(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044124
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電源変動検知回路及び電流源回路
(51)【国際特許分類】
H03K 17/22 20060101AFI20240326BHJP
G05F 1/10 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H03K17/22 B
G05F1/10 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149475
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 俊章
【テーマコード(参考)】
5H410
5J055
【Fターム(参考)】
5H410BB02
5H410BB05
5H410EA11
5H410EA34
5H410FF05
5H410FF22
5J055AX21
5J055CX09
5J055DX12
5J055DX13
5J055DX14
5J055DX22
5J055EY01
5J055EY10
5J055EY21
(57)【要約】
【課題】小さな占有領域及び少ない電力消費で、電源電圧の変動による電流源の動作不良を回避又は解消する。
【解決手段】実施形態の電源変動検知回路2は、所定の電流が流れる第1動作点と電流が流れない第2動作点とを有する電流源3に供給される電源電圧Vspが印加される高電位側電源線V1及び低電位側電源線V2と、高電位側電源線V1又は低電位側電源線V2に接続されている制御極21a、及び二つの被制御極21b、21cを備えるスイッチング素子21と、を含んでいて、電源電圧Vspの低下時に電流源3内を流れる電流を誘発する。スイッチング素子21は、電源電圧Vspの急減時に遮断状態から導通状態に遷移することによって電流源3に電流を流入させるか又は電流源3から電流を流出させ、導通状態への遷移によって始まる制御極21aと被制御極21b又は被制御極21cとの間の電位差の低下によって遮断状態に復帰する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の電流が流れる第1動作点と電流が流れない第2動作点とを有する電流源に供給される電源電圧の低下時に前記電流源内を流れる電流を誘発する電源変動検知回路であって、
前記電源電圧が印加される高電位側電源線及び低電位側電源線と、
前記高電位側電源線又は前記低電位側電源線に接続されている制御極、及び前記制御極の状態に応じて互いの間の電気的な接続状態を変えられる二つの被制御極を備えるスイッチング素子と、
を含み、
前記スイッチング素子は、前記電源電圧の急減時に前記二つの被制御極間を遮断状態から導通状態にすることによって前記電流源に電流を流入させるか又は前記電流源から電流を流出させ、前記導通状態への遷移によって始まる前記制御極と前記二つの被制御極の一方との間の電位差の低下によって前記遮断状態に復帰するように構成されている、電源変動検知回路。
【請求項2】
電源電圧が印加される高電位側電源線及び低電位側電源線を含んでいて、所定の電流が流れる第1動作点と電流が流れない第2動作点とを有する電流源と、
前記電流源に接続されていて、前記電源電圧の低下時に前記電流源内を流れる電流を誘発する電源変動検知回路と、
を含む電流源回路であって、
前記電源変動検知回路は、前記高電位側電源線又は前記低電位側電源線に接続されている制御極、及び前記制御極の状態に応じて互いの間の電気的な接続状態を変えられる二つの被制御極を備えるスイッチング素子を含み、
前記スイッチング素子は、前記電源電圧の急減時に前記二つの被制御極間を遮断状態から導通状態にすることによって前記電流源に電流を流入させるか又は前記電流源から電流を流出させ、前記導通状態への遷移によって始まる前記制御極と前記二つの被制御極の一方との間の電位差の低下によって前記遮断状態に復帰するように構成されている、電流源回路。
【請求項3】
前記電源変動検知回路は、さらに、前記二つの被制御極の前記一方と、前記高電位側電源線及び前記低電位側電源線のうちの前記制御極と接続されていないいずれかとの間に接続されている第1キャパシタを含み、
前記導通状態への遷移によって始まる前記第1キャパシタの放電によって前記電位差が低下する、請求項1記載の電源変動検知回路又は請求項2記載の電流源回路。
【請求項4】
前記電流源は、前記高電位側電源線に接続されていてカレントミラーを構成する一対のp型電界効果トランジスタと、前記一対のp型電界効果トランジスタと前記低電位側電源線との間に接続されている一対のn型電界効果トランジスタと、を含み、
前記二つの被制御極のうちの前記一方と異なる他方が、
前記一対のn型電界効果トランジスタそれぞれのゲートである第1ゲートに接続されていて前記導通状態への遷移によって前記第1ゲートの電位を上昇させる、又は、
前記一対のp型電界効果トランジスタそれぞれのゲートである第2ゲートに接続されていて前記導通状態への遷移によって前記第2ゲートの電位を下降させる、
請求項2記載の電流源回路。
【請求項5】
前記電流源は、前記高電位側電源線に接続されていてカレントミラーを構成する一対のp型電界効果トランジスタと、前記一対のp型電界効果トランジスタと前記低電位側電源線との間に接続されている一対のn型電界効果トランジスタと、を含み、
前記電源変動検知回路は、さらに、
制御極、第1被制御極、及び第2被制御極を備えていて前記スイッチング素子の前記導通状態への遷移に応じて前記第1被制御極と前記第2被制御極との間が導通状態となるように構成されている第1トランジスタと、
前記第1トランジスタの前記制御極と前記第1被制御極との間に接続されていて前記電流源に電流が流れているときに前記第1トランジスタを遮断させる第2トランジスタと、
を含んでおり、
前記第1被制御極が前記高電位側電源線又は前記低電位側電源線に接続されており、
前記第2被制御極が
前記一対のn型電界効果トランジスタそれぞれのゲートである第1ゲートに接続されていて前記スイッチング素子の前記導通状態への遷移によって前記第1ゲートの電位を上昇させる、又は、
前記一対のp型電界効果トランジスタそれぞれのゲートである第2ゲートに接続されていて前記スイッチング素子の前記導通状態への遷移によって前記第2ゲートの電位を下降させる、
請求項2記載の電流源回路。
【請求項6】
前記電源変動検知回路は、さらに、制御極、第1被制御極、及び第2被制御極を備えていて前記第1被制御極が前記高電位側電源線又は前記低電位側電源線に接続されている第1トランジスタ、及び、前記第1トランジスタの前記制御極と前記第1被制御極との間に接続されていて前記電流源に電流が流れているときに前記第1トランジスタを遮断させる第2トランジスタを含んでおり、
前記第1トランジスタは、前記第1被制御極と前記第2被制御極との間が、前記スイッチング素子の前記導通状態への遷移に応じて導通状態となるように構成されている、請求項1記載の電源変動検知回路。
【請求項7】
前記電源変動検知回路は、
前記第1トランジスタの前記制御極と、前記高電位側電源線及び前記低電位側電源線のうちの前記スイッチング素子の前記制御極と接続されているいずれかとの間に接続されている第2キャパシタをさらに含み、
前記電源電圧の印加時に、前記電源変動検知回路内の寄生容量と前記第2キャパシタの容量との分圧によって前記第1トランジスタを導通状態にして前記電流源に電流を流入させるか又は前記電流源から電流を流出させることにより前記電流源を起動させる、
請求項5記載の電流源回路又は請求項6記載の電源変動検知回路。
【請求項8】
前記電源変動検知回路は、さらに、前記二つの被制御極のうちの前記一方と異なる他方と前記第1トランジスタの前記制御極との間に、前記第1トランジスタを駆動する能力を高める1以上のバッファ回路を含んでいる、請求項5記載の電流源回路又は請求項6載の電源変動検知回路。
【請求項9】
前記電流源は、前記高電位側電源線に接続されていてカレントミラーを構成する一対のp型電界効果トランジスタと、前記一対のp型電界効果トランジスタと前記低電位側電源線との間に接続されている一対のn型電界効果トランジスタと、を含み、
前記電流源は、さらに、前記一対のn型電界効果トランジスタそれぞれのゲートである第1ゲートと前記高電位側電源線との間、又は、前記一対のp型電界効果トランジスタそれぞれのゲートである第2ゲートと前記低電位側電源線との間、又は、前記第1ゲートと前記第2ゲートとの間に接続されている第2キャパシタを含んでいる、請求項2記載の電流源回路。
【請求項10】
前記スイッチング素子がp型電界効果トランジスタからなり、
前記制御極である前記p型電界効果トランジスタのゲートが前記高電位側電源線に接続されており、
前記電源変動検知回路は、さらに、前記p型電界効果トランジスタのソースと前記低電位側電源線との間に接続されている第1キャパシタ、及び、前記ソースと前記高電位側電源線との間に接続されている電気抵抗とを含んでいる、請求項1記載の電源変動検知回路又は請求項2記載の電流源回路。
【請求項11】
前記スイッチング素子がn型電界効果トランジスタからなり、
前記制御極である前記n型電界効果トランジスタのゲートが前記低電位側電源線に接続されており、
前記電源変動検知回路は、さらに、前記n型電界効果トランジスタのソースと前記高電位側電源線との間に接続されている第1キャパシタ、及び、前記ソースと前記低電位側電源線との間に接続されている電気抵抗とを含んでいる、請求項1記載の電源変動検知回路又は請求項2記載の電流源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源変動検知回路及び電流源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置のような電子デバイスや、電子デバイスを含む電子機器には、しばしば、それらデバイスや機器内の各回路に所定の大きさの電流を供給する電流源回路が組み込まれる。電流源回路は、電源電圧の供給を受けて、例えば所定の定電流を出力する。このような電流源回路では、電源電圧の変動による出力電流の変動(電源電圧感度)を小さくすべく、所謂ブートストラップバイアス技術や自己バイアス法と呼ばれるバイアス方式が用いられることがある。これらのバイアス方式では、電流源回路への入力電流は、電源電圧に依存するというよりも寧ろ電流源回路自身の出力電流に依存するため、電源電圧感度が低減される(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
図9には、一般的な自己バイアス方式の電流源900の一例が示されている。
図9の電流源900は、電源電圧Vspが印加される正電源ラインVDDと負電源ラインVSSとの間に、それぞれMOS型電界効果トランジスタ(FET)であるp型トランジスタMP1、MP2、n型トランジスタMN1、MN2及び抵抗R100により構成されている。トランジスタMP1、MP2のソースは正電源ラインVDDに接続されており、この両トランジスタそれぞれのゲートとトランジスタMP1のドレインとが接続されることによってカレントミラーが構成されている。電源電圧Vspが印加されてトランジスタMP1、MN1を通る電流が流れると、カレントミラーを構成するトランジスタMP2にもトランジスタMP1を流れる電流と略同じ大きさの電流が流れるためこの電流を出力電流とする電流源としての機能が得られる。
【0004】
トランジスタMP1、MN1を流れる電流、すなわちトランジスタMP2を流れる電流(出力電流)は、トランジスタMP1、MP2それぞれのゲート-ソース間電圧を含む閉回路に関してキルヒホッフの電圧則に基づいて成立する数式と、トランジスタMN1、MN2それぞれのゲート-ソース間電圧及び抵抗R100を含む閉回路に関して同電圧則に基づいて成立する数式との連立方程式から定まる。すなわち、電流源900の出力電流は、各トランジスタのチャネル長変調効果を無視すれば、電源電圧Vspに依存しない。そのため、電流源900のような自己バイアス方式の電流源は、半導体集積回路装置の基準電流源として多用されている。
【0005】
しかし、
図9のような従来の自己バイアス方式の電流源には、非特許文献1にも記載のように、上記の連立方程式に2つの解が存在するため、電流源内の電流が定まる動作点が二つ存在する。そして、その二つの動作点のうちの一方が、所定の出力電流を得るべくその動作点での動作を意図して電流源が設計された期待される動作点であり、他方は、電流源内に電流が流れない、すなわち電流が出力されない、期待されない動作点である。電源電圧の印加時にどちらの動作点に電流源の動作が向かうかは、各トランジスタの寄生素子の特性に応じた分圧に基づくトランジスタMP1及びトランジスタMN2のゲート-ソース間電圧に依存する。そのため、
図9に示す回路構成だけでは、電源電圧Vspの印加時に、電流が流れ始めないまま期待されない動作点に収束してしまうことがある。そこで、
図9のような電流源には、電源電圧の印加時に電流源内に確実に電流を流して期待されない動作点への収束を回避すべく起動回路(スタートアップ回路)が付加されることがある(同じく非特許文献1参照)。
【0006】
図10には、
図9のような電流源に付加される従来の起動回路の一例が示されている。
図10の回路では、起動回路910としてキャパシタC100が、
図9の電流源900のトランジスタMN1のドレインと負電源ラインVSSとの間に接続されている。起動回路910を備えた電流源900では、電源電圧Vspの印加時には、トランジスタMP1、MP2それぞれの寄生容量とキャパシタC100の容量との分圧によってトランジスタMP1のゲート-ソース間電圧が定まる。そのため、キャパシタC100の容量値の適切な選択によって、電源電圧Vspの印加時からトランジスタMP1及びトランジスタMP2のドレイン電流を流すことができ、電流源900を起動させることができる。キャパシタを用いた自己バイアス方式の電流源の起動回路としては、
図10の例以外にも、電流源のp型MOSFETのゲートとn型MOSFETのゲートとの間にキャパシタが接続されるものなど、種々の構成が存在する(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【0007】
このように、起動回路を設けることによって、自己バイアス方式の電流源において電源電圧の印加時に期待される動作点での動作を確実にすることができる。しかし、このような起動回路が設けられていても、期待される動作点での動作中に電源電圧が急激に低下すると、その急低下に伴って各トランジスタのゲート-ソース間電圧が低下して電流源内に電流が流れなくなり、その動作が期待されない動作点へと遷移してしまうことがある。そのため、電源電圧の急減時にも、電流源内の通電を誘発して期待されない動作点への移行を防止し得る起動回路が設けられることがある(例えば特許文献3参照)。
【0008】
図11には、そのように電源電圧の急減に対応可能な従来の起動回路の他の例が示されている。
図11の回路では、p型MOSトランジスタMP3及びn型MOSトランジスタMN3からなるインバータ950とn型MOSトランジスタMN4とを含む起動回路920が、
図9の電流源900に付加されている。インバータ950の入力はトランジスタMN1、MN2のゲートに接続され、インバータ950の出力はトランジスタMN4のゲートに接続され、トランジスタMN4のソースが負電源ラインVSSに、ドレインがトランジスタMP1、MP2それぞれのゲートに接続されている。電源電圧の急減により、電流源900の動作が期待されない動作点に移行した場合は、電流源900内に電流が流れないため、トランジスタMN2のゲート-ソース間電圧が略ゼロとなり、同様にトランジスタMN3のゲート-ソース間電圧も略ゼロとなってトランジスタMN3がオフ状態となる。それに伴いインバータ950の出力がハイレベルとなってトランジスタMN4がオン状態となり、電流源900のトランジスタMP1、MP2のゲート電位を引き下げる。この結果、電流源900内で電流が流れ始め、その動作が期待される動作点へと移行する。この移行に伴って、トランジスタMN2のドレイン-ソース間電圧も上昇するので、インバータ950の出力が反転してロウレベルとなってトランジスタMN4がオフ状態となり、起動回路920の動作は電流源900に影響しなくなる。
【0009】
図12には、電源電圧の急減に対応可能な従来の起動回路のさらに他の例である起動回路930が示されている。起動回路930では、
図11のp型MOSトランジスタMP3の代わりに抵抗R900が正電源ラインVDDとトランジスタMN3との間に接続されており、トランジスタMN3のゲートは単独でトランジスタMN1、MN2のゲートに接続されている。起動回路930も、
図11の起動回路920と同様に動作する。すなわち、電源電圧の急減などにより、電流源900が期待されない動作点に移行すると、トランジスタMN2のゲート-ソース間電圧の低下と共にトランジスタMN3がオフ状態となり、トランジスタMN4のゲート電圧が正電源ラインVDDの電位に近づくためトランジスタMN4がオン状態となる。トランジスタMP1、MP2のゲート電位が引き下げられるため、電流源900内で電流が流れ始め、その動作が期待される動作点へと移行する。このように
図11及び
図12の起動回路920、930では、期待される動作点での動作中には電流源900に影響を与えることなく、一方、電源電圧の急減によって期待されない動作点に移行してしまうときには電流源900の動作を期待される動作点に引き戻すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0164790号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0009152号明細書
【特許文献3】特開2011-118532号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】P.R. グレイ、P.J. フルスト、S.H. レビス及びR.G. メイヤー共著、「システムLSIのためのアナログ集積回路設計技術(上)[原書第4版]」、浅田邦博及び永田穣監訳、培風館出版、2003年7月発行、P.360~362
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、
図11の起動回路920では、正電源ラインVDDと負電源ラインVSSとの間に接続されているインバータ950に、期待される動作点での動作中に電流が流れるため消費電力が増大する。起動回路920においてこの電流を小さくするためには、トランジスタMP3のゲートアスペクト比(ゲート幅/ゲート長)を小さくする必要がある。また、期待される動作点での動作中にトランジスタMN4を確実にオフにするためには、トランジスタMN3においてゲート-ソース間電圧に対するドレイン-ソース間抵抗を小さくする必要があり、そのため、トランジスタMN3のゲートアスペクト比を大きくする必要がある。すなわち、ゲートパターンが所定のデザインルールの下で決定され、且つ、材料の選択範囲が限られる半導体基板上で実現される集積回路装置内の電流源の起動回路では、ゲート幅の大きなトランジスタMN3、及びゲート長の大きなトランジスタMP3が求められる。そのため、例えばサブミクロンオーダーの消費電流が求められる超低消費電力の半導体集積回路装置では、そのような大きなゲート長又は大きなゲート幅を有するトランジスタを含む起動回路920は、集積回路装置のチップにおいて占有面積が大きくなり、半導体集積回路装置の小型化を阻害することがある。
【0013】
図12の起動回路930においても、期待される動作点での動作中に抵抗R900とトランジスタMN3との直列回路に電流が流れるため消費電力が増大する。この電流を小さくするためには、抵抗R900を大きくする必要があり、例えば超低消費電力の半導体集積回路装置では、10MΩ以上の抵抗R900が求められることがある。その場合、上記と同様に、所定のデザインルール及び材料選択に関する制約の下で半導体基板上に設けられる抵抗R900は、非常に大きな長さが必要となることがある。また、起動回路930においても、起動回路920に関して前述したトランジスタMN3のゲートアスペクト比に関する要求は存在する。そのため、起動回路930も、集積回路装置のチップ上での占有面積が大きくなり、半導体集積回路装置の小型化を阻害することがある。
【0014】
このように、
図11や
図12の起動回路920、930は、電源電圧の急減により期待されない動作点に陥った電流源を期待される動作点へ復帰させることができるが、定常的に電流が流れるため、極めて低い消費電力が求められる場合には、その電流低減の為に各起動回路を構成するトランジスタ又は抵抗が大きな面積を占めてしまうことがある。そのため、適用される半導体集積回路装置などの電子デバイスや電子機器の小型化が阻害されたり、コストが増大したりすることがある。
【0015】
本発明は、このような問題に鑑み、小さな占有領域及び少ない電力消費で、電源電圧の変動による電流源の動作不良を回避又は解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一実施形態の電源変動検知回路は、所定の電流が流れる第1動作点と電流が流れない第2動作点とを有する電流源に供給される電源電圧の低下時に前記電流源内を流れる電流を誘発する電源変動検知回路であって、前記電源電圧が印加される高電位側電源線及び低電位側電源線と、前記高電位側電源線又は前記低電位側電源線に接続されている制御極、及び前記制御極の状態に応じて互いの間の電気的な接続状態を変えられる二つの被制御極を備えるスイッチング素子と、を含み、前記スイッチング素子は、前記電源電圧の急減時に前記二つの被制御極間を遮断状態から導通状態にすることによって前記電流源に電流を流入させるか又は前記電流源から電流を流出させ、前記導通状態への遷移によって始まる前記制御極と前記二つの被制御極の一方との間の電位差の低下によって前記遮断状態に復帰するように構成されている。
【0017】
本発明の一実施形態の電流源回路は、電源電圧が印加される高電位側電源線及び低電位側電源線を含んでいて、所定の電流が流れる第1動作点と電流が流れない第2動作点とを有する電流源と、前記電流源に接続されていて、前記電源電圧の低下時に前記電流源内を流れる電流を誘発する電源変動検知回路と、を含む電流源回路であって、前記電源変動検知回路は、前記高電位側電源線又は前記低電位側電源線に接続されている制御極、及び前記制御極の状態に応じて互いの間の電気的な接続状態を変えられる二つの被制御極を備えるスイッチング素子を含み、前記スイッチング素子は、前記電源電圧の急減時に前記二つの被制御極間を遮断状態から導通状態にすることによって前記電流源に電流を流入させるか又は前記電流源から電流を流出させ、前記導通状態への遷移によって始まる前記制御極と前記二つの被制御極の一方との間の電位差の低下によって前記遮断状態に復帰するように構成されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電源変動検知回路によれば、大きな占有領域を要することなく、少ない電力消費で、電源電圧の変動による電流源の動作不良を回避又は解消することができる。また、本発明の電流源回路によれば、大きな占有領域を要することなく、少ない消費電力で、電源電圧の変動時にも動作不良を回避又は解消して所望の電流を負荷に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態の電源変動検知回路及び電流源回路の一例を示す回路図である。
【
図2】
図1の電源変動検知回路及び電流源回路の各部の電圧波形及び電流波形の一例を模式的に示す図である。
【
図3A】
図1の電流源回路の変形例を示す回路図である。
【
図3B】
図1の電流源回路の変形例を示す回路図である。
【
図3C】
図1の電流源回路の変形例を示す回路図である。
【
図4A】
図1の電源変動検知回路の変形例を示す回路図である。
【
図4B】
図1の電源変動検知回路の変形例を示す回路図である。
【
図4C】
図1の電源変動検知回路の変形例を示す回路図である。
【
図5A】本発明の第2実施形態の電源変動検知回路及び電流源回路の一例を示す回路図である。
【
図6】本発明の第3実施形態の電源変動検知回路及び電流源回路の一例を示す回路図である。
【
図7】本発明の第4実施形態の電源変動検知回路及び電流源回路の一例を示す回路図である。
【
図8A】
図6の電源変動検知回路の変形例を示す回路図である。
【
図8B】
図6の電源変動検知回路の変形例を示す回路図である。
【
図8C】
図6の電源変動検知回路の変形例を示す回路図である。
【
図9】一般的な自己バイアス方式の電流源を示す回路図である。
【
図10】従来の起動回路を備えた電流源の一例を示す回路図である。
【
図11】従来の起動回路を備えた電流源の他の例を示す回路図である。
【
図12】従来の起動回路を備えた電流源のさらの他の例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照しながら本発明の電源変動検知回路及び電流源回路の実施形態を説明する。しかし、本発明は、以下に説明される実施形態に限定されない。
【0021】
<第1実施形態>
図1には、第1実施形態の電源変動検知回路の一例である電源変動検知回路2、及び、第1実施形態の電流源回路の一例である電流源回路1が示されている。電流源回路1は、電流源3と、電流源3に接続されている電源変動検知回路2とを含んでいる。以下の説明では、「電源変動検知回路」は、単に「検知回路」とも称される。電流源3及び検知回路2は、いずれも、電流源3に供給される電源電圧Vspが印加される高電位側電源線V1及び低電位側電源線V2を含んでいる。電流源3と検知回路2は高電位側電源線V1及び低電位側電源線V2を共有している。高電位側電源線V1は、電源電圧Vspを供給する電源(図示せず)の高電位側出力に接続され、低電位側電源線V2はその電源の低電位側出力に接続される。電流源回路1には、任意の大きさの電源電圧Vspが印加され得る。
【0022】
図1の電流源回路1の電流源3は、先に
図9を参照して説明された所謂自己バイアス方式の電流源である。
図1の電流源3は、それぞれのソースが高電位側電源線V1に接続されている一対のp型電界効果トランジスタ30p(p型電界効果トランジスタ31p及びp型電界効果トランジスタ32p)と、一対のp型電界効果トランジスタ30pと低電位側電源線V2との間に接続されている一対のn型電界効果トランジスタ30n(n型電界効果トランジスタ31n及びn型電界効果トランジスタ32n)とを含んでいる。なお、「電界効果トランジスタ」は、以下では単に「FET」とも表記される。p型FET31pのゲートとp型FET32pのゲートとは互に接続されており、さらにp型FET31pのドレインに接続されている。そのため、一対のp型FET30pはカレントミラーを構成している。n型FET31nのドレインはp型FET31pのドレインに接続されており、n型FET32nのドレインはp型FET32pのドレインに接続されている。n型FET31nのゲートとn型FET32nのゲートとは互に接続されており、さらにn型FET32nのドレインに接続されている。n型FET32nのソースは低電位側電源線V2に接続されており、n型FET31nのソースは電気抵抗33を介して低電位側電源線V2に接続されている。なお、「電気抵抗」は、以下では単に「抵抗」とも称される。
【0023】
電流源3は、
図9に示される電流源900と同様に動作する。すなわち、電源電圧Vspの供給を受けてp型FET31pとn型FET31nに流れる電流と略同じ大きさの電流がp型FET32pに流れる。これら各FETに流れる電流は、一対のp型FET30pそれぞれのゲート-ソース間電圧を含む閉回路に関して成立する数式と、一対のn型FET30nそれぞれのゲート-ソース間電圧及び抵抗33を含む閉回路に関して成立する数式との連立方程式から定まる。電流源3は、電流源900に関して説明されたように二つの動作点を有する。そして、その二つの動作点のうちの一方が、その動作点での動作を意図して電流源3が設計され、その設計において意図された所定の電流が流れる、期待される動作点であり、他方は、電流源3内に電流が流れない、期待されない動作点である。以下では、「期待される動作点」は「第1動作点」と称され、「期待されない動作点」は「第2動作点」と称される。
【0024】
図1の検知回路2は、スイッチング素子21と、キャパシタ(第1キャパシタ)22と、抵抗23と、を含んでいる。キャパシタ22と抵抗23は、ローパスフィルタを構成している。スイッチング素子21は、制御極21a、及び制御極21aの状態に応じて互いの間の電気的な接続状態を変えられる二つの被制御極(被制御極21b及び被制御極21c)を備えている。実施形態の検知回路においてスイッチング素子21は、例えば、制御極21aに与えられる電位が所定の値を超えるか否かに応じて、被制御極21bと被制御極21cとの間の導通状態と遮断状態とを切り替える。或いは、これら両制御極の間は、制御極21aの電位又は電流が大きく(又は小さく)なるにつれて、徐々に遮断状態から導通状態に変えられてもよい。
【0025】
図1の例では、スイッチング素子21はp型FET2pからなる。スイッチング素子21の制御極21aはp型FET2pのゲートであり、二つの被制御極21b、21cの一方である被制御極21b及び他方である被制御極21cは、それぞれ、p型FET2pのソース及びドレインである。そのため、p型FET2pのバックゲートはp型FET2pのソースである被制御極21bに接続されている。p型FET2pのゲートは高電位側電源線V1に接続されている。キャパシタ22は、p型FET2pのソースと、p型FET2pのゲートとは接続されていない低電位側電源線V2との間に接続されている。抵抗23は、p型FET2pのソースと高電位側電源線V1との間に接続されている。すなわち、キャパシタ22と抵抗23によって構成されるローパスフィルタの入力が高電位側電源線V1に接続されており、出力がp型FET2pのソースに接続されている。
【0026】
図1の検知回路2は、電源電圧Vspの印加時に電流源3を起動する起動回路4をさらに含んでいる。起動回路4は、キャパシタ41(第2キャパシタ)、トランジスタ42(第1トランジスタ)、及びトランジスタ43(第2トランジスタ)を含んでいる。トランジスタ42は、制御極42a、被制御極42b(第1被制御極)、及び被制御極42c(第2被制御極)を備えている。トランジスタ43も、制御極43a、被制御極43b(第1被制御極)、及び被制御極43c(第2被制御極)を備えている。トランジスタ42は制御極42aに与えられる電位に応じて被制御極42bと被制御極42cとの間の導通状態を変化させる。同様にトランジスタ43は制御極43aに与えられる電位に応じて二つの被制御極43b、43c間の導通状態を変化させる。
【0027】
図1の例においてトランジスタ42、43は、それぞれn型FETである。トランジスタ42の制御極42a、被制御極42b、及び被制御極42cは、それぞれ、
図1の例において電界効果トランジスタであるトランジスタ42のゲート、ソース、及びドレインであり、以下では、単に「ゲート42a」、「ソース42b」、及び「ドレイン42c」とも称される。同様に、トランジスタ43の制御極43a、被制御極43b、及び被制御極43cは、以下では、単に「ゲート43a」、「ソース43b」、及び「ドレイン43c」とも称される。
【0028】
キャパシタ41は、トランジスタ42のゲート42a、スイッチング素子21の被制御極21c(p型FET2pのドレイン)及びトランジスタ43のドレイン43cと、高電位側電源線V1と、の間に接続されている。すなわち、トランジスタ42のゲート42aと、スイッチング素子21の被制御極21cと、トランジスタ43のドレイン43cと、キャパシタ41における高電位側電源線V1と反対側の電極とは、互いに接続されている。
【0029】
トランジスタ43は、トランジスタ42のゲート42aとソース42bとの間に接続されている。すなわち、トランジスタ43のドレイン43cはトランジスタ42のゲート42aと接続されており、トランジスタ43のソース43bはトランジスタ42のソース42bと接続されている。トランジスタ42のソース42b及びトランジスタ43のソース43bは、共に、低電位側電源線V2に接続されている。
【0030】
トランジスタ43のゲート43aは電流源3の第1ゲートG1に接続されている。そしてトランジスタ42のドレイン42cは電流源3の第2ゲートG2に接続されている。第1ゲートG1は、一対のn型FET30nそれぞれのゲートであり、第2ゲートG2は、一対のp型FET30pそれぞれのゲートである。トランジスタ42のドレイン42cは、スイッチング素子21の導通状態への遷移によって第2ゲートG2の電位を下降させる。以下、このスイッチング素子21の導通状態への遷移を含む検知回路2の作用について説明する。
【0031】
<検知回路の作用>
電流源3に電源電圧Vspが印加されると、起動回路4の作用で電流源3が起動し(起動回路4の作用は後述する)、電流源3の動作が第1動作点に収束して、所定の電流が電流源3内を流れる。電流源3内に電流が流れている場合、n型FET31n、32nは導通状態にあり、すなわち、これらn型FETのゲート-ソース間電圧は閾値電圧以上となっている。そのため、電流源3の第1ゲートG1にゲート43aが接続されているトランジスタ43も導通状態となり、トランジスタ42のゲート42aとソース42bとの間にはトランジスタ42をオンさせるような電圧が付加されず、トランジスタ42はオフ状態となる。このようにトランジスタ43は、電流源3に電流が流れているときにはトランジスタ42を、オフ状態にして遮断させる。そのため、電流源3に電流が流れている場合(例えば第1動作点での動作中)は、検知回路2の動作は電流源3に影響しない。
【0032】
一方、電源電圧Vspが急激に低下すると、電流源3内の各FETのゲート-ソース間電圧が低下して各FETがオフ状態となって電流源3内に電流が流れなくなり、電流源3単独では期待されない第2動作点に動作が移行して容易に第1動作点に復帰できないことがある。そこで、実施形態の検知回路2は、そのように供給される電源電圧Vspの急峻な低下時に、以下に説明するように動作して電流源3内を流れる電流を誘発し、好ましくは、電流源3の動作を第1動作点に復帰させる。
【0033】
図1の電流源回路1において電源電圧Vspが急減する(例えば、高電位側電源線V1の電位VHが急低下する)と、一対のp型FET30pのゲート-ソース間電圧が0Vに近づき、電流源3内に電流が流れなくなることがある。一方、電位VHが急低下した瞬間、キャパシタ22は、その急低下までの充電によって蓄えられた電荷による電圧、すなわち急低下前の電源電圧Vspに略等しい端子間電圧を維持する。このとき、スイッチング素子21を構成するp型FET2pのゲート-ソース間電圧が閾値電圧以上になるほど電位VHが下がると、p型FET2pが導通状態へと遷移し、キャパシタ22にチャージされている電荷がp型FETp2のドレインを通ってトランジスタ42のゲート42aへと流れる。このとき、電流が流れていない電流源3内の一対のn型FET30nのゲート-ソース間電圧は閾値電圧未満であるので第1ゲートG1にゲート43aが接続されているトランジスタ43もオフ状態にあり、そのためトランジスタ42のゲート42aの電位は上昇する。
【0034】
そしてトランジスタ42のゲート-ソース間電圧が閾値電圧以上になると、トランジスタ42が導通状態となり、高電位側電源線V1からp型FET31pを通ってトランジスタ42へと電流が流れる。p型FET31pを通って電流が流れるため、電流源3の第2ゲートG2の電位が下降すると共に、一対のp型FET30pそれぞれのゲート-ソース間電圧が増大し、電流源3内に電流が流れ、電流源3の動作が、期待される第1動作点に戻り、正常動作に復帰する。このように、トランジスタ42は、p型FET2p(スイッチング素子21)の導通状態への遷移に応じてソース42bとドレイン42cとの間が導通状態となるように構成されている。スイッチング素子21は、電源電圧Vspの急減時に二つの被制御極21b、21c間を遮断状態から導通状態にすることによって、トランジスタ42を導通状態にして電流源3から電流を流出させる。
【0035】
スイッチング素子21は、高電位側電源線V1の電位VHの急低下に応じて導通状態に遷移した後、低下するp型FET2pのゲート-ソース間電圧が閾値電圧を下回ると遮断状態に復帰する。すなわち、スイッチング素子21は、自身の導通状態への遷移によって始まる制御極21aと被制御極21bとの間の電位差の低下によって遮断状態に復帰するように構成されている。
図1の例において具体的には、スイッチング素子21の導通状態への遷移によって始まるキャパシタ22の放電によって、制御極21aと被制御極21bとの間の電位差が低下する。要するにスイッチング素子21は、自身の導通状態への遷移によってスイッチング素子21内を流れ始める電流によって、電流源3の状態の変化などを介さずに直接もたらされる制御極21aと被制御極21bとの間の電位差の低下によって遮断状態に復帰するように構成されている。
【0036】
電流源3に電流が流れて例えば第1動作点での動作に復帰すると、一対のn型FET30nのゲート-ソース間電圧が上昇するため、トランジスタ43もオン状態となり、トランジスタ42が遮断状態となって検知回路2の動作は電流源3に影響しなくなる。トランジスタ43は、オン状態のまま線形領域で動作するが、電源電圧Vspに変動がなければキャパシタ41やp型FET2pから電流が流入しないので、トランジスタ43には略電流は流れない。
【0037】
図1の検知回路2は、低電位側電源線V2の電位VLが急上昇したときも、上述した高電位側電源線V1の電位VHが急低下したときと同様に動作する。すなわち、電位VLが急上昇すると、一対のn型FET30nのゲート-ソース間電圧が0Vに近づき、電流源3内に電流が流れなくなることがあるが、電位VLが急上昇した瞬間、キャパシタ22は、急上昇前の電源電圧Vspに略等しい端子間電圧を維持する。このとき、スイッチング素子21を構成するp型FET2pの閾値電圧以上に電位VLが上昇すると、p型FET2pはオン状態となって導通状態へと遷移し、キャパシタ22にチャージされている電荷がトランジスタ42のゲート42aに流れる。その後は、上述した電位VHが急低下したときと同様に、トランジスタ42、43、及びp型FET2pが動作し、p型FET31pを通る電流を電流源3から流出させ、電流源3を第1動作点での動作に復帰させる。p型FET2pは、キャパシタ22の放電に伴って遮断状態に復帰する。電流源3に電流が流れるとトランジスタ43は導通状態となり、トランジスタ42は遮断状態となって検知回路2の動作は電流源3に影響しなくなる。
【0038】
図2には、高電位側電源線V1の電位VH(上段)を5V~1.8Vへ急激に変化させた場合の電流源3内を流れる電流(例えばp型FET32pのドレイン電流)Iref(中段)及び一対のn型FET30nのゲート-ソース間電圧Vgs(下段)の一例が模式的に示されている。なお、
図2では、実施形態の電流源回路1における電位VH、電流Iref、及び電圧Vgsが実線で示されており、参考として、
図2の中段及び下段には、
図10の従来の起動回路910を備えた電流源900を流れる電流Iref1、及びトランジスタMN1、MN2のゲート-ソース間電圧Vgs1が併せて破線で示されている。さらに
図2の中段には、
図12の従来の起動回路930を備えた電流源900を流れる電流Iref2も併せて一点鎖線で示されている。
図2では、1msecの時点で電位VHが5Vから1.8Vに低下している。
【0039】
図2に破線で示されているように、
図10の電流源900では、電源電圧が急減すると、各トランジスタがオフ状態となり、期待されない動作点に動作が移り、さらに、期待されない動作点から復帰する手段がない為、電流Iref1は0Aを保持している。また、トランジスタMN1、MN2のゲート-ソース間電圧Vgs1は、電位VHの急低下後、徐々に低下して閾値電圧に満たない0.4V程度の電圧値に留まっている。これに対して、本実施形態の電流源回路1では、電位VHが急低下したタイミングで、スイッチング素子21(p型FET2p)が導通状態になり、p型FET31pから電流を引き込む。この為、電流Irefが電位VHの低下の直後に一時的に上昇した後、電位VHの急低下前の電流値に復帰している。電圧Vgsも、一時的に上昇して各トランジスタの飽和動作でクランプした後、電位VHの急低下前の電圧値に戻っている。
【0040】
また、
図2の中段に一点鎖線で示されているように、電源電圧の急減に対応可能な従来の起動回路930を備えた
図12の電流源900内の電流Iref2は、起動回路930の作用によって、電位VHの急低下後に、電位VHの急低下前の電流値に回復している。しかし、本実施形態における電流Irefが20μsec程度で回復しているのに対して、電流Iref2は回復までに100μsec程度の時間を要している。すなわち、本実施形態の検知回路2の方が、早期に電流源3を期待される第1動作点に復帰させている。これは、
図12の起動回路930では前述したように抵抗R900を流れる電流が小さくされるのでトランジスタMN4のゲートのチャージに時間を要するのに対して、本実施形態では、トランジスタ42のゲート42aのチャージ電流は、キャパシタ22から導通状態のスイッチング素子21だけを経由して供給されるためと考えられる。
【0041】
このように本実施形態では、電源電圧Vspの急減を受けて期待されない第2動作点に電流源3の動作が移行しても、検知回路2のスイッチング素子21によって電流源3に電流を誘発して、第1動作点での動作に電流源3を早期に復帰させることができる。そして本実施形態では、前述したように、電源電圧Vspの急減時に導通状態となるスイッチング素子21は、自身の通電によって時間と共に自律的に遮断状態に復帰する。加えて、電流源3に電流が流れている間に導通状態となるトランジスタ43には定常状態では電流は流れない。従って、
図11や
図12に示されるような従来の起動回路と比べて、消費電力を抑制することができる。
【0042】
また、そのように検知回路2に定常状態では基本的に電流が流れないので、
図11や
図12の起動回路に求められる、内部のトランジスタの大きなゲートアスペクト比や、内部の抵抗の大きな抵抗値は求められない。従って、本実施形態の検知回路2は、電源電圧の急減に対応可能な従来の起動回路と比べて、小さく実現できると考えられる。このように、本実施形態の検知回路によれば、大きな占有領域を要することなく、少ない電力消費で、電源電圧の変動による電流源の動作不良を回避又は解消することができる。また、本実施形態の電流源回路によれば、大きな占有領域を要することなく、少ない消費電力で、電源電圧の変動時にも動作不良を回避又は解消して所望の電流を負荷に供給することができる。
【0043】
なお、電源電圧Vspの「急減」は、電流源3内に電流が流れなくなるような急峻な電源電圧Vspの減少(低下)を意味する。すなわち、電源電圧Vspが時間に対するある程度までの変化率で低下しても、例えば自己バイアス方式の電流源3内では、電流源3内の各FETがオフする前に、帰還動作によって各FETのゲート電位が変化して例えば第1動作点での動作が維持される。しかし、電源電圧Vspの変化が急過ぎると、帰還動作が追随できずに各FETがオフしてしまって電流源3内に電流が流れなくなることがある。
【0044】
本実施形態では、前述したように、スッチング素子21が、このような「急減」時に導通状態となることによって、電流源3内で電流を流れさせて、電流源3を第1動作点での動作に復帰させる。そのため、スイッチング素子21は、一対のp型FET30pをオフ状態にさせるような電源電圧Vspの急減時に導通状態となることが好ましい。例えば、スイッチング素子21を構成するp型FET2pが一対のp型FET30p及び一対のn型FET30nと略同じ閾値電圧、又は低い閾値電圧であることが、好ましいことがある。
【0045】
キャパシタ22の容量値は、例えば、電源電圧Vspの急減による電流源3内の電流の停止後に、検知回路2の作用により再度電流が流れ始めるまでトランジスタ42を導通状態に維持させ得る程度の時定数をp型FET2pのオン抵抗と共にもたらすような値に設定される。
【0046】
<起動回路の動作>
前述したように、本実施形態の検知回路1は起動回路4を含んでいる。起動回路4は、電源電圧Vspの印加時に、電流が流れない第2動作点での動作に電流源3が留まることを阻んで電流源3を起動させる。
図1の電流源回路1に電源電圧Vspが印加されると、トランジスタ42のゲート42aの電位は、キャパシタ41の容量と、トランジスタ42のゲート容量、及びトランジスタ43のドレイン-ソース間の寄生容量との分圧によって定まる。そのため、キャパシタ41の容量値を、そのような分圧によってトランジスタ42のゲート-ソース間電圧が閾値電圧を超えるように選択することによって、電源電圧Vspの印加時にトランジスタ42を導通状態にすることができる。トランジスタ42が導通状態になると、前述したように、p型FET31pを通る電流が流れる。その結果、一対のp型FET30pそれぞれのゲート-ソース間電圧が増大し、電流源3内に電流が流れて電流源3が起動し、好ましくは第1動作点での動作を開始する。このように、起動回路4を含む検知回路2は、電源電圧Vspの印加時に、検知回路2内の寄生容量とキャパシタ41の容量との分圧によってトランジスタ42を導通状態にして、電流源3から電流を流出させることにより電流源3を起動させる。
【0047】
図1の電流源回路1及び検知回路2では、起動回路4は検知回路2に含まれている。しかし、電流源3を起動させる手段、特にキャパシタ41は検知回路2に含まれずに電流源3に備えられていてもよい。
図3A~
図3Cには、そのように電流源3がキャパシタ41(第2キャパシタ)を含んでいる電流源回路1の変形例が、それぞれ示されている。
【0048】
図3Aの例では、キャパシタ41は、電流源3の第2ゲートG2と低電位側電源線V2との間に接続されている。
図3Bの例では、キャパシタ41は、電流源3の第1ゲートG1と高電位側電源線V1との間に接続されている。そして
図3Cの例では、第1ゲートG1と第2ゲートG2との間にキャパシタ41が接続されている。なお、
図3A~
図3C、並びに、以下で参照される各図面において、
図1に示される構成要素と同様の構成要素には、
図1に付されている符号と同じ符号が付されるか適宜省略され、繰り返しとなる説明は適宜省略される。
【0049】
図3Aの例では、
図10の従来の起動回路910と同様に、電源電圧の印加時には、一対のp型FET30pそれぞれの寄生容量とキャパシタ41の容量との分圧によってp型FET31pのゲート-ソース間電圧が定まる。故に、キャパシタ41の容量値の適切な選択によって、電源電圧の印加時から一対のp型FET30pに電流を流して電流源3を起動することができる。
図3Bの例では、電源電圧の印加時には、一対のn型FET30nそれぞれの寄生容量とキャパシタ41の容量との分圧によってn型FET32nのゲート-ソース間電圧が定まる。故に、キャパシタ41の容量値の適切な選択によって、電源電圧の印加時から一対のn型FET30nに電流を流して電流源3を起動することができる。さらに、
図3Cの例では、電源電圧の印加時には、その印加前まで未充電であるキャパシタ41の作用によって、一対のn型FET30nの電位が、第2ゲートG2の電位に近い電位まで一時的に持ち上げられる。その結果、一対のn型FET30nに電流が流れ始めて電流源3が起動する。
【0050】
<検知回路の変形例>
図4A~
図4Cには、
図1の検知回路2の変形例をそれぞれ含む電流源回路1の変形例が示されている。
図4Aの例では、検知回路2は、スイッチング素子21の被制御極21cとトランジスタ42のゲート42aとの間に、バッファ回路51を含んでいる。バッファ回路51は、p型FET51pとn型FET51nとによって構成されるインバータタイプのバッファ回路である。p型FET51pのソースが高電位側電源線V1に接続されており、n型FET51nのソースは低電位側電源線V2に接続されている。p型FET51pのゲートとn型FET51nのゲートとが接続されてバッファ回路51の入力端を構成し、スイッチング素子21の被制御極21cに接続されている。一方、p型FET51pのドレインとn型FET51nのドレインとが接続されてバッファ回路51の出力端を構成し、トランジスタ42のゲート42aに接続されている。
【0051】
バッファ回路51がインバータタイプのバッファであるため、トランジスタ42にはp型FETが用いられ、そのソース42bは高電位側電源線V1に接続され、そしてそのドレイン42cは、電流源3の第1ゲートG1に接続されている。このように接続されているので、電源電圧の急減によってスイッチング素子21が導通状態になると、バッファ回路51の入力端が上昇してその出力端が低電位側電源線V2の電位VLと略同電位となり、トランジスタ42が導通状態となって第1ゲートG1の電位が上昇する。このように
図4Aの例では、トランジスタ42のドレイン42cはスイッチング素子21の導通状態への遷移によって第1ゲートG1の電位を上昇させる。その結果、一対のn型FET30nに電流が流れ、電流源3が、電流が流れない第2動作点での動作から復帰する。
【0052】
バッファ回路51によって、スイッチング素子21の導通状態への遷移に基づいてトランジスタ42を駆動する能力が高められる。すなわち、
図1の例では、スイッチング素子21の導通状態への遷移に基づいてトランジスタ42のゲート42を駆動する能力は、高電位側電源線V1の電位VHの変動の程度によって定まるスイッチング素子21の導通の程度に依存する。これに対して
図4Aの例ではバッファ回路51が含まれているので、n型FET51nが接続されている低電位側電源線V2の電位VLで、確実に、及び/又は、より強くトランジスタ42を駆動できることがある。例えば、電流源3の電流が停止しているにも関わらずスイッチング素子21が十分に導通していない状態でも、トランジスタ42を導通状態にして電流源3に電流を流し得ることがある。
【0053】
図4Bの例では、検知回路2は、スイッチング素子21の被制御極21cとトランジスタ42のゲート42aとの間に、二つのバッファ回路51を含んでいる。
図4Bのバッファ回路51は、それぞれ、
図4Aのバッファ回路51と同様に、p型FETとn型FETとによって構成されるインバータタイプのバッファ回路であり、高電位側電源線V1と低電位側電源線V2の間に接続されている。一方、このように二つのインバータタイプのバッファ回路が含まれているので、
図4Bの例では、
図1の例と同様に、トランジスタ42にはn型FETが用いられ、そのソース42bは低電位側電源線V2に接続され、そしてそのドレイン42cは、電流源3の第2ゲートG2に接続されている。二つのバッファ回路51によって、トランジスタ42を駆動する能力がいっそう高められる。このように検知回路2は、スイッチング素子21の被制御極21cとトランジスタ42のゲート42aとの間に、必要に応じて1以上の任意の数のバッファ回路を含んでいてもよい。
【0054】
図4Cの例では、検知回路2は、トランジスタ42のゲート42aと低電位側電源線V2との間に、
図1のトランジスタ43の代わりに抵抗44を含んでいる。
図4Cの検知回路2では、電源電圧の印加時には、未充電のキャパシタ41のへの充電電流で抵抗44に電流が流れると共に、トランジスタ42のゲート42aの電位が上昇してトランジスタ42が導通状態となる。一方、電源電圧の急減などが無く電流源3に電流が流れている間は、充電済みのキャパシタ41によってトランジスタ42のゲート42aと高電位側電源線V1との間がDC的に遮断されるため、トランジスタ42が遮断状態となって検知回路2の動作は電流源3に影響しない。そして、電源電圧が急減してスイッチング素子21が導通状態になると、スイッチング素子21から、抵抗44に電流が供給されると共に、トランジスタ42のゲート42aの電位が上昇する。そしてトランジスタ42が導通状態となって電流源3内に電流が流れ、電流源3が、電流が流れない第2動作点での動作から復帰する。このように、
図4Cのような構成の検知回路2においても、電流源3を正常動作に復帰させることができる。
【0055】
<第2実施形態>
図5A~
図5Cには、第2実施形態の電流源回路の各例が示されている。
図5A~
図5Cそれぞれに一例が示される本実施形態の電流源回路1bは、スイッチング素子21の被制御極21cが、電流源3の第1ゲートG1に直接接続されている点で、
図1や
図3A~
図3Cなどに例示の電流源回路1と異なる。すなわち、電流源回路1bが含む検知回路2bは、
図1などに例示の検知回路2が含むトランジスタ42、43、及びキャパシタ41を含んでいない。これらの点を除いて、本実施形態の電流源回路1bは、
図1などの第1実施形態の電流源回路1と同様の構成要素で同様に構成されている。従って、本実施形態における
図1などの第1実施形態と同様の構成要素やその作用についての説明は、適宜省略される。
【0056】
本実施形態において、電源電圧Vspが急減してスイッチング素子21が導通状態になると、キャパシタ22の放電電流は、スイッチング素子21の被制御極21cから電流源3内のn型FET32nに流れ込み、それと共に第1ゲートG1の電位が上昇する。このようにスイッチング素子21の被制御極21cは、スイッチング素子21の導通状態への遷移によって第1ゲートG1の電位を上昇させる。そのため、一対のn型FET30nがオン状態となって、電流源3内に電流が流れ、電流源3が、電流が流れない第2動作点での動作から復帰する。
図1などの第1実施形態では、トランジスタ42がバッファとしての機能も有し得るため、より大きな電流を電流源3内に流すことが可能であり、そのため検知回路2内や電流源3内の各FETの設計が容易なことがある。一方、第2実施形態の電流源回路1bは、第1実施形態の電流源回路1よりもトランジスタ42などの回路素子の数を削減し得るので、より安価で、且つ、より小さく実現されると考えられる。
【0057】
図5A~
図5Cにそれぞれ例示の電流源回路1b同士の間では、起動回路として作用するキャパシタ41の接続位置だけが異なっている。
図5Aの例では、キャパシタ41は、
図3Aの電流源回路1内のキャパシタ41と同様に、電流源3の第2ゲートG2と低電位側電源線V2との間に接続されている。
図5Bの例のキャパシタ41は、
図3Bの電流源回路1内のキャパシタ41と同様に、電流源3の第1ゲートG1と高電位側電源線V1との間に接続されている。そして
図5Cの例では、
図3Cの電流源回路1内のキャパシタ41と同様に、第1ゲートG1と第2ゲートG2との間にキャパシタ41が接続されている。
図5A~
図5Cにそれぞれ例示の本実施形態の電流源回路1b内のキャパシタ41も、
図3A~
図3Cを参照して説明された電流源回路1内のキャパシタ41と同様に作用し、電源電圧の印加時に電流源3を起動させることができる。
【0058】
<第3実施形態>
図6には、第3実施形態の電流源回路の一例である電流源回路1cが示されている。電流源回路1cは、第3実施形態の検知回路の一例である検知回路2cを含んでいる。検知回路2cは、第1実施形態の検知回路2と同様に、スイッチング素子21、キャパシタ(第1キャパシタ)22、抵抗23、キャパシタ(第2キャパシタ)41、トランジスタ42(第1トランジスタ)、及びトランジスタ43(第2トランジスタ)を含んでいる。キャパシタ22と抵抗23は、ローパスフィルタを構成しており、スイッチング素子21は、制御極21a、及び制御極21aの状態に応じて互いの間の電気的な接続状態を変えられる二つの被制御極(被制御極21b及び被制御極21c)を備えている。トランジスタ42は、制御極42a、被制御極42b(第1被制御極)、及び被制御極42c(第2被制御極)を備えている。トランジスタ43も、制御極43a、被制御極43b(第1被制御極)、及び被制御極43c(第2被制御極)を含んでいる。
【0059】
しかし、本実施形態では、スイッチング素子21はn型FET2nからなり、スイッチング素子21の制御極21aはn型FET2nのゲートであり、被制御極21b及び被制御極21cは、それぞれ、n型FET2nのソース及びドレインである。n型FET2nのバックゲートはn型FET2nのソースである被制御極21bに接続されている。n型FET2nのゲートは低電位側電源線V2に接続されている。キャパシタ22は、n型FET2nのソースと、n型FET2nのゲートとは接続されていない高電位側電源線V1との間に接続されている。抵抗23は、n型FET2nのソースと低電位側電源線V2との間に接続されている。すなわち、キャパシタ22と抵抗23によって構成されるローパスフィルタの入力が低電位側電源線V2に接続されており、出力がn型FET2nのソースに接続されている。
【0060】
本実施形態では、トランジスタ42、43は、それぞれp型FETである。トランジスタ42の制御極42a、被制御極42b、及び被制御極42cは、それぞれ、
図6の例においてp型FETであるトランジスタ42のゲート、ソース、及びドレインであり、以下では、単に「ゲート42a」、「ソース42b」、及び「ドレイン42c」とも称される。同様に、トランジスタ43の制御極43a、被制御極43b、及び被制御極43cは、それぞれ、単に「ゲート43a」、「ソース43b」、及び「ドレイン43c」とも称される。
【0061】
キャパシタ41は、トランジスタ42のゲート42a、スイッチング素子21の被制御極21c(n型FET2nのドレイン)、及びトランジスタ43のドレイン43cと、低電位側電源線V2と、の間に接続されている。トランジスタ43は、トランジスタ42のゲート42aとソース42bとの間に接続されており、トランジスタ43のドレイン43cはトランジスタ42のゲート42aに接続されている。トランジスタ42のソース42b及びトランジスタ43のソース43bは、共に、高電位側電源線V1に接続されている。
【0062】
トランジスタ43のゲート43aは、電流源3の第2ゲートG2に接続されている。そして、トランジスタ42のドレイン42cは、電流源3の第1ゲートG1に接続されている。以下に説明されるように、トランジスタ42のドレイン42cは、スイッチング素子21の導通状態への遷移によって第1ゲートG1の電位を上昇させる。
【0063】
電流源3内に電流が流れている場合、電流源3の第2ゲートG2にゲート43aが接続されているトランジスタ43も導通状態となり、そのため、トランジスタ42がオフ状態となる。そのため、検知回路2cの動作は電流源3に影響しない。
【0064】
そして、電源電圧Vspが急減(例えば低電位側電源線V2の電位VLが急上昇)するとキャパシタ22は急減前の電源電圧Vspに略等しい端子間電圧を維持するので、n型FET2n(スイッチング素子21)のゲート-ソース間電圧が閾値電圧以上になるほど電位VLが上昇すると、n型FET2nが導通状態へと遷移する。またこのとき、電流が流れていない電流源3の第2ゲートG2にゲート43aが接続されているトランジスタ43もオフ状態にあるため、トランジスタ42のゲート42aの電位は下降する。
【0065】
そしてトランジスタ42のゲート-ソース間電圧が閾値電圧以上になると、トランジスタ42が導通状態となって、高電位側電源線V1からトランジスタ42を通って、n型FET32nに電流が流れ込む。このように
図6の例の検知回路2cでは、スイッチング素子21は、電源電圧Vspの急減時に二つの被制御極21b、21c間を遮断状態から導通状態にすることによって電流源3に電流を流入させる。その結果、電流源3の第1ゲートG1の電位が上昇すると共に、一対のn型FET30nそれぞれのゲート-ソース間電圧が増大し、電流源3内に電流が流れ、電流源3の動作が、期待される第1動作点に戻り、正常動作に復帰する。
【0066】
一方、n型FET2n(スイッチング素子21)は、導通状態に遷移した後、キャパシタ22の放電に伴って低下するそのゲート-ソース間電圧が閾値電圧を下回ると遮断状態に復帰する。また、電流源3に電流が流れると、一対のp型FET30pのゲート-ソース間電圧が上昇するため、トランジスタ43がオン状態となり、トランジスタ42が遮断状態となって検知回路2cの動作は電流源3に影響しなくなる。その後もトランジスタ43は、オン状態のまま線形領域で動作するが、電源電圧Vspに変動がなければトランジスタ43には電流は流れない。
【0067】
図6の検知回路2cは、高電位側電源線V1の電位VHが急低下したときも、上述した低電位側電源線V2の電位VLが急上昇したときと同様に動作する。すなわち、電位VHが急低下すると、急低下前の端子間電圧を維持するキャパシタ22の作用でn型FET2nは導通状態へと遷移し、トランジスタ42のゲート42aの電位が下降してトランジスタ42が導通状態となる。その後も、上述した電位VLが急上昇したときと同様に、電流源3に流入する電流がn型FET32nに流れ、電流源3が第1動作点での動作に復帰する。n型FET2nは、キャパシタ22の放電に伴って遮断状態に復帰する。また電流源3に電流が流れるとトランジスタ42は遮断状態となって検知回路2cの動作は電流源3に影響しなくなる。
【0068】
検知回路2cのトランジスタ42、43、及びキャパシタ41も、第1実施形態の検知回路2に含まれる起動回路4と同様に動作する、電流源3のための起動回路を構成する。すなわち、
図6の電流源回路1cに電源電圧Vspが印加されると、トランジスタ42のゲート42aの電位は、キャパシタ41の容量と、トランジスタ42のゲート容量、及びトランジスタ43のドレイン-ソース間の寄生容量との分圧によって定まるため、キャパシタ41の容量値を適切に選択することによって、電源電圧Vspの印加時にトランジスタ42を導通状態にすることができる。そして、導通状態のトランジスタ42を通って電流源3に電流が流入し、その結果、一対のn型FET30nそれぞれのゲート-ソース間電圧が増大し、電流源3内に電流が流れて電流源3が起動する。
【0069】
なお、本実施形態においても、起動回路の役割を担うキャパシタ41は、検知回路2c内に設けられなくてもよい。すなわち、キャパシタ41は、第1実施形態における
図3A~
図3Cの例のように、電流源3の第2ゲートG2と低電位側電源線V2との間、第1ゲートG1と高電位側電源線V1との間、又は、第1ゲートG1と第2ゲートG2との間に接続されていてもよい。
【0070】
<第4実施形態>
図7には、第4実施形態の電流源回路の一例である電流源回路1dが示されている。電流源回路1dは、第4実施形態の検知回路の一例である検知回路2dを含んでいる。本実施形態の電流源回路1dは、トランジスタ42、及びトランジスタ43が含まれておらず、そのためスイッチング素子21の被制御極21cが電流源3の第2ゲートG2に直接接続されている点で、
図6に例示の第3実施形態の電流源回路1cと異なる。これらの点を除いて、本実施形態の電流源回路1dは
図6の第3実施形態の電流源回路1cと同様の構成要素で同様に構成されているので、本実施形態における第3実施形態と同様の構成要素やその作用についての説明は、適宜省略される。
【0071】
本実施形態において、電源電圧Vspが急減してスイッチング素子21が導通状態になると、電流源3内のp型FET31pを通って電流源3から電流が流出し、スイッチング素子21の被制御極21cを通ってキャパシタ22に流れ込む。それと共に第2ゲートG2の電位が下降する。このように本実施形態では、スイッチング素子21の被制御極21cは、スイッチング素子21の導通状態への遷移によって第2ゲートG2の電位を下降させる。そのため、一対のp型FET30pがオン状態となって、電流源3内に電流が流れ、電流源3が第2動作点での動作から復帰する。第4実施形態の電流源回路1dは、第3実施形態の電流源回路1cよりも、安価で、且つ、小さく実現されると考えられる。
【0072】
なお、
図7の電流源回路1dでは、
図5Aの例と同様に、起動回路として作用するキャパシタ41は、電流源3の第2ゲートG2と低電位側電源線V2との間に接続されている。しかし、本実施形態においても、キャパシタ41は、
図5Bの例と同様に、電流源3の第1ゲートG1と高電位側電源線V1との間に接続されていてもよく、
図5Cの例と同様に、第1ゲートG1と第2ゲートG2との間に接続されていてもよい。
【0073】
<第3実施形態の変形例>
図8A~
図8Cには、前述した第3実施形態の
図6の検知回路2cの変形例をそれぞれ含む電流源回路1cの変形例が示されている。
図8Aの例の検知回路2cは、
図4Aの例と同様に、スイッチング素子21の被制御極21cとトランジスタ42のゲート42aとの間に、バッファ回路51を含んでいる。バッファ回路51は、
図4Aの例と同様にp型FET51pとn型FET51nとによって構成されるインバータタイプのバッファ回路であって、高電位側電源線V1と低電位側電源線V2との間に接続されている。バッファ回路51がインバータタイプのバッファであるため、トランジスタ42にはn型FETが用いられ、そのソース42bは低電位側電源線V2に接続され、そしてそのドレイン42cは、電流源3の第2ゲートG2に接続されている。
【0074】
このように接続されているので、電源電圧の急減によってスイッチング素子21が導通状態になると、バッファ回路51の入力端(p型FET51p及びn型FET51nのゲート)が下降してその出力が高電位側電源線V1の電位VHと略同電位となり、トランジスタ42が導通状態となって第2ゲートG2の電位が下降する。その結果、一対のp型FET30pに電流が流れ、電流源3が、電流が流れない第2動作点での動作から復帰する。
図8Aにおいても、
図4Aの例と同様に、バッファ回路51によって、スイッチング素子21の導通状態への遷移に基づいてトランジスタ42を駆動する能力が高められる。
【0075】
図8Bの例では、検知回路2cは、
図4Bの例と同様に、p型FETとn型FETとによって構成される二つのインバータタイプのバッファ回路51を含んでいる。そして、
図8Bの例では、
図6の例と同様に、トランジスタ42にはp型FETが用いられ、そのソース42bは高電位側電源線V1に接続され、そしてそのドレイン42cは、電流源3の第1ゲートG1に接続されている。二つのバッファ回路51によって、トランジスタ42を駆動する能力がいっそう高められる。
【0076】
図8Cの例では、検知回路2cは、
図4Cの例と同様に、トランジスタ42のゲート42aと高電位側電源線V1との間に抵抗44を含んでいる。
図8Cの検知回路2cでは、電源電圧の印加時には、未充電のキャパシタ41のへの充電電流で抵抗44に電流が流れると共に、トランジスタ42のゲート42aの電位が下降してトランジスタ42が導通状態となる。一方、電源電圧の急減などが無く電流源3に電流が流れている間は、充電済みのキャパシタ41によってトランジスタ42のゲート42aと低電位側電源線V2との間がDC的に遮断されるため、トランジスタ42が遮断状態となって検知回路2cの動作は電流源3に影響しない。そして、電源電圧が急減してスイッチング素子21が導通状態になると、高電位側電源線V1から抵抗44を通ってスイッチング素子21に電流が流れるため、トランジスタ42のゲート42aの電位が下降する。そしてトランジスタ42が導通状態となって電流源3内に電流が流れ、電流源3が、電流が流れない第2動作点での動作から復帰する。
【0077】
各図面を参照して、各実施形態の電源変動検知回路及び電流源回路が説明されたが、各実施形態の電源変動検知回路及び電流源回路は、各図面に示される構成を有するもの、又は、上記において説明された構成や作用を有するものに限定されない。例えば、
図5A~5C又は
図8A~
図8Cに示される検知回路1の変形例又は検知回路1cの変形例においても、キャパシタ41が、電流源3の第2ゲートG2と低電位側電源線V2との間、第1ゲートG1と高電位側電源線V1との間、又は、第1ゲートG1と第2ゲートG2との間に接続されていてもよい。
【0078】
また、スイッチング素子21は、n型FET又はp型FETでなくてもよい。スイッチング素子は、制御極と二つの被制御極とを有していて制御極と一方の被制御極との間の電位差で二つの被制御極の間の導通と遮断の状態を変化させ得る、任意の個別回路素子、若しくは複数の回路素子の組み合わせ、によって構成され得る。また、各実施形態の検知回路を構成するトランジスタ42、43は、必ずしもn型FET又はp型FETでなくてもよく、接合型(バイポーラ)トランジスタであってもよい。例えば、各図面に示されるp型FET及びn型FETが、それぞれ、pnpトランジスタ及びnpnトランジスタに置き換えられてもよい。さらに、電流源3が、カレントミラーを構成する二つのpnpトランジスタと、二つのnpnトランジスタとによって構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1、1b、1c、1d 電流源回路
2、2b、2c、2d 電源変動検知回路(検知回路)
21 スイッチング素子
21a 制御極(ゲート)
21b 被制御極(ソース)
21c 被制御極(ドレイン)
2p p型電界効果トランジスタ
2n n型電界効果トランジスタ
22 キャパシタ(第1キャパシタ)
23 電気抵抗
3 電流源
30p 一対のp型電界効果トランジスタ
30n 一対のn型電界効果トランジスタ
4 起動回路
41 キャパシタ(第2キャパシタ)
42 トランジスタ(第1トランジスタ)
42a 制御極(ゲート)
42b 被制御極(第1被制御極、ソース)
42c 被制御極(第2被制御極、ドレイン)
43 トランジスタ(第2トランジスタ)
51 バッファ回路
G1 第1ゲート
G2 第2ゲート
Vsp 電源電圧
V1 高電位側電源線
V2 低電位側電源線