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特開2024-45035インドロカルバゾール誘導体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045035
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】インドロカルバゾール誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/22 20060101AFI20240326BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C07D471/22
C07D487/04 137
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023146371
(22)【出願日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2022149327
(32)【優先日】2022-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 延軍
(72)【発明者】
【氏名】長山 和弘
(72)【発明者】
【氏名】小松 英司
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 茜
【テーマコード(参考)】
4C050
4C065
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA08
4C050BB04
4C050CC04
4C050EE02
4C050FF05
4C050GG01
4C050HH01
4C065AA03
4C065BB04
4C065CC03
4C065EE02
4C065HH01
4C065JJ01
4C065KK10
4C065LL01
4C065PP03
4C065QQ05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インドロカルバゾール誘導体を製造するための、工業的に有利な製造方法。
【解決手段】下記式(151)で示される、化合物(A)と化合物(B)とのカップリング反応により化合物(C)を得る工程を含む、インドロカルバゾール誘導体の製造方法。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(151)で示される、化合物(A)と化合物(B)とのカップリング反応により化合物(C)を得る工程を含む、インドロカルバゾール誘導体の製造方法。
【化1】

(式(151)中、
151、R152は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6~60の芳香族炭化水素基、あるいは、置換基を有していてもよい炭素数3~50の芳香族複素環基を表すか、又は、置換基を有していてもよい炭素数6~60の芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい炭素数3~50の芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した1価の基を表す。
151は、それぞれ独立に、Cl、Br又はIを表す。
Zは脱離基を表す。
Mは遷移金属触媒を表す。
n151、m151は、それぞれ独立に、0~4の整数である。
153は、下記式(152)で表される。
【化2】

式(152)中、
151は、Br、Cl又はFである。
154は、水素原子、重水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を表し、2個以上のR154は、互いに同一であっても異なるものであってもよい。
p151は、0~6の整数である。
*は、前記Zとの結合位置である。)
【請求項2】
前記式(151)及び式(152)において、R151、R152、R153及びR154が有してもよい置換基が、各々独立して、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、4-フェニル-1-ブチル基、及び6-フェニル-1-ヘキシル基よりなる群から選択される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記Mが長周期型周期表第8族~第10族元素を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記化合物(B)が下記式(153)で表される、請求項1に記載の製造方法。
153-B(OR155 (153)
(式(153)中、R153は前記式(151)におけるR153と同義であり、R155は、各々独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。ここで、2個のR155は、互いに同一であっても異なるものであってもよく、2個のR155が互いに結合して環を形成していてもよい。)
【請求項5】
前記カップリング反応における反応温度が50℃から120℃である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記Mが長周期型周期表第8族~第10族元素とリン原子とを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記Mが長周期型周期表第10族元素を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
下記式(154)で示される反応により、前記式(151)で示されるカップリング反応により得られた前記化合物(C)から化合物(D)を得る工程を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【化3】

(式(154)中、
151、R152、R153、n151及びm151は、それぞれ、前記式(151)におけるR151、R152、R153、n151及びm151と同義である。
156はR153よりY151を除いた2価の基を表す。)
【請求項9】
前記化合物(D)が下記D1~D100から選択される、請求項8に記載の製造方法。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インドロカルバゾール誘導体の製造方法に関する。具体的には、本発明は、カップリング反応により、ハロゲン原子を有するナフタレン環をインドロカルバゾール環の6位と12位に導入する工程を含む、インドロカルバゾールの製造方法に関する。更に、本発明は、ハロゲン原子を有するナフタレン環が6位と12位に導入されたインドロカルバゾールにおける、ハロゲンとインドロカルバゾールの窒素原子上の水素原子とを脱離する工程を含む、インドロカルバゾール誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜型の電界発光素子としては、無機材料を用いたものに代わり、有機薄膜を用いた有機電界発光素子(OLED)の開発が盛んに行われている。有機電界発光素子は、通常、陽極と陰極の間に、電荷注入層、電荷輸送層、有機発光層、電子輸送層などを有し、これらの各層に適した材料が開発されつつある。有機発光層に用いられる発光材料は、赤、緑、青のそれぞれの発光色について開発が進んでいる。
【0003】
有機電界発光素子の発光材料としては、一般的な蛍光材料、貴金属錯体及び熱遅延蛍光材料が挙げられる。中でも、貴金属錯体及び熱遅延蛍光材料は、原理的に励起子の全てを発光に利用することができるものであり、これらを用いた有機電界発光素子の発光効率が徐々に更新されている。しかしながら、電荷遷移状態の影響により、貴金属錯体及び熱遅延蛍光材料の色純度は不十分である。そのため、近年では、色純度高い、高効率な多重共鳴型蛍光材料の研究開発が精力的に行われている。また、このような多重共鳴型蛍光材料としてインドロカルバゾール誘導体が着目されており、その工業的に有利な製造方法が求められている。
【0004】
特許文献1には、下記式により示される、パラジウム触媒を用いてインドロカルバゾールのジブロモ体とジベンゾフランのボロン酸との鈴木カップリング反応が開示されている。
【0005】
【化1】
【0006】
特許文献2には、下記式により示される、インドールとアルデヒドと環化させることによりインドロカルバゾール骨格を形成し、更に環化させて多重共鳴型蛍光材料を合成する方法が開示されている。この方法は副生成物が非常に多く、精製が困難であることから、目的物の総収率が低いという欠点がある。
【0007】
【化2】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許出願公開第110483533号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第113717172号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、インドロカルバゾール骨格を有する原料化合物から目的とするインドロカルバゾール誘導体を製造するための、副生成物が抑制され、精製が容易であり、より収率が高く、工業的に有利な製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、遷移金属触媒の存在下、ハロゲン原子を有するナフタレン環をインドロカルバゾール環の6位と12位に導入する工程を含むインドロカルバゾール誘導体の製造方法により上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の要旨は、次のとおりである。
【0012】
本発明の態様1は、
下記式(151)で示される、化合物(A)と化合物(B)とのカップリング反応により化合物(C)を得る工程を含む、インドロカルバゾール誘導体の製造方法である。
【0013】
【化3】
【0014】
(式(151)中、
151、R152は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6~60の芳香族炭化水素基、あるいは、置換基を有していてもよい炭素数3~50の芳香族複素環基を表すか、又は、置換基を有していてもよい炭素数6~60の芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい炭素数3~50の芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した1価の基を表す。
151は、それぞれ独立に、Cl、Br又はIを表す。
Zは脱離基を表す。
Mは遷移金属触媒を表す。
n151、m151は、それぞれ独立に、0~4の整数である。
153は、下記式(152)で表される。
【0015】
【化4】
【0016】
式(152)中、
151は、Br、Cl又はFである。
154は、水素原子、重水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を表し、2個以上のR154は、互いに同一であっても異なるものであってもよい。
p151は、0~6の整数である。
*は、前記Zとの結合位置である。)
【0017】
本発明の態様2は、態様1の製造方法において、
前記式(151)及び式(152)において、R151、R152、R153及びR154が有してもよい置換基が、各々独立して、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、4-フェニル-1-ブチル基、及び6-フェニル-1-ヘキシル基よりなる群から選択される、製造方法である。
【0018】
本発明の態様3は、態様1又は2の製造方法において、
前記Mが長周期型周期表第8族~第10族元素を含む、製造方法である。
【0019】
本発明の態様4は、態様1~3のいずれか1つの製造方法において、
前記化合物(B)が下記式(153)で表される、製造方法である。
153-B(OR155 (153)
(式(153)中、R153は前記式(151)におけるR153と同義であり、R155は、各々独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。ここで、2個のR155は、互いに同一であっても異なるものであってもよく、2個のR155が互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0020】
本発明の態様5は、態様1~4のいずれか1つの製造方法において、
前記カップリング反応における反応温度が50℃から120℃である、製造方法である。
【0021】
本発明の態様6は、態様1~5のいずれか1つの製造方法において、
前記Mが長周期型周期表第8族~第10族元素とリン原子とを含む、製造方法である。
【0022】
本発明の態様7は、態様1~6のいずれか1つの製造方法において、
前記Mが長周期型周期表第10族元素を含む、製造方法である。
【0023】
本発明の態様8は、態様1~7のいずれか1つの製造方法において、
下記式(154)で示される反応により、前記式(151)で示されるカップリング反応により得られた前記化合物(C)から化合物(D)を得る工程を含む、製造方法である。
【0024】
【化5】
【0025】
(式(154)中、
151、R152、R153、n151及びm151は、それぞれ、前記式(151)におけるR151、R152、R153、n151及びm151と同義である。
156はR153よりY151を除いた2価の基を表す。)
【0026】
本発明の態様9は、態様8の製造方法において、
前記化合物(D)が下記D1~D100から選択される、製造方法である。
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】
【化9】
【0031】
【化10】
【0032】
【化11】
【0033】
【化12】
【0034】
【化13】
【0035】
【化14】
【0036】
【化15】
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、インドロカルバゾール骨格を有する原料化合物から目的とするインドロカルバゾール誘導体を製造するための、副生成物が抑制され、精製が容易であり、より収率が高く、工業的に有利な製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に本発明について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0039】
本発明によるインドロカルバゾール誘導体の製造方法は、下記式(151)で示される、化合物(A)と化合物(B)とのカップリング反応により化合物(C)を得る工程を含む。
【0040】
【化16】
【0041】
(式(151)中、
151、R152は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6~60の芳香族炭化水素基、あるいは、置換基を有していてもよい炭素数3~50の芳香族複素環基を表すか、又は、置換基を有していてもよい炭素数6~60の芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい炭素数3~50の芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した1価の基を表す。
151は、それぞれ独立に、Cl、Br又はIを表す。
Zは脱離基を表す。
Mは遷移金属触媒を表す。
n151、m151は、それぞれ独立に、0~4の整数である。
153は、下記式(152)で表される。
【0042】
【化17】
【0043】
式(152)中、
151は、Br、Cl又はFである。
154は、水素原子、重水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を表し、2個以上のR154は、互いに同一であっても異なるものであってもよい。
p151は、0~6の整数である。
*は、前記Zとの結合位置である。)
【0044】
即ち、本発明は、インドールとハロゲンを含むナフタレンアルデヒド体と環化させ、インドロカルバゾール体を得る反応に代えて、脱離基とハロゲンとを共に含むナフタレン化合物を反応基質として用いて、ハロゲンを有するインドロカルバゾール化合物と炭素-炭素結合反応を経るクロスカップリング反応により、対応するカップリング化合物を製造する工程を含む。
本発明は、従来のインドールとアルデヒドとの環化反応のように反応点が多いことに起因する、大量の副生成物の生成により精製が困難となる問題が生じない。このため、本発明の製造方法によって、目的のカップリング化合物を高選択率かつ高収率で得ることができる。
【0045】
また、本発明によるインドロカルバゾール誘導体の製造方法は、下記式(154)で示される反応により、式(151)で示されるカップリング反応により得られた化合物(C)から化合物(D)を得る工程を含むことができる。
【0046】
【化18】
【0047】
(式(154)中、R151、R152、R153、n151及びm151は、それぞれ、式(151)におけるR151、R152、R153、n151及びm151と同義である。
156はR153よりY151を除いた2価の基を表す。)
【0048】
以下に、本発明の一実施形態である製造方法を詳細に説明する。以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)である第一の実施形態であるが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの内容に特定されない。
【0049】
本発明において、「置換基を有していてもよい」とは、置換基を1以上有していてもよいことを意味するものとする。
【0050】
[定義]
以下、本発明に係る化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)及び化合物(D)の構造を詳細に説明するにあたり、共通する部分構造は特段の断りが無い限り、以下の構造であるとする。
【0051】
<芳香族炭化水素基>
芳香族炭化水素基とは、後述の説明の対象となる化合物の構造の中での結合状態に応じて、芳香族炭化水素環構造の1価、2価、又は3価以上の構造を指す。
芳香族炭化水素環の構造において、通常、炭素数は制限されるものではないが、好ましくは炭素数6以上、60以下であり、炭素数の上限としてより好ましくは炭素数48以下、さらに好ましくは炭素数30以下である。具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等の、6員環の単環若しくは2~5個の環を含む縮合環基、又はこれらから選択される基が複数個連結した構造が挙げられる。芳香族炭化水素環が複数個連結する場合は、通常、2~10個連結した構造が挙げられ、2~5個連結した構造であることが好ましい。芳香族炭化水素環が複数個連結する場合、同一の構造が連結してもよく、異なる構造が連結してもよい。
芳香族炭化水素環構造として好ましくは、ベンゼン環、ビフェニル環すなわちベンゼン環が2個連結した構造、ターフェニル環すなわちベンゼン環が3個連結した構造、クォーターフェニレン環すなわちベンゼン環が4個連結した構造、ナフタレン環、フルオレン環である。
【0052】
<芳香族複素環基>
芳香族複素環基とは、化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)及び化合物(D)の構造の中での結合状態に応じて、芳香族複素環構造の1価、2価、又は3価以上の構造を指す。
芳香族複素環の構造において、通常、炭素数は制限されるものではないが、好ましくは、炭素数3以上、50以下であり、炭素数の上限としてより好ましくは炭素数45以下、さらに好ましくは炭素数30以下である。具体的には、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環等の、5~6員環の単環若しくは2~4個の環を含む縮合環基又はこれらが複数個連結した基が挙げられる。芳香族複素環が複数個連結する場合、同一の構造が連結してもよく、異なる構造が連結してもよい。芳香族複素環が複数個連結される場合は、通常、2~10個連結した構造が挙げられ、2~5個連結した構造であることが好ましい。
【0053】
芳香族複素環構造として好ましくは、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピリミジン環、トリアジン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環である。
【0054】
<置換基>
特に断りの無い場合、置換基とは任意の基であるが、好ましくは、下記置換基群Z1から選択される基である。また、有してよい置換基が置換基群Z1から選択される、又は、有してよい置換基が置換基群Z1から選択されることが好ましい、と記されている場合、好ましい置換基も下記置換基群Z1に記されている通りである。
【0055】
<置換基群Z1>
置換基群Z1は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、アリールアルキルアミノ基、アシル基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シリル基、シロキシ基、シアノ基、アラルキル基、芳香族炭化水素基、及び芳香族複素環基よりなる群である。これらの置換基は、直鎖、分岐及び環状のいずれの構造を含んでいてもよい。
【0056】
置換基群Z1として、より具体的には、以下の構造が挙げられる。
炭素数が1以上であり、好ましくは4以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であり、より好ましくは8以下であり、さらに好ましくは6以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基。具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。
炭素数が2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルケニル基。具体例としては、ビニル基等が挙げられる。
炭素数が2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖又は分岐のアルキニル基。具体例としては、エチニル基等が挙げられる。
炭素数が1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルコキシ基。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
炭素数が4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である、アリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基。具体例としては、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等が挙げられる。
炭素数が2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下である、アルコキシカルボニル基。具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
炭素数が2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるジアルキルアミノ基。具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。
炭素数が10以上、好ましくは12以上であり、通常36以下、好ましくは24以下のジアリールアミノ基。具体例としては、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N-カルバゾリル基等が挙げられる。
炭素数が7以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールアルキルアミノ基。具体例としては、フェニルメチルアミノ基が挙げられる。
炭素数が2以上であり、通常24以下、好ましくは12以下であるアシル基。具体例としては、アセチル基、ベンゾイル基が挙げられる。
フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子。好ましくはフッ素原子である。
炭素数が1以上であり、通常12以下、好ましくは6以下のハロアルキル基。具体例としては、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
炭素数が1以上であり、通常24以下、好ましくは12以下のアルキルチオ基。具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。
炭素数が4以上、好ましくは5以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるアリールチオ基。具体的には、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等が挙げられる。
炭素数が通常2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシリル基。具体例としては、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。
炭素数が2以上、好ましくは3以上であり、通常36以下、好ましくは24以下であるシロキシ基。具体例としては、トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等が挙げられる。
炭素数が通常7以上、好ましくは9以上であり、通常30以下、好ましくは18以下、より好ましくは10以下であるアラルキル基。具体例としては、ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル-2-イル基、2-フェニルブチル-2-イル基、3-フェニルペンチル-3-イル基、3-フェニル-1-プロピル基、4-フェニル-1-ブチル基、5-フェニル-1-ペンチル基、6-フェニル-1-ヘキシル基、7-フェニル-1-ヘプチル基、8-フェニル-1-オクチル基等が挙げられる。
炭素数が6以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族炭化水素基。具体例としては、フェニル基、ナフチル基、複数のフェニル基が連結した基、等が挙げられる。
炭素が3以上、好ましくは4以上であり、通常36以下、好ましくは24以下である芳香族複素環基。具体例としては、チエニル基、ピリジル基等が挙げられる。
【0057】
上記置換基は、直鎖、分岐又は環状のいずれの構造を含んでいてもよい。
上記置換基が隣接する場合、隣接した置換基同士が結合して環を形成してもよい。好ましい環の大きさは、4員環、5員環、6員環であり、具体例としては、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等が挙げられる。
【0058】
上記の置換基群Z1の中でも、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基である。
【0059】
また、上記置換基群Z1の各置換基は更に置換基を有していてもよい。それら置換基としては、上記置換基群Z1と同じのものが挙げられる。好ましくは、更なる置換基を有しないか、炭素数12以下のアルキル基、炭素数12以下のアルコキシ基、又はフェニル基、より好ましくは炭素数8以下のアルキル基、炭素数8以下のアルコキシ基、又はフェニル基である。
【0060】
<連結基>
連結基は特に限定はされないが、好ましくは、アルキレン基、2価の酸素原子又は置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素基である。
連結基として選択され得るアルキレン基としては、通常、炭素数1~12、好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~6のアルキレン基が挙げられる。
連結基として選択され得る2価の芳香族炭化水素基としては、通常、炭素数6以上であり、通常、炭素数36以下、好ましくは30以下、より好ましくは24以下の2価の芳香族炭化水素基が挙げられる。芳香族炭化水素環の構造としてはベンゼン環が好ましく、有してもよい置換基は、前述の置換基群Z1から選択することが出来る。
【0061】
<化合物(A)>
式(151)で示される反応における化合物(A)は、置換基を有する5,11-ジヒドロインドロ[3,2-b]カルバゾールと表現することもできる。
【0062】
(R151、R152
151、R152は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6~60の芳香族炭化水素基、あるいは、置換基を有していてもよい炭素数3~50の芳香族複素環基を表すか、又は、置換基を有していてもよい炭素数6~60の芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい炭素数3~50の芳香族複素環基からなる群から選択される基が直接若しくは連結基を介して複数個連結した1価の基を表す。n151、m151は、それぞれ独立に、0~4の整数である。
【0063】
151、R152は、それぞれ独立に、水素原子、重水素原子、置換基を有していてもよい炭素数6から60までの芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基であることが好ましい。
【0064】
芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラフェニレン環、フェナントレン環、クリセン環、ピレン環、ベンゾアントラセン環、又はペリレン環等の、炭素数が通常6以上、通常60以下、好ましくは30以下、より好ましくは18以下、さらに好ましくは10以下の基が挙げられる。多重共鳴効果を維持するため、分子の共役が延びすぎないように、アルキル基を有するベンゼン環が特に好ましい。
【0065】
アルキル基としては、炭素数が1以上、通常12以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0066】
アルコキシ基としては、炭素数が1以上、12以下、好ましくは8以下であるアルコキシ基が挙げられる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
【0067】
これらの基は置換基を有してもよい。有してよい置換基は前述の通りであり、具体的には、置換基群Z1から選択することが出来る。好ましい置換基は、前記置換基群Z1の好ましい置換基である。
【0068】
(X151
151は、それぞれ独立に、Cl、Br又はIを表す。X151は好ましくはBr又はIであり、より好ましくはBrである。
【0069】
(n151、m151)
n151、m151は、それぞれ独立に、0~4の整数である。n151、m151は好ましく0~2の整数であり、より好ましく0~1の整数である。
【0070】
<化合物(B)>
式(151)で示される反応における化合物(B)はZ-R153で表され、R153及びZは以下の通りである。
【0071】
(R153
153は、下記式(152)で表される。
【0072】
【化19】
【0073】
式(152)中、
151は、Br、Cl又はFである。R154は、水素原子、重水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を表し、2個以上のR154は、互いに同一であっても異なるものであってもよい。p151は、0~6の整数である。*は、Zとの結合位置である。
154の好ましい態様は、R151の好ましいアルキル基、アルコキシ基と同様である。
p151は好ましくは0~3の整数であり、より好ましくは0~2の整数であり、さらに好ましくは0~1の整数である。
【0074】
本発明の化合物(A)及び化合物(B)には、共にハロゲン原子が含まれる。ハロゲン原子を有する分子間の反応において、反応活性の差を利用して反応収率を向上することができる。化合物(A)に対し、反応性がより弱いハロゲン原子を有する化合物(B)を用いて反応させることが好ましい。前記のX151がIの場合、Y151はBr、Cl又はFであることが好ましい。前記のX151がBrの場合、Y151はCl又はFであることが好ましい。前記のX151がClの場合、Y151はFであることが好ましい。前記のX151がBrの場合、Y151はClであることが好ましい。
【0075】
前記式(151)及び式(152)において、R151、R152、R153及びR154が有してもよい置換基としては、各々独立して、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、ベンジル基、2-フェニルエチル基、4-フェニル-1-ブチル基、及び6-フェニル-1-ヘキシル基よりなる群から選択される基が好ましい。
【0076】
153の好ましい構造の具体例としては、以下の式(2-1)~式(2-23)で示される構造が挙げられる。
【0077】
【化20】
【0078】
インドロカルバゾール誘導体を多重共鳴型蛍光材料として用いる場合には、多重共鳴効果を維持するため、分子の共役が延びすぎないように、R154は、水素原子、重水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基が特に好ましい。
【0079】
(Z)
Zは脱離基を表す(以下、「脱離基Z」ともいう。)。脱離基Zは、1価の原子団基R153が脱離基Zから遷移金属触媒へトランスメタル化し得るものであれば特に限定されない。好ましくは下記に示す式(155)および、式(156)で表れる脱離基Zを挙げられる。
【0080】
-B(OR155 (155)
(式(155)中、R155は、各々独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。ここで、2個のR155は、互いに同一であっても異なるものであってもよく、2個のR155が互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0081】
上記式(155)におけるR155は、好ましくは、各々独立に、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基、或いはこれらが結合して-O-B-O-を含む環を形成するものである。2個のR155が互いに結合した環としては、例えば、*-C(CH-C(CH-*、*-CH-C(CH-CH-*(*は、酸素原子との結合位置である。)等が挙げられる。
また、R155が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0082】
-Mg-X152 (156)
(式(156)中、X152は、ハロゲン原子を表す。)
【0083】
上記式(156)におけるX152としては、Cl、Br、Iが好ましい。
【0084】
脱離基Zとしては、式(155)で表される脱離基が特に好ましい。
【0085】
化合物(B)の好ましい態様は、下記式(153)および下記式(157)で表される。
153-B(OR155 (153)
(式(153)中、R153は前記式(151)におけるR153と同義であり、R155は、各々独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。ここで、2個のR155は、互いに同一であっても異なるものであってもよく、2個のR155が互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0086】
153-Mg-X152 (157)
(式(157)中、R153は前記式(151)におけるR153と同義であり、X152は、ハロゲン原子を表す。)
【0087】
化合物(B)としては、式(153)で表れる態様が特に好ましい。
【0088】
<化合物(C)>
式(151)又は式(154)で示される反応における化合物(C)が有するR151、R152、R153、n151及びm151は、それぞれ、化合物(A)及び化合物(B)について述べたR151、R152、R153、n151及びm151と同義であり、好ましい態様もまた同様である。
【0089】
<化合物(D)>
式(154)で示される反応における化合物(D)が有するR151、R152、n151及びm151は、それぞれ、化合物(A)及び化合物(B)について述べたR151、R152、n151及びm151と同義であり、好ましい態様もまた同様である。また、R156は、上述したR153よりY151を除いた2価の基を表す。
【0090】
(好ましい態様)
化合物(D)は下記D1~D100から選択されることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0091】
【化21】
【0092】
【化22】
【0093】
【化23】
【0094】
【化24】
【0095】
【化25】
【0096】
【化26】
【0097】
【化27】
【0098】
【化28】
【0099】
【化29】
【0100】
【化30】
【0101】
<M>
式(151)で示される反応におけるMは、遷移金属触媒を表す(以下、「遷移金属触媒M」ともいう。)。遷移金属触媒Mは、遷移金属単体又は、遷移金属と配位子とが結合してなる触媒である。
【0102】
遷移金属としては、長周期型周期表第8族~第10族元素を含むことが好ましく、長周期型周期表第10族元素を含むことがより好ましく、ニッケル、パラジウムを含むことがさらに好ましく、パラジウムを含むことが特に好ましい。遷移金属触媒Mは、これらの遷移金属の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
【0103】
これらの遷移金属は、一般的には、ニッケルアセチルアセトン錯体、酢酸パラジウム、ジベンジリデンアセトンパラジウム等の金属錯体と後述のホスフィンを有する配位子とを溶媒中で混合して、反応活性な触媒を形成させて反応に用いる。従って、本発明で用いる遷移金属触媒Mは、長周期型周期表第8族~第10族元素とリン原子とを含むことが好ましい。
【0104】
配位子は、孤立電子対を持つ金属と配位結合し、錯体を形成する基を有する化合物であり、好ましくは、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、より好ましくは、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィンが用いられる。
【0105】
これらのホスフィン配位子は置換基を有していても良く、単結合、酸素原子、窒素原子、鉄原子、アルキル基等により2量化していてもよい。
【0106】
トリアリールホスフィンの例としては、トリフェニルホスフィン、トリ(オルトトリル)ホスフィン等が挙げられる。
トリアルキルホスフィンの例としては、トリ(n-ブチル)ホスフィン、トリ(t-ブチル)ホスフィン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン等が挙げられる。
ジアルキルアリールホスフィンの例としては、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル(SPhos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニル(RuPhos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(BrettPhos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-メチルビフェニル(MePhos)等が挙げられる。
【0107】
アルキルジアリールホスフィンの例としてはビス(ジフェニルホスフィノ)メタン等が挙げられる。
【0108】
これらの配位子は、遷移金属錯体に対して、1~100モル当量、より好ましくは1~10モル当量用いる事が、反応収率や反応速度の観点から好ましい。
【0109】
これらの配位子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
また、遷移金属触媒としては、1種を単独で用いてもよく、遷移金属や配位子の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
【0110】
遷移金属触媒の使用量は特に制限はないが、化合物(B)に対して、遷移金属触媒に含まれる遷移金属1つ当たりの量が0.1~30モル%程度となるように用いることが、反応活性と反応終了後の後処理の簡便さの観点から好ましい。
【0111】
<塩基性化合物>
式(151)で示される反応では、反応活性を高めるために、反応系に塩基性化合物を存在させてもよい。
塩基性化合物としては、プロトンを受容する又は塩基対を与える化学種であって、溶媒に溶解又は懸濁させて使用できるものであればよく、特に限定されない。
【0112】
塩基性化合物の好ましい例としては、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸三カリウム等の弱酸とアルカリ金属やアルカリ土類金属との塩、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、グアニジン等の有機アミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム等のアンモニウム塩、水酸化トリメチルスルホニウム等のアルキルスルホニウム塩、水酸化ジフェニルヨードニウム等のアルキル(アリール)ヨードニウム塩、ナトリウムエトキシド、ナトリウムt-ブトキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。
これらの塩基性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0113】
塩基性化合物を用いる場合、その使用量は、化合物(A)に対して好ましくは2~10モル当量、より好ましくは3~6モル当量程度とすることが、塩基性化合物を用いることによる反応活性の向上効果と、反応収率、反応時間の観点から好ましい。
【0114】
<溶媒>
式(151)で示される反応は、溶媒の存在下に行うことが好ましい。
溶媒としては、化合物(A)を溶解させ、前述の塩基性化合物により著しく分解されるようなものでなければよく、特に限定されない。
【0115】
溶媒としては、好ましくは、水、炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、ケトン系溶媒、アミン系溶媒、ハロゲン系溶媒、スルホキシド系溶媒等が挙げられる。
【0116】
これらのうち、反応条件における安定性が高いことから、特に好ましくは、水、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、アミン系溶媒、スルホキシド系溶媒である。
【0117】
炭化水素系溶媒の例としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等が挙げられる。
芳香族系溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
アルコール系溶媒の例としては、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。
エーテル系溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、アニソール、エチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
アミド系溶媒の例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
ケトン系溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、アセトフェノン等が挙げられる。
アミン系溶媒の例としては、トリエチルアミン、N,N-ジエチルアニリン等が挙げられる。
ハロゲン系溶媒としては、トリフルオロメチルベンゼン等が挙げられる。
スルホキシド系溶媒の例としては、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0118】
これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上の混合溶媒とする場合は、相溶性のある溶媒であっても、相溶性の無い溶媒でもよい。
【0119】
溶媒は、反応系を過大とすることなく、均一な反応系を形成できる程度に使用することが好ましく、化合物(A)の重量に対して0.01~1000倍量が好ましく、1~500倍量がより好ましい。
【0120】
なお、塩基性化合物を効率よく反応させるために、溶媒に対する任意の比率で界面活性剤を反応系に添加してもよく、界面活性剤自体を溶媒として用いてもよい。
【0121】
[インドロカルバゾール誘導体の製造方法]
本発明のインドロカルバゾール誘導体の製造方法は、式(151)で示される、化合物(A)と化合物(B)とのカップリング反応により化合物(C)を得る工程を含む。また、本発明のインドロカルバゾール誘導体の製造方法は、式(154)で示される反応により、前記カップリング反応により得られた化合物(C)から化合物(D)を得る工程を含むことが好ましい。
【0122】
本発明の製造方法により製造されるインドロカルバゾール誘導体は、式(151)で示される、化合物(A)と化合物(B)とのカップリング反応により化合物(C)を得る工程を含んで製造されるものであれば特に制限がない。
【0123】
本発明の製造方法により製造されるインドロカルバゾール誘導体としては、例えば、化合物(C)及び化合物(D)を挙げることができる。
本発明の製造方法により製造されるインドロカルバゾール誘導体が化合物(C)である場合には、一態様として、式(151)で示される、化合物(A)と化合物(B)とのカップリング反応により化合物(C)を得る工程を含むことにより、目的とするインドロカルバゾール誘導体を製造することができる。
また、本発明の製造方法により製造されるインドロカルバゾール誘導体が化合物(D)である場合には、一態様として、式(154)で示される反応により、前記式(151)で示されるカップリング反応により得られた化合物(C)から化合物(D)を得る工程を含むことにより、目的とするインドロカルバゾール誘導体を製造することができる。
【0124】
<式(151)で示される反応>
式(151)で示される反応は、下記のとおり表される。
【0125】
【化31】
【0126】
式(151)で示される反応は、化合物(A)と化合物(B)とのカップリング反応である。式(151)で示される反応の手順としては特に制限されず、例えば、遷移金属触媒もしくは遷移金属錯体と配位子、必要に応じて用いられる塩基性化合物、溶媒、化合物(A)、及び化合物(B)を混合して反応させる手順等が挙げられる。
【0127】
式(151)で示される反応に用いる各化合物を混合する手順の例としては、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下に、化合物(A)、化合物(B)、溶媒を混合した後、塩基性化合物を添加した混合溶液に、別の容器に遷移金属錯体、配位子、溶媒を添加して得られる遷移金属触媒溶液を添加して反応させる手順等が挙げられる。
ここで、不活性ガス雰囲気とするのは、遷移金属触媒が酸素に弱い場合が多く、触媒の失活を抑制するためである。
【0128】
式(151)で示されるカップリング反応における反応温度は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で0℃~200℃が好ましく、50℃~120℃がより好ましく、70℃~110℃がさらに好ましい。
【0129】
反応時間は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、0.5時間~7日間が好ましく、より好ましくは0.5時間~48時間、さらに好ましくは1時間~24時間である。
【0130】
化合物(A)と化合物(B)の混合モル比(化合物(A)/化合物(B))は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、0.02~0.50が好ましく、0.05~0.40がより好ましく、0.10~0.25がさらに好ましい。
【0131】
式(151)で示される反応の生成物である化合物(C)は、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー、昇華等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製することができる。
【0132】
<式(151)で示される反応の例>
式(151)で示される反応の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0133】
【化32】
【0134】
【化33】
【0135】
【化34】
【0136】
<式(154)で示される反応>
式(154)で示される反応は、下記のとおり表される。
【0137】
【化35】
【0138】
式(154)で示される反応は、式(151)に示される反応により得られた化合物(C)のハロゲンとインドロカルバゾールの窒素原子上の水素原子とを脱離するウルマンカップリング反応である。式(154)で示される反応の手順としては特に制限されず、例えば、ヨウ化銅、塩基性化合物、溶媒、化合物(C)を混合して160℃で反応させる手順等が挙げられる。
【0139】
式(154)で示される反応に用いる各試薬を混合する手順の例としては、室温で窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下に、化合物(C)、ヨウ化銅、塩基性化合物、溶媒を混合した後、窒素ガス等の不活性ガスでバブリングした後160℃で反応させる手順等が挙げられる。
ここで、不活性ガス雰囲気とするのは、インドロカルバゾールの窒素原子が酸素に酸化されることを抑制するためである。
【0140】
式(154)で示されるウルマンカップリング反応における反応温度は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で110℃~200℃が好ましく、130℃~180℃がより好ましく、150℃~170℃がさらに好ましい。
【0141】
反応時間は特に制限されないが、生成物の収率がより優れる点で、0.5時間~48時間が好ましく、より好ましくは1.0時間~24時間、さらに好ましくは2.0時間~12時間である。
【0142】
溶媒としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドンが好ましく、より好ましくはジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドである。
【0143】
触媒としては、ヨウ化銅、銅が挙げられる。
【0144】
塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリドが好ましく、より好ましくは炭酸カリウム、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリドである。
【0145】
ウルマンカップリング反応を促進するために用いることができる配位子として、例えば、1,10-フェナントロリンが挙げられる。
【0146】
式(154)で示される反応の生成物である化合物(D)は、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィー、昇華等の分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製することができる。
【0147】
<式(154)で示される反応の例>
式(154)で示される反応の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0148】
【化36】
【実施例0149】
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。
【0150】
[実施例1]
<中間体1の合成>
【0151】
【化37】
【0152】
窒素気流下、1-ブロモ-8-クロロナフタレン(10.4g,43.06mmol)のテトラヒドロフラン(100ml)溶液に、-75℃でn-ブチルリチウム(1.60M)(28.4ml,45.21mmol)を滴下して2時間反応させ、更にトリメトキシボラン(13.4g,129.18mmol)を滴下し2時間撹拌した。その後、希塩酸(1N)41.5mlを滴下し、30分間撹拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、目的物の中間体1(6.4g,収率72%)を無色固体として得た。
【0153】
<中間体2の合成>
【0154】
【化38】
【0155】
30℃で、5,11-ジヒドロインドロ[3,2-b]カルバゾール(3.2g、12.48mmol)をN-メチル-2-ピロリドン(190ml)に溶解させ、これに対して、N-ブロモスクシンイミド(4.44g、24.97mmol)を40mlのN-メチル-2-ピロリドンに溶かした溶液をゆっくり滴下し、2時間反応させた。反応液を水とメタノールの混合溶媒に注ぎ、沈殿をろ過し、塩化メチレンで洗って乾燥させることにより、目的物の中間体2(3.2g)を淡黄褐色固体として得た。
【0156】
<化合物C-1の合成>
【0157】
【化39】
【0158】
窒素気流中、中間体1(2.9g、14.02mmol)、中間体2(2.7g、6.52mmol)、1,2-ジメトキシエタン(50ml)、リン酸三カリウム水溶液(2M)19.6mlを、60℃で10分間撹拌した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.75g、0.65mmol)を加え、90℃で16時間反応させた。室温まで放冷した後、反応液に水(150ml)を加えて撹拌後、減圧濾過し、メタノール、塩化メチレンを用いて洗浄することにより、目的物の化合物C-1(2.4g、収率:64%)を淡黄褐色固体として得た。
【0159】
[実施例2]
<中間体3の合成>
【0160】
【化40】
【0161】
30℃で、化合物C-1(0.43g、0.74mmol)をN-メチル-2-ピロリドン(26ml)に溶解させ、これに対して、N-ブロモスクシンイミド(0.26g、1.48mmol)を5mlのN-メチル-2-ピロリドンに溶かした溶液をゆっくり滴下し、1時間反応させた。反応液を水とメタノールの混合溶媒に注ぎ、沈殿をろ過し、乾燥させることにより、目的物の中間体3(0.35g、収率:64%)を淡黄褐色固体として得た。
【0162】
<中間体4の合成>
【0163】
【化41】
【0164】
窒素気流中、中間体3(0.33g、0.449mmol)、市販品3-(6-フェニルヘキシル)フェニル)ボロン酸(0.3g、1.08mmol)、テトラヒドロフラン(15ml)、リン酸三カリウム水溶液(2M)1.4mlを、60℃で10分間撹拌し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.052g、0.045mmol)を加え、9時間還流した。室温まで放冷した後、反応液に水(150ml)を加えて撹拌後、減圧濾過した。濾取物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、目的物の中間体4(0.14g、収率:30%)を淡黄色固体として得た。
【0165】
<化合物D-12の合成>
【0166】
【化42】
【0167】
窒素気流中、中間体4(0.14g、0.133mmol)、1,10-フェナントロリン(0.0144g、0.08mmol)、炭酸カリウム(0.073g、0.53mmol)、N,N-ジメチルアセトアミド(3ml)を、60℃で10分間撹拌し、ヨウ化銅(0.015g、0.08mmol)を加え、165℃で7時間反応させた。室温まで放冷した後、反応液に水(30ml)を加え撹拌後、減圧濾過した。濾取物を塩化メチレンに溶解して飽和食塩水を加えて分液した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濾過した。濾取物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、目的物の化合物D-12(0.11g、収率:84%)を黒色固体として得た。
【0168】
[実施例3]
<2,8-ジターシャリブチル-5,11-ジヒドロインドロ[3,2-b]カルバゾールの合成>
【0169】
【化43】
【0170】
500mLのナスフラスコに、4-tert-ブチルフェニルヒドラジン塩酸塩(24.97g、0.21mol)とエタノール(180mL)を入れ、室温で撹拌した。さらに、酢酸ナトリウム(30.6g、0.37mol)の水(90mL)溶液を加え、室温で15分攪拌した。その後、シクロヘキセン-1,4-ジオン(7.01g、0.06mol)のエタノール溶液(46mL)を5分以上かけて滴下した。さらに、酢酸(45mL)を加えて、50℃で1時間、次いで0℃で1時間撹拌した。反応液をろ過し、薄い黄色の固体を得た。得られた固体を35℃で2時間真空乾燥した。乾燥後の固体を酢酸(68mL)と硫酸(17mL)の混合液(10℃)に10分以上かけて投入した。室温まで昇温し、さらに10分攪拌した。引き続き65℃で30分攪拌した後室温まで冷却し、反応混合物を0℃の水に投入した。沈殿物をろ過し、固体が灰色になるまでメタノールおよび水にて洗浄した。得られた固体を35℃で1時間真空乾燥したところ、2,8-ジターシャリブチル-5,11-ジヒドロインドロ[3,2-b]カルバゾールを灰色固体として得た。9.27g、収率20%。
【0171】
<中間体5の合成>
【0172】
【化44】
【0173】
30℃で、2,8-ジターシャリブチル-5,11-ジヒドロインドロ[3,2-b]カルバゾール(2.3g、6.24mmol)をN-メチル-2-ピロリドン(150ml)に溶解させ、これに対して、N-ブロモスクシンイミド(2.44g、13.71mmol)を40mlのN-メチル-2-ピロリドンに溶かした溶液をゆっくり滴下し、6時間反応させた。反応液を水とメタノールの混合溶媒に注ぎ、沈殿をろ過し、塩化メチレンで洗って乾燥させることにより、目的物の中間体5(1.76g)を淡黄褐色固体として得た。
【0174】
<化合物C-2の合成>
【0175】
【化45】
【0176】
窒素気流中、中間体1(1.51g、7.29mmol)、中間体5(1.75g、3.32mmol)、1,2-ジメトキシエタン(30ml)、リン酸三カリウム水溶液(2M)10.0mlを、60℃で10分間撹拌し、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.85g、0.74mmol)を加え、90℃で24時間反応させた。室温まで放冷した後、反応液に水(120ml)を加え撹拌後、減圧濾過し、メタノール、塩化メチレンを用いて洗浄することにより、目的物の化合物C-2(1.4g、収率:61%)を淡黄色固体として得た。
【0177】
[実施例4]
<化合物D-3の合成>
【0178】
【化46】
【0179】
窒素気流中、化合物C-2(0.36g、0.52mmol)、1,10-フェナントロリン(0.056g、0.31mmol)、炭酸カリウム(0.29g、2.08mmol)、N,N-ジメチルアセトアミド(10ml)を、60℃で10分間撹拌し、ヨウ化銅(0.059g、0.31mmol)を加え、165℃で5時間反応させた。室温まで放冷した後、反応液に水(30ml)を加え撹拌後、減圧濾過し、濾取物を塩化メチレンに溶解して飽和食塩水と分液した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濾過し、濾取物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、目的物の化合物D-3(0.3g、収率:93.7%)を黒色固体として得た。
【0180】
<イオン化ポテンシャルの測定方法>
Optel社製PCR-101を用いて光電子収量分光法(PYS)によりイオン化ポテンシャル(Ip)の測定を行った。
測定用サンプルの準備における溶剤の選別、製膜および乾燥方法について、日本国特開2019-175999号公報を参照した。
【0181】
サンプル用塗布液の濃度は、特に限定されるものではないが、成膜および乾燥後、50nmの膜厚が形成される濃度であればよい。
調製されたサンプル用塗布液を、石英基板上に成膜した。
【0182】
成膜後、乾燥させることにより、50nmの膜厚の測定用サンプルを得た。
この測定用サンプルを測定装置(Optel社製PCR-101)の測定室内の基板ホルダーにセットし、測定室の扉を閉じた。ターボ分子ポンプによって測定室を10-1Pa以下まで排気した。測定用サンプルに-50Vの電圧を与え、重水素ランプからの励起光を単色化して測定用サンプルへ入射し、微少電流計によって励起によってサンプルから放出される光電子を検出した。単色化された励起光のエネルギーと光電子の検出量のプロットからイオン化ポテンシャルを決定した。
【0183】
エネルギーギャップ(Eg)については、株式会社日立製作所製F-7000型分光蛍光光度計を用いて上記の50nmの膜厚の測定用サンプルの吸収スペクトルを測定した。その薄膜の短波長側の立ち上がりの所に接線を引き、求まった交点の波長(λ)nmを次の式に代入し目的の値を求めた。それによって得た値がEg(eV)である。
Eg=1240/λ
例えば、接線を引いて求めた値が波長450nmの場合には、Egの値は
Eg=1240/450=2.76(eV)
ということになる。
電子親和力(Ea)は、IpからEgを引いた値である。
HOMOのエネルギー準位の絶対値は電子軌道分子から外部(真空中)電子を取り出すためのイオン化ポテンシャルに相当し、LUMOのエネルギー準位の絶対値は電子親和力に相当する。D-3及びD-12のHOMO及びLUMOを表1に示す。
【0184】
【表1】
【0185】
表1に示す結果より、D-3及びD-12は浅いHOMOを有することが示され、ホールトラップ性能を低下させることによる高効率化を期待できることが分かった。
【0186】
<量子収率測定>
[最大発光波長の測定]
D-3及びD-12をそれぞれ、常温下で、2-メチルテトラヒドロフラン(アルドリッチ社製、脱水、安定剤非添加)に溶解し、1×10-5mol/Lの溶液を調製した。この溶液をテフロン(登録商標)コック付きの石英セルに入れ、窒素バブリングを20分以上行った後、室温で蛍光スペクトルを測定した。得られた蛍光スペクトル強度の最大値を示す波長を、最大発光波長とした。
【0187】
なお、発光スペクトルの測定には、以下の機器を用いた。
装置:浜松ホトニクス株式会社製 有機EL量子収率測定装置C9920-02
光源:モノクロ光源L9799-01
検出器:マルチチャンネル検出器PMA-11
励起光:380nm
【0188】
[PL量子収率の測定]
発光効率として、PL量子収率を測定した。PL量子収率は、材料に吸収された光(エネルギー)に対してどの程度の効率で発光が得られるかを示す指標であり、上記と同様、以下の機器を用いて測定した。
【0189】
装置:浜松ホトニクス株式会社製 有機EL量子収率測定装置C9920-02
光源:モノクロ光源L9799-01
検出器:マルチチャンネル検出器PMA-11
励起光:380nm
【0190】
D-3及びD-12の最大発光波長及びPL量子収率の測定結果を表2に示す。
【0191】
【表2】
【0192】
以上から、共役構造がインドロカルバゾール環からフェニル基まで広がっているD-12は、D-3よりも共役構造が大きく最大発光波長が長波長化しているにもかかわらずPL量子収率が低下しないことが分かった。
【0193】
[比較例1]
<化合物C-3の合成>
【0194】
【化47】
【0195】
中間体7及び8-ブロモ-1-ナフトアルデヒドを用い、中国特許出願公開第113717172号に記載の合成方法に従って目的化合物の化合物C-3を合成したが、副生成物が非常に多いため、生成した混合物の中より目的物を純度高く単離できないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明によるインドロカルバゾール誘導体の製造方法は、副生成物が抑制され、精製が容易であり、より収率が高いため、工業的に有利なインドロカルバゾール誘導体の製造方法として利用することができる。また、得られたインドロカルバゾール誘導体は、例えば、多重共鳴型蛍光材料として利用することができる。