(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043882
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】有価金属の回収方法
(51)【国際特許分類】
C22B 7/00 20060101AFI20240326BHJP
C22B 1/24 20060101ALI20240326BHJP
C22B 5/02 20060101ALI20240326BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B1/24
C22B5/02
H01M10/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149108
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】永倉 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】萩尾 友哉
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001AA07
4K001AA09
4K001AA10
4K001AA19
4K001AA34
4K001BA22
4K001CA01
4K001CA02
4K001CA03
4K001CA15
4K001CA26
4K001CA27
4K001DA05
4K001GA07
4K001HA01
4K001HA09
4K001JA01
4K001KA01
4K001KA02
4K001KA05
4K001KA06
4K001KA07
5H031BB01
5H031EE01
5H031EE03
5H031HH03
5H031HH09
5H031RR02
(57)【要約】
【課題】有価金属の回収方法における処理原料であって、正極活物質と負極活物質の混合粉について、ハンドリング時の発塵を抑制し、混合粉を処理する際に発生するキャリーオーバーによる有価金属の回収ロスを低減できる方法を提供する。
【解決手段】本発明は、有価金属の回収方法であって、廃リチウムイオン電池を含む原料を準備する準備工程S1を含み、準備工程S1では、廃リチウムイオン電池を構成する正極活物質と負極活物質とを含む混合粉に水を添加し予備混錬する予備混錬工程S13と、予備混錬物をさらに混錬し造粒する造粒工程S14と、を実行することにより混合粉からなる造粒物を調製する。予備混錬工程S13での水の添加量は、混合粉に対する重量比で0.14~0.16に調整することが好ましい。また、造粒工程S14では、2軸パドル式造粒機を用い、パドル先端の周速度を50m/分~90m/分に設定することが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価金属を回収する方法であって、
有価金属を含有する廃リチウムイオン電池を含む原料を準備する準備工程を含み、
前記準備工程では、
前記廃リチウムイオン電池を構成する正極活物質と負極活物質とを含む混合粉に水を添加して予備混錬する予備混錬工程と、
得られた予備混錬物をさらに混錬して造粒する造粒工程と、
を実行することによって前記混合粉からなる造粒物を調製する、
有価金属の回収方法。
【請求項2】
前記予備混錬工程では、前記水の添加量を、前記混合粉に対する重量比で0.14以上0.16以下に調整する、
請求項1に記載の有価金属の回収方法。
【請求項3】
前記造粒工程では、2軸パドル式の造粒機を用い、該造粒機のパドル先端の周速度を50m/分以上90m/分以下に設定して、前記予備混錬物に対する混錬及び造粒を行う、
請求項1又は2に記載の有価金属の回収方法。
【請求項4】
当該有価金属の回収方法は、
前記準備工程を経て得られる前記造粒物に対して還元熔融処理を施し、有価金属を含有する合金と、スラグとを含む還元熔融物を得る還元工程を、さらに含む乾式製錬プロセスからなり、
前記準備工程における前記予備混錬工程では、前記混合粉に、前記還元熔融処理において用いられるフラックスを添加して予備混錬する、
請求項1又は2に記載の有価金属の回収方法。
【請求項5】
前記予備混錬工程では、
粒径が5mm以下の前記フラックスを用い、該フラックスの添加量を、前記混合粉に対する重量比で0.1以上0.2以下に調整する、
請求項4に記載の有価金属の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃リチウムイオン電池等の原料から有価金属を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量で大出力の電池としてリチウムイオン電池が普及している。よく知られているリチウムイオン電池は、外装缶内に、負極材と、正極材と、セパレータと、電解液とを封入した構造を有している。例えば、外装缶は、鉄(Fe)やアルミニウム(Al)等の金属からなる。負極材は、負極集電体(銅箔等)に固着させた負極活物質(黒鉛等)からなる。正極材は、正極集電体(アルミニウム箔等)に固着させた正極活物質(ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム等)からなる。セパレータは、ポリプロピレンの多孔質樹脂フィルム等からなる。電解液は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)等の電解質を含む。
【0003】
リチウムイオン電池の主要な用途の一つに、ハイブリッド自動車や電気自動車がある。そのため、自動車のライフサイクルにあわせて、搭載されたリチウムイオン電池が将来的に大量に廃棄される見込みである。また、製造中に不良品として廃棄されるリチウムイオン電池がある。このような使用済み電池や製造中に生じた不良品の電池(以下、「廃リチウムイオン電池」)を資源として再利用することが求められている。
【0004】
再利用の手法として、例えば、廃リチウムイオン電池を高温炉(熔融炉)で全量熔解する乾式製錬プロセスがある。また、廃リチウムイオン電池より得られた有価金属含有物を、酸性溶液に混合して溶解した後に、得られた浸出液に中和剤を添加して中和終液と中和澱物とに分離し、得られた中和終液について例えば酸性抽出剤による溶媒抽出を行って、抽出後の有機溶媒を硫酸溶液で逆抽出する湿式製錬プロセスがある。
【0005】
さて、上述した乾式製錬プロセスや湿式製錬プロセスによって廃リチウムイオン電池の再利用を行うにあたり、廃リチウムイオン電池をそのままの状態で粉砕処理に供すると、爆発の恐れがあり危険である。そのため、通常は、処理対象の廃リチウムイオン電池に前処理が施される。前処理としては、例えば、針状の刃先で廃リチウムイオン電池を物理的に開孔し、電解液を除去する手法が挙げられる。また、廃リチウムイオン電池を加熱することによって電解液を燃焼して無害化する手法が挙げられる。その後、粉砕処理が施され、外装缶、銅箔、アルミニウム箔、正極活物質と負極活物質の混合粉に分級された後、それぞれ得られた部材がリサイクル原料として取り扱われている。
【0006】
ここで、正極活物質と負極活物質の混合粉(以下、「ブラックマス」ともいう。)は、例えば、数μm~数百μmのパウダー状を呈している。そのため、ハンドリングに際しての発塵や、リサイクル処理において、例えば酸化還元熔融処理時に生じる反応ガスや対流によるキャリーオーバーが発生して、生産効率を悪化させてしまうことがあった。
【0007】
例えば、特許文献1には、酸化焙焼工程にて発生するダストは炉外に排出して廃棄することが記載されている。このダストは、キャリーオーバーしたブラックマスを含むものであるため、発塵によって有価金属の回収ロスのリスクが高まることがうかがえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、乾式製錬プロセスや湿式製錬プロセスに供される処理原料であって、廃リチウムイオン電池に含まれる正極活物質と負極活物質の混合粉について、そのハンドリングにおける発塵を抑制し、酸化焙焼処理や還元熔融処理等に供したときに発生するキャリーオーバーによる有価金属の回収ロスを低減することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述した課題を解決するため鋭意検討を重ねた。その結果、正極活物質と負極活物質の混合粉(ブラックマス)を、酸化焙焼処理や還元熔融処理等の処理に供するにあたり、所定の条件で造粒物化することで、ハンドリング性を高め、発塵やキャリーオーバーが生じることを効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
(1)本発明の第1の発明は、有価金属を回収する方法であって、有価金属を含有する廃リチウムイオン電池を含む原料を準備する準備工程を含み、前記準備工程では、前記廃リチウムイオン電池を構成する正極活物質と負極活物質とを含む混合粉に水を添加して予備混錬する予備混錬工程と、得られた予備混錬物をさらに混錬して造粒する造粒工程と、を実行することによって前記混合粉からなる造粒物を調製する、有価金属の回収方法である。
【0012】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記予備混錬工程では、前記水の添加量を、前記混合粉に対する重量比で0.14以上0.16以下に調整する、有価金属の回収方法である。
【0013】
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記造粒工程では、2軸パドル式の造粒機を用い、該造粒機のパドル先端の周速度を50m/分以上90m/分以下に設定して、前記予備混錬物に対する混錬及び造粒を行う、有価金属の回収方法である。
【0014】
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、当該有価金属の回収方法は、前記準備工程を経て得られる前記造粒物に対して還元熔融処理を施し、有価金属を含有する合金と、スラグとを含む還元熔融物を得る還元工程を、さらに含む乾式製錬プロセスからなり、前記準備工程における前記予備混錬工程では、前記混合粉に、前記還元熔融処理において用いられるフラックスを添加して予備混錬する、有価金属の回収方法である。
【0015】
(5)本発明の第5の発明は、第4の発明において、前記予備混錬工程では、粒径が5mm以下の前記フラックスを用い、該フラックスの添加量を、前記混合粉に対する重量比で0.1以上0.2以下に調整する、有価金属の回収方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、有価金属の回収方法における処理原料であって、廃リチウムイオン電池に含まれる正極活物質と負極活物質の混合粉について、そのハンドリングにおける発塵を抑制し、混合粉を酸化焙焼処理や還元熔融処理等に供したときに発生するキャリーオーバーによる有価金属の回収ロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】乾式製錬プロセスによる有価金属の回収方法の流れを示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変更が可能である。
【0019】
本実施の形態に係る有価金属の回収方法は、リチウム(Li)及び有価金属(Cu、Ni、Co等)を含む廃リチウムイオン電池からその有価金属を回収する方法である。
【0020】
廃リチウムイオン電池とは、使用済みのリチウムイオン電池や、二次電池を構成する正極材等の製造工程で生じた不良品、製造工程内部の残留物、発生屑等のリチウムイオン電池の製造工程内における廃材を含む概念である。そして、廃リチウムイオン電池には、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等の有価金属が含まれている。
【0021】
具体的に、本実施の形態に係る方法は、有価金属を含有する廃リチウムイオン電池を含む原料を準備する準備工程を含んでいる。そして、その準備工程では、廃リチウムイオン電池を構成する正極活物質と負極活物質とを含む混合粉に水を添加して予備混錬する予備混錬工程と、得られた予備混錬物をさらに混錬して造粒する造粒工程と、を含む処理を実行することによって混合粉からなる造粒物を調製する、ことを特徴としている。
【0022】
このようにして調製された、有価金属の回収方法の処理原料である造粒物は、乾式製錬プロセス又は湿式製錬プロセス、あるいはそれらを併用するプロセスに供され、各処理プロセスにて有価金属が回収される。
【0023】
図1は、乾式製錬プロセスによる有価金属の回収方法の流れの一例を示す工程図である。
図1に示すように、この方法は、廃リチウムイオン電池を含む原料を準備する準備工程S1と、原料を酸化焙焼する酸化焙焼工程S2と、得られた酸化焙焼物を還元熔融して有価金属を含む合金とスラグとを含む還元熔融物を得る還元工程S3と、還元熔融物からスラグを分離して合金を回収するスラグ分離工程S4と、を有する。
【0024】
(1)準備工程
準備工程S1では、有価金属を含有する廃リチウムイオン電池を含む原料を準備する。廃リチウムイオン電池には、上述したように、Liや、有価金属(Cu、Ni、Co等)が含まれるとともに、付加価値の低い金属(Al、Fe等)や炭素成分を含んでいる。また、廃リチウムイオン電池には、リン(P)が含まれることもある。このような廃リチウムイオン電池を原料として用いることで、有価金属を効率的に回収することができる。なお、有価金属は、回収対象となるものであり、Cu、Ni、Co、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属又は合金である。
【0025】
廃リチウムイオン電池は、後続する工程での処理に適したものであれば、その形態は限定されない。準備工程S1において廃リチウムイオン電池に粉砕処理等の処理を施して、適した形態にしてもよい。また、準備工程S1において廃リチウムイオン電池に熱処理や分別処理等の処理を施して、水分や有機物等の不要成分を除去してもよい。
【0026】
準備工程S1は、廃リチウムイオン電池を含む原料を準備する工程であり、以降の工程における処理に供される処理原料(処理炉に装入される装入物)を調製する工程である。
【0027】
準備工程S1は、例えば
図1に示すように、廃リチウムイオン電池に前処理を施す廃電池前処理工程S11と、粉砕処理を施す粉砕工程S12と、粉砕処理により得られた、廃リチウムイオン電池を構成する正極活物質と負極活物質とを含む混合粉に水を添加して混錬する予備混錬工程S13と、得られた予備混錬物をさらに混錬して造粒する造粒工程S14と、を含む。
【0028】
[廃電池前処理工程について]
廃電池前処理工程S11は、廃リチウムイオン電池の爆発防止及び無害化、並びに外装缶の除去を目的に行われる処理工程である。
【0029】
リチウムイオン電池は密閉系であるため、内部に電解液等が含まれている。そのため、そのままの状態で粉砕処理を行うと、爆発の恐れがあり危険である。したがって、何らかの手法で放電処理や電解液除去処理を施すことが好ましい。廃電池前処理工程S11における具体的な処理の方法は特に限定されない。例えば、針状の刃先で廃電池を物理的に開孔し、電解液を除去する手法が挙げられる。また、廃リチウムイオン電池を加熱して電解液を燃焼させて無害化する手法が挙げられる。
【0030】
また、廃リチウムイオン電池を構成する外装缶は、金属であるアルミニウム(Al)や鉄(Fe)から構成されることが多いが、こうした金属製の外装缶は比較的容易にそのまま回収することができる。
【0031】
このようにして、廃電池前処理工程S11において、電解液や外装缶を除去することで、安全性を高めるとともに、有価金属(Cu、Ni、Co等)の回収率を高めることができる。また、好適には、廃リチウムイオン電池を金属製の外装缶とそれ以外の電池内容物と分離し、金属製の外装缶からアルミニウム外装缶を回収する。回収したアルミニウム外装缶は、後続する還元工程S3で、還元剤として用いることもできる。
【0032】
また、廃電池前処理工程S11において、外装缶に含まれるAlやFeを回収する場合には、除去した外装缶を粉砕した後に、粉砕物を篩振とう機を用いて篩分けしてもよい。Alは軽度の粉砕で容易に粉状になるため、効率的に回収することができる。また、磁力選別によって、外装缶に含まれるFeを回収してもよい。また、好適には、塊、粒、粉末、及び箔の少なくとも一つの形態になるように、回収したアルミニウム外装缶を粉砕してもよい。
【0033】
[粉砕工程について]
粉砕工程S12では、廃リチウムイオン電池の内容物を粉砕して粉砕物を得る。粉砕工程S12での粉砕処理は、反応効率を高めることを目的にしている。処理原料の反応効率を高めることで、その原料に含まれる有価金属(Cu、Ni、Co等)の回収率を高めることができる。
【0034】
粉砕工程S12において粉砕処理を行うことによって、例えば、廃リチウムイオン電池を構成する正極活物質と負極活物質とを含む混合粉(ブラックマス)が得られる。この混合粉は、正極活物質及び負極活物質に含有される有価金属を含む粉状体であり、ブラックマスとも呼ばれる。なお、この混合粉は、上述した廃電池前処理工程S11での篩分け処理等を経て、正極活物質及び負極活物質に含有される有価金属が濃縮されたものであるが、その有価金属のほか、アルミニウムや鉄、炭素等の不純物元素成分も含まれる。
【0035】
粉砕処理の具体的な方法(粉砕方法)は、特に限定されるものではない。例えば、カッターミキサー等の従来公知の粉砕機を用いて粉砕することができる。
【0036】
[予備混錬工程、造粒工程について]
さて、上述した粉砕工程S12を経て得られた、廃リチウムイオン電池を構成する正極活物質と負極活物質とを含む混合粉は、その大きさが数μm~数百μm程度のパウダー状をものである。そのため、ハンドリングに際しては発塵が生じやすく、また、以降の工程において反応性ガスや対流によるキャリーオーバーが発生し、混合粉に含まれる有価金属の回収ロスの原因となることがある。
【0037】
そこで、本実施の形態に係る方法では、準備工程S1において、正極活物質と負極活物質とを含む混合粉に水を添加して予備混錬する予備混錬工程S13と、予備混錬物をさらに混錬して造粒する造粒工程S14と、を有している。本実施の形態に係る方法では、このような処理工程を実行することによって、正極活物質と負極活物質とを含む混合粉からなる造粒物を調製する。
【0038】
本実施の形態に係る方法では、かかる構成を有して造粒物を調製することにより、後述の酸化焙焼工程S2や還元工程S3での処理に対して原料(混合粉の造粒物)を供するにあたり、ハンドリング時の発塵を防止することができる。また、キャリーオーバーされることによるロスを抑えることができる。これにより、回収ロスを低減して、効率的な有価金属の回収を実現することが可能となる。
【0039】
(予備混錬工程)
予備混錬工程S13では、正極活物質と負極活物質とを含む混合粉に水を添加して予備混錬する。これにより、混合粉中に水分が均一に分散した予備混錬物を得る。
【0040】
混合粉に含まれる負極活物質は、一般に黒鉛を多く含有するものである。そのため、予備混錬工程S13での予備混錬の処理を経ずに造粒を実施した場合には、その造粒が不十分になり易く、得られる造粒物からの発塵を十分に抑制することができない可能性がある。このことから、混合粉の本混錬及び造粒に先立ち、予備混錬工程S13を設けて混合粉に水を添加し予備混錬を行うようにすることで、混合粉の良好な造粒を可能にし、発塵を効果的に抑えることができる。
【0041】
予備混錬の処理における混練は、例えば、ブラベンダー等のバッチ式ニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ヘリカルローター、ロール、一軸混練機、二軸混練機、2軸パドル式混練機等を用いて行うことができる。このような混練機を用いることで、混合粉に効率的にせん断力を加えることができ、均一に混合し易くなるうえ、各々の粒子の密着性を向上させることができる。また、密着性が向上して空隙を減少させることができるため、造粒工程S14における造粒性を向上させることができる。
【0042】
予備混錬工程S13において、混合粉に添加する水の量(添加量)は、特に限定されないが、混合粉に対する重量比で0.14以上0.16以下の範囲に調整することが好ましい。これにより、添加した水分をより効率的に混合粉中に分散させることができ、後述する造粒工程S14での造粒性をより高めることができる。
【0043】
なお、予備混錬の処理時間は、混錬する混合粉の量に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、3分以上の時間で設定することがより好ましい。これにより、水分を確実に混合粉中に分散させることができ、不十分な混錬となることを防ぐことができる。
【0044】
また、予備混錬工程S13では、混合粉にフラックスを添加するようにしてもよい。添加するフラックスは、乾式製錬プロセスによる有価金属の回収方法における、後述する還元工程S3での還元熔融処理の際に用いられるものである。そのようなフラックスを、予備混錬工程S13にて混合粉を予備混錬する段階で添加し、次の造粒工程S14を経てフラックスを含有する造粒物を調製するようにしてもよい。
【0045】
フラックスとしては、例えば、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化鉄(Fe2O3等)等を任意に採用することができる。
【0046】
また、フラックスの粒径は、特に限定されないが、5mm以下であることが好ましい。また、フラックスの添加量は、特に限定されないが、混合粉に対する重量比で0.1以上0.2以下の範囲に調整することが好ましい。これにより、混合粉と良好に混錬することができ、造粒工程S14を経て得られる造粒物の粒径を4mm以上の大きなものにし易くすることができる。このようにして粒径が4mm以上の造粒物の割合を増やすことで、ハンドリング性をさらに向上させることができ、発塵をより効果的に抑制し、またキャリーオーバーされることによるロスをさらに低減することができる。
【0047】
(造粒工程)
造粒工程S14では、予備混錬工程S13で得られた予備混錬物をさらに混錬して造粒する。これにより、正極活物質と負極活物質とを含む混合粉からなる造粒物を調製する。
【0048】
造粒工程S14における混錬(本混錬)及び造粒の操作は、例えば、2軸パドル式の造粒機を好適に用いることができる。2軸パドル式の造粒機は、ケーシング内部で高速で回転する回転軸にらせん状にパドルが埋め込まれた構造を備えている。
【0049】
ここで、2軸パドル式の造粒機を用いた混錬及び造粒について説明すると、まず、造粒の初期の段階において、パドルの撹拌作用によって予備混錬物を構成する粉体粒子表面に水膜が形成され、その水膜の表面張力によって他の粉体粒子が捕集されるようになる。その結果、造粒核が形成される。続いて、さらなるパドルの撹拌作用が加わると、粉体粒子間に水分が均一に広がっていき、形成された造粒核が大きく成長する。そして、成長した造粒核は、パドル上を転動するようになり、それに伴って、粉体粒子同士が圧縮されて球形に造粒される。
【0050】
2軸パドル式の造粒機を用いた混錬及び造粒の操作では、特に限定されないが、パドルの先端の周速度を50m/分以上90m/分以下となるように設定することが好ましい。パドル先端の周速度が50m/分よりも小さいと、粉体粒子の圧縮が不十分となり、造粒物の強度が不足してハンドリング時に崩壊してしまう可能性がある。また、造粒物が崩壊すると、発塵を抑制することが困難となる。一方で、パドル先端の周速度が90m/分よりも大きいと、より強固な造粒物を形成することが可能となるものの、設備的な負荷が大きくなるため、設備故障が発生するリスクが高くなる。
【0051】
また、混錬及び造粒においては、さらに澱粉等のバインダーを添加してもよい。これにより、造粒性を向上させることができるうえ、より強固な造粒物が得られる。
【0052】
また、混錬及び造粒の処理時間は、処理する予備混錬物の量に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、2分以上の時間で設定することがより好ましい。これにより、造粒物中の1mm以下の造粒物の比率が多くなること(例えば、1mm以下の造粒物が10%以上の割合となる)ことを抑え、ハンドリング性が悪化して発塵抑制が困難になることを回避することができる。
【0053】
以上のように、本実施の形態に係る方法では、例えば後述する乾式製錬プロセスによる処理に供する、廃リチウムイオン電池を含む原料(処理原料)を準備する準備工程S1を有し、その準備工程S1では、廃リチウムイオン電池を構成する正極活物質と負極活物質とを含む混合粉に水を添加して予備混錬する予備混錬工程S13と、得られた予備混錬物をさらに混錬して造粒する造粒工程S14と、を実行する。これにより、混合粉からなる所定の大きさ造粒物を調製するようにしている。
【0054】
このような混合粉からなる造粒物を調製し、その造粒物を、酸化焙焼工程S2での処理(酸化焙焼処理)や還元工程S3での処理(還元熔融処理)に供することで、その処理におけるハンドリングに際しての発塵を効果的に抑制して安全性の高い処理を実現することができる。また、その処理において反応性ガスや対流によって原料粉がキャリーオーバーしてしまうことを抑制することもでき、有価金属の回収ロスを低減することができる。
【0055】
なお、以下では、乾式製錬プロセスによる有価金属の回収方法における、酸化焙焼工程S2、還元工程S3について順に説明する。
【0056】
(2)酸化焙焼工程
酸化焙焼工程S2では、処理原料(処理炉への装入物)を酸化焙焼(酸化処理)して酸化焙焼物を得る工程である。
【0057】
本実施の形態に係る方法では、上述した準備工程S1を経て得られた、混合粉の造粒物を焙焼炉等の処理炉に装入し、酸化焙焼の処理に供する。本実施の形態においては、装入物を構成している混合粉が、パウダー状ではなく、造粒された造粒物の形態となっているため、処理炉への装入時や装入に至るまでのハンドリングに際して発塵を効果的に抑制することができる。また、集塵されることによる有価金属のロスを低減できるうえ、酸化焙焼処理中における排ガスへの有価金属のキャリーオーバーを防止することができる。
【0058】
酸化焙焼工程S2では、廃リチウムイオン電池の内容物中に含まれる炭素(C)を酸化除去し、また、少なくともアルミニウムを酸化することが可能な酸化度で処理する。廃リチウムイオン電池を構成する主要元素は、酸素との親和力の差により一般的に、アルミニウム(Al)>リチウム(Li)>炭素(C)>マンガン(Mn)>リン(P)>鉄(Fe)>コバルト(Co)>ニッケル(Ni)>銅(Cu)、の順に酸化されやすい。
【0059】
このように、酸化焙焼工程S2では、混合粉の造粒物を酸化焙焼することで、造粒物に含まれる炭素を除去することができる。その結果、その後の還元工程S3において局所的に発生する有価金属の微粒子が、炭素による物理的な障害なく凝集することが可能となり、一体化した合金として回収することができる。すなわち、後述する還元工程S3における還元熔融処理によって有価金属は還元され局所的な熔融微粒子になるが、そのとき原料中に残存する炭素は、熔融微粒子が凝集する際の物理的な障害となる。そのため、酸化焙焼処理を行って炭素を除去しない場合、残存した炭素が、熔融微粒子の凝集一体化及びそれによるメタルとスラグの分離性を妨げ、有価金属の回収率を低下させることがある。これに対して、還元熔融処理に先立ち、酸化焙焼処理を行って炭素を除去しておくことで、熔融微粒子の凝集一体化を進行させ、有価金属の回収率をより高めることが可能となる。
【0060】
また、酸化焙焼処理によって炭素を除去しておくことで、還元工程S3において廃リチウムイオン電池の内容物に含まれていたリン(P)が炭素により還元されることを抑制し、リンが有価金属の合金中に分配されることを抑制することができる。
【0061】
また、酸化焙焼工程S2では、処理原料である造粒物に含まれる付加価値の低い金属(Al等)を酸化することが可能な酸化度で酸化焙焼処理を行うことが好ましい。一方で、酸化焙焼の処理温度、時間及び/又は雰囲気を調整することで、酸化度は容易に制御される。そのため、酸化焙焼処理において酸化度を厳密に調整することで、酸化のばらつきを抑えることができる。
【0062】
酸化度の調整は次のようにして行う。上述したように、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、炭素(C)、マンガン(Mn)、リン(P)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及び銅(Cu)は、一般的にAl>Li>C>Mn>P>Fe>Co>Ni>Cuの順に酸化されていく。酸化焙焼処理においては、Alの全量が酸化されるまで酸化を進行させる。Feの一部が酸化されるまで酸化を促進させてもよいが、有価金属であるCoが酸化されスラグとして回収されることがない程度に酸化度を留める。
【0063】
酸化焙焼処理において酸化度を調整するにあたり、適量の酸化剤を導入することができる。特に、廃リチウムイオン電池を含む処理原料である場合、酸化剤の導入が好ましい。廃リチウムイオン電池は、上述したように、外装材にAlやFe等の金属を含んでおり、正極材や負極材としてアルミニウム箔や炭素材を含んでいる。さらに、集合電池の場合には。外部パッケージとしてプラスチックが用いられている。これらはいずれも還元剤として作用する材料であることから、酸化焙焼処理においては酸化剤を導入して処理することで、酸化度をより適切な範囲内に調整することができる。
【0064】
酸化剤としては、炭素や付加価値の低い金属(Al等)を酸化できるものであれば、特に限定されない。中でも、取り扱いが容易な、空気、純酸素、酸素富化気体等の酸素を含む気体が好ましい。酸化剤の導入量は、酸化処理の対象となる各物質の酸化に必要な量(化学当量)の1.2倍程度(例えば1.15倍~1.25倍)が目安となる。
【0065】
酸化焙焼処理の加熱温度は、700℃以上1100℃以下が好ましく、800℃以上1000℃以下がより好ましい。700℃以上で、炭素の酸化効率をより一層に高めることができ、酸化時間を短縮することができる。また、1100℃以下で、熱エネルギーコストを抑えることができ、酸化焙焼処理の効率を高めることができる。
【0066】
酸化焙焼処理は、公知の焙焼炉を用いて行うことができる。また、後述せうる還元工程S3での還元熔融処理にて使用する熔融炉とは異なる炉(予備炉)を用い、その予備炉内で行うことが好ましい。焙焼炉として、装入物を焙焼しながら酸化剤(酸素等)を供給してその内部で酸化処理を行うことが可能な炉である限り、あらゆる形式の炉を用いることができる。一例して、従来公知のロータリーキルン、トンネルキルン(ハースファーネス)が挙げられる。
【0067】
なお、後述する還元工程S3において、還元熔融処理に先立ち同一の炉内で酸化処理を施す態様であれば、必ずしも酸化焙焼工程S2を設けなくてもよい。
【0068】
(3)還元工程
還元工程S3では、酸化焙焼工程S2を経て得られた酸化焙焼物を加熱して還元熔融し、有価金属を含有する合金と、スラグとを含む還元熔融物を得る。還元工程S3では、酸化焙焼工程S2での処理で酸化した付加価値の低い金属(Al等)を酸化物のままに維持する一方で、酸化した有価金属(Cu、Ni、Co)を還元及び熔融し、一体化した合金として回収することを目的としている。
【0069】
本実施の形態に係る方法では、上述した準備工程S1を経て得られた、混合粉の造粒物に対して酸化焙焼処理を行って(酸化焙焼工程S2)、酸化焙焼物を得ている。そのため、還元熔融処理に供される処理原料は、パウダー状の状態でない。そのため、処理炉への装入時や装入に至るまでのハンドリングに際して発塵を効果的に抑制することができる。また、集塵されることによる有価金属のロスを低減できるうえ、酸化焙焼処理中における排ガスへの有価金属のキャリーオーバーを防止することができる。
【0070】
還元熔融処理では、還元剤を導入することが好ましい。還元剤としては、炭素及び/又は一酸化炭素を用いることが好ましい。炭素は、回収対象である有価金属(Cu、Ni、Co等)を容易に還元する能力がある。例えば、1モルの炭素で2モルの有価金属の酸化物(銅酸化物、ニッケル酸化物等)を還元することができる。また、炭素や一酸化炭素を用いる還元手法では、金属還元剤を用いる手法(例えば、アルミニウムを用いたテルミット反応法)に比べて安全性が極めて高い。
【0071】
還元剤としての炭素は、人工黒鉛や天然黒鉛のほか、製品や後工程で不純物が許容できる程度であれば、石炭やコークス等を使用することもできる。また、還元熔融処理では、アンモニアや一酸化炭素を還元剤として添加してもよい。
【0072】
還元剤の導入量としては、酸化した有価金属(Cu、Ni、Co)1モルに対して炭素量で0.5モル以上1モル以下とすることが好ましく、0.6モル以上0.8モル以下とすることがより好ましい。
【0073】
還元熔融処理の加熱温度は、特に限定されないが、1300℃以上1550℃以下が好ましく、1350℃以上1450℃以下がより好ましい。1550℃を超える温度では、熱エネルギーが無駄に消費されるとともに、坩堝等の耐火物の損耗が激しくなり、生産性が低下する恐れがある。一方で、1300℃未満の温度では、スラグと合金の分離性が悪化して有価金属の回収率が低下する可能性がある。
【0074】
また、還元熔融処理においては、フラックスを加えることが好ましい。なお、上述した準備工程S1における予備混錬工程S13にてフラックスを添加し、フラックスを含有した造粒物を調製している場合は、不足分を加えるようにすればよい。このようにフラックスを用いて還元熔融することで、Al等の酸化物を含有するスラグをフラックスに溶解させて除去することができる。
【0075】
フラックスとしては、その融点が合金の融点に近く、また、Alに対する溶解度の高いものが好ましい。例えば、フラックスとして、融点が1500℃以下となる、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化鉄(Fe2O3等)等が挙げられる。さらに、還元熔融処理の際に、フッ化カルシウム(CaF2)等を添加してもよく、これにより、スラグの融点がより効率的に低下させてエネルギーコストの低減を図ることができる。
【0076】
還元熔融処理は、公知の手法で行うことができる。例えば、処理対象の酸化焙焼物を坩堝に装入し、抵抗加熱等により加熱する手法が挙げられる。なお、還元熔融処理では、粉塵や排ガス等の有害物質が発生することがあるが、公知の排ガス処理等の処理を施すことで、有害物質を無害化することができる。
【0077】
なお、還元工程S3に先立ち、上述した酸化焙焼工程S2を設けて混合粉からなる造粒物に対して酸化焙焼処理を行った場合には、還元工程S3にて酸化処理を行う必要はない。ただし、酸化焙焼工程S2を設けたとしても、その酸化焙焼処理で酸化が不足している場合や、酸化度のさらなる調整を目的とする場合には、還元工程S3において追加の酸化処理を行うようにしてもよい。
【0078】
還元工程S3において酸化処理を行う場合、つまり、還元熔融処理と酸化処理とを同時に行う場合、その方法としては、例えば、還元熔融処理で得られる還元熔融物に酸化剤を吹き込む手法が挙げられる。具体的には、還元熔融物に金属製チューブ(ランス)を挿入して、バブリングによって酸化剤を吹き込むようにする。なお、このときの酸化剤としては、空気、純酸素、酸素富化気体等の酸素を含む気体を用いることができる。
【0079】
(4)スラグ分離工程
スラグ分離工程S4では、還元工程S3における還元熔融処理で得られた還元熔融物からスラグを分離して、有価金属を含む合金を回収する。スラグと合金とは、その比重が異なる。合金に比べて比重の小さいスラグは、還元熔融物中において合金の上部に集まるため、比重分離により容易に分離回収することができる。
【0080】
このように、スラグ分離工程S4において、還元熔融物からスラグを分離することで、有価金属を含む合金を回収することができる。
【0081】
なお、スラグ分離工程での処理の後に、得られた合金を硫化する硫化工程や、得られた硫化物、あるいは合金を粉砕する粉砕工程を設けてもよい。さらに、このような乾式製錬プロセスを経て得られた有価金属を含む合金に湿式製錬プロセスを施してもよい。湿式製錬プロセスにより、不純物成分を除去し、有価金属(Cu、Ni、Co等)を分離精製し、それぞれを回収することができる。湿式製錬プロセスにおける処理としては、中和処理や溶媒抽出処理等の公知の手法が挙げられる。
【実施例0082】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0083】
[正極活物質と負極活物質とを含む混合粉からなる造粒の調製]
先ず、下記表1に示す組成を有する、廃リチウムイオン電池を粉砕して得られた混合粉(正極活物質と負極活物質とを含む混合粉)対して、下記表2に示す添加量で水を添加し、ダウミキサー(新日南株式会社製,PX0309型)を用いて予備混錬を行って予備混錬物を得た。また、実施例5~6では、その予備混錬に際して、フラックスとして5mm以下の炭酸カルシウムを添加した。表2において、フラックスの添加量及び水の添加量は、は、混合粉に対する重量比で示している。
【0084】
なお、予備混錬に供した混合粉は、微細なパウダー状を呈するものであった。
【0085】
【0086】
次に、得られた予備混錬物を、ダウペレタイザー(新日南株式会社製,PT0412型)を用いて、パドル先端の外周の周速度が下記表2に示す速度になるようにして、さらに混錬し造粒して、造粒物を調製した。なお、造粒時における混練時間は2分に設定した。
【0087】
実施例1~8では、得られた造粒物について直径が1mm以下のものの割合を求めた。実施例4~6では、さらに直径が4mm以上の造粒物の割合を求めた。なお、比較例1では、造粒を行わなかった。
【0088】
【0089】
表2から分かるように、実施例1~8では、混合粉を予備混錬した後、その予備混錬物を造粒して造粒物を調製したことにより、予備混錬前の混合粉(比較例1)と比較して、大きな粒状物となり、ハンドリング性が向上した。特に、実施例1~6では、造粒物の粒径が1mm以下の割合が10%未満となり、ハンドリング性がより向上した。さらに、実施例4~6では、造粒物の粒径が4mm以上となる割合が30%以上となり、ハンドリング性がさらに一層に向上した。
【0090】
[調製した造粒物の乾式製錬プロセスへの供給]
このようにして得られた実施例1~8の造粒物、比較例1の混合粉を、乾式製錬プロセスによる有価金属の回収方法における酸化焙焼処理、及び還元熔融処理に供した。
【0091】
その結果、比較例1では、正極活物質と負極活物質とを含む混合粉をそのまま乾式製錬プロセスに供した、つまり混合粉の造粒を行うことなく供給したことから、酸化焙焼処理及び還元熔融処理から発生するダストが多くなった。これは、処理炉への混合粉の装入に際し、ハンドリング時において大量に発塵が生じたことや、発塵したものが炉内の反応ガスや対流にのって排気ダクトへと吸引され、キャリーオーバーが多く発生したためと考えられる。
【0092】
これに対して、実施例1~8では、表2に示したような造粒物を調製し、その造粒物を供給したため、比較例1に比べて、酸化焙焼処理及び還元熔融処理から発生するダスト量が大幅に減少した。これは、造粒物を供給したことで、ハンドリング性が向上し、発塵やキャリーオーバーの発生を効果的に抑制することができたためと考えられる。
【0093】
なお、実施例7、8では、比較例1に比べてダストの発生量を減少させることができた。ただし、実施例1~6に比べるとそのダスト量は多くなった。