(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044808
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/268 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H01L21/268 Z
H01L21/268 G
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150565
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 克彦
(57)【要約】
【課題】均一な基板処理を行うことが可能となる技術を提供する。
【解決手段】基板を処理する処理室と、前記処理室内に電磁波を供給する電磁波発生器と、冷却ガスを供給する方向を調整して前記基板に前記冷却ガスを供給するガス供給部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に電磁波を供給する電磁波発生器と、
冷却ガスを供給する方向を調整して前記基板に前記冷却ガスを供給するガス供給部と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記ガス供給部は、
前記冷却ガスを供給する第1ノズルと、
前記冷却ガスを供給する第2ノズルと、
前記第1ノズルと前記第2ノズルの間に湾曲部と、
を備える請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記湾曲部は、円弧状の板であり、前記基板の方向に湾曲している請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第1ノズルと前記第2ノズルは、前記湾曲部の方向に対して前記冷却ガスを供給する請求項2又は3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記ガス供給部は複数の前記基板間に前記冷却ガスを供給する請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第1ノズルと前記第2ノズルとから供給される前記冷却ガスの流量を制御して、前記基板に対して供給される前記冷却ガスの方向を調整することが可能なよう構成される制御部を更に有する請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板の温度を測定する測定部を更に備え、
前記制御部は、前記測定部の測定結果に基づいて、前記冷却ガスの方向を調整することが可能なよう構成される請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記基板の温度を測定し、前記基板の温度が高い箇所に向けて、前記冷却ガスを供給することが可能なよう構成される請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第1ノズルと前記第2ノズルは、複数の前記基板に対して前記冷却ガスを供給することが可能なように複数の孔を備える請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記第1ノズルと前記第2ノズルは、複数の前記基板に対して前記冷却ガスを供給することが可能なようにスリットを備える請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記ガス供給部は、前記冷却ガスを供給するノズルを備え、
前記ノズルを回転させる回転部を更に備える請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記ガス供給部は複数の前記基板間に前記冷却ガスを供給する請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記回転部を制御して、前記基板に対して供給される前記冷却ガスの方向を調整することが可能なよう構成される制御部を更に有する請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記基板の温度を測定する測定部を備え、
前記制御部は、前記測定部の測定結果に基づいて、前記冷却ガスの方向を調整することが可能なよう構成される請求項13に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記測定部の測定結果に基づいて、前記基板の温度が一番高い箇所に向けて、前記冷却ガスを供給することが可能なよう構成される請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記ノズルは、複数の前記基板に対して前記冷却ガスを供給することが可能なように複数の孔を備える請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記ノズルは、複数の前記基板に対して前記冷却ガスを供給することが可能なようにスリットを備える請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記基板の温度を測定する測定部を備え、
前記制御部は、前記測定部の測定結果に基づいて、前記回転部を制御して前記冷却ガスの方向を調整することが可能なよう構成される請求項13に記載の基板処理装置。
【請求項19】
基板を処理する処理室と、前記処理室内に電磁波を供給する電磁波発生器と、冷却ガスを供給する方向を調整して前記基板に前記冷却ガスを供給するガス供給部と、を備える基板処理装置の前記処理室に前記電磁波を供給する工程と、
前記基板に前記冷却ガスを供給する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項20】
基板を処理する処理室と、前記処理室内に電磁波を供給する電磁波発生器と、冷却ガスを供給する方向を調整して前記基板に前記冷却ガスを供給するガス供給部と、を備える基板処理装置の前記処理室に前記電磁波を供給する手順と、
前記基板に前記冷却ガスを供給する手順と、
をコンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、例えば、加熱装置を用いて処理室内の基板を加熱し、基板の表面に成膜された薄膜中の組成や結晶構造を変化させるアニール処理がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アニール処理では、基板を均一に加熱することができず、対象膜の均一な処理ができないことがある。
【0005】
本開示は、均一な基板処理を行うことが可能となる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に電磁波を供給する電磁波発生器と、
冷却ガスを供給する方向を調整して前記基板に前記冷却ガスを供給するガス供給部と、
を備える技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、均一な基板処理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示における第1の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の枚葉型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【
図2】本開示で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図である。
【
図3】本開示における基板処理のフローを示す図である。
【
図4】本開示における基板のキャリア密度と温度の関係性を示した図である。
【
図5】本開示におけるガス供給部の概略構成図である。
【
図6】(a)
図5に示すガス供給部においてノズル105aからのガスの流量がノズル105bからのガスの流量よりも大きい場合のガスフローを示す上面図である。(b)
図5に示すガス供給部においてノズル105aからのガスの流量とノズル105bからのガスの流量とが等しい場合のガスフローを示す上面図である。(c)
図5に示すガス供給部においてノズル105aからのガスの流量がノズル105bからのガスの流量よりも小さい場合のガスフローを示す上面図である。
【
図7】(a)本開示における第1の実施形態の変形例1を示した図である。(b)本開示における第1の実施形態の変形例2を示した図である。
【
図8】本開示における第2の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の枚葉型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の第1の実施形態>
以下に本開示の第1の実施形態について、主に、
図1から
図5、
図6(a)から
図6(c)、
図7(a)および
図7(b)を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
本実施の形態において、本開示に係る基板処理装置100は、基板としてのウエハに各種の熱処理を施す枚葉式熱処理装置として構成されている。
【0011】
(処理室)
図1に示すように、本実施形態に係る基板処理装置100は、金属などの電磁波を反射する材料で構成されるキャビティとしてのケース102と、ケース102の内部に収容され、垂直方向の上下端部が開放された筒形状の反応管103を有している。反応管103は、石英などの電磁波を透過する材料で構成される。また、金属材料で構成されたキャップフランジ(閉塞板)104が、封止部材(シール部材)としてのOリング220を介して反応管103の上端と当接されて反応管の上端を閉塞する。主にケース102と反応管103、および、キャップフランジ104によってシリコンウエハ等の基板を処理する処理容器を構成し、特に反応管103の内側空間を処理室201として構成している。
【0012】
反応管103の下方には載置台210が設けられており、載置台210の上面には、ウエハ200を保持する基板保持具(基板保持部)としてのボート217が載置されている。ボート217には、処理対象としてのウエハ200と、例えばダミーウエハなどの石英板やシリコンプレート(Si板)などで形成されたウエハ200の温度を維持(保温)するための断熱板101a、101bが、所定の間隔でウエハ200を挟み込むようにウエハ200の上下にそれぞれ保持されている。また、載置台210の側壁には、載置台210の径方向に向かって突出した図示しない突出部が載置台210の底面側に設けられる。この突出部が、処理室201と後述する搬送空間203との間に設けられる図示しないしきり板と接近または接触することで処理室201内の雰囲気が搬送空間203内へ移動することや、搬送空間203内の雰囲気が処理室201内へ移動することを抑制する。
【0013】
ここで、断熱板101a、101bは基板処理温度に応じて複数枚ずつ設置してもよい。このように複数枚ずつ設置することによってウエハ200が載置されている領域において放熱されることを抑制することが可能となり、ウエハ200の面内または面間温度均一性を向上させることが可能となる。また、ボート217の端板(天井板)には、温度センサ263の測定窓が設けられており、温度センサ263によって断熱板101aの表面温度が測定され、測定された温度に基づいてウエハ200の処理温度が制御される。本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味する。
【0014】
上部容器としてのケース102は、例えば横断面が円形であり、平らな密閉容器として構成されている。また、下部容器としての搬送容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料または、石英などにより構成されている。処理容器の下方には、基板としてのシリコンウエハ等のウエハ200を搬送する搬送空間203が形成されている。なお、ケース102に囲まれた空間、または、反応管103に囲まれた空間であって、ケース102の底部よりも上方の空間を処理室201又は反応エリア201と称する。搬送容器202に囲まれた空間であって、ケース102の底部よりも下方の空間を搬送エリア203と称する場合もある。
【0015】
搬送容器202の側面には、ゲートバルブ205に隣接した基板搬入出口206が設けられており、ウエハ2は基板搬入出口206を介して図示しない基板搬送室との間を移動する。
【0016】
ケース102の側面には、電磁波導入ポート653-1、653-2が穿設されている。電磁波導入ポート653-1、653-2のそれぞれには処理室201内にマイクロ波を供給するための導波管654-1、654-2の一端が接続されている。導波管654-1、654-2の他端のそれぞれには処理室201内に電磁波を供給して加熱する加熱源としてのマイクロ波発振器(電磁波源)655-1、655-2が接続されている。
【0017】
ここで、電磁波導入ポート653-1、653-2、導波管654-1、654-2、マイクロ波発振器655-1、655-2は、一般的な説明等をする場合には、それぞれを代表して電磁波導入ポート653、導波管654、マイクロ波発振器655と記載する。
【0018】
載置台210は回転軸としてのシャフト255によって支持される。シャフト255は、搬送容器202の底部を貫通しており、更には搬送容器202の外部で回転、昇降動作を行う駆動機構267に接続されている。駆動機構267を作動させてシャフト255及び載置台210を回転、昇降させることにより、ボート217上に載置されるウエハ200を回転または昇降させることが可能となっている。なお、シャフト255下端部の周囲はベローズ212により覆われており、処理室201および搬送空間203内は気密に保持されている。
【0019】
載置台210は、ウエハ200の搬送時には、載置台上面が基板搬入出口206の位置(ウエハ搬送位置)となるよう下降し、ウエハ200の処理時には
図1で示されるように、ウエハ200が処理室201内の処理位置(ウエハ処理位置)まで上昇する。
【0020】
(排気部)
処理室201の下方であって、載置台210の外周側には、処理室201の雰囲気を排気する排気部が設けられている。
図1に示すように、排気部には排気口221が設けられている。排気口221には排気管231が接続されており、排気管231には、処理室201内の圧力に応じて弁開度を制御するAPCバルブなどの圧力調整器244、真空ポンプ246が順に直列に接続されている。
【0021】
ここで、圧力調整器244は、処理室201内の圧力情報(後述する圧力センサ245からのフィードバック信号)を受信して排気量を調整することができるものであればAPCバルブに限らず、通常の開閉バルブと圧力調整弁を併用するように構成されていてもよい。
【0022】
主に、排気口221、排気管231、圧力調整器244により排気部(排気系または排気ラインとも称する)が構成される。なお、処理室201を囲むように排気路を設け、ウエハ200の全周からガスを排気可能に構成してもよい。また、排気部の構成に、真空ポンプ246を加えるようにしてもよい。
【0023】
(ガス供給部)
反応管103の内側には不活性ガス、原料ガス、反応ガスなどの各種基板処理のための処理ガスを処理室201内に供給するための第1ノズルとしてのノズル105aおよび第2ノズルとしてのノズル105bがケース102の下面を介して設けられている。ノズル105a,105bには、ガス供給管232a,232bが接続されている。ガス供給管232a,232bには、上流から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241b、開閉弁であるバルブ243a,243bが設けられている。ガス供給管232a,232bの上流側には、例えば不活性ガス源が接続され、MFC241a,241b、バルブ243a,243b、ノズル105a,105bを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、後述するように、ウエハ200を冷却する冷却ガスとして用いられる。基板処理の際に複数種類のガスを使用する場合には、使用するガスの種類に応じて複数のノズルが独立して設けられるように構成されていても良い。主に、ガス供給管232a,232b、MFC241a,241b、バルブ243a,243bによりガス供給部(ガス供給系とも称する)が構成される。ノズル105a,105bおよび後述する円弧状の板107をガス供給部に含めてもよい。
【0024】
(ノズル)
図5に示すように、ノズル105aとノズル105bとの間に湾曲部としての円弧状の板107が設けられている。ノズル105a,105bおよび円弧状の板107は、例えば石英で構成されている。ノズル105a,105bの側面にはガスを供給するガス供給孔106a,106bが設けられている。ガス供給孔106a,106bは円弧状の板107の方向(円弧状の板107の円弧の接線方向)を向くように開口し、ウエハ200の表面と平行にガスを供給する。このガス供給孔106a,106bは反応管103の下部から上部にわたってスリットまたは複数の孔の列が設けられて構成される。複数の孔の列が設けられる場合は、それぞれの孔が同一の開口面積を有し、さらに同じ開口ピッチで設けられている。
【0025】
ガス供給部はガスの流量を制御することによりガスを供給する方向を調整することが可能である。これについて
図5、
図6(a)から
図6(c)を用いて説明する。
【0026】
図5に示すように、ガス供給部110としてのノズル105a,105bのガス供給孔106a,106bから円弧状の板107の円弧の接線方向に噴き出された第1ガス108aおよび第2ガス108bはコアンダ効果により円弧状の板107の板面に沿って供給される。円弧状の板107はウエハ200の方向に凸になるように湾曲しているので、第1ガス108aと第2ガス108bとが合成された第3ガス108cは円弧状の板107の板面の法線方向に沿ってウエハ200に噴き出される。第3ガス108cは断熱板101aとウエハ200間および断熱板101bとウエハ200間に供給される。なお、ボート217がウエハ200を複数多段に保持する場合は、第3ガス108cはウエハ200間に供給される。第1ガス108aおよび第2ガス108bの流量をMFC241a,241bで調整することにより、第3ガス108cの噴き出し方向を調整することが可能である。
【0027】
例えば、
図6(a)に示すように、ノズル105aから噴き出される第1ガス108aの流量がノズル105bから噴き出される第2ガス108bの流量よりも大きい場合、第3ガス108cはウエハ200の中心方向(矢印Cの方向)よりも左側の方向(ノズル105b側の方向)に噴き出される。
【0028】
図6(b)に示すように、ノズル105aから噴き出される第1ガス108aの流量をとノズル105bから噴き出される第2ガス108bの流量と等しい場合、第3ガス108cはウエハ200の中心方向(矢印Cの方向)に噴き出される。
【0029】
図6(c)に示すように、ノズル105aから噴き出される第1ガス108aの流量がノズル105bから噴き出される第2ガス108bの流量よりも小さい場合、第3ガス108cはウエハ200の中心方向(矢印Cの方向)よりも右側の方向(ノズル105a側の方向)に噴き出される。
【0030】
第3ガス108cは第1ガス108aと第2ガス108bとが合成されるので、第3ガス108cの流量は、第1ガス108aの流量と第2ガス108bの流量の内大きい方の流量よりも増加する。第1ガス108aの流量をFA、第2ガス108bの流量をFB、第3ガス108cの流量をFCとすると、FC=FA+FB-αとなる。ここで、αはロス分である。
【0031】
(温度センサ)
キャップフランジ104には、非接触式の温度検出器(測定部)として温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づき後述するマイクロ波発振器655の出力やMFC241a,241bの開度を調整することで、基板を加熱し、基板温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、例えばIR(Infrared Radiation)センサなどの放射温度計で構成されている。
【0032】
なお、基板の温度を測定する方法として、上述した放射温度計に限らず、熱電対を用いて温度測定を行ってもよいし、熱電対と放射温度計を併用して温度測定を行ってもよい。ただし、熱電対を用いて温度測定を行った場合、熱電対の測温精度を向上させるために処理ウエハ200の近傍に配置して温度測定を行う必要がある。このことから、後述するマイクロ波発振器から供給されたマイクロ波によって熱電対自体が加熱されてしまうため、放射温度計を温度センサ263として用いることが好ましい。
【0033】
また、温度センサ263は、キャップフランジ104に設けることに限らず、載置台210に設けるようにしてもよい。このように構成することによって、上端が閉塞された反応管を用いることが可能となり、処理室201に供給されるマイクロ波や処理ガス等が漏洩する可能性を低減することが可能となる。
【0034】
また、温度センサ263は、キャップフランジ104や載置台210に直接設置するだけでなく、キャップフランジ104や載置台210に設けられた測定窓からの放射光を鏡等で反射させて間接的に測定するように構成されていてもよい。このように構成することによって、温度センサ263を設置する場所の制限を緩和することが可能となる。
【0035】
(マイクロ波供給部)
ケース102の側壁には電磁波導入ポート653-1、653-2が設置されている。電磁波導入ポート653-1、653-2のそれぞれには処理室201内に電磁波を供給するための導波管654-1、654-2のそれぞれの一端が接続されている。導波管654-1、654-2それぞれの他端には処理室201内に電磁波を供給して加熱する加熱源としてのマイクロ波発振器(電磁波源、電磁波発生器)655-1、655-2が接続されている。マイクロ波発振器655-1、655-2はマイクロ波などの電磁波を導波管654-1、654-2にそれぞれ供給する。また、マイクロ波発振器655-1、655-2は、マグネトロンやクライストロンなどが用いられる。マイクロ波発振器655によって生じる電磁波の周波数は、好ましくは13.56MHz以上24.125GHz以下の周波数範囲となるように制御される。さらに好適には、2.45GHzまたは5.8GHzの周波数となるように制御されることが好ましい。
【0036】
また、本実施形態において、マイクロ波発振器655は、ケース102の側面に2つ配置されるように記載されているが、これに限らず、1つ以上設けられていればよい。
【0037】
また、マイクロ波発振器655は、ケース102の対向する側面等の異なる側面に設けられるように配置してもよい。このように構成することによって、後述するマイクロ波がウエハ200上で部分的に吸収される領域が生じることを抑制することが可能となる。すなわち、ウエハ200が部分的に加熱されることを抑制することが可能となり、ウエハ200の面内温度均一性を向上させることが可能となる。
【0038】
主に、マイクロ波発振器655-1、655-2、導波管654-1、654-2および電磁波導入ポート653-1、653-2によってマイクロ波供給部(電磁波供給装置、電磁波供給部、マイクロ波供給装置)としての加熱装置が構成される。
【0039】
マイクロ波発振器655-1、655-2それぞれには後述するコントローラ121が接続されている。コントローラ121には処理室201内に収容される断熱板101aまたは101b、若しくはウエハ200の温度を測定する温度センサ263が接続されている。温度センサ263は、断熱板101aまたは101b、若しくはウエハ200の温度を測定してコントローラ121に送信し、コントローラ121によってマイクロ波発振器655-1、655-2の出力を制御し、ウエハ200の加熱を制御する。
【0040】
ここで、マイクロ波発振器655-1、655-2は、コントローラ121から送信される同一の制御信号によって制御される。しかし、これに限らず、マイクロ波発振器655-1、655-2それぞれにコントローラ121から個別の制御信号を送信することでマイクロ波発振器655-1、655-2が個々に制御されるように構成してもよい。
【0041】
(制御装置)
図2に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0042】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述するノズルのエッチング処理や成膜処理の手順や条件等が記載されたエッチングレシピやプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。エッチングレシピやプロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、エッチングレシピやプロセスレシピを、単にレシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0043】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a,241b、バルブ243a,243b、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、駆動機構267、マイクロ波発振器655等に接続されている。
【0044】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a,241bによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a,243bの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくマイクロ波発振器の出力調整動作、駆動機構267による載置台210(またはボート217)の回転および回転速度調節動作、または、昇降動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0045】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0046】
(2)基板処理工程
次に、上述の基板処理装置100の処理炉を用いて、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、例えば、基板上に形成されたシリコン(Si)含有膜としてのアモルファスシリコン膜の改質(結晶化)方法の一例について
図3に示した処理フローに沿って説明する。以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0047】
ここで、本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハ(プロダクトウエハ)そのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合がある。すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合、後述する「ターゲット基板(ターゲットウエハ)」または後述する「ダミー基板(ダミーウエハ)」もしくは「ターゲット基板(ターゲットウエハ)とダミー基板(ダミーウエハ)の両方」を意味する場合がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、上述した「ウエハ」の定義を用いた「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。
【0048】
従って、本明細書において「ウエハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、上述した「ウエハ」の定義を用いた「ウエハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等に対して、すなわち、積層体としてのウエハの最表面に対して所定のガスを給する」ことを意味する場合がある。また、本明細書において「ウエハ上に所定の層(または膜)を形成する」と記載した場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)上に所定の層(または膜)を形成する」ことを意味する場合や、「ウエハ上に形成されている層や膜等の上、すなわち、積層体としてのウエハの最表面の上に所定の層(または膜)を形成する」ことを意味する場合がある。
【0049】
また、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0050】
(S301:基板搬入工程)
図1に示されているように、所定枚数のウエハ200がボート217に移載されると、駆動機構267は、載置台210を上昇させることでボート217を反応管103内側の処理室201に搬入(ボートローディング)する。
【0051】
(S302:炉内圧力・温度調整工程)
処理室201内へのボート217の搬入が完了したら、処理室201内が所定の圧力(例えば10~102000Pa)となるよう処理室201内の雰囲気を制御する。具体的には、真空ポンプ246により排気しつつ、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて圧力調整器244の弁開度をフィードバック制御し、処理室201内を所定の圧力とする。また、同時に予備加熱としてマイクロ波供給部を制御し、所定の温度まで加熱を行うように制御してもよい。
なお、本明細書における「10~102000Pa」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「10~102000Pa」とは「10Pa以上102000Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0052】
(S303:不活性ガス供給工程)
駆動機構267は、シャフト255を回転させ、載置台210上のボート217を介してウエハ200を回転させる。このとき、不活性ガスがガス供給管232a,232bを介してノズル105a,105bから供給される。処理室201内の圧力は0Pa以上200000Pa以下の範囲となる所定の値であって、例えば101300Pa以上101600Pa以下となるように調整される。
【0053】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガス、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。この点は、後述する各工程においても同様である。
【0054】
(S304:基板処理工程)
処理室201内を所定の圧力となるように維持すると、マイクロ波発振器655-1、655-2はウエハ200を100℃以上700℃以下の温度帯に加熱する。好適には200℃以上600℃以下の温度帯となるように加熱し、さらに好適には、200℃以上400℃以下となるように加熱する。ウエハ200が100℃より低い温度で処理しようとした場合や、700℃よりも高い温度で処理しようとした場合、ウエハ200がマイクロ波を吸収し難くなってしまい、ウエハ200を効率的に加熱することができなくなってしまう。
【0055】
ウエハ200の温度は、断熱板101aの表面温度を温度センサ263によって測定した値から、記憶装置121cまたは外部記憶装置122に予め記憶された温度変換データによって推測される。マイクロ波発振器655-1、655-2は、導波管654-1と654-2を介して電磁波導入ポート653-1と653-2からマイクロ波を処理室201内に供給する。処理室201内に供給されたマイクロ波はウエハ200に入射して効率的に吸収されるために、ウエハ200を極めて効果的に加熱することが可能となる。
【0056】
マイクロ波発振器655を制御することでウエハ200を上述した所定の処理温度まで加熱すると、予め定められた時間、当該処理温度を維持する。このようにマイクロ波発振器655を制御することでマイクロ波ウエハ200の表面上に形成されたアモルファスシリコン膜の改質処理を行う。
【0057】
ここで、ウエハ200を効率よく加熱する、すなわち、ウエハ200がマイクロ波を効率よく吸収させるためには、ウエハ200のキャリア密度とキャリア温度依存性について検討する必要がある。
図4に示すように、縦軸をキャリア密度(導電率に比例)(ln n)、横軸を温度(1/T)としたウエハ200のキャリア密度の温度依存性の一例を示した場合、温度によって、領域(A)、領域(B)、領域(C)に分けることができる。ウエハ200がシリコン(Si)基板である場合、例えば領域(A)と(B)を分ける温度は327℃、領域(B)と(C)とを分ける温度は-73℃である。
図4から明らかであるように、領域(A)と(C)は温度上昇とともに、キャリア密度も大きく上昇するが、領域(B)は温度が上昇した場合であっても、キャリア密度は大きく上昇しない。
【0058】
ウエハ200の単位時間当たりの発熱量はウエハ200のキャリア密度に比例するため、キャリア密度が変動するとそれに伴って発熱量も変化する。このため、キャリア密度の変化が大きい領域(A)で、マイクロ波加熱を行った場合、温度変化に応じてキャリア密度が増加する割合が大きいため、照射されるマイクロ波の電力が同じでも、ウエハ200の昇温速度が大きくなる。したがって、領域(A)において、マイクロ波による加熱が行われることが好ましい。
【0059】
また、領域(A)は、上述したようにウエハ200の昇温速度が大きいため、マイクロ波が局所的に集中すると、集中した箇所が高温となりウエハ200の面内で部分的に温度差が大きくなり、熱膨張差でウエハ200が変形してしまう。このため、領域(A)の温度帯でマイクロ波による加熱を行いつつウエハ200を冷却することで、ウエハ200の面内温度差を小さくしてウエハ200が変形することを抑制しつつ、ウエハ200の改質処理速度を向上させることが可能となる。
【0060】
温度センサ263によって測定した温度、または、上述した予め記憶された温度変換データによって推測された温度に応じてガス供給部を制御するようにしてもよい。すなわち、加熱されたウエハ200の温度が所定の目標温度よりも高い温度となったタイミングでガス供給部、具体的にはMFC241a,241bの開度を大きくして冷却ガスの流量を増加させ、ウエハ200を冷却する。逆にウエハ200の温度が所定の目標温度よりも低い温度となったタイミングでMFC241a,241bの開度を小さくして冷却ガスの流量を低下させ、ウエハ200を加熱する。このようにマイクロ波供給部とガス供給部を制御することによって、ガス供給部のみを詳細に制御することで足りるため、ウエハ200の温度制御を単純化することが可能となる。
【0061】
例えば、冷却ガスの流量(第3ガス108cの流量)が1slm以上50slm以下となるようにMFC241a,241bを制御することが好ましい。冷却ガスの流量が1slm以下であると、ウエハ200に冷却ガスが届かない。冷却ガスの流量が50slm以上となると、冷却ガスが浪費したり、ウエハ200が冷却しすぎたりする。
【0062】
また、温度センサ263によって測定した温度、または、上述した予め記憶された温度変換データによって推測された温度に基づいて、MFC241a,241bにより流量を制御することにより冷却ガスの供給方向を調整して、ウエハ200上での温度が一番高い箇所に向けて冷却ガスを供給するようにしてもよい。これにより、面内均一性を調整することが可能である。
【0063】
以上のようにウエハ200を加熱処理することによってウエハ200表面上に形成されているアモルファスシリコン膜がポリシリコン膜へと改質(結晶化)されることとなる。すなわち、ウエハ200を均一に改質することが可能となる。
【0064】
予め設定された処理時間が経過すると、ボート217の回転、ガスの供給、マイクロ波の供給および排気管の排気が停止する。
【0065】
基板処理工程の終了後、不活性ガスを供給し、処理室201内の圧力を大気圧に復帰する。
【0066】
(S305:基板搬出工程)
処理室201内の圧力を大気圧復帰させた後に、駆動機構267は載置台210を下降させることにより、炉口を開口するとともに、ボート217を搬送空間203に搬出(ボートアンローディング)する。その後ボートに載置されているウエハ200を搬送空間203の外部に位置する搬送室に搬出する。
【0067】
以上の動作が繰り返されることにより、ウエハ200が改質処理されることとなる。
【0068】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0069】
(a)冷却ガスの噴き出し方向を調整可能であるので、ウエハ面内の温度均一性を向上させることが可能となる。
【0070】
(b)ガスの流量によりガスの噴き出し方向を変えるので、制御部による調整が可能である。ノズルの方向を手動で調整する場合よりもノズルの方向の再現性を確保することが可能となる。
【0071】
(c)ガスの流量によりガスの噴き出し方向を調整するので、ノズル方向を変化させるメカ機構(すなわち、機械的な可動部)が不要となる。メカ機構を反応管103内に設ける場合のマイクロ波の電磁界分布に及ぼす影響を抑制することが可能となる。
【0072】
(4)第1の実施形態の変形例
本実施形態における基板処理装置は、上述の態様に限定されず、以下に示す変形例のように変更することができる。なお、本変形例において、第1の実施形態と同一の機能を有する構成要素には、同一の参照番号を付し、説明を省略する。
【0073】
(変形例1)
図7(a)に示すように、第1の実施形態における変形例1は、ボート217がウエハ200を複数多段に保持可能に構成している。具体的には、ボート217に保持された断熱板101aと101bの間に複数枚のウエハ200を所定の間隔で水平多段に保持するように構成し、上述した基板処理工程の順番で保持された複数枚のウエハ200が均等に処理される。このように構成することによって、一度の処理で複数枚のウエハ200が処理可能となり、基板処理のスループットを向上させることが可能となる。なお、ガス供給孔106a,106bは反応管103の下部から上部にわたってスリットまたは複数の孔の列が設けられて構成されるので、ノズル105a,105bおよび円弧状の板107からウエハ200間にガスが供給される。これにより、ウエハ間の温度均一性を向上させることが可能となる。
【0074】
ここで、
図7(a)では、複数枚のウエハ200は断熱板101a、101bの間に挟まれるように保持されているが、これに限らず、複数のウエハ200それぞれを複数の断熱板101a、101bで挟み込んで保持するように構成してもよい。この場合、断熱板101aと101bも複数枚設けられることとなる。このように構成することによって、第1の実施形態と比較してウエハ200をより早く加熱することが可能となるばかりでなく、ウエハ面内の温度均一性を向上させることが可能となる。
【0075】
(変形例2)
図7(b)に示すように、第1の実施形態における変形例2は、ボート217を挟んでノズル105に対向する位置に排気用の排気ノズル601を設置するように構成している。ガス供給ノズル側に面する排気ノズル601の側面には処理室201内の雰囲気を排気するための排気口が設けられ、排気ノズル601の下流側には排気管231が接続されている。このように構成することによって、処理室201内の圧力が大気圧または微加圧の状態であっても、ウエハ側面から水平に冷却ガスを供給し、水平なガス流れを形成することが可能となり、ウエハ200を均一に冷却することが可能となる。したがって、ウエハ面内の温度均一性を向上させることが可能となる。
【0076】
<本開示の第2の実施形態>
次に本開示の第2の実施形態について
図8を用いて説明する。
【0077】
第2の実施形態において、本開示における基板処理装置が第1の実施形態と異なる点は、ガス供給部が二本のノズルおよび円弧状の板を設けずにガス供給部としてのノズル105を回転する回転部268が設けられる点である。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一の機能を有する構成要素には、同一の参照番号を付し、説明を省略する。
【0078】
本実施形態は、反応管103の内側には不活性ガス、原料ガス、反応ガスなどの各種基板処理のための処理ガスを処理室201内に供給するためのノズル105がケース102の下面を介して設けられている。ノズル105の側面にはガスを供給するガス供給孔106が設けられている。ガス供給孔106はウエハ200の表面と平行にガスを供給する。このガス供給孔106は反応管103の下部から上部にわたってスリットまたは複数の孔の列が設けられて構成される。複数の孔の列が設けられる場合は、それぞれの孔が同一の開口面積を有し、さらに同じ開口ピッチで設けられている。ノズル105から噴き出される冷却ガスは断熱板101aとウエハ200間および断熱板101bとウエハ200間に供給される。なお、ボート217がウエハ200を複数多段に保持する場合は、冷却ガスはウエハ200間に供給される。
【0079】
ノズル105には、後述する回転部268を介してガス供給管232が接続されている。ガス供給管232には、上流から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241、開閉弁であるバルブ243が設けられている。ガス供給管232の上流側には、例えば不活性ガス源が接続され、MFC241、バルブ243を介して処理室201内へ供給される。基板処理の際に複数種類のガスを使用する場合には、ガス供給管232のバルブ243よりも下流側に上流方向から順に、MFCおよび開バルブが設けられたガス供給管が接続されていてもよいし、使用するガスの種類に応じて複数のノズルが独立して設けられるように構成されていても良い。主に、ガス供給管232、MFC241、バルブ243によりガス供給部(ガス供給系とも称する)が構成される。ノズル105および回転部268の少なくとも一つをガス供給部に含めてもよい。
【0080】
反応管103の下方であって搬送容器202の外周側には、ノズル105の回転を行う回転部268が設けられている。コントローラ121が回転部268を作動させてノズル105を回転させることによりガス供給孔106から噴き出される冷却ガスの方向を調整することが可能である。また、コントローラ121は、温度センサ263の測定結果に基づいて、回転部268を制御して冷却ガスの方向を調整することが可能である。このように構成することによって、第1の実施形態と同様の効果を得られるだけでなく、反応管103内の装置構造を複雑化することなく第1の実施形態と比べてガス供給部の制御を単純化することが可能となる。メカ機構である回転部を反応管103内に設けない場合、マイクロ波の電磁界分布に及ぼす影響を抑制することが可能となる。
【0081】
以上、本開示を実施形態に沿って説明してきたが、上述の各実施形態や各変形例等は、適宜組み合わせて用いることができ、その効果も得ることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0082】
また、例えば、上述の各実施形態では、シリコンを主成分とする膜として、アモルファスシリコン膜をポリシリコン膜に改質する処理について記載したが、これに限らず、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、水素(H)のうち、少なくとも1つ以上を含むガスを供給させて、ウエハ200の表面に形成された膜を改質しても良い。例えば、ウエハ200に、高誘電体膜としてのハフニウム酸化膜(HfxOy膜)が形成されている場合に、Oを含むガスを供給しながらマイクロ波を供給して加熱させることによって、ハフニウム酸化膜中の欠損した酸素を補充し、高誘電体膜の特性を向上させることができる。また、窒素ガス(N2ガス)を供給しながらマイクロ波を供給して加熱させることによって、ハフニウム酸化膜中の未結晶化部分を結晶化し、高誘電体膜の特性を向上さることができる。
【0083】
なお、ここでは、ハフニウム酸化膜について示したが、これに限らず、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、鉛(Pb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の少なくともいずれかを含む金属元素を含む酸化膜、すなわち、金属系酸化膜を形成する場合においても、好適に適用可能である。すなわち、上述の成膜シーケンスは、ウエハ200上に、Ti膜、TiN膜、TiOCN膜、TiOC膜、TiON膜、TiO膜、ZrN膜、ZrOCN膜、ZrOC膜、ZrON膜、ZrO膜、HfOCN膜、HfOC膜、HfON膜、HfO膜、TaOCN膜、TaOC膜、TaON膜、TaO膜、NbOCN膜、NbOC膜、NbON膜、NbO膜、AlOCN膜、AlOC膜、AlON膜、AlO膜、MoOCN膜、MoOC膜、MoON膜、MoO膜、W膜、WOCN膜、WOC膜、WON膜、WO膜を形成する場合にも、好適に適用することが可能となる。
【0084】
また、高誘電体膜に限らず、不純物がドーピングされたシリコンを主成分とする膜を加熱させるようにしてもよい。シリコンを主成分とする膜としては、SiN膜、SiO膜、SiOC膜、SiOCN膜、SiON膜等のSi系酸化膜、Epi-Si膜、Epi-SiGe膜等がある。不純物としては、例えば、ボロン(B)、C、N、Al、リン(P)、ガリウム(Ga)、砒素(As)などの少なくとも1つ以上を含む。なお、上述したシリコンを主成分とする膜や金属酸化膜の他、Epi-Ge膜や、3-5族元素を用いて形成する膜を加熱するようにしてもよい。
【0085】
また、メタクリル酸メチル樹脂(Polymethyl methacrylate:PMMA)、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、ポリビニルフェニール樹脂などの少なくともいずれかをベースとするレジスト膜であってもよい。
【0086】
また、上述では、半導体装置の製造工程の一工程について記したが、これに限らず、液晶パネルの製造工程のパターニング処理、太陽電池の製造工程のパターニング処理や、パワーデバイスの製造工程のパターニング処理などの、基板を処理する技術にも適用可能である。
【0087】
上述の態様では、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。また、上述の態様では、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0088】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0089】
100・・・基板処理装置
110・・・ガス供給部
201・・・処理室
655・・・マイクロ波発振器(電磁波発生器)