(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044854
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】推定装置、制御プログラム、推定方法、推定システムおよびデータ構造
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240326BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150635
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】591282205
【氏名又は名称】島根県
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕太
(72)【発明者】
【氏名】山本 善久
(72)【発明者】
【氏名】勝部 淳史
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】農作業の難易度に基づいて作業者の熟練度を推定する。
【解決手段】農作業における、作業者による遠隔操作の熟練度の推定装置(20)であって、直近に実施された第1農作業の土地情報と、第1農作業を実施した第1作業者の作業結果とを用いて作業効率を算出する効率算出部(21)と、第1農作業の第1難易度を算出し、第1農作業の完了前における農作業の第2難易度を第1難易度により補正した第3難易度を取得する難易度算出部(22)と、作業効率および第3難易度に基づいて第1作業者の第1熟練度を推定し、第1農作業の完了における第1作業者の第2熟練度を第1熟練度により補正した第3熟練度を取得する熟練度推定部(23)とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機体の遠隔操作により実施する農作業について、作業者による前記遠隔操作の熟練度を推定する推定装置であって、
直近に実施された前記農作業である第1農作業の対象である土地の土地情報と、前記第1農作業を実施した前記作業者である第1作業者による前記第1農作業の作業結果とを用いて、前記第1農作業の作業効率を算出する効率算出部と、
前記第1農作業の難易度である第1難易度を、前記作業効率の高低に応じて変動する値として算出し、前記第1農作業の完了前に算出された前記農作業の難易度である第2難易度を前記第1難易度により補正した第3難易度を取得する難易度算出部と、
前記作業効率および前記第3難易度に基づいて前記第1作業者の前記熟練度である第1熟練度を推定し、前記第1農作業の完了前に推定された前記第1作業者の前記熟練度である第2熟練度を前記第1熟練度により補正した第3熟練度を取得する熟練度推定部とを含む、推定装置。
【請求項2】
前記熟練度推定部はさらに、前記第3難易度に基づいて、前記第1作業者とは異なる前記作業者である第2作業者の少なくとも1人における前記第2熟練度を補正すると共に、当該補正後の前記第2熟練度に基づき、前記第2作業者の少なくとも1人における前記第3熟練度を更新する、請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記効率算出部は、
前記作業結果に含まれる作業時間と、
前記作業結果に含まれる作業経路履歴および前記作業機体の機種情報と、前記土地情報から算出した前記土地における全作業面積とを用いて算出される、前記第1農作業における作業完了面積、未作業面積および重複作業面積と、を用いて前記作業効率を算出する、請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記効率算出部は、前記作業時間、前記未作業面積および前記重複作業面積の少なくとも何れかに対して、所定の値を加算または減算した上で前記作業効率を算出する、請求項3に記載の推定装置。
【請求項5】
前記作業者による前記農作業の推定作業時間を算出する作業時間推定部をさらに含み、
前記熟練度推定部は、複数の前記作業者の前記第2熟練度から、前記農作業の実施基準となる熟練度を示す第4熟練度をさらに算出し、
前記作業時間推定部は、前記作業者ごとに、前記第4熟練度と前記第3熟練度との対比により算出される前記農作業の作業完了可能率と、前記土地の基準作業時間とに基づいて、前記推定作業時間を算出する、請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項6】
前記作業者ごとに、前記作業者の作業可能時間が前記推定作業時間の範囲内であり、かつ、前記農作業の設定単価と前記推定作業時間とを乗じた推定報酬が、前記作業者の要求単価と前記推定作業時間とを乗じた要求報酬以上か否かを判定し、
前記推定報酬が前記要求報酬以上と判定された前記作業者を、前記農作業の候補者として提示する候補提示部をさらに含む、請求項5に記載の推定装置。
【請求項7】
複数の前記農作業の前記作業結果に含まれる作業経路履歴から、前記土地の各位置における前記作業機体の走行頻度を算出し、前記走行頻度から、前記農作業における前記作業機体の最適経路を推定する経路推定部をさらに含み、
前記経路推定部は、前記農作業ごとに推定された前記第2熟練度をそれぞれ取得し、前記走行頻度の算出において、前記第2熟練度の高低に応じて前記作業経路履歴を加味する度合いの重み付けを行う、請求項1または2に記載の推定装置。
【請求項8】
請求項1に記載の推定装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、前記効率算出部、前記難易度算出部および前記熟練度推定部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【請求項9】
作業機体の遠隔操作により実施する農作業について、作業者による前記遠隔操作の熟練度を推定する推定方法であって、
直近に実施された前記農作業である第1農作業の対象である土地の土地情報と、前記第1農作業を実施した前記作業者である第1作業者による前記第1農作業の作業結果とを用いて、前記第1農作業の作業効率を算出する効率算出ステップと、
前記第1農作業の難易度である第1難易度を、前記作業効率の高低に応じて変動する値として算出し、前記第1農作業の完了前に算出された前記農作業の難易度である第2難易度を前記第1難易度により補正した第3難易度を取得する難易度算出ステップと、
前記作業効率および前記第3難易度に基づいて前記第1作業者の前記熟練度である第1熟練度を推定し、前記第1農作業の完了前に推定された前記第1作業者の前記熟練度である第2熟練度を前記第1熟練度により補正した第3熟練度を取得する熟練度推定ステップとを含む、推定方法。
【請求項10】
作業機体の遠隔操作により実施する農作業について、作業者による前記遠隔操作の熟練度を推定する推定システムであって、
データベースと、前記データベースから情報を取得する推定装置とを備えており、
前記推定装置は、
直近に実施された前記農作業である第1農作業の対象である土地の土地情報と、前記第1農作業を実施した前記作業者である第1作業者による前記第1農作業の作業結果とを用いて、前記第1農作業の作業効率を算出する効率算出部と、
前記第1農作業の難易度である第1難易度を、前記作業効率の高低に応じて変動する値として算出し、前記第1農作業の完了前に前記データベースが記憶していた前記農作業の難易度である第2難易度を前記第1難易度により補正した第3難易度を取得する難易度算出部と、
前記作業効率および前記第3難易度に基づいて前記第1作業者の前記熟練度である第1熟練度を推定し、前記第1農作業の完了前に前記データベースが記憶していた、前記第1作業者の前記熟練度である第2熟練度を前記第1熟練度により補正した第3熟練度を取得する熟練度推定部とを含む、推定システム。
【請求項11】
作業機体の遠隔操作により実施する農作業について、作業者による前記遠隔操作の熟練度を推定するための推定装置に用いられる情報を含むデータ構造であって、
直近に実施された前記農作業である第1農作業の対象である土地の土地情報と、前記第1農作業を実施した前記作業者である第1作業者による前記第1農作業の作業結果とを用いて算出される、前記第1農作業の作業効率と、
前記第1農作業の完了前における前記農作業の難易度である第2難易度と、
前記第1農作業の完了前における前記第1作業者の前記熟練度である第2熟練度と、を格納し、
前記推定装置により、第1難易度を前記作業効率の高低に応じて変動する値として算出し、前記第2難易度を前記第1難易度により補正した第3難易度を取得し、第1熟練度を前記作業効率および前記第3難易度に基づいて推定し、前記第2熟練度を前記第1熟練度により補正した第3熟練度を取得する処理をさせるための前記情報を含むデータ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機体の遠隔操作により実施する農作業について、作業者による遠隔操作の熟練度を推定する推定装置、制御プログラム、推定方法、推定システムおよびデータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠隔操作により農作業を実行可能な作業機体が開発されており、作業者は、作業機体の遠隔操作により農作業を実施することが可能となっている。このような農作業は、作業者の熟練度によって、実施可否および作業効率等が変動し得る。そのため、作業機体の遠隔操作について、作業者の熟練度を推定する方法が要望されている。
【0003】
例えば特許文献1には、作業時の圃場状態を用いて、普段と異なる圃場状態で行われた作業記録を抽出し、動作が急激に変動した作業記録の割合を計算することで作業者の熟練度を判断する、熟練度判断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の熟練度判断装置は、作業者の熟練度について、農作業の難易度に基づいて評価するものではない。本発明の一態様は、土地ごとに農作業の難易度を算出し、当該難易度に基づいて作業者の熟練度を推定する推定装置等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る推定装置は、作業機体の遠隔操作により実施する農作業について、作業者による前記遠隔操作の熟練度を推定する推定装置であって、直近に実施された前記農作業である第1農作業の対象である土地の土地情報と、前記第1農作業を実施した前記作業者である第1作業者による前記第1農作業の作業結果とを用いて、前記第1農作業の作業効率を算出する効率算出部と、前記第1農作業の難易度である第1難易度を、前記作業効率の高低に応じて変動する値として算出し、前記第1農作業の完了前に算出された前記農作業の難易度である第2難易度を前記第1難易度により補正した第3難易度を取得する難易度算出部と、前記作業効率および前記第3難易度に基づいて前記第1作業者の前記熟練度である第1熟練度を推定し、前記第1農作業の完了前に推定された前記第1作業者の前記熟練度である第2熟練度を前記第1熟練度により補正した第3熟練度を取得する熟練度推定部とを含む。
【0007】
本発明の一態様に係る推定方法は、作業機体の遠隔操作により実施する農作業について、作業者による前記遠隔操作の熟練度を推定する推定方法であって、直近に実施された前記農作業である第1農作業の対象である土地の土地情報と、前記第1農作業を実施した前記作業者である第1作業者による前記第1農作業の作業結果とを用いて、前記第1農作業の作業効率を算出する効率算出ステップと、前記第1農作業の難易度である第1難易度を、前記作業効率の高低に応じて変動する値として算出し、前記第1農作業の完了前に算出された前記農作業の難易度である第2難易度を前記第1難易度により補正した第3難易度を取得する難易度算出ステップと、前記作業効率および前記第3難易度に基づいて前記第1作業者の前記熟練度である第1熟練度を推定し、前記第1農作業の完了前に推定された前記第1作業者の前記熟練度である第2熟練度を前記第1熟練度により補正した第3熟練度を取得する熟練度推定ステップとを含む。
【0008】
本発明の一態様に係る推定システムは、作業機体の遠隔操作により実施する農作業について、作業者による前記遠隔操作の熟練度を推定する推定システムであって、データベースと、前記データベースから情報を取得する推定装置とを備えており、前記推定装置は、直近に実施された前記農作業である第1農作業の対象である土地の土地情報と、前記第1農作業を実施した前記作業者である第1作業者による前記第1農作業の作業結果とを用いて、前記第1農作業の作業効率を算出する効率算出部と、前記第1農作業の難易度である第1難易度を、前記作業効率の高低に応じて変動する値として算出し、前記第1農作業の完了前に前記データベースが記憶していた前記農作業の難易度である第2難易度を前記第1難易度により補正した第3難易度を取得する難易度算出部と、前記作業効率および前記第3難易度に基づいて前記第1作業者の前記熟練度である第1熟練度を推定し、前記第1農作業の完了前に前記データベースが記憶していた、前記第1作業者の前記熟練度である第2熟練度を前記第1熟練度により補正した第3熟練度を取得する熟練度推定部とを含む。
【0009】
本発明の一態様に係るデータ構造は、作業機体の遠隔操作により実施する農作業について、作業者による前記遠隔操作の熟練度を推定するための推定装置に用いられる情報を含むデータ構造であって、直近に実施された前記農作業である第1農作業の対象である土地の土地情報と、前記第1農作業を実施した前記作業者である第1作業者による前記第1農作業の作業結果とを用いて算出される、前記第1農作業の作業効率と、前記第1農作業の完了前における前記農作業の難易度である第2難易度と、前記第1農作業の完了前における前記第1作業者の前記熟練度である第2熟練度と、を格納し、前記推定装置により、第1難易度を前記作業効率の高低に応じて変動する値として算出し、前記第2難易度を前記第1難易度により補正した第3難易度を取得し、第1熟練度を前記作業効率および前記第3難易度に基づいて推定し、前記第2熟練度を前記第1熟練度により補正した第3熟練度を取得する処理をさせるための前記情報を含む。
【0010】
本発明の各態様に係る推定装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記推定装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記推定装置をコンピュータにて実現させる推定装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、土地ごとの農作業の難易度を算出し、当該難易度に基づいて作業者の熟練度を推定する推定装置等を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1に係る推定システムの機能ブロックを示すブロック図である。
【
図2】実施形態1に係る推定システムの機能概要を示す模式図である。
【
図3】実施形態1に係る推定システムに含まれるデータベースの一例を示す模式図である。
【
図4】実施形態1に係る推定装置が実行する処理フローの一例を示すフロー図である。
【
図5】難易度算出ステップの処理フローの一例を示すフロー図である。
【
図6】熟練度推定ステップの処理フローの一例を示すフロー図である。
【
図7】畦畔の土地情報および農作業の作業結果の一例を視覚的に示す模式図である。
【
図8】実施形態2に係る推定システムの機能ブロックを示すブロック図である。
【
図9】実施形態2に係る推定装置が実行する処理フローの一例を示すフロー図である。
【
図10】実施形態2に係る推定装置による、農作業の候補者を提示する提示態様の一例を示す模式図である。
【
図11】実施形態3に係る推定システムの機能ブロックを示すブロック図である。
【
図12】実施形態3に係る推定装置が実行する処理フローの一例を示すフロー図である。
【
図13】実施形態3に係る推定装置による、複数の農作業における各作業経路履歴の一例を視覚的に示す模式図である。
【
図14】前記作業経路履歴に第2熟練度による重み付けを行った結果の一例を視覚的に示す模式図である。
【
図15】実施形態3に係る推定装置により推定された最適経路の一例を視覚的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。本発明の一実施形態に係る推定システム1は、作業機体の遠隔操作により実施する農作業について、作業者による遠隔操作の熟練度を推定する。また、推定システム1は、土地ごとの農作業の難易度についても算出し、当該難易度を熟練度の推定に利用するシステムである。
【0014】
図1に示すように、本実施形態では、作業機体が草刈機10であり、農作業が草刈り作業であり、農作業の対象となる土地が畦畔である場合を例として、推定システム1を説明する場合がある。本明細書では、畦畔における農作業の難易度とは、草刈り作業の難易度を示すものとして説明し、説明簡略化のため、当該畦畔で他の種類の農作業が行われることは想定しない。ただし、土地の種類によっては、1つの土地で複数種類の農作業が行われる場合が想定される。この場合、当該土地における農作業の難易度は、農作業の種類ごとにそれぞれ管理されてもよい。
【0015】
推定システム1が適用可能な農作業は草刈り作業に限定されない。農作業は、例えば、農薬・除草剤散布作業、施肥作業、播種作業、砕土作業、整地作業、代かき作業、堆肥散布作業、耕起・耕耘作業、畝立作業、中耕除草作業、収穫作業、梱包作業、田植作業、移植作業、運搬作業、生育調査作業および鳥獣害対策作業等の農作業であってもよいが、これに限られない。また、推定システム1の対象となる作業機体は、遠隔操作が可能な作業機体であれば特に制限されず、農作業の種類によって適宜選択されてよい。作業機体は、例えば、草刈機、ドローン、無人ヘリコプター、トラクター、管理機、田植機、ブームスプレイヤー、スピードスプレイヤー、コンバイン、ハーベスター、ロールベイラーまたは運搬車等の作業機体であってよいが、これに限られない。農作業は、これらの作業機体のいずれか1つを遠隔操作して行われるものであってもよく、2つ以上の作業機体を組み合わせて使用し、そのうちの少なくとも1つの作業機体を遠隔操作して行われるものであってもよい。農作業の対象となる土地についても同様に、農作業の種類によって適宜選択されてよい。
【0016】
農作業の対象となる土地は、特に限定されないが、例えば、畦畔のような傾斜面を含む土地等の、作業機体の遠隔操作による農作業の困難性が高いと考えられる土地が挙げられる。このような土地であれば、推定システム1を好適に使用できる。作業機体の遠隔操作による農作業の困難性が高い土地においては、作業者による遠隔操作の熟練度が作業効率に与える影響が大きいといえる。そのため、推定システム1により、作業者による遠隔操作の熟練度を正確に推定することは、作業効率の改善に効果的である。
【0017】
図2に示すように、推定システム1は、後述する作業者データベース31および土地データベース32を含む。推定システム1は、作業者データベース31に記憶されている各作業者の熟練度の情報を、土地データベース32に記憶されている各土地における農作業の難易度を用いて算出する。また、推定システム1は、各土地における農作業の難易度について、当該土地において作業者が農作業を行った作業結果に基づいて算出する。推定システム1は、農作業の難易度の算出において作業者の熟練度を反映して行ってもよい。
【0018】
推定システム1は、このような熟練度および難易度の取得を、作業者により農作業が行われる度に実行することが好ましい。このような態様によれば、推定システム1は、作業者の熟練度の情報および土地の難易度の情報について、常に最新の情報に更新することができる。なお、
図2には、農作業が行われる度に、作業者ごとの熟練度および土地ごとの農作業の難易度が修正される流れを模式的なイメージ図として示しているが、数値等についてあくまで一例に過ぎない。
【0019】
上述の構成によれば、推定システム1のユーザは、農作業の遠隔操作による作業者の情報から、対象となる土地での農作業に適した作業者を適切に選択できる。これにより、例えば休耕地または耕作放棄地等の管理の容易化および効率化を図ることで、土地の有効活用を実現できる。このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標2に含まれる「強靭(レジリエント)な農業の実践」および目標8に含まれる「生産的な雇用の創出」等の達成にも貢献するものである。
【0020】
<草刈機10>
草刈機10は、遠隔操作によって畦畔等での草刈り作業が可能な作業機体である。草刈機10は、センシング装置11と、機体記憶装置12と、機体通信装置13とを備えている。
【0021】
センシング装置11は、畦畔における草刈機10の位置を検知可能なセンサであってよい。センシング装置11としては、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)測位システムに対応したセンサであってよく、具体的にはGPS(Global Positioning System)センサ等であってよい。草刈機10による遠隔操作の作業履歴を正確に把握する観点から、センシング装置11は、RTK(Real Time Kinematic)-GNSS測位システム等の、高精度な測位システムに対応していることが好ましい。
【0022】
機体記憶装置12は、草刈機10が取得または生成した情報を記憶するための記憶装置である。機体記憶装置12は、例えば、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)であってよい。
【0023】
機体通信装置13は、草刈機10と推定システム1との間で通信を行うための通信装置である。機体通信装置13は、推定システム1以外の外部装置と通信可能に構成されていてもよい。機体通信装置13は、無線による通信が可能であることが好ましく、有線による通信が可能であってもよい。機体通信装置13は、インターネットに接続しての通信が可能であってもよく、所定のクローズドネットワーク内での通信のみ可能に構成されていてもよい。
【0024】
草刈機10の遠隔操作は、機体通信装置13を介して、作業者が操作する操作端末(不図示)から情報を受信することで実施されてもよい。当該操作端末は、スマートフォン等の携帯型端末であってもよく、専用コントローラ等であってもよく、デスクトップPC(Personal Computer)またはノートPC等のコンピュータ端末であってもよい。
【0025】
<推定システム1>
推定システム1は、推定装置20と、推定装置20が情報を取得するデータベースを含むサーバ記憶装置30と、サーバ通信装置40とを備えている。本実施形態では、推定システム1は情報処理を行うサーバ装置として構成されている例を挙げて説明する。ただし、推定システム1の形態はサーバ装置に限定されるものではない。例えば、推定装置20と、サーバ記憶装置30とは、互いに通信装置(不図示)を介して情報を送受信可能に構成された、それぞれ独立したネットワーク機器等の装置であってもよい。
【0026】
また、草刈機10が、推定システム1に含まれる装置の一つとして構成されていてもよい。草刈機10が、推定システム1に含まれる装置の一つとして構成される場合、草刈機10から推定システム1に送信される情報の形式を、推定システム1が行う情報処理に最適化することが容易である。草刈機10は、推定システム1とは独立して販売等される作業機体であって、推定システム1に情報を送信可能に構成されていてもよい。
【0027】
サーバ記憶装置30は、推定システム1が取得または生成した情報を記憶するための記憶装置である。サーバ記憶装置30は、例えば、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)であってよい。
【0028】
サーバ記憶装置30は、作業者データベース31と、土地データベース32とを含む。作業者データベース31および土地データベース32は、推定装置20が情報を取得するデータベースである。
図3に示すように、作業者データベース31は、作業者ごとの熟練度を記憶する。作業者の熟練度は、過去に実施された農作業(W)ごとに推定された値がそれぞれ、当該農作業の作業結果等と対応付けて記憶されていることが好ましい。また、作業者データベース31は、作業者の属性またはスケジュール等の情報および作業者による作業履歴等の情報を記憶していてもよい。
【0029】
土地データベース32は、土地(L)ごとの農作業の難易度を記憶する。土地の農作業の難易度は、過去に実施された農作業ごとに算出された値がそれぞれ、当該農作業の作業結果等と対応付けて記憶されていることが好ましい。また、土地データベース32は、農作業の対象となる土地の地形情報等を含む土地情報を記憶していてもよい。サーバ記憶装置30は、複数の記憶装置から構成されていてもよく、例えば、作業者データベース31と土地データベース32とは、それぞれ異なる記憶装置(不図示)に記憶されていてもよい。
【0030】
なお、
図3では簡易的に、農作業をW1~W20として、作業者をO1~O3として、土地をL1~L7として示しているが、あくまで一例である。作業者データベース31および土地データベース32に記憶される農作業、作業者および土地の数は特に限定されない。
【0031】
サーバ通信装置40は、草刈機10と推定システム1との間の通信を行うための通信装置である。サーバ通信装置40は、草刈機10以外の外部装置と通信可能に構成されていてもよい。サーバ通信装置40は、無線による通信が可能であることが好ましく、有線による通信が可能であってもよい。サーバ通信装置40は、インターネットに接続しての通信が可能であってもよく、所定のクローズドネットワーク内での通信のみ可能に構成されていてもよい。
【0032】
推定システム1において、推定装置20およびサーバ記憶装置30はそれぞれ通信装置(不図示)を備えていてもよく、これらの通信装置を介して互いに情報の送受信を行ってもよい。
【0033】
<推定装置20>
推定装置20は、推定システム1を統括的に制御する制御装置として機能する。推定装置20は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の汎用の集積回路により実現されてもよく、専用の論理回路として実現されてもよい。推定装置20は、効率算出部21と、難易度算出部22と、熟練度推定部23とを機能ブロックとして含む。
【0034】
(効率算出部21)
効率算出部21は、直近に実施された農作業である第1農作業の対象である土地の土地情報と、第1農作業を実施した作業者である第1作業者による第1農作業の作業結果とを用いて、第1農作業の作業効率を算出する。
【0035】
効率算出部21は、例えば、作業者による農作業の作業結果を取得する度に、当該農作業の作業効率を算出することが好ましい。この場合、第1農作業とは、取得した作業結果に対応する、直近に実施された農作業であってよい。
【0036】
一方、効率算出部21は、複数の作業結果を取得した後に、作業結果ごとに作業効率をそれぞれ算出してもよい。この場合、第1農作業とは、各作業結果にそれぞれ対応する農作業であってもよい。このような場合として、例えば、複数の作業者によりそれぞれ異なる畦畔での農作業が略同時に行われ、効率算出部21が、それぞれの農作業の作業結果を略同時に取得した場合等が挙げられる。このような場合、各作業結果に対応する各農作業は、それぞれが直近に実施された農作業といえる。
【0037】
効率算出部21は、第1農作業の作業結果を草刈機10から直接取得してもよく、サーバ記憶装置30から取得してもよい。第1農作業の作業結果がサーバ記憶装置30から取得される場合、草刈機10は、第1農作業の作業結果について、機体通信装置13を介してサーバ記憶装置30に送信し、記憶させてもよい。
【0038】
効率算出部21が取得する第1農作業の作業結果は、草刈機10から取得したセンシング装置11の検知結果の生データであってもよいし、当該生データが加工された情報であってもよい。当該加工は、例えば、センシング装置11が備える機能の一つとして行われてもよく、推定装置20により、効率算出部21による処理の前処理として行われてもよい。検知結果の加工方法は特に限定されず、一般的な方法であってよい。
【0039】
第1農作業の作業結果には、第1農作業の開始から終了までの作業時間と、第1農作業中に草刈機10が移動した経路を示す作業経路履歴と、第1農作業に使用された草刈機10の機種情報等の情報とが含まれていてよい。効率算出部21は、第1農作業の作業効率の算出において、これらの情報の少なくとも1つを用いればよい。効率算出部21は、例えば、作業時間に基づいて作業効率を算出してもよい。作業時間に基づいて第1農作業の作業効率を算出する場合、効率算出部21は、畦畔ごとに予め設定された基準作業時間と、実際の作業時間との比較によって、第1農作業の作業効率を算出してもよい。
【0040】
また、効率算出部21は、作業効率を算出するため、第1農作業における作業完了面積、未作業面積および重複作業面積を用いてもよい。作業完了面積、未作業面積および重複作業面積は、例えば、土地情報から畦畔における全作業面積を算出し、全作業面積と、作業結果に含まれる作業経路履歴および機種情報と、から算出することができる。より具体的には、作業完了面積、未作業面積および重複作業面積は、例えば、機種情報に含まれる草刈機10の大きさおよび作業範囲と、作業経路履歴とに基づいて算出することができる。
【0041】
このように、効率算出部21は、以下の(1)および(2)を用いて作業効率を算出してもよい;
(1)作業結果に含まれる作業時間、
(2)作業結果に含まれる作業経路履歴および作業機体の機種情報と、土地情報から算出した第1農作業が行われる土地における全作業面積とを用いて算出した、第1農作業における作業完了面積、未作業面積および重複作業面積。
【0042】
また、効率算出部21は、作業効率の算出に用いる作業時間等の値に対して補正値(所定の値)を加算または減算した上で、作業効率を算出してもよい。例えば、推定システム1を複数の主体がそれぞれ運用している場合、運用主体ごとに作業効率の算出基準が異なっている可能性が考えられる。そうすると、推定システム1が推定する熟練度について、単一の運用主体内での各作業者の熟練度は比較可能であるが、複数の運用主体間での比較には不適となる場合が考えられる。
【0043】
この場合、効率算出部21は、運用主体ごとの作業効率の算出基準について差異を平準化するため、例えば、作業効率の算出に用いられる作業時間、未作業面積および重複作業面積の少なくとも何れかに対して、補正値を加算または減算してもよい。補正値は、例えば、推定システム1の運用主体が適宜設定してもよい。
【0044】
このように、効率算出部21は、作業時間、未作業面積および重複作業面積からそれぞれ所定の値を加算または減算した上で作業効率を算出してもよい。このとき、効率算出部21は、作業時間、未作業面積および重複作業面積のうち少なくとも1つについて加算または減算を行ってもよい。また、効率算出部21は、作業時間、未作業面積および重複作業面積のうち2つ以上を補正する場合、例えば、何れか1つまたは2つについては加算し、その他については減算してもよい。
【0045】
(難易度算出部22)
難易度算出部22は、第1農作業の難易度である第1難易度を、第1農作業における作業効率の高低に応じて変動する値として算出する。「第1難易度」は、直近に実施された、1回の第1農作業の結果に基づいて算出される難易度である。
【0046】
本明細書において「難易度」とは、畦畔における草刈り作業の困難さを表す指標であってよい。農作業の難易度は、例えば、1が最も困難であり、0が最も容易であるというように、0以上1以下の、数値が大きいほど困難であることを示す値として設定されてもよい。なお、農作業の難易度は、数値が大きいほど容易であることを示す値として設定されてもよい。
【0047】
難易度算出部22は、第1農作業の完了前に算出された、第1農作業と同種の農作業の難易度である第2難易度を、第1難易度により補正して第3難易度を取得する。第1農作業と同種の農作業とは、農作業の対象となる土地および作業内容が第1農作業と略同一であればよい。例えば、第1農作業が畦畔における草刈り作業であった場合、第2難易度は、当該畦畔について過去に算出された草刈り作業の難易度であってよい。このとき、当該畦畔における作業範囲および草刈り作業の具体的な内容は、完全同一であることを要するものではない。
【0048】
「第2難易度」は、第1農作業の完了前に実施された、第1農作業と同種の農作業の難易度であり、例えば、サーバ記憶装置30の土地データベース32が記憶していた難易度であってよい。第2難易度は、農作業の対象となる土地ごとに記憶されていてよく、例えば、土地データベース32には、土地ごとに、複数の作業者による農作業の結果に基づいて算出された第2難易度がまとめて記憶されていることが好ましい。
【0049】
第2難易度は、過去に推定システム1が算出した値であることが好ましいが、これに限られず、例えば、畦畔ごとに初期設定された値であってもよく、推定システム1が実行する推定方法とは別の方法により算出された値であってもよい。
【0050】
「第3難易度」は、第2難易度を第1難易度により補正した値であり、第1農作業と同種の農作業の対象となる土地における、当該農作業の現時点(最新)の難易度を示す指標であってよい。第1難易度による第2難易度の補正方法は特に限定されない。補正方法としては、例えば、第2難易度と第1難易度との平均値を取得してもよい。また、第2難易度(第2難易度が複数の場合はその平均値等)よりも第1難易度が大きい場合には所定の値を第2難易度に加算し、小さい場合には所定の値を第2難易度から減算する方法であってもよい。
【0051】
また、第3難易度の算出に用いられる第2難易度は、第1農作業よりも前に実施された、同じ畦畔での全ての草刈り作業においてそれぞれ算出された、複数の難易度を含むことが好ましい。同じ畦畔における草刈り作業の難易度は、時間の経過によって大きくは変化しないと考えられるため、過去に遡って可能な限り多くの第2難易度を取得することが好ましいためである。
図3には、第3難易度について、土地データベース32に記憶された各土地における農作業の第2難易度について、過去に算出された全ての値の平均値として算出される例を示している。また、第3難易度の算出に用いられる第2難易度は、最先等の特定の農作業において算出された単一の難易度であってもよい。
【0052】
難易度算出部22は、取得した第1難易度および第3難易度を、土地データベース32に記憶してもよい。
図3に示す土地データベース32において、農作業と対応して記憶されている各土地の難易度の値は、難易度算出部22が推定した第1難易度である。土地データベース32に記憶された第1難易度は、将来の推定装置20による処理においては第2難易度として使用されてよい。
【0053】
(熟練度推定部23)
熟練度推定部23は、作業効率および第3難易度に基づいて、第1作業者の熟練度である第1熟練度を推定する。「第1熟練度」は、直近に実施された1回の第1農作業の結果に基づいて推定される、第1作業者による草刈機10の遠隔操作の熟練度である。
【0054】
本明細書において「熟練度」とは、作業者による草刈機10等の作業機体を遠隔操作する技量を示す指標であってよい。作業者の熟練度は、例えば、1が技量の最高値を示し、0が技量の最低値を示すというように、0以上1以下の、数値が大きいほど遠隔操作の技量が高いことを示す値として設定されてもよい。なお、作業者の熟練度は、数値が大きいほど遠隔操作の技量が低いことを示す値として設定されてもよい。
【0055】
熟練度推定部23は、第1作業者の作業効率に加え、第1農作業の対象となる土地における、第1農作業の最新の難易度である第3難易度を用いて、第1熟練度を推定する。そのため、熟練度推定部23は、第1農作業の種類および土地の特性等に応じて、精度よく第1作業者による草刈機10の遠隔操作の熟練度を推定できる。
【0056】
第1熟練度の推定方法は特に限定されない。熟練度推定部23は、例えば、作業効率に、第3難易度の値が大きいほど大きな値を加算して、第1熟練度の推定値としてもよい。また、熟練度推定部23は、第3難易度の値が所定の閾値を超えた場合に、作業効率に所定の値を加算して、第1熟練度の推定値としてもよい。
【0057】
熟練度推定部23は、第1農作業の完了前に推定された第1作業者の熟練度である第2熟練度を第1熟練度により補正した第3熟練度を取得する。
【0058】
「第2熟練度」は、第1農作業の完了前に実施された、第1農作業で用いた作業機体と同種の作業機体における第1作業者の熟練度であり、例えば、サーバ記憶装置30の作業者データベース31が記憶していた熟練度であってよい。同種の作業機体とは、同一の作業機体であってもよく、同じ機能を有する作業機体であってもよい。例えば、草刈機10と品番は異なるが略同じ機能を有する作業機体は、草刈機10と同種の作業機体といえる。熟練度推定部23が取得する第2熟練度は、作業者と作業機体との組み合わせが第1農作業と同様の場合に推定された熟練度であればよく、例えば、第1農作業とは異なる土地での農作業の結果に基づいて推定された熟練度を含んでいてもよい。
【0059】
第2熟練度は、推定システム1が過去に算出した第1熟練度であって、作業者データベース31に記憶された値であることが好ましいが、これに限られない。第2熟練度は、例えば、作業者または作業機体ごとに初期設定された値であってもよく、推定システム1が実行する推定方法とは別の方法により算出された値であってもよい。
【0060】
「第3熟練度」は、第2熟練度を第1熟練度により補正した値であり、第1作業者による草刈機10の遠隔操作についての、現時点(最新)の熟練度を示す指標であってよい。第1熟練度による第2熟練度の補正方法は特に限定されない。補正方法としては、例えば、第2熟練度と第1熟練度との平均値を取得してもよい。また、第2熟練度よりも第1熟練度が大きい場合には所定の値を第2熟練度に加算し、小さい場合には所定の値を第2熟練度から減算する方法であってもよい。
【0061】
第3熟練度の取得に用いる第2熟練度は、第1農作業の前に実施された最先の農作業において推定された熟練度であることが好ましい。作業者は、草刈機10の遠隔操作の経験を積むにつれて熟練度が上昇すると考えられる。そのため、最新の第1作業者の熟練度である第3熟練度を取得するために用いる第2熟練度は、あまり過去に遡らず、比較的直近の推定値を用いることが好ましい。
【0062】
図3には、作業者データベース31に記憶された各作業者について、直近に実施された農作業により推定された熟練度を第1熟練度とした場合に、その1つ前の農作業により推定された熟練度を第2熟練度として、第3難易度を取得する例を示している。第3熟練度の取得に用いられる第2熟練度は、少なくとも直近の数回の農作業において推定された複数の熟練度であってもよい。
【0063】
熟練度推定部23はさらに、第3難易度に基づいて、第1作業者とは異なる作業者である第2作業者の少なくとも1人における第2熟練度を補正してもよい。「第2作業者」とは、第1作業者とは異なる作業者であって、サーバ記憶装置30の作業者データベース31に熟練度等の情報が記憶されている作業者を示す。
【0064】
熟練度推定部23は、第2熟練度の補正について、第2熟練度ごとに対応する農作業の作業効率の値をサーバ記憶装置30から取得し、取得した作業効率および最新の第3難易度に基づいて新たに第2熟練度を算出してもよい。このように、熟練度推定部23は、第1熟練度の算出と同じ方法により熟練度を算出し直すことで、第2熟練度を補正してもよい。
【0065】
また、熟練度推定部23は、補正後の第2熟練度から、第2作業者の少なくとも1人における第3熟練度を取得し、作業者データベース31に記憶されている第3熟練度を更新してもよい。熟練度推定部23は、第1作業者の第3熟練度の取得においては、第1熟練度および第2熟練度から第3熟練度を取得する。同様に、熟練度推定部23は、第2作業者の第3熟練度の取得においては、2つ以上の第2熟練度から第3熟練度を取得すればよい。熟練度推定部23は、例えば、2つの第2熟練度から第3熟練度を取得する場合、直近に行われた2回の農作業にそれぞれ対応する第2熟練度から、第3熟練度を取得することが好ましい。
【0066】
このように、熟練度推定部23は、第3難易度が更新された場合、第3難易度が更新された土地での作業経験がある全ての第2作業者について、作業者データベース31に記憶されている第2熟練度を補正することが好ましい。また、熟練度推定部23は、補正された第2熟練度を用いて、全ての第2作業者の第3熟練度を最新の値に更新することが好ましい。
【0067】
これにより、第1作業者および全ての第2作業者における、最新の熟練度である第3熟練度の情報を、第1農作業と同種の農作業についての最新の難易度である第3難易度に基づいた値に補正できる。そのため、熟練度推定部23は、作業者データベース31に記憶されている各作業者の第3熟練度について、常に最新の第3難易度の情報に基づいた、精度の高い推定値として維持できる。
【0068】
熟練度推定部23は、取得した第1熟練度および第3熟練度を、作業者データベース31に記憶してもよい。
図3に示す作業者データベース31において、農作業と対応して記憶されている各作業者の熟練度の値は、熟練度推定部23が推定した第1熟練度である。作業者データベース31に記憶された第1熟練度は、将来の推定装置20による処理においては第2熟練度として使用されてよい。
【0069】
<推定装置20による推定方法>
本実施形態に係る推定方法は、草刈機10等の作業機体の遠隔操作により実施する農作業について、作業者による遠隔操作の熟練度を推定する推定方法である。本実施形態に係る推定方法について、推定システム1を用いて実施する例を以下に説明する。
【0070】
図4に示すように、まず効率算出部21は、草刈機10から、第1作業者による第1農作業の作業結果を取得する(S1)。作業結果を取得した効率算出部21は、土地データベース32から、第1農作業の対象となる畦畔の土地情報を取得する(S2)。
【0071】
効率算出部21が取得する作業結果は、例えば、第1農作業の日時および開始から終了までの作業時間と、第1農作業中に草刈機10が移動した経路を示す作業経路履歴と、第1農作業に使用された草刈機10の機種情報等の情報を含む。第1農作業の開始時間は、例えば、第1農作業の対象となる畦畔の範囲内に草刈機10が進入した時間であってもよい。また、第1農作業の終了時間は、例えば、当該畦畔の範囲内から草刈機10が退出した時間であってもよい。
【0072】
また、土地情報は、
図7に示すように、第1農作業の対象となる範囲の面積(作業対象面積)、基準作業効率および基準作業時間の情報を含んでいてよい。基準作業効率とは、例えば、単位時間あたりの作業面積の基準値であってよい。基準作業時間とは、作業開始から終了までの作業時間の基準値であってよい。
【0073】
効率算出部21は、
図7に示すように、草刈機10の機種情報および作業経路履歴と、土地情報とを組み合わせ、畦畔において草刈りが完了した箇所および草刈りが未完了の箇所を決定できる。また、効率算出部21は、草刈りが完了した箇所における、重複して草刈りが行われた重複箇所についても決定できる。このようにして得られた結果から、効率算出部21は、畦畔における作業完了面積、未作業面積および重複作業面積を算出してよい。
【0074】
また、土地情報はさらに、作業効率を算出するために用いられる補正値の情報として、作業遅延許容時間、未作業許容面積または重複作業許容面積等の情報を含んでいてもよい。効率算出部21は、土地情報に、このような作業遅延許容時間等の補正値の情報が含まれているか否かを判定してもよい(S3)。
【0075】
土地情報に補正値の情報が含まれていると判定した場合(S3でYes)、効率算出部21は、作業時間、未作業面積および重複作業面積の少なくとも何れかに、所定の値である補正値を加算または減算する(S4)。具体的には、効率算出部21は、作業時間が基準作業時間を超過していた場合、作業時間から作業遅延許容時間を減算してもよい。また、効率算出部21は、未作業面積から未作業許容面積を減算してもよく、重複作業面積から重複作業許容面積を減算してもよい。未作業許容面積とは、例えば、刈り残しを許容できる面積であってもよく、何らかの原因で畦畔内に作業不要の範囲が一定の範囲存在することを仮定して設定される面積であってもよい。
【0076】
ステップS4の処理後、またはステップS3で土地情報に補正値の情報が含まれていないと判定した場合(S3でNo)、効率算出部21は、土地情報および作業結果を用いて、第1農作業の作業効率を算出する(S5、効率算出ステップ)。効率算出部21が算出する作業効率の算出基準は特に限定されない。効率算出部21は、例えば、作業効率として、第1農作業の速度性、完全性、重複性および効率性を示す各指標の少なくとも1つを算出してもよい。
【0077】
速度性 = 基準作業時間/実作業時間;
完全性 = 作業完了面積/作業対象面積;
重複性 = 1.00-(重複作業面積/作業完了面積);
効率性 = 有効効率/基準作業効率
(有効効率 = (作業完了面積-重複作業面積)/作業時間)。
【0078】
この場合、効率算出部21は、速度性および効率性については、1.00を最大値として算出してもよく、1.00を超える値として算出してもよい。
【0079】
例えば、土地情報に含まれる作業対象面積が565.5m2、基準作業効率が22.2m2/min、基準作業時間が25minであり、作業結果に含まれる作業時間が32min、作業完了面積が428.5m2、重複作業面積が159.0m2であったとする。この場合、速度性は0.78、完全性は0.76、重複性は0.63、効率性は0.38となる。効率算出部21は、これらの指標の何れか1つを作業効率として算出してもよく、2つ以上を作業効率として算出してよい。また、効率算出部21は、これらの指標の2つ以上を用いて作業効率を算出する場合、これらの指標を統計的に処理した値を作業効率として算出してもよい。例えば、効率算出部21は、用いる各指標の値の平均値を取得してもよく、各指標の値を乗算してもよい。
【0080】
次に、難易度算出部22は、
図5に示す難易度算出ステップを実行する(S6)。難易度算出部22は、効率算出部21が算出した作業効率から、第1難易度を算出する(S61)。第1難易度は、作業効率のみから算出される値であってもよく、作業効率に、第1農作業を行った第1作業者の熟練度を加味して算出される値であってもよい。
【0081】
第1難易度は、例えば、作業効率が0以上1以下の数値として得られる場合には、以下に示す式により算出されてもよい;
第1難易度 = 1-作業効率
難易度算出部22が、このような式により第1難易度を算出する構成である場合、高い作業効率の値が得られにくい土地であるほど、第1難易度を大きい値として算出できる。
【0082】
次に、難易度算出部22は、土地データベース32から第2難易度を取得する(S62)。ここで難易度算出部22が取得する第2難易度は、過去に第1農作業と同じ畦畔で行われた全ての農作業において算出された第1難易度を含んでいてよい。難易度算出部22は、第2難易度を第1難易度により補正し、第3難易度を取得する(S63)。難易度算出部22は、第3難易度の取得について、今回算出された第1難易度と、取得した全ての第2難易度とを統計的に処理し、第3難易度を取得してもよい。例えば、難易度算出部22は、今回算出された第1難易度と、取得した全ての第2難易度との平均値を取得することにより、第3難易度を取得してもよい。
【0083】
第3難易度は、例えば、以下に示す式により算出されてもよい;
第3難易度 = (1-作業効率+第2難易度)/2
このとき、「1-作業効率」は上述の通り、第1難易度の一例であってよい。また、第2難易度は、第3難易度の算出対象の土地における、単一の農作業に対応する第2難易度であってもよく、複数の農作業に対応する第2難易度の平均値であってもよい。
【0084】
次に、熟練度推定部23は、
図6に示す熟練度推定ステップを実行する(S7)。熟練度推定部23は、第1作業者の作業効率および第3難易度から、第1作業者の第1熟練度を推定する(S71)。第1熟練度は、例えば、以下に示す式により算出できる;
第1熟練度 = 作業効率/(1-第3難易度)。
【0085】
ここで、例えば作業効率が速度性、完全性、重複性および効率性の4つの値として算出されていた場合、熟練度推定部23は、これらの4つの指標の値を統計的に処理した値を、第1熟練度を求めるための作業効率の値として用いてもよい。例えば、熟練度推定部23は、これらの4つの指標の値の平均値を、第1熟練度を求めるための作業効率の値として用いてもよい。
【0086】
次に、熟練度推定部23は、作業者データベース31から第1作業者の第2熟練度を取得する(S72)。ここで熟練度推定部23が取得する第2熟練度は、第1農作業の前に、第1作業者が草刈機10を用いて行った農作業の作業結果から推定された熟練度であることが好ましい。熟練度推定部23は、第2熟練度を第1熟練度により補正し、第3熟練度を取得する(S73)。熟練度推定部23は、第3熟練度の取得について、今回算出された第1熟練度と、取得した第2熟練度とを統計的に処理し、第3熟練度を取得してよい。例えば、熟練度推定部23は、今回算出された第1熟練度と、取得した第2熟練度との平均値を取得することにより、第3熟練度を取得してもよい。
【0087】
次に、熟練度推定部23は、作業者データベース31に記憶されている、第1作業者以外の作業者である第2作業者の第2熟練度を、第3難易度に基づいて補正する(S74)。第2作業者の第2熟練度を補正する方法は、例えば、作業者データベース31から取得した第2熟練度に対応する農作業の作業効率と、最新の第3難易度とを用いて、第2熟練度を算出し直す方法であってもよい。この場合の具体的な方法は、ステップS71の説明において述べた通りである。
【0088】
また、熟練度推定部23は、第2作業者ごとに、補正後の第2熟練度を用いて第3熟練度を更新してもよい(S75)。第2熟練度を用いて第3熟練度を取得する方法については、第1熟練度と第2熟練度とを用いるのではなく、2つ以上の補正後の第2熟練度を用いる点を除き、ステップS73の説明において説明した方法と同様であってよい。
【0089】
推定装置20は、得られた第1熟練度および第3熟練度について、作業者データベース31に記憶してもよい(S8)。推定装置20は、これらの熟練度の記憶を、ステップS1~S7までの処理を終えた後にまとめて行ってもよい。また、推定装置20は、これらの熟練度の記憶を、上述の推定方法の実施途中に適時行ってもよい。具体的には、熟練度推定部23は、第1熟練度および第3熟練度をそれぞれ推定または取得した時点で、作業者データベース31に記憶してもよい。
【0090】
また、推定装置20は、得られた第1難易度および第3難易度について、土地データベース32に記憶してよい(S9)。推定装置20は、これらの難易度の記憶を、ステップS1~S7までの処理を終えた後にまとめて行ってもよい。また、推定装置20は、これらの情報の記憶を、上述の推定方法の実施途中に適時行ってもよい。具体的には、難易度算出部22は、第1難易度および第3難易度をそれぞれ算出または取得した時点で、土地データベース32に記憶してもよい。
【0091】
また、推定装置20は、得られた作業結果および作業効率等の情報についても、適宜サーバ記憶装置30に記憶してもよい(S10)。
【0092】
<データ構造>
本実施形態に係る推定システム1に含まれるサーバ記憶装置30が有するデータ構造についても、本発明の一態様に含まれる。当該データ構造は、草刈機10等の作業機体の遠隔操作により実施する農作業について、作業者による遠隔操作の熟練度を推定するための推定装置20に用いられる情報を含むデータ構造である。
【0093】
当該データ構造は、第1農作業の作業効率と、推定装置20が過去(第1農作業の完了前)に取得した第2難易度と、推定装置20が過去に取得した第2熟練度とを格納する。作業効率、第2難易度および第2熟練度の詳細については、<推定装置>および<推定方法>の項目にて説明済みであるため、ここでは説明を省略する。
【0094】
当該データ構造は、推定装置20により、第1難易度を作業効率の高低に応じて変動する値として算出し、第2難易度を第1難易度により補正した第3難易度を取得する。また、当該データ構造は、第1熟練度を作業効率および第3難易度に基づいて推定し、第2熟練度を第1熟練度により補正した第3熟練度を取得する処理をさせるための情報を含む。第1難易度、第3難易度、第1熟練度および第3熟練度について、また、これらを取得する具体的な方法については、<推定装置>および<推定方法>の項目にて説明済みであるため、ここでは説明を省略する。
【0095】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0096】
<推定システム1aの概要>
図8に示すように、本実施形態に係る推定システム1aは、作業時間推定部24と、候補提示部25とを含む推定装置20aを備えている点において、実施形態1に係る推定システム1と異なる。推定システム1aは、過去の農作業の実施履歴に基づき、土地における農作業を実施するための基準となる熟練度である第4熟練度を算出する。
【0097】
このような第4熟練度の活用方法の一例として、推定システム1aは、土地における農作業の第4熟練度から、作業者による当該農作業の作業完了可能率を算出する。作業完了可能率は、例えば、作業者ごとに、農作業の実施に要する作業時間の推定に利用可能である。具体的には、推定システム1aは、作業完了可能率と、農作業の基準作業時間とを用いることで、作業者による農作業の推定作業時間を推定可能である。
【0098】
このような推定システム1aによれば、例えば、農作業を依頼する依頼者は、第4熟練度を参考に、依頼相手となる作業者を決定できる。また、作業者も、第4熟練度を参考に、依頼された農作業を請け負うか否かを判断可能である。また、推定システム1aは、推定作業時間を用いることで、例えば、農作業の依頼に必要な報酬等のコストについても算出できる。
【0099】
<推定装置20aおよび推定方法>
推定装置20aは、推定システム1aを統括的に制御する制御装置として機能する。推定装置20aは、例えばCPU(Central Processing Unit)等の汎用の集積回路により実現されてもよく、専用の論理回路として実現されてもよい。推定装置20aは、効率算出部21、難易度算出部22および熟練度推定部23に加え、作業時間推定部24および候補提示部25を機能ブロックとして含む。
【0100】
以下、推定装置20aが実行する処理の内容について、
図9に示す本実施形態に係る推定方法の処理フローと併せて説明する。なお、本実施形態において説明する推定方法の処理フローは、実施形態1に係る推定方法の、
図4に示す処理フローに続けて実行されてもよいし、実施形態1に係る推定方法とは独立して実行されてもよい。
【0101】
(作業時間推定部24)
作業時間推定部24は、作業者による農作業の推定作業時間を算出する。推定作業時間は、農作業の実施基準となる第4熟練度に基づいて算出できる。まず、第4熟練度について説明する。
【0102】
第4熟練度は、対象となる農作業の実施に必要な、または好ましい熟練度の基準を示す値であってよい。第4熟練度は、例えば、作業者の第3熟練度が、農作業の第4熟練度以上であった場合に、当該作業者は当該農作業を問題なく実行可能なことを示す指標であってよい。また、第4熟練度は、ある作業者の第3熟練度が第4熟練度未満であった場合でも、当該作業者の第3熟練度が第4熟練度に近いほど、当該作業者は当該農作業を完了できる可能性が高いことを示す指標であってもよい。
【0103】
第4熟練度は、熟練度推定部23により算出されてもよい。この場合、熟練度推定部23は、複数の作業者の第2熟練度から、農作業の実施基準となる熟練度を示す第4熟練度算出する。熟練度推定部23は、例えば、作業者データベース31を参照し、過去に行われた各農作業の第2熟練度を取得する(S21)。また、熟練度推定部23は、土地データベース32を参照し、取得した第2熟練度ごとに、どの土地に対応する第2熟練度であるかについての情報を取得する(S22)。
【0104】
そして熟練度推定部23は、土地ごとに、複数の第2熟練度を統計的に処理し、第4熟練度を算出してよい。熟練度推定部23は、例えば、複数の第2熟練度の平均値を、第4熟練度として算出してよい(S23)。また、熟練度推定部23は、第2熟練度が1つのみ記憶されている土地については、当該第2熟練度の値を、そのまま第4熟練度としてもよい。
【0105】
作業時間推定部24が取得する第4熟練度は、熟練度推定部23により算出されたものでなくてもよい。第4熟練度は、例えば、土地ごとに初期設定された値であってもよく、推定システム1aが実行する推定方法とは別の方法により算出された値であってもよい。作業時間推定部24は、取得した土地ごとの第4熟練度について、土地データベース32に記憶してもよい。
【0106】
次に、作業時間推定部24は、作業者ごとに、第4熟練度と第3熟練度との対比により、農作業の作業完了可能率を算出する(S24)。第4熟練度と第3熟練度の対比とは、例えば、第4熟練度に対する第3熟練度の比率(第3熟練度/第4熟練度)であってもよい。この場合、作業者の第3熟練度が第4熟練度よりも大きければ、作業完了可能率は1よりも大きい値になる。作業完了可能率は、例えば、1に近いほど農作業の基準作業時間に近い作業時間で農作業を完了可能なことを示し、値が大きいほど農作業に要する作業時間が短いと推定される指標であってよい。
【0107】
また、作業時間推定部24は、作業完了可能率について、第3熟練度が第4熟練度以上である場合に1となり、第3熟練度が第4熟練度未満である場合に0となるような、農作業の実施が可能か不可能かのみを示す値として算出してもよい。
【0108】
作業時間推定部24は、作業完了可能率と、土地の基準作業時間とに基づいて、推定作業時間を算出する(S25、作業時間推定ステップ)。土地の基準作業時間は、土地データベース32に記憶された固定値であってもよく、過去に行われた農作業の作業時間の履歴に基づいて、統計的に算出された値であってもよい。推定作業時間は、例えば、作業完了可能率の逆数に基準作業時間を乗じる、以下の式により算出される値であってもよい;
推定作業時間 = (1/作業完了可能率)×基準作業時間。
【0109】
このようにして得られた推定作業時間は、各土地の第4熟練度と、各作業者の第3熟練度とに基づいて算出される。そのため、推定装置20aは、作業者ごとに最新の熟練度の情報に基づいて、農作業に要する作業時間を高い精度で推定できる。
【0110】
作業時間推定部24はさらに、推定作業時間を、作業者ごとの過去に実施した複数の農作業の土地ごとの平均作業時間で除した、補正推定作業時間を算出してもよい(S26)。このように、作業時間推定部24は、作業者の第3熟練度に加え実際の過去の作業時間についても作業時間の推定に用いる構成であってもよく、その場合に作業時間推定部24は、作業者の特性を考慮して反映した作業時間の推定が可能となる。なお、作業時間推定部24が推定する推定作業時間は、農作業に要する作業時間を高精度に推定するものである。そのため、作業時間推定部24は、推定作業時間のみ算出し、特に指定がない限り補正推定作業時間については算出しなくてもよい。
【0111】
次に、作業時間推定部24が推定した推定作業時間または補正推定作業時間の活用例として、候補提示部25の処理について以下に説明する。
【0112】
(候補提示部25)
候補提示部25は、作業時間推定部24が推定した推定作業時間を用いて、農作業に適した候補を提示する。まず、候補提示部25は、作業可能時間が推定作業時間の範囲内である作業者を選択する(S27)。言い換えれば、候補提示部25は、作業者ごとに、当該作業者の作業可能時間が推定作業時間の範囲内であるか否かを判定する。作業者の作業可能時間とは、例えば、作業者データベース31に記憶された、作業者のスケジュールから取得される情報であってもよい。なお、ステップS27以降において、候補提示部25は、推定作業時間の代わりに補正推定作業時間を用いてもよい。
【0113】
候補提示部25は、例えば、農作業の作業期間と、作業者のスケジュール情報とを対比し、農作業の設定作業期間内に作業可能な作業者を選択する。そして、候補提示部25は、作業者のスケジュールから、当該設定作業期間内において作業者が作業可能な時間を作業可能時間として取得し、当該作業可能時間が推定作業時間の範囲内であるか否かを判定してもよい。候補提示部25は、ステップS27において選択された作業者以外の作業者について、候補の提示対象から除外してもよく、農作業の実施が不可能であることを示すラベル情報を付与してもよい。
【0114】
次に、候補提示部25は、作業者ごとに、農作業の設定単価と推定作業時間とを乗じた推定報酬を算出する(S28)。また、候補提示部25は、作業者の要求単価と推定作業時間とを乗じた要求報酬を算出する(S29)。候補提示部25は、推定報酬が要求報酬以上か否かを判定し、推定報酬が要求報酬以上である作業者を、農作業の候補者として提示する(S30、候補提示ステップ)。候補提示部25は、推定報酬が要求報酬よりも低いと判定された作業者については、提示対象から除外してもよく、農作業の請負が不適であることを示すラベル情報を付与して提示してもよい。
【0115】
農作業の設定単価は、例えば、農作業の依頼者が支出可能な範囲での単位時間あたりの単価であってもよく、同種の農作業における市場平均である単位時間あたりの単価であってもよい。候補提示部25は、このような農作業の設定単価と推定作業時間とを乗じることで、農作業の推定報酬を推定できる。
【0116】
また、作業者の要求単価は、例えば、作業者に関する情報の一環として作業者データベース31に記憶されていてもよい。作業者の要求単価が事前に設定されていない場合、候補提示部25は、例えば、作業者が前回の農作業で得た報酬額を参照して作業者の作業単価を設定し、当該作業単価を作業者の要求単価として用いてもよい。候補提示部25は、このような作業者の要求単価と推定作業時間とを乗じることで、作業者が農作業の実施により要求する要求報酬を推定できる。
【0117】
候補提示部25は、このような判定を行うことにより、推定報酬が要求報酬よりも低い作業者を、予め農作業の候補者から除外できる。これにより、推定装置20aは、農作業の実施により金銭的にメリットを受けられると推定される作業者のみを、候補者として提示できる。したがって、推定装置20aは、例えば、農作業を作業者に依頼した後に、報酬額が折り合わず作業者が依頼を拒否してしまい、別の作業者に再依頼する必要が生じる恐れを低減できる。
【0118】
推定装置20aは、例えば、農作業の設定単価がそれぞれ異なる複数の農作業の依頼者ごとに、作業時間推定部24および候補提示部25の処理を実施し、候補となり得る複数の作業者における、各依頼者からの農作業の請負可否をまとめて提示してもよい。候補提示部25は、例えば、
図10に示すように、作業者と依頼者(法人等)との組み合わせをマトリックス状に表示し、各組み合わせについて農作業の実施可否および請負可否を提示してもよい。
【0119】
ここで、候補提示部25は、農作業の実施可否について、作業可能時間が推定作業時間の範囲内である作業者は「可能」とし、範囲外である作業者は「不可能」として示してもよい。また、候補提示部25は、農作業の実施が可能である場合における請負可否について、推定報酬が要求報酬以上である作業者はそのまま「可能」と示し、推定報酬が要求報酬未満である作業者は「可だが不請負」として示してもよい。なお、
図10に示す候補者の提示態様はあくまで一例であり、候補提示部25は、その他の態様により候補者を提示しもよい。
【0120】
また、候補提示部25は、上述のマトリックス状の表示態様において、「可能」と判定される組み合わせの箇所に、推定報酬の金額を提示してもよい。さらに、候補提示部25は、最も推定報酬の金額が小さくなる依頼者と作業者との組み合わせと、推定報酬の金額が大きくなる当該組み合わせとを、それぞれ提示してもよい。このような構成によれば、推定システム1aのユーザは、一目で、最適と考えられる農作業と作業者との組み合わせを把握できる。
【0121】
本実施形態に係る推定方法によれば、農作業の依頼者の要望と、作業者の要望とを共に満たした、農作業の依頼と作業者とのマッチングが可能になる。例えば、農作業の依頼者は、農作業を問題なく完了可能な作業者に依頼したい。また、作業者は、できる限り報酬が高い依頼者から農作業の依頼を請け負いたい。候補提示部25は、このような両者の要望を満たす可能性が高い形で、農作業ごとに候補者を提示できる。
【0122】
なお、推定装置20aは、効率算出部21、難易度算出部22および熟練度推定部23を含まない構成であってもよい。例えば、推定装置20aは、
図8に示す機能ブロックのうち、作業時間推定部24のみ、または作業時間推定部24および候補提示部25のみを含んでいてもよい。この場合、作業時間推定部24は、サーバ記憶装置30に記憶されている第3熟練度および第4熟練度等の情報を用いて、推定作業時間の算出を行ってもよい。すなわち、最新の土地の難易度および作業者の熟練度を取得する推定装置20の機能と、作業時間推定部24および候補提示部25の機能とは、互いに異なる装置により実現されてもよい。
【0123】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0124】
<推定システム1bの概要>
図11に示すように、本実施形態に係る推定システム1bは、経路推定部26を含む推定装置20bを備えている点において、実施形態1に係る推定システム1と異なる。推定システム1bは、過去の農作業の実施履歴に基づき、草刈機10等の作業機体の最適経路を推定する。このとき、推定システム1bは、過去に農作業を行った作業者の熟練度を加味して最適経路を推定できる。
【0125】
過去の農作業の実施履歴には、熟練度が高い習熟した作業者による履歴と、熟練度が低い不慣れな作業者による履歴とが混在する場合がある。この場合に、作業者の熟練度を問わず一律に作業履歴から最適経路を推定すると、特に不慣れな作業者の履歴が大きく反映されてしまうことで、推定精度が向上しにくいと考えられる。習熟した作業者が遠隔操作する作業機体が通った作業経路は最適経路に近いと考えられる一方、不慣れな作業者が遠隔操作する作業機体が通った作業経路は、実際の最適経路からは大きく外れている可能性が高いためである。
【0126】
推定システム1bは、過去に農作業を行った作業者の熟練度を加味して最適経路を推定できるため、高い精度で最適経路を推定できる。推定システム1bが推定した最適経路は、例えば、自律作業が可能な作業機体を用いて農作業を行う場合の作業経路として応用できる。また、推定システム1bが推定した最適経路は、作業者が作業機体の遠隔操作により農作業を行うに当たっての参考経路として用いられてもよい。
【0127】
<推定装置20bおよび推定方法>
推定装置20bは、推定システム1bを統括的に制御する制御装置として機能する。推定装置20bは、例えばCPU(Central Processing Unit)等の汎用の集積回路により実現されてもよく、専用の論理回路として実現されてもよい。推定装置20bは、効率算出部21、難易度算出部22および熟練度推定部23に加え、経路推定部26を機能ブロックとして含む。
【0128】
以下、推定装置20bが実行する処理の内容について、
図12に示す本実施形態に係る推定方法の処理フローと併せて説明する。なお、本実施形態において説明する推定方法の処理フローは、実施形態1に係る推定方法の、
図4に示す処理フローに続けて行われてもよいし、実施形態2に係る推定方法の、
図9に示す処理フローに続けて行われてもよい。また、本実施形態に係る推定方法は、実施形態1および実施形態2に係る推定方法とは独立して実行されてもよい。
【0129】
(経路推定部26)
経路推定部26は、農作業における草刈機10の最適経路を推定する。まず、経路推定部26は、複数の農作業の作業結果に含まれる作業経路履歴を取得する(S41)。経路推定部26は、複数の農作業の作業結果について、例えば、サーバ記憶装置30から取得してもよい。
【0130】
複数の農作業は、過去に実施され、作業経路履歴を含む作業結果が存在する農作業であれば、特に限定されない。
図13は、農作業として草刈り作業が行われる土地である畦畔の3次元マップデータ上に、7回実施された農作業の各作業経路履歴に基づいて描写した草刈機10の移動軌跡を、重畳的に表示した例を示す。
【0131】
このように、農作業が複数回行われた場合、作業者が選択した作業経路はそれぞれ異なることが通常である。このとき、土地の範囲内には、草刈機10が走行した走行頻度が高い位置と、走行頻度が低い位置とが存在する場合がある。走行頻度が高い位置は、多くの作業者が草刈機10を走行させた、農作業を遂行する観点から重要度が高い位置と考えられる。一方、走行頻度が低い位置は、草刈機10による走行が困難な位置であるか、または、農作業の遂行において重要度が低く、費用対効果が低い位置と考えられる。したがって、走行頻度が高い位置ほど、農作業における草刈機10の最適経路に含まれる可能性が高い位置であると考えられる。
【0132】
次に、経路推定部26は、農作業ごとに推定された第2熟練度をそれぞれ取得する(S42)。第2熟練度は、例えば、作業者データベース31から取得されてよい。この場合、作業者データベース31には、第2熟練度の値と、当該第2熟練度の推定に用いられた農作業の作業結果とが、互いに対応付けられた形式により記憶されていてよい。また、経路推定部26が取得する第2熟練度は、農作業の実施時における作業者の熟練度を相対的に示す値であればよく、推定システム1等が推定した熟練度であることは要さない。
【0133】
次に、経路推定部26は、取得した第2熟練度の高低に応じて、走行頻度の算出において作業経路履歴を加味する度合いの重み付けを行い(S43)、土地の各位置における草刈機10の走行頻度を算出する(S44)。経路推定部26が取得した農作業ごとの第2熟練度は、農作業が実施された当時の作業者の熟練度を示す。第2熟練度が高く算出されていた作業者は、農作業を実施した時点において、最適な経路を経験的に理解していた可能性が高い。そのため、第2熟練度が高く算出されていた作業者が農作業において草刈機10を走行させた経路は、最適経路に近い経路であると考えられる。一方、第2熟練度が低く算出されていた作業者が草刈機10を走行させた経路は、最適経路とは異なる経路である可能性が高いといえる。
【0134】
したがって、経路推定部26は、例えば、第2熟練度が高い作業者の作業経路履歴ほど、走行頻度の算出に大きく反映されるように処理を行ってもよい。
図14の左図は、
図13に示した各農作業の移動軌跡について、第2熟練度の高低に応じて描画ラインの太さ(描画ドットの大きさ)を変えて描画した例を示している。
図14の左図は、第2熟練度が高いほど移動軌跡が太く描画されている。経路推定部26は、例えば、当該描画ラインの太さに応じて、走行頻度の算出を行ってもよい。
【0135】
また、経路推定部26は、走行頻度の算出について、さらに統計的な手法を用いて行うことが好ましい。統計的な手法としては、例えば、ホットスポット分析(Getis-Ord Gi*)のような、統計的に有意に大きい値または小さい値を有する空間クラスターを特定可能な手法が挙げられる。
【0136】
経路推定部26が算出する走行頻度の一例として、
図14の右図に、各作業者の作業経路履歴について、第2熟練度の高低に応じて前記ホットスポット分析による統計値分類を行い、得られた結果を3次元マップデータ上に描画した例を示している。
図14の右図に示す例において、「Hot Spot」は、第2熟練度が高い作業者の移動軌跡が統計的に有意に密集している位置を示し、「Cold Spot」は、第2熟練度が低い作業者の移動軌跡が統計的に有意に密集している位置を示す。経路推定部26は、第2熟練度が高いか低いかの判定について、例えば、所定の閾値以上であるか否かによって行ってもよく、全ての作業者の第2熟練度の平均値以上であるか否かによって行ってもよい。
【0137】
また、「Not Significant」は、作業者の移動軌跡の分布について、第2熟練度の高低による統計的な有意差が見られなかった位置を示す。
図14の右図に示す例において、統計的な有意差について、信頼係数が90%以上95%未満(90% Confidence)、95%以上99%未満(95% Confidence)および99%以上(99% Confidence)にそれぞれ分類している。
【0138】
経路推定部26は、このようにして得られる走行頻度から、農作業における草刈機10の最適経路を推定する(S45、経路推定ステップ)。経路推定部26は、走行頻度が大きい位置ほど最適経路である可能性が高いと仮定して、最適経路を推定してよい。走行頻度は、第2熟練度の高低による重み付けを行って算出されているため、第2熟練度が高い作業者が選択した経路ほど、走行頻度が高い位置として算出されやすい。したがって、経路推定部26は、最適経路の推定において、第2熟練度が高い作業者が選択した経路を重視することで、推定精度を向上できる。
【0139】
図14の右図に示す例では、経路推定部26は、例えば、Cold Spotに分類された位置は、第2熟練度が低い作業者が主に走行した経路として棄却する。また、経路推定部26は、Not Significantまたは90% Confidenceに分類された位置についても、統計的な有意性が十分ではないとして棄却する。そして、経路推定部26は、95% Confidenceおよび99% ConfidenceのHot Spotを、第2熟練度が高い作業者が主に走行した経路として採択し、各Hot Spot間を結ぶ最短経路を最適経路と推定してもよい。このとき、経路推定部26は、土地の各位置について傾斜角等により移動コストを算出し、移動コストが最小になるように最短経路を補正した上で、最適経路を推定してもよい。
【0140】
また、経路推定部26は、Cold Spot、Not Significant、Hot Spotの各位置における実際の走行頻度に、分類ごとに設定される所定の係数を乗じた上で、走行頻度が高い位置が優先的に選択されるように最適経路を推定してもよい。所定の係数は、例えば、Cold SpotおよびNot Significantは1未満の値であり、Hot Spotは1以上の値であってもよい。また、所定の係数は、Hot Spotでは、信頼係数が大きいほど大きい値であってもよく、Cold Spotでは、信頼係数が大きいほど小さい値であってもよい。
【0141】
経路推定部26は、推定した最適経路を、土地データベース32に記憶してもよい(S46)。
【0142】
図15の上図に、経路推定部26が推定する最適経路の一例を示す。また、推定システム1bは、熟練度推定部23により、土地の第3難易度が変更される度に、作業者データベース31に記憶される各作業者の第2熟練度を更新してもよい。この場合、経路推定部26は、いずれかの作業者の第2熟練度が更新される度に、最適経路について更新してもよい。
図15の下図には、経路推定部26が最適経路を推定した後(
図15の上図)、計7回の農作業実施結果に基づいて更新された最新の最適経路を示している。ここでの7回の農作業はそれぞれ、
図13に示された各作業経路履歴に対応するものであってよい。作業者が実施した農作業によって、作業経路履歴の蓄積、または土地の第3難易度の情報の更新等があれば、経路推定部26は、最新の情報に基づいて、より効率的と考えられる最適経路を逐次推定できる。
【0143】
なお、推定装置20bは、効率算出部21、難易度算出部22および熟練度推定部23を含まない構成であってもよい。例えば、推定装置20bは、
図11に示す機能ブロックのうち、経路推定部26のみを含んでいてもよい。この場合、経路推定部26は、サーバ記憶装置30に記憶されている作業経路履歴等の情報を用いて、最適経路の推定を行ってもよい。すなわち、最新の土地の難易度および作業者の熟練度を取得する推定装置20の機能と、経路推定部26の機能とは、互いに異なる装置により実現されてもよい。
【0144】
〔ソフトウェアによる実現例〕
推定装置20、20a、20b(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロックとしてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0145】
この場合、前記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により前記プログラムを実行することにより、前記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0146】
前記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、前記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、前記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して前記装置に供給されてもよい。
【0147】
また、前記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、前記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより前記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0148】
また、前記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0149】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る推定装置は、作業機体の遠隔操作により実施する農作業について、作業者による前記遠隔操作の熟練度を推定する推定装置であって、直近に実施された前記農作業である第1農作業の対象である土地の土地情報と、前記第1農作業を実施した前記作業者である第1作業者による前記第1農作業の作業結果とを用いて、前記第1農作業の作業効率を算出する効率算出部と、前記第1農作業の難易度である第1難易度を、前記作業効率の高低に応じて変動する値として算出し、前記第1農作業の完了前に算出された前記農作業の難易度である第2難易度を前記第1難易度により補正した第3難易度を取得する難易度算出部と、前記作業効率および前記第3難易度に基づいて前記第1作業者の前記熟練度である第1熟練度を推定し、前記第1農作業の完了前に推定された前記第1作業者の前記熟練度である第2熟練度を前記第1熟練度により補正した第3熟練度を取得する熟練度推定部とを含む。
【0150】
本発明の態様2に係る推定装置は、前記態様1において、前記熟練度推定部はさらに、前記第3難易度に基づいて、前記第1作業者とは異なる前記作業者である第2作業者の少なくとも1人における前記第2熟練度を補正すると共に、当該補正後の前記第2熟練度に基づき、前記第2作業者の少なくとも1人における前記第3熟練度を更新してもよい。
【0151】
本発明の態様3に係る推定装置は、前記態様1または2において、前記効率算出部は、前記作業結果に含まれる作業時間と、前記作業結果に含まれる作業経路履歴および前記作業機体の機種情報と、前記土地情報から算出した前記土地における全作業面積とを用いて算出される、前記第1農作業における作業完了面積、未作業面積および重複作業面積と、を用いて前記作業効率を算出してもよい。
【0152】
本発明の態様4に係る推定装置は、前記態様3において、前記効率算出部は、前記作業時間、前記未作業面積および前記重複作業面積の少なくとも何れかに対して、所定の値を加算または減算した上で前記作業効率を算出してもよい。
【0153】
本発明の態様5に係る推定装置は、前記態様1から4の何れかにおいて、前記作業者による前記農作業の推定作業時間を算出する作業時間推定部をさらに含み、前記熟練度推定部は、複数の前記作業者の前記第2熟練度から、前記農作業の実施基準となる熟練度を示す第4熟練度をさらに算出し、前記作業時間推定部は、前記作業者ごとに、前記第4熟練度と前記第3熟練度との対比により算出される前記農作業の作業完了可能率と、前記土地の基準作業時間とに基づいて、前記推定作業時間を算出してもよい。
【0154】
本発明の態様6に係る推定装置は、前記態様5において、前記作業者ごとに、前記作業者の作業可能時間が前記推定作業時間の範囲内であり、かつ、前記農作業の設定単価と前記推定作業時間とを乗じた推定報酬が、前記作業者の要求単価と前記推定作業時間とを乗じた要求報酬以上か否かを判定し、前記推定報酬が前記要求報酬以上と判定された前記作業者を、前記農作業の候補者として提示する候補提示部をさらに含んでいてもよい。
【0155】
本発明の態様7に係る推定装置は、前記態様1から6の何れかにおいて、複数の前記農作業の前記作業結果に含まれる作業経路履歴から、前記土地の各位置における前記作業機体の走行頻度を算出し、前記走行頻度から、前記農作業における前記作業機体の最適経路を推定する経路推定部をさらに含み、前記経路推定部は、前記農作業ごとに推定された前記第2熟練度をそれぞれ取得し、前記走行頻度の算出において、前記第2熟練度の高低に応じて前記作業経路履歴を加味する度合いの重み付けを行ってもよい。
【0156】
本発明の態様8に係る推定プログラムは、前記態様1から7の何れかに記載の推定装置としてコンピュータを機能させるための制御プログラムであって、少なくとも前記効率算出部、前記難易度算出部および前記熟練度推定部としてコンピュータを機能させる。
【0157】
本発明の態様9に係る推定方法は、作業機体の遠隔操作により実施する農作業について、作業者による前記遠隔操作の熟練度を推定する推定方法であって、直近に実施された前記農作業である第1農作業の対象である土地の土地情報と、前記第1農作業を実施した前記作業者である第1作業者による前記第1農作業の作業結果とを用いて、前記第1農作業の作業効率を算出する効率算出ステップと、前記第1農作業の難易度である第1難易度を、前記作業効率の高低に応じて変動する値として算出し、前記第1農作業の完了前に算出された前記農作業の難易度である第2難易度を前記第1難易度により補正した第3難易度を取得する難易度算出ステップと、前記作業効率および前記第3難易度に基づいて前記第1作業者の前記熟練度である第1熟練度を推定し、前記第1農作業の完了前に推定された前記第1作業者の前記熟練度である第2熟練度を前記第1熟練度により補正した第3熟練度を取得する熟練度推定ステップとを含む。
【0158】
本発明の態様10に係る推定システムは、作業機体の遠隔操作により実施する農作業について、作業者による前記遠隔操作の熟練度を推定する推定システムであって、データベースと、前記データベースから情報を取得する推定装置とを備えており、前記推定装置は、直近に実施された前記農作業である第1農作業の対象である土地の土地情報と、前記第1農作業を実施した前記作業者である第1作業者による前記第1農作業の作業結果とを用いて、前記第1農作業の作業効率を算出する効率算出部と、前記第1農作業の難易度である第1難易度を、前記作業効率の高低に応じて変動する値として算出し、前記第1農作業の完了前に前記データベースが記憶していた前記農作業の難易度である第2難易度を前記第1難易度により補正した第3難易度を取得する難易度算出部と、前記作業効率および前記第3難易度に基づいて前記第1作業者の前記熟練度である第1熟練度を推定し、前記第1農作業の完了前に前記データベースが記憶していた、前記第1作業者の前記熟練度である第2熟練度を前記第1熟練度により補正した第3熟練度を取得する熟練度推定部とを含む。
【0159】
本発明の態様11に係るデータ構造は、作業機体の遠隔操作により実施する農作業について、作業者による前記遠隔操作の熟練度を推定するための推定装置に用いられる情報を含むデータ構造であって、直近に実施された前記農作業である第1農作業の対象である土地の土地情報と、前記第1農作業を実施した前記作業者である第1作業者による前記第1農作業の作業結果とを用いて算出される、前記第1農作業の作業効率と、前記第1農作業の完了前における前記農作業の難易度である第2難易度と、前記第1農作業の完了前における前記第1作業者の前記熟練度である第2熟練度と、を格納し、前記推定装置により、第1難易度を前記作業効率の高低に応じて変動する値として算出し、前記第2難易度を前記第1難易度により補正した第3難易度を取得し、第1熟練度を前記作業効率および前記第3難易度に基づいて推定し、前記第2熟練度を前記第1熟練度により補正した第3熟練度を取得する処理をさせるための前記情報を含む。
【0160】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0161】
1、1a、1b 推定システム
10 草刈機
20、20a、20b 推定装置
21 効率算出部
22 難易度算出部
23 熟練度推定部
24 作業時間推定部
25 候補提示部
31 作業者データベース(データベース)
32 土地データベース(データベース)