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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045121
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】抗CD38抗体の皮下投薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240326BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240326BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/00 ZNA
A61P37/00
A61P37/08
A61P35/02
A61P43/00 105
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023218600
(22)【出願日】2023-12-25
(62)【分割の表示】P 2020551797の分割
【原出願日】2019-03-27
(31)【優先権主張番号】62/649,489
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(72)【発明者】
【氏名】フェディク、エリック
(72)【発明者】
【氏名】ハンリー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】パルンボ、アントニオ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】単離された抗CD38抗体を皮下投与する方法を提供する。
【解決手段】被験者における疾患の治療方法であって、被験者に、十分な単離されたヒト抗CD38抗体を皮下投与することを含み、前記疾患が、CD38への結合が適応となるものであり、前記抗体が、45~1,800ミリグラムの投薬量で投与される、方法とする。該方法は、自己免疫疾患、及び血液疾患を含めたがんに有効な治療を提供する。また、抗CD38抗体の単位剤形も開示される。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者における疾患の治療方法であって、前記方法が、前記被験者に、十分な単離されたヒト抗CD38抗体を皮下投与することを含み、前記抗CD38抗体が、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR3を含む可変重(VH)鎖領域と、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR3を含む可変軽(VL)鎖領域とを含み、前記疾患が、CD38への結合が適応となるものであり、前記抗体が、45~1,800ミリグラムの投薬量で投与される、方法。
【請求項2】
前記抗CD38抗体の前記投与が、溶血性貧血または血小板減少症を引き起こさない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗CD38抗体を投与することが、貧血、溶血性貧血、血小板減少症、疲労、輸注関連反応(IRR)、白血球減少症、及びリンパ球減少症からなる群から選択される、グレード3または4の1つまたは複数の治療関連有害事象(TRAE)または治療下で発現した有害事象(TEAE)の30%未満の発生率をもたらす、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記抗CD38抗体が、RBCの10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の枯渇をもたらす、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記抗CD38抗体が、血小板の10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の枯渇をもたらす、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記疾患が自己免疫疾患またはがんである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、全身性軽鎖アミロイドーシス、及び移植片対宿主病からなる群から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記疾患が、多発性骨髄腫、慢性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、形質細胞性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、及びバーキットリンパ腫からなる群から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記疾患が多発性骨髄腫である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記VH鎖領域が、配列番号9のアミノ酸配列を有し、前記VL鎖領域が、配列番号10のアミノ酸配列を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗CD38抗体が、配列番号11の重鎖アミノ酸配列と、配列番号12の軽鎖アミノ酸配列とを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体が、135~1,800ミリグラム、600~1,800ミリグラム、1,200~1,800ミリグラム、45~1,200ミリグラム、45~600ミリグラム、45~135ミリグラム、135~1,200ミリグラム、135~600ミリグラム、または1,200~1,800ミリグラムの投薬量で投与される、先行請求項のいずれか
1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ヒト抗CD38抗体が、薬学的に許容される組成物の形態で投与される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記投薬量が1週間投薬量である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
被験者における血液癌の治療方法であって、前記方法が、前記被験者に単離されたヒト抗CD38抗体を皮下投与することを含み、前記抗CD38抗体が、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR3を含む可変重(VH)鎖領域と、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR3を含む可変軽(VL)鎖領域とを含み、前記抗体が、45~1,800ミリグラムの投薬量で投与される、前記方法。
【請求項16】
前記抗CD38抗体が、溶血性貧血または血小板減少症を引き起こさない、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗CD38抗体を投与することが、溶血性貧血を含めた貧血、血小板減少症、疲労、輸注関連反応(IRR)、白血球減少症、及びリンパ球減少症からなる群から選択される、グレード3または4の1つまたは複数の治療関連有害事象(TRAE)または治療下で発現した有害事象(TEAE)の30%未満の発生率をもたらす、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗CD38抗体が、RBCの10%未満の枯渇をもたらす、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗CD38抗体が、血小板の10%未満の枯渇をもたらす、請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記血液癌が、多発性骨髄腫、慢性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、形質細胞性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、及びバーキットリンパ腫からなる群から選択される、請求項15~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記血液癌が多発性骨髄腫である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記VH鎖領域が、配列番号9のアミノ酸配列を有し、前記VL鎖領域が、配列番号10のアミノ酸配列を有する、請求項15~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗CD38抗体が、配列番号11の重鎖アミノ酸配列と、配列番号12の軽鎖アミノ酸配列とを含む、請求項15~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が、135~1,800ミリグラム、600~1,800ミリグラム、1,200~1,800ミリグラム、45~1,200ミリグラム、45~600ミリグラム、45~135ミリグラム、135~1,200ミリグラム、135~600ミリグラム、または1,200~1,800ミリグラムの投薬量で投与される、請求項15~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ヒト抗CD38抗体が、薬学的に許容される組成物の形態で投与される、請求項15~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記投薬量が1週間投薬量である、請求項15~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
配列番号9を含む重鎖可変領域と、配列番号10を含む軽鎖可変領域とを含む単離された抗体を含む、単位剤形であって、前記単離された抗体が、CD38に結合し、かつヒト赤血球には結合せず、前記単位剤形が、前記抗体の45~1,800ミリグラムの投薬量での皮下投与用に製剤化される、前記単位剤形。
【請求項28】
前記単位剤形が、前記抗体の135~1,800ミリグラム、600~1,800ミリグラム、1,200~1,800ミリグラム、45~1,200ミリグラム、45~600ミリグラム、45~135ミリグラム、135~1,200ミリグラム、135~600ミリグラム、または1,200~1,800ミリグラムの投薬量での皮下投与用に製剤化される、請求項27に記載の単位剤形。
【請求項29】
単離された抗体が、配列番号11を含む重鎖と、配列番号12を含む軽鎖とを含む、請求項27または請求項28に記載の単位剤形。
【請求項30】
前記単位剤形が、多発性骨髄腫、慢性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、形質細胞性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、及びバーキットリンパ腫からなる群から選択される血液癌の治療における前記抗体の皮下投与用に製剤化される、請求項27~29のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項31】
前記血液癌が多発性骨髄腫である、請求項30に記載の単位剤形。
【請求項32】
前記抗CD38抗体が、溶血性貧血または血小板減少症を引き起こさない、請求項27~31のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項33】
前記抗CD38抗体が、RBCの10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の枯渇をもたらす、請求項27~32のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項34】
前記抗CD38抗体が、血小板の10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の枯渇をもたらす、請求項27~33のいずれか1項に記載の単位剤形。
【請求項35】
前記投薬量が1週間投薬量である、請求項27~34のいずれか1項に記載の単位剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年3月28日に出願された米国仮出願第62/649,489号の利益を主張するものであり、同出願は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
単離された抗CD38抗体を、皮下(SC)投与を介して投与するための方法及び組成物が開示される。
【背景技術】
【0003】
CD38(別名、環状ADPリボースヒドロラーゼ)は、長いC末端の細胞外ドメインと、短いN末端の細胞質ドメインとを有する、II型膜貫通糖タンパク質である。CD38は、CD157及びアメフラシADPRシクラーゼを含む、関連する膜結合型または可溶性酵素の群の一員である。この酵素のファミリーは、NADを環状ADPリボースまたはニコチン酸-アデニンジヌクレオチドリン酸に変換する固有の能力を有する。CD38は、Ca2+の動員、ならびにホスホリパーゼCγ、ZAP-70、syk、及びc-cblを含めた多数のシグナル伝達分子のチロシンリン酸化を介したシグナル伝達に関与する。これらの観察に基づいて、CD38は、リンパ系細胞の正常な発達中のそれらの成熟及び活性化における重要なシグナル伝達分子である。造血細胞の中でも、リンパ球増殖、サイトカイン放出、B細胞及び骨髄系細胞の発達及び生存の制御、ならびに樹状細胞(DC)の成熟の誘導を含めた各種の機能効果がCD38媒介性シグナル伝達に帰するとされている。
【0004】
CD38は、未熟造血細胞において発現され、成熟造血細胞においては下方制御され、活性化リンパ球及び形質細胞において高レベルで再発現される。例えば、活性化B細胞、形質細胞、活性化CD4+ T細胞、活性化CD8+ T細胞、NK細胞、NKT細胞、成熟DC、及び活性化単球においてCD38の高発現が見られる(例えば、米国特許第8,362,211号を参照されたい)。
【0005】
CD38に対する自己抗体の存在は、糖尿病、慢性自己免疫性甲状腺炎、及びグレーブス病を含めたいくつかの疾患に関連付けられている(Antonelli et al.(2001)Clin.Exp.Immunol.126:426-431、Mallone et al.(2001)Diabetes 50:752、及びAntonelli et al.(2004)J.Endocrinol.Invest.27:695-707を参照されたい)。
【0006】
CD38の発現増加は、自己免疫疾患及びがんを含めた様々な疾患で報告されている。かかる疾患には、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、及び潰瘍性大腸炎(UC)が含まれる。RAの患者では、対照と比較して関節組織で形質細胞が増加している。SLEの患者では、より活動性の疾患を有する患者において末梢血で形質芽球が増加している。リツキシマブ等の現在のCD20ベースのB細胞枯渇療法は、CD20+ B細胞を効果的に枯渇させるが、形質細胞または形質芽球については、それらがCD20を発現しないため、直接かつ効果的に枯渇することはできない。この考えと一致して、高レベルの形質細胞または形質芽球を有するRAまたはSLEの患者は、CD20ベースの療法から実質的な臨床的有用性を得る可能性が低い。故に、形質細胞及び形質芽球ならびにNK細胞及び活性化T細胞上で高発現されるCD38を標的とする治療薬が、RA及びSLE、ならびにCD-38発現を特徴とする他の疾患に対する有効な治療を提供し得る。
【0007】
特に、CD38の発現増加が、造血起源の様々な疾患、ならびにそれに由来する細胞株において報告されており、血液癌における負の予後マーカーとして記載されている。かかる疾患には、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ芽球性白血病、B細胞急性リンパ性白血病を含めたB細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)、B細胞及びT細胞急性リンパ性白血病(ALL)、急性リンパ芽球性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、マントル細胞リンパ腫、前リンパ性/骨髄性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、濾胞性リンパ腫、NK細胞白血病、形質細胞白血病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、T細胞リンパ腫(TCL)、有毛細胞性白血病(HCL)、ならびにホジキンリンパ腫(HL)が含まれるが、これらに限定されない。さらに、CD38発現は、例えば、B-CLL(Durig et al.(2002)Leukemia 16:30-35、及びMorabito et al.(2001)Leukemia Res.25:927-932)、及び急性骨髄性白血病(Keyhani et al.(1999)Leukemia Res.24:153-159)等の病態を有する患者に対する予後指標である。したがって、CD38は、造血系の疾患の治療において有用な標的を提供する。
【0008】
いくつかの抗CD38抗体は、CD38関連がんの治療に関して臨床試験が進行中である。しかしながら、CD38に対する先行技術の治療用抗体は全て赤血球(RBC)及び血小板に結合して、RBCへの非生産的な結合に陥ることに起因する、より高い必要投薬量につながる。CD38は、RBC上で、骨髄腫細胞上でのレベルよりもおよそ1000倍低いレベルで発現されるが(deWeers et al.(2011)J.Immunol.186(3):1840-1848)、活動性疾患を有するMM(多発性骨髄腫)患者の血中には各骨髄腫細胞につきおよそ36,000個のRBCが存在する(Witzig et al.(1993)Cancer 72(1):108-113)。そのため、RBC上で、腫瘍細胞上におけるよりも36倍多くのCD38分子が発現される。故に、抗CD38抗体を用いた現在の治療は、RBC結合を乗り越えた有効性を得るために高用量が必要とされることから、静脈内投与を必要とする。例えば、ダラツムマブ(抗CD38 IgG1 mAb、DARZALEX(登録商標)、FDA承認済みであり、Janssen Oncologyから市販されている)は、最適な抗腫瘍活性を得るために、非常に高い用量(≧16mg/kg)及び集中的なレジーム(毎週8回、隔週8回、次いで毎月)を必要とする(Xu et al.(2017)Clin.Pharmacol.Ther.101(6):721-724)。
【0009】
したがって、RBCに結合する抗CD38抗体を用いた治療は、現在のところ、治療有効性を達成するのに高容量の抗体が必要とされる故、そのような大容量が皮下投与に好適でないことから、静脈内投与に焦点が当てられている。例えば、ダラツムマブは、標的飽和に≧16mg/kg(例えば、70kgの患者につきおよそ1120mg)が必要とされるため、低容量で投与することができない。最も高い既知の皮下製剤濃度は、200mg/mlである(Cimzia(登録商標)、セトリズマブペゴルとも称される)。最も高い既知の皮下製剤濃度である200mg/mlを用いると、ダラツムマブの最小予測注射容量は、皮下投与には非常に大きい容量である5.6~11.2mLとなろう。この大容量及び濃度の制限を考慮すると、ダラツムマブは、分散及び吸収を補助するためのヒアルロニダーゼと一緒にして15ml容量で皮下投与されなければならない。
【0010】
別の抗CD-38抗体であるイサツキシマブ(Sanofi Genzymeから市販されており、現在、第3相臨床試験が進行中である)は、第3相試験において10mg/kg及び20mg/kgで投与されており、これは70kgの患者につき700~1400mgに相当する。ここでもまた、最も高い既知の皮下製剤濃度である200mg/mLを用いると、イサツキシマブの予測注射容量は3.5~14mLとなろう。
【0011】
現在の臨床現場における先行技術の抗CD38抗体ではより高い用量及び容量が必要とされることに加えて、それらがRBC及び血小板を標的とすることにより、例えば、溶血性貧血(RBCが、それらが補充され得るよりも迅速に破壊される病態)等の重篤な副作用を引き起こし得る。非盲検、単一群試験において、イサツキシマブは、3mg/kgで2週間毎(Q2W、n=23)、10mg/kgでQ2Wを2サイクル、続いてQ4W(n=25)、10mg/kgでQ2W(n=24)、及び20mg/kgで毎週、4回投薬(1サイクル)、続いてQ2W(n=25)により、総計97人の患者に静脈内投与された。最も一般的な重度の(グレード3/4)有害事象は貧血であり、これは24%の患者に影響を及ぼした(http://www.onclive.com/conference-coverage/asco-2016/isatuximab-monotherapy-effective-for-heavily-pretreated-myeloma,the 2016 ASCO Annual Meeting、ならびにRichter et al.(2016)J.Clin.Oncol.34(suppl):abstr 8005を参照されたい)。重度の貧血に加えて、血小板減少症及び好中球減少症もまた、一般的な重度の有害事象である(それぞれ22.9%、18.4%、及び18.4%、Dimopoulos et al.(2018)Blood 132(suppl.1):ASH abstract 155/oral presentation)。同様に、血球数低下(WBC、RBC、及び血小板)、貧血、及び血小板減少症は、ダラツムマブに対する周知の重篤な副作用である。1つのダラツムマブ試験では、全ての患者のうちの45%が貧血を経験し(このうちの19%はグレード3であった)、患者の48%が血小板減少症を経験した(このうちの10%はグレード3であり、このうちの8%はグレード4であった)(例えば、Darzalex(ダラツムマブ)処方情報Horsham,Pennsylvania:Janssen Biotech,Inc.2018、ならびに総説論文Costello(2017)Ther.Adv.Hematol.8(1):28-37を参照されたい)。さらに、治療用モノクローナル抗体の静脈内投与は、重度の輸注関連反応(IRR)につながり得る。一般的なIRRには、鼻閉、咳、アレルギー性鼻炎、咽喉刺激、呼吸困難、悪寒、悪心、低酸素症、高血圧等が含まれるが、これらに限定されない(Usmani et al.(2016)Blood 128(1):37-44)。ダラツムマブでは、患者の48%が治療薬の最初の投薬でIRRを経験し(Usmani et al.(2016)Blood 128(1):37-44)、このうちの3%が重度であった(Darzalex(ダラツムマブ)処方情報Horsham,Pennsylvania:Janssen Biotech,Inc 2018)。同様に、イサツキシマブを受けた患者の40.4%でIRRが報告されており、このうち4.6%が重度として報告されている(Dimopoulos et al.(2018)Blood 132:(suppl 1)ASH abstract 155/oral presentation)。故に、イサツキシマブまたはダラツムマブで治療されている患者は、これらの生命を脅かす副作用及び他の重篤な副作用に関して注意深く監視しなければならない。
【0012】
AB79は、高い親和性(Kd=6.1×10-10M)でCD38に特異的に結合する、完全ヒト免疫グロブリンIgG1モノクローナル抗体である。AB79は、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)及び補体依存性細胞傷害作用(CDC)を介した細胞枯渇によって、CD38を発現している腫瘍細胞の成長を阻害する。AB79はまた、健常な被験者及び全身性エリテマトーデス(SLE)患者から単離された血中の形質細胞及び形質芽球のレベルを低減する(PCT出願第PCT/US2017/042128号)。健常なカニクイザルにおいて、各細胞型に対する枯渇の効率は、CD38発現のレベル及びAB79用量レベルと正の相関があった(PCT出願第PCT/US2017/042128号)。さらに、AB79は、関節リウマチのサルモデルにおいて抗炎症性活性及び疾患修飾活性が実証された(米国特許第US8,362,211号)。
【0013】
臨床現場における多くのCD38抗体がRBCに結合し、したがって、皮下投与に好適ではなく、それが危険な副作用をもつことを考慮すると、当該技術分野において、自己免疫疾患及び血液学的形態のがん等のCD38への結合が適応となる疾患の治療のための、より安全で、より好都合かつより有効である皮下抗体製剤に対する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0014】
本明細書では、単離された抗CD38抗体を皮下投与することを含む、例えば、自己免疫疾患及び血液癌等の、CD38への結合が適応となる疾患の治療方法が提供される。
【0015】
一態様では、本発明は、被験者におけるCD38への結合が適応となる疾患の治療方法を提供し、該方法は、CD38への結合が適応となる疾患を有する被験者に、該疾患を治療するのに十分な治療上有効量の単離されたヒト抗CD38抗体を皮下投与するステップを含み、該抗CD38抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR3または最大3つのアミノ酸変化を有するそれらの配列のバリアントを含む可変重(VH)鎖領域と、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR3または最大3つのアミノ酸変化を有するそれらの配列のバリアントを含む可変軽(VL)鎖領域とを含み、該抗CD38抗体は、45~1,800ミリグラムの投薬量で投与される。
【0016】
別の態様では、本発明は、被験者におけるCD38への結合が適応となる疾患の治療方法を提供し、該方法は、該CD38への結合が適応となる疾患を有する被験者に、該疾患を治療するのに十分な治療上有効量の単離されたヒト抗CD38抗体を皮下投与するステップを含み、該抗CD38抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR3または最大3つのアミノ酸置換を有するそれらの配列のバリアントを含むVH鎖領域と、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR3または最大3つのアミノ酸置換を有するそれらの配列のバリアントを含むVL鎖領域とを含み、該抗CD38抗体は、45~1,800ミリグラムの投薬量で投与される。
【0017】
別の態様では、本発明は、被験者におけるCD38への結合が適応となる疾患の治療方法を提供し、該方法は、該CD38への結合が適応となる疾患を有する被験者に、該疾患を治療するのに十分な治療上有効量の単離されたヒト抗CD38抗体を皮下投与するステップを含み、該抗CD38抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR3を含むVH鎖領域と、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR3を含むVL鎖領域とを含み、該抗CD38抗体は、45~1,800ミリグラムの投薬量で投与される。
【0018】
一態様では、本明細書に記載されるような抗CD38抗体は、溶血性貧血または血小板減少症を引き起こさない。
【0019】
一態様では、抗CD38抗体治療薬を投与することは、貧血、溶血性貧血、好中球減少症、血小板減少症、疲労、輸注関連反応(IRR)、白血球減少症、及びリンパ球減少症からなる群から選択される、グレード3または4の1つまたは複数の治療関連有害事象(TRAE)または治療下で発現した有害事象(TEAE)の60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、
4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満の発生率をもたらす。TEAEは、原因を問わず薬物の最後の用量から最大約30日後に観察または診断される有害事象である。TEAEは、抗CD38抗体とは無関係であるか、または抗CD38抗体に具体的に関連し得る、疾患または治療に関連する任意の根本的原因を有し得る。好適には、抗CD38抗体を投与することは、貧血、溶血性貧血、血小板減少症、疲労、輸注関連反応(IRR)、白血球減少症、及びリンパ球減少症からなる群から選択される、グレード3または4の1つまたは複数の治療下で発現した有害事象(TEAE)の30%未満の発生率をもたらし得る。
【0020】
一態様では、抗CD38抗体治療薬を投与することは、貧血、溶血性貧血、好中球減少症、血小板減少症、疲労、輸注関連反応(IRR)、白血球減少症、及びリンパ球減少症からなる群から選択される、グレード3または4の1つまたは複数の治療関連有害事象(TRAE)の60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満の発生率をもたらす。TRAEは、治療担当医師が治療に使用された薬物と有害事象との間に因果関係の可能性があると考える有害事象である。故に、TRAEは、抗CD38抗体に具体的に関連すると見なされる。好適には、抗CD38抗体を投与することは、貧血、溶血性貧血、血小板減少症、疲労、輸注関連反応(IRR)、白血球減少症、及びリンパ球減少症からなる群から選択される、グレード3または4の1つまたは複数のTRAEの30%未満の発生率をもたらし得る。
【0021】
一態様では、抗CD38抗体治療薬を投与することは、RBCの10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の枯渇をもたらす。
【0022】
一態様では、抗CD38抗体治療薬を投与することは、血小板の10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の枯渇をもたらす。
【0023】
一態様では、疾患は、自己免疫疾患またはがんである。
【0024】
一態様では、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎(UC)、全身性軽鎖アミロイドーシス、及び移植片対宿主病からなる群から選択される。
【0025】
一態様では、血液癌は、多発性骨髄腫、慢性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、形質細胞性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、及びバーキットリンパ腫からなる群から選択される。
【0026】
一態様では、血液癌は、多発性骨髄腫である。
【0027】
別の態様では、自己免疫疾患は、全身性軽鎖アミロイドーシスである。
【0028】
一態様では、VH鎖領域は、配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL鎖領域は、配列番号10に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖領域は、配列番号9に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖領域は、配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号10に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸
配列を含む。好適には、VH鎖領域は、配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖領域は、配列番号9に対して少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号10に対して少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖領域は、配列番号9に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号10に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0029】
好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも97%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも99%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0030】
一態様では、VH鎖領域は、配列番号9のアミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを有し、VL鎖領域は、配列番号10のアミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを有する。
【0031】
一態様では、VH鎖領域は、配列番号9のアミノ酸配列を有し、VL鎖領域は、配列番号10のアミノ酸配列を有する。
【0032】
一態様では、VH鎖領域は、配列番号11に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL鎖領域は、配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖は、配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号12に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖は、配列番号11に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号12に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配
列を含む。好適には、VH鎖は、配列番号11に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号12に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖は、配列番号11に対して少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号12に対して少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖は、配列番号11に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号12に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0033】
好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも95%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも97%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも99%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0034】
一態様では、抗CD38抗体は、配列番号11の重鎖アミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換を有するそのバリアントと、配列番号12の軽鎖アミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換を有するそのバリアントとを含む。
【0035】
一態様では、抗CD38抗体は、配列番号11の重鎖アミノ酸配列と、配列番号12の軽鎖アミノ酸配列とを含む。
【0036】
一態様では、治療上有効量は、45~1,800ミリグラムの投薬量である。好適には、治療上有効量は、45~1,200ミリグラムの投薬量であり得る。好適には、治療上有効量は、45~600ミリグラムの投薬量であり得る。好適には、治療上有効量は、45~135ミリグラムの投薬量であり得る。好適には、治療上有効量は、135~1,800ミリグラムの投薬量であり得る。好適には、治療上有効量は、135~1,200ミリグラムの投薬量であり得る。好適には、治療上有効量は、135~600ミリグラムの
投薬量であり得る。好適には、治療上有効量は、600~1,800ミリグラムの投薬量であり得る。好適には、治療上有効量は、600~1,200ミリグラムの投薬量であり得る。好適には、治療上有効量は、1,200~1,800ミリグラムの投薬量であり得る。
【0037】
一態様では、ヒト抗CD38抗体は、薬学的に許容される組成物の形態で投与される。
【0038】
別の態様では、本発明は、被験者における血液癌の治療方法を提供し、該方法は、血液癌を有する被験者に、血液癌を治療するのに十分な治療上有効量の単離されたヒト抗CD38抗体を皮下投与するステップを含み、該抗CD38抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR3または最大3つのアミノ酸変化を有するそれらの配列のバリアントを含むVH鎖領域と、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR3または最大3つのアミノ酸変化を有するそれらの配列のバリアントを含むVL鎖領域とを含み、該抗体は、45~1,800ミリグラムの投薬量で投与される。
【0039】
別の態様では、本発明は、被験者における血液癌の治療方法を提供し、該方法は、血液癌を有する被験者に、血液癌を治療するのに十分な治療上有効量の単離されたヒト抗CD38抗体を皮下投与するステップを含み、該抗CD38抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR3または最大3つのアミノ酸置換を有するそれらの配列のバリアントを含むVH鎖領域と、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR3または最大3つのアミノ酸置換を有するそれらの配列のバリアントを含むVL鎖領域とを含み、該抗CD38抗体は、45~1,800ミリグラムの投薬量で投与される。
【0040】
別の態様では、本発明は、被験者における血液癌の治療方法を提供し、該方法は、血液癌を有する被験者に、血液癌を治療するのに十分な治療上有効量の単離されたヒト抗CD38抗体を皮下投与するステップを含み、該抗CD38抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR3を含むVH鎖領域と、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR3を含むVL鎖領域とを含み、該抗CD38抗体は、45~1,800ミリグラムの投薬量で投与される。
【0041】
一態様では、抗CD38抗体は、溶血性貧血または血小板減少症を引き起こさない。
【0042】
一態様では、抗CD38抗体を投与することは、溶血性貧血を含めた貧血、血小板減少症、疲労、輸注関連反応(IRR)、白血球減少症、及びリンパ球減少症からなる群から選択される、グレード3または4の1つまたは複数の治療関連有害事象(TRAE)またはTEAEの60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、3%未満、または1%未満の発生率をもたらす。好適には、抗CD38抗体を投与することは、貧血、溶血性貧血、血小板減少症、疲労、輸注関連反応(IRR)、白血球減少症、及びリンパ球減少症からなる群から選択される、グレード3または4の1つまたは複数の治療関連有害事象またはTEAEの30%未満の発生率をもたらし得る。
【0043】
一態様では、抗CD38抗体を投与することは、RBCの10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の枯渇
をもたらす。
【0044】
一態様では、抗CD38抗体を投与することは、血小板の10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の枯渇をもたらす。
【0045】
一態様では、血液癌は、多発性骨髄腫、慢性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、形質細胞性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、及びバーキットリンパ腫からなる群から選択される。
【0046】
一態様では、血液癌は、多発性骨髄腫である。
【0047】
一態様では、VH鎖領域は、配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL鎖領域は、配列番号10に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖領域は、配列番号9に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖領域は、配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号10に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖領域は、配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖領域は、配列番号9に対して少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号10に対して少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖領域は、配列番号9に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号10に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0048】
好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも97%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号
3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも99%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0049】
一態様では、VH鎖領域は、配列番号9のアミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを有し、VL鎖領域は、配列番号10のアミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを有する。
【0050】
一態様では、VH鎖領域は、配列番号9のアミノ酸配列を有し、VL鎖領域は、配列番号10のアミノ酸配列を有する。
【0051】
一態様では、VH鎖領域は、配列番号11に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、VL鎖領域は、配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖は、配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号12に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖は、配列番号11に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号12に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖は、配列番号11に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号12に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖は、配列番号11に対して少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号12に対して少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖は、配列番号11に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号12に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0052】
好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも95%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも97%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は
、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも99%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0053】
一態様では、VH鎖領域は、配列番号11のアミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを有し、VL鎖領域は、配列番号12のアミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを有する。
【0054】
一態様では、抗CD38抗体は、配列番号11の重鎖アミノ酸配列と、配列番号12の軽鎖アミノ酸配列とを含む。
【0055】
一態様では、治療上有効量は、45~1,800ミリグラムの投薬量である。好適には、治療上有効量は、45~1,200ミリグラムの投薬量であり得る。好適には、治療上有効量は、45~600ミリグラムの投薬量であり得る。好適には、治療上有効量は、45~135ミリグラムの投薬量であり得る。好適には、治療上有効量は、135~1,800ミリグラムの投薬量であり得る。好適には、治療上有効量は、135~1,200ミリグラムの投薬量であり得る。好適には、治療上有効量は、135~600ミリグラムの投薬量であり得る。好適には、治療上有効量は、600~1,800ミリグラムの投薬量であり得る。好適には、治療上有効量は、600~1,200ミリグラムの投薬量であり得る。好適には、治療上有効量は、1,200~1,800ミリグラムの投薬量であり得る。
【0056】
一態様では、ヒト抗CD38抗体は、薬学的に許容される組成物の形態で投与される。好適には、薬学的に許容される組成物は、皮下投与に好適であり得る。
【0057】
別の態様では、本発明は、配列番号9に対して少なくとも80%の同一性を有する重鎖可変領域のアミノ酸配列と、配列番号10に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域のアミノ酸配列とを含む単離された抗体を含む、単位剤形を提供し、該単離された抗体は、CD38に結合し、該単位剤形は、該抗体の45~1,800ミリグラムの投薬量での皮下投与用に製剤化される。好適には、VH鎖領域は、配列番号9に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖領域は、配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号10に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖領域は、配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖領域は、配列番号9に対して少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号10に対して少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖領域は、配列番号9に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号10に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0058】
好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列
番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも97%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも99%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0059】
好適には、本発明は、配列番号9の重鎖可変領域のアミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換を有するそのバリアントと、配列番号10の軽鎖可変領域のアミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換を有するそのバリアントとを含む単離された抗体を含む、単位剤形を提供し得、該単離された抗体は、CD38に結合し、該単位剤形は、該抗体の45~1,800ミリグラムの投薬量での皮下投与用に製剤化される。
【0060】
別の態様では、本発明は、配列番号9の重鎖可変領域のアミノ酸配列と、配列番号10の軽鎖可変領域のアミノ酸配列とを含む単離された抗体を含む、単位剤形を提供し、該単離された抗体は、CD38に結合し、かつヒト赤血球には顕著に結合せず、該単位剤形は、該抗体の45~1,800ミリグラムの投薬量での皮下投与用に製剤化される。
【0061】
一態様では、重鎖は、配列番号11に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、軽鎖は、配列番号12に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖は、配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号12に対して少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖は、配列番号11に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号12に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖は、配列番号11に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号12に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖は、配列番号11に対して少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号12に対して少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖は、配列番号11に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み得、VL鎖領域は、配列番号12に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義され
るようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも95%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも97%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号11に対して少なくとも99%の配列同一性を有し得、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号12に対して少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0062】
好適には、重鎖は、配列番号11のアミノ酸配列または最大3つのアミノ酸置換を有するそのバリアントを含み得、軽鎖は、最大3つのアミノ酸置換を有する配列番号12のアミノ酸配列を含み得る。
【0063】
一態様では、重鎖は、配列番号11のアミノ酸配列を含み得、軽鎖は、配列番号12のアミノ酸配列を含み得る。
【0064】
一態様では、該単位剤形は、多発性骨髄腫、慢性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、形質細胞性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、及びバーキットリンパ腫からなる群から選択される血液癌の治療における該抗体の皮下投与用に製剤化される。
【0065】
一態様では、血液癌は、多発性骨髄腫である。
【0066】
一態様では、抗CD38抗体は、溶血性貧血または血小板減少症を引き起こさない。
【0067】
一態様では、抗CD38抗体は、RBCの10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の枯渇をもたらす。
【0068】
一態様では、抗CD38抗体は、血小板の10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の枯渇をもたらす。
【0069】
一態様では、療法において使用するためのヒト抗CD38抗体が提供され、該抗体は、投与後に顕著なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。好適には、ヒト抗CD38抗体は、皮下投与され得る。好適には、該抗体は、45~1,800ミ
リグラムの投薬量で投与され得る。
【0070】
一態様では、療法において使用するためのヒト抗CD38抗体が提供され、該抗体は、投与後に顕著なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさず、該ヒト抗CD38抗体は、45~1,800ミリグラムの投薬量で皮下投与される。好適には、投与後に顕著なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさないヒト抗CD38抗体は、本明細書で定義されるような抗CD38抗体であり得る。
【0071】
一態様では、投与後に顕著なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない単離された抗体を含む、単位剤形が提供され、該単離された抗体は、CD38に結合し、かつヒト赤血球には結合せず、該単位剤形は、該抗体の45~1,800ミリグラムの投薬量での皮下投与用に製剤化される。
【0072】
一態様では、療法において使用するための、本明細書で定義されるようなヒト抗CD38抗体が提供され、該ヒト抗CD38抗体は、皮下投与用に製剤化される。好適には、ヒト抗CD38抗体は、皮下投与される。
【0073】
一態様では、CD38への結合が適応となる疾患の治療において使用するための、本明細書で定義されるようなヒト抗CD38抗体が提供され、該ヒト抗CD38抗体は、皮下投与用に製剤化される。好適には、ヒト抗CD38抗体は、皮下投与される。
【0074】
多くの態様では、本明細書に記載されるように投与される抗CD38抗体の投薬量は、1週間投薬量である。
【0075】
一態様では、療法において使用するための、本明細書で定義されるようなヒト抗CD38抗体が提供され、該ヒト抗CD38抗体は、皮下投与用に製剤化される。好適には、ヒト抗CD38抗体は、皮下投与される。
【0076】
好適には、ヒト抗CD38抗体は、45~1,800ミリグラムの抗体の範囲の投薬量で投与され得る。好適には、ヒト抗CD38抗体は、皮下投与用に製剤化され得る。好適には、ヒト抗CD38抗体は、皮下投与用に製剤化され、45~1,800ミリグラムの抗体の範囲の投薬量で投与され得る。
【0077】
一態様では、がんの治療において使用するための、本明細書で定義されるようなヒト抗CD38抗体が提供される。好適には、がんは、血液癌であり得る。
【0078】
一態様では、血液癌の治療において使用するための、本明細書で定義されるようなヒト抗CD38抗体が提供され、該ヒト抗CD38抗体は、皮下投与用に製剤化される。好適には、ヒト抗CD38抗体は、皮下投与され得る。
【0079】
好適には、ヒト抗CD38抗体は、45~1,800ミリグラムの抗体の範囲の投薬量で投与され得る。好適には、ヒト抗CD38抗体は、皮下投与用に製剤化され得る。好適には、ヒト抗CD38抗体は、皮下投与用に製剤化され、45~1,800ミリグラムの抗体の範囲の投薬量で投与され得る。
【0080】
一態様では、血液癌の治療において使用するための、本明細書で定義されるようなヒト抗CD38抗体が提供され、該ヒト抗CD38抗体は、皮下投与用に製剤化され、該ヒト抗CD38抗体は、45~1,800ミリグラムの抗体の範囲の投薬量で投与される。好適には、ヒト抗CD38抗体は、皮下投与され得る。
【0081】
好適には、血液癌は、多発性骨髄腫、慢性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、形質細胞性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、またはバーキットリンパ腫であり得る。好適には、血液癌は、多発性骨髄腫であり得る。
【0082】
一態様では、自己免疫疾患の治療において使用するための、本明細書で定義されるようなヒト抗CD38抗体が提供される。
【0083】
一態様では、自己免疫疾患の治療において使用するための、本明細書で定義されるようなヒト抗CD38抗体が提供され、該ヒト抗CD38抗体は、皮下投与用に製剤化される。好適には、ヒト抗CD38抗体は、皮下投与され得る。
【0084】
好適には、ヒト抗CD38抗体は、45~1,800ミリグラムの抗体の範囲の投薬量で投与され得る。好適には、ヒト抗CD38抗体は、皮下投与用に製剤化され得る。好適には、ヒト抗CD38抗体は、皮下投与用に製剤化され、45~1,800ミリグラムの抗体の範囲の投薬量で投与され得る。
【0085】
好適には、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、全身性軽鎖アミロイドーシス、または移植片対宿主病であり得る。
【0086】
一態様では、本明細書で定義されるような単離されたヒト抗CD38抗体を含む、薬学的組成物が提供される。
【0087】
一態様では、本発明による単位剤形を含む、薬学的組成物が提供される。
【0088】
一態様では、療法において使用するための、本発明による薬学的組成物が提供される。
【0089】
一態様では、CD38への結合が適応となる疾患の治療において使用するための、本発明による薬学的組成物が提供される。
【0090】
一態様では、自己免疫疾患の治療において使用するための、本発明による薬学的組成物が提供される。好適には、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎(UC)、全身性軽鎖アミロイドーシス、または移植片対宿主病であり得る。好適には、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)であり得る。好適には、自己免疫疾患は、関節リウマチ(RA)であり得る。好適には、自己免疫疾患は、炎症性腸疾患(IBD)であり得る。好適には、自己免疫疾患は、潰瘍性大腸炎(UC)であり得る。好適には、自己免疫疾患は、移植片対宿主病であり得る。
【0091】
別の態様では、がんの治療において使用するための、本発明による薬学的組成物が提供される。好適には、がんは、血液癌であり得る。好適には、血液癌は、多発性骨髄腫、慢性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、形質細胞性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、またはバーキットリンパ腫であり得る。好適には、血液癌は、多発性骨髄腫であり得る。好適には、血液癌は、慢性リンパ芽球性白血病であり得る。好適には、血液癌は、慢性リンパ性白血病であり得る。好適には、血液癌は、形質細胞性白血病であり得る。好適には、血液癌は、急性骨髄性白血病であり得る。好適には、血液癌は、慢性骨髄性白血病であり得る。好適には、血液癌は、B細胞リンパ腫であり得る。好適には、血液癌は、バーキットリンパ腫であり得る。
【0092】
一態様では、疾患の治療用の医薬の製造のための、本明細書で定義されるような単離さ
れたヒト抗CD38抗体の使用が提供される。
【0093】
別の態様では、疾患の治療用の医薬の製造のための、本発明による単位剤形の使用が提供される。
【0094】
好適には、疾患は、CD38への結合が適応となるものであり得る。
【0095】
好適には、疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎(UC)、全身性軽鎖アミロイドーシス、または移植片対宿主病等の自己免疫疾患であり得る。
【0096】
好適には、疾患は、がんであり得る。好適には、がんは、多発性骨髄腫、慢性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、形質細胞性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、またはバーキットリンパ腫等の血液癌であり得る。
【0097】
好適には、医薬は、皮下投与用に製剤化され得る。
【0098】
好適には、医薬は、45~1,800ミリグラムの抗体の投薬量を提供するように製剤化され得る。
【0099】
好適には、医薬は、皮下投与用に製剤化され、45~1,800ミリグラムの抗体の投薬量であり得る。
【0100】
これら及び他の実施形態、特徴及び潜在的な利点は、以下の説明及び図面を参照して明らかとなろう。
【0101】
本発明の目的及び特徴は、下記に説明される図面を参照することによってよりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1】PD研究においてフローサイトメトリー解析に使用した抗体の表を示す。
図2】SC投薬群のPKデータを示す。抗薬物抗体(ADA)は、妥当性確認済みの定性的電気化学発光(ECL)アッセイにより検出した。発生率は経時的に増加し、それが約1000(約log(7))の特定の閾値力価に達したときにPKに影響を及ぼした。
図3】AB79のカニクイザル(cynomolgus monkey)(カニクイザル(cyno))におけるPKデータ及びモデルを示す。パネルA及びBは、8つのサル研究の生のPKデータを示す。(パネルA)最初の投薬後の最初の7日間。(パネルB)全観察期間。用量は色分けされ、SCデータは省略された(図2)。パネルCは、青色のボックスでマークされた標的介在性薬物動態(TMDD)を含む最終PKモデル構造を図示する。Vは、AB79濃度が観察される(濃度でマークされる)中央コンパートメントの容積を表す。Vは、末梢コンパートメントの容積を表す。R総計は、抗体が結合した、及び結合していない受容体CD38のコンパートメントを表す。KSYN及びKDEGは、当該受容体の生成速度定数及び分解速度定数を表し、KINTは、内部移行速度定数(複合体消失速度定数)を表す。KSSは、KSS=(KOFF+KINT)/KONとして定義される定常状態定数であり、式中、KOFFは解離であり、KONは結合速度定数である。パネルD~Fは、TMDD成分を含まない線形2コンパートメントモデル予測(中央値、95%予測区間)及び3つの最低用量の観察されたデータ(研究8)の重ね合わせを示す。パネルD、E、及びF間の時間スケールは異なることに留意されたい。
図4】研究7における投薬後2日間のRBCに対するAB79処置の効果及び投薬後初日の総リンパ球数を示す。
図5】13週間の毒物学研究におけるADAの効果を示す。評価は、最終的な母集団PKモデル(図1、表4)を参照する。用量及び投与経路により層別化された以下の適合度(GOF)プロットが提示される(Keizer et al.(2013)CPT Pharmacometrics Syst.Pharmacol.2:e50):(1)条件付き重み付き残差(CWRES)対時間、(2)観察された濃度対母集団モデル予測、(3)CWRES対母集団モデル予測、及び(4)観察された濃度対個別モデル予測。
図6A】用量及び投与経路によって層別化された(IV-赤色、SC-青色)最終的な母集団PKモデルについてのGOFプロットを示す。
図6B】用量及び投与経路によって層別化された(IV-赤色、SC-青色)最終的な母集団PKモデルについてのGOFプロットを示す。
図6C】用量及び投与経路によって層別化された(IV-赤色、SC-青色)最終的な母集団PKモデルについてのGOFプロットを示す。
図6D】用量及び投与経路によって層別化された(IV-赤色、SC-青色)最終的な母集団PKモデルについてのGOFプロットを示す。
図6E】用量及び投与経路によって層別化された(IV-赤色、SC-青色)最終的な母集団PKモデルについてのGOFプロットを示す。
図6F】用量及び投与経路によって層別化された(IV-赤色、SC-青色)最終的な母集団PKモデルについてのGOFプロットを示す。
図6G】用量及び投与経路によって層別化された(IV-赤色、SC-青色)最終的な母集団PKモデルについてのGOFプロットを示す。
図6H】用量及び投与経路によって層別化された(IV-赤色、SC-青色)最終的な母集団PKモデルについてのGOFプロットを示す。
図6I】用量及び投与経路によって層別化された(IV-赤色、SC-青色)最終的な母集団PKモデルについてのGOFプロットを示す。
図6J】用量及び投与経路によって層別化された(IV-赤色、SC-青色)最終的な母集団PKモデルについてのGOFプロットを示す。
図7】ヒト及びサルNK細胞、B細胞、及びT細胞の表面上でのCD38発現の比較を示す。フローサイトメトリー測定値は標準化されており、シグナルは、同量の蛍光強度を示す可溶性蛍光分子数(molecules of equivalent soluble fluorescence)(MOEF)で報告される。ヒト及びサルの血液リンパ球は、類似したレベルのAB79に結合する。サルNK細胞(CD3-、CD159a+)、B細胞(CD3-、CD20+)、及びT細胞(CD3+)、ならびにヒトNK細胞(CD3-、CD16/CD56+)、B細胞(CD3-、CD19+)、及びT細胞(CD3+)上でのCD38発現レベルの直接比較をフローサイトメトリーによって評価した。各細胞集団についてのAB79染色の蛍光強度中央値(MFI)は、Rainbow Beads(Spherotech、Lake Forest,IL)を用いて作成された標準曲線を用いてMOEF単位に変換された。示されるデータは、各種の3つの個体からのものであり、各細胞型についてのMOEF±SDを示す。血液リンパ球間でCD38発現の差異が存在し、このうち、AB79結合のレベル(MOEF)の高さは、NK細胞>B細胞>T細胞である。AB79結合のパターンは、サル由来の血液細胞中で類似しているが、AB79結合/CD38発現のレベルはより低い。
図8】プラセボ処置動物のT細胞、B細胞、及びNK細胞数データの個体間及び個体内変動を示す。
図9】研究(上段)または性別(下段)によって層別化された投薬前のNK細胞、B細胞、及びT細胞数(1μL当たりの細胞数)を示す。
図10】AB79依存性NK細胞、B細胞、及びT細胞枯渇を示す。提示されるグラフは、AB79の最初の投薬による処置後の最初の7日間以内に生じた変化に焦点を当てる。それによって、毎週または隔週の投薬スケジュールでの単回投薬及び複数回投薬研究からのデータをプールすることが可能であった。グラフA~Cは、それぞれ、NK細胞の個々の最小細胞数(すなわち、最大PD効果)、最初の投薬から7日後の個々の細胞数、ならびに用量毎の平均細胞枯渇プロファイル及びPK-PDモデル構造を示す。グラフE~Fは、B細胞についての同じ情報を示し、グラフG~Iは、T細胞についての同じ情報を示す。
図11】AB79のシミュレートされたヒトPK、ならびにNK細胞、B細胞、及びT細胞枯渇プロファイルを示す。スケーリングされたサルのPK及びPK-PDモデルに基づいて、単回IV及びSC投薬の5つのPK及び細胞枯渇プロファイルをシミュレートした(0.0003~1mg/kg)。左側のプロットは、IV投与後のデータを示し、右側のプロットは、SC投与後のデータを示す。最初の段のプロットは、PKプロファイルを表示する。0.05μg/mLの定量下限(LLOQ)が水平の破線により示される。最低用量のPKは、ノイズに完全に重ね合わせられ、0.03mg/kgの用量でのみ、PKはLLOQを上回るレベルに達した。
図12】健常なボランティアにおけるAB79の単回漸増用量研究(毒性研究)についての計画を示す。74人の被験者における総計6つのI.V.及び4つのS.C.コホートを無作為化し、AB79の単回投薬を与えた。各コホートの後、用量漸増の前に、広範な盲検化された安全性、PK及びPDデータが再検討された。健常なボランティアの免疫抑制の可能性を回避するために、停止基準には標的細胞の枯渇が含まれた。各被験者を投薬後92日間追跡調査した。
図13A】投与経路で層別化された(IV-赤色、SC-青色)PK-PDモデルについてのGOFプロットを示す(NK細胞)。
図13B】投与経路で層別化された(IV-赤色、SC-青色)PK-PDモデルについてのGOFプロットを示す(B細胞)。
図13C】投与経路で層別化された(IV-赤色、SC-青色)PK-PDモデルについてのGOFプロットを示す(T細胞)。
図14】AB79が抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)及び補体依存性細胞傷害作用(CDC)によって細胞枯渇を媒介することを示す。ヒトB系列細胞株におけるCD38受容体数ならびにADCC及びCDCに対する感受性の比較。増加したCD38発現を有する細胞株は、ADCCにより感受性があった。CD38を発現しないヒトリンパ芽球細胞株(MV-4-11)、またはCD38に密接に関連する分子であるCD157をトランスフェクトしたチャイニーズハムスター卵巣細胞株においては、ADCCは何ら見られなかった(データは図示せず)。EC50、50%有効濃度;nd、未実施;SD、標準偏差。
図15】AB79がサルリンパ球の枯渇を媒介することを示す。AB79は、フローサイトメトリーを用いてFlow-Count(商標)フルオロスフェア(Beckman-Coulter)で定量したとき、雌性カニクイザル(n=4/用量群)においてAB79の単回IV投薬後に血中NK細胞>B細胞>T細胞を用量依存的に枯渇させた。試料を処置前(-1週目)、1日目:投薬前、投薬後15分、30分、1時間、4時間、8時間、24時間、48時間、96時間、及び168時間、10日目、15日目、22日目、29日目、36日目、43日目、50日目、及び57日目で収集した。明確にするために2週間のデータのみが示される。各時点で平均細胞数の値を算出し、これを用いてベースラインの数に対する%を算出した。
図16】ヒト破傷風トキソイド(TTd)リコール応答がAB79処置によって低減されることを示す。CB17/SCIDマウスを抗アシアロGM1で処置してNK細胞を排除し、次いで25×10個のヒト末梢血リンパ球を与えた。7~10日後、ヒトIgの評価のために血清試料を収集し、Igのレベルを無作為化の基とした。マウスにTTdを与えてリコール応答を誘導し、示される抗体で2回/週、10日間処置した。最後の処置から3日後、血清を収集し、抗TTd抗体に関して分析した。AB79は、TTdリコール応答を用量依存的に抑制した。AB79は、リコール応答を、リツキサン(Rtx)(アイソタイプ(アイソ)、Rtx、及びAB79(全て10mg/kgで)に類似した程度に低減した。
図17】AB79がサイトカイン誘導を誘導しないことを示す。AB79(可溶性)は、4人の異なる被験者から収集したPBMC中で、24時間のインキュベーション後にIL-6レベルを増加させなかった。これと比較して、IgG1アイソタイプ対照PHA(陽性対照)は、全ての被験者においてサイトカインレベルを増加させ、細胞がIL-6を産生する能力を有することを実証した。48時間刺激したPBMCで、ならびにIL-2、IL-4、IL-10、GM-CSF、IFNγ、及びTNFαを試験したときに、類似した結果が見られた(データは図示せず)。
図18A図18Bの乾式結合、湿式結合、及び可溶性実験のセットアップを示す(Stebbings et al.(2007)J.Immunol.179:3325-3331から修正した)。
図18B】AB79がアゴニスト活性を有しないことを示す。AB79は、それを溶液中でウェルに添加したときに高濃縮されており、液体を蒸発させたか(乾式結合)、これと対比して、AB79を溶液中でウェルに結合させたか(湿式結合)、またはPBMCに直接添加した(可溶性)。AB79は、試験されたいずれの条件下でも24時間後にIL-6またはIL-2、IL-4、IL-8、IL-10、GM-CSF、IFNγ、またはTNFαを刺激しなかった。IL-8は、PBMCによって構成的に産生されており、いずれの処置によっても変化しなかった(データは図示せず)。
図19】カニクイザルCD45+リンパ球へのAB79結合の評価を示す。溶解していないカニクイザル全血におけるAB79のCD45+リンパ球への結合。CD45+リンパ球にゲートをかけ、次いで、AB79(黒色のヒストグラム)の結合またはアイソタイプ対照(赤色のヒストグラム)の結合を評価した。赤色の破線の右側の細胞の割合に図示されるように、AB79結合がリンパ球のサブセット上で検出された。アイソタイプ対照のリンパ球への結合は、ほとんどから全く観察されない。
図20A】平均観察Cmax及び投薬前トラフ(ng/ml)レベル(サイクル1及びサイクル2)を示す。Ab79のCmax(ng/ml)を示す。
図20B】平均観察Cmax及び投薬前トラフ(ng/ml)レベル(サイクル1及びサイクル2)を示す。Ab79の濃度(ng/ml)を示す。
図21】皮下投与されたAb79が用量依存的様態で血中の形質芽球のレベルを低減したことを示す。
図22】皮下投与されたAb79が用量依存的様態で骨髄穿刺液中の形質芽球のレベルを低減したことを示す。
図23】皮下投与されたAb79が用量依存的様態で骨髄穿刺液中の形質細胞のレベルを低減したことを示す。
図24】AB79の単回SC投与後の、健常な被験者の末梢血中のNK細胞のレベルを示す。SC、皮下。
図25】プラセボ対照、0.1、0.3、または0.6mg kg-1のAB79(SC)の単回注射後の、健常な被験者由来の末梢血中の形質芽球、単球、B細胞、T細胞、及びNK細胞のレベルを示す。
【数1】
絶対単球(細胞/μL)、……NK細胞(細胞/μL)、
【数2】
総T細胞(細胞/μL)、----B細胞(細胞/μL)、
【数3】
形質芽球細胞(細胞/μL)。中央の曲線は、中央値を表す。NK、ナチュラルキラー(細胞);SC、皮下。
図26】ヒトRBCへのAB79及びダラツムマブの結合(個々のドナーの蛍光中央値)を示す。未標識AB79(500μg/ml)または未標識ダラツムマブ(500μg/ml)の存在または不在下で、ビオチン-ストレプトアビジン-BV421 AB79(0、0.1、10、100μg/ml)またはビオチン-ストレプトアビジン-BV421ダラツムマブ(0、0.1、1、10、100μg/ml)と共に室温で3時間、穏やかなシェーカー上でインキュベートした、4人の健常なボランティア由来の末梢血。記号解:
【数4】
AB79-ビオチン-strep-BV421、
【数5】
冷AB79及びAB79-ビオチン-strep-BV421、
【数6】
ダラツムマブ-ビオチン-strep-BV421、
【数7】
冷ダラツムマブ及びダラツムマブ-ビオチン-strep-BV421。
【発明を実施するための形態】
【0103】
本発明は、抗CD38抗体の皮下投与による、CD-38関連疾患の治療方法に関する。
【0104】
活動性疾患を有する患者の血管系において、RBC上で、骨髄腫細胞上におけるよりもおよそ約36倍多くのCD38分子が発現される。故に、例えば、未結合の抗体が骨髄の中に通過して、骨髄腫細胞上で発現されるCD38を飽和させ得る前に、CD38のオフターゲット発現が飽和している必要があり得る。これは、RBC及び血小板に強く結合する、ダラツムマブ及びイサツキシマブ等の当該技術分野における他の抗CD38抗体が、有効性を達成するために高用量の全身投与を必要とし得ることの説明となり得る。
【0105】
AB79、ダラツムマブ、イサツキシマブ、及びMOR202は、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)によって主として腫瘍を殺傷するIgG1である。この機構は、NK細胞等のエフェクター細胞が標的細胞上の抗体に結合し、溶解性シナプスを形成して、集中的様態で細胞傷害性物質を分泌することを必要とする。血中でのこれらのエフェクター細胞の頻度は、RBC及び血小板のそれよりも桁違いに低い。例えば、血中のRBC対NK細胞の比は、20,000:1である。結果として、ダラツムマブ、イサツキシマブ、及びMOR202のエフェクター活性は、エフェクター細胞が、RBC及び血小板に結合した抗CD-38抗体に主として結合するため、腫瘍から逸らされて、腫瘍との溶解性シナプスの形成を阻止し、これによりADCC効率が低くなる。
【0106】
RBC及び血小板に結合する抗CD38抗体による患者の治療は、生命を脅かす副作用をもたらす恐れがある。例えば、1つの研究では、MOR202による再発性または難治性多発性骨髄腫の治療により、いくつかの重篤な治療関連有害事象またはTEAEが生じた(例えば、Raab et al.(2015)Blood 126:3035を参照されたい)。いずれのグレードでも最も一般的なTEAEは、貧血(15人の患者、34%)、疲労(14人の患者、32%)、輸注関連反応(IRR)及び白血球減少症(各々13人の患者、30%)、リンパ球減少症及び悪心(各々11人の患者、25%)であった。グレード≧3のTEAEが28人の患者(64%)で報告され、このうち最も一般的なものには、リンパ球減少症(8人の患者、18%)、白血球減少症(5人の患者、11
%)、及び高血圧(4人の患者、9%)が含まれた。IRRは主に最初の注入中に生じ、1人の患者(グレード3)を除いて全てグレード1~2であった。感染症が一般的に報告されたが(26人の患者、59%)、症例の大多数は、治療に関連するとは見なされなかった。MOR202は、IV注入を介してのみ臨床的に使用されている。
【0107】
CD38を標的とする他のMorphosys抗体が知られている(例えば、WO2006/125640を参照されたく、これはMOR03077、MOR03079、MOR03080、及びMOR03100の4種のヒト抗体、ならびにOKT10及びIB4の2種のマウス抗体を開示する)。これらの先行技術の抗体は、様々な理由で、本発明により使用するための抗体(例えば、AB79)に劣っている。MOR03080は、ヒトCD38及びカニクイザルCD38に結合するが、ヒトCD38への親和性は低い(Biacore K=27.5nm)。OKT10は、ヒトCD38及びカニクイザルCD38に結合するが、ヒトCD38への親和性は低い/中程度である(Biacore K=8.28nm)。MOR03079は、高い親和性(Biacore K=2.4nm)でヒトCD38に結合するが、カニクイザルCD38には結合しない。MOR03100及びMOR03077は、中程度のまたは低い親和性(Biacore K=それぞれ10nm及び56nm)でヒトCD38に結合する。比較すると、本発明により使用するための抗体(例えば、AB79)は、ヒトCD38への高い親和性(Biacore K=5.4nm)をもってヒト及びカニクイザルCD38に結合する。その上、先行技術の抗体は、ADCCならびにCDC活性が不十分である。
【0108】
より効率的なADCCの利点は、抗CD38治療薬を低容量注射として送達できることである。本発明により使用するための抗体(例えば、AB79)が100mg/mLの濃度で製剤化される場合、80kgの骨髄腫患者に対して効果的な用量が、<1.0mLの単回皮下注射として投与され得る。対照的に、この患者に同等の形態(すなわち、100mg/mL)で送達されるダラツムマブまたはイサツキシマブの有効用量は、それぞれ12.8mLまたは8~16mLの投与を必要とするであろう。
【0109】
抗CD38の方法及び単位投薬量は、本明細書において、治療上有効用量の抗CD38抗体の皮下投与を提供し、それによって、予想外の有益性を提供すると共に、高用量の全身抗CD38抗体療法の投与の副作用、不都合、及び費用を防止する。
【0110】
本発明は、血液癌を含めたCD38への結合が適応となる疾患を治療するために、治療上有効量の単離された抗CD38抗体を、それを必要とする患者に皮下投与するための方法及び単位剤形を提供する。一部の実施形態では、皮下投与用の抗体は、配列番号9を含む重鎖可変領域(またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、もしくは99%の配列同一性を有する配列)と、配列番号10を含む軽鎖可変領域(またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、もしくは99%の配列同一性を有する配列)とを含む。本明細書に提供される抗CD38抗体は、皮下投与によって投与されるときに治療上有効であることが可能である。
【0111】
本発明の抗CD38抗体の別の利点は、臨床現場におけるいくつかの他の抗CD38抗体とは異なり、本発明の抗CD38抗体(例えば、AB79)が、カニクイザル(cynomolgus monkey)(カニクイザル(cyno))CD38に結合することが可能であり、投薬、毒性、有効性等の前臨床評価のために有用な動物モデルを提供するということである。
【0112】
本発明の抗CD38抗体の別の利点は、それらを用いて、同じエピトープにてCD-38への結合を競合する、本発明の方法及び単位投薬量において有用であり得る他の抗体についてスクリーニングし得ることである。
【0113】
本明細書で別途定義されない限り、本発明に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者に一般的に理解される意味を有するものとする。それらの用語の意味及び範囲は明確なはずである。しかしながら、何らかの潜在的なあいまいさがある場合、いずれの辞書による定義または付帯的定義よりも本明細書に提供される定義が優先される。さらに、文脈上他の解釈を要する場合を除き、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。「または」という用語は、別途定めのない限り「及び/または」を含む。さらに、「含むこと(including)」、「含む(includes)」、または「含まれる(included)」という用語の使用は、限定するものではない。「要素」及び「成分」等の用語は、別途具体的な定めのない限り、1つの単位を含む要素及び成分、ならびに1つよりも多くの副単位を含む要素及び成分の両方を包含する。
【0114】
一般に、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学及びタンパク質、ならびに核酸化学及びハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法、及びそれらの技法は、当該技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。本発明の方法及び技法は、一般に、別途指示されない限り、当該技術分野で周知の従来の方法に従って、また本明細書全体を通して引用され、考察される種々の一般的及びより具体的な参考資料に記載されるように行われる。酵素反応及び精製技法は、製造業者の仕様書に従って、当該技術分野で一般的に遂行されるように、または本明細書に記載されるように行われる。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、ならびに医薬品化学及び製薬化学に関連して使用される命名法(nomenclatures)、ならびにそれらの検査手順及び技法は、当該技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。化学合成、化学分析、医薬品の調製、製剤化、送達、及び患者の治療には標準的技法が使用される。
【0115】
全ての見出し及び節の表記は、明確にするため及び参照目的で使用されるにすぎず、決して限定するものとして見なされるべきではない。例えば、当業者であれば、本明細書に記載される本発明の趣旨及び範囲に従って、異なる見出し及び節からの本開示の種々の態様を適宜組み合わせることの有用性を理解しよう。
【0116】
本発明がより容易に理解されるように、選ばれた用語が下記に定義される。
【0117】
「ヒトCD38」及び「ヒトCD38抗原」という用語は、本明細書で定義されるような、配列番号1のアミノ酸配列、または、エピトープ等のその機能性画分を指す(表1)。一般に、CD38は、短い細胞質内尾部、膜貫通ドメイン、及び細胞外ドメインをもつ。「カニクイザルCD38」及び「カニクイザルCD38抗原」という用語は、ヒトCD38のアミノ酸配列と92%同一である、配列番号2のアミノ酸配列を指す(表1)。CD38の同義語には、環状ADPリボースヒドロラーゼ、環状ADPリボース-ヒドロラーゼ1、ADPリボシルシクラーゼ、ADP-リボシルシクラーゼ1、cADPrヒドロラーゼ1、CD38-rs1、I-19、NIM-R5抗原、2’-ホスホ-環状-ADP-リボーストランスフェラーゼ、2’-ホスホ-ADP-リボシルシクラーゼ、2’-ホスホ-環状-ADP-リボーストランスフェラーゼ、2’-ホスホ-ADP-リボシルシクラーゼ、T10が含まれる。
【表1】
【0118】
「治療上有効量」及び「治療上有効投薬量」という用語は、障害またはその1つもしくは複数の症状の重症度及び/または継続期間を低減もしくは緩和する;障害が進むことを予防する;障害の退行を引き起こす;障害に関連する1つもしくは複数の症状の再発、発症、発現、もしくは進行を予防する;または所望の治療結果を達成するのに必要な投薬量でかつそのような期間にわたって、別の治療薬(例えば、予防剤または治療剤)の予防もしくは治療効果(複数可)を強化もしくは改善するのに十分である、治療薬の量を指す。治療上有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、ならびに個体において所望の応答を引き出す医薬の能力等の要因により様々であり得る。治療上有効量の抗体は、治療上有益な効果が、抗体または抗体部分のいかなる毒性または有害な効果にも勝るものである。腫瘍治療のための治療上有効量の抗体は、それが疾患の進行を安定させる能力によって測定されてもよい。化合物ががんを阻害する能力は、ヒト腫瘍における有効性の予測となる動物モデル系で評価されてもよい。
【0119】
「患者」及び「被験者」という用語は、ヒト及び他の動物の両方、特に哺乳動物を含む。故に、本明細書に開示される組成物、投薬量、及び方法は、ヒトの療法及び獣医療法の両方に適用可能である。一実施形態では、患者は、哺乳動物、例えば、ヒトである。
【0120】
「CD38への結合が適応となる疾患」という用語は、結合パートナー(例えば、本発明の抗CD38抗体)のCD38への結合が、疾患の1つまたは複数の症状の緩和を含めた予防効果または治癒効果を提供する疾患を意味する。かかる結合は、CD38の他の因子もしくは結合パートナーの遮断、CD38の中和、ADCC、CDC、補体活性化、ま
たは疾患が予防もしくは治療される何らかの他の機構をもたらすことが可能である。CD38の因子及び結合パートナーには、CD38に対する自己抗体が含まれ、これは本発明の抗CD38抗体によって遮断される。かかる結合は、細胞または細胞のサブセット、例えばMM細胞による、CD38の発現の結果として適応となる可能性があり、それによって、CD38の結合パートナーを被験者に提供することにより、例えば溶血またはアポトーシスを介した、当該細胞の除去、例えば溶解がもたらされる。CD38のかかる発現は、例えば、正常な細胞と比べて、または非疾患状態もしくは疾患状態のいずれかの間の他の細胞型と比べて、正常な、過剰発現された、不適切に発現されたCD38、またはCD38の活性化の結果であってもよい。
【0121】
「血液癌」という用語は、造血組織の悪性新生物を指し、白血病、リンパ腫、及び多発性骨髄腫を包含する。異常なCD38発現に関連する病態の非限定的な例としては、多発性骨髄腫(Jackson et al.(1988)Clin.Exp.Immunol.72:351-356)、B細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL)(Durig et al.(2002)Leukemia 16:30-35、Morabito et al.(2001)Leukemia Res.25:927-932、Marinov et al.(1993)Neoplasma 40(6):355-358、及びJelinek et al.(2001)Br.J.Haematol.115:854-861)、急性リンパ芽球性白血病(Keyhani et al.(1999)Leukemia Res.24:153-159、及びMarinov et al.(1993)Neoplasma 40(6):355-358)、慢性骨髄性白血病(Marinov et al.(1993)Neoplasma 40(6):355-358)、急性骨髄性白血病(Keyhani et al.(1999)Leukemia Res.24:153-159)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病または慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病または急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、有毛細胞性白血病(HCL)、骨髄異形成症候群(MDS)、ならびにこれらの白血病の全てのサブタイプ及び病期(例えば、CML芽球期(BP)、慢性期(CP)、または移行期(AP))、ならびに他の血液疾患が挙げられるが、これらに限定されず、これらは当業者に周知の形態学的、組織化学的、及び免疫学的技法によって定義される。
【0122】
「新生物」及び「新生物性病態(neoplastic condition)」という用語は、無制御な成長、分化の欠如、脱分化、局所組織浸潤、及び転移を含めた1つまたは複数の症状をもたらす、正常な制御の喪失を特徴とする細胞の増殖に関連する病態を指す。
【0123】
「単離された抗体」という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す。例えば、CD38に特異的に結合する単離された抗体は、CD38以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない。しかしながら、ヒトCD38またはカニクイザルCD38のエピトープ、アイソフォーム、またはバリアントに特異的に結合する単離された抗体は、例えば、CD38種のホモログ等の他の種に由来する、他の関連する抗原への交差反応性を有してもよい。その上、単離された抗体は、他の細胞物質及び/または化学物質を実質的に含まない場合がある。
【0124】
「赤血球(red blood cell)」、「RBC」、及び「赤血球(erythrocyte)」という用語は、酸素を細胞及び組織に運搬し、二酸化炭素を呼吸器官に運搬し戻す、骨髄由来のヘモグロビン含有血液細胞を指す。RBCは、赤血球(red
cell)、赤血球(red blood corpuscle)、ヘマタイド、及び赤血球系細胞とも称される。
【0125】
特定の抗体、タンパク質、またはペプチドと、抗原、エピトープ、または他の化学種との相互作用を参照しての「特異的結合」、「~に特異的に結合する」、及び「~に特異的である」という用語は、非特異的相互作用とは測定できるほどに異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、対照分子の結合と比較した、ある分子の結合を決定することによって測定することができ、対照分子とは、一般に、結合活性を有しない類似した構造の分子である。例えば、特異的結合は、標的に類似した対照分子との競合によって決定することができる。本発明の抗CD38抗体は、CD38リガンドに特異的に結合する。「特異的結合」、「~に特異的に結合する」、及び「~に特異的である」という用語はまた、相互作用が、化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存することも意味する。例えば、抗体は、タンパク質を全体として認識してそれに結合するのではなく、特定のタンパク質構造を認識してそれに結合する。抗体がエピトープ「A」に特異的である場合、標識済みの「A」及び抗体を含有する反応において、エピトープA(または遊離した未標識のA)を含有する分子の存在は、抗体に結合した標識済みのAの量を低減するであろう。特定の抗原またはエピトープに対する特異的結合は、例えば、抗原またはエピトープに対して少なくとも約10-4M、少なくとも約10-5M、少なくとも約10-6M、少なくとも約10-7M、少なくとも約10-8M、少なくとも約10-9M、少なくとも約10-10M、少なくとも約10-11M、少なくとも約10-12M、またはそれを超えるKDを有する抗体によって示され得、ここで、KDは、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指す。典型的には、抗原に特異的に結合する抗体は、対照分子に対して、当該抗原またはエピトープと比べて20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5,000倍、10,000倍以上大きいKDを有するであろう。また、特定の抗原またはエピトープに対する特異的結合は、例えば、抗原またはエピトープに対して、対照と比べて少なくとも20倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5,000倍、10,000倍以上大きい、当該エピトープに対するKAまたはKaを有する抗体によって示され得、ここで、KAまたはKaは、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指す。
【0126】
「ある期間にわたって」という用語は、任意の期間、例えば、数分間、数時間、数日間、数ヶ月間、または数年間を指す。例えば、ある期間にわたってとは、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも60分間、少なくとも75分間、少なくとも90分間、少なくとも105分間、少なくとも120分間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも22時間、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも1年間、またはそれらの間の任意の時間間隔を指すことができる。換言すれば、本組成物からの抗体は、それが投与される個体によって、少なくとも10分間、少なくとも15分間、少なくとも30分間、少なくとも60分間、少なくとも75分間、少なくとも90分間、少なくとも105分間、少なくとも120分間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも12時間、少なくとも14時間、少なくとも16時間、少なくとも18時間、少なくとも20時間、少なくとも22時間、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも1年間の期間、またはそれらの間の任意の時間間隔にわたって吸収され得る。
【0127】
ある成分を「実質的に」含む組成物とは、当該組成物が約80重量%超の当該成分を含有することを意味する。好適には、当該組成物は、約90重量%超の当該成分を含み得る。好適には、当該組成物は、約95重量%超の当該成分を含み得る。好適には、当該組成
物は、約97重量%超の当該成分を含み得る。好適には、当該組成物は、約98重量%超の当該成分を含み得る。好適には、当該組成物は、約99重量%超の当該成分を含み得る。
【0128】
「約」という用語は、最大10%の規模のわずかな変動のみがある、数、程度、容量、時間等が近い範囲を指す。
【0129】
「薬学的に許容される担体」という用語は、本発明の化合物を哺乳動物に投与するのに好適な、薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを指す。担体には、対象化合物を1つの器官、または身体の部分から、別の器官、または身体の部分に運搬または輸送することに関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、またはカプセル封入材料が含まれる。各担体は、製剤の他の成分と適合性であり、かつ患者に有害でないという意味で「許容され」なければならない。一実施形態では、薬学的に許容される担体は、静脈内投与に好適である。別の実施形態では、薬学的に許容される担体は、局所領域注射に好適である。別の実施形態では、薬学的に許容される担体は、皮下投与に好適である。別の実施形態では、薬学的に許容される担体は、皮下注射に好適である。
【0130】
「薬学的組成物」という用語は、被験者への投与及び疾患の治療に好適な調製物を指す。本発明の抗CD38抗体が医薬品として哺乳動物、例えばヒトに投与される場合、それらは、「そのままで」、または抗CD38抗体を薬学的に許容される担体及び/または他の賦形剤と組み合わせて含有する薬学的組成物として、投与することができる。薬学的組成物は、特定の投薬量の抗CD38抗体を特定の濃度、特定の量、または特定の容量で投与するための単位剤形の形態であり得る。抗CD38抗体を、単独でまたは予防剤、治療剤、及び/または薬学的に許容される担体と組み合わせてのいずれかで含む、薬学的組成物が提供される。好適には、薬学的組成物は、本発明による単位剤形を、単独でまたは予防剤、治療剤、及び/または薬学的に許容される担体と組み合わせてのいずれかで含み得る。好適には、薬学的組成物は、本明細書に記載されるようなヒト抗CD38抗体を、単独でまたは予防剤、治療剤、及び/または薬学的に許容される担体と組み合わせてのいずれかで含み得る。
【0131】
慣習的な抗体の構造単位は、典型的には、四量体を含む。各四量体は、典型的には、2つの同一のポリペプチド鎖対から構成され、各対が1本の「軽」鎖(典型的に約25kDaの分子量を有する)と、1本の「重」鎖(典型的に約50~70kDaの分子量を有する)とを有する。ヒト軽鎖は、カッパ及びラムダ軽鎖として分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンとして分類され、それぞれIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEとして、抗体のアイソタイプを定義する。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含むが、これらに限定されない、いくつかのサブクラスを有する。IgMは、IgM1及びIgM2を含むが、これらに限定されないサブクラスを有する。故に、「アイソタイプ」は、それらの定常領域の化学特性及び抗原特性によって定義される、免疫グロブリンのサブクラスのうちのいずれかを指す。既知のヒト免疫グロブリンアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM1、IgM2、IgD、及びIgEである。治療用抗体はまた、アイソタイプ及び/またはサブクラスのハイブリッドを含むことができる。
【0132】
各可変重(VH)及び可変軽(VL)領域(約100~110アミノ酸長)は、「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる3つの超可変領域と、4つのフレームワーク領域(FR)(約15~30アミノ酸長)とから構成され、これらはアミノ末端からカルボキシ末端へと、以下の順序、すなわちFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4で配置されている。「可変」とは、CDRの配列が抗体間で大幅に異なり、それによって固有の抗原結合部位を決定するという事実を指す。
【0133】
超可変領域は、一般に、軽鎖可変領域におけるアミノ酸残基約24~34(LCDR1、「L」は軽鎖を表す)、50~56(LCDR2)、及び89~97(LCDR3)、ならびに重鎖可変領域における約31~35B(HCDR1、「H」は重鎖を表す)、50~65(HCDR2)、及び95~102(HCDR3)前後からのアミノ酸残基(Kabat et al.(1991)Sequences Of Proteins Of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD)、及び/または超可変ループを形成するそれらの残基(例えば、軽鎖可変領域における残基26~32(LCDR1)、50~52(LCDR2)、及び91~96(LCDR3)、ならびに重鎖可変領域における26~32(HCDR1)、53~55(HCDR2)、及び96~101(HCDR3))を包含する(Chothia and Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917)。
【0134】
Kabat番号付けシステムは、一般に、可変ドメインにおける残基(およそ、軽鎖可変領域の残基1~107及び重鎖可変領域の残基1~113)に言及する際に使用され(例えば、Kabat et al.(1991)Sequences Of Proteins Of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD)、EU番号システムはFc領域に使用される。
【0135】
「免疫グロブリン(Ig)ドメイン」という用語は、特有の三次構造を有する免疫グロブリンの領域を指す。可変ドメインに加えて、各重鎖及び軽鎖は、定常ドメイン、すなわち定常重(CH)ドメイン、定常軽(CL)ドメイン、及びヒンジドメインを有する。IgG抗体の関連において、IgGアイソタイプは各々、3つのCH領域を有する。各HC及びLCのカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主として担う定常領域を定義する。したがって、IgGの関連における「CH」ドメインは以下の通りである:「CH1」とは、KabatにあるようなEUインデックスによる118~220位を指す。「CH2」とは、KabatにあるようなEUインデックスによる237~340位を指し、「CH3」とは、KabatにあるようなEUインデックスによる341~447位を指す。
【0136】
重鎖の別のタイプのIgドメインは、ヒンジ領域である。「ヒンジ領域」という用語は、抗体の第1の定常ドメインと第2の定常ドメインとの間のアミノ酸を含む、柔軟なポリペプチドを指す。構造的に、IgGのCH1ドメインは、EUによる220位で終わり、IgGのCH2ドメインは、EUによる残基237位で始まる。故に、IgGに関して、抗体ヒンジは、本明細書では221位(IgG1におけるD221)~236位(IgG1におけるG236)を含むように定義され、ここで、番号付けは、KabatにあるようなEUインデックスによる。一部の実施形態では、例えばFc領域の関連において、下部ヒンジが含まれ、この「下部ヒンジ」は、一般に、226位または230位を指す。
【0137】
「Fc領域」という用語は、最初の定常領域免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域、及び一部の実例ではヒンジの一部を含む、ポリペプチドを指す。故に、Fcは、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、IgE及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、ならびにこれらのドメインのN末端にある柔軟なヒンジを指す。IgA及びIgMの場合、FcはJ鎖を含んでもよい。IgGの場合、Fcドメインは、免疫グロブリンドメインCγ2及びCγ3(Cγ2及びCγ3)、ならびにCγ1(Cγ1)とCγ2(Cγ2)との間の下部ヒンジ領域を含む
。Fc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgGの重鎖Fc領域は通常、残基C226またはP230からそのカルボキシル末端を含むように定義され、ここで、番号付けは、KabatにあるようなEUインデックスによる。一部の実施形態では、下記により完全に記載されるように、例えば、1つまたは複数のFcγR受容体またはFcRn受容体への結合を改変するために、アミノ酸修飾がFc領域に対して行われる。
【0138】
CD38抗体
したがって、本発明は、皮下投与方法及び単位剤形において利用される、ヒト及び霊長類CD38タンパク質に特異的に結合する単離された抗CD38抗体を提供する。本発明において特に有用であるのは、ヒト及び霊長類の両方のCD38タンパク質に結合する抗体であり、特に、カニクイザル(cynomolgus monkey)(Macaca
fascicularis、カニクイザル(Crab eating macaque)、本明細書で「カニクイザル(cyno)」とも称される)等の霊長類が臨床試験で使用される。
【0139】
一部の実施形態では、本発明の抗CD38抗体は、ヒト配列の番号付けに基づいてK121、F135、Q139、D141、M142、E239、W241、S274、C275、K276、F284、V288、K289、N290、P291、E292、D293、及びS294を含めたいくつかのアミノ酸残基にてCD38と相互作用する。好適には、本発明の抗CD38抗体は、ヒト配列の番号付けに基づいて、配列番号1のK121、F135、Q139、D141、M142、E239、W241、S274、C275、K276、F284、V288、K289、N290、P291、E292、D293、及びS294を含めたいくつかのアミノ酸残基にてCD38と相互作用し得る。好適には、本発明の抗CD38抗体は、配列番号2のK121、F135、Q139、D141、M142、E239、W241、F274、C275、K276、F284、V288、K289、N290、P291、E292、D293、及びS294を含めたいくつかのアミノ酸残基にてCD38と相互作用する。これらの残基は、カニクイザルにおいてはS274が実際はF274であることを除いて、ヒト及びカニクイザルの両方で同一であることに留意されたい。これらの残基は、特定の抗原結合ペプチドの足跡(footprint)内での免疫優性エピトープ及び/または残基を表し得る。
【0140】
一部の実施形態では、本発明により使用するための抗CD38抗体は、以下のCDRアミノ酸配列、すなわち、GFTFDDYG(配列番号3、HCDR1 AB79)、ISWNGGKT(配列番号4、HCDR2 AB79)、及びARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号5、HCDR3 AB79)または最大3つのアミノ酸変化を有するそれらの配列のバリアントを含む重鎖を含む。一部の実施形態では、本発明により使用するための抗体は、以下のCDRアミノ酸配列、すなわち、SSNIGDNY(配列番号6、LCDR1 AB79)、RDS(配列番号7、LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号8、LCDR3 AB79)または最大3つのアミノ酸変化を有するそれらの配列のバリアントを含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、本発明により使用するための抗体は、以下のCDRアミノ酸配列、すなわち、GFTFDDYG(配列番号3、HCDR1 AB79)、ISWNGGKT(配列番号4、HCDR2 AB79)、ARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号5、HCDR3 AB79)または最大3つのアミノ酸変化を有するそれらの配列のバリアントを含む重鎖と、以下のCDRアミノ酸配列、すなわち、SSNIGDNY(配列番号6、LCDR1 AB79)、RDS(配列番号7、LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号8、LCDR3 AB79)または最大3つのアミノ酸変化を有するそれらの配列のバリアントを含む軽鎖とを含む。一部の実施形態では、抗CD38抗体は、以下のCDRアミノ酸配列、すなわち、GFTFDDYG(配列番号3、HCDR1 AB79)、ISWNGGKT(配列番号4、HCDR2 AB79)、及びARGSLFHDSSGFYFGH(
配列番号5、HCDR3 AB79)を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、該抗体は、以下のCDRアミノ酸配列、すなわち、SSNIGDNY(配列番号6、LCDR1 AB79)、RDS(配列番号7、LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号8、LCDR3 AB79)を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、該抗体は、以下のCDRアミノ酸配列、すなわち、GFTFDDYG(配列番号3、HCDR1
AB79)、ISWNGGKT(配列番号4、HCDR2 AB79)、ARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号5、HCDR3 AB79)を含む重鎖と、以下のCDRアミノ酸配列、すなわち、SSNIGDNY(配列番号6、LCDR1 AB79)、RDS(配列番号7、LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号8、LCDR3 AB79)を含む軽鎖とを含む。一部の実施形態では、該抗体は、配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖を含む。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、VH鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、当該配列の残りは、配列番号9に対して少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0141】
一部の実施形態では、該抗体は、配列番号9の可変重(VH)鎖アミノ酸配列を含む重鎖を含む。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSDISWNGGKTHYVDSVKGQFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGSLFHDSSGFYFGHWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLA(配列番号9)。
【0142】
一部の実施形態では、該抗体は、配列番号10に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。好適には、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得る。好適には、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、VL鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、VL配列の残りは、配列番号10に対して少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0143】
一部の実施形態では、該抗体は、配列番号10の可変軽(VL)鎖アミノ酸配列を含む
軽鎖を含む。
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGDNYVSWYQQLPGTAPKLLIYRDSQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCQSYDSSLSGSVFGGGTKLTVLGQPKANPTVTLFPPSSEEL(配列番号10)。
【0144】
一部の実施形態では、該抗体は、配列番号9のVH鎖アミノ酸配列または本明細書に記載されるようなそのバリアントを含む重鎖と、配列番号10のVL鎖アミノ酸配列または本明細書に記載されるようなそのバリアントを含む軽鎖とを含む。
【0145】
当業者には理解されようが、可変重鎖及び軽鎖は、ヒトIgG定常ドメイン配列、一般にはIgG1、IgG2、またはIgG4に結合され得る。
【0146】
一部の実施形態では、該抗体は、配列番号11に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖(HC)を含む。好適には、重鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、重鎖の残りは、配列番号11に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得る。好適には、重鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、重鎖の残りは、配列番号11に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、重鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、重鎖の残りは、配列番号11に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、重鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、重鎖の残りは、配列番号11に対して少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、重鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、重鎖の残りは、配列番号11に対して少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、重鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、重鎖の残りは、配列番号11に対して少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0147】
一部の実施形態では、該抗体は、配列番号11の重鎖(HC)アミノ酸配列を含む。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSDISWNGGKTHYVDSVKGQFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGSLFHDSSGFYFGHWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)。
【0148】
一部の実施形態では、該抗体は、配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖(LC)を含む。好適には、軽鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、軽鎖の残りは、配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得る。好適には、軽鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、軽鎖の残りは、配列番号12に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、軽鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR
配列を含み得、軽鎖の残りは、配列番号12に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、軽鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、軽鎖の残りは、配列番号12に対して少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、軽鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、軽鎖の残りは、配列番号12に対して少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、軽鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、軽鎖の残りは、配列番号12に対して少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0149】
一部の実施形態では、該抗体は、配列番号12の軽鎖(LC)アミノ酸配列を含む。
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGDNYVSWYQQLPGTAPKLLIYRDSQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCQSYDSSLSGSVFGGGTKLTVLGQPKANPTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号12)。
一部の実施形態では、該抗体は、配列番号11のHCアミノ酸配列または本明細書に記載されるようなそのバリアントと、配列番号12のLCアミノ酸配列または本明細書に記載されるようなそのバリアントとを含む。
【0150】
本発明は、ヒト及びカニクイザルの両方のCD38に結合し、かつ以下のアミノ酸残基、すなわち、ヒトの番号付けに基づいて、配列番号1及び配列番号2のK121、F135、Q139、D141、M142、E239、W241、S274、C275、K276、F284、V288、K289、N290、P291、E292、D293、及びS294の少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%と相互作用する抗体を包含する。好適には、該抗体は、これらのアミノ酸残基の少なくとも90%と相互作用し得る。好適には、該抗体は、これらのアミノ酸残基の少なくとも95%と相互作用し得る。好適には、該抗体は、これらのアミノ酸残基の少なくとも97%と相互作用し得る。好適には、該抗体は、これらのアミノ酸残基の少なくとも98%と相互作用し得る。好適には、該抗体は、これらのアミノ酸残基の少なくとも99%と相互作用し得る。好適には、該抗体は、以下のアミノ酸、すなわち、ヒトの番号付けに基づいて、配列番号1及び配列番号2のK121、F135、Q139、D141、M142、E239、W241、S274、C275、K276、F284、V288、K289、N290、P291、E292、D293、及びS294のうちの少なくとも14個(例えば、少なくとも15個または少なくとも16個)と相互作用し得る。
【0151】
一部の実施形態では、該抗体は、完全長である。本明細書における「完全長抗体」とは、本明細書に概説されるような1つまたは複数の修飾を含めて、可変及び定常領域を含む、抗体の天然の生物学的形態を構成する構造を意味する。
【0152】
代替として、該抗体は、抗体断片、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書で「抗体模倣体」と称されることがある)、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合体(antibody fusion)(「抗体コンジュゲート」と称されることがある)、及びそれぞれ各々の断片を含むが、これらに限定されない、様々な構造であり得る。具体的な抗体断片には、(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなるFab断片、(ii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iii)単一の抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片、(iv)単一の可変部分からなるdAb断片(Ward et al.(1989)Nature 341:544-546)、(v)単離されたCDR領域、(vi)2つの連結したFab断片を含む
二価断片である、F(ab’)2断片、(vii)VHドメイン及びVLドメインがペプチドリンカーによって連結され、これにより当該2つのドメインが会合して抗原結合部位を形成することが可能となる、一本鎖Fv分子(scFv)、(Bird et al.(1988)Science 242:423-426,Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883)、(viii)二重特異性一本鎖Fv(WO03/11161)、ならびに(ix)遺伝子融合によって構築される多価または多重特異性断片である、「ダイアボディ」または「トリアボディ」が含まれるが、これらに限定されない(Tomlinson et al.(2000)Methods Enzymol.326:461-479、WO94/13804、Holliger et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448)。
【0153】
好適には、該抗体は、Fab断片であり得る。好適には、該抗体は、Fv断片であり得る。好適には、該抗体は、Fd断片であり得る。好適には、抗体構造は、単離されたCDR領域であり得る。好適には、該抗体は、F(ab’)2断片であり得る。好適には、該抗体は、scFv断片であり得る。
【0154】
一部の実施形態では、該抗体は、投与から1日、2日、4日、8日、10日、15日、20日、25日、及び/または30日後に、顕著なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0155】
「顕著なレベルの細胞枯渇」という用語は、被験者にとって有害な帰結を有する細胞枯渇のレベルに関する場合がある。
【0156】
一部の実施形態では、該抗体は、投与から1日後に、顕著なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0157】
一部の実施形態では、該抗体は、投与から2日後に、顕著なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0158】
一部の実施形態では、該抗体は、投与から4日後に、顕著なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0159】
一部の実施形態では、該抗体は、投与から8日後に、顕著なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0160】
一部の実施形態では、該抗体は、投与から10日後に、顕著なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0161】
一部の実施形態では、該抗体は、投与から15日後に、顕著なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0162】
一部の実施形態では、該抗体は、投与から20日後に、顕著なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0163】
一部の実施形態では、該抗体は、投与から25日後に、顕著なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0164】
一部の実施形態では、該抗体は、投与から30日後に、顕著なレベルの赤血球枯渇及び/または血小板枯渇を引き起こさない。
【0165】
好適には、本発明により使用するための抗体は、治療後に、RBCの10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の枯渇をもたらし得る。好適には、本発明により使用するための抗体は、治療後に、血小板の10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の枯渇をもたらし得る。
【0166】
抗体修飾
本発明は、バリアント抗CD38抗体をさらに提供する。つまり、CDRにおけるアミノ酸修飾(親和性成熟)、Fc領域におけるアミノ酸修飾、グリコシル化バリアント、他のタイプの共有結合性修飾等を含むが、これらに限定されない、本発明の抗体に対して行うことができるいくつかの修飾が存在する。
【0167】
「バリアント」という用語は、親ポリペプチドのものとは異なるポリペプチドを意味する。アミノ酸バリアントは、アミノ酸の置換、挿入、及び欠失を含むことができる。一般に、バリアントは、本明細書に記載されるように、タンパク質の機能が依然として存在する限り、任意の数の修飾を含むことができる。つまり、例えば、AB79のCDRを用いて作成されたアミノ酸バリアントの場合、抗体は、ヒト及びカニクイザルの両方のCD38に依然として特異的に結合するはずである。「バリアントFc領域」という用語は、少なくとも1つのアミノ酸修飾のために野生型または親Fc配列のものとは異なる、Fc配列を意味する。Fcバリアントは、Fcポリペプチド自体、Fcバリアントポリペプチドを含む組成物、またはアミノ酸配列を指す場合がある。例えば、アミノ酸バリアントがFc領域を用いて作成される場合、バリアント抗体は、抗体の特定の用途または適応症に必要とされる機能を維持するはずである。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸置換、例えば、1~10、1~5、1~4、1~3、及び1~2個の置換を利用することができる。例えば、米国特許出願第11/841,654号、同第12/341,769号、米国特許公開第2004013210号、同第20050054832号、同第20060024298号、同第20060121032号、同第20060235208号、同第20070148170号、ならびに米国特許第6,737,056号、同第7,670,600号、及び同第6,086,875号(これらの特許の全ては、参照によりそれらの全体が明示的に援用される)に一般に概説されるように1つまたは複数の位置で、特にFc受容体への結合を増加させる特定のアミノ酸置換のために、好適な修飾を行うことができる。
【0168】
好適には、バリアントは、親配列の機能を維持し、すなわち、バリアントは、機能性バリアントである。好適には、バリアント配列を含む抗体は、親抗体の機能を維持し、すなわち、バリアント配列を含む抗体は、ヒトCD38に結合することが可能である。好適には、バリアントでの治療は、RBCの10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の枯渇をもたらし得る。好適には、バリアントでの治療は、血小板の10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満の枯渇をもたらし得る。
【0169】
バリアントは、類似性(すなわち、類似した化学特性/機能を有するアミノ酸残基)の観点から考慮することができ、好ましくは、バリアントは、配列同一性の観点から表される。
【0170】
配列比較は、目視により、またはより通常は、容易に入手可能な配列比較プログラムの補助により実施することができる。これらの一般公開された、及び市販のコンピュータプログラムは、2つ以上の配列間の配列同一性を算出することができる。
【0171】
例えば、野生型または操作型タンパク質のFc領域において1~5つの修飾、ならびにFv領域において1~5つの修飾を有することが望ましい場合がある。バリアントポリペプチド配列は、好ましくは、親配列(例えば、AB79の可変領域、定常領域、及び/または重鎖及び軽鎖配列)に対して少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性をもつであろう。好適には、バリアントは、親配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得る。好適には、バリアントは、親配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有し得る。好適には、バリアントは、親配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有し得る。好適には、バリアントは、親配列に対して少なくとも92%の配列同一性を有し得る。好適には、バリアントは、親配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有し得る。好適には、バリアントは、親配列に対して少なくとも97%の配列同一性を有し得る。好適には、バリアントは、親配列に対して少なくとも98%の配列同一性を有し得る。好適には、バリアントは、親配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0172】
一実施形態では、配列同一性は、配列の全体にわたって決定される。一実施形態では、配列同一性は、本明細書に列挙される配列と比較されている候補配列の全体にわたって決定される。
【0173】
「アミノ酸置換」という用語は、親ポリペプチド配列における特定の位置でのアミノ酸の、別のアミノ酸との置き換えを意味する。例えば、置換S100Aは、100位のセリンがアラニンと置き換えられているバリアントポリペプチドを指す。好適には、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換であり得る。好適には、バリアントは、1つまたは複数の、例えば、2つまたは3つの保存的アミノ酸置換を含み得る。類似した生化学特性を有するアミノ酸が、保存的置換を介して置換され得るアミノ酸として定義され得る。
【0174】
本明細書で具体的な個々のアミノ酸を参照することにより別途明示的に定められない限り、アミノ酸は、下記に列挙されるような保存的置換を用いて置換され得る。脂肪族極性非荷電アミノは、システイン、セリン、トレオニン、メチオニン、アスパラギン、またはグルタミン残基であり得る。脂肪族極性荷電アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、またはアルギニン残基であり得る。芳香族アミノ酸は、ヒスチジン、フェニルアラニン、トリプトファン、またはチロシン残基であり得る。保存的置換は、例えば、下記の表2に従って行われ得る。2列目の同じブロックにあるアミノ酸、好ましくは3列目の同じ行にあるアミノ酸が、互いに置換され得る。
【0175】
【表2】
【0176】
「アミノ酸挿入」という用語は、親ポリペプチド配列における特定の位置でのアミノ酸
の付加を意味する。
【0177】
「アミノ酸欠失」という用語は、親ポリペプチド配列における特定の位置でのアミノ酸の除去を意味する。
【0178】
「親抗体」及び「前駆体抗体」という用語は、その後修飾されてバリアントを作成する未修飾抗体を意味する。ある実施形態では、本明細書における親抗体は、AB79である。ある実施形態では、本明細書における親抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有するVH鎖と、配列番号10のアミノ酸配列を有するVL鎖とを含む。ある実施形態では、本明細書における親抗体は、配列番号11の重鎖アミノ酸配列と、配列番号12の軽鎖アミノ酸配列とを含む。親抗体は、ポリペプチド自体、親抗体を含む組成物、またはそれをコードするアミノ酸配列を指す場合がある。したがって、「親Fcポリペプチド」という用語は、バリアントを作成するように修飾されるFcポリペプチドを意味する。
【0179】
「野生型(wild type)」、「野生型(WT)」、及び「天然」という用語は、アレル変異を含めて、自然界で見出されるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を意味する。野生型タンパク質、ポリペプチド、抗体、免疫グロブリン、IgG等は、意図的に修飾されていないアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を有する。
【0180】
一部の実施形態では、抗CD38抗体のCDRのうちの1つまたは複数において1つまたは複数のアミノ酸修飾が行われる。一般に、任意の単一のCDRにおいてわずか1、2、または3個のアミノ酸が置換され、一般に、一組のCDR内で4、5、6、7、8、9、または10個以下の変更が行われる。しかしながら、任意のCDRにおける置換なし、1、2、または3つの置換の任意の組み合わせが、独立してかつ任意選択で、任意の他の置換と組み合わされ得ることが理解されるべきである。
【0181】
一部の実例では、CDRにおけるアミノ酸修飾は、「親和性成熟」と称される。「親和性成熟」抗体とは、1つまたは複数のCDRにおいて、抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす改変(複数可)をもたない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の改善をもたらす1つまたは複数の改変(複数可)を有する抗体である。一部の実例では、抗体の、その抗原に対する親和性を減少させることが望ましい場合がある。
【0182】
親和性成熟は、抗原に対する抗体の結合親和性を、「親」抗体と比較して、少なくとも約10%~50%、100%、150%、もしくはそれを超えて、または1~5倍増加させるために行うことができる。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル濃度またはさらにはピコモル濃度の親和性を有するであろう。親和性成熟抗体は、既知の手順によって生産される(例えば、Marks et al.(1992)Biotechnol.10:779-783、Barbas et al.(1994)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 91:3809-3813、Shier et al.(1995)Gene 169:147-155、Yelton et al.(1995)J.Immunol.155:1994-2004、Jackson et al.(1995)J.Immunol.154(7):3310-9、及びHawkins
et al.(1992)J.Mol.Biol.226:889-896)。
【0183】
代替として、「サイレント」である、例えば、抗原に対する抗体の親和性を顕著に改変しないアミノ酸修飾を、例えば、本発明の抗体のCDRのうちの1つまたは複数において行うことができる。これらは、(本発明の抗体をコードする核酸に対して行うことができるような)発現の最適化を含めた、いくつかの理由で行うことができる。
【0184】
故に、バリアントCDR及び抗体が、本発明のCDR及び抗体の定義内に含まれる。つ
まり、本発明の抗体は、配列番号3~8に記載のCDRのうちの1つまたは複数においてアミノ酸修飾を含むことができる。追加として、下記に概説されるように、アミノ酸修飾はまた、独立してかつ任意選択で、フレームワーク及び定常領域を含めた、CDRの外側の任意の領域においても行うことができる。
【0185】
一部の実施形態では、ヒトCD38(配列番号1)及びカニクイザルCD38(配列番号2)に特異的であるAB79のバリアント抗体が記載される。この抗体は、6つのCDRから構成され、この抗体の各CDRは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び/または配列番号8とは、0、1、または2つのアミノ酸置換だけ異なり得る。
【0186】
上記に概説される修飾に加えて、他の修飾を行うことができる。例えば、分子は、VH及びVLドメインを連結するジスルフィド架橋を組み込むことによって安定化されてもよい(Reiter et al.(1996)Nature Biotech.14:1239-1245)。追加として、下記に概説されるように行うことができる、抗体の様々な共有結合性修飾が存在する。
【0187】
抗体の共有結合性修飾は、本発明の範囲内に含まれ、常にではないが一般には、翻訳後に行われる。例えば、抗体のいくつかのタイプの共有結合性修飾は、抗体の特定のアミノ酸残基を、選択の側鎖またはN末端もしくはC末端残基と反応可能な有機誘導体化剤と反応させることによって分子に導入される。
【0188】
一部の実施形態では、本発明の抗CD38抗体は、CD38における1つまたは複数の残基または領域に特異的に結合するが、同時に、BST-1(骨髄間質細胞抗原1)及び/またはMo5(CD157とも呼ばれる)等の、CD38に対して相同性を有する他のタンパク質とは交差反応しない。
【0189】
典型的には、交差反応性の欠如は、好適なアッセイ条件下で、十分な量の分子を用いてELISA及び/またはFACS解析によって評定したときの、分子間の約5%未満の競合阻害を意味する。
【0190】
CD38活性の阻害及び副作用低減
開示される抗体は、リガンド-受容体相互作用の遮断または受容体成分相互作用の阻害において利用されてもよい。本発明の抗CD38抗体は、「遮断性」または「中和性」であり得る。「中和抗体」という用語は、CD38への結合により、CD38の生物活性、例えば、それがリガンドと相互作用する能力、酵素活性、シグナル伝達能力、及び特に、それが活性化リンパ球を引き起こす能力の阻害がもたらされる、抗体を指す。CD38の生物活性の阻害は、当該技術分野で既知のいくつかの標準的なインビトロまたはインビボアッセイのうちの1つまたは複数によって評定することができる。
【0191】
(例えば、CD38抗体のCD38への結合の阻害/遮断に言及する際の)「結合を阻害する」及び「結合を遮断する」という用語は、部分的及び完全な阻害/遮断の両方を包含する。CD38抗体のCD38への結合の阻害/遮断は、阻害または遮断なしでCD38抗体がCD38に結合するときに生じる正常なレベルまたはタイプの細胞シグナル伝達を低減または変化させ得る。阻害及び遮断はまた、抗CD38抗体と接触しているときのCD38に対するCD38抗体の結合親和性の、抗CD38抗体と接触していないリガンドと比較した任意の測定可能な減少、例えば、CD38抗体のCD38への結合の、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、または100%の遮断を含むことを意図する。好適には、CD38抗体のCD38への結合の遮断は、少なくとも約70%であり得る。好適には、CD38抗体のCD3
8への結合の遮断は、少なくとも約80%であり得る。好適には、CD38抗体のCD38への結合の遮断は、少なくとも約90%であり得る。
【0192】
開示される抗CD38抗体はまた、細胞成長を阻害し得る。「成長を阻害する」という用語は、抗CD38抗体と接触しているときの細胞成長の、抗CD38抗体と接触していない同じ細胞の成長と比較した任意の測定可能な減少、例えば、細胞培養物の成長の、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、または100%の阻害を指す。好適には、成長の阻害は、少なくとも約70%であり得る。好適には、成長の阻害は、少なくとも約80%であり得る。好適には、成長の阻害は、少なくとも約90%であり得る。
【0193】
一部の実施形態では、開示される抗CD38抗体は、活性化リンパ球及び形質細胞を枯渇させることが可能である。この関連における「枯渇」という用語は、被験者における活性化リンパ球及び/または形質細胞の血清中レベルの、未治療の被験者と比較した測定可能な減少を意味する。一般に、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、または100%の枯渇が見られる。好適には、枯渇は、少なくとも50%であり得る。好適には、枯渇は、少なくとも60%であり得る。好適には、枯渇は、少なくとも70%であり得る。好適には、枯渇は、少なくとも80%であり得る。好適には、枯渇は、少なくとも90%であり得る。好適には、枯渇は、100%であり得る。下記で実施例に示されるように、本発明の抗体が示す1つの特定の利点は、投薬後のこれらの細胞の回復性である。つまり、一部の治療(例えば、例として抗CD20抗体による)に関して知られているように、細胞枯渇は、長期間持続し、望まれない副作用を引き起こし得る。本明細書に示されるように、活性化リンパ球及び/または形質細胞に対する影響は、回復可能である。
【0194】
本発明の抗CD38抗体は、先行技術の抗CD38抗体と比較して低減された副作用を可能にする。一部の実施形態では、本発明により使用するための抗体、例えばAB79は、TEAEを誘導しない。一部の実施形態では、本発明により使用するための抗体、例えばAB79は、MOR202等の他の抗CD38抗体と比較して、患者集団におけるTEAEの発生率の低減を可能にする。TEAEは、典型的には、グレード1、2、3、4、及び5により言及され、グレード1が、最も重症度が低いTEAEであり、グレード5が、最も重症度が高いTEAEである。抗腫瘍薬の有害事象共通用語規準(CTCAE)標準に関するFDA及び他のガイドラインに基づいて(例えば、https://evs.nci.nih.gov/ftp1/CTCAE/CTCAE_4.03_2010-06-14_QuickReference_5x7.pdf、ならびにhttps://ctep.cancer.gov/protocoldevelopment/electronic_applications/ctc.htm、及びNilsson and Koke(2001)Drug Inform.J.35:1289-1299を参照されたい)、かかるグレードは一般に以下のように決定される。グレード1は軽度である:症状がないか、または軽度の症状がある;臨床所見または診断所見のみ;処置を要しない。グレード2は中等度である:最小限、局所的、または非侵襲的処置を要する;年齢相応の手段的日常生活活動(「ADL」)の制限。グレード3は重度または医学的に重要であるが、ただちに生命を脅かすものではない:入院または入院期間の延長を要する;活動不能/動作不能;身の回りのADLの制限。グレード4は生命を脅かす帰結である;緊急処置を要する。グレード5はAEに関連する死亡である。
【0195】
一部の実施形態では、本発明により使用するための抗体、例えばAB79は、MOR202等の他の抗CD38抗体と比較して、患者集団におけるTEAEのグレードの低減を可能にする。一部の実施形態では、本発明により使用するための抗体、例えばAB79は、他の抗CD38抗体と比較して、グレード5からグレード4へのTEAEのグレードの
低減を可能にする。一部の実施形態では、本発明により使用するための抗体、例えばAB79は、他の抗CD38抗体と比較して、グレード4からグレード3へのTEAEのグレードの低減を可能にする。一部の実施形態では、本発明により使用するための抗体、例えばAB79は、他の抗CD38抗体と比較して、グレード3からグレード2へのTEAEのグレードの低減を可能にする。一部の実施形態では、本発明により使用するための抗体、例えばAB79は、他の抗CD38抗体と比較して、グレード2からグレード1へのTEAEのグレードの低減を可能にする。
【0196】
一部の実施形態では、本発明により使用するための抗体、例えばAB79は、貧血(溶血性貧血を含む)、血小板減少症、疲労、輸注関連反応(IRR)、白血球減少症、リンパ球減少症、及び悪心からなる群から選択される、1つまたは複数のTEAEのグレードの低減を可能にする。一部の実施形態では、本発明により使用するための抗体、例えばAB79は、貧血(溶血性貧血を含む)、血小板減少症、疲労、輸注関連反応(IRR)、白血球減少症、リンパ球減少症、及び悪心からなる群から選択される、1つまたは複数のTEAEの発生の低減を可能にする。
【0197】
一部の実施形態では、抗CD38抗体は、RBCの50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満の枯渇をもたらす。一部の実施形態では、AB79抗体は、RBCの50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満の枯渇をもたらす。一部の実施形態では、AB79抗体は、RBCの10%未満の枯渇をもたらす。
【0198】
一部の実施形態では、抗CD38抗体は、血小板の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満の枯渇をもたらす。一部の実施形態では、AB79抗体は、血小板の50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、または1%未満の枯渇をもたらす。一部の実施形態では、AB79抗体は、血小板の10%未満の枯渇をもたらす。
【0199】
一部の実施形態では、溶血性貧血を含めた貧血の存在及び/またはグレードを決定するために、診断試験が使用される。ヘモグロビンレベルの測定を含む、溶血性貧血を含めた貧血に対する診断試験。一般に、ヘモグロビンレベルは、以下のように解釈される:(i)極めて軽度/貧血の不在:≧12.0g/dL、(ii)軽度:10~12g/dL、(iii)中等度:8~10g/dL、(iv)重度:6~8g/dL、及び(v)極めて重度:≦6g/dL。ハプトグロビンレベルの測定を含む、溶血性貧血を含めた貧血に対する他の診断試験。一般に、ハプトグロビンレベル≦25mg/dLが、溶血性貧血を含めた貧血の存在の指標となる。他の診断試験には、直接抗グロブリン試験(DAT)(直接クームス試験とも称される)が含まれ、これは、RBCがインビボで、免疫グロブリン、補体、またはそれらの両方によりコーティングされているかどうかを決定するために使用される。
【0200】
一部の実施形態では、血小板減少症の存在及び/またはグレードを決定するために、診断試験が使用される。一般に、血小板減少症の診断試験には、血液1マイクロリットル(μL)当たりの血小板の数の測定が含まれる。通常、血液1μL当たり150×10-450×10個の血小板が存在する。一般に、血液1μL当たり<150×10個の血小板が存在するとき、血小板減少症と診断される。血液1μL当たり70~150×10個が存在する場合、軽度の血小板減少症と一般に診断される。1μL当たり20~70×10個が存在する場合、中等度の血小板減少症と一般に診断される。血液1μL当たり<20×10個が存在する場合、重度の血小板減少症と一般に診断される。
【0201】
疾患の兆候
本発明の抗体、方法、及び投薬単位は、CD38関連疾患の治療または緩和を含めた、様々な用途において利用される。
【0202】
CD38は、未熟造血細胞において発現され、成熟細胞においては下方制御され、活性化リンパ球及び形質細胞において高レベルで再発現される。例えば、活性化B細胞、形質細胞、活性化CD4+ T細胞、活性化CD8+ T細胞、NK細胞、NKT細胞、成熟樹状細胞(DC)、及び活性化単球においてCD38の高発現が見られる。ある特定の病態は、CD38を発現する細胞に関連し、ある特定の病態は、細胞の表面上でのCD38の過剰発現、高密度発現、または上方制御された発現に関連する。細胞集団がCD38を発現するか否かは、診断用途に関して下記に一般に記載されるように、当該技術分野で既知の方法、例えば、所与の集団における、CD38に特異的に結合する抗体によって標識されている細胞のパーセンテージのフローサイトメトリーによる決定、または免疫組織化学的アッセイによって決定することができる。例えば、細胞の約10~30%でCD38発現が検出される細胞の集団が、CD38に対して弱陽性を有すると見なされ得、細胞の約30%超でCD38発現が検出される細胞の集団がCD38に対して確定的陽性と見なされ得るが(Jackson et al.(1988)Clin.Exp.Immunol.72:351-356にある通り)、他の基準を用いて、細胞の集団がCD38を発現するかどうかを決定することができる。細胞の表面上での発現の密度は、例えば、CD38に特異的に結合する抗体を用いて蛍光標識された細胞の平均蛍光強度のフローサイトメトリー測定等の、当該技術分野で既知の方法を用いて決定することができる。
【0203】
本発明の治療用抗CD38抗体は、CD38陽性細胞に結合して、CDC及びADCC経路の両方を含む複数の作用機序を介してこれらの細胞の枯渇をもたらす。
【0204】
ある特定の病態が、CD38を発現する細胞に関連すること、及びある特定の病態が、細胞の表面上でのCD38の過剰発現、高密度発現、または上方制御された発現に関連することは、当該技術分野で既知である。細胞集団がCD38を発現するか否かは、診断用途に関して下記に一般に記載されるように、当該技術分野で既知の方法、例えば、所与の集団における、CD38に特異的に結合する抗体によって標識されている細胞のパーセンテージのフローサイトメトリーによる決定、または免疫組織化学的アッセイによって決定することができる。例えば、細胞の約10~30%でCD38発現が検出される細胞の集団が、CD38に対して弱陽性を有すると見なされ得、細胞の約30%超でCD38発現が検出される細胞の集団がCD38に対して確定的陽性と見なされ得るが(Jackson et al.(1988)Clin.Exp.Immunol.72:351-356にある通り)、他の基準を用いて、細胞の集団がCD38を発現するかどうかを決定することができる。細胞の表面上での発現の密度は、例えば、CD38に特異的に結合する抗体を用いて蛍光標識された細胞の平均蛍光強度のフローサイトメトリー測定等の、当該技術分野で既知の方法を用いて決定することができる。
【0205】
一態様では、本発明は、患者に薬学的有効量の開示される抗体を投与することを含む、CD38を発現する細胞の増殖に関連する病態の治療方法を提供する。一部の実施形態では、病態はがんであり、特定の実施形態では、がんは血液癌である。一部の実施形態では、病態は、多発性骨髄腫、慢性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、形質細胞性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、B細胞リンパ腫、またはバーキットリンパ腫である。一部の実施形態では、病態は、多発性骨髄腫である。
【0206】
本発明の一部の実施形態では、血液癌は、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、及び急性リンパ性白血病の群から選択される。本発明の一部の実施形態
では、血液癌は、慢性リンパ性白血病である。本発明の一部の実施形態では、血液癌は、慢性骨髄性白血病である。本発明の一部の実施形態では、血液癌は、急性骨髄性白血病である。本発明の一部の実施形態では、血液癌は、急性リンパ性白血病である。
【0207】
一部の実施形態では、病態は、多発性骨髄腫である。
【0208】
CLLは、西洋世界で最も一般的な成人白血病である。CLLは、リンパ節及び他のリンパ系組織に影響を及ぼす成熟した外観のリンパ球のクローン性増殖を伴い、進行性で骨髄の浸潤及び末梢血中の存在が見られる。B細胞型(B-CLL)がほとんどの症例を占める。
【0209】
B細胞型の慢性リンパ性白血病(B-CLL)
B-CLLは、長年にわたって長期に及ぶ様態で骨髄及び末梢血に蓄積するアネルギー性の単クローン性B系列細胞の進行性の増加を特徴とする、不治の疾患である。CD38の発現は、B-CLLの独立した予後不良因子と見なされる(Hamblin et al.(2002)Blood 99:1023-9)。
【0210】
B-CLLは、緩慢性及び侵攻性の2つのサブタイプによって特徴付けられる。これらの臨床表現型は、免疫グロブリン重鎖可変領域(IgVH)遺伝子における体細胞変異の存否と相関がある。本明細書で使用されるとき、緩慢性B-CLLは、変異したIgVH遺伝子を有する及び/または緩慢性B-CLLに関連する1つもしくは複数の臨床表現型を呈する被験者における障害を指す。本明細書で使用されるとき、侵攻性B-CLLという語句は、変異していないIgVH遺伝子及び/または侵攻性B-CLLに関連する1つもしくは複数の臨床表現型を呈する被験者における障害を指す。
【0211】
現在のB-CLLの標準治療は緩和的であり、主に細胞分裂阻害剤のクロラムブシルまたはフルダラビンにより行われる。再発が生じた場合、フルダラビン、シクロホスファミドを、リツキシマブ(CD20に対するモノクローナル抗体)またはアレムツズマブ(CD52に対するモノクローナル抗体)と組み合わせて用いる併用療法が開始されることが多い。1つの研究では、再発性または難治性侵攻性B細胞NHLの35人の患者が、高用量化学療法(HCT)を受け、続いて40日目から開始してリツキシマブ375mg/mを毎週、4回にわたって投薬し、180日目から開始してさらに4回の投薬を反復した。リツキシマブ注入は、忍容性が良好であり、グレード3/4の輸液関連毒性が1件のみ見られた。この試験で観察された予期されない有害事象は、患者の半数超における遅発性好中球減少症であった(19/35人の患者、グレード3または4の好中球減少症のエピソードが46件、Kosmas et al.(2002)Leukemia 16:2004-2015(https://www.nature.com/articles/2402639にてオンラインで見出され得る))。別の研究では、6人の患者が、アレムツズマブを静脈内注入により週3回、隔日で12週にわたって受けた。用量は、患者が忍容できるまで日単位で漸増された(3、10、次いで30mg)。主なTEAEは、血液学的有害事象における貧血、好中球減少症(各々6/6人の患者)、及び血小板減少症(5/6人の患者)であった(Ishizawa et al.(2017)Jpn.J.Clin.Oncol.47(1):54-60)。故に、血液学的有害事象が減少した、B-CLLの治療に対する重大な未だ満たされない医療上の必要性が存在する。一部の実施形態では、開示される抗CD38抗体を用いたB-CLLの治療方法が提供され、下記に概説されるように、これは、上記の薬物のうちのいずれかを任意選択でかつ独立して含む併用療法を用いて行われてもよい。
【0212】
多発性骨髄腫(MM)
多発性骨髄腫(MM)は、骨髄における形質細胞の腫瘍性増殖を特徴とするB細胞系列
の悪性障害である。健常なボランティアにおける薬理学的所見が、MMのさらなる調査を支持した(Fedyk et al.(2018)Blood 132:3249(参照によりその全体が本明細書に援用される))。骨髄腫細胞の増殖は、骨の溶解性病変(穴)、赤血球数の減少、異常なタンパク質の生成(腎臓、神経、及び他の臓器への付随的な損傷を伴う)、免疫系機能の低減、及び血中カルシウムレベルの上昇(高カルシウム血症)を含めた様々な影響を引き起こす。現在のところ、治療選択肢には化学療法が含まれ、可能な場合、自家幹細胞移植(ASCT)が伴うことが好ましい。これらの治療レジメンは、中程度の奏効率を示す。しかしながら、全生存期間のわずかな変化のみが観察され、生存期間中央値は、およそ3年間である。故に、多発性骨髄腫の治療に対する重大な未だ満たされない医療上の必要性が存在する。一部の実施形態では、開示される抗体を用いた多発性骨髄腫の治療方法が提供される。
【0213】
意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)及びくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)
意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)及びくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)は、骨髄における単クローン性形質細胞増殖及び末端臓器損傷の不在を特徴とする、無症候性の前悪性障害である。
【0214】
くすぶり型多発性骨髄腫(SMM)は、形質細胞の無症候性の増殖性障害であり、症候性または活動性多発性骨髄腫への進行リスクが高い(Kyle et al.(2007)N.Engl.J.Med.356(25):2582-2590)。SMMを定義する国際的なコンセンサス基準が2003年に採択され、患者のMタンパク質レベルが>30g/L及び/または骨髄中クローン性形質細胞>10%であることが要件である(Internat.Myeloma Working Group(2003)Br.J.Haematol.121:749-757)。患者は、臓器障害または骨の病変もしくは症状等の関連する組織障害を有してはならない。最近の研究では、i)進行している疾患を有する患者、及びii)進行していない疾患を有する患者の、SMMの2つのサブセットが特定された(Internat.Myeloma Working Group(2003)Br.J.Haematol.121:749-757)。
【0215】
SMMは、末端臓器損傷が不在であることから、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)に類似する(Kyle et al.(2007)N.Engl.J.Med.356(25):2582-2590)。しかしながら、臨床的には、SMMは、20年で活動性多発性骨髄腫またはアミロイドーシスに進行する可能性がはるかに高い(SMMでは78%の確率対MGUSでは21%の確率)(Kyle et al.(2007)N.Engl.J.Med.356(25):2582-2590)。
【0216】
MGUSを定義する国際的なコンセンサス基準では、患者のMタンパク質レベルが<30g/L、骨髄中形質細胞<10%、及び臓器障害または骨の病変もしくは症状を含めた関連する組織障害が不在であることが要件である(Internat.Myeloma Working Group(2003)Br.J.Haematol.121:749-757)。
【0217】
全身性軽鎖アミロイドーシス
アミロイドーシスは、異なるタイプのタンパク質が細胞外不溶性原線維として凝集する、タンパク質ミスフォールディング病のファミリーを指す。これらは、複合の多系統疾患である。一般的なタイプの全身性アミロイドーシスは、全身性軽鎖(AL)アミロイドーシスである(Gertz et al.(2004)Am.Soc.Hematol.2004:257-82)。多発性骨髄腫と同様に、ALアミロイドーシスは、形質細胞腫瘍である。ALアミロイドーシスは、過剰な単クローン性免疫グロブリン遊離軽鎖を産生
する、骨髄における小さなクローン性形質細胞集団によって引き起こされる、高齢者のまれな進行性の致死的疾患である。いったん循環すると、これらの病的軽鎖は、誤って折り畳まれ、凝集し、内臓に線維性物質として沈着する。アミロイド原線維沈着物は、クローン性形質細胞によって分泌される同じ遊離軽鎖タンパク質である(Cohen and Comenzo(2010)Am.J.Hematol.2010:287-94、Merlini and Bellotti(2003)New England J.Med.349(6):583-96、Murray et al.(2010)Blood(ASH Annual Meeting Abstracts)116(21):abstr 1909)。このアミロイド原線維沈着の結果として、末端臓器損傷及び最終的には死が引き起こされる。クローン性形質細胞を抑制する療法は、循環する有毒な遊離軽鎖を産生する工場を除去することによってALアミロイドーシス疾患を緩和し、これが次いで、臓器機能及び生存率を改善し得る。全身性ALアミロイドーシスに対する規制上の承認を受けた治療はない。使用される薬剤は、多発性骨髄腫を治療するために使用されるものである。故に、ALアミロイドーシスの患者の治療に対する重大な未だ満たされない医療上の必要性が存在し、形質細胞上のCD38の標的化が、意義のある治療戦略である。
【0218】
他のCD38関連病態
本発明の抗体、方法、及び投薬単位は、炎症に関連する疾患及び病態、ならびに免疫疾患、特に活性化リンパ球に関連する疾患等のCD38関連疾患の治療または緩和を含めた、様々な用途において利用される。本発明の抗CD38抗体は、CD38陽性細胞に結合して、CDC及びADCC経路の両方を含む複数の作用機序を介して、活性化リンパ球等のこれらの細胞の枯渇をもたらす。
【0219】
故に、疾患の構成要素としてCD38の発現増加またはCD38発現細胞の数の増加のいずれかを示す任意の自己免疫疾患が、本発明の抗体を用いて治療され得る。これらには、同種膵島移植片拒絶、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、抗好中球細胞質自己抗体(ANCA)、副腎の自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性心筋炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性卵巣炎及び精巣炎、自己免疫性血小板減少症、自己免疫性蕁麻疹、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン症候群、セリアックスプルー皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素症、クローン病、皮膚筋炎、円板状ループス、本態性混合型クリオグロブリン血症、第VIII因子欠乏症、線維筋痛症-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー、グッドパスチャー症候群、移植片対宿主病(GVHD)、橋本甲状腺炎、血友病A、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA神経障害、IgM多発神経障害、免疫媒介性血小板減少症、若年性関節炎、川崎病、扁平苔癬(lichen plantus)、紅斑性狼瘡、メニエール病、混合性結合組織病、多発性硬化症、1型真性糖尿病、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎(polychrondritis)、多腺性症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎及び皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症(primary agammaglobinulinemia)、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、実質臓器移植片拒絶、スティッフマン症候群、全身性エリテマトーデス、全身性軽鎖アミロイドーシス、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、血栓性血小板減少性紫斑病、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、脈管炎、例えば、疱疹状皮膚炎脈管炎、白斑、及びウェゲナー肉芽腫症(Wegner’s granulomatosis)が含まれるが、これらに限定されない。
【0220】
一部の実施形態において特に有用であるのは、全身性エリテマトーデス(SLE)、関
節リウマチ(RA)、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、全身性軽鎖アミロイドーシス、及び移植片対宿主病を含むが、これらに限定されない自己免疫疾患を含むが、これらに限定されない、いくつかの疾患の診断及び/または治療において使用するための本抗体の使用である。一態様では、疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)である。一態様では、疾患は、関節リウマチ(RA)である。一態様では、疾患は、炎症性腸疾患(IBD)である。一態様では、疾患は、潰瘍性大腸炎である。一態様では、疾患は、移植片対宿主病である。一態様では、疾患は、全身性軽鎖アミロイドーシスである。
【0221】
故に、例えば、高い形質細胞レベルを示すSLE患者等の高い形質細胞含量を有する患者、ならびにCD20ベースの療法に不応答性であることが示されるRA患者が治療され得る。
【0222】
インビボ投与のための抗体組成物
本発明により使用される抗体の製剤は、所望の純度を有する抗体を、任意選択的な薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することによって(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition(1980)Osol,A.Ed.)、凍結乾燥製剤または水性液剤の形態で保管用に調製される。
【0223】
本明細書における製剤はまた、治療されている特定の適応症に対する必要に応じて1つよりも多くの活性化合物、好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない、相補的活性を有する活性化合物を含有し得る。例えば、他の特異性を有する抗体を提供することが望ましい場合がある。代替として、または追加として、該組成物は、細胞傷害性薬剤、サイトカイン、成長阻害剤、及び/または小分子アンタゴニストを含み得る。かかる分子は、好適には、意図される目的に有効である量で組み合わせて存在する。
【0224】
皮下投与
AB79等の本明細書に記載される抗CD38抗体は、治療上有効である十分な投薬量で投与することができ、それによって皮下投与を可能にする。皮下投与は、低侵襲の投与様式であり、最も用途が広く、したがって短期及び長期療法に使用され得る望ましい投与様式と見なされる。一部の実施形態では、皮下投与は、注射によって行うことができる。一部の実施形態では、複数回の注射または複数のデバイスが必要とされる場合、注射またはデバイスの部位を交替させることができる。
【0225】
したがって、皮下製剤は、特に、患者の一生涯を通して(例えば、子供の生後1年目ほどにも早期から開始して)製剤を定期的にとる必要があり得ることから、患者が自己投与するのにはるかにより容易である。さらに、皮下送達の容易性及び速さは、患者の服薬遵守の増加、及び必要に応じた薬のより迅速な利用を可能にする。故に、本明細書に提供される抗CD38抗体の皮下製剤は、先行技術に勝る実質的な有益性を提供し、ある特定の未だ満たされない必要性を解決する。
【0226】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、皮下経路を介して、既知の方法に従って被験者に投与される。一部の実施形態では、本発明の抗体は、皮下注射によって投与することができる。具体的な実施形態では、皮下製剤は、反復または連続注射のために、患者の同じ部位に皮下注射される(例えば、上腕、大腿の前面、腹部の下部、または上背部に投与される)。他の実施形態では、皮下製剤は、患者の異なる部位または交替の部位に皮下注射される。製剤の単回または複数回投与が採用され得る。
【0227】
一部の実施形態では、本明細書に記載される皮下単位剤形は、がんの治療に使用することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される皮下単位剤形は、血液癌の治療
に使用することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される皮下単位剤形は、多発性骨髄腫の治療に使用することができる。
【0228】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、先行技術の抗体と比較して増加した生物学的利用能を有する。一部の実施形態では、本発明の抗体の生物学的利用能は、ヒトRBCに結合する先行技術の抗体と比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%、またはそれを超えて増加する。一部の実施形態では、ヒトRBCに結合する先行技術の抗体と比較して、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、250%、もしくは300%、またはそれを超える、本発明の抗体の生物学的利用能。好適には、生物学的利用能は、50%増加し得る。好適には、生物学的利用能は、60%増加し得る。好適には、生物学的利用能は、70%増加し得る。好適には、生物学的利用能は、80%増加し得る。好適には、生物学的利用能は、90%増加し得る。
【0229】
一部の実施形態では、生物学的利用能の増加は、皮下投与を可能にする。
【0230】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、NK細胞、B細胞、及び/またはT細胞の枯渇につながる。一部の実施形態では、本発明の抗体は、B細胞またはT細胞の枯渇と比較したNK細胞の枯渇の増加を可能にする。一部の実施形態では、本発明の抗体は、B細胞と比較したNK細胞の枯渇の増加、ならびにT細胞と比較したNK細胞の枯渇の増加を可能にする。一部の実施形態では、本発明の抗体は、B細胞と比較したNK細胞の枯渇の増加、ならびにT細胞と比較したB細胞の枯渇の増加を可能にする。一部の実施形態では、本発明の抗体は、B細胞と比較したNK細胞の枯渇の増加、及びT細胞と比較したB細胞の枯渇の増加を可能にする。好適には、本発明の抗体は、CD38細胞と比較したCD38細胞の枯渇の増加を可能にし得る。
【0231】
ある特定の実施形態では、皮下投与後の本明細書に記載される抗CD38抗体の生物学的利用能は、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して、少なくとも50%~少なくとも80%である。ある特定の実施形態では、皮下投与後の本明細書に記載される抗CD38抗体の生物学的利用能は、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して、少なくとも60%~少なくとも80%である。ある特定の実施形態では、皮下投与後の本明細書に記載される抗CD38抗体の生物学的利用能は、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して、少なくとも50%~70%である。ある特定の実施形態では、皮下投与後の本明細書に記載される抗CD38抗体の生物学的利用能は、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して、少なくとも55%~65%である。ある特定の実施形態では、皮下投与後の本明細書に記載される抗CD38抗体の生物学的利用能は、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して、少なくとも55%~70%である。
【0232】
ある特定の実施形態では、皮下投与後の本明細書に記載される抗CD38抗体の生物学的利用能は、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、または少なくとも85%である。好適には、生物学的利用能は、同じ用量に対し
て正規化された静脈内投与と比較して、少なくとも50%であり得る。好適には、生物学的利用能は、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して、少なくとも60%であり得る。好適には、生物学的利用能は、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して、少なくとも70%であり得る。好適には、生物学的利用能は、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して、少なくとも80%であり得る。好適には、生物学的利用能は、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して、少なくとも90%であり得る。
【0233】
一部の実施形態では、本開示は、皮下投与後の本発明の抗体の生物学的利用能が、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して50%~80%である方法を提供する。
【0234】
一部の実施形態では、本開示は、皮下投与後の本発明の抗体の生物学的利用能が、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して少なくとも50%である方法を提供する。
【0235】
一部の実施形態では、本開示は、皮下投与後の本発明の抗体の生物学的利用能が、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して少なくとも55%である方法を提供する。
【0236】
一部の実施形態では、本開示は、皮下投与後の本発明の抗体の生物学的利用能が、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して少なくとも60%である方法を提供する。
【0237】
一部の実施形態では、本開示は、皮下投与後の本発明の抗体の生物学的利用能が、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して少なくとも65%である方法を提供する。
【0238】
一部の実施形態では、本開示は、皮下投与後の本発明の抗体の生物学的利用能が、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して少なくとも70%である方法を提供する。
【0239】
一部の実施形態では、本開示は、皮下投与後の本発明の抗体の生物学的利用能が、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して少なくとも75%である方法を提供する。
【0240】
一部の実施形態では、本開示は、皮下投与後の本発明の抗体の生物学的利用能が、同じ用量に対して正規化された静脈内投与と比較して少なくとも80%である方法を提供する。
【0241】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるような抗CD38抗体を含む単位剤形を提供し、該抗CD38抗体は、RBCの10%未満の枯渇をもたらす。
【0242】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるような抗CD38抗体を含む単位剤形を提供し、該抗CD38抗体は、血小板の10%未満の枯渇をもたらす。
【0243】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体は、単回ボーラス注射で皮下投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体は、毎月皮下投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体は、2週間毎に皮下投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体は、毎週皮下投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗CD
38抗体は、週2回皮下投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体は、毎日皮下投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体は、12時間毎に皮下投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体は、8時間毎に皮下投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体は、6時間毎に皮下投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体は、4時間毎に皮下投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体は、2時間毎に皮下投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗CD38抗体は、1時間毎に皮下投与される。
【0244】
一部の実施形態では、皮下単位剤形は、約45mg~約1,800mgの投薬量で投与される。一部の実施形態では、皮下単位剤形は、約135mg~約1,800mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、皮下単位剤形は、約600mg~約1,800mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、皮下単位剤形は、約1,200mg~約1,800mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、皮下単位剤形は、約45mg~約1,200mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、皮下単位剤形は、約135mg~約1,200mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、皮下単位剤形は、約600mg~約1,200mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、皮下単位剤形は、約45mg~約135mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、皮下単位剤形は、約45mg~約600mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、皮下単位剤形は、約135mg~約600mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、投薬量は、体重1キログラム当たりのmg数である。一部の実施形態では、投薬量は、1日投薬量である。
【0245】
単位剤形
一部の実施形態では、治療用抗CD38抗体は、単位剤形の一部として製剤化される。一部の実施形態では、抗CD38抗体は、以下のCDRアミノ酸配列、すなわち、GFTFDDYG(配列番号3、HCDR1 AB79)、ISWNGGKT(配列番号4、HCDR2 AB79)、及びARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号5、HCDR3 AB79)または最大3つのアミノ酸変化を有するそれらの配列のバリアントを含む重鎖を含む。一部の実施形態では、該抗体は、以下のCDRアミノ酸配列、すなわち、SSNIGDNY(配列番号6、LCDR1 AB79)、RDS(配列番号7、LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号8、LCDR3 AB79)または最大3つのアミノ酸変化を有するそれらの配列のバリアントを含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、該抗体は、以下のCDRアミノ酸配列、すなわち、GFTFDDYG(配列番号3、HCDR1 AB79)、ISWNGGKT(配列番号4、HCDR2 AB79)、ARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号5、HCDR3 AB79)または最大3つのアミノ酸変化を有するそれらの配列のバリアントを含む重鎖と、以下のCDRアミノ酸配列、すなわち、SSNIGDNY(配列番号6、LCDR1 AB79)、RDS(配列番号7、LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号8、LCDR3 AB79)または最大3つのアミノ酸変化を有するそれらの配列のバリアントを含む軽鎖とを含む。一部の実施形態では、該抗体は、以下のCDRアミノ酸配列、すなわち、GFTFDDYG(配列番号3、HCDR1 AB79)、ISWNGGKT(配列番号4、HCDR2 AB79)、及びARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号5、HCDR3 AB79)を含む重鎖を含む。一部の実施形態では、該抗体は、以下のCDRアミノ酸配列、すなわち、SSNIGDNY(配列番号6、LCDR1 AB79)、RDS(配列番号7、LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号8、LCDR3 AB79)を含む軽鎖を含む。一部の実施形態では、該抗体は、
以下のCDRアミノ酸配列、すなわち、GFTFDDYG(配列番号3、HCDR1 AB79)、ISWNGGKT(配列番号4、HCDR2 AB79)、ARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号5、HCDR3 AB79)を含む重鎖と、以下のCDRアミノ酸配列、すなわち、SSNIGDNY(配列番号6、LCDR1 AB79)、RDS(配列番号7、LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号8、LCDR3 AB79)を含む軽鎖とを含む。一部の実施形態では、該抗体は、配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖を含む。好適には、重鎖は、以下のCDRアミノ酸配列、すなわち、GFTFDDYG(配列番号3、HCDR1 AB79)、ISWNGGKT(配列番号4、HCDR2 AB79)、及びARGSLFHDSSGFYFGH(配列番号5、HCDR3 AB79)を含み得、重鎖の残りは、配列番号9に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得る。一部の実施形態では、該抗体は、配列番号9の可変重(VH)鎖アミノ酸配列を含む重鎖を含む。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSDISWNGGKTHYVDSVKGQFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGSLFHDSSGFYFGHWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLA(配列番号9)。
【0246】
一部の実施形態では、該抗体は、配列番号10に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。好適には、軽鎖は、以下のCDR配列、すなわち、SSNIGDNY(配列番号6、LCDR1 AB79)、RDS(配列番号7、LCDR2 AB79)、及びQSYDSSLSGS(配列番号8、LCDR3 AB79)を含み得、軽鎖の残りは、配列番号10に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得る。一部の実施形態では、該抗体は、配列番号10の可変軽(VL)鎖アミノ酸配列を含む軽鎖を含む。
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGDNYVSWYQQLPGTAPKLLIYRDSQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCQSYDSSLSGSVFGGGTKLTVLGQPKANPTVTLFPPSSEEL(配列番号10)。
【0247】
一部の実施形態では、該抗体は、配列番号9のVH鎖アミノ酸配列または本明細書に記載されるようなそのバリアントを含む重鎖と、配列番号10のVL鎖アミノ酸配列または本明細書に記載されるようなそのバリアントを含む軽鎖とを含む。
【0248】
当業者には理解されようが、可変重鎖及び軽鎖は、ヒトIgG定常ドメイン配列、一般にはIgG1、IgG2、またはIgG4に結合され得る。一部の実施形態では、該抗体は、配列番号11に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖(HC)を含む。好適には、重鎖は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5によって定義されるようなCDR配列を含み得、重鎖の残りは、配列番号11に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得る。一部の実施形態では、該抗体は、配列番号11の重鎖(HC)アミノ酸配列を含む。
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFDDYGMSWVRQAPGKGLEWVSDISWNGGKTHYVDSVKGQFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARGSLFHDSSGFYFGHWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTT
PPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号11)。
【0249】
一部の実施形態では、該抗体は、配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)を含む。好適には、軽鎖は、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8によって定義されるようなCDR配列を含み得、軽鎖の残りは、配列番号12に対して少なくとも80%の配列同一性を有し得る。一部の実施形態では、該抗体は、配列番号12の軽鎖(LC)アミノ酸配列を含む。
QSVLTQPPSASGTPGQRVTISCSGSSSNIGDNYVSWYQQLPGTAPKLLIYRDSQRPSGVPDRFSGSKSGTSASLAISGLRSEDEADYYCQSYDSSLSGSVFGGGTKLTVLGQPKANPTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS(配列番号12)。
【0250】
一部の実施形態では、該抗体は、配列番号11のHCアミノ酸配列または本明細書に記載されるようなそのバリアントと、配列番号12のLCアミノ酸配列または本明細書に記載されるようなそのバリアントとを含む。
【0251】
一部の実施形態では、抗CD38抗体を含む製剤は、単位剤形である。一部の実施形態では、単位剤形は、約45mg~約1,800mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、単位剤形は、約135mg~約1,800mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、単位剤形は、約600mg~約1,800mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、単位剤形は、約1,200mg~約1,800mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、単位剤形は、約45mg~約1,200mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、単位剤形は、約135mg~約1,200mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、単位剤形は、約600mg~約1,200mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、単位剤形は、約45mg~約135mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、単位剤形は、約45mg~約600mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、単位剤形は、約135mg~約600mgの投薬量を投与するのに十分な量を含む。一部の実施形態では、投薬量は、体重1キログラム当たりのmg数である。一部の実施形態では、投薬量は、1日投薬量である。
【0252】
一部の実施形態では、本明細書に提供される抗CD38抗体の単位剤形は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、担体、及び/または希釈剤をさらに含んでもよい。一部の実施形態では、抗CD38抗体は、本発明による単位剤形を含む薬学的組成物として提供される。好適には、薬学的組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、担体、及び/または希釈剤をさらに含んでもよい。
【0253】
投薬量レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラスが投与されてもよいし、いくつかの分割用量が経時的に投与されてもよいし、または用量は、治療状況の緊急事態によって示されるように比例的に低減されるか、もしくは増加されてもよい。組成物は、投与の容易性及び投薬量の均一性のために単位剤形で製剤化され得る。本明細書で使用される場合の単位剤形とは、一部の実施形態では、被験者を治療するための単位の投薬(unitary dosages)として適した物理的に個別の単位を指すことができ、各単位が、必要とされる薬学的担体に関連して所望の治療効果を生み出すように算出された、既定量の活性化合物を含有する。
【0254】
本発明の単位剤形についての明細事項は、(a)活性化合物の固有の特性及び達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b)個体の治療のためにかかる活性化合物を調合する技術分野に本質的に存在する制限によって決定付けられ、またそれらに直接依存する。
【0255】
本発明で使用される抗CD38抗体の効率的な投薬量及び投薬量レジメンは、治療対象となる疾患または病態のタイプ及び重症度に左右され、当業者により決定され得る。
【0256】
一実施形態では、抗CD38抗体は、約45~約1,800mgの1週間投薬量で皮下投与によって投与される。好適には、1週間投薬量は、約135~約1,800mgであり得る。好適には、1週間投薬量は、約600~約1,800mgであり得る。好適には、1週間投薬量は、約1,200~約1,800mgであり得る。好適には、1週間投薬量は、約45~約1,200mgであり得る。好適には、1週間投薬量は、約135~約1,200mgであり得る。好適には、1週間投薬量は、約600~約1,200mgであり得る。好適には、1週間投薬量は、約45~約135mgであり得る。好適には、1週間投薬量は、約45~約600mgであり得る。好適には、1週間投薬量は、約135~約600mgであり得る。
【0257】
かかる投与は、例えば、3~5回等の1~14回、反復されてもよい。本発明で使用される抗CD38抗体の治療上有効量についての例となる非限定的な範囲は、約45~約1,800mgである。好適には、投薬量は、約135~約1,800mgであり得る。好適には、投薬量は、約600~約1,800mgであり得る。好適には、投薬量は、約1,200~約1,800mgであり得る。好適には、投薬量は、約45~約1,200mgであり得る。好適には、投薬量は、約135~約1,200mgであり得る。好適には、投薬量は、約600~約1,200mgであり得る。好適には、投薬量は、約45~約135mgであり得る。好適には、投薬量は、約45~約600mgであり得る。好適には、投薬量は、約135~約600mgであり得る。
【0258】
非限定的な例として、本発明による治療は、24、18、12、8、6、4、2、もしくは1時間毎の単回もしくは分割用量を用いて、またはそれらの任意の組み合わせで、治療の開始から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、もしくは40日目のうちの少なくとも1日、または代替として、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20週目のうちの少なくとも1週、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、1日当たり約45~約1,800mg、例えば、45、60、80、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380、400、420、440、460、480、500、520、540、560、580、600、620、640、660、680、700、720、740、760、780、800、820、840、860、880、900、920、940、960、980、1000、1020、1040、1060、1080、1100、1120、1140、1160、1180、1200、1220、1240、1260、1280、1300、1320、1340、1360、1380、1400、1420、1440、1460、1480、1500、1520、1540、1560、1580、1600、1620、1640、1660、1680、1700、1720、1740、1760、1780、または1800mgの量の抗体の1日投薬量として提供されてもよい。好適には、1日投薬量は、約45mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約100mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約135mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約150mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約200mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約300mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約400mgであり得る
。好適には、1日投薬量は、約500mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約600mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約700mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約800mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約900mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約1000mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約1100mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約1200mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約1300mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約1400mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約1500mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約1600mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約1700mgであり得る。好適には、1日投薬量は、約1800mgであり得る。
【0259】
一実施形態では、抗CD38抗体は、約45~約1,800mgの1週間投薬量で投与される。好適には、1週間投薬量は、約135~約1,800mgであり得る。好適には、1週間投薬量は、約600~約1,800mgであり得る。好適には、1週間投薬量は、約1,200~約1,800mgであり得る。好適には、1週間投薬量は、約45~約1,200mgであり得る。好適には、1週間投薬量は、約135~約1,200mgであり得る。好適には、1週間投薬量は、約600~約1,200mgであり得る。好適には、1週間投薬量は、約45~約135mgであり得る。好適には、1週間投薬量は、約45~約600mgであり得る。好適には、1週間投薬量は、約135~約600mgであり得る。かかる投与は、例えば、3~5回等の1~14回、反復されてもよい。投与は、1~12時間の期間等の1~24時間の期間にわたる連続注入によって行われてもよい。かかるレジメンは、例えば、6ヶ月または12ヶ月後に、必要に応じて1回または複数回反復されてもよい。投薬量は、投与してすぐの血中の本発明の化合物の量を測定することによって、例えば、生体試料を採取し、抗CD38抗体の抗原結合領域を標的とする抗イディオタイプ抗体を用いることによって、決定または調整されてもよい。
【0260】
一実施形態では、治療用抗体は、100mg/ml濃度で製剤化される。一部の実施形態では、1.75mL、2.0mL、2.25mL、または2.5mL容量が、大腿、腹部、または腕に注射される。一部の実施形態では、1.75mL、2.0mL、2.25mL、または2.5mL容量が、大腿または腹部に注射される。一部の実施形態では、2.25mL容量が、大腿または腹部に注射される。一部の実施形態では、用量は、4時間、6時間、8時間、または10時間の期間にわたって投与される。一部の実施形態では、用量は、8時間の期間にわたって投与される。一部の実施形態では、2、4、6、または8用量が投与される。一部の実施形態では、用量は、2時間毎に投与される。
【0261】
さらなる実施形態では、抗CD38抗体は、週1回2~12週間投与される。好適には、該抗体は、週1回、例えば3~10週間投与され得る。好適には、該抗体は、週1回、例えば4~8週間投与され得る。好適には、該抗体は、週1回、例えば5~7週間投与され得る。
【0262】
ある実施形態では、抗CD38抗体は、経時的に変化する頻度で皮下投与される。好適には、該抗体は、週1回8週間、次いで2週間に1回16週間、次いでそれ以降、許容できない毒性が観察されるか、または他の理由に起因する被験者の治療中止まで、28日間の治療サイクルで4週間に1回投与され得る。
【0263】
一実施形態では、抗CD38抗体は、維持療法により、例えば、週1回6ヶ月以上の期間投与される。
【0264】
一実施形態では、抗CD38抗体は、抗CD38抗体の1回の注入、続いて放射性同位体にコンジュゲートされた抗CD38抗体の注入を含むレジメンにより投与される。レジメンは、例えば、7~9日後に反復されてもよい。
【0265】
一実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるような抗CD38抗体を含む単位剤形を提供し、該抗CD38抗体は、RBCの10%未満の枯渇をもたらす。
【0266】
一実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるような抗CD38抗体を含む単位剤形を提供し、該抗CD38抗体は、血小板の10%未満の枯渇をもたらす。
【0267】
一部の実施形態では、本発明により使用するための抗CD38抗体は、1つまたは複数の追加の治療剤、例えば、化学療法剤と組み合わせて使用される。DNA損傷化学療法剤の非限定的な例としては、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン及びそれらの類似体または代謝産物、ならびにドキソルビシン)、トポイソメラーゼII阻害剤(例えば、エトポシド、テニポシド、及びダウノルビシン)、アルキル化剤(例えば、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、チオテパ、イホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、デカルバジン(decarbazine)、メトトレキサート、マイトマイシンC、及びシクロホスファミド)、DNA挿入剤(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチン)、ブレオマイシン等のDNA挿入剤及びフリーラジカル発生剤、ならびにヌクレオシド模倣体(例えば、5-フルオロウラシル、カペシチビン(capecitibine)、ゲムシタビン、フルダラビン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン、及びヒドロキシ尿素)が挙げられる。
【0268】
細胞複製を妨害する化学療法剤には、パクリタキセル、ドセタキセル、及び関連する類似体;ビンクリスチン、ビンブラスチン、及び関連する類似体;サリドマイド、レナリドマイド、及び関連する類似体(例えば、CC-5013及びCC-4047);タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、メシル酸イマチニブ及びゲフィチニブ);プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ);IκBキナーゼの阻害剤を含めたNF-κB阻害剤;がんにおいて過剰発現された、不適切に発現された、または活性化されたタンパク質に結合し、それによって細胞複製を下方制御する抗体(例えば、トラスツズマブ、リツキシマブ、セツキシマブ、及びベバシズマブ);ならびに、阻害が細胞複製を下方制御する、がんにおいて上方制御される、過剰発現される、不適切に発現される、または活性化されることが知られるタンパク質または酵素の他の阻害剤が含まれる。
【0269】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、Velcade(登録商標)(ボルテゾミブ)での治療の前に、それと同時に、またはその後に使用することができる。
【0270】
治療手段
本発明の方法では、疾患または病態に関して正の治療応答を提供するために療法が使用される。「正の治療応答」という用語は、疾患もしくは病態の改善、及び/または疾患もしくは病態に関連する症状の改善を指す。例えば、正の治療応答は、以下の疾患の改善のうちの1つまたは複数を指すであろう:(1)新生物細胞の数の低減、(2)新生物細胞の死滅の増加、(3)新生物細胞の生存の阻害、(5)腫瘍成長の阻害(すなわち、ある程度の緩徐化、好ましくは停止)、(6)増加した患者の生存率、及び(7)疾患または病態に関連する1つまたは複数の症状のいくらかの緩和。
【0271】
任意の所与の疾患または病態における正の治療応答は、その疾患または病態に特有の標準化された応答基準によって決定することができる。腫瘍応答は、磁気共鳴画像化(MRI)スキャン、X線画像法、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、骨スキャン画像法、内視鏡検査、ならびに骨髄穿刺法(BMA)及び循環中の腫瘍細胞の計数を含めた腫瘍生検試料採取等のスクリーニング技法を用いて、腫瘍形態(すなわち、全体的な腫瘍負荷、腫瘍サイズ等)の変化に関して評定することができる。
【0272】
これらの正の治療応答に加えて、療法を受けている被験者は、疾患に関連する症状の改善という有益な効果を経験する可能性がある。B細胞腫瘍の場合、被験者は、いわゆるB症状、例えば、寝汗、発熱、体重減少、及び/または蕁麻疹の減少を経験する可能性がある。前悪性病態の場合、抗CD38治療用抗体による療法は、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)を患う被験者における、関連する悪性病態の発症、例えば、多発性骨髄腫の発症を遮断し得、及び/またはその発症前の時間を延長し得る。
【0273】
疾患の改善は、完全奏効として特徴付けられ得る。「完全奏効」という用語は、いずれの以前に異常であったX線解析、骨髄、及び脳脊髄液(CSF)、または骨髄腫の場合は異常であったモノクローナルタンパク質の正常化を伴う、臨床的に検出可能な疾患の不在を指す。
【0274】
かかる応答は、本発明の方法による治療後、少なくとも4~8週間、または少なくとも6~8週間持続し得る。代替として、疾患の改善は、部分奏効であるとして分類され得る。「部分奏効」という用語は、新たな病変の不在下での、全ての測定可能な腫瘍負荷(すなわち、被験者に存在する悪性細胞の数、または腫瘍体積の測定された大きさもしくは異常なモノクローナルタンパク質の量)の少なくとも約50%の減少を指す場合があり、これは少なくとも4~8週間、または少なくとも6~8週間持続し得る。
【0275】
本発明による治療は、使用される医薬の「治療上有効量」を含む。
【0276】
「治療上有効量」及び「治療上有効投薬量」という用語は、障害またはその1つもしくは複数の症状の重症度及び/または継続期間を低減もしくは緩和する;障害が進むことを予防する;障害の退行を引き起こす;障害に関連する1つもしくは複数の症状の再発、発症、発現、もしくは進行を予防する;または所望の治療結果を達成するのに必要な投薬量でかつそのような期間にわたって、別の治療薬(例えば、予防剤または治療剤)の予防もしくは治療効果(複数可)を強化もしくは改善するのに十分である、治療薬の量を指す。治療上有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、ならびに個体において所望の応答を引き出す医薬の能力等の要因により様々であり得る。治療上有効量はまた、治療上有益な効果が、抗体または抗体部分のいかなる毒性または有害な効果にも勝るものである。腫瘍治療のための抗体の「治療上有効量」は、それが疾患の進行を安定させる能力によって測定されてもよい。化合物ががんを阻害する能力は、ヒト腫瘍における有効性の予測となる動物モデル系で評価されてもよい。
【0277】
代替として、組成物のこの特性は、当業者に既知のインビトロアッセイによって、化合物が細胞成長を阻害するか、またはアポトーシスを誘導する能力を検査することによって評価されてもよい。治療上有効量の治療化合物は、被験者において腫瘍サイズを減少させ得るか、または他の様態で症状を緩和し得る。当業者であれば、被験者のサイズ、被験者の症状の重症度、及び選択された特定の組成物または投与経路のような要因に基づいて、かかる量を決定可能であろう。
【0278】
抗CD38抗体キット
本発明の別の態様では、血液癌に関連する疾患または病態の治療用のキットが提供される。一実施形態では、キットは、AB79等の本明細書に記載される抗CD38抗体のある用量を含む。一部の実施形態では、本明細書に提供されるキットは、本明細書に提供されるような液体または凍結乾燥製剤の1回または複数回用量を含有し得る。キットが、AB79等の本明細書に記載される抗CD38抗体の凍結乾燥製剤を含む場合、一般に、キットはまた、液体製剤の再構成に好適な液体、例えば、滅菌水または薬学的に許容される緩衝液も含有するであろう。一部の実施形態では、キットは、医療従事者による皮下投与
用または自宅での使用のためにシリンジに予め詰められた、本明細書に記載される抗CD38抗体製剤を含み得る。
【0279】
ある特定の実施形態では、キットは、AB79等の本明細書に記載される抗CD38抗体の単回投与または投薬用であろう。他の実施形態では、キットは、皮下投与用のAB79等の本明細書に記載される抗CD38抗体の複数回用量を含有し得る。一実施形態では、キットは、医療従事者による皮下投与用または自宅での使用のためにシリンジに予め詰められた、本明細書に記載される抗CD38抗体製剤を含み得る。
【0280】
製品
他の実施形態では、上述の障害の治療に有用な材料を含有する製品が提供される。製品は、容器及びラベルを含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、及び試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチック等の様々な材料から形成されてもよい。容器は、病態を治療するのに有効である組成物を保持し、滅菌アクセスポートを有してもよい(例えば、容器は、静注液バッグ、または皮下注射針によって穿刺可能な栓を有するバイアルであってもよい)。組成物中の活性薬剤は、抗体である。容器上の、または容器に関連付けられたラベルは、組成物が選択の病態を治療するために使用されることを示す。製品は、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、またはデキストロース溶液等の薬学的に許容される緩衝液を含む第2の容器をさらに含んでもよい。それは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明書を含む添付文書を含めた、商業的観点及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含んでもよい。
【実施例0281】
実施例1:カニクイザルにおける抗CD38抗体のモデルベースの特性評価
抗CD38抗体AB79は、カニクイザル(cynomolgus monkey)(カニクイザル(cyno))CD38に結合する点で、多発性骨髄腫の治療に対して最近承認された細胞溶解性CD38モノクローナル抗体であるダラツムマブ(Darzalex(商標))とは区別される。この固有の機能は、AB79の薬物動態(PK)、薬力学(PD)、及び安全性を特性評価するための前臨床研究でのカニクイザルの使用を支持した。この目的で、薬物の濃度、免疫原性を測定し、カニクイザルサルの血中のT、B、及びNKリンパ球を定量するためのアッセイを開発した。8つの薬理学的及び毒性学的前臨床研究において、これらのパラメータを評定した。試験された細胞集団のうち、CD38はNK細胞上で最も高発現される。したがって、NK細胞に対する薬物効果が、考慮される標的細胞である形質芽球、形質細胞、及び他の活性化リンパ球に対する効果に最も近くなると想定する。
【0282】
データを、0.03~100mg/kgの用量範囲を用いた健常なサルにおける8つの研究からプールし、細胞型の各々についての薬物動態及び曝露-効果関係を記述する数理モデルを開発した。NK細胞の枯渇が、AB79の最も感度の高い薬力学的効果として特定された。この枯渇を、代謝回転モデル(EC50=34.8μg/mL(枯渇率に対して))を用いて記述し、完全な枯渇は、0.3mg/kgのIV投薬で達成された。また、直接応答モデル(EC50=9.43μg/mL)を用いてT細胞数に対する中程度の効果、及び4通過コンパートメントモデル(EC50=19.3μg/mL(枯渇率に対して))を用いてB細胞数に対する中程度の効果が観察された。これらの分析は、測定されたリンパ球サブセットの各々が、異なる速度でAB79により取り除かれ、血液コンパートメントを枯渇させるのに異なる期間を必要とするという観察を実証した。
【0283】
PK及びPDデータを記述する数理モデルは、薬物曝露と効果との間の関係に関する機構的洞察及び定量的洞察を得るために有用なツールである(Friberg et al.(2002)J.Clin.Oncol.20:4713-4721、Mager e
t al.(2003)Drug Metab.Dispos.31:510-518、Han and Zhou(2011)Ther.Deliv.2:359-368)。分布及び消失、サルとヒトとの間の生理学的及び遺伝的類似性を含む、IgG抗体の典型的なPK特徴を活用して、AB79の薬理学を説明することができる(Glassman
and Balthasar(2014)Cancer Biol.Med.11:20-33、Kamath(2016)Drug Discov.Today Technol.21-22:75-83)。追加として、それらのモデルは、健常なヒト被験者におけるPK濃度及びPD効果を予測するために成功裏に適用されてきた(Han and
Zhou(2011)Ther.Deliv.2:359-368)。
【0284】
材料及び方法
サル研究の要約が、時間順で表3に示される。単回投薬研究2、7、及び8は、主として、静脈内(IV)及び皮下(SC)投与したAB79のPK及びPDを評価するために行った。安全性、PK及びPDを評価するために、GLP条件下での4週間の研究2つ(研究1及び3)及び13週間の研究3つ(研究4、5、及び6)を含む、反復投薬研究を行った。13週間の研究5では、投薬過誤が生じた。最低用量群の動物が、一時点(2回目の投薬)で意図された0.1mg/kgの代わりに0.01mg/kgを受け、次いで0.1mg/kgで継続した。これらのデータは、実際に投与した投薬量の正しい情報と共にデータセットに追加した。研究6は、研究5の0.1mg/kgの低用量、週1回の群を反復した。全ての動物研究は、米国国立衛生研究所により採択され、公布されたGuide for the Care and Use of Laboratory Animalに準拠して行った。
【表3】
【0285】
生物分析
PKは、Charles River Laboratories(Reno,NV)により開発され、実施された妥当性確認済みの方法を用いて分析した。簡潔に述べると、間接的酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を用いて、AB79の濃度をサル血清中で測定した。96ウェルマイクロタイターフォーマットを、AB79に対する抗イディオタイプ抗体でコーティングした。ブランク、標準物質、及びAB79を種々の濃度で含有する品質管理(QC)試料をプレートに添加し、室温(RT)で55~65分間インキュベートした。マイクロタイタープレートを洗浄した後、ペルオキシダーゼ標識アフィニピュアマウス抗ヒトIgG(ペルオキシダーゼAffiniPureマウス抗ヒトIgG、Fcγ断片特異的、Jackson ImmunoResearch)を添加し、プレート上でさらに55~65分間インキュベートした。プレートを再び洗浄し、テトラメチルベンジジン(TMB)をウェルに添加して、発色団を発生させ、停止液(2Nの硫酸)の添加によって発色現像を停止させた。450nmでの吸光度を、SPECTRAmax(登録商標)190マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を用いて測定し、AB79濃度を、4パラメータロジスティック重み付け(1/y)標準検量線を用いて算出した。研究1(表3)において、血清中のAB79の定量下限(LLOQ)は0.061μg/mLであり、全ての他の研究においては、それは0.05μg/mLであった。
【0286】
抗AB79抗体の決定(免疫原性)
サル血清の抗薬物抗体(ADA)のスクリーニングは、Charles River Laboratories(Reno,NV)により妥当性を確認され、実施された定性的電気化学発光(ECL)法を用いて分析した。簡潔に述べると、未希釈の血清試料を300mMの酢酸と共にインキュベートした。酸解離した試料を、ビオチン化AB79、SULFO-TAGで標識されたAB79(Meso Scale Diagnostics、Charles River Laboratoriesにて標識された)、及び1.5MのTrizma塩基の混合物中でインキュベートして、酸を中和し、免疫複合体を形成した。次いで、この複合体をストレプトアビジンコーティングMSDプレート(Meso Scale Diagnostics)に添加し、結合させた。洗浄後、MSD読み取り緩衝液T(Meso Scale Diagnostics)をプレートに添加し、その後、Ru(bpy)3の電気化学反応を介してSULFO-TAG(商標)を励起して、発光(光)を発生させ、MSD Sector 6000(Meso Scale
Diagnostics)を用いてこれを読み取ることによって、複合体を検出した。発光の量は、個々の試料の血清中に存在するサル抗AB79抗体のレベルと相関があった。
【0287】
血液細胞の特性評価
ヒトとサルとの間のAB79結合のレベルを評価し、比較するために、各々からの血液試料をナトリウムヘパリン管中に収集した。血液のアリコート(100μL)を適切な容量の抗体と混合し(図1)、室温で15~20分間、暗所でインキュベートした。インキュベーション後、1mLのBD FACS溶解液(1倍、BD Biosciences、San Jose,CA)を添加して、赤血球を溶解させ、細胞を室温で10分間、暗所でインキュベートし、次いで遠心分離し、デカントし、ウシ血清アルブミン(BD Biosciences)を含む1mLの染色緩衝液中に再懸濁した。細胞を再度遠心分離し、デカントし、250μLのFlow Fix(カルシウム及びマグネシウム不含ダルベッコPBS(Life Technologies,Carlsbad,CA)中の1%パラホルムアルデヒド)、蛍光を、FACSCanto(商標)IIフローサイトメーター(BD Biosciences)を用いてフローサイトメトリー解析によって測定した。サルNK細胞(CD3-、CD159a+)、B細胞(CD3-、CD20+)、
及びT細胞(CD3+)、ならびにヒトNK細胞(CD3-、CD16/CD56+)、B細胞(CD3-、CD19+)、及びT細胞(CD3+)を測定した。各細胞集団についてのAB79染色の平均蛍光強度を、Rainbow Beads(Spherotech、Lake Forest,IL)を用いて作成された標準曲線を用いて、同量の蛍光強度を示す可溶性蛍光分子数(MOEF)の単位に変換した。
【0288】
表3に概要が示される研究において、細胞を染色し、Charles River Laboratories(Reno,NV)により開発され、実施された妥当性確認済みの方法を用いて分析した。サル血液試料を、AB79処置前、及びAB79処置後の複数の時点でナトリウムヘパリン管中に収集し、特定のリンパ球集団を、FACSCanto(商標)IIフローサイトメーター(BD Biosciences)を用いてフローサイトメトリー解析によって測定した。市販の抗体及びCD38抗体(Ab19、米国特許第8,362,211号)を、染色に最適な濃度に滴定した。サルCD38+/-、T細胞(CD3+)、B細胞(CD3-/CD20+)、及びナチュラルキラー(NK)細胞(CD3-/CD20-/CD16+)集団を特定し、CD45TruCount(商標)管(BD Biosciences)を用いてリンパ球を定量した。各血液試料のおよそ100μLのアリコートを96ウェルプレートの適切なウェルに入れ、抗体を示される容量で添加し、混合し、室温で最低30分間、暗所でインキュベートした。インキュベーション後、赤血球を溶解させ、試料を混合し、室温でさらに10分間、暗所でインキュベートした。プレートを遠心分離し、上清をデカントした。次いで、細胞ペレットを1,800μLの染色緩衝液中に再懸濁し、試料を混合し、遠心分離し、上清をデカントした。細胞ペレットを、ウシ胎仔血清を含む500μLの染色緩衝液中に再懸濁し、およそ300μLの細胞懸濁液を解析のために96ウェルV底プレートに移した。NK細胞パーセンテージ、ならびに総計T細胞及びB細胞のパーセンテージを、TruCount(商標)管(BD Biosciences、San Jose,CA)で得た細胞数値に適用し、これを用いて、各細胞集団についての絶対細胞数を決定した。研究1~4においては、CD38+ NK細胞、B細胞、及びT細胞のサブセットを、標示される抗CD38抗体AB79またはAb19を用いてベースラインで評定した(図1)。TSF-19は異なるエピトープに結合するものの、結果は非常に類似していたため、別個に提示されない。処理された試料は直ちに分析した。
【0289】
PKモデル開発
PKモデル開発の間、1、2、及び3コンパートメントモデル構造を調査した。2コンパートメントモデルは、適合度(GOF)プロット及び目的関数値(OFV)の減少によって判断されるように、1コンパートメントモデルよりも明らかに優れていた。診断プロットの目視検査に基づいて、第3のコンパートメントの導入は、データを十分に記述するのに必要でなかった。生物学的利用能(F)は、ロジット変換、F=exp(PAR)/(1+exp(PAR))(式中、PARはモデルパラメータを表す)を用いてモデル化して、推定値が0~1の間に確実に境界を定められるようにした。低濃度での非線形PKは、標的介在性薬物動態(TMDD)プロセスの準定常状態(QSS)近似モデルによりモデル化した(Gibiansky and Gibiansky(2009)Expert Opin.Drug Metab.Toxicol.5:803-812)。
【0290】
モデルの略図が図3のCに提供される。QSS近似に関しては、遊離薬物C、標的R、及び薬物標的複合体RCの定常状態濃度が、全ての他のプロセスと比較して非常に迅速に確立されると想定する。これは、結合プロセスが解離及び内部移行プロセスと均衡がとれていること、ならびに以下の等式が適切な単位で適用されることを含意する:KON*C*R=(KOFF+KINT)*RC(式中、KONは結合速度定数、KOFFは解離速度定数、KINTは内部移行速度定数を表す)。
【0291】
被験体間変動(BSV)を全てのパラメータについて調査し、以下のタイプの指数関数モデルによりモデル化した:PAR=TVPAR*eETAPAR (式中、PARは個体であり、TVPARは、典型的なパラメータ推定値であり、ETAPARは、個体iの偏差の推定値である)。ETAPAR値は、平均値ゼロの正規分布に従うと想定した。残差は、付加及び比例複合誤差モデルにより記述した(Beal and Sheiner(1992)NONMEM User Guides,in University of California CA)。
【0292】
AB79のPKに対する潜在的な共変量効果を特定するために、以下のパラメータを調査した:体重、性別、用量、投与経路、及び研究。
【0293】
PK-PDモデル開発
3つの細胞型の各々について、PK-PDモデル開発を別個に行った。モデル開発には、薬物投与に近い(投薬後<8時間)測定値は、複数の血液試料が短時間にわたって採取されたことに恐らく起因して、それらが非特異的な薬物非依存性効果によって影響を受けたため、利用しなかったことに留意されたい(図4)。PKモデル及びパラメータ推定値は固定した。種々の形態の代謝回転、通過コンパートメント、及び直接応答モデルを試験した(Friberg et al.(2002)J.Clin.Oncol.20:4713-4721、Mager et al.(2003)Drug Metab.Dispos.31:510-518)。代謝回転モデルにおいては、薬物効果は、ヒル係数を用いてまたは用いずにEmaxタイプモデルの形態で細胞消失速度に対して導入した。ここでの表記において、Emaxモデルは、以下の形態の薬物濃度cの関数fである:f(c)=EMAX*c/(c+C50)(EMAXは最大効果、C50は最大効果の半数が達成される濃度、Hはヒル係数を表す)。通過コンパートメントモデル(TCM)においては、薬物効果は、異なる位置、すなわち増殖速度、循環細胞、及び第3の通過コンパートメントに対して導入し、試験した。また、これらの効果の組み合わせ、及びデータが循環から増殖速度へのフィードバック機構の存在を支持するかどうかもまた試験した。追加として、薬物濃度-効果曲線を記述するために、ヒル係数を用いた及び用いないEmaxタイプの直接応答モデルを試験した。
【0294】
ベースライン細胞数、細胞生成速度(KIN)、通過コンパートメントモデルにおける通過時間(MTT)、C50、及びEMAXに対する被験体間変動を推定するために、ランダム効果パラメータを導入した。データセットにおいて個々の平均ベースライン細胞レベルを提供した(列BL)。これは、このモデルにおける典型値として使用した。個体の全ての測定値に基づいて個体のベースライン推定値を調整することができるように、ランダム効果パラメータを追加した。PD残差は、比例誤差モデルにより記述した。
【0295】
モデル化(PK及びPK-PD)の過程中のモデル検証のために、OFV、標準誤差、GOFプロット、及び個別予測対データプロットを用いて、モデルを評定し、それらを代替モデルと比較した。
【0296】
以下のソフトウェアパッケージを利用した:NONMEM(バージョン7.2)、KIWI(バージョン1.6)、Berkeley Madonna(バージョン8.3.14)、PSN(バージョン4)、及びR(バージョン3.3.0)。
【0297】
データセット準備
8つのサル研究からのデータセットを収集し、単一のフォーマットで再編成し、NONMEMで読み取り可能な3つの別個のPK-PDデータセットにマージした。3つのデータセットの各々は、サルの個々の特性(研究、ID、群、体重、性別)、投薬情報、PK、及びNK、B、またはT細胞のいずれかのデータを含んでいた。対照群の動物について
は、暗にAB79の血清中レベルがないことを想定して、細胞数のみをデータセットに追加し、PKデータは追加しなかった。抗薬物免疫原性ステータス(ADA)についての時間分解された情報、つまり、定量的測定結果を含むTITER及び0/1フラグ変数ADAF(ADAがAB79の濃度に影響を及ぼす場合はADAF=1、そうでない場合はADAF=0)を、別個の列で各観察値に追加した。ADA力価は、異なる研究において異なる方法の明細事項により測定したため、研究間で値を定量的に直接比較することはできない。ADA情報を全ての研究にわたって一貫した様態で利用するために、以下の手順を各動物について別個に適用した:7日間より後の時点で、最初に測定したレベルよりも増加したADA力価は、ADA陽性と見なし、データセットにおいてフラグを立てた(ADAF=1)。一時点で試料がADA陽性とフラグを立てられた場合、この動物において、測定された力価を問わず、その時点以降に採取した全ての試料もまたADA陽性とフラグを立てた。ADA陽性の観察値は、モデル開発中のパラメータ推定には使用しなかった。ADAにより影響を受けたPK濃度のサンプリング時点からのPD測定値もまた、ADAF=1でフラグを立てられたことに留意されたい。
【0298】
細胞数データについては、各細胞型(NK細胞、B細胞、及びT細胞)についての個々のベースライン値を、所与の動物の全ての入手可能な投薬前測定値の平均値として算出した。ほとんどの研究で、これは単一の測定値であった。次いで、各動物のベースライン値を、第1の投薬事象(時間=0)の時点での観察値として、及び列BLにおける定数値として、それぞれの動物の各観察値に追加した。このベースライン値に基づいて、各々観察された細胞数についてのベースラインに対するパーセントを算出し、データセットに追加した。
【0299】
サルPKパラメータのスケーリング
最終的なPK及びPK-PDモデルを、ヒト初回投与臨床試験に向けたPK及びPK-PDプロファイルをシミュレートするための開始点として使用した。治療用モノクローナル抗体からのデータの比較分析では、サルにおける研究から導出されたPKパラメータをスケーリングして、許容される正確度でヒトのPKプロファイルを予測可能であることが示されている(Han and Zhou(2011)Ther.Deliv.2:359-368)。同刊行物は、0.85の固定指数を用いて、モノクローナル抗体のヒトクリアランスを確実に予測できることを示した。したがって、この関係をヒトクリアランスパラメータ(CL、Q)のスケーリングに適用し、一方で、容量パラメータ(VC、VP)は、体重(BW)間の直接的な関係を用いてスケーリングした。
【数8】
【0300】
結果
AB79の薬物動態
PKデータセットは、プラセボ群を除く健常なサルにおける全ての8つの研究からプールした(表3)。総計で、セットは、140匹の動物からのデータを含んでおり、このうちの58匹が雄であり、82匹が雌であった。研究された動物の体重は、2.1~4.7kgの範囲であり、用量は、体重1kg当たり0.03~100mg(mg/kg)の範囲であった。研究7の1つの群及び研究8の3つの群では、0.03、0.1、0.3、及び1mg/kgの用量をSC投与した(総計15匹の動物)。プールされたデータセッ
トは、LLOQを超える2,199個の測定可能なPK観察値を含んでいた(図3のA、B)。AB79濃度と並行して、ADAを評定した。229個のPK観察値は、ADAに影響を受けることが見出された(図5)。PKは、最初の投薬後に最も密にサンプリングされ、長期の毒物学研究においてさえ、ほとんどの動物が98日目より前に終了した。研究4のみが回復群を含み、80mg/kg群から2匹、30mg/kg及び3mg/kg群の各々から1匹の、4匹の動物からのPKデータを集めることができたのみであった(図3のB)。
【0301】
最初に、サル研究の各々について、標準的なノンコンパートメント技法(NCA)を用いてPK分析を行った。単回投薬研究(IVボーラス注射または30分間のIV注入)に基づいて、終末相(Vz)中の分布容積は64~116mL/kg、クリアランスは6.04~14.7mL/kg/日、終末消失半減期(T1/2)は4.75~11.2日間の範囲と算出された。濃度時間曲線下面積(AUC)及び最大濃度(Cmax)値は、広範囲にわたって用量に比例して増加することが見出された。最低用量群のPKプロファイル(<1mg/kg、図3のD~F)のみが、0.5μg/mLを下回る濃度で、恐らくは標的介在性機構(TMDD)によって引き起こされる、非線形に増大するクリアランスの証拠を提供する(Kamath(2016)Drug Discov.Today Technol.21-22:75-83)。2つの最低用量群(用量>0.3mg/kg)を除く全てのサル研究のデータに基づいて、線形2コンパートメントモデルを構築した。最低用量群のPKをシミュレートし、測定された濃度と重ね合わせると、線形モデルが濃度を過大に予測していることが明らかであった(図3のD~F)。
【0302】
単回用量のSC投与後の入手可能なPKデータにより、Cmaxが同じ用量のSC群においてIV群と対比して70~80%低いこと、及びAUCが同等であることが明らかとなった。雄性サルと雌性サルとの間のPKパラメータの差異は何ら観察されなかった。これらの初期分析の結果をモデル開発の開始点として使用した。
【0303】
PKモデル開発
モデル開発は、単回IV投薬データで開始し、次いで、より複合のデータを利用して初期モデルを徐々に拡張した。他の治療用抗体と同様に、PKは、線形2コンパートメントモデルに全体的に従う(Kamath(2016)Drug Discov.Today
Technol.21-22:75-83)。低濃度での加速クリアランスを記述する非線形消失成分(TMDD)を、準定常状態(QSS)近似によりモデル化した(Gibiansky and Gibiansky(2009)Expert Opin.Drug Metab.Toxicol.5:803-812)。薬物-標的会合プロセスが、薬物の解離、分布、及び消失のプロセス、ならびに標的及び薬物-標的複合体の消失のプロセスよりもはるかに速いという想定が、単純化されたTMDDモデルにつながる(図3、表4)。低濃度でのデータの量は比較的少なく、その結果、ソフトウェアプログラムの単回の推定実行では全てのパラメータが推定されなかった。したがって、TMDDモデルのパラメータは、低量単回投薬研究7及び8のデータに焦点を当てることによって最初に推定した。次いで、結果として得られたTMDDパラメータ推定値を、全データセットについての最終推定中に固定したまま維持した(表4)。
【0304】
【表4】
【0305】
吸収パラメータK及びFの推定値は、SC群のデータを追加したときに得た。全てのSCデータは、研究7及び8からの4つのより低い単回投薬群からのものである。これらのより低い用量(≦1mg/kg)は、臨床的に意義のある範囲を網羅していたが、より高い用量についてパラメータ推定値の一般化可能性を制限する可能性がある。
【0306】
PKパラメータの被験体間変動(BSV)は、指数関数モデルにより記述した。吸収速度(K)、クリアランス(CL)、及び末梢分布容積(V)は、約40%の推定BSVを有し、中央分布容積(V)は、約20%の推定BSVを有した(表4)。共変量分析により、Vに対する投与経路の効果が特定された。Vの典型値は、IV投与された場合0.141Lであり、SC投与された場合0.043Lであった(約70%小さい)。他の有意な共変量効果は特定されなかった。低濃度でのデータ量が限定されるため、TMDDパラメータの被験体間変動及び個別予測は、内部移行速度KINTに対してのみ推定された(BSV:49%)。残差誤差、OFV、標準誤差、GOFプロット、及び個々の曲線適合に基づくモデル評価は、最終モデルが健常なサルにおけるAB79のPKを十分に記述することを裏付けた(表4、図6)。
【0307】
薬力学
ヒト及びサルの血中NK細胞、T細胞、及びB細胞上でのAB79結合のレベルをフローサイトメトリー解析によって比較した。図7に示されるように、サルリンパ球は、AB79の同量の蛍光強度を示す蛍光分子数(MOEF)に基づいて、それらのヒト対応物と比較して若干より低いCD38発現レベルを有したが、細胞型間の関係は類似しており、例えば、CD38発現はNK細胞>B細胞>T細胞であった。これらのデータは、ヒトにおけるPD活性に対するAB79の可能性を予測するのに役立つ意義のあるモデルとして、この非ヒト霊長類種を使用することを支持する。
【0308】
薬物曝露(PK)と、細胞枯渇の程度及び継続期間(PD)との間の関係の詳細な定量分析のために、入手可能な場合、プラセボ処置動物を含む、8つ全てのサル研究のPK濃度、NK細胞、B細胞、及びT細胞数からのデータセットをまとめた(表3)。データセットの最初の特性評価により、ベースラインで、T細胞が1μL当たり3,732細胞の中央値(四分位範囲(IQR):2,881~5,176)を有し、1μL当たり1,279細胞のB細胞(IQR:860.8~1,890)及び1μL当たり685細胞のNK細胞(IQR:482.8~970.1)と比較して、最も豊富なリンパ球サブタイプであることが示された。これらの細胞集団上でのベースラインCD38発現を研究1~4で評定した(表3、n=67)。NK細胞の86.7%(SD11.3)がCD38を発現し、変動はより小さかった。対照的に、B細胞の58.7%(SD27.0)及びT細胞の34.5%(SD24.5)がCD38を発現し、変動はより大きかった。
【0309】
プラセボ処置動物からのデータは、細胞型の各々の平均数が、1つの個体内での変動性から予想されようものを超えて、個々の動物間で経時的に変動することを示した(図8)。例えば、個々のプラセボ曲線のB細胞数の平均変動係数は27%であったが、個々の平均B細胞レベルは、436.6~4,389の範囲であった。追加として、雄性及び雌性動物、ならびに異なる研究の動物からの平均ベースラインリンパ球数間にもまた差異が存在し、変動性を高めた(図9)。これらの結果に基づいて、処置後の各細胞数を、各時点で、絶対細胞数ではなくパーセント単位でその個々のベースライン値に対して算出した。例えば、33%の値は、試料において細胞数がベースライン細胞数の1/3であったことを意味する。これは、全データセットにわたって比較可能な標準化された値を提供した。
【0310】
AB79結合細胞の枯渇の急速な発生は、初期血中濃度がリンパ球数の減少を主導することを示唆する(図10)。0.3mg/kgのAB79のIV投薬で、NK細胞に対する最大効果の中央値は、93.9%の枯渇であった(すなわち、ベースライン細胞数の6.1%が残存する)。0.1mg/kgでは、ピークの枯渇は71%であった(ベースラインの29%が残存する)。用量>0.3mg/kgでは、NK細胞は血液コンパートメント中でほぼ完全に枯渇した(最下点(範囲)、ベースラインの1.06%(0.17、6.23)、図10のA)。0.3mg/kgの単回投薬後、回復の反応速度は個体間で大きく変動していたものの、NK細胞がベースラインの50%の平均値に回復するのにおよそ7日間かかった(図10のB、C)。これらの結果と一致して、NK機能をまた研究7で動物のサブセットにおいて試験した(n=3/群、表3)。この実験は用量依存性の低減を示し、0.1mg/kgのAB79で処置された動物において処置後48時間で血中NK活性の最小の変化(100:1エフェクターでの溶解%:標的比率±SD;44.5%±23.6%対41.4%±25.8%)、及び1.0mg/kgで処置された動物においてNK活性のほぼ完全な喪失(100:1エフェクターでの溶解%:標的比率±SD;37.4%±10.3%対6.8%±12.5%)が見られた。NK細胞機能は、測定された次の時点である57日で回復を示した(100:1エフェクターでの溶解%:標的比率±SD;16.0%±11.9%)。
【0311】
B細胞及びT細胞は、NK細胞と比較してより低い程度に枯渇したが、これはそれらの
より低いCD38発現レベルと一致する(図7)。例えば、0.3mg/kgのAB79のIVでは、B細胞は、ベースラインの45%までの最大枯渇レベルの中央値を有し、T細胞は、ベースラインの43%まで枯渇した(図10のD、G)。この用量レベルでは、全ての動物において、B細胞数のベースラインからの50%の低減は達成されなかった。≧30mg/kgの最高用量でのみ、B細胞はほぼ完全に枯渇した(図10のD)。T細胞は、B細胞と同様の程度に枯渇したが、回復はより速かった(図10のG~I)。
【0312】
2つの研究7及び8において、IV及びSC投薬(図10のC、F、I)を比較した。投与経路間での細胞枯渇の明白な差異はなかった。より低い用量では(研究8)、ベースライン値を50%下回る持続的な(>24時間)細胞枯渇がNK細胞集団でのみ見られ、T細胞及びB細胞では見られなかったが、全ての細胞は、早期の時点で特定の細胞枯渇を示した。NK細胞枯渇の発生の時期は、投与経路を問わず用量群間で類似しているように思われ、枯渇の継続期間は、用量依存性であった。全ての試験群における細胞回復は、57日目までに見られた。
【0313】
PK-PDモデル
NK細胞、B細胞、及びT細胞に対するAB79曝露の効果を記述するために、別個のPK-PDモデルを開発した。PK-PDモデル化の間、PKパラメータは、最終PKモデルの推定値に固定したまま維持し、様々なPDモデルを試行した(詳細については、材料及び方法を参照されたい)。末梢血中のNK細胞集団は、代謝回転モデルにより十分に記述され、枯渇させる薬物効果は、EmaxタイプモデルによるPK濃度を介して、枯渇速度に関連付けられた。このモデルにおいて、EMAXは、追加のNK細胞枯渇の最大速度を表し、C50は、追加のNK細胞枯渇の速度が最大半量となる濃度を表す。NK細胞の構造的PK-PDモデルは、以下の形態のものである:
【数9】
【0314】
式中、NKは実際のNK細胞数、KINは生成速度、KOUTは、薬物が存在しないときの消失速度を表す。所与のベースライン測定値で、BL KOUTは、等式KOUT=KIN/BLによって定義されることに留意されたい。cは、中央コンパートメントにおけるAB79濃度を表す。全てのパラメータが一度に推定されたとき、ソフトウェアプログラムは、安定した結果を生成しなかった。KIN、EMAX、及びC50の個々の推定値は、高い相関があった。その上、異なる用量の最大効果間の区別が限定されること(前の節を参照されたい)、及び個体間変動が大きいことに起因して、全てのパラメータの正確な推定値を期待することはできなかった。一連の推定において、3つのパラメータKIN、EMAX、及びC50のうちの1つまたは2つを異なる値に固定し、その他は推定した。KINを10,000に固定し、EMAXを322にして、安定した実行及び妥当な適合度が達成された。典型的なC50推定値は29.0μg/mLであった(表5)。追加として、選択されたKIN及びEMAX値の感度を、より高い値及びより低い値の異なる組み合わせを選定することによって試験した。被験体間変動は、NK生成速度KINが113%、C50が149%と大きかったが、これは、ベースラインでの及び処置動物間の個体差が大きいことと一致している。このモデルを残差誤差、OFV、標準誤差、GOFプロット、及び個々の曲線適合に基づいて評価した(表5、図4)。
【0315】
【表5】
【0316】
通過コンパートメントモデルは、AB79誘導性B細胞枯渇を記述するために、直接応答または代謝回転モデルよりも優れていた。4通過コンパートメントが十分であることが判明し、薬物効果は、枯渇率に対するEmaxタイプモデルにより記述した。NK細胞枯渇モデルと同様に、EMAXは最大速度を表し、C50は速度が最大半量となる濃度を表す。故に、B細胞の構造的PK-PDモデルは、以下の5つの等式によって求められる:
【数10】
【数11】
【数12】
【0317】
TR(i=1~4)は、4通過コンパートメントを表す。KTR、KPROL、及びKCIRCは、以下の等式KTR=KPROL=KCIRC=4/MTTによって定義され、式中、MTTは、通過時間を意味する(Friberg et al.(2002)J.Clin.Oncol.20:4713-4721)。Bは、血中のB細胞数を表し、cは、中央コンパートメントにおけるAB79濃度を表す。
【0318】
EMAXを2.37に固定すると、典型的なC50は19.5μg/mLであり、典型的な平均通過時間(MTT)は8.48日間であった(表5)。最大AB79濃度に対する最大効果の遅延がよく捕捉された。このモデルは、AB79が循環B細胞に主として影響を及ぼすことを示す。前駆細胞に対する追加の効果及びフィードバックループは、入手可能なサルB細胞データを記述するために何ら必要でなかった。MTTについて135%及びベースラインB細胞レベル(BASE)について24.1%の被験体間変動は、動物間で個体差が大きいことを示す。
【0319】
迅速な回復を伴うT細胞の薬物誘導性枯渇は、下記の直接応答モデルにより十分に記述された:T(c)=BL*(1-EMAX*c/(c+C50))(式中、Tは、実際のT細胞数を表し、BLは、ベースラインでのT細胞数を表し、cは、中央コンパートメントにおけるAB79濃度を表す)。典型的なC50は11.86μg/mLと推定され、典型的なEMAXは0.47であったことから、この実例では、T細胞の約半分のみがAB79によって枯渇可能であることを示す(表5)。しかしながら、EMAXについての被験体間変動は、70%に近かったことに留意されたい。このモデルにおいては、NK及びB細胞枯渇モデルとは異なり、C50は、T細胞の枯渇が最大半量であった濃度を表す。
【0320】
NK細胞に関しては、残差誤差、OFV、標準誤差、GOFプロット、及び個々の曲線適合に基づくB細胞及びT細胞についての最終PK-PDモデルのモデル評価により、それらが入手可能なサルデータを十分に記述することが裏付けられた(表5、図4)。
【0321】
ヒトPK及び細胞枯渇のシミュレーション
サルPK及びPK-PDモデルを、健常なボランティアにおけるヒト初回投与(FIH)臨床試験に向けた設計を支持し、選択された用量の正当性を説明するために、ヒトPK及び細胞数データのモデルベースのシミュレーションのための開始点として使用した。この目的で、サルデータから導出されたTMDDを含むモデル構造がまた、ヒトPK及び結果として続くリンパ球枯渇の主な特徴を記述すると想定した。ヒトPKパラメータについての予測を得るために、以下のサルPKパラメータの推定値をスケーリングした:モノクローナル抗体に対する単純明快なアプローチを用いた、中央及び末梢分布容積(V、V)、ならびにクリアランス(CL)及びコンパートメント間クリアランス(Q)(Han and Zhou(2011)Ther.Deliv.2:359-368)。AB79は、完全ヒトモノクローナル抗体であるため、ヒトにおける免疫原性はサルで観察されるものよりも低いことが予想される。したがって、モデル化及びシミュレーションに関して、データセットからADA陽性試料を除外した。
【0322】
スケーリングされたモデルを用いて、曝露量、ならびにFIH研究で計画されるような2時間の注入(IV)または皮下注射(SC)を介した0.0003~1.0mg/kgの単回投薬についてのNK細胞、B細胞、及びT細胞枯渇プロファイルをシミュレートした(図11)。シミュレーションによると、0.0003mg/kgのIV投薬後に、リ
ンパ球数に対するいかなる観察可能な薬物誘導性効果、及びLLOQを上回る測定可能でさえないPK濃度も予想されないであろう。変動性に起因して、また用量群のサイズが限定されることに起因して、NK細胞数に対する最小の検出可能な薬物効果は、少なくとも10%の低減であろうことを想定した。0.01mg/kgのIV及び0.03mg/kgのSCの用量では、NK細胞がベースラインの残存する90%未満まで枯渇されようことが予測された。
【0323】
0.3mg/kgのIV投薬では、NK細胞が注入終了後3時間以内にベースラインの残存する17%まで枯渇し、11日後に50%超まで回復することを予測した(図11)。同じ用量で、このモデルは、B細胞が2.5日後にベースラインの67%まで最大限に枯渇し、T細胞がベースラインの86%まで即座に枯渇することを予測する。同じ0.3mg/kgの用量の皮下投与について、このモデルは、それがより少ない、かつより後での最大枯渇をもたらすことを予測した(ベースラインと比べた最下点:NK細胞37%、B細胞74%、T細胞94%)。
【0324】
これらのインビトロ及びインビボ前臨床研究は、サルが、AB79の薬理学を研究するのに適切な動物モデルであることを実証する。多様な用量及び投薬レジメンを用いた8つのサル研究からのNK、B、及びTリンパ球の密にサンプリングされたPK及び細胞数データは、AB79用量、曝露量、及び細胞枯渇の間の関係を包括的かつ定量的に理解するための豊富なデータソースを提供する。作成された母集団のPK及びPK-PDモデルは、観察されたデータを十分に記述し、サルでの将来の研究のみならず、ヒト被験者での臨床試験においても曝露量及びリンパ球枯渇を予測する強力なツールを提供する。
【0325】
健常なボランティアにおけるヒト初回投与(FIH)単回漸増用量試験が実施された(www.clinicaltrials.gov:NCT02219256)(図12)。AB79の意図される薬理学的効果は、活性化リンパ球の枯渇である。しかしながら、リンパ球の重大かつ持続的な枯渇(強化された薬理学)は、免疫系の障害につながる可能性があり、これは患者または健常な研究参加者にとって忍容できないものであろう。したがって、0.0003mg/kgの安全なI.V.開始用量がFIH試験に選定された。
【0326】
サルのデータは、NK細胞枯渇が最も感度の高い生物学的効果であると決定されたことを示唆した。PK-NKシミュレーション結果は、最も感度の高い薬理学的効果(NK細胞枯渇)がヒトにおいて検出可能であることが予想される、0.01mg/kgのIVの最小用量レベルを決定するのに役立った。FIH試験から新たに現れているデータにより、AB79の用量依存性及び細胞型特異的な枯渇効果の全体的なパターンが、モデルベースの予測と一致することが明らかとなった(原稿は準備中)。AB79は、予測よりもさらに効率的であるように思われる。例えば、0.03mg/kgのIV投薬で、ヒト被験者におけるNK細胞は、ベースライン10%未満が残存するまで枯渇した。この用量でのサルにおける最下点中央値(最も低い枯渇点)は20.0%であった(図10)。
【0327】
3つの細胞溶解性抗CD38モノクローナル抗体(ダラツムマブ、イサツキシマブ、及びMOR202)は、多発性骨髄腫に対して臨床開発段階にある(van de Donk et al.(2016)Immunol.Rev.270:95-112)。ダラツムマブ(Darzalex(商標)、静脈内注入として与えられる)は、米国において多発性骨髄腫に対して、及び欧州において非ホジキンリンパ腫に対して最近承認された。AB79とは異なり、ダラツムマブは、サルCD38と交差反応しない。したがって、ここでのカニクイザルにおけるAB79による結果と、ダラツムマブとの比較は可能でなかった。その上、多発性骨髄腫の患者は、高レベルのCD38陽性悪性細胞を有し、このことにより、このがんの適応症に対してはより高い有効抗体濃度が必要とされ得る。(de
Weers et al.(2011)J.Immunol.186:1840-18
48)。
【0328】
しかしながら、AB79が約1mg/kgで末梢NK細胞の完全な枯渇及び約3mg/kgでB細胞の完全な枯渇を達成したにもかかわらず、ダラツムマブが多発性骨髄腫において16mg/kgの毎週IV投薬で承認されていることは注目に値する(図10)。
【0329】
8つのサル研究からの豊富なデータベースにもかかわらず、いくつかの制限が認識された。AB79は、研究された最低用量である0.03mg/kgであってもNK細胞を効果的に枯渇させる。かかる低用量では、PKは、生物分析アッセイの定量限界を下回って迅速に低下し、これがより低い用量での曝露-効果関係の解明を阻止した。その上、前臨床開発中、最大細胞枯渇が最大薬物濃度の直後に生じることが認識されたが、枯渇の初期段階の解明は、全体的な試料数、及び可能性として、血液採取の反復に起因する非特異的な細胞枯渇(採血効果)によって技術的に制限される。採血効果は、AB79に結合しない細胞型の枯渇を特徴とする一過性汎血球減少症として観察され、用量依存性ではなかったことから、それが、AB79の何らかの特定の効果ではなく複数回の採血の結果としての血液量の喪失に起因することが示唆される(図13)。結果として、とりわけNK細胞枯渇に関してモデルパラメータを正確に推定する能力は制限され、KIN及びEMAXの典型値は、安定した十分な推定結果を達成するのに固定を必要とした。
【0330】
組織形質細胞または形質芽球に対するAB79の効果は、測定することができなかった。しかしながら、形質細胞及び形質芽球と同様に、NK細胞は、それらの表面上に高レベルのCD38を有し、特定のリンパ球サブセットの細胞枯渇効率は、CD38の発現レベルに少なくとも部分的に左右される。したがって、形質芽球及び形質細胞に対するAB79の細胞溶解効果は、NK細胞に対する効果と同等であり得る。現在のところ、サルにおけるAB79処置の長期的効果についての情報は限定される。13週間の毒物学研究における動物の小さいサブセットのみが、回復群においてより長い期間にわたって調査され、全ての用量群における動物のほとんどがADAを生じた。その上、異なるリンパ球サブセットのベースライン値及び枯渇プロファイルは、個体間で大きく変動していた。したがって、AB79の長期的効果は、サルでは調査することができず、ヒトで研究する必要があろう。
【0331】
ヒトデータの新たな現れに伴い、ヒト及びサルのPK及びPDデータを詳細に比較することは興味深いであろう。ヒトデータに基づくPKモデルの構築及びサルモデルとの比較により、AB79のTMDDモデルの精密化が可能となるであろう。患者における研究で作成されたデータは、B系列細胞のAB79媒介性枯渇が、RA患者とSLE患者との間、ならびに多発性骨髄腫患者及び健常な被験者のそれらとの間でどのように比較されるかについての洞察を提供する。CD38発現レベルに加えて、細胞枯渇効率に影響を及ぼし得る被験者または疾患関連因子の調査もまた重要であり、治療の個別化につながる可能性がある。追加として、AB79と、ダラツムマブ及び/または他のCD38抗体とのインビトロ及びインビボでの徹底的な直接比較により、抗CD38抗体の薬理学及びそれらの最適な用途についての貴重な情報が明らかとなろう。
【0332】
豊富な薬理学的データならびにPK及びPK-PDモデルは、カニクイザルにおいて曝露-効果関係の特性評価を可能にした。NK細胞、B細胞、及びT細胞のモデルベースの分析は、血液リンパ球サブセットの各々が異なる速度で抗体により枯渇し、血液コンパートメントを満たすのに異なる期間を必要とするという知見を支持し、定量した。これらのモデルは、臨床試験の準備において異なる投薬シナリオ下でPK及びPDデータをシミュレーションするために優れた手段であることが判明した。
【0333】
実施例2:AB79によるCD38+細胞枯渇
CD38は、AB79結合に基づいて、ヒト形質芽球、形質細胞、NK細胞、ならびに活性化T細胞及びB細胞上で発現されるcADPRヒドロラーゼであるが、成熟血小板または赤血球上には存在しない。関節リウマチ(RA)及び全身性エリテマトーデス(SLE)の患者において、形質細胞、ならびに活性化B細胞及びT細胞は、疾患の重要な原因物質であり得る。CD20を標的とし、CD20低/陰性である形質芽球を直接枯渇させない他のB細胞選択的療法とは異なり、CD38は、形質芽球及び形質細胞上で、高レベルで発現されることにより、これらの細胞をAB79の直接の標的とする。ヒト血液細胞及び細胞株を用いたインビトロ研究では、AB79のCD38への結合がPBMCにおけるサイトカイン活性化をもたらさないことが示され、AB79が下記で考察されるようにアゴニストではないことを実証する。むしろ、AB79は、ADCC及びCDCによるヒトB系列細胞株の細胞枯渇を媒介し、ほとんどの実例で、増加したCD38発現を有する細胞株は、細胞溶解により感受性があった(図14)。これは、枯渇の効率がCD38発現レベル及びAB79用量レベルと相関があった、健常なカニクイザルにおける知見と一致している。高レベルのCD38を発現するNK細胞は、CD38の発現がより少ないCD20+ B細胞及びCD3+ T細胞よりも大きい程度に枯渇した(図15)。インビボでは、AB79は、マウス養子移入モデルにおいて抗原に対するヒトB細胞リコール応答を強力に抑制した(図16)。まとめると、これらのデータは、自己免疫疾患におけるAB79のさらなる調査を支持する。
【0334】
ヒトPBMCを複数の条件下でAB79により処置し、炎症性サイトカイン放出を測定した。AB79は、ヒトタンパク質に対して91%のタンパク質同一性を共有するサルCD38と交差反応するため、カニクイザルを用いて、細胞型特異的枯渇とAB79用量との関係を示した。第2の動物モデルであるマウス養子移入ヒトPBMCを用いて、AB79がヒト抗体産生細胞を標的とし得るかどうかを決定した。
【0335】
AB79はCD38に結合し、ADCC及びCDCを媒介する
受容体数は、マウス抗ヒトCD38抗体(クローンHIT2)を用いてFIキット(DAKO、カタログ番号K0078)により決定し、染色された試料の平均蛍光強度(MFI)を規定数の抗体分子が結合した5つのビーズ集団のMFIから作成された検量線に変換することによって算出した。絶対受容体数は、抗CD38抗体のMFIからアイソタイプ対照(マウスIgG1)のMFIを差し引くことによって算出した。
【0336】
CDCは、細胞株を10,000細胞/ウェルでプレートし、AB79、対照IgG、または培地を添加することによって評価した。5点用量-応答曲線(0.001~10mg/ml)を典型的に実施した。ウサギ補体(2~15ul、番号CL 3441 CedarLane Laboratories)を、対照ウェルを除いて各ウェルに添加した。CytoTox-Glo試薬(Promega、G7571/G7573)を用いて、発光によって細胞傷害作用を検出した。試験された群:細胞単独、細胞+補体、細胞+IgG対照+補体、細胞+AB79+補体。CDC%等式:CDC%=100-((RLU(試験)/RLU(補体単独))×100)。
【0337】
ADCCは、5000個の標的細胞/ウェル(T、細胞株)を、50mlのAB79、対照IgG、Triton X-100(1%、Sigma Chemical)、または培地単独、及び50mlのヒトエフェクター(E)PBMCと共に、T:E細胞1:25~1:50の比でプレートすることによって試験した。9点抗体用量-応答曲線(0.000001~100nM)を典型的に実施した。実験的溶解=PBMC+細胞株+抗体。自然溶解=抗体を含まないPBMC+細胞株。最大溶解=細胞株+Triton X-100。細胞傷害作用は、CytoTox-Glo(商標)細胞傷害性発光アッセイ(Promega)を用いて評定した。
【0338】
AB79はアゴニスト活性を有しない
ヒトPBMCにおいてサイトカイン産生を誘導するAB79処置の能力を、陰性IgG1アイソタイプ対照及び陽性対照であるPHA、抗CD3(クローンOKT3)、または抗CD52(Campath)抗体と比較した。
【0339】
可溶性AB79は、24時間のインキュベーション後に、4人の異なる被験者から収集したPBMCにおいて、IgG1アイソタイプ対照と比較してIL-6レベル(平均値±SD)を増加させなかった。PHAは、全ての被験者においてサイトカインレベルを増加させ、この細胞がIL-6を産生する能力を有することを実証した。48時間刺激したPBMCで、ならびにIL-2、IL-4、IL-10、GM-CSF、IFNγ、及びTNFαを試験したときに、類似した結果が見られた(データは図示せず)(図18)。
【0340】
抗体が細胞に提示される方法は、抗体の成績、すなわち、リガンド結合及び細胞応答に寄与し得る(Stebbings et al.(2007)J.Immunol.179:3325-3331)。Stebbingsらは、抗体を高濃縮し、ウェル表面に接着させた場合、例えば、抗体を溶液中でウェルに添加し、液体を蒸発させた場合(乾式結合)、溶液中でウェルに結合させた(湿式結合)、またはPBMCに直接添加した(可溶性)抗体と比較して、アゴニスト抗体に対する最大細胞応答(サイトカイン放出)が生じることを示した(図18A)。AB79は、これらのアプローチのうちのいずれを用いてもサイトカイン産生を刺激しなかった(図18B)。
【0341】
AB79(100mg/ml)は、試験されたいずれの条件下でも24時間後にIL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、GM-CSF、IFNγ、またはTNFαを刺激しなかった。AB79は、IL-10も、GM-CSFも誘導しなかったが、両方とも抗CD3によって誘導された(図示せず、抗CD3を除く全ての値はLLOQを下回る)。IL-8は、PBMCによって構成的に産生されており、いずれの処置によっても変化しなかった(データは図示せず)(表6)。
【0342】
【表6】
【0343】
AB79はCD38+細胞を枯渇させる
AB79は、CD38に高い親和性で結合し、CDC及びADCCを媒介する。AB79はアゴニストではなく、ヒトPBMCからのサイトカイン放出を誘導しなかった。AB79は、ヒト及びカニクイザルの両方からのCD38に結合した。両方の種からのリンパ球は、AB79染色の蛍光強度中央値に基づいて、NK細胞>B細胞>T細胞と、類似した細胞特異的CD38発現パターンを有した。AB79での処置は、可逆的、細胞特異的、かつ用量依存的様態でサルリンパ球を枯渇させた。AB79は、マウス養子移入モデルにおいてヒト抗体リコール応答を効果的に遮断した。
【0344】
SC注射によるAB79で処置されたコホートにおいて、NK細胞(図24)及び形質芽球(図25)の用量依存性の低減が用量≧0.1mg kg-1で観察され、0.6mg kg-1の注射を受けた全ての被験者内では形質芽球が≧90%低減した。NK細胞の75%の低減が0.6mg kg-1で生じ(データは図示せず)、このうちCmaxは23.0ng mL-1であった(表7)。形質芽球及びNK細胞のレベルは、注射後8時間以内でベースラインから低減され、48時間のtmaxを示した。ベースラインレベルまでの回復の所要時間はばらついており、0.1、0.3、及び0.6mg kg-1用量についてのベースラインまでの回復(すなわち、ベースラインレベルの-20%以内)は、それぞれ平均4、78、及び50日間を必要とした(データは図示せず)。総リンパ球、B細胞及びT細胞、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、単球(図25)ならびに顆粒球、赤血球及び血小板(データは図示せず)については、最小限の低減が観察されたか、または低減は何ら観察されなかった。
【0345】
【表7】
【0346】
AB79及びダラツムマブ赤血球結合の要約
AB79及びダラツムマブのRBC結合プロファイルを比較した。図26に図示されるように、試験された4人のドナーのうち3人において医薬品間でRBC結合(すなわち、MFI)の規模に差異があるように思われる。しかしながら、この差異は、抗体の各々の上でのビオチンレベルの差に起因する可能性があり、このうちダラツムマブがAB79よりも1.6倍~2.0倍高いビオチンを有した。抗体の蛍光標識の潜在的な差異を制御する代替分析は、各抗体の濃度対結合プロファイルを比較するためのものであり、有用な測定基準は、最大結合が生じる(すなわち、抗原の最大の特異的結合(Bmax))濃度で
ある。Bmaxは、4人のドナーのうち3人で、両方の抗体について同一である(例えば、ドナー1では1μg/mL)。まとめて、これらのデータは、アッセイの現在の解像限界(これは10倍である)内で、両方の抗体が類似した親和性で結合することを示す。結論として、AB79及びダラツムマブの両方が、このアッセイにおいて互いの10倍以内である親和性でRBCに結合した。これらの抗体のRBCに対する結合親和性の10倍以上の差異は、このアッセイ系内において存在しなかった。
【0347】
実施例3:再発性/難治性(r/r)多発性骨髄腫(MM)のヒト患者において単剤として皮下投与されたAB79の安全性、忍容性、有効性、薬物動態、及び免疫原性を調査する第1/2a相研究
この研究の目的は、再発性及び/または難治性多発性骨髄腫(RRMM)の参加者において、研究の第1相における安全性、忍容性、薬物動態(PK)、免疫原性、用量制限毒性(DLT)、及び最大耐量(MTD)/第2相の推奨用量(RP2D)を評価し、AB79単剤療法の臨床活性の予備評価を提供することである。この研究は、少なくともプロテアソーム阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMid)、アルキル化剤、及びステロイドで以前に治療されたことのあるRRMMの患者を含む。患者は、難治性疾患を有するか、または少なくとも1つのPI及び少なくとも1つのIMiDに不耐性である必要があり、かつ、3つ以上の前治療を受けたことがあるか、またはそれらの治療のうちの1つがPI及びIMiDの組み合わせを含んでいた場合は少なくとも2つの前治療を受けたことがあるかのいずれかである必要がある。第1b相用量漸増部分では、抗CD38剤への以前の曝露が許容されるが、必須ではない。研究の第2a相拡大部分では、患者はまた、治療中いずれかの時点で少なくとも1つの抗CD38モノクローナル療法に不応性の疾患を有していなければならない。研究は、およそ42人の参加者を含む、米国で実施された多施設試験である。
【0348】
第1相
第1相の研究母集団は、18歳以上のおよそ24人の成人参加者からなる。患者特性が表8に示される。
【表8】
【0349】
第1相の参加者は、下記の6つの用量漸増AB79治療群のうちの1つに割り付けられる:コホート1:45mg、コホート2:135mg、コホート3:300mg、コホート4:600mg、コホート5:1200mg、及びコホート6:1800mg(表9)。AB79は、皮下注射により、週1回8週間、次いで2週間に1回16週間、次いでそれ以降、疾患進行(PD)、許容できない毒性、または他の理由に起因する治療中止まで、28日間の治療サイクルで4週間に1回送達される。参加者は、各投薬日に、AB79の投与の1~3時間前に以下のような前投薬を受けてもよい:例えば、デキサメタゾン(20mg)、アセトアミノフェン(650~1000mg)、ジフェンヒドラミン(25~50mg)、及びモンテルカスト(10mg)。
【0350】
【表9】
【0351】
この研究の全参加期間は、36ヶ月間(3年間)である。第1相では、PD以外の任意の他の理由で治療を停止する参加者は、治験薬の最終投薬から最大12ヶ月間、またはPD、死亡、追跡不能、同意書の撤回、もしくは研究の終了まで、4週間毎に施設で無増悪生存期間(PFS)追跡調査を引き続き受ける。参加者は、追跡調査評価のために、治験薬の最終投薬から30日間、または後続の代替抗がん療法の開始までのいずれか早い方まで追跡される。
【0352】
第1相の主要評価項目測定基準
最大1年間の主要評価項目測定基準は、以下を含む:
・1つまたは複数の治療下で発現した有害事象(TEAE)が報告される参加者の数
・用量制限毒性(DLT)を有する参加者の数:DLTは、以下の事象のうちのいずれかとして定義される:外的原因に明らかに起因する事象を除く、グレード4の臨床検査値異常;グレード3の悪心/嘔吐、72時間未満持続する疲労、7日以内に1以下(≦)のグレードまたはベースラインまで解消するアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇、対症療法に応答する注射反応(IR)を除く、3以上(≧)のグレードの非血液学的TEAE;グレード≧3の溶血、グレード3の臨床的に意味のある出血を伴う血小板数低下または数の増加を除く、米国国立がん研究所による有害事象共通用語規準(NCI CTCAE)グレード≧4の血液学的TEAE;及びサイクル2の開始前に次の予定される注射の2週間を超える(>)遅延を引き起こす治療関連毒性からの不完全な回復が、DLTと見なされる。
・グレード3以上のTEAEを有する参加者の数:AEグレードは、NCI CTCAE、第4.03版に従って評価される。軽度としてスケーリングされるグレード1;中等度としてスケーリングされるグレード2;重度または医学的に重要であるが、ただちに生命を脅かすものではないとしてスケーリングされるグレード3;生命を脅かす帰結としてスケーリングされるグレード4;及びAEに関連する死亡としてスケーリングされるグレード5。
・重篤なTEAEを有する参加者の数
・治療中止につながるTEAEを有する参加者の数
・用量変更につながるTEAEを有する参加者の数
【0353】
副次評価項目測定基準:
副次評価項目測定基準は、以下を含む:
・Cmax:AB79の最大観察血清中濃度[時間枠:サイクル1及び2:1日目投薬前及び投薬後の複数の時点(最大168時間)]。
・Tmax:AB79の最大観察血清中濃度(Cmax)到達時間[時間枠:サイクル1及び2:1日目投薬前及び投薬後の複数の時点(最大168時間)]。
・AUC:AB79の時間0から最後の定量可能な濃度の時間までの血清中濃度時間曲線下面積[時間枠:サイクル1及び2:1日目投薬前及び投薬後の複数の時点(最大168時間)]。
・第1相:ORR[時間枠:最大1年間]:ORRは、研究中に50%以上の腫瘍縮小のPRを達成した参加者のパーセンテージとして定義される。PRは、血清中Mタンパクの≧50%の低減、及び24時間尿中Mタンパクの≧90%または<200mg/24時間までの低減として定義される。
・最小応答(MR)を有する参加者のパーセンテージ[時間枠:最大1年間]:MRは、血清中Mタンパクの≧25%ただし≦49%の低減、及び24時間尿中Mタンパクの50%~89%の低減として定義される。
・抗薬物抗体(ADA)陽性を有する参加者のパーセンテージ[時間枠:最大1年間]。
【0354】
結果:
2019年3月5日現在、19人の患者が4つの投薬コホート(45mg、135mg、300mg、及び600mg)にわたって登録され、少なくとも1サイクルのAB79を受けた。2019年3月5日現在、9人の患者が治療に関して依然として監視されており、9人の患者が疾患進行によりAB79を中止し、1人の患者が同意書を撤回した。
【0355】
2019年3月5日現在、4つ全てのコホート(45mg、135mg、300mg、及び600mg)にわたるDLT評価可能患者において用量制限毒性(DLT)は何ら報
告されていない。いかなる注射部位反応または全身性輸注反応もない。薬物関連SAE、研究中の死亡、または研究中止につながるAEは何ら報告されなかった(表10を参照されたい)。さらに、1件のグレード3の一過性治療関連好中球数減少事象及び1件の一過性貧血を除いて、いかなる注目すべき臨床検査所見もない。1人の患者における疾患進行は、グレード3の血小板数減少、貧血、及びクレアチニン増加に関連していた。この研究は継続中であり、患者は引き続き追跡されている。
【0356】
【表10】
【0357】
2019年3月5日現在、4つ全てのコホートにわたる因果関係を問わない基本語による最も一般的な(>2人の患者における)TEAEは、貧血(n=7人の患者)、不眠症(n=各々5人の患者)、上気道感染症、めまい、頭痛、及び高血圧(n=各々4人の患者)、ならびに下痢、疲労、食欲減退、及び筋痙縮(n=各々3人の患者)である。全てのAEは、グレード3であった貧血(n=2人の患者)、下痢、減少血小板数、好中球数減少、クレアチニン増加、頭痛、高血圧、及び筋骨格系疼痛(n=各々1人の患者)を除いて、グレード1または2であった。1件の好中球数低下の事象及び1件の貧血の事象のみが治験薬に関連するとして報告された。IRR、サイトカイン放出症候群、または注射部位反応の症例は何ら観察されていない。したがって、本発明は、ダラツムマブ、イサツキシマブ、またはMOR202等の以前の抗CD38抗体と比較して、臨床用途での安全
な抗CD38抗体を提供する。
【0358】
図20は、皮下投与されたAb79の曝露量が、用量を経時的に増加させることで増加したことを示し、これは標的介在性薬物クリアランスと一致する。
【0359】
皮下投与されたAb79は、血中の形質芽球(図21)、骨髄穿刺液中の形質芽球(図22)、及び骨髄穿刺液中の形質細胞(図23)のレベルを用量依存的様態で低減した。CD38は、毎週≧45mgの用量で末梢血中の標的細胞上で飽和し、≧300mgの用量で骨髄中の標的細胞上で飽和した。骨髄及び末梢血中の標的細胞のレベルは、≦300mgの用量で、用量依存的様態で低減された。
【0360】
進行したRRMMの患者において、AB79は、一部の患者における疾患負荷の少なくとも50%の低減及び他の患者における長期の疾患安定化から明らかなように、抗腫瘍活性の初期兆候を示した。この薬物の臨床有益性を特性評価するためには追加のデータが必要とされるものの、新たに現れているデータは、AB79の継続的な開発を支持する。
【0361】
2つのCD38 mAbが現在、臨床開発段階にあり、このうち静脈内ダラツムマブは、MM(再発性及び新たな診断)の患者に対して承認され、静脈内イサツキシマブは、調査中である。ダラツムマブ単剤療法または標準抗骨髄腫レジメンと組み合わせたダラツムマブによる最も頻繁に見られる副作用(≧20%)は、輸注関連反応(IRR)、好中球減少症、血小板減少症、疲労、悪心、下痢、便秘、嘔吐、筋痙縮、関節痛、腰痛、発熱、悪寒、めまい、不眠症、咳、呼吸困難、末梢浮腫、末梢感覚神経障害、及び上気道感染症である(Darzalex USPI)。ダラツムマブは、アナフィラキシー反応を含めた重度の及び/または重篤な輸注反応を引き起こす可能性があり、全ての患者のおよそ半分で報告されている(Darzalex USPI)。重要な点として血液適合性試験を複雑にし得る、ある特定の臨床検査アッセイへのダラツムマブの干渉にも注意を払わなければならない(Darzalex USPI)。ヒト化抗CD38モノクローナル抗体であるイサツキシマブもまた、多発性骨髄腫において調査されている。イサツキシマブに関して報告されるAE(≧24%)には、輸注反応、悪心、疲労、呼吸困難、及び咳が含まれ、これらは典型的にはグレード≦2であった(Richter et al.(2016)JCO 34(15):8005、Dimopoulos et al.(2018)Blood 132(suppl.1):ASH abstract 155/oral presentation))。したがって、入手可能な証拠に基づいて、臨床成績を改善し続けるために、選択性がより高く、故により効力が高く、結果として毒性がより少なく、患者の利便性が改善された、新世代のCD-38標的療法を含む、新たな薬剤に対する必要性が残っている。
【0362】
第2相
第2a相の研究母集団は、およそ18人の参加者からなる。第2a相の用量及び前投薬は、第1相の先行するコホートからの入手可能な安全性、有効性、PK、及び薬力学的データの再検討に基づく。
【0363】
【表11】
【0364】
第2a相の主要評価項目測定基準
最大1年間の主要評価項目測定基準は、以下を含む:
・全奏効率(ORR):ORRは、研究中に50パーセント(%)以上の腫瘍縮小の部分奏効(PR)を達成した参加者のパーセンテージとして定義される。PRは、血清中Mタンパクの≧50%の低減、及び24時間尿中Mタンパクの≧90%または24時間当たり200ミリグラム(mg/)未満(<)までの低減として定義される。
【0365】
第2a相の副次評価項目測定基準
最大1年間の副次評価項目測定基準は、以下を含む:
・第2a相:DLTを有する参加者の数
・第2a相:1つまたは複数のTEAEが報告される参加者の数
・第2a相:用量変更につながるTEAEを有する参加者の数
・第2a相:治療中止につながるTEAEを有する参加者の数
・第2a相:臨床的に重要な臨床検査値を有する参加者の数
・第2a相:臨床的に重要なバイタルサイン測定値を有する参加者の数
・第2a相:奏効期間(DOR):DORは、最初の応答報告の日付から最初に報告されたPDの日付までの時間である。PDは、以下のうちのいずれかにおける最も低い応答値からの≧25%の増加である:血清中Mタンパク(増加は≧0.5g/dLでなければならない。開始時M成分が≧5g/dLである場合、再発を定義するには≧1g/dLの血清中M成分の増加で十分である)、及び/または尿中Mタンパク(増加は≧200mg/24時間でなければならない)、及び/または測定可能な血清中及び/または尿中Mタンパクレベルを有しない参加者においてのみ、異常な(involved)/異常でない(uninvolved)遊離軽鎖(FLC)レベル間の差異(増加は>10mg/dLでなければならない)、ならびに測定可能な血清及び/または尿中Mタンパクレベルを有しない、かつFLCレベルによって測定可能な疾患を有しない参加者においてのみ、骨髄形質細胞パーセンテージ(パーセンテージは≧10%でなければならない)、または新たな骨の病変もしくは軟組織形質細胞腫の確定的発症または骨の病変もしくは軟組織形質細胞腫のサイズの増加、及び形質細胞増殖性障害のみに起因し得る高カルシウム血症の発症。
・第2a相:無増悪生存期間(PFS):PFSは、最初の投薬の日付からPDの最も早い日付までの時間である。PDは、以下のうちのいずれかにおける最も低い応答値からの≧25%の増加である:血清中Mタンパク(増加は≧0.5g/dLでなければならない。開始時M成分が≧5g/dLである場合、再発を定義するには≧1g/dLの血清中M成分の増加で十分である)、及び/または尿中Mタンパク(増加は≧200mg/24時間でなければならない)、及び/または測定可能な血清中及び/または尿中Mタンパク
レベルを有しない参加者においてのみ、異常な/異常でないFLCレベル間の差異(増加は>10mg/dLでなければならない)、ならびに測定可能な血清及び/または尿中Mタンパクレベルを有しない、かつFLCレベルによって測定可能な疾患を有しない参加者においてのみ、骨髄形質細胞パーセンテージ(パーセンテージは≧10%でなければならない)、または新たな骨の病変もしくは軟組織形質細胞腫の確定的発症または骨の病変もしくは軟組織形質細胞腫のサイズの増加、及び形質細胞増殖性障害のみに起因し得る高カルシウム血症の発症。
・第2a相:全生存期間(OS):OSは、最初の投薬の日付から任意の原因に起因する死亡の日付までの時間として定義される。
・第2a相:奏効までの時間(TTR):TTRは、最初の投薬の日付から最初の応答報告(部分奏効(PR)またはそれよりも良好)の日付までの時間として定義される。PRは、血清中Mタンパクの≧50%の低減、及び/または24時間尿中Mタンパクの≧90%または<200mg/24時間までの低減として定義される。
【0366】
第1相及び第2a相研究の組み入れ基準:
被験者は、AB79の最初の投薬前に指定される最小間隔内で以下の治療/手順のうちのいずれかの最終投薬を受けた:骨髄腫特異的療法(30日間のウォッシュアウト期間)、抗体療法(抗CD38を含む)(120日間のウォッシュアウト期間)、コルチコステロイド療法(30日間のウォッシュアウト期間)、自家移植(90日間のウォッシュアウト期間)、放射線療法(30日間のウォッシュアウト期間)、大手術(30日間のウォッシュアウト期間)。
【0367】
MMの参加者の場合、測定可能な疾患は以下のうちの1つとして定義される:(a)血清中Mタンパク≧500mg/dL(≧5g/L)、(b)尿中Mタンパク≧200mg/24時間、(c)血清中タンパク電気泳動(SPEP)または尿中タンパク質電気泳動(UPEP)において測定可能なMタンパクを有しない参加者の場合、血清中FLC比が異常(abnormal)であることを前提として、異常な(involved)FLCレベル≧10mg/dL(≧100mg/L)を有する血清中FLCアッセイ結果。
【0368】
前治療は、以下の基準の全てを満たす必要がある:(a)少なくともプロテアソーム阻害剤(PI)、免疫調節薬(IMid)、アルキル化剤、及びステロイドで以前に治療された参加者、(b)少なくとも1つのPI及び少なくとも1つのIMidに不応性または不耐性の参加者;患者は、≧3つの前治療ラインを受けたことがあるか、またはそれらのラインのうちの1つがPI及びIMidの組み合わせを含んでいた場合は少なくとも2つの前治療ラインを受けたことがあるかのいずれかである、(c)参加者は、単剤としてまたは組み合わせで抗CD38薬剤に以前に曝露されていることが可能であるが、これは必須ではない。
【0369】
研究の第2a相部分では、MMの参加者はまた、治療中いずれかの時点で少なくとも1つの抗CD38モノクローナル抗体療法に不応性でなければならない。「不応性」は、Mタンパクの少なくとも25%の増加、または治療中のもしくは治療停止後60日以内のPDとして定義される。「治療ライン」は、1サイクルまたは複数サイクルの計画された治療プログラムとして定義される。これは、計画された1サイクルまたは複数サイクルの単剤療法または併用療法、ならびに計画された様態で投与される一連の治療からなってもよい。PD、再発、または毒性の結果として、計画された治療コースが他の治療剤(単独でまたは組み合わせて)を含むように変更される場合、新たな治療ラインが開始する。治療外の(off therapy)計画される観察期間が疾患に対する追加の治療の必要性によって中断される場合にも、新たな治療ラインが開始する。
【0370】
研究の除外基準:
1.米国国立がん研究所による有害事象共通用語規準(NCI CTCAE)グレード≧3の感覚神経障害または運動神経障害。
2.同種幹細胞移植を受けたことがある。
3.抗CD38抗体療法を受けたことがあり、AB79を受ける前の120日間のウォッシュアウト期間を満たしていない。
4.以前の骨髄腫治療または手順(化学療法、免疫療法、放射線療法)に対する副作用からNCI CTCAEグレード≦1またはベースラインまで回復していない。
5.MMの中央神経系(CNS)病変の臨床徴候。
6.活動性慢性B型肝炎ウイルス(HBV)もしくはC型肝炎ウイルス(HCV)感染症、活動性HIV、またはサイトメガロウイルス(CMV)感染症。
7.POEMS(多発神経障害、臓器肥大、内分泌障害、単クローン性ガンマグロブリン血症、及び皮膚の変化)症候群、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症、くすぶり型骨髄腫、孤立性形質細胞腫、アミロイドーシス、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、またはIgM骨髄腫。
8.スクリーニングでクームス検査陽性を有する。
【0371】
参照による援用
本願全体を通して引用され得る、全ての引用された参考資料(参考文献、特許、特許出願、及びウェブサイト)の内容は、あたかも各々個々の参考資料が、参照によりその全体が任意の目的で援用されるよう具体的かつ個々に示されているのと同じ程度に、参照によりそれらの全体が任意の目的で本明細書に明示的に援用され、それらの中に引用される参考資料も同様である。
【0372】
均等物
本開示は、その趣旨または本質的な特性から逸脱することなく他の具体的な形態で具体化されてもよい。したがって、上述の実施形態は、あらゆる点で本開示を限定するのではなく例示するものと見なされるべきである。故に、本開示の範囲は上述の説明ではなく添付の特許請求の範囲によって示され、したがって、特許請求の範囲の意味及びその均等範囲内に属する全ての変化が本開示に包含されることを意図している。当業者に明白である本発明を実施するための変更は、添付の特許請求の範囲内にあることを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20A
図20B
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【配列表】
2024045121000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者における疾患の治療方法であって、前記方法が、前記被験者に、十分な単離されたヒト抗CD38抗体を皮下投与することを含み、前記抗CD38抗体が、配列番号3のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号5のアミノ酸配列を有するCDR3を含む可変重(VH)鎖領域と、配列番号6のアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号7のアミノ酸配列を有するCDR2、及び配列番号8のアミノ酸配列を有するCDR3を含む可変軽(VL)鎖領域とを含み、前記疾患が、CD38への結合が適応となるものであり、前記抗体が、45~1,800ミリグラムの投薬量で投与される、方法。
【外国語明細書】