(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044564
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】土木工事排水の処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/52 20230101AFI20240326BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20240326BHJP
G01N 15/06 20240101ALI20240326BHJP
G01N 15/075 20240101ALI20240326BHJP
【FI】
C02F1/52 B
G01N21/27 D
G01N15/06 E
G01N15/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150158
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】長尾 信明
(72)【発明者】
【氏名】栗原 信一
【テーマコード(参考)】
2G059
4D015
【Fターム(参考)】
2G059AA02
2G059BB04
2G059BB06
2G059EE01
2G059EE02
2G059KK01
4D015BA19
4D015BA21
4D015CA10
4D015DA04
4D015DA06
4D015DB01
4D015EA03
4D015EA16
4D015EA32
4D015FA01
4D015FA12
(57)【要約】
【課題】凝集モニタリング装置を用いて土木工事排水の凝集処理を効率よく行うことができる土木工事排水の処理方法を提供する。
【解決手段】沈砂槽1と、10中継槽と、シックナー20と、無機凝集剤添加装置17と、ポリマー凝集剤添加装置18と放流槽30とにより土木工事排水を処理する方法であって、沈砂槽1から中継槽10へ水を移送しているときに酸添加装置11によって酸を添加し、該中継槽10のpH又は粒子間濁度が所定値以上の場合、沈砂槽1から中継槽10に水を移送していないときでも酸を添加する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土木工事排水を受け入れる沈砂槽と、
該沈砂槽から水が移送される中継槽と、
該中継槽に酸を添加する酸添加装置と、
該中継槽から配管を介して水が移送されるシックナーと、
該配管に無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加装置と、
前記シックナーから上澄水が流入する放流槽と、
を有した土木工事排水処理設備により土木工事排水を処理する方法において、
該沈砂槽から中継槽へ水を移送している時に該中継槽のpHが、予め設定した所定pH値A未満の場合には該中継槽への酸の添加を停止し、A以上の場合にはpHの目標値をAとするよう該中継槽への酸の添加量Xで添加することを特徴とする土木工事排水の処理方法。
【請求項2】
前記沈砂槽から中継槽へ水を移送していない時であって、該中継槽のpHが予め設定した所定値Bを超える場合に該中継槽へ前記酸添加装置によって酸を添加量Yで添加するものであって、
該所定値Aと該所定値Bとは以下式(1)を満たす関係にあり、
A+(0.5~1.5)=B (1)
該添加量Yは、前記添加量Xの10~90%である請求項1の土木工事排水の処理方法。
【請求項3】
該中継槽に、該中継槽内の水の粒子間濁度を検出するセンサを設置し、前記沈砂槽から中継槽に水を移送していない時に該センサで検出される粒子間濁度が予め設定した所定値C以上の場合、前記酸添加装置によって該中継槽に酸を添加量Yで添加するものであって、
該添加量Yは、前記添加量Xの10~90%の添加量とする請求項1または2の土木工事排水の処理方法。
【請求項4】
前記センサは、計測光を前記排水の計測領域に照射する計測光照射部と、前記計測領域にある前記排水中の粒子による散乱光を受光する散乱光受光部と、前記散乱光受光部に得られる受光信号の振幅を計測する振幅計測手段を含み、計測された前記振幅の出現を監視および集計し、特定の振幅の発生率または発生頻度を算出して、前記被処理水中のフロックの粒径を表す前記排水の凝集に関わる指標を算出する計測値演算部とを備えている凝集状態モニタリングセンサであり、
該凝集状態モニタリングセンサの測定値の経時変化の極小値に基づいて前記粒子間濁度を検知することを特徴とする請求項3の土木工事排水の処理方法。
【請求項5】
土木工事排水を受け入れる沈砂槽と、
該沈砂槽から水が移送される中継槽と、
該中継槽に酸を添加する酸添加装置と、
該中継槽から配管を介して水が移送されるシックナーと、
該配管に無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加装置と、
前記シックナーから上澄水が流入する放流槽と
を有した土木工事排水処理設備により土木工事排水を処理する方法において、
前記シックナーは、前記配管からの水を受け入れるセンターコアを備えており、
該センターコアに、該センターコア内の水の粒子間濁度を検知するセンサを設置し、
該中継槽から該シックナーに水を移送している時に前記無機凝集剤添加装置を稼働させるものであって、
該センサで検知される粒子間濁度が予め設定した所定値Dとなるように前記無機凝集剤添加装置を稼働させることを特徴とする土木工事排水の処理方法。
【請求項6】
前記沈砂槽から中継槽へ水を移送している時に該中継槽のpHが、予め設定した所定pH値A未満の場合には該中継槽への酸の添加を停止し、A以上の場合にはpHの目標値をAとするよう該中継槽への酸の添加量Xで添加する請求項5の土木工事排水の処理方法。
【請求項7】
前記沈砂槽から中継槽へ水を移送していない時であって、該中継槽のpHが予め設定した所定値Bを超える場合に該中継槽へ前記酸添加装置によって酸を添加量Yで添加するものであって、
該所定値Aと該所定値Bとは以下式(1)を満たす関係にあり、
A+(0.5~1.5)=B (1)
該添加量Yは、前記酸添加量Xの10~90%である請求項6の土木工事排水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム工事やトンネル工事現場などから排出される土木工事排水を浄化する土木工事排水の処理方法に係り、特に凝集処理工程を有する土木工事排水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダム工事やトンネル工事などの土木工事現場からは、土砂成分を含んだ排水が排出される。この排水は、打設したコンクリート中のアルカリ成分を含むことにより、高pHのアルカリ性排水となっていることがある。また、工事を行わない休日に降雨があると、比較的清澄な排水が発生することもある。このように、土木工事排水はpHや濁度などの水質が工事状態や天候に応じて大きく変動する。
【0003】
特許文献1には、土木工事排水を凝集処理することが記載されている。土木工事排水を凝集剤を用いて処理する場合、土木工事排水をまず沈砂槽で沈砂処理した後、中継槽に貯留し、これを凝集処理槽に導入して凝集処理し、凝集フロックを固液分離し、清澄水を放流することが一般的である。
【0004】
図2は、土木工事排水の処理方法を行うための土木工事排水処理設備の一例を示すフロー図である。土木工事排水は、沈砂槽1に導入され、該沈砂槽1内に滞留する間に砂等の比較的粒径の大きい固形粒子が沈降する。沈降した砂等は、排出部2から適宜排出される。図示は省略するが、沈砂槽1には水位計が設けられている。水位計の検出水位が所定の上限水位に達すると、ポンプ(この例では、槽底面よりも所定距離上方に配置された水中ポンプ)3により沈砂槽1内の水が配管4を介して中継槽10に送水(移送)される。沈砂槽1内の水位が規定の下限水位にまで低下すると、ポンプ3が停止する。
【0005】
中継槽10は、沈砂槽1からの水を一時的に貯留しておくためのものである。中継槽10の容積V10と沈砂槽1の容積V1との比V10/V1は通常10~50程度である。
【0006】
中継槽10には、硫酸の添加装置11、pH計13及び移送ポンプ15が設けられている。硫酸添加装置11は、pH計13で検出される中継槽10内のpHが所定の上限pH(例えば8.5)以上にまで上昇すると、規定量の硫酸を中継槽10に添加する。これにより、中継槽10内のpHが低下する。なお、硫酸以外の酸(例えば塩酸、炭酸ガス等)を用いてもよい。
【0007】
中継槽10には、水位計(図示略)が設けられている。該水位計で検出される中継槽10内の水位が所定の上限水位に達すると、移送ポンプ15(この例では、槽底面よりも所定距離上方に配置された水中ポンプ)により中継槽10内の水が配管16を介してシックナー20に送水(移送)される。中継槽10内の水位が規定の下限水位にまで低下すると、移送ポンプ15が停止する。
【0008】
配管16には、無機凝集剤(ポリ塩化アルミ(PAC)、硫酸バンド等。この例ではPAC)の添加装置17と、ポリマー凝集剤(有機高分子凝集剤)の添加装置18とが設けられている。ポリマー凝集剤添加装置18は、無機凝集剤添加装置17よりも下流側に設けられている。
【0009】
各凝集剤添加装置17,18は、それぞれ、凝集剤の水溶液を貯留するタンクと、薬注ポンプ等を備えている。移送ポンプ15がONとなっているときに各薬注ポンプが作動し、各凝集剤がそれぞれ配管16に添加される。ポンプ15がOFFとされると、各薬注ポンプがOFFとなり、各凝集剤の添加が停止する。
【0010】
各凝集剤が添加された配管16からの水は、配管16内を流れる間に撹拌混合され、凝集反応が進行し、次いで配管16からシックナー20のセンターコア21内に導入される。センターコア21は、筒状であり、シックナー20の槽体の中央付近に筒軸心線方向を上下方向にして配置されている。
【0011】
配管16からセンターコア21内に導入された水は、凝集反応がさらに進行し、フロックが成長する。このフロックを含む水は、センターコア21の下端からシックナー20内に拡がり、フロックがシックナー20内に沈降する。沈降したフロックは、汚泥取出部23によって間欠的に又は連続的に引き抜かれる。
【0012】
シックナー20の上澄水は、清澄水であり、オーバーフロー配管24を介して放流槽30に流入する。放流槽30内の清澄水は、放流ポンプ31及び配管32によって河川等の放流先に送水される。
【0013】
この土木工事排水の水処理設備においては、各移送ポンプ3,15は、30秒~数分程度の短時間で発停する(ON、OFFを繰り返す。)。
【0014】
そのため、仮に
図2の設備において、pH計13の検出pHの上昇に応じて硫酸を添加し、移送ポンプ15のみに連動させて凝集剤の注入制御を実施した場合には、下記のような問題が発生していた。
【0015】
(1) 中継槽10に流入する排水中のアルカリ量が、移送ポンプ3がONとなって沈砂槽1から送液が起こる流入機会毎に大きく変動する。これに対して中継槽10では、予め設定した閾値によって硫酸添加装置11の薬注ポンプをON/OFFする薬注制御を行っており、一定の薬注量で硫酸が投入される。そのため、pH負荷が小さい場合には中継槽10内のpHが急激に低下する。そのため、中継槽10内のpHの変動が大きく、結果として後段のpH変動も大きくなる。
(2) 凝集剤の薬注制御において、pHを安定化することは重要な制御要素である。上記のようにpHが大きく変動すると、凝集反応が不安定となり、凝集剤が添加されているにもかかわらず処理水の濁度が増加する場合があった。
(3) 中継槽10への流入水中の懸濁物質(SS)濃度や凝集負荷量がかなりの幅で変動するため、凝集剤を定量で注入すると、凝集負荷が低い場合には凝集剤添加量が過剰となり、処理水中に未反応の薬品が残る。逆に、凝集負荷量が高い場合には凝集剤添加量が不足となり、処理水中の濁度が増加する。
【0016】
そこで、中継槽10に濁度計を設置し、検出濁度に応じて添加薬品量を制御することが考えられる。しかし、一般に、流入水中の凝集負荷とSS濃度が比例しない。(すなわち、SSの粒子径が大小広く分布しており、沈下しづらい微細粒子をどの程度含むかが凝集剤の必要量に大きく関係しているため、濁度計で測定される濁度からは微細粒子濃度を精度よく検知することが困難である。)そのため、濁度計検出値に基づいて凝集剤添加量を制御する場合、凝集が十分に行われない場合がある。
【0017】
本願出願人は、凝集処理水中の凝集状態を精度よくモニタリングすることができる凝集状態モニタリング装置を特許文献2,3で提案している。
【0018】
図3は、特許文献3の凝集状態モニタリングセンサのプローブ部分の構成を示している。このプローブは、直交する面21a,21b及びそれらが交わる頂部21cを有したブロック21と、面21aに沿って設けられた、凝集処理液に向ってレーザ光を照射する発光部22と、面21bに沿って設けられた、受光光軸を該発光部22の発光光軸と直交方向とした受光部23とを有する。また、凝集状態モニタリングセンサ20は、発光部22の発光作動及び受光部23の受光信号の解析を行うために、発光回路、検波回路及び計測回路(図示略)を備えている。計測回路は、タイミング回路、A/D変換部、演算部等を有する。
【0019】
発光部22から、頂部21c近傍の計測領域Aに照射されたレーザー光が計測領域A内の粒子によって散乱され、この散乱光が受光部23で受光され、この受光強度の経時変化に基づいて凝集状態が計測される。なお、ブロック21は不透明材料よりなる。
【0020】
発光回路は、タイミング回路からの信号に応じて発光部に一定の変調周波数を持った電気信号を送り、レーザ発光を行わせる。発光部は、発光回路からの信号によって、レーザ光を発光する。受光部は、レーザ光が水中の懸濁物に当たって発生した散乱光を受けて、電気信号に変換する。検波回路は、受光部からの電気信号から変調成分を除去し、散乱光強度に応じた受光電圧を出力する。
【0021】
計測回路は、発光回路に発光のための信号(特定の周波数変調波)を送信すると共に、検波回路からの信号をデジタル信号に変換し、論理演算して凝集に関する情報を出力する。
【0022】
図4は、
図3の計測領域Aにおけるレーザー光Lの光軸と垂直な断面を示す模式図である。
図4の通り、ある時点では、計測領域Aに5個の粒子が存在している。この時点で計測領域Aに照射されたレーザー光が、各粒子によって散乱され、散乱光Sが受光部13に入射する。この時点から所定時間Δt(好ましくは0.1~10mSecの間から選定された時間。例えば、約1mSec)が経過した時点では、計測領域Aに存在する粒子数が変動する(理論上は、粒子数が変化しないこともあるが、粒子がブラウン運動し、また計測槽12内に液が連続的に注入するので、通常は該粒子数は変動する。)。
【0023】
粒子数が変動すると、それに連動して散乱光強度が変動し、受光部23の受光強度が変動する。
【0024】
粒子の粒径が大きいほど、1個の粒子が計測領域Aに出入りしたときの該受光強度の変動幅が大きいものとなる。従って、この受光強度の変動幅から、計測領域Aに出入りした粒子の粒径の大小を検出することができる。すなわち、任意の時刻tkの受光強度と、Δt経過後の時刻tk+1の受光強度との差は、該Δtの間に計測領域Aに出入りした粒子の表面積に比例した値となる。
【0025】
図5は、凝集状態モニタリングセンサの散乱光強度を信号処理して得られる凝集状態モニタリングセンサ出力信号(受光信号強度)の経時変化の一例を示している。
図5における出力信号は、受光部23の受光強度(散乱光強度)に比例した値であり、単位は、例えばmVである。
【0026】
このセンサでは、センサの発光素子の消耗を抑制するために、発光素子を間欠的に作動させる。一例としては、200mSec発光作動させた後、1800mSec停止するように、2秒に1回のペースで発光させる。なお、200mSec、1800mSec及び2秒は一例であり、これに限定されるものではない。
【0027】
凝集状態モニタリングセンサの受光信号強度から排水中の固形物量を評価する方法の第1の態様は、
図6のように、受光信号強度を時間で積分し、この積分値が大きいほど固形物量が多いと判定する方法である。
図6では、時刻T(mSec)~T+200(mSec)間、T+2000(mSec)~T+2200(mSec)間、…のように200mSecの発光期間の受光信号強度を積分している。即ち、
図6でドットを付した部分の面積(S
1,S
2…)を経時的に測定している。
【0028】
排水中の固形物量を評価する方法の第2態様は、
図7のように各発光期間時刻T(mSec)~T+200(mSec)間、T+2000(mSec)~T+2200(mSec)間、…の最小受光信号強度Imin(1),Imin(2),…を求める方法である。この方法では、所定時間(例えば10分間。この10分間に発光期間は300個(10×60÷2=300)存在する。)における最小受光信号強度(以下、ボトム値ということがある。)Imin(1),Imin(2)…Imin(300)の和又は平均値を求め、この値を排水中の固形物量の指標値とする。
【0029】
上記第1の態様、第2の態様では、発光素子を間欠的に作動させるが、発光素子は連続で作動させてもよい。この場合、発光素子が連続して発光している所定時間(例えば200秒)を更に短い単位(例えば200mSec)に区切り、この単位時間での受光信号強度の積分値やボトム値を算出する。引き続き、この単位時間での受光信号強度の積分値やボトム値を、所定時間にわたって、更に積算あるいは平均(加算移動平均)する。そして、所定時間にわたって得られた積算値或いは平均値を排水中の固形物量の指標値とする。
【0030】
排水中の固形物量を評価する方法の第3態様は、所定時間における受光信号強度のピークの数を検出し、各ピークの信号強度を積算する方法である、この積算値に基づいて固形物量を評価する。
【0031】
なお、上記所定時間は200mSec~20分、特に200mSec~10分の間から選ばれることが好ましく、上記の200秒及び10分は一例にすぎない。
【0032】
排水中の固形物量を評価する方法の第4態様を
図8a,8bを参照して次に説明する。
【0033】
図8aは、時刻t
1,t
2…t
zの各時刻において測定された受光信号強度をプロットしたグラフであり、各時刻の間隔Δt(すなわちt
k-t
k-1)は前述の通り、好ましくは0.1~10mSec、例えば1mSecである。
【0034】
図8bは、
図8aにおいて、極小点P
1,P
2…と、極大点Q
1,Q
2…とを記入し、極小点と極大点との差(以下、ピーク差ということがある。)h
1,h
2…を記入した説明図である。なお、ピーク差が所定値以下の微小な極小、極大は外乱との差異が不明であるため無視して処理する。例えば、h
1が所定値以下の場合、P
1≧P
2であればP
1とQ
1は無視してデータ処理し、P
1<P
2であればQ
1とP
2は無視して、P
1とQ
2との差をピーク差となるようデータ処理する。
【0035】
上述の通り、任意の時刻tk-1の受光信号強度と時刻tkの受光信号強度との差hkは、時刻tk-1~tk間に計測領域Aに出入りした粒子の表面積に相関した値である。
【0036】
そこで、時刻t1~tzのΔt・z秒間(zは例えば200とされ、Δt=1mSecである場合Δt×zは0.2秒となる。)におけるすべてのピーク差h1,h2…hnの和に基づいて排水中の固形物量を評価する。
【0037】
凝集状態モニタリングセンサの受光信号強度から排水中の凝集粒子(フロック)同士の間の液の濁度(粒子間濁度)を検知ないし推定することもできる。すなわち、
図4~7のように、凝集状態モニタリングセンサの出力信号は、計測領域への凝集フロックの出入りに伴い、ピーク(極大)とボトム(極小)の間で変動が繰り返されるピーク・ボトム型変動を示す。
【0038】
このボトム値は、計測領域から多くの凝集フロックが出ていった状態におけるセンサ出力値である。従って、このボトム値は、凝集フロック同士の間の液中の微細懸濁物質濃度、すなわち粒子間濁度を表わす指標値であり、粒子間濁度が低いほど、ボトム値が小さくなる。そのため、土木工事排水を凝集処理した凝集処理水を凝集状態モニタリングセンサでモニタリングした場合、ボトム値が低いほど、凝集が良好に行われていると判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0039】
【特許文献1】特開2015-139767号公報
【特許文献2】特開2016-3974号公報
【特許文献3】特開2017-26438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0040】
pH調整剤を注入する中継槽10のpH変動が大きくなる原因は、中継槽10への流入動作が頻度高く断続的に行われることと、流入水中のpH負荷量が流入機会毎に変動することである。
【0041】
流入水は、休日等で工事によって排出される汚水が減少した場合は、自然界からの放出水(雨水や湧水など)のみとなり、極端に清澄な水(凝集する必要のない清澄水)が流入している場合が多い。このような清澄水は、凝集処理せずに放流するほうが、環境への負荷は少ない可能性がある。従って、中継槽10への流入水の水質に応じて凝集処理の必要性を判断することが望ましい。
【0042】
また、凝集処理効果を適切に判断することが必要となる。
【0043】
本発明は、凝集状態モニタリング装置を用いて土木工事排水の凝集処理を効率よく行うことができる土木工事排水の処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0044】
本発明の土木工事排水の処理方法は、以下を要旨とする。
【0045】
[1] 土木工事排水を受け入れる沈砂槽と、
該沈砂槽から水が移送される中継槽と、
該中継槽に酸を添加する酸添加装置と、
該中継槽から配管を介して水が移送されるシックナーと、
該配管に無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加装置と、
前記シックナーから上澄水が流入する放流槽と、
を有した土木工事排水処理設備により土木工事排水を処理する方法において、
該沈砂槽から中継槽へ水を移送している時に該中継槽のpHが、予め設定した所定pH値A未満の場合には該中継槽への酸の添加を停止し、A以上の場合にはpHの目標値をAとするよう該中継槽への酸の添加量Xで添加することを特徴とする土木工事排水の処理方法。
【0046】
[2] 前記沈砂槽から中継槽へ水を移送していない時であって、該中継槽のpHが予め設定した所定値Bを超える場合に該中継槽へ前記酸添加装置によって酸を添加量Yで添加するものであって、
該所定値Aと該所定値Bとは以下式(1)を満たす関係にあり、
A+(0.5~1.5)=B (1)
該添加量Yは、前記添加量Xの10~90%である[1]の土木工事排水の処理方法。
【0047】
[3] 該中継槽に、該中継槽内の水の粒子間濁度を検出するセンサを設置し、前記沈砂槽から中継槽に水を移送していない時に該センサで検出される粒子間濁度が予め設定した所定値C以上の場合、前記酸添加装置によって該中継槽に酸を添加量Yで添加するものであって、
該添加量Yは、前記添加量Xの10~90%の添加量とする[1]または[2]の土木工事排水の処理方法。
【0048】
[4] 前記センサは、計測光を前記排水の計測領域に照射する計測光照射部と、前記計測領域にある前記排水中の粒子による散乱光を受光する散乱光受光部と、前記散乱光受光部に得られる受光信号の振幅を計測する振幅計測手段を含み、計測された前記振幅の出現を監視および集計し、特定の振幅の発生率または発生頻度を算出して、前記被処理水中のフロックの粒径を表す前記排水の凝集に関わる指標を算出する計測値演算部とを備えている凝集状態モニタリングセンサであり、
該凝集状態モニタリングセンサの測定値の経時変化の極小値に基づいて前記粒子間濁度を検知することを特徴とする[3]の土木工事排水の処理方法。
【0049】
[5] 土木工事排水を受け入れる沈砂槽と、
該沈砂槽から水が移送される中継槽と、
該中継槽に酸を添加する酸添加装置と、
該中継槽から配管を介して水が移送されるシックナーと、
該配管に無機凝集剤を添加する無機凝集剤添加装置と、
前記シックナーから上澄水が流入する放流槽と
を有した土木工事排水処理設備により土木工事排水を処理する方法において、
前記シックナーは、前記配管からの水を受け入れるセンターコアを備えており、
該センターコアに、該センターコア内の水の粒子間濁度を検知するセンサを設置し、
該中継槽から該シックナーに水を移送している時に前記無機凝集剤添加装置を稼働させるものであって、
該センサで検知される粒子間濁度が予め設定した所定値Dとなるように前記無機凝集剤添加装置を稼働させることを特徴とする土木工事排水の処理方法。
【0050】
[6] 前記沈砂槽から中継槽へ水を移送している時に該中継槽のpHが、予め設定した所定pH値A未満の場合には該中継槽への酸の添加を停止し、A以上の場合にはpHの目標値をAとするよう該中継槽への酸の添加量Xで添加する[5]の土木工事排水の処理方法。
【0051】
[7] 前記沈砂槽から中継槽へ水を移送していない時であって、該中継槽のpHが予め設定した所定値Bを超える場合に該中継槽へ前記酸添加装置によって酸を添加量Yで添加するものであって、
該所定値Aと該所定値Bとは以下式(1)を満たす関係にあり、
A+(0.5~1.5)=B (1)
該添加量Yは、前記酸添加量Xの10~90%である[6]の土木工事排水の処理方法。
【発明の効果】
【0052】
本発明の土木工事排水の処理方法によると、土木工事排水の処理におけるpH制御や凝集剤添加を適切に行い、土木工事排水を効率よく凝集処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】実施の形態を説明する土木工事排水処理設備のフロー図である。
【
図2】従来例を説明する土木工事排水処理設備のフロー図である。
【
図3】凝集状態モニタリングセンサの構成図である。
【
図4】凝集状態モニタリングセンサの計測領域の模式図である。
【
図5】凝集状態モニタリングセンサの出力を示すグラフである。
【
図6】凝集状態モニタリングセンサの出力を示すグラフである。
【
図7】凝集状態モニタリングセンサの出力を示すグラフである。
【
図8】凝集状態モニタリングセンサの出力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0055】
図1は、実施の形態に係る土木工事排水の処理方法を実施するための土木工事排水処理設備を示している。
【0056】
図1では、中継槽10及びセンターコア21に凝集状態モニタリングセンサ14,22が設置されている。また、硫酸添加装置11を制御する制御器12が設置されている。移送ポンプ3のON,OFFを表わす移送ポンプ稼働信号と、pH計13の検出信号と、凝集状態モニタリングセンサ14の検出信号とが制御器12に入力され、この制御器12によって硫酸添加装置11が制御される。
【0057】
また、各凝集剤添加装置17,18を制御する制御器26が設置されている。移送ポンプ15のON,OFFを表わす移送ポンプ稼働信号と、凝集状態モニタリングセンサ22の検出信号が制御器26に入力され、制御器26によって各凝集剤添加装置17,18が制御される。
【0058】
図1の設備のその他の構成は、
図2の設備と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0059】
凝集状態モニタリングセンサ14,22としては、特許文献3(特開2017-26438)の凝集モニタリング装置(凝集処理される被処理水の処理状態を監視する凝集モニタリング装置であって、計測光を前記被処理水の計測領域に照射する計測光照射部と、前記計測領域にある前記被処理水の粒子による散乱光を受光する散乱光受光部と、前記散乱光受光部に得られる受光信号の振幅を計測する振幅計測手段を含み、計測された前記振幅の出現を監視および集計し、特定の振幅の発生率または発生頻度を算出して、前記被処理水中のフロックの粒径を表す前記被処理水の凝集に関わる指標を算出する計測値演算部と、を備える凝集モニタリング装置。)、特にそれが特許された特許第6281534号公報に記載のモニタリング装置を好適に用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0060】
なお、特許第6281534号の凝集モニタリング装置は、
「 凝集処理される被処理水の処理状態を監視する凝集モニタリング装置であって、
計測光を前記被処理水の計測領域に照射する計測光照射部と、
前記計測領域にある前記被処理水の粒子による散乱光を受光する散乱光受光部と、
前記散乱光受光部に得られる受光信号の振幅を計測する振幅計測手段を含み、計測された前記振幅の出現を監視および集計し、特定の振幅の発生率または発生頻度を算出して、前記被処理水中のフロックの粒径を表す前記被処理水の凝集に関わる指標を算出する計測値演算部と、
を備え、
前記振幅計測手段は、前記受光信号が上昇から下降に変化する第1の変曲点および下降から上昇に変化する第2の変曲点を検出し、前記第1の変曲点および第2の変曲点のレベル差から前記振幅を計測することを特徴とする凝集モニタリング装置。」である。
【0061】
図1の設備においても、
図2の場合と同様に、土木工事排水は不定期に土木工事現場から排出される水であり、沈砂槽1に流れ込む。沈砂槽1内の水位が所定の上限値に達すると、移送ポンプ3が起動し、沈砂槽1内の水を中継槽10に移送する。沈砂槽1内の水位が下限値以下になると移送ポンプ3が停止する。移送ポンプ3の1回の稼働時間は、通常1~120分、特に0.1~30分程度の短いものである。ただし、ゲリラ豪雨や台風などにより、20mm/時間を超えるような降雨時には、数時間、場合によっては48時間以上となる場合もある。
【0062】
この実施の形態では、硫酸添加装置11は、沈砂槽1からポンプ3によって中継槽10に水が送り込まれている時(ポンプ3のON時)であって、pH計13で検出されるpHが予め設定した所定値A(6~10、特に7~9の間から選定された値。例えば8.5)未満の場合には中継槽10への硫酸の添加を停止し、pH計13で検出されるpHがA以上の時には、pH計13の目標値がAとなるよう制御器12で添加される硫酸添加量Xを演算し、該添加量Xで硫酸が中継槽10に添加される。なお、制御器12での制御は具体的には、所定値A(例えば8.5)を目標値とするPI或いはPID制御を適用することができるが、これに限定されるものでない。
本発明の一態様では、ポンプ3が停止したときであっても、pH計13で検出されるpH値が予め設定した所定値Bを超える場合には、硫酸を添加量Yで添加する。ここで、所定値Bは所定値Aと式(1)の関係にある。
A+(0.5~1.5)=B (1)
また、酸の添加量YもpH計13の測定値に対して制御されるものであるが、添加量Yは、ポンプ3が稼働して沈砂槽1から中継槽10に排水が移送されている場合の演算結果である添加量Xの10~90%、好ましくは20~80%とすることが好ましい。このような範囲とすることで、ポンプ3が停止中の硫酸の注入量を適切に設定することができる。
【0063】
また、土木工事現場の排水の濁質成分はアルカリ分を主体とする。そのため、本発明の別の一態様では、ポンプ3が停止したときでも中継槽10に設置された凝集状態モニタリングセンサ14の出力のボトム値が、予め設定された所定値C以上であるときには、ポンプ3が停止したときでも硫酸を添加量Yで添加する。この時の硫酸の添加量Yは、上記と同様に設定される。
【0064】
図1においても、中継槽10内の水位が上限値に達すると、移送ポンプ15が起動し、配管16を介してシックナー20のセンターコア21内に中継槽10内の水を送り込む。移送ポンプ15の1回の稼働時間は、通常1~120分、特に0.1~30分程度の短いものである。ただし、ゲリラ豪雨や台風などにより、20mm/時間を超えるような降雨時には、数時間、場合によっては48時間以上となる場合もある。
【0065】
ポンプ15が稼働している間は、原則として、配管16に凝集剤添加装置17,18から無機凝集剤及びポリマー凝集剤がそれぞれ注入され、配管15内で撹拌・混合が行われて、センターコア21内に放出される。
【0066】
センターコア21内の凝集水は、センターコア21の下部からシックナー20内に流入し、凝集フロックはシックナー20の底部に沈下して、固液分離が行われる。
【0067】
本発明の一態様では、ポンプ15が稼働している間、センターコア21の凝集状態モニタリングセンサ22のボトム値の変化(フロック間濁度の変化)から、凝集性を評価し、凝集剤添加装置17による凝集剤薬注量を調整する。具体的には、センサ22のボトム値(
図7のImin(1),Imin(2)…)に基づいて凝集剤添加装置17による無機凝集剤薬注量をPI制御、又はPID制御する。
また、ポリマー凝集剤はポンプ15が稼働している間、一定量で添加される(ポンプ15が停止している場合は、ポリマー凝集剤の添加も停止する)。
【0068】
凝集フロックが沈下した後の上澄み液はオーバーフロー配管24を通って放流槽30に移動する。放流槽30の水位が所定以上となると、放流槽30内のポンプ31が起動し、槽内の清澄水が河川等に放出される。シックナー20内に堆積物が所定量以上溜まると、引き抜かれ、脱水機等で圧搾等によって脱水ケーキとなり、廃棄される。
【0069】
本発明の好適な一態様の土木排水処理方法は、次の特徴を有している。
【0070】
(1) 中継槽10に新たな排水が流入するタイミングであって、pH計13で検出されるpHが規定値(予め設定した所定値A)以上の場合に硫酸等の注入を実施する。この場合の硫酸の注入量は規定値を目標値として注入量が制御される(この時のpH値における添加量をXとする)。なお、規定値未満の場合には、排水が流入時(移送ポンプ3のON)であっても、硫酸の注入は停止する。
【0071】
逆に、中継槽10への排水の流入が停止している場合には、凝集状態モニタリングセンサ14で検出されるフロック間濁度が規定値(予め設定した所定値C)以上(又は超える)にあるか、またはpH計13で検出されるpHが規定値(予め設定した所定値B)以上(又は超える)である場合には、これら規定値を目標値として硫酸の添加量が演算制御される。このときの添加量Yは、中継槽10のpH値が同じ時のX(中継槽10への排水が流入している場合の添加量)の10~90%、好ましくは20~80%に設定される。なお、中継槽10への排水の流入が停止している場合、フロック間濁度が所定値C未満であるか、またはpHが所定値B未満の場合には、硫酸の注入は停止する。
【0072】
(2) 中継槽10からシックナー20への移送も断続的に行われるため、凝集状態モニタリングセンサ22をシックナー20のセンターコア21に設置し、移送ポンプ15の稼働中におけるセンサ22のボトム値の規定値を目標値として無機凝集剤の添加量を制御する。
【実施例0073】
土木工事現場に設置された
図1の設備を用いて以下の土木工事排水処理を行った。なお、放流槽30に濁度計(オプテックス株式会社製)を設置して濁度を測定した。
【0074】
設備の各槽の容積、センサの仕様等は以下の通りである。
【0075】
沈砂槽1:100m3、深さ1m
中継槽10:10m3、深さ2m
シックナー20:30m3、深さ3m
センターコア21:直径1m、水没部分の高さ1m
放流槽30:5m3、深さ1m
凝集状態モニタリングセンサ14,22:栗田工業株式会社製S.sensingCS-PB
ポンプ3の送水速度:100m3/Hr
ポンプ15の送水速度:100m3/Hr
硫酸濃度:70質量%
無機凝集剤:PAC(ポリ塩化アルミニウム液状品)
ポリマー凝集剤:栗田工業株式会社製クリフロックPA-331
【0076】
この現場では、排水の平均的な水質はpH6.5~7.5、濁度0~50であった。
【0077】
[実験例1(比較例1)]
pH計13で検出される中継槽10内のpHが8.5以上にまで上昇すると硫酸を500L/minで添加し、pH計13の検出pHが8.3以下になると硫酸添加を停止した。
【0078】
PACとポリマー凝集剤は、中継槽10の移送ポンプ15のON時にのみ薬注した。PAC薬注量は15mL/min、ポリマー凝集剤薬注量は2L/minとした。
【0079】
このときの中継槽10内及び放流槽30内のpHの経時変化を
図9に、放流槽30の濁度を
図10に示す。
【0080】
この比較例は、硫酸添加を
中継槽10内pH≧8.5で添加
中継槽10内pH≦8.2で停止
とするものであり、中継槽10への流入水の有無(ポンプ3のON、OFF)にかかわらず硫酸を薬注するため、中継槽および放流槽ともにpHの変動が大きい(放流槽pH=5.5から9.5、中継槽pH=6から9.5で変動)。また、PACの添加量は移送ポンプ15のON時に定量注入するだけなので、放流槽の濁度は30度以下となることはなかった。
【0081】
[実験例2(実施例1)]
沈砂槽1の移送ポンプ3のON時で、中継槽10のpH<7.5の際には硫酸の薬注を停止し、pH≧7.5の際には目標pH7.5となるように硫酸の添加量をPI制御で薬注し、ポンプ3の停止中でも中継槽10のpH≧8.5の時にはその時のpHに基づくPI演算時の50%となる添加量で硫酸を添加した(ポンプ停止中は、pH<8.5の場合にはPACの注入は停止)。PACとポリマー凝集剤は中継槽10の移送ポンプ15のON時にのみ薬注、さらに、PACの添加量は凝集状態モニタリングセンサ22のボトム値に基づいてPI制御した(ただし、放流水に過剰にPACが残留しないよう、PACの最大注入量は40mL/minとした)。また、ポリマー凝集剤薬注量は2L/min。
【0082】
このときの中継槽10及び放流槽30内のpHの経時変化を
図11に、放流槽の濁度を
図12に示す。
【0083】
流入水の有無による新たな負荷流入に対応して硫酸薬注を実施すると共に、移送ポンプ3の停止時であっても、pH≧8.5の時にはその時のpHに基づくPI演算時の50%となる添加量で硫酸の薬注を実施したので、中継槽10及び放流水槽30のいずれのpHも実験例1に比べて変動が抑えられている。
さらに、PACの添加量をPI制御したことにより、負荷状況に応じてPAC注入量を制御でき、排水中の濁質が多く、無機凝集剤の最大注入量でも無機凝集剤の添加量が不足した場合に最大で濁度が50度まで上昇するものの、実験例1の場合と比較して相対的に濁度は低く、放流槽濁度は良いときでほぼ0となっている。