制汗剤組成物として肌に塗布した場合に白浮きを起こし難くなる。
尚、本発明において、細孔半径のピーク、及び分布は、前記と同様に取得した吸着側の吸着等温性をBJH法によって解析して得られる、細孔半径の対数による累積細孔容積(体積分布曲線)より求めたものである。
【0017】
(吸油量)
本発明において用いるシリカエアロゲルは、前述のとおり比表面積、細孔容積共に大きいことが好ましく、その吸油量は、通常、400mL/100g以上、800mL/100g以下であることが好ましい。吸油量がこの範囲内であると、外観保持性が良く、滑らかな触感を有する化粧料を提供することができるので好ましい。吸油量の下限値がこの範囲を超えて小さいと、抗菌成分を担持する量が小さくなる傾向にある。吸油量の上限値がこの範囲を超えて大きいと、制汗剤組成物が増粘し、質感が悪化する傾向にある。
当該吸油量は、JIS K5101-13-1「精製あまに油法」記載の方法により測定した値である。
【0018】
<グリセリルアルキルエーテル(抗菌成分)>
グリセリルアルキルエーテルは、抗菌作用を持ち、制汗剤組成物に加えることにより、体臭の原因物質を作り出す皮膚の常在菌の増殖を抑制させ、防臭効果が得られる。加えて、グリセリン誘導体であるため、保湿効果があり、シリカエアロゲルの吸油による乾燥を防ぎ、適度に保湿することで、質感を高める効果がある。
【0019】
本発明に用いることができるグリセリルアルキルエーテルは、例えば、メチルヘプチルグリセリン、エチルヘキシルグリセリン、1-オクチルグリセリルエーテル、イソデシルグリセリルエーテル及びドデシルグリセリン等が挙げられるが、中でもエチルヘキシルグリセリンが好ましい。グリセリルアルキルエーテルは、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0020】
<制汗成分>
制汗成分は皮膚を収斂させることによって、汗の発生を抑える成分であれば、特に限定はなく、汎用の成分を利用できる。例えば、クロロヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、アラントインアルミニウム塩、クロロヒドロキシジルコニウム、酸化ジルコニウム、タンニン酸、硫酸アルミニウムカリウム、アルミニウムジルコニウムトリクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムテトラクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムペンタクロロハイドレート、アルミニウムジルコニウムオクタクロロハイドレート、アルミニウム・ジルコニウムテトラクロロハイドレックスグリシン、酸化亜鉛、パラフェノールスルホン酸亜鉛、焼きミョウバン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。特に、クロロヒドロキシアルミニウム、又は、アルミニウム・ジルコニウムテトラクロロハイドレックスグリシンから選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
<各成分の含有量>
本発明の制汗剤組成物において、シリカエアロゲルの配合量は、制汗剤組成物全体を100質量%として、0.1~1.0質量%未満であり、0.3~0.8質量%であることが好ましい。配合量が多いほど制汗作用が向上する傾向があるが、1.0質量%以上であると、べたつきや塗りにくさが生じ、質感が悪くなる傾向がある。
また、グリセリルアルキルエーテルの含有量は、防臭効果の点から、0.1~10.0質量%であり、0.5質量%~2.0質量%が好ましい。含有量が0.1質量%未満であると、防臭効果が不十分となることがある。
また、制汗成分の含有量は、制汗効果と肌への刺激性の点から、1.0~25.0質量%であり、2.0質量%~20.0質量%が好ましい。含有量が1.0質量%未満であると、制汗効果が不十分となることがある。
各成分の含有量が上記範囲内であると、吸油量の高い疎水性シリカエアロゲルが、皮脂吸収と有効成分であるグリセリルアルキルエーテルの担持及び徐放を行い、制汗成分が、皮脂の吸収された肌の汗腺に蓋をし、制汗作用を発揮し、更に、徐放されたグリセリルアルキルエーテルが、抗菌効果、保湿効果を発揮することで、各成分の相乗効果が発揮され、優れた制汗作用、質感を得ることができる。
【0022】
<その他の成分>
本発明の制汗剤組成物において、制汗剤組成物の含有成分として公知の成分を、当該制汗剤組成物の目的や用途に合わせて特に限定なく含有することができる。例えば、界面活性剤、酸化防止剤、乳化安定剤、pH調整剤、収斂剤、防腐剤、紫外線吸収剤、キレート剤、保湿剤、増粘剤、清涼剤、抗炎症剤、ビタミン剤、抗ケーキング剤、感触改善剤などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記制汗剤における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0023】
前記界面活性剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、具体的には、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリビニルアルコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸のアルカリ金属塩、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコトリエノールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記収斂剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫酸亜鉛、フェノールスルホン酸亜鉛、クエン酸、酒石酸、乳酸、タンニン酸、ミョウバンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記防腐剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サリチル酸、イオウ、レゾルシン、フェノキシエタノール、プロピルパラペベン等などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記保湿剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、ソルビトール、デキストリン、安息香酸アルキル(C12―15)、ジメチコン、シクロペンタシロキサン等などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記増粘剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、オゾケライト、ステアリルジメチコン、(C20-40)アルコール、ステアリルアルコール等などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記抗ケーキング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セリサイト、タルクが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種を併用してもよい。
【0030】
前記感触改善剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セリサイト、タルクが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種を併用してもよい。
【0031】
[制汗剤組成物の剤型]
本発明の制汗剤組成物の剤型としては、例えば、制汗パウダー、制汗スティック、制汗防臭スプレー、制汗ローション、ロールオン制汗剤類等とすることができる。
【0032】
[制汗剤組成物の製造方法]
本発明の制汗剤組成物は、公知の方法に従って製造することができるが、例えば、前記シリカエアロゲルとグリセリルアルキルエーテルを、所望の含有量となるように配合して有効成分担持シリカエアロゲルを調製し、これに前記制汗成分およびその他の成分を配合することにより、制汗剤組成物を製造することができる。
【実施例0033】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではない。
【0034】
<シリカエアロゲル>
疎水性シリカエアロゲルは、トリメチルシリル基により表面が修飾されており、特開2018-177620号公報に記載されている方法により製造したものである。実施例で使用したシリカエアロゲルの物性を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
<評価方法>
シリカエアロゲルの物性値については、以下の方法により評価を行った。
【0037】
(平均円形度の測定)
2000個以上のシリカ粒子についてSEM(日立ハイテクノロジーズ製S-5500、加速電圧3.0kV、二次電子検出)を用いて倍率1000倍で観察したSEM像を画像解析し、前述の定義に従って平均円形度を算出した。
【0038】
(コールターカウンター法による粒度分布、メジアン径の測定)
40mlのエタノールに対してシリカを0.3g添加し、シャープマニュファクチュア
リング株式会社製の超音波洗浄機UT-105Sを用いて、出力100wで5分間分散さ
せた。尚、上記分散は、容量50mlのラボランスクリュー管瓶を使用し、適正量の水を
入れた洗浄槽内に設置して行った。
【0039】
得られたエタノール分散液をベックマン・コールター株式会社製精密粒度分布測定装置
Multisizer3を用い、100μmのアパチャーチューブを使用して測定した。
得られた粒度分布から、体積分布に対するメジアン径を評価した。
【0040】
(その他の物性値の測定)
BET比表面積、及びBJH細孔容積の測定は、上述の定義に従って日本ベル株式会社製BELSORP-maxにより行った。吸油量の測定は、JIS K5101-13-1に規定されている「精製あまに油法」により行った。
【0041】
(実施例1、比較例1~2)
表2の配合に従って、制汗剤組成物を作製した。作製手順を以下に示す。
(1)成分A、成分B、成分Dをそれぞれ混合する。
(2)成分Aに成分Bを加えながら、撹拌混合する。
(3)2に成分Cを加えながら、撹拌混合する。
(4)3に成分Dを加えながら、撹拌混合する。
(5)4を高さ750mm、楕円形370mm×170mmのスティック型の容器内に流し込み、30分間冷却することで、スティック状に成型する。
【0042】
【表2】
【0043】
<制汗剤組成物の官能性試験>
実施例及び比較例に従って製造した制汗剤組成物における制汗作用について、専門パネラー20名による官能試験を行った。各制汗剤組成物を毎日夕方の入浴後に脇の下に塗布し、涼しく換気された状態に保った。各評価項目について、表3に示す基準で5段階評価を行った。その平均値を求め、下記判定基準によって評価した。その結果を表4に示す。
【0044】
評価項目を以下に示す。
・使用初日の評価
・他の評価時とは別の日に発汗する程度の運動を1時間行った後の評価
・使用7日後の評価
・製品の質感
【0045】
上記「使用初日の評価」とは、最初に制汗剤組成物を塗布し、1日経過後の夕方の制汗効果の評価であり、「使用7日後の効果」とは、夕方の入浴時に制汗剤組成物を落とし、入浴後に脇の下へ制汗剤組成物の塗布を7日目続けた場合の7日目の制汗効果の評価である。
【0046】
上記「製品の質感」は、滑らかさ(制汗剤組成物が皮膚へ引っ掛からず滑りやすいか)、べたつかなさ(べたべたした感触がないか)、塗りやすさ(さらさらで皮膚に塗布しやすいか)、肌への密着性(塗布後に服等への付着がないか)の項目で評価した。評価基準を以下に示す。
【0047】
【表3】
【0048】
判定基準を以下に示す。
(判定):(評価の平均値)
◎(かなり良好):4.5以上
〇(良好):3.5以上4.5未満
△(不十分):2.5以上3.5未満
×(不良):2.5未満
その結果を表4に示す。
【0049】
【表4】
【0050】
表4の結果から、実施例である本発明の制汗剤組成物は、シリカエアロゲルの配合量が多い比較例1と比較して、シリカエアロゲルの配合量が少ないため、制汗剤組成物の増粘が抑えられ、製品の質感が優れている。
シリカエアロゲルが配合されていない比較例2と比較して、シリカエアロゲルが配合されているため、各成分の相乗効果が発揮され、制汗効果に優れている。
よって、実施例1は、各比較例のものより優れた制汗効果と質感が得られたことが分かる。