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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045097
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ケイ素ヒドラジド前駆体化合物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/318 20060101AFI20240326BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20240326BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240326BHJP
   C23C 16/30 20060101ALI20240326BHJP
   C07F 7/10 20060101ALN20240326BHJP
   C07F 7/18 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
H01L21/318 B
H01L21/316 X
H01L21/318 C
H01L21/31 C
C23C16/30
C07F7/10 Q
C07F7/18 X
C07F7/10 E
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023205828
(22)【出願日】2023-12-06
(62)【分割の表示】P 2022559546の分割
【原出願日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】16/836,444
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カンデルワル, マニーシュ
(72)【発明者】
【氏名】バウム, トーマス エイチ.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】比較的低温で、ケイ素含有膜を形成するための組成物及び方法を提供する。
【解決手段】式(I)の化合物。

式中、R1及びR2は、独立して、C1-C4アルキル、フェニル、置換フェニル若しくはC4-C6シクロアルキルから選択されるか又はそれらが結合している窒素原子と一緒になって、C3-C5窒素含有環を形成することができ、R3及びR4は、独立して、水素若しくはC1-C4アルキルから選択されるか又はそれらが結合しているSi原子と一緒になって、C3-C5ケイ素含有環を形成し、かつ、R5及びR6は、独立して、水素又はC1-C4アルキルから選択され、Qは、クロロ、ブロモ、ヨードであってよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
(式中、R及びRは、独立して、C-Cアルキル、フェニル、置換フェニル若しくはC-Cシクロアルキルから選択されるか、又はそれらが結合している窒素原子と一緒になって、C-C窒素含有環を形成することができ、R及びRは、独立して、水素若しくはC-Cアルキルから選択されるか、又はそれらが結合しているSi原子と一緒になって、C-Cケイ素含有環を形成し且つR及びRは、独立して、水素又はC-Cアルキルから選択され、
Qは、クロロ、ブロモ、ヨード又は式
の基から選択され、且つ
xは、0又は1であり、且つ
(i)yは、0であり、ただし、yが0である場合、Qは、式
の基以外であるか、又は
(ii)xが1である場合、yは1である。)の化合物。
【請求項2】
、R、R、R、R及びRの各々が、独立して、メチル、エチル又はイソプロピルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式:
(式中、Qは請求項1に記載の通りである。)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式:
[式中、Qは、クロロ、ブロモ又はヨードであるか、又は式
(式中、R及びRは、独立して、C-Cアルキル、フェニル、置換フェニル若しくはC-Cシクロアルキルから選択されるか、又はそれらが結合している窒素原子2個と一緒になってC-C窒素含有環を形成することができる。)の基である。]
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Qが、クロロである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Qが、式
(式中、R及びRは、メチルである。)
の基である、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
式;
(式中、R及びRは、独立して、C-Cアルキル、フェニル、置換フェニル、又はC-Cシクロアルキルから選択され、nは、1、2、又は3であり、Rは、クロロ、ブロモ、若しくはヨードであるか、又は式
の基から選択される。)
を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
及びRが、独立して、水素、メチル、エチル、及びイソプロピルから選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
nが、1である、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
式:
から選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項12】
マイクロ電子デバイスの表面上にケイ素含有膜を形成するための方法であって、請求項1に記載の少なくとも1つの式(I)の化合物を、蒸気堆積条件下で、反応チャンバ内の前記表面に導入することを含む方法。
【請求項13】
蒸気堆積条件が、化学蒸着(CVD)、原子層蒸着(ALD)、プラズマ強化ALD(PEALD)、プラズマ強化循環化学蒸着(PECCVD)、流動性化学蒸着(FCVD)、プラズマ強化ALD様プロセス、又はALDプロセスから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ケイ素含有膜が、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、オキシ炭窒化ケイ素、低k薄ケイ素含有膜、高kゲートシリケート膜及び低温ケイ素エピタキシャル膜から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
表面が、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミニウム、タングステン、銅、コバルト、モリブデン、ルテニウム、ケイ素ウェハ、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
表面が、二酸化ケイ素である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
表面が、酸化アルミニウムである、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
基板が、アルミニウム、銅、タングステン、モリブデン、コバルト、又はルテニウムから選択される金属を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本発明は、マイクロ電子デバイス表面上へのケイ素含有膜の付着のための方法及び前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造において、窒化ケイ素(Si)、酸窒化ケイ素(SiO)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素炭素(SiCN)及び酸化ケイ素炭素(SiCO)及び/又は二酸化ケイ素(SiO)などの化学的に不活性な誘電体材料の薄い(例えば、1000ナノメートル未満の厚さ)受動層は、側壁スペーサ要素、拡散マスク、酸化バリア、トレンチ分離コーティング、金属間誘電体材料、不動態化層、絶縁体及びエッチング停止層などの多層デバイスの構造要素として機能するために、マイクロ電子デバイス構造に広く使用されている。
【0003】
化学蒸着技術によるケイ素含有膜の付着は、そのような膜を形成するための非常に魅力的な方法である。低い付着温度、例えば約450℃未満の温度を含むCVDプロセスが特に望ましいが、そのような目的のために適切なケイ素前駆体化合物の利用可能性が必要である。場合によっては、集積回路のサーマルバジェットが許容する場合、より高い付着温度を考慮することができる。これらの場合、450℃を超える温度を利用して、所望の誘電体膜を達成することができる。
【0004】
窒化ケイ素(SiN)は、その高いウェットエッチング耐性及びOアッシング耐性のために、FinFET及びゲート全周(GAA)構造のためのソース及びドレインスペーサ(S/Dスペーサ)に使用されてきた。しかしながら、SiNは誘電率(k)が約7.5と高い。誘電率を低減し、付着後処理中に優れたエッチング耐性及びアッシング耐性を維持するために、炭素及び窒素ドープSiO(SiCON)スペーサが開発されている。現在、最良のエッチング及びアッシング抵抗SiCON誘電体は、約4.0のk値を有する。次世代デバイスには、3.5未満のk値を有するエッチング及びアッシング抵抗誘電体が必要である。
【0005】
さらに、マイクロ電子デバイスの製造における、特に窒化ケイ素、二酸化ケイ素、及び酸窒化ケイ素膜を形成するための低温蒸着技術を利用するプロセスにおける、ケイ素含有膜を形成するための改善された有機ケイ素前駆体及びプロセスが依然として必要とされている。特に、良好な熱安定性、高い揮発性、及び基板表面との反応性を有する液体ケイ素前駆体が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、一般に、半導体デバイスの製造におけるケイ素含有膜の形成に関し、より具体的には、比較的低温で、ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、二酸化ケイ素、炭素ドープ窒化ケイ素若しくは酸化ケイ素、又は炭素ドープ酸窒化ケイ素膜を含む膜などの、そのようなケイ素含有膜を形成するための組成物及び方法に関する。
【0007】
本明細書に記載の式(I)の化合物は、そのような様々なケイ素含有膜の形成における前駆体化合物として有用である。蒸気堆積条件及びプロセスを、これらの前駆体化合物と共に利用して、化学蒸着(CVD)、原子層蒸着(ALD)、プラズマ強化ALD(PEALD)、プラズマ強化循環化学蒸着(PECCVD)、流動性化学蒸着(FCVD)、プラズマ強化ALD様プロセス、又は酸素含有反応物、窒素含有反応物、又はそれらの組み合わせを有するALDプロセスなどのプロセスを含む、ケイ素含有膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「又は」という用語は、一般に、その内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、「及び/又は」を含む意味で使用される。
【0009】
用語「約」は、一般に、列挙された値と等価である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と考えられる数の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数字を含むことができる。
【0010】
端点を使用して表される数値範囲は、その範囲内に包含されるすべての数を含む(例えば、1~ら5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5を含む)。
【0011】
第1の態様では、本発明は、式(I)の化合物:
(式中、R及びRは、独立して、C-Cアルキル、フェニル、置換フェニル若しくはC-Cシクロアルキルから選択されるか、又はそれらが結合している窒素原子と一緒になって、C-C窒素含有環を形成することができ、R及びRは、独立して、水素若しくはC-Cアルキルから選択されるか、又はそれらが結合しているSi原子と一緒になって、C-Cケイ素含有環を形成し、かつR及びRは、独立して、水素又はC-Cアルキルから選択され、
Qは、クロロ、ブロモ、ヨード又は式
の基から選択され、かつ
xは、0又は1であり、かつ
(i)yは、0であり、ただし、yが0である場合、Qは、式
の基以外であるか、又は
(ii)xが1である場合、yは1である。)を提供する。
【0012】
本明細書で使用される場合、「置換フェニル」という用語は、置換基として1つ又は2つのC-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルコキシカルボニル、C-Cアルカノイルオキシ、C-Cアルカノイルアミノ、ハロゲン、カルボキシ、ニトロ、ヒドロキシ、C-Cアルキレン--OH、C-Cアルキレン--CO、--OC-Cアルキレン--OH、又は--OC-Cアルキレン--CO(式中、RはC-Cアルキル基である)を含むフェニル基である。
【0013】
一実施形態では、R、R、R、R、R及びRの各々が、独立して、メチル、エチル又はイソプロピルから選択される。
【0014】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、式:
を有する。
【0015】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、式:
から選択される。
【0016】
別の実施形態では、本発明は、式:
[式中、Qは、クロロ、ブロモ又はヨードであるか、又は式
(式中、R及びRは、独立して、C-Cアルキル、フェニル、置換フェニル若しくはC-Cシクロアルキルから選択されるか、又はそれらが結合している窒素原子2個と一緒になってC-C窒素含有環を形成することができる。)の基である。]
を有する、化合物を提供する。
【0017】
ある特定の実施形態では、Qは、クロロである。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、式
(式中、R及びRは、独立して、C-Cアルキル、フェニル、置換フェニル、又はC-Cシクロアルキルから選択され、nは、1、2、又は3であり、Rは、水素、クロロ、ブロモ又はヨードから選択されるか、又は式
の基から選択される)
を有する、化合物を提供する。
【0019】
特定の実施形態では、R及びRは、独立して。メチル、エチル、及びイソプロピルから選択される。他の実施形態では、nは1である。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、式:
を有する式(I)の化合物を提供する。
【0021】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、100ppm未満、50ppm、又は10ppm未満の塩素汚染を有する。
【0022】
式(I)の化合物は、マイクロ電子デバイスの表面上へのケイ素含有膜の付着のための前駆体として有用である。特定の実施形態では、膜はまた、窒素及び/又は酸素及び/又は炭素を含む。
【0023】
したがって、第2の態様では、本発明は、マイクロ電子デバイスの表面上にケイ素含有膜を形成するための方法であって、少なくとも1つの式(I)の化合物を、蒸気堆積条件下で、反応チャンバ内の前記表面に導入することを含む方法を提供する。
【0024】
ここで、ケイ素含有膜とは、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、オキシ炭窒化ケイ素、低k薄ケイ素含有膜、高kゲートシリケート膜及び低温ケイ素エピタキシャル膜等の膜をいう。
【0025】
特定の実施形態では、蒸気堆積条件は、化学蒸着、パルス化学蒸着、及び原子層蒸着として知られる反応条件を含む。パルス化学蒸着の場合、中間(不活性ガス)パージ工程の有無にかかわらず、前駆体化合物及び共反応物の一連の交互パルスを利用して、膜厚を所望の終点まで構築することができる。
【0026】
特定の実施形態では、上記の前駆体化合物のパルス時間(すなわち、基板への前駆体曝露の持続時間)は、約1~10秒の範囲である。パージ工程を利用する場合、持続時間は約1~4秒又は1~2秒である。他の実施形態では、共反応物のパルス時間は1~60秒の範囲である。他の実施形態では、共反応物のパルス時間は、約5~約10秒の範囲である。
【0027】
一実施形態では、蒸気堆積条件は、約350℃~約750℃の温度及び約1~約1000Torrの圧力を含む。別の実施形態では、蒸気堆積条件は、約350°~約650℃の温度を含む。
【0028】
上記の化合物は、CVD、デジタル(パルス)CVD、ALD、及びパルスプラズマプロセスなどの任意の適切な蒸着技術によって高純度の薄いケイ素含有膜を形成するために使用することができる。そのような蒸着プロセスを利用して、約350°~約550℃の付着温度を利用してマイクロ電子デバイス上にケイ素含有膜を形成し、約20オングストローム~約2000オングストロームの厚さを有する膜を形成することができる。
【0029】
本発明のプロセスでは、上記化合物は、任意の適切な方法で、例えば、単一ウェハCVD、ALD及び/若しくはPECVD若しくはPEALDチャンバ内で、又は複数のウェハを含む炉内で所望のマイクロ電子デバイス基板と反応させることができる。
【0030】
あるいは、本発明のプロセスは、ALD又はALD様プロセスとして行うことができる。本明細書で使用される場合、「ALD又はALD様」という用語は、(i)式(I)のケイ素前駆体化合物と酸化及び/又は還元ガスとを含む各反応物が、単ウェハALD反応器、半バッチALD反応器、又はバッチ炉ALD反応器などの反応器に順次導入されるか、又は(ii)式(I)のケイ素前駆体化合物と酸化及び/又は還元ガスとを含む各反応物が、反応器の異なるセクションに基板を移動又は回転させることによって基板又はマイクロ電子デバイス表面に曝露され、各セクションが不活性ガスカーテン、すなわち空間ALD反応器又はロールツーロールALD反応器によって分離される、などのプロセスを指す。
【0031】
一態様では、本発明は、水素プラズマ又は窒素プラズマと共に、本明細書に記載の式(I)の前駆体を使用して、低いウェットエッチング速度及びOアッシング耐性低k薄膜を付着させるためのプラズマ増強原子層蒸着プロセス(PEALD)プロセスに関する。窒素プラズマは、式(I)の化合物を使用する窒化ケイ素膜の形成に有用であり得る。
【0032】
一般に、式(I)の前駆体化合物を使用して製造された所望の膜は、還元又は酸化共反応物の利用と組み合わせて、各化合物の選択によって調整することができる。例えば、式(I)の前駆体が蒸着プロセスにおいてどのように利用され得るかを示す以下のスキーム1を参照されたい。
【0033】
したがって、別の実施形態では、上記の蒸着プロセスは、膜を還元ガスに曝露することを含む工程をさらに含んでもよい。本発明の特定の実施形態では、還元ガスは、H、ヒドラジン(N)、メチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、1,1-ジメチルヒドラジン、1,2-ジメチルヒドラジン、及びNHから選択されるガスから構成される。
【0034】
式(I)の化合物は、ケイ素含有膜の低温CVD及び/又はALD形成が可能である。そのような化合物は、高い揮発性及び化学反応性を示すが、前駆体の揮発又は気化に関与する温度での熱分解に対して安定であり、得られた前駆体蒸気の付着ゾーン又は反応チャンバへの一貫した繰り返し可能な輸送を可能にする。式(I)の化合物の化学反応性は、TEOSなどの従来のケイ素前駆体材料が不活性であり、したがって付着挙動をほとんど又は全く示さない低温での膜成長を可能にする。
【0035】
別の実施形態では、蒸着プロセスは、前駆体をO、O、NO、水蒸気、アルコール又は酸素プラズマなどの酸化ガスに曝露することを含む工程をさらに含んでもよい。特定の実施形態では、酸化ガスは、アルゴン、ヘリウム、窒素、又はそれらの組み合わせなどの不活性ガスをさらに含む。別の実施形態では、酸化ガスは窒素をさらに含み、これはプラズマ条件下で式(I)の前駆体と反応して酸窒化ケイ素膜を形成することができる。
【0036】
式(I)の前駆体化合物を使用しているが、そのような膜への炭素及び窒素の組み込みは、そのような化合物の組成の自然な結果である。さらに、例えば、メタン、エタン、エチレン又はアセチレンの形態の炭素を利用して、炭素含有量をケイ素含有膜にさらに導入し、それによって炭化ケイ素を生成することができる。
【0037】
本明細書に開示される付着方法は、1つ又は複数のパージガスを含むことができる。未消費の反応物及び/又は反応副生成物をパージするために使用されるパージガスは、前駆体と反応しない不活性ガスである。例示的なパージガスには、アルゴン、窒素、ヘリウム、ネオン、水素、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、Arなどのパージガスを約10~約2000sccmの範囲の流量で約0.1~1000秒間反応器に供給し、それによって未反応材料及び反応器内に残留し得る任意の副生成物をパージする。
【0038】
ケイ素前駆体化合物、酸化ガス、還元ガス、及び/又は他の前駆体、原料ガス、及び/又は試薬を供給するそれぞれの工程は、それらを供給するための順序を変更すること、及び/又は得られる誘電体膜の化学量論組成を変更することによって実行され得る。
【0039】
式(I)のケイ素前駆体化合物及び酸化ガス、還元ガス、又はそれらの組み合わせの少なくとも1つにエネルギーを加えて反応を誘発し、マイクロ電子デバイス基板上にケイ素含有膜を形成する。そのようなエネルギーは、熱、パルス熱、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、X線、電子ビーム、光子、リモートプラズマ法、及びそれらの組み合わせによって提供され得るが、これらに限定されない。特定の実施形態では、二次RF周波数源を使用して、基板表面のプラズマ特性を変更することができる。付着がプラズマを伴う実施形態では、プラズマ生成プロセスは、プラズマが反応器内で直接生成される直接プラズマ生成プロセス、又は代替的に、プラズマが反応ゾーン及び基板の「遠隔」で生成され、反応器内に供給される遠隔プラズマ生成プロセスを含み得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、「マイクロ電子デバイス」という用語は、マイクロ電子、集積回路、又はコンピュータチップ用途で使用するために製造された、3D NAND構造、フラットパネルディスプレイ、及び微小電気機械システム(MEMS)を含む半導体基板に対応する。「マイクロ電子デバイス」という用語は、決して限定することを意味するものではなく、負チャネル金属酸化膜半導体(nMOS)及び/又は正チャネル金属酸化膜半導体(pMOS)トランジスタを含み、最終的にマイクロ電子デバイス又はマイクロ電子アセンブリになる任意の基板を含むことを理解されたい。そのようなマイクロ電子デバイスは、例えば、ケイ素、SiO、SiN4OSG、FSG、炭化ケイ素、水素化炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、窒化ホウ素、反射防止コーティング、フォトレジスト、ゲルマニウム、ゲルマニウム含有、ホウ素含有、Ga/As、可撓性基板、多孔質無機材料、銅及びアルミニウムなどの金属、ならびにTiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、又はWNなどであるがこれらに限定されない拡散バリア層から選択することができる、少なくとも1つの基板を含む。膜は、例えば、化学機械平坦化(CMP)及び異方性エッチングプロセスなどの様々な後続の処理工程に適合する。
【0041】
式(I)の化合物の特定のものは、式:
から出発し、かつそのような化合物を様々なアミン及びアジド化合物と反応させることによって調製することができる。
【0042】
式(I)の他の化合物は、以下のフロー図に従って、様々なアミン及びアジド化合物との一次反応物としてシクロトリメチレンジクロロシランから出発して調製することができる。
【0043】
本発明は、その特定の実施形態の以下の実施例によってさらに説明することができるが、これらの実施例は単に例示の目的で含まれ、特に明記しない限り、本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されよう。
【実施例0044】
実施例1
CTMDCS(シクロトリメチレンジクロロシラン)(1g、7.08mmol)を20mLガラスバイアルに入れた。ペンタン(2mL)を添加し、続いてTEA(トリエチルアミン)(1.3g、12.8mmol)を添加した。得られた濁った溶液に、UDMH(非対称ジメチルヒドラジン)(1.1g、16.6mmol)を滴下した。激しい発熱反応が起こり、すぐに厚い沈殿物が形成された。固体を10mLのジエチルエーテルで抽出し、合わせた抽出物を濾過し、揮発性物質を減圧下で除去すると、約0.5g、純度80%の淡黄色油が得られた。
【0045】
粗生成物をNMRによって分析した。29Si NMR分析は単一の主要なケイ素種を示し、生成物は13C及び1H NMRによって確認された。粗生成物の全体的な純度は、約80%であった。生成物を短経路の蒸留によってさらに精製して、高純度の半導体グレードの材料を得ることができた。
NMR分析:
H NMR(C6D6):δ1.58(t,4H,CH2)、1.90(m,2H,CH2),2.27(s,12H,NN(CH3)2);
13C{1H}NMR(C6D6):δ 13.6(CH2),22.7(CH2),52.5(CH3);
29Si NMR(C6D6):δ-11.49
【0046】
実施例2
磁気撹拌子、熱電対アダプター及び読み取った温度を装備した1Lの三ツ口丸底フラスコ中で、1,3-ジクロロ-テトラメチル-ジシロキサン(10g、49.2mmol)をペンタン(200mL)に溶解した(T1=24.1℃)。透明な溶液に、TEA(11g、108mmol)を添加した。わずかに濁った反応混合物が形成された(T1=25.3℃)。得られた反応混合物に、ジエチルエーテル(5mL)中の溶液としてUDMH(6.5g、108mmol)を添加した。UDMH溶液を10分間(約1mL/分)かけて滴下した。直ちに発煙が観察され、ヘッドスペースに緻密な沈殿物が形成された。添加5分後、大量の沈殿物が観察された。反応混合物をさらに2時間放置した後、粗フィルターに通して濾過した。塩をヘキサン50mLで2回洗浄した。合わせた洗浄を減圧蒸留に供し、揮発性物質を室温で1.2Torrまで除去した。得られた濁った粘性油状物を濾過し、1H、13C及び29Si NMRによって分析した。収量7.2g、純度約90%。収率58%粗。さらなる精製を試みなかったが、蒸留によるさらなる精製によって電子グレード材料を得ることができる。
NMR分析:
H NMR(C6D6):δ0.25(s,12H,Si-CH3),2.21(bs,2H,N),2.29(s,12H,NN(CH3)2);
13C{1H}NMR(C6D6):δ-0.74(Si-CH3),52.4(N-CH3);
29Si NMR(C6D6):δ-16.16
【0047】
実施例3
CTMDCS(1g、7.08mmol)を20mLガラスバイアルに入れた。ペンタン(2mL)を添加した後、TEA(1.3g、12.8mmol)を添加した。得られた濁った溶液に、UDMH(1.1g、16.6mmol)を滴下した。激しい発熱反応が起こり、すぐに厚い沈殿物が形成された。固体を10mLのジエチルエーテルで抽出し、合わせた抽出物を濾過し、揮発性物質を減圧下で除去すると、約0.5g、純度80%の淡黄色油が得られた。
【0048】
粗生成物をNMRによって分析した。29Si NMR分析は、単一の主要なケイ素種を示した。生成物を13C及びH NMRによって確認した。全体の純度は約80%である。
NMR分析:
H NMR(C):δ1.58(t,4H,CH),1.90(m,2H,CH),2.27(s,12H,NN(CH);
13C{H}NMR(C):δ 13.6(CH),22.7(CH),52.5(CH);
29Si NMR(C):δ-11.49
【0049】
実施例4-2-(2-クロロ-1,1,2,2-テトラメチルジシラン-1-イル)-1,1-ジメチルヒドラジンの合成
メカニカルオーバーヘッドスターラー、熱電対プローブ、温度読み取り及び窒素ガス入口アダプター、溶媒供給ライン(3/8’’PTFEチューブ)、試薬の充填及び濾過のための別の3/8’’PTFEチューブを備えた10L反応器を乾燥させ、窒素でパージした。5Lのフィルター漏斗を80mTまで漏出させ、窒素で一晩パージした。
【0050】
ClMeSi(100g、534mmol)及びTEA(114g)をグローブボックス内の1Lフラスコ中で合わせた。いくらかの発煙が発生し、溶液はわずかに濁った。ジエチルエーテル(約220mL)中のUDMH(64.2g、81.2mL)の溶液を500mL液体添加漏斗中で調製した。反応器に2.5Lのヘキサンを充填し、-4℃まで冷却した。チラーは-10℃に設定した。ClMeSi及びTEAの混合物(ニート)を、3/8’’PTFEチューブを用いて窒素流下で投入した。追加量のヘキサン(約500mL)を添加した。混合物を窒素下で撹拌した。エーテル中にUDMHを含有する添加漏斗(310mL溶液)を窒素流下で反応器に取り付けた。UDMH溶液を約6.8mL/分の速度で45分間にわたって滴加した。反応温度を0℃未満に保ちながら、反応混合物を室温で一晩撹拌し、続いて5Lのフリットフィルター漏斗で濾過した。固体をヘキサン(500mL)で2回洗浄し、溶媒を-21.1℃で4.8Torrまで減圧下で除去した。得られた無色油を、さらなる精製のために三つ口丸底フラスコに移した。標題化合物は、1H NMR、13C NMR及び29Si NMRにより主中間生成物として同定された。
NMR分析:
H NMR(C6D6):δ0.22(s,6H,Si-CH3),0.49(s,6H,Si-CH3),1.89(bs,1H,N),2.12(s,6H,NN(CH3)2);
13C{1H}NMR(C6D6):δ-1.8,2.7(Si-CH3),52.4(N-CH3);
29Si NMR(C6D6):δ-9.1,19.4.
【0051】
実施例5
(実施例4で合成した)部分置換中間体(2-(2-クロロ-1,1,2,2-テトラメチルジシラン-1-イル)-1,1-ジメチルヒドラジン)(0.21g、1mmol)を、ヘキサン(20mL)中のトリエチルアミン(0.101g、1mmol)の存在下で、化学量論量のジエチルアミン(0.73g、1mmol)とさらに反応させることができた。得られたスラリーを濾過し、揮発性物質を減圧下で除去して、標題化合物を得る。生成物を蒸留によってさらに精製することができた。
【0052】
実施例6-Ar/N2プラズマを用いたPEALD窒化ケイ素付着(予測)
下記の表に記載のプロセス条件で、式(I)のケイ素前駆体及びAr/Nプラズマを共反応物ガスとして用いて、ケイ素含有膜を付着させる。
【0053】
実施例7-Ar/Oプラズマを用いたPEALD酸化ケイ素付着
以下の表に記載のプロセス条件を用いて、式(I)のケイ素前駆体及びAr/Oプラズマを共反応物として使用して、ケイ素含有膜を堆積させることができた。
【0054】
実施例8-CVD付着
式(I)の化合物の気化及びCVDチャンバへの導入は、40Torrで40℃まで穏やかに加熱して達成することができた。前駆体を円形シャワーヘッドを通して分散させて、加熱された基板への均一な放出を提供することができる。窒素、酸素(O)及び亜酸化窒素(NO)の混合物は、金属、ケイ素及び窒化ケイ素の領域を含む基板で共反応すると予想され、SiCOxの膜が450℃で10分間付着される。この前駆体及びプロセスは、所望の誘電特性及び優れたウェットエッチング耐性を有する、構造化基板上に均一で高度にコンフォーマルコーティングを付着させることが期待される。この膜は、Oプラズマ中で30秒間アッシングした後、ウェットエッチング耐性のわずかな増加を示すと予想される。
【0055】
実施例9-PECVD付着
式(I)の化合物1の気化及びPE-CVDチャンバへの導入は、35℃、1Torrの穏やかな加熱で達成することができた。前駆体を円形シャワーヘッドを通して分散させて、直接アルゴンプラズマ(250ワット)への均一な放出を提供することができる。窒素及びアンモニア(NH)共反応物の混合物もプラズマに導入することができ、前駆体の気相解離及び加熱された基板(300℃)上へのSiCNx膜の付着をもたらすと予想される。基板は、金属及び誘電体特徴の高アスペクト比パターンから構成されると予想され、付着した膜は、特徴について許容可能な適合性を示すと予想される。この前駆体及びプロセスは、パターン化基板全体にわたって組成的に均一な膜を付着させ、O中のプラズマアッシングの前後の両方で許容可能なウェットエッチング耐性を示すことが期待される。
【0056】
本発明は、その特定の実施形態を特に参照して詳細に説明されているが、本発明の精神及び範囲内で変形及び修正が影響を受け得ることが理解されよう。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ電子デバイスの表面上にケイ素含有膜を形成するための方法であって、蒸気堆積条件下で、反応チャンバ内の前記表面に少なくとも1つの式(I)の化合物
(式中、R及びRは、独立して、C-Cアルキル、フェニル、置換フェニル若しくはC-Cシクロアルキルから選択されるか、又はそれらが結合している窒素原子と一緒になって、C-C窒素含有環を形成することができ、R及びRは、独立して、水素若しくはC-Cアルキルから選択されるか、又はそれらが結合しているSi原子と一緒になって、C-Cケイ素含有環を形成し且つR及びRは、独立して、水素又はC-Cアルキルから選択され、
Qは、クロロ、ブロモ、ヨード又は式
の基から選択され、且つ
xは、0又は1であり、且つ
(i)yは、0であり、ただし、yが0である場合、Qは、式
の基以外であるか、又は
(ii)xが1である場合、yは1である。)
を導入することを含む方法。
【請求項2】
蒸気堆積条件が、化学蒸着(CVD)、原子層蒸着(ALD)、プラズマ強化ALD(PEALD)、プラズマ強化循環化学蒸着(PECCVD)、流動性化学蒸着(FCVD)、プラズマ強化ALD様プロセス、又はALDプロセスから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ケイ素含有膜が、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、オキシ炭窒化ケイ素、低kケイ素含有薄膜、高kゲートシリケート膜及び低温ケイ素エピタキシャル膜から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
表面が、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミニウム、タングステン、銅、コバルト、モリブデン、ルテニウム、シリコンウェハ、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
表面が、二酸化ケイ素である、請求項1に記載の方法。
【外国語明細書】