(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045008
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】搬送装置、乾燥装置、画像形成装置及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/36 20060101AFI20240326BHJP
B41J 11/44 20060101ALI20240326BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B65H5/36
B41J11/44
B41J2/01 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116749
(22)【出願日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2022149225
(32)【優先日】2022-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】浅田 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】野沢 健二
(72)【発明者】
【氏名】川道 源一郎
(72)【発明者】
【氏名】関 貴之
(72)【発明者】
【氏名】神原 一暁
(72)【発明者】
【氏名】飛彈 竜作
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
3F101
【Fターム(参考)】
2C056FA13
2C056HA29
2C056HA32
2C058AB04
2C058AC07
2C058AE02
2C058AF27
2C058AF45
2C058AF47
3F101FA01
3F101FB00
3F101FC11
3F101FE02
3F101FE11
3F101LA01
3F101LB03
(57)【要約】
【課題】つなぎ目を有する搬送部材の表面とガイド部材の先端との間隔を小さくする。
【解決手段】つなぎ目Jを有する搬送面18aに搬送対象物を保持又は載置して搬送する搬送部材18と、搬送面18aに接近するように配置され搬送部材18からあるいは搬送部材18へ搬送対象物を案内するガイド部材29と、搬送面18aに接触する回転体40を備え、ガイド部材29は、回転体40がつなぎ目Jに接触した際の変位に連動して搬送面18aに対して交差する方向へ変位する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
つなぎ目を有する搬送面に搬送対象物を保持又は載置して搬送する搬送部材と、
前記搬送面に接近するように配置され前記搬送部材からあるいは前記搬送部材へ前記搬送対象物を案内するガイド部材と、
前記搬送面に接触する回転体を備え、
前記ガイド部材は、前記回転体が前記つなぎ目に接触した際の変位に連動して前記搬送面に対して交差する方向へ変位することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記つなぎ目は、前記搬送面から突出する部分を有し、
前記ガイド部材は、前記回転体が前記突出する部分に接触した際の変位に連動して前記搬送面に対して離間する方向へ変位する請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、支軸を中心に揺動して前記搬送面に対して変位可能に構成される請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送部材は、支持ローラに掛け渡される搬送ベルトであり、
前記搬送ベルトに接近して配置される前記ガイド部材の先端は、前記支持ローラの回転中心と前記回転体の回転中心とを通る直線上に配置される請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記回転体は、前記搬送対象物の搬送方向へ複数並んで配置される請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記搬送部材は、第一の搬送部材と、前記第一の搬送部材よりも前記搬送対象物の搬送方向下流側に配置される第二の搬送部材とを有し、
前記ガイド部材は、前記第一の搬送部材と前記第二の搬送部材との間において、前記第一の搬送部材から前記第二の搬送部材へ前記搬送対象物を案内する請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記第一の搬送部材は、一回目の乾燥処理が行われる前記搬送対象物を搬送し、
前記第二の搬送部材は、二回目の乾燥処理が行われる前記搬送対象物を搬送する請求項6に記載の搬送装置。
【請求項8】
搬送対象物を搬送する請求項1又は2に記載の搬送装置と、前記搬送対象物を乾燥処理する乾燥手段とを備えることを特徴とする乾燥装置。
【請求項9】
シートに画像を形成する画像形成部と、前記シートを搬送する請求項1又は2に記載の搬送装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
シートに液体を吐出する液体吐出部と、前記シートを搬送する請求項1又は2に記載の搬送装置を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、乾燥装置、画像形成装置及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機又はプリンタなどの画像形成装置においては、用紙を搬送する搬送装置が設けられている。
【0003】
斯かる搬送装置として、表面に用紙を保持して搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトからあるいは搬送ベルトへ用紙を案内するガイド部材とを備えるものがある(例えば特許文献1:特開2014-102286号公報参照)。
【0004】
一般的に、ガイド部材は、その先端が搬送ベルトの表面に対して非接触に配置されるところ、ガイド部材の先端と搬送ベルトの表面との間隔を大きくし過ぎると、ガイド部材と搬送ベルトとの間で用紙を良好に受け渡しできなくなる虞がある。そのため、ガイド部材の先端と搬送ベルトの表面との間隔は適切に管理されている。
【0005】
ところで、複数の支持ローラに掛け渡される無端状の搬送ベルトには、部品の交換作業又はメンテナンス作業が行いやすいように、帯状のベルトの両端をつないで無端状にしたものがある。このような搬送ベルトの場合、つなぎ目があるため、つなぎ目の部分において搬送ベルトの形状が不均一となる。
【0006】
例えば、つなぎ目の部分においてベルト表面が突出する場合は、ガイド部材の先端が突出するつなぎ目の部分に対して干渉しないように、ガイド部材の先端とベルト表面との間隔を大きめに設定する必要がある。しかしながら、その場合、特につなぎ目以外の部分においてガイド部材と搬送ベルトとの間隔が大きくなるため、ガイド部材と搬送ベルトとの間に用紙が入り込み、紙詰まりが生じたり、搬送不良が生じたりする虞がある。反対に、つなぎ目の部分が凹形状となる場合は、つなぎ目の部分においてガイド部材と搬送ベルトとの間隔が大きくなるため、ガイド部材と搬送ベルトとの間に用紙が入り込む問題が生じ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明においては、つなぎ目を有する搬送ベルトなどの搬送部材であっても、その搬送部材の表面とガイド部材の先端との間隔を小さくできるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る搬送装置は、つなぎ目を有する搬送面に搬送対象物を保持又は載置して搬送する搬送部材と、前記搬送面に接近するように配置され前記搬送部材からあるいは前記搬送部材へ前記搬送対象物を案内するガイド部材と、前記搬送面に接触する回転体を備え、前記ガイド部材は、前記回転体が前記つなぎ目に接触した際の変位に連動して前記搬送面に対して交差する方向へ変位することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、つなぎ目を有する搬送部材であっても、搬送部材の表面とガイド部材の先端との間隔を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態であるインクジェット式画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】本発明に係る液体吐出ユニットの平面図である。
【
図3】本実施形態に係る乾燥装置の全体構成を示す図である。
【
図4】本発明に係る紫外線照射装置の斜視図である。
【
図5】本発明に係る搬送ベルトのつなぎ目の部分を示す平面図である。
【
図6】つなぎ目を有するベルトとこれに接近して配置されるガイド部材との位置関係を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る乾燥装置が備えるガイド部材及びその周辺部の構成を示す斜視図である。
【
図8】本発明に係るガイド部材をその長手方向から見た断面図である。
【
図9】本発明に係るガイド部材の長手方向一端側の構成を示す平面図である。
【
図10】回転体がつなぎ目以外の部分に接触している状態を示す図である。
【
図11】回転体がつなぎ目の部分に接触した状態を示す図である。
【
図12】ガイド部材の好ましい先端の位置を示す図である。
【
図14】つなぎ目の部分が最初の回転体に接触した状態を示す図である。
【
図15】つなぎ目の部分が次の回転体に接触した状態を示す図である。
【
図16】ガイド部材の先端が下流側搬送ベルトに対して接近離間する例を示す図である。
【
図17】本発明を適用可能な他の乾燥装置の構成を示す図である。
【
図18】本発明を適用可能なさらに別の乾燥装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、インクジェット式の画像形成装置に搭載される搬送装置に本発明を適用した場合を例に説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品などの構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0012】
まず、
図1に基づき、本実施形態に係るインクジェット式画像形成装置の全体構成について説明する。
【0013】
図1に示されるインクジェット式画像形成装置100は、シート供給部1と、前処理部2と、画像形成部3と、乾燥部4と、表裏反転部5と、シート排出部6とを備えている。
【0014】
シート供給部1は、画像が形成される記録媒体としてのシートを供給する部分であり、複数のシートSを収容可能な供給トレイ11と、供給トレイ11からシートSを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12を備えている。給送装置12によって送り出されたシートSは、前処理部2へ供給される。
【0015】
前処理部2は、シート供給部1から供給されたシートSに処理液を塗布する部分であり、処理液を塗布する処理液塗布装置13を備えている。処理液は、例えば、インクを凝集させる機能を有する液などであり、インクのにじみ防止や浸透補助などの画質向上を目的として、処理液塗布装置13によって画像形成前のシートSに塗布される。処理液が塗布されたシートSは、画像形成部3へ供給される。
【0016】
画像形成部3は、供給されたシートSに対して画像を形成する部分である。具体的に、画像形成部3は、シートSを外周面に担持して回転する第一の担持回転体であるドラム14と、ドラム14上に担持されるシートSに対して液体のインクを吐出する液体吐出部としての複数の液体吐出ユニット15C,15M,15Y,15Kと、前処理部2から供給されたシートSをドラム14へ渡す第二の担持回転体としての渡し胴16と、ドラム14から後述の乾燥装置30が備える上流側搬送ベルト18へシートSを渡す第三の担持回転体としての受け渡し胴17を備えている。
図1に示される例においては、ドラム14の回転方向(シートSの搬送方向)の上流側から順に、シアンインク用の液体吐出ユニット15C、マゼンタインク用の液体吐出ユニット15M、イエローインク用の液体吐出ユニット15Y、ブラックインク用の液体吐出ユニット15Kが配置されている。なお、各液体吐出ユニット15C,15M,15Y,15Kの配置は、
図1に示される順に限定されるものではなく、任意の順番でもよい。また、必要に応じて、白色、金色、銀色などの特色のインクを吐出する液体吐出ユニットを追加してもよい。
【0017】
前処理部2から画像形成部3へシートSが供給されると、渡し胴16が有する把持手段としてのシートグリッパによってシートSの先端が把持され、渡し胴16の回転に伴ってシートSが搬送される。そして、シートSは、渡し胴16とドラム14とが対向する位置においてドラム14へ受け渡される。ドラム14の外周面には、渡し胴16と同じように把持手段としてのシートグリッパが設けられており、このシートグリッパによってシートSの先端が把持される。また、ドラム14の外周面には、複数の吸引孔が分散するように形成されており、吸引手段によって所要の吸引孔からドラム14内へ吸い込まれる気流を発生させることができる。これにより、シートSは、ドラム14の外周面に吸着されて担持される。そして、シートSは、シートグリッパと気流の吸着作用によりドラム14の外周面に担持されながら、ドラム14の回転に伴って搬送される。
【0018】
その後、ドラム14上のシートSが各液体吐出ユニット15C,15M,15Y,15Kとの対向位置に搬送されると、各液体吐出ユニット15C,15M,15Y,15KからシートSへインクが吐出される。各液体吐出ユニット15C,15M,15Y,15Kは、例えば、
図2に示されるようなフルライン型ヘッドを含むヘッドモジュール20を有している。詳しくは、ヘッドモジュール20は、ベース部21と、ベース部21上に互い違いに設けられた複数の液体吐出ヘッド22を有している。複数の液体吐出ヘッド22は、シート搬送方向Aとは交差するシート幅方向(
図2における横方向)へ配列された複数のノズル23から成る複数のノズル列を有している。
【0019】
図1に示されるように、シートSが各液体吐出ユニット15C,15M,15Y,15Kとの対向位置に搬送されると、画像情報に基づく駆動信号によって各液体吐出ユニット15C,15M,15Y,15Kの吐出駆動が制御され、各液体吐出ユニット15C,15M,15Y,15KからシートSへインクが吐出される。これにより、シートS上に画像情報に応じた画像が形成される。そして、シートSは、ドラム14から受け渡し胴17に渡された後、受け渡し胴17から上流側搬送ベルト18へ渡される。
【0020】
乾燥部4は、シートSを加熱してシートS上のインクを乾燥させる乾燥装置30を備えている。乾燥装置30は、上記受け渡し胴17上に担持されるシートSを加熱する第一の加熱部31と、第一の加熱部31による加熱後にシートSを再度加熱する第二の加熱部32と、受け渡し胴17からシートSを渡される第一の搬送部材としての上流側搬送ベルト18と、上流側搬送ベルト18よりもシート搬送方向の下流側でシートSを搬送する第二の搬送部材としての下流側搬送ベルト19を備えている。第一の加熱部31及び第二の加熱部32は、シートSを加熱してインクの乾燥処理を行う乾燥手段であり、上流側搬送ベルト18及び下流側搬送ベルト19は、乾燥装置30においてシートSを搬送する搬送装置10を構成する。
【0021】
シートSが受け渡し胴17上に担持されると、第一の加熱部31によってシートSが加熱される。そして、シートSは、受け渡し胴17上で加熱されながら、受け渡し胴17と上流側搬送ベルト18との対向位置において受け渡し胴17から上流側搬送ベルト18へ渡される。さらに、シートSは、上流側搬送ベルト18から下流側搬送ベルト19へ渡される。そして、下流側搬送ベルト19の搬送に伴ってシートSが第二の加熱部32との対向位置に到達すると、第二の加熱部32によってシートSが加熱される。このように、第一の加熱部31と第二の加熱部32によってシートSが加熱されることにより、シートS上のインクの乾燥が促進される。
【0022】
表裏反転部5は、両面印刷を行う場合にシートSを表裏反転させて再度画像形成部3へ搬送する部分である。具体的に、表裏反転部5は、シートSをスイッチバック方式で前後逆向きに搬送するスイッチバック搬送部24と、スイッチバックされたシートSを渡し胴16よりもシート搬送方向の上流側へ搬送する両面搬送部25を備えている。シートSの両面に画像を形成する場合は、画像形成部3においてシートSの表側の面に画像が形成された後、シートSが、乾燥部4における乾燥処理を経て表裏反転部5へ搬送され、スイッチバック搬送部24によって前後逆向きに搬送される。そして、シートSは、両面搬送部25を通って渡し胴16の上流側へ搬送される。これにより、シートSは、表裏反転された状態で画像形成部3へ供給される。そして、画像形成部3において、シートSの裏側の面に画像が形成された後、シートSは、乾燥部4による乾燥処理を経て、表裏反転部5からシート排出部6へ搬送される。
【0023】
シート排出部6は、片面又は両面に画像が形成されたシートSが排出される部分であり、排出されたシートSを積載する排出トレイ26を備えている。表裏反転部5からシート排出部6へシートSが搬送されると、シートSは排出トレイ26上へ順次積み重ねられて載置される。
【0024】
次に、
図3に基づき、本実施形態に係る乾燥装置30の全体構成について説明する。
【0025】
図3に示されるように、乾燥装置30が備える第一の加熱部31は、温風発生装置33を有している。温風発生装置33は、受け渡し胴17の外周面に対向するように非接触に配置されている。また、温風発生装置33には、熱気を発生させるヒータと、発生した熱気を温風として受け渡し胴17に向かって吹き出すノズルが設けられている。ノズルから受け渡し胴17の外周面に温風が吹き付けられることにより、受け渡し胴17の外周面が温められる。これにより、受け渡し胴17上のシートSが加熱され、インクの乾燥処理が行われる。
【0026】
また、温風発生装置33は、搭載されている温度検知センサの検知温度に基づいて温風の温度を常温から100℃程度までの間で調整することができる。温風の温度設定は、シートSに付着する液体(インク)の量、シートの種類(材質)などの情報に応じて任意に設定すればよい。また、インクなどの液体が付与されることによるシートの波打ち(コックリング)を抑制する観点からは、ヒータをOFFにするなどして低温の温風を吹き付けることが好ましい。
【0027】
図3に示されるように、乾燥装置30が備える第二の加熱部32は、シート搬送方向Aへ並ぶ複数の紫外線照射装置34を有している。各紫外線照射装置34は、下流側搬送ベルト19の上方に対向して配置されており、下流側搬送ベルト19によって搬送されるシートSに対して紫外線を照射して加熱する。
【0028】
図4に示されるように、紫外線照射装置34は、粒状のUV-LED発光素子340が複数配置される照射面34aを有している。各UV-LED発光素子340が同一の照度で発光するため、照射面34aが全体として均一に発光する状態となる。紫外線光(UV光)としては、例えば、ピーク波長が395nmで、波長分布は半値全幅が約15nmのものが用いられる。ただし、これに限定されるものではない。
【0029】
図3に示されるように、乾燥装置30は、上流側搬送ベルト18、下流側搬送ベルト19などを含む搬送装置10を備えている。上流側搬送ベルト18は、複数の支持ローラ27に無端状に掛け渡されて支持されている。複数の支持ローラ27のうちの少なくとも1つが駆動ローラとして機能することにより、上流側搬送ベルト18が回転(周回移動)する。本実施形態においては、上流側搬送ベルト18が2本の支持ローラ27によって支持されているが、上流側搬送ベルト18を支持する支持ローラ27の数は2本以上であってもよい。また、本実施形態においては、上流側搬送ベルト18として、シートSを保持する搬送面(外周面)18aにおいて多数の孔が設けられたメッシュベルト又は平織ベルトを用いている。なお、ここでいう「搬送面」とは、搬送対象物であるシートを保持又は載置して搬送する面状の搬送路を形成する部分を意味し、シートに接触する部分が必ずしも面である場合に限らず、網目状などであってもよい。上流側搬送ベルト18の内側には、吸引手段としてのブロワ又はファンなどを有する吸引チャンバ35が配置されている。これにより、吸引チャンバ35が駆動して、上流側搬送ベルト18の搬送面18aに設けられる多数の孔からエアが吸引されると、吸引されるエアによってシートSが搬送面18aに吸着される。そして、シートSが吸着された状態で上流側搬送ベルト18が回転することにより、シートSが下流側へ搬送される。
【0030】
上流側搬送ベルト18よりもシート搬送方向の下流側に配置される下流側搬送ベルト19は、基本的に上流側搬送ベルト18と同じように構成されている。すなわち、下流側搬送ベルト19は、複数の支持ローラ28に無端状に掛け渡され、これらの支持ローラ28のうちの少なくとも1つが駆動ローラとして機能することにより回転(周回移動)する。本実施形態においては、下流側搬送ベルト19が2本の支持ローラ28によって支持されているが、下流側搬送ベルト19を支持する支持ローラ28の数は2本以上であってもよい。また、下流側搬送ベルト19の内側にも、吸引チャンバ36が配置されている。吸引チャンバ36が駆動し、下流側搬送ベルト19の搬送面19aに設けられる多数の孔からエアが吸引されると、吸引されるエアによってシートSが搬送面19aに吸着される。そして、シートSが吸着された状態で下流側搬送ベルト19が回転することにより、シートSが下流側へ搬送される。
【0031】
上流側搬送ベルト18及び下流側搬送ベルト19に対してシートSを吸着させる機構は、上記のような気流を利用するものに限らず、静電気を利用してシートをベルトに吸着させる静電吸着機構であってもよい。また、各搬送ベルト18,19にグリッパなどの把持部を設け、その把持部によってシートを把持するようにしてもよい。
【0032】
図3に示されるように、上流側搬送ベルト18と下流側搬送ベルト19との間には、ガイド部材29が配置されている。すなわち、本実施形態に係る搬送装置10は、上流側搬送ベルト18と、下流側搬送ベルト19のほか、上流側搬送ベルト18から下流側搬送ベルト19へシートSを案内するガイド部材29を備えている。ガイド部材29は、上流側搬送ベルト18と下流側搬送ベルト19のそれぞれの搬送面18a,19aに対して接触しないように接近して配置されている。
【0033】
上記の如く構成された乾燥装置30は、次のように動作する。
【0034】
まず、受け渡し胴17上にシートSが担持されると、温風発生装置33によって温められた受け渡し胴17の熱がシートSに付与されることによりシートSが加熱される。これにより、シートS上のインクの乾燥が促進され、シートSに対する一回目の乾燥処理が行われる。そして、シートSは、受け渡し胴17上で加熱されながら上流側搬送ベルト18へ渡され、上流側搬送ベルト18によって搬送される。その後、シートSは、ガイド部材29を介して下流側搬送ベルト19へ案内され、下流側搬送ベルト19によって搬送される。下流側搬送ベルト19の搬送に伴ってシートSが各紫外線照射装置34との対向位置に到達すると、各紫外線照射装置34からシートSへ紫外線が照射され、シートSが加熱される。これにより、シートSに対する2回目の乾燥処理が行われる。
【0035】
このように、本実施形態に係る乾燥装置30においては、温風発生装置33によって温められた受け渡し胴17の熱によりシートSを加熱する一回目の乾燥処理が行われた後、各紫外線照射装置34からの紫外線によってシートSを加熱する二回目の乾燥処理が行われる。これにより、シートS上のインクの乾燥を効果的に行うことができる。
【0036】
また、本実施形態に係る乾燥装置30においては、二回目の乾燥処理を行うための加熱手段として紫外線照射装置34を用いているので、シートSの画像部(インクが付与された部分)のみを選択的に加熱できる。これにより、シートSの非画像部(インクが付与されていない部分)が必要以上に温度上昇することがなく、非画像部に含まれる水分の過度な蒸発を抑制できるので、シートSの波打ちを低減できる。
【0037】
シートSを加熱する手段としては、紫外線照射装置のほかに、IRランプなどの赤外線を照射して対象物を加熱する赤外線照射装置を用いてもよいが、乾燥処理後のシートの水分量を適度に保持する観点からは、赤外線照射装置よりも紫外線照射装置の方が好ましい。実際に、赤外線照射装置と紫外線照射装置を用いてシートを加熱し、加熱後のシートの表面温度を測定する試験を行ってみたところ、赤外線照射装置を用いた場合と紫外線照射装置を用いた場合とでは、乾燥処理後のシートの非画像部の温度に大きな違いがあった。一般的に、水性インクを乾燥させるには、シートの画像部の温度を90℃程度まで上昇させる必要があることから、本試験においては、赤外線照射装置を用いた場合も紫外線照射装置を用いた場合も画像部の温度が90℃になるように加熱した。その結果、赤外線照射装置を用いた場合は、シートの非画像部の温度が105℃となったのに対し、紫外線照射装置を用いた場合は、シートの非画像部の温度が45°となり、赤外線照射装置を用いた場合に比べて60℃低かった。また、非画像部の含水率を測定したところ、赤外線照射装置を用いた場合は、非画像部の含水率が6.1%から1.4%にまで低下したのに対して、紫外線照射装置を用いた場合は、非画像部の含水率が6.1%から2.9%の低下にとどまった。すなわち、紫外線照射装置を用いた場合は、赤外線照射装置を用いた場合に比べて、非画像部の含水率を高く保持できることを確認できた。この結果からも、乾燥処理後のシートの水分量を適度に保持するには、赤外線照射装置よりも紫外線照射装置が好ましいといえる。
【0038】
ところで、本実施形態に係る乾燥装置30においては、上流側搬送ベルト18及び下流側搬送ベルト19として、複数の支持ローラに無端状に掛け渡されるベルトを用いている。このような無端状のベルトとしては、つなぎ目がないシームレスベルトのほか、回転方向の一部においてつなぎ目があるベルトを用いることができる。特につなぎ目の部分で分離可能なタイプは、ベルト及びその他の部品の交換作業又はメンテナンス作業時にベルトを取り外しやすい利点がある。そのため、本実施形態においては、上流側搬送ベルト18及び下流側搬送ベルト19として、回転方向の一部においてつなぎ目を有し分離可能なベルトを用いている。
【0039】
具体的には、
図5に示されるように、ピンなどの連結部材91を用いてベルト90の両端90b,90cを連結し、ベルト90を無端状にしている。このようなベルト90の場合、ベルト90を複数の支持ローラに巻き付けた後にベルト90の両端90b,90cを連結すれば、簡単にベルト90を取り付けることができ、反対に、両端90b,90cの連結を解除すれば、簡単にベルト90を取り外すことができる。
図5においては、メッシュ状のベルトを用いた場合を例としているが、平ベルトなどであってもよい。また、ベルトの材料としては、フッ素系の材料又はシリコーン系の材料などの耐熱性を有するものが好ましい。
【0040】
上記のように、つなぎ目の部分において分離可能なベルトの場合、部品の交換作業又はメンテナンス作業に優れる利点がある。しかしながら、斯かるベルトにおいては、ガイド部材との関係において下記のような問題がある。
【0041】
図6は、つなぎ目Jを有するベルト90とこれに接近して配置されるガイド部材80との位置関係を示す図である。
【0042】
図6に示されるガイド部材80は、ベルト90によって搬送される搬送対象物を受け取って下流側へ案内するための部材である。このため、ガイド部材80の先端80aは、搬送対象物をベルト90から良好に受け取れるように、ベルト90の搬送面(外周面)90aに対して接近して配置されている。ここで、搬送対象物がシートなどの薄い部材である場合は、ガイド部材80とベルト90のとの間に搬送対象物(シート)が入り込まないように、ガイド部材80の先端80aとベルト90の搬送面90aとの間隔Dをなるべく小さくすることが好ましい。
【0043】
しかしながら、
図6に示されるように、つなぎ目Jを有するベルト90の場合は、そのつなぎ目Jにおいてベルト90の両端を連結する連結部材91が挿入されているため、つなぎ目Jの部分がその他の部分に比べて搬送面90aと交差する方向(ベルト90の外周面側)へ突出している。このため、ガイド部材80は、つなぎ目Jの部分と干渉しないように、搬送面90aに対する間隔Dを大きく確保して配置されなければならない。従って、つなぎ目を有するベルトは、つなぎ目を有しないシームレスベルトに比べて、ガイド部材の先端とベルトの搬送面との間隔を小さくしにくいといった課題がある。
【0044】
そこで、本実施形態においては、つなぎ目を有する搬送ベルトであっても、搬送ベルトの表面とガイド部材の先端との間隔を小さくできるよう、ガイド部材を次のような構成としている。以下、本発明の実施形態に係るガイド部材の構成について詳しく説明する。
【0045】
図7は、本実施形態に係る搬送装置10が備えるガイド部材29及びその周辺部の構成を示す斜視図である。
【0046】
図7に示されるように、ガイド部材29は、上流側搬送ベルト18又は下流側搬送ベルト19の幅方向に渡って伸びる板状の部材により構成されている。ガイド部材29は、上流側搬送ベルト18及び下流側搬送ベルト19の各搬送面18a,19a(
図7における各搬送ベルト18,19の上面)とほぼ同一面上に配置されるガイド面29bを有しており、シートSはこのガイド面29bに沿って上流側搬送ベルト18から下流側搬送ベルト19へ案内される。ここで、上記「上流側搬送ベルト18又は下流側搬送ベルト19の幅方向」とは、搬送ベルトの搬送面に沿ってシート搬送方向Aとは直交する方向を意味する。また、本実施形態においては、ガイド部材29が搬送ベルトの幅方向へ長手状に形成されているため、以下の説明において、ガイド部材29が搬送ベルトの幅方向へ伸びる方向をガイド部材29の「長手方向」と称する。
【0047】
ガイド部材29の長手方向の幅は、シートSが搬送される搬送領域Eの幅以上であって、上流側搬送ベルト18及び下流側搬送ベルト19の幅以下に設定されている。また、ガイド部材29の材質は、シートSに対する摺動抵抗が小さければ一般的な材質を適用可能である。例えば、ガイド部材29に用いられる材質として、SUS(ステンレス鋼)、シルバートップなどの電気亜鉛めっき鋼板、凹凸鋼板などが挙げられる。また、ガイド部材29にリブが設けられていてもよい。また、ガイド部材29の材質は、上流側搬送ベルト18又は下流側搬送ベルト19と同じ材質であることが好ましい。また、ガイド部材29の表面粗さ及び硬度も、上流側搬送ベルト18又は下流側搬送ベルト19と同程度の表面粗さ及び硬度であることが好ましい。
【0048】
図7に示されるように、ガイド部材29の長手方向両端側には、ガイド部材29のほか各搬送ベルト18,19及び各支持ローラ27,28などを支持する一対のフレーム部材70が設けられている。ガイド部材29は、各フレーム部材70に対して、
図7における矢印B方向へ揺動可能に取り付けられている。詳しくは、ガイド部材29の後端29c側に配置される支軸41を中心にガイド部材29が回転可能に支持されている。これにより、ガイド部材29の先端29a(後端29cとは反対側の端)は、上流側搬送ベルト18の搬送面18aに対して接近する方向及び離間する方向へ揺動可能に構成されている。
【0049】
また、ガイド部材29の長手方向両端には、それぞれ上流側搬送ベルト18の搬送面18aに接触する一対の回転体40が設けられている。各回転体40は、搬送されるシートSと接触しないように、シートSが搬送される搬送領域Eよりも外側に配置されている。また、各回転体40が上流側搬送ベルト18の搬送面18aに接触している状態においては、ガイド部材29の先端29aが上流側搬送ベルト18の搬送面18aに対して接近するように(非接触に)配置される。
【0050】
図8は、ガイド部材29をその長手方向から見た断面図である。
【0051】
図8に示されるように、ガイド部材29は、ガイド保持部材である可動ステー42に取り付けられ保持されている。可動ステー42は、ガイド部材29の揺動中心となる上記支軸41を有しており、支軸41を中心に可動ステー42が回転することにより、可動ステー42と一緒にガイド部材29が上流側搬送ベルト18の搬送面18aに対して交差する方向(
図8における矢印B方向)へ揺動する。また、可動ステー42は、支軸41を介して支持部材である固定ステー43に対し回転可能に取り付けられている。本実施形態においては、ガイド部材29及び可動ステー42が乾燥装置30の熱により長方向へ熱膨張しても支軸41が固定ステー43と干渉してガイド部材29の揺動を制限したり、部材が損傷したりしないように、支軸41が固定ステー43に対して軸方向に移動可能に(ガタを有するように)取り付けられている。固定ステー43は、フレーム部材70に対して可動しないように固定されている。
【0052】
また、可動ステー42には、上記回転体40を回転可能に保持する回転体保持部材44が取り付けられている。回転体40は、ガイド部材29の先端29aよりも上流側搬送ベルト18の方へ突出するように配置されている。このため、回転体40が上流側搬送ベルト18の搬送面18aに接触する状態においては、ガイド部材29の先端29aが搬送面18aに対して非接触に配置される。
【0053】
また、回転体保持部材44と固定ステー43との間には、付勢部材としてのバネ45が取り付けられている。バネ45は、回転体40を上流側搬送ベルト18の方へ付勢するように設けられている。これにより、回転体40は、上流側搬送ベルト18の搬送面18aに対して接触した状態で保持される。
【0054】
図9は、ガイド部材29の長手方向一端側の構成を示す平面図である。
【0055】
図9に示されるように、ガイド部材29の長手方向一端側には、ねじなどの固定部材46が挿入される孔部29dが設けられている。孔部29dは、
図9に示されるガイド部材29の長手方向一端側とは反対の端側(長手方向他端側)にも設けられいる。各孔部29d内に固定部材46が挿入されて可動ステー42に取り付けられることにより、ガイド部材29が可動ステー42に対して固定される。
【0056】
また、孔部29dは、ガイド面29bに沿ってガイド部材29の長手方向とは交差する方向(
図9における上下方向)に伸びる長孔により構成されている。このため、ガイド部材29を孔部29dが伸びる方向へ移動させると、ガイド部材29の固定位置を
図9における上方向又は下方向へ変更することができる。すなわち、ガイド部材29を上流側搬送ベルト18の搬送面18aに対して接近離間する方向へ移動させることができる。これにより、ガイド部材29の先端29aと搬送面18aとの間隔Dを調整することが可能である。
【0057】
続いて、
図10及び
図11に基づき、本実施形態に斯かるガイド部材29の動作について説明する。なお、
図10及び
図11において、下流側搬送ベルト19は、図示省略されている。
【0058】
図10に示されるように、ガイド部材29の先端29aが上流側搬送ベルト18の搬送面18aに対して接近するように配置される状態においては、回転体40がバネ45の付勢力によって搬送面18aに接触した状態で保持される。また、この状態から上流側搬送ベルト18が回転すると、これに伴って回転体40も回転する。この場合、回転体40は、その回転中心Pから外周面までの距離が一定の円形回転体であるので、回転体40が回転しても、ガイド部材29の先端29aと上流側搬送ベルト18の搬送面18aとの間隔は一定に維持される。
【0059】
その後、
図11に示されるように、上流側搬送ベルト18の回転に伴って、つなぎ目Jが回転体40との対向位置に到達すると、回転体40がつなぎ目Jの部分に接触することにより、ガイド部材29が
図11における矢印B1方向へ揺動する。すなわち、つなぎ目Jの部分が回転体40に接触すると、回転体40が搬送面18aに対して離間する方向に押し動かされるので、ガイド部材29の先端29aも回転体40の変位に連動して搬送面18aに対して離間する方向(矢印B1方向)へ揺動する。これにより、ガイド部材29の先端29aと支持ローラ27の外周面との間隔が大きくなり、つなぎ目Jが通過するのに必要な間隔が確保されるので、つなぎ目Jの部分がガイド部材29の先端29aに対して接触するのを回避できる。なお、ガイド部材29の先端29aが搬送面18aに対して離間する方向へ揺動した際、ガイド部材29の先端29aとつなぎ目Jの部分との間隔は、つなぎ目J以外の部分におけるガイド部材29の先端29aと搬送面18aとの間隔よりも大きくてもよいし、同じであってもよい。要するに、ガイド部材29の先端29aがつなぎ目Jの部分との接触を回避できるようにガイド部材29が揺動できればよい。
【0060】
その後、つなぎ目Jの部分が回転体40との対向位置を通過すると、ガイド部材29の先端29aが搬送面18aに対して接近する方向(
図11における矢印B1方向とは反対方向)へ揺動し、ガイド部材29及び回転体40が元の位置(
図10に示される位置)に戻される。
【0061】
上記のように、本実施形態においては、つなぎ目Jの部分と回転体40との接触による回転体40の変位に連動してガイド部材29が変位(揺動)することにより、つなぎ目Jの部分に対するガイド部材29の接触を回避できる。これにより、ガイド部材29の先端29aと搬送面18aとの間隔を、ガイド部材29とつなぎ目Jの部分との干渉を考慮して大きめに設定しなくてもよいので、間隔を小さく設定できるようになる。従って、本実施形態の構成によれば、つなぎ目を有する搬送ベルトであっても、搬送ベルトの表面とガイド部材の先端との間隔を小さくすることができ、ガイド部材と搬送ベルトとの間へのシートの入り込みを抑制できるようになる。これにより、ガイド部材によるシートの案内を円滑かつ確実に行えるようになる。
【0062】
また、本実施形態においては、ガイド部材29が支軸41を中心に揺動して搬送面18aに対して接近離間するように構成されているため、ガイド部材29が搬送面18aに対して直線状にスライドして接近離間する構成に比べて、ガイド部材29の後端29c側の変位を低減できる。このため、本実施形態においては、ガイド部材29(後端29c)を下流側搬送ベルト19の搬送面19aに接近させて配置でき、ガイド部材29と下流側搬送ベルト19との間でのシートの受け渡しを円滑かつ確実に行うことができる。
【0063】
なお、本発明は、ガイド部材が搬送ベルトの搬送面に対して直線状にスライドして接近離間する構成を除外するものではない。ガイド部材の後端に接近して配置される部材が無い場合は、その部材とガイド部材の後端との干渉を考慮しなくてもよいので、ガイド部材を直線状にスライドさせる構成を採用することも可能である。一方、本実施形態のようにガイド部材29が上流側搬送ベルト18と下流側搬送ベルト19との間に配置され、ガイド部材29を直線移動させるスペースを確保しにくい構成においては、ガイド部材を揺動させる構成を採用することが好ましい。
【0064】
また、
図12に示されるように、支持ローラ27の軸方向から見て、ガイド部材29の先端29aの位置は、支持ローラ27(詳しくは、上流側搬送ベルト18を介して回転体40が対向する支持ローラ27)の回転中心Qと回転体40の回転中心Pとを通る直線L上に設定されることが好ましい。このような位置にガイド部材29の先端29aが配置されることにより、ガイド部材29の先端29aの位置につなぎ目Jの部分が到達するタイミングに合わせてガイド部材29の先端29aを大きく揺動(退避)させることができるので、ガイド部材29の先端29aとつなぎ目Jの部分との干渉をより確実に回避できるようになる。
【0065】
また、
図13に示される例のように、複数の回転体40A,40Bをシート搬送方向に並べて配置してもよい。
図13に示される例においては、2つの回転体40A,40Bが、ガイド部材29の先端29aの位置とそれよりもシート搬送方向上流側の位置にそれぞれ配置されている。この場合、
図14に示されるように、つなぎ目Jの部分が最初(上流側)の回転体40Aに接触すると、その接触による回転体40Aの変位に連動してガイド部材29が搬送面18aに対して離間する方向へ揺動する。続いて、
図15に示されるように、つなぎ目Jの部分が次(下流側)の回転体40Bに対して接触することにより、ガイド部材29は搬送面18aから離間する方向へ揺動したままの状態で保持される。すなわち、つなぎ目Jの部分(突出部)が最初の回転体40Aとの接触位置を完全に通過する前に、つなぎ目Jの部分が次の回転体40Bに対して接触することにより、ガイド部材29は揺動したままの状態で保持される。従って、この場合、つなぎ目Jの部分が最初の回転体40Aに対して接触してから次の回転体40Bを通過するまでの間、ガイド部材29が搬送面18aに対して離間する方向へ揺動したままの状態で保持される。これにより、ガイド部材29をつなぎ目Jの部分が到達するよりも早い段階から継続して退避させることができるので、ガイド部材29とつなぎ目Jの部分との接触をより確実に回避できるようになる。なお、シート搬送方向へ並べる回転体の数は、2つに限らず、3つ、あるいはそれ以上であってもよい。また、回転体は、ガイド部材29の先端29aの位置よりもシート搬送方向上流側の位置に配置されるだけでなく、下流側の位置に配置されてもよい。また、複数の回転体を搭載した場合、ガイド部材29の先端29aの位置は、
図12の実施形態と同様に、支持ローラ27の軸方向から見て、複数の回転体のうちのいずれか1つの回転体の回転中心Pと支持ローラ27の回転中心Qとを通る直線L上に設定されることが好ましい。言い換えれば、複数の回転体のうち、いずれか1つの回転体の回転中心Pは、支持ローラ27の軸方向から見て、ガイド部材29の先端29aと支持ローラ27の回転中心Qとを通る直線L上に配置されることが好ましい。これにより、ガイド部材29の先端29aの位置につなぎ目Jの部分が到達するタイミングに合わせてガイド部材29の先端29aを大きく揺動(退避)させることができ、ガイド部材29の先端29aとつなぎ目Jの部分との干渉をより確実に回避できるようになる。
【0066】
以上、本発明の実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0067】
上記実施形態においては、ガイド部材29の先端29aが上流側搬送ベルト18の搬送面18aに対して接近離間する方向へ揺動する構成を例に挙げているが、
図16に示される例のように、ガイド部材29の先端29aを下流側搬送ベルト19の搬送面19aに接近させて配置してもよい。この場合、下流側搬送ベルト19のつなぎ目Jの部分が回転体40に接触すると、上記実施形態と同じように、ガイド部材29の先端29aが搬送面19aに対して離間する方向へ揺動するので、ガイド部材29の先端29aとつなぎ目の部分との干渉を回避できる。
【0068】
また、本発明は、上記のようなつなぎ目の部分が突出する搬送ベルトを用いる構成に限らず、つなぎ目の部分がその他の部分よりも凹形状に窪む搬送ベルトを用いる構成にも適用可能である。
【0069】
つなぎ目の部分が凹形状となる搬送ベルトを用いる構成においては、つなぎ目の部分が凸形状となる場合とは反対に、つなぎ目の部分においてガイド部材と搬送ベルトとの間隔が大きくなるため、ガイド部材と搬送ベルトとの間にシートが入り込む問題が生じ得る虞がある。しかしながら、このような構成においても、本発明を適用することにより、つなぎ目の部分におけるシートの入り込みを抑制できるようになる。すなわち、本発明を適用することにより、つなぎ目の部分の形状に対応してガイド部材が搬送面に対して接近する方向へ変位するようになるため、つなぎ目の部分におけるガイド部材と搬送ベルトとの間隔を小さくすることができ、ガイド部材と搬送ベルトとの間にシートが入り込むのを抑制できるようになる。
【0070】
また、本発明は、次のような乾燥装置にも適用可能である。以下、本発明の他の実施形態に係る乾燥装置の構成について説明する。
【0071】
図17に示される乾燥装置30においては、第一の加熱部31が、温風発生装置33のほか、赤外線照射装置37を有している。それ以外は、上記実施形態に係る乾燥装置(
図3参照)と同じ構成である。
【0072】
この場合、受け渡し胴17上にシートSが担持されると、シートSは、温風発生装置33の熱により加熱されると共に、赤外線照射装置37から照射される赤外線によって加熱される。これにより、上記実施形態に係る乾燥装置よりもシートS上のインクの乾燥を促進させることが可能である。
【0073】
続いて、
図18に示される乾燥装置30においては、上流側搬送ベルト18に対向する位置に冷却手段としての送風ファン38が設けられている。送風ファン38から上流側搬送ベルト18に対してエアが吹き付けられ、上流側搬送ベルト18が冷却されることにより、上流側搬送ベルト18の温度上昇が抑制される。この場合、上流側搬送ベルト18によって搬送されるシートSの温度上昇も抑制されるので、インクの顔料が移動することによる濃度ムラのほか、シートSの波打ちの発生も抑制できる。
【0074】
また、
図18に示される乾燥装置30においては、第二の加熱部32が、複数の紫外線照射装置34のほか、下流側搬送ベルト19を加熱する発熱体39を有している。発熱体39は、例えば赤外線ヒータ(IRランプ)などであり、下流側搬送ベルト19を支持する上流側の支持ローラ27内に配置されている。発熱体39が発熱すると、支持ローラ27を介して下流側搬送ベルト19が加熱される。
【0075】
このため、下流側搬送ベルト19上にシートSが保持されると、加熱された下流側搬送ベルト19の熱によりシートSが加熱される。さらに、シートSに対して各紫外線照射装置34から紫外線が照射されるため、シートS上のインクの乾燥が効果的に促進される。なお、上記説明した構成以外は、
図17に示される乾燥装置と同じ構成であるので、説明を省略する。
【0076】
上記実施形態においては、本発明に係る搬送装置が、液体吐出装置の一例であるインクジェット式の画像形成装置に搭載されている場合を例に説明したが、本発明に係る搬送装置はその他の液体吐出装置にも適用可能である。
【0077】
上記「液体吐出装置」とは、液体吐出部を備え、液体吐出部を駆動させて、シートに液体を吐出する装置を意味する。従って、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形などの有意な画像を可視化するものに限らない。例えばそれ自体意味を持たないパターンなどを形成するもの、三次元像を造形するもの、さらにはシートの表面を改質するなどの目的でシートの表面に処理液を吐出する処理液吐出装置なども、「液体吐出装置」として含まれる。
【0078】
また、本発明に係る搬送装置が適用される「液体吐出装置」には、シートの給送、搬送、排出に係わる手段、前処理装置のほか、後処理装置などが含まれてもよい。
【0079】
また、「液体吐出装置」は、シートに対して液体吐出部が相対的に移動するものであってもよいし、液体吐出部が相対的に移動しないものであってもよい。具体例としては、「液体吐出装置」として、液体吐出ヘッド(液体吐出部)を移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッド(液体吐出部)を移動させないライン型装置などがある。
【0080】
上記「シート」は、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどが含まれる。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板がある。また、「シート」は、あらかじめシート搬送方向に所定のサイズに裁断されたシート(カット紙など)のほか、ロール状に巻かれた長尺のシート(ロール紙など)であってもよい。
【0081】
また、「シート」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0082】
また、「液体吐出装置」によって吐出される「液体」は、液体吐出部から吐出可能な粘度又は表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒などの溶媒、染料、顔料などの着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤などの機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウムなどの生体適合材料、天然色素などの可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは、例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子、発光素子の構成要素、電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液などの用途で用いることができる。
【0083】
また、本発明に係る搬送装置は、インクジェット式画像形成装置などの液体吐出装置に搭載されるものに限らない。例えば、本発明は、トナーを用いて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置に搭載される搬送装置、あるいは、シート以外の搬送対象物を搬送するベルトコンベヤー装置などに搭載される搬送装置にも適用可能である。
【0084】
以上説明した本発明の態様をまとめると、本発明には、少なくとも下記の構成を備える搬送装置、乾燥装置、画像形成装置及び液体吐出装置が含まれる。
【0085】
[第1の構成]
第1の構成は、つなぎ目を有する搬送面に搬送対象物を保持又は載置して搬送する搬送部材と、前記搬送面に接近するように配置され前記搬送部材からあるいは前記搬送部材へ前記搬送対象物を案内するガイド部材と、前記搬送面に接触する回転体を備え、前記ガイド部材は、前記回転体が前記つなぎ目に接触した際の変位に連動して前記搬送面に対して交差する方向へ変位する搬送装置である。
【0086】
[第2の構成]
第2の構成は、前記第1の構成において、前記つなぎ目は、前記搬送面から突出する部分を有し、前記ガイド部材は、前記回転体が前記突出する部分に接触した際の変位に連動して前記搬送面に対して離間する方向へ変位する搬送装置である。
【0087】
[第3の構成]
第3の構成は、前記第1又は第2の構成において、前記ガイド部材は、支軸を中心に揺動して前記搬送面に対して変位可能に構成される搬送装置である。
【0088】
[第4の構成]
第4の構成は、前記第1から第3のいずれかの構成において、前記搬送部材は、支持ローラに掛け渡される搬送ベルトであり、前記搬送ベルトに接近して配置される前記ガイド部材の先端は、前記支持ローラの回転中心と前記回転体の回転中心とを通る直線上に配置される搬送装置である。
【0089】
[第5の構成]
第5の構成は、前記第1から第4のいずれかの構成において、前記回転体は、前記搬送対象物の搬送方向へ複数並んで配置される搬送装置である。
【0090】
[第6の構成]
第6の構成は、前記第1から第5のいずれかの構成において、前記搬送部材は、第一の搬送部材と、前記第一の搬送部材よりも前記搬送対象物の搬送方向下流側に配置される第二の搬送部材とを有し、前記ガイド部材は、前記第一の搬送部材と前記第二の搬送部材との間において、前記第一の搬送部材から前記第二の搬送部材へ前記搬送対象物を案内する搬送装置である。
【0091】
[第7の構成]
第7の構成は、前記第6の構成において、前記第一の搬送部材は、一回目の乾燥処理が行われる前記搬送対象物を搬送し、前記第二の搬送部材は、二回目の乾燥処理が行われる前記搬送対象物を搬送する搬送装置である。
【0092】
[第8の構成]
第8の構成は、搬送対象物を搬送する前記第1から第7のいずれかの構成の搬送装置と、前記搬送対象物を乾燥処理する乾燥部とを備える乾燥装置である。
【0093】
[第9の構成]
第9の構成は、シートに画像を形成する画像形成部と、前記シートを搬送する前記第1から第7のいずれかの構成の搬送装置を備える画像形成装置である。
【0094】
[第10の構成]
第10の構成は、シートに液体を吐出する液体吐出部と、前記シートを搬送する前記第1から第7のいずれか構成の搬送装置を備える液体吐出装置である。
【符号の説明】
【0095】
3 画像形成部
4 乾燥部
10 搬送装置
15C,15M,15Y,15K 液体吐出ユニット(液体吐出部)
18 上流側搬送ベルト(第一の搬送部材)
18a 搬送面
19 下流側搬送ベルト(第二の搬送部材)
19a 搬送面
27 支持ローラ
28 支持ローラ
29 ガイド部材
29a 先端
30 乾燥装置
31 第一の加熱部(乾燥手段)
32 第二の加熱部(乾燥手段)
40 回転体
41 支軸
100 画像形成装置(液体吐出装置)
S シート(搬送対象物)
J つなぎ目
【先行技術文献】
【特許文献】
【0096】