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特開2024-45243機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び平版印刷方法
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  • 特開-機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び平版印刷方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045243
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び平版印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/14 20060101AFI20240326BHJP
   B41C 1/10 20060101ALI20240326BHJP
   B41M 1/06 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B41N1/14
B41C1/10
B41M1/06
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005084
(22)【出願日】2024-01-17
(62)【分割の表示】P 2022526541の分割
【原出願日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2020095070
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021012042
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021061397
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 康太郎
(57)【要約】      (修正有)
【課題】オゾン暴露による変色を抑制する機上現像型平版印刷版原版を提供すること。
【解決手段】支持体と、画像記録層と、最外層と、をこの順で有し、上記最外層の表面における空中水滴法による着滴から2秒後の水滴の接触角が、36°より大きい機上現像型平版印刷版原版、及びその応用を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、画像記録層と、最外層と、をこの順で有し、
前記最外層の表面における空中水滴法による着滴から2秒後の水滴の接触角が、36°より大きい
機上現像型平版印刷版原版。
【請求項2】
前記最外層の表面における空中油滴法による着滴から2秒後の油滴の接触角が、20°以下である請求項1に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項3】
前記最外層が、疎水性ポリマー及び親水性ポリマーを含む請求項1又は請求項2に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項4】
前記最外層の表面における前記疎水性ポリマーの占有面積率が、10%以上である請求項3に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項5】
前記疎水性ポリマーの形態が、粒子である請求項3又は請求項4に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項6】
前記疎水性ポリマーのガラス転移温度が、60℃以上である請求項3~請求項5のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項7】
前記疎水性ポリマーの含有量が、質量基準で、前記親水性ポリマーの含有量の1.7倍以上である請求項3~請求項6のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項8】
前記最外層が、変色性化合物を含む請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項9】
110mJ/cmのエネルギー密度にて波長830nmの赤外線による露光を行った場合の、露光前後の明度変化ΔLが、2.0以上である請求項8に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項10】
前記変色性化合物が、赤外線露光に起因して発色する化合物を含む請求項8又は請求項9に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項11】
前記変色性化合物が、赤外線露光に起因して分解する分解性化合物を含む請求項8~請求項10のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項12】
前記変色性化合物が、シアニン色素である請求項8~請求項11のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項13】
前記変色性化合物が、下記式1-1で表される化合物である請求項8~請求項12のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【化1】


式1-1中、Rは、下記式2~式4のいずれか1つで表される基を表し、R11~R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-R、-OR、-SR、又は-NRを表し、R~Rは、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、A、A、及び複数のR11~R18は、連結して単環又は多環を形成してもよく、A、及びAは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表し、n11、及びn12は、それぞれ独立に、0~5の整数を表し、n11及びn12の合計は、2以上であり、n13、及びn14は、それぞれ独立に、0、又は1を表し、Lは、酸素原子、硫黄原子、又は-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Zaは、電荷を中和する対イオンを表す。
【化2】


式2~式4中、R20、R30、R41、及びR42は、それぞれ独立に、アルキル基、又はアリール基を表し、Zbは、電荷を中和する対イオンを表し、波線は、Lとの結合部位を表す。
【請求項14】
前記変色性化合物が、下記式1-2で表される化合物である請求項8~請求項13のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【化3】


式1-2中、Rは、下記式2~式4のいずれか1つで表される基を表し、R19~R22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-R、-OR、-CN、-SR、又は-NRを表し、R23、及びR24は、それぞれ独立に、-Rを表し、R~Rは、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R19とR20、R21とR22、又はR23とR24は、連結して単環又は多環を形成してもよく、Lは、酸素原子、硫黄原子、又は-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Rd1~Rd4、W、及びWは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基を表し、Zaは、電荷を中和する対イオンを表す。
【化4】


式2~式4中、R20、R30、R41、及びR42は、それぞれ独立に、アルキル基、又はアリール基を表し、Zbは、電荷を中和する対イオンを表し、波線は、Lとの結合部位を表す。
【請求項15】
前記変色性化合物が、下記式1-3~式1-7のいずれか1つで表される化合物である請求項8~請求項14のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【化5】


式1-3~式1-7中、Rは、下記式2~式4のいずれか1つで表される基を表し、R19~R22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-R、-OR、-CN、-SR、又は-NRを表し、R23、及びR24は、それぞれ独立に、-Rを表し、R25、及びR26は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は-Rを表し、R~Rは、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R19とR20、R21とR22、R23とR24、又はR25とR26は、連結して単環又は多環を形成してもよく、Lは、酸素原子、硫黄原子、又は-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Rd1~Rd4、W、及びWは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基を表し、Zaは、電荷を中和する対イオンを表す。
【化6】


式2~式4中、R20、R30、R41、及びR42は、それぞれ独立に、アルキル基、又はアリール基を表し、Zbは、電荷を中和する対イオンを表し、波線は、Lとの結合部位を表す。
【請求項16】
前記W、及び前記Wが、それぞれ独立に、置換基を有するアルキル基であり、かつ、前記置換基が、-(OCHCH)-、スルホ基、スルホ基の塩、カルボキシ基、又はカルボキシ基の塩を少なくとも有する基である請求項14又は請求項15に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項17】
前記画像記録層が、電子受容型重合開始剤及び電子供与型重合開始剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項18】
前記電子受容型重合開始剤が、下記式(II)で表される化合物を含む請求項17に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【化7】


式(II)中、Xは、ハロゲン原子を表し、Rは、アリール基を表す。
【請求項19】
前記画像記録層が、電子供与型重合開始剤と電子受容型重合開始剤とがイオン対を形成してなる化合物を含む請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項20】
前記画像記録層が赤外線吸収剤を含み、前記赤外線吸収剤のHOMOのエネルギー準位-前記電子供与型重合開始剤のHOMOのエネルギー準位の値が0.70ev以下である請求項17~請求項19のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項21】
前記画像記録層が赤外線吸収剤を含み、前記電子受容型重合開始剤のLUMOのエネルギー準位-前記赤外線吸収剤のLUMOのエネルギー準位の値が1.00eV以下である、請求項17~請求項20のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項22】
前記画像記録層が、7個以上の重合性基を有する重合性化合物を含む請求項1~請求項21のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項23】
前記画像記録層が、10個以上の重合性基を有する重合性化合物を含む請求項1~請求項22のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項24】
前記支持体が、アルミニウム板と、前記アルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜と、を有し、
前記陽極酸化皮膜が、前記アルミニウム板よりも前記画像記録層側に位置し、
前記陽極酸化皮膜が、前記画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有し、
前記陽極酸化皮膜の表面における前記マイクロポアの平均径が、10nmを超え100nm以下である請求項1~請求項23のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項25】
前記マイクロポアが、前記陽極酸化皮膜の表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる大径孔部と、前記大径孔部の底部と連通し、前記大径孔部との連通位置から深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部と、を有し、
前記陽極酸化皮膜の表面における前記大径孔部の平均径が、15nm~100nmであり、
前記連通位置における前記小径孔部の平均径が、13nm以下である請求項24に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【請求項26】
請求項1~請求項25のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷機上で印刷インキ及び湿し水からなる群より選択される少なくとも1つを供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、
を含む平版印刷版の作製方法。
【請求項27】
請求項1~請求項25のいずれか1項に記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、
印刷機上で印刷インキ及び湿し水からなる群より選択される少なくとも1つを供給して非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、
得られた前記平版印刷版により印刷する工程と、
を含む平版印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、機上現像型平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び平版印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部と、を有する。平版印刷は、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、被印刷体(例えば、紙)にインキを転写して印刷する方法である。平版印刷では、例えば、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部として、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として利用する。平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像記録層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常、平版印刷版原版をリスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像記録層の画像部となる部分を残存させ、画像部となる部分以外の不要な画像記録層をアルカリ性現像液又は有機溶剤によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行うことで、平版印刷版を得ている。
【0003】
地球環境への関心の高まりから、現像処理のような湿式処理に伴う廃液に関する環境課題が着目されている。上記の環境課題に対して、現像又は製版の簡易化及び無処理化が指向されている。簡易な作製方法の一つとしては、「機上現像」と呼ばれる方法が行われている。機上現像は、例えば、露光された平版印刷版原版を、従来の現像液による現像を経ずに印刷機に装着し、画像記録層の不要部分の除去を印刷工程の初期段階で行う方法として知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/243036号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
平版印刷版原版を用いる印刷方法では、例えば、露光により発生するオゾン及び大気に含まれているオゾンに暴露されることによる、平版印刷版原版の変色を抑制することが求められている。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものである。
本開示の一実施形態は、オゾン暴露による変色を抑制する機上現像型平版印刷版原版を提供することを目的とする。
本開示の他の一実施形態は、オゾン暴露による変色を抑制する機上現像型平版印刷版原版を用いる平版印刷版の作製方法を提供することを目的とする。
本開示の他の一実施形態は、オゾン暴露による変色を抑制する機上現像型平版印刷版原版を用いる平版印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の態様を含む。
<1> 支持体と、画像記録層と、最外層と、をこの順で有し、上記最外層の表面における空中水滴法による着滴から2秒後の水滴の接触角が、36°より大きい機上現像型平版印刷版原版。
<2> 上記最外層の表面における空中油滴法による着滴から2秒後の油滴の接触角が、20°以下である<1>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<3> 上記最外層が、疎水性ポリマー及び親水性ポリマーを含む<1>又は<2>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<4> 上記最外層の表面における上記疎水性ポリマーの占有面積率が、10%以上である<3>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<5> 上記疎水性ポリマーの形態が、粒子である<3>又は<4>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<6> 上記疎水性ポリマーのガラス転移温度が、60℃以上である<3>~<5>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<7> 上記疎水性ポリマーの含有量が、質量基準で、上記親水性ポリマーの含有量の1.7倍以上である<3>~<6>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<8> 上記最外層が、変色性化合物を含む<1>~<7>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<9> 110mJ/cmのエネルギー密度にて波長830nmの赤外線による露光を行った場合の、露光前後の明度変化ΔLが、2.0以上である<8>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<10> 上記変色性化合物が、赤外線露光に起因して発色する化合物を含む<8>又は<9>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<11> 上記変色性化合物が、赤外線露光に起因して分解する分解性化合物を含む<8>~<10>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<12> 上記変色性化合物が、シアニン色素である<8>~<11>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<13> 上記変色性化合物が、下記式1-1で表される化合物である<8>~<12>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
【0008】
【化1】
【0009】
式1-1中、Rは、下記式2~式4のいずれか1つで表される基を表し、R11~R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-R、-OR、-SR、又は-NRを表し、R~Rは、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、A、A、及び複数のR11~R18は、連結して単環又は多環を形成してもよく、A、及びAは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表し、n11、及びn12は、それぞれ独立に、0~5の整数を表し、n11及びn12の合計は、2以上であり、n13、及びn14は、それぞれ独立に、0、又は1を表し、Lは、酸素原子、硫黄原子、又は-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Zaは、電荷を中和する対イオンを表す。
【0010】
【化2】
【0011】
式2~式4中、R20、R30、R41、及びR42は、それぞれ独立に、アルキル基、又はアリール基を表し、Zbは、電荷を中和する対イオンを表し、波線は、Lとの結合部位を表す。
<14> 上記変色性化合物が、下記式1-2で表される化合物である<8>~<13>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
【0012】
【化3】
【0013】
式1-2中、Rは、下記式2~式4のいずれか1つで表される基を表し、R19~R22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-R、-OR、-CN、-SR、又は-NRを表し、R23、及びR24は、それぞれ独立に、-Rを表し、R~Rは、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R19とR20、R21とR22、又はR23とR24は、連結して単環又は多環を形成してもよく、Lは、酸素原子、硫黄原子、又は-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Rd1~Rd4、W、及びWは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基を表し、Zaは、電荷を中和する対イオンを表す。
【0014】
【化4】
【0015】
式2~式4中、R20、R30、R41、及びR42は、それぞれ独立に、アルキル基、又はアリール基を表し、Zbは、電荷を中和する対イオンを表し、波線は、Lとの結合部位を表す。
<15> 上記変色性化合物が、下記式1-3~式1-7のいずれか1つで表される化合物である<8>~<14>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
【0016】
【化5】
【0017】
式1-3~式1-7中、Rは、下記式2~式4のいずれか1つで表される基を表し、R19~R22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-R、-OR、-CN、-SR、又は-NRを表し、R23、及びR24は、それぞれ独立に、-Rを表し、R25、及びR26は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は-Rを表し、R~Rは、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R19とR20、R21とR22、R23とR24、又はR25とR26は、連結して単環又は多環を形成してもよく、Lは、酸素原子、硫黄原子、又は-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Rd1~Rd4、W、及びWは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基を表し、Zaは、電荷を中和する対イオンを表す。
【0018】
【化6】
【0019】
式2~式4中、R20、R30、R41、及びR42は、それぞれ独立に、アルキル基、又はアリール基を表し、Zbは、電荷を中和する対イオンを表し、波線は、Lとの結合部位を表す。
<16> 上記W、及び上記Wが、それぞれ独立に、置換基を有するアルキル基であり、かつ、上記置換基が、-(OCHCH)-、スルホ基、スルホ基の塩、カルボキシ基、又はカルボキシ基の塩を少なくとも有する基である<14>又は<15>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<17> 上記画像記録層が、電子受容型重合開始剤及び電子供与型重合開始剤からなる群より選択される少なくとも1種を含む<1>~<16>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<18> 上記電子受容型重合開始剤が、下記式(II)で表される化合物を含む<17>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
【0020】
【化7】
【0021】
式(II)中、Xは、ハロゲン原子を表し、Rは、アリール基を表す。
<19> 上記画像記録層が、電子供与型重合開始剤と電子受容型重合開始剤とがイオン対を形成してなる化合物を含む<1>~<16>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<20> 上記画像記録層が赤外線吸収剤を含み、上記赤外線吸収剤のHOMOのエネルギー準位-上記電子供与型重合開始剤のHOMOのエネルギー準位の値が0.70ev以下である<17>~<19>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<21> 上記画像記録層が赤外線吸収剤を含み、上記電子受容型重合開始剤のLUMOのエネルギー準位-上記赤外線吸収剤のLUMOのエネルギー準位の値が1.00eV以下である、<17>~<20>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<22> 上記画像記録層が、7個以上の重合性基を有する重合性化合物を含む<1>~<21>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<23> 上記画像記録層が、10個以上の重合性基を有する重合性化合物を含む<1>~<22>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<24> 上記支持体が、アルミニウム板と、上記アルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜と、を有し、上記陽極酸化皮膜が、上記アルミニウム板よりも上記画像記録層側に位置し、上記陽極酸化皮膜が、上記画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有し、上記陽極酸化皮膜の表面における上記マイクロポアの平均径が、10nmを超え100nm以下である<1>~<23>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版。
<25> 上記マイクロポアが、上記陽極酸化皮膜の表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる大径孔部と、上記大径孔部の底部と連通し、上記大径孔部との連通位置から深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部と、を有し、上記陽極酸化皮膜の表面における上記大径孔部の平均径が、15nm~100nmであり、上記連通位置における上記小径孔部の平均径が、13nm以下である<24>に記載の機上現像型平版印刷版原版。
<26> <1>~<25>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、印刷機上で印刷インキ及び湿し水からなる群より選択される少なくとも1つを供給して非画像部の画像記録層を除去する工程と、を含む平版印刷版の作製方法。
<27> <1>~<25>のいずれか1つに記載の機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程と、印刷機上で印刷インキ及び湿し水からなる群より選択される少なくとも1つを供給して非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程と、得られた上記平版印刷版により印刷する工程と、を含む平版印刷方法。
【発明の効果】
【0022】
本開示の一実施形態によれば、オゾン暴露による変色を抑制する機上現像型平版印刷版原版が提供される。
本開示の他の一実施形態によれば、オゾン暴露による変色を抑制する機上現像型平版印刷版原版を用いる平版印刷版の作製方法が提供される。
本開示の他の一実施形態によれば、オゾン暴露による変色を抑制する機上現像型平版印刷版原版を用いる平版印刷方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、一実施形態に係る支持体の模式的断面図である。
図2図2は、他の一実施形態に係る支持体の模式的断面図である。
図3図3は、陽極酸化処理装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示において段階的に記載されている数値範囲に関して、ある数値範囲を規定する上限値又は下限値は、他の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示における数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示における基(原子団)の表記に関して、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有しない基と置換基を有する基とを包含する。例えば「アルキル基」は、置換基を有しないアルキル基(すなわち、無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)を包含する。
本開示において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念として用いられる用語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる用語である。
本開示における「工程」という用語に関して、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない工程であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、及びTSKgel G2000HxL(いずれも東ソー株式会社製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶剤としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本開示において、「平版印刷版原版」との用語は、平版印刷版原版だけでなく、捨て版原版を包含する。
本開示において、「平版印刷版」との用語は、平版印刷版原版を、必要により、露光、現像などの操作を経て作製された平版印刷版だけでなく、捨て版を包含する。捨て版原版の場合には、必ずしも、露光、現像の操作は必要ない。なお、捨て版とは、例えばカラーの新聞印刷において一部の紙面を単色又は2色で印刷を行う場合に、使用しない版胴に取り付けるための平版印刷版原版である。
本開示において、「耐刷性」とは、平版印刷版の印刷可能な枚数を意味する。印刷の際のインクとして紫外線硬化型インキ(UVインキ)を用いた場合の耐刷性を「UV耐刷性」ともいう。
【0025】
<機上現像型平版印刷版原版>
本開示の一実施形態に係る機上現像型平版印刷版原版は、支持体と、画像記録層と、最外層と、をこの順で有し、上記最外層の表面における空中水滴法による着滴から2秒後の水滴の接触角が、36°より大きい。本開示の一実施形態によれば、オゾン暴露による変色(以下、「オゾン変色」ともいう。)を抑制する機上現像型平版印刷版原版が提供される。
【0026】
本開示の一実施形態に係る機上現像型平版印刷版原版が上記効果を奏する理由は、以下のように推察される。本開示の一実施形態に係る機上現像型平版印刷版原版において、最外層の表面における空中水滴法による着滴から2秒後の水滴の接触角は36°より大きくなっている。上記のような特性によって最外層の表面の疎水性が向上し、最外層とオゾンとの親和性が低減する。よって、本開示の一実施形態によれば、オゾン暴露による変色を抑制する機上現像型平版印刷版原版が提供される。
【0027】
以下、機上現像型平版印刷版原版について具体的に説明する。以下、「機上現像型平版印刷版原版」を単に「平版印刷版原版」という場合がある。
【0028】
<<最外層>>
本開示の一実施形態に係る機上現像型平版印刷版原版は、最外層を有する。最外層は、例えば、保護層として機能してもよい。最外層は、例えば、酸素遮断により画像形成阻害反応を抑制する機能、画像記録層における傷の発生防止、及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有してもよい。上記のような特性を有する層については、例えば、米国特許第3458311号明細書、及び特公昭55-49729号公報に記載されている。
【0029】
[接触角]
最外層の表面における空中水滴法による着滴から2秒後の水滴の接触角(以下、単に「水滴の接触角」ともいう。)は、36°より大きい。水滴の接触角が36°より大きいことで、オゾン変色を抑制することができる。水滴の接触角は、オゾン変色の抑制、及び現像カスの発生の抑制の観点から、40°以上であることが好ましく、50°以上であることがより好ましく、60°以上であることが更に好ましく、70°以上であることが特に好ましい。水滴の接触角の上限は制限されない。水滴の接触角は、例えば、80°以下、又は70°以下であってもよい。本開示において、「最外層の表面」とは、特に断りのない限り、最外層の表面のうち画像記録層に対向する面とは反対側を向く面を意味する。本開示において、水滴の接触角は、測定装置として全自動接触角計(例えば、協和界面化学株式会社製DM-501)を用いて、25℃における測定対象物の表面に滴下された水滴の接触角(着滴から2秒後の接触角)として測定される。接触角の測定を同一の測定対象物の表面の3か所以上で実施した後、測定値の平均を求める。
【0030】
最外層の表面における空中油滴法による着滴から2秒後の油滴の接触角(以下、単に「油滴の接触角」ともいう。)は、オゾン変色の抑制、及び現像カスの発生の抑制の観点から、20°以下であることが好ましく、15°以下であることがより好ましく、12°以下であることが特に好ましい。油滴の接触角の下限は制限されない。油滴の接触角は、例えば、0°超であってもよい。油滴の接触角は、機上現像性の観点から、3°以上であることが好ましく、5°以上であることがより好ましく、8°以上であることが特に好ましい。本開示において、油滴の接触角は、測定装置として全自動接触角計(例えば、協和界面化学株式会社製DM-501)を用いて、25℃における測定対象物の表面に滴下されたアマニ油の接触角(着滴から2秒後の接触角)として測定される。接触角の測定を同一の測定対象物の表面の3か所以上で実施した後、測定値の平均を求める。
【0031】
最外層の表面における水滴の接触角及び油滴の接触角は、例えば、最外層の組成によって調整することができる。例えば、後述する疎水性ポリマー又は親水性ポリマーの使用、及び後述する疎水性ポリマー又は親水性ポリマーの含有率によって、水滴の接触角及び油滴の接触角を調整することができる。ただし、接触角の調整方法は、上記した方法に制限されるものではない。接触角の調整方法として、公知の方法を利用してもよい。
【0032】
[ポリマー]
最外層は、ポリマーを含むことが好ましい。ポリマーとしては、例えば、疎水性ポリマー、及び親水性ポリマーが挙げられる。最外層は、疎水性ポリマーを含むことが好ましく、疎水性ポリマー及び親水性ポリマーを含むことがより好ましい。以下、疎水性ポリマー及び親水性ポリマーについて具体的に説明する。
【0033】
(疎水性ポリマー)
最外層は、オゾン変色の抑制、及び現像カスの発生の抑制の観点から、疎水性ポリマーを含むことが好ましい。本開示において「疎水性ポリマー」とは、25℃の水に対する溶解度が5質量%以下であるポリマーを意味する。
【0034】
疎水性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、及びポリ(メタ)アクリル酸ブチル)、フッ素原子含有(メタ)アクリル樹脂、及びこれらのポリマーの原料となるモノマーを組み合わせた共重合体が挙げられる。疎水性ポリマーは、スチレン-アクリル共重合体を含むことが好ましい。
【0035】
疎水性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、オゾン変色の抑制、及び現像カスの発生の抑制の観点から、30℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。疎水性ポリマーのガラス転移温度の上限は制限されない。疎水性ポリマーのガラス転移温度は、150℃以下、又は120℃以下であってもよい。
【0036】
ポリマーのガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定する。具体的な測定方法は、「JIS K 7121(1987年)」又は「JIS K 6240(2011年)」に記載された方法に準じて行なう。ポリマーの組成に応じて適切なJIS規格を選択する。本開示におけるガラス転移温度には、補外ガラス転移開始温度(以下、「Tig」ともいう。)を用いる。以下、ガラス転移温度の測定方法をより具体的に説明する。ガラス転移温度の測定においては、予想されるポリマーのガラス転移温度より約50℃低い温度にて装置が安定するまで保持した後、20℃/分の加熱速度で、ガラス転移が終了した温度よりも約30℃高い温度まで加熱することで、示差熱分析(DTA)曲線又はDSC曲線を作成する。補外ガラス転移開始温度(Tig)、すなわち、本開示におけるガラス転移温度(Tg)は、DTA曲線又はDSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度として求める。
【0037】
疎水性ポリマーの形態は、粒子であることが好ましい。疎水性ポリマーの形態が粒子であることで、最外層の表面の疎水性を更に向上させることができる。例えば、粒子状の疎水性ポリマーは、最外層の表面に疎水性ポリマーを島領域とする海島構造を形成することができる。上記のような海島構造は、疎水性の向上に寄与することができる。本開示においては、最外層の表面観察(すなわち、平面視)によって輪郭が確認された疎水性ポリマーの形態を粒子とみなす。最外層の表面観察によって確認される疎水性ポリマーの輪郭の形状は、真円に限られず、例えば、楕円、多角形、又は不定形であってもよい。最外層の表面観察では、必要に応じて、後述する「疎水性ポリマーの占有面積率」の測定方法に使用される観察方法を利用してもよい。
【0038】
最外層の表面における疎水性ポリマーの占有面積率は、オゾン変色の抑制、及び現像カスの発生の抑制の観点から、5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることが更に好ましく、50%以上であることが特に好ましく、60%以上であることが最も好ましい。最外層の表面における疎水性ポリマーの占有面積率は、70%以上、又は80%以上であってもよい。最外層の表面における疎水性ポリマーの占有面積率の上限は制限されない。最外層の表面における疎水性ポリマーの占有面積率は、100%未満、95%以下、90%以下、又は85%以下であってもよい。
【0039】
最外層の表面における疎水性ポリマーの占有面積率は、以下の方法によって測定する。測定対象物の表面に、導電処理として3nmのカーボン膜又は3nmのPt-Pd膜を付与した後、株式会社日立ハイテク製SU8010型FE-SEMを用い、5kV~10kVの加速電圧で反射電子像を観察する。1,000~10,000倍の観察倍率(観察される疎水ポリマーの大きさに応じて任意の倍率に調整する。)にて合計3か所で撮影した画像に対して、画像処理ソフト(例えば、ImageJ)を用いて疎水性ポリマー(例えば、凸部)と疎水性ポリマーの周囲とのコントラスト差を利用して2値化処理を行い、疎水性ポリマーの占有面積率を算出する。疎水性ポリマーの占有面積率は、「疎水性ポリマーの面積」を「視野の面積(疎水性ポリマーの面積と疎水性ポリマー以外の領域の面積の合計値)」で除することによって算出する。ただし、上記方法によって得られる画像において疎水性ポリマーを観察できない場合は、最外層に含まれる疎水性ポリマーの含有率(単位:質量%)を疎水性ポリマーの占有面積率とする。
【0040】
最外層は、1種単独又は2種以上の疎水性ポリマーを含んでもよい。
【0041】
疎水性ポリマーの含有率は、オゾン変色の抑制、及び現像カスの発生の抑制の観点から、最外層の全質量に対し、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが特に好ましく、60質量%以上であることが最も好ましい。疎水性ポリマーの含有率は、最外層の全質量に対し、70質量%以上、又は80質量%以上であってもよい。疎水性ポリマーの含有率の上限は制限されない。疎水性ポリマーの含有率は、最外層の全質量に対し、100質量%未満、95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下であってもよい。
【0042】
最外層が疎水性ポリマー及び親水性ポリマーを含む場合、疎水性ポリマーの含有量は、親水性ポリマーの含有量より多いことが好ましい。疎水性ポリマーの含有量が親水性ポリマーの含有量より多いことで、オゾン変色を更に抑制することができる。また、現像カスの発生を更に抑制することもできる。具体的に、疎水性ポリマーの含有量は、質量基準で、親水性ポリマーの含有量の1.7倍以上であることが好ましく、2.9倍以上であることがより好ましく、3.2倍以上であることが特に好ましい。親水性ポリマーの含有量に対する疎水性ポリマーの含有量の比の上限は制限されない。疎水性ポリマーの含有量は、質量基準で、親水性ポリマーの含有量の10.0倍以下であってもよい。
【0043】
(親水性ポリマー)
最外層は、機上現像性の観点から、親水性ポリマーを含むことが好ましい。本開示において「親水性ポリマー」とは、25℃の水に対する溶解度が5質量%を超えるポリマーを意味する。
【0044】
親水性ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、及びポリ(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。変性ポリビニルアルコールとしては、カルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005-250216号公報、及び特開2006-259137号公報に記載の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。セルロース誘導体としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0045】
ある実施形態において、親水性ポリマーは、変性ポリビニルアルコール、及びセルロース誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0046】
ある実施形態において、親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールを含むことが好ましい。ポリビニルアルコールの中でも、けん化度が50%以上であるポリビニルアルコールがより好ましい。けん化度は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、85%以上であることが特に好ましい。けん化度の上限は制限されない。けん化度は、100%以下であればよい。けん化度は、「JIS K 6726:1994」に記載の方法に従い測定する。
【0047】
ある実施形態において、親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドンを含むことが好ましい。親水性ポリマーとして、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとを組み合わせて使用することも好ましい。
【0048】
最外層は、1種単独又は2種以上の親水性ポリマーを含んでもよい。
【0049】
親水性ポリマーの含有率は、機上現像性の観点から、最外層の全質量に対し、10質量%以上であることが好ましい。親水性ポリマーの含有率は、オゾン変色の抑制、及び現像カスの発生の抑制の観点から、最外層の全質量に対し、90質量%以下であることが好ましい。
【0050】
[変色性化合物]
最外層は、変色性化合物を含むことが好ましい。本開示において「変色性化合物」とは、赤外線露光に起因して、可視光領域(波長:400nm以上750nm未満)の吸収が変化する化合物をいう。つまり、本開示において「変色」とは、赤外線露光に起因して、可視光領域(波長:400nm以上750nm未満)の吸収が変化することをいう。変色性化合物としては、例えば、(1)赤外線露光に起因して赤外線露光前より可視光領域の吸収が増加する化合物、(2)赤外線露光に起因して可視光領域の吸収を有するようになる化合物、及び(3)赤外線露光に起因して可視光領域に吸収を有しないようになる化合物が挙げられる。なお、本開示において「赤外線」は、750nm~1mmの波長域の光線を意味し、750nm~1,400nmの波長域の光線であることが好ましい。
【0051】
変色性化合物は、赤外線露光に起因して発色する化合物を含むことが好ましい。また、変色性化合物は、赤外線露光に起因して分解する分解性化合物を含むことが好ましく、赤外線露光に起因する、熱、電子移動、又はその両方により分解する分解性化合物を含むことがより好ましい。具体的に、変色性化合物は、赤外線露光に起因して分解し(より好ましくは、赤外線露光に起因する、熱、電子移動、又はその両方により分解し)、赤外線露光前に比べて、可視光領域における吸収が増加するか、又は、吸収が短波長化し可視光領域に吸収を有するようになる化合物であることが好ましい。ここで、「電子移動により分解する」とは、赤外線露光によって変色性化合物のHOMO(最高被占軌道)からLUMO(最低空軌道)に励起した電子が、分子内の電子受容基(LUMOと電位が近い基)に分子内電子移動し、それに伴って分解が生じることを意味する。
【0052】
分解性化合物は、例えば、赤外線波長域(750nm~1mmの波長域、好ましくは750nm~1,400nmの波長域)の少なくとも一部の光を吸収し、分解する化合物であればよい。分解性化合物は、750nm~1,400nmの波長域に極大吸収を有する化合物であることが好ましい。具体的に、分解性化合物は、赤外線露光に起因して分解し、500nm~600nmの波長域に極大吸収波長を有する化合物を生成する化合物であることが好ましい。
【0053】
好ましい変色性化合物としては、例えば、後述する式1で表される化合物、式1-1で表される化合物、式1-2で表される化合物、式1-3で表される化合物、式1-4で表される化合物、式1-5で表される化合物、式1-6で表される化合物及び式1-7で表される化合物が挙げられる。
【0054】
(式1で表される化合物)
変色性化合物は、下記式1で表される化合物を含むことが好ましい。
【0055】
【化8】
【0056】
式1中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R及びRは互いに連結して環を形成してもよく、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、Y及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、-NR-又はジアルキルメチレン基を表し、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Ar及びArはそれぞれ独立に、後述する式2で表される基を有していてもよいベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表し、Aは、-NR10、-X-L又は後述する式2で表される基を表し、R及びR10はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はアリールスルホニル基を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、Lは炭化水素基、ヘテロアリール基、又は、熱若しくは赤外線露光によりXとの結合が開裂する基を表し、Zaは電荷を中和する対イオンを表し、Ar及びArの少なくとも一方に、下記式2で表される基を有する。
-X:式2
式2中、Xは、ハロゲン原子、-C(=O)-X-R11、-C(=O)-NR1213、-O-C(=O)-R14、-CN、-SONR1516、又は、パーフルオロアルキル基を表し、Xは、単結合又は酸素原子を表し、R11及びR14はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、R12、R13、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
【0057】
Ar及びArはそれぞれ独立に、ベンゼン環又はナフタレン環を形成する基を表す。上記ベンゼン環及びナフタレン環上には、-X以外の置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられるが、アルキル基であることが好ましい。
また、式1においては、Ar及びArの少なくとも一方に、上記式2で表される基を有し、耐刷性、及び、視認性の観点から、Ar及びArの両方に、上記式2で表される基を有することが好ましい。
【0058】
式2におけるXは、ハロゲン原子、-C(=O)-X-R11、-C(=O)-NR1213、-O-C(=O)-R14、-CN、-SONR1516、又は、パーフルオロアルキル基を表し、耐刷性、視認性及び経時安定性の観点から、ハロゲン原子、-C(=O)-X-R11、-C(=O)-NR1213、-O-C(=O)-R14、CN、又は、-SONR1516であることが好ましく、ハロゲン原子、-C(=O)-O-R11、-C(=O)-NR1213、又は、-O-C(=O)-R14であることが好ましく、ハロゲン原子、-C(=O)-O-R11、又は、-O-C(=O)-R14であることが更に好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は、-C(=O)OR17であることが特に好ましく、塩素原子、又は、臭素原子が最も好ましい。
【0059】
は、単結合又は酸素原子を表し、酸素原子であることが好ましい。
11及びR14はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキル基であることがより好ましい。
12、R13、R15及びR16はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~12のアルキル基であることが更に好ましい。
17は、アルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキル基であることがより好ましい。
【0060】
は、-NR10、-X-L又は-Xを表し、耐刷性、視認性及び経時安定性の観点から、-NR10又は-X-Lであることが好ましく、-NR1819、-S-R20であることがより好ましい。
また、Aは、UV版飛び抑制性、GLV適性及びUV耐刷性の観点からは、-Xであることが好ましく、ハロゲン原子であることがより好ましく、塩素原子、又は、臭素原子であることが更に好ましく、塩素原子であることが特に好ましい。
及びR10はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基又はアリールスルホニル基を表し、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基であることが好ましく、炭素数1~12のアルキル基であることがより好ましい。
は酸素原子又は硫黄原子を表し、Lが炭化水素基又はヘテロアリール基である場合は、硫黄原子であることが好ましく、Lが熱若しくは赤外線露光によりXとの結合が開裂する基であることが好ましい。
は炭化水素基、ヘテロアリール基、又は、熱若しくは赤外線露光によりXとの結合が開裂する基を表し、耐刷性の観点からは、炭化水素基又はヘテロアリール基が好ましく、アリール基又はヘテロアリール基がより好ましく、ヘテロアリール基が更に好ましい。
また、Lは、視認性及び経時における退色抑制性の観点からは、熱若しくは赤外線露光によりXとの結合が開裂する基が好ましい。
熱若しくは赤外線露光によりXとの結合が開裂する基については、後述する。
18及びR19はそれぞれ独立に、アリール基を表し、炭素数6~20のアリール基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
20は炭化水素基又はヘテロアリール基を表し、アリール基又はヘテロアリール基が好ましく、ヘテロアリール基がより好ましい。
【0061】
及びR20におけるヘテロアリール基としては、下記の基が好ましく挙げられる。
【0062】
【化9】
【0063】
~R10、及びRにおけるアルキル基は、炭素数1~30のアルキル基が好ましく、炭素数1~15のアルキル基がより好ましく、炭素数1~10のアルキル基が更に好ましい。上記アルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、及び、2-ノルボルニル基を挙げられる。
これらアルキル基の中でも、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が特に好ましい。
【0064】
また、上記アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0065】
、R10、R18、R19及びRにおけるアリール基としては、炭素数6~30のアリール基が好ましく、炭素数6~20のアリール基がより好ましく、炭素数6~12のアリール基が更に好ましい。
また、上記アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられる。
上記アリール基としては具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基、p-トリル基、p-クロロフェニル基、p-フルオロフェニル基、p-メトキシフェニル基、p-ジメチルアミノフェニル基、p-メチルチオフェニル基、p-フェニルチオフェニル基等が挙げられる。
これらアリール基の中で、フェニル基、p-メトキシフェニル基、p-ジメチルアミノフェニル基、又は、ナフチル基が好ましい。
【0066】
及びRは、連結して環を形成していることが好ましい。
及びRが連結して環を形成する場合、好ましい環員数は5又は6員環が好ましく、6員環がより好ましい。また、R及びRが連結して形成される環は、エチレン性不飽和結合を有していてもよい炭化水素環であることが好ましい。
【0067】
及びYはそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、-NR-又はジアルキルメチレン基を表し、-NR-又は ジアルキルメチレン基が好ましく、ジアルキルメチレン基がより好ましい。
は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、アルキル基であることが好ましい。
【0068】
及びRは、同じ基であることが好ましい。
また、R及びRはそれぞれ独立に、直鎖アルキル基又は末端にスルホネート基を有するアルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基又は末端にスルホネート基を有するブチル基であることがより好ましい。
また、上記スルホネート基の対カチオンは、式1中の窒素原子上のカチオンであってもよいし、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンであってもよい。
更に、式1で表される化合物の水溶性をさせる観点から、R及びRはそれぞれ独立に、アニオン構造を有するアルキル基であることが好ましく、カルボキシレート基又はスルホネート基を有するアルキル基であることがより好ましく、末端にスルホネート基を注するアルキル基であることが更に好ましい。
また、式1で表される化合物の極大吸収波長を長波長化し、また、視認性及び平版印刷版における耐刷性の観点から、R及びRはそれぞれ独立に、芳香環を有するアルキル基であることが好ましく、末端に芳香環を有するアルキル基であることがより好ましく、2-フェニルエチル基、2-ナフタレニルエチル基、又は、2-(9-アントラセニル)エチル基であることが特に好ましい。
【0069】
~Rはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、水素原子であることが好ましい。
【0070】
また、式1で表される化合物は、経時安定性、UV版飛び抑制性、GLV適性及びUV耐刷性の観点から、ハロゲン原子を1つ以上有することが好ましく、A、Ar及びArよりなる群から選ばれる少なくとも1つに、ハロゲン原子を1つ以上有することがより好ましく、A、Ar及びArがそれぞれハロゲン原子を1つ以上有することが特に好ましい。
更に、式1で表される化合物は、経時安定性、UV版飛び抑制性、GLV適性及びUV耐刷性の観点から、ハロゲン原子を2つ以上有することがより好ましく、ハロゲン原子を3つ以上有することが更に好ましく、ハロゲン原子を3つ以上6つ以下有することが特に好ましい。
また、上記ハロゲン原子としては、塩素原子、又は、臭素原子が好ましく挙げられる。
更にまた、式1で表される化合物は、経時安定性、UV版飛び抑制性、GLV適性及びUV耐刷性の観点から、Ar及びArの少なくとも1方に、ハロゲン原子を有することが好ましく、Ar及びArの少なくとも1方に、塩素原子、又は、臭素原子を有することがより好ましく、Ar及びArの少なくとも1方に、臭素原子を有することが特に好ましい。
【0071】
Zaは、電荷を中和する対イオンを表し、アニオン種を示す場合は、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、過塩素酸塩イオン、スルホンアミドアニオン、スルホンイミドアニオン等が挙げられる。カチオン種を示す場合は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン又はスルホニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン又はスルホニウムイオンがより好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はアンモニウムイオンが更に好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はトリアルキルアンモニウムイオンが特に好ましい。
中でも、Zaは、耐刷性及び視認性の観点から、炭素原子を含む有機アニオンであることが好ましく、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンであることがより好ましく、スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンであることが更に好ましく、スルホンイミドアニオンであることが特に好ましい。
~R、R、A、Ar、Ar、Y及びYは、アニオン構造及びカチオン構造を有していてもよく、R~R、R、A、Ar、Ar、Y及びYの全てが電荷的に中性の基であれば、Zaは一価の対アニオンであるが、例えば、R~R、R、A、Ar、Ar、Y及びYに2以上のアニオン構造を有する場合、Zaは対カチオンにもなり得る。
また、式1において、Za以外の部分が電荷的に中性であれば、Zaはなくともよい。
【0072】
スルホンアミドアニオンとしては、アリールスルホンアミドアニオンが好ましい。
また、スルホンイミドアニオンとしては、ビスアリールスルホンイミドアニオンが好ましい。
スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンの具体例を以下に示すが、本開示はこれらに限定されるものではない。下記具体例中、Phはフェニル基を、Meはメチル基を、Etはエチル基を、それぞれ表す。
【0073】
【化10】
【0074】
上記熱又は赤外線露光によりXとの結合が開裂する基は、視認性の観点から、下記式(1-1)~式(1-7)のいずれかで表される基であることが好ましく、下記式(1-1)~式(1-3)のいずれかで表される基であることがより好ましい。
【0075】
【化11】
【0076】
式(1-1)~式(1-7)中、●は、式1中のXとの結合部位を表し、R10はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、-OR14、-NR1516又は-SR17を表し、R11はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R12はアリール基、-OR14、-NR1516、-SR17、-C(=O)R18、-OC(=O)R18又はハロゲン原子を表し、R13はアリール基、アルケニル基、アルコキシ基又はオニウム基を表し、R14~R17はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R18はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、-OR14、-NR1516又は-SR17を表し、Zは電荷を中和する対イオンを表す。
【0077】
10、R11及びR14~R18がアルキル基である場合の好ましい態様は、R~R及びRにおけるアルキル基の好ましい態様と同様である。
10及びR13におけるアルケニル基の炭素数は、1~30であることが好ましく、1~15であることがより好ましく、1~10であることが更に好ましい。
10~R18がアリール基である場合の好ましい態様は、Rにおけるアリール基の好ましい態様と同様である。
【0078】
視認性の観点から、式(1-1)におけるR10は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、-OR14、-NR1516又は-SR17であることが好ましく、アルキル基、-OR14、-NR1516又は-SR17であることがより好ましく、アルキル基又は-OR14であることが更に好ましく、-OR14であることが特に好ましい。
また、式(1-1)におけるR10がアルキル基である場合、上記アルキル基は、α位にアリールチオ基又はアルキルオキシカルボニル基を有するアルキル基であることが好ましい。
式(1-1)におけるR10が-OR14である場合、R14は、アルキル基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましく、イソプロピル基又はt-ブチル基であることが更に好ましく、t-ブチル基であることが特に好ましい。
【0079】
視認性の観点から、式(1-2)におけるR11は、水素原子であることが好ましい。
また、視認性の観点から、式(1-2)におけるR12は、-C(=O)OR14、-OC(=O)OR14又はハロゲン原子であることが好ましく、-C(=O)OR14又は-OC(=O)OR14であることがより好ましい。式(1-2)におけるR12が-C(=O)OR14又は-OC(=O)OR14である場合、R14は、アルキル基であることが好ましい。
【0080】
視認性の観点から、式(1-3)におけるR11はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、また、式(1-3)における少なくとも1つのR11が、アルキル基であることがより好ましい。
また、R11におけるアルキル基は、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~10のアルキル基であることがより好ましい。
更に、R11におけるアルキル基は、分岐を有するアルキル基、又は、シクロアルキル基であることが好ましく、第二級又は第三級アルキル基、又は、シクロアルキル基であることがより好ましく、イソプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、又は、t-ブチル基であることが更に好ましい。
また、視認性の観点から、式(1-3)におけるR13は、アリール基、アルコキシ基又はオニウム基であることが好ましく、p-ジメチルアミノフェニル基又はピリジニウム基であることがより好ましく、ピリジニウム基であることが更に好ましい。
13におけるオニウム基としては、ピリジニウム基、アンモニウム基、スルホニウム基等が挙げられる。オニウム基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及び、これらを組み合わせた基等が挙げられるが、アルキル基、アリール基及びこれらを組み合わせた基であることが好ましい。
中でも、ピリジニウム基が好ましく、N-アルキル-3-ピリジニウム基、N-ベンジル-3-ピリジニウム基、N-(アルコキシポリアルキレンオキシアルキル)-3-ピリジニウム基、N-アルコキシカルボニルメチル-3-ピリジニウム基、N-アルキル-4-ピリジニウム基、N-ベンジル-4-ピリジニウム基、N-(アルコキシポリアルキレンオキシアルキル)-4-ピリジニウム基、N-アルコキシカルボニルメチル-4-ピリジニウム基、又は、N-アルキル-3,5-ジメチル-4-ピリジニウム基がより好ましく、N-アルキル-3-ピリジニウム基、又は、N-アルキル-4-ピリジニウム基が更に好ましく、N-メチル-3-ピリジニウム基、N-オクチル-3-ピリジニウム基、N-メチル-4-ピリジニウム基、又は、N-オクチル-4-ピリジニウム基が特に好ましく、N-オクチル-3-ピリジニウム基、又は、N-オクチル-4-ピリジニウム基が最も好ましい。
また、R13がピリジニウム基である場合、対アニオンとしては、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、過塩素酸塩イオン等が挙げられ、p-トルエンスルホネートイオン、又は、ヘキサフルオロホスフェートイオンが好ましい。
【0081】
視認性の観点から、式(1-4)におけるR10は、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、2つのR10のうち、一方がアルキル基、他方がアリール基であることがより好ましい。
視認性の観点から、式(1-5)におけるR10は、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、アリール基であることがより好ましく、p-メチルフェニル基であることが更に好ましい。
視認性の観点から、式(1-6)におけるR10はそれぞれ独立に、アルキル基又はアリール基であることが好ましく、メチル基又はフェニル基であることがより好ましい。
視認性の観点から、式(1-7)におけるZは、電荷を中和する対イオンであればよく、化合物全体として、上記Zaに含まれてもよい。
は、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、又は、過塩素酸塩イオンであることが好ましく、p-トルエンスルホネートイオン、又は、ヘキサフルオロホスフェートイオンであることがより好ましい。
【0082】
また、上記熱若しくは赤外線露光によりXとの結合が開裂する基は、式(1-8)で表される基であることが特に好ましい。
【0083】
【化12】
【0084】
式(1-8)中、●は、式1中のXとの結合部位を表し、R19及びR20はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、Za’は、電荷を中和する対イオンを表す。
【0085】
式(1-8)におけるピリジニウム環とR20を含む炭化水素基との結合位置は、ピリジニウム環の3位又は4位であることが好ましく、ピリジニウム環の4位であることがより好ましい。
19及びR20におけるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
また、上記アルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、アルコキシ基、及び、末端アルコキシポリアルキレンオキシ基が好ましく挙げられる。
19は、炭素数1~12のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~12の直鎖アルキル基であることがより好ましく、炭素数1~8の直鎖アルキル基であることが更に好ましく、メチル基又はn-オクチル基であることが特に好ましい。
20は、炭素数1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数3~8の分岐アルキル基であることがより好ましく、イソプロピル基又はt-ブチル基であることが更に好ましく、イソプロピル基であることが特に好ましい。
Za’は、電荷を中和する対イオンであればよく、化合物全体として、上記Zaに含まれてもよい。
Za’は、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、又は、過塩素酸塩イオンであることが好ましく、p-トルエンスルホネートイオン、又は、ヘキサフルオロホスフェートイオンであることがより好ましい。
【0086】
変色性化合物の一種である分解性化合物は、露光部の視認性を高める観点から、シアニン色素であることが好ましく、赤外線露光により分解する基(具体的には、下記式1-1~式1-7におけるR)を有するシアニン色素であることがより好ましい。
【0087】
(式1-1で表される化合物)
変色性化合物の一種である分解性化合物は、露光部の視認性を高める観点から、下記式1-1で表される化合物であることが好ましい。
【0088】
【化13】
【0089】
式1-1中、Rは、下記式2~式4のいずれか1つで表される基を表し、R11~R18は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-R、-OR、-SR、又は-NRを表し、R~Rは、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、A、A、及び複数のR11~R18は、連結して単環又は多環を形成してもよく、A、及びAは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表し、n11、及びn12は、それぞれ独立に、0~5の整数を表し、n11及びn12の合計は、2以上であり、n13、及びn14は、それぞれ独立に、0、又は1を表し、Lは、酸素原子、硫黄原子、又は-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Zaは、電荷を中和する対イオンを表す。
【0090】
【化14】
【0091】
式2~式4中、R20、R30、R41、及びR42は、それぞれ独立に、アルキル基、又はアリール基を表し、Zbは、電荷を中和する対イオンを表し、波線は、Lとの結合部位を表す。
【0092】
式1-1で表される化合物が赤外線で露光されると、R-L結合が開裂し、Lは、=O、=S、又は=NR10となる。上記のような過程を経て、式1-1で表される化合物は変色する。
【0093】
式1-1において、Rは、上記式2~式4のいずれか1つで表される基を表す。以下、式2で表される基、式3で表される基、及び式4で表される基についてそれぞれ説明する。
【0094】
式2中、R20は、アルキル基、又はアリール基を表し、波線部分は、Lとの結合部位を表す。
【0095】
20で表されるアルキル基としては、炭素数が1~30のアルキル基が好ましく、炭素数が1~15のアルキル基がより好ましく、炭素数が1~10のアルキル基が特に好ましい。アルキル基は、直鎖状、又は分岐状であってもよい。アルキル基は、環構造を有していてもよい。
【0096】
20で表されるアリール基としては、炭素数が6~30のアリール基が好ましく、炭素数が6~20のアリール基がより好ましく、炭素数が6~12のアリール基が特に好ましい。R20は、発色性の観点から、アルキル基であることが好ましい。
【0097】
分解性、及び発色性の観点から、R20で表されるアルキル基は、第二級アルキル基、又は第三級アルキル基であることが好ましく、第三級アルキル基であることがより好ましい。また、分解性、及び発色性の観点から、R20で表されるアルキル基は、炭素数が1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数が3~10の分岐状のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が3~6の分岐状のアルキル基であることが更に好ましく、イソプロピル基、又はtert-ブチル基であることが特に好ましく、tert-ブチル基であることが最も好ましい。
【0098】
以下、式2で表される基の具体例を示す。ただし、式2で表される基は、以下に示す具体例に制限されるものではない。下記構造式中、「●」は式1-1中のLとの結合部位を表す。
【0099】
【化15】
【0100】
式3中、R30は、アルキル基、又はアリール基を表し、波線部分は、Lとの結合部位を表す。R30で表されるアルキル基及びアリール基は、それぞれ、式2中のR20で表されるアルキル基及びアリール基と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0101】
分解性、及び発色性の観点から、R30で表されるアルキル基は、第二級アルキル基、又は第三級アルキル基であることが好ましく、第三級アルキル基であることがより好ましい。また、分解性、及び発色性の観点から、R30で表されるアルキル基は、炭素数が1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数が3~10の分岐状のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が3~6の分岐状のアルキル基であることが更に好ましく、イソプロピル基、又はtert-ブチル基であることが特に好ましく、tert-ブチル基であることが最も好ましい。さらに、分解性、及び発色性の観点から、R30で表されるアルキル基は、置換アルキル基であることが好ましく、フルオロ置換アルキル基であることがより好ましく、パーフルオロアルキル基であることが更に好ましく、トリフルオロメチル基であることが特に好ましい。
【0102】
分解性、及び発色性の観点から、R30で表されるアリール基は、置換アリール基であることが好ましい。置換アリール基における置換基としては、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数が1~4のアルキル基)、及びアルコキシ基(好ましくは炭素数が1~4のアルコキシ基)が挙げられる。
【0103】
以下、式3で表される基の具体例を示す。ただし、式3で表される基は、以下に示す具体例に制限されるものではない。下記構造式中、「●」は式1-1中のLとの結合部位を表す。
【0104】
【化16】
【0105】
式4中、R41、及びR42は、それぞれ独立に、アルキル基、又はアリール基を表し、Zbは、電荷を中和する対イオンを表し、波線部分は、Lとの結合部位を表す。R41又はR42で表されるアルキル基及びアリール基は、それぞれ、式2中のR20で表されるアルキル基及びアリール基と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0106】
式4において、R41は、分解性、及び発色性の観点から、アルキル基であることが好ましい。分解性、及び発色性の観点から、R41で表されるアルキル基は、炭素数が1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1~4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0107】
式4において、R42は、分解性、及び発色性の観点から、アルキル基であることが好ましい。分解性、及び発色性の観点から、R42で表されるアルキル基は、第二級アルキル基、又は第三級アルキル基であることが好ましく、第三級アルキル基であることがより好ましい。また、分解性、及び発色性の観点から、R42で表されるアルキル基は、炭素数が1~8のアルキル基であることが好ましく、炭素数が3~10の分岐状のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が3~6の分岐状のアルキル基であることが更に好ましく、イソプロピル基、又はtert-ブチル基であることが特に好ましく、tert-ブチル基であることが最も好ましい。
【0108】
式4において、Zbは、電荷を中和するための対イオンであればよく、化合物全体として、式1-1におけるZaに含まれてもよい。Zbは、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、又は過塩素酸塩イオンであることが好ましく、テトラフルオロボレートイオンであることがより好ましい。
【0109】
以下、式4で表される基の具体例を示す。ただし、式4で表される基は、以下に示す具体例に制限されるものではない。下記構造式中、「●」は式1-1中のLとの結合部位を表す。
【0110】
【化17】
【0111】
式1-1において、Lは、酸素原子、又は-NR10-であることが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。
【0112】
-NR10-におけるR10は、アルキル基であることが好ましい。R10で表されるアルキル基は、炭素数が1~10のアルキル基であることが好ましい。R10で表されるアルキル基は、直鎖状、又は分岐状であってもよい。R10で表されるアルキル基は、環構造を有していてもよい。アルキル基は、メチル基、又はシクロヘキシル基であることが好ましい。
【0113】
-NR10-においてR10で表されるアリール基は、炭素数が6~30のアリール基であることが好ましく、炭素数が6~20のアリール基であることがより好ましく、炭素数が6~12のアリール基であることが特に好ましい。アリール基は、置換基を有していてもよい。
【0114】
式1-1において、R11~R18は、それぞれ独立に、水素原子、-R、-OR、-SR、又は-NRであることが好ましい。
【0115】
~Rで表される炭化水素基は、炭素数が1~30の炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1~15の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数が1~10の炭化水素基であることが特に好ましい。炭化水素基は、直鎖状、又は分岐状であってもよい。炭化水素基は、環構造を有していてもよい。炭化水素基は、アルキル基であることが好ましい。アルキル基としては、炭素数が1~30のアルキル基であることが好ましく、炭素数が1~15のアルキル基であることがより好ましく、炭素数が1~10のアルキル基であることが特に好ましい。アルキル基は、直鎖状、又は分岐状であってもよい。アルキル基は、環構造を有していてもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、及び2-ノルボルニル基が挙げられる。上記の中でも、アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基であることが好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルコキシ基、アリーロキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボキシレート基、スルホ基、スルホネート基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、及びこれらを組み合わせた基が挙げられる。
【0116】
式1-1におけるR11~R14は、それぞれ独立に、水素原子、又は-R(すなわち、炭化水素基)であることが好ましく、水素原子、又はアルキル基であることがより好ましい。以下の場合を除き、式1-1におけるR11~R14は、それぞれ独立に、水素原子であることが好ましい。
【0117】
式1-1において、Lが結合する炭素原子と結合する炭素原子に結合するR11及びR13は、アルキル基であることが好ましく、両者が連結して環を形成することがより好ましい。形成される環は、単環、又は多環であってもよい。単環としては、例えば、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、及びシクロヘキサジエン環が挙げられる。多環としては、例えば、インデン環、及びインドール環が挙げられる。
【0118】
式1-1において、Aが結合する炭素原子に結合するR12は、R15又はR16(好ましくはR16)と連結して環を形成することが好ましい。Aが結合する炭素原子に結合するR14は、R17又はR18(好ましくはR18)と連結して環を形成することが好ましい。
【0119】
式1-1において、n13は1であり、R16は、-R(すなわち、炭化水素基)であることが好ましい。
【0120】
式1-1において、R16は、Aが結合する炭素原子に結合するR12と連結して環を形成することが好ましい。形成される環は、インドリウム環、ピリリウム環、チオピリリウム環、ベンゾオキサゾリン環、又はベンゾイミダゾリン環であることが好ましく、露光部の視認性を高める観点から、インドリウム環であることがより好ましい。これらの環は更に置換基を有していてもよい。
【0121】
式1-1において、n14は1であり、R18は、-R(すなわち、炭化水素基)であることが好ましい。
【0122】
式1-1において、R18は、Aが結合する炭素原子に結合するR14と連結して環を形成することが好ましい。形成される環は、インドール環、ピラン環、チオピラン環、ベンゾオキサゾール環、又はベンゾイミダゾール環であることが好ましく、露光部の視認性を高める観点から、インドール環であることがより好ましい。これらの環は更に置換基を有していてもよい。
【0123】
式1-1におけるR16及びR18は、同一の基であることが好ましい。R16及びR18のそれぞれが環を形成する場合、A及びAを除き、同一の構造の環を形成することが好ましい。
【0124】
式1-1におけるR15及びR17は、同一の基であることが好ましい。R15、及びR17は、-R(すなわち、炭化水素基)であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、置換アルキル基であることが特に好ましい。
【0125】
式1-1により表される化合物の水溶性を向上させる観点からは、R15、及びR17は、置換基アルキル基であることが好ましい。置換アルキル基としては、例えば、下記式(a1)~式(a4)で表される基が挙げられる。
【0126】
【化18】
【0127】
式(a1)~式(a4)中、RW0は、炭素数が2~6のアルキレン基を表し、Wは、単結合、又は酸素原子を表し、nW1は、1~45の整数を表し、RW1は、炭素数が1~12のアルキル基、又は-C(=O)-RW5を表し、RW5は、炭素数が1~12のアルキル基を表し、RW2~RW4は、それぞれ独立に、単結合、又は炭素数1~12のアルキレン基を表し、Mは、水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子、又はオニウム基を表す。
【0128】
式(a1)において、RW0で表されるアルキレン基の具体例としては、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、n-ヘキシル基、及びイソヘキシル基が挙げられ、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、又はn-ブチレン基が好ましく、n-プロピレン基がより好ましい。
【0129】
式(a1)において、nW1は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~3であることが特に好ましい。
【0130】
式(a1)において、RW1で表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、及びn-ドデシル基が挙げられ、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、又はtert-ブチル基が好ましく、メチル基、又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0131】
式(a1)において、RW5で表されるアルキル基は、RW1で表されるアルキル基と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0132】
以下、式(a1)で表される基の具体例を示す。ただし、式(a1)で表される基、以下に示す具体例に制限されるものではない。下記構造式中、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、*は結合部位を表す。
【0133】
【化19】
【0134】
式(a2)~式(a4)において、RW2~RW4で表されるアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-オクチレン基、及びn-ドデシレン基が挙げられ、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、又はn-ブチレン基が好ましく、エチレン基、又はn-プロピレン基がより好ましい。
【0135】
式(a3)において、2つ存在するMは、同じでも異なってもよい。
【0136】
式(a2)~式(a4)において、Mで表されるオニウム基としては、例えば、アンモニウム基、ヨードニウム基、ホスホニウム基、及びスルホニウム基が挙げられる。
【0137】
式(a2)におけるCOM、式(a2)におけるPO、及び式(a4)におけるSOMは、いずれもMが解離したアニオン構造を有していてもよい。アニオン構造の対カチオンは、A であってもよいし、式1-1中のR-Lに含まれ得るカチオンであってもよい。
【0138】
式(a1)~式(a4)で表される基の中で、式(a1)、式(a2)、又は式(a4)で表される基が好ましい。
【0139】
式1-1におけるn11及びn12は、同一であることが好ましく、いずれも、1~5の整数であることが好ましく、1~3の整数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましく、2であることが特に好ましい。
【0140】
式1-1におけるA及びAは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を表し、窒素原子であることが好ましい。式1-1におけるA及びAは同一の原子であることが好ましい。
【0141】
式1-1におけるZaは、電荷を中和する対イオンを表す。R11~R18及びR-Lの全てが電荷的に中性の基であれば、Zaは一価の対アニオンとなる。ただし、R11~R18及びR-Lは、アニオン構造又はカチオン構造を有していてもよい。例えば、R11~R18及びR-Lに2以上のアニオン構造が含まれる場合、Zaは対カチオンにもなり得る。なお、式1-1で表される化合物が、Zaを除き、化合物の全体において電荷的に中性な構造を有していれば、Zaは必要ない。Zaが対アニオンである場合、対アニオンとしては、例えば、スルホネートイオン、カルボキシレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、p-トルエンスルホネートイオン、及び過塩素酸塩イオンが挙げられ、テトラフルオロボレートイオンが好ましい。Zaが対カチオンである場合、対カチオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、及びスルホニウムイオンが挙げられ、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、又はスルホニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はアンモニウムイオンがより好ましい。
【0142】
(式1-2で表される化合物)
変色性化合物の一種である分解性化合物は、下記式1-2で表される化合物であることが好ましい。下記式1-2で表される化合物は、シアニン色素である。
【0143】
【化20】
【0144】
式1-2中、Rは、上記式2~式4のいずれか1つで表される基を表し、R19~R22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-R、-OR、-CN、-SR、又は-NRを表し、R23、及びR24は、それぞれ独立に、-Rを表し、R~Rは、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R19とR20、R21とR22、又はR23とR24は、連結して単環又は多環を形成してもよく、Lは、酸素原子、硫黄原子、又は-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Rd1~Rd4、W、及びWは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基を表し、Zaは、電荷を中和する対イオンを表す。
【0145】
式1-2におけるRは、式1-1におけるRと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0146】
式1-2において、R19~R22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-R、-OR、又は-CNであることが好ましい。R19、及びR21は、水素原子、又は-Rであることが好ましい。R20、及びR22は、水素原子、-R、-OR、又は-CNであることが好ましい。
【0147】
式1-2において、R19~R22で表される-Rは、アルキル基、又はアルケニル基であることが好ましい。R19~R22の全てが-Rである場合、R19とR20、及びR21とR22が連結して単環又は多環を形成することが好ましい。R19とR20、又はR21とR22が連結して形成される環としては、例えば、ベンゼン環、及びナフタレン環が挙げられる。
【0148】
式1-2において、R23とR24は、連結して単環又は多環を形成していることが好ましい。R23とR24が連結して形成される環は、単環、又は多環であってもよい。単環としては、例えば、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、及びシクロヘキサジエン環が挙げられる。多環としては、例えば、インデン環が挙げられる。
【0149】
式1-2において、Rd1~Rd4は、無置換アルキル基であることが好ましい。また、Rd1~Rd4は、いずれも同一の基であることが好ましい。無置換アルキル基としては、例えば、炭素数が1~4の無置換アルキル基が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0150】
式1-2で表される化合物の水溶性を高める観点から、式1-2におけるW、及びWは、それぞれ独立に、置換アルキル基であることが好ましい。W及びWで表される置換アルキル基としては、例えば、上記「式1-1で表される化合物」の項で説明した式(a1)~式(a4)で表される基が挙げられ、好ましい態様も同様である。機上現像性の観点から、W、及びWは、それぞれ独立に、置換基を有するアルキル基であり、かつ、上記置換基は、-(OCHCH)-、スルホ基、スルホ基の塩、カルボキシ基、又はカルボキシ基の塩を少なくとも有する基であることが好ましい。
【0151】
式1-2において、Zaは、分子内の電荷を中和する対イオンを表す。R19~R22、R23~R24、Rd1~Rd4、W、W、及びR-Lの全てが電荷的に中性の基であれば、Zaは一価の対アニオンとなる。ただし、R19~R22、R23~R24、Rd1~Rd4、W、W、及びR-Lは、アニオン構造又はカチオン構造を有していてもよい。例えば、R19~R22、R23~R24、Rd1~Rd4、W、W、及びR-Lに2以上のアニオン構造が含まれる場合、Zaは対カチオンにもなり得る。なお、式1-2で表される化合物が、Zaを除き、化合物の全体において電荷的に中性な構造を有していれば、Zaは必要ない。Zaが対アニオンである場合の例は、式1-1におけるZaと同様であり、好ましい態様も同様である。Zaが対カチオンである場合の例も、式1-1におけるZaと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0152】
(式1-3で表される化合物~式1-7で表される化合物)
変色性化合物の一種である分解性化合物は、分解性、及び発色性の観点から、下記式1-3~式1-7のいずれか1つで表される化合物であることが好ましく、下記式1-3、下記式1-5、及び下記式1-6のいずれか1つで表される化合物であることがより好ましい。下記式1-3~式1-7で表される化合物は、シアニン色素である。
【0153】
【化21】
【0154】
式1-3~式1-7中、Rは、上記式2~式4のいずれか1つで表される基を表し、R19~R22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、-R、-OR、-CN、-SR、又は-NRを表し、R23、及びR24は、それぞれ独立に、-Rを表し、R25、及びR26は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は-Rを表し、R~Rは、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R19とR20、R21とR22、R23とR24、又はR25とR26は、連結して単環又は多環を形成してもよく、Lは、酸素原子、硫黄原子、又は-NR10-を表し、R10は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Rd1~Rd4、W、及びWは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基を表し、Zaは、電荷を中和する対イオンを表す。
【0155】
式1-3~式1-7におけるR、R19~R22、Rd1~Rd4、W、W、及びLは、式1-2におけるR、R19~R22、Rd1~Rd4、W、W、及びLと同義であり、好ましい態様も同様である。式1-7におけるR25及びR26は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0156】
以下、分解性化合物に包含されるシアニン色素の具体例を示す。ただし、シアニン色素は、以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0157】
【化22】
【0158】
分解性化合物に包含されるシアニン色素として、国際公開第2019/219560号に記載の赤外線吸収性化合物を好適に用いることができる。
【0159】
変色性化合物は、酸発色剤を含んでいてもよい。酸発色剤としては、例えば、下記「画像記録層」の項で説明する酸発色剤を用いることができ、好ましい態様も同様である。変色性化合物として、上記した分解性化合物と後述する酸発生剤とを組み合わせて使用してもよい。
【0160】
最外層は、1種単独、又は2種以上の変色性化合物を含んでもよい。
【0161】
最外層における変色性化合物の含有率は、発色性の観点から、最外層の全質量に対し、0.10質量%~50質量%であることが好ましく、0.50質量%~30質量%であることがより好ましく、1.0質量%~20質量%であることが特に好ましい。
【0162】
画像記録層における赤外線吸収剤の含有量(M)に対する、最外層における変色性化合物の含有量(M)の比(M/M)は、発色性の観点から、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.3以上3.0以下であることが特に好ましい。
【0163】
[他の成分]
最外層は、他の成分として、上記した成分以外の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、感脂化剤、酸発生剤、及び赤外線吸収剤が挙げられる。
【0164】
酸発生剤は、光又は熱により酸を発生する化合物である。酸発生剤としては、例えば、赤外線露光によって分解し酸を発生する化合物が挙げられる。発生する酸は、pKaが2以下の強酸(例えば、スルホン酸、及び塩酸)であることが好ましい。酸発生剤から発生した酸によって、酸発色剤が変色することができる。酸発生剤は、感度、及び安定性の観点から、オニウム塩化合物であることが好ましい。酸発生剤として好適なオニウム塩の具体例としては、国際公開第2016/047392号の段落0121~段落0124に記載された化合物が挙げられる。トリアリールスルホニウム又はジアリールヨードニウムの、スルホン酸塩、カルボン酸塩、BPh 、BF 、PF 、又はClO が好ましい。ここで、Phはフェニル基を表す。
【0165】
赤外線吸収剤としては、例えば、下記「画像記録層」の項で説明する赤外線吸収剤が挙げられる。
【0166】
[形成方法]
最外層は、公知の方法(例えば、塗布法)によって形成することができる。最外層の塗布量(固形分)は、5mg/m~2,000mg/mであることが好ましく、20mg/m~1,000mg/mであることがより好ましい。本開示において、「固形分」とは、溶媒以外の成分をいう。
【0167】
<<明度変化>>
ある実施形態において、110mJ/cmのエネルギー密度にて波長830nmの赤外線による露光を行った場合の、露光前後の明度変化ΔLは、2.0以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましく、5.0以上であることが更に好ましく、8.0以上であることが特に好ましく、10.0以上であることが最も好ましい。明度変化ΔLが上記範囲であることで、露光部の視認性を向上させることができる。明度変化ΔLの上限は制限されない。明度変化ΔLの上限としては、例えば、20.0が挙げられる。特に、最外層が変色性化合物を含む場合、明度変化ΔLが上記した範囲を満たすことが好ましい。
【0168】
明度変化ΔLは、以下の方法によって測定する。平版印刷版原版を、波長830nmの赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ株式会社製Luxel PLATESETTER T-9800を用いて、出力を99.5%、外面ドラム回転数を220rpm(revolutions per minute)、解像度を2,400dpi(dots per inch、1inch=25.4mm)とする条件(エネルギー密度:110mJ/cm)で露光する。露光は、25℃、及び50%RH(相対湿度)の環境下で行う。露光前後の平版印刷版原版の明度変化を測定する。明度の測定には、X-Rite社製分光測色計eXactを用いる。具体的に、平版印刷版原版の最外層側からL表色系のL値(明度)を測定し、露光部のL値と未露光部のL値との差の絶対値を明度変化ΔLとする。
【0169】
<<支持体>>
本開示の一実施形態に係る機上現像型平版印刷版原版は、支持体を有する。支持体としては、公知の平版印刷版原版に使用される支持体から適宜選択して用いることができる。支持体としては、親水性表面を有する支持体が好ましい。
【0170】
支持体としては、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。具体的に、支持体は、アルミニウム板と、上記アルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜と、を有することが好ましい。
【0171】
アルミニウムの陽極酸化皮膜は、アルミニウム板よりも画像記録層側に位置することが好ましい。アルミニウムの陽極酸化皮膜は、画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有することが好ましい。
【0172】
以下、支持体の好ましい態様について図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係る支持体の模式的断面図である。図1に示されるアルミニウム支持体12aは、アルミニウム板18と、アルミニウムの陽極酸化皮膜20a(以下、単に「陽極酸化皮膜20a」ともいう。)と、をこの順で積層した構造を有する。アルミニウム支持体12aにおける陽極酸化皮膜20aは、アルミニウム板18よりも画像記録層側に位置する。つまり、ある実施形態に係る平版印刷版原版は、アルミニウム板、並びに上記アルミニウム板上に、アルミニウムの陽極酸化皮膜、画像記録層、及び最外層をこの順で少なくとも有することが好ましい。
【0173】
以下、陽極酸化皮膜20aの好ましい態様について説明する。陽極酸化皮膜20aは、陽極酸化処理によってアルミニウム板18の表面に作製される皮膜である。陽極酸化皮膜20aは、皮膜表面に略垂直であり、かつ、個々が均一に分布した極微細なマイクロポア22aを有する。マイクロポア22aは、画像記録層側の陽極酸化皮膜20aの表面(すなわち、陽極酸化皮膜20aのアルミニウム板18側とは反対側の表面)から深さ方向(すなわち、アルミニウム板18側)に沿ってのびている。
【0174】
陽極酸化皮膜20aの表面におけるマイクロポア22aの平均径(すなわち、平均開口径)は、10nmを超え100nm以下である。陽極酸化皮膜20aの表面におけるマイクロポア22aの平均径が10nmを超えると、耐刷性及び画像視認性が向上する。陽極酸化皮膜20aの表面におけるマイクロポア22aの平均径が100nm以下であると、耐刷性が向上する。陽極酸化皮膜20aの表面におけるマイクロポア22aの平均径は、耐刷性、耐汚れ性、及び画像視認性のバランスの観点から、15nm~60nmであることが好ましく、20nm~50nmであることがより好ましく、25nm~40nmであることが特に好ましい。マイクロポア22aの内部の径は、マイクロポア22aの開口径よりも広がっても狭まってもよい。陽極酸化皮膜20aの表面におけるマイクロポア22aの平均径は、陽極酸化皮膜20aの表面の4か所をそれぞれ15万倍の倍率で電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて観察することで得られた4枚の画像において、400nm×600nmの範囲に存在する50個のマイクロポアの径(直径)を測定し、得られた測定値を平均した値である。なお、観察されるマイクロポア22aの形状が円状でない場合は、円相当径を用いる。「円相当径」とは、開口部の形状を、開口部の投影面積と同じ投影面積をもつ円と想定したときの円の直径である。
【0175】
深さ方向におけるマイクロポア22aの形状は、制限されない。図1に示されるマイクロポア22aは、略直管状(略円柱状)である。マイクロポア22aは、深さ方向(厚み方向)に向かって径が小さくなる円錐状であってもよい。マイクロポア22aの底部の形状は、制限されない。マイクロポア22aの底部の形状は、曲面状(凸状)であっても、平面状であってもよい。
【0176】
支持体におけるマイクロポアは、陽極酸化皮膜の表面からある深さの位置までのびる大径孔部と、上記大径孔部の底部と連通し、上記大径孔部との連通位置からある深さの位置までのびる小径孔部と、を有していてもよい。大径孔部に関して使用される「大径」との用語、及び小径孔部に関して使用される「小径」との用語は、孔部の径に関する相対的な大小関係を意味する。すなわち、大径孔部の径は、小径孔部の径よりも大きくなっていればよい。
【0177】
図2は、他の一実施形態に係る支持体の模式的断面図である。例えば、図2に示すように、アルミニウム支持体12bは、アルミニウム板18と、大径孔部24と小径孔部26とを有するマイクロポア22bを有する陽極酸化皮膜20bと、を有する。例えば、陽極酸化皮膜20b中のマイクロポア22bは、陽極酸化皮膜20bの表面から深さ10nm~1,000nm(すなわち、図2に示される深さD)の位置までのびる大径孔部24と、大径孔部24の底部と連通し、大径孔部24との連通位置から更に深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部26と、を有する。大径孔部及び小径孔部の具体的な態様としては、例えば、特開2019-162855号公報の段落0107~段落0114に記載の態様を使用することができる。
【0178】
ある実施形態において、支持体は、アルミニウム板と、上記アルミニウム板上に配置されたアルミニウムの陽極酸化皮膜と、を有し、上記陽極酸化皮膜は、上記アルミニウム板よりも画像記録層側に位置し、上記陽極酸化皮膜は、上記画像記録層側の表面から深さ方向にのびるマイクロポアを有し、上記陽極酸化皮膜の表面における上記マイクロポアの平均径は、10nmを超え100nm以下であることが好ましい。さらに、マイクロポアは、陽極酸化皮膜の表面から深さ10nm~1,000nmの位置までのびる大径孔部と、上記大径孔部の底部と連通し、上記大径孔部との連通位置から深さ20nm~2,000nmの位置までのびる小径孔部と、を有し、上記陽極酸化皮膜の表面における上記大径孔部の平均径は、15nm~100nmであり、上記連通位置における上記小径孔部の平均径は、13nm以下であることが好ましい。
【0179】
[支持体の製造方法]
支持体の製造方法としては、例えば、以下の工程を順番に実施する製造方法が好ましい。
(1)粗面化処理工程:アルミニウム板に粗面化処理を施す工程
(2)陽極酸化処理工程:粗面化処理されたアルミニウム板を陽極酸化する工程
(3)ポアワイド処理工程:陽極酸化処理工程で得られた陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板を、酸水溶液又はアルカリ水溶液に接触させ、陽極酸化皮膜中のマイクロポアの径を拡大させる工程
以下、各工程の手順について詳述する。
【0180】
(粗面化処理工程)
粗面化処理工程は、例えば、アルミニウム板の表面に、電気化学的粗面化処理を含む粗面化処理を施すことによって実施される。粗面化処理工程は、後述する陽極酸化処理工程の前に実施されることが好ましいが、アルミニウム板の表面が既に好ましい表面形状を有していれば、実施しなくてもよい。粗面化処理工程は、例えば、特開2019-162855号公報の段落0086~段落0101に記載された方法で行うことができる。
【0181】
(陽極酸化処理工程)
陽極酸化処理工程の手順は、上述したマイクロポアが得られれば特に制限されず、公知の方法を利用することができる。陽極酸化処理工程においては、例えば、硫酸、リン酸、又はシュウ酸の水溶液を電解液として用いることができる。例えば、硫酸の濃度としては、100g/L~300g/Lが挙げられる。陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって適宜設定される。例えば、液温として5℃~70℃(好ましくは10℃~60℃)、電流密度として0.5A/dm~60A/dm(好ましくは1A/dm~60A/dm)、電圧として1V~100V(好ましくは5V~50V)、電解時間として1秒~100秒(好ましくは5秒~60秒)、及び皮膜量として0.1g/m~5g/m(好ましくは0.2g/m~3g/m)の条件が挙げられる。
【0182】
(ポアワイド処理工程)
ポアワイド処理工程は、上述した陽極酸化処理工程により形成された陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの径を拡大させる処理である。ポアワイド処理は、上述した陽極酸化処理工程により得られたアルミニウム板を、酸水溶液又はアルカリ水溶液に接触させることにより行うことができる。接触させる方法としては、特に制限されず、例えば、浸せき法、及びスプレー法が挙げられる。
【0183】
<<画像記録層>>
本開示の一実施形態に係る機上現像型平版印刷版原版は、画像記録層を有する。画像記録層は、ネガ型画像記録層であることが好ましい。画像記録層は、重合開始剤、及び重合性化合物を含むことが好ましく、赤外線吸収剤、重合開始剤、及び重合性化合物を含むことが好ましい。
【0184】
[赤外線吸収剤]
画像記録層は、赤外線吸収剤を含むことが好ましい。赤外線吸収剤としては、例えば、顔料、及び染料が挙げられる。
【0185】
赤外線吸収剤として用いられる染料としては、例えば、市販の染料、及び公知の染料(例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている染料)が挙げられる。具体的な染料としては、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、及び金属チオレート錯体が挙げられる。
【0186】
好ましい染料としては、例えば、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、及びインドレニンシアニン色素が挙げられる。より好ましい染料としては、シアニン色素、及びインドレニンシアニン色素が挙げられる。上記の中でも、シアニン色素が特に好ましい。
【0187】
赤外線吸収剤は、メソ位に、酸素原子、窒素原子、又はハロゲン原子を有するカチオン性のポリメチン色素であることが好ましい。好ましいカチオン性のポリメチン色素としては、例えば、シアニン色素、ピリリウム色素、チオピリリウム色素、及びアズレニウム色素が好ましく挙げられる。入手の容易性、及び導入反応時の溶剤溶解性の観点から、カチオン性のポリメチン色素は、シアニン色素であることが好ましい。
【0188】
シアニン色素の具体例としては、特開2001-133969号公報の段落0017~段落0019に記載の化合物、特開2002-023360号公報の段落0016~段落0021の化合物、及び特開2002-040638号公報の段落0012~段落0037に記載の化合物が挙げられる。好ましいシアニン色素としては、例えば、特開2002-278057号公報の段落0034~段落0041の化合物、及び特開2008-195018号公報の段落0080~段落0086に記載の化合物が挙げられる。特に好ましいシアニン色素としては、例えば、特開2007-90850号公報の段落0035~段落0043に記載の化合物、及び特開2012-206495号公報の段落0105~段落0113に記載の化合物が挙げられる。また、特開平5-5005号公報の段落0008~段落0009、及び特開2001-222101号公報の段落0022~段落0025に記載の化合物も好ましく使用することができる。
【0189】
シアニン色素の対カチオンとして、例えば、後述するボレート化合物を用いてもよい。
【0190】
顔料としては、特開2008-195018号公報の段落0072~段落0076に記載の化合物が好ましい。
【0191】
赤外線吸収剤として、赤外線露光により分解する赤外線吸収剤(以下、「分解性赤外線吸収剤」ともいう。)を好適に用いることができる。赤外線露光により分解する赤外線吸収剤としては、特表2008-544322号公報、国際公開第2016/027886号、国際公開第2017/141882号、又は国際公開第2018/043259号に記載の化合物を好適に用いることができる。また、画像記録層では、赤外線吸収剤として、上記「最外層」の項に記載された変色性化合物を好適に用いることもできる。画像記録層において赤外線吸収剤として使用される変色性化合物の好ましい態様は、上記「最外層」の項に記載された変色性化合物の好ましい態様と同じである。
【0192】
画像記録層は、1種単独又は2種以上の赤外線吸収剤を含んでもよい。また、赤外線吸収剤として、顔料と染料とを併用してもよい。
【0193】
赤外線吸収剤の含有率は、画像記録層の全質量に対し、0.1質量%~10.0質量%であることが好ましく、0.5質量%~5.0質量%であることがより好ましい。最外層が赤外線吸収剤を含む場合、経時視認性、保存安定性、及び、UV耐刷性の観点から、画像記録層中の赤外線吸収剤の総含有量は、最外層中の赤外線吸収剤の総含有量以上であることが好ましく、最外層中の赤外線吸収剤の総含有量よりも多いことがより好ましい。赤外線吸収剤の総含有量は、質量によって表される。
【0194】
[重合開始剤]
画像記録層は、重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤としては、例えば、電子受容型重合開始剤、及び電子供与型重合開始剤が挙げられる。画像記録層は、電子受容型重合開始剤を含むことが好ましく、電子受容型重合開始剤及び電子供与型重合開始剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、電子受容型重合開始剤及び電子供与型重合開始剤を含むことが特に好ましい。
【0195】
(電子受容型重合開始剤)
画像記録層は、電子受容型重合開始剤を含むことが好ましい。電子受容型重合開始剤は、赤外線露光により赤外線吸収剤の電子が励起した際に、分子間電子移動で一電子を受容することにより、重合開始種(例えばラジカル)を発生する化合物である。
【0196】
電子受容型重合開始剤としては、例えば、光、熱、又はその両方のエネルギーにより重合開始種(例えば、ラジカル、又はカチオン)を発生する化合物(例えば、熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、及び光重合開始剤)が挙げられる。電子受容型重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、オニウム塩化合物がより好ましい。また、電子受容型重合開始剤は、赤外線感光性重合開始剤であることが好ましい。
【0197】
好ましい電子受容型重合開始剤として、硬化性の観点から、オキシムエステル化合物、及びオニウム塩化合物が挙げられる。耐刷性の観点から、ヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物、又はアジニウム塩化合物が好ましく、ヨードニウム塩化合物、又はスルホニウム塩化合物がより好ましく、ヨードニウム塩化合物が特に好ましい。
【0198】
ヨードニウム塩化合物としては、ジアリールヨードニウム塩化合物が好ましく、特に、電子供与性基、例えば、アルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩化合物がより好ましい。また、ヨードニウム塩化合物としては、非対称のジフェニルヨードニウム塩化合物が好ましい。ヨードニウム塩化合物の具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-メトキシフェニル-4-(2-メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-(2-メチルプロピル)フェニル-p-トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4-ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=1-ペルフルオロブタンスルホナート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、及びビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0199】
ヨードニウム塩化合物又はスルホニウム塩化合物の対アニオンの例としては、スルホネートアニオン、カルボキシレートアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、p-トルエンスルホネートアニオン、トシレートアニオン、スルホンアミドアニオン、又はスルホンイミドアニオンが挙げられる。上記の中でも、スルホンアミドアニオン、又はスルホンイミドアニオンが好ましく、スルホンイミドアニオンがより好ましい。スルホンアミドアニオンとしては、アリールスルホンアミドアニオンが好ましい。また、スルホンイミドアニオンとしては、ビスアリールスルホンイミドアニオンが好ましい。スルホンアミドアニオン又はスルホンイミドアニオンの具体例としては、国際公開第2019/013268号の段落0034に記載されている化合物が挙げられる。上記公報の内容は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0200】
電子受容型重合開始剤は、露光後の経時発色性、現像性、及び、得られる平版印刷版におけるUV耐刷性の観点から、下記式(II)で表される化合物、及び下記式(III)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、式(II)で表される化合物であることがより好ましい。また、下記式(II)で表される化合物、及び下記式(III)で表される化合物は、視認性に優れるため好ましい。
【0201】
【化23】
【0202】
式(II)及び式(III)中、Xは、ハロゲン原子を表し、R、R、及びRは、それぞれ独立に、1価の炭化水素基を表す。炭化水素基の炭素数は、1~20であることが好ましい。式(II)中、Xは、ハロゲン原子を表し、Rは、アリール基を表すことが好ましい。
【0203】
式(II)及び式(III)におけるXとしては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。式(II)及び式(III)におけるXは、臭素原子であることが好ましい。
【0204】
式(II)及び式(III)において、R、R、及びRは、それぞれ独立に、アリール基であることが好ましく、感度と保存安定性とのバランスに優れる観点から、アミド基で置換されているアリール基であることがより好ましい。
【0205】
電子受容型重合開始剤は、下記式(IV)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0206】
【化24】
【0207】
式(IV)中、Xは、ハロゲン原子を表し、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数が1~20である1価の炭化水素基を表し、p、及びqは、それぞれ独立に、1~5の整数を表し、p+qは、2~6の整数である。式(IV)におけるXは、式(II)におけるXと同義である。
【0208】
式(II)で表される化合物の具体例を以下に示す。ただし、式(II)で表される化合物は、以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0209】
【化25】
【0210】
【化26】
【0211】
【化27】
【0212】
【化28】
【0213】
【化29】
【0214】
【化30】
【0215】
【化31】
【0216】
電子受容型重合開始剤の最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位は、感度の向上、及び版飛びを発生しにくくする観点から、-3.00eV以下であることが好ましく、-3.02eV以下であることがより好ましい。電子受容型重合開始剤の最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位は、-3.80eV以上であることが好ましく、-3.50eV以上であることがより好ましい。
【0217】
本開示において、最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位及び最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位の計算は、以下の方法により行う。まず、計算対象となる化合物における対アニオンは無視する。量子化学計算ソフトウェアGaussian09を用い、DFT(B3LYP/6-31G(d))によって構造最適化を行う。MO(分子軌道)エネルギー計算は、上記構造最適化で得た構造に基づくDFT(B3LYP/6-31+G(d,p)/CPCM(solvent=methanol))で行う。MOエネルギー計算で得られたMOエネルギーEbare(単位:hartree)を以下の式により、本開示においてHOMO及びLUMOの値として用いるEscaled(単位:eV)へ変換する。なお、以下の式において、27.2114は単にhartreeをeVに変換するための係数であり、0.823168及び-1.07634は調節係数であり、計算対象となる化合物のHOMOとLUMOとを計算が実測の値に合うように定める。
式:Escaled=0.823168×27.2114×Ebare-1.07634
【0218】
画像記録層は、1種単独又は2種以上の電子受容型重合開始剤を含んでもよい。
【0219】
電子受容型重合開始剤の含有率は、画像記録層の全質量に対し、0.1質量%~50質量%であることが好ましく、0.5質量%~30質量%であることがより好ましく、0.8質量%~20質量%であることが特に好ましい。
【0220】
(電子供与型重合開始剤)
画像記録層は、電子供与型重合開始剤を含むことが好ましい。電子供与型重合開始剤は、赤外線露光により赤外線吸収剤の電子が励起又は分子内移動した際に、赤外線吸収剤の一電子抜けた軌道に分子間電子移動で一電子を供与することにより、重合開始種(例えば、ラジカル)を発生する化合物である。電子供与型重合開始剤は、電子供与型ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0221】
画像記録層は、耐刷性の観点から、電子供与型重合開始剤として、ボレート化合物を含むことが好ましい。ボレート化合物としては、耐刷性及び発色性の観点から、テトラアリールボレート化合物、又はモノアルキルトリアリールボレート化合物であることが好ましく、テトラアリールボレート化合物であることがより好ましい。
【0222】
ボレート化合物が有する対カチオンは、制限されない。ボレート化合物が有する対カチオンは、アルカリ金属イオン、又はテトラアルキルアンモニウムイオンであることが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はテトラブチルアンモニウムイオンであることがより好ましい。また、ボレート化合物が有する対カチオンは、上記「赤外線吸収剤」の項で説明したカチオン性のポリメチン色素であってもよい。
【0223】
好ましいボレート化合物としては、例えば、ナトリウムテトラフェニルボレートが挙げられる。
【0224】
電子供与型重合開始剤の好ましい具体例(B-1~B-9)を以下に示す。下記化学式において、Phは、フェニル基を表し、Buは、n-ブチル基を表す。ただし、電子供与型重合開始剤は、以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0225】
【化32】
【0226】
電子供与型重合開始剤の最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位は、感度の向上、及び版飛びを発生しにくくする観点から、-6.00eV以上であることが好ましく、-5.95eV以上であることがより好ましく、-5.93eV以上であることが特に好ましい。電子供与型重合開始剤の最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位は、-5.00eV以下であることが好ましく、-5.40eV以下であることがより好ましい。
【0227】
画像記録層は、1種単独又は2種以上の電子供与型重合開始剤を含んでもよい。
【0228】
電子供与型重合開始剤の含有率は、感度、及び耐刷性の観点から、画像記録層の全質量に対し、0.01質量%~30質量%であることが好ましく、0.05質量%~25質量%であることがより好ましく、0.1質量%~20質量%であることが特に好ましい。
【0229】
(電子供与型重合開始剤と電子受容型重合開始剤とがイオン対を形成してなる化合物)
ある実施形態において、画像記録層は、電子供与型重合開始剤と電子受容型重合開始剤とがイオン対を形成してなる化合物(すなわち、塩)を含むことが好ましい。例えば、重合開始剤は、電子供与型重合開始剤におけるアニオンと電子受容型重合開始剤におけるカチオンとがイオン対を形成してなる化合物であることが好ましく、オニウムカチオンとボレートアニオンとがイオン対を形成してなる化合物であることがより好ましく、ヨードニウムカチオン又はスルホニウムカチオンとボレートアニオンとがイオン対を形成してなる化合物であることが更に好ましく、ジアリールヨードニウムカチオン又はトリアリールスルホニウムカチオンとテトラアリールボレートアニオンとがイオン対を形成してなる化合物であることが特に好ましい。イオン対を形成する電子供与型重合開始剤におけるアニオンの好ましい態様は、既述の電子供与型重合開始剤におけるアニオンの好ましい態様と同様である。イオン対を形成する電子受容型重合開始剤におけるカチオンの好ましい態様は、既述の電子受容型重合開始剤におけるカチオンの好ましい態様と同様である。
【0230】
画像記録層が電子供与型重合開始剤であるアニオンと電子受容型重合開始剤であるカチオンとを含む場合(つまり、画像記録層が上記のようなイオン対を形成してなる化合物を含む場合)、画像記録層は、電子受容型重合開始剤及び電子供与型重合開始剤を含むものとする。電子供与型重合開始剤と電子受容型重合開始剤とがイオン対を形成してなる化合物は、電子供与型重合開始剤として用いてもよいし、電子受容型重合開始剤として用いてもよい。電子供与型重合開始剤と電子受容型重合開始剤とがイオン対を形成してなる化合物は、既述の電子供与型重合開始剤と併用してもよいし、既述の電子受容型重合開始剤と併用してもよい。
【0231】
(重合開始剤の含有量)
画像記録層は、1種単独又は2種以上の重合開始剤を含んでもよい。重合開始剤の含有率は、画像記録層の全質量に対し、0.1質量%~50質量%であることが好ましく、0.5質量%~30質量%であることがより好ましく、0.8質量%~20質量%であることが特に好ましい。
【0232】
(電子供与型重合開始剤と赤外線吸収剤との好ましい態様)
画像記録層は、感度の向上、及び耐刷性の観点から、赤外線吸収剤の最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位-電子供与型重合開始剤の最高被占軌道(HOMO)のエネルギー準位の値は、0.70eV以下であることが好ましく、0.70eV~-0.10eVであることがより好ましい。なお、マイナスの値は、電子供与型重合開始剤のHOMOのエネルギー準位が赤外線吸収剤のHOMOのエネルギー準位よりも高いことを意味する。
【0233】
(電子受容型重合開始剤と赤外線吸収剤との好ましい態様)
画像記録層は、感度の向上、及び耐刷性の観点から、電子受容型重合開始剤の最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位-赤外線吸収剤の最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位の値は、1.00eV以下であることが好ましく、1.00eV~-0.10eVであることがより好ましく、0.80eV~0.30eVであることが特に好ましい。なお、マイナスの値は、赤外線吸収剤のLUMOのエネルギー準位が電子受容型重合開始剤のLUMOのエネルギー準位よりも高いことを意味する。
【0234】
[重合性化合物]
画像記録層は、重合性化合物を含むことが好ましい。本開示において、「重合性化合物」とは、重合性基を有する化合物を意味する。
【0235】
重合性基としては、例えば、公知の重合性基が挙げられる。重合性基は、エチレン性不飽和基であることが好ましい。また、重合性基は、ラジカル重合性基、又はカチオン重合性基であってもよく、ラジカル重合性基であることが好ましい。ラジカル重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルフェニル基、及びビニル基が挙げられ、反応性の観点から(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0236】
重合性化合物の分子量(分子量分布がある場合には重量平均分子量)は、50以上2,500未満であることが好ましい。
【0237】
重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性化合物、又はカチオン重合性化合物であってもよく、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物(すなわち、エチレン性不飽和化合物)であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物であることが好ましく、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物であることがより好ましい。
【0238】
重合性化合物の化学的形態は、モノマー、プレポリマー(例えば、2量体、3量体、又はオリゴマー)、又はそれらの混合物であってもよい。
【0239】
重合性化合物は、UV耐刷性の観点から、3個以上の重合性基を有することが好ましく、7個以上の重合性基を有することがより好ましく、10個以上の重合性基を有することが特に好ましい。重合性化合物は、得られる平版印刷版におけるUV耐刷性の観点から、3個以上(好ましくは7個以上、より好ましくは10個以上)のエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、3個以上(好ましくは7個以上、より好ましくは10個以上)の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましい。
【0240】
(オリゴマー)
重合性化合物は、オリゴマーである重合性化合物(以下、単に「オリゴマー」ともいう。)を含むことが好ましい。本開示において「オリゴマー」とは、分子量(分子量分布がある場合には重量平均分子量)が600以上10,000以下であり、かつ、少なくとも1つの重合性基を有する重合性化合物を意味する。耐薬品性、及びUV耐刷性に優れる観点から、オリゴマーの分子量は、1,000以上5,000以下であることが好ましい。
【0241】
UV耐刷性を向上させる観点から、1分子のオリゴマーにおける重合性基の数は、2個以上であることが好ましく、3個以上であることがより好ましく、6個以上であることが更に好ましく、10以上であることが特に好ましい。オリゴマーにおける重合性基の上限値は、制限されない。オリゴマーにおける重合性基の数は、20以下であることが好ましい。
【0242】
UV耐刷性、及び機上現像性の観点から、オリゴマーは、重合性基の数が7以上であり、かつ、分子量が1,000以上10,000以下であるオリゴマーであることが好ましく、重合性基の数が7以上20以下であり、かつ、分子量が1,000以上5,000以下であるオリゴマーであることがより好ましい。なお、画像記録層が重合性化合物としてオリゴマーを含む場合、画像記録層は、オリゴマーを製造する過程で生じる可能性のあるポリマー成分を含んでいてもよい。
【0243】
UV耐刷性、視認性、及び機上現像性の観点から、オリゴマーは、ウレタン結合を有する化合物、エステル結合を有する化合物、及びエポキシ残基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ウレタン結合を有する化合物を含むことがより好ましい。本開示において「エポキシ残基」とは、エポキシ基により形成される構造を有する基を意味する。エポキシ基により形成される構造としては、例えば、酸基(例えば、カルボン酸基)とエポキシ基との反応により得られる構造が挙げられる。
【0244】
-ウレタン結合を有する化合物-
オリゴマーの一例であるウレタン結合を有する化合物としては、例えば、下記式(Ac-1)又は式(Ac-2)で表される基を少なくとも有する化合物であることが好ましく、下記式(Ac-1)で表される基を少なくとも有する化合物であることがより好ましい。
【0245】
【化33】
【0246】
式(Ac-1)及び式(Ac-2)中、L~Lは、それぞれ独立に、炭素数が2~20である二価の炭化水素基を表し、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
【0247】
式(Ac-1)及び式(Ac-2)におけるL~Lは、それぞれ独立に、炭素数が2~20のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が2~10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数が4~8のアルキレン基であることが特に好ましい。アルキレン基は、分岐構造、又は環構造を有していてもよい。アルキレン基は、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
【0248】
式(Ac-1)又は式(Ac-2)における波線部は、それぞれ独立に、下記式(Ae-1)又は式(Ae-2)で表される基における波線部と直接結合することが好ましい。
【0249】
【化34】
【0250】
式(Ae-1)及び式(Ae-2)中、Rは、それぞれ独立に、アクリロイルオキシ基、又はメタクリロイルオキシ基を表し、波線部分は、式(Ac-1)又は式(Ac-2)における波線部との結合位置を表す。
【0251】
ウレタン結合を有する化合物として、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、の反応により得られるポリウレタンに、高分子反応により重合性基を導入した化合物を用いてもよい。例えば、酸基を有するポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物を反応させて得られたポリウレタンオリゴマーに、エポキシ基及び重合性基を有する化合物を反応させることにより、ウレタン結合を有する化合物を得てもよい。
【0252】
-エステル結合を有する化合物-
オリゴマーの一例であるエステル結合を有する化合物における重合性基の数は、3個以上であることが好ましく、6個以上であることがより好ましい。
【0253】
-エポキシ残基を有する化合物-
オリゴマーの一例であるエポキシ残基を有する化合物としては、化合物内にヒドロキシ基を含む化合物が好ましい。エポキシ残基を有する化合物における重合性基の数は、2個~6個であることが好ましく、2個~3個であることがより好ましい。エポキシ残基を有する化合物は、例えば、エポキシ基を有する化合物にアクリル酸を反応することにより得ることができる。
【0254】
オリゴマーとしては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、UA510H、UA-306H、UA-306I、及びUA-306T(いずれも共栄社化学株式会社製)、UV-1700B、UV-6300B、及びUV7620EA(いずれも日本合成化学工業株式会社製)、U-15HA(新中村化学工業株式会社製)、並びにEBECRYL450、EBECRYL657、EBECRYL885、EBECRYL800、EBECRYL3416、及びEBECRYL860(いずれもダイセルオルネクス株式会社製)が挙げられる。ただし、オリゴマーの市販品は、上記した市販品に制限されるものではない。
【0255】
オリゴマーの含有率は、耐薬品性、UV耐刷性、及び機上現像カスの抑制性を向上させる観点から、画像記録層における重合性化合物の全質量に対し、30質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましく、80質量%~100質量%であることが特に好ましい。
【0256】
(低分子重合性化合物)
重合性化合物は、オリゴマー以外の重合性化合物を更に含んでいてもよい。耐薬品性の観点から、オリゴマー以外の重合性化合物としては、低分子重合性化合物であることが好ましい。低分子重合性化合物の化学的形態は、単量体、2量体、3量体、又はそれらの混合物であってもよい。耐薬品性の観点から、低分子重合性化合物は、3個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物、及びイソシアヌル環構造を有する重合性化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0257】
本開示において「低分子重合性化合物」とは、分子量(分子量分布がある場合には重量平均分子量)が50以上600未満である重合性化合物を意味する。耐薬品性、UV耐刷性、及び機上現像カスの抑制性に優れる観点から、低分子重合性化合物の分子量は、100以上600未満であることが好ましく、300以上600未満であることがより好ましく、400以上600未満であることが特に好ましい。
【0258】
重合性化合物が、オリゴマーに加えて、オリゴマー以外の重合性化合物として低分子重合性化合物を含む場合、耐薬品性、UV耐刷性、及び機上現像カスの抑制性の観点から、低分子重合性化合物の含有量(重合性化合物が2種以上の低分子重合性化合物を含む場合はその合計量)に対するオリゴマーの含有量(重合性化合物が2種以上のオリゴマーを含む場合はその合計量)の比(すなわち、オリゴマー/低分子重合性化合物)は、質量基準で、10/1~1/10であることが好ましく、10/1~3/7であることがより好ましく、10/1~7/3であることが特に好ましい。
【0259】
重合性化合物として、国際公開第2019/013268号の段落0082~段落0086に記載の重合性化合物を用いてもよい。上記公報の内容は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0260】
画像記録層は、1種単独又は2種以上の重合性化合物を含んでもよい。画像記録層は、UV耐刷性の観点から、2種以上の重合性化合物を含むことが好ましい。
【0261】
重合性化合物の含有率(画像記録層が2種以上の重合性化合物を含む場合には重合性化合物の総含有率)は、画像記録層の全質量に対して、5質量%~75質量%であることが好ましく、10質量%~70質量%であることがより好ましく、15質量%~60質量%であることが特に好ましい。
【0262】
[粒子]
画像記録層は、現像性、及びUV耐刷性の観点から、粒子を含むことが好ましい。粒子は、無機粒子であってもよいし、有機粒子であってもよい。画像記録層は、粒子として、有機粒子を含むことが好ましく、樹脂粒子を含むことがより好ましい。無機粒子としては、例えば、公知の無機粒子を用いることができる。無機粒子としては、金属酸化物粒子(例えば、シリカ粒子、又はチタニア粒子)を好適に用いることができる。
【0263】
(樹脂粒子)
樹脂粒子としては、例えば、付加重合型樹脂を含む粒子(すなわち、付加重合型樹脂粒子)、重付加型樹脂を含む粒子(すなわち、重付加型樹脂粒子)、及び重縮合型樹脂を含む粒子(すなわち、重縮合型樹脂粒子)が挙げられる。樹脂粒子としては、付加重合型樹脂粒子、又は重付加型樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子、熱融着が可能となる観点から、熱可塑性樹脂を含む粒子(すなわち、熱可塑性樹脂粒子)であってもよい。
【0264】
樹脂粒子の形態は、例えば、マイクロカプセル、又はミクロゲル(すなわち、架橋樹脂粒子)であってもよい。
【0265】
樹脂粒子は、熱可塑性樹脂粒子、熱反応性樹脂粒子、重合性基を有する樹脂粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及びミクロゲル(架橋樹脂粒子)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記の中でも、重合性基を有する樹脂粒子が好ましい。特に好ましい実施形態では、樹脂粒子は少なくとも1つのエチレン性不飽和基を含む。上記のような樹脂粒子により、露光部の耐刷性、及び未露光部の機上現像性を高める効果が得られる。
【0266】
-熱可塑性樹脂粒子-
熱可塑性樹脂粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9-123387号公報、特開平9-131850号公報、特開平9-171249号公報、特開平9-171250号公報、又は欧州特許第931647号明細書に記載の熱可塑性樹脂粒子が好ましい。
【0267】
熱可塑性樹脂粒子を構成する樹脂の具体例としては、モノマー(例えば、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、及びポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレート)のホモポリマー若しくはコポリマー、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0268】
熱可塑性樹脂粒子は、インキ着肉性、及びUV耐刷性の観点から、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位とニトリル基を有する構成単位とを有する樹脂を含むことが好ましい。
【0269】
芳香族ビニル化合物は、芳香環にビニル基が結合した構造を有する化合物であればよい。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン化合物、及びビニルナフタレン化合物が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレン化合物が好ましく、スチレンがより好ましい。スチレン化合物としては、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、β-メチルスチレン、p-メチル-β-メチルスチレン、α-メチルスチレン、及びp-メトキシ-β-メチルスチレンが挙げられる。
【0270】
芳香族ビニル化合物により形成される構成単位の含有量は、インキ着肉性の観点から、後述するニトリル基を有する構成単位の含有量より多いことが好ましい。芳香族ビニル化合物により形成される構成単位の含有率は、熱可塑性樹脂粒子における熱可塑性樹脂の全質量に対し、15質量%~85質量%であることがより好ましく、30質量%~70質量%であることが特に好ましい。
【0271】
ニトリル基を有する構成単位は、ニトリル基を有するモノマーを用いて導入されることが好ましい。ニトリル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリロニトリル化合物が挙げられる。ニトリル基を有するモノマーの好ましい例としては、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。ニトリル基を有する構成単位としては、(メタ)アクリロニトリルにより形成される構成単位が好ましい。
【0272】
ニトリル基を有する構成単位の含有量は、インキ着肉性の観点から、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位の含有量よりも少ないことが好ましい。ニトリル基を有する構成単位の含有率は、熱可塑性樹脂粒子における熱可塑性樹脂の全質量に対し、55質量%~90質量%であることが好ましく、60質量%~85質量%であることがより好ましい。
【0273】
熱可塑性樹脂粒子が芳香族ビニル化合物により形成される構成単位とニトリル基を有する構成単位とを有する樹脂を含む場合、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位及びニトリル基を有する構成単位の含有量比(すなわち、芳香族ビニル化合物により形成される構成単位:ニトリル基を有する構成単位)は、質量基準で、5:5~9:1であることが好ましく、6:4~8:2であることがより好ましい。
【0274】
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂は、UV耐刷性、及び耐薬品性の観点から、N-ビニル複素環化合物により形成される構成単位を更に有することが好ましい。N-ビニル複素環化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロール、N-ビニルフェノチアジン、N-ビニルコハク酸イミド、N-ビニルフタルイミド、N-ビニルカプロラクタム、及びN-ビニルイミダゾールが挙げられる。N-ビニル複素環化合物としては、N-ビニルピロリドンが好ましい。
【0275】
N-ビニル複素環化合物により形成される構成単位の含有率は、熱可塑性樹脂粒子における熱可塑性樹脂の全質量に対し、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましい。
【0276】
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂は、酸性基を有する構成単位を有してもよい。ただし、機上現像性、及びインキ着肉性の観点から、熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂は、酸性基を有する構成単位を有しないことが好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂における酸性基を有する構成単位の含有率は、熱可塑性樹脂粒子における熱可塑性樹脂の全質量に対し、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。上記含有率の下限は、制限されず、0質量%であってもよい。
【0277】
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂の酸価は、160mgKOH/g以下であることが好ましく、80mgKOH/g以下であることがより好ましく、40mgKOH/g以下であることが特に好ましい。上記酸価の下限は、制限されず、0mgKOH/gであってもよい。本開示において、酸価は、「JIS K0070:1992」に準拠した測定法により求められる。
【0278】
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂は、インキ着肉性の観点から、疎水性基を含む構成単位を有してもよい。疎水性基としては、例えば、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基が挙げられる。疎水性基を含む構成単位としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート化合物、アリール(メタ)アクリレート化合物、又は、アラルキル(メタ)アクリレート化合物により形成される構成単位が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート化合物により形成される構成単位がより好ましい。
【0279】
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂における、疎水性基を有する構成単位の含有量は、熱可塑性樹脂粒子における熱可塑性樹脂の全質量に対し、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0280】
熱可塑性樹脂粒子に含まれる熱可塑性樹脂は、UV耐刷性、及び機上現像性の観点から、親水性基を有することが好ましい。親水性基は、親水性を有する構造であれば制限されない。親水性基としては、例えば、酸基(例えば、カルボキシ基)、ヒドロキシ基、アミノ基、ニトリル基、及びポリアルキレンオキシド構造を有する基が挙げられる。親水性基は、UV耐刷性、及び機上現像性の観点から、ポリアルキレンオキシド構造を有する基、ポリエステル構造を有する基、又はスルホン酸基であることが好ましく、ポリアルキレンオキシド構造を有する基、又はスルホン酸基であることがより好ましく、ポリアルキレンオキシド構造を有する基であることが特に好ましい。
【0281】
ポリアルキレンオキシド構造は、機上現像性の観点から、ポリエチレンオキシド構造、ポリプロピレンオキシド構造、又は、ポリ(エチレンオキシド/プロピレンオキシド)構造であることが好ましい。
【0282】
ポリアルキレンオキシド構造を有する基は、機上現像性の観点から、ポリプロピレンオキシド構造を有することが好ましく、ポリエチレンオキシド構造及びポリプロピレンオキシド構造を有することがより好ましい。
【0283】
ポリアルキレンオキシド構造におけるアルキレンオキシド構造の数は、機上現像性の観点から、2個以上であることが好ましく、5個以上であることがより好ましく、5個~200個であることが更に好ましく、8個~150個であることが特に好ましい。
【0284】
親水性基は、下記式POにより表される基であることが好ましい。
【0285】
【化35】
【0286】
式PO中、Lは、それぞれ独立に、アルキレン基を表し、Rは、水素原子、又はアルキル基を表し、nは、1~100の整数を表す。
【0287】
式PO中、Lは、それぞれ独立に、エチレン基、1-メチルエチレン基、又は2-メチルエチレン基であることが好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
【0288】
式PO中、Rは、水素原子、又は炭素数が1~18のアルキル基であることが好ましく、水素原子、又は炭素数が1~10のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、又は炭素数が1~4のアルキル基であることが更に好ましく、水素原子、又はメチル基であることが特に好ましい。
【0289】
式PO中、nは、1~10の整数であることが好ましく、1~4の整数であることがより好ましい。
【0290】
親水性基を有する構成単位の含有率は、熱可塑性樹脂粒子における熱可塑性樹脂の全質量に対し、5質量%~60質量%であることが好ましく、10質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0291】
熱可塑性樹脂粒子に含まれる樹脂は、その他の構成単位を更に有してもよい。その他の構成単位としては、上述の各構成単位以外の構成単位、例えば、アクリルアミド化合物又はビニルエーテル化合物により形成される構成単位が挙げられる。
【0292】
熱可塑性樹脂における、その他の構成単位の含有率は、熱可塑性樹脂粒子における熱可塑性樹脂の全質量に対し、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0293】
-熱反応性樹脂粒子-
熱反応性樹脂粒子としては、例えば、熱反応性基を有する樹脂粒子が挙げられる。熱反応性樹脂粒子は、熱反応による架橋、及び架橋する際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0294】
熱反応性基は、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、重合性基であることが好ましい。好ましい熱反応性基としては、例えば、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、及びアリル基)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、及びオキセタニル基)、付加反応を行うイソシアナート基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、及びカルボキシ基)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、並びに開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基が挙げられる。
【0295】
熱反応性基を有する樹脂は、付加重合型樹脂、重付加型樹脂、又は重縮合型樹脂であってもよい。熱反応性基を有する樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよい。
【0296】
-マイクロカプセル-
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001-277740号公報、特開2001-277742号公報に記載のように、画像記録層の構成成分の少なくとも一部(好ましくは疎水性化合物)を内包したマイクロカプセルが好ましい。樹脂粒子としてマイクロカプセルを含む画像記録層は、画像記録層の構成成分のうち疎水性成分(すなわち、疎水性化合物)をマイクロカプセルに内包し、親水性成分(すなわち、親水性化合物)をマイクロカプセル外に含むことが好ましい。
【0297】
-ミクロゲル-
ミクロゲル(架橋樹脂粒子)は、ミクロゲルの表面又は内部の少なくとも一方に、画像記録層の構成成分の一部を含むことができる。特に、重合性基をミクロゲルの表面に有する反応性ミクロゲルは、平版印刷版原版の感度、及び得られる平版印刷版の耐刷性の観点から好ましい。画像記録層の構成成分を含むマイクロカプセルを得るためには、公知の合成法が適用できる。
【0298】
-重付加型樹脂粒子-
樹脂粒子としては、得られる平版印刷版の耐刷性、耐汚れ性、及び保存安定性の観点から、分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られる重付加型樹脂粒子が好ましい。
【0299】
多価フェノール化合物としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するベンゼン環を複数有している化合物が好ましい。
【0300】
活性水素を有する化合物としては、ポリオール化合物、又はポリアミン化合物が好ましく、ポリオール化合物が好ましく、プロピレングリコール、グリセリン、及びトリメチロールプロパンからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0301】
活性水素化合物として、水を用いることができる。活性水素化合物として水を用いた場合、イソシアナート基と水との反応によって生じたアミンがウレア結合を形成し、粒子を形成することができる。
【0302】
分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する多価フェノール化合物とイソホロンジイソシアネートとの付加物である多価イソシアネート化合物、及び、活性水素を有する化合物の反応により得られる樹脂の粒子としては、国際公開第2018/043259号の段落0230~段落0234に記載の樹脂粒子が好ましく挙げられる。
【0303】
樹脂粒子は、耐刷性、着肉性、機上現像性、及び機上現像時の現像カス抑制性の観点から、ウレア結合を有する重付加型樹脂を含むことが好ましく、下記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを少なくとも反応させて得られる構造を有する重付加型樹脂を含むことがより好ましく、下記式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを少なくとも反応させて得られる構造を有し、かつ、ポリオキシアルキレン構造として、ポリエチレンオキシド構造及びポリプロピレンオキシド構造を有する重付加型樹脂を含むことが特に好ましい。また、ウレア結合を有する重付加型樹脂を含む粒子は、ミクロゲルであることが好ましい。
【0304】
【化36】
【0305】
式(Iso)中、nは、0~10の整数を表す。
【0306】
式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水との反応の一例としては、以下に示す反応が挙げられる。なお、以下に示す反応の例は、n=0、4,4-異性体を使用した例である。以下に示すように、式(Iso)で表されるイソシアネート化合物と水とを反応させると、水によりイソシアネート基の一部が加水分解することでアミノ基が生じ、生じたアミノ基とイソシアネート基とが反応することでウレア結合が生成し、二量体が形成される。また、以下に示す反応が繰り返され、ウレア結合を有する重付加型樹脂が形成される。また、以下に示す反応において、イソシアネート基と反応性を有する化合物(すなわち、活性水素を有する化合物:例えば、アルコール化合物、及びアミン化合物)を添加することにより、アルコール化合物、アミン化合物等の構造を、ウレア結合を有する重付加型樹脂に導入することもできる。活性水素を有する化合物としては、既述の活性水素を有する化合物が好ましく挙げられる。
【0307】
【化37】
【0308】
また、ウレア結合を有する重付加型樹脂は、エチレン性不飽和基を有することが好ましく、下記式(PETA)で表される基を有することがより好ましい。
【0309】
【化38】
【0310】
式(PETA)中、波線部分は、他の構造との結合位置を表す。
【0311】
-付加重合型樹脂粒子-
樹脂粒子としては、得られる平版印刷版の耐刷性及び耐溶剤性の観点から、疎水性主鎖を有し、i)上記疎水性主鎖に直接的に結合されたニトリル基を有する構成ユニット、及び、ii)親水性ポリアルキレンオキシドセグメントを含むペンダント基を有する構成ユニットの両方を含む付加重合型樹脂粒子が好ましい。具体的には、特開2019-64269号公報の段落0156に記載された粒子が好ましい。
【0312】
-式Zで表される基-
樹脂粒子は、親水性基として、下記式Zで表される基を有することが好ましい。
*-Q-W-Y :式Z
【0313】
式Z中、Qは、二価の連結基を表し、Wは、親水性構造を有する二価の基、又は疎水性構造を有する二価の基を表し、Yは、親水性構造を有する一価の基、又は疎水性構造を有する一価の基を表し、W及びYのいずれか1つは親水性構造を有し、*は、他の構造との結合部位を表す。式Z中に含まれる親水性構造のいずれか1つが、ポリアルキレンオキシド構造を含むことが好ましい。
【0314】
式ZにおけるQは、炭素数が1~20の二価の連結基であることが好ましく、炭素数が1~10の二価の連結基であることがより好ましい。
【0315】
式ZにおけるQは、アルキレン基、アリーレン基、エステル結合、アミド結合、又は、これらを2以上組み合わせた基であることが好ましく、フェニレン基、エステル結合、又はアミド結合であることがより好ましい。
【0316】
式ZのWにおける親水性構造を有する二価の基は、ポリアルキレンオキシド構造を有す基であることが好ましく、ポリアルキレンオキシ基、又は、ポリアルキレンオキシ基の一方の末端に-CHCHNR-が結合した基であることが好ましい。Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。
【0317】
式ZのWにおける疎水性構造を有する二価の基は、-RWA-、-O-RWA-O-、-RN-RWA-NR-、-OC(=O)-RWA-O-、又は-OC(=O)-RWA-O-であることが好ましい。RWAは、それぞれ独立に、炭素数が6~120の直鎖、分岐若しくは環状アルキレン基、炭素数が6~120のハロアルキレン基、炭素数が6~120のアリーレン基、炭素数が7~120のアルカーリレン基(すなわち、アルキルアリール基から水素原子を1つ除いた二価の基)、又は、炭素数が7~120のアラルキレン基を表す。Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。
【0318】
式ZのYにおける親水性構造を有する一価の基は、-OH、-C(=O)OH、末端が水素原子若しくはアルキル基であるポリアルキレンオキシ基、又は、末端が水素原子若しくはアルキル基であるポリアルキレンオキシ基の他方の末端に-CHCHN(R)-が結合した基であることが好ましい。親水性構造を有する一価の基は、ポリアルキレンオキシド構造を有する一価の基であることが好ましく、末端が水素原子若しくはアルキル基であるポリアルキレンオキシ基、又は、末端が水素原子若しくはアルキル基であるポリアルキレンオキシ基の他方の末端に-CHCHN(R)-が結合した基が好ましい。Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。
【0319】
式ZのYにおける疎水性構造を有する一価の基は、炭素数が6~120の直鎖、分岐若しくは環状アルキル基、炭素数が6~120のハロアルキル基、炭素数が6~120のアリール基、炭素数が7~120のアルカーリル基(アルキルアリール基)、炭素数が7~120のアラルキル基、-ORWB、-C(=O)ORWB、又は-OC(=O)RWBであることが好ましい。RWBは、炭素数が6~20を有するアルキル基を表す。
【0320】
式Zで表される基を有する樹脂粒子において、耐刷性、着肉性、及び機上現像性の観点から、Wは、親水性構造を有する二価の基であることが好ましく、Qは、フェニレン基、エステル結合、又はアミド結合であり、Wは、ポリアルキレンオキシ基であり、Yは、末端が水素原子又はアルキル基であるポリアルキレンオキシ基であることがより好ましい。なお、式Zで表される基は、樹脂粒子の分散性を高める分散性基として機能してもよい。
【0321】
-重合性基を有する樹脂粒子-
樹脂粒子は、耐刷性、及び機上現像性の観点から、重合性基(好ましくはエチレン性不飽和基)を有することが好ましく、特に、表面に重合性基を有する樹脂粒子を含むことがより好ましい。重合性基を有する樹脂粒子を用いることで、版飛び(好ましくはUV版飛び)を抑制しやすくなり、耐刷性(好ましくはUV耐刷性)も高められる。
【0322】
樹脂粒子は、耐刷性の観点から、親水性基及び重合性基を有する樹脂粒子であることが好ましい。重合性基は、カチオン重合性基であっても、ラジカル重合性基であってもよいが、反応性の観点からは、ラジカル重合性基であることが好ましい。重合性基としては、重合可能な基であれば特に制限はないが、反応性の観点から、エチレン性不飽和基が好ましく、ビニルフェニル基(スチリル基)、(メタ)アクリロキシ基、又は(メタ)アクリルアミド基がより好ましく、(メタ)アクリロキシ基が特に好ましい。また、重合性基を有する樹脂粒子を構成する樹脂は、重合性基を有する構成単位を有することが好ましい。なお、高分子反応により樹脂粒子の表面に重合性基を導入してもよい。
【0323】
-樹脂粒子の合成-
樹脂粒子の合成法としては、特に制限はなく、既述した各種の樹脂にて粒子を合成しうる方法であればよい。樹脂粒子の合成法としては、公知の樹脂粒子の合成法、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、ソープフリー重合法、及びマイクロエマルション重合法が挙げられる。樹脂粒子の合成には、公知のマイクロカプセルの合成法、又は公知のミクロゲル(架橋樹脂粒子)の合成法を用いてもよい。
【0324】
(粒子の平均粒径)
粒子の平均粒径は、0.01μm~3.0μmであることが好ましく、0.03μm~2.0μmであることがより好ましく、0.10μm~1.0μmであることが特に好ましい。粒子の平均粒径を上記範囲とすることで、良好な解像度と経時安定性が得られる。粒子の平均粒径は、光散乱法により測定するか、又は、粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で粒子の粒径を総計で5,000個測定し、平均値を算出するものとする。なお、非球形粒子については写真上の粒子の円相当径とする。本開示における粒子の平均粒径は、特に断りのない限り、体積平均粒径であるものとする。
【0325】
(粒子の含有量)
画像記録層は、1種単独又は2種以上の粒子を含んでもよい。粒子(好ましくは樹脂粒子)の含有率は、現像性、及び耐刷性の観点から、画像記録層の全質量に対し、5質量%~90質量%であることが好ましく、10質量%~90質量%であることがより好ましく、20質量%~90質量%であることが更に好ましく、50質量%~90質量%であることが特に好ましい。
【0326】
[呈色性化合物]
画像記録層は、画像記録層の露光により生じる分解物と呈色反応が可能な呈色性化合物を含むことが好ましい。好ましい呈色性化合物としては、例えば、後述する式1Cで表される化合物及び式2Cで表される化合物が挙げられる。本開示における「呈色反応」とは、発色又は変色の現象を伴う化学反応を意味する。
【0327】
画像記録層の露光により生じる分解物としては、特に制限はないが、露光部の視認性の観点から、重合開始剤の露光による分解物又は赤外線吸収剤の露光による分解物であることが好ましく、重合開始剤の露光による分解物であることがより好ましく、電子供与型重合開始剤の露光による分解物であることが特に好ましい。画像記録層の露光により生じる分解物は、露光により生じた分解物だけでなく、露光により生じた分解物が更に分解又は変性して生じた化合物も包含する。
【0328】
呈色反応は、露光部の視認性の観点から、錯形成反応であることが好ましく、ホウ素錯体形成反応であることがより好ましい。以下に呈色反応の一例を示す。以下に示される呈色反応は、呈色性化合物としてクルクミン(Curcumin)と、画像記録層の露光により生じる分解物として、ナトリウムテトラフェニルボレート(TPB)の分解により生じたホウ酸との反応を示す。クルクミンは、ケト-エノール互変異性により、エノール型が平衡として生じる。エノール型とホウ酸とが反応することにより、ホウ素錯体(Complex)が生じ、クルクミン(黄色)からホウ素錯体(赤色)への呈色反応が生じる。また、以下の呈色反応ではTPBがホウ酸まで加水分解した例が示されているが、例えば、ジフェニルモノヒドロキシホウ素、モノフェニルジヒドロキシホウ素等とクルクミンとが錯体を形成してもよいし、トリフェニルホウ素が0価の配位子としてエノール型のクルクミンに配位し、錯体を形成してもよい。
【0329】
【化39】
【0330】
呈色性化合物としては、露光部の視認性、及び、調子再現性の観点から、ケトン構造を1つ以上有する化合物であることが好ましく、1,3-ジケトン構造、β-ヒドロキシケトン構造、又は、β-アミノケトン構造を1つ以上有する化合物であることがより好ましく、1,3-ジケトン構造、又は、β-ヒドロキシケトン構造を1つ以上有する化合物であることが更に好ましく、1,3-ジケトン構造を1つ以上有する化合物であることが特に好ましい。
【0331】
呈色性化合物としては、1-ヒドロキシ-3-アミノ構造、又は、1-ヒドロキシ-3-イミノ構造を1つ以上有する化合物も挙げられる。
【0332】
呈色性化合物としては、露光部の視認性、及び、調子再現性の観点から、芳香環構造を有する化合物であることが好ましく、2つ以上の芳香環構造を有する化合物であることがより好ましく、2つ~4つの芳香環構造を有する化合物であることが更に好ましく、2つの芳香環構造を有する化合物であることが特に好ましい。芳香環構造としては、露光部の視認性、及び、調子再現性の観点から、ベンゼン環構造、及び、ナフタレン環構造よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく挙げられ、ベンゼン環構造がより好ましく挙げられる。
【0333】
呈色性化合物は、塩であってもよいし、水和物であってもよい。
【0334】
呈色反応において、呈色性化合物と、画像記録層の露光により生じる分解物と反応によって錯体が形成される場合、呈色性化合物は錯体の配位子を形成してもよい。配位子は、単座配位子又は多座配位子であってもよい。錯体形成性、露光部の視認性、及び、調子再現性の観点から、配位子は、多座配位子であることが好ましく、二座配位子、三座配位子、四座配位子、五座配位子又は六座配位子であることがより好ましく、二座配位子、三座配位子又は四座配位子であることが更に好ましく、二座配位子又は三座配位子であることが特に好ましく、二座配位子であることが最も好ましい。
【0335】
画像記録層は、呈色性化合物として、下記式1Cで表される化合物又は下記式2Cで表される化合物を含むことが好ましく、下記式1Cで表される化合物を含むことがより好ましい。露光後において、下記式1Cで表される化合物又は下記式2Cで表される化合物が、画像記録層の露光により生じる分解物と反応し、下記式1Cで表される化合物若しくは下記式2Cで表される化合物を0価の配位子として、又は下記式1Cで表される化合物若しくは下記式2Cで表される化合物から水素原子を1つ除いたアニオンを一価の配位子として有する錯体を形成することが好ましく、下記式1Cで表される化合物又は下記式2Cで表される化合物が、画像記録層の露光により生じる分解物と反応し、下記式1Cで表される化合物又は下記式2Cで表される化合物から水素原子を1つ除いたアニオンを一価の配位子として有する錯体を形成することがより好ましい。
【0336】
【化40】
【0337】
式1C及び式2C中、R1C~R4Cはそれぞれ独立に、一価の有機基を表し、L1C及びL2Cはそれぞれ独立に、二価の有機基を表し、AはOH又はNR5C6Cを表し、R5C及びR6Cはそれぞれ独立に、水素原子又は一価の有機基を表し、点線部分は、二重結合であってもよい部分を表す。
【0338】
式1Cにおいては、R1C、L1C、及び、R2Cのうちの2以上が結合して環構造を形成していてもよい。式2Cにおいては、R3C、L2C、R4C、R5C、及び、R6Cのうちの2以上が結合して環構造を形成していてもよい。
【0339】
露光部の視認性、及び、調子再現性の観点から、式1CにおけるR1C及びR2Cはそれぞれ独立に、芳香環を有する一価の有機基であることが好ましく、アリール基、又は、アリール基を有するアルケニル基であることがより好ましく、2-アリールビニル基であることが特に好ましい。アリール基は、置換基を有していてもよく、露光部の視認性、及び、調子再現性の観点から、置換基として、ヒドロキシ基及びアルコキシ基よりなる群から選ばれた基を1つ以上有するアリール基であることが好ましく、置換基として、ヒドロキシ基及びアルコキシ基よりなる群から選ばれた基を1つ以上有するフェニル基であることがより好ましく、置換基として、ヒドロキシ基及びアルコキシ基を有するフェニル基であることが特に好ましい。
【0340】
式1CにおけるR1C及びR2Cの炭素数(炭素原子数)はそれぞれ独立に、6~50であることが好ましく、6~20であることがより好ましく、8~20であることが特に好ましい。
【0341】
式1CにおけるR1C及びR2Cは、同じ基であることが好ましい。
【0342】
式1CにおけるL1Cは、露光部の視認性、及び、調子再現性の観点から、アルキレン基、又は、アシルオキシ基を有するアルキレン基であることが好ましく、メチレン基、又は、アシルオキシメチレン基であることがより好ましい。アシルオキシ基としては、露光部の視認性の観点から、炭素数1~10のアシルオキシ基であることが好ましく、炭素数1~4のアシルオキシ基であることがより好ましく、アセトキシ基であることが特に好ましい。
【0343】
式2CにおけるR3Cは、露光部の視認性、及び、調子再現性の観点から、芳香環を有する一価の有機基であることが好ましく、アリール基、又は、アリール基を有するアルケニル基であることがより好ましい。
【0344】
式2Cにおいては、露光部の視認性、及び、調子再現性の観点から、L2CとR4Cとが結合して芳香環を形成していることが好ましく、L2CとR4Cとが結合してベンゼン環を形成していることがより好ましい。
【0345】
式2CにおけるR3C及びR4Cの炭素数はそれぞれ独立に、6~50であることが好ましく、6~30であることがより好ましく、6~20であることが特に好ましい。
【0346】
式2CにおけるL2Cは、R4Cと結合しない場合、露光部の視認性、及び、調子再現性の観点から、アルキレン基、又は、アシルオキシ基を有するアルキレン基であることが好ましく、メチレン基、又は、アシルオキシメチレン基であることがより好ましい。アシルオキシ基としては、露光部の視認性の観点から、炭素数1~10のアシルオキシ基であることが好ましく、炭素数1~4のアシルオキシ基であることがより好ましく、アセトキシ基であることが特に好ましい。
【0347】
式2CにおけるL2Cは、R4Cと結合し、芳香環構造の環員を形成していることが好ましい。
【0348】
式2Cで表される化合物は、露光部の視認性、及び、調子再現性の観点から、1-ヒドロキシアントラキノン構造又は1-アミノアントラキノン構造を有する化合物であることが好ましく、1-ヒドロキシアントラキノン構造を有する化合物であることがより好ましい。
【0349】
式2CにおけるAは、露光部の視認性、及び、調子再現性の観点から、OH又はNHR6Cであることが好ましく、OHであることがより好ましい。
【0350】
式2CのNR5C6CにおけるR5Cは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基であることが好ましく、水素原子、又は、アルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0351】
式2CのNR5C6CにおけるR6Cは、水素原子、アルキル基、又は、アントラキノリル基であることが好ましく、アントラキノリル基であることがより好ましく、1-アントラキノリル基であることが特に好ましい。
【0352】
好ましい呈色性化合物としては、例えば、クルクミン、デメトキシクルクミン、アリザリン、イミノジアントラキノン、カーミン酸、アゾメチンH、1,3-ビス(4-メトキシフェニル)-1,3-プロパンジオン、4-メトキシカルコン、1,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)-1,3-プロパンジオン、アセトキシクルクミンが挙げられる。
【0353】
画像記録層は、1種単独又は2種以上の呈色性化合物を含んでもよい。画像記録層は、1種単独又は2種以上の式1Cで表される化合物を含んでもよい。画像記録層は、1種単独又は2種以上の式2Cで表される化合物を含んでもよい。呈色反応によって形成される錯体は、1種単独又は2種以上であってもよい。
【0354】
露光部の視認性、及び、調子再現性の観点から、呈色性化合物の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.001質量%~5質量%であることが好ましく、0.01質量%~3質量%であることがより好ましく、0.05質量%~2.5質量%であることが更に好ましく、0.05質量%~1.0質量%であることが特に好ましい。
【0355】
露光部の視認性、及び、調子再現性の観点から、式1Cで表される化合物及び式2Cで表される化合物の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.001質量%~5質量%であることが好ましく、0.01質量%~3質量%であることがより好ましく、0.05質量%~2.5質量%であることが更に好ましく、0.05質量%~1.0質量%であることが特に好ましい。
【0356】
露光部の視認性、及び、調子再現性の観点から、エネルギー密度110mJ/cmにて波長830nmの赤外線により露光された画像記録層における錯体の含有量は、画像記録層の全質量に対し、0.0001質量%~10質量%であることが好ましく、0.001質量%~5質量%であることがより好ましく、0.005質量%~2.5質量%であることが更に好ましく、0.005質量%~1.0質量%であることが特に好ましい。
【0357】
画像記録層における重合開始剤の含有量Mに対する画像記録層における呈色性化合物(好ましくは式1Cで表される化合物及び式2Cで表される化合物)の含有量Mのモル比(すなわち、M/M)は、0.001~1であることが好ましく、0.01~0.8であることがより好ましく、0.05~0.5であることが特に好ましい。
【0358】
画像記録層における電子供与型重合開始剤の含有量MDIに対する画像記録層における呈色性化合物(好ましくは式1Cで表される化合物及び式2Cで表される化合物)の含有量Mとのモル比(すなわち、M/MDI)は、0.001~1.5であることが好ましく、0.01~1であることがより好ましく、0.05~0.8であることが特に好ましい。
【0359】
[他の成分]
画像記録層は、他の成分として、既述の成分以外の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、バインダーポリマー、発色剤、連鎖移動剤、低分子親水性化合物、感脂化剤、可塑剤、及び他の添加剤が挙げられる。
【0360】
(バインダーポリマー)
画像記録層は、必要に応じて、バインダーポリマーを含んでもよい。本開示において「バインダーポリマー」とは、樹脂粒子以外のポリマー、すなわち、粒子形状でないポリマーを指す。感脂化剤におけるアンモニウム塩含有ポリマー、及び界面活性剤として用いるポリマーは、バインダーポリマーから除かれる。
【0361】
バインダーポリマーとしては、平版印刷版原版の画像記録層に用いられる公知のバインダーポリマー(例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びポリウレタン樹脂)を好適に使用することができる。以下、バインダーポリマーの一例として、機上現像型平版印刷版原版に用いられるバインダーポリマー(以下、機上現像用バインダーポリマーともいう)について詳細に記載する。
【0362】
機上現像用バインダーポリマーとしては、アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーが好ましい。アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖又は側鎖に有していてもよい。また、アルキレンオキシド鎖を有するバインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)を側鎖に有するグラフトポリマー、又はポリ(アルキレンオキシド)含有繰返し単位で構成されるブロックと(アルキレンオキシド)非含有繰返し単位で構成されるブロックとのブロックコポリマーでもよい。バインダーポリマーがポリ(アルキレンオキシド)部位を主鎖に有する場合は、ポリウレタン樹脂が好ましい。バインダーポリマーがポリ(アルキレンオキシド)部位を側鎖に有する場合の主鎖のポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、及び天然ゴムが挙げられ、特に(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0363】
バインダーポリマーの好ましい例として、6官能以上10官能以下の多官能チオールを核として、上記核に対しスルフィド結合により結合したポリマー鎖を有し、上記ポリマー鎖が重合性基を有する高分子化合物(以下、星型高分子化合物ともいう。)が挙げられる。星型高分子化合物としては、例えば、特開2012-148555号公報に記載の化合物を好ましく用いることができる。
【0364】
星型高分子化合物としては、特開2008-195018号公報に記載のような画像部の皮膜強度を向上するためのエチレン性不飽和結合等の重合性基を、主鎖又は側鎖、好ましくは側鎖に有している化合物が挙げられる。星型高分子化合物が有する重合性基によって星型高分子化合物の分子間に架橋が形成され、硬化が促進する。
【0365】
重合性基としては、エチレン性不飽和基(例えば、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、及びビニルフェニル基(スチリル基))、又はエポキシ基が好ましく、(メタ)アクリル基、ビニル基、又はビニルフェニル基(スチリル基)が重合反応性の観点でより好ましく、(メタ)アクリル基が特に好ましい。これらの基は、高分子反応、又は、共重合によってバインダーポリマーに導入することができる。具体的には、例えば、カルボキシ基を側鎖に有するポリマーとグリシジルメタクリレートとの反応、又はエポキシ基を有するポリマーとメタクリル酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応を利用できる。
【0366】
GPC法によるポリスチレン換算値であるバインダーポリマーの重量平均分子量(Mw)は、2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000~300,000であることが特に好ましい。
【0367】
バインダーポリマーとしては、必要に応じて、特開2008-195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを併用することができる。また、親油的なポリマーと親水的なポリマーとを併用することもできる。
【0368】
画像記録層は、1種単独又は2種以上のバインダーポリマーを含んでもよい。
【0369】
バインダーポリマーの含有率は、画像記録層の全質量に対して、1質量%~90質量%であることが好ましく、5質量%~80質量%であることがより好ましい。
【0370】
(発色剤)
画像記録層は、発色剤を含むことが好ましく、酸発色剤を含むことがより好ましい。画像記録層は、発色剤として、ロイコ化合物(ロイコ色素ともいう。)を含むことが好ましい。
【0371】
本開示において「発色剤」とは、例えば光又は酸の刺激により発色又は消色し、画像記録層の色を変化させる性質を有する化合物を意味する。
【0372】
本開示において「酸発色剤」とは、電子受容性化合物(例えば酸等のプロトン)を受容した状態で加熱することにより発色又は消色し、画像記録層の色を変化させる性質を有する化合物を意味する。酸発色剤としては、例えば、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、又はアミドのような部分骨格を有し、電子受容性化合物と接触した時に、速やかにこれらの部分骨格が開環又は開裂する無色の化合物が好ましい。
【0373】
酸発色剤の例としては、特開2019-18412号公報の段落0184~段落0191に記載された化合物が挙げられる。
【0374】
発色剤は、発色性の観点から、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロラクトン化合物、及びスピロラクタム化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0375】
発色後の色素の色相としては、可視性の観点から、450nm~650nmの範囲に極大吸収を有することが好ましい。色味は、赤、紫、青、又は黒緑であることが好ましい。
【0376】
酸発色剤は、発色性、及び露光部の視認性の観点から、ロイコ色素であることが好ましい。ロイコ色素は、ロイコ構造を有する色素であれば特に制限されないが、スピロ構造を有することが好ましく、スピロラクトン環構造を有することがより好ましい。また、ロイコ色素は、発色性、及び露光部の視認性の観点から、フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素であることが好ましい。フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、発色性、及び露光部の視認性の観点から、下記式(Le-1)~式(Le-3)のいずれか1つで表される化合物であることが好ましく、下記式(Le-2)で表される化合物であることがより好ましい。
【0377】
【化41】
【0378】
式(Le-1)~式(Le-3)中、ERGは、それぞれ独立に、電子供与性基を表し、X~Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はジアルキルアニリノ基を表し、X~X10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は一価の有機基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、C、又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Raは、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表し、Rb~Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
【0379】
発色性、及び露光部の視認性の観点から、式(Le-1)~式(Le-3)のERGにおける電子供与性基は、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、又はアルキル基であることが好ましく、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルコキシ基、又はアリーロキシ基であることがより好ましく、アリールアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、又は、ジアリールアミノ基であることが更に好ましく、アリールアミノ基、又はモノアルキルモノアリールアミノ基であることが特に好ましい。
【0380】
発色性、及び露光部の視認性の観点から、式(Le-1)~式(Le-3)におけるX~Xは、それぞれ独立に、水素原子、又は塩素原子であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0381】
発色性、及び露光部の視認性の観点から、式(Le-2)又は式(Le-3)におけるX~X10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、又はシアノ基であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、又はアリーロキシ基であることがより好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、又はアリール基であることが更に好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0382】
発色性、及び露光部の視認性の観点から、式(Le-1)~式(Le-3)におけるY及びYの少なくとも一方はCであることが好ましく、Y及びYの両方はCであることがより好ましい。
【0383】
発色性、及び露光部の視認性の観点から、式(Le-3)におけるRaは、アルキル基、又はアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。
【0384】
発色性、及び露光部の視認性の観点から、式(Le-1)におけるRb~Rbは、それぞれ独立に、水素原子、又はアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0385】
また、フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、発色性、及び露光部の視認性の観点から、下記式(Le-4)~式(Le-6)のいずれか1つで表される化合物であることが好ましく、下記式(Le-5)で表される化合物であることがより好ましい。
【0386】
【化42】
【0387】
式(Le-4)~式(Le-6)中、ERGは、それぞれ独立に、電子供与性基を表し、X~Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はジアルキルアニリノ基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、C、又はNを表し、YがNである場合は、X1は存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Raは、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表し、Rb~Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
【0388】
式(Le-4)~式(Le-6)におけるERG、X~X、Y、Y、Ra、及びRb~Rbは、それぞれ、式(Le-1)~式(Le-3)におけるERG、X~X、Y、Y、Ra、及びRb~Rbと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0389】
さらに、フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素は、発色性、及び露光部の視認性の観点から、下記式(Le-7)~式(Le-9)のいずれか1つで表される化合物であることが好ましく、下記式(Le-8)で表される化合物であることがより好ましい。
【0390】
【化43】
【0391】
式(Le-7)~式(Le-9)中、X~Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はジアルキルアニリノ基を表し、Y及びYは、それぞれ独立に、C、又はNを表し、YがNである場合は、Xは存在せず、YがNである場合は、Xは存在せず、Ra~Raは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表し、Rb~Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、Rc及びRcは、それぞれ独立に、アリール基を表す。
【0392】
式(Le-7)~式(Le-9)におけるX~X、Y、及びYは、それぞれ、式(Le-1)~式(Le-3)におけるX~X、Y、及びYと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0393】
発色性、及び露光部の視認性の観点から、式(Le-7)におけるRa~Raは、それぞれ独立に、アルキル基、又はアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが特に好ましい。
【0394】
発色性、及び露光部の視認性の観点から、式(Le-7)~式(Le-9)におけるRb~Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は、アルキル基若しくはアルコキシ基が置換したアリール基であることが好ましく、水素原子、又はアルキル基であることがより好ましく、水素原子、又はメチル基であることが特に好ましい。
【0395】
発色性、及び露光部の視認性の観点から、式(Le-8)におけるRc及びRcは、それぞれ独立に、フェニル基、又はアルキルフェニル基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
【0396】
発色性、及び露光部の視認性の観点から、式(Le-8)において、X~Xは水素原子であり、Y及びYはCであることが好ましい。
【0397】
発色性、及び露光部の視認性の観点から、式(Le-8)において、Rb及びRbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は、アルキル基若しくはアルコキシ基が置換したアリール基であることが好ましく、水素原子、又はアルキル基であることがより好ましい。
【0398】
式(Le-1)~式(Le-9)におけるアルキル基は、直鎖状、又は分岐状であってもよい。式(Le-1)~式(Le-9)におけるアルキル基は、環構造を有していてもよい。
【0399】
式(Le-1)~式(Le-9)におけるアルキル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましく、1又は2であることが特に好ましい。
【0400】
式(Le-1)~式(Le-9)におけるアリール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、6~10であることがより好ましく、6~8であることが特に好ましい。
【0401】
式(Le-1)~式(Le-9)における各基(例えば、一価の有機基、アルキル基、アリール基、ジアルキルアニリノ基、アルキルアミノ基、及びアルコキシ基)は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアルキルモノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、及びシアノ基が挙げられる。置換基は、上記した置換基により更に置換されていてもよい。
【0402】
好適に用いられる上記フタリド構造又はフルオラン構造を有するロイコ色素としては、以下の化合物が挙げられる。
【0403】
【化44】
【0404】
【化45】
【0405】
【化46】
【0406】
【化47】
【0407】
【化48】
【0408】
【化49】
【0409】
【化50】
【0410】
【化51】
【0411】
酸発色剤としては上市されている製品(すなわち、市販品)を使用することも可能である。市販品としては、例えば、ETAC、RED500、RED520、CVL、S-205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H-7001、GREEN300、NIRBLACK78、BLUE220、H-3035、BLUE203、ATP、H-1046、及びH-2114(以上、福井山田化学工業株式会社製)、ORANGE-DCF、Vermilion-DCF、PINK-DCF、RED-DCF、BLMB、CVL、GREEN-DCF、及びTH-107(以上、保土ヶ谷化学株式会社製)、ODB、ODB-2、ODB-4、ODB-250、ODB-BlackXV、Blue-63、Blue-502、GN-169、GN-2、Green-118、Red-40、及びRed-8(以上、山本化成株式会社製)、並びにクリスタルバイオレットラクトン(東京化成工業株式会社製)が挙げられる。これらの市販品の中でも、ETAC、S-205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H-7001、GREEN300、NIRBLACK78、H-3035、ATP、H-1046、H-2114、GREEN-DCF、Blue-63、GN-169、及びクリスタルバイオレットラクトンが、形成される膜の可視光吸収率が良好のため好ましい。
【0412】
好適に用いられるロイコ色素としては、発色性、及び露光部の視認性の観点から、以下の化合物が挙げられる。
【0413】
【化52】
【0414】
画像記録層は、1種単独又は2種以上の発色剤を含んでもよい。発色剤の含有率は、画像記録層の全質量に対し、0.5質量%~10質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0415】
(連鎖移動剤、低分子親水性化合物、感脂化剤、及び他の添加剤)
画像記録層に利用可能な成分は、例えば、特開2019-162855号公報の段落0082に記載されている。上記公報の記載は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0416】
[形成方法]
画像記録層は、公知の方法(例えば、塗布法)によって形成することができる。画像記録層の塗布量(固形分)は、100mg/m~3,000mg/mであることが好ましく、300mg/m~1,500mg/mであることがより好ましい。
【0417】
<<下塗り層>>
本開示の一実施形態に係る機上現像型平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層を有することが好ましい。本開示に関連する技術分野において、下塗り層は、中間層と呼ばれることもある。下塗り層の露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、下塗り層の未露光部においては支持体からの画像記録層のはく離を生じやすくさせるため、下塗り層は、耐刷性を損なわずに現像性を向上させることに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合に、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散して感度が低下するのを防ぐことができる。
【0418】
下塗り層に含まれる化合物としては、例えば、支持体表面に吸着可能な吸着性基及び親水性基を有するポリマーが挙げられる。画像記録層との密着性を向上させるため、下塗り層に含まれる化合物は、吸着性基及び親水性基を有し、更に架橋性基を有するポリマーであることが好ましい。下塗り層に含まれる化合物は、低分子化合物、又はポリマーであってもよい。下塗り層に含まれる化合物は、必要に応じて、2種以上を混合して使用してもよい。
【0419】
下塗り層に含まれる化合物がポリマーである場合、上記ポリマーは、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー、及び架橋性基を有するモノマーの共重合体であることが好ましい。
【0420】
吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、-PO、-OPO、-CONHSO-、-SONHSO-、又は-COCHCOCHが好ましい。
【0421】
親水性基としては、スルホ基若しくはその塩、又はカルボキシ基の塩が好ましい。
【0422】
架橋性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、又はアリル基が好ましい。
【0423】
ポリマーは、ポリマーの極性置換基と、上記極性置換基と対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよい。ポリマーは、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
【0424】
具体的には、特開平10-282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、及び特開平2-304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005-238816号公報、特開2005-125749号公報、特開2006-239867号公報、及び特開2006-215263号公報に記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、並びに支持体表面と相互作用する官能基及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物も好ましく用いられる。より好ましい例として、特開2005-125749号公報、及び特開2006-188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基、及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
【0425】
下塗り層に含まれるポリマー中のエチレン性不飽和結合基の含有量は、1gのポリマー当たり、好ましくは0.1mmol~10.0mmol、より好ましくは0.2mmol~5.5mmolである。
【0426】
下塗り層に含まれるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000以上であることが好ましく、1万~30万であることがより好ましい。
【0427】
[親水性化合物]
下塗り層は、現像性の観点から、親水性化合物を含むことが好ましい。親水性化合物としては、例えば、下塗り層に用いられる公知の親水性化合物を用いることができる。
【0428】
好ましい親水性化合物としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン等のアミノ基を有するホスホン酸類、有機ホスホン酸、有機リン酸、有機ホスフィン酸、アミノ酸類、及びヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩が挙げられる。
【0429】
また、好ましい親水性化合物としては、例えば、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基と支持体表面と相互作用する基とを有する化合物(例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6-テトラヒドロキシ-p-キノン、クロラニル、スルホフタル酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸又はその塩、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸又はその塩、及びヒドロキシエチルイミノ二酢酸又はその塩)も挙げられる。
【0430】
下塗り層は、傷汚れ抑制性の観点から、親水性化合物として、ヒドロキシカルボン酸又はその塩を含むことが好ましい。
【0431】
本開示において「ヒドロキシカルボン酸」とは、1分子中に1個以上のカルボキシ基と1個以上のヒドロキシ基とを有する有機化合物の総称であり、ヒドロキシ酸、オキシ酸、オキシカルボン酸、又はアルコール酸とも呼ばれる(岩波理化学辞典第5版、株式会社岩波書店発行(1998)参照)。
【0432】
ヒドロキシカルボン酸又はその塩は、下記式(HC)で表されるものが好ましい。
HC(OH)mhc(COOMHCnhc :式(HC)
【0433】
式(HC)中、RHCは、mhc+nhc価の有機基を表し、MHCは、それぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、又はオニウムを表し、mhc及びnhcは、それぞれ独立に、1以上の整数を表し、nhcが2以上の場合、Mは同じでも異なってもよい。
【0434】
式(HC)において、RHCで表されるmhc+nhc価の有機基としては、例えば、mhc+nhc価の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は、置換基及び/又は連結基を有してもよい。炭化水素基としては、脂肪族炭化水素から誘導されるmhc+nhc価の基(例えば、アルキレン基、アルカントリイル基、アルカンテトライル基、アルカンペンタイル基、アルケニレン基、アルケントリイル基、アルケンテトライル基、アルケンペンタイル基、アルキニレン基、アルキントリイル基、アルキンテトライル基、及びアルキンペンタイル基)、及び芳香族炭化水素から誘導されるmhc+nhc価の基(例えば、アリーレン基、アレーントリイル基、アレーンテトライル基、及びアレーンペンタイル基)が挙げられる。置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、及びアリール基が挙げられる。置換基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2-ノルボルニル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、ベンジル基、フェネチル基、α-メチルベンジル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、p-メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1-プロペニルメチル基、2-ブテニル基、2-メチルアリル基、2-メチルプロペニルメチル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシカルボニルフェニル基、及びフェノキシカルボニルフェニル基が挙げられる。連結基は、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子により構成される連結基である。連結基の原子数は、好ましくは1~50である。連結基の具体例としては、アルキレン基、置換アルキレン基、アリーレン基、及び置換アリーレン基が挙げられる。連結基は、上記した2価の基が、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、及びエステル結合からなる群より選択される少なくとも1種で複数連結された構造を有していてもよい。
【0435】
式(HC)において、MHCで表されるアルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、及びカリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。式(HC)において、MHCで表されるオニウムとしては、例えば、アンモニウム、ホスホニウム、及びスルホニウムが挙げられ、アンモニウムが特に好ましい。MHCは、傷汚れ抑制性の観点から、アルカリ金属、又はオニウムであることが好ましく、アルカリ金属であることがより好ましい。
【0436】
式(HC)においてmhcとnhcとの総数は、3以上が好ましく、3~8がより好ましく、4~6が特に好ましい。
【0437】
ヒドロキシカルボン酸又はその塩の分子量は、600以下であることが好ましく、500以下であることがより好ましく、300以下であることが特に好ましい。ヒドロキシカルボン酸又はその塩の分子量は、76以上であることが好ましい。
【0438】
ヒドロキシカルボン酸、又は、ヒドロキシカルボン酸の塩を構成するヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、ヒドロキシ酪酸(例えば、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、及びγ-ヒドロキシ酪酸)、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、リシネライジン酸、セレブロン酸、キナ酸、シキミ酸、モノヒドロキシ安息香酸誘導体(例えば、サリチル酸、クレオソート酸(ホモサリチル酸、ヒドロキシ(メチル)安息香酸)、バニリン酸、及びシリング酸)、ジヒドロキシ安息香酸誘導体(例えば、ピロカテク酸、レソルシル酸、プロトカテク酸、ゲンチジン酸、及びオルセリン酸)、トリヒドロキシ安息香酸誘導体(例えば、没食子酸)、フェニル酢酸誘導体(例えば、マンデル酸、ベンジル酸、及びアトロラクチン酸)、及びヒドロケイヒ酸誘導体(例えば、メリロト酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸、セレブロン酸、及びカルミン酸)が挙げられる。
【0439】
ヒドロキシカルボン酸、又は、ヒドロキシカルボン酸の塩を構成するヒドロキシカルボン酸としては、傷汚れ抑制性の観点から、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物が好ましく、3個以上のヒドロキシ基を有する化合物がより好ましく、5個以上のヒドロキシ基を有する化合物が更に好ましく、5個~8個のヒドロキシ基を有する化合物が特に好ましい。
【0440】
1個のカルボキシ基、及び2個以上のヒドロキシ基を有する化合物としては、グルコン酸、又は、シキミ酸が好ましい。2個以上のカルボキシ基、及び1個のヒドロキシ基を有する化合物としては、クエン酸、又はリンゴ酸が好ましい。カルボキシ基及びヒドロキシ基をそれぞれ2個以上有する化合物としては、酒石酸が好ましい。上記の中でも、ヒドロキシカルボン酸としては、グルコン酸が特に好ましい。
【0441】
下塗り層は、1種単独又は2種以上の親水性化合物を含んでもよい。下塗り層が親水性化合物(好ましくはヒドロキシカルボン酸又はその塩)を含む場合、親水性化合物(好ましくはヒドロキシカルボン酸及びその塩)の含有率は、下塗り層の全質量に対し、0.01質量%~50質量%であることが好ましく、0.1質量%~40質量%であることがより好ましく、1.0質量%~30質量%であることが特に好ましい。
【0442】
-親水性化合物の適用範囲-
以下に説明するとおり、親水性化合物(好ましくはヒドロキシカルボン酸又はその塩)は、下塗り層だけでなく、下塗り層以外の層の成分として利用することができる。
【0443】
親水性化合物(好ましくはヒドロキシカルボン酸又はその塩)は、傷汚れ抑制性の観点から、支持体の一種であるアルミニウム支持体上の層に含まれることが好ましい。アルミニウム支持体上の層は、画像記録層が形成されている側に配置される層であることが好ましい。さらに、アルミニウム支持体上の層は、アルミニウム支持体と接する層であることがより好ましい。アルミニウム支持体上の層(好ましくはアルミニウム支持体と接する層)として、下塗り層又は画像記録層が好ましく挙げられる。
【0444】
親水性化合物(好ましくはヒドロキシカルボン酸又はその塩)は、アルミニウム支持体と接する層以外の層(例えば、最外層又は画像記録層)に含まれていてもよい。ある実施形態において、画像記録層は、傷汚れ抑制性の観点から、ヒドロキシカルボン酸又はその塩を含むことが好ましい。
【0445】
アルミニウム支持体の画像記録層側の表面が、少なくともヒドロキシカルボン酸又はその塩を含む組成物(例えば、水溶液等)により表面処理される態様も好ましく挙げられる。上記態様において、処理されたヒドロキシカルボン酸又はその塩の少なくとも一部は、アルミニウム支持体と接する画像記録層側の層(例えば、画像記録層又は下塗り層)に含まれた状態で検出することができる。アルミニウム支持体と接する画像記録層側の層がヒドロキシカルボン酸又はその塩を含むことにより、アルミニウム支持体の画像記録層側の表面を親水化することができる。また、アルミニウム支持体と接する画像記録層側の層がヒドロキシカルボン酸又はその塩を含むことにより、アルミニウム支持体の画像記録層側の表面における空中水滴法による水との接触角を110°以下と容易にすることができ、傷汚れ抑制性に優れる。
【0446】
[他の成分]
下塗り層は、下塗り層用の化合物の他に、経時による汚れ防止のため、例えば、キレート剤、第二級又は第三級アミン、及び重合禁止剤を含んでもよい。
【0447】
[形成方法]
下塗り層は、公知の方法(例えば、塗布法)によって形成することができる。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1mg/m~300mg/mであることが好ましく、5mg/m~200mg/mであることがより好ましい。
【0448】
<<用途>>
本開示の一実施形態に係る機上現像型平版印刷版原版は、機上現像に用いることができる平版印刷版原版である。本開示の一実施形態に係る機上現像型平版印刷版原版は、例えば、後述する露光工程及び機上現像工程を経て平版印刷版を形成することができる。得られた平版印刷版は、種々の印刷方法に使用することができる。
【0449】
<平版印刷版の作製方法、及び平版印刷方法>
本開示の一実施形態に係る平版印刷版の作製方法は、本開示の一実施形態に係る機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程(以下、「露光工程」ともいう。)と、印刷機上で印刷インキ及び湿し水からなる群より選択される少なくとも1つを供給して非画像部の画像記録層を除去する工程(以下、「機上現像工程」ともいう。)と、を含む。本開示の一実施形態によれば、オゾン暴露による変色を抑制する機上現像型平版印刷版原版を用いる平版印刷版の作製方法が提供される。
【0450】
本開示の一実施形態に係る平版印刷方法は、本開示の一実施形態に係る機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する工程(すなわち、露光工程)と、印刷機上で印刷インキ及び湿し水からなる群より選択される少なくとも1つを供給して非画像部の画像記録層を除去し平版印刷版を作製する工程(すなわち、機上現像工程)と、得られた上記平版印刷版により印刷する工程(以下、「印刷工程」ともいう。)と、を含む。本開示の一実施形態によれば、オゾン暴露による変色を抑制する機上現像型平版印刷版原版を用いる印刷方法が提供される。
【0451】
以下、各工程について具体的に説明する。
【0452】
<<露光工程>>
露光工程においては、機上現像型平版印刷版原版を、画像様に露光する。機上現像型平版印刷版原版を画像様に露光することで、露光部と未露光部とを形成する。例えば、画像記録層としてネガ型画像記録層を適用した場合、ネガ型画像記録層の露光部が画像部を形成し、ネガ型画像記録層の未露光部が非画像部を形成する。平版印刷版の作製方法及び印刷方法に使用される機上現像型平版印刷版原版は、上記「機上現像型平版印刷版原版」の項で説明した機上現像型平版印刷版原版と同様である。
【0453】
平版印刷版原版は、線画像若しくは網点画像を有する透明原画を通して行われるレーザー露光、又はデジタルデータによるレーザー光走査によって、画像様に露光されることが好ましい。
【0454】
光源の波長としては、750nm~1,400nmが好ましく用いられる。波長750nm~1,400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。赤外線レーザーに関して、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であることが好ましく、照射エネルギー量は10mJ/cm~300mJ/cmであることが好ましい。露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。露光機構は、例えば、内面ドラム方式、外面ドラム方式、又はフラットベッド方式のいずれでもよい。
【0455】
露光は、例えばプレートセッターを用いて常法により行うことができる。平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で露光を行ってもよい。露光は、平版印刷版原版を印刷機に装着する前に行ってもよい。
【0456】
<<機上現像工程>>
機上現像工程においては、印刷機上で印刷インキ及び湿し水からなる群より選択される少なくとも1つを供給して非画像部の画像記録層を除去する。
【0457】
機上現像工程は、平版印刷版原版を印刷機に装着した後に行われる。印刷機上で印刷インキ及び湿し水からなる群より選択される少なくとも1つを供給すると、印刷途上の初期の段階で、印刷インキ及び/又は湿し水によって非画像部(例えば未露光部)の画像記録層が溶解又は分散して除去され、親水性の表面が露出する。一方、残存する画像部(例えば露光部)の画像記録層は、親油性の表面を有する、印刷インキの受容部を形成する。機上現像された平版印刷版原版は、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
【0458】
機上現像工程においては、最初に印刷インキを供給してもよく、最初に湿し水を供給してもよい。除去された画像記録層の成分によって湿し水が汚染されることを防止するため、最初に印刷インキを供給することが好ましい。印刷インキとして、公知の印刷インキを用いることができる。好ましい印刷インキとしては、例えば、油性インキ、又は紫外線硬化型インキ(UVインキ)が挙げられる。湿し水として、公知の湿し水を用いることができる。
【0459】
<<印刷工程>>
印刷工程においては、得られた平版印刷版により印刷する。印刷工程において、得られた平版印刷版により記録媒体に情報を印刷してもよい。印刷工程は、平版印刷版に印刷インキを供給して記録媒体に情報を印刷する工程を含むことが好ましい。印刷に使用される印刷インキとしては、例えば、上記「機上現像工程」の項で説明した印刷インキが挙げられる。記録媒体としては、例えば、紙が挙げられる。情報としては、例えば、文字、数字、符号、図及び模様が挙げられる。印刷工程においては、必要に応じ、湿し水を供給してもよい。印刷工程は、印刷機を停止することなく連続して行われてもよい。
【0460】
<<他の工程>>
本開示の一実施形態に係る平版印刷版の作製方法、又は本開示の一実施形態に係る平版印刷方法においては、必要に応じて、露光工程の前、露光工程中、又は露光工程から機上現像工程までの間に、平版印刷版原版の全面を加熱してもよい。上記のような加熱により、画像記録層中の画像形成反応が促進され、感度及び耐刷性の向上、並びに感度の安定化といった利点が生じ得る。機上現像工程前の加熱は、150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。上記のような条件で加熱することで、例えば非画像部が硬化してしまうといった問題を防ぐことができる。機上現像工程後の加熱においては、非常に強い条件を利用することが好ましく、例えば100℃~500℃の範囲で加熱することが好ましい。上記のような温度範囲で加熱することで、十分な画像強化作用が得られ、また、支持体の劣化、及び画像部の熱分解といった問題を抑制することができる。
【実施例0461】
以下、実施例により本開示を詳細に説明する。なお、特に断りのない限り、「部」、及び「%」は質量基準である。
【0462】
<原材料>
実施例及び比較例で使用する原材料を以下に示す。以下の説明において、重複する原材料の説明(例えば、化学構造、及び製造方法)を省略することがある。
【0463】
<<支持体(1)>>
厚さ0.3mmの材質1Sのアルミニウム合金板に対し、特開2012-158022号公報の段落0126に記載の(A-a)機械的粗面化処理(ブラシグレイン法)から段落0134に記載の(A-i)酸性水溶液中でのデスマット処理を実施した。
次に、特開2012-158022号公報の段落0135に記載の(A-j)第1段階の陽極酸化処理から段落0138に記載の(A-m)第3段階の陽極酸化処理の各処理条件を適宜調整して、陽極酸化皮膜を形成し、支持体(1)を得た。
なお、全ての処理工程の間には水洗処理を施し、水洗処理の後にはニップローラで液切りを行った。
【0464】
以下、得られた支持体(1)の詳細についてまとめた。
マイクロポアの陽極酸化皮膜表面のL表色系における明度Lの値:83
マイクロポアにおける大径孔部の酸化皮膜表面における平均径:35nm(深さ100nm)
マイクロポアにおける小径孔部の連通位置における平均径:10nm(深さ1,000nm)
大径孔部の平均径に対する大径孔部の深さの比:2.9
【0465】
<<支持体(2)>>
(a)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、5g/mであった。
【0466】
(b)酸性水溶液を用いたデスマット処理(第1デスマット処理)
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸150g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。その後、水洗処理を行った。
【0467】
(c)電気化学的粗面化処理
次に、塩酸濃度14g/L、アルミニウムイオン濃度13g/L、及び、硫酸濃度3g/Lの電解液を用い、交流電流を用いて電気化学的粗面化処理を行った。電解液の液温は30℃であった。アルミニウムイオン濃度は塩化アルミニウムを添加して調整した。
交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz、交流電流1周期におけるアノード反応時間とカソード反応時間は1:1、電流密度は交流電流波形のピーク電流値で75A/dmであった。また、電気量はアルミニウム板がアノード反応に預かる電気量の総和で450C/dmであり、電解処理は112.5C/dmずつ4秒間の通電間隔を開けて4回に分けて行った。アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。その後、水洗処理を行った。
【0468】
(d)アルカリエッチング処理
電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度45℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。電気化学的粗面化処理が施された面のアルミニウムの溶解量は0.2g/mであった。その後、水洗処理を行った。
【0469】
(e)酸性水溶液を用いたデスマット処理
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。
【0470】
(f)第1段階の陽極酸化処理
図3に示す構造の直流電解による陽極酸化処理装置610を用いて、第1段階の陽極酸化処理(第1陽極酸化処理ともいう)を行った。具体的には、下記表1に示す「第1陽極酸化処理」欄の条件にて第1陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
以下、図3に示す陽極酸化処理装置610について説明する。
図3に示す陽極酸化処理装置610において、アルミニウム板616は、図3中矢印で示すように搬送される。電解液618が貯溜された給電槽612にてアルミニウム板616は給電電極620によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板616は、給電槽612においてローラ622によって上方に搬送され、ニップローラ624によって下方に方向変換された後、電解液626が貯溜された電解処理槽614に向けて搬送され、ローラ628によって水平方向に方向転換される。次いで、アルミニウム板616は、電解電極630によって(-)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽614を出たアルミニウム板616は後工程に搬送される。陽極酸化処理装置610において、ローラ622、ニップローラ624、及びローラ628によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板616は、給電槽612と電解処理槽614との槽間部において、ローラ622、ニップローラ624、及びローラ628により、山型及び逆U字型に搬送される。給電電極620と電解電極630とは、直流電源634に接続されている。給電槽612と電解処理槽614との間には、槽壁632が配置されている。
【0471】
(g)ポアワイド処理
上記陽極酸化処理したアルミニウム板を、温度40℃、カセイソーダ濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液に下記表1に示す条件で浸漬し、ポアワイド処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0472】
(h)第2陽極酸化処理
図3に示す構造の直流電解による陽極酸化処理装置610を用いて、第2段階の陽極酸化処理(第2陽極酸化処理ともいう)を行った。具体的には、下記表1に示す「第2陽極酸化処理」欄の条件にて第2陽極酸化処理を行い、所定の皮膜量の陽極酸化皮膜を形成した。
【0473】
以上のようにして、支持体(2)を作製した。
得られた支持体(2)の、マイクロポアの陽極酸化皮膜表面のL表色系における明度L、マイクロポアにおける大径孔部の酸化皮膜表面における平均径及び深さ、マイクロポアにおける小径孔部の連通位置における平均径(nm)及び深さ、大径孔部及び小径孔部の深さ(nm)、マイクロポア密度、並びに、小径孔部の底部からアルミニウム板表面までの陽極酸化皮膜の厚み(皮膜厚ともいう)を、表2にまとめて示す。
なお、表1中、「第1陽極酸化処理」欄の皮膜量(AD)と「第2陽極酸化処理」欄の皮膜量(AD)とは、各処理で得られた皮膜量を表す。なお、使用される電解液は、表1中の成分を含む水溶液である。
【0474】
【表1】
【0475】
【表2】
【0476】
<<支持体(3)>>
厚さ0.28mmのHydro 1052 アルミニウム合金ウェブ(ノルウェー、Norsk Hydro ASA社から入手可能)を、アルミニウム板として使用し、以下手順にて表面実施し、電気化学的粗面化処理の液濃度、電気化学的粗面化処理後のアルカリエッチング量を変更して、支持体(3)を作製した。
【0477】
-アルカリエッチング処理-
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%及びアルミニウムイオン濃度6.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度70℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。後に電気化学的粗面化処理を施す面のアルミニウム溶解量は、5g/mであった。
【0478】
-酸性水溶液を用いたデスマット処理-
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸150g/Lの水溶液を用いた。その液温は30℃であった。酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。その後、水洗処理を行った。
【0479】
-電気化学的粗面化処理-
次に、塩酸濃度14g/L、アルミニウムイオン濃度13g/L、及び、硫酸濃度3g/Lの電解液を用い、交流電流を用いて電気化学的粗面化処理を行った。電解液の液温は30℃であった。アルミニウムイオン濃度は塩化アルミニウムを添加して調整した。
交流電流の波形は正と負の波形が対称な正弦波であり、周波数は50Hz、交流電流1周期におけるアノード反応時間とカソード反応時間は1:1、電流密度は交流電流波形のピーク電流値で75A/dmであった。また、電気量はアルミニウム板がアノード反応に預かる電気量の総和で450C/dmであり、電解処理は112.5C/dmずつ4秒間の通電間隔を開けて4回に分けて行った。アルミニウム板の対極にはカーボン電極を用いた。その後、水洗処理を行った。
【0480】
-アルカリエッチング処理-
電気化学的粗面化処理後のアルミニウム板に、カセイソーダ濃度5質量%及びアルミニウムイオン濃度0.5質量%のカセイソーダ水溶液を、温度45℃でスプレーにより吹き付けてエッチング処理を行った。その後、水洗処理を行った。
【0481】
-酸性水溶液を用いたデスマット処理-
次に、酸性水溶液を用いてデスマット処理を行った。具体的には、酸性水溶液をアルミニウム板にスプレーにて吹き付けて、3秒間デスマット処理を行った。デスマット処理に用いる酸性水溶液は、硫酸濃度170g/L及びアルミニウムイオン濃度5g/Lの水溶液)を用いた。その液温は、35℃であった。
【0482】
-陽極酸化処理-
次に、アルミニウム板を2回陽極酸化し、各陽極酸化処理浴には約100リットルの陽極酸化溶液が含まれていた。第1の陽極酸化条件は、電解質濃度175g/リットル、温度60℃、電流密度5.8A/dmで21.3秒間処理、第2の陽極酸化条件は、電解質濃度280g/リットル、温度23℃、電流密度10A/dmで18秒間処理とした。外側の酸化アルミニウム層を形成するための最初の陽極酸化プロセスは、電解質としてリン酸を使用して実行し、内側の酸化アルミニウム層を形成するための第2の陽極酸化プロセスは、電解質として硫酸を使用して実行した。
【0483】
<<支持体(4)>>
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質:JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス-水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いアルミニウム表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、更に60℃で20質量%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
続いて、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、この板に15質量%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
その後、非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて60℃で10秒間、シリケート処理を施し、その後、水洗して支持体(4)を得た。Siの付着量は10mg/mであった。支持体(4)の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0484】
<<下塗り層塗布液(1)>>
・下塗り層用化合物(P-1、11質量%水溶液):0.10502部
・グルコン酸ナトリウム:0.07000部
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン株式会社製):0.00159部
・防腐剤(バイオホープL、ケイ・アイ化成株式会社製):0.00149部
・水:2.87190部
【0485】
【化53】
【0486】
<<下塗り層塗布液(2)>>
・下塗り層用化合物(P-1、11質量%水溶液):0.10502部
・ヒドロキシエチルジイミノ二酢酸:0.01470部
・エチレンジアミン四酢酸ナトリウム:0.06575部
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン株式会社製):0.00159部
・防腐剤(バイオホープL、ケイ・アイ化成株式会社製):0.00149部
・水:2.86144部
【0487】
<<下塗り層塗布液(3)>>
特開2012-66577号公報の段落0136に記載された下塗り層用塗布液(1)を、下塗り層塗布液(3)として使用した。
【0488】
<<下塗り層塗布液(4)>>
・下塗り層用化合物(P-1、11質量%水溶液):0.0788部
・ヒドロキシエチルジイミノ二酢酸:0.0280部
・エチレンジアミン四酢酸ナトリウム・4水和物:0.0499部
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン株式会社製):0.0016部
・防腐剤(バイオホープL、ケイ・アイ化成株式会社製):0.0015部
・水:2.8701部
【0489】
<<下塗り層塗布液(5)>>
・下塗り層用化合物(P-1、11質量%水溶液):0.0788部
・グルコン酸ナトリウム:0.0700部
・界面活性剤(エマレックス710、日本エマルジョン株式会社製):0.0016部
・防腐剤(バイオホープL、ケイ・アイ化成株式会社製):0.0015部
・水:2.8780部
【0490】
<<画像記録層塗布液(1)>>
・赤外線吸収剤(IR-1):0.02000部
・発色剤(S-1):0.02500部
・電子受容型重合開始剤(Int-1):0.11000部
・電子供与型重合開始剤(TPB):0.02500部
・重合性化合物(M-1):0.27500部
・アニオン界面活性剤(A-1):0.00600部
・フッ素系界面活性剤(W-1):0.00416部
・2-ブタノン:4.3602部
・1-メトキシ-2-プロパノール:4.4852部
・メタノール:2.2838部
・ミクロゲル液1:2.3256部
【0491】
【化54】
【0492】
赤外線吸収剤(IR-1)のHOMOのエネルギー準位は、-5.35eVである。赤外線吸収剤(IR-1)のLUMOのエネルギー準位は、-3.75eVである。
【0493】
【化55】
【0494】
【化56】
【0495】
電子受容型重合開始剤(Int-1)のHOMOのエネルギー準位は、-6.70eVである。電子受容型重合開始剤(Int-1)のLUMOのエネルギー準位は、-3.08eVである。電子受容型重合開始剤(Int-1)の化学式における「Me」は、メチル基を表す。
【0496】
【化57】
【0497】
電子供与型重合開始剤(TPB)のHOMOのエネルギー準位は、-5.90eVである。
【0498】
【化58】
【0499】
【化59】
【0500】
[重合性化合物(M-1)の合成方法]
タケネートD-160N(ポリイソシアネート トリメチロールプロパンアダクト体、三井化学株式会社製、4.7部)、アロニックスM-403(東亞合成株式会社製、タケネートD-160NのNCO価とアロニックスM-403の水酸基価が1:1となる量)、t-ブチルベンゾキノン(0.02部)、及びメチルエチルケトン(11.5部)の混合溶液を65℃に加熱した。反応溶液に、ネオスタンU-600(ビスマス系重縮合触媒、日東化成株式会社製、0.11部)を加え、65℃で4時間加熱した。反応溶液を室温(25℃)まで冷却し、メチルエチルケトンを加えることで、固形分が50質量%のウレタンアクリレート溶液を合成した。リサイクル型GPC(機器:LC908-C60、カラム:JAIGEL-1H-40及び2H-40(日本分析工業株式会社製))を用いて、テトラヒドロフラン(THF)の溶離液にて、ウレタンアクリレート溶液の分子量分画を実施した。重量平均分子量は20,000であった。
【0501】
[ミクロゲル液1の合成方法]
以下の手順によってミクロゲル1を合成した。
【0502】
(多価イソシアネート化合物の調製)
イソホロンジイソシアネート(17.78部、80モル当量)と下記多価フェノール化合物(1)(7.35部、20モル当量)との酢酸エチル(25.31部)を含む懸濁溶液に、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)(ネオスタン U-600、日東化成株式会社製、0.043部)を加えて撹拌した。発熱が収まった時点で反応温度を50℃に設定し、3時間撹拌して多価イソシアネート化合物(1)の酢酸エチル溶液(50質量%)を得た。
【0503】
【化60】
【0504】
(ミクロゲルの調製)
下記油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を45℃で4時間撹拌後、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン-オクチル酸塩(U-CAT SA102、サンアプロ株式会社製)の10質量%水溶液(5.20g)を加え、室温で30分撹拌し、45℃で24時間静置した。蒸留水を用いて固形分濃度を20質量%に調整し、ミクロゲル(1)の水分散液を得た。光散乱法により平均粒径を測定したところ、0.28μmであった。
【0505】
-油相成分-
・(成分1)酢酸エチル:12.0部
・(成分2)トリメチロールプロパン(6モル当量)とキシレンジイソシアネート(18モル当量)とを付加させた後、片末端メチル化ポリオキシエチレン(1モル当量、オキシエチレン単位の繰返し数:90)を付加させた付加体(50質量%酢酸エチル溶液、三井化学株式会社製):3.76部
・(成分3)多価イソシアネート化合物(1)(50質量%酢酸エチル溶液として):15.0部
・(成分4)ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR-399、サートマー社製)の65質量%酢酸エチル溶液:11.54部
・(成分5)スルホン酸塩型界面活性剤(パイオニンA-41-C、竹本油脂株式会社製)の10質量%酢酸エチル溶液:4.42部
【0506】
-水相成分-
・蒸留水:46.87部
【0507】
<<画像記録層塗布液(2)>>
・赤外線吸収剤(IR-1):0.00600部
・赤外線吸収剤(IR-2):0.0200部
・発色剤(S-1):0.02500部
・電子受容型重合開始剤(Int-1):0.11000部
・電子供与型重合開始剤(TPB):0.02500部
・重合性化合物(M-1):0.27500部
・アニオン界面活性剤(A-1):0.09000部
・フッ素系界面活性剤(W-1):0.00416部
・2-ブタノン:4.9200部
・1-メトキシ-2-プロパノール:3.1000部
・メタノール:2.7900部
・ミクロゲル液2:2.90700部
【0508】
【化61】
【0509】
赤外線吸収剤(IR-2)のHOMOのエネルギー準位は、-5.31eVである。赤外線吸収剤(IR-2)のLUMOのエネルギー準位は、-3.78eVである。赤外線吸収剤(IR-2)の化学式における「Bu」は、ブチル基を表す。
【0510】
[ミクロゲル液2の合成方法]
-油相成分の調製-
多官能イソシアネート化合物(PM-200:万華化学製):6.66gと、三井化学株式会社製の「タケネート(登録商標)D-116N(トリメチロールプロパン(TMP)とm-キシリレンジイソシアネート(XDI)とポリエチレングリコールモノメチルエーテル(EO90)との付加物(下記構造)」の50質量%酢酸エチル溶液:5.46gと、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR-399、サートマー社製)の65質量%酢酸エチル溶液:11.24gと、酢酸エチル:14.47gと、竹本油脂株式会社製のパイオニン(登録商標)A-41-C:0.45gを混合し、室温(25℃)で15分攪拌して油相成分を得た。
【0511】
【化62】
【0512】
-水相成分の準備-
水相成分として、蒸留水47.2gを準備した。
【0513】
-マイクロカプセル形成工程-
油相成分に水相成分を添加して混合し、得られた混合物を、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで16分間乳化させて乳化物を得た。
得られた乳化物に蒸留水16.8gを添加し、得られた液体を室温で10分撹拌した。
次いで、撹拌後の液体を45℃に加熱し、液温を45℃に保持した状態で4時間撹拌することにより、上記液体から酢酸エチルを留去した。次いで、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン-オクチル酸塩(U-CAT SA102、サンアプロ株式会社製)の10質量%水溶液5.12gを加え、室温で30分攪拌し、45℃で24時間静置した。蒸留水で、固形分濃度を20質量%になるように調整し、ミクロゲル2の水分散液が得られた。ミクロゲル2の体積平均粒径はレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-920(株式会社堀場製作所製)により測定したところ、165nmであった。
得られたポリマー粒子2の水分散液を、ミクロゲル液2とした。
【0514】
<<画像記録層塗布液(3)>>
・赤外線吸収剤(IR-3):0.026部
・電子受容型重合開始剤(Int-2):0.060部
・電子供与型重合開始剤(TPB):0.050部
・重合性化合物(M-2):0.250部
・重合性化合物(M-3):0.250部
・バインダー(エスレックBX-5Z、積水化学工業株式会社製):0.150部
・1-メトキシ-2-プロパノール:4.988部
・2-ブタノン:9.262部
【0515】
【化63】
【0516】
赤外線吸収剤(IR-3)のHOMOのエネルギー準位は、-5.43eVである。赤外線吸収剤(IR-3)のLUMOのエネルギー準位は、-3.95eVである。
【0517】
【化64】
【0518】
電子受容型重合開始剤(Int-2)のHOMOのエネルギー準位は、-6.96eVである。電子受容型重合開始剤(Int-2)のLUMOのエネルギー準位は、-3.18eVである。
【0519】
【化65】
【0520】
【化66】
【0521】
【化67】
【0522】
<<画像記録層塗布液(4)>>
・赤外線吸収剤(IR-4):0.027部
・赤外線吸収剤(IR-5):0.015部
・電子受容型重合開始剤(Int-3):0.041部
・重合性化合物(M-4):0.100部
・重合性化合物(M-5):0.096部
・重合性化合物(M-6):0.096部
・ポリマー粒子1:0.300部
・発色剤(S-2):0.041部
・ヒドロキシプロピルセルロース:0.030部
・n-プロパノール:5.168部
・2-ブタノン:6.460部
・1-メトキシ-2-プロパノール:1.615部
・メタノール:2.907部
【0523】
【化68】
【0524】
赤外線吸収剤(IR-4)のHOMOのエネルギー準位は、-5.42eVである。赤外線吸収剤(IR-4)のLUMOのエネルギー準位は、-3.82eVである。赤外線吸収剤(IR-4)の化学式における「Ph」は、フェニル基を表す。
【0525】
【化69】
【0526】
赤外線吸収剤(IR-5)のHOMOのエネルギー準位は、-5.43eVである。赤外線吸収剤(IR-5)のLUMOのエネルギー準位は、-3.84eVである。赤外線吸収剤(IR-5)の化学式における「Ph」は、フェニル基を表す。
【0527】
【化70】
【0528】
電子受容型重合開始剤(Int-3)のHOMOのエネルギー準位は、-7.34eVである。電子受容型重合開始剤(Int-3)のLUMOのエネルギー準位は、-3.26eVである。
【0529】
【化71】
【0530】
【化72】
【0531】
【化73】
【0532】
【化74】
【0533】
ポリマー粒子1の化学構造式において、nは、40である。ポリマー粒子1の重量平均分子量は、9万である。
【0534】
【化75】
【0535】
<<画像記録層塗布液(5)>>
特開2012-66577号公報の段落0139に記載された感光液(1)を、画像記録層塗布液(5)として使用した。
【0536】
<<画像記録層塗布液(6)>>
・赤外線吸収剤(IR-1):0.0175部
・赤外線吸収剤(IR-2):0.0013部
・発色剤(S-1):0.02500部
・電子受容型重合開始剤(Int-1):0.11000部
・電子供与型重合開始剤(TPB):0.02500部
・呈色性化合物(Z-1):0.0010部
・重合性化合物(M-7):0.27500部
・アニオン界面活性剤(A-1):0.00600部
・フッ素系界面活性剤(W-1):0.00416部
・2-ブタノン:4.3602部
・1-メトキシ-2-プロパノール:4.4852部
・メタノール:2.2838部
・ミクロゲル液1:2.3256部
【0537】
呈色性化合物(Z-1)は、以下に示す化学構造を有する。
【0538】
【化76】
【0539】
重合性化合物(M-7)は、以下に示されるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(U-15HA(官能基数:15)、新中村化学工業株式会社)である。重合性化合物(M-7)の化学式における「Me」は、メチル基を表す。
【0540】
【化77】
【0541】
<<画像記録層塗布液(7)>>
・赤外線吸収剤(IR-1):0.0125部
・赤外線吸収剤(IR-6):0.005部
・発色剤(S-1):0.02500部
・電子受容型重合開始剤(Int-1):0.11000部
・電子供与型重合開始剤(TPB):0.02500部
・呈色性化合物(Z-1):0.0020部
・重合性化合物(M-7):0.27500部
・アニオン界面活性剤(A-1):0.00600部
・フッ素系界面活性剤(W-1):0.00416部
・2-ブタノン:4.3602部
・1-メトキシ-2-プロパノール:4.4852部
・メタノール:2.2838部
・ミクロゲル液1:2.3256部
【0542】
赤外線吸収剤(IR-6)の化学構造を以下に示す。
【0543】
【化78】
【0544】
<<画像記録層塗布液(8)>>
・赤外線吸収剤(IR-1):0.0175部
・赤外線吸収剤(IR-2):0.0013部
・発色剤(S-1):0.02500部
・電子受容型重合開始剤(Int-1):0.11000部
・電子供与型重合開始剤(TPB):0.02500部
・重合性化合物(M-7):0.27500部
・アニオン界面活性剤(A-1):0.00600部
・フッ素系界面活性剤(W-1):0.00416部
・2-ブタノン:4.3602部
・1-メトキシ-2-プロパノール:4.4852部
・メタノール:2.2838部
・ミクロゲル液1:2.3256部
【0545】
<<画像記録層塗布液(9)>>
・赤外線吸収剤(IR-1):0.0175部
・赤外線吸収剤(IR-7):0.0013部
・発色剤(S-1):0.02500部
・電子受容型重合開始剤(Int-1):0.11000部
・電子供与型重合開始剤(TPB):0.02500部
・重合性化合物(M-2):0.27500部
・アニオン界面活性剤(A-1):0.00600部
・フッ素系界面活性剤(W-1):0.00416部
・2-ブタノン:4.3602部
・1-メトキシ-2-プロパノール:4.4852部
・メタノール:2.2838部
・ミクロゲル液1:2.3256部
【0546】
<<画像記録層塗布液(10)>>
・赤外線吸収剤(IR-1):0.0175部
・赤外線吸収剤(IR-2):0.0013部
・発色剤(S-1):0.02500部
・電子受容型重合開始剤(Int-1):0.11000部
・電子供与型重合開始剤(TPB):0.02500部
・呈色性化合物(Z-1):0.0020部
・重合性化合物(M-7):0.27500部
・トリクレシルホスフェート(可塑剤):0.01250部
・アニオン界面活性剤(A-1):0.00600部
・フッ素系界面活性剤(W-1):0.00416部
・2-ブタノン:4.3602部
・1-メトキシ-2-プロパノール:4.4852部
・メタノール:2.2838部
・ミクロゲル液1:2.3256部
【0547】
<<画像記録層塗布液(11)>>
・赤外線吸収剤(IR-1):0.0203部
・赤外線吸収剤(IR-2):0.0068部
・発色剤(S-3):0.0120部
・発色剤(S-4):0.0300部
・電子受容型重合開始剤(Int-1):0.0981部
・電子供与型重合開始剤(TPB):0.0270部
・重合性化合物(M-1):0.3536部
・トリクレシルホスフェート:0.0450部
・アニオン界面活性剤(A-1):0.0162部
・フッ素系界面活性剤(W-1):0.0042部
・2-ブタノン:5.3155部
・1-メトキシ-2-プロパノール:2.8825部
・メタノール:2.3391部
・ミクロゲル液2:2.8779部
【0548】
【化79】
【0549】
【化80】
【0550】
<<画像記録層塗布液(12)>>
・赤外線吸収剤(IR-1):0.0203部
・赤外線吸収剤(IR-2):0.0068部
・発色剤(S-3):0.0120部
・発色剤(S-4):0.0300部
・電子受容型重合開始剤(Int-1):0.0981部
・電子供与型重合開始剤(TPB):0.0270部
・重合性化合物(M-1):0.3536部
・トリクレシルホスフェート:0.0125部
・アニオン界面活性剤(A-1):0.0162部
・パイオニンA-41-C(竹本油脂株式会社製、70質量%メタノール溶液):0.0081部
・フッ素系界面活性剤(W-1):0.0042部
・2-ブタノン:5.3155部
・1-メトキシ-2-プロパノール:2.8825部
・メタノール:2.3391部
・ミクロゲル液2:2.8779部
【0551】
<<最外層塗布液>>
最外層塗布液の組成を以下に示す。以下に示される各表において、「親水性ポリマー」、「疎水性ポリマー」、「変色性化合物」、及び「その他」の各欄に記載された数値は、溶媒を除いた添加量(単位:質量部)を示す。以下に示される各表において、「溶媒」の欄に記載された「※1」は、「親水性ポリマー」、「疎水性ポリマー」、「変色性化合物」、及び「その他」の添加量(溶液又は分散液の状態で提供される原材料の場合には溶媒を含む)に応じて、塗布液の量が1質量部となるように溶媒の添加量を調整したことを示す。
【0552】
【表3】
【0553】
【表4】
【0554】
【表5】
【0555】
【表6】
【0556】
最外層塗布液(43)の組成を以下に示す。
・水:1.0161部
・メトローズSM04:0.0600部
・FS-102(17質量%水分散液):0.1177部
・ラピゾールA-80(80質量%水溶液、日油株式会社製):0.0063部
【0557】
最外層塗布液(44)の組成を以下に示す。
・水:0.8009部
・メトローズSM04:0.0400部
・FS-102(17質量%水分散液):0.3529部
・ラピゾールA-80(80質量%水溶液、日油株式会社製):0.0063部
【0558】
既述された最外層塗布液の各成分の詳細を以下に示す。
【0559】
[親水性ポリマー]
・ゴーセネックスL3266:スルホン酸変性ポリビニルアルコール、三菱ケミカル株式会社製、Mw=17,000
・ゴーセネックスCKS-50:スルホン酸変性ポリビニルアルコール、三菱ケミカル株式会社製、Mw=27,000
・メトローズSM04:メチルセルロース、信越化学工業株式会社製、メトキシ置換度=1.8
【0560】
【化81】
【0561】
[疎水性ポリマー]
・FS-101:アクリル、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製、Tg=49℃
・FS-102:スチレン-アクリル、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製、Tg=103℃
・FS-106:アクリル、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製、Tg=84℃
・FS-107:アクリル、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製、Tg=84℃
・FS-201:スチレン-アクリル、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製、Tg=89℃
・FS-301:スチレン-アクリル、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製、Tg=55℃
・FS-501:アクリル、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製、Tg=79℃
・FS-701:フッ素系アクリル、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製、Tg=82℃
・ボンコートSK-105E:スチレン、DIC株式会社製、Tg=100℃
・ボンコートED-85E:アクリル、DIC株式会社製、Tg=30℃
・ボンコートH-5:アクリル、DIC株式会社製、Tg=33℃
・ボンコートR-3380-E:アクリル、DIC株式会社製、Tg=30℃
・ボンコートAN-1170:アクリル、DIC株式会社製、Tg=60℃
・NEoCryl A-633:スチレン-アクリル、DSM Coating Resins,LLC.製、Tg=63℃
・NEoCryl A-639:スチレン-アクリル、DSM Coating Resins,LLC.製、Tg=62℃
・NEoCryl A-655:スチレン-アクリル、DSM Coating Resins,LLC.製、Tg=33℃
・NEoCryl A-662:スチレン-アクリル、DSM Coating Resins,LLC.製、Tg=95℃
・NEoCryl A-1092:スチレン-アクリル、DSM Coating Resins,LLC.製、Tg=98℃
【0562】
[変色性化合物]
変色性化合物の化学構造を以下に示す。
【0563】
【化82】
【0564】
【化83】
【0565】
【化84】
【0566】
[その他]
・エマレックス710:界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、日本エマルジョン株式会社製
【0567】
<実施例1~67、及び比較例1~4>
表7~表9の記載に従って選択した支持体及び塗布液を用いて、以下の手順によって平版印刷版原版を作製した。表7~表9において「-」が記載された層は、平版印刷版原版に含まれない層を意味する。
【0568】
<<下塗り層の形成>>
支持体上に、下塗り層塗布液を乾燥塗布量が100mg/mになるよう塗布して、下塗り層を形成した。
【0569】
<<画像記録層の形成>>
支持体又は下塗り層上に、画像記録層塗布液をバー塗布し、次に、120℃で40秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量が1.3g/mの画像記録層を形成した。
【0570】
<<最外層の形成>>
画像記録層上に最外層塗布液をバー塗布し、次に、120℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量が0.7g/mの最外層を形成した。
【0571】
<<評価>>
[オゾン変色]
作製した平版印刷版原版を3cm角のサイズに加工し、100mLのバイヤル瓶に入れた後、台の上に静置した。オゾン発生器(オゾンの濃度:約150ppm)を桐山濾過瓶の上部に固定し、バイヤル瓶の上に被せた。桐山濾過瓶の下部には、撹拌羽をスペーサーとして置き、オゾン気流を排気させて暴露した。8時間のオゾン暴露の前後における平版印刷版のL、a、及びbを、測色計(X-Rite社製Ecxact)を用いて測定した。以下の基準に従って、オゾン変色を評価した。以下の基準の数値が大きいほど、オゾン変色が抑制されていることを示す。評価結果を表7~表9に示す。
10:オゾン暴露前後の色差(ΔE)が0.5未満であった。
9:オゾン暴露後の色差(ΔE)が0.5以上1.0未満であった。
8:オゾン暴露後の色差(ΔE)が1.0以上1.5未満であった。
7:オゾン暴露後の色差(ΔE)が1.5以上2.0未満であった。
6:オゾン暴露後の色差(ΔE)が2.0以上2.5未満であった。
5:オゾン暴露後の色差(ΔE)が2.5以上3.0未満であった。
4:オゾン暴露後の色差(ΔE)が3.0以上3.5未満であった。
3:オゾン暴露後の色差(ΔE)が3.5以上4.0未満であった。
2:オゾン暴露後の色差(ΔE)が4.0以上4.5未満であった。
1:オゾン暴露後の色差(ΔE)が4.5以上であった。
【0572】
[機上現像カス]
作製した平版印刷版原版を、赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム株式会社製Luxel PLATESETTER T-6000IIIを用いて、外面ドラム回転数を1000rpm、レーザー出力を70%、及び解像度を2400dpiとする条件で露光した。露光画像は、ベタ画像及び20μmドットFMスクリーンの50%網点チャートを含む。露光された平版印刷版原版を、現像処理することなく、株式会社小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity-2(富士フイルム株式会社製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とスペースカラーフュージョンG墨インキ(DICグラフィックス株式会社製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して機上現像した後、毎時10,000枚の印刷速度で、特菱アート紙(三菱製紙株式会社製、連量:76.5kg)に印刷を100枚行った。上記操作を15版分繰り返し実施し、水着けローラー上に付着したカスの発生状況を官能評価した。カスが発生している場合にはC、僅かにカスの発生が認められる場合にはB、カスが発生していない場合にはAとした。評価結果を表7~表9に示す。
【0573】
【表7】
【0574】
【表8】
【0575】
【表9】
【0576】
表7~表9における「疎水性ポリマーの含有率」は、最外層の全質量を基準に算出した疎水性ポリマーの含有率を示す。表7~表9における「疎水性ポリマーの含有率」は、最外層の表面における疎水性ポリマーの占有面積率として評価することができる。
表7~表9における「水滴の接触角」は、最外層の表面における空中水滴法による着滴から2秒後の水滴の接触角を示す。
表7~表9における「油滴の接触角」は、最外層の表面における空中水滴法による着滴から2秒後の油滴の接触角を示す。
表7~表9における「ΔL」は、110mJ/cmのエネルギー密度にて波長830nmの赤外線による露光を行った場合の、露光前後の明度変化ΔLを示す。
【0577】
表7~表9に示されるように、比較例1~4に比べて、実施例1~67ではオゾン変色の発生が抑制されている。また、比較例1~4に比べて、実施例1~67では機上現像における現像カスの発生が抑制されている。
【0578】
2020年5月29日に出願された日本国特許出願2020-095070号、2021年1月28日に出願された日本国特許出願2021-012042号及び2021年3月31日に出願された日本国特許出願2021-061397号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記載された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0579】
12a、12b:アルミニウム支持体
18:アルミニウム板
20a、20b:陽極酸化皮膜
22a、22b:マイクロポア
24:大径孔部
26:小径孔部
D:深さ
610:陽極酸化処理装置
612:給電槽
614:電解処理槽
616:アルミニウム板
618、626:電解液
620:給電電極
622、628:ローラ
624:ニップローラ
630:電解電極
632:槽壁
634:直流電源
図1
図2
図3