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特開2024-43669食感改良剤、並びにこれを用いた畜肉または魚介類加工食品およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043669
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】食感改良剤、並びにこれを用いた畜肉または魚介類加工食品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/00 20160101AFI20240326BHJP
   A23L 13/40 20230101ALI20240326BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20240326BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20240326BHJP
   A23J 3/14 20060101ALN20240326BHJP
   A23L 11/00 20210101ALN20240326BHJP
【FI】
A23L13/00 A
A23L13/40
A23L27/00 Z
A23L27/10 C
A23J3/14
A23L11/00 A
A23L11/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148788
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100209037
【弁理士】
【氏名又は名称】猪狩 俊博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】笠原 僚
(72)【発明者】
【氏名】佐野 貴士
【テーマコード(参考)】
4B020
4B042
4B047
【Fターム(参考)】
4B020LB24
4B020LC02
4B020LC04
4B020LG01
4B020LG09
4B042AC05
4B042AD39
4B042AG02
4B042AG03
4B042AG04
4B042AG05
4B042AG07
4B042AG12
4B042AH01
4B042AK10
4B042AP04
4B042AP13
4B042AP18
4B042AP19
4B047LB02
4B047LF04
4B047LG18
4B047LP20
(57)【要約】
【課題】畜肉または魚介類加工食品の食感を改良できる食感改良剤等を提供する。
【解決手段】畜肉または魚介類加工食品に用いられる食感改良剤であって、植物性タンパクの少なくとも1種を含み、前記植物性タンパクの冷水膨潤度が、5以上40以下である、食感改良剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜肉または魚介類加工食品に用いられる食感改良剤であって、
植物性タンパクの少なくとも1種を含み、
前記植物性タンパクの冷水膨潤度が、5以上40以下である、
食感改良剤。
【請求項2】
前記植物性タンパクのタンパク質含量が65質量%以上である、請求項1に記載の食感改良剤。
【請求項3】
前記植物性タンパクの吸水率が300%以上3000%以下である、請求項1に記載の食感改良剤。
【請求項4】
前記植物性タンパクが、豆類由来の植物性タンパクである、請求項1に記載の食感改良剤。
【請求項5】
前記豆類由来の植物性タンパクが、大豆タンパク、エンドウ豆タンパクおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、請求項1に記載の食感改良剤。
【請求項6】
前記植物性タンパクの含有量が、食感改良剤の全質量に対して、50質量%以上100質量%以下である、請求項1に記載の食感改良剤。
【請求項7】
前記畜肉または魚介類加工食品の最表面層の少なくとも一部に用いられる、請求項1に記載の食感改良剤。
【請求項8】
畜肉または魚介類加工食品の製造方法であって、
請求項1~7のいずれか1項に記載の食感改良剤を畜肉または魚介類と混合する工程(1)と、
前記食感改良剤が混合された畜肉または魚介類を加熱調理する工程(2)と、
を含む、畜肉または魚介類加工食品の製造方法。
【請求項9】
前記工程(1)前に畜肉または魚介類を調味液に漬け込む、漬け込み工程をさらに含む、請求項8に記載の畜肉または魚介類加工食品の製造方法。
【請求項10】
前記食感改良剤の使用量が、畜肉または魚介類の全質量に対して、0.05質量%以上3質量%以下である、請求項8に記載の畜肉または魚介類加工食品の製造方法。
【請求項11】
前記工程(2)が、最表面層の少なくとも一部に前記食感改良剤が付着した畜肉または魚介類を加熱調理することを含む、請求項8に記載の畜肉または魚介類加工食品の製造方法。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか1項に記載の食感改良剤を畜肉または魚介類と混合する工程(1)と、
前記食感改良剤が混合された畜肉または魚介類を加熱調理する工程(2)と、
を含む、畜肉または魚介類加工食品の食感改良方法。
【請求項13】
前記工程(1)前に、畜肉または魚介類を調味液に漬け込む、漬け込み工程をさらに含む、請求項12に記載の畜肉または魚介類加工食品の食感改良方法。
【請求項14】
前記食感改良剤の使用量が、畜肉または魚介類の全質量に対して、0.05質量%以上3質量%以下である、請求項12に記載の畜肉または魚介類加工食品の食感改良方法。
【請求項15】
前記工程(2)が、最表面層の少なくとも一部に前記食感改良剤が付着した畜肉または魚介類を加熱調理することを含む、請求項12に記載の畜肉または魚介類加工食品の食感改良方法。
【請求項16】
請求項1~7のいずれか1項に記載の食感改良剤を含む、畜肉または魚介類加工食品。
【請求項17】
最表面層の少なくとも一部に前記食感改良剤が付着している、請求項16に記載の畜肉または魚介類加工食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食感改良剤、並びにこれを用いた畜肉または魚介類加工食品およびその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱調理された畜肉または魚介類加工食品において、風味、食感、味付け等を向上させるために、加熱調理前の畜肉または魚介類を調味料等で処理することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、肉柔化剤または調味料に係る発明が記載されている。この際、前記肉柔化剤または調味料は、クエン酸およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種と、水溶性食物繊維からなる群より選択される少なくとも1種と、を有効成分として含有する。特許文献1には、前記肉柔化剤または調味料によれば、加熱調理した肉のジューシーさを損なうことなく、柔らかさを向上させることができる旨が記載されている。
【0004】
なお、特許文献1には、前記肉柔化剤または調味料と肉とを接触させる接触工程と、接触工程を経た肉を加熱調理する工程(調理工程)と、を備える、加熱調理した肉の柔らかさを向上させる方法も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-122245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような中、加熱調理された畜肉または魚介類加工食品の食感を改良するための新たな方法が求められている。そこで、本発明は、畜肉または魚介類加工食品の食感を改良できる食感改良剤等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば以下の態様を有する。
[1]畜肉または魚介類加工食品に用いられる食感改良剤であって、
植物性タンパクの少なくとも1種を含み、
前記植物性タンパクの冷水膨潤度が、5以上40以下である、
食感改良剤。
[2]前記植物性タンパクのタンパク質含量が65質量%以上である、前記[1]に記載の食感改良剤。
[3]前記植物性タンパクの吸水率が300%以上3000%以下である、前記[1]または[2]に記載の食感改良剤。
[4]前記植物性タンパクが、豆類由来の植物性タンパクである、[1]~[3]のいずれか1項に記載の食感改良剤。
[5]前記豆類由来の植物性タンパクが、大豆タンパク、エンドウ豆タンパクおよびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる、前記[1]~[4]のいずれか1項に記載の食感改良剤。
[6]前記植物性タンパクの含有量が、食感改良剤の全質量に対して、50質量%以上100質量%以下である、前記[1]~[5]のいずれか1項に記載の食感改良剤。
[7]前記畜肉または魚介類加工食品の最表面層の少なくとも一部に用いられる、前記[1]~[6]のいずれか一項に記載の食感改良剤。
[8]畜肉または魚介類加工食品の製造方法であって、
前記[1]~[7]のいずれか1項に記載の食感改良剤を畜肉または魚介類と混合する工程(1)と、
前記食感改良剤が混合された畜肉または魚介類を加熱調理する工程(2)と、
を含む、畜肉または魚介類加工食品の製造方法。
[9]前記工程(1)前に畜肉または魚介類を調味液に漬け込む、漬け込み工程をさらに含む、前記[8]に記載の畜肉または魚介類加工食品の製造方法。
[10]前記食感改良剤の使用量が、畜肉または魚介類の全質量に対して、0.05質量%以上3質量%以下である、前記[8]または[9]に記載の畜肉または魚介類加工食品の製造方法。
[11]前記工程(2)が、最表面層の少なくとも一部に前記食感改良剤が付着した畜肉または魚介類を加熱調理することを含む、前記[8]~[10]のいずれか1項に記載の畜肉または魚介類加工食品の製造方法。
[12]前記[1]~[7]のいずれか1項に記載の食感改良剤を畜肉または魚介類と混合する工程(1)と、
前記食感改良剤が混合された畜肉または魚介類を加熱調理する工程(2)と、
を含む、畜肉または魚介類加工食品の食感改良方法。
[13]前記工程(1)前に、畜肉または魚介類を調味液に漬け込む、漬け込み工程をさらに含む、前記[12]に記載の畜肉または魚介類加工食品の食感改良方法。
[14]前記食感改良剤の使用量が、畜肉または魚介類の全質量に対して、0.05質量%以上3質量%以下である、前記[12]または[13]に記載の畜肉または魚介類加工食品の食感改良方法。
[15]前記工程(2)が、最表面層の少なくとも一部に前記食感改良剤が付着した畜肉または魚介類を加熱調理することを含む、前記[12]~[14]のいずれか1項に記載の畜肉または魚介類加工食品の食感改良方法。
[16]前記[1]~[7]のいずれか1項に記載の食感改良剤を含む、畜肉または魚介類加工食品。
[17]最表面層の少なくとも一部に前記食感改良剤が付着している、前記[16]に記載の畜肉または魚介類加工食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、畜肉または魚介類加工食品の食感を改良することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0010】
<食感改良剤>
本発明に係る食感改良剤は、畜肉または魚介類加工食品に用いられる。前記食感改良剤は、植物性タンパクの少なくとも1種を含む。ここで前記植物性タンパクの冷水膨潤度は、5以上40以下である。
【0011】
本発明者らは、まず畜肉または魚介類加工食品の食感改良剤として澱粉を検討した。しかし、畜肉または魚介類の食感改良に単に澱粉を使用するだけでは、食感が不十分となる場合、例えば、ヌルつきが生じる場合があった。そこで本発明者らは、畜肉または魚介類加工食品に用いられる食感改良剤として種々の材料を検討した結果、植物性タンパクに着目し、本発明を完成した。前記食感改良剤によれば、畜肉または魚介類加工食品の食感を改良することができる。なお、本明細書において、「食感」とは、畜肉または魚介類加工食品を手や箸などのカトラリーで把持したとき、または食したときに感じる食品表面のヌルつき感、畜肉または魚介類加工食品を食したときに感じるしっとり感を意味する。なお、ヌルつき感がないと食品を容器に詰める際に把持不良を生じさせることがなく、また、食品を食したときに美味しく感じられる。また、しっとり感があると、食品を食したときにパサつかず、美味しく感じられる。
【0012】
[植物性タンパク]
植物性タンパクは、冷水膨潤度が5以上40以下の範囲にある場合、畜肉または魚介類加工食品の食感を改良する機能があることが本研究により明らかになった。
植物性タンパクの冷水膨潤度が所定の範囲にあると、例えば、植物性タンパクが畜肉または魚介類と接触して表面の水分を吸水する際に畜肉または魚介類に均一に付着できる、畜肉または魚介類の調理過程の離水を制御し歩留まりを向上できる、畜肉または魚介類加工食品の堅さを調整できる等のうち少なくとも1つの効果を発揮することで、食感を改良することができる。
【0013】
1)冷水膨潤度
植物性タンパクの冷水膨潤度は、5以上40以下であり、好ましくは6以上38以下であり、より好ましくは7以上36以下であり、さらに好ましくは8以上34以下であり、特に好ましくは9以上32以下であり、最も好ましくは10以上30以下である。なお、本明細書において、「冷水膨潤度」は、後述する方法により測定された値であり、より詳細には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0014】
2)タンパク質含量
前記植物性タンパクのタンパク質含量は65質量%以上であることが好ましく、より好ましくは66質量%以上、さらに好ましくは67質量%以上である。また、前記植物性タンパクのタンパク質含量は100質量%であってもよく、好ましくは97質量%以下、より好ましくは94質量%以下、さらに好ましくは91質量%以下である。前記植物性タンパクのタンパク質含量が上記範囲であると、例えば、加熱後の畜肉または魚介類表面に適度な被膜を形成できることから好ましい。なお、本明細書において、「タンパク質含量」は、粗たん白質含量をいい、食品表示法(「食品表示基準について」(平成27年3月30日付け消食表第139号))に規定された燃焼法(改良デュマ法、タンパク質換算係数6.25)を用い、ウェットベース(植物性タンパク試料の水分込みの質量)での計算値により求めることができる。
【0015】
3)吸水率
前記植物性タンパクの吸水率は、前記植物性タンパクの全量基準で、300%以上3000%以下が好ましく、より好ましくは400%以上2750%以下、さらに好ましくは500%以上2500%以下、特に好ましくは600%以上2300%以下、最も好ましくは700%以上2200%以下、なお好ましくは700%以上2000%以下である。
前記植物性タンパクの吸水率が上記範囲内であると、畜肉または魚介類に含まれる水分を適度に吸水することで、畜肉または魚介類加工食品の表面のヌルつき感を抑えることができ、また、畜肉または魚介類加工食品を食したときにパサつかず、しっとり感を付与することができる。なお、本明細書において、「吸水率」は、後述する方法により測定された値であり、より詳細には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0016】
4)可溶性画分量
前記植物性タンパクの可溶性画分量は、10%以上80%以下が好ましく、より好ましくは15%以上70%以下、さらに好ましくは20%以上60%以下、特に好ましくは20%以上55%以下である。可溶性画分量が上記範囲であると、例えば加熱後の畜肉または魚介類表面に適度な被膜を形成できることから好ましい。なお、本明細書において、「可溶性画分量」は、後述する方法により測定された値であり、より詳細には実施例に記載の方法で測定することができる。
【0017】
<吸水率、冷水膨潤度および可溶性画分量の測定方法>
本明細書において、吸水率、冷水膨潤度および可溶性画分量は、次のようにして測定することができる。
(1)試料を、水分計を用いて、130℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出する。
(2)この乾燥物質量換算で試料1g(A=1)を25℃の水50mLに分散した状態にし、30分間室温(25℃)で静置した後、3000rpmで10分間遠心分離し、沈殿層と上澄層に分ける。
(3)上澄層を取り除き、沈殿層質量を測定し、これをB(g)とする。
(4)沈殿層を乾固(105℃、恒量)したときの質量をC(g)とする。
(5)(B-A)/A×100で吸水率(%)を算出する。
(6)B/Cを冷水膨潤度とする。
(7)(A-C)/A×100を可溶性画分量(%)とする。
【0018】
前記植物性タンパクとしては、冷水膨潤度が5以上40以下のものであれば特に限定されないが、豆類由来の植物性タンパクが好ましい。中でも、大豆タンパク、エンドウ豆タンパク、およびこれらの組み合わせが好ましい。前記植物性タンパクとして豆類由来の植物性タンパクを用いることにより、畜肉または魚介類加工食品の表面のヌルつき感を抑えることができ、また、畜肉または魚介類加工食品を食したときにパサつかず、しっとり感を付与することができ美味しく感じられる。
なお、大豆タンパクとしては、脱脂大豆粉、全脂大豆粉、濃縮大豆タンパク、分離大豆タンパク等が挙げられる。中でも、タンパク質含量が高い点で、濃縮大豆タンパクおよび分離大豆タンパクが好ましく、分離大豆タンパクがより好ましい。分離大豆タンパクは、脱脂大豆から水で抽出される画分に含まれる。一方、濃縮大豆タンパクは、含水アルコールまたは酸性水で抽出される画分に含まれる。このような性質の違いから、冷水膨潤度は、分離大豆タンパクがより高くなると考えられ、この点で、本発明の食感改良剤として好適に用いられる。
【0019】
本発明の食感改良剤として用いられる前記植物性タンパクは、乾燥処理により余分な水分を除いた状態の乾燥物をいうものとする。前記植物性タンパクに含まれる水分量は、前記植物性タンパクの全量基準で、20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0020】
前記植物性タンパクは、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
前記植物性タンパクの含有量は、食感改良剤の全質量に対して、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、90質量%以上100質量%以下、95質量%以上100質量%以下であることが特に好ましい。また、前記植物性タンパクの含有量は、食感改良剤の全質量に対して、100質量%であってもよい。前記植物性タンパクの含有量が50質量%以上であると、前記植物性タンパクが高濃度で畜肉または魚介類に付着することにより、前記植物性タンパクの層を形成して当該膜の一部または全部が剥落しにくくなり、より好適に本発明の効果が得られうる観点から好ましい。なお、前記植物性タンパクを2種以上含む場合には、その合計値が上記範囲となることが好ましい。
【0022】
[他のタンパク質]
本発明の一実施形態において、本発明の効果を損なわない範囲において、上記以外の他のタンパク質をさらに含んでいてもよい。なお、本明細書において、「他のタンパク質」とは、前記植物性タンパク以外のタンパク質を意味し、具体的には、冷水膨潤度が5以上40以下の範囲外である植物性タンパク質、または植物性タンパク質以外のタンパク質を意味する。
【0023】
他のタンパク質としては、飲食品に利用可能なものであれば特に制限されず、各種タンパク質を使用できる。具体的には、動物性タンパク質(例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳、カゼイン、ホエイタンパク質、全乳タンパク質、コラーゲン、卵等)、前記植物性タンパク以外の植物性タンパク質(例えば、小麦タンパク質、米タンパク質等)、藻類タンパク質(例えば、クロレラ、ユーグレナ等)、またはこれらの分解物(例えば、ペプチド等)等が挙げられる。
【0024】
他のタンパク質の含有量は、食感改良剤の全質量に対して、40質量%以下であることが好ましく、例えば、10~30質量%であってもよい。なお、他のタンパク質を2種以上含む場合には、その合計値が上記範囲となることが好ましい。
【0025】
[調味料]
食感改良剤は、調味料をさらに含んでいてもよい。調味料としては、特に制限されないが、砂糖、食塩、酢、醤油、味噌、胡椒、みりん、ソース、ケチャップ、オイスターソース、マヨネーズ、マスタード、グルタミン酸およびその塩、イノシン酸およびその塩等が挙げられる。これらの調味料は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
[添加剤]
食感改良剤は、添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤としては、特に制限されないが、澱粉、乳化剤、pH調整剤、酸化防止剤、保存剤、着色料、香料、食物繊維、増粘剤、膨張剤等が挙げられる。これらの添加剤は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
[食感改良剤の性状]
食感改良剤の形状は、特に制限されないが、粉末であることが好ましい。
【0028】
また食感改良剤中の水分量は、食感改良剤の全質量に対して、25質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、また、例えば、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下であってもよい。
【0029】
[食感改良剤の用途]
食感改良剤は、後述するように、畜肉または魚介類加工食品に用いられることで、畜肉または魚介類加工食品の食感を改良することができる。
【0030】
一実施形態において、本発明に係る食感改良剤は、畜肉または魚介類加工食品の最表面層の少なくとも一部に用いられる。例えば、本発明に係る食感改良剤は、畜肉または魚介類のコーティング用として、畜肉または魚介類表面の少なくとも一領域に付着するように用いられる。畜肉または魚介類加工食品の表面が、食感、すなわち、ヌルつき感やしっとり感に与える影響は相対的に大きいことから、食感改良剤が畜肉または魚介類加工食品の最表面層に付着していることで、食感改良剤による食感の向上効果がより高く発揮されうる。
【0031】
なお、食感改良剤は公知の方法で製造することができる。食感改良剤は、例えば、前記植物性タンパクをそのまま食感改良剤として使用してもよいし、前記植物性タンパクを、他のタンパク質、調味料、添加剤等とともに混合して製造してもよい。この際、混合順序、混合条件(温度、圧力、撹拌条件)等も特に制限されず、適宜設定されうる。
【0032】
<畜肉または魚介類加工食品の製造方法>
本発明の一形態によれば、畜肉または魚介類加工食品の製造方法が提供される。前記製造方法は、上述の食感改良剤を畜肉または魚介類と混合する工程(1)と、前記食感改良剤が混合された畜肉または魚介類を加熱調理する工程(2)と、を含む。なお、前記製造方法は、工程(1)前に畜肉または魚介類を調味液に漬け込む、漬け込み工程(塩漬工程)、工程(2)で得られる畜肉または魚介類加工食品を冷凍する工程(3)、工程(3)で得られる冷凍食品を再加熱調理する工程(4)等をさらに含んでいてもよい。
【0033】
[漬け込み工程(塩漬工程)]
漬け込み工程(塩漬工程)は、工程(1)前に、畜肉または魚介類を調味液(ピックル液)に漬け込む工程である。調味液(ピックル液)に漬け込むことで、畜肉または魚介類加工食品の味、風味、ジューシー感等を調整することができる。この際、前記「漬け込み」には、「浸漬」、「塗布」、「タンブリング」、ピックルインジェクター等により畜肉または魚介類に針を穿刺し、当該針の先からピックル液の注入を行う、いわゆる「インジェクション」が含まれる。漬け込み工程(塩漬工程)により、調味液(ピックル液)の少なくとも一部は、畜肉または魚介類の内部に浸透もしくは混ぜ込まれる。
【0034】
(畜肉または魚介類)
畜肉または魚介類としては、特に制限されない。
【0035】
前記畜肉としては、鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、馬肉等が挙げられる。
【0036】
前記魚介類としては、マグロ、タラ、カツオ、サーモン、エビ、カニ、イカ、タコ、ホタテ等が挙げられる。
【0037】
これらの畜肉または魚介類は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。畜肉または魚介類は、畜肉を含むことが好ましく、鶏肉、豚肉、および牛肉からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、鶏肉を含むことがさらに好ましい。
【0038】
なお、畜肉または魚介類の形状は、特に制限はなく、切り身、ミンチ、ペースト等のいずれであってもよいが、切り身であることが好ましい。
【0039】
(調味液(ピックル液))
調味液(ピックル液)は、特に制限されず、所望とする味、風味、ジューシー感等によって組成が異なる。一実施形態において、ピックル液は、食用油脂、調味料、および溶媒などを含む。
【0040】
前記食用油脂としては、特に制限されないが、菜種油、コーン油、大豆油、パームオレイン、ゴマ油、落花生油、紅花油、ひまわり油、綿実油、ゴマ油、ぶどう種子油、マカダミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、胡桃油、カボチャ種子油、椿油、茶実油、オリーブ油、米ぬか油、小麦胚芽油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、あまに油、えごま油、しそ油等の植物性油脂;牛脂、豚脂、鶏油、乳脂等の食肉油脂;魚油等が挙げられる。これらの食用油脂は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
調味料としては、特に制限されないが、砂糖、食塩、酢、醤油、味噌、胡椒、みりん、ソース、ケチャップ、オイスターソース、マヨネーズ、マスタード、グルタミン酸およびその塩、イノシン酸およびその塩等が挙げられる。これらの調味料は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
前記溶媒としては、特に制限されないが、水、エタノールが挙げられる。このうち、溶媒は水であることが好ましい。
【0043】
ピックル液の使用量は、畜肉または魚介類の全質量に対して、好ましくは10質量%以上300質量%以下であり、より好ましくは12質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以上50質量%以下であり、特に好ましくは15質量%以上30質量%以下である。
【0044】
(漬け込み)
漬け込みの方法は、特に制限されず、ピックル液中に畜肉または魚介類を浸漬してもよいし、ピックル液を畜肉または魚介類に塗布してもよいし、ピックル液を畜肉または魚介類に練り込んでもよいし、ピックルインジェクター等によりピックル液を針から畜肉または魚介類に注入してもよい。
【0045】
漬け込みの際には、静置してもよいし、タンブラー等の装置を用いて物理的衝撃を付与してもよい。漬け込みの条件についても特に制限されず、加圧してもよいし、減圧してもよいし、加圧および減圧を組み合わせてもよい。また、温度を適宜変更してもよい。
【0046】
[工程(1)]
工程(1)は、食感改良剤を畜肉または魚介類と混合する工程である。ここで、「混合」とは、食感改良剤を、畜肉または魚介類の表面に刷り込ませて、畜肉または魚介類表面の少なくとも一部に食感改良剤を付着させることを意味する。ここで、前記「付着」とは、畜肉または魚介類表面の食感改良剤が、振動等によって容易に剥落しない程度に畜肉または魚介類表面の水分を取り込んで結着している状態を意味する。例えば、食感改良剤が畜肉または魚介類表面の少なくとも一領域においてコーティングされた状態は、「付着」に該当する。他方、例えば、食感改良剤が粉末である場合、工程(1)後の畜肉または魚介類表面に振動等によって容易に剥落しうるドライな粉末が残った状態は、ここでいう「付着」には該当しない。このため、例えば、粉末を畜肉または魚介類に単にまぶした状態とすることは、工程(1)の「混合」には含まれない。
【0047】
(食感改良剤)
食感改良剤は、上述したものが用いられる。
【0048】
食感改良剤の使用量は、畜肉または魚介類の全質量に対して、好ましくは0.05質量%以上3質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上2質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上1質量%以下である。食感改良剤の使用量が0.05質量%以上であると、表面にヌルつきがなくしっとり感に優れた食品を得られる観点から好ましい。一方、食感改良剤の使用量が3質量%以下であると、畜肉または魚介類へ食感改良剤を付着させる際の作業性がよい観点から好ましい。なお、畜肉または魚介類が、調味液に漬け込みされた畜肉または魚介類である場合には、「畜肉または魚介類の全質量」には、調味液の質量は含まれない。
【0049】
(畜肉または魚介類)
畜肉または魚介類は、上述した畜肉または魚介類、または調味液に漬け込みされた畜肉または魚介類が用いられる。
【0050】
(混合)
食感改良剤を畜肉または魚介類と混合する方法としては、特に制限されないが、畜肉または魚介類に食感改良剤を接触させて、物理的衝撃を付与する方法が挙げられる。なお、本明細書において、「物理的衝撃」とは、混合のために人為的に付与される物理的な作用を意味する。このため、畜肉または魚介類に接触させるために粉末をまぶす行為、まぶした粉末のうちの過剰分を払い落とす行為等によって生じる物理的な作用は前記「物理的衝撃」には該当しない。
【0051】
物理的衝撃を付与する方法としては、畜肉または魚介類表面の少なくとも一部に食感改良剤を付着させることができれば特に制限されない。物理的衝撃を付与する方法は、例えば、手混ぜであってもよいし、ミキサーを使用する方法であってもよい。この際、使用するミキサーは特に制限されず、公知のものを使用することができる。なお、漬け込み工程に続いて工程(1)の混合を行う場合、漬け込み工程において物理的衝撃の付与に使用する装置(例えば、タンブラー)をそのままミキサーとして使用してもよい。混合条件は、特に制限されず、加圧してもよいし、減圧してもよいし、加圧および減圧を組み合わせてもよい。また、温度を適宜変更してもよい。
【0052】
[工程(2)]
工程(2)は、食感改良剤が混合された畜肉または魚介類を加熱調理する工程である。
【0053】
(食感改良剤が混合された畜肉または魚介類)
食感改良剤が混合された畜肉または魚介類は、その表面の少なくとも一部に食感改良剤が付着した状態となっている。また、工程(1)前に漬け込み工程を行った場合、調味液(ピックル液)の少なくとも一部が畜肉または魚介類の内部に浸透もしくは混ぜ込まれた状態となっている。
【0054】
一実施形態において、食感改良剤が混合された畜肉または魚介類は、最表面層の少なくとも一部に前記食感改良剤が付着した状態となることが好ましい。すなわち、工程(2)は、好ましくは、最表面層の少なくとも一部に前記食感改良剤が付着した畜肉または魚介類を加熱調理することを含む。畜肉または魚介類の最表面層に食感改良剤が付着した状態で加熱調理をすることで、食感改良剤による食感の向上効果がより高く発揮されうる。なお、食感改良剤が表面に付着した畜肉または魚介類の表面に対して、さらに小麦粉、片栗粉、卵、パン粉等を用いて衣を付す場合には、食感改良剤は衣の内部に位置することになるため、食感改良剤が最表面層に付着している状態とはならないことがある。
【0055】
(加熱調理)
加熱調理方法としては、適宜選択すればよく、特に制限されないが、フライ、炒め、蒸し、茹で、煮込みが好ましく、炒め、蒸し、茹で、煮込みがより好ましく、炒めがさらに好ましい。これらの加熱調理方法は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
加熱調理機器としては、適宜選択すればよく、特に制限されないが、フライパン、鍋、蒸し器、電子レンジ、オーブントースター、スチームコンベクションオーブン等が挙げられる。これらの加熱調理機器は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
加熱調理の温度は、適宜選択すればよく、特に制限されないが、65℃以上300℃以下であることが好ましく、80℃以上280℃以下であることがより好ましい。
【0058】
[工程(3)]
工程(3)は、工程(2)で得られる畜肉または魚介類加工食品を冷凍する工程である。工程(3)により、畜肉または魚介類加工食品を冷凍食品とすることができる。
【0059】
(冷凍)
冷凍は、特に制限されず、公知の方法で行うことができる。冷凍の方法としては、例えばエアブラスト法、ブライン法、コンタクト法、液化ガス凍結法、これらの組み合わせが挙げられる。
【0060】
[工程(4)]
工程(4)は、工程(3)で得られる冷凍食品を再加熱調理する工程である。
【0061】
再加熱調理の方法としては、特に制限されないが、工程(2)に記載の加熱調理に記載の方法および機器が使用される。これらの再加熱調理方法は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
なお、好ましい一実施形態において、本発明の食感改良剤は、冷解凍後もゲル化しないため、冷凍食品を再加熱調理した場合であっても、好適な食感を維持することができる。
【0063】
<食感改良方法>
本発明の一形態によれば、食感改良方法が提供される。前記食感改良方法は、上述の食感改良剤を畜肉または魚介類と混合する工程(1)と、前記食感改良剤が混合された畜肉または魚介類を加熱調理する工程(2)と、を含む。この際、食感改良方法は、工程(1)前に畜肉または魚介類を調味液に漬け込む、漬け込み工程(塩漬工程)、工程(2)で得られる畜肉または魚介類加工食品を冷凍する工程(3)、工程(3)で得られる冷凍食品を再加熱調理する工程(4)をさらに含んでいてもよい。これらの工程は、上述の方法により行うことができる。
【0064】
上記食感改良方法により、畜肉または魚介類加工食品の食感を改良することができる。
【0065】
<畜肉または魚介類加工食品>
本発明の一形態によれば、畜肉または魚介類加工食品が提供される。前記畜肉または魚介類加工食品は、上述の食感改良剤を含む。前記畜肉または魚介類加工食品は、食感が改良されている。具体的には、表面のヌルつきが低減され、しっとり感に優れる。また、好ましい一実施形態によれば、前記畜肉または魚介類加工食品は、味の向上、風味の向上、およびジューシー感の向上の少なくとも1つの効果をさらに有しうる。
【0066】
なお、食感改良剤の少なくとも一部は、畜肉または魚介類加工食品の表面に付着している。また、食感改良剤の少なくとも一部は、畜肉または魚介類加工食品の内部に存在していてもよい。
【0067】
また、一実施形態において、畜肉または魚介類加工食品は、最表面層の少なくとも一部に食感改良剤が付着していることが好ましい。食感改良剤が畜肉または魚介類加工食品の最表面層に付着していることで、食感改良効果がより高く発揮されうる。このような畜肉または魚介類加工食品としては、特に制限されないが、衣を有さない畜肉または魚介類加工食品であることが好ましく、例えば、グリルチキン、ステーキ、焼肉、焼き鳥、ローストビーフ、ローストチキン、ハンバーグ、ポークソテー、ハム、ベーコン、焼き貝、焼き魚、焼き蟹、焼き海老、白身魚ソテーなどが挙げられる。また、食感改良剤との混合作業性の観点から、グリルチキンや焼き豚などのインジェクションやタンブリングなどを行う単身品が好ましい。
【実施例0068】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
[測定方法]
(吸水率、冷水膨潤度および可溶性画分量)
植物性タンパクおよび他のタンパク質の吸水率、冷水膨潤度および可溶性画分量を以下の方法で測定した。
(1)試料を、水分計(研精工業株式会社、電磁水分計:型番MX50)を用いて、130℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出した。
(2)この乾燥物質量換算で試料1g(A=1)を50mLファルコンチューブに秤量し、ボルテックスミキサー (サイエンティフィックインダストリーズ社、ジェニー2 SI-0286)にて撹拌しながらチューブ目盛り50mLまで25℃の水を加えた。内容物を5回転倒混和させて沈殿した試料を分散させた後、ボルテックスミキサー (サイエンティフィックインダストリーズ社、ジェニー2 SI-0286)にて10秒撹拌した。30分間室温(25℃)で静置した後、3000rpmで10分間遠心分離(遠心分離機:日立工機社製、日立卓上遠心機CT6E型;ローター:T4SS型スイングローター;アダプタ:50TC×2Sアダプタ)し、沈殿層と上澄層に分けた。
(3)上澄層をピペットで取り除き、沈殿層質量を測定し、これをB(g)とした。
(4)沈殿層を乾固(105℃、恒量)したときの質量をC(g)とした。
(5)(B-A)/A×100で吸水率(%)を算出した。
(6)B/Cを冷水膨潤度とした。
(7)(A-C)/A×100を可溶性画分量(%)とした。
【0070】
(タンパク質含量)
植物性タンパクのタンパク質含量を以下の方法で測定した。
以下測定は全窒素測定装置:SUMIGRAPH NC-TRINITY(住化分析センター)を用いて行った。
(1)流量計で、He流量について、VENT1が80±5ml/min、VENT2が40±5ml/minであることを確認した。
(2)空焼きした石英ろ紙をアルミナボートに2枚ずつ敷いた。
(3)(2)で用意したろ紙入りボートに標準試薬及び試料をサンプリングし、試料テーブルにセットした。なお、前記試料は、市販の製品であるタンパク質を、加熱乾燥処理を施さずにそのまま用いた。
(4)ブランク測定を行った後、測定を行った。ベース面積が100~300の範囲であることを確認した。
(5)食品表示法(「食品表示基準について」(平成27年3月30日付け消食表第139号))に規定された燃焼法(改良デュマ法)により求めた全窒素の試料に対する百分率(%)に所定のタンパク質換算係数(6.25)を乗じてタンパク質含量とした。
【0071】
[実施例1]
(タンブリング工程)
畜肉として皮を除いた鶏ムネ肉(70~90g)を準備した。また、下記表1の組成を有するピックル液を調製した。
【0072】
【表1】
【0073】
鶏ムネ肉に、鶏ムネ肉の質量に対して20質量%のピックル液を添加し、タンブラー(VAKONA社製、型式:ESK-60)を用いて、正転逆転操作により5℃で60分間混合することで、鶏ムネ肉にピックル液をタンブリングした。
【0074】
(混合工程)
タンブリングした鶏ムネ肉に、鶏ムネ肉の質量に対して、0.5質量%の分離大豆タンパク1(ニューフジプロSEH、不二製油株式会社製)を添加し、手混ぜにより鶏ムネ肉に分離大豆タンパク1(食感改良剤)を混合した。
【0075】
(加熱調理工程)
分離大豆タンパク1が混合された鶏ムネ肉を、250℃に加熱したホットプレートで表面1分間、次いで裏面1分間加熱調理した。
【0076】
次いで、加熱調理された鶏ムネ肉を、スチームコンベクションオーブンを用いて、85℃で25分間さらに加熱調理することで、グリルチキンを得た。
【0077】
(冷凍工程)
グリルチキンを-18℃で冷凍することで冷凍グリルチキンを得た。
【0078】
(解凍工程)
冷凍から6日後、冷凍グリルチキンを4℃で解凍することで解凍後グリルチキンを得た。
【0079】
[実施例2~5、比較例1~3、参考例1~4]
混合工程において、分離大豆タンパク1に代えて、以下のタンパク質または澱粉を用いたことを除いては実施例1と同様の方法で解凍後グリルチキンを得た。
【0080】
実施例2:分離大豆タンパク2(ニューフジプロHP、不二製油株式会社製)
実施例3:分離大豆タンパク3(フジプロ、不二製油株式会社製)
実施例4:濃縮大豆タンパク(ウィルコンSS、日本新薬株式会社製)
実施例5:エンドウ豆タンパク(Peaタンパク、日中商会株式会社販売)
比較例1:米タンパク(ライスプロテインウルトラファイン、株式会社光洋商会製)
比較例2:小麦グルテン(A-グルG、グリコ栄養食品株式会社製)
比較例3:粉末卵白(乾燥卵白Wタイプ、キューピータマゴ株式会社製)
参考例1:ワキシーコーンスターチ(ワキシーコーンスターチY、株式会社J-オイルミルズ製)
参考例2:タピオカ澱粉(Tapioca Native Starch、SIAM STARCH(1966)CO.,LTD.製)
参考例3:米澱粉(ファインスノウ、上越スターチ株式会社製)
参考例4:小麦澱粉(WS-525、千葉製粉株式会社)
【0081】
各例で用いたタンパク質または澱粉の冷水膨潤度、吸水率、可溶性画分量およびタンパク質含量を表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
[評価]
実施例1~5、比較例1~3、および参考例1~4について、各種評価を行った。
【0084】
(ヌルつき感)
冷凍グリルチキンを4℃の冷蔵庫で24時間静置して解凍した後、3名の評価者がグリルチキンの表面を手で触り、以下の基準に従って評価した。3名の評価者の評価結果の平均値を算出した。得られた結果を下記表3に示す。ヌルつき感は、前記平均値が3.0以上のときに合格とした。
【0085】
5:まったくヌルつかない
4:ほぼヌルつかない
3:ややヌルつく
2:ヌルつく
1:非常にヌルつく
【0086】
(しっとり感)
冷凍グリルチキンを4℃の冷蔵庫で24時間静置して解凍した後、3名の評価者が試食し、以下の基準に従って評価した。3名の評価者の評価結果の平均値を算出した。得られた結果を下記表3に示す。しっとり感は、前記平均値が3.0以上のときに合格とした。
【0087】
5:とてもしっとり感がある
4:しっとり感がある
3:ややパサつき感がある
2:パサつき感がある
1:非常にパサつき感がある
【0088】
【表3】
【0089】
表3の結果から、実施例1~5は、ヌルつきがなく、また、食感が良好であることが分かる。他方、植物性タンパクの冷水膨潤度が所定の範囲を満たさない場合、ヌルつきは抑えられるもののしっとり感が得られなかった(比較例1~3)。また、植物性タンパクに代えて澱粉を用いた場合、しっとり感は得られるものの、ヌルつきがあった(参考例1~4)。