(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044616
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】プレススルーパッケージ用シート、プレススルーパッケージ及びプレススルーパッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20240326BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240326BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240326BHJP
B65D 65/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/30 D
B32B27/32
B65D65/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】37
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150249
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】井口 礼康
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA21
3E086AB01
3E086AD07
3E086BA15
3E086BB51
3E086BB66
4F100AK02A
4F100AK02C
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK07A
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4F100AK15A
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4F100AK17A
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4F100AK17D
4F100BA01
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4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
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4F100CB05A
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4F100GB15
4F100GB66
4F100JA05A
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4F100JC00
4F100JD04
4F100JK07A
4F100JK07C
4F100JL01
4F100JN01
4F100JN30
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】本発明は、ポリエチレン系樹脂を使用した場合であっても優れた成形性を発揮し得るPTP用シートを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を含むプレススルーパッケージ用シートであって、130℃における貯蔵弾性率が1.0×10
7Pa以上である層を少なくとも1層を有する、プレススルーパッケージ用シートに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を含むプレススルーパッケージ用シートであって、
130℃における貯蔵弾性率が1.0×107Pa以上である層を少なくとも1層を有する、プレススルーパッケージ用シート。
【請求項2】
前記層の130℃における貯蔵弾性率が3.0×108Pa以下である、請求項1に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項3】
前記層がフッ素系樹脂を含む、請求項1に記載のプレススルーパッケージシート。
【請求項4】
前記層がポリクロロトリフルオロエチレンを含む、請求項1に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項5】
ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及び粘着付与樹脂を含む基材層を有する、請求項1に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項6】
前記基材層がポリプロピレン系樹脂を50質量%以上含む第1の層と、ポリエチレン系樹脂を含む第2の層とを有する、請求項5に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項7】
前記第1の層が前記基材層の両最外層を構成する、請求項6に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項8】
前記第2の層が、ポリエチレン系樹脂を30質量%以上含む、請求項6に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項9】
前記第2の層が、ポリプロピレン系樹脂をさらに含む、請求項6に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項10】
下記式(1)で算出される、周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、120℃の貯蔵弾性率(E’(120℃))と130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))の間の、温度変化に対する貯蔵弾性率の対数値の傾きが-0.045~0である、請求項1に記載のプレススルーパッケージ用シート。
温度変化に対する貯蔵弾性率(対数値)の傾き
=[logE’(130℃)-logE’(120℃)]/(130-120) (1)
【請求項11】
下記式(2)で算出される、周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))と140℃の貯蔵弾性率(E’(140℃))の間の、温度変化に対する貯蔵弾性率の対数値の傾きが-0.030~0である、請求項1に記載のプレススルーパッケージ用シート。
温度変化に対する貯蔵弾性率(対数値)の傾き
=[logE’(140℃)-logE’(130℃)]/(140-130) (2)
【請求項12】
前記ポリエチレン系樹脂がバイオマスポリエチレンである、請求項1に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項13】
ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及び粘着付与樹脂を含む基材層と、
少なくとも1層のバリア層とを有する、プレススルーパッケージ用シート。
【請求項14】
前記バリア層がフッ素系樹脂を含む、請求項13に記載のプレススルーパッケージシート。
【請求項15】
前記バリア層がポリクロロトリフルオロエチレンを含む、請求項13に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項16】
前記粘着付与樹脂の軟化点が80~150℃である、請求項13に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項17】
前記粘着付与樹脂が、石油樹脂、テルペン樹脂、クロマン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、およびこれらの水素添加誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項13に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項18】
前記基材層が、ポリプロピレン系樹脂を50質量%以上含む第1の層と、ポリエチレン系樹脂を含む第2の層とを有する、請求項13に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項19】
前記第1の層が前記基材層の両最外層を構成する、請求項18に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項20】
前記第2の層が、ポリエチレン系樹脂を30質量%以上含む、請求項18に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項21】
前記第2の層が、ポリプロピレン系樹脂をさらに含む、請求項18に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項22】
前記第1の層と前記第2の層が直接接するように積層されている、請求項18に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項23】
前記第2の層の厚さが、前記第1の層の厚さの100%以上である、請求項18に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項24】
前記第2の層の厚さが、前記第1の層の厚さの2000%以下である、請求項23に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項25】
下記式(1)で算出される、周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、120℃の貯蔵弾性率(E’(120℃))と130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))の間の、温度変化に対する貯蔵弾性率の対数値の傾きが-0.045~0である、請求項13に記載のプレススルーパッケージ用シート。
温度変化に対する貯蔵弾性率(対数値)の傾き
=[logE’(130℃)-logE’(120℃)]/(130-120) (1)
【請求項26】
下記式(2)で算出される、周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))と140℃の貯蔵弾性率(E’(140℃))の間の、温度変化に対する貯蔵弾性率の対数値の傾きが-0.030~0である、請求項13に記載のプレススルーパッケージ用シート。
温度変化に対する貯蔵弾性率(対数値)の傾き
=[logE’(140℃)-logE’(130℃)]/(140-130) (2)
【請求項27】
周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、120℃の貯蔵弾性率(E’(120℃))が2.4×107~7.5×107Paである、請求項13に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項28】
周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))が0.8×107~5.0×107Paである、請求項13に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項29】
周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、140℃の貯蔵弾性率(E’(140℃))が0.5×107~3.0×107Paである、請求項13に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項30】
厚みが10~500μmである、請求項13に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項31】
前記ポリエチレン系樹脂の密度は0.930~0.980g/cm3である、請求項13に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項32】
前記ポリエチレン系樹脂がバイオマスポリエチレンである、請求項13に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項33】
ヘーズが50%以下である、請求項13に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項34】
水蒸気透過率が0.8g/m2/24h以下である、請求項13に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項35】
医薬包装用である、請求項1~34のいずれか1項に記載のプレススルーパッケージ用シート。
【請求項36】
請求項1~34のいずれか1項に記載のプレススルーパッケージ用シートを備えた、プレススルーパッケージ。
【請求項37】
請請求項1~34のいずれか1項に記載のプレススルーパッケージ用シートをプラグ成形する、プレススルーパッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレススルーパッケージ用シート、プレススルーパッケージ及びプレススルーパッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品等の包装分野においては、カプセルや錠剤等の固形剤を包装したPTP(プレススルーパッケージ)が利用されている。
【0003】
PTPとは、例えば透明のシートに圧空成形や真空成形、プラグ成形等を施すことにより、カプセル等の固形剤を収納するポケット部を形成し、ポケット部にカプセル等を収納した後、例えばアルミ箔のように手で容易に引き裂いたり、容易に開封したりできる材質の箔やフィルムを蓋材として積層して一体化した形態の包装である。PTPを用いることで、透明なシートのポケットに収納された固形剤や食品等を開封前に直接肉眼で確認でき、開封する際には、ポケット部の固形剤等を指で押して蓋材を押し破ることで、内容物を容易に取り出すことができる。
【0004】
PTPに用いられるシートの原料としては、従来、良好な熱成形性、常温での剛性、耐衝撃性、透明性を有するなどの観点から、ポリ塩化ビニル(以下「PVC」ということもある)が使用されてきた。ところが、PVCは、燃焼の方法によっては塩化水素ガスが発生し、燃焼炉を劣化させたり、環境汚染を引き起こしたりする等の問題があった。また、PVCは、防湿性も不十分な場合があり、内容物の長期保存の面からも、PVCに替わる材料が求められていた。
【0005】
PVCの代替素材として、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂の使用が検討されている。例えば、特許文献1には、ポリプロピレン樹脂100重量部に対し、水添石油樹脂3~20重量部およびシリカ微粉末0.05~1重量部を含むプレススルーパック包装用ポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、ポリプロピレン系樹脂(a)を主成分として含有する層(A)と、層(A)に隣接するポリエチレン系樹脂(b)を主成分として含有する層(B)の2層を少なくとも備えるポリオレフィン系シートであって、層(A)および層(B)の少なくとも一方に、石油樹脂、テルペン樹脂、クロマン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、およびこれらの水素添加誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(c)を含むポリオレフィン系シートが開示されている。
【0006】
また、特許文献3及び4には、フッ素系樹脂層を積層した多層シートが開示されており、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂を有する基材層上に接着剤層(中間層)を介してフッ素系樹脂層を積層した多層シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平6-99604号公報
【特許文献2】特開2022-29593号公報
【特許文献3】特開2018-118425号公報
【特許文献4】特開2019-135090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したとおり、PVCの代替素材とポリオレフィン系樹脂を用いたPTP用シートとしては、多層シートを含め種々のシートの開発が進められているが、特にバリア性向上のためにポリエチレン系樹脂を使用した際、その成形性が劣る場合があり、改善が求められていた。
【0009】
そこで本発明者は、ポリエチレン系樹脂を使用した場合であっても優れた成形性を発揮し得るPTP用シートを提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者は、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を含むプレススルーパッケージ用シートにおいて、所定の貯蔵弾性率を有する層やバリア層を設けることにより、ポリエチレン系樹脂を使用した場合であっても優れた成形性を発揮するPTP用シートが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0011】
[1] ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を含むプレススルーパッケージ用シートであって、
130℃における貯蔵弾性率が1.0×107Pa以上である層を少なくとも1層を有する、プレススルーパッケージ用シート。
[2] 層の130℃における貯蔵弾性率が3.0×108Pa以下である、[1]に記載のプレススルーパッケージ用シート。
[3] 層がフッ素系樹脂を含む、[1]又は[2]に記載のプレススルーパッケージシート。
[4] 層がポリクロロトリフルオロエチレンを含む、[1]~[3]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[5] ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及び粘着付与樹脂を含む基材層を有する、[1]~[4]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[6] 基材層が、ポリプロピレン系樹脂を50質量%以上含む第1の層と、ポリエチレン系樹脂を含む第2の層とを有する、[5]に記載のプレススルーパッケージ用シート。
[7] 第1の層が基材層の両最外層を構成する、[6]に記載のプレススルーパッケージ用シート。[8] 第2の層が、ポリエチレン系樹脂を30質量%以上含む、[6]又は[7]に記載のプレススルーパッケージ用シート。
[9] 第2の層が、ポリプロピレン系樹脂をさらに含む、[6]~[8]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[10] 下記式(1)で算出される、周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、120℃の貯蔵弾性率(E’(120℃))と130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))の間の、温度変化に対する貯蔵弾性率の対数値の傾きが-0.045~0である、[1]~[9]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
温度変化に対する貯蔵弾性率(対数値)の傾き
=[logE’(130℃)-logE’(120℃)]/(130-120) (1)
[11] 下記式(2)で算出される、周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))と140℃の貯蔵弾性率(E’(140℃))の間の、温度変化に対する貯蔵弾性率の対数値の傾きが-0.030~0である、[1]~[10]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
温度変化に対する貯蔵弾性率(対数値)の傾き
=[logE’(140℃)-logE’(130℃)]/(140-130) (2)
[12] ポリエチレン系樹脂がバイオマスポリエチレンである、[1]~[11]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
【0012】
[13] ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及び粘着付与樹脂を含む基材層と、
少なくとも1層のバリア層とを有する、プレススルーパッケージ用シート。
[14] バリア層がフッ素系樹脂を含む、[13]に記載のプレススルーパッケージシート。
[15] バリア層がポリクロロトリフルオロエチレンを含む、[13]又は[14]に記載のプレススルーパッケージ用シート。
[16] 粘着付与樹脂の軟化点が80~150℃である、[13]~[15]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[17] 粘着付与樹脂が、石油樹脂、テルペン樹脂、クロマン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、およびこれらの水素添加誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[13]~[16]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[18] 基材層が、ポリプロピレン系樹脂を50質量%以上含む第1の層と、ポリエチレン系樹脂を含む第2の層とを有する、[13]~[17]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[19] 第1の層が基材層の両最外層を構成する、[18]に記載のプレススルーパッケージ用シート。[20] 第2の層が、ポリエチレン系樹脂を30質量%以上含む、[18]又は[19]に記載のプレススルーパッケージ用シート。
[21] 第2の層が、ポリプロピレン系樹脂をさらに含む、[18]~[20]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[22] 第1の層と第2の層が直接接するように積層されている、[18]~[21]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[23] 第2の層の厚さが、第1の層の厚さの100%以上である、[18]~[22]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[24] 第2の層の厚さが、第1の層の厚さの2000%以下である、[23]に記載のプレススルーパッケージ用シート。
[25] 下記式(1)で算出される、周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、120℃の貯蔵弾性率(E’(120℃))と130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))の間の、温度変化に対する貯蔵弾性率の対数値の傾きが-0.045~0である、[13]~[24]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
温度変化に対する貯蔵弾性率(対数値)の傾き
=[logE’(130℃)-logE’(120℃)]/(130-120) (1)
[26] 下記式(2)で算出される、周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))と140℃の貯蔵弾性率(E’(140℃))の間の、温度変化に対する貯蔵弾性率の対数値の傾きが-0.030~0である、[13]~[25]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
温度変化に対する貯蔵弾性率(対数値)の傾き
=[logE’(140℃)-logE’(130℃)]/(140-130) (2)
[27] 周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、120℃の貯蔵弾性率(E’(120℃))が2.4×107~7.5×107Paである、[1]~[26]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[28] 周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))が0.8×107~5.0×107Paである、[1]~[27]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[29] 周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、140℃の貯蔵弾性率(E’(140℃))が0.5×107~3.0×107Paである、[1]~[28]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[30] 厚みが10~500μmである、[1]~[29]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[31] ポリエチレン系樹脂の密度は0.930~0.980g/cm3である、[1]~[30]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[32] ポリエチレン系樹脂がバイオマスポリエチレンである、[13]~[31]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[33] ヘーズが50%以下である、[1]~[32]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[34] 水蒸気透過率が0.8g/m2/24h以下である、[1]~[33]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[35] 医薬包装用である、[1]~[34]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シート。
[36] [1]~[34]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シートを備えた、プレススルーパッケージ。
[37] [1]~[34]のいずれかに記載のプレススルーパッケージ用シートをプラグ成形する、プレススルーパッケージの製造方法。
【0013】
[A]ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を含むシートであって、130℃における貯蔵弾性率が1.0×107Pa以上である層を少なくとも1層を有するシートを成形することを含む、プレススルーパッケージ方法。
[B]プレススルーパッケージを製造するための、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を含むシートであって、130℃における貯蔵弾性率が1.0×107Pa以上である層を少なくとも1層を有するシート。
[C]プレススルーパッケージを製造するための、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を含むシートであって、130℃における貯蔵弾性率が1.0×107Pa以上である層を少なくとも1層を有するシートの使用。
[D]ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及び粘着付与樹脂を含む基材層と、少なくとも1層のバリア層とを有するシートを成形することを含む、プレススルーパッケージ方法。
[E]プレススルーパッケージを製造するための、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及び粘着付与樹脂を含む基材層と、少なくとも1層のバリア層とを有するシート。
[F]プレススルーパッケージを製造するための、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及び粘着付与樹脂を含む基材層と、少なくとも1層のバリア層とを有するシートの使用。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポリエチレン系樹脂を使用した場合であっても優れた成形性を発揮し得るPTP用シートを得ることができる。また、本発明によれば、優れた成形性を発揮し得るプレススルーパッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、プレススルーパッケージ用シートの一実施形態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。なお、以下の説明において使用される「フィルム」と「シート」は明確に区別されるものではなく、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0017】
(プレススルーパッケージ用シート)
本発明の第1の態様は、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を含むプレススルーパッケージ用シートであって、130℃における貯蔵弾性率が1.0×107Pa以上である層を少なくとも1層を有する、プレススルーパッケージ用シート(以下「本プレススルーパッケージ用シート」ともいう)に関する。
【0018】
当該層の30℃における貯蔵弾性率は1.0×107Pa以上であればよく、2.0×107Pa以上であることが好ましく、4.0×107Pa以上であることがより好ましく、6.0×107Pa以上であることがさらに好ましい。また、バリア層の130℃における貯蔵弾性率は、3.0×108Pa以下であることが好ましく、2.0×108Pa以下であることがより好ましく、1.0×108Pa以下であることがさらに好ましい。
【0019】
本プレススルーパッケージ用シートは、上記構成を有するため、シートの構成成分にポリエチレン系樹脂を使用した場合であっても優れた成形性を発揮することができる。具体的に、本プレススルーパッケージ用シートは、径の小さな突出成形部であっても精度をもって成形できる成形性を備えている。本明細書において成形性が良好であるということは、錠剤を収納するポケット天面やコーナー部等に潰れや変形、層間剥離が無く適正に成形加工できる温度の範囲(成形可能温度範囲)が広いことをいう。成形可能温度範囲は、層間剥離が無く適正に成形加工できる温度の上限温度-下限温度で算出することができる。成形可能温度範囲は5℃以上であることが好ましく、6℃以上であることがより好ましい。このように成形可能温度範囲が広い場合、大量生産工程において、生産性を維持することが可能となり、製造工程の管理も容易となる。
【0020】
また、本プレススルーパッケージ用シートは、上記構成を有するため、バリア性にも優れている。具体的には、本プレススルーパッケージ用シートの水蒸気透過率が小さく抑えられている場合に、バリア性が良好であると評価できる。本プレススルーパッケージ用シートの水蒸気透過率は、0.8g/m2/24h以下であることが好ましく、0.5g/m2/24h以下であることがより好ましい。なお、本プレススルーパッケージ用シートの水蒸気透過率は、0g/m2/24hであってもよい。本プレススルーパッケージ用シートの水蒸気透過率は、JIS K7129-2:2019に準拠し、温度40℃、相対湿度90%の条件で測定する値である。水蒸気透過率の測定装置としては、例えば、PERMATRAN W 3/31(MOCON製)を用いることができる。
【0021】
従来、プレススルーパッケージ用シートにおいては、そのバリア性向上のためにポリエチレン系樹脂が用いられていた。しかしながら、ポリエチレン系樹脂はポリプロピレン系樹脂と比較して柔らかい樹脂であるため、プレススルーパッケージ用シートにポリエチレン系樹脂を用いた場合、成形性が劣る点が問題となっていた。そこで、本発明においては、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を含むプレススルーパッケージ用シートにおいて、さらに所定の貯蔵弾性率を有する層を備える構成とした。これにより、本プレススルーパッケージ用シートにおいては、プレススルーパッケージ用シートにポリエチレン系樹脂を用いた場合においても成形性を高めることに成功している。また、本プレススルーパッケージ用シートにおいては、成形性とバリア性を両立することにも成功している。
【0022】
本プレススルーパッケージ用シートは透明性にも優れている。ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂を混合することで、透明性が低下することが危惧されるが、本プレススルーパッケージ用シートにおいては、ヘーズ値が低く抑えられており、さらに、高い全光線透過率が達成されている。
【0023】
本プレススルーパッケージ用シートの全光線透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。本プレススルーパッケージ用シートの全光線透過率の上限値は特に限定されるものではなく、100%であってもよい。プレススルーパッケージ用シートの全光線透過率が上記範囲内であれば、プレススルーパッケージの意匠性を高めることができ、さらに内容物の視認性等を高めることができる。本プレススルーパッケージ用シートの全光線透過率は、JIS K7136:2000に準拠して測定される値である。
【0024】
本プレススルーパッケージ用シートのヘーズは、50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましく、35%以下であることが特に好ましい。本プレススルーパッケージ用シートのヘーズの下限値は特に限定されるものではなく、0%であってもよい。プレススルーパッケージ用シートのヘーズが上記範囲内であれば、プレススルーパッケージの意匠性を高めることができ、さらに内容物の視認性等を高めることができる。本プレススルーパッケージ用シートのヘーズは、JIS K7136:2000に準拠して測定される値である。
【0025】
本プレススルーパッケージ用シートは、周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、120℃の貯蔵弾性率(E’(120℃))と130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))の間の、温度変化に対する貯蔵弾性率の対数値の傾きが-0.045~0であることが好ましい。なお、温度変化に対する貯蔵弾性率の対数値の傾きは以下の式で算出される値である。
温度変化に対する貯蔵弾性率(対数値)の傾き=[logE’(130℃)-logE’(120℃)]/(130-120)
貯蔵弾性率の傾きを上記範囲内とすることにより、シート成形時の成形性が良好となる。本プレススルーパッケージ用シートにおいては、特定温度領域の貯蔵弾性率の変化が少ないため、プレススルーパッケージ用シートを成形する際に生産安定性を高めることができるので、大量生産時における生産性を向上させることが容易となる。
【0026】
120℃の貯蔵弾性率(E’(120℃))と130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))の間の、温度変化に対する貯蔵弾性率の対数値の傾きは、-0.043以上であることが好ましく、-0.040以上であることがより好ましく、-0.038以上であることがさらに好ましい。また、上限は特に限定されないが、0以下であることが好ましく、-1.0×10-4以下であることがさらに好ましい。
【0027】
本プレススルーパッケージ用シートは、周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))と140℃の貯蔵弾性率(E’(140℃))の間の、温度変化に対する貯蔵弾性率の対数値の傾きが-0.030~0であることが好ましい。なお、温度変化に対する貯蔵弾性率の対数値の傾きは以下の式で算出される値である。
温度変化に対する貯蔵弾性率(対数値)の傾き=[logE’(140℃)-logE’(130℃)]/(140-130)
貯蔵弾性率の傾きを上記範囲内とすることにより、シート成形時の成形性が良好となる。本プレススルーパッケージ用シートにおいては、特定温度領域の貯蔵弾性率の変化が少ないため、プレススルーパッケージ用シートを成形する際に生産安定性を高めることができるので、大量生産時における生産性を向上させることが容易となる。
【0028】
130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))と140℃の貯蔵弾性率(E’(140℃))の間の、温度変化に対する貯蔵弾性率の対数値の傾きは、-0.025以上であることが好ましく、-0.020以上であることがより好ましく、-0.015以上であることがさらに好ましい。また、上限は特に限定されないが、0以下であることが好ましく、-1.0×10-4以下であることがさらに好ましい。
【0029】
本プレススルーパッケージ用シートの周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、120℃の貯蔵弾性率(E’(120℃))は2.4×107Pa以上であることが好ましく、2.6×107Pa以上であることがより好ましく、2.8×107Pa以上であることがさらに好ましく、3.0×107Pa以上であることが特に好ましい。また、120℃の貯蔵弾性率(E’(120℃))は7.5×107Pa以下であることが好ましく、7.3×107Pa以下であることがより好ましく、7.1×107Pa以下であることがさらに好ましく、6.9×107Pa以下であることが特に好ましい。120℃の貯蔵弾性率を上記範囲内とすることにより、生産性よく安定した成形加工を行うことができる。
【0030】
本プレススルーパッケージ用シートの周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))は0.8×107Pa以上であることが好ましく、1.0×107Pa以上であることがより好ましく、1.1×107Pa以上であることがさらに好ましく、1.2×107Pa以上であることが特に好ましい。また、130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))は5.0×107Pa以下であることが好ましく、4.9×107Pa以下であることがより好ましく、4.7×107Pa以下であることがさらに好ましく、4.6×107Pa以下であることが特に好ましい。130℃の貯蔵弾性率を上記範囲内とすることにより、生産性よく安定した成形加工を行うことができる。
【0031】
本プレススルーパッケージ用シートの周波数1Hzのせん断モードで動的粘弾性測定により得られる、140℃の貯蔵弾性率(E’(140℃))は0.5×107Pa以上であることが好ましく、0.6×107Pa以上であることがより好ましく、0.7×107Pa以上であることがさらに好ましく、0.8×107Pa以上であることが特に好ましい。また、140℃の貯蔵弾性率(E’(140℃))は3.0×107Pa以下であることが好ましく、2.6×107Pa以下であることがより好ましく、2.4×107Pa以下であることがさらに好ましく、2.2×107Pa以下であることが特に好ましい。140℃の貯蔵弾性率を上記範囲内とすることにより、生産性よく安定した成形加工を行うことができる。
【0032】
本プレススルーパッケージ用シートの全体の厚みは、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。また、本プレススルーパッケージ用シートの全体の厚みは、1000μm以下であることが好ましく、900μm以下であることがより好ましく、800μm以下であることがさらに好ましい。本プレススルーパッケージ用シートの全体の厚みを上記範囲内とすることにより、バリア性と成形性をより効果的に高めることができる。
【0033】
本発明は、プレススルーパッケージ用シートをロール状に巻き取ってなるロール状体に関するものであってもよい。本プレススルーパッケージ用シートは適度な強度と柔軟性を有するため、ロール状体として、保管したり、流通させたりすることができる。
【0034】
上述したように、本発明の第1の態様は、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を含むプレススルーパッケージ用シートであって、130℃における貯蔵弾性率が1.0×107Pa以上である層を少なくとも1層を有する、プレススルーパッケージ用シートに関する。第1の態様では、プレススルーパッケージ用シートは、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及び粘着付与樹脂を含む基材層と、130℃における貯蔵弾性率が1.0×107Pa以上である層を有することが好ましい。なお、130℃における貯蔵弾性率が1.0×107Pa以上である層を構成する成分は特に限定されるものではないが、後述するようなバリア層は一実施形態として例示される。
【0035】
また、本発明の第2の態様は、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及び粘着付与樹脂を含む基材層と、少なくとも1層のバリア層とを有する、プレススルーパッケージ用シートに関する。
以下では、バリア層と基材層の具体的構成について説明する。
【0036】
<バリア層(層)>
本プレススルーパッケージ用シートは、バリア層(以下では、第1の態様における「層」と第2の態様における「バリア層」をまとめて「バリア層」と表記している)を含む。バリア層の貯蔵弾性率は特に限定されるものではないが、例えば、130℃における貯蔵弾性率が1.0×107Pa以上であってもよい。また、バリア層の130℃における貯蔵弾性率は、2.0×107Pa以上であることが好ましく、4.0×107Pa以上であることがより好ましく、6.0×107Pa以上であることがさらに好ましい。また、バリア層の130℃における貯蔵弾性率は、3.0×108Pa以下であることが好ましく、2.0×108Pa以下であることがより好ましく、1.0×108Pa以下であることがさらに好ましい。
【0037】
バリア層の130℃における貯蔵弾性率は、プレススルーパッケージ用シートからバリア層を剥がした後に測定されてもよく、また、バリア層と同じ配合組成のシートを形成し、当該シートについて貯蔵弾性率の測定を行ってもよい。なお、プレススルーパッケージ用シートからバリア層を剥がして貯蔵弾性率の測定を行うことができる場合、当該測定結果に基づいて、バリア層の130℃における貯蔵弾性率を特定することができる。
【0038】
バリア層の水蒸気透過係数は、1.0g・mm/(m2・day)以下であることが好ましく、0.5g・mm/(m2・day)であることがより好ましく、0.3g・mm/(m2・day)であることがさらに好ましい。バリア層の水蒸気透過係数を上記範囲内とすることにより、シート全体の厚みをより薄くすることができ、成形性をより高めることができる
【0039】
バリア層は、フッ素系樹脂を含むことが好ましい。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(EPA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等を挙げることができる。中でも、フッ素系樹脂は、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)であることが好ましい。バリア層にフッ素系樹脂を配合することで、本プレススルーパッケージ用シートの水蒸気透過率を低く抑えることができ、本プレススルーパッケージ用シートのバリア性をより効果的に高めることができる。
【0040】
バリア層は、フッ素系樹脂を主成分として含むことが好ましく、フッ素系樹脂の含有量は、バリア層の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが一層好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。なお、バリア層はフッ素系樹脂からなる層であってもよく、フッ素系樹脂の含有量は、バリア層の全質量に対して、100質量%であってもよい。
【0041】
バリア層の厚みは特に限定されるものではないが、1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましく、5μm以上であることがさらに好ましい。また、バリア層の厚みは、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。
【0042】
バリア層は、フッ素系樹脂以外に必要に応じて、各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤等を挙げることができる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0043】
バリア層は、フッ素系樹脂からなる層であることが好ましいが、必要に応じてフッ素系樹脂以外の樹脂を含んでもよい。この場合のフッ素系樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニリデン樹脂やエチレン-ビニルアルコール共重合体等が例示される。なお、バリア層はフッ素系樹脂からなる層と、フッ素系樹脂以外の樹脂を含む層の積層構造であってもよい。
【0044】
<基材層>
本プレススルーパッケージ用シートは、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂を含む基材層を有することが好ましい。基材層は、さらに、粘着付与樹脂を含むことが好ましい。
【0045】
<<ポリプロピレン系樹脂>>
ポリプロピレン系樹脂は、単一組成からなるポリプロピレン、すなわち、プロピレン単独重合体であってもよいし、プロピレンと共重合成分とが共重合したランダム共重合体やブロック共重合体であってもよい。また、ポリプロピレン系樹脂としては、これらの混合物を用いることもできる。
【0046】
上記共重合成分としては、例えば、通常エチレン、1-ブテン等が挙げられ、中でも、エチレンが好ましい。
【0047】
また、上記共重合体を用いる場合、共重合体中の共重合成分の含有量は、共重合体の全質量に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、共重合成分の含有量は、共重合体の全質量に対して40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましい。共重合体中の共重合成分の含有量が上記の範囲以内であれば、良好な製膜性を維持しながら、シートに好適なバリア性や透明性を付与することができる。
【0048】
ポリプロピレン系樹脂としては、良好な製膜性を維持しながら、シートに好適なバリア性や透明性を付与できる点で、単一成分からなるホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体がより好ましく、ホモポリプロピレンが特に好ましい。
【0049】
ポリプロピレン系樹脂の重合方法としては、特に制限はなく、従来公知の常法により行うことができ、また、重合に用いる触媒も特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。
【0050】
ポリプロピレン系樹脂のJIS K7210:2014に準拠して測定される230℃、2.16kg荷重のメルトフローレート(以下、「MFR」ともいう)は、0.3g/10分以上であることが好ましく、0.5g/10分以上であることがより好ましく、0.8g/10分以上であることがさらに好ましい。また、230℃、2.16kg荷重のメルトフローレートは、20g/10分以下であることが好ましく、10g/10分以下であることがより好ましく、8.0g/10分以下であることがさらに好ましい。MFRが上記の範囲内にあれば、安定した製膜性が得られ、機械物性にも良好なプレススルーパッケージ用シートが得られやすくなる。
【0051】
ポリプロピレン系樹脂のJIS K7112:1999Dに準拠して測定される密度は、0.850~0.950g/cm3であることが好ましく、0.870~0.930g/cm3であることがより好ましく、0.890~0.910g/cm3であることがさらに好ましい。ポリプロピレン系樹脂の密度を上記範囲内とすることにより、プレススルーパッケージ用シートのバリア性をより効果的に高めることができる。
【0052】
ポリプロピレン系樹脂の数平均分子量(Mn)は30,000以上であることが好ましく、50,000以上であることがより好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂の数平均分子量(Mn)の上限については特に制限はないが、押出成形性の観点から200,000以下、特に150,000以下であることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂の数平均分子量(Mn)を上記範囲内とすることにより、安定した製膜性が得られ、機械物性にも良好なプレススルーパッケージ用シートが得られやすくなる。
【0053】
ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は200,000以上であることが好ましく、250,000以上であることがより好ましく、300,000以上であることがさらに好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は1,500,000以下であることが好ましく、1,000,000以下であることがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)を上記範囲内とすることにより、安定した製膜性が得られ、機械物性にも良好なプレススルーパッケージ用シートが得られやすくなる。
【0054】
ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)より算出される分子量分布(Mw/Mn)は3.5以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましく、4.5以上であることがさらに好ましい。また、分子量分布(Mw/Mn)は20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましい。分子量分布(Mw/Mn)を上記下限値以上とすることで、シートの成形加工性が向上するとともに、シートの破れを抑制しやすくなる。また、分子量分布(Mw/Mn)を上記上限値以下とすることで、極めて分子量が低い成分の混在を抑制することができ、極めて分子量が低い成分がブリードすることや、極めて分子量が高い成分が成形時に未溶融物となることを抑制することができる。ここで、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、Malvern Instruments社の高温GPCシステム(ViscotekトリプルディテクターHT-GPCモデルSGシステム)にて、使用溶媒:オルトジクロロベンゼン、測定温度:140℃、検出器RI(リファレンスフロー方式)、ポリスチレン換算分子量にて、算出することができる。
【0055】
<<ポリエチレン系樹脂>>
ポリエチレン系樹脂は、エチレン単独重合体であるポリエチレンであってもよく、エチレンとエチレン以外のモノマー成分との共重合体であるポリエチレン共重合体であってもよい。また、ポリエチレン系樹脂としては、これらの混合物を用いることもできる。なお、本明細書において、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂を区別する際には、樹脂を構成するモノマー単位として、エチレン単位を50質量%より多く含むものをポリエチレン系樹脂、プロピレン単位を50質量%より多く含むものをポリプロピレン系樹脂とする。
【0056】
上記共重合成分としては、例えば、α-オレフィンモノマー、官能基を有する非オレフィンモノマー等が挙げられ、中でもα-オレフィンモノマーが好ましい。
【0057】
上記α-オレフィンモノマーとしては、炭素数3~20のα-オレフィンを挙げることができ、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセン等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いてもよい。中でも、工業的な入手し易さや諸特性、経済性等の観点から、α-オレフィンモノマーとしてプロピレン、1-ブテン、1-へキセン、1-オクテンを用いることが好ましい。
【0058】
上記共重合体を用いる場合、共重合体中の共重合成分の含有量は、共重合体の全質量に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、共重合成分の含有量は、共重合体の全質量に対して40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。特に、α-オレフィンモノマーの含有量が上記範囲内であることが好ましい。共重合体中の共重合成分の含有量が上記の範囲以内であれば、本プレススルーパッケージ用シートの防湿性、透明性をさらに優れたものとすることができる。
【0059】
上記ポリエチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体、あるいは、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンからなる群より選ばれる少なくとも1種類のα-オレフィンモノマーとの共重合体を用いるのが好ましい。
【0060】
ポリエチレン系樹脂の重合方法としては、特に制限はなく、従来公知の常法により行うことができ、また、重合に用いる触媒も特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。
【0061】
上記ポリエチレン系樹脂は、防湿性を高める観点から、JIS K7112:1999Dに準拠して測定される密度は、0.930~0.980g/cm3であることが好ましい。ポリエチレン系樹脂の密度は、0.935g/cm3以上であることがより好ましく、0.940g/cm3以上であることがさらに好ましく、0.945g/cm3以上であることが特に好ましい。ポリエチレン系樹脂の密度を上記範囲内とすることにより、プレススルーパッケージ用シートのバリア性をより効果的に高めることができ、耐薬品性も高めることができる。なお、特にプレススルーパッケージ用シートのバリア性を高める観点から、高密度ポリエチレンを選択することが好ましい。
【0062】
また、ポリエチレン系樹脂のJIS K7210:2014に準拠して測定される190℃、2.16kg荷重のMFRは、0.3g/10分以上であることが好ましく、0.5g/10分以上であることがより好ましく、0.8g/10分以上であることがさらに好ましい。また、190℃、2.16kg荷重のメルトフローレートは、20g/10分以下であることが好ましく、10g/10分以下であることがより好ましく、8.0g/10分以下であることがさらに好ましい。MFRが上記の範囲内にあれば、安定した製膜性が得られ、機械物性にも良好なプレススルーパッケージ用シートが得られやすくなる。
【0063】
ポリエチレン系樹脂の数平均分子量(Mn)は20,000以上であることが好ましく、25,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることがさらに好ましい。また、ポリエチレン系樹脂の数平均分子量(Mn)の上限については特に制限はないが、押出成形性の観点から150,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましい。ポリエチレン系樹脂の数平均分子量(Mn)を上記範囲内とすることにより、安定した製膜性が得られ、機械物性にも良好なプレススルーパッケージ用シートが得られやすくなる。
【0064】
ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は150,000以上であることが好ましく、200,000以上であることがより好ましく、250,000以上であることがさらに好ましい。また、ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)の上限については特に制限はないが、押出成形性の観点から1,500,000以下であることが好ましく、1,000,000以下であることがより好ましい。ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)を上記範囲内とすることにより、安定した製膜性が得られ、機械物性にも良好なプレススルーパッケージ用シートが得られやすくなる。
【0065】
ポリエチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)より算出される分子量分布(Mw/Mn)は3.5以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましく、4.5以上であることがさらに好ましい。また、分子量分布(Mw/Mn)は20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましい。分子量分布(Mw/Mn)を上記下限値以上とすることで、シートの成形加工性が向上するとともに、シートの破れを抑制しやすくなる。また、分子量分布(Mw/Mn)を上記上限値以下とすることで、極めて分子量が低い成分の混在を抑制することができ、極めて分子量が低い成分がブリードすることや、極めて分子量が高い成分が成形時に未溶融物となることを抑制することができる。ここで、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、Malvern Instruments社の高温GPCシステム(ViscotekトリプルディテクターHT-GPCモデルSGシステム)にて、使用溶媒:オルトジクロロベンゼン、測定温度:140℃、検出器RI(リファレンスフロー方式)、ポリスチレン換算分子量にて、算出することができる。
【0066】
ポリエチレン系樹脂は、石油由来のポリエチレン系樹脂であってもよいが、バイオマスポリエチレンであることが好ましい。バイオマスポリエチレンとは、原料として少なくとも一部にバイオマス由来(植物由来)の原料を用いたものであって、再生可能なバイオマス資源を原料に、化学的または生物学的に合成することで得られるポリエチレン系樹脂を意味する。バイオポリエチレンは、これを焼却処分した場合でも、バイオマスのもつカーボンニュートラル性から、大気中の二酸化炭素濃度を上昇させないという特徴がある。
【0067】
バイオマスポリエチレンは、植物原料から得られたバイオエタノールから誘導された植物由来エチレンを用いることが好ましい。すなわち、バイオマスポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であることが好ましい。なお、バイオマスポリエチレンは、バイオマス由来のエチレンを100質量%含むものでなくてもよい。バイオマスポリエチレンの原料であるモノマーは、化石燃料由来のエチレンのモノマーおよび/または化石燃料由来のα-オレフィンのモノマーをさらに含んでもよく、バイオマス由来のα-オレフィンのモノマーをさらに含んでもよい。バイオマス由来のα-オレフィンとしては、炭素数3~20のα-オレフィンを用いることが好ましく、ブチレン、ヘキセンまたはオクテンであることが好ましい。ブチレン、ヘキセン、またはオクテンであれば、バイオマス由来の原料であるエチレンの重合により製造することが容易である。なお、バイオマスポリエチレンのMFRや密度、分子量等は上述したポリエチレン系樹脂のMFRや密度、分子量等と同等であることが好ましい。
【0068】
基材層のバイオマス度は、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、25%以上であることがさらに好ましい。なお、基材層のバイオマス度は100%であってもよい。ここで、バイオマス度(バイオマスポリエチレン中のバイオマス由来の炭素濃度)とは、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物中のC14含有量は105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、基材層中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。なお、上記バイオマス度は、下記の方法により算出することができる。
「基材層のバイオマス度」(%)=「バイオマス資源を原料とする樹脂のバイオマス度」(%)×「基材層中のバイオマス資源を原料とする樹脂の質量割合」
基材層のバイオマス度を高めることにより、環境への負荷を低減できることに加え、より効果的にプレススルーパッケージ用シートのバリア性を高めることもできる。
【0069】
ポリエチレン系樹脂の具体的な製品として、石油由来のポリエチレン系樹脂としては、旭化成社製「サンテックHD」シリーズ、日本ポリプロ社製「ノバテックHD」シリーズ、プライムポリマー「エボリューH」シリーズ等が挙げられる。また、バイオマスポリエチレンとしては、Braskem社製「グリーンポリエチレン」シリーズ等が挙げられる。
【0070】
<<粘着付与樹脂>>
基材層は、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂に加えて、粘着付与樹脂をさらに含むものであることが好ましい。
【0071】
粘着付与樹脂としては、例えば、石油樹脂、ロジンジオール系樹脂やロジンエステル系樹脂等のロジン系樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、クロマン-インデン樹脂、ケトン樹脂及びこれらの変性樹脂(水素添加誘導体)、並びにアクリル系オリゴマー等が挙げられる。なお、アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは1000~30000であり、より好ましくは3000~15000である。中でも、粘着付与樹脂は、石油樹脂、テルペン樹脂、クロマン-インデン樹脂、ロジン系樹脂、およびこれらの水素添加誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであることが好ましく、石油樹脂であることが特に好ましい。
【0072】
上記石油樹脂としては、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5-C9共重合系石油樹脂等の石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂等の脂環式炭化水素系石油樹脂や、これらの水素添加誘導体等が挙げられる。中でも、C9系石油樹脂の水素添加誘導体が好ましい。
【0073】
上記テルペン樹脂としては、例えば、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体等のテルペン樹脂や、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂等の変性テルペン樹脂等が挙げられる。
【0074】
上記クマロン-インデン樹脂としては、例えば、タールの160~180℃留分を精製し、炭素数8のクマロンおよび炭素数9のインデンを主要なモノマーとして重合した熱可塑性合成樹脂等が挙げられる。
【0075】
上記ロジン系樹脂としては、例えば、トールロジン、ガムロジン、ウッドロジン等の未変性ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水素添加ロジン、マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジンや、これらをグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレングリコール等で変性したエステル化ロジン樹脂等が挙げられる。
【0076】
粘着付与樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂に混合した場合に良好な相溶性を示し、色調、熱安定性、バリア性等をさらに高める観点から、水素添加誘導体を用いることが好ましい。特に水素添加率(水添率)が95%以上であり、かつ水酸基、カルボキシ基、ハロゲン等の極性基、あるいは二重結合等の不飽和結合を実質的に含有しない、石油樹脂またはテルペン樹脂を用いることが好ましく、石油樹脂を用いることがより好ましい。
【0077】
粘着付与樹脂の軟化点は、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。また、粘着付与樹脂の軟化点は、150℃以下であることが好ましい。粘着付与樹脂の軟化点が上記範囲内であると、粘着付与樹脂の相溶性が高まり、透明性に優れた基材層が得られやすくなる。また、熱可塑性樹脂の軟化点が、上記範囲内であると、シート製膜時において原料ペレットがブロッキングすることを防止でき、生産性が良好となる傾向がある。
【0078】
粘着付与樹脂の含有量は、基材層の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。また、粘着付与樹脂の含有量は、基材層の全質量に対して、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。中でも、石油樹脂の含有量が上記範囲内であることが好ましい。粘着付与樹脂の含有量を上記範囲内とすることにより、プレススルーパッケージ用シートの透明性やバリア性が向上する傾向がある。また、粘着付与樹脂の含有量を上記範囲内とすることにより、良好な製膜性や耐衝撃性を維持することができ、本プレススルーパッケージ用シートにおいて、層間強度を高めることができる。
【0079】
<任意成分>
基材層は、必要に応じて、各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、結晶核剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤等を挙げることができる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。中でも、基材層は、結晶核剤を含むことが好ましい。結晶核剤は、基材層の透明性及びバリア性をより効果的に高めることができる。
【0080】
結晶核剤としては、例えば、ジベンジリデンソルビトール(DBS)化合物、1,3-O-ビス(3,4ジメチルベンジリデン)ソルビトール、ジアルキルベンジリデンソルビトール、少なくとも一つの塩素または臭素置換基を有するソルビトールのジアセタール、ジ(メチルまたはエチル置換ベンジリデン)ソルビトール、炭素環を形成する置換基を有するビス(3,4-ジアルキルベンジリデン)ソルビトール、脂肪族、脂環族、および芳香族のカルボン酸、ジカルボン酸または多塩基性ポリカルボン酸や、これらの無水物および金属塩等の有機酸の金属塩化合物、環式ビス-フェノールホスフェート、2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプテンジカルボン酸等の二環式ジカルボン酸および塩化合物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-ジカルボキシレート等の二環式ジカルボキシレートの飽和の金属または有機の塩化合物、1,3:2,4-O-ジベンジリデン-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(m-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(m-エチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(m-イソプロピルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(m-n-プロピルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(m-n-ブチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-エチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-イソプロピルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-n-プロピルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-n-ブチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(2,3-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(2,4-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(2,5-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(3,4-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(3,5-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(2,3-ジエチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(2,4-ジエチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(2,5-ジエチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(3,4-ジエチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(3,5-ジエチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(2,4,5-トリメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(3,4,5-トリメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(2,4,5-トリエチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(3,4,5-トリエチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-メチルオキシカルボニルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-エチルオキシカルボニルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-イソプロピルオキシカルボニルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(o-n-プロピルオキシカルボニルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(o-n-ブチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(o-クロロベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-(p-クロロベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-[(5,6,7,8,-テトラヒドロ-1-ナフタレン)-1-メチレン]-D-ソルビトール、1,3:2,4-ビス-O-[(5,6,7,8,-テトラヒドロ-2-ナフタレン)-1-メチレン]-D-ソルビトール、1,3-O-ベンジリデン-2,4-O-p-メチルベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-p-メチルベンジリデン-2,4-O-ベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-ベンジリデン-2,4-O-p-エチルベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-p-エチルベンジリデン-2,4-O-ベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-ベンジリデン-2,4-O-p-クロルベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-p-クロルベンジリデン-2,4-O-ベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-ベンジリデン-2,4-O-(2,4-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3-O-(2,4-ジメチルベンジリデン)-2,4-O-ベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-ベンジリデン-2,4-O-(3,4-ジメチルベンジリデン)-D-ソルビトール、1,3-O-(3,4-ジメチルベンジリデン)-2,4-O-ベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-p-メチル-ベンジリデン-2,4-O-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチル-ベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-p-メチル-ベンジリデン-2,4-O-p-クロルベンジリデン-D-ソルビトール、1,3-O-p-クロル-ベンジリデン-2,4-O-p-メチルベンジリデン-D-ソルビトール等のジアセタール化合物、ナトリウム2,2'-メチレン-ビス-(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート、アルミニウムビス[2,2'-メチレン-ビス-(4-6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスフェート]、燐酸2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ナトリウムや、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、モンタン酸等の脂肪酸、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ヘベニン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、シリカ、タルク、カオリン、炭化カルシウム等の無機粒子、グリセロール、グリセリンモノエステル等の高級脂肪酸エステル、および類似物を挙げることができる。これらは単独でもしくは2種以上を併せて用いてもよい。
これらのなかでも、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ヘベニン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩が特に好ましい。
【0081】
結晶核剤の具体的な製品としては、例えば、新日本理化社製「ゲルオールD」シリーズ、旭電化工業社製「アデカスタブ」シリーズ、ミリケンケミカル社製「HYPERFORM HPN-20E」、「HL3-4」、「Millad」シリーズ、BASF社製「IRGACLEAR」シリーズ、理研ビタミン社製「リケマスターCN-001」、「リケマスターCN-002」等が挙げられる。このなかでも特に透明性を向上する効果が高いものとしては、ミリケンケミカル社製「HYPERFORM HPN-20E」、「HL3-4」、理研ビタミン社製「リケマスターCN-001」、「リケマスターCN-002」等が挙げられる。
【0082】
上記結晶核剤の含有量は、基材層の全質量に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.25質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、結晶核剤の含有量は、基材層の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。結晶核剤の含有量を上記範囲内とすることにより、基材層の結晶性が向上し、バリア性をより高めることができる。
【0083】
<基材層の層構成>
基材層は、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂及び粘着付与樹脂を含む単層の層構成であってもよいが、複数の層からなる多層の層構成であってもよい。例えば、基材層は、ポリプロピレン系樹脂を50質量%以上含む第1の層と、ポリエチレン系樹脂を含む第2の層とを有していることが好ましく、第1の層が基材層の両最外層を構成する構成であることがより好ましい。
【0084】
基材層は、第1の層と第2の層の2層からなるものであってもよいし、第1の層及び/または第2の層を複数層備えた多層のものであってもよいし、第1の層・第2の層以外の他の層を備えた多層のものであってもよい。
例えば、第1の層/第2の層、第1の層/第2の層/第1の層、第1の層/第2の層/第1の層/他の層、他の層/第1の層/第2の層/第1の層/他の層、第1の層/第2の層/第1の層/他の層、他の層/第2の層/第1の層/第2の層/他の層などの積層構成を挙げることができる。
【0085】
図1は、本プレススルーパッケージ用シートの一実施形態を説明する断面図である。
図1に示されるように、本プレススルーパッケージ用シート10は、基材層20の上にバリア層30を積層した構成であることが好ましく、基材層20は、第1の層21/第2の層22/第2の層21が順に積層された構成であることが好ましい。本プレススルーパッケージ用シート10の層構成を上記構成とすることにより、本プレススルーパッケージ用シートのバリア性をより効果的に高めることができる。また、本プレススルーパッケージ用シート10の層構成を上記構成とすることにより、成形性をより効果的に高めることもできる。
【0086】
基材層の厚みは、10μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、100μm以上であることが特に好ましい。また、基材層の厚みは、700μm以下であることが好ましく、600μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。基材層の厚みを上記範囲内とすることにより、プレススルーパッケージ用シートのバリア性と成形性をより効果的に高めることができる。
【0087】
<<第1の層>>
第1の層は、ポリプロピレン系樹脂を50質量%以上含む層であることが好ましい。本プレススルーパッケージ用シートがこのような第1の層を有することで、プレススルーパッケージ用シートの熱安定性と機械強度を高めることができる。
【0088】
上記ポリプロピレン系樹脂の含有量は、第1の層の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが一層好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。ポリプロピレン系樹脂の含有量の上限は、特に限定されるものではなく、例えば99質量%以下であることが好ましい。第1の層におけるポリプロピレン系樹脂の含有量を上記範囲内とすることで、製膜性やシートの熱成形性を良好にすることができる。
【0089】
第1の層は、ポリプロピレン系樹脂以外に、その他の樹脂を含有していてもよい。その他の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエチレン、シクロポリオレフィン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂;ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂;ポリアクリル酸エステル等のアクリル樹脂及びその共重合体、ポリメタクリル酸エステル等のメタクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上の組み合わせからなるものであってもよい。
【0090】
第1の層がその他の樹脂を含有する場合、その他の樹脂の含有量は第1の層の全質量に対して、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましい。
【0091】
第1の層の厚みは、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。また、第1の層の厚みは、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。なお、基材層において第1の層が複数層設けられている場合、上記厚みは、各々の層の厚みの好ましい範囲である。
【0092】
<<第2の層>>
第2の層は、ポリエチレン系樹脂を含む層であることが好ましい。基材層がこのような第2の層を有することで、プレススルーパッケージ用シートのバリア性や透明性をより効果的に高めることができる。
【0093】
第2の層におけるポリエチレン系樹脂の含有量は、第2の層の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが一層好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。第2の層におけるポリエチレン系樹脂の含有量の上限は特に限定されるものではないが、例えば、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。第2の層がバイオマスポリエチレンを含む場合、バイオマスポリエチレンの含有量が上記範囲内であることが好ましい。第2の層におけるポリエチレン系樹脂の含有量を上記範囲内とすることにより、プレススルーパッケージ用シートのバリア性や透明性をより効果的に高めることができる。また、第2の層におけるポリエチレン系樹脂の含有量を上記範囲内とすることにより、プレススルーパッケージ用シートに適度な剛性を付与することができる。
【0094】
第2の層は、ポリプロピレン系樹脂をさらに含むことが好ましい。第2の層に含まれるポリプロピレン系樹脂は、<基材層>の項目で説明したポリプロピレン系樹脂と同様である。なお、第2の層が有するポリプロピレン系樹脂は、第1の層が有するポリプロピレン系樹脂と同じポリプロピレン系樹脂であっても、異なるポリプロピレン系樹脂であってもよい。第2の層が、ポリプロピレン系樹脂をさらに含むことで、プレススルーパッケージ用シートの成形性をより効果的に高めることができる。
【0095】
第2の層がポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂を含む場合、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、ポリエチレン系樹脂を1質量部以上含有することが好ましく、2質量部以上含有することがより好ましく、10質量部以上含有することがさらに好ましく、20質量部以上含有することが一層好ましく、30質量部以上含有することが特に好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、ポリエチレン系樹脂を400質量部以下含有することが好ましく、350質量部以下含有することがより好ましく、300質量部以下含有することがさらに好ましく、250質量部以下含有することが一層好ましく、200質量部以下含有することが特に好ましい。
【0096】
第2の層は、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂以外にその他の樹脂を含有していてもよい。その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;シクロポリオレフィン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂;ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂;ポリアクリル酸エステル等のアクリル樹脂及びその共重合体、ポリメタクリル酸エステル等のメタクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上の組み合わせからなるものであってもよい。
【0097】
第2の層がその他の樹脂を含有する場合、その他の樹脂の含有量は第2の層の全質量に対して、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましい。
【0098】
第2の層の厚みは、60μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましく、150μm以上であることがさらに好ましい。また、第2の層の厚みは、600μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることがさらに好ましい。なお、基材層において第2の層が複数層設けられている場合、上記厚みは、各々の層の厚みの好ましい範囲である。
【0099】
<<第1の層/第2の層>>
基材層全体におけるポリプロピレン系樹脂の含有量は、基材層の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂の含有量は、基材層の全質量に対して、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。
【0100】
また、基材層全体におけるポリエチレン系樹脂の含有量は、基材層の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、ポリエチレン系樹脂の含有量は、基材層の全質量に対して、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。基材層に含まれるポリエチレン系樹脂がバイオマスポリエチレンである場合、バイオマスポリエチレンの含有量も上記範囲内であることが好ましい。
【0101】
基材層を構成する各層は隣接する層との接着性向上の観点から、第1の層及び第2の層のうちの少なくとも一つの層が上述した粘着付与樹脂を含有することが好ましい。中でも、第1の層及び第2の層の両方が上述した粘着付与樹脂を含有することが好ましい。第1の層及び/又は第2の層が粘着付与樹脂を含有することにより、第1の層及び第2の層の間の層間接着力を高めることができ、さらには基材層とバリア層との間の層間接着力を高めることもできる。
【0102】
1の層及び第2の層のうちの少なくとも一つの層は、上述した結晶核剤を含有することが好ましい。第1の層及び第2の層の両方が結晶核剤を含有してもよいが、特に第2の層が結晶核剤を含有することが好ましい。ポリエチレン系樹脂をより多く含む第2の層が結晶核剤を含むことで、プレススルーパッケージ用シートバリア性や透明性をより効果的に高めることができる。
【0103】
第1の層と第2層の間には、例えば後述するような接着層といった他の層が設けられていてもよいが、より好ましい態様では、第1の層と第2層は互いに直接接するように積層されていることが好ましい。本実施形態においては、第1の層と第2層の間の層間接着力が高いため、第1の層と第2層の間に接着層等を設ける必要がない。第1の層と第2層を直接接するように積層することで、プレススルーパッケージ用シートの透明性をより効果的に高めることができ、さらに、プレススルーパッケージ用シートの薄膜化が可能となる。
【0104】
本プレススルーパッケージ用シートにおいては、バリア性の観点から、第2の層の厚さが第1の層の厚み以上であることが好ましい。また、第2の層にバイオマスポリエチレンを用いる場合には、基材層中における第2の層が占める割合を大きくすることにより基材層のバイオマス度を高めることができるため、好ましい。具体的に第2の層の厚さは、第1の層の厚さの100%以上であることが好ましく、200%以上であることがより好ましく、300%以上であることがさらに好ましい。また、第2の層の厚さの上限値は特に限定されるものではないが、第1の層の厚さの2000%以下であることが好ましい。
【0105】
なお、本プレススルーパッケージ用シートのリサイクル適正の観点から、基材層に占めるハロゲン含有化合物の割合は、30質量%以下であるのが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0106】
JIS K6854-3:1999に基づき測定した第1の層と第2の層との層間強度は、3.5N/15mm以上であることが好ましく、4N/15mm以上であることがより好ましく、5N/15mm以上であることがさらに好ましい。なお、基材層が、隣接する第1の層及び/又は第2の層を複数備える場合は、隣接する少なくとも1つの層間の層間強度が上記数値以上であることが好ましく、隣接する全ての層間の層間強度が上記数値以上であることが特に好ましい。
【0107】
<接着層>
本プレススルーパッケージ用シートは、上述した、基材層とバリア層のみからなるシートであってもよいが、接着層をさらに含んでいてもよい。本プレススルーパッケージ用シートが接着層をさらに含む場合、接着層は、バリア層と基材層の間に設けられることが好ましい。
【0108】
接着層を構成する接着剤は、バリア層と基材層とを接着し得る樹脂であることが好ましい。このような接着剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。中でも、接着剤は基材層との密着性を高める観点から、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂又はこれら両方の樹脂であることが好ましい。
【0109】
本プレススルーパッケージ用シートが接着層を有する場合、基材層上に接着剤を塗布し接着層を形成してから、バリア層を形成することが好ましい。基材層とバリア層を作製した後、接着層を設けることで、両者を接着してもよい。
【0110】
接着層の厚みは、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましい。また、接着層の厚みは、30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。接着層の厚みを上記範囲内とすることにより、バリア層と基材層の接着性を高めつつ、プレススルーパッケージ用シートの全体の薄膜化が可能となる。
【0111】
(プレススルーパッケージ用シートの製造方法)
本プレススルーパッケージ用シートの製造方法は、基材層を形成する工程と、基材層上にバリア層を形成する工程を有することが好ましい。本プレススルーパッケージ用シートの製造方法の一実施形態においては、基材層を構成する基材シートを形成する工程と、基材シートとバリア層を構成するバリアシートを積層する工程を有する。基材シートとバリアシートを積層する工程では、接着剤を用いて各シートを貼り合わせてもよい。
【0112】
基材層(基材シート)を形成する工程では、第1の層を形成する樹脂組成物、第2の層を形成する樹脂組成物をそれぞれ、単軸、あるいは、二軸押出機等で溶融混合し、Tダイにより共押出し、キャストロールで急冷、固化する工程を含むことが好ましい。これにより、第1の層と第2の層を有する基材層を得ることができる。基材層(基材シート)は、無延伸シートであってもよく、一軸又は二軸方向に延伸してなる延伸シートであってもよい。但し、成形性の観点から、基材層(基材シート)は、無延伸シートであることが好ましい。ここで、本明細書において無延伸シートとは、シートの強度を高める目的で積極的に延伸しないシートを意味し、例えば、押出成形の際に延伸ロールによって2倍未満に延伸されたものは無延伸シートに含むものとする。
【0113】
このようにして得られる基材層(基材シート)は、第1の層と第2の層の間に接着層を設ける必要がなく、生産性やコストに優れるものとすることができる。なお、接着性の点からは第1の層と第2の層がそれぞれ粘着付与樹脂を含有することが好ましい。
【0114】
基材層上にバリア層を形成する工程は、基材層を構成する基材シートとバリア層を構成するバリアシートを積層する工程であることが好ましい。基材シートとバリアシートは直接積層され、融着等により互いに貼合されてもよい。また、基材シート上に接着剤を塗工し、接着層を形成した後にバリアシートを積層してもよい。接着剤の塗工方法としては公知の方法を採用することができる。塗工方法としては、例えば、コンマコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、スライドコート法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法等を挙げることができる。
【0115】
なお、基材層上にバリア層を形成する工程は、基材層を構成する基材シート上に、バリア層を構成するバリア層形成組成物を塗工する工程であってもよい。バリア層形成組成物を塗工する方法としては、公知の方法を採用することができ、上述した方法を例示することができる。
【0116】
(プレススルーパッケージの製造方法)
本プレススルーパッケージ用シートは、例えば真空成形、圧空成形、圧空真空成形、プレス成形、プラグ成形、その他の熱成形によって、各種形状の成形体に成形することができる。例えば、本プレススルーパッケージ用シートは、特に、バリア性、成形性、透明性に優れているため、プレススルーパッケージ用として好適である。すなわち、本プレススルーパッケージ用シートはPTP(プレススルーパッケージ)用底材として好適である。PTPとは、「錠剤やカプセルを入れるための凹部(ポケット)を備えたシート状の底材と、当該凹部を密閉するシート状の蓋材からなり、凹部を押して開けて錠剤などを取り出すことができる包装材」である。
【0117】
プレススルーパッケージの製造方法は、本プレススルーパッケージ用シートにポケット部を構成する突出成形部(「凹部」とも称する)を多数形成する工程を有する。当該凹部の内径・深さについては特に制限はないが、例えば直径5~20mm、深さ1~10mm、典型的な一例としては、直径約9mm、深さ約4mmである。また、形成される凹部の個数は、500~5000個/m2であることが好ましい。突出成形部(「凹部」とも称する)を形成する工程では、当該凹部を構成する面厚みを適宜コントロールしてもよく、例えば、側壁部の中央厚みを、該凹部を構成する天壁部(「底面部」とも称する)の中央厚みの30%~98%となるように成形してもよい。
【0118】
例えばPTP用底材を製造する場合には、本プレススルーパッケージ用シートを加熱軟化させた後、例えば、プラグ成形、圧空成形、真空成形等の各種成形方法を施す。本プレススルーパッケージ用シートは、径の小さな突出成形部であっても、精度をもって成形可能であるから、プラグ成形法を採用することが特に有用である。すなわち、プレススルーパッケージの製造方法は、本プレススルーパッケージ用シートをプラグ成形する工程を有することが好ましい。
【0119】
プラグを用いた成形法の中でも、予備成形としてエアーアシストとプラグ成形を組み合わせたエアーアシストプラグ成形法、及び、圧空注入時に適切なタイミングでプラグを上昇及び下降させて成形性を補助するプラグ圧空成形法を採用することが好ましい。この中でも、肉厚コントロールの観点から、エアーアシストプラグ成形法を採用することが特に好ましい。例えば、PTP用底材を製造する場合には、成形前に加熱板で本プレススルーパッケージ用シートを加熱軟化させ、成形型にて当該シートを挟み、圧空を注入するともに、プラグを上昇および下降させて、成形型の凹型に沿わせてシート面内に多数のポケット部(例えば、直径約9mm、深さ約4mm)を成形するようにすればよい。なお、プラグは、本プレススルーパッケージ用シートの基材層側から当接させることが好ましい。
【0120】
また、本プレススルーパッケージ用シートに熱成形を施すと共に、シート表面、あるいは、裏面又は両面にアルミ箔、アルミ蒸着フィルム、プラスチックフィルム(例えば二軸延伸ポリプロピレンフィルム、ポリアミドフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム)などを積層することも可能である。なお、シート表面或いは裏面又は両面にアルミ箔や各種フィルムなどを積層して複合シートを形成した後、これを熱成形することも可能である。
【0121】
さらに、製品の意匠性や二次加工性等を高める目的で、シート表面にエンボス加工や、艶消し加工等の加工を行ってもよい。この場合、一旦鏡面状のシートを作製してからエンボスロールや艶消しロールで加工を施すようにしてもよく、基材層の押出成形の際にキャストロールをエンボスロールや艶消しロールに変更して加工を施してもよい。本発明の趣旨を損なわない限り、シート表面に帯電防止剤、シリコーン、ワックスなどをコーティングしてもよい。また、傷付着防止などの目的で表面保護シートを用いて皮膜を形成してもよく、印刷層を設けることも可能である。なお、印刷層の形成手段は公知の手段を採用することができる。
【0122】
上記のようにして製造されるPTP用底材は、蓋材と組み合わされることにより、PTPとすることができる。
【0123】
蓋材としては、一般的にPTPに使用される材料、例えば、アルミニウム箔やフィルム等、従来公知のものを用いることができる。また、PTPの内容物は、錠剤やカプセル剤等、ポケット部に収納できるものであれば、特に限定されない。
【0124】
(プレススルーパッケージ)
本発明は、上述したプレススルーパッケージ用シートを備えたプレススルーパッケージに関するものでもある。プレススルーパッケージは、プレススルーパッケージ用シートに形成したポケット部にカプセル等の内容物を収納した後、蓋材でポケット部を密封し一体化することで得られる包装体である。
【0125】
プレススルーパッケージに収納される内容物は錠剤やカプセル剤等、ポケット部に収納できるものであれば、特に限定されるものではない。内容物としては、例えば、医薬や食品、サプリメント等を挙げることができる。中でも、プレススルーパッケージの内容物は医薬であることが好ましく、本プレススルーパッケージ用シートは医薬包装用であることが好ましい。本プレススルーパッケージ用シートは、特に、バリア性、成形性、透明性に優れているため、医薬包装用として好適である。
【実施例0126】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0127】
<原料>
実施例・比較例で使用した原料について説明する。
【0128】
〔ポリプロピレン系樹脂〕
(PP-1):ホモポリプロピレン(密度=0.900g/cm3、MFR=2.8g/10分(230℃測定))
(PP-2):ホモポリプロピレン(密度=0.900g/cm3、MFR=5.0g/10分(230℃測定)、Mn=9×104、Mw=5×105、Mw/Mn=6)
(PP-3):ホモポリプロピレン(密度=0.900g/cm3、MFR=1.9g/10分(230℃測定)、Mn=1×105、Mw=6×105、Mw/Mn=6)
【0129】
〔ポリエチレン系樹脂〕
(PE-1):高密度ポリエチレン
(密度=0.953g/cm3、MFR=2.0g/10分(190℃測定)、Mn=3.19×104、Mw=2.94×105、Mw/Mn=9.2)
【0130】
〔粘着付与樹脂〕
石油樹脂:C9系石油樹脂の水素添加誘導体(密度=0.999g/cm3、軟化点=125℃)
【0131】
〔結晶核剤〕
核剤:脂肪酸金属塩
【0132】
[フッ素系樹脂シート]
PCTFE:ポリクロロトリフルオロエチレン(ハネウェル社製ACLAR Rx160、水蒸気透過係数=0.007g・mm/(m2・day)
【0133】
ここで上記原料の物性は以下の方法にて測定したものである。
(密度)
JIS K7112:1999D法
(MFR)
JIS K7210:2014法
(Mn、Mw、Mw/Mn)
Malvern Instruments社の高温GPCシステム(ViscotekトリプルディテクターHT-GPCモデルSGシステム)にて、使用溶媒:オルトジクロロベンゼン、測定温度:140℃、検出器RI(リファレンスフロー方式)、ポリスチレン換算分子量にて、算出した。
(軟化点)
自動軟化点測定装置(メイテック社製APS-MG2型)を用いて、JIS K2207:1996法により測定した。
【0134】
<実施例1>
第1の層形成用樹脂組成物として、(PP-2)、(PP-3)及び石油樹脂を混合質量比80:10:10の割合でドライブレンドした後、40mmφ単軸押出機を用いて230℃で混練した。
第2の層形成用樹脂組成物として、(PE-1)、石油樹脂及び核剤を、混合質量比82:18:2.5の割合でドライブレンドした後、40mmφ単軸押出機を用いて230℃で混練した。
第1の層、第2の層の厚みの積層比率が、第1:第2:第1=1:4:1となるように、各層をTダイより押出し、次いで約45℃のキャスティングロールにて急冷し、厚さ250μmの基材層を作製した。
【0135】
作製した基材層上に接着剤(ポリウレタン系樹脂)をコートし、80℃で1分間乾燥し、厚み5μmの接着層を設けた。この接着層に厚み15μmのフッ素系樹脂シート(ハネウェル社製、ACLAR Rx160)をラミネートし、積層シート(サンプル)を作製した。実施例1における第1の層と第2の層の間の層間強度は10.4N/15mmであった。
【0136】
<実施例2及び3>
各層を形成するための樹脂組成物の原料配合組成と基材層の積層比率を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、積層シート(サンプル)を作製した。実施例2及び3における第1の層と第2の層の間の層間強度は、それぞれ8.9N/15mと9.4N/15mmであった。
【0137】
<比較例1及び2並びに参考例1>
各層を形成するための樹脂組成物の原料配合組成と基材層の積層比率を、表1に示すように変更し、バリア層を積層しなかった以外は、実施例1と同様にして、積層シート(サンプル)を作製した。なお、参考例1は、ポリエチレン系樹脂を含まない積層シートである。
【0138】
(測定及び評価方法)
<バリア層の貯蔵弾性率>
バリア層を形成する前のフッ素系樹脂シートを5mm×8cmの試験片(厚み250μm)を切り出し、測定試料として得た。その測定試料を用いて、JIS K7244-4:1999に準拠して、粘弾性スペクトロメーター「DVA-200(アイティー計測制御株式会社製)」を用い、周波数1Hz、歪み0.1%、温度範囲20~400℃、加熱速度3℃/minで昇温させ、130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))を測定した。
【0139】
<積層シートの貯蔵弾性率>
各実施例、比較例で得られた積層シートから5mm×8cmの試験片(厚み250μm)を切り出し、測定試料として得た。その測定試料を用いて、JIS K7244-4:1999に準拠して、粘弾性スペクトロメーター「DVA-200(アイティー計測制御株式会社製)」を用い、周波数1Hz、歪み0.1%、温度範囲20~400℃、加熱速度3℃/minで昇温させ、120℃の貯蔵弾性率(E’(120℃))と130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))を測定した。
また、120℃の貯蔵弾性率(E’(120℃))と130℃の貯蔵弾性率(E’(130℃))の間の、温度変化に対する貯蔵弾性率の対数値の傾きは以下(1)式から算出した。
温度変化に対する貯蔵弾性率(対数値)の傾き=[logE’(130℃)-logE’(120℃)]/(130-120) (1)
【0140】
<全光線透過率・ヘーズ>
JIS K7136:2000法に基づいて、実施例・比較例で得られた積層シート(サンプル)の全光線透過率および拡散透過率を、ヘーズメーターを用いて測定した。
得られた全光線透過率および拡散透過率からヘーズを以下の式で算出し、下記の基準で評価した。
[ヘーズ](%)=[拡散透過率]/[全光線透過率]×100
【0141】
<水蒸気透過率>
JIS K7129-2:2019法に基づき、PERMATRAN W 3/31(MOCON製)を用いて、40℃、相対湿度90%の雰囲気下において、実施例・比較例で得られた積層シート(サンプル)の水蒸気透過率を測定し、下記の基準で評価した。
【0142】
<バリア性の評価>
バリア性は上記方法で測定した水蒸気透過率の数値を用いて、以下の基準で評価した。
[評価基準]
〇:水蒸気透過率が0.5g/m2/24h以下
△:水蒸気透過率が0.5g/m2/24hを超えて0.8g/m2/24h以下
×:水蒸気透過率が0.8g/m2/24hを超える
【0143】
<プラグ成形性の評価>
PTP用成形機(FBP-300E(CKD社製))を用いて、エアーアシストプラグ成形法により、実施例及び比較例で作製した積層シート(サンプル)にPTP成形を施した。具体的には、実施例及び比較例で作製した積層シート(サンプル)を加熱し軟化させた後、上型と下型との間に積層シートの基材層が下方に配置されるよう挟み、上部からのエアーアシストと下部からの凸形状のプラグの昇降によって、ポケットサイズΦ10mm、深さ4.5mmの条件で、シート面内に複数の凹部を形成した。
その後、該凹部が形成されたシート面に、内容物を充填せずに、20μm厚さのアルミ箔を用いて250℃で熱シールした。
さらに、底材シート側から深さ200μmになるようにスリットを入れた後、約40mm×約95mm、コーナーR=5mmのサイズ(40mmの方向がシートの縦方向)に打ち抜いて、PTP成形品(プレススルーパッケージ)を得た。
【0144】
上記PTP成形品の製造において、PTP用成形装置におけるシート加熱板の温度を120~140℃の中、1℃間隔で変更してシートの成形を行い、得られた成形体について目視評価を行った。錠剤を収納するポケット天面やコーナー部等に潰れや変形や層間剥離が無く実用上支障のないレベルのPTP成形品が得られる温度の上限と、下限を求め、かかる温度範囲を適性に成形加工できる温度範囲とし、下記の評価基準により評価を行った。
[評価基準]
〇:上限と下限の温度範囲が5℃以上
×:上限と下限の温度範囲が5℃未満、もしくはポケット形状が形成できなかった場合
【0145】
【0146】
実施例で得た積層シート(サンプル)は、プラグ成形性が良好であり、径の小さな突出成形部であっても精度高く成形可能であった。また、実施例で得た積層シート(サンプル)は、バリア性も良好であった。