(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044390
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】スクリューコンベア用ホッパーとそれを備えたスクリューコンベア
(51)【国際特許分類】
B65D 88/26 20060101AFI20240326BHJP
B65G 65/46 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B65D88/26 C
B65G65/46 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149881
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】志村 雅利
(72)【発明者】
【氏名】井上 正行
【テーマコード(参考)】
3E170
3F075
【Fターム(参考)】
3E170AA15
3E170AB11
3E170VA13
3E170VA20
3E170WC11
3E170WC17
3E170WC20
3E170WD10
3F075AA08
3F075BA01
3F075CA04
3F075CA06
3F075CC03
3F075CC05
3F075DA06
(57)【要約】
【課題】ブリッジやラットホールの発生を確実に防止できるとともに、安価に製造することが可能なスクリューコンベア用ホッパーとそれを備えたスクリューコンベアを提供する。
【解決手段】スクリューコンベア用ホッパー1aはスクリュー8の回転中心8cが略水平となるように設置されたスクリューコンベア7の供給口10aに設置されるものであり、内部に投入された粉体Pをスクリューコンベア7の供給口10aに供給するホッパー本体2を備えている。また、ホッパー本体2の内部には、スクリュー8の回転中心8cと交差するとともに下端3aがスクリュー8の羽根8bの間に挿入された状態でウレタン製の第1の弾性板3がスクリューコンベア7による粉体Pの送り方向の上流側となる箇所に設置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリューによって粉体を輸送するスクリューコンベアの供給口に設置されるスクリューコンベア用ホッパーであって、
前記粉体を前記供給口に供給するホッパー本体と、
そのホッパー本体内に前記スクリューの回転中心と交差するように設置され可撓性を有する第1の弾性板と、を備え、
前記第1の弾性板は、下端が前記スクリューの羽根間に挿入されるように配置されていることを特徴とするスクリューコンベア用ホッパー。
【請求項2】
前記第1の弾性板の下流側に設置され可撓性を有する第2の弾性板と、
この第2の弾性板と前記第1の弾性板を連結する棒状又は板状の連結部材と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のスクリューコンベア用ホッパー。
【請求項3】
前記連結部材は、前記第2の弾性板との連結箇所が前記第1の弾性板との連結箇所よりも上方に位置するように水平方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項2に記載のスクリューコンベア用ホッパー。
【請求項4】
前記第1の弾性板は、ウレタン製であることを特徴とする請求項1に記載のスクリューコンベア用ホッパー。
【請求項5】
前記第2の弾性板は、ウレタン製であることを特徴とする請求項2に記載のスクリューコンベア用ホッパー。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載されたスクリューコンベア用ホッパーを備えることを特徴とするスクリューコンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の輸送に用いられるスクリューコンベアの上方に設置されるホッパーに係り、特に、ブリッジやラットホールの発生を防ぐことが可能なスクリューコンベア用ホッパーとそれを備えたスクリューコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
粉体などの輸送に用いられるスクリューコンベアは、螺旋状の羽根がスクリュー軸に取り付けられた構造をしており、その上方には、粉体が投入されるホッパーが設置されている。投入された粉体は、ホッパーの排出口において粒子同士が「ブリッジ」と呼ばれるアーチ構造を形成することにより排出口を閉塞したり、排出口の真上の粉体のみが排出され、その周りの粉体が取り残される結果、「ラットホール」という縦穴を形成したりすることがある。
【0003】
このような課題を解決するものとして、例えば、特許文献1には、「材料供給装置」という名称で、ホッパーの側壁を歪ませることによりブリッジやラットホールの発生を防ぐ装置に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、少なくとも一部が可撓性を有する材質で形成されているホッパーの側壁に対し、間欠的に接触して撓ませるローラを有する撓み発生装置を備えていることを特徴とする。
このような構造によれば、可撓性を有する側壁をローラによって撓ませることによりホッパー内の材料の流動が促されるため、ブリッジやラットホールが発生し難い。また、ローラが側壁に沿って回転し、両者の間に発生する摩擦が最小に抑えられるため、側壁の摩耗を少なくしてホッパーの長寿命化を図ることができる。
【0004】
また、特許文献2には、「ブリッジ防止機能付きホッパー」という名称で、内部に投入された粉体によるブリッジの形成を防ぐことが可能なホッパーに関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された発明は、上部に投入口を有し、下部にスクリュウコンベアが配置されたホッパーにおいて、スクリュウコンベアの上部に、その回転軸と平行に立起されるとともに、スクリュウコンベアの回転により水平軸を中心に揺動可能に、スクリュウコンベアの回転軸と直交する水平軸に一部が枢止された仕切り板を備えたことを特徴とする。
このような構造によれば、仕切り板がスクリュウコンベアの回転軸と平行に立起されており、スクリュウコンベアの送りによる粉体の圧縮力の影響を受けないため、水平軸を中心としてスムーズに揺動する。そして、この仕切り板の上下動により、粉体の流動性が確保されるため、ブリッジの発生を防止することができる。
【0005】
さらに、特許文献3には、「粉状物のホッパー装置」という名称で、給送装置内に粉状物を確実に落下させることができるホッパーに関する考案が開示されている。
特許文献3に開示された考案は、ホッパー内の中間部に上端が固定され、下端に弾性材からなるストライカーが取り付けられたコイルバネを備え、ホッパーの下部に設置されたスクリューにストライカーが接触するようにコイルバネが垂下された構造となっている。
このような構造によれば、スクリューの回転に伴って、コイルバネの下端がスクリューの前後方向へ往復変位することで、ホッパー内の下部にある粉状物が撹拌されるため、ブリッジ等が発生し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-7131号公報
【特許文献2】特開2009-35372号公報
【特許文献3】実開昭53-138390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された発明では、装置の構造が大掛かりで複雑なものとなるため、製造コストが高いことに加え、既存の設備に適用できないという課題があった。
また、特許文献2に開示された発明では、仕切り板がスクリュウコンベアの回転軸と平行に設置されており、粉体が仕切り板の両側に配置される構造であることから、仕切り板の前方にある粉体によって仕切り板の揺動が阻害されるという事態は起こり得ないものの、仕切り板を挟んでその両側にそれぞれラットホールが形成されてしまうおそれがあった。
さらに、特許文献3に開示された考案では、ストライカーが前方へ変位している間にストライカーの後方に粉状物が流れ込むことでストライカーの後方への移動が阻害されてしまい、ストライカーの前後方向への往復変位によって粉状物が撹拌されるという作用が発揮されなくなるという課題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、ブリッジやラットホールの発生を確実に防止できるとともに、安価に製造することが可能なスクリューコンベア用ホッパーとそれを備えたスクリューコンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明は、スクリューによって粉体を輸送するスクリューコンベアの供給口に設置されるスクリューコンベア用ホッパーであって、粉体を供給口に供給するホッパー本体と、そのホッパー本体内にスクリューの回転中心と交差するように設置され可撓性を有する第1の弾性板と、を備え、第1の弾性板は、下端がスクリューの羽根間に挿入されるように配置されていることを特徴とする。なお、第1の発明において、「第1の弾性板がスクリューの回転中心と交差する」とは、スクリューの回転中心が第1の弾性板を貫通している状態ではなく、第1の弾性板の下方への延長平面がスクリューの回転中心と交差するとの意である。
上記構造の第1の発明において、第1の弾性板が内部に設置されたホッパー本体に粉体が投入されると、この粉体から第1の弾性板は下方へ押し付けられるような力を受けるため、第1の弾性板は粉体に押されて下方へ移動し、スクリューの羽根の最も低い箇所に下端が配置される。ただし、第1の弾性板の下端がそのような場所に配置されない場合には、第1の弾性板を手で持って移動させるなどして、その設置場所を調整することが望ましい。
【0010】
スクリューの羽根の最も低い箇所に第1の弾性板の下端が配置された状態でスクリューが回転すると、第1の弾性板の下端はスクリューの羽根によって押し上げられる。第1の弾性板は粉体の中に設置されており、自由に移動し難い状態となっているが、第1の弾性板は可撓性を有することから、下端が持ち上げられるように弾性変形して全体が折れ曲がった形状になる。
この状態からスクリューが更に回転すると、第1の弾性板の下端はスクリューの羽根の最も高い位置まで押し上げられた後、スクリューの回転に伴って下端が羽根から離れることにより第1の弾性板の弾性変形が回復して元の形状に戻るため、第1の弾性板の下端は最も低い位置に再び移動する。
【0011】
上述したように、第1の弾性板が変形すると、第1の弾性板の前側にある粉体が第1の弾性板によって前方へと押しやられる。その後、第1の弾性板の変形が回復すると、前方へ移動した粉体がそれまで存在していた場所に別の粉体が上方から流れ込む。つぎに、この別の粉体が第1の弾性板の変形により前方へ押しやられた後、第1の弾性板の変形の回復に伴って上述の別の粉体がそれまで存在していた場所に対し、更に別の粉体が上方から流れ込む。このように、第1の発明においては、第1の弾性板がスクリューの回転に連動して繰り返し変形することで、第1の弾性板の前側とその上方に存在する粉体が周期的に移動するという作用を有する。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、第1の弾性板の下流側に設置され可撓性を有する第2の弾性板と、この第2の弾性板と第1の弾性板を連結する棒状又は板状の連結部材と、を備えていることを特徴とする。
上記構造の第2の発明において、連結部材を介して連結された第1の弾性板と第2の弾性板が内部に設置されたホッパー本体に粉体が投入されると、第1の発明の場合と同様に第1の弾性板の下端はスクリューの羽根の最も低い箇所に配置される。
【0013】
この状態でスクリューが回転すると、第1の弾性板は下端がスクリューの羽根によって押し上げられるため、第1の発明の場合と同様に下端が持ち上げられるように弾性変形して全体が折れ曲がった形状になる。このとき、第2の弾性板は連結部材を介して第1の弾性板に連結されているため、第1の弾性板の変形により前方へ押されるような力を受ける。その結果、第2の弾性板は下端が持ち上げられるように弾性変形して全体が折れ曲がった形状になるか、又は変形することなく、前方へ移動する。
この状態からスクリューが更に回転すると、第1の弾性板の下端はスクリューの羽根の最も高い位置まで押し上げられた後、スクリューの回転に伴って下端が羽根から離れることにより第1の弾性板の弾性変形が回復して元の形状に戻るため、下端が最も低い位置に再び移動する。このとき、第2の弾性板は連結部材によって後方へ引っ張られるため、弾性変形が回復して元の形状に戻るか、又は元々変形していない場合には元の位置に移動する。
【0014】
このように第2の発明では、第1の弾性板の変形に加え、第2の弾性板がスクリューの回転に連動して一定の周期で繰り返し変形したり、移動したりする。そして、第1の弾性板の変形に伴って第2の弾性板が変形したり、移動したりすると、第1の弾性板と第2の弾性板の前側にある粉体は第1の弾性板及び第2の弾性板によってそれぞれ前方へと押しやられ、第2の弾性板の後側に上方から別の粉体が流れ込む。また、第1の弾性板の変形が回復すると、前方へ移動した粉体がそれまで存在していた場所に別の粉体が上方から流れ込む。
このように、第2の発明では、第1の弾性板の変形に加えて第2の弾性板が変形したり、移動したりすることにより、第1の弾性板の前側とその上方に存在する粉体及び第2の弾性板の後側及びその上方に存在する粉体が周期的に移動するという作用を有する。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、連結部材は、第2の弾性板との連結箇所が第1の弾性板との連結箇所よりも上方に位置するように水平方向に対して傾斜していることを特徴とする。
連結部材が水平に設置されている場合、第2の弾性板が連結部材を介して第1の弾性板から受ける力には鉛直上向きの成分が含まれないため、第2の弾性板は第1の弾性板から受ける力によって水平方向へのみ移動する。
一方、上記構造の第3の発明においては、第2の弾性板が連結部材を介して第1の弾性板から受ける力に鉛直上向きの成分が含まれるため、第2の弾性板は第1の弾性板から受ける力によって水平方向へ移動するだけでなく、鉛直方向と平行に上方へも移動する。このとき、第2の弾性板とホッパー本体やスクリューコンベアのハウジングの内壁面の間に存在する粉体は第1の弾性板から受ける力の鉛直上向きの成分の作用によって第2の弾性板が水平方向へ移動したり、変形したりする際の支障とならないため、第2の弾性板は鉛直方向と平行に上方へ移動し易く、また、変形もし易い。
すなわち、第3の発明では、第2の発明において第2の弾性板との連結箇所が第1の弾性板との連結箇所よりも上方に位置するように連結部材が水平方向に対して傾斜して設置されていることにより、第2の発明の作用に加え、第1の弾性板から連結部材を介して第2の弾性板が力を受けた場合に、第2の弾性板の移動や変形が容易になるという作用を有する。
【0016】
第4の発明は、第1の発明において、第1の弾性板は、ウレタン製であることを特徴とする。
上記構造の第4の発明においては、第1の発明の作用に加え、可撓性を有するという特性が第1の弾性板に対して安価に付与されるという作用を有する。
【0017】
第5の発明は、第2の発明において、第2の弾性板は、ウレタン製であることを特徴とする。
上記構造の第5の発明においては、第2の発明の作用に加え、可撓性を有するという特性が第2の弾性板に対して安価に付与されるという作用を有する。
【0018】
第6の発明であるスクリューコンベアは、第1の発明乃至第5の発明のいずれかに係るスクリューコンベア用ホッパーを備えることを特徴とする。
上記構造の第6の発明においては、第1の発明乃至第5の発明のいずれかに係るスクリューコンベア用ホッパーと同様の作用を有する。
【発明の効果】
【0019】
ラットホールやブリッジはホッパー本体の内部において粉体の流動性が部分的に低下することによって形成されるが、第1の発明では、第1の弾性板の前側とその上方に存在する粉体が周期的に移動するため、粉体の流動性が低下し難い。したがって、第1の発明によれば、ラットホールやブリッジの形成を確実に防ぐことができる。また、第1の発明では、第1の弾性板がスクリューの回転に連動して変形することから、第1の弾性板を変形させる機構を新たに設ける必要がない。したがって、第1の発明によれば、製造コストを安くすることが可能である。
【0020】
第2の発明では、第1の弾性板の変形に加えて第2の弾性板が変形したり、移動したりすることにより、第1の弾性板の前側とその上方に存在する粉体及び第2の弾性板の後側及びその上方に存在する粉体が周期的に移動する。すなわち、第2の発明によれば、第1の発明の場合よりも広範囲に亘って粉体の周期的な移動が起こるためラットホールやブリッジの形成を確実に防ぐことができるという第1の発明の効果がより一層発揮される。
【0021】
第3の発明によれば、粉体の周期的な移動がより広範囲に亘って発生し易くなるため、ラットホールやブリッジの形成を効率良く阻止することができる。
【0022】
第4の発明によれば、可撓性を有する第1の弾性板を安価に実現できるため、第1の発明の効果に加え、製造コストを安く抑えることができるという効果を奏する。
【0023】
第5の発明によれば、可撓性を有する第2の弾性板を安価に実現できるため、第2の発明の効果に加え、製造コストを安く抑えることができるという効果を奏する。
【0024】
第6の発明によれば、第1の発明乃至第5の発明のいずれかに係るスクリューコンベア用ホッパーと同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】(a)乃至(c)はそれぞれ本発明の第1の実施の形態に係るスクリューコンベア用ホッパーの正面図、右側面図及び上面図であり、(d)は同図(c)におけるA-A線矢視断面図である。
【
図2】(a)及び(b)は
図1(d)の一部を拡大して示した図である。
【
図3】(a)は本発明の第2の実施の形態に係るスクリューコンベア用ホッパーの上面図であり、(b)は同図(a)におけるB-B線矢視断面図である。
【
図4】(a)は
図3(a)及び
図3(b)に示した第1の弾性板と第2の弾性板が連結部材を介して連結された状態を示した斜視図であり、(b)は同図(a)に示した第1の弾性板、第2の弾性板及び連結部材を一方の連結部材の中心を通る鉛直平面によって切断した状態を示した断面図であり、(c)は同図(a)における連結部材の変形例を示した図である。
【
図5】(a)及び(b)は
図3(b)の一部を拡大して示した図である。
【
図6】(a)及び(b)はそれぞれ
図4(a)に示した第1の弾性板、第2の弾性板及び連結部材の側面図並びにそれらの変形例を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のスクリューコンベア用ホッパーとそれを備えたスクリューコンベアの構造とその作用及び効果について
図1乃至
図6を用いて具体的に説明する。
なお、本発明のスクリューコンベア用ホッパーは、粉体の輸送などに用いられるスクリューコンベアに取り付けられて使用されるものである。したがって、本明細書では、実際に本発明のスクリューコンベア用ホッパーがスクリューコンベアに取り付けられた状態を想定して、「上端」や「下端」、あるいは「下方」などの表現を用いている。すなわち、この「上」又は「下」という言葉は、鉛直上下方向における上方側又は下方側をそれぞれ意味している。
また、スクリューコンベアによる粉体の送り方向を基準として「前側」や「後側」、あるいは「前方」などの表現を用いている。すなわち、この「前」又は「後」という言葉は、スクリューコンベアによる粉体の送り方向における前側又は後側をそれぞれ意味している。
【実施例0027】
図1(a)乃至
図1(c)はそれぞれ本発明の第1の実施の形態に係るスクリューコンベア用ホッパーの正面図、右側面図及び上面図であり、
図1(d)は
図1(c)におけるA-A線矢視断面図である。また、
図2(a)及び
図2(b)は
図1(d)の一部を拡大して示した図である。
なお、
図1(d)、
図2(a)及び
図2(b)ではスクリューの軸及び羽根並びにモータについては外観表示としている。また、
図1及び
図2では図が煩雑になるのを避けるため、1本のボルトと1個のナットについてのみ符号を付している。
【0028】
図1(a)乃至
図1(d)に示すように、本発明の第1の実施の形態に係るスクリューコンベア用ホッパー1aはスクリュー8の回転中心8cが略水平をなすように設置されたスクリューコンベア7の供給口10aに設置されるものであり、内部に投入された粉体Pをスクリューコンベア7の供給口10aに供給するホッパー本体2を備えている。
また、ホッパー本体2の内部には、スクリュー8の回転中心8cと交差するとともに下端3aがスクリュー8の羽根8bの間に挿入された状態でウレタン製の第1の弾性板3がスクリューコンベア7による粉体Pの送り方向の上流側となる箇所に設置されている。すなわち、第1の弾性板3の上端3bと下端3aは、いずれも供給口10aの中央(粉体Pの送り方向に見た場合の中央)よりも上流側に配置されている。
なお、本願発明において、第1の弾性板3がスクリュー8の回転中心8cと交差するとは、スクリュー8の回転中心8cが第1の弾性板3を貫通している状態ではなく、第1の弾性板3を下方へ延長した平面がスクリュー8の回転中心8cと交差するとの意である。また、スクリューコンベア7のスクリュー8は、上方に開口する供給口10a及び下方に開口する排出口10bを有するハウジング10の内部に設置されており、羽根8bが螺旋状に取り付けられた軸8aにはモータ9が接続されている。そして、スクリューコンベア用ホッパー1aは、スクリューコンベア7の供給口10aの上端に設けられたフランジ10cとホッパー本体2のフランジ2aをボルト4aとナット4bを用いて締結することによってスクリューコンベア7に連結される構造となっている。
【0029】
上記構造のスクリューコンベア用ホッパー1aにおいて、第1の弾性板3が内部に設置されているホッパー本体2に粉体Pを投入すると、第1の弾性板3は粉体Pから下方へ押し付けられるような力を受ける。このとき、第1の弾性板3は粉体Pに押されて下方へ移動し、
図1(d)又は
図2(a)に示すようにスクリュー8の羽根8bの最も低い箇所に下端3aが配置される。
なお、
図1(d)又は
図2(a)に示したような状態にならない場合には、下端3aがスクリュー8の羽根8bの最も低い箇所に配置されるように第1の弾性板3を手で持って移動させるなどして、その設置場所を調整しても良い。
この状態でスクリュー8が回転すると、第1の弾性板3の下端3aがスクリュー8の羽根8bによって押し上げられる。第1の弾性板3は粉体Pの中に設置されており、自由に移動し難い状態となっているが、ウレタン製の第1の弾性板3は可撓性を有することから、第1の弾性板3は下端3aが持ち上げられるように弾性変形して全体が折れ曲がった形状になる。この状態からスクリュー8が更に回転すると、第1の弾性板3の下端3aは
図2(b)に示すようにスクリュー8の羽根8bの最も高い位置まで押し上げられた後、スクリュー8の回転に伴って下端3aが羽根8bから離れることにより第1の弾性板3の弾性変形が回復して元の形状に戻るため、下端3aが
図2(a)に示したような最も低い位置に再び移動する。
【0030】
このように、スクリューコンベア用ホッパー1aでは、第1の弾性板3がスクリュー8の回転に連動して一定の周期で繰り返し変形する。そして、第1の弾性板3が
図2(a)に示した状態から
図2(b)に示した状態に変形した場合、第1の弾性板3の前側にある粉体Pは第1の弾性板3によって前方へと押しやられる。その後、第1の弾性板3の変形が回復すると、前方へ移動した粉体Pがそれまで存在していた場所に別の粉体Pが上方から流れ込む。つぎに、この別の粉体Pが第1の弾性板3の変形により前方へ押しやられた後、第1の弾性板3の変形の回復に伴って上述の別の粉体Pがそれまで存在していた場所に対し、更に別の粉体Pが上方から流れ込む。
ラットホールやブリッジはホッパー本体2の内部において粉体Pの流動性が部分的に低下することによって形成されるが、上述のとおり、スクリューコンベア用ホッパー1aでは、第1の弾性板3の前側とその上方に存在する粉体Pが周期的に移動するため、粉体Pの流動性が低下し難い。したがって、スクリューコンベア用ホッパー1aによれば、ラットホールやブリッジの形成を確実に防ぐことができる。また、スクリューコンベア用ホッパー1aでは、第1の弾性板3はスクリュー8の回転に連動して変形することから、第1の弾性板3を変形させる機構を新たに設ける必要がない。したがって、スクリューコンベア用ホッパー1aは安価に製造することが可能である。
なお、スクリューコンベア用ホッパー1aを備えたスクリューコンベア7は、スクリューコンベア用ホッパー1aと同様の作用及び効果を有している。
【0031】
図1(d)又は
図2(a)では、第1の弾性板3が鉛直方向に対して傾いた状態に設置されているが、第1の弾性板3が鉛直方向と平行に設置されている場合でも同様に変形するため、ラットホールやブリッジの形成が阻止されるという上述の効果は同様に発揮される。
また、第1の弾性板3の後側に前側と同等の粉体Pが存在すると、後側の粉体Pが第1の弾性板3の下端3aが後方に移動する際の支障となり、第1の弾性板3の変形の回復が阻止されるおそれがある。したがって、第1の弾性板3の後側(スクリューコンベア7の上流側)に流れ込む粉体Pの量を制限するため、ホッパー本体2の内壁面2bと上端3b(
図1(d)を参照)の間が狭くなるように、スクリューコンベア用ホッパー1aでは第1の弾性板3がスクリュー8の上流側に設置されているのである。
【0032】
第1の弾性板3の後側に流れ込む粉体Pの量を制限するという観点から言えば、第1の弾性板3は上端3bがホッパー本体2の内壁面2bに接触するような状態でホッパー本体2の内部に設置されることが望ましい。
さらに、変形の繰り返しに伴って第1の弾性板3が前方へ移動してしまい、上端3bとホッパー本体2の内壁面2bとの間が広くなるという事態が発生しないように、第1の弾性板3の上端3bがホッパー本体2に固定された構造とすることもできる。ただし、第1の弾性板3の上端3bをホッパー本体2に固定する際に金属製の部材を用いた場合、粉体Pに金属粉などが混入する可能性がある。なお、第1の弾性板3に用いられているウレタンは、粉体Pが高温で処理される場合には、気化するため、粉体Pの異物とならない。このような理由から、ホッパー本体2に対する第1の弾性板3の上端3bの固定は、例えば、ホッパー本体2のフランジ2aとハウジング10のフランジ10cの間に第1の弾性板3の上端3bの一部を挟み込む方法や、上端3bの幅をハウジング10の供給口10aの幅よりも少し広くして、上端3bを弾性変形させて供給口10aに嵌め込む方法などによって行うことが望ましい。ただし、第1の弾性板3の上端3bをホッパー本体2に固定する場合には、下端3aがスクリュー8の羽根8bの最も低い箇所に配置されるように第1の弾性板3を設置する必要がある。
上述のとおり、スクリューコンベア用ホッパー1bでは、第1の弾性板3の変形に加えて第2の弾性板5が変形したり、移動したりすることにより、第1の弾性板3の前側とその上方に存在する粉体P及び第2の弾性板5の後側及びその上方に存在する粉体Pが周期的に移動するという作用を有する。すなわち、スクリューコンベア用ホッパー1aの場合よりも広範囲に亘って粉体Pの周期的な移動が起こるため、スクリューコンベア用ホッパー1bでは、ラットホールやブリッジの形成を確実に防ぐことができるというスクリューコンベア用ホッパー1aの効果がより一層発揮される。
これに対し、先端6aが斜め上を向くように水平方向に対して傾いた状態で連結部材6が設置されている場合、前述のとおり、第2の弾性板5は水平方向に移動するとともに鉛直方向と平行に上方へ移動したり、変形したりする。そして、第2の弾性板5は連結部材6が水平に設置されている場合よりも移動し易く、また、変形もし易い。
すなわち、スクリューコンベア用ホッパー1bにおいて、先端6aが斜め上を向くように水平方向に対して傾いた状態で設置されている連結部材6は、第1の弾性板3から連結部材6を介して第2の弾性板5が力Fを受けた場合に、第2の弾性板5の動きを大きくするという作用を有している。これにより、前述の粉体Pの周期的な移動がより広範囲に亘って発生し易くなるため、スクリューコンベア用ホッパー1bによれば、ラットホールやブリッジの形成を効率良く阻止することができる。
なお、スクリューコンベア用ホッパー1bを備えたスクリューコンベア7は、スクリューコンベア用ホッパー1bと同様の作用及び効果を有している。
本発明のスクリューコンベア用ホッパーは、上記実施例に示した構造に限定されるものではない。例えば、第1の弾性板3や第2の弾性板5には可撓性を有する部材であれば、ゴムやエラストマーなどのようなウレタン以外の部材を用いることもできる。ただし、第1の弾性板3や第2の弾性板5をウレタン製にすれば、可撓性を有するという特性を安価に付与できるため、製造コストを安く抑えることが可能である。