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特開2024-44936マルチ電子ビームの調整方法及びマルチ電子ビーム検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044936
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】マルチ電子ビームの調整方法及びマルチ電子ビーム検査装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/04 20060101AFI20240326BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20240326BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20240326BHJP
   H01J 37/141 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01J37/04 A
H01J37/22 502L
H01J37/147 B
H01J37/141
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150770
(22)【出願日】2022-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】三上 翔平
(72)【発明者】
【氏名】安藤 厚司
(72)【発明者】
【氏名】井上 和彦
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101EE03
5C101EE04
5C101EE06
5C101EE14
5C101EE22
5C101EE23
5C101EE26
5C101EE32
5C101EE38
5C101EE42
5C101EE47
5C101EE48
5C101EE51
5C101EE59
5C101EE65
5C101EE67
5C101EE78
5C101FF02
5C101FF04
5C101FF48
5C101FF56
5C101FF59
5C101GG04
5C101GG10
5C101GG18
5C101GG19
5C101GG28
5C101GG37
5C101GG49
5C101HH11
5C101HH24
5C101HH25
5C101HH43
5C101HH68
(57)【要約】
【目的】マルチ1次電子ビームの軌道から分離されたマルチ2次電子ビームの軌道上の偏向器の中心位置付近にマルチ2次電子ビームの中間像面を形成するように偏向器よりも上流側のレンズを調整可能な方法を提供する。
【構成】本発明の一態様のマルチ電子ビームの調整方法は、設定された第1のレンズの第1の入力値と調整された第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、取得されたマルチ2次電子ビームの代表ビームの複数の形状に基づいて、マルチ2次電子ビームの代表ビームに関する特徴量を抽出する工程と、設定された第1のレンズの第1の入力値と調整された第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に抽出されたマルチ2次電子ビームに関する複数の特徴量を用いて所定の条件に合う特徴量が得られる第1のレンズの第1の入力値と第2のレンズの第2の入力値の組み合わせを決定する工程と、決定された組み合わせの第1の入力値を第1のレンズに設定し、決定された組み合わせの第2の入力値を第2のレンズに設定する工程と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチ1次電子ビームで基板が照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビームを前記マルチ1次電子ビームから分離する分離器と前記基板との間に配置され、マルチ1次電子ビームで前記基板を照射する第1と第2のレンズのうち、前記分離器側に配置される前記第1のレンズの第1の入力値を可変に設定する工程と、
設定された前記第1のレンズの第1の入力値毎に、前記第1のレンズの第1の入力値による前記第1のレンズのレンズ作用が生じている状態で、前記マルチ1次電子ビームの代表ビームが前記基板に結像するように前記第2のレンズの第2の入力値を調整する工程と、
設定された前記第1のレンズの第1の入力値と調整された前記第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、前記分離器により前記マルチ1次電子ビームの軌道上から分離され、偏向器で偏向され、第3のレンズで集束方向に屈折させられた前記マルチ2次電子ビームの代表ビームをカメラで撮像することにより前記マルチ2次電子ビームの代表ビームの複数の形状を取得する工程と、
設定された前記第1のレンズの第1の入力値と調整された前記第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、取得された前記マルチ2次電子ビームの代表ビームの複数の形状に基づいて、前記マルチ2次電子ビームの代表ビームに関する特徴量を抽出する工程と、
設定された前記第1のレンズの第1の入力値と調整された前記第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に抽出された前記マルチ2次電子ビームに関する複数の特徴量を用いて所定の条件に合う特徴量が得られる前記第1のレンズの第1の入力値と前記第2のレンズの第2の入力値の組み合わせを決定する工程と、
決定された組み合わせの第1の入力値を前記第1のレンズに設定し、決定された組み合わせの第2の入力値を前記第2のレンズに設定する工程と、
を備えたことを特徴とするマルチ電子ビームの調整方法。
【請求項2】
前記特徴量として、前記第3のレンズにより前記マルチ2次電子ビームの代表ビームを前記カメラに導く場合における直交する2方向の一方にビーム径が他の第3の入力値より小さくなる前記第3のレンズの第3の入力値と前記2方向の他方にビーム径が他の第3の入力値より小さくなる前記第3のレンズの第3の入力値との差が用いられることを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビームの調整方法。
【請求項3】
前記特徴量として、前記第3のレンズの第3の入力値を可変に設定する場合に、前記カメラで撮像される前記マルチ2次電子ビームの代表ビームの真円性が他の第3の入力値より高くなる第3の入力値で撮像された前記マルチ2次電子ビームの代表ビームのビーム径が用いられることを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビームの調整方法。
【請求項4】
設定された前記第1のレンズの第1の入力値と調整された前記第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、前記第3のレンズの第3の入力値を可変に設定する工程と、
設定された前記第1のレンズの第1の入力値と調整された前記第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、かつ前記第3のレンズの前記第3の入力値毎に、前記偏向器に印加する電位を変化させて前記マルチ2次電子ビームの代表ビームの偏向方向を確認する工程と、
設定された前記第1のレンズの第1の入力値と調整された前記第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、かつ前記第3のレンズの前記第3の入力値毎に、前記偏向方向と前記偏向方向に直交する方向との前記マルチ2次電子ビームの代表ビームのビーム径を抽出する工程と、
をさらに備え、
前記特徴量を抽出する工程は、設定された前記第1のレンズの第1の入力値と調整された前記第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、可変に設定された前記第3の入力値のうち、前記偏向方向のビーム径が最小になる前記第3のレンズの第3の入力値と前記偏向方向に直交する方向のビーム径が最小になる前記第3のレンズの第3の入力値との差分を算出し、算出された差分を前記特徴量として抽出し、
前記組み合わせを決定する工程は、抽出された複数の差分の最小値から所定の範囲内の差分が得られる前記第1のレンズの第1の入力値と前記第2のレンズの第2の入力値の組み合わせを決定する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載のマルチ電子ビームの調整方法。
【請求項5】
設定された前記第1のレンズの第1の入力値と調整された前記第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、前記第3のレンズの第3の入力値を可変に設定する工程と、
設定された前記第1のレンズの第1の入力値と調整された前記第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、かつ前記第3のレンズの前記第3の入力値毎に、前記マルチ2次電子ビームの代表ビームの長径と短径との差分若しくは比を抽出する工程と、
をさらに備え、
前記特徴量を抽出する工程は、設定された前記第1のレンズの第1の入力値と調整された前記第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、可変に設定された前記第3の入力値のうち、前記長径と短径との差分が最小となる第3の入力値、若しくは前記長径と短径との比が1に最も近くなる第3の入力値における前記マルチ2次電子ビームの代表ビームのビーム径を前記特徴量として抽出し、
前記組み合わせを決定する工程は、抽出された複数のビーム径の最小値から所定の範囲内のビーム径が得られる前記第1のレンズの第1の入力値と前記第2のレンズの第2の入力値の組み合わせを決定する、
ことを特徴とする請求項1又は3記載のマルチ電子ビームの調整方法。
【請求項6】
前記ビーム径として、長径と短径の一方を用いることを特徴とする請求項5記載のマルチ電子ビームの調整方法。
【請求項7】
決定された組み合わせの前記第1と第2の入力値が前記第1と第2のレンズにそれぞれ設定された状態で、マルチ2次電子ビームを検出するマルチ検出器に、マルチ1次電子ビームで基板が照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビームを導く工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビームの調整方法。
【請求項8】
請求項1記載のマルチ電子ビームの調整方法により調整された前記第1のレンズと前記第2のレンズと、
請求項1記載の分離器と、
請求項1記載の偏向器と、
請求項1記載の第3のレンズと、
請求項1記載のマルチ検出器と、
を備えたことを特徴とするマルチ電子ビーム検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ電子ビームの調整方法及びマルチ電子ビーム検査装置に関する。例えば、マルチ1次電子ビームの照射に起因した2次電子画像を用いてパターン検査するマルチビーム検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになっている。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。よって、半導体ウェハ上に転写された超微細パターンの欠陥を検査するためにも、高精度な画像を撮像する必要がある。
【0003】
検査装置では、例えば、電子ビームを使ったマルチ1次電子ビームで検査対象基板を走査して、検査対象基板から放出されるマルチ2次電子ビームをマルチ1次電子ビームの軌道から分離する。そして、分離されたマルチ2次電子ビームを検出器に導く(例えば特許文献1参照)。そして、マルチ2次電子ビームを検出器で検出して、パターン画像を撮像する。マルチ2次電子ビームをマルチ検出器に導くためには、分離されたマルチ2次電子ビームをさらに偏向器で偏向することが行われる。ここで、マルチ検出器で各2次電子ビームの画像を撮像するためには、マルチ検出器の検出面上において、マルチ2次電子ビームが互いに分離している必要がある。そのためには、偏向器の中心位置付近にマルチ2次電子ビームの中間像面を形成することが求められる。
【0004】
しかしながら、従来、偏向器の中心位置付近にマルチ2次電子ビームを結像する具体的な手法がなく、例えばシミュレーションによりレンズの調整を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-132834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の一態様は、マルチ1次電子ビームの軌道から分離されたマルチ2次電子ビームの軌道上の偏向器の中心位置付近にマルチ2次電子ビームの中間像面を形成するように偏向器よりも上流側のレンズを調整可能な方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のマルチ電子ビームの調整方法は、
マルチ1次電子ビームで基板が照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビームをマルチ1次電子ビームから分離する分離器と基板との間に配置され、マルチ1次電子ビームで基板を照射する第1と第2のレンズのうち、分離器側に配置される第1のレンズの第1の入力値を可変に設定する工程と、
設定された第1のレンズの第1の入力値毎に、第1のレンズの第1の入力値による第1のレンズのレンズ作用が生じている状態で、マルチ1次電子ビームの代表ビームが基板に結像するように第2のレンズの第2の入力値を調整する工程と、
設定された第1のレンズの第1の入力値と調整された第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、分離器によりマルチ1次電子ビームの軌道上から分離され、偏向器で偏向され、第3のレンズで集束方向に屈折させられたマルチ2次電子ビームの代表ビームをカメラで撮像することによりマルチ2次電子ビームの代表ビームの複数の形状を取得する工程と、
設定された第1のレンズの第1の入力値と調整された第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、取得されたマルチ2次電子ビームの代表ビームの複数の形状に基づいて、マルチ2次電子ビームの代表ビームに関する特徴量を抽出する工程と、
設定された第1のレンズの第1の入力値と調整された第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に抽出されたマルチ2次電子ビームに関する複数の特徴量を用いて所定の条件に合う特徴量が得られる第1のレンズの第1の入力値と第2のレンズの第2の入力値の組み合わせを決定する工程と、
決定された組み合わせの第1の入力値を第1のレンズに設定し、決定された組み合わせの第2の入力値を第2のレンズに設定する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、特徴量として、第3のレンズによりマルチ2次電子ビームの代表ビームをカメラに導く場合における直交する2方向の一方にビーム径が他の第3の入力値より小さくなる第3のレンズの第3の入力値と2方向の他方にビーム径が他の第3の入力値より小さくなる第3のレンズの第3の入力値との差が用いられると好適である。
【0009】
或いは、特徴量として、第3のレンズの第3の入力値を可変に設定する場合に、カメラで撮像されるマルチ2次電子ビームの代表ビームの真円性が他の第3の入力値より高くなる第3の入力値で撮像されたマルチ2次電子ビームの代表ビームのビーム径が用いられると好適である。
【0010】
また、設定された第1のレンズの第1の入力値と調整された第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、第3のレンズの第3の入力値を可変に設定する工程と、
設定された第1のレンズの第1の入力値と調整された第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、かつ第3のレンズの第3の入力値毎に、偏向器に印加する電位を変化させてマルチ2次電子ビームの代表ビームの偏向方向を確認する工程と、
設定された第1のレンズの第1の入力値と調整された第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、かつ第3のレンズの第3の入力値毎に、偏向方向と偏向方向に直交する方向とのマルチ2次電子ビームの代表ビームのビーム径を抽出する工程と、
をさらに備え、
特徴量を抽出する工程は、設定された第1のレンズの第1の入力値と調整された第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、可変に設定された第3の入力値のうち、偏向方向のビーム径が最小になる第3のレンズの第3の入力値と偏向方向に直交する方向のビーム径が最小になる第3のレンズの第3の入力値との差分を算出し、算出された差分を特徴量として抽出し、
組み合わせを決定する工程は、抽出された複数の差分の最小値から所定の範囲内の差分が得られる第1のレンズの第1の入力値と第2のレンズの第2の入力値の組み合わせを決定する、と好適である。
【0011】
或いは、設定された第1のレンズの第1の入力値と調整された第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、第3のレンズの第3の入力値を可変に設定する工程と、
設定された第1のレンズの第1の入力値と調整された第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、かつ第3のレンズの第3の入力値毎に、マルチ2次電子ビームの長径と短径との差分若しくは比を抽出する工程と、
をさらに備え、
特徴量を抽出する工程は、設定された第1のレンズの第1の入力値と調整された第2のレンズの第2の入力値の組み合わせ毎に、可変に設定された第3の入力値のうち、長径と短径との差分が最小となる第3の入力値、若しくは長径と短径との比が1に最も近くなる第3の入力値におけるマルチ2次電子ビームの代表ビームのビーム径を特徴量として抽出し、
組み合わせを決定する工程は、抽出された複数のビーム径の最小値から所定の範囲内のビーム径が得られる第1のレンズの第1の入力値と第2のレンズの第2の入力値の組み合わせを決定する、と好適である。
【0012】
また、ビーム径として、長径と短径の一方を用いると好適である。
【0013】
また、決定された組み合わせの第1と第2の入力値が第1と第2のレンズにそれぞれ設定された状態で、第3のレンズを用いて、マルチ2次電子ビームを検出するマルチ検出器に、マルチ1次電子ビームで基板が照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビームを導く工程をさらに備えると好適である。
【0014】
本発明の一態様のマルチ電子ビーム検査装置は、
上述したマルチ電子ビームの調整方法により調整された第1のレンズと第2のレンズと、
上述した分離器と、
上述した偏向器と、
上述した第3のレンズと、
上述したマルチ検出器と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、マルチ1次電子ビームの軌道から分離されたマルチ2次電子ビームの軌道上の偏向器の中心位置付近にマルチ2次電子ビームの中間像面を形成するように偏向器よりも上流側のレンズを調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図3】実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
図4】実施の形態1における画像取得処理を説明するための図である。
図5】実施の形態1におけるビーム調整回路内の構成の一例を示すブロック図である。
図6】実施の形態1におけるマルチ電子ビーム調整方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
図7】実施の形態1におけるビーム選択アパーチャ基板の一例を示す上面図である。
図8】実施の形態1におけるフォーカス調整方法の一例を示す図である。
図9】実施の形態1における2次電子光学系の一例を示す図である。
図10】実施の形態1における偏向方向の確認手法の一例を説明するための図である。
図11】実施の形態1における特徴量の抽出手法を説明するための図である。
図12】実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。
図13】実施の形態2におけるビーム調整回路内の構成の一例を示すブロック図である。
図14】実施の形態2におけるマルチ電子ビーム調整方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
図15】実施の形態2における特徴量の抽出手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態では、マルチ電子ビーム画像取得装置の一例として、マルチ電子ビーム検査装置について説明する。但し、画像取得装置は、検査装置に限るものではなく、マルチビームを用いて画像を取得する装置であれば構わない。
【0018】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、マルチ電子ビーム検査装置の一例である。検査装置100は、マルチ電子ビーム画像取得装置の一例である。検査装置100は、画像取得機構150、及び制御系回路160(制御部)を備えている。画像取得機構150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒)、検査室103、検出回路106、チップパターンメモリ123、ステージ駆動機構142、及びレーザ測長システム122を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、ビーム選択アパーチャ基板204、駆動回路215、電磁レンズ205、一括偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、E×B分離器214(分離器)、電磁レンズ217(第1のレンズ)、電磁レンズ207(第2のレンズ)、偏向器208,209、検出器219、偏向器218、偏向器225、電磁レンズ224(第3のレンズ)、検出器アパーチャアレイ基板223、及びマルチ検出器222が配置されている。
【0019】
電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、ビーム選択アパーチャ基板204、電磁レンズ205、一括偏向器212、制限アパーチャ基板213、電磁レンズ206、E×B分離器214(分離器)、電磁レンズ217、電磁レンズ207、偏向器208,209によって1次電子光学系151(照明光学系)を構成する。また、電磁レンズ207,217、E×B分離器214、偏向器218、偏向器225、及び電磁レンズ224によって2次電子光学系152(検出光学系)を構成する。
【0020】
マルチ検出器222は、アレイ状(格子状)に配置される複数の検出エレメントを有する。検出器アパーチャアレイ基板225には、複数の検出エレメントの配列ピッチで複数の開口部が形成される。複数の開口部は、例えば、円形に形成される。各開口部の中心位置は、対応する検出エレメントの中心位置に合わせて形成される。また、開口部のサイズは、検出エレメントの電子検出面の領域サイズよりも小さく形成される。
【0021】
また、カメラ226が一時的に2次電子光学系152内に配置される。カメラ226には、例えば、DDD(Direct Detection Device)を用いると好適である。カメラ226は、マルチ検出器222の代わりに、電磁レンズ224とマルチ検出器222との間の位置、或いはマルチ検出器222の位置に配置される。検査対象の基板101のパターンを撮像する際には、カメラ226は取り外され、マルチ検出器222が配置される。
【0022】
検査室103内には、少なくともXY方向に移動可能なステージ105が配置される。ステージ105上には、検査対象となる基板101(試料)が配置される。基板101には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板101が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板101が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成される。以下、基板101が半導体基板である場合を主として説明する。基板101は、例えば、パターン形成面を上側に向けてステージ105に配置される。また、ステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。また、ステージ105上には、基板101面と同一高さ位置に配置されたマーク111が配置される。マーク111には、例えば、十字パターンが形成される。
【0023】
また、マルチ検出器222は、電子ビームカラム102の外部で検出回路106に接続される。検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。
【0024】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、リターディング制御回路130、E×B分離器制御回路132、ビーム調整回路134、磁気ディスク装置等の記憶装置109、モニタ117、メモリ118、及びプリンタ119に接続されている。また、偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146,147,148に接続される。DACアンプ146は、偏向器208に接続され、DACアンプ144は、偏向器209に接続される。DACアンプ148は、偏向器218に接続される。DACアンプ147は、偏向器225に接続される。
【0025】
また、チップパターンメモリ123は、比較回路108に接続されている。また、ステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構142により駆動される。駆動機構142では、例えば、ステージ座標系におけるX方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系が構成され、XYθ方向にステージ105が移動可能となっている。これらの、図示しないXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。ステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、ステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でステージ105の位置を測長する。ステージ座標系は、例えば、マルチ1次電子ビーム20の光軸に直交する面に対して、1次座標系のX方向、Y方向、θ方向が設定される。
【0026】
電磁レンズ202、電磁レンズ205、電磁レンズ206、電磁レンズ217、電磁レンズ207、及び電磁レンズ224は、レンズ制御回路124により制御される。また、一括偏向器212は、2極以上の電極により構成され、電極毎に図示しないDACアンプを介してブランキング制御回路126により制御される。偏向器209は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ144を介して偏向制御回路128により制御される。偏向器208は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ146を介して偏向制御回路128により制御される。また、偏向器225は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ147を介して偏向制御回路128により制御される。
【0027】
偏向器218(ベンダー)は、例えば、円弧状に曲がった筒状に形成された電極により構成され、DACアンプ148を介して偏向制御回路128により制御される。或いは、偏向器218は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ148を介して偏向制御回路128により制御されるように構成しても構わない。
【0028】
リターディング制御回路130(電位印加回路)は、基板101に所望のリターディング電位を印加して、基板101に照射されるマルチ1次電子ビーム20のエネルギーを調整する。
【0029】
E×B分離器214は、E×B分離器制御回路132により制御される。
【0030】
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメントと引出電極間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、所定の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。
【0031】
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0032】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m列×縦(y方向)n段(m,nは2以上の整数)の穴(開口部)22がx,y方向に所定の配列ピッチで形成されている。図2の例では、23×23の穴(開口部)22が形成されている場合を示している。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ外径の円形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチ1次電子ビーム20が形成されることになる。成形アパーチャアレイ基板203には、マルチ1次電子ビームを形成するマルチビーム形成機構の一例となる。
【0033】
画像取得機構150は、電子ビームによるマルチビームを用いて、図形パターンが形成された基板101から図形パターンの被検査画像を取得する。以下、検査装置100における画像取得機構150の動作について説明する。
【0034】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、電磁レンズ202によって屈折させられ、成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、図2に示すように、複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、マルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0035】
形成されたマルチ1次電子ビーム20は、電磁レンズ205、及び電磁レンズ206によってそれぞれ屈折させられ、中間像およびクロスオーバーを繰り返しながら、マルチ1次電子ビーム20の各ビームの中間像面(像面共役位置:I.I.P.)の高さ位置に配置されたE×B分離器214に進む。そして、E×B分離器214を通過して、電磁レンズ217,207に進む。また、マルチ1次電子ビーム20のクロスオーバー位置付近に、通過孔が制限された制限アパーチャ基板213を配置することで、散乱ビームを遮蔽できる。また、一括偏向器212によりマルチ1次電子ビーム20全体を一括して偏向して、マルチ1次電子ビーム20全体を制限アパーチャ基板213で遮蔽することにより、マルチ1次電子ビーム20全体をブランキングできる。
【0036】
マルチ1次電子ビーム20が電磁レンズ217,207(2段の対物レンズ)に入射すると、電磁レンズ217は、マルチ1次電子ビーム20を屈折すると共に、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20を基板101に結像する。言い換えれば、電磁レンズ217,207は、マルチ1次電子ビーム20で基板101を照射する。このように、1次電子光学系151は、基板101にマルチ1次電子ビーム20を照明する。
【0037】
電磁レンズ207により基板101(試料)面上に焦点が合わされ(合焦され)たマルチ1次電子ビーム20は、偏向器208及び偏向器209によって一括して偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。このように、1次電子光学系151は、基板101にマルチ1次電子ビーム20を照明する。
【0038】
基板101の所望する位置にマルチ1次電子ビーム20が照射されると、かかるマルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して基板101から反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)が放出される。マルチ1次電子ビーム20の各ビームに対応する2次電子ビームが放出される。
【0039】
基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、電磁レンズ207,217を通って、E×B分離器214に進む。
【0040】
E×B分離器214は、マルチ2次電子ビーム300をマルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離する。
【0041】
E×B分離器214は、コイルを用いた4極以上の複数の磁極(電磁偏向コイル)と、4極以上の複数の電極(静電偏向電極)とを有する。例えば、90°ずつ位相をずらした複数の磁極と、90°ずつ位相をずらした複数の電極とが配置される。また、複数の磁極と複数の電極とが45°ずつ位相をずらして交互に配置される。配置の仕方はこれに限るものではない。複数の磁極と複数の電極とが同じ位相に重なって配置されても構わない。E×B分離器214でマルチ2次電子ビーム300を偏向することで分離作用を生じさせる。E×B分離器214では、複数の磁極によって指向性の磁界を発生させる。同様に、複数の電極によって指向性の電界を発生させる。具体的には、E×B分離器214は、マルチ1次電子ビーム20の中心ビームが進む方向(軌道中心軸)に直交する面上において電界Eと磁界Bを直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。そのため、電子の侵入方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。E×B分離器214に上側から侵入してくるマルチ1次電子ビーム20には、電界による力FEと磁界による力FBが打ち消し合い、マルチ1次電子ビーム20は下方に直進する。これに対して、E×B分離器214に下側から侵入してくるマルチ2次電子ビーム300には、電界による力FEと磁界による力FBがどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300は所定の方向に偏向されることによって斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離する。
【0042】
斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20から分離したマルチ2次電子ビーム300は、2次電子光学系152によってマルチ検出器222に導かれる。具体的には、マルチ1次電子ビーム20から分離したマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218によって偏向されることにより、さらに曲げられ、電磁レンズ224に進む。そして、マルチ2次電子ビーム300は、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から離れた位置で電磁レンズ224によって、集束方向に屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222(マルチ2次電子ビーム検出器)は、マルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。言い換えれば、マルチ検出器222は、屈折させられ、投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ検出器222は、複数の検出エレメント(例えば図示しないダイオード型の2次元センサ)を有する。そして、マルチ1次電子ビーム20の各ビームは、マルチ検出器222の検出面において、マルチ2次電子ビーム300の各2次電子ビームに対応する検出エレメントに衝突して、電子を発生し、2次電子画像データを画素毎に生成する。マルチ検出器222にて検出された強度信号は、検出回路106に出力される。
【0043】
図3は、実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。図3において、基板(半導体ウェハ)101の検査領域330には、複数のチップ(ウェハダイ)332が2次元のアレイ状に形成されている。各チップ332には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のマスクパターンが図示しない露光装置(ステッパ)によって例えば1/4に縮小されて転写されている。
【0044】
図4は、実施の形態1における画像取得処理を説明するための図である。図4に示すように、各チップ332の領域は、例えばy方向に向かって所定の幅で複数のストライプ領域32に分割される。画像取得機構150によるスキャン動作は、例えば、ストライプ領域32毎に実施される。例えば、-x方向にステージ105を移動させながら、相対的にx方向にストライプ領域32のスキャン動作を進めていく。各ストライプ領域32は、長手方向に向かって複数の矩形領域33に分割される。対象となる矩形領域33へのビームの移動は、2段の偏向器208,209(静電偏向器)によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。
【0045】
図4の例では、例えば、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。1回のマルチ1次電子ビーム20の照射で照射可能な照射領域34は、(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じたx方向サイズ)×(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じたy方向サイズ)で定義される。照射領域34が、マルチ1次電子ビーム20の視野となる。そして、マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム10は、自身のビームが位置するx方向のビーム間ピッチとy方向のビーム間ピッチとで囲まれるサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。各1次電子ビーム10は、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各1次電子ビーム10は、担当サブ照射領域29内の同じ位置を照射することになる。2段の偏向器208,209は、マルチ1次電子ビーム20を一括して偏向することにより、パターンが形成された基板101面上をマルチ1次電子ビーム20で走査する。言い換えれば、サブ照射領域29内の1次電子ビーム10の移動は、2段の偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。かかる動作を繰り返し、1つの1次電子ビーム10で1つのサブ照射領域29内を順に照射していく。
【0046】
各ストライプ領域32の幅は、照射領域34のy方向サイズと同様、或いはスキャンマージン分狭くしたサイズに設定すると好適である。図3の例では、照射領域34が矩形領域33と同じサイズの場合を示している。但し、これに限るものではない。照射領域34が矩形領域33よりも小さくても良い。或いは大きくても構わない。そして、マルチ1次電子ビーム20を構成する各1次電子ビーム10は、自身のビームが位置するサブ照射領域29内に照射され、当該サブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。そして、1つのサブ照射領域29のスキャンが終了したら、2段の偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射位置が同じストライプ領域32内の隣接する矩形領域33へと移動する。かかる動作を繰り返し、ストライプ領域32内を順に照射していく。1つのストライプ領域32のスキャンが終了したら、ステージ105の移動或いは/及び2段の偏向器208,209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって照射領域34が次のストライプ領域32へと移動する。以上のように各1次電子ビーム10の照射によってサブ照射領域29毎のスキャン動作および2次電子画像の取得が行われる。これらのサブ照射領域29毎の2次電子画像を組み合わせることで、矩形領域33の2次電子画像、ストライプ領域32の2次電子画像、或いはチップ332の2次電子画像が構成される。また、実際に画像比較を行う場合には、各矩形領域33内のサブ照射領域29をさらに複数のフレーム領域30に分割して、フレーム領域30毎の測定画像となるフレーム画像31について比較することになる。図4の例では、1つの1次電子ビーム10によってスキャンされるサブ照射領域29を例えばx,y方向にそれぞれ2分割することによって形成される4つのフレーム領域30に分割する場合を示している。
【0047】
また、ステージ105が連続移動しながらマルチ1次電子ビーム20を基板101に照射する場合、マルチ1次電子ビーム20の照射位置がステージ105の移動に追従するように2段の偏向器208,209によって一括偏向によるトラッキング動作が行われる。そのため、マルチ2次電子ビーム300の放出位置がマルチ1次電子ビーム20の軌道中心軸に対して刻々と変化する。同様に、サブ照射領域29内をスキャンする場合に、各2次電子ビームの放出位置は、サブ照射領域29内で刻々と変化する。このように放出位置が変化した各2次電子ビームをマルチ検出器222の対応する検出領域内に照射させるように、偏向器225は、マルチ2次電子ビーム300を一括偏向する。言い換えれば、偏向器225は、マルチ1次電子ビーム20を用いた走査により変動するマルチ検出器222の検出面上でのマルチ2次電子ビーム300の位置をマルチ2次電子ビームの振り戻し偏向により不動にする。これにより、各2次電子ビームがマルチ検出器222の対応する検出エレメントにて検出されることができる。なお、偏向器225は、1段の偏向器に限らず、偏向器208,209と同様、2段の偏向器により構成しても好適である。
【0048】
ここで、上述したように、分離されたマルチ2次電子ビーム300を偏向器218でさらに偏向した上でマルチ検出器222に導く。マルチ検出器222で各2次電子ビームの画像を撮像するためには、マルチ検出器222の検出面上において、マルチ2次電子ビーム300が互いに分離している必要がある。そのためには、偏向器218の中心位置(偏向支点)にマルチ2次電子ビーム300の中間像面を形成することが求められる。偏向器218の中心位置は、偏向器218内のビーム軌道の距離の1/2の距離の位置、言い換えれば、偏向器218内のビーム軌道の中間位置(中央位置)に相当する。マルチ2次電子ビーム300の結像(中間像面の形成)は、マルチ1次電子ビーム20からの分離前の軌道上に配置された電磁レンズ217によって行われる。
【0049】
偏向器218の中心位置にマルチ2次電子ビーム300を結像させることにより、偏向器218による偏向収差を最小にできる。これにより、マルチ検出器222の検出面上において、マルチ2次電子ビーム300を互いに分離できる。逆に、偏向器218による偏向収差を最小にできる位置にマルチ2次電子ビーム300を結像できれば、その位置が偏向器218の中心位置に相当する。
【0050】
そこで、実施の形態1では、マルチ2次電子ビーム300をカメラ226で撮像し、得られた画像から得られる偏向収差が他の結像条件での偏向収差よりも小さくなる位置に電磁レンズ217でマルチ2次電子ビーム300を結像する。以下、具体的に説明する。
【0051】
図5は、実施の形態1におけるビーム調整回路内の構成の一例を示すブロック図である。図5において、ビーム調整回路134内には、ビーム選択部60、入力値1設定部62、入力値2取得部64、入力値3設定部66、偏向方向確認処理部68、ビーム径抽出部70、入力値3差分算出部72、差分Δd(n)算出部74、判定部76、判定部78、組み合わせ決定部80、及びレンズ設定処理部82が配置される。ビーム選択部60、入力値1設定部62、入力値2取得部64、入力値3設定部66、偏向方向確認処理部68、ビーム径抽出部70、入力値3差分算出部72、差分Δd(n)算出部74、判定部76、判定部78、組み合わせ決定部80、及びレンズ設定処理部82といった各「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。ビーム選択部60、入力値1設定部62、入力値2取得部64、入力値3設定部66、偏向方向確認処理部68、ビーム径抽出部70、入力値3差分算出部72、差分Δd(n)算出部74、判定部76、判定部78、組み合わせ決定部80、及びレンズ設定処理部82に入出力される情報および演算中の情報はメモリ118若しくはビーム調整回路134内の図示しないメモリにその都度格納される。
【0052】
図6は、実施の形態1におけるマルチ電子ビーム調整方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。図6において、実施の形態1におけるマルチ電子ビーム調整方法は、ビーム選択工程(S102)と、レンズ入力値1設定工程(S104)と、対物レンズ2フォーカス調整工程(S106)と、レンズ入力値3設定工程(S108)と、偏向方向確認工程(S110)と、ビーム径抽出工程(S112)と、入力値3差分d(0)算出及び抽出工程(S114)と、レンズ入力値1設定工程(S124)と、対物レンズ2フォーカス調整工程(S126)と、レンズ入力値3設定工程(S128)と、偏向方向確認工程(S130)と、ビーム径抽出工程(S132)と、入力値3差分d(n)算出及び抽出工程(S134)と、差分Δd(n)算出工程(S140)と、判定工程(S142)と、判定工程(S144)と、組み合わせ決定工程(S150)と、対物レンズ1,2設定工程(S152)と、カメラ搬出/検出器設置工程(S154)と、2次ビームレンズ調整工程(S156)と、いう一連の工程を実施する。
【0053】
まず、マルチ検出器222の代わりに、カメラ226を2次電子ビームの軌道上に配置する。カメラ226は、電磁レンズ224とマルチ検出器222との間の2次電子ビームの軌道上に配置される。或いはカメラ226は、マルチ検出器222の配置位置に配置される。
【0054】
ビーム選択工程(S102)として、ビーム選択部60は、マルチ1次電子ビーム20の中から1本の代表ビームを選択する。具体的には、以下のように動作する。
【0055】
図7は、実施の形態1におけるビーム選択アパーチャ基板の一例を示す上面図である。図7において、ビーム選択アパーチャ基板204には、マルチ1次電子ビーム20全体が通過可能な大開口11と、1本の1次電子ビームが通過し、残りの1次電子ビームを遮蔽する小開口13とが形成される。ビーム選択部60は、マルチ1次電子ビーム20の中から代表1次電子ビームとして、例えば、中心1次電子ビームを選択する。駆動回路215は、選択された代表1次電子ビームが小開口13を通過する位置にビーム選択アパーチャ基板204を水平移動させる。これにより、マルチ1次電子ビーム20全体のうち、代表ビームとなる中心1次電子ビームが小開口13を通過し、残りの1次電子ビームが遮蔽される。よって、マルチ1次電子ビーム20の中から1本の代表1次電子ビームが選択される。
【0056】
レンズ入力値1設定工程(S104)として、入力値1設定部62は、電磁レンズ217(対物レンズ1)を励磁するための仮の入力値1(励磁値1)を設定する。仮の入力値1は、過去の実績或いはシミュレーション等により得られる予想値を含む複数の値のうちの1つを設定する。予想値を中央値として複数の値を設けると好適である。レンズ制御回路124は、設定された仮の入力値1で電磁レンズ217を励磁する。言い換えれば、レンズ制御回路124は、設定された仮の入力値1の電流を電磁レンズ217のコイルに流す。入力値1を順に大きく或いは小さくするために、ここでは、例えば、複数の値のうち最小の値(n=0の入力値1)を設定すると好適である。
【0057】
対物レンズ2フォーカス調整工程(S106)として、レンズ制御回路214は、設定された入力値1による電磁レンズ217のレンズ作用が生じている状態で、マルチ1次電子ビーム20の代表1次電子ビームが基板101に結像するように電磁レンズ207(対物レンズ2:第2のレンズ)の入力値2(第2の入力値)を調整する。例えば、以下のように動作する。入力値1による電磁レンズ217のレンズ作用が生じている状態で、マルチ1次電子ビーム20の代表1次電子ビームでマーク111を走査する。マーク111の走査は、偏向器208,209でマルチ1次電子ビーム20の代表1次電子ビームを偏向することにより行われる。かかる走査により2次電子ビーム(代表2次電子ビーム)がマーク111から放出される。代表2次電子ビームは、電磁レンズ207,217でレンズ作用を受け、E×B分離器214によりマルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離される。分離された代表2次電子ビームは、偏向器218手前に配置された検出器219によって検出される。検出器219により検出された検出データは、図示しない検出回路に出力され、かかる検出回路によって2次電子画像が生成される。生成された2次電子画像は、レンズ制御回路124に出力される。
【0058】
レンズ制御回路124は、得られた2次電子画像を用いて、マルチ1次電子ビーム20の代表1次電子ビームが基板101面(ここではマーク111面)で結像(フォーカス)するように入力値2を調整する。
【0059】
図8は、実施の形態1におけるフォーカス調整方法の一例を示す図である。図8では、デフォーカスされた状態(結像面がマーク面からずれている状態)で検出されたマーク111のパターンの像強度プロファイルとジャストフォーカスされた状態(結像面がマーク面と一致している状態)で検出されたマーク111のパターンの像強度プロファイルとを示している。レンズ制御回路124は、像強度プロファイルのパターンの立ち上がり部分の幅Dを抽出する。例えば、検出強度の最大値の30%と70%の位置での幅Dを抽出する。デフォーカスされた状態では、立ち上がりがなだらかとなり、ジャストフォーカスされた状態では、立ち上がりが急峻となる。立ち上がりが急峻となるほど立ち上がり部分の幅Dが小さくなる。そこで、レンズ制御回路124は、像強度プロファイルのパターンの立ち上がり部分の幅Dが最小となるように電磁レンズ207の入力値2を調整する。
【0060】
調整された入力値2は、ビーム調整回路134に出力され、入力値2取得部64は、現在設定されている入力値1に関連させて、調整された入力値2を取得する。
【0061】
レンズ入力値3設定工程(S108)として、入力値3設定部66は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせにおいて、電磁レンズ224(第3のレンズ)の入力値3(第3の入力値)を可変に設定する。ここでは、まず、仮の入力値3(励磁値3)を設定する。仮の入力値3は、カメラ226に代表2次電子ビームが結像するためのシミュレーション等により得られる予想値を含む複数の値のうちの1つを設定する。予想値を中央値として複数の値を設けると好適である。レンズ制御回路124は、設定された仮の入力値3で電磁レンズ224を励磁する。言い換えれば、レンズ制御回路124は、設定された仮の入力値3の電流を電磁レンズ224のコイルに流す。
【0062】
偏向方向確認工程(S110)として、偏向方向確認処理部68は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせにおいて、かつ電磁レンズ224の入力値3毎に、偏向器218に印加する電位を変化させてマルチ2次電子ビーム300の代表ビームの偏向方向を確認する。具体的には、以下のように動作する。
【0063】
図9は、実施の形態1における2次電子光学系の一例を示す図である。まず、偏向方向確認処理部68は、偏向制御回路128を制御して、偏向器218に印加する電位を変化させる。そして、カメラ226は、E×B分離器214によりマルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離され、偏向器218で偏向され、電磁レンズ224で集束方向に屈折させられたマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301を撮像する。言い換えれば、カメラ226は、マルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301の像を撮像する。そして、偏向方向確認処理部68は、電位変更前後におけるマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301の像の移動方向を確認する。
【0064】
図10は、実施の形態1における偏向方向の確認手法の一例を説明するための図である。カメラ226で撮像される2次電子画像内において、電位変更前後で、図10に示すように代表2次電子ビーム301の像の位置が移動する。移動方向は、電位変更前後で撮像された像の重心位置同士を結ぶ方向で定義できる。図10の例では、電位変更前の重心1から電位変更後の重心2に向かう方向が偏向方法として確認できる。
【0065】
ビーム径抽出工程(S112)として、ビーム径抽出部70は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせにおいて、E×B分離器214によりマルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離され、偏向器218で偏向され、電磁レンズ224で集束方向に屈折させられたマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビームをカメラ226で撮像することによりマルチ2次電子ビーム300の代表ビームの複数の形状を取得する。具体的には、ビーム径抽出部70は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせにおいて、かつ電磁レンズ224の入力値3毎に、確認された偏向方向(x方向)と偏向方向に直交する方向(y方向)とのマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビームのビーム径を抽出する。
【0066】
設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせにおいて、ある電磁レンズ224が入力値3で励磁された際の代表ビームのビーム径が抽出された後、レンズ入力値3設定工程(S108)に戻り、入力値3を変えた状態でレンズ入力値3設定工程(S108)からビーム径抽出工程(S112)までの各工程を繰り返す。
【0067】
入力値3差分d(0)算出及び抽出工程(S114)として、入力値3差分算出部72は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせにおいて、取得されたマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301の複数の形状に基づいて、マルチ2次電子ビーム300の代表ビーム301に関する特徴量を抽出する。実施の形態1では、特徴量として、電磁レンズ224によりマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301をカメラ226に導く場合における直交する2方向の一方(偏向方向)にビーム径が他の入力値3よりも小さくなる電磁レンズ224の入力値3と2方向の他方(偏向直交方向)にビーム径が他の入力値3よりも小さくなる電磁のレンズ224の入力値3との差が用いられる。具体的には、以下のように動作する。実施の形態1では、入力値3差分算出部72は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせにおいて、可変に設定された入力値3のうち、偏向方向(x方向)のビーム径が最小になる電磁レンズ224の入力値3と偏向方向に直交するy方向のビーム径が最小になる電磁レンズ224の入力値3との差分d(0)を算出し、算出された差分d(0)を特徴量として抽出する。
【0068】
図11は、実施の形態1における特徴量の抽出手法を説明するための図である。図11の上部には、電磁レンズ217による代表2次電子ビーム301のフォーカス位置を示す。ここでは、偏向器218に対してオーバーフォーカスした状態、ジャストフォーカスした状態、及びアンダーフォーカスした状態を示す。図11の中央部には、オーバーフォーカスした状態、ジャストフォーカスした状態、及びアンダーフォーカスした状態の各状態において、それぞれ電磁レンズ224の入力値3を可変に設定した場合にそれぞれカメラ226で撮像されるビーム形状を示す。図11の中央部において、横軸に電磁レンズ217の入力値1を示し、縦軸に電磁レンズ224の入力値3を示す。図11の下部のグラフは、横軸に電磁レンズ217の入力値1を示し、縦軸に偏向方向(x方向)のビーム径が最小になる電磁レンズ224の入力値3と偏向方向に直交するy方向のビーム径が最小になる電磁レンズ224の入力値3との差分(L0入力値差:入力値3差分)を示す。n=0の入力値1では、例えば、偏向器218にオーバーフォーカスした状態で得られる特徴量を示す。偏向器218にオーバーフォーカスした状態で電磁レンズ224の入力値3を可変に設定することで、図11に示すように代表2次電子ビーム301の複数のビーム形状をカメラ226で撮像できる。電磁レンズ224の励磁値を変えることで、図11に示すように、代表2次電子ビーム301の形状が扁平する。具体的には偏向方向と偏向方向に直交する方向とに短径と長径とが変化した楕円形状になる。入力値3差分算出部72は、かかる複数の複数のビーム形状のうち、偏向方向(x方向)のビーム径が最小になる電磁レンズ224の入力値3と偏向方向に直交するy方向のビーム径が最小になる電磁レンズ224の入力値3との差分d(0)(L0入力値差)を算出する。
【0069】
レンズ入力値1設定工程(S124)として、入力値1設定部62は、E×B分離器214と基板101との間に配置された電磁レンズ217,207のうち、E×B分離器214側に配置される電磁レンズ217(対物レンズ1:第1のレンズ)の入力値1(第1の入力値)を可変に設定する。ここでは、入力値1設定部62は、電磁レンズ217(対物レンズ1)を励磁するための現在設定されている入力値1(励磁値1)を変更の上、変更された値を新たに設定する。レンズ制御回路124は、新たに設定された仮の入力値1で電磁レンズ217を励磁する。言い換えれば、レンズ制御回路124は、新たに設定された仮の入力値1の電流を電磁レンズ217のコイルに流す。仮の入力値1として、上述した複数の値のうち、レンズ入力値1設定工程(S104)で設定された値とは異なる1つを設定する。ここでは、例えば、複数の値のうち最小の値(n=0の入力値1)からn番目の値(n番目の入力値1)を設定すると好適である。レンズ入力値1設定工程(S124)では、nは1以上の整数の場合を示す。
【0070】
対物レンズ2フォーカス調整工程(S126)として、レンズ制御回路214は、設定された電磁レンズ217の入力値1毎に、入力値1による電磁レンズ217のレンズ作用が生じている状態で、マルチ1次電子ビーム20の代表ビームが基板101に結像するように電磁レンズ207(対物レンズ2:第2のレンズ)の入力値2(第2の入力値)を調整する。調整の仕方は、対物レンズ2フォーカス調整工程(S106)の場合と同様である。検出器219により検出された検出データは、図示しない検出回路に出力され、かかる検出回路によって2次電子画像が生成される。生成された2次電子画像は、レンズ制御回路124に出力される。
【0071】
レンズ制御回路124は、得られた2次電子画像を用いて、マルチ1次電子ビーム20の代表ビームが基板101面(ここではマーク111面)で結像(フォーカス)するように入力値2を調整する。
【0072】
調整された入力値2は、ビーム調整回路134に出力され、入力値2取得部64は、現在設定されている入力値1に関連させて、調整された入力値2を取得する。
【0073】
レンズ入力値3設定工程(S128)として、入力値3設定部66は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせ毎に、電磁レンズ224(第3のレンズ)の入力値3(第3の入力値)を可変に設定する。仮の入力値3(励磁値3)を設定する。仮の入力値3は、上述した複数の値のうちの1つを設定する。レンズ入力値3設定工程(S108)の場合と同様、予想値を中央値として複数の値を設けると好適である。レンズ制御回路124は、設定された仮の入力値3で電磁レンズ224を励磁する。言い換えれば、レンズ制御回路124は、設定された仮の入力値3の電流を電磁レンズ224のコイルに流す。
【0074】
偏向方向確認工程(S130)として、偏向方向確認処理部68は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせ毎に、かつ電磁レンズ224の入力値3毎に、偏向器218に印加する電位を変化させてマルチ2次電子ビーム300の代表ビームの偏向方向を確認する。偏向方向確認工程(S130)の内容は、偏向方向確認工程(S110)と同様である。
【0075】
ビーム径抽出工程(S132)として、ビーム径抽出部70は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせ毎に、E×B分離器214によりマルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離され、偏向器218で偏向され、電磁レンズ224で集束方向に屈折させられたマルチ2次電子ビーム300の代表ビームをカメラ226で撮像することによりマルチ2次電子ビーム300の代表ビームの複数の形状を取得する。具体的には、ビーム径抽出部70は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせ毎に、かつ電磁レンズ224の入力値3毎に、確認された偏向方向(x方向)と偏向方向に直交する方向(y方向)とのマルチ2次電子ビーム300の代表ビームのビーム径を抽出する。
【0076】
設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせ毎に、ある電磁レンズ224が入力値3で励磁された際の代表ビームのビーム径が抽出された後、レンズ入力値3設定工程(S128)に戻り、入力値3を変えた状態でレンズ入力値3設定工程(S128)からビーム径抽出工程(S132)までの各工程を繰り返す。
【0077】
入力値3差分d(n)算出及び抽出工程(S134)として、入力値3差分算出部72は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせ毎に、取得されたマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301の複数の形状に基づいて、マルチ2次電子ビーム300の代表ビーム301に関する特徴量を抽出する。入力値3差分算出部72は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせ毎に、可変に設定された入力値3のうち、偏向方向(x方向)のビーム径が最小になる電磁レンズ224の入力値3と偏向方向に直交するy方向のビーム径が最小になる電磁レンズ224の入力値3との差分d(n)を算出し、算出された差分d(n)を特徴量として抽出する。
【0078】
差分Δd(n)算出工程(S140)として、差分Δd(n)算出部74は、得られた差分d(n)と差分d(n-1)との差分Δd(n)を算出する。
【0079】
判定工程(S142)として、判定部76は、nが2以上かどうかを判定する。2以上の場合、判定工程(S144)に進む。nが2以上ではない場合(n=1の場合)、レンズ入力値1設定工程(S124)に戻り、nが2以上になるまで、レンズ入力値1設定工程(S124)から判定工程(S142)までの各工程を繰り返す。
【0080】
判定工程(S144)として、判定部78は、差分Δd(n)と差分Δd(n-1)とを乗じた値Δd(n)・Δd(n-1)が負の値かどうかを判定する。値Δd(n)・Δd(n-1)が負の値ではない場合、レンズ入力値1設定工程(S124)に戻り、値Δd(n)・Δd(n-1)が負の値になるまで、レンズ入力値1設定工程(S124)から判定工程(S144)までの各工程を繰り返す。
【0081】
Δd(n)・Δd(n-1)が正の値の場合、図11の下部に示すグラフにおいて、縦軸の入力値3差分d(n)(L0入力値差)が順に小さくなる、或いは順に大きくなる状態を示す。Δd(n)・Δd(n-1)が負の値になった時点で、入力値3差分d(n)(LO入力値差)が変曲点(ここでは最小値)を取ることになる。
【0082】
組み合わせ決定工程(S150)として、組み合わせ決定部80は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせ毎に抽出されたマルチ2次電子ビーム300に関する複数の特徴量を用いて所定の条件に合う特徴量が得られる電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせを決定する。具体的には、以下のように動作する。
【0083】
まず、電磁レンズ217の入力値1を変えると、カメラ226で撮像される代表2次電子ビーム301の複数の形状の変化の仕方が異なる。図11に示すように、電磁レンズ217による代表2次電子ビーム301の結像位置が偏向器218に対してオーバーフォーカスの場合、ジャストフォーカスの場合及びアンダーフォーカスの場合について説明する。オーバーフォーカス及びアンダーフォーカスの場合には、ジャストフォーカスの場合と比べて、偏向方向(x方向)の最小ビーム径が得られる電磁レンズ224の入力値3と偏向方向に直交する方向(y方向)の最小ビーム径が得られる電磁レンズ224の入力値3との差が大きくなる。よって、かかる入力値3差分d(n)が小さい位置が電磁レンズ217による代表2次電子ビーム301のジャストフォーカス位置になる。
【0084】
よって、組み合わせ決定部80は、抽出された複数の差分(入力値3差分d(n))の最小値から所定の範囲内(±ΔL0)の差分が得られる電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせを決定する。マージンΔL0として、例えば、マルチ2次電子ビーム300がカメラ位置で分離する範囲に設定すると好適である。
【0085】
なお、図11の下部に示すグラフを得るためにプロットした複数の入力値3差分d(n)(L0入力値差)の値のうち1つがちょうどグラフの最小値を示すとは限らない。よって、プロットした複数の入力値3差分d(n)(L0入力値差)を近似したグラフ(例えば、2次関数のグラフ)の最小値を示すときの電磁レンズ217の入力値1と、かかる電磁レンズ217の入力値1にてマルチ1次電子ビーム300を基板101上にフォーカスするように調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせに決定するとなお良い。
【0086】
対物レンズ1,2設定工程(S152)として、レンズ設定処理部82は、決定された組み合わせの情報をレンズ制御回路124に出力する。レンズ制御回路124は、決定された組み合わせの入力値1を電磁レンズ217に設定し、決定された組み合わせの入力値2を電磁レンズ207に設定する。
【0087】
カメラ搬出/検出器設置工程(S154)として、カメラ226を取り外し、マルチ検出器222を設置する。また、マルチ1次電子ビーム20全体が大開口11を通過するようにビーム選択アパーチャ基板204を移動させる。
【0088】
2次ビームレンズ調整工程(S156)として、決定された組み合わせの入力値1,2が電磁レンズ217,207にそれぞれ設定された状態で、電磁レンズ224を用いて、マルチ検出器222に、マルチ1次電子ビーム20で基板101が照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビーム300を導く。具体的には、マルチ2次電子ビーム300でマルチ検出器222手前に配置される検出器アパーチャアレイ基板223上を走査する。マルチ検出器222の各検出エレメントは、検出器アパーチャアレイ基板223の対応する開口部を通過した2次電子ビームを検出する。スキャン範囲に応じて複数の2次電子ビームが開口部上を通過するため、各検出エレメントでは、アレイ状の複数のアパーチャ像の2次電子画像が得られる。マルチ検出器222の各検出エレメントでアレイ状の複数のアパーチャ像が検出できるように電磁レンズ224の入力値3を調整する。各検出エレメントでアレイ状の複数のアパーチャ像が検出できれば、マルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222の検出面で分離できていることになる。そして、各検出エレメントで得られた2次電子画像内のアパーチャ像の強度プロファイルの立ち上がり幅Dが最小になる(立ち上がりが急峻になる)ように電磁レンズ224の入力値3を調整する。これにより、電磁レンズ224で、マルチ検出器222でマルチ2次電子ビーム300の情報が得られるようにマルチ2次電子ビーム300を導くことができる。
【0089】
以上のように、マルチ電子ビームの調整方法により電磁レンズ217,207(及び電磁レンズ224)を調整する。そして、マルチ電子ビームの調整方法により調整された電磁レンズ217,207、及び電磁レンズ224が搭載された検査装置100を使って、検査処理を実施する。
【0090】
検査処理では、上述したように、画像取得機構150が、ストライプ領域32毎に、スキャン動作をすすめていく。上述したように、マルチ1次電子ビーム20を照射して、マルチ1次電子ビーム20の照射に起因して基板101から放出されるマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218内で中間像面を形成すると共に、偏向器218で偏向され、それからマルチ検出器222で検出される。検出されるマルチ2次電子ビーム300には、反射電子が含まれていても構わない。或いは、反射電子は、2次電子光学系を移動中に発散し、マルチ検出器222まで到達しない場合であっても構わない。そして。検出されたマルチ2次電子ビーム300の信号に基づいた2次電子画像が取得される。具体的には、マルチ検出器222によって検出された各サブ照射領域29内の画素毎の2次電子の検出データ(測定画像データ:2次電子画像データ:被検査画像データ)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。そして、得られた測定画像データは、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
【0091】
図12は、実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。図12において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置50,52,56、フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58が配置される。フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。フレーム画像作成部54、位置合わせ部57、及び比較部58内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0092】
比較回路108内に転送された測定画像データ(ビーム画像)は、記憶装置50に格納される。
【0093】
そして、フレーム画像作成部54は、各1次電子ビームのスキャン動作によって取得されたサブ照射領域29の画像データをさらに分割した複数のフレーム領域30のフレーム領域30毎のフレーム画像31を作成する。そして、フレーム領域30を被検査画像の単位領域として使用する。なお、各フレーム領域30は、画像の抜けが無いように、互いにマージン領域が重なり合うように構成されると好適である。作成されたフレーム画像31は、記憶装置56に格納される。
【0094】
一方、参照画像作成回路112は、基板101に形成された複数の図形パターンの元になる設計データに基づいて、フレーム領域30毎に、フレーム画像31に対応する参照画像を作成する。具体的には、以下のように動作する。まず、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、この読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
【0095】
上述したように、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0096】
かかる図形データとなる設計パターンデータが参照画像作成回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターン画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとなる。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
【0097】
次に、参照画像作成回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに、所定のフィルタ関数を使ってフィルタ処理を施す。これにより、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データをマルチ1次電子ビーム20の照射によって得られる像生成特性に合わせることができる。作成された参照画像の画素毎の画像データは比較回路108に出力される。比較回路108内に転送された参照画像データは、記憶装置52に格納される。
【0098】
次に、位置合わせ部57は、被検査画像となるフレーム画像31と、当該フレーム画像31に対応する参照画像とを読み出し、画素より小さいサブ画素単位で、両画像を位置合わせする。例えば、最小2乗法で位置合わせを行えばよい。
【0099】
そして、比較部58は、ステージ105上に載置される基板101の2次電子画像を所定の画像と比較する。具体的には、比較部58は、フレーム画像31と参照画像とを画素毎に比較する。比較部58は、所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、若しくはメモリ118に出力される、或いはプリンタ119より出力されればよい。
【0100】
なお、上述したダイ-データベース検査の他、同一基板上の異なる場所の同一パターンを撮像した測定画像データ同士を比較するダイ-ダイ検査を行っても好適である。或いは、自己の測定画像だけを用いて検査しても構わない。
【0101】
以上のように、実施の形態1によれば、マルチ1次電子ビーム20の軌道から分離されたマルチ2次電子ビーム300の軌道上の偏向器218の中心位置付近にマルチ2次電子ビーム300の中間像面を形成するように偏向器218よりも上流側の電磁レンズ217を調整できる。
【0102】
実施の形態2.
実施の形態1では、特徴量として、入力値3差分d(n)を用いる場合について説明したが、これに限るものではない。実施の形態2では、特徴量として、他のパラメータを用いる場合について説明する。検査装置100の構成は図1と同様である。また、以下、特に説明する点以外の内容は、実施の形態1と同様である。
【0103】
図13は、実施の形態2におけるビーム調整回路内の構成の一例を示すブロック図である。図13において、ビーム調整回路134内には、ビーム選択部60、入力値1設定部62、入力値2取得部64、入力値3設定部66、ビーム径抽出部70、長径短径比算出部71、ビームサイズ抽出部73、差分ΔB(n)算出部75、判定部77、判定部79、組み合わせ決定部81、及びレンズ設定処理部83が配置される。ビーム選択部60、入力値1設定部62、入力値2取得部64、入力値3設定部66、ビーム径抽出部70、長径短径比算出部71、ビームサイズ抽出部73、差分ΔB(n)算出部75、判定部77、判定部79、組み合わせ決定部81、及びレンズ設定処理部83といった各「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。ビーム選択部60、入力値1設定部62、入力値2取得部64、入力値3設定部66、ビーム径抽出部70、長径短径比算出部71、ビームサイズ抽出部73、差分ΔB(n)算出部75、判定部77、判定部79、組み合わせ決定部81、及びレンズ設定処理部83に入出力される情報および演算中の情報はメモリ118若しくはビーム調整回路134内の図示しないメモリにその都度格納される。
【0104】
図14は、実施の形態2におけるマルチ電子ビーム調整方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。図14において、実施の形態2におけるマルチ電子ビーム調整方法は、ビーム選択工程(S102)と、レンズ入力値1設定工程(S104)と、対物レンズ2フォーカス調整工程(S106)と、レンズ入力値3設定工程(S108)と、ビーム径抽出工程(S111)と、長径短径比算出(S113)と、ビームサイズ抽出工程(S115)と、レンズ入力値1設定工程(S124)と、対物レンズ2フォーカス調整工程(S126)と、レンズ入力値3設定工程(S128)と、ビーム径抽出工程(S131)と、長径短径比算出工程(S133)と、ビームサイズ抽出工程(S135)と、差分ΔB(n)算出工程(S141)と、判定工程(S143)と、判定工程(S145)と、組み合わせ決定工程(S151)と、対物レンズ1,2設定工程(S152)と、カメラ搬出/検出器設置工程(S154)と、2次ビームレンズ調整工程(S156)と、いう一連の工程を実施する。
【0105】
ビーム選択工程(S102)と、レンズ入力値1設定工程(S104)と、対物レンズ2フォーカス調整工程(S106)と、レンズ入力値3設定工程(S108)と、の各工程の内容は実施の形態1と同様である。
【0106】
ビーム径抽出工程(S111)として、ビーム径抽出部70は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせにおいて、E×B分離器214によりマルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離され、偏向器218で偏向され、電磁レンズ224で集束方向に屈折させられたマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301をカメラ226で撮像することによりマルチ2次電子ビーム300の2次電子ビーム301の複数の形状を取得する。具体的には、ビーム径抽出部70は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせにおいて、電磁レンズ224の入力値3毎に、カメラ226で撮像された2次電子画像からマルチ2次電子ビームの代表2次電子ビームの長径と短径とを抽出する。
【0107】
長径短径比算出工程(S113)として、長径短径比算出部71は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせにおいて、電磁レンズ224の入力値3毎に、マルチ2次電子ビームの代表2次電子ビームの長径と短径との比を算出し、抽出する。ここでは、長径と短径との比を算出しているがこれに限るものではない。例えば、長径と短径との差分を算出し、抽出しても良い。
【0108】
設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせにおいて、ある電磁レンズ224が入力値3で励磁された際の代表ビームの長径短径比が抽出された後、レンズ入力値3設定工程(S108)に戻り、入力値3を変えた状態でレンズ入力値3設定工程(S108)から長径短径比算出工程(S113)までの各工程を繰り返す。
【0109】
ビームサイズ抽出工程(S115)として、ビームサイズ抽出部73は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせにおいて、取得されたマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301の複数の形状に基づいて、マルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301に関する特徴量を抽出する。実施の形態2では、特徴量として、電磁レンズ224の入力値3を可変に設定する場合に、カメラ226で撮像されるマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301の真円性が他の入力値3より高くなる入力値3で撮像されたマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301のビーム径が用いられる。具体的には、以下のように動作する。実施の形態2では、ビームサイズ抽出部73は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせにおいて、可変に設定された入力値3のうち、長径と短径との比が1に最も近くなる入力値3におけるマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301のビーム径B(0)を特徴量として抽出する。或いは、長径と短径との差分が最小となる入力値3におけるマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301のビーム径B(0)を特徴量として抽出しても良い。
【0110】
図15は、実施の形態2における特徴量の抽出手法を説明するための図である。図15の上部には、図11と同様、電磁レンズ217による代表2次電子ビーム301のフォーカス位置を示す。ここでは、偏向器218に対してオーバーフォーカスした状態、ジャストフォーカスした状態、及びアンダーフォーカスした状態を示す。図15の中央部には、オーバーフォーカスした状態、ジャストフォーカスした状態、及びアンダーフォーカスした状態の各状態において、それぞれ電磁レンズ224の入力値3を可変に設定した場合にそれぞれカメラ226で撮像されるビーム形状を示す。図15の中央部において、横軸に電磁レンズ217の入力値1を示し、縦軸に電磁レンズ224の入力値3を示す。図15の下部のグラフは、横軸に電磁レンズ217の入力値1を示し、縦軸に真円性が他の入力値3より高くなる入力値3で撮像されたマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301のビーム径を示す。n=0の入力値1では、例えば、偏向器218にオーバーフォーカスした状態で得られる特徴量を示す。偏向器218にオーバーフォーカスした状態で電磁レンズ224の入力値3を可変に設定することで、図15に示すように代表2次電子ビーム301の複数のビーム形状をカメラ226で撮像できる。電磁レンズ224の励磁値を変えることで、図15に示すように、代表2次電子ビーム301の形状が扁平する。ビームサイズ抽出部73は、かかる複数の複数のビーム形状のうち、長径と短径との比が1に最も近くなる略真円のビーム形状のビーム径B(0)を抽出する。理想的な真円であれば、ビーム径は一意に求められるが、そうでない場合、ビーム径として、長径と短径の一方を用いる。例えば、長径を用いる。
【0111】
レンズ入力値1設定工程(S124)と、対物レンズ2フォーカス調整工程(S126)と、レンズ入力値3設定工程(S128)と、の各工程の内容は、実施の形態1と同様である。
【0112】
ビーム径抽出工程(S131)として、ビーム径抽出部70は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせ毎に、E×B分離器214によりマルチ1次電子ビーム20の軌道上から分離され、偏向器218で偏向され、電磁レンズ224で集束方向に屈折させられたマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301をカメラ226で撮像することによりマルチ2次電子ビーム300の2次電子ビーム301の複数の形状を取得する。具体的には、ビーム径抽出部70は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせ毎に、かつ、電磁レンズ224の入力値3毎に、カメラ226で撮像された2次電子画像からマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301の長径と短径とを抽出する。
【0113】
長径短径比算出(S133)として、長径短径比算出部71は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせ毎に、かつ、電磁レンズ224の入力値3毎に、マルチ2次電子ビームの代表2次電子ビームの長径と短径との比を算出し、抽出する。ここでは、長径と短径との比を算出しているがこれに限るものではない。例えば、長径と短径との差分を算出し、抽出しても良い。
【0114】
設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせ毎に、ある電磁レンズ224が入力値3で励磁された際の代表ビームの長径短径比が抽出された後、レンズ入力値3設定工程(S128)に戻り、入力値3を変えた状態でレンズ入力値3設定工程(S128)から長径短径比算出工程(S133)までの各工程を繰り返す。
【0115】
ビームサイズ抽出工程(S135)として、ビームサイズ抽出部73は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせ毎に、取得されたマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301の複数の形状に基づいて、マルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301に関する特徴量を抽出する。具体的には、以下のように動作する。実施の形態2では、ビームサイズ抽出部73は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせ毎に、可変に設定された入力値3のうち、長径と短径との比が1に最も近くなる入力値3におけるマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301のビーム径B(n)を特徴量として抽出する。或いは、長径と短径との差分が最小となる入力値3におけるマルチ2次電子ビーム300の代表2次電子ビーム301のビーム径B(n)を特徴量として抽出しても良い。
【0116】
差分ΔB(n)算出工程(S141)として、差分ΔB(n)算出部75は、得られた差分B(n)と差分B(n-1)との差分ΔB(n)を算出する。
【0117】
判定工程(S143)として、判定部77は、nが2以上かどうかを判定する。2以上の場合、判定工程(S145)に進む。nが2以上ではない場合(n=1の場合)、レンズ入力値1設定工程(S124)に戻り、nが2以上になるまで、レンズ入力値1設定工程(S124)から判定工程(S143)までの各工程を繰り返す。
【0118】
判定工程(S145)として、判定部79は、差分ΔB(n)と差分ΔB(n-1)とを乗じた値ΔB(n)・ΔB(n-1)が負の値かどうかを判定する。値ΔB(n)・ΔB(n-1)が負の値ではない場合、レンズ入力値1設定工程(S124)に戻り、値ΔB(n)・ΔB(n-1)が負の値になるまで、レンズ入力値1設定工程(S124)から判定工程(S145)までの各工程を繰り返す。
【0119】
ΔB(n)・ΔB(n-1)が正の値の場合、図15の下図に示すグラフにおいて、縦軸のビーム径B(n)が順に小さくなる、或いは順に大きくなる状態を示す。ΔB(n)・ΔB(n-1)が負の値になった時点でビーム径B(n)が変曲点(ここでは最小値)を取ることになる。
【0120】
組み合わせ決定工程(S151)として、組み合わせ決定部81は、設定された電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせ毎に抽出されたマルチ2次電子ビーム300に関する複数の特徴量を用いて所定の条件に合う特徴量が得られる電磁レンズ217の入力値1と調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせを決定する。具体的には、以下のように動作する。
【0121】
まず、電磁レンズ217の入力値1を変えると、カメラ226で撮像される代表2次電子ビーム301の複数の形状の変化の仕方が異なる。図15に示すように、電磁レンズ217による代表2次電子ビーム301の結像位置が偏向器218に対して、オーバーフォーカスの場合、ジャストフォーカスの場合、及びアンダーフォーカスの場合について説明する。オーバーフォーカス及びアンダーフォーカスの場合には、ジャストフォーカスの場合と比べて、略真円のビーム形状のビーム径が大きくなる。よって、かかるビーム径B(n)が小さい位置が電磁レンズ217による代表2次電子ビーム301のジャストフォーカス位置になる。
【0122】
よって、組み合わせ決定部81は、抽出された複数のビーム径B(n)の最小値から所定の範囲(±ΔB)内のビーム径が得られる電磁レンズ217の入力値1と電磁レンズ207の入力値2の組み合わせを決定する。マージンΔBとして、例えば、マルチ2次電子ビーム300がカメラ位置で分離する範囲に設定すると好適である。
【0123】
なお、図15の下部に示すグラフを得るためにプロットした複数のビーム径B(n)の値のうち1つがちょうどグラフの最小値を示すとは限らない。よって、プロットした複数のビーム径B(n)を近似したグラフの最小値を示すときの電磁レンズ217の入力値1と、かかる電磁レンズ217の入力値1にてマルチ1次電子ビーム300を基板101上にフォーカスするように調整された電磁レンズ207の入力値2の組み合わせに決定するとなお良い。
【0124】
対物レンズ1,2設定工程(S152)として、レンズ設定処理部83は、決定された組み合わせの入力値1を電磁レンズ217に設定し、決定された組み合わせの入力値2を電磁レンズ207に設定する。
【0125】
カメラ搬出/検出器設置工程(S154)と、2次ビームレンズ調整工程(S156)と、の各工程の内容は、実施の形態1と同様である。
【0126】
以上のように、マルチ電子ビームの調整方法により電磁レンズ217,207(及び電磁レンズ224)を調整する。そして、マルチ電子ビームの調整方法により調整された電磁レンズ217,207、及び電磁レンズ224が搭載された検査装置100を使って、検査処理を実施する。
【0127】
検査処理の内容は、実施の形態1と同様である。
【0128】
以上のように、実施の形態2によれば、真円により近いビーム形状が得らえる状態でのビーム径を特徴量として用いて所定の条件下で入力値1,2の組み合わせを決定することで、マルチ1次電子ビーム20の軌道から分離されたマルチ2次電子ビーム300の軌道上の偏向器218の中心位置付近にマルチ2次電子ビーム300の中間像面を形成するように偏向器218よりも上流側の電磁レンズ217を調整できる。
【0129】
以上の説明において、一連の「~回路」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。例えば、位置回路107、比較回路108、及び参照画像作成回路112等は、上述した少なくとも1つの処理回路で構成されても良い。
【0130】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0131】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0132】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチ電子ビームの調整方法及びマルチ電子ビーム検査装置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0133】
10 1次電子ビーム
11 大開口
13 小開口
20 マルチ1次電子ビーム
21 代表1次電子ビーム
22 穴
29 サブ照射領域
30 フレーム領域
31 フレーム画像
32 ストライプ領域
33 矩形領域
34 照射領域
60 ビーム選択部
62 入力値1設定部
64 入力値2取得部
66 入力値3設定部
68 偏向方向確認処理部
70 ビーム径抽出部
71 長径短径比算出部
72 入力値3差分算出部
73 ビームサイズ抽出部
74 差分Δd(n)算出部
75 差分ΔB(n)算出部
76,77 判定部
78,79 判定部
80,81 組み合わせ決定部
82,83 レンズ設定処理部
100 検査装置
101 基板
102 電子ビームカラム
103 検査室
105 ステージ
106 検出回路
107 位置回路
108 比較回路
109 記憶装置
110 制御計算機
111 マーク
112 参照画像作成回路
114 ステージ制御回路
117 モニタ
118 メモリ
119 プリンタ
120 バス
122 レーザ測長システム
123 チップパターンメモリ
124 レンズ制御回路
126 ブランキング制御回路
128 偏向制御回路
130 リターディング制御回路
132 E×B分離器制御回路
134 ビーム調整回路
142 ステージ駆動機構
144,146,147,148 DACアンプ
150 画像取得機構
151 1次電子光学系
152 2次電子光学系
160 制御系回路
200 電子ビーム
201 電子銃
202,205,217,207 電磁レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
204 ビーム選択アパーチャ基板
208 偏向器
209 偏向器
212 一括偏向器
213 制限アパーチャ基板
214 E×B分離器
215 駆動回路
216 ミラー
218 偏向器
219 検出器
222 マルチ検出器
223 検出器アパーチャアレイ基板
224 電磁レンズ
225 偏向器
226 カメラ
300 マルチ2次電子ビーム
330 検査領域
332 チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15