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特開2024-45009処理液、被対象物の処理方法、半導体デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045009
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】処理液、被対象物の処理方法、半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240326BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20240326BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20240326BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
H01L21/304 622Q
C11D17/08
C11D7/32
C11D7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023121435
(22)【出願日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2022149289
(32)【優先日】2022-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】大内 直子
(72)【発明者】
【氏名】上村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】室 祐継
(72)【発明者】
【氏名】松本 英恵
【テーマコード(参考)】
4H003
5F057
5F157
【Fターム(参考)】
4H003BA12
4H003DA15
4H003DB03
4H003EB03
4H003EB06
4H003EB07
4H003EB08
4H003EB11
4H003EB13
4H003EB14
4H003EB19
4H003EB20
4H003EB30
4H003EB36
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA16
4H003FA28
5F057AA21
5F057BB23
5F057CA12
5F057DA03
5F057DA38
5F057EC30
5F057FA37
5F157AA35
5F157AA96
5F157BC03
5F157BC04
5F157BC07
5F157BC13
5F157BD03
5F157BD06
5F157BD09
5F157BE12
5F157BF12
5F157BF38
5F157BF39
5F157BF46
5F157BF48
5F157BF49
5F157BF52
5F157BF54
5F157BF55
5F157BF58
5F157BF59
5F157BF60
5F157BF72
5F157BF73
5F157BF96
5F157DB03
5F157DB18
(57)【要約】
【課題】Cuの腐食抑制性に優れ、かつ、有機残渣除去性にも優れる処理液を提供すること。
【解決手段】還元剤と、デヒドロアスコルビン酸、2,3-ジケトグロン酸、4-オキサロクロトン酸、及び、3,4,5-トリオキソシクロヘキサン-1-カルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種の特定化合物と、を含む処理液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤と、
デヒドロアスコルビン酸、2,3-ジケトグロン酸、4-オキサロクロトン酸、及び、3,4,5-トリオキソシクロヘキサン-1-カルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種の特定化合物と、を含む、処理液。
【請求項2】
前記還元剤が、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体又はこれらの塩、並びに、ポリフェノール化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の処理液。
【請求項3】
前記還元剤が、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体又はこれらの塩、並びに、没食子酸及び没食子酸誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の処理液。
【請求項4】
前記還元剤の含有量に対する、前記特定化合物の含有量の質量比が、0.01~199である、請求項1に記載の処理液。
【請求項5】
更に、式(B)で表される第4級アンモニウム化合物を含む、請求項1に記載の処理液。
【化1】

式(B)中、R~Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよく、-O-で表される連結基を有していてもよいアルキル基を表す。R~Rのうち複数が、互いに結合して環を形成していてもよい。R~Rで表される基の合計炭素数は、5以上である。
は、アニオンを表す。
【請求項6】
前記特定化合物の含有量に対する、前記第4級アンモニウム化合物の含有量の質量比が、0.01~100.0である、請求項5に記載の処理液。
【請求項7】
pHが8.0~13.0である、請求項1に記載の処理液。
【請求項8】
更に、キレート剤を含む、請求項1に記載の処理液。
【請求項9】
前記キレート剤が有機酸を含む、請求項8に記載の処理液。
【請求項10】
前記有機酸が、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、及び、ホスホン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項9に記載の処理液。
【請求項11】
前記有機酸が、クエン酸、ギ酸、シュウ酸、酒石酸、乳酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸、及び、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項9に記載の処理液。
【請求項12】
前記キレート剤の含有量に対する、前記還元剤の含有量の質量比が、0.005~5.0である、請求項8に記載の処理液。
【請求項13】
更に、アミン化合物を含む、請求項1に記載の処理液。
【請求項14】
前記アミン化合物が、式(C1)で表される化合物を含む、請求項13に記載の処理液。
【化2】

式(C1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよく、-O-で表される連結基を有していてもよいアルキル基を表す。R~Rのうち複数が、互いに結合して環を形成していてもよい。
式(C1)中、Rは、置換基を有していてもよく、-O-又は-NR-で表される連結基を含んでいてもよい、炭素数2以上のアルキレン基を表す。Rは水素原子又はアルキル基を表す。
【請求項15】
前記式(C1)中、Rで表される基の炭素数が2~4である、請求項14に記載の処理液。
【請求項16】
更に、防食剤を含む、請求項1に記載の処理液。
【請求項17】
更に、水を含み、前記水の含有量が、前記処理液の全質量に対して、60質量%以上である、請求項1に記載の処理液。
【請求項18】
化学機械研磨処理が施された、Cuを含む被対象物の洗浄に用いられる、請求項1に記載の処理液。
【請求項19】
化学機械研磨処理が施された、Cuを含む被対象物と、請求項1~18のいずれか1項に記載の処理液とを接触させる工程を有する、被対象物の処理方法。
【請求項20】
請求項19に記載の被対象物の洗浄方法を有する、半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液、被対象物の処理方法、及び、半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子は、基板上に配線材料となる金属膜、エッチング停止層、及び、層間絶縁層を有する積層体上に、レジスト膜を形成し、フォトリソグラフィー工程を実施することにより製造される。上記フォトリソグラフィー工程において、金属及び/又は有機物を溶解する処理液を用いてエッチング又は基板表面の異物を除去する方法が広く知られている。
【0003】
また、半導体素子の製造において、金属配線膜、バリアメタル、及び、絶縁膜等を有する半導体基板表面を、研磨微粒子(例えば、シリカ及びアルミナ等)を含む研磨スラリーを用いて平坦化する化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理を実施することがある。
CMP処理では、CMP処理で使用する研磨微粒子及び各種有機成分、並びに、研磨された配線金属膜及び/又はバリアメタル等に由来する金属成分が、研磨後の半導体基板表面に残存しやすい。このため、CMP処理後、処理液を用いてこれらの残渣物を除去する工程が一般的に実施される。
【0004】
上記のように、半導体製造プロセス中において、処理液は、基板上の不要な金属含有物、レジスト、及び、残渣物の除去等の処理に用いられる。
【0005】
上記のような処理液として、例えば、特許文献1には、ヒスチジン及びヒスチジン誘導体に代表される特定化合物、アスコルビン酸、没食子酸、並びに、水を含む、pHが8以上の半導体デバイス用基板処理液であって、アスコルビン酸の処理液中の濃度が0.01質量%以上であり、没食子酸の処理液中の濃度が0.01質量%以上である、半導体デバイス用基板処理液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-125810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らが、特許文献1に記載の処理液について検討したところ、Cuの腐食抑制性、及び、有機残渣除去性の両立が困難であり、更なる改良を要することを知見した。
【0008】
そこで、本発明は、Cuの腐食抑制性に優れ、かつ、有機残渣除去性にも優れる処理液を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記処理液を用いた被対象物の処理方法、及び、半導体デバイスの製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により課題を解決できることを見出した。
【0010】
〔1〕 還元剤と、
デヒドロアスコルビン酸、2,3-ジケトグロン酸、4-オキサロクロトン酸、及び、3,4,5-トリオキソシクロヘキサン-1-カルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種の特定化合物と、を含む、処理液。
〔2〕 上記還元剤が、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体又はこれらの塩、並びに、ポリフェノール化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、〔1〕に記載の処理液。
〔3〕 上記還元剤が、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体又はこれらの塩、並びに、没食子酸及び没食子酸誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の処理液。
〔4〕 上記還元剤の含有量に対する、上記特定化合物の含有量の質量比が、0.01~199である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の処理液。
〔5〕 更に、後述する式(B)で表される第4級アンモニウム化合物を含む、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の処理液。
〔6〕 上記特定化合物の含有量に対する、上記第4級アンモニウム化合物の含有量の質量比が、0.01~100.0である、〔5〕に記載の処理液。
〔7〕 pHが8.0~13.0である、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の処理液。
〔8〕 更に、キレート剤を含む、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の処理液。
〔9〕 上記キレート剤が有機酸を含む、〔8〕に記載の処理液。
〔10〕 上記有機酸が、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、及び、ホスホン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含む、〔9〕に記載の処理液。
〔11〕 上記有機酸が、クエン酸、ギ酸、シュウ酸、酒石酸、乳酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸、及び、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)からなる群から選択される少なくとも1種を含む、〔9〕に記載の処理液。
〔12〕 上記キレート剤の含有量に対する、上記還元剤の含有量の質量比が、0.005~5.0である、〔8〕~〔11〕のいずれか1つに記載の処理液。
〔13〕 更に、アミン化合物を含む、〔1〕~〔12〕のいずれか1つに記載の処理液。
〔14〕 上記アミン化合物が、後述する式(C1)で表される化合物を含む、〔13〕に記載の処理液。
〔15〕 上記式(C1)中、Rで表される基の炭素数が2~4である、〔14〕に記載の処理液。
〔16〕 更に、防食剤を含む、〔1〕~〔15〕のいずれか1つに記載の処理液。
〔17〕 更に、水を含み、上記水の含有量が、上記処理液の全質量に対して、60質量%以上である、〔1〕~〔16〕のいずれか1つに記載の処理液。
〔18〕 化学機械研磨処理が施された、Cuを含む被対象物の洗浄に用いられる、〔1〕~〔17〕のいずれか1つに記載の処理液。
〔19〕 化学機械研磨処理が施された、Cuを含む被対象物と、〔1〕~〔18〕のいずれか1つに記載の処理液とを接触させる工程を有する、被対象物の処理方法。
〔20〕 〔19〕に記載の被対象物の洗浄方法を有する、半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、Cuの腐食抑制性に優れ、かつ、有機残渣除去性にも優れる処理液を提供できる。
また、本発明によれば、上記処理液を用いた被対象物の処理方法、及び、半導体デバイスの製造方法も提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
【0013】
以下、本明細書における各記載の意味を表す。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、ある成分が2種以上存在する場合、その成分の「含有量」は、それら2種以上の成分の合計含有量を意味する。
本明細書において、「処理液中の溶媒を除いた成分の合計質量」とは、水及び有機溶媒等の溶媒以外の処理液に含まれる全ての成分の含有量の合計を意味する。
【0014】
本明細書において、特定の符号で表示された置換基及び連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、又は、複数の置換基等を同時に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。
本明細書に記載の化合物において、特段の断りがない限り、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)、光学異性体及び同位体が含まれていてもよい。また、異性体及び同位体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
本明細書において、表記される2価の基(例えば、-COO-)の結合方向は、特段の断りがない限り、制限されない。例えば、「X-Y-Z」なる式で表される化合物中の、Yが-COO-である場合、上記化合物は「X-O-CO-Z」であってもよく、「X-CO-O-Z」であってもよい。
【0015】
本明細書において、「psi」とは、pound-force per square inch;重量ポンド毎平方インチを意味し、1psi=6894.76Paを意味する。
本明細書において、「ppm」は「parts-per-million(10-6)」を意味し、「ppb」は「parts-per-billion(10-9)」を意味する。
本明細書において、1Å(オングストローム)は0.1nmに相当する。
【0016】
本明細書において、「重量平均分子量」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量のことを意味する。
【0017】
[処理液]
以下、本発明の処理液に含まれる各成分について詳述する。
本発明の処理液(以下、単に「処理液」ともいう。)は、還元剤と、後述する特定化合物とを含む。
【0018】
上記構成を有する処理液が本発明の課題を解決できる理由は必ずしも明らかではないが、還元剤及び特定化合物が協調的に作用することで、処理液は、Cuの腐食抑制性に優れ、かつ、有機残渣除去性にも優れると推測する。
例えば、処理液に含まれる還元剤が、被対象物に含まれるCuの酸化還元電位を低下させ、Cuの腐食を抑制する。更に、還元剤及び特定化合物が、有機残渣(例えば、研磨液由来の有機残渣)の溶解性を向上させることで、有機残渣の除去を容易にする。結果として、処理液は、Cuの腐食抑制性及び有機残渣除去性の双方に優れるものと考えられる。
なお、上記推測により、効果が得られる機序が制限されるものではない。換言すれば、上記以外の機序により効果が得られる場合でも、本発明の範囲に含まれる。
以下、Cuの腐食抑制性及び有機残渣除去性の少なくとも一方がより優れることを、「本発明の効果がより優れる」ともいう。
【0019】
〔還元剤〕
処理液は、還元剤を含む。
還元剤は、還元機能を持った化合物であり、例えば、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体又はこれらの塩、ポリフェノール化合物、還元性硫黄化合物、過酸化水素、ヒドラジン誘導体、並びに、糖類が挙げられる。なお、還元剤は後述する特定化合物を含まない。
なかでも、還元剤としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、若しくはこれらの塩、又は、ポリフェノール化合物が好ましい。
【0020】
<アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体又はこれらの塩>
アスコルビン酸としては、L-アスコルビン酸、D-アスコルビン酸、及び、イソアスコルビン酸が挙げられる。
アスコルビン酸誘導体としては、例えば、アルキルグリセリルアスコルビン酸、アスコルビン酸グリセロール、アスコルビン酸アルキルエーテル、アスコルビン酸アルキルエステル、アスコルビン酸硫酸エステル、及び、アスコルビン酸リン酸エステルが挙げられる。
また、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体の塩も好適に使用できる。塩としては、例えば、アスコルビン酸ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
還元剤は、アスコルビン酸を含むことが好ましい。
【0021】
<ポリフェノール化合物>
ポリフェノール化合物は、フェノール性ヒドロキシ基を少なくとも2つ以上有する化合物である。
ポリフェノール化合物としては、例えば、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0022】
ポリフェノール化合物としては、式(A)で表される化合物が好ましい。
【0023】
【化1】
【0024】
は、水素原子又は1価の有機基を表す。複数のRはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
1価の有機基としては特に制限されないが、カルボキシ基、アルデヒド基、又は、ヘテロ原子を有していてもよい炭化水素基が挙げられる。
ヘテロ原子を有する炭化水素基は、炭化水素基の炭素-炭素結合間、又は、末端に、-O-、-CO-、-COO-、-NR-、-CONR-、-S-、及び、-SO-からなる群から選択される少なくとも1種の2価の連結基を有する基である。なお、Rは水素原子又はアルキル基を表す。
上記炭化水素基の炭素数は、1~25が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましい。
上記炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び、環状のいずれであってもよい。
上記炭化水素基が環構造を有する場合、環は単環であっても多環であってもよい。
上記炭化水素基は、更に置換基を有していてもよい。
上記炭化水素基が更に有していてもよい置換基としては、例えば、塩素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシル基、アルキル基、カルボキシ基、チオール基、シアノ基、及び、ニトロ基が挙げられ、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のアルキル基、又は、カルボキシ基が好ましく、ヒドロキシ基又はカルボキシ基がより好ましい。
炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、又は、アリール基が好ましい。
ヘテロ原子を有する炭化水素基としては、アシル基、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミド基、又は、ヘテロアリール基が好ましく、アルコキシ基がより好ましい。
としては、水素原子、カルボキシ基、アルキル基、アルケニル基、アシル基、アルコキシ基、アルキルオキシカルボニル基、又は、ヘテロアリール基が好ましく、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、又は、カルボキシ基がより好ましく、水素原子、メチル基、メトキシ基、又は、カルボキシ基が更に好ましい。
【0025】
複数のRが、互いに結合して環を形成していてもよい。
複数のRが互いに結合して形成した環は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、上記炭化水素基が有していてもよい置換基が挙げられ、ヒドロキシ基又はカルボキシ基が好ましい。
複数のRが互いに結合して形成する環構造としては、例えば、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、シクロヘキサンジオン骨格、及び、アントラセン骨格が挙げられる。
【0026】
kは2~4の整数であり、2又は3が好ましく、3がより好ましい。
kが2以上の場合、式(A)中、少なくとも2つのヒドロキシ基同士が隣り合っていることが好ましい。すなわち、式(A)で表される化合物としては、カテコール又はカテコール誘導体が好ましい。
カテコール誘導体としては、例えば、ピロガロール、ヒドロキシキノール、没食子酸、没食子酸誘導体、4-tert-ブチルカテコール、3-メチルカテコール、カテコール-4-酢酸、ウルシオール、カフェ酸、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、アリザリン、ケルセチン、及び、カテキンが挙げられる。
【0027】
なかでも、式(A)で表される化合物としては、没食子酸又は没食子酸誘導体が好ましい。没食子酸誘導体としては、例えば、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、及び、没食子酸ラウリル等の没食子酸アルキル、並びに、没食子酸アミドが挙げられる。
【0028】
式(A)で表される化合物としては、フラボノール類、アントシアニジン類、及び、フラバノール類等のフラボノイドも好ましい。例えば、フラボノール類は、Rのうち一つがクロマン誘導体である化合物である。
【0029】
ポリフェノール化合物としては、例えば、カテコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ヒドロキシキノール、フロログルシノール、没食子酸、没食子酸アルキル、没食子酸アミド、4-tert-ブチルカテコール、3-メチルカテコール、カテコール-4-酢酸、ウルシオール、カフェ酸、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、ナフトレゾルシノール、アリザリン、エンドクロシン、エモジン、ケルセチン、カテキン、及び、アントシアニンが挙げられる。
【0030】
<還元性硫黄化合物>
還元性硫黄化合物は、硫黄原子を含み、還元剤としての機能を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、メルカプトコハク酸、ジチオジグリセロール、ビス(2,3-ジヒドロキシプロピルチオ)エチレン、3-(2,3-ジヒドロキシプロピルチオ)-2-メチル-プロピルスルホン酸ナトリウム、1-チオグリセロール、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸、及び、3-メルカプト-1-プロパノールが挙げられる。
なかでも、SH基を有する化合物(メルカプト化合物)が好ましく、1-チオグリセロール、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-1-プロパノール、又は、チオグリコール酸がより好ましく、1-チオグリセロール又はチオグリコール酸が更に好ましい。
【0031】
<その他の還元剤>
還元剤としては、上記以外のその他の還元剤を含んでいてもよい。
その他の還元剤としては、例えば、過酸化水素;ヒドラジン及びヒドラジド化合物等のヒドラジン誘導体;フルクトース、グルコール、及び、リボース等の糖類;ポリビニルピロリドン;フェナントロリンが挙げられる。
【0032】
還元剤は、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体又はこれらの塩、ポリフェノール化合物、過酸化水素、並びに、ヒドラジンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体又はこれらの塩、並びに、ポリフェノール化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体又はこれらの塩、並びに、没食子酸及び没食子酸誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが更に好ましい。
なかでも、還元剤は、アスコルビン酸、3-O-エチルグリセリルアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、没食子酸、没食子酸アルキル、ピロガロール、ヒドロキシキノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、カフェ酸、アリザリン、エンドクロシン、エモジン、ケルセチン、カテキン、過酸化水素、及び、ヒドラジンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、アスコルビン酸、エチルグリセリルアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、没食子酸、没食子酸アルキル、ピロガロール、ヒドロキシキノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、カフェ酸、アリザリン、エンドクロシン、エモジン、ケルセチン、及び、カテキンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、アスコルビン酸、エチルグリセリルアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、没食子酸、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、ヒドロキシキノール、ピロガロール、及び、カテコールからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが更に好ましい。
【0033】
還元剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の効果がより優れる点から、還元剤の含有量は、処理液の全質量に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、0.03質量%以上が特に好ましい。上限は特に制限されないが、本発明の効果を維持しつつ、使用量を減らせる点で、10.0質量%以下が好ましく、6.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
本発明の効果がより優れる点から、還元剤の含有量は、処理液の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.5質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましく、8.0質量%以上が更に好ましい。上限としては、本発明の効果を維持する点から、95.0質量%以下が好ましく、60.0質量%以下がより好ましく、45.0質量%以下が更に好ましく、35.0質量%が特に好ましい。
【0034】
〔特定化合物〕
処理液は、デヒドロアスコルビン酸、2,3-ジケトグロン酸、4-オキサロクロトン酸、及び、3,4,5-トリオキソシクロヘキサン-1-カルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種の特定化合物を含む。
【0035】
特定化合物は1種単独で用いてもよく、2種を組み合わせて用いてもよい。
本発明の効果がより優れる点から、特定化合物の含有量は、処理液の全質量に対して、0.001~15.0質量%が好ましく、0.005~10.0質量%がより好ましく、0.02~3.0質量%が更に好ましく、0.03~0.3質量%が特に好ましい。
本発明の効果がより優れる点から、特定化合物の含有量は、処理液の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.1~97.0質量%が好ましく、2.0~90.0質量%がより好ましく、7.0~60.0質量%が更に好ましく、10.0~55.0質量%が特に好ましい。
本発明の効果がより優れる点から、還元剤の含有量に対する、特定化合物の含有量の質量比は、0.001~200が好ましく、0.01~199がより好ましく、0.1~50が更に好ましく、0.1~5が特に好ましい。
【0036】
処理液は、上述した成分(還元剤及び特定化合物)以外の他の成分を含んでいてもよい。
以下、他の成分について詳述する。
【0037】
〔式(B)で表される第4級アンモニウム化合物〕
処理液は、式(B)で表される第4級アンモニウム化合物(以下、「特定第4級アンモニウム化合物」ともいう。)を含んでいてもよい。処理液が特定第4級アンモニウム化合物を含むことにより、有機残渣除去性がより優れる。
【0038】
【化2】
【0039】
~Rはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよく、-O-で表される連結基を有していてもよいアルキル基を表す。
上記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び、環状のいずれであってもよい。
上記アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。
~Rで表される基の合計炭素数は5以上であり、5~22が好ましく、5~16がより好ましく、5~12が更に好ましい。
なお、R~Rで表される基が置換基を有するアルキル基である場合、置換基の炭素数と、アルキル基の炭素数との合計炭素数が、上記範囲であることを意味する。R~Rで表される基が置換基を有さないアルキル基である場合、アルキル基の炭素数の合計炭素数が、上記範囲であることを意味する。
置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、及び、臭素原子等のハロゲン原子;アルコキシ基;ヒドロキシ基;メトキシカルボニル基、及び、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセチル基、プロピオニル基、及び、ベンゾイル基等のアシル基;シアノ基;ニトロ基が挙げられ、ヒドロキシ基が好ましい。
アルキル基としては、メチル基、エチル基、2-ヒドロキシエチル基、プロピル基、又は、ブチル基が好ましく、エチル基又はブチル基がより好ましい。
~Rのうち複数が、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0040】
は、アニオンを表す。
アニオンとしては、例えば、カルボン酸イオン、リン酸イオン、ホスホン酸イオン、及び、硝酸イオン等の酸アニオン、並びに、水酸化物イオンが挙げられ、水酸化物イオンが好ましい。
【0041】
特定第4級アンモニウム化合物としては、例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド(THEMAH)、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(ETMAH)、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド(TMEAH)、ジメチルジエチルアンモニウムヒドロキシド(DMDEAH)、メチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド(MTEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(コリン)、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウムヒドロキシド、トリ(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、及び、セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドが挙げられ、THEMAH、ETMAH、コリン、TBAH、又は、TEAHが好ましく、TEAH又はTBAHがより好ましい。
【0042】
特定第4級アンモニウム化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の効果がより優れる点から、特定第4級アンモニウム化合物の含有量は、処理液の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%が更に好ましい。上限は特に制限されないが、本発明の効果を維持しつつ、使用量を減らせる点で、20.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以下が更に好ましく、5.0質量%以下が更に好ましく、1.0質量%以下が特に好ましい。
本発明の効果がより優れる点から、特定第4級アンモニウム化合物の含有量は、処理液の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、1.0~90.0質量%が好ましく、10.0~80.0質量%がより好ましく、20.0~70.0質量%が更に好ましい。
本発明の効果がより優れる点から、特定化合物の含有量に対する、特定第4級アンモニウム化合物の含有量の質量比は、0.01~150.0が好ましく、0.01~100.0がより好ましく、0.1~50.0が更に好ましく、0.5~30.0が特に好ましい。
【0043】
〔キレート剤〕
処理液は、キレート剤を含んでいてもよい。
キレート剤は、処理工程において、残渣及び/又は被対象物に対して配位子として機能し得る官能基(配位基)を有する化合物である。なお、キレート剤は処理液に含まれ得る上述した化合物(還元剤、特定化合物、及び、特定第4級アンモニウム化合物)をいずれも含まない。
【0044】
キレート剤が有する配位基としては、酸基が挙げられる。
酸基としては、例えば、カルボキシ基、ホスホン酸基、スルホ基、及び、フェノール性ヒドロキシ基が挙げられる。
キレート剤は、配位基としてカルボキシ基又はホスホン酸基を有することが好ましく、カルボキシ基を有することがより好ましい。
【0045】
キレート剤としては、有機キレート剤及び無機キレート剤が挙げられる。
有機キレート剤は、有機化合物からなるキレート剤であり、例えば、配位基としてカルボキシ基を有するカルボン酸系キレート剤、配位基としてホスホン酸基を有するホスホン酸系キレート剤、及び、配位基としてスルホ基を有するスルホン酸系キレート剤が挙げられる。
無機キレート剤としては、縮合リン酸及びその塩が挙げられる。
【0046】
キレート剤としては、有機キレート剤が好ましく、また、配位基として酸基を有することも好ましい。すなわち、キレート剤は、有機酸であることが好ましい。
【0047】
<有機酸>
有機酸は、少なくとも1以上の酸基を有する有機化合物である。
有機酸としては、例えば、カルボン酸、ホスホン酸、及び、スルホン酸が挙げられ、カルボン酸又はホスホン酸が好ましく、カルボン酸がより好ましい。
有機酸が有する酸基の数としては、1~8が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。
【0048】
有機酸は、低分子量であることが好ましい。
具体的には、有機酸の分子量は、600以下が好ましく、450以下がより好ましく、300以下が更に好ましい。下限は、50以上が好ましく、100以上がより好ましい。
有機酸の炭素数は、1~15が好ましく、2~15がより好ましい。
【0049】
カルボン酸としては、例えば、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、及びアミノカルボン酸が挙げられる。
ポリカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸、マレイン酸、及び、アジピン酸が挙げられ、シュウ酸、マロン酸、又は、コハク酸が好ましい。
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、グルコン酸、ヘプトン酸、酒石酸、乳酸、フェニル乳酸、ヒドロキシフェニル乳酸、及び、フェニルコハク酸が挙げられ、クエン酸、酒石酸、又は、乳酸が好ましい。
アミノカルボン酸としては、例えば、ヒスチジン又はその誘導体、アラニン(2-アミノプロピオン酸又は3-アミノプロピオン酸)、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、シスチン、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン又はその誘導体、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、エチオニン、トレオニン、チロシン、バリン、トリプトファン、2-アミノ-3-アミノプロパン酸、及び、プロリンが挙げられ、ヒスチジン又はその誘導体が好ましい。
上記以外のカルボン酸としては、例えば、ギ酸が挙げられる。
アミノカルボン酸としては、特開2016-086094号公報の段落[0021]~[0023]に記載の化合物も挙げられる。
ヒスチジン誘導体としては、特開2015-165561号公報、及び、特開2015-165562号公報等に記載の化合物が挙げられる
グリシン誘導体としては、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシンが挙げられる。
【0050】
ホスホン酸としては、例えば、エチリデンジホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸(HEDPO)、1-ヒドロキシプロピリデン-1,1’-ジホスホン酸、1-ヒドロキシブチリデン-1,1’-ジホスホン酸、エチルアミノビス(メチレンホスホン酸)、ドデシルアミノビス(メチレンホスホン酸)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTPO)、エチレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)(EDDPO)、1,3-プロピレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTPO)、エチレンジアミンテトラ(エチレンホスホン酸)、1,3-プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(PDTMP)、1,2-ジアミノプロパンテトラ(メチレンホスホン酸)、1,6-ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DEPPO)、ジエチレントリアミンペンタ(エチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、及び、トリエチレンテトラミンヘキサ(エチレンホスホン酸)が挙げられ、HEDPO、又は、EDTPOが好ましい。
【0051】
ホスホン酸としては、例えば、国際公開第2018/020878号の段落[0026]~[0036]に記載の化合物、及び、国際公開第2018/030006号の段落[0031]~[0046]に記載の化合物((共)重合体)も挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0052】
キレート剤は、有機酸を含むことが好ましく、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、及び、ホスホン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、ポリカルボン酸及びヒドロキシカルボン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが更に好ましい。
なかでも、キレート剤は、クエン酸、ギ酸、シュウ酸、酒石酸、乳酸、HEDPO、EDTPO、及び、ヒスチジンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、シュウ酸、酒石酸、及び、クエン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0053】
キレート剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の効果がより優れる点から、キレート剤の含有量は、処理液の全質量に対して、0.001~5.0質量%が好ましく、0.01~3.0質量%がより好ましく、0.01~2.0質量%が更に好ましい。
本発明の効果がより優れる点から、キレート剤の含有量は、処理液の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.1~97.0質量%が好ましく、1.0~95.0質量%がより好ましく、3.0~80.0質量%が更に好ましく、5.0~30.0質量%が特に好ましい。
本発明の効果がより優れる点から、キレート剤の含有量に対する、還元剤の含有量の質量比は、0.001~300.0が好ましく、0.005~5.0がより好ましく、0.02~5.0が更に好ましく、0.1~3.5が特に好ましい。
本発明の効果がより優れる点から、特定化合物の含有量に対する、キレート剤の含有量の質量比は、0.001~500が好ましく、0.003~100がより好ましく、0.01~15.0が更に好ましい。
【0054】
〔アミン化合物〕
処理液は、アミン化合物を含んでいてもよい。
アミン化合物は、アンモニアの水素原子の少なくとも1つが他の置換基に置き換わった化合物であり、例えば、分子内に第1級アミノ基(-NH)を有する第1級アミン化合物、分子内に第2級アミノ基(>NH)を有する第2級アミン化合物、分子内に第3級アミノ基(>N-)を有する第3級アミン化合物が挙げられる。なお、異なる級数のアミノ基を有する場合、最も級数の高いアミン化合物に分類する。
アミン化合物は、処理液に含まれ得る上述した化合物(還元剤、キレート剤、及び、特定第4級アンモニウム化合物等)、及び、含窒素複素環式化合物をいずれも含まない。
処理液は、有機残渣除去性に優れる点から、アミン化合物を含むことが好ましい。
【0055】
アミン化合物は、本発明の効果がより優れる点で、2つ以上のアミノ基を有することが好ましい。
また、本発明の効果がより優れる点で、置換基としてヒドロキシ基を有することも好ましい。
【0056】
アミン化合物のpKaは、5.0~20.0が好ましく、7.5~15.0がより好ましく、9.0~14.5が更に好ましい。
上記pKaは、SC-Databaseに記載の値を使用できる。また、中和滴定、吸光光度法、及び、キャピラリー電気泳動等の公知の方法を用いて測定した値も使用できる。
【0057】
アミン化合物としては、式(C1)で表される化合物が好ましい。
【0058】
【化3】
【0059】
~Rは、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよく、-O-で表される連結基を有していてもよいアルキル基を表す。
上記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び、環状のいずれであってもよい。
上記アルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~15がより好ましく、1~6が更に好ましく、1~4が特に好ましい。
置換基としては、式(B)中、R~Rで表される基が取り得る置換基が挙げられ、ヒドロキシ基又はアルコキシ基が好ましい。
上記アルキル基が、-O-で表される連結基を有する場合、上記アルキル基が有する-O-で表される連結基の数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1が更に好ましい。
なかでも、R~Rとしては、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、又は、イソプロピル基がより好ましく、水素原子、メチル基、又は、エチル基が更に好ましい。
~Rのうち複数が、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0060】
は、置換基を有していてもよく、-O-又は-NR-で表される連結基を有していてもよい、炭素数2以上のアルキレン基を表す。Rは水素原子又はアルキル基を表す。
上記アルキレン基の炭素数は、2以上であり、2~10が好ましく、2~8がより好ましく、2~4が更に好ましい。
置換基としては式(B)中、R~Rで表される基が取り得る置換基が挙げられ、ヒドロキシ基又はアルコキシ基が好ましい。
上記アルキレン基が、-O-で表される連結基を有する場合、上記アルキル基が有する-O-で表される連結基の数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1が更に好ましい。
上記アルキレン基が、-NR-で表される連結基を有する場合、上記アルキレン基が有する-NR-で表される連結基の数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が更に好ましい。
は、水素原子又はアルキル基を表す。
上記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び、環状のいずれであってもよい。上記アルキル基の炭素数は、1~15が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が更に好ましい。
なかでも、Rとしては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、又は、ヘキシレン基が好ましく、エチレン基、プロピレン基、又は、ブチレン基がより好ましい。
【0061】
式(C1)で表される化合物としては、1,2-ジアミノプロパン、N-メチル-1,3-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、2-メチル-1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、1,3-ビス(ジメチルアミノ)ブタン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(AAE)、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、1,6-ジアミノヘキサン、テトラメチルエチレンジアミン、及び、テトラメチル-1,4-ブタンジアミン等のジアミン化合物、並びに、ジエチレントリアミン(DETA)、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、ビス(アミノプロピル)エチレンジアミン(BAPEDA)、及び、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキルポリアミンが挙げられる。
【0062】
式(C1)で表されるアミン化合物以外のアミン化合物としては、ヒドロキシ基を有するモノアミン化合物も好ましい。
ヒドロキシ基を有するモノアミン化合物としては、式(C2)で表される化合物が好ましい。
【0063】
【化4】
【0064】
10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
上記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、及び、環状のいずれであってもよい。
上記アルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~15がより好ましく、1~6が更に好ましく、1~4が特に好ましい。
置換基としては、式(B)中、R~Rで表される基が取り得る置換基が挙げられ、ヒドロキシ基が好ましい。
10及びR11としては、水素原子又はヒドロキシ基を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、又は、2-ヒドロキシエチル基がより好ましく、水素原子、メチル基、又は、エチル基が更に好ましい。
10及びR11は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0065】
12は、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。
上記アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状、及び、環状のいずれであってもよい。
上記アルキレン基の炭素数は、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。
置換基としては、式(B)中、R~Rで表される基が取り得る置換基が挙げられ、ヒドロキシ基が好ましい。
12としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、エチルエチレン基、1-メチルプロピレン基、1,1-ジメチルエチレン基、又は、1,2-ジメチルエチレン基が好ましく、エチレン基、メチルエチレン基、又は、プロピレン基がより好ましい。
【0066】
式(C2)で表される化合物としては、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノール(DMAMP)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(AMPDO)、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール(AEPDO)、2-アミノ-1,3-プロパンジオール(2-APDO)、3-アミノ-1,2-プロパンジオール(3-APDO)、3-メチルアミノ-1,2-プロパンジオール(MAPDO)、2-(メチルアミノ)-2-メチル-1-プロパンジオール(N-MAMP)、2-(アミノエトキシ)エタノール(AEE)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、N-メチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-シクロヘキシルエタノールアミン、2-(エチルアミノ)エタノール、プロピルアミノエタノール、ジエチレングリコールアミン(DEGA)、N-tert-ブチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、及び、1-ピペリジンエタノールが挙げられる。
【0067】
上記以外のその他のアミン化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、n-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、3-メトキシプロピルアミン、トリメチルアミン、及び、トリエチルアミン等の脂肪族モノアミン化合物が挙げられる。
【0068】
アミン化合物は、式(C1)で表される化合物、及び、式(C2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、式(C1)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
なかでも、アミン化合物は、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、2-メチル-1,3-ジアミノプロパン、及び、N-メチル-1,3-ジアミノプロパンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、エタノールアミン、プロパノールアミン、1,2-ジアミノプロパン、及び、N-メチル-1,3-ジアミノプロパンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0069】
アミン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の効果がより優れる点から、アミン化合物の含有量は、処理液の全質量に対して、0.01~20.0質量%が好ましく、0.03~15.0質量%がより好ましく、0.05~5.0質量%が更に好ましい。
本発明の効果がより優れる点から、アミン化合物の含有量は、処理液の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.01~99.0質量%が好ましく、3.0~50.0質量%がより好ましく、15.0~40.0質量%が更に好ましく、15.0~35.0質量%が特に好ましい。
【0070】
〔防食剤〕
処理液は、防食剤を含んでいてもよい。
防食剤は、被対象物に含まれる金属成分(例えば、Cu又はCu合金を含む金属層)の腐食を防止する機能を有する化合物である。なお、防食剤は、処理液に含まれ得る上述した化合物(還元剤、特定化合物、特定第4級アンモニウム化合物、キレート剤、及び、アミン化合物)をいずれも含まない。
【0071】
防食剤としては特に限定されないが、複素環式化合物が好ましい。
複素環式化合物としては、例えば、アゾール化合物、ピロール化合物、ピリジン化合物、ピラジン化合物、ピリミジン化合物、インドール化合物、インドリジン化合物、インダゾール化合物、キノリン化合物、及び、オキサゾール化合物が挙げられ、アゾール化合物又はピロール化合物が好ましい。
【0072】
アゾール化合物としては、例えば、アゾール環を構成する原子のうち1つが窒素原子であるイミダゾール化合物、アゾール環を構成する原子のうち2つが窒素原子であるピラゾール化合物、アゾール環を構成する原子のうち1つが窒素原子であり、他の1つが硫黄原子であるチアゾール化合物、アゾール環を構成する原子のうち3つが窒素原子であるトリアゾール化合物、及び、アゾール環を構成する原子のうち4つが窒素原子であるテトラゾール化合物が挙げられる。
【0073】
イミダゾール化合物としては、例えば、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、5-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-メルカプトイミダゾール、4,5-ジメチル-2-メルカプトイミダゾール、4-ヒドロキシイミダゾール、2,2’-ビイミダゾール、4-イミダゾールカルボン酸、ヒスタミン及びベンゾイミダゾールが挙げられる。
【0074】
ピラゾール化合物としては、例えば、ピラゾール、4-ピラゾールカルボン酸、1-メチルピラゾール、3-メチルピラゾール、3-アミノ-5-ヒドロキシピラゾール、3-アミノピラゾール及び4-アミノピラゾールが挙げられる。
【0075】
チアゾール化合物としては、例えば、2,4-ジメチルチアゾール、ベンゾチアゾール及び2-メルカプトベンゾチアゾールが挙げられる。
【0076】
トリアゾール化合物としては、トリアゾール環上において隣接する2個の置換基が互いに結合してベンゼン環を形成してなるベンゾトリアゾール化合物が挙げられる。
ベンゾトリアゾール化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール(CAS登録番号:136-85-6)、トリルトリアゾール(CAS登録番号:29385-43-1)、5-アミノベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、4-カルボキシベンゾトリアゾール、5,6-ジメチルベンゾアトリアゾール、1-[N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノエチル]ベンゾトリアゾール、1-(1,2-ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’-{[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ}ビスエタノール、及び、カルボキシベンゾトリアゾールが挙げられる。
ベンゾトリアゾール化合物以外のトリアゾール化合物としては、例えば、1,2,3-トリアゾ-ル、1,2,4-トリアゾ-ル、3-メチル-1,2,4-トリアゾ-ル、3-アミノ-1,2,4-トリアゾール、及び、1-メチル-1,2,3-トリアゾ-ルが挙げられる。
【0077】
テトラゾール化合物としては、例えば、1H-テトラゾール(1,2,3,4-テトラゾ-ル)、5-メチル-1,2,3,4-テトラゾ-ル、5-アミノ-1,2,3,4-テトラゾ-ル、1,5-ペンタメチレンテトラゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、及び1-(2-ジメチルアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾールが挙げられる。
【0078】
アゾール化合物としては、トリアゾール化合物又はテトラゾール化合物が好ましい。
防食剤としては、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、又は、ピロール化合物が好ましく、トリアゾール、テトラゾール又はピロールがより好ましい。
なお、本明細書においては、上記のアゾール化合物は、その互変異性体を包含するものとする。
【0079】
防食剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の効果がより優れる点から、防食剤の含有量は、処理液の全質量に対して、0.005~20.0質量%が好ましく、0.01~10.0質量%がより好ましく、0.03~1.0質量%が更に好ましい。
本発明の効果がより優れる点から、防食剤の含有量は、処理液の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.01~50.0質量%が好ましく、1.0~40.0質量%がより好ましく、10.0~30.0質量%が更に好ましい。
【0080】
〔水〕
処理液は、溶媒として水を含んでいてもよい。
処理液に使用される水の種類は、半導体基板に悪影響を及ぼさないものであればよく、蒸留水、脱イオン(DI:De Ionized)水、及び、純水(超純水)が使用できる。不純物をほとんど含まず、半導体基板の製造工程における半導体基板への影響がより少ない点から、純水(超純水)が好ましい。
水の含有量は、処理液の全質量に対して、60.0質量%以上が好ましく、80.0質量%以上がより好ましく、90.0質量%以上が更に好ましい。上限は、処理液の全質量に対して、99.99質量%以下が好ましく、99.90質量%以下がより好ましく、99.50質量%以下が更に好ましい。
【0081】
〔その他の成分〕
処理液は、上記化合物以外に、界面活性剤、pH調整剤、有機溶媒、重合体、及び、分子量500以上のポリヒドロキシ化合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分を含んでいてもよい。
以下、その他の成分について説明する。
【0082】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、1分子中に、親水基と、疎水基(親油基)とを有する化合物であり、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
なお、界面活性剤は、処理液に含まれ得る上記化合物とは異なる化合物である。
【0083】
界面活性剤は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び、これらの組み合わせた基からなる群から選択される少なくとも1つの疎水基を有する場合が多い。
疎水基が芳香族炭化水素基を含む場合、界面活性剤が有する疎水基の炭素数は、6以上が好ましく、10以上がより好ましい。界面活性剤全体の炭素数は、16~100が好ましい。
【0084】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、エステル型ノニオン性界面活性剤、エーテル型ノニオン性界面活性剤、及び、エステルエーテル型ノニオン性界面活性剤が挙げられ、エーテル型ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0085】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、アルキルポリグルコシド(Dow Chemical Company社製のTriton BG-10及びTriton CG-110界面活性剤)、オクチルフェノールエトキシレート(Dow Chemical Company社製のTriton X-114)、シランポリアルキレンオキシド(コポリマー)(Momentive Performance Materials社製のY-17112-SGS試料)、ノニルフェノールエトキシレート(Dow Chemical Company社製のTergitol NP-12、並びに、Triton(登録商標)X-102、X-100、X-45、X-15、BG-10及びCG-119)、Silwet(登録商標)HS-312(Momentive Performance Materials社製)、トリスチリルフェノールエトキシレート(Stepan Company製のMAKON TSP-20)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、BRIJ(登録商標)56(C1633(OCHCH10OH)、BRIJ(登録商標)58(C1633(OCHCH20OH)、BRIJ(登録商標)35(C1225(OCHCH23OH)等のアルコールエトキシレート、アルコール(第1級及び第2級)エトキシレート、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール-co-プロピレングリコール)、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール(セチル及びステアリルアルコール)、オレイルアルコール、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、オクチルグルコシド、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル、ノノキシノール-9、グリセロールアルキルエステル、ラウリン酸グリセリル、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、ポリソルベート、ソルビタンアルキルエステル、及び、ポリプロピレングリコールのブロックコポリマー、並びに、それらの混合物が挙げられる。
【0086】
界面活性剤としては、例えば、国際公開第2022/044893号の段落[0126]に例示される化合物も援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0087】
界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
処理液の性能が優れる点から、界面活性剤の含有量は、処理液の全質量に対して、0.001~8.0質量%が好ましく、0.005~5.0質量%がより好ましく、0.01~3.0質量%が更に好ましい。
処理液の性能が優れる点から、界面活性剤の含有量は、処理液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.01~50.0質量%が好ましく、0.1~45.0質量%がより好ましく、1.0~20.0質量%が更に好ましい。
【0088】
<pH調整剤>
処理液は、処理液のpHを調整及び維持するためにpH調整剤を含んでいてもよい。
pH調整剤は、処理液に含まれ得る上記化合物とは異なる、塩基性化合物及び酸性化合物である。ただし、上記各成分の添加量を調整することで、処理液のpHを調整させることは許容される。
【0089】
塩基性化合物とは、水溶液中でアルカリ性(pHが7.0超)を示す化合物である。
塩基性化合物としては、塩基性無機化合物が挙げられ、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、並びに、アルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。
【0090】
酸性化合物とは、水溶液中で酸性(pHが7.0未満)を示す化合物である。
酸性化合物としては、無機酸が挙げられ、例えば、塩酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、及び、ホウ酸が挙げられる。
【0091】
酸性化合物としては、水溶液中で酸又は酸イオン(アニオン)となるものであれば、酸性化合物の塩を用いてもよい。
【0092】
pH調整剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
pH調整剤の含有量は、その他成分の種類及び量、並びに、目的とする処理液のpHに応じて選択できる。例えば、pH調整剤の含有量は、処理液の全質量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.1~8質量%がより好ましい。
pH調整剤の含有量は、処理液中の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.01~80質量%が好ましく、0.1~60質量%がより好ましい。
【0093】
<有機溶媒>
有機溶媒としては、公知の有機溶媒が挙げられ、例えば、アルコール系溶媒、グリコール系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、及び、ケトン系溶媒が挙げられる。
有機溶媒は、水と任意の比率で混和することが好ましい。
【0094】
有機溶媒としては、例えば、国際公開第2022/044893号の段落[0135]~[140]に例示される化合物が援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0095】
<重合体>
本発明の効果がより優れる点で、処理液は、重合体を含むことも好ましい。
重合体としては、例えば、特開2016-171294号公報の段落[0043]~[0047]に記載の水溶性重合体が援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
重合体としては、水溶性重合体が好ましく、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリアクリルアミド、及び、ポリメタアクリルアミド、並びに、これらの共重合体が挙げられる。なお、水溶性重合体とは、20℃の水100gに溶解する質量が0.1g以上である重合体を意図する。
上記水溶性重合体の重量平均分子量(Mw)は、1万~150万が好ましく、4万~120万がより好ましい。なお、上記水溶性重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量のことを指す。
【0096】
重合体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合体の含有量は、処理液の全質量に対して、0.01~5.0質量%が好ましく、0.05~0.5質量%がより好ましい。
重合体の含有量は、処理液の溶媒を除いた成分の合計質量に対して、0.1~10.0質量%が好ましく、0.5~5.0質量%がより好ましい。
【0097】
<分子量500以上のポリヒドロキシ化合物>
分子量500以上のポリヒドロキシ化合物は、処理液に含まれ得る上記化合物とは異なる化合物である。
上記ポリヒドロキシ化合物は、1分子中に2個以上(例えば2~200個)のアルコール性ヒドロキシ基を有する有機化合物である。
上記ポリヒドロキシ化合物の分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)は、500以上であり、500~100000が好ましく、500~3000がより好ましい。
【0098】
上記ポリヒドロキシ化合物としては、国際公開第2022/014287号の段落[0101]及び[0102]に例示される化合物も援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0099】
〔処理液の物性〕
<pH>
処理液は、アルカリ性及び酸性のいずれであってもよい。
本発明の効果がより優れる点から、処理液のpHは、4.0~14.0が好ましく、8.0~14.0がより好ましく、8.0~13.0が更に好ましく、10.5~13.0が特に好ましい。
なかでも、処理液を、Cu、Co、及び、Ruからなる群から選択される少なくとも1種を含む被対象物の処理に用いる場合、Cu、Co、及び、Ruの腐食抑制性により優れる点から、処理液のpHは、8.0~14.0が好ましく、8.0~13.0がより好ましく、10.5~13.0が更に好ましい。
また、処理液を、Wを含む被処理物の処理に用いる場合、Wの腐食抑制性により優れる点から、処理液のpHは、4.0~13.0が好ましく、5.0~9.0がより好ましく、5.0~7.0が更に好ましい。
なお、処理液のpHは、公知のpHメーターを用いて、JIS Z8802-1984に準拠した方法により測定できる。pHの測定温度は25℃とする。
【0100】
<金属含有量>
処理液中に不純物として含まれる金属(例えば、Fe、Co、Na、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Zn、Sn、及び、Agの金属元素)の含有量(イオン濃度として測定される)は、いずれも5質量ppm以下であることが好ましく、1質量ppm以下であることがより好ましい。最先端の半導体素子の製造においては、更に高純度の処理液が求められることが想定されることから、上記金属の含有量が1質量ppmよりも低い値、つまり、質量ppbオーダー以下であることが更に好ましく、100質量ppb以下であることが特に好ましく、10質量ppb未満であることが最も好ましい。下限としては、0が好ましい。
【0101】
金属含有量の低減方法としては、例えば、処理液を製造する際に使用する原材料の段階、又は、処理液の製造後の段階において、蒸留及びイオン交換樹脂又はフィルタを用いたろ過等の精製処理を行うことが挙げられる。
他の金属含有量の低減方法としては、原材料又は製造された処理液を収容する容器として、後述する不純物の溶出が少ない容器を用いることが挙げられる。また、処理液の製造時に配管等から金属成分が溶出しないように、配管内壁にフッ素樹脂のライニングを施すことも挙げられる。
【0102】
<不溶性粒子>
処理液は、不溶性粒子を実質的に含まないことが好ましい。
上記「不溶性粒子」とは、無機固形物及び有機固形物等の粒子であって、最終的に処理液中で溶解せずに粒子として存在するものが該当する。
上記「不溶性粒子を実質的に含まない」とは、処理液が含む溶媒で処理液を10000倍に希釈して測定用組成物とし、測定用組成物の1mL中に含まれる粒径50nm以上の粒子の個数が、40000個以下であることを意味する。なお、測定用組成物に含まれる粒子の個数は、市販のパーティクルカウンターを利用して液相で測定できる。
市販のパーティクルカウンター装置としてはリオン社製、PMS社製の装置が使用できる。前者の代表装置としてはKS-19F、後者の代表装置としてはChem20などが挙げられる。より大きな粗大粒子を測定する為には、KS-42シリーズ、LiQuilaz II Sシリーズ等の装置が使用できる。
不溶性粒子としては、例えば、シリカ(コロイダルシリカ及びヒュームドシリカを含む)、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア、ゲルマニア、酸化マンガン、及び、炭化珪素等の無機固形物;ポリスチレン、ポリアクリル樹脂、及び、ポリ塩化ビニル等の有機固形物等の粒子が挙げられる。
処理液から不溶性粒子を除去する方法としては、例えば、フィルタリング等の精製処理が挙げられる。
【0103】
<粗大粒子>
処理液は、粗大粒子を含んでいてもよいが、その含有量が低いことが好ましい。
粗大粒子とは、粒子の形状を球体とみなした場合における直径(粒径)が1μm以上である粒子を意味する。
処理液に含まれる粗大粒子は、原料に不純物として含まれる塵、埃、有機固形物、及び、無機固形物等の粒子、並びに、処理液の調液中に汚染物として持ち込まれる塵、埃、有機固形物、及び、無機固形物等の粒子であって、最終的に処理液中で溶解せずに粒子として存在するものが該当する。
【0104】
処理液における粗大粒子の含有量としては、粒径1μm以上の粒子の含有量が、処理液1mLあたり100個以下であることが好ましく、50個以下であることがより好ましい。下限は、処理液1mLあたり0個以上が好ましく、0.01個以上がより好ましい。
処理液中に存在する粗大粒子の含有量は、レーザを光源とした光散乱式液中粒子測定方式における市販の測定装置を利用して液相で測定できる。
粗大粒子の除去方法としては、例えば、後述するフィルタリング等の精製処理が挙げられる。
【0105】
[製造方法]
処理液は、公知の方法により製造できる。以下、処理液の製造方法について詳述する。
【0106】
〔調液工程〕
処理液は、例えば、上記各成分を混合することにより製造できる。
処理液の調液方法としては、例えば、精製した純水を入れた容器に、還元剤及び特定化合物と、必要に応じて任意成分とを順次添加した後、撹拌して混合するとともに、必要に応じてpH調整剤を添加して混合液のpHを調整することにより、処理液を調液する方法が挙げられる。また、各成分を容器に添加する場合、一括して添加してもよいし、複数回にわたって分割して添加してもよい。
【0107】
処理液の調液に使用する撹拌装置及び撹拌方法は、撹拌機又は分散機として公知の装置を使用すればよい。撹拌機としては、例えば、工業用ミキサー、可搬型撹拌器、メカニカルスターラー、及び、マグネチックスターラーが挙げられる。分散機としては、例えば、工業用分散器、ホモジナイザー、超音波分散器、及び、ビーズミルが挙げられる。
【0108】
処理液の調液工程における各成分の混合及び後述する精製処理、並びに、製造された処理液の保管は、40℃以下で行うことが好ましく、30℃以下で行うことがより好ましい。また、下限としては、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。上記の温度範囲で処理液の調液、処理及び/又は保管を行うことにより、長期間安定に性能を維持できる。
【0109】
<精製>
処理液を調液するための原料のいずれか1種以上に対して、事前に精製処理を行うことが好ましい。精製処理としては、例えば、蒸留、イオン交換、及び、ろ過(フィルタリング)等の公知の方法が挙げられる。
精製の程度は、原料の純度が99質量%以上となるまで精製することが好ましく、原液の純度が99.9質量%以上となるまで精製することがより好ましい。上限としては、99.9999質量%以下が好ましい。
【0110】
精製処理の方法としては、例えば、原料をイオン交換樹脂又はRO膜(Reverse Osmosis Membrane)等に通液する方法、原料の蒸留、及び、フィルタリングが挙げられる。
精製処理として、上記精製方法を複数組み合わせて実施してもよい。例えば、原料に対して、RO膜に通液する1次精製を行った後、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂、又は、混床型イオン交換樹脂からなる精製装置に通液する2次精製を実施してもよい。
また、精製処理は、複数回実施してもよい。
【0111】
フィルタリングに用いるフィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に制限されない。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリアリルスルホン(PAS)、並びに、ポリエチレン及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度又は超高分子量を含む)からなるフィルタが挙げられる。これらの材料のなかでもポリエチレン、ポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)、フッ素樹脂(PTFE及びPFAを含む)、及び、ポリアミド系樹脂(ナイロンを含む)からなる群から選択される材料が好ましく、フッ素樹脂のフィルタがより好ましい。これらの材料により形成されたフィルタを用いて原料のろ過を行うことで、欠陥の原因となりやすい極性の高い異物を効果的に除去できる。
【0112】
<容器>
処理液(後述する希釈処理液の態様を含む)は、腐食性等が問題とならない限り、任意の容器に充填して保管、運搬及び使用できる。
【0113】
容器としては、半導体用途向けに、容器内のクリーン度が高く、容器の収容部の内壁から各液への不純物の溶出が抑制された容器が好ましい。そのような容器としては、半導体処理液用容器として市販されている各種容器が挙げられ、例えば、アイセロ化学社製の「クリーンボトル」シリーズ及びコダマ樹脂工業製の「ピュアボトル」等が挙げられ、これらに制限されない。
また、容器としては、国際公開第2022/004217号の段落[0121]~[0124]に例示される容器も援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0114】
これらの容器は、処理液を充填する前にその内部が洗浄されることが好ましい。洗浄に使用される液体は、その液中における金属不純物量が低減されていることが好ましい。処理液は、製造後にガロン瓶又はコート瓶等の容器にボトリングし、輸送、保管されてもよい。
【0115】
保管における処理液中の成分の変化を防ぐ目的で、容器内を純度99.99995体積%以上の不活性ガス(窒素又はアルゴン等)で置換しておいてもよい。特に含水率が少ないガスが好ましい。また、輸送及び保管に際しては、常温であってもよく、変質を防ぐため、-20℃から20℃の範囲に温度制御してもよい。
【0116】
<クリーンルーム>
処理液の製造、容器の開封及び洗浄、処理液の充填等を含めた取り扱い、処理分析、並びに、測定は、全てクリーンルームで行うことが好ましい。クリーンルームは、14644-1クリーンルーム基準を満たすことが好ましい。ISO(国際標準化機構)クラス1、ISOクラス2、ISOクラス3及びISOクラス4のいずれかを満たすことが好ましく、ISOクラス1又はISOクラス2を満たすことがより好ましく、ISOクラス1を満たすことが更に好ましい。
【0117】
〔希釈工程〕
上記処理液は、水等の希釈剤を用いて希釈する希釈工程を経た後、希釈された処理液(希釈処理液)として被対象物の処理に供されてもよい。
なお、希釈処理液も、本発明の要件を満たす限り、本発明の処理液の一形態である。
【0118】
希釈工程に用いる希釈液に対しては、事前に精製処理を行うことが好ましい。また、希釈工程により得られた希釈処理液に対して、精製処理を行うことがより好ましい。
精製処理としては、上記処理液に対する精製処理として記載した、イオン交換樹脂又はRO膜等を用いたイオン成分低減処理及びフィルタリングを用いた異物除去が挙げられ、これらのうちいずれかの処理を行うことが好ましい。
【0119】
希釈工程における処理液の希釈率は、各成分の種類及び含有量、並びに、処理対象である被対象物に応じて適宜調整すればよいが、希釈前の処理液に対する希釈処理液の比率(希釈倍率)は、質量比又は体積比(23℃における体積比)で10~10000倍が好ましく、20~3000倍がより好ましく、50~1000倍が更に好ましい。
また、残渣除去性により優れる点で、処理液は水で希釈されることが好ましい。
【0120】
希釈前後におけるpHの変化(希釈前の処理液のpHと希釈処理液のpHとの差分)は、2.0以下が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.5以下が更に好ましい。
希釈前の処理液のpH及び希釈処理液のpHは、それぞれ、上記好適態様であることが好ましい。
【0121】
処理液を希釈する希釈工程の具体的方法は、上記の処理液の調液工程に準じて行えばよい。希釈工程で使用する撹拌装置及び撹拌方法もまた、上記の処理液の調液工程において挙げた公知の撹拌装置を用いて行えばよい。
【0122】
[使用用途]
本発明の処理液は、半導体の製造において使用される各種材料に対して使用できる。以下、本発明の処理液の被対象物について詳述する。
【0123】
上記処理液は、例えば、基板上に存在する絶縁膜、レジスト、反射防止膜、エッチング残渣、及び、アッシング残渣等の除去に使用できる。上記処理液はCMP処理、又は、バフ研磨が施された被対象物(特に、半導体基板)を洗浄する洗浄工程に使用されることがより好ましい。
上述したとおり、処理液を用いる際には、処理液を希釈して得られる希釈処理液として用いてもよい。
【0124】
〔被対象物〕
処理液の被対象物としては、例えば、金属を有する被対象物が挙げられ、金属を有する半導体基板が好ましい。
なお、半導体基板が金属を有する場合、例えば、半導体基板の表裏、側面、及び、溝内等のいずれに金属を有していてもよい。また、半導体基板が金属を有する場合、半導体基板の表面上に直接金属がある場合のみならず、半導体基板上に他の層を介して金属がある場合も含む。
【0125】
金属としては、例えば、銅(Cu)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、オスミウム(Os)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、ランタン(La)、及び、イリジウム(Ir)からなる群から選択される少なくとも1種の金属Mが挙げられ、Cu、Co、Ru、Mo、又は、Wが好ましく、Cu、Co、又は、Ruがより好ましく、Cuが更に好ましい。つまり、被対象物としては、Cuを含む被対象物が好ましい。また、被対象物としては、Wを含む被対象物も好ましい。
【0126】
金属は、金属(金属原子)を含む物質であればよく、例えば、金属Mの単体、及び、金属Mを含む合金が挙げられる。
【0127】
処理液の被対象物は、例えば、半導体基板、金属配線膜、バリアメタル、及び、絶縁膜を有していてもよい。
【0128】
半導体基板を構成するウエハとしては、例えば、シリコン(Si)ウエハ、シリコンカーバイド(SiC)ウエハ、及び、シリコンを含む樹脂系ウエハ(ガラスエポキシウエハ)等のシリコン系材料からなるウエハ、ガリウムリン(GaP)ウエハ、ガリウムヒ素(GaAs)ウエハ、並びに、インジウムリン(InP)ウエハが挙げられる。
シリコンウエハとしては、例えば、シリコンウエハに5価の原子(例えば、リン(P)、ヒ素(As)、及び、アンチモン(Sb)等)をドープしたn型シリコンウエハ、並びに、シリコンウエハに3価の原子(例えば、ホウ素(B)及びガリウム(Ga)等)をドープしたp型シリコンウエハが挙げられる。シリコンウエハのシリコンとしては、例えば、アモルファスシリコン、単結晶シリコン、多結晶シリコン、及び、ポリシリコンが挙げられる。
なかでも、シリコンウエハ、シリコンカーバイドウエハ、及び、シリコンを含む樹脂系ウエハ(ガラスエポキシウエハ)等のシリコン系材料からなるウエハが好ましい。
【0129】
絶縁膜としては、例えば、シリコン酸化膜(例えば、二酸化ケイ素(SiO)膜及びオルトケイ酸テトラエチル(Si(OC)膜(TEOS膜)等)、シリコン窒化膜(例えば、窒化シリコン(Si)及び窒化炭化シリコン(SiNC)等)、並びに、低誘電率(Low-k)膜(例えば、炭素ドープ酸化ケイ素(SiOC)膜、BD(ブラックダイヤモンド)膜、及びシリコンカーバイド(SiC)膜等)が挙げられ、低誘電率(Low-k)膜が好ましい。
【0130】
金属配線膜としては、銅含有膜、コバルト含有膜、及び、ルテニウム含有膜が好ましい。
銅含有膜としては、例えば、金属銅のみからなる配線膜(銅配線膜)及び金属銅と他の金属とからなる合金製の配線膜(銅合金配線膜)が挙げられる。
銅合金配線膜としては、Al、Ti、Cr、Mn、Ta、及び、Wから選ばれる1種以上の金属と銅とからなる合金製の配線膜が挙げられる。より具体的には、銅-アルミニウム合金配線膜(CuAl合金配線膜)、銅-チタン合金配線膜(CuTi合金配線膜)、銅-クロム合金配線膜(CuCr合金配線膜)、銅-マンガン合金配線膜(CuMn合金配線膜)、銅-タンタル合金配線膜(CuTa合金配線膜)、及び、銅-タングステン合金配線膜(CuW合金配線膜)が挙げられる。
【0131】
コバルト含有膜としては、例えば、金属コバルトのみからなる金属膜(コバルト金属膜)、及び、金属コバルトと他の金属とからなる合金製の金属膜(コバルト合金金属膜)が挙げられる。
コバルト合金金属膜としては、Ti、Cr、Fe、Ni、Mo、Pd、Ta、及び、Wから選ばれる1種以上の金属とコバルトとからなる合金製の金属膜が挙げられる。より具体的には、コバルト-チタン合金金属膜(CoTi合金金属膜)、コバルト-クロム合金金属膜(CoCr合金金属膜)、コバルト-鉄合金金属膜(CoFe合金金属膜)、コバルト-ニッケル合金金属膜(CoNi合金金属膜)、コバルト-モリブデン合金金属膜(CoMo合金金属膜)、コバルト-パラジウム合金金属膜(CoPd合金金属膜)、コバルト-タンタル合金金属膜(CoTa合金金属膜)、及び、コバルト-タングステン合金金属膜(CoW合金金属膜)が挙げられる。
【0132】
ルテニウム含有膜としては、例えば、金属ルテニウムのみからなる金属膜(ルテニウム金属膜)、及び、金属ルテニウムと他の金属とからなる合金製の金属膜(ルテニウム合金金属膜)が挙げられる。
【0133】
半導体基板を構成するウエハ上に、上記の絶縁膜、銅含有膜、コバルト含有膜、及び、ルテニウム含有膜を形成する方法としては、通常この分野で行われる方法であれば特に制限はない。
絶縁膜の形成方法としては、例えば、半導体基板を構成するウエハに対して、酸素ガス存在下で熱処理を行うことによりシリコン酸化膜を形成し、次いで、シラン及びアンモニアのガスを流入して、化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)法によりシリコン窒化膜を形成する方法が挙げられる。
銅含有膜、コバルト含有膜、及び、ルテニウム含有膜を形成する方法としては、例えば、上記の絶縁膜を有するウエハ上に、レジスト等の公知の方法で回路を形成し、次いで、鍍金及びCVD法等の方法により、銅含有膜、コバルト含有膜、及び、ルテニウム含有膜を形成する方法が挙げられる。
【0134】
<CMP処理が施された被対象物>
処理液を洗浄のために用いる際の被対象物としては、CMP処理が施された被対象物(特に、半導体基板)が好ましく、CMP処理が施された、Cuを含む被対象物がより好ましい。
CMP処理は、例えば、金属配線膜、バリアメタル、及び、絶縁膜を有する半導体基板の表面を、研磨微粒子(砥粒)を含む研磨スラリーを用いて、化学的作用と機械的研磨の複合作用で平坦化する処理である。
【0135】
CMP処理が施された被対象物の表面には、CMP処理で使用した砥粒(例えば、シリカ及びアルミナ等)、研磨された金属配線膜、及び、バリアメタルに由来する金属不純物等の残渣が残存することがある。また、CMP処理の際に用いたCMP処理液に由来する有機物が残渣として残存する場合もある。これらの残渣は、例えば、配線間を短絡させ、半導体基板の電気的特性を劣化させるおそれがあるため、CMP処理が施された半導体基板は、これらの残渣を表面から除去するための洗浄処理に供される。
CMP処理が施された被対象物の具体例としては、精密工学会誌 Vol.84、No.3、2018に記載のCMP処理が施された基板が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0136】
<バフ研磨が施された被対象物>
被対象物の表面は、CMP処理が施された後、バフ研磨処理が施されていてもよい。
バフ研磨処理は、研磨パッドを用いて被対象物の表面における残渣を低減する処理である。具体的には、CMP処理が施された被対象物の表面と研磨パッドとを接触させて、その接触部分にバフ研磨用組成物を供給しながら被対象物と研磨パッドとを相対摺動させる。その結果、被対象物の表面の残渣が、研磨パッドによる摩擦力及びバフ研磨用組成物による化学的作用によって除去される。
【0137】
バフ研磨用組成物としては、被対象物の種類、並びに、除去対象とする残渣の種類及び量に応じて、公知のバフ研磨用組成物を適宜使用できる。バフ研磨用組成物に含まれる成分としては、特に制限されないが、例えば、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマー、分散媒としての水、及び、硝酸等の酸が挙げられる。
バフ研磨処理において使用する研磨装置及び研磨条件等については、被対象物の種類及び残渣の種類等に応じて、公知の装置及び条件から適宜選択できる。バフ研磨処理としては、例えば、国際公開第2017/169539号の段落[0085]~[0088]に記載の処理が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0138】
また、バフ研磨処理の一実施形態としては、バフ研磨用組成物として、上記の処理液を用いて被対象物にバフ研磨処理を施すことも好ましい。すなわち、CMP処理後の残渣を有する被対象物に対して、処理液をバフ研磨に使用することも好ましい。
【0139】
[使用方法]
処理液は、公知の方法により使用できる。以下、処理液の使用方法について詳述する。
【0140】
〔処理工程〕
処理液の使用方法としては、例えば、被対象物と処理液とを接触させる工程を含む被対象物の処理方法が挙げられる。以下、被対象物と処理液とを接触させる工程を、「接触工程」ともいう。
被対象物と処理液とを接触させる方法としては、特に制限されず、例えば、タンクに入れた処理液中に被対象物を浸漬する方法、被対象物上に処理液を噴霧する方法、被対象物上に処理液を流す方法、及び、これらの組み合わせが挙げられる。上記方法は、目的に応じて適宜選択すればよい。
また、上記方法は、通常この分野で行われる様式を適宜採用してもよい。例えば、処理液を供給しながらブラシ等の洗浄部材を被対象物の表面に物理的に接触させて残渣等を除去するスクラブ洗浄、及び、被対象物を回転させながら処理液を滴下するスピン(滴下)式等であってもよい。浸漬式では、被対象物の表面に残存する不純物をより低減できる点で、処理液に浸漬された被対象物に対して超音波処理を施すことが好ましい。
【0141】
接触工程における被対象物と処理液との接触は、1回のみ実施してもよく、2回以上実施してもよい。2回以上接触させる場合は、同じ方法を繰り返してもよいし、異なる方法を組み合わせてもよい。
【0142】
接触工程の方法としては、枚葉方式及びバッチ方式のいずれであってもよい。
枚葉方式とは、一般的に被対象物を1枚ずつ処理する方式であり、バッチ方式とは、一般的に複数枚の被対象物を同時に処理する方式である。
【0143】
処理液の温度は、通常この分野で行われる温度であれば特に制限はない。一般的には室温(約25℃)で洗浄が行われるが、残渣除去性の向上及び部材へのダメージ性を抑えるために、温度は任意に選択できる。例えば、処理液の温度としては、10~60℃が好ましく、15~50℃がより好ましい。
【0144】
被対象物と処理液との接触時間は、処理液に含まれる各成分の種類及び含有量、並びに、処理液の使用対象及び目的に応じて適宜変更できる。実用的には、10~120秒が好ましく、20~90秒がより好ましく、30~60秒が更に好ましい。
【0145】
処理液の供給量(供給速度)としては、50~5000mL/分が好ましく、500~2000mL/分がより好ましい。
【0146】
接触工程において、処理液の処理能力をより増進するために、機械的撹拌方法を用いてもよい。
機械的撹拌方法としては、例えば、被対象物上で処理液を循環させる方法、被対象物上で処理液を流過又は噴霧させる方法及び超音波又はメガソニックにて処理液を撹拌する方法が挙げられる。
【0147】
また、接触工程の後に、被対象物とリンス液とを接触させる工程(以下、「リンス工程」ともいう。)を行ってもよい。リンス工程を実施することにより、接触工程で得られた被対象物をリンス液で洗浄し、残渣を効率的に除去できる。
リンス工程は、被対象物の処理工程の後に連続して行われ、リンス液を用いて被対象物をすすぐ工程であることが好ましい。リンス工程は、上記機械的撹拌方法を用いて行ってもよい。
【0148】
リンス液としては、例えば、水(好ましくはDI水)、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、N-メチルピロリジノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、及び、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。また、pHが8.0超である水性リンス液(希釈した水性の水酸化アンモニウム等)を利用してもよい。
【0149】
リンス液を被対象物に接触させる方法としては、上記処理液を被対象物に接触させる方法を同様に適用できる。
被対象物とリンス液との接触時間は、処理液に含まれる各成分の種類及び含有量、並びに、処理液の使用対象及び目的に応じて適宜変更できる。実用的には、10~120秒が好ましく、20~90秒がより好ましく、30~60秒が更に好ましい。
【0150】
なお、上記リンス工程の後に、被対象物を乾燥させる乾燥工程を行ってもよい。
乾燥方法としては、例えば、スピン乾燥法、被対象物上に乾性ガスを流過させる方法、ホットプレート及び赤外線ランプ等の加熱手段によって基板を加熱する方法、マランゴニ乾燥法、ロタゴニ乾燥法、IPA(イソプロピルアルコール)乾燥法、並びに、これらを任意に組み合わせた方法が挙げられる。
【0151】
[半導体デバイスの製造方法]
上記被対象物の処理方法は、半導体デバイスの製造方法に好適に適用できる。
上記処理方法は、基板について行われるその他の工程の前又は後に組み合わせて実施してもよい。上記処理方法を実施する中にその他の工程に組み込んでもよいし、その他の工程の中に上記処理方法を組み込んで実施してもよい。
その他の工程としては、例えば、金属配線、ゲート構造、ソース構造、ドレイン構造、絶縁膜、強磁性層、及び、非磁性層等の構造の形成工程(例えば、層形成、エッチング、化学機械研磨、及び、変成等)、レジストの形成工程、露光工程及び除去工程、熱処理工程、洗浄工程、並びに、検査工程が挙げられる。
【0152】
上記処理方法は、バックエンドプロセス(BEOL:Back end of the line)、ミドルプロセス(MOL:Middle of the line)、及び、フロントエンドプロセス(FEOL:Front end of the line)中のいずれの段階で行ってもよく、フロントエンドプロセス又はミドルプロセス中で行うことが好ましい。
【実施例0153】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
【0154】
以下の実施例において、処理液のpHは、pHメーター(堀場製作所社製、型式「F-74」)を用いて、JIS Z8802-1984に準拠して25℃において測定した。
また、実施例及び比較例の処理液の製造にあたって、容器の取り扱い、処理液の調液、充填、保管及び分析測定は、全てISOクラス2以下を満たすレベルのクリーンルームで行った。
【0155】
[処理液の原料]
下記表に記載の化合物を使用して、処理液を製造した。処理液を製造するために使用した各成分はいずれも、半導体グレードに分類されるもの又はそれに準ずる高純度グレードに分類されるものを使用した。
【0156】
〔還元剤〕
・アスコルビン酸
・カフェ酸(ポリフェノール化合物)
・アリザリン(ポリフェノール化合物)
・エンドクロシン(ポリフェノール化合物)
・ウルシオール(ポリフェノール化合物)
・レゾルシノール(ポリフェノール化合物)
・ヒドロキノン(ポリフェノール化合物)
・エモジン(ポリフェノール化合物)
・ケルセチン(ポリフェノール化合物)
・カテキン(ポリフェノール化合物)
・過酸化水素
・ヒドラジン
・没食子酸(ポリフェノール化合物)
・3-O-エチルグリセリルアスコルビン酸(アスコルビン酸誘導体)
・アスコルビン酸ナトリウム(アスコルビン酸塩)
・カテコール(ポリフェノール化合物)
・ヒドロキシキノール(ポリフェノール化合物)
・没食子酸メチル(ポリフェノール化合物、没食子酸誘導体)
・没食子酸エチル(ポリフェノール化合物、没食子酸誘導体)
・没食子酸プロピル(ポリフェノール化合物、没食子酸誘導体)
・没食子酸オクチル(ポリフェノール化合物、没食子酸誘導体)
・ピロガロール(ポリフェノール化合物)
【0157】
〔特定化合物〕
・デヒドロアスコルビン酸
・2,3-ジケトグロン酸
・4-オキサロクロトン酸
・化合物X:3,4,5-トリオキソシクロヘキサン-1-カルボン酸
【0158】
〔その他化合物〕
・TEAH:テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(特定第4級アンモニウム化合物)
・TBAH:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(特定第4級アンモニウム化合物)
・ETMAH:エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(特定第4級アンモニウム化合物)
・コリン:2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(特定第4級アンモニウム化合物)
・1,2-ジアミノプロパン(アミン化合物)
・N-メチル-1,3-ジアミノプロパン(アミン化合物)
・エタノールアミン(アミン化合物)
・プロパノールアミン(アミン化合物)
・クエン酸(キレート剤)
・ギ酸(キレート剤)
・シュウ酸(キレート剤)
・酒石酸(キレート剤)
・乳酸(キレート剤)
・HEDPO:1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸(キレート剤)
・EDTPO:エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(キレート剤)
・ヒスチジン(キレート剤)
・トリアゾール(防食剤)
・テトラゾール(防食剤)
・ピロール(防食剤)
・ポリアクリル酸(Mw=2,000、重合体)
・ポリエチレングリコール(Mw=500、界面活性剤)
【0159】
処理液のpHは、必要に応じて硫酸及び/又は水酸化カリウムをpH調整剤として用いて調整した。
処理液において、表中に処理液の成分として明示された成分及びpH調整剤を含まない残りの成分(残部)は、超純水である。
【0160】
[処理液の製造]
処理液の製造方法について、実施例1を例に説明する。
超純水に、アスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸、及び、TEAHを、最終的に得られる処理液が下記表に記載の配合となる量でそれぞれ添加した。得られた混合液を十分に撹拌することにより、実施例1の処理液を得た。
【0161】
実施例1の製造方法に準じて、下記表に示す組成を有する各実施例又は各比較例の処理液を、それぞれ製造した。
【0162】
[処理液の評価]
得られた処理液について、Cuの腐食抑制性及び有機残渣除去性を評価した。以下、評価方法について説明する。
【0163】
〔Cuの腐食抑制性の評価〕
上記の方法で製造した処理液を用いて、Cuの腐食抑制性を評価した。
各実施例又は各比較例の処理液150mL中に2.0cm×2.0cmのCuウエハを入れ、室温(25℃)で10分間浸漬処理した。浸漬処理前後のウエハの膜厚をCR300DE(抵抗値測定器、国際電気セミコンダクターサービス社製)を用いて測定し、上記浸漬処理前後の膜厚差からエッチングレート(ER-A)(Å/min)を求めた。
処理液としてDIWを用いて、同様の手法にてエッチングレート(ER-B)(Å/min)を測定した。
【0164】
処理液としてDIWを用いて得られたエッチングレート(ER-B)に対する、実施例又は比較例の処理液を用いた際のエッチングレート(ER-A)の比率(ER-A/ER-B)を、下記評価基準によって評価した。ER-A/ER-Bが小さいほど、Cuの腐食抑制性に優れる。
7:ER-A/ER-B≦0.3
6:0.3<ER-A/ER-B≦0.5
5:0.5<ER-A/ER-B≦0.9
4:0.9<ER-A/ER-B≦1.1
3:1.1<ER-A/ER-B≦1.5
2:1.5<ER-A/ER-B≦2.0
1:2.0<ER-A/ER-B
【0165】
〔有機残渣除去性の評価〕
上記の方法で製造した処理液を用いて、化学機械研磨を施した半導体基板を洗浄した際の有機残渣除去性を評価した。
FREX300S-II(研磨装置、荏原製作所社製)を用いて、研磨液として研磨液1を使用し、研磨圧力の面内平均値が105hPa、研磨液供給速度が200mL/min、研磨時間が30秒間となる条件で、表面にTEOS膜(Low-k膜)を有する直径12インチのウエハを研磨した。次に、研磨液として研磨液2を使用し、研磨圧力の面内平均値が70hPa、研磨液供給速度が200mL/min、研磨時間が60秒間となる条件で、上記の研磨処理が施されたウエハを研磨した。
得られたCMP処理が施されたウエハを、室温(23℃)に調整した各実施例又は各比較例の処理液のサンプルを用いて60秒間スクラブ洗浄し、乾燥処理した。
なお、上記研磨液1及び研磨液2の組成は下記の通りである。
研磨液1(pH7.0)
・コロイダルシリカ(PL3、扶桑化学工業社製) 0.1質量%
・グリシン 1.0質量%
・3-アミノ-1,2,4-トリアゾール 0.2質量%
・ベンゾトリアゾール(BTA) 30質量ppm
・過酸化水素 1.0質量%
・pH調整剤(アンモニア及び硝酸)
・水 残部
研磨液2(pH10.5)
・コロイダルシリカ(PL3、扶桑化学工業社製) 6.0質量%
・クエン酸 1.0質量%
・アルキルアルコキシレート界面活性剤 100質量ppm
・BTA 0.2質量%
・過酸化水素 1.0質量%
・pH調整剤(水酸化カリウム及び硝酸)
・水 残部
【0166】
その後、得られたウエハの研磨面をS-4800(走査型電子顕微鏡、SEM:Scanning Electron Microscope、日立ハイテク社製)を用いて観測し、必要に応じてエネルギー分散型X線分析装置(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)により構成元素を分析し対象の特定を行った。
これにより、2cm×2cm(単位面積)中に存在する有機残渣(有機物を主成分とする残渣物)に基づく欠陥数を計測した。
【0167】
下記評価基準により処理液の有機残渣除去性を評価した。ウエハの研磨面において、検出された単位面積あたりの有機残渣数が少ないほど、有機残渣除去性が優れる。
7:単位面積あたりの有機残渣数が、2個未満
6:単位面積あたりの有機残渣数が、2個以上、3個未満
5:単位面積あたりの有機残渣数が、3個以上、5個未満
4:単位面積あたりの有機残渣数が、5個以上、10個未満
3:単位面積あたりの有機残渣数が、10個以上、20個未満
2:単位面積あたりの有機残渣数が、20個以上、30個未満
1:単位面積あたりの有機残渣数が、30個以上
【0168】
[結果]
表中、「含有量(質量%)」欄は、処理液の全質量に対する各成分の含有量(質量%)を示す。
表中、「第4級アンモニウム化合物」は、式(B)で表される特定第4級アンモニウム化合物を示す。
表中、「B/A」欄の数値は、還元剤の含有量(A)に対する特定化合物の含有量(B)の質量比(特定化合物の含有量(B)/還元剤の含有量(A))を示す。
表中、「C/B」欄の数値は、特定化合物の含有量(B)に対する特定第4級アンモニウム化合物の含有量(C)の質量比(特定第4級アンモニウム化合物の含有量(C)/特定化合物の含有量(B))を示す。
表中、「A/D」欄の数値は、キレート剤の含有量(D)に対する還元剤の含有量(A)の質量比(還元剤の含有量(A)/キレート剤の含有量(D))を示す。
表中、pH欄の数値は、上記のpHメーターにより測定した希釈前後の処理液の25℃におけるpHを示す。
表中、「Cu防食性」欄は、Cuの腐食抑制性の評価結果を示す。
表2は表1の続きであり、表4は表3の続きであり、表6は表5の続きである。例えば、表1及び表2に記載の実施例28の処理液は、アスコルビン酸0.06質量%と、デヒドロアスコルビン酸0.01質量%と、TEAH0.126質量%と、クエン酸0.02質量%と、1,2-ジアミノプロパン0.106質量%とを含み、pHが11.0の処理液である。
【0169】
【表1】
【0170】
【表2】
【0171】
【表3】
【0172】
【表4】
【0173】
【表5】
【0174】
【表6】
【0175】
上記表から、本発明の処理液は、Cuの腐食抑制性(防食性)に優れ、かつ、有機残渣除去性にも優れることが確認された。
実施例1~6の結果から、還元剤の含有量が、処理液の全質量に対して、0.02質量%以上の場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例6~8の結果から、特定化合物の含有量が、処理液の全質量に対して、0.02質量%以上の場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例61~65の結果から、特定化合物の含有量が、処理液の全質量に対して、3.0質量%以下の場合、防食性がより優れ、0.3質量%以下の場合、防食性の効果が更に優れることが確認された。
実施例61~65の結果から、還元剤の含有量(A)に対する特定化合物の含有量(B)の質量比(B/A)が、50以下の場合、防食性がより優れ、5以下の場合、防食性が更に優れることが確認された。
実施例61~65の結果から、特定化合物の含有量(B)に対する、特定第4級アンモニウム化合物の含有量(C)の質量比(C/B)が、0.1以上の場合、防食性がより優れ、0.5以上の場合、防食性が更に優れることが確認された。
実施例9~20及び45~56の結果から、還元剤が、アスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体又はこれらの塩、並びに、ポリフェノール化合物からなる群から選択される少なくとも1種である場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例25~27の結果から、キレート剤の含有量が、0.01質量%以上の場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例25~27の結果から、キレート剤の含有量(D)に対する、還元剤の含有量(A)の質量比(A/D)が、0.02以上の場合、本発明の効果がより優れ、0.1以上の場合、本発明の効果が更に優れることが確認された。
実施例1及び28~32の結果から、処理液が、アミン化合物を含む場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例39~40及び42~43の結果から、アミン化合物の含有量が、処理液の全質量に対して、5.0質量%以下の場合、防食性がより優れることが確認された。
実施例2及び36~38の結果から、処理液が、防食剤を含む場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例66~70の結果から、処理液のpHが、10.5~13.0である場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例28及び35の結果から、処理液の濃度が異なる場合も、本発明の効果が優れることが確認された。
【0176】
〔Wの腐食抑制性の評価〕
上記の方法で調液した、実施例83~90の処理液、並びに、比較例1及び比較例2の処理液を用いて、W(タングステン)の腐食抑制性を評価した。
各実施例又は比較例の処理液を満たした容器に、2.0cm×2.0cmのWウエハを入れ、室温(25℃)で30分間浸漬処理を行った。その後、抵抗率測定器(VR250、国際電気セミコンダクターサービス社製)を用いて得られたウエハの膜厚を測定し、上記浸漬処理前後の膜厚差からエッチングレート(Å/min)を求めた。
【0177】
下記評価基準に従って、処理液のWの腐食抑制性を評価した。エッチングレートが低いほど、腐食抑制性が優れる。
7:1.5Å/min未満
6:1.5Å/min以上、1.8Å/min未満
5:1.8Å/min以上、2.1Å/min未満
4:2.1Å/min以上、2.4Å/min未満
3:2.4Å/min以上、2.7Å/min未満
2:2.7Å/min以上、3.0Å/min未満
1:3.0Å/min以上
【0178】
表7に、Wの腐食抑制性の評価結果を示す。各実施例及び比較例の処理液の組成は、表5及び表6に示した通りである。
【0179】
【表7】
【0180】
表7に示す通り、本発明の処理液は、Wの腐食抑制性にも優れることが確認された。
実施例83~90の比較より、処理液のpHが、5.0~7.0である場合、有機残渣除去性及びWの腐食抑制性がより優れることが確認された。