(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043779
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】プラスチック光ファイバ熱処理用ボビン、プラスチック光ファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/02 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
G02B6/02 366
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148961
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】荒田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】北山 武史
(72)【発明者】
【氏名】上村 芳美
【テーマコード(参考)】
2H250
【Fターム(参考)】
2H250AA22
2H250AA42
2H250AB33
2H250AB34
2H250AB37
2H250AB43
2H250BA16
2H250BA21
2H250BA34
2H250BB03
2H250BB07
2H250BB08
2H250BB09
2H250BB13
2H250BB18
(57)【要約】
【課題】繰り返し加熱処理を行った後も、得られるPOFの伝送損失の劣化を抑制できる、プラスチック光ファイバ熱処理用ボビン、およびこのプラスチック光ファイバ熱処理用ボビンを用いたプラスチック光ファイバの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のプラスチック光ファイバ熱処理用ボビン1は、プラスチック光ファイバを巻き付けた状態で加熱処理するためのボビンであって、円筒状の胴部2を備え、胴部の外周面に発泡シートが配置され、発泡シートは、見かけ密度が0.01g/cm
3~0.2g/cm
3のポリプロピレン樹脂を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック光ファイバを巻き付けた状態で加熱処理するためのボビンであって、
円筒状の胴部を備え、
前記胴部の外周面に発泡シートが配置され、
前記発泡シートは、見かけ密度が0.01g/cm3~0.2g/cm3のポリプロピレン樹脂を含む、プラスチック光ファイバ熱処理用ボビン。
【請求項2】
さらに、前記胴部の長手方向の両端にそれぞれ設けられた鍔部を備える、請求項1に記載のプラスチック光ファイバ熱処理用ボビン。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプラスチック光ファイバ熱処理用ボビンの胴部に、プラスチック光ファイバを巻き付けた状態で、前記プラスチック光ファイバを加熱処理する、プラスチック光ファイバの製造方法。
【請求項4】
前記プラスチック光ファイバのコア材がポリメチルメタクリレートからなり、
前記プラスチック光ファイバを加熱処理する温度が80℃以上である、請求項3に記載のプラスチック光ファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック光ファイバ熱処理用ボビン、およびプラスチック光ファイバ熱処理用ボビンを用いたプラスチック光ファイバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック光ファイバ(以下、「POF」ということもある。)は、ガラス製光ファイバに比べて伝送距離は短いものの、安価、軽量、柔軟、大口径化が容易であるなどのメリットを有する。このようなメリットを活かして、POFは、照明用途、FA、OA、LAN等の短距離通信用途、及び各種光学センサ用途等の分野での実用化が進んでいる。そして、近年、POFは、車載用途での実用化が進んでいる。
【0003】
車載用途では、POFは、エンジンあるいは夏期の日射による高温にさらされる環境で使用されるため、耐熱性、特に高温時の収縮率の低減が要求される。このような要求に応じるため、POFの素線を張力存在下で、90℃以上の温度に加熱する熱処理を行い、POFの収縮率を低減する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。さらに、POFをボビンの円筒状の胴部に巻き付けた状態で、このような熱処理を行なう処理方法が提案されている。
【0004】
しかしながら、このような熱処理では、POF自体の収縮による巻締りや、ボビンの収縮・膨張変形によってPOFに応力が加わる。そのため、所望の収縮特性を得るために、熱処理中に、ボビンの胴部に巻き付けられたPOFの内方側、すなわちボビンの胴部の外周面に近い部位に位置するPOFに大きな応力が加わるという問題が生じる。
【0005】
このような問題に対して、特許文献2では、円筒状の胴部の外周面に、見かけ密度が0.01g/cm3~0.2g/cm3のポリオレフィン樹脂を含む発泡シートを配置することによって、ボビンの内方側に巻き付けられたPOFに、巻き締まり等によって生じる応力を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-55243号公報
【特許文献2】特開2006-251214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2で提案されている発泡シートの中でも、ポリエチレン樹脂を含む発泡シートは、何度も繰り返し熱処理を行った場合、発泡している気泡部分がつぶれ、熱処理後のPOF(特に、ボビンの外周面に近い部位に位置するPOF)の伝送損失が増大するという課題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、繰り返し熱処理を行った後も、得られるPOFの伝送損失の劣化を抑制できる、プラスチック光ファイバ熱処理用ボビン、およびこのプラスチック光ファイバ熱処理用ボビンを用いたプラスチック光ファイバの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、繰り返し加熱処理を行った後に得られるPOFの伝送損失の劣化を抑制できる、プラスチック光ファイバ熱処理用ボビン、およびこのプラスチック光ファイバ熱処理用ボビンを用いたプラスチック光ファイバの製造方法についての解析を進め、対策について鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0010】
本発明の要旨は以下の通りである。
[1]プラスチック光ファイバを巻き付けた状態で加熱処理するためのボビンであって、
円筒状の胴部を備え、
前記胴部の外周面に発泡シートが配置され、
前記発泡シートは、見かけ密度が0.01g/cm3~0.2g/cm3のポリプロピレン樹脂を含む、プラスチック光ファイバ熱処理用ボビン。
[2]さらに、前記胴部の長手方向の両端にそれぞれ設けられた鍔部を備える、[1]に記載のプラスチック光ファイバ熱処理用ボビン。
[3][1]または[2]に記載のプラスチック光ファイバ熱処理用ボビンの胴部に、プラスチック光ファイバを巻き付けた状態で、前記プラスチック光ファイバを加熱処理する、プラスチック光ファイバの製造方法。
[4]前記プラスチック光ファイバのコア材がポリメチルメタクリレートからなり、
前記プラスチック光ファイバを加熱処理する温度が80℃以上である、[3]に記載のプラスチック光ファイバの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱処理中に、POFに加わる応力を減少させることができるプラスチック光ファイバ熱処理用ボビン、および応力によるPOFの伝送損失の増大を抑制できるプラスチック光ファイバの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプラスチック光ファイバ熱処理用のボビンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
以下において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0014】
[プラスチック光ファイバ熱処理用ボビン]
以下、図面に沿って、本発明の一実施形態に係るPOF熱処理用ボビンについて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るPOF熱処理用ボビンを示す斜視図である。
本実施形態のPOF熱処理用ボビン1は、POFが巻き付けられる円筒状の胴部2と、胴部2と同心状に配置され、胴部2の軸線方向の両端にそれぞれ設けられた円盤状の鍔部4とを備える。
【0015】
胴部2の外周面には、ポリプロピレン樹脂を含有する発泡シートからなる緩衝層6が配置されている。緩衝層6は、胴部2の外周面を覆い、胴部2の両端の鍔部4の間にかけ渡されるように配置されている。本実施形態のPOF熱処理用ボビン1は、緩衝層6上にPOFを巻き付けた状態で熱を加えることにより、POFの加熱処理が繰り返し行なわれる。緩衝層6を構成するポリプロピレン樹脂を含有する発泡シートは、加熱処理時に、POF自体の巻締りや、POF熱処理用ボビン1の変形時にPOFに作用する応力を逃し、POFを保護する機能を有する。
【0016】
POF熱処理用ボビン1の胴部2の材料と鍔部4の材料は、ポリスチレン、アクリロニトル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリオレフィン、ポリカーボネートなどの公知の樹脂素材が挙げられる。前記の材料は、POF熱処理用ボビン1の胴部2および鍔部4の熱変形を抑制するために、ガラス繊維を含有していてもよい。特に、コア材がPMMA(ポリメチルメタクリレート)からなるPOFの熱処理に際しては、前記の材料は、熱変形温度や、収縮・膨張の挙動がPMMAに近いポリスチレンやABSが好ましく、ABSがより好ましい。特に、車載用途でのPOFの収縮特性の改善を目的として実施される80℃から110℃程度の熱処理においては、POF熱処理用ボビン1の胴部2と鍔部4を、収縮・膨張がほとんどないガラス繊維を含有したABSで形成することが好ましい。
【0017】
POF熱処理用ボビン1は、胴部2と鍔部4の中央を貫通して延びるように配置された軸8を備える。軸8は、POFをPOF熱処理用ボビン1に巻き取ったり、POF熱処理用ボビン1からPOFを引き出したりする際に、POF熱処理用ボビン1の回転軸として用いられる。
【0018】
緩衝層6を構成するポリプロピレン樹脂を含有する発泡シートには、POFの光学特性を劣化させる要因となる可塑剤や添加材を可能な限り少なくすることが求められる。従って、発泡シートの材料としては、ポリプロピレン樹脂を電子線架橋処理して得られたものが好ましい。
ポリプロピレン樹脂を含有する発泡シートは、耐熱性に優れる。従って、発泡シートの気泡はPOFの加熱処理によって潰れにくく、胴部2に巻き付けられたPOFのうち内方側のPOFに巻き締まり等によって生じる応力を抑制して、POFの伝送損失を良好な状態に保つことができる。
【0019】
緩衝層6を構成するポリプロピレン樹脂を含有する発泡シートの見かけ密度は、光学特性の劣化程度と相関している。
【0020】
緩衝層6を構成するポリプロピレン樹脂を含有する発泡シートの見かけ密度は、0.01g/cm3~0.2g/cm3である。発泡シートの見かけ密度が0.01g/cm3未満では、POFを巻き付けた際に、緩衝層6を構成する発泡シートが圧縮され、以後の加熱処理における緩衝効果が小さくなる。また、発泡シートの見かけ密度が0.2g/cm3を超えると、POFを巻き付けた際に、伝送損失が劣化することがある。
【0021】
発泡シートの厚さは、2mm~6mmが好ましい。発泡シートの厚さが2mm未満では、緩衝効果が小さくなる。発泡シートの厚さが6mmを超えると、緩衝層6にPOFが食い込みすぎて、POFをボビンから引き出しにくくなる。
【0022】
本実施形態のPOF熱処理用ボビン1は、SI型、GI型、マルチコア型等の公知のPOFの熱処理に使用することができる。
【0023】
本実施形態のPOF熱処理用ボビン1によれば、円筒状の胴部2の外周面に、緩衝層6を構成する発泡シートが配置され、発泡シートは、見かけ密度が0.01g/cm3~0.2g/cm3のポリプロピレン樹脂を含むため、繰り返し加熱処理を行った後も、POF熱処理用ボビン1の内方側に巻かれたPOFに、巻き締まり等による応力が作用しても、発泡シートの気泡が潰されることなく形状を維持し、前記の応力が発泡シートによってPOF熱処理用ボビン1側に逃がされる。従って、POF熱処理用ボビン1の内方側のPOFの伝送損失が応力によって低下することを抑制できる。
【0024】
[プラスチック光ファイバの製造方法]
本発明の一実施形態に係るプラスチック光ファイバの製造方法は、上述の実施形態のプラスチック光ファイバ熱処理用ボビンの胴部に、プラスチック光ファイバを巻き付けた状態で、プラスチック光ファイバを加熱処理する。
【0025】
POF熱処理用ボビン1を用いて加熱処理されるPOFの光伝送路となるコア材に用いられる材料としては、透明性の高い重合体が用いられる。重合体としては、メチルメタクリレ-ト系の重合体が好ましく、メチルメタクリレ-ト単独重合体及びメチルメタクリレート単位を主成分とする共重合体がより好ましく、ベンジルメタクリレ-ト単位を主成分とする共重合体、またはフッ素化アルキルメタクリレ-ト系重合体がさらに好ましく、メチルメタクリレート単独重合体が特に好ましい。
【0026】
SI型POFのクラッド材としては、コア材よりも屈折率が低い公知の材料が用いられる。クラッド材としては、フッ素化アルキル(メタ)アクリレート単位とメチルメタクリレート単位との共重合体、α-フルオロアクリル酸エステルからなる重合体、フッ化ビニリデン単位を含む重合体、及び上記各種重合体からなるブレンド物等が好適に用いられる。フッ化ビニリデン単位を含む重合体としては、フッ化ビニリデンの単独重合体やフッ化ビニリデン単位と、テトラフルオロエチレン、6-フッ化プロピレン、6フッ化アセトン、エチレン、もしくはプロピレンの各単量体単位を含む共重合体が好適に用いられる。
【0027】
さらに、各種特性の向上を図るためにクラッド材の外側に配置される保護層の材料としては、クラッド材と同様に公知の材料が用いられる。保護層の材料としては、例えば、通常の高開口角を有する光ファイバで用いられている短鎖フッ素化アルキル基を有する(メタ)アクリレートと長鎖フッ素化アルキル基を有する(メタ)アクリレートとメチルメタクリレートの各単量体単位を含む共重合体、フッ化ビニリデン系重合体等が挙げられる。
【0028】
また、保護層の材料としては、柔軟性や耐溶剤性の観点から、フッ化ビニリデン系重合体を使用することが好ましい。フッ化ビニリデン系重合体としては、フッ化ビニリデンの単独重合体やフッ化ビニリデン単位と、テトラフルオロエチレン、6-フッ化プロピレン、6フッ化アセトン、エチレン、もしくはプロピレンの各単量体単位を含む共重合体が好ましい。フッ化ビニリデン単位とテトラフルオロエチレン単位を含む共重合体を用いる場合、透明性に優れる観点から、フッ化ビニリデン単位を70モル%~90モル%含むものが好ましい。
【0029】
本実施形態のPOFの製造方法においては、耐環境特性改善を目的として、最外側層として、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑製被覆層を形成したPOFを適用することも可能である。
【0030】
POF熱処理用ボビン1を用いたPOFの加熱処理においても、従来のPOFの加熱処理と同様に、POFを所定の張力をかけた状態でPOF熱処理用ボビン1に巻き付けて、POFの加熱処理を行なう。
【0031】
本実施形態のPOFの製造方法では、機械特性の向上を目的としてPOFの製造過程で施される延伸配向を低下させることなく、POFの収縮特性の改善が可能となる。
加熱処理の方法は、特に限定されないが、例えば、内部循環式の恒温槽等にて一定温度、一定時間、加熱処理する方法が挙げられる。
【0032】
POFを加熱処理する温度は、特に限定されず、コア材の材質に応じて、適宜調整される。コア材がPMMAからなるPOFを加熱処理する場合、所望の収縮特性の改善に必要な処理時間を短縮化させるために、加熱処理する温度は80℃以上であることが好ましい。
【0033】
POF熱処理用ボビン1にPOFを巻き付ける際の巻取張力を大きくすると、収縮改善効果は大きくなるが、胴部2に巻き付けられたPOFのうち内方側(内方すなわちPOF熱処理用ボビン1側)に位置するPOFにかかる応力が大きくなり、光学特性が低下することがある。一方、POF熱処理用ボビン1にPOFを巻き付ける際の巻取張力を小さくすると、所望の収縮改善効果を得るために要する時間が長くなる。
【0034】
従って、加熱処理条件を勘案したうえで、適切な巻き付け張力を設定する必要がある。例えば、直径AμmのPMMAをコア材としたPOFを熱処理する際には、巻き付け張力を、A×1/5gf~A×1/2gfの範囲とすることで、POFの光学特性を低下させることなく、所望の収縮改善効果を得ることができる。
【0035】
本実施形態のプラスチック光ファイバの製造方法によれば、応力によるPOFの伝送損失の増大を抑制できる。
【実施例0036】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
[POFの製造例]
実施例および比較例で用いたPOFについて説明する。
POFは、コア材として屈折率1.490のメチルメタクリレート単独重合体を用い、クラッド材として屈折率1.417の3FM/13FM/MMA/MAA=41wt%/39wt%/18wt%/2wt%からなる共重合体を用い、保護層の材料として屈折率1.374の2F/4F/6F=60.5mol%/34.5mol%/5.0mol%からなる共重合体を用いた。
なお、3FMは(メタ)アクリル酸-2,2,2-トリフルオロエチル、13FMは(メタ)アクリル酸-2-(パーフルオロヘキシル)エチル、MMAはメタクリル酸メチル、MAAはメタクリル酸、2Fはフッ化ビニリデン、4Fはテトラフルオロエチレン、6Fはヘキサフルオロプロピレンである。
【0038】
これら3種の材料を230℃で溶融複合紡糸し、複合化されたストランドを50℃まで冷却した後、140℃に加熱して、ファイバの繊維軸方向に2倍の延伸操作を行い、直径が1000μm、クラッドの厚みが10μm、保護層の厚みが10μmであるPOFを作製した。
【0039】
得られたPOFの波長650nm、励振NA=0.1の条件での伝送損失を25-5mのカットバック法で測定した結果、134dB/kmであった。また、このPOFを90℃で24時間、加熱処理し、加熱前後の長さの変化から求めた収縮率は0.9%であった。
【0040】
[実施例1]
JIS K 6767法による見かけ密度が0.067g/cm3、ASTM D1567法による厚みが5mmのポリプロピレン発泡シート(商品名:PP耐熱ぺフ、月産業社製)を用意した。
また、胴部と、胴部の軸線方向の両端にそれぞれ設けられた円盤状の鍔部とを備え、ガラス繊維を含有するABS樹脂製のボビンを用意した。胴部の直径は190mm、胴部の長さ(2つの鍔部の間の長さ)は180mm、鍔部の直径は300mmであった。
ボビンの胴部の外周面に、ポリプロピレン発泡シートを貼り付けた。
ボビンの胴部に、ポリプロピレン発泡シートを介して、上記のPOFを巻付張力250gfで5000m巻き付けた。
【0041】
POFを巻き付けたボビンを熱風循環式の恒温装置の中に入れて、85℃で140時間の加熱処理を行なった。その後、ボビンに巻き付けたPOFの全量を引き出して、ボビンの最内層に巻かれていたPOFの伝送損失を測定した。
また、加熱処理用のPOFを巻き付けたボビンを恒温装置に入れず、100時間室温(25℃)で保管した後、再度、ボビンからPOF全量を引き出して、ボビンの最内層に巻かれていたPOFの伝送損失を測定し、巻き付けに操作によるPOFの伝送損失を測定した。
加熱処理工程後、室温(25℃)で保管する一連の工程を3回繰り返し、それぞれにおける、ボビンの最内層に巻かれていたPOFの伝送損失を測定した。結果を表1に示す。
表1に示すように、加熱処理3回後も、ボビンの最内層に巻かれていたPOFの伝送損失の劣化は抑制されていた。これは、ボビンの胴部の外周面に、ポリプロピレン発泡シートを配置したことによって、POFの巻き締まり等による応力が抑制されたことによる効果である。また、加熱処理後のボビンの外観は、加熱処理前から変化なかった。
【0042】
[比較例1]
ポリプロピレン発泡シートをポリエチレン発泡シートに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、加熱処理を3回行い、ボビンの最内層に巻かれていたPOFの伝送損失を評価した。結果を表1に示す。
表1に示すように、加熱処理3回後も、ボビンの最内層に巻かれていたPOFの伝送損失が190dB/kmと劣化していることが観察された。ボビンの胴部の外周面に、ポリエチレン発泡シートを配置し、複数回に渡る加熱処理によりポリエチレン発泡シートの気泡が潰れたことで、POFの伝送損失の極度な劣化に繋がったと考えられる。
また、加熱処理後のボビンの外観は、加熱処理前から変化していなかった。
【0043】