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特開2024-44108ポリエチレン系熱分解ワックスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044108
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ポリエチレン系熱分解ワックスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 10/02 20060101AFI20240326BHJP
   C08F 8/50 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C08F10/02
C08F8/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149453
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】春成 武
(72)【発明者】
【氏名】神谷 晃基
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100CA01
4J100CA31
4J100DA02
4J100DA04
4J100DA05
4J100JA01
4J100JA03
4J100JA15
4J100JA61
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】 高温加工時の発煙やワックスを含有する成形体のべたつきが少なく、耐ブロッキング性に優れ、かつ低コストであるポリエチレン系熱分解ワックスの製造方法を提供する
【解決手段】 ポリエチレン系樹脂を4~8軸押出機からなる押出機に供した後、押出機の熱分解領域でのシリンダ温度330~480℃、熱分解後のポリエチレンワックスを押し出す押出機の先端温度100~300℃の条件にてポリエチレン系樹脂を熱分解させ、押し出す、ポリエチレン系熱分解ワックスの製造方法。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂を4~8軸押出機からなる押出機に供した後、押出機の熱分解領域でのシリンダ温度330~480℃、熱分解後のポリエチレンワックスを押し出す押出機の先端温度100~300℃の条件にてポリエチレン系樹脂を熱分解させ、押し出す、ポリエチレン系熱分解ワックスの製造方法。
【請求項2】
ポリエチレン系熱分解ワックスが、下記(1)~(3)の要件を満足する、請求項1に記載のポリエチレン系熱分解ワックスの製造方法。
(1)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって得られた分子量500以下の化合物の含有率が1.5重量%以下である。
(2)GPCによって測定した数平均分子量(Mn)が500以上10,000以下である。
(3)GPCによって測定した数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比:Mw/Mnの値が3.5以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低分子量成分が少ないポリエチレン系熱分解ワックスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分子量1万以下の低分子量ポリマーは、分子量数万から数十万の一般的なポリマーとは異なる物理的、化学的性質を示す。なかでも低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンなどのポリオレフィンワックスは、生産されるプラスチックの多くを占めるポリオレフィンだけでなく、ポリ塩化ビニルなどの樹脂とも高い相容性を示し、顔料分散剤や成形加工助剤、インキまたは塗料の添加剤、ホットメルト接着剤の添加剤など幅広い用途に使用されている。ポリオレフィンワックスの合成方法は重合法と熱分解法があり、重合法としては高圧重合製造法によって合成されたポリエチレンワックス(例えば、特許文献1参照。)や、溶液重合法によって合成された超低分子エチレンポリマー(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【0003】
また、熱分解法としては、熱減成された低分子量ポリオレフィン(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。熱分解法は重合法と比較して製造コストが低く少量生産にも適しているなどの商業的な利点だけでなく、廃棄されたプラスチックを使用することができるなど、近年重要視されているリサイクルの観点からも有用な手法である。しかし、ポリオレフィンは他のポリマーと比較して熱分解温度が高く、ワックスを得るためには長時間、高温下で熱分解させる必要があるため、熱分解プロセスにおいて多くのエネルギーを要する。そのため、熱分解反応を促進する方法がいくつか提案されており、酸素及び過酸化物を添加する方法(例えば、特許文献4)、メルカプタン系有機化合物を添加する方法(例えば、特許文献5)、接触触媒と反応させる方法(例えば、特許文献6)などが提案されている。また、オレフィン系重合体を定量的に移送する定量移送手段と該定量移送手段に連結されたスクリュ型押出機とからなる熱分解反応器を複数段連結して構成される熱分解装置に供給することを特徴とする熱分解ワックスの製造方法(例えば、特許文献7)が提案されている。そして、スクリューフィーダーで行う連続式廃プラスチック油化還元装置(例えば、特許文献8)が提案されている。さらに、
合成高分子をせん断、撹拌、輸送並びに加熱能力を備えた押出機を用いて熱分解し、連続的に低分子を得る熱分解装置(例えば、特許文献9)が提案されている。また、メタロセン系触媒により製造された分子量分布の狭いポリオレフィンワックス(例えば、特許文献10)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願昭60-177009号公報
【特許文献2】特開2008-95112号公報
【特許文献3】特開平10-158329号公報
【特許文献4】特公昭51-48196号公報
【特許文献5】特開平9-40801号公報
【特許文献6】特表2019-515060号公報
【特許文献7】特開平4-304205号公報
【特許文献8】WO2011/007392号公報
【特許文献9】特開昭49-115157号公報
【特許文献10】特許第3919611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~7に提案されたポリオレフィンワックスあるいは製造方法により得られるポリオレフィンワックスにおいては、極低分子量成分を含むことから、高温加工時の発煙、ワックスを含有する組成物からなる成形品や塗膜等からの極低分子量成分の溶出、さらには、これに伴う表面のべたつきやブロッキングを生じる問題があった。また、特許文献3に提案された管状反応器内でポリオレフィンを熱減成して得られる低分子ポリオレフィンにおいては、反応器内面に生じた熱劣化物が混入し、品質の低下した低分子ポリオレフィンとなる問題があった。さらに、特許文献4に提案の方法により得られるポリプロピレンにおいては、酸素と過酸化物によってポリプロピレンの分解が促進されるため、ポリプロピレンの酸化が起こり易く、本来ポリプロピレンが有する低極性といった特徴が損なわれる問題があった。また、特許文献5に提案の方法により得られる油状物おいては、合成重合体の熱分解においてメルカプタン系有機化合物を分解促進剤として用いるため、メルカプタン系有機化合物が残留することによる人体への有害性や臭気が問題となった。さらに、特許文献6に提案の方法により得られるワックスにおいては、接触触媒を用いてプラスチックをワックスへと転換するため、高価な触媒を用いることによるコスト上昇あるいは触媒残渣の混入による色相の悪化が問題となった。また、特許文献7に提案の方法は、高分解度の熱分解ワックスを得ることができるものであるが、該熱分解ワックスの分子量等についての特徴は何ら記載されていない。そして、特許文献8に提案のプラスチック油化還元装置については、得られる生成油の特徴は何ら記載されていない。さらに、特許文献9に提案の押出機を用いた熱分解装置については、得られる低分子の特徴は何ら記載されていない。さらに、特許文献10に提案のポリオレフィンワックスは、分子量分布が狭いことから、該ポリオレフィンワックスを含有する組成物からなる成形体は外観が良好で表面のベタつきが少ないといった特長を有するが、重合反応により得られるポリオレフィンワックスであることから、低コスト化に限界があった。
【0006】
そこで、本発明は、高温加工時の発煙やワックスを含有する成形体のべたつきが少なく、耐ブロッキング性に優れ、かつ低コストであるポリエチレン系熱分解ワックスを提供することを目的とするものであり、さらに詳しくは、プラスチックスやゴムの成形助剤、滑剤、離型剤、インキおよび塗料添加剤、顔料分散剤、ホットメルト接着剤用途などに有用であるポリエチレン系熱分解ワックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のポリエチレン系熱分解ワックスが、高温加工時の低発煙性、耐ブロッキング性に優れ、かつ低コストとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明の各態様は、以下に示す[1]~[2]である。
[1] ポリエチレン系樹脂を4~8軸押出機からなる押出機に供した後、押出機の熱分解領域でのシリンダ温度330~480℃、熱分解後のポリエチレンワックスを押し出す押出機の先端温度100~300℃の条件にてポリエチレン系樹脂を熱分解させ、押し出す、ポリエチレン系熱分解ワックスの製造方法。
[2] ポリエチレン系熱分解ワックスが、下記(1)~(3)の要件を満足する、。
(1)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって得られた分子量500以下の化合物の含有率が1.5重量%以下である、請求項1に記載のポリエチレン系熱分解ワックスの製造方法。
(2)GPCによって測定した数平均分子量(Mn)が500以上10,000以下である。
(3)GPCによって測定した数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比:Mw/Mnの値が3.5以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温加工時の発煙やワックスを含有する成形体のべたつきが少なく、耐ブロッキング性に優れ、かつ低コストであり、プラスチックスやゴムの成形助剤、滑剤、離型剤、インキおよび塗料添加剤、顔料分散剤、ホットメルト接着剤用途などに有用なポリエチレン系熱分解ワックスを提供することができ、その産業的価値は極めて高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明の一態様であるポリエチレン系熱分解ワックスの製造方法は、原料としてポリエチレン系樹脂を用いる。ポリエチレン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂単独成分またはポリエチレン系樹脂および他の成分を含有する組成物である。該ポリエチレン系樹脂を構成するポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、エチレン―酢酸ビニル共重合体(以下、EVAと略記することもある。)、ケン化EVA等を挙げることでき、さらにこれらのポリエチレン樹脂の混合物であってもかまわない。また、該他の成分としては、ポリプロピレン、ポリスチレンなどを挙げることができる。また、該ポリエチレン系樹脂が組成物である場合、各成分が互いに溶け合って混合された状態であっても、各成分がペレットや端材のような固形分の状態で物理的に混合した状態であってもかまわない。そして、該ポリエチレン系樹脂が組成物である場合、組成物の均質性に優れ、安定した品質のポリエチレン系熱分解ワックスとなることから、該ポリエチレン樹脂が70重量%以上含まれることが好ましく、特に該ポリエチレン樹脂が80重量%以上であることが好ましい。
【0012】
前記ポリエチレン系熱分解ワックスは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって得られた分子量500以下の化合物の含有率が1.5重量%以下のものであることが好ましい。ここで、1.5重量%を以下であれば、ポリエチレン系ワックスは高温加工時の発煙や成形体のべたつきが少なく、耐ブロッキング性に優れたものとなる。
【0013】
また、前記ポリエチレン系熱分解ワックスは、GPCによって測定した数平均分子量(Mn)が500以上10,000以下のものであることが好ましい。ここで、数平均分子量(Mn)が500以上である場合、高温加工時の発煙や成形体のべたつきが少なく、耐ブロッキング性、靭性に優れるものとなる。一方、10,000以下である場合、該、ポリエチレン系ワックスを含有する成形体とした際に、成形体表面にワックスが移行し易く、ポリエチレン系ワックスの添加効果が向上するとともに、流動性が向上することから成形性やハンドリング性に優れる。
【0014】
さらに、前記ポリエチレン系熱分解ワックスは、GPCによって測定した数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比:Mw/Mnの3.5以下のものであることが好ましい。Mw/Mnが3.5以下である場合、高温加工時の発煙や成形体のべたつきが少なく、耐ブロッキング性に優れる他、他のプラスチックスやインキ、塗料、接着剤成分との相溶性が向上し、ポリエチレン系ワックスとしての効果が向上する。
【0015】
前記ポリエチレン系熱分解ワックスには、本発明の目的を逸脱しない範囲で、各種添加剤を混合して使用することができ、例えば酸化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス[β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニトリルオキシメチル]メタン等、スリップ剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、離型剤および相溶化剤などの添加剤を1種以上添加したものであってもよい。なお、これらの添加剤は、前記ポリエチレン系熱分解ワックスの原料となるポリエチレン系樹脂に含まれていてもよく、ポリエチレン系熱分解ワックスの製造後に添加してもかまわない。
【0016】
前記ポリエチレン系熱分解ワックスは、ポリエチレン系樹脂を4~8軸押出機からなる押出機に供した後、熱分解させることにより得られるものである。4~8軸押出機とは、スクリュが押出機のシリンダ内に4~8本、並列して配置された押出機を挙げることができ、該スクリュの軸が回転する方向としては、均一な品質の熱分解ワックスを得ることが容易となることから同方向であることがより好ましい。
【0017】
本発明において、4~8軸押出機からなる押出機とした場合、公知公用の単軸もしくは2軸押出機と比べ、スクリュ長さLとスクリュ直径D(L/D)が同じ条件下では、押出機内の樹脂の滞留時間が長くなることから、より省スペースの押出機を用いて熱分解に必要な滞留時間を確保することが可能となる。また、原料を供給する入口の面積を広くすることができるため、特に原料が嵩密度の小さいパウダー状である場合などに、原料供給口での原料の詰まりを抑制しやすくなる。さらに、熱分解した生成する分子量500以下の極低分子量成分の脱揮のための真空ベント口の面積を広くすることができるため、該極低分子量成分の脱揮を効率的に行うことができる。
【0018】
本発明の一態様であるポリエチレン系熱分解ワックスの製造方法は、前記ポリエチレン系樹脂を4~8軸押出機からなる押出機に供した後、熱分解させる条件としては、所望の熱分解ワックスの分子量により適宜調整されるべきものであるが、熱分解を短時間で行い、得られる熱分解ワックスの酸化、臭気を抑えることが容易となることから、例えば、熱分解領域での熱分解温度は、330~480℃の範囲を挙げることができ、350~460℃であることがさらに好ましく、特に好ましくは380~450℃の範囲である。また、熱分解後のポリエチレンワックスを押し出す押出機の先端温度は分子量をより精密に制御することが容易となることから、100~300℃の範囲を挙げることができ、100~280℃であることがさらに好ましく、特に好ましくは100~250℃の範囲である。さらに、ポリエチレン系樹脂の押出機内における滞留時間としては、1~30分の範囲を挙げることができ、2~20分であることがさらに好ましく、特に好ましくは3~15分の範囲である。
【0019】
また、得られる熱分解ワックスの酸化、臭気を抑え、かつ分子量の制御が容易となることから、熱分解させる際の押出機内は水素、ヘリウム、アルゴン、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスにより置換されていることが好ましく、特に窒素ガスにより置換されていることが好ましい。
【0020】
前記ポリエチレン系熱分解ワックスは、ペレットやパウダー、フレーク、グラニュール、グレイン、ペーストなどの任意の形態として使用することができる。また、前記ポリエチレン系熱分解ワックスは、フィラー、顔料などの分散剤、離型剤、滑剤、可塑剤などとしてのプラスチックやゴムの成形加工助剤、インキ、塗料、コーティング剤、ポリッシュ、シーラント、天然ワックスあるいはホットメルト接着剤などへの添加剤、化粧品、洗顔料、紙質向上剤、ロードマーキングやアスファルト改質剤などの土木用添加剤などの用途として幅広く使用できる。
【実施例0021】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
【0022】
~ポリエチレン系熱分解ワックスのGPC測定~
以下の測定装置および器具を用い、以下の条件で測定を行った。
【0023】
装置:HLC-8321GPC/HT(検出器:RI方式)(東ソー株式会社製)
カラム:以下の(i)のカラムを1本、(ii)のカラムを3本、直列で使用
(i)TSKgel guArdColumuH(HR)(30)HT
(7.5mmI.D.)×7.5cm)(東ソー株式会社製)×1本
(ii)TSKgel GMH(HR)-H(20)HT
(7.5mmI.D.)×30cm)(東ソー株式会社製)×3本
溶離液:1,2,4-トリクロロベンゼン(BHT:0.05wt%含有)
(富士フィルム和光純薬株式会社製)
流速:1.0mL/分
注入量:0.3mL
カラム温度:140℃
システム温度:40℃
試料濃度:1mg/mL
検量線:東ソー株式会社製、標準ポリスチレンを用いた5次近似曲線。但し、分子量はQファクターを用いてPE換算分子量とした。
【0024】
~ワックスの発煙性評価~
高温加工時におけるワックスの発煙性の指標として、以下の測定装置および器具を用い、以下の条件で加熱重量減少率を測定した。そして、加熱重量減少率が2%以下のものを、発煙性が低く、優れるものと判断した。
【0025】
装置:TG-DTA STA200 日立ハイテクサイエンス製
窒素流量:50mL/min
温度条件:30℃から10℃/minで保持温度まで昇温し、一定時間保持したのち30℃/minで室温まで冷却した。
【0026】
加熱重量減少率:250℃、1時間保持したときの重量減少率を測定した。
【0027】
~ワックスの流動性評価~
粘度計(東機産業株式会社製、商品名TVB-15にて、測定温度140℃の条件下で粘度を測定した。そして、粘度が10,000mPa・s以下のものを流動性に優れると判断した。
【0028】
~ブロッキング性評価~
EVA(東ソー株式会社製、商品名ウルトラセン541、MFR9g/10分、密度929kg/m)80重量%およびポリエチレンワックス20重量%からなる樹脂組成物100重量部に対し、さらにフェノール系酸化防止剤(BASF(株)社製、商品名イルガノックス1010)0.5重量部を加え、タンブラー混合機で予備ブレンドした後、二軸押出機を用い、180℃で溶融混練して樹脂組成物ペレットを得た。そして、得られた樹脂組成物ペレット100gを内径60×60×60mmの離型紙を貼り付けた木製試験片作製箱に入れ、68.6Nの仕込み荷重を載せ、40℃で48時間放置した後、23℃で24時間放置した。試験片作製箱から取り出した試験片を速度10mm/分で圧縮し、破壊に要した最大荷重を測定した。ブロッキング強度が300N未満を良(表1中、○印で標記)、300N以上のものを不良(表1中、×印で標記)と判定した。
【0029】
実施例1
押出機として、スクリュ径12mm、スクリュ長さLとスクリュ直径Dの比(L/D)40の同方向噛合型4軸押出機を用いた。また、揮発ガスを押出機外へ除去するため、真空ベント口を2か所設置した(押出機B-1)。そして、ポリエチレン樹脂として東ソー株式会社製高密度ポリエチレン、商品名ニポロンハード1200(A-1、MFR21g/10分、密度952kg/m)を一定流量の窒素ガスと共に該押出機に供給し、該押出機のニーディングゾーンのシリンダ温度を400℃に加熱した条件で原料供給速度2.5kg/hrにて溶融混錬することで熱分解させた。次いで、該溶融混錬したポリエチレン樹脂を該押出機の先端のシリンダ温度を200℃に加熱した条件にて、窒素雰囲気下に設置されたスチールベルト上に押出して冷却した後、カッティングすることでペレット状のポリエチレンワックスを得た。そして、得られたポリエチレンワックスを用いてGPC測定、発煙性、流動性およびブロッキング性の評価を行った。それぞれの測定および評価を行った結果を表1に示した。
【0030】
得られたポリエチレンワックスは低発煙性、流動性、耐ブロッキング性に優れるものであった。
【0031】
実施例2~4
ポリエチレン樹脂(A-1)を用い、表1に示す押出条件として実施例1と同様の方法によりペレット状のポリエチレンワックスを得た。そして、得られたポリエチレンワックスを用いてGPC測定、発煙性、流動性およびブロッキング性の評価を行った。それぞれの測定および評価を行った結果を表1に示した。
【0032】
得られたポリエチレンワックスは低発煙性、流動性、耐ブロッキング性に優れるものであった。
【0033】
実施例5~6
ポリエチレン樹脂として東ソー株式会社製低密度ポリエチレン、商品名ペトロセン202(A-2、MFR24g/10分、密度918kg/m)を用い、表1に示す押出条件として実施例1と同様の方法によりペレット状のポリエチレンワックスを得た。そして、得られたポリエチレンワックスを用いてGPC測定、発煙性、流動性およびブロッキング性の評価を行った。それぞれの測定および評価を行った結果を表1に示した。
【0034】
得られたポリエチレンワックスは低発煙性、流動性、耐ブロッキング性に優れるものであった。
【0035】
実施例7
押出機として、スクリュ径12mm、スクリュ長さLとスクリュ直径Dの比(L/D)35の同方向噛合型8軸押出機(B-2)を用い、表1に示す押出条件として実施例1と同様の方法によりペレット状のポリエチレンワックスを得た。そして、得られたポリエチレンワックスを用いてGPC測定、発煙性、流動性およびブロッキング性の評価を行った。それぞれの測定および評価を行った結果を表1に示した。
【0036】
得られたポリエチレンワックスは低発煙性、流動性、耐ブロッキング性に優れるものであった。
【0037】
比較例1~3
表1に示すポリエチレン樹脂を用い、表1に示す押出条件として実施例1と同様の方法によりペレット状のポリエチレンワックスを得た。そして、得られたポリエチレンワックスを用いてGPC測定、発煙性、流動性およびブロッキング性の評価を行った。それぞれの測定および評価を行った結果を表1に示した。
【0038】
比較例1により得られたポリエチレンワックスは流動性、耐ブロッキング性に劣るものであった。比較例2および3により得られたポリエチレンワックスは低発煙性、耐ブロッキング性に劣るものであった。
【0039】
比較例4
表1に示すポリエチレン樹脂を用い、押出機として真空ベント口を2か所設置したスクリュ径12mm、スクリュ長さLとスクリュ直径Dの比(L/D)40の同方向噛合型2軸押出機(B-3)を用い、表1に示す押出条件として溶融混錬することで熱分解させた。次いで、窒素雰囲気下に設置されたスチールベルト上に押出して冷却した後、カッティングすることでペレット状のポリエチレンワックスを得た。そして、得られたポリエチレンワックスを用いてGPC測定、発煙性、流動性およびブロッキング性の評価を行った。それぞれの測定および評価を行った結果を表1に示した。
【0040】
得られたポリエチレンワックスは低発煙性、耐ブロッキング性に劣るものであった。
【0041】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、高温加工時の発煙やワックスを含有する成形体のべたつきが少なく、耐ブロッキング性に優れ、かつ低コストであるポリエチレン系熱分解ワックスを提供するものであり、特にプラスチックスやゴムの成形助剤、滑剤、離型剤、インキおよび塗料添加剤、顔料分散剤、ホットメルト接着剤用途などに有用なものである。