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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043401
(43)【公開日】2024-03-29
(54)【発明の名称】コンパレータ
(51)【国際特許分類】
   H03K 5/08 20060101AFI20240322BHJP
   H03F 3/45 20060101ALN20240322BHJP
【FI】
H03K5/08 E
H03F3/45 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148572
(22)【出願日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晴彦
【テーマコード(参考)】
5J039
5J500
【Fターム(参考)】
5J039DA05
5J039DA09
5J039KK17
5J039KK18
5J039MM03
5J039MM04
5J500AA01
5J500AA12
5J500AA59
5J500AC36
5J500AC62
5J500AC81
5J500AF06
5J500AF10
5J500AF12
5J500AH02
5J500AH09
5J500AH25
5J500AK05
5J500AK09
5J500AK47
5J500AM17
5J500AM21
5J500DN01
5J500DN22
5J500DN24
5J500DP01
5J500DP03
(57)【要約】
【課題】回路電流を増加させることなく、応答特性を改善したコンパレータを提供する。
【解決手段】遷移期間検出部4が、第1のフォールデッドカスコード部31の第1の出力段及び第2のフォールデッドカスコード部32の第2の出力段の出力である接続ノードA,Bが反転する遷移期間以外にトランジスタM101又はM102のドレイン電流IM101又はIM102を定電流発生部5に供給し、遷移期間にドレイン電流IM101又はIM102を遮断する。定電流発生部5が、遷移期間検出部4からドレイン電流IM101又はIM102が供給されると、トランジスタM51,M11のドレイン電流IM51,IM11を減らす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力電位及び第2の入力電位の電位差に応じた電流比の電流が各々流れる第1の差動トランジスタ及び第2の差動トランジスタと、前記第1の差動トランジスタに直列接続された第1の負荷抵抗器と、前記第2の差動トランジスタに直列接続された第2の負荷抵抗器とを有する差動入力部と、
前記第1の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続された第3のトランジスタと、前記第2の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続された第4のトランジスタとを有し、前記第4のトランジスタが第1の出力段を構成する第1のフォールデッドカスコード部と、
前記第2の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続された第5のトランジスタと、前記第1の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続された第6のトランジスタとを有し、前記第6のトランジスタが第2の出力段を構成する第2のフォールデッドカスコード部と、
前記第1の出力段及び前記第2の出力段の出力に接続されて出力信号を出力する出力回路と、
前記差動入力部と、前記第1のフォールデッドカスコード部及び第2のフォールデッドカスコード部へ各々供給する第1の電流を生成する電流発生部と、
前記第1の出力段及び前記第2の出力段の出力が反転する遷移期間でない場合、第2の電流を前記電流発生部に供給し、前記遷移期間に前記第2の電流を遮断する遷移期間検出部とを備え、
前記電流発生部が、前記遷移期間検出部から前記第2の電流が供給されると、前記第1の電流を減らす、
コンパレータ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンパレータにおいて、
前記電流発生部が、第7のトランジスタと、前記第7のトランジスタに直列接続された第3の抵抗器と、前記第3の抵抗器に直列接続された第4の抵抗器とを有し、
前記第7のトランジスタのソース又はエミッタが前記第3の抵抗器に接続され、
前記第7のトランジスタのゲート又はベースに第3の入力電位が供給される端子が接続され、
前記第4の抵抗器のみに前記第2の電流が供給され、
前記第7のトランジスタに流れる電流が前記第1の電流として生成される
コンパレータ。
【請求項3】
請求項1に記載のコンパレータにおいて、
前記電流発生部が、第8のトランジスタと、前記第8のトランジスタに直列接続された第5の抵抗器と、第9のトランジスタと、前記第9のトランジスタの直列接続された第6の抵抗器とを備え、
前記第8のトランジスタ及び前記第5の抵抗器と、前記第9のトランジスタ及び前記第6の抵抗器とが並列接続され、
前記第8のトランジスタのソース又はエミッタが前記第5の抵抗器に接続され、
前記第8のトランジスタのゲート又はベースに第3の入力電位が供給される端子が接続され、
前記第9のトランジスタのソース又はエミッタが前記第6の抵抗器に接続され、
前記第9のトランジスタのゲート又はベースに前記第3の入力電位が供給される前記端子が接続され、
前記第6の抵抗器のみに前記第2の電流が供給され、
前記第8のトランジスタ及び前記第9のトランジスタに流れる電流の和が前記第1の電流として生成される、
コンパレータ。
【請求項4】
請求項1に記載のコンパレータにおいて、
前記遷移期間検出部が、第10のトランジスタ及び第11のトランジスタを有し、
前記第10のトランジスタのソース又はエミッタが前記第1の出力段の出力に接続され、ゲート又はベースが前記第3のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続され、
前記第11のトランジスタのソース又はエミッタが前記第2の出力段の出力に接続され、ゲート又はベースが前記第5のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続され、
前記第10のトランジスタ及び前記第11のトランジスタのそれぞれのドレイン又はコレクタが前記電流発生部に接続された、
コンパレータ。
【請求項5】
請求項1に記載のコンパレータにおいて、
前記遷移期間検出部が、第12のトランジスタ及び第13のトランジスタを有し、
前記第12のトランジスタのソース又はエミッタが前記第1の出力段の出力に接続され、ゲート又はベースが前記第3のトランジスタのソース又はエミッタに接続され、
前記第13のトランジスタのソース又はエミッタが前記第2の出力段の出力に接続され、ゲート又はベースが前記第5のトランジスタのソース又はエミッタに接続され、
前記第12のトランジスタ及び前記第13のトランジスタのそれぞれのドレイン又はコレクタが前記電流発生部に接続された、
コンパレータ。
【請求項6】
請求項1に記載のコンパレータにおいて、
前記出力回路が、前記第1の出力段の出力がゲート又はベースに接続された第14のトランジスタと、
前記第2の出力段の出力がゲート又はベースに接続された第15のトランジスタと、
前記第14のトランジスタと直列接続され、ゲート又はベースが前記第15のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続された第16のトランジスタとを有し、
前記第14のトランジスタと前記第16のトランジスタとの接続点から前記出力信号を出力する、
コンパレータ。
【請求項7】
請求項6に記載のコンパレータにおいて、
前記出力回路が、前記第15のトランジスタと直列接続され、ゲート又はベースが前記第14のトランジスタと前記第16のトランジスタとの接続点に接続された第17のトランジスタを有する、
コンパレータ。
【請求項8】
請求項6に記載のコンパレータにおいて、
前記第14のトランジスタ及び前記第15のトランジスタの閾値電圧が、前記第3のトランジスタ~前記第6のトランジスタの閾値電圧よりも低い、
コンパレータ。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載のコンパレータにおいて、
前記トランジスタの少なくとも1つが、電界効果トランジスタから構成されている、
コンパレータ。
【請求項10】
請求項1~8の何れか1項に記載のコンパレータにおいて、
前記トランジスタの少なくとも1つが、バイポーラトランジスタから構成されている、
コンパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因は、COのような温暖効果ガスの濃度上昇により、大気の温室効果が強まったことによると考えられており、通信情報化社会の急速な進展に伴い、電子機器の低消費電力化も大きな課題になってきている。電子機器には多くの半導体集積回路が使用されており、半導体集積回路に幅広く使われるコンパレータは、応答速度と消費電流が主要な性能として挙げられる。コンパレータの応答速度と消費電流は反比例の関係にあることから、消費電流を増加させずに入力信号に対する応答特性を改善し、地球温暖化の抑制に貢献しようとするものである。
【0003】
半導体集積回路に用いられるコンパレータとして、図6に示すような回路が知られている(例えば、特許文献1など参照)。図6に示されているコンパレータ100は、差動入力部102と、フォールデッドカスコード部103と、定電流発生部105と、出力回路106とを主たる構成要素として構成される。また、このような回路構成のコンパレータにおいては、定電流発生部105で生成される電流を増加させることで、応答特性が改善される。
【0004】
差動入力部102は、ソースが共通接続された差動トランジスタM1,M2と、そのドレインに各々接続された負荷抵抗器R1,R2と、差動トランジスタM1,M2の共通ソースと正電源電圧VDDとの間に接続された定電流を供給するトランジスタM12とにより構成されている。
【0005】
フォールデッドカスコード部103は、負荷抵抗器R1,R2と各々ソースが接続されたトランジスタM3,M4と、そのドレインと正電源電圧VDDとの間に各々接続された定電流を供給するトランジスタM13,M14と、ドレイン及びゲートがトランジスタM4のドレインに接続され、ソースがトランジスタM4のゲートに接続されたトランジスタM5とを有している。フォールデッドカスコード部103においては、トランジスタM3とトランジスタM4とをカレントミラー接続して、トランジスタM4のドレインとトランジスタM14のドレインとの接続点より、出力を取り出すように構成されている。
【0006】
出力回路106は、ゲートがフォールデッドカスコード部103の出力に接続され、ソースが負電源電圧VSSに接続されたトランジスタM6と、そのドレインと正電源電圧VDDとの間に接続された定電流源61とから成り、トランジスタM6と定電流源61との接続点より、出力信号VOUTを取り出すように構成されている。
【0007】
また、トランジスタM5は、トランジスタM6のゲート電位の上昇を抑制し、伝搬遅延時間が短縮されると共に、伝搬遅延時間の電源電圧依存性を改善させている(例えば、非特許文献1など参照)。
【0008】
定電流発生部105は、抵抗器R5と、ソースが抵抗器R5を介して負電源電圧VSSに接続され、ゲートにバイアス電位VBが印加されたトランジスタM51とにより構成されている。定電流発生部105で生成された電流は、トランジスタM11にカレントミラー接続されたトランジスタM12,M13,M14を介して、差動入力部102とフォールデッドカスコード部103に各々電流を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4677284号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】吉田晴彦著 CMOSアナログIC回路の実務設計 CQ出版社 2010年 (p144、図4.10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の構成を有する従来のコンパレータは、応答特性を改善するためには、回路電流を増加させないといけないという課題があった。
【0012】
発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路電流を増加させることなく、応答特性を改善したコンパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコンパレータは、下記[1]~[10]を特徴としている。
[1]
第1の入力電位及び第2の入力電位の電位差に応じた電流比の電流が各々流れる第1の差動トランジスタ及び第2の差動トランジスタと、前記第1の差動トランジスタに直列接続された第1の負荷抵抗器と、前記第2の差動トランジスタに直列接続された第2の負荷抵抗器とを有する差動入力部と、
前記第1の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続された第3のトランジスタと、前記第2の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続された第4のトランジスタとを有し、前記第4のトランジスタが第1の出力段を構成する第1のフォールデッドカスコード部と、
前記第2の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続された第5のトランジスタと、前記第1の差動トランジスタにフォールデッドカスコード接続された第6のトランジスタとを有し、前記第6のトランジスタが第2の出力段を構成する第2のフォールデッドカスコード部と、
前記第1の出力段及び前記第2の出力段の出力に接続されて出力信号を出力する出力回路と、
前記差動入力部と、前記第1のフォールデッドカスコード部及び第2のフォールデッドカスコード部へ各々供給する第1の電流を生成する電流発生部と、
前記第1の出力段及び前記第2の出力段の出力が反転する遷移期間以外に第2の電流を前記電流発生部に供給し、前記遷移期間に前記第2の電流を遮断する遷移期間検出部とを備え、
前記電流発生部が、前記遷移期間検出部から前記第2の電流が供給されると、前記第1の電流を減らす、
コンパレータであること。
[2]
[1]に記載のコンパレータにおいて、
前記電流発生部が、第7のトランジスタと、前記第7のトランジスタに直列接続された第3の抵抗器と、前記第3の抵抗器に直列接続された第4の抵抗器とを有し、
前記第7のトランジスタのソース又はエミッタが前記第3の抵抗器に接続され、
前記第7のトランジスタのゲート又はベースに第3の入力電位が供給される端子が接続され、
前記第4の抵抗器のみに前記第2の電流が供給され、
前記第7のトランジスタに流れる電流が前記第1の電流として生成される
コンパレータであること。
[3]
[1]に記載のコンパレータにおいて、
前記電流発生部が、第8のトランジスタと、前記第8のトランジスタに直列接続された第5の抵抗器と、第9のトランジスタと、前記第9のトランジスタの直列接続された第6の抵抗器とを備え、
前記第8のトランジスタ及び前記第5の抵抗器と、前記第9のトランジスタ及び前記第6の抵抗器とが並列接続され、
前記第8のトランジスタのソース又はエミッタが前記第5の抵抗器に接続され、
前記第8のトランジスタのゲート又はベースに第3の入力電位が供給される端子が接続され、
前記第9のトランジスタのソース又はエミッタが前記第6の抵抗器に接続され、
前記第9のトランジスタのゲート又はベースに前記第3の入力電位が供給される前記端子が接続され、
前記第6の抵抗器のみに前記第2の電流が供給され、
前記第8のトランジスタ及び前記第9のトランジスタに流れる電流の和が前記第1の電流として生成される、
コンパレータであること。
[4]
[1]に記載のコンパレータにおいて、
前記遷移期間検出部が、第10のトランジスタ及び第11のトランジスタを有し、
前記第10のトランジスタのソース又はエミッタが前記第1の出力段の出力に接続され、ゲート又はベースが前記第3のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続され、
前記第11のトランジスタのソース又はエミッタが前記第2の出力段の出力に接続され、ゲート又はベースが前記第5のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続され、
前記第10のトランジスタ及び前記第11のトランジスタのそれぞれのドレイン又はコレクタが前記電流発生部に接続された、
コンパレータであること。
[5]
[1]に記載のコンパレータにおいて、
前記遷移期間検出部が、第12のトランジスタ及び第13のトランジスタを有し、
前記第12のトランジスタのソース又はエミッタが前記第1の出力段の出力に接続され、ゲート又はベースが前記第3のトランジスタのソース又はエミッタに接続され、
前記第13のトランジスタのソース又はエミッタが前記第2の出力段の出力に接続され、ゲート又はベースが前記第5のトランジスタのソース又はエミッタに接続され、
前記第12のトランジスタ及び前記第13のトランジスタのそれぞれのドレイン又はコレクタが前記電流発生部に接続された、
コンパレータであること。
[6]
[1]に記載のコンパレータにおいて、
前記出力回路が、前記第1の出力段の出力がゲート又はベースに接続された第14のトランジスタと、
前記第2の出力段の出力がゲート又はベースに接続された第15のトランジスタと、
前記第14のトランジスタと直列接続され、ゲート又はベースが前記第15のトランジスタのドレイン又はコレクタに接続された第16のトランジスタとを有し、
前記第14のトランジスタと前記第16のトランジスタとの接続点から前記出力信号を出力する、
コンパレータであること。
[7]
[6]に記載のコンパレータにおいて、
前記出力回路が、前記第15のトランジスタと直列接続され、ゲート又はベースが前記第14のトランジスタと前記第16のトランジスタとの接続点に接続された第17のトランジスタを有する、
コンパレータであること。
[8]
[6]に記載のコンパレータにおいて、
前記第14のトランジスタ及び前記第15のトランジスタの閾値電圧が、前記第3のトランジスタ~前記第6のトランジスタの閾値電圧よりも低い、
コンパレータであること。
[9]
[1]~[8]の何れか1項に記載のコンパレータにおいて、
前記トランジスタの少なくとも1つが、電界効果トランジスタから構成されている、
コンパレータであること。
[10]
[1]~[8]の何れか1項に記載のコンパレータにおいて、
前記トランジスタの少なくとも1つが、バイポーラトランジスタから構成されている、
コンパレータであること。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、回路電流を増加させることなく、応答特性を改善したコンパレータを提供できる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
図2図2は、第2実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
図3図3は、第3実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
図4図4は、第4実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
図5図5は、第5実施形態における本発明のコンパレータを示す回路図である。
図6図6は、従来のコンパレータの一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0018】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態のコンパレータ1について図1を参照して説明する。同図に示すように、コンパレータ1は、反転入力端子T11に入力された反転入力電位INM(=第1の入力電位)と非反転入力端子T12に入力された非反転入力電位INP(=第2の入力電位)とを比較し、その比較結果を出力端子T3から出力する。コンパレータ1は、差動入力部2と、フォールデッドカスコード部31(=第1のフォールデッドカスコード部),フォールデッドカスコード部32(=第2のフォールデッドカスコード部)と、遷移期間検出部4と、定電流発生部5(=電流発生部)と、出力回路6とを備えている。
【0019】
差動入力部2は、ソースが共通接続された差動トランジスタM1(=第1の差動トランジスタ),差動トランジスタM2(=第2の差動トランジスタ)と、そのドレインに各々接続された負荷抵抗器R1(=第1の負荷抵抗器),負荷抵抗器R2(=第2の負荷抵抗器)と、定電流を供給するトランジスタM12とを備えている。
【0020】
差動トランジスタM1,M2とトランジスタM12は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。差動トランジスタM1のゲートは、反転入力端子T11に接続され、差動トランジスタM2のゲートは、非反転入力端子T12に接続されている。差動トランジスタM1,M2のそれぞれのソースは、トランジスタM12に接続されている。
【0021】
負荷抵抗器R1は、差動トランジスタM1のドレインと負電源端子T22との間に接続され、負電源端子T22には負電源電圧VSSが供給されている。負荷抵抗器R2は、差動トランジスタM2のドレインと負電源端子T22との間に接続されている。
【0022】
トランジスタM12は、ソースが正電源端子T21に接続され、ドレインが差動トランジスタM1,M2のそれぞれのソースに接続されている。正電源端子T21には、正電源電圧VDDが供給されている。差動入力部2は、トランジスタM12が供給する電流IM12を差動トランジスタM1,M2に分流する。差動トランジスタM1,M2に流れる電流の電流比(分流比)は、反転入力電位INM及び非反転入力電位INPの電位差に応じた値となる。
【0023】
フォールデッドカスコード部31は、差動トランジスタM1にフォールデッドカスコード接続されたトランジスタM31(=第3のトランジスタ)と、差動トランジスタM2にフォールデッドカスコード接続されたトランジスタM41(=第4のトランジスタ)と、トランジスタM13,M14とを備えている。
【0024】
トランジスタM31,M41は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成され、トランジスタM13,M14は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM31は、ゲートとドレインが接続されている。トランジスタM31は、ソースが負荷抵抗器R1と差動トランジスタM1のドレインとの接続点に接続され、ドレインがトランジスタM13のドレインに接続されている。トランジスタM41は、ゲートがトランジスタM31のゲート及びドレインに接続されている。トランジスタM41は、ソースが負荷抵抗器R2と差動トランジスタM2のドレインとの接続点に接続され、ドレインがトランジスタM14のドレインに接続されている。
【0025】
トランジスタM13は、トランジスタM31のドレインと正電源端子T21との間に接続されている。トランジスタM14は、トランジスタM41のドレインと正電源端子T21との間に接続されている。
【0026】
フォールデッドカスコード部31においては、トランジスタM31とトランジスタM41をカレントミラー接続して、第1の出力段を構成するトランジスタM41とトランジスタM14との接続点(=接続ノードA)により、出力を取り出すように構成されている。
【0027】
フォールデッドカスコード部32は、差動トランジスタM2にフォールデッドカスコード接続されるトランジスタM32(=第5のトランジスタ),差動トランジスタM1にフォールデッドカスコード接続されるトランジスタM42(=第6のトランジスタ)と、トランジスタM15,M16とを備えている。
【0028】
トランジスタM32,M42は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成され、トランジスタM15,M16は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM32は、ゲートとドレインが接続されている。トランジスタM32は、ソースが負荷抵抗器R2と差動トランジスタM2のドレインとの接続点に接続され、ドレインがトランジスタM15のドレインに接続されている。トランジスタM42は、ゲートがトランジスタM32のゲート及びドレインに接続されている。トランジスタM42は、ソースが負荷抵抗器R1と差動トランジスタM1のドレインとの接続点に接続され、ドレインがトランジスタM16のドレインに接続されている。
【0029】
トランジスタM15は、トランジスタM32のドレインと正電源端子T21との間に接続されている。トランジスタM16は、トランジスタM42のドレインと正電源端子T21との間に接続されている。
【0030】
フォールデッドカスコード部32においては、トランジスタM32とトランジスタM42をカレントミラー接続して、第2の出力段を構成するトランジスタM42とトランジスタM16との接続点(=接続ノードB)により、出力を取り出すように構成されている。
【0031】
遷移期間検出部4は、トランジスタM101(=第10のトランジスタ),トランジスタM102(=第11のトランジスタ)を備え、接続ノードA、Bの出力が反転する遷移期間でない場合、トランジスタM101,トランジスタM102のドレイン電流IM101,IM102(=第2の電流)を定電流発生部5に供給し、遷移期間にトランジスタM101,M102のドレイン電流IM101,IM102を遮断する回路である。遷移期間でない場合について詳しく説明すると、遷移期間検出部4は、負荷抵抗器R1に流れる電流よりも負荷抵抗器R2に流れる電流が多い場合、トランジスタM14から供給される電流をトランジスタM101を介して分流し、定電流発生部5に流す回路である。また、負荷抵抗器R2に流れる電流よりも負荷抵抗器R1に流れる電流が多い場合、トランジスタM16から供給される電流をトランジスタM102を介して分流し、定電流発生部5に流す回路である。
【0032】
トランジスタM101,M102は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM101は、ソースが接続ノードAに接続され、ゲートがトランジスタM13のドレインとトランジスタM31のドレインとの接続点に接続されている。トランジスタM102は、ソースが接続ノードBに接続され、ゲートがトランジスタM15のドレインとトランジスタM32のドレインとの接続点に接続されている。
【0033】
定電流発生部5は、トランジスタM51(=第7のトランジスタ),トランジスタM11と、抵抗器R51(=第3の抵抗器),抵抗器R52(=第4の抵抗器)とを備え、バイアス端子T13(=端子)に入力されたバイアス電位VB(=第3の入力電位)に応じた定電流を生成し、差動入力部2とフォールデッドカスコード部31,32に電流を供給する定電流源回路を構成している。
【0034】
トランジスタM51は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM51は、ソースが抵抗器R51に接続され、ゲートがバイアス電位VBに接続され、ドレインがトランジスタM11のドレイン及びゲートに接続されている。抵抗器R52は、抵抗器R51と負電源端子T22との間に接続され、抵抗器R51と抵抗器R52との接続点がトランジスタM101,M102のそれぞれのドレインに接続されている。
【0035】
トランジスタM11は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM11は、ソースが正電源端子T21に接続され、ゲート及びドレインがトランジスタM12,M13,M14,M15,M16のゲートに接続されている。すなわち、トランジスタM12,M13,M14,M15,M16は、トランジスタM11にカレントミラー接続され、トランジスタM11に流れる電流をコピーして折り返す。
【0036】
出力回路6は、トランジスタM6(=第14のトランジスタ),トランジスタM7(=第15のトランジスタ),トランジスタM8(=第16のトランジスタ)と、定電流源61とを備えている。
【0037】
トランジスタM6,M7は、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM6は、ゲートが接続ノードAに接続され、ソースが負電源端子T22に接続され、ドレインがトランジスタM8のドレイン及び出力端子T3に接続されている。トランジスタM7は、ゲートが接続ノードBに接続され、ソースが負電源端子T22に接続され、ドレインが定電流源61に接続されている。
【0038】
トランジスタM8は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM8は、トランジスタM6に直列接続され、ゲートがトランジスタM7のドレインと定電流源61との接続点に接続され、ソースが正電源端子T21に接続され、ドレインがトランジスタM6のドレイン及び出力端子T3に接続されている。定電流源61は、正電源端子T21とトランジスタM7のドレインとの間に接続されている。
【0039】
次に、上述した構成のコンパレータ1の動作について説明する。最初に、反転入力電位INMが非反転入力電位INPよりも高く、出力端子T3の出力信号VOUTがLow状態、すなわち、出力信号VOUTがほぼ負電源電圧VSSとなっている場合の動作について説明する。
【0040】
反転入力電位INMが非反転入力電位INPよりも高い場合、差動トランジスタM1よりも差動トランジスタM2の方に、定電流を供給するトランジスタM12からの電流IM12がより多く流れる。このため、負荷抵抗器R1での電圧降下が減少し、負荷抵抗器R2での電圧降下が増加する。
【0041】
そして、トランジスタM41のゲート・ソース電位差が、トランジスタM31のゲート・ソース電位差よりも小さくなり、トランジスタM41がオフ状態、トランジスタM31がオン状態となる。トランジスタM41がオフ状態となると、接続ノードAの電位は上昇する。接続ノードAの電位が上昇して、トランジスタM6のゲート・ソース電位差が閾値電圧に達すると、トランジスタM6がオンする。
【0042】
トランジスタM42のゲート・ソース電位差が、トランジスタM32のゲート・ソース電位差よりも大きくなり、トランジスタM42がオン状態、トランジスタM32がオフ状態となる。トランジスタM42がオン状態となると、接続ノードBの電位は低下する。接続ノードBの電位が低下して、トランジスタM7のゲート・ソース電位差が閾値電圧を下回ると、トランジスタM7がオフする。
【0043】
トランジスタM7がオフすると、トランジスタM7のドレイン電位が上昇する。トランジスタM7のドレイン電位が上昇すると、それに伴いトランジスタM8のゲート電位が上昇し、トランジスタM8がオフする。その結果、出力端子T3の出力信号VOUTはLow状態となる。
【0044】
また、トランジスタM41がオフ状態となると、トランジスタM41のドレイン電位が上昇して、トランジスタM101がオン状態となる。トランジスタM42がオン状態となると、トランジスタM42のドレイン電位が低下して、トランジスタM102がオフ状態となる。つまり、出力端子T3の出力信号VOUTがLow状態(=非遷移期間)のときに、トランジスタM14からの電流がオン状態のトランジスタM101を介して、抵抗器R52に流れ込む。トランジスタM14からの電流は、抵抗器R51には流れない。
【0045】
次に、反転入力電位INMが非反転入力電位INPよりも低くなり、出力端子T3の出力信号VOUTがLow状態からHigh状態に遷移する遷移期間の動作について説明する。
【0046】
遷移期間においては、差動トランジスタM1に流れる電流が増加し、差動トランジスタM2に流れる電流が減少し、負荷抵抗器R1,R2の電圧降下差が小さくなる。その後、差動トランジスタM1,M2に流れる電流が等しくなり、負荷抵抗器R1,R2の電圧降下差が等しくなった後、差動トランジスタM2よりも差動トランジスタM1に流れる電流が多くなる。負荷抵抗器R1,R2の電圧降下差が小さくなると、トランジスタM41,M42が共にオンして、トランジスタM101,M102が共にオフ状態となる。このため、トランジスタM14からトランジスタM101を介して流れる電流は抵抗器R52に流れ込まない。
【0047】
出力信号VOUTがLow状態からHigh状態に至るまでの遷移期間のトランジスタM11のドレイン電流IM11(=第1の電流)は式1で、出力信号VOUTがLow状態(=非遷移期間)のときのトランジスタM11のドレイン電流IM11_Lは式2で表される。
【0048】
【数1】
【0049】
【数2】
【0050】
ここで、IM51は遷移期間のトランジスタM51のドレイン電流、IM51_Lは出力信号VOUTがLow状態(=非遷移期間)のトランジスタM51のドレイン電流、VBはバイアス電位、VgsM51は、トランジスタM51のゲート・ソース電位、IM101はトランジスタM101のドレイン電流である。
【0051】
つまり、出力端子T3の出力信号VOUTがLow状態からHigh状態に至るまでの遷移期間に対し、出力信号VOUTがLow状態(=非遷移期間)のときは、トランジスタM11,M51のドレイン電流は減少する。これは、トランジスタM101を介して抵抗器R52へ供給される電流分、抵抗器R52の電圧降下が増加し、抵抗器R51の両端に加わる電位が減少することで、抵抗器R51に流れる電流を減らすためである。
【0052】
次に、非反転入力電位INPが反転入力電位INMよりも高く、出力端子T3の出力信号VOUTがHigh状態、すなわち、出力信号VOUTがほぼ正電源電圧VDDとなっている場合の動作について説明する。
【0053】
非反転入力電位INPが反転入力電位INMよりも高い場合、差動トランジスタM2よりも差動トランジスタM1の方に定電流を供給するトランジスタM12からの電流IM12がより多く流れる。このため、負荷抵抗器R2での電圧降下が減少し、負荷抵抗器R1での電圧降下が増加する。
【0054】
そして、トランジスタM41のゲート・ソース電位差が、トランジスタM31のゲート・ソース電位差よりも大きくなり、トランジスタM41がオン状態、トランジスタM31がオフ状態となる。トランジスタM41がオン状態となると、接続ノードAの電位は低下する。接続ノードAの電位が低下して、トランジスタM6のゲート・ソース電位差が閾値電圧を下回ると、トランジスタM6がオフする。
【0055】
トランジスタM42のゲート・ソース電位差が、トランジスタM32のゲート・ソース電位差よりも小さくなり、トランジスタM42がオフ状態、トランジスタM32がオン状態となる。トランジスタM42がオフ状態となると、接続ノードBの電位は上昇する。接続ノードBの電位が上昇して、トランジスタM7のゲート・ソース電位差が閾値電圧に達すると、トランジスタM7がオンする。
【0056】
トランジスタM7がオンすると、トランジスタM7のドレイン電位が低下する。トランジスタM7のドレイン電位が低下すると、それに伴いトランジスタM8のゲート電位が低下し、トランジスタM8がオンする。その結果、出力端子T3の出力信号VOUTはHigh状態となる。
【0057】
また、トランジスタM42がオフ状態となると、トランジスタM42のドレイン電位が上昇して、トランジスタM102がオン状態となる。トランジスタM41がオン状態となると、トランジスタM41のドレイン電位が下降して、トランジスタM101がオフ状態となる。つまり、出力端子T3の出力信号VOUTがHigh状態(=非遷移期間)のときに、トランジスタM16からの電流がオン状態のトランジスタM102を介して、抵抗器R52に流れ込む。
【0058】
次に、反転入力電位INMが非反転入力電位INPよりも高くなり、出力端子T3の出力信号VOUTがHigh状態からLow状態に遷移する遷移期間の動作について説明する。
【0059】
遷移期間においては、差動トランジスタM1に流れる電流が減少し、差動トランジスタM2に流れる電流が増加し、負荷抵抗器R1,R2の電圧降下差が小さくなる。その後、差動トランジスタM1,M2に流れる電流が等しくなり、負荷抵抗器R1,R2の電圧降下差が等しくなった後、差動トランジスタM1よりも差動トランジスタM2に流れる電流が多くなる。負荷抵抗器R1,R2の電圧降下差が小さくなると、トランジスタM41,M42が共にオンして、トランジスタM101,M102が共にオフ状態となる。このため、トランジスタM16からトランジスタM102を介して流れる電流は抵抗器R52に流れ込まない。
【0060】
出力信号VOUTがHigh状態からLow状態に至るまでの遷移期間のトランジスタM11のドレイン電流IM11は式1で、出力信号VOUTがHigh状態(=非遷移期間)のときのトランジスタM11のドレイン電流IM11_Hは式3で表される。
【0061】
【数3】
【0062】
ここで、IM51_Hは出力信号VOUTがHigh状態(=非遷移期間)のトランジスタM51のドレイン電流、VBはバイアス電位、VgsM51は、トランジスタM51のゲート・ソース電位、IM102はトランジスタM102のドレイン電流である。
【0063】
つまり、出力端子T3の出力信号VOUTがHigh状態からLow状態に至るまでの遷移期間に対し、出力信号VOUTがHigh状態(=非遷移期間)のときは、トランジスタM11,M51のドレイン電流は減少する。これは、トランジスタM102を介して抵抗器R52へ供給される電流分、抵抗器R52の電圧降下が増加し、抵抗器R51の両端に加わる電位が減少することで、抵抗器R51に流れる電流を減らすためである。
【0064】
すなわち、出力信号VOUTが反転する遷移期間では、トランジスタM51のドレイン電流は減少しない。言い換えると、出力信号VOUTが反転する遷移期間では、非遷移期間と比較してトランジスタM51のドレイン電流が増加する。
【0065】
その結果、非遷移期間に対し遷移期間においては、トランジスタM11に流れる電流は増加し、トランジスタM11にカレントミラー接続され、トランジスタM11に流れる電流をコピーして折り返すトランジスタM12,M13,M14,M15,M16のドレイン電流も増加する。
【0066】
つまり、この第1実施形態におけるコンパレータ1は、フォールデッドカスコード部31,32の出力が反転する遷移期間に一時的に、差動入力部2とフォールデッドカスコード部31,32に供給する電流を増加させる。
【0067】
したがって、消費電流を増加させることなく、応答特性が改善されるという効果が得られるものとなっている。
【0068】
また、上述した第1実施形態では、フォールデッドカスコード部31,32を設け、出力回路6を構成するトランジスタM6のゲートとトランジスタM7のゲートを接続ノードA,B間に生じる差動出力信号で制御させることで、出力信号VOUTが変化する応答特性も改善している。
【0069】
なお、トランジスタM6,M7を、フォールデッドカスコード部31,32を構成するトランジスタM31,M32,M41,M42の閾値電圧よりも低いトランジスタを用いることで、トランジスタM6,M7がオフ状態からオン状態に変化する時間をより一層短縮することができる。これにより、出力回路6の応答特性をさらに改善することができる。
【0070】
さらになお、出力信号VOUTがLow状態のとき、トランジスタM101は、接続ノードAの電位をトランジスタM31のゲート電位にトランジスタM101のゲート・ソース電位差を加えた電圧でクランプし、正電源電圧VDD付近まで上昇させない。これにより、トランジスタM6がオンからオフとなる時間を短くすることができ、出力信号VOUTがLow状態からHigh状態に反転する応答速度を早くすることができる。
【0071】
また、出力信号VOUTがHigh状態のとき、トランジスタM102は、接続ノードBの電位をトランジスタM32のゲート電位にトランジスタM102のゲート・ソース電位差を加えた電圧でクランプし、正電源電圧VDD付近まで上昇させない。これにより、トランジスタM7がオンからオフとなる時間を短くすることができ、出力信号VOUTがHigh状態からLow状態に反転する応答速度を早くすることができる。
【0072】
すなわち、トランジスタM101,M102は、図6に示されているような従来のコンパレータの回路構成例におけるトランジスタM5と同様に、応答特性が改善されると共に、応答特性の電源電圧依存性を改善させる役割も果たしている。
【0073】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のコンパレータ1Bについて図2を参照して説明する。なお、図2において、図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0074】
コンパレータ1Bは、差動入力部2と、フォールデッドカスコード部31,32と、遷移期間検出部4と、定電流発生部5と、出力回路6Bとを備えている。差動入力部2、フォールデッドカスコード部31,32、遷移期間検出部4、定電流発生部5は、上述した第1実施形態で既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0075】
出力回路6Bは、トランジスタM6,M7,M8,M9を有している。第2実施形態の出力回路6Bは、第1実施形態の定電流源61をトランジスタM9(=第17のトランジスタ)に置き換えている。トランジスタM9は、Pチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM9は、ゲートが出力端子T3に接続され、ソースが正電源端子T21に接続され、ドレインがトランジスタM7のドレインに接続されている。
【0076】
第2実施形態のコンパレータ1Bは、後述する点を除けば、基本的には第1実施形態と同様である。
【0077】
すなわち、第1実施形態においては、トランジスタM7がオン状態のときに、トランジスタM7のドレイン電流が定常電流として流れ続ける。これに対して、第2実施形態においては、トランジスタM7がオン状態のときにトランジスタM8がオン状態となり、トランジスタM9のゲート電位が上昇する。トランジスタM9のゲート電位が上昇すると、トランジスタM9がオフ状態となるため、トランジスタM7がオン状態のときにトランジスタM7のドレイン電流が定常電流として流れない。
【0078】
したがって、この第2実施形態におけるコンパレータ1Bは、消費電流が低減されると共に、応答特性が改善されるという効果が得られるものとなっている。
【0079】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態のコンパレータ1Cについて図3を参照して説明する。なお、図3において、図1及び図2に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0080】
コンパレータ1Cは、差動入力部2と、フォールデッドカスコード部31,32と、遷移期間検出部4と、定電流発生部5Cと、出力回路6Bとを備えている。差動入力部2、フォールデッドカスコード部31,32、遷移期間検出部4は、上述した第1実施形態で既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。出力回路6Bは、上述した第2実施形態で既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0081】
定電流発生部5Cは、トランジスタM51C(=第8のトランジスタ),トランジスタM52C(=第9のトランジスタ),トランジスタM11Cと、抵抗器R51C(=第5の抵抗器),抵抗器R52C(=第6の抵抗器)とを備え、バイアス電位VBに応じた定電流を生成し、差動入力部2とフォールデッドカスコード部31,32に電流を供給する定電流源回路を構成している。
【0082】
トランジスタM51C,M52Cは、Nチャンネルの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM51Cは、ソースが抵抗器R51Cを介して負電源端子T22に接続され、ゲートにバイアス電位VBが印加されている。トランジスタM52Cは、ソースが抵抗器R52Cを介して負電源端子T22に接続され、ゲートにバイアス電位VBが印加されている。
【0083】
トランジスタM101,M102のそれぞれのドレインは、トランジスタM52Cのソースと抵抗器R52Cとの接続点に接続されている。
【0084】
第3実施形態のコンパレータ1Cは、後述する点を除けば、基本的には第2実施形態と同様である。
【0085】
出力端子T3の出力信号VOUTがLow状態(=非遷移期間)のときに、トランジスタM14からの電流がオン状態のトランジスタM101を介して、抵抗器R52Cに流れ込む。
【0086】
出力端子T3の出力信号VOUTがHigh状態(=非遷移期間)のときに、トランジスタM16からの電流がオン状態のトランジスタM102を介して、抵抗器R52Cに流れ込む。
【0087】
出力端子T3の出力信号VOUTが反転する遷移期間では、トランジスタM101,M102が共にオフ状態となり、トランジスタM14,M16からトランジスタM101,M102を介して流れる電流は抵抗器R52Cに流れ込まない。
【0088】
出力信号VOUTが反転する遷移期間のトランジスタM11Cのドレイン電流IM11Cは式4で、出力信号VOUTがLow状態(=非遷移期間)のときのトランジスタM11Cのドレイン電流IM11C_Lは式5で、出力信号VOUTがHigh状態(=非遷移期間)のときのトランジスタM11Cのドレイン電流IM11C_Hは式6で表される。
【0089】
【数4】
【0090】
【数5】
【0091】
【数6】
【0092】
ここで、IM52Cは遷移期間のトランジスタM52Cのドレイン電流、IM52C_Lは出力信号VOUTがLow状態(=非遷移期間)のトランジスタM52Cのドレイン電流、IM52C_Hは出力信号VOUTがHigh状態(=非遷移期間)のトランジスタM52Cのドレイン電流、VBはバイアス電位である。
【0093】
つまり、出力端子T3の出力信号VOUTが反転する遷移期間に対し、出力信号VOUTがLow状態又はHigh状態(=非遷移期間)のときは、トランジスタM11C,M52Cのドレイン電流は減少する。
【0094】
すなわち、出力信号VOUTが反転する遷移期間では、トランジスタM52Cのドレイン電流は減少しない。言い換えると、出力信号VOUTが反転する遷移期間では、非遷移期間と比較してトランジスタM52Cのドレイン電流が増加する。また、トランジスタM11Cのドレイン電流は、トランジスタM51Cのドレイン電流にトランジスタM52Cのドレイン電流を加えた電流であり、トランジスタM11Cのドレイン電流も増加する。
【0095】
その結果、非遷移期間に対し遷移期間においては、トランジスタM11Cに流れる電流は増加し、トランジスタM11Cにカレントミラー接続され、トランジスタM11Cに流れる電流をコピーして折り返すトランジスタM12,M13,M14,M15,M16のドレイン電流も増加する。
【0096】
つまり、この第3実施形態におけるコンパレータ1Cは、フォールデッドカスコード部31,32の出力が反転する遷移期間に一時的に、差動入力部2とフォールデッドカスコード部31,32に供給する電流を増加させる。
【0097】
したがって、消費電流を増加させることなく、応答特性が改善されるという効果が得られるものとなっている。
【0098】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態のコンパレータ1Dについて図4を参照して説明する。なお、図4において、図1及び図2に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0099】
コンパレータ1Dは、差動入力部2と、フォールデッドカスコード部31,32と、遷移期間検出部4Dと、定電流発生部5と、出力回路6Bとを備えている。差動入力部2、フォールデッドカスコード部31,32、定電流発生部5は、上述した第1実施形態で既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。出力回路6Bは、上述した第2実施形態で既に説明したので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0100】
第1実施形態の遷移期間検出部4と第4実施形態の遷移期間検出部4Dとで異なる点は、トランジスタM101D(=第12のトランジスタ),トランジスタM102D(=第13のトランジスタ)のゲートの接続である。第4実施形態のトランジスタM101Dのゲートは、トランジスタM31のソースと負荷抵抗器R1との接続点に接続されている。第4実施形態のトランジスタM102Dのゲートは、トランジスタM32のソースと負荷抵抗器R2との接続点に接続されている。
【0101】
第4実施形態のコンパレータ1Dは、後述する点を除けば、基本的には第2実施形態と同様である。
【0102】
出力信号VOUTがLow状態のとき、トランジスタM101Dは、接続ノードAの電位をトランジスタM31のソース電位にトランジスタM101Dのゲート・ソース電位差を加えた電圧でクランプし、正電源電圧VDD付近まで上昇させない。これにより、トランジスタM6がオンからオフとなる時間を短くすることができ、出力信号VOUTがLow状態からHigh状態に反転する応答速度を早くすることができる。
【0103】
また、出力信号VOUTがHigh状態のとき、トランジスタM102Dは、接続ノードBの電位をトランジスタM32のソース電位にトランジスタM102Dのゲート・ソース電位差を加えた電圧でクランプし、正電源電圧VDD付近まで上昇させない。これにより、トランジスタM7がオンからオフとなる時間を短くすることができ、出力信号VOUTがHigh状態からLow状態に反転する応答速度を早くすることができる。
【0104】
すなわち、トランジスタM101D,M102Dは、図6に示されているような従来のコンパレータの回路構成例におけるトランジスタM5と同様に、応答特性が改善されると共に、応答特性の電源電圧依存性を改善させる役割も果たしている。
【0105】
つまり、遷移期間検出部4Dは、接続ノードA,Bが上昇したときにクランプされる電圧値が異なる点を除けば、基本的には遷移期間検出部4と同様である。
【0106】
したがって、この第4実施形態におけるコンパレータ1Dは、消費電流を増加させることなく、応答特性が改善されるという効果が得られるものとなっている。
【0107】
また、上述した第4実施形態では、トランジスタM101DのゲートはトランジスタM31のソースと負荷抵抗器R1との接続点に接続され、トランジスタM102DのゲートはトランジスタM32のソースと負荷抵抗器R2との接続点に接続されたが、これに限ったものではない。トランジスタM101DのゲートをトランジスタM32のソースと負荷抵抗器R2との接続点に接続し、トランジスタM102DのゲートをトランジスタM31のソースと負荷抵抗器R1との接続点に接続しても、同様の効果が得られるものとなっている。
【0108】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態のコンパレータ1Eについて図5を参照して説明する。なお、図5において、図1に示された回路における構成要素と同一の構成要素については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0109】
同図に示すように、コンパレータ1Eは、第1実施形態と同様に、差動入力部2Eと、フォールデッドカスコード部31E,32Eと、遷移期間検出部4Eと、定電流発生部5Eと、出力回路6Eとを備えている。
【0110】
第1実施形態と第5実施形態とで異なる点は、トランジスタM1,M2,M31,M32,M41,M42,M6~M8,M11~M16,M101,M102,M51に相当するトランジスタM1E,M2E,M31E,M32E,M41E,M42E,M6E~M8E,M11E~M16E,M101E,M102E,M51Eの導電型を逆にした点である。また、第1実施形態と第5実施形態とで異なる点は、正電源端子T21と負電源端子T22との関係を逆にした点である。
【0111】
第2~第4実施形態についても同様に、トランジスタの導電型を逆にし、正電源端子T21と負電源端子T22との関係を逆にしてもよい。
【0112】
第5実施形態も第1実施形態と同様に、消費電流を増加させることなく、応答特性が改善されるという効果が得られるものとなっている。
【0113】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0114】
例えば、上述した第1~第5実施形態では、トランジスタが電界効果トランジスタから構成されていたが、これに限ったものではない。トランジスタの少なくとも1つ以上をバイポーラトランジスタに置き換えてもよい。この場合、トランジスタのゲートをベース、ソースをエミッタ、ドレインをコレクタに読み替えて説明することができる。
【符号の説明】
【0115】
1,1B~1E コンパレータ
2,2E 差動入力部
4,4D,4E 遷移期間検出部
5,5C,5E 定電流発生部(電流発生部)
6,6B,6E 出力回路
31,31E フォールデッドカスコード部(第1のフォールデッドカスコード部)
32,32E フォールデッドカスコード部(第2のフォールデッドカスコード部)
M11,IM11C,IM11E ドレイン電流(第1の電流)
M101,IM102 ドレイン電流(第2の電流)
INM 反転入力電位(第1の入力電位)
INP 非反転入力電位(第2の入力電位)
M1,M1E 差動トランジスタ(第1の差動トランジスタ)
M2,M2E 差動トランジスタ(第2の差動トランジスタ)
M6,M6E トランジスタ(第14のトランジスタ)
M7,M7E トランジスタ(第15のトランジスタ)
M8,M8E トランジスタ(第16のトランジスタ)
M9 トランジスタ(第17のトランジスタ)
M31,M31E トランジスタ(第3のトランジスタ)
M32,M32E トランジスタ(第5のトランジスタ)
M41,M41E トランジスタ(第4のトランジスタ)
M42,M42E トランジスタ(第6のトランジスタ)
M51,M51E トランジスタ(第7のトランジスタ)
M51C トランジスタ(第8のトランジスタ)
M52C トランジスタ(第9のトランジスタ)
M101,M101E トランジスタ(第10のトランジスタ)
M101D トランジスタ(第12のトランジスタ)
M102,M102E トランジスタ(第11のトランジスタ)
M102D トランジスタ(第13のトランジスタ)
R1,R1E 負荷抵抗器(第1の負荷抵抗器)
R2,R2E 負荷抵抗器(第2の負荷抵抗器)
R51,R51E 抵抗器(第3の抵抗器)
R51C 抵抗器(第5の抵抗器)
R52C 抵抗器(第6の抵抗器)
R52,R52E 抵抗器(第4の抵抗器)
T13 バイアス端子(端子)
VB バイアス電位(第3の入力電位)
図1
図2
図3
図4
図5
図6