(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004452
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】車両用窓ガラス
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023069509
(22)【出願日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2022103890
(32)【優先日】2022-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】船津 聡史
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA03
5J046AB17
5J046LA01
(57)【要約】
【課題】アンテナ利得の確保が可能な車両用窓ガラスの提供。
【解決手段】車両用窓ガラスであって、主面を有する第1ガラス板と、前記第1ガラス板の前記主面の側に配置され、前記第1ガラス板の平面視において、3本以上の辺を含む外縁で囲まれた導電層と、前記平面視において前記外縁よりも外側に配置され、所定の周波数帯の電波を受信するアンテナと、を備え、前記アンテナは、前記導電層から離れて配置された給電部と、前記給電部に電気的に接続された線状のアンテナエレメントと、を有し、前記車両用窓ガラスを車両に取り付けたとき、前記外縁は、前記車両の金属部に形成された金属縁に略平行な第1辺を含み、前記アンテナエレメントは、前記平面視において、前記金属縁と前記第1辺との間に挟まれた非導電領域に第1端から第2端まで延伸する第1エレメントを含む、車両用窓ガラス。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用窓ガラスであって、
主面を有する第1ガラス板と、
前記第1ガラス板の前記主面の側に配置され、前記第1ガラス板の平面視において、3本以上の辺を含む外縁で囲まれた導電層と、
前記平面視において前記外縁よりも外側に配置され、所定の周波数帯の電波を受信するアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記導電層から離れて配置された給電部と、前記給電部に電気的に接続された線状のアンテナエレメントと、を有し、
前記車両用窓ガラスを車両に取り付けたとき、前記外縁は、前記車両の金属部に形成された金属縁に略平行な第1辺を含み、前記アンテナエレメントは、前記平面視において、前記金属縁と前記第1辺との間に挟まれた非導電領域に第1端から第2端まで延伸する第1エレメントを含む、車両用窓ガラス。
【請求項2】
前記平面視において、前記第1辺を除く前記外縁と前記金属縁との間の距離をd、前記金属縁が前記外縁の外側にある場合のdを正の値、前記金属縁が前記外縁の内側にある場合のdを負の値とするとき、dは、-20mm以上+100mm以下である、請求項1に記載の車両用窓ガラス。
【請求項3】
前記平面視において、前記第1辺と前記金属縁との間の幅をwとするとき、wは、100mm以下である、請求項2に記載の車両用窓ガラス。
【請求項4】
前記外縁は、前記平面視において、凸多角形である、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項5】
前記外縁は、前記平面視において、前記金属縁と略相似である、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項6】
前記導電層は、前記所定の周波数帯において、前記金属部と電気的に分離する無給電導体である、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項7】
前記導電層は、シート抵抗が100[Ω/□]以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項8】
前記第1エレメントは、前記第1端から前記第2端に至るまで前記第1辺に略平行に延伸する直線エレメントである、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項9】
前記アンテナエレメントの長さをLa、前記所定の周波数帯の中心周波数における空気中の電波の波長をλ、前記車両用窓ガラスによる波長短縮率をkとするとき、Laは、
0.12×k×λ≦La≦0.29×k×λ
を満足する、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項10】
前記アンテナエレメントは、分岐を有しない1本の線状導体である、請求項9に記載の車両用窓ガラス。
【請求項11】
前記第1辺の一端を通り前記第1辺に略直角な第1仮想線が、前記第1辺に略平行な座標軸と交わる点の座標を0、前記第1辺の他端を通り前記第1辺に略直角な第2仮想線が、前記座標軸と交わる点の座標を100とするとき、
前記給電部は、前記座標軸において、座標10から座標90までの区間に位置する、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項12】
前記平面視において、前記アンテナと前記第1辺との間に配置されたエレメントを含む補助エレメントを備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項13】
前記補助エレメントは、
前記第1辺に略平行な第1補助エレメントと、
前記第1補助エレメントと前記アンテナエレメントとの間に設けられ、前記第1補助エレメントに略平行な第2補助エレメントと、
前記第1補助エレメントと前記第2補助エレメントとを接続する第3補助エレメントとを、含む、請求項12に記載の車両用窓ガラス。
【請求項14】
前記平面視において、前記第1補助エレメントは、前記導電層と重なる、請求項13に記載の車両用窓ガラス。
【請求項15】
前記外縁は、前記第1辺に接続される第2辺を含み、
前記補助エレメントは、前記平面視において、前記第1辺及び前記第2辺に沿って延伸するL字状エレメントを含む、請求項12に記載の車両用窓ガラス。
【請求項16】
前記外縁は、前記第1辺に接続される第2辺及び前記第2辺に接続される第3辺を含み、
前記補助エレメントは、前記平面視において、前記第1辺、前記第2辺及び前記第3辺に沿って延伸するU字状エレメントを含む、請求項12に記載の車両用窓ガラス。
【請求項17】
前記平面視において、前記外縁に沿った内縁を有する導電枠を備え、
前記導電枠は、前記導電層よりも低い電気抵抗を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項18】
前記第1ガラス板の前記主面の側に配置された誘電体板と、
前記第1ガラス板と前記誘電体板との間に介在する中間膜と、を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項19】
前記中間膜は、第1中間膜と第2中間膜を含み、
前記導電層は、前記第1中間膜と前記第2中間膜との間に配置された、請求項18に記載の車両用窓ガラス。
【請求項20】
前記誘電体板は、第2ガラス板である、請求項18に記載の車両用窓ガラス。
【請求項21】
前記誘電体板は、前記中間膜に対向する第1表面と、前記第1表面とは反対側の第2表面と、を有し、
前記アンテナは、前記第2表面に配置された、請求項18に記載の車両用窓ガラス。
【請求項22】
前記アンテナは、VHF帯、UHF帯又はその両方に亘る周波数帯の電波を受信する、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項23】
前記アンテナは、DAB Band IIIの周波数帯の電波を受信する、請求項22に記載の車両用窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レインセンサやカメラ等の電装製品を取り付けるための凹部が上縁部に設けられた導電層と、その凹部に配置されたアンテナと、を備える、車両用窓ガラスが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アンテナが導電層の凹部に配置されていると、アンテナ利得の確保が難しい場合がある。
【0005】
本開示は、導電層とアンテナを備え、アンテナ利得の確保が可能な車両用窓ガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
車両用窓ガラスであって、
主面を有する第1ガラス板と、
前記第1ガラス板の前記主面の側に配置され、前記第1ガラス板の平面視において、3本以上の辺を含む外縁で囲まれた導電層と、
前記平面視において前記外縁よりも外側に配置され、所定の周波数帯の電波を受信するアンテナと、を備え、
前記アンテナは、前記導電層から離れて配置された給電部と、前記給電部に電気的に接続された線状のアンテナエレメントと、を有し、
前記車両用窓ガラスを車両に取り付けたとき、前記外縁は、前記車両の金属部に形成された金属縁に略平行な第1辺を含み、前記アンテナエレメントは、前記平面視において、前記金属縁と前記第1辺との間に挟まれた非導電領域に第1端から第2端まで延伸する第1エレメントを含む、車両用窓ガラスが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、アンテナ利得の確保が可能な車両用窓ガラスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の車両用窓ガラスの一例を平面視で示す図である。
【
図2】第2実施形態の車両用窓ガラスの一例を平面視で示す図である。
【
図3】第3実施形態の車両用窓ガラスの一例を平面視で示す図である。
【
図4】第4実施形態の車両用窓ガラスの一例を平面視で示す図である。
【
図5】第5実施形態の車両用窓ガラスの一例を平面視で示す図である。
【
図6】第6実施形態の車両用窓ガラスの一例を示す分解斜視図である。
【
図7】第7実施形態の車両用窓ガラスの一例を示す分解斜視図である。
【
図8】導電層を設けない車両用窓ガラスに関して、該窓ガラスの平面視における、電界の垂直成分の強度分布をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【
図9】導電層を設けた車両用窓ガラスに関して、該窓ガラスの平面視における、電界の垂直成分の強度分布をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【
図10】ガラス板の重心を原点とする三次元直交座標系において、座標(X,Y,Z)=(0mm,Ymm,0.95mm)で定義される直線上の電界分布を示すグラフである。
【
図11】アンテナ利得の周波数特性をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【
図12】非導電領域の幅wとアンテナの平均アンテナ利得との関係をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【
図13】距離d(導電層の第1辺を除く外縁と金属部の金属縁との間の距離)とアンテナの平均アンテナ利得との関係をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【
図14】導電層のシート抵抗とアンテナの平均アンテナ利得との関係をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【
図15】アンテナ利得の周波数特性をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【
図16】アンテナ利得の周波数特性をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【
図17】アンテナ利得の周波数特性をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。なお、理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、ならびに、同一および等しいなどの用語には、実施形態の作用及び効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。重なるとは、一部が重なる意味を含んでよい。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を表す。
【0010】
本実施形態が適用される車両用窓ガラスの例として、車両の後部に取り付けられるリアガラス、車両の前部に取り付けられるウィンドシールド、車両の側部に取り付けられるサイドガラス、車両の天井部に取り付けられるルーフガラスなどがある。車両用窓ガラスは、これらの例に限られず、例えば、ルーフガラスがウィンドシールド又はリアガラスの一方又は両方と一体化された窓ガラスでもよい。
【0011】
図1は、第1実施形態の車両用窓ガラスの一例を平面視で示す図である。
図1は、車両60の金属ボディ61に取り付けられた窓ガラス101を車内からの視点で示している。
【0012】
金属ボディ61は、車両の金属部の一例であり、接地可能な導電性の部位である。金属ボディ61は、例えば、窓ガラス101がウレタン樹脂等からなる接着剤等により取り付けられる窓枠(フランジ)である。窓ガラス101は、金属ボディ61に形成された開口62を覆うように金属ボディ61に取り付けられる。金属ボディ61は、開口62を形成する金属縁63(この例では、4つの金属縁63a,63b,63c,63d)を有する。金属縁63は、金属ボディ61に形成された端辺である。
【0013】
窓ガラス101は、車両用窓ガラスの一例である。窓ガラス101は、主な構成として、ガラス板10,導電層30及びアンテナ80を備える単板の窓ガラスである。単板の窓ガラスとは、構成されるガラス板が一枚のガラス板(この例では、ガラス板10)のみの窓ガラスをいう。
【0014】
単板における、ガラス板10の厚さは、特に限られないが、一般的には0.5mm~10mmの範囲で、適宜選択できる。ガラス板10の厚さは、0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、1.1mm以上がさらに好ましく、1.6mm以上が特に好ましい。また、質量が大きくなり過ぎないように、ガラス板10の厚さは、7mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、4mm以下がさらに好ましい。
【0015】
また、後述するガラス板20をさらに含む合わせガラスの場合、ガラス板10の厚さは、特に限られないが、0.1mm~10mmの範囲で、適宜選択できる。ガラス板10の厚さは、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、0.7mm以上がさらに好ましく、1.1mm以上が特に好ましく、1.6mm以上が最も好ましい。また、合わせガラスの質量が大きくなり過ぎないように、ガラス板10の厚さは、3.0mm以下が好ましく、2.6mm以下がより好ましく、2.1mm以下がさらに好ましい。なお、ガラス板10の厚さは、ガラス板20の厚さと同じでも、異なってもよい。ガラス板10とガラス板20との厚さが同じであれば、同じサイズのガラス板を使用できる。
【0016】
ガラス板10は、金属ボディ61に形成された開口62を覆うように金属ボディ61に取り付けられる。ガラス板10は、Z軸方向の正側に面する主面11と、Z軸方向において主面11とは反対側(Z軸方向の負側)に面する主面12とを有する板状の誘電体である。ガラス板10は、透明でも半透明でもよい。主面11は、車内側の表面であり、主面12は、車外側の表面である。ガラス板10は、第1主面を有する第1ガラス板の一例である。主面11は、第1主面の一例である。
【0017】
ガラス板10は、外縁13a,13b,13c,13dを含む外周縁13を有する。ガラス板10は、車内側からの平面視で外周縁13が金属ボディ61と重なるように、金属ボディ61に取り付けられ、外縁13a,13b,13c,13dは、それぞれに対応する金属縁63a,63b,63c,63dに取り付けられる。
【0018】
導電層30は、ガラス板10の主面11の側に配置された平面状導体である。導電層30は、主面11に接する導体でもよいし、透明または半透明の不図示の誘電体を介して主面11の側に配置される導体でもよい。導電層30は、透明でも半透明でもよい。導電層30の具体例として、Ag(銀)膜などの金属膜、ITO(酸化インジウム・スズ)膜などの金属酸化膜、または導電性微粒子を含む樹脂膜、複数種類の膜を積層した積層体などが挙げられる。導電層30は、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂フィルムに蒸着処理等でコーティングされたものでもよい。導電層30は、フィルムに導電性インク又はエッチングによりメッシュ状に形成されたものでもよい。
【0019】
導電層30は、ガラス板10の主面11にコーティングされる導電膜でもよい。導電膜の具体例として、低放射性能を発揮するLow-E(Low Emissivity)膜などの低放射膜が挙げられる。
【0020】
低放射とは、放射による伝熱を低減することをいう。Low-E膜などの低放射膜は、放射による伝熱を抑制することで、断熱性を確保する。低放射膜は、一般的なものでよく、例えば、透明誘電体膜、赤外線反射膜、および透明誘電体膜をこの順で含む積層膜でよい。透明誘電体膜としては、金属酸化物や金属窒化物が代表的である。金属酸化物としては、酸化亜鉛や酸化スズが代表的である。赤外線反射膜としては、金属膜が代表的である。金属膜としては、銀(Ag)が代表的である。ここで、赤外線反射膜は、透明誘電体膜同士の間に、1層以上形成されてよい。
【0021】
また、導電層30は、Low-E膜などの低放射膜に限られず、導電性の層であれば、他の機能を有してもよい。例えば、導電層30は、電圧印加による発熱によって、窓ガラスの防氷や防曇などの機能を有するものでもよい。
【0022】
さらに、導電層30は、交流電圧を印加することによって窓ガラス101の可視光透過率をアクティブに変更可能な調光フィルムに含まれる導電膜でもよい。調光フィルムは、例えば(不図示の)一対の対向する樹脂基板の間に光学異方性を有する(不図示の)分子層を有する。そして、それぞれの樹脂基板の主面には(不図示の)導電膜と、該導電膜に電気的に接続された(不図示の)電極を有する。そして、電極を介して、一対の導電層間に電圧を印加することにより、調光フィルムを駆動させられる。
【0023】
樹脂基板は、例えば、透明な樹脂で構成される。樹脂基板は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、またはシクロオレフィンポリマー(COP)を有してよい。また、一対の対向する樹脂基板として、例えば上述の樹脂を組み合わせて用いてもよい。樹脂基板の厚さは、例えば、5μm~500μmの範囲であり、10μm~200μmの範囲が好ましく、20μm~180μmの範囲がより好ましく、50μm~150μmの範囲がさらに好ましい。
【0024】
導電膜は、例えば、透明導電性酸化物、透明導電性ポリマー、金属層と誘電体層との積層膜、銀ナノワイヤー、および銀または銅のメタルメッシュ等を有してもよい。導電膜の厚さは、例えば、5nm~2μmの範囲でもよい。
【0025】
光学異方性を有する分子として、例えば液晶が挙げられる。すなわち、光学異方性を有する分子層として、例えば液晶層を用いてもよい。液晶層は、例えば、高分子分散型液晶(PDLC)、高分子ネットワーク型液晶(PNLC)、ゲストホスト型液晶が挙げられる。あるいは、光学異方性を有する分子として、ヨウ素等を用いてよい。調光フィルムは、このような分子層を含む、懸濁粒子デバイス(Suspended Particle Device:SPD)を有してもよい。
【0026】
導電層30は、ガラス板10の平面視において、3本以上の辺(この例では、4本の辺31a,31b,31c,31d)を含む外縁31で囲まれている。窓ガラス101を車両60の金属ボディ61に取り付けたとき、外縁31は、金属ボディ61に形成された金属縁63aに略平行な辺31aを含む。辺31aは、第1辺の一例である。
【0027】
アンテナ80は、ガラス板10の平面視において外縁31よりも外側に配置され、所定の周波数帯Wの電波を受信する。アンテナ80は、例えば、ガラス板10の主面11又は主面12に設けられる。
【0028】
周波数帯Wは、例えば、周波数が300MHz~3GHzのUHF(Ultra High Frequency)帯、周波数が30MHz~300MHzのVHF(Very High Frequency)帯、又はその両方に亘る帯域である。UHF帯に含まれる周波数帯の具体例として、地上デジタルテレビ放送波の帯域(例えば、470MHz~710MHz)などがある。VHF帯に含まれる周波数帯の具体例として、FM放送波の帯域(例えば、76MHz~108MHz)、DAB Band IIIの帯域(例えば、174MHz~240MHz)などがある。
【0029】
図1において、アンテナ80は、導電層30から離れて配置された給電部81と、給電部81に電気的に接続された線状のアンテナエレメント82と、を有する。
【0030】
給電部81は、アンテナエレメント82に給電するための給電端子である。給電部81は、例えば、ガラス板10の主面11又は主面12に形成された電極である。給電部81の形状は、矩形に限られず、円形などの他の形状でもよい。給電部81には、アンテナエレメント82に給電する導電部材120が電気的に接続される。
【0031】
導電部材120の一端は、給電部81に電気的に接続され、導電部材120の他端は、車両に搭載された不図示の受信機に電気的に接続される。導電部材120には、アンテナ80が受信した電波に対応する受信信号(高周波電流)が流れる。導電部材120は、例えば、電線(ワイヤーハーネス)、配線パターン、スプリング又は伝送線路を含む部材である。電線の具体例として、AV線、AVSS線などの配線が挙げられる。伝送線路の具体例として、同軸ケーブル、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットラインなどが挙げられる。
【0032】
給電部81と導電部材120との間には、不図示のアンプが接続されてもよい。アンプは、アンテナ80により受信された電波に対応する信号を増幅し、導電部材120に出力する。アンプは、主面11上又は主面12上に配置されてもよい。
【0033】
アンテナエレメント82は、給電部81に電気的に接続された導体であって、ガラス板10の主面11又は主面12に形成された線状導体を例示できる。
図1は、曲がった部分を含むアンテナエレメント82(具体的には、L字状のアンテナエレメント82)を例示するが、アンテナエレメント82は、一本の直線状(I字状)のエレメントでもよい。この例では、アンテナエレメント82は、金属縁63aに沿って端部83から開放端84まで延伸するエレメント85を含む。金属縁63aに沿って延伸するエレメント85が金属縁63aと容量結合することで、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する。
【0034】
アンテナエレメント82は、窓ガラス101を車両60の金属ボディ61に取り付けたとき、ガラス板10の平面視において、金属縁63aと辺31aとの間に挟まれた非導電領域110に、端部83から開放端84まで延伸するエレメント85を含む。エレメント85は、第1端から第2端まで延伸する第1エレメントの一例である。端部83は、第1エレメントの第1端の一例であり、この例では、アンテナエレメント82の中間部における折れ曲がり端部である。開放端84は、第1エレメントの第2端の一例であり、この例では、アンテナエレメント82の給電部81とは反対側の先端部である。
【0035】
ガラス板10の平面視において、導電層30が、金属ボディ61によって形成された開口62に存在する場合、金属ボディ61の金属縁63と導電層30の外縁31との間に挟まれた領域の電界強度は、強くなる。つまり、金属縁63aと辺31aとの間に挟まれた非導電領域110の電界強度は、強くなる。端部83から開放端84まで延伸するエレメント85が電界強度の強い非導電領域110に配置されていることで、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する。
【0036】
特許文献1では、アンテナは、導電層の上外縁に対して凹んだ領域(凹部)に配置されている。導電層の上外縁に凹んだ部分と凹んでいない部分が存在する場合、金属ボディの金属縁と導電層の凹んだ上外縁部分との間の間隙幅は、金属ボディの金属縁と導電層の凹んでいない上外縁部分との間の間隙幅に比べて広くなる。間隙幅が広くなると、その間隙での電界強度は弱まるので、電界強度の弱い凹部に配置されたアンテナの利得の確保が難しくなる。また、間隙幅が変化すると、間隙幅が変化する領域の電界強度の変化が大きくなる。よって、間隙幅が上外縁の傾斜により変化する領域に配置されたアンテナの場合、アンテナ利得のばらつきが大きくなり、アンテナ利得の安定的な確保が難しくなる。
【0037】
これに対し、本開示の第1実施形態では、辺31aは金属縁63aに略平行なので、金属縁63aと辺31aとの間の幅w(言い換えれば、非導電領域110の幅w)は、辺31aに沿った方向に亘って略同一である。よって、非導電領域110の電界強度が強い状態で安定する。したがって、端部83から開放端84まで延伸するエレメント85が、電界強度が強い状態で安定した非導電領域110に配置されていることで、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得の確保が容易になる。
【0038】
また、特許文献1の
図16のアンテナは、給電部が導電層に接続されたアンテナ(つまり、導電層をグランドとして利用するアンテナ)であるので、アンテナ利得の確保が比較的容易である。これに対し、本開示の第1実施形態では、アンテナ80は、給電部81が導電層30から離れて導電層30と接続されないアンテナ(つまり、導電層30をグランドとして利用しないアンテナ)であるので、アンテナ利得の確保が難しい。しかし、端部83から開放端84まで延伸するエレメント85が、電界強度が強い状態で安定した非導電領域110に配置されていることで、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得の確保が容易になる。
【0039】
なお、端部83から開放端84まで延伸するエレメント85が配置される非導電領域110は、金属縁63aと辺31aとの間に挟まれた領域に限られない。例えば、端部83から開放端84まで延伸するエレメント85が配置される非導電領域110は、金属縁63bと辺31bとの間に挟まれた領域、金属縁63cと辺31cとの間に挟まれた領域、または、金属縁63dと辺31dとの間に挟まれた領域でもよい。
【0040】
ガラス板10の平面視において、第1辺を除く外縁31(この例では、辺31b,31c,31d)と金属縁63(この例では、金属縁63b,63c,63d)との間の距離をdとする。また、金属縁63が外縁31の外側にある場合のdを正の値、金属縁63が外縁31の内側にある場合のdを負の値とする。このとき、dは、-20mm以上+100mm以下であると、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する。アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得の向上の点で、dは、-10mm以上+80mm以下でもよく、-5mm以上+60mm以下が好ましく、0mm以上+40mm以下がより好ましく、5mm以上+20mm以下がさらに好ましい。
【0041】
dが正の値のとき、ガラス板10の平面視において、金属縁63と外縁31との間に隙間(非導電領域)が存在する。dが負の値のとき、ガラス板10の平面視において、金属縁63は導電層30と重なる。また、
図1に示す3箇所の隙間の距離dは、互いに等しくても異なってもよい。
【0042】
ガラス板10の平面視において、辺31aと金属縁63(この例では、辺31aに対向する金属縁63a)との間の幅をwとする。このとき、wは、100mm以下であると、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する。wが狭いほど、非導電領域110の電界強度が強くなる。非導電領域110が確保される限り、wは、0mm超でよく、例えば、3mm以上でもよく、5mm以上でもよい。アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得の向上の点で、wは、80mm以下でもよく、60mm以下が好ましく、40mm以下がより好ましく、20mm以下がさらに好ましい。
【0043】
導電層30の外縁31は、ガラス板10の平面視において、凸多角形であると、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上するが、凹多角形でもよい。凸多角形とは、すべての内角が180°よりも小さい多角形をいう。凹多角形とは、180°よりも大きい内角を一つ以上含む多角形をいう。
図1は、外縁31が、ガラス板10の平面視において、凸多角形の一例である四角形である場合を例示する。
【0044】
外縁31は、ガラス板10の平面視において、3本以上の辺を含む形状であれば、多角形でなくてもよい。例えば、外縁31は、ガラス板10の平面視において、1本以上の弧と3本以上の辺で囲まれた形状でもよい。
【0045】
外縁31は、ガラス板10の平面視において、金属縁63と略相似であると、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上するが、相似でなくてもよい。
【0046】
導電層30は、周波数帯Wにおいて、金属ボディ61と電気的に分離する無給電導体(例えば、金属ボディ61からフローティングされた導体)であると、非導電領域110の電界強度が強くなるので、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する。導電層30は、周波数帯W以外の周波数では、金属ボディ61と電気的に接続される給電導体でもよく、例えば、周波数帯Wよりも低周波で駆動する、上述の調光フィルムでもよい。
【0047】
導電層30は、シート抵抗が100[Ω/□(ohms per square)]以下であると、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する。アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する点で、導電層30のシート抵抗は、80[Ω/□]以下が好ましい。導電層30のシート抵抗の下限値は、0[mΩ/□]以上又は1[mΩ/□]以上であればよい。後述の導電枠96が存在する場合、導電層30のシート抵抗の下限値は、導電枠96のシート抵抗よりも大きければよく、例えば、5[Ω/□]以上である。
【0048】
エレメント85は、図示のように、端部83から開放端84に至るまで辺31aに略平行に延伸する直線エレメントであると、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する。しかし、エレメント85は、端部83から開放端84に至るまでに、メアンダ状などの折れ曲がり部分を含むエレメントでもよいし、分岐する部分を含むエレメントでもよい。
【0049】
アンテナエレメント82の長さをLa、所定の周波数帯Wの中心周波数における空気中の電波の波長をλ、窓ガラス101による波長短縮率をkとする。このとき、Laは、
0.12×k×λ≦La≦0.29×k×λ ・・・式1a
を満足すると、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する。
【0050】
アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する点で、
0.14×k×λ≦La≦0.28×k×λ ・・・式1b
が好ましく、
0.18×k×λ≦La≦0.27×k×λ ・・・式1c
がより好ましい。なお、波長短縮率kは、単板や合わせガラスの最表面にアンテナエレメント82を配置した場合、ガラス板の組成にもよるが0.60~0.70程度である。また、合わせガラスの間にアンテナエレメント82が封入される配置の場合、ガラス板の組成にもよるが、波長短縮率kは、0.36~0.49程度である。
【0051】
なお、Laは、アンテナエレメント82の一端が接続される給電部81からアンテナエレメント82の他端(開放端84)までの経路長を表す。
【0052】
アンテナエレメント82は、図示のように、分岐を有しない1本の線状導体であると、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上するが、分岐を有する線状導体でもよい。また、アンテナ80は、導電層30に接続されていないグランドパターンを有するアンテナであってもよい。
【0053】
次に、
図1において、辺31aの一端32を通り辺31aに略直角な第1仮想線34が、辺31aに略平行な座標軸36と交わる点37の座標を0、辺31aの他端33を通り辺31aに略直角な第2仮想線35が、座標軸36と交わる点38の座標を100とする。座標軸36において座標10から座標90までの区間は、辺31aの垂直二等分線を含む領域となるので、辺31aと金属縁63aとの間の非導電領域110の電界強度が強い状態で安定する。したがって、給電部81は、座標軸36において、座標10から座標90までの区間に位置すると、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する。アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する点で、給電部81は、座標軸36において、座標20から座標80までの区間に位置するのがより好ましく、座標30から座標70までの区間に位置するのがさらに好ましい。
【0054】
図2は、第2実施形態の車両用窓ガラスの一例を平面視で示す図である。第2実施形態において、上述の実施形態と同様の構成、作用及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図2に示す窓ガラス102は、補助エレメント90を更に備える点で、第1実施形態の窓ガラス101と相違する。
【0055】
補助エレメント90は、ガラス板10の平面視において、アンテナ80と導電層30の第1辺との間に配置されたエレメントを含む補助エレメントの一例である。補助エレメント90は、例えば、ガラス板10の主面11又は主面12に形成された線状導体である。
図2は、ガラス板10の平面視において、金属ボディ61の金属縁63aと導電層30の辺31aとの間に挟まれた非導電領域110のうち、エレメント85と辺31aとの間に挟まれた領域に配置された補助エレメント90を例示する。車両用窓ガラスが補助エレメント90を更に備えることで、非導電領域110の電界強度が更に強くなるので、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する。補助エレメント90が金属縁63aに略平行な部分を含むと、非導電領域110の電界強度の均一性がより向上し、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得がより向上する。
【0056】
補助エレメント90は、アンテナ80と導電層30に電気的に接続される。例えば、補助エレメント90は、アンテナ80のエレメント85と容量結合によって電気的に接続され、導電層30の辺31aと接触又は容量結合によって電気的に接続される。
【0057】
補助エレメント90は、例えば、第1補助エレメント91、第2補助エレメント92及び第3補助エレメント93を含むH字状補助エレメントである。
【0058】
第1補助エレメント91は、辺31aに略平行である。第1補助エレメント91は、長さが辺31aと同じでもよいし、長さが辺31aよりも短い又は長くてもよい。ガラス板10の平面視において、第1補助エレメント91は、導電層30と重なってもよく、辺31aと重なってもクロスしてもよい。第1補助エレメント91は、導電層30の辺31aと接触又は容量結合によって電気的に接続される。第3補助エレメント93が導電層30に接触して接続される場合は、第1補助エレメント91はなくてもよい。
【0059】
第2補助エレメント92は、第1補助エレメント91とアンテナエレメント82との間に設けられ、金属縁63aに略平行である。第2補助エレメント92が金属縁63aに略平行な部分を含むと、非導電領域110の電界強度の均一性がより向上し、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得がより向上する。第2補助エレメント92は、長さが第1補助エレメント91と同じでもよいし、長さが第1補助エレメント91よりも短い又は長くてもよい。第2補助エレメント92は、アンテナ80のエレメント85と接触又は容量結合によって電気的に接続される。
【0060】
図2において、第3補助エレメント93は、第1補助エレメント91と第2補助エレメント92とを接続する。第3補助エレメント93は、座標軸36において、座標10から座標90までの区間に位置すると、電界強度が強い状態で安定する非導電領域110に配置されるので、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する。アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する点で、第3補助エレメント93は、座標軸36において、座標20から座標80までの区間に位置するのがより好ましく、座標30から座標70までの区間に位置するのがさらに好ましい。
【0061】
図3は、第3実施形態の車両用窓ガラスの一例を平面視で示す図である。第3実施形態において、上述の実施形態と同様の構成、作用及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図3に示す窓ガラス103は、ガラス板10の平面視において、辺31aと辺31bに沿って延伸するL字状エレメント94を更に備える点で、第1実施形態の窓ガラス101と相違する。辺31aは、第1辺の一例である。辺31bは、第1辺に接続される第2辺の一例である。
【0062】
L字状エレメント94は、ガラス板10の平面視において、アンテナ80と導電層30の第1辺との間に配置されたエレメントを含む補助エレメントの一例である。L字状エレメント94は、例えば、ガラス板10の主面11又は主面12に形成された線状導体である。
図3は、ガラス板10の平面視において、金属ボディ61の金属縁63と導電層30の外縁31との間に挟まれた非導電領域110のうち、辺31aと辺31bに沿った領域に配置されたL字状エレメント94を例示する。車両用窓ガラスがL字状エレメント94を更に備えることで、非導電領域110の電界強度が更に強くなるので、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する。
【0063】
L字状エレメント94は、アンテナ80と導電層30に電気的に接続されると、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する。例えば、L字状エレメント94のうち辺31aに沿って延伸するエレメント部分は、アンテナ80のエレメント85と容量結合によって電気的に接続される。例えば、L字状エレメント94のうち辺31bに沿って延伸するエレメント部分は、導電層30の辺31bと接触又は容量結合によって電気的に接続される。なお、
図3に示すように、L字状エレメント94のうち辺31bに沿って延伸するエレメント部分は、辺31aに沿って延伸するエレメント部分よりも、導電層30までの距離を短くしてもよい。さらに、L字状エレメント94のうち辺31bに沿って延伸するエレメント部分は、辺31aに沿って延伸するエレメント部分よりも、広い幅を有してもよい。さらに、後述するガラス板20をさらに含む合わせガラスの場合、L字状エレメント94と導電層30は、ガラス板10の平面視において重なり、厚さ方向(Z軸方向)に離隔することで、容量結合してもよい。
【0064】
図4は、第4実施形態の車両用窓ガラスの一例を平面視で示す図である。第4実施形態において、上述の実施形態と同様の構成、作用及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図4に示す窓ガラス104は、ガラス板10の平面視において、辺31aと辺31bと辺31cに沿って延伸するU字状エレメント95を更に備える点で、第1実施形態の窓ガラス101と相違する。辺31aは、第1辺の一例である。辺31bは、第1辺に接続される第2辺の一例である。辺31cは、第2辺に接続される第3辺の一例である。
【0065】
U字状エレメント95は、ガラス板10の平面視において、アンテナ80と導電層30の第1辺との間に配置されたエレメントを含む補助エレメントの一例である。U字状エレメント95は、例えば、ガラス板10の主面11又は主面12に形成された線状導体である。
図4は、ガラス板10の平面視において、金属ボディ61の金属縁63と導電層30の外縁31との間に挟まれた非導電領域110のうち、辺31aと辺31bと辺31cに沿った領域に配置されたU字状エレメント95を例示する。車両用窓ガラスがU字状エレメント95を更に備えることで、非導電領域110の電界強度が更に強くなるので、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する。
【0066】
U字状エレメント95は、アンテナ80と導電層30に電気的に接続されると、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する。例えば、U字状エレメント95のうち辺31cに沿って延伸するエレメント部分は、導電層30の辺31cと容量結合によって電気的に接続される。U字状エレメント95のうち辺31a及び辺31bに沿って延伸するエレメント部分は、上述のL字状エレメント94の場合と同様でよい。なお、
図4に示すように、U字状エレメント95のうち辺31b及び辺31cに沿って延伸するエレメント部分は、辺31aに沿って延伸するエレメント部分よりも、導電層30までの距離を短くしてもよい。さらに、U字状エレメント95のうち辺31cに沿って延伸するエレメント部分は、辺31aに沿って延伸するエレメント部分と同じ幅でもよく、それよりも広い幅を有してもよい。さらに、後述するガラス板20をさらに含む合わせガラスの場合、U字状エレメント95と導電層30は、ガラス板10の平面視において重なり、厚さ方向(Z軸方向)に離隔することで、容量結合してもよい。
【0067】
図5は、第5実施形態の車両用窓ガラスの一例を平面視で示す図である。第5実施形態において、上述の実施形態と同様の構成、作用及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図5に示す窓ガラス105は、導電枠96を更に備える点で、第1実施形態の窓ガラス101と相違する。
【0068】
導電枠96は、ガラス板10に対して主面11の側にある枠状導体であり、例えば、ガラス板10に対して主面11の側に導電層30と同一層で配置されてもよいし、導電層30に対してガラス板10の主面11とは反対側に配置されてもよい。導電枠96は、主面11に接しても、不図示の誘電体を介して主面11の側に配置されても、導電層30に接してもよい。導電枠96は、ガラス板10の平面視で導電層30の外縁31に沿った内縁を有する。導電枠96は、例えば、銅、銀などによって形成されている。
【0069】
導電枠96は、導電層30の外縁31に沿った内縁を有するので、導電層30に接触又は容量結合によって電気的に接続される。したがって、窓ガラス105が導電性の金属縁63に取り付けられることで、導電層30で受けた電波によって発生した電流が集中する導電層30の外縁31から導電枠96を介して信号を取り出すことにより損失を減らすことができアンテナ性能が向上する。導電枠96は、導電層30よりも低い電気抵抗を有する。ここで言う「電気抵抗」の高低を評価する指標は、シート抵抗(単位:Ω/□)が挙げられる。
【0070】
導電枠96は、閉ループ形状を有すると、導電枠96に高周波電流が流れやすくなるので、アンテナ80のアンテナ利得が向上する。しかし、導電枠96の一部に切り欠きがあってもよい。例えば、導電枠96は、U字状又はL字状でもよい。また、導電枠96の形状は、略四角形に限られず、略三角形などの他の多角形でもよい。また、導電枠96の幅は、一定でなくてもよい。
【0071】
導電枠96のシート抵抗の上限値は、導電層30のシート抵抗よりも小さければよく、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する点で、例えば、2[Ω/□]以下がよく、1[Ω/□]以下がより好ましい。このように、導電枠96と導電層30の電気抵抗の高低については、例えば、シート抵抗を指標にして比較できる。
【0072】
図6は、第6実施形態の車両用窓ガラスの一例を示す分解斜視図である。第6実施形態において、上述の実施形態と同様の構成、作用及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図6に示す窓ガラス106は、ガラス板10の主面11側にある遮光層50を備える。上述の各実施形態の車両用窓ガラスは、遮光層50を備えてもよい。
【0073】
遮光層50は、例えば、可視光を遮光する遮光膜である。遮光膜の具体例として、黒色セラミックス膜等のセラミックスが挙げられる。遮光層50は、ガラス板10の平面視で、エレメント85と重なる。これにより、Z軸方向(車外側又は車内側)から窓ガラスを見ると、その重なる部分が視認しにくくなるので、窓ガラスや車両のデザイン性などの見栄えが向上する。
【0074】
図7は、第7実施形態の車両用窓ガラスの一例を示す分解斜視図である。第7実施形態において、上述の実施形態と同様の構成、作用及び効果についての説明は、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
図7に示す窓ガラス107は、ガラス板20及び中間膜40を備える合わせガラスである。上述の各実施形態の車両用窓ガラスは、ガラス板20及び中間膜40を更に備える合わせガラスでもよい。
【0075】
ガラス板20は、ガラス板10の主面11側に配置された誘電体板の一例である。ガラス板20は、例えば、導電層30に対してガラス板10とは反対側に配置された第2ガラス板の一例である。
【0076】
中間膜40は、ガラス板10とガラス板20との間に介在する透明又は半透明な誘電体である。ガラス板10とガラス板20とは、中間膜40によって接合される。中間膜40は、例えば、熱可塑性のポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。なお、中間膜40の比誘電率は、2.4以上3.5以下が好ましい。中間膜40は、導電層30とガラス板20との間に配置されてもよいし、ガラス板10と導電層30との間に配置されてもよい。さらに、中間膜40は、導電層30とガラス板20との間と、ガラス板10と導電層30との間との両方に配置されてもよい。
【0077】
図7に示す窓ガラス107では、中間膜40は、中間膜41と中間膜42を含む。中間膜41は、第1中間膜の一例である。中間膜42は、第2中間膜の一例である。窓ガラス107は、中間膜41と中間膜42と間に配置された導電層30を備える。導電層30は、1層に限らず複数層有してもよい。または、導電層30は、ガラス板20の中間膜42と対向する面にあってもよい。
【0078】
ガラス板20は、中間膜40に対向する第1表面(Z軸方向の負側に面する表面)と、当該第1表面とは反対側の第2表面(Z軸方向の正側に面する表面)と、を有する。アンテナ80は、
図7ではガラス板10の主面11に配置されているが、ガラス板20の第1表面に配置されてもよいし第2表面に配置されてもよい。
【0079】
次に、本実施形態の車両用窓ガラスに関してシミュレーションした結果について説明する。
【0080】
図8は、導電層を設けない車両用窓ガラスに関して、該窓ガラスの平面視における、電界の垂直成分の強度分布をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
図9は、導電層30を設けた車両用窓ガラスに関して、該窓ガラスの平面視における、電界の垂直成分の強度分布をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
図10は、縦横ともに1000mmの正方形のガラス板10の重心を原点とする三次元直交座標系において、座標(X,Y,Z)=(0mm,Ymm,0.95mm)で定義される直線上の電界分布(
図8及び
図9の場合)を示すグラフである。
図10において、X=0mmは、ガラス板10の重心を通り、ガラス板10の外縁13b及び外縁13dと平行な直線上に位置し、Y=500mmは、ガラス板10の外縁13aの位置を示し、Y=-500mmは、ガラス板10の外縁13cの位置を示す。ガラス板10の外縁13aに沿った領域(Y=400mm~500mm)の電界強度は、導電膜を設けた
図9の場合の方が、導電膜を設けない
図8の場合に比べて強い分布となった。つまり、ガラス板10の平面視において、外縁13aに対向する金属縁63aと導電層30の辺31aとの間に挟まれた非導電領域110の電界強度が強くなる結果が得られた。
【0081】
図11は、アンテナ80のアンテナ利得の周波数特性をシミュレーションした結果の一例を示す図であり、DAB Band IIIの周波数帯の電波(垂直偏波)の場合を示す。"導電層なし"は、
図1の窓ガラス101から導電層30を除いた場合を示す。"導電層あり(単板)"は、
図1の窓ガラス101が単板の窓ガラスの場合を示す。"導電層あり(合わせガラス)"は、
図1の窓ガラス101が合わせガラス(
図7参照)の場合を示す。
【0082】
図11において、DAB Band IIIの周波数帯内の複数の周波数でのアンテナ利得を平均した値は、"導電層なし"では-7.9dB、"導電層あり(単板)"では-3.0dB、"導電層あり(合わせガラス)"では-3.0dBとなった。このように、アンテナ80が同じアンテナパターンでも、導電層30を利用することで大幅にアンテナ利得が向上する結果が得られた。
【0083】
なお、
図11のシミュレーション時の各部の寸法等の条件は、
金属ボディ61の外周縁:縦2000mm×横2000mm
金属ボディ61の内周縁(金属縁63):縦1000mm×横1000mm
金属ボディ61:完全導体
金属ボディ61の厚さ:0.1mm
ガラス板10:縦1000mm×横1000mm
ガラス板20:縦1000mm×横1000mm
ガラス板10の厚さ(単板の場合):3.1mm
ガラス板10の厚さ(合わせガラス板の場合):2.1mm
ガラス板20の厚さ(合わせガラス板の場合):2.1mm
中間膜40の厚さ:0.76mm
導電層30のシート抵抗:1Ω/□
アンテナエレメント82の長さLa:230(=10+220)mm
アンテナエレメント82の縦エレメントの長さa:10mm
アンテナエレメント82の横エレメント(エレメント85)の長さ:220mm
幅w:20mm
距離d:10mm
とした。なお、"導電層あり(合わせガラス)"において、アンテナエレメント82は、ガラス板20うち、中間膜40側とは反対側の主面に配置した。このとき、(合わせ)ガラスの波長短縮率kは、0.67であり、式1a~式1cを満足した。
【0084】
図12は、幅wとアンテナ80の平均アンテナ利得との関係をシミュレーションした結果の一例を示す図であり、
図1の窓ガラス101が単板の窓ガラスの場合を示す。縦軸の平均アンテナ利得は、DAB Band IIIの周波数帯の電波(垂直偏波)の場合において、DAB Band IIIの周波数帯内の複数の周波数でのアンテナ利得を平均した値を示す。
【0085】
非導電領域110の幅wが広がるにつれて、非導電領域110の電界強度が低下し、アンテナ80の平均アンテナ利得が低下する傾向が得られた。幅wは、100mm以下の場合、100mm超の場合に比べて、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する結果が得られた。
【0086】
なお、
図12のシミュレーション時の各部の寸法等の条件は、wを除いて、
図11の上掲の条件と同一である。
【0087】
図13は、距離d(導電層の第1辺を除く外縁と金属部の金属縁との間の距離)とアンテナの平均アンテナ利得との関係をシミュレーションした結果の一例を示す図であり、
図1の窓ガラス101が単板の窓ガラスの場合を示す。縦軸の平均アンテナ利得は、DAB Band IIIの周波数帯の電波(垂直偏波)の場合において、DAB Band IIIの周波数帯内の複数の周波数でのアンテナ利得を平均した値を示す。
【0088】
d=0は、開口62と導電層30が同じサイズの場合を示す。dが正の値は、平面視で導電層30と金属縁63との間に非導電領域がある場合を示す。dが負の値は、金属縁63が導電層30と平面視で重なる場合を示す。なお、導電層30と金属ボディ61との間のZ軸方向成分の距離は5mmである。
【0089】
距離dが広がるにつれて、アンテナ80の平均アンテナ利得が上昇する傾向が得られた。距離dは、-5mm以上の場合、-5mm未満の場合に比べて、アンテナ80の周波数帯Wでのアンテナ利得が向上する結果が得られた。
【0090】
なお、
図13のシミュレーション時の各部の寸法等の条件は、dを除いて、
図11の上掲の条件と同一である。
【0091】
図14は、導電層30のシート抵抗とアンテナの平均アンテナ利得との関係をシミュレーションした結果の一例を示す図であり、
図1の窓ガラス101が合わせガラス(
図7)の場合を示す。縦軸の平均アンテナ利得は、DAB Band IIIの周波数帯の電波(垂直偏波)の場合において、DAB Band IIIの周波数帯内の複数の周波数でのアンテナ利得を平均した値を示す。
【0092】
シート抵抗が高くなると、2.8dB/decの傾きで平均アンテナ利得が低下する結果が得られた(-3dB:13Ω/□、-6dB:400Ω/□)。この平均アンテナ利得の低下は、シート抵抗のロスが原因と考えられる。
【0093】
なお、
図14のシミュレーション時の各部の寸法等の条件は、導電層30のシート抵抗の値を除いて、
図11の上掲の条件と同一である。
【0094】
図15は、アンテナ80のアンテナ利得の周波数特性をシミュレーションした結果の一例を示す図であり、DAB Band IIIの周波数帯の電波(垂直偏波)の場合を示す。"導電層なし"は、
図1の窓ガラス101から導電層30を除いた場合を示す。"導電層あり(単板)"は、
図1の窓ガラス101が単板の窓ガラスの場合を示す。"導電層あり、H字状エレメントあり"は、
図2の窓ガラス102が単板の窓ガラスの場合を示す。
【0095】
図15において、DAB Band IIIの周波数帯内の複数の周波数でのアンテナ利得を平均した値は、"導電層なし"では-7.9dB、"導電層あり(単板)"では-3.0dB、"導電層あり、H字状エレメントあり"では-2.7dBとなった。
【0096】
幅wは、"導電層なし"及び"導電層あり(単板)"では、20mm、"導電層あり、H字状エレメントあり"では、100mmとした。
図15において、幅d以外の条件は、
図11の上掲の条件と同一である。このように、補助エレメント90(H字状エレメント)を追加することで、非導電領域110の幅wが狭い"導電層あり(単板)"の場合と同等の平均アンテナ利得が得られた。
【0097】
図16は、アンテナ80のアンテナ利得の周波数特性をシミュレーションした結果の一例を示す図であり、DAB Band IIIの周波数帯の電波(垂直偏波)の場合を示す。"導電層なし"は、
図1の窓ガラス101から導電層30を除いた場合を示す。"低抵抗導電層あり"は、
図1の窓ガラス101において導電層30のシート抵抗が1Ω/□の場合を示す。"高抵抗導電層あり、導電枠なし"は、
図5の窓ガラス105から導電枠96を除き且つ導電層30のシート抵抗が15Ω/□の場合を示す。"高抵抗導電層あり、導電枠あり"は、
図5の窓ガラス105において導電層30のシート抵抗が15Ω/□の場合を示す。
【0098】
図16において、DAB Band IIIの周波数帯内の複数の周波数でのアンテナ利得を平均した値は、"導電層なし"では-7.9dB、"低抵抗導電層あり"では-3.0dB、"高抵抗導電層あり、導電枠なし"では-6.8dB、"高抵抗導電層あり、導電枠あり"では-3.6dBとなった。高抵抗の導電層30の場合、低抵抗の導電枠96を設けることで、低抵抗の導電層30と同等の平均アンテナ利得が得られた。
【0099】
なお、
図16のシミュレーション時の各部の寸法等の条件は、導電層30のシート抵抗の値を除いて、
図11の上掲の条件と同一である。
【0100】
図17は、アンテナ80のアンテナ利得の周波数特性をシミュレーションした結果の一例を示す図であり、DAB Band IIIの周波数帯の電波(垂直偏波)の場合を示す。"導電層なし"は、
図1の窓ガラス101から導電層30を除いた場合を示す。"導電層+H字状エレメント"は、
図2の窓ガラス102の場合を示す。"導電層+L字状エレメント"は、
図3の窓ガラス103の場合を示す。
【0101】
図17において、DAB Band IIIの周波数帯内の複数の周波数でのアンテナ利得を平均した値は、"導電層なし"では-7.9dB、"導電層+H字状エレメント"では-2.7dB、"導電層+L字状エレメント"では-3.6dBとなった。L字状エレメント94を配置することで、平均アンテナ利得が向上する結果が得られた。
【0102】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0103】
10 ガラス板
11 主面
12 主面
13 外周縁
13a,13b,13c,13d 外縁
20 ガラス板
30 導電層
31 外縁
31a,31b,31c,31d 辺
32 一端
33 他端
34 第1仮想線
35 第2仮想線
36 座標軸
37,38 点
40 中間膜
41 第1中間膜
42 第2中間膜
50 遮光層
60 車両
61 金属ボディ
62 開口
63,63a,63b,63c,62d 金属縁
80 アンテナ
81 給電部
82 アンテナエレメント
90 補助エレメント
91 第1補助エレメント
92 第2補助エレメント
93 第3補助エレメント
94 L字状エレメント
95 U字状エレメント
96 導電枠
101,102,103,104,105 窓ガラス
110 非導電領域
120 導電部材