(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044844
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】魚類の自発摂餌式自動給餌装置
(51)【国際特許分類】
A01K 61/85 20170101AFI20240326BHJP
【FI】
A01K61/85
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150616
(22)【出願日】2022-09-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム「資源循環型共生社会実現に向けた農水一体型サステイナブル陸上養殖のグローバル拠点」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
(74)【代理人】
【識別番号】100152180
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 秀人
(72)【発明者】
【氏名】竹村 明洋
(72)【発明者】
【氏名】大城 成栄
(72)【発明者】
【氏名】翁長 竜盛
(72)【発明者】
【氏名】大城 諒士
(72)【発明者】
【氏名】東舟道 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】瀬間 友貴
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104CA01
2B104CB51
2B104CF12
2B104CF28
(57)【要約】
【課題】本発明は、給餌口のメンテナンスが容易で、かつ、魚類が望む最適な量を自動で給餌できる自発摂餌式自動給餌装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、両端部が閉口した円筒状の給餌部と、魚類の自発的な摂餌行動を検知するためのセンサ部と、センサ部の検知をもとに給餌部の駆動を制御する制御部と、からなり、自らの欲求にしたがって疑似餌を摂餌する魚類の摂餌行為を検知するたびにモーターを駆動させ、全ネジの回転に応じて給餌部内を昇降する昇降板によって、餌を自動的に給餌することを特徴とする魚類の自発摂餌式自動給餌装置である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部が閉口した円筒状の給餌部と、
魚類の自発的な摂餌行動を検知するためのセンサ部と、
センサ部の検知をもとに給餌部の駆動を制御する制御部と、
からなり、
給餌部は、
給餌部の一端に取り付けられたモーターと、
モーターの出力軸にネジ軸が接続され、給餌部の中心軸に沿って配置された全ネジと、
全ネジが貫通し、全ネジの軸周方向の回転によって軸方向を昇降する、円盤状の昇降板と、
給餌部の他端に形成された、餌を供給する給餌口及び餌を補給する補給口と、
から構成され、
センサ部は、
水中に配置される疑似餌と、
魚類が疑似餌を摂餌したことを検知するプルスイッチと、
から構成され、
制御部は、
プルスイッチの検知情報を受ける制御用マイコンと、
検知情報をもとに給餌部のモーターを駆動させる駆動用回路と、
から構成されていることで、
自らの欲求にしたがって疑似餌を摂餌する魚類の摂餌行為を検知するたびにモーターを駆動させ、全ネジの回転に応じて給餌部内を昇降する昇降板によって、餌を自動的に給餌する
ことを特徴とする魚類の自発摂餌式自動給餌装置。
【請求項2】
両端部が閉口した円筒状の給餌部と、
魚類の自発的な摂餌行動を検知するためのセンサ部と、
センサ部の検知をもとに給餌部の駆動を制御する制御部と、
からなり、
給餌部は、
給餌部の一端に取り付けられたモーターと、
モーターの出力軸にネジ軸が接続され、給餌部の中心軸に沿って配置された全ネジと、
全ネジが貫通し、全ネジの軸周方向の回転によって軸方向を昇降する、円盤状の昇降板と、
給餌部の他端に形成された、餌を供給する給餌口及び餌を補給する補給口と、
から構成され、
センサ部は、
水中に配置され、先端に錘を有する釣り糸(幹糸)に接続された複数のハリスの先端に取り付けられた疑似餌と、
疑似餌とステンレスシャフトによって接続され、魚類が疑似餌を摂餌したことを検知するプルスイッチと、
から構成され、
制御部は、
プルスイッチの検知情報を受ける制御用マイコンと、
検知情報をもとに給餌部のモーターを駆動させる駆動用回路と、
から構成されていることで、
自らの欲求にしたがって疑似餌を摂餌する魚類の摂餌行為を検知するたびにモーターを駆動させ、全ネジの回転に応じて給餌部内を昇降する昇降板によって、餌を自動的に給餌する
ことを特徴とする魚類の自発摂餌式自動給餌装置。
【請求項3】
両端部が閉口した円筒状の給餌部と、
魚類の自発的な摂餌行動を検知するためのセンサ部と、
センサ部の検知をもとに給餌部の駆動を制御する制御部と、
からなり、
給餌部は、
給餌部の一端に取り付けられたモーターと、
モーターの出力軸にネジ軸が接続され、給餌部の中心軸に沿って配置された全ネジと、
全ネジが貫通し、全ネジの軸周方向の回転によって軸方向を昇降する、円盤状の昇降板と、
給餌部の他端に形成された、餌を供給する給餌口及び餌を補給する補給口と、
給餌口または補給口の一方のみを開口状態にする開口部が形成された、給餌部を覆う筒状のカバーと、
から構成され、
センサ部は、
水中に配置され、先端に錘を有する釣り糸(幹糸)に接続された複数のハリスの先端に取り付けられた疑似餌と、
疑似餌とステンレスシャフトによって接続され、魚類が疑似餌を摂餌したことを検知するプルスイッチと、
から構成され、
制御部は、
プルスイッチの検知情報を受ける制御用マイコンと、
検知情報をもとに給餌部のモーターを駆動させる駆動用回路と、
から構成されていることで、
自らの欲求にしたがって疑似餌を摂餌する魚類の摂餌行為を検知するたびにモーターを駆動させ、全ネジの回転に応じて給餌部内を昇降する昇降板によって、餌を自動的に給餌する
ことを特徴とする魚類の自発摂餌式自動給餌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類の自発摂餌行動にもとづき、自動的に魚類に給餌できる自動給餌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
魚類の、特に、養殖魚に対する給餌は、成長を維持し、また、出荷サイズに育てるために不可欠な行為である。
しかし、養殖魚に対する給餌は、一般的に、人の手によってなされるため、人件費が嵩んでコスト高になったり、過重労働の3K職場とみられて養殖業自体が敬遠される要因となっている。
【0003】
そこで、これらの問題を解決する手段として、自動給餌装置が開発され、人の関与を極力減らして給餌する方法が採られるようになっている。
しかし、従来の自動給餌装置は、予め設定した時間に、予め設定した量の餌を給餌していたため、魚類の摂餌速度が低下しても同一速度で給餌することになり、餌のロスが発生し、水質悪化の原因にもなっていた。
【0004】
そこで、特許文献1には、養殖魚群の摂餌状況に応じて給餌制御を行い得る自動給餌装置に関する発明が開示されている。
具体的には、養殖魚用の餌の給餌手段と、該給餌手段にて給餌動作が行われている最中のいけす内の養殖魚群の摂餌状況を検知する検知手段と、該検知手段の検知結果に基づいて前記給餌手段の給餌動作を制御する給餌制御手段とを備え、前記検知手段が摂餌中の養殖魚群のいけす内の底部近傍の魚群密度を検知することを特徴とする。
この発明によれば、検知手段による検知の結果、養殖魚群が盛んに摂餌していれば、給餌手段による給餌動作を継続させ、養殖魚群があまり摂餌しなくなったら、給餌手段による給餌動作を一旦停止し、その後、養殖魚群が盛んに摂餌するようになったら給餌動作を再開するなどといった制御を行うことができる。
【0005】
しかし、この発明も含め、これまでの自動給餌装置は、餌を放出する給餌口から、餌を水面に自由落下させる直下式の構造が多く、この構造では、水面から跳ね上がる水によって湿気を帯びる餌が滞留して給餌口が詰まり、また、餌の品質が低下するなどの問題が生じるため、給餌口のメンテナンスが不可欠であった。
なお、直下式ではなく、空気圧で飛ばすブロア式の構造の自動給餌装置も知られているが、給餌口が水面付近にあるため、給餌口が詰まる問題は直下式と同じである。
【0006】
また、近年は、魚類の自動給餌に対して行動心理学的にアプローチする研究が進み、オペラント条件付け(報酬や嫌悪刺激などに適応して、自発的に、魚類が一定の行動をするように魚類に学習させること。)による自発給餌が試みられている。
これによれば、魚類は自らの欲求にしたがって摂餌を行うようになることから、餌の無駄が無くなり、かつ、魚類が生理的に餌を要求する適切なタイミングで適切な量の餌を与えられるようになる。
さらに、魚類が要求する以上の餌は供給されることがないため、餌のロスが無くなり、飼育槽や養殖槽内の水質悪化を解消できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決するため、給餌口のメンテナンスが容易で、かつ、魚類が望む最適な量を自動で給餌できる自発摂餌式自動給餌装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる魚類の自発摂餌式自動給餌装置は、
両端部が閉口した円筒状の給餌部と、
魚類の自発的な摂餌行動を検知するためのセンサ部と、
センサ部の検知をもとに給餌部の駆動を制御する制御部と、
からなり、
給餌部は、
給餌部の一端に取り付けられたモーターと、
モーターの出力軸にネジ軸が接続され、給餌部の中心軸に沿って配置された全ネジと、
全ネジが貫通し、全ネジの軸周方向の回転によって軸方向を昇降する、円盤状の昇降板と、
給餌部の他端に形成された、餌を供給する給餌口及び餌を補給する補給口と、
から構成され、
センサ部は、
水中に配置される疑似餌と、
魚類が疑似餌を摂餌したことを検知するプルスイッチと、
から構成され、
制御部は、
プルスイッチの検知情報を受ける制御用マイコンと、
検知情報をもとに給餌部のモーターを駆動させる駆動用回路と、
から構成されていることで、
自らの欲求にしたがって疑似餌を摂餌する魚類の摂餌行為を検知するたびにモーターを駆動させ、全ネジの回転に応じて給餌部内を昇降する昇降板によって、餌を自動的に給餌する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
給餌口のメンテナンスが容易で、人の手によるメンテナンスは餌の補給のみであるため、労働力を大きく削減できる。
養殖魚が望む最適な時間と最適な量の餌を、養殖魚の自発的な摂餌行動に基づき、自動で給餌できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】自発摂餌式自動給餌装置の構成を示すブロック図
【
図2】自発摂餌式自動給餌装置の給餌部の側面図(下)と内部構造を示す断面図(上)
【
図3】自発摂餌式自動給餌装置を養殖槽に設置した一実施例を示す概略図
【
図4】自発摂餌式自動給餌装置の給餌部の一実施例を示す側面図
【
図5】自発摂餌式自動給餌装置のセンサ部の構成を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施例にかかる魚類の自発摂餌式自動給餌装置は、
図1に示すように、モーター及び昇降板摺動機構を有する給餌部1、センサ部2、並びに、駆動用回路及び制御用マイコンを有する制御部3からなる。
自発摂餌式自動給餌装置は、データを記録するデータ記録部を、内部に備えることも、外部に接続することもできるし、通信ネットワークに接続して、クラウド上に設けたデータ記録部にデータを直接記録することもできる。
【0013】
給餌部1は、
図2に示すように、両端部が閉口した、内部が空洞の長筒状の形状からなる。
給餌部1は、一方の端部に、モーター4が取り付けられており、モーター4の出力軸には、長筒状の給餌部の中軸部分に、長手方向に沿って配置される全ネジ5のネジ軸が連結している。
そのため、モーター4を駆動すると、全ネジ5のネジ軸は、軸周方向に回転する。
【0014】
全ネジ5は、給餌部1の空洞内を、給餌部1の長手方向に沿って昇降する昇降板6を貫通しており、昇降板6とは貫通部分において螺合している。
そのため、全ネジ5が軸周方向に回転すると、昇降板6が、全ネジ5の軸方向に沿って螺進する。
全ネジ5が逆回転すると、全ネジ5の軸方向に沿って螺退する。
これを繰り返すことで、昇降板6を、全ネジ5の軸方向に、摺動させることができる。
この全ネジ5と昇降板6によって、昇降板摺動機構を構成する。
【0015】
なお、給餌部1の空洞内に、給餌部1の長手方向に沿って、昇降板6を貫通する、回転止めシャフトを1以上配設することができる。
これにより、全ネジ5の軸方向を摺動する昇降板6が、全ネジ5の軸周方向の回転によって、一緒に軸周方向に回転することを防ぐことができる。
また、全ネジ5の周囲を覆う筒状の保護カバーを取り付けることもできる。
保護カバーは、昇降板6に取り付けられ、昇降板6の摺動に合わせて、全ネジ5の軸方向に沿って摺動する。
保護カバーによって、全ネジ5と昇降板6の間に餌が入り込み、昇降板6が摺動しにくくなることを防ぐことができる。
【0016】
給餌部1は、魚類の養殖槽7(または飼育槽。以下同じ。)に設置される。
給餌部1の設置個所は任意に設定でき、例えば、
図3に示すように、養殖槽7の水面よりも高い位置に、木枠や塩ビパイプなどで作った架台8の上に設置できる。
給餌部1は、養殖槽7の水面よりも高く、水面から少し離れた位置で、かつ、給餌する魚類を養殖する水面に対して仰角をなした状態で傾斜させて設置する。
傾斜の角度が大きいと、餌が給餌口9から供給されずに給餌部1内に残ってしまうことがあるため、傾斜角度は45度以下であることが望ましいが、給餌する餌の違い(形状、大きさ、素材など)のほか、給餌口9や昇降板6の形状、構造などにも影響するため、特定の角度に限定されるものではなく、使用する場所や環境に応じて、任意に変更することができる。
なお、本実施例にかかる自発摂餌式自動給餌装置は、給餌部1内の餌を昇降板6によって給餌口9から押し出す方法で餌を供給する方法を採用していることから、給餌部1は、魚類を養殖する水面に対して、水平に設置することは適切ではなく、水面に対して仰角をなした状態で傾斜させる必要がある。
【0017】
給餌部1は、
図3に示すように、養殖槽7に設置された状態の上端側の下面に餌を供給する給餌口9が、養殖槽7に設置された状態の上端側の上面に餌を補給する補給口10が、それぞれ形成されている。
給餌口9は、餌が水面に向かって自動落下するように供給させる必要があるため、給餌部1の下面に形成されており、補給口10は、餌を給餌部1内に補給しやすいように、給餌部1の上面に形成されている。
特に、給餌口9は、水面から離れた位置にあることで、エアレーションや魚類の活発な摂餌の際に水面から跳ね上がる水によって湿気を帯びた餌が給餌口9付近に滞留して、給餌部1内で詰まることを防ぐ効果がある。
また、給餌部1には、下端側の下面に、給餌部1内に溜まった餌のクズを排出するための排出口11が形成されている。
給餌口9から排出できなかった小さい餌のクズは、この排出口11から水面に排出されるが、必ずしも必要な構成ではない。
【0018】
給餌部1の給餌口9と補給口10が形成されている上端側は、給餌部1を覆う筒状のカバー12(
図4の斜線で示された部分)が取り付けられている。
カバー12は、上面側または下面側にのみ開口部17が形成されている。
そのため、カバー12が給餌部1に取り付けられた状態で、カバー12を給餌部1の周方向に回転させると、カバー12の開口部17が、給餌口9または補給口10の一方のみの開口部分と一致して、一方のみを開口状態にし、他方の開口部分を塞ぐことができる。
そこで、餌を給餌部1内に補給するときは、カバー12を給餌部1の周方向に回転させて、カバー12の開口部17を補給口10に合わせたうえで、人の手で、餌を給餌部1内に補給する。
餌の補給が終わった後は、カバー12を給餌部1の周方向に回転させて、補給口10を塞ぐことができる。
これにより、補給口10から給餌部1内に飛沫やほこりが侵入するのを防ぐことができる。
また、給餌しないときは、カバー12を給餌部1の周方向に回転させて、給餌口9を塞ぐことができる。
これにより、エアレーションや魚類の活発な摂餌の際に水面から跳ね上がる水によって湿気を帯びた餌が、給餌口9付近に滞留して、給餌部1内で詰まることを防ぐ効果がある。
【0019】
センサ部は、
図3に示すように、魚類の自発的な摂餌行動を検知するためのプルスイッチ13と水中に配置される疑似餌14からなる。
プルスイッチ13は、
図5に示すように、ステンレスシャフト15の一端が接続され、ステンレスシャフト15の他端には、水中に配置される疑似餌14が接続されている。
プルスイッチ13は、養殖槽7内の魚類が、水中に配置された疑似餌14を、餌と誤認して咥えて引っ張ることで、疑似餌14が接続されたステンレスシャフト15が鉛直下方に沈み込み、センサ部2を起動する構成になっている。
疑似餌14は、先端に錘16を有する釣り糸(幹糸)に接続された複数のハリスの先端に取り付けられている。
疑似餌14は、針を有しないため、魚類は、自らの欲求にしたがって、疑似餌14を何度でも摂餌できる。
魚類が疑似餌14を摂餌すると、餌が自動的に給餌されるが、これが繰り返されることで、魚類は、自発的に、自らの欲求にしたがって疑似餌14を摂餌するようになる。
【0020】
制御部3は、給餌部1のモーター4とセンサ部2とに接続され、駆動用回路であるモータードライバ(TA7291P・TB6643K)、モーター用電源、制御用マイコンであるマイクロコントローラー(Raspberry Pi 3 Model B+)、電源用スイッチ、から構成されている。
制御部3は、データを記録するデータ記録部に接続することができ、給餌回数、給餌時間、給餌量などの情報を、記録できる。
【0021】
本実施例にかかる自発摂餌式自動給餌装置を使った給餌は、以下の手順で行われる。
【0022】
センサ部2を起動する操作は、養殖槽7内の魚(以下「養殖魚」という。)が、水中に配置された疑似餌14を咥えて引っ張ることで行われる。
養殖魚が疑似餌14を咥えて引っ張ると、プルスイッチ13が水中に引っ張られ、センサ部2から検知情報としての電気信号が制御部3に伝えられる。
制御部3の制御用マイコンがセンサ部2の電気信号を受けると、制御部3の駆動用回路が給餌部1のモーター4を駆動させる。
【0023】
給餌部1は、モーター4が駆動することで、全ネジ5が回転する。
全ネジ5の回転に合わせて、全ネジ5の軸方向に沿って、昇降板6が摺動する。
なお、全ネジ5の回転数に応じて、昇降板6が摺動する距離が増減し、最終的には、昇降板6が給餌口9付近まで摺動することで、昇降板6によって餌を給餌口9から押し出す。
給餌口9から押し出された餌は、給餌口9から養殖槽8内に供給される。
【0024】
なお、餌を給餌部1内にたくさん溜めるためには、昇降板6を給餌部1の下端側(モーター4に近い位置)に移動させ、給餌部1内の空洞を広く確保したうえで、補給口10から餌を補給する。
そして、給餌部1内に補給した餌を給餌口9から供給させるときは、全ネジ5を回転させ、昇降板6を全ネジ5に沿って給餌部1の上端側に少しずつ摺動させる。
給餌部1内の餌を給餌口9から全て押し出し、給餌部1内に餌が無くなったときは、全ネジ5を逆回転(回転方向を反転)させ、昇降板6を全ネジ5に沿って給餌部1の下端側に摺動させたあとに、補給口10から餌を給餌部1内に補給する。
【0025】
給餌する量は、昇降板6を全ネジ5に沿って給餌部1の上端側に摺動させる距離によって調整することができ、給餌する回数は、昇降板6を全ネジ5に沿って給餌部1の上端側に摺動させる回数によって調整することができる。
【0026】
餌は、粒径4.2±0.1mm(平均±標準偏差)のマダイ用EP飼料(マーキュリー、日本配合飼料社製)を用い、1回起動あたりの給餌量は、約0.5g(約9粒)とした。
給餌は、養殖魚が水中の疑似餌14を咥えて引っ張ったときだけ行い、昼夜(時間帯別)の給餌制限は一切行わなかった。
【0027】
給餌回数と給餌時刻は、ペンダント式イベントロガー(CO-UA-003-64、Onset社製)で常時記録し、摂餌状況のモニタリングに用いた。
記録された給餌回数と給餌時刻をもとに、養殖魚の生理的な餌料要求の時間を推定でき、養殖魚の自発摂餌行動をモニタリングすることで、養殖魚の健康管理等も可能になる。
また、自発摂餌式自動給餌装置を通信ネットワークに接続することで、給餌回数と給餌時刻の記録をクラウド上に直接行うこともできるし、自発摂餌式自動給餌装置を遠隔操作することもでき、その場合、給餌の自動化を実現できる。
さらに、自発摂餌式自動給餌装置に、水面直下の水温と照度を記録するセンサを備えることで、養殖環境条件のモニタリングを行うことも可能になる。
以上の構成による自発摂餌式自動給餌装置は、人の手によるメンテナンスが餌の供給のみであるため、労働力を大きく削減できる。
【符号の説明】
【0028】
1 給餌部
2 センサ部
3 制御部
4 モーター
5 全ネジ
6 昇降板
7 養殖槽
8 架台
9 給餌口
10 補給口
11 排出口
12 カバー
13 プルスイッチ
14 疑似餌
15 ステンレスシャフト
16 錘
17 カバーの開口部