(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045556
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】硬化性組成物並びに硬化物及びシーリング材
(51)【国際特許分類】
C08G 81/00 20060101AFI20240326BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C08G81/00
C09K3/10 G
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024021180
(22)【出願日】2024-02-15
(62)【分割の表示】P 2020548330の分割
【原出願日】2019-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2018180111
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神保 裕介
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 担
(72)【発明者】
【氏名】砂山 佳孝
(57)【要約】
【課題】本発明は、十分な硬化速度で硬化物を得ることができ、復元性、被着体への追随性及び伸びのいずれにも優れる硬化物を得ることができる硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明の硬化性組成物は、1分子中に3個以上の末端基を有し、末端基1個当たりの数平均分子量が6,000以上であり、末端基に-SiXaR3-aで表わされる反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体Aと、末端基に-SiX3で表わされる反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体Bと、重合体Aと重合体Bの合計100質量部に対して0.5質量部未満のシラノール縮合触媒とを含有し、硬化性組成物における重合体Bの含有割合が、0.5~50質量%である。
R:加水分解性基を含まない、炭素数1~20の1価の有機基、X:水酸基又は加水分解性基、a:1又は2である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物であって、
オキシアルキレン重合体であって、1分子中に3個以上の末端基を有し、末端基1個当たりの数平均分子量が6,000以上であり、末端基に下記式(1)で表わされる反応性ケイ素基を有し、下記式(2)で表わされる反応性ケイ素基を有さない、重合体Aと、
オキシアルキレン重合体であって、1分子中に2個の末端基を有し、末端基1個当たりに平均して0.5個超1.0個以下の下記式(2)で表わされる反応性ケイ素基を有する、重合体Bと、
重合体Aと重合体Bの合計100質量部に対して0.05~0.5質量部のシラノール縮合触媒とを含有し、
重合体Bに対する重合体Aの質量比が、99/1~50/50であり、
前記硬化性組成物における重合体Bの含有割合が、0.5~50質量%である、硬化性組成物。
-SiXaR3-a ・・・(1)
[式中、Rは加水分解性基を含まない、炭素数1~20の1価の有機基を示し、Xは水酸基又は加水分解性基を示し、aは1又は2である。aが1の場合、Rは互いに同一でも異なってもよく、aが2の場合、Xは互いに同一でも異なってもよい。]
-SiX3 ・・・(2)
[式中、Xは水酸基又は加水分解性基を示し、Xは互いに同一でも異なってもよい。]
【請求項2】
前記重合体Aが、末端基1個当たりに平均して0.5個超1.0個以下の前記式(1)で表される反応性ケイ素基を有し、数平均分子量が18,000~40,000である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記重合体Bの数平均分子量が、5,000~30,000である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記重合体Aにおける前記式(1)で表わされる反応性ケイ素基を有する末端基が、-OCH2CH2CH2-SiXaR3-aである、請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記重合体Bにおける前記式(2)で表わされる反応性ケイ素基を有する末端基が、ウレタン結合(-OC(=O)NH-)と-SiX3とを有する1価有機基、又は、-OCH2CH2CH2-SiX3である、請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記重合体Bにおける式(2)で表わされる反応性ケイ素基を有する末端基が前記ウレタン結合(-OC(=O)NH-)と-SiX3とを有する1価有機基であり、前記重合体Bのウレタン結合(-OC(=O)NH-)の含有量が0.33ミリモル/g以下である、請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
さらに、オキシアルキレン重合体であって、1分子中に2個の末端基を有し、末端基1個当たりに平均して前記式(1)又は前記式(2)で表される反応性ケイ素基を0個超0.5個以下有する、重合体Cを含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記重合体Cの2個の末端基のうちの1個がアルコキシ基である、請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記重合体Cにおける反応性ケイ素基が前記式(2)で表される反応性ケイ素基である、請求項7又は8に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記重合体Cの数平均分子量は、2,000~12,000である、請求項7~9のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
上記硬化性組成物は一液型である、請求項1~10のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項13】
請求項12に記載の硬化物からなるシーリング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反応性ケイ素基を有する重合体を含有する湿気硬化型の硬化性組成物並びに硬化物及びシーリング材に関する。
【0002】
本発明は、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るケイ素基(以下、「反応性ケイ素基」という。)を有する重合体を含む硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
分子中に少なくとも1個の反応性ケイ素基を有する重合体は、室温においても、湿分等による反応性ケイ素基の加水分解反応等を伴うシロキサン結合の形成によって架橋し、ゴム状の硬化物が得られるという性質を有することが知られている。
【0004】
これらの反応性ケイ素基を有する重合体の中で、オキシアルキレン重合体、不飽和炭化水素重合体、アクリレート重合体、及びメタクリレート重合体は、既に工業的に生産され、シーリング材、接着剤、塗料等の用途に広く使用されている(例えば、特許文献1)。これらの反応性ケイ素基を有する重合体を含む硬化性組成物をシーリング材として用いる場合には、硬化性、被着物に対する接着性、硬化物の伸びに加えて、屋外の環境に長時間さらされることにより発生する目地の構造的な伸縮に追随できる復元性を有し、亀裂が発生しにくいことが求められる。
【0005】
特許文献2には、ケイ素上に3つ以上の加水分解性基を有する反応性ケイ素基を有する有機重合体と、該有機重合体に対してシラノール縮合触媒の0.5重量部未満とを含有する1液型硬化性樹脂組成物が開示されている。実施例では、末端にトリメトキシシリル基を有する数平均分子量が11,000の線状オキシプロピレン重合体とシラノール縮合触媒を混合した例、末端にトリメトキシシリル基を有する数平均分子量が17,000の線状オキシプロピレン重合体とシラノール縮合触媒を混合した例では、硬化性と復元性に優れた硬化物が得られたことが示されている。一方で、末端にメチルジメトキシシリル基を有する数平均分子量が11,000の線状オキシプロピレン重合体とシラノール縮合触媒を混合した例では、硬化性が悪く、復元性にも劣る結果が示されている。
特許文献3には、トリアルコキシシリル基を有するオキシアルキレン重合体及びジアルコキシシリル基を有するオキシアルキレン重合体を混合したシリコーン系樹脂組成物が開示され、実施例では、末端にトリメトキシシリル基を有する数平均分子量が10,000の分岐状オキシプロピレン重合体と、末端にメチルジメトキシシリル基を有する分岐状オキシプロピレン重合体とを、これらの合計の1000質量部に対して、硬化触媒の30質量部を混合した例において、貯蔵安定性に優れ、短時間で硬化できることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05-287187号公報
【特許文献2】特開2003-147192号公報
【特許文献3】特開平10-245484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2における1液型硬化性樹脂組成物や特許文献3におけるシリコーン系樹脂組成物をシーリング材に用いた場合には、復元性が劣り、被着体への追随性が不十分となったり、硬化物の伸びが不十分となる場合がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、硬化速度、硬化物の復元性、被着体への追随性、伸びのいずれにも優れた硬化物が得られる硬化性組成物の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記[1]~[13]である。
[1]硬化性組成物であって、
オキシアルキレン重合体であって、1分子中に3個以上の末端基を有し、末端基1個当たりの数平均分子量が6,000以上であり、末端基に下記式(1)で表わされる反応性ケイ素基を有し、下記式(2)で表わされる反応性ケイ素基を有さない、重合体Aと、
オキシアルキレン重合体であって、1分子中に2個の末端基を有し、末端基1個当たりに平均して0.5個超1.0個以下の下記式(2)で表わされる反応性ケイ素基を有する、重合体Bと、
重合体Aと重合体Bの合計100質量部に対して0.05~0.5質量部のシラノール縮合触媒とを含有し、
重合体Bに対する重合体Aの質量比が、99/1~50/50であり、
前記硬化性組成物における重合体Bの含有割合が、0.5~50質量%である、硬化性組成物。
-SiXaR3-a ・・・(1)
[式中、Rは加水分解性基を含まない、炭素数1~20の1価の有機基を示し、Xは水酸基又は加水分解性基を示し、aは1又は2である。aが1の場合、Rは互いに同一でも異なってもよく、aが2の場合、Xは互いに同一でも異なってもよい。]
-SiX3 ・・・(2)
[式中、Xは水酸基又は加水分解性基を示し、Xは互いに同一でも異なってもよい。]
-SiX3 ・・・(2)
[式中、Xは水酸基又は加水分解性基を示し、Xは互いに同一でも異なってもよい。]
【0009】
[2]前記重合体Aが、末端基1個当たりに平均して0.5個超1.0個以下の前記式(1)で表される反応性ケイ素基を有し、数平均分子量が18,000~40,000である、[1]の硬化性組成物。
[3]前記重合体Bの数平均分子量が、5,000~30,000である、[1]又は[2]の硬化性組成物。
[4]前記重合体Aにおける前記式(1)で表わされる反応性ケイ素基を有する末端基が、-OCH2CH2CH2-SiXaR3-aである、[1]~[3]のいずれかの硬化性組成物。
[5]前記重合体Bにおける前記式(2)で表わされる反応性ケイ素基を有する末端基が、ウレタン結合(-OC(=O)NH-)と-SiX3とを有する1価有機基、又は、-OCH2CH2CH2-SiX3である、[1]~[4]のいずれかの硬化性組成物。
[6]前記重合体Bにおける式(2)で表わされる反応性ケイ素基を有する末端基が前記ウレタン結合(-OC(=O)NH-)と-SiX3とを有する1価有機基であり、前記重合体Bのウレタン結合(-OC(=O)NH-)の含有量が0.33ミリモル/g以下である、[5]の硬化性組成物。
【0010】
[7]さらに、オキシアルキレン重合体であって、1分子中に2個の末端基を有し、末端基1個当たりに平均して前記式(1)又は前記式(2)で表される反応性ケイ素基を0個超0.5個以下有する、重合体Cを含有する、[1]~[6]のいずれかの硬化性組成物。
[8]前記重合体Cの2個の末端基のうちの1個がアルコキシ基である、[7]の硬化性組成物。
[9]前記重合体Cにおける反応性ケイ素基が前記式(2)で表される反応性ケイ素基である、[7]又は[8]の硬化性組成物。
[10]前記重合体Cの数平均分子量は、2,000~12,000である、[7]~[9]のいずれかの硬化性組成物。
[11]上記硬化性組成物は一液型である、[1]~[10]のいずれかの硬化性組成物。
[12]前記[1]~[11]のいずれかの硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
[13]前記[12]の硬化物からなるシーリング材。
【発明の効果】
【0011】
本発明の硬化性組成物は、十分な硬化速度で硬化物を得ることができ、復元性、被着体への追随性及び伸びのいずれにも優れる硬化物を得ることができる。本発明の硬化物は、十分な硬化速度で得られ、良好な復元性、被着体への良好な追随性及び良好な伸びを備える。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「オキシアルキレン重合体」とは、アルキレンオキシド等の環状エーテルの開環付加重合によって形成されたポリオキシアルキレン鎖を有する化合物をいう。
本明細書において、「前駆重合体」とは、反応性ケイ素基導入前のオキシアルキレン重合体であって、活性水素含有基を有する開始剤にアルキレンオキシド等の環状エーテルを開環付加重合させて得られる、ポリオキシアルキレン鎖を有する化合物をいう。前駆重合体はポリオキシアルキレン鎖の末端酸素原子に活性水素が結合していることより、末端基が水酸基である重合体とみなす。同様に、オキシアルキレン重合体の末端基もまたポリオキシアルキレン鎖の末端酸素原子を含む基であるものとする。
なお、オキシアルキレン重合体及び前駆重合体の末端基の数は上記開始剤の活性水素の数に等しい。ただし、開始剤が1個の活性水素を有する場合、開始剤残基(ポリオキシアルキレン鎖の末端炭素原子に結合する基)を末端基とみなし、かかるオキシアルキレン重合体及びその前駆重合体の末端基の数は2とする。
「反応性末端基」とは、前駆重合体又はその誘導体に反応性ケイ素基を導入する際に、シリル化剤と反応する末端基をいう。反応性末端基としては、アリルオキシ基等のアルケニルオキシ基、水酸基等が挙げられる。なお、アルケニルオキシ基の数は、JIS K 0070(1992)に規定されたよう素価の測定方法の原理に基づいた滴定分析により、不飽和基濃度を測定する方法で算出することができる。
「非反応性末端基」とは、シリル化剤と反応しない末端基をいう。
「シリル化剤」とは、反応性末端基と反応して反応性ケイ素基を有する末端基を形成しうる化合物を意味する。
「(メタ)アクリレート重合体」とは、(メタ)アクリレートに基づく単位を含む重合体を意味するなお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称である。
【0013】
「シリル化率」は、重合体の末端基の総数に対する反応性ケイ素基の数の割合である。シリル化率の値はNMR分析によって測定できる。また、後述のシリル化剤により、重合体の反応性末端基に上記反応性ケイ素基を導入する際の、反応性末端基の数に対する該シリル化剤の仕込当量で表すこともできる。
【0014】
「水酸基換算分子量」とは、水酸基を有する開始剤や前駆重合体の水酸基価をJIS K 1557(2007)に基づいて算出し、「56,100/(水酸基価)×(開始剤や前駆重合体の1分子中の水酸基の数)」として算出される値である。オキシアルキレン重合体の水酸基換算分子量は、後述のオキシアルキレン重合体換算分子量と同等か、若干小さい傾向がある。
本明細書における「数平均分子量」(以下、「Mn」という。)及び「重量平均分子量」(以下、「Mw」という。)とは、テトラヒドロフラン(以下、「THF」という。)を溶離液とするゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」という。)を使用し、水酸基換算分子量既知のオキシアルキレン重合体を用いて検量線を作成して測定したオキシアルキレン重合体換算分子量のことである。分子量分布とは、MwとMnより算出した値であり、Mnに対するMwの比率(Mw/Mn)である。
【0015】
末端基1個当たりの分子量は、前記前駆重合体における上記水酸基価の値を「56,100/(前駆重合体の水酸基価)」の式に当てはめて算出するか、又は、GPC測定により求めたMnと、水酸基価から求めた末端基1個当たりの分子量の検量線を、開始剤の活性水素の数毎にあらかじめ作成しておき、求めたいMnの測定結果を、この関係性に当てはめることで、末端基1個当たりの分子量に換算する方法で算出してもよい。
【0016】
本明細書におけるポリスチレン換算数平均分子量(以下、「PS換算Mn」という。)及びポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「PS換算Mw」という。)とは、THFを溶離液とするGPCを使用し、分子量既知のポリスチレン重合体を用いて検量線を作成して測定した、ポリスチレン換算分子量のことである。オキシアルキレン重合体においては、PS換算Mn及びPS換算Mwは、上述のMn及びMwより大きく測定される傾向がある。PS換算Mw/PS換算Mnで計算される値は上述のMw/Mnと同値となる。
【0017】
本発明の硬化性組成物は、重合体Aと重合体Bとを有し、重合体Aと重合体Bの合計100質量部に対して0.5質量部未満のシラノール縮合触媒とを含有する。
さらに、後述の重合体Cを含んでよい。
【0018】
<重合体A>
本発明の硬化性組成物は、重合体Aを含む。
重合体Aは、オキシアルキレン重合体であって、1分子中に3個以上の末端基を有し、末端基1個当たりの数平均分子量が6,000以上であり、末端基に式(1)で表わされる反応性ケイ素基を有し、式(2)で表わされる反応性ケイ素基を有さない、重合体である。本発明の硬化性組成物は、2種類以上の重合体Aを含有していてもよい。重合体Aは分岐状であるため、重合体Aを含む硬化性組成物は、復元性に優れる硬化物が得られやすい。
重合体Aは式(2)で表される反応性ケイ素基を有さない。ただし、不純物として、式(2)で表される反応性ケイ素基を有していてもよい。式(2)で表される反応性ケイ素基の含有量は、重合体A中に2000ppm以下であることが好ましく、1000ppm以下であることがより好ましく、含まれていないことが特に好ましい。式(2)で表される反応性ケイ素基が重合体Aに含まれているかどうかは、NMRにより確認することができる。NMR分析を用いた従来公知の定量方法により、重合体Aに対して2000ppm以下であることが算出できるか又は不検出であれば、重合体Aに式(2)で表される反応性ケイ素基は含まれていないとみなしうる。
反応性ケイ素基は、ケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有し、シロキサン結合を形成して架橋し得る。シロキサン結合を形成する反応は硬化触媒によって促進される。重合体Aにおける反応性ケイ素基は式(1)で表される。
-SiXaR3-a ・・・(1)
式(1)中、Rは炭素数1~20の1価の有機基を示す。Rは加水分解性基を含まない。
Rとしては、炭化水素基、ハロ炭化水素基及びトリオルガノシロキシ基が挙げられる。
Rとしては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1-クロロアルキル基及びトリオルガノシロキシ基が好ましい。さらに、炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、クロロメチル基、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基及びトリフェニルシロキシ基がより好ましい。反応性ケイ素基を有する重合体の硬化性と安定性のバランスが良い点からは、メチル基及びエチル基が特に好ましい。硬化物の硬化速度が速い点からは、クロロメチル基が特に好ましい。容易に入手できる点からは、メチル基が特に好ましい。
【0019】
式(1)において、Xは水酸基又は加水分解性基を示す。
加水分解性基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、スルファニル基、アルケニルオキシ基が例示できる。
Xとしては、加水分解性が穏やかで取扱いやすい点から、アルコキシ基が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基及びイソプロポキシ基が好ましく、メトキシ基及びエトキシ基がより好ましい。アルコキシ基がメトキシ基又はエトキシ基であると、シロキサン結合を速やかに形成し硬化物中に架橋構造を形成させることが容易であり、硬化物の物性値が良好となりやすい。
【0020】
式(1)において、aは1又は2である。aが1の場合、Rは互いに同一でも異なってもよい。aが2の場合、Xは互いに同一でも異なってもよい。硬化性が良好となるため、aは2であることが好ましい。
【0021】
式(1)で表される反応性ケイ素基としては、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、メチルジイソプロポキシシリル基、メトキシメチルジエトキシシリル基、メトキシメチルジメトキシシリル基、クロロメチルジメトキシシリル基、クロロメチルジエトキシシリル基が例示できる。活性が高く良好な硬化性が得られる点から、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基が好ましく、メチルジメトキシシリル基がより好ましい。
【0022】
重合体Aは、3価以上の開始剤残基と、環状エーテルの開環付加重合により形成されたポリオキシアルキレン鎖と、該ポリオキシアルキレン鎖の末端酸素原子を含む末端基と、を有する。末端基を有するポリオキシアルキレン鎖が1価の基であることより、重合体Aは、末端基を有するポリオキシアルキレン鎖を3個以上有する。
環状エーテルとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド等のアルキレンオキシド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキシド以外の環状エーテルが挙げられる。特に、プロピレンオキシドが好ましい。
ポリオキシアルキレン鎖は2種以上のオキシアルキレン基を有する共重合鎖であってもよく、その場合、共重合鎖はブロック共重合鎖であってもよく、ランダム共重合鎖であってもよい。
重合体Aが有するポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレン鎖、ポリ(オキシ-2-エチルエチレン)鎖、ポリ(オキシ-1、2-ジメチルエチレン)鎖、ポリ(オキシテトラメチレン)鎖、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)鎖、ポリ(オキシプロピレン・オキシ-2-エチルエチレン)鎖が挙げられる。ポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシプロピレン鎖及びポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)鎖が好ましく、ポリオキシプロピレン鎖が特に好ましい。
重合体Aが有する末端基は、式(1)で表される反応性ケイ素基を有する基、水酸基、アルケニルオキシ基、アルコキシ基等であり、少なくとも一部は式(1)で表される反応性ケイ素基を有する基である。重合体Aの前駆重合体は末端基として水酸基を有する重合体であり、前駆重合体の水酸基を式(1)で表される反応性ケイ素基を有する基に変換して重合体Aが製造される。この重合体Aを製造する過程において未反応の水酸基が残存した場合、重合体Aは末端基として水酸基を有する。また、前駆重合体の水酸基をアルケニルオキシ基に変換し、次いでアルケニルオキシ基を式(1)で表される反応性ケイ素基を有する基に変換する場合において、未反応のアルケニルオキシ基が残存した場合、アルケニルオキシ基の不飽和基転移等により不活性なアルケニルオキシ基が生じた場合、等においては、重合体Aは末端基としてアルケニルオキシ基を有する。さらに、重合体Aの反応性ケイ素基の数を調整する等の目的で前駆重合体の水酸基の一部を不活性化した場合は、重合体Aは末端基としてアルコキシ基等の非反応性基を有する。
重合体Aは、末端基を3個以上有する。硬化物の復元性の観点から、末端基を3~8個有するものが好ましく、3~6個有するものがより好ましく、3又は4個であるものがさらに好ましい。
重合体Aは、上記反応性ケイ素基を末端基1個当たりに平均して0.5個超1.0個以下有するものが好ましく、硬化物の引張強度が良好となりやすいため、0.55~0.98個有するものがより好ましい。
【0023】
重合体Aの末端基当たりのMnは6,000以上であり、末端基当たりのMnとしては、6,500~13,000が好ましく、7,000~12,000がより好ましい。上記範囲内であると、硬化物の伸びがより優れ、粘度が充分に低くなりやすい。
重合体AのMnとしては18,000~40,000が好ましく、19,000~38,000がより好ましく、21,000~37,000がさらに好ましい。上記範囲内であると、硬化物の伸びがより優れ、粘度が充分に低くなりやすい。
重合体AのPS換算Mnとしては23,000~52,000が好ましく、24,000~50,000がより好ましく、27,000~48,000がさらに好ましい。上記範囲内であると、硬化物の伸びがより優れ、粘度が充分に低くなりやすい。
重合体Aは、式(1)で表される反応性ケイ素基を末端基1個当たりに平均して0.5個超1.0個以下有しかつMnが18,000~40,000であるものが好ましく、式(1)で表される反応性ケイ素基を末端基1個当たりに平均して0.55~0.98個有しかつMnが19,000~38,000であるものがより好ましい。
重合体Aの分子量分布は1.8以下であることが好ましい。良好な伸びが得られやすいため、分子量分布としては小さいほうが好ましく、1.0~1.5がより好ましく、1.02~1.4がさらに好ましく、1.04~1.2が特に好ましい。
【0024】
重合体Aは、後述の前駆重合体の水酸基を上記反応性ケイ素基を有する基に変換して得られる。具体的には、前駆重合体の水酸基をアルケニルオキシ基に変換し、次いでアルケニルオキシ基の不飽和基に-SiXaR3-aを導入しうるシリル化剤を反応させて-SiXaR3-aを有するアルコキシ基とする方法(以下、方法(a)という。)、前駆重合体の水酸基に該水酸基と反応しうる官能基と-SiXaR3-aとを有するシリル化剤を反応させて、水酸基を-SiXaR3-aを有する基に変換する方法(以下、方法(b)という。)、及び、前駆重合体の水酸基をイソシアネート基を有する基に変換し、次いでイソシアネート基と反応し得る反応性基と-SiXaR3-aとを有するシリル化剤を反応させて、水酸基を-SiXaR3-aを有する基に変換する方法(以下、方法(c)という。)が挙げられる。
方法(a)において、アルケニルオキシ基としては、アリルオキシ基、3-ブテニルオキシ基、ビニルオキシ基等の末端に二重結合を有するアルケニルオキシ基が挙げられ、アリルオキシ基が特に好ましい。不飽和基に-SiXaR3-aを導入しうるシリル化剤としては、不飽和基と反応して結合を形成し得る基(例えばスルファニル基)と-SiXaR3-aとを有する化合物、ヒドロシラン化合物(HSiXaR3-a、ただし、X、R及びaは上記式(1)と同様である。)が挙げられる。特に、ヒドロシラン化合物が好ましい。
方法(b)において、水酸基と反応しうる官能基と-SiXaR3-aとを有するシリル化剤としては、イソシアネート基と-SiXaR3-aとを有するシリル化剤が好ましい。特に、イソシアネートアルキル基と-SiXaR3-aとを有する、イソシアネートシラン化合物が好ましい。
方法(c)において、前駆重合体の水酸基をイソシアネート基を有する基に変換する方法としては、ポリイソシアネート化合物を使用し、そのイソシアネート基の1個を前駆重合体の水酸基と反応させて、イソシアネート基を有する基とする方法が好ましい。イソシアネート基と反応し得る反応性基と-SiXaR3-aとを有するシリル化剤における反応性基としては、水酸基、アミノ基等が挙げられる。
重合体Aとしては、上記方法(a)で得られる重合体Aが好ましい。特に、前駆重合体の水酸基をアリルオキシ基に変換し、次いでアリルオキシ基にヒドロシラン化合物を反応させることにより得られる重合体Aが好ましい。アリルオキシ基にヒドロシラン化合物を反応させることにより生成する反応性ケイ素基を有する基は、-OCH2CH2CH2-SiXaR3-aで表される基である。
前駆重合体に導入される上記反応性ケイ素基を有する基の数としては、前記のように、末端基1個当たりに平均して0.5個超1.0個以下が好ましく、引張強度が良好となる観点から、0.55~0.98個がより好ましい。
【0025】
重合体Aを得るための前駆重合体は、活性水素を3個以上有する開始剤に、開環付加重合触媒の存在下で、環状エーテルを開環付加重合させて得られる、末端基が水酸基であるオキシアルキレン重合体である。開始剤の活性水素含有基としては水酸基が好ましい。環状エーテルとしてはアルキレンオキシドが好ましく、プロピレンオキシドが特に好ましい。したがって、重合体Aを得るための前駆重合体としては、水酸基を3個以上有する開始剤にプロピレンオキシドを開環付加重合させて得られる前駆重合体が好ましい。
開始剤が有する活性水素の数は、3~8個であることが好ましく、3~6個であることがさらに好ましく、3又は4個であることが特に好ましい。開始剤の活性水素含有基が水酸基である場合、開始剤が有する水酸基の数は、同様に、3~8個であることが好ましく、3~6個であることがさらに好ましく、3又は4個であることが特に好ましい。また、水酸基としては、アルコール性水酸基が好ましい。
水酸基を3個以上有する開始剤としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、スクロース及びソルビトールが例示でき、グリセリン及びトリメチロールプロパンが硬化物の伸びが良好となる観点から好ましい。
開始剤として2種以上の開始剤を併用してもよい。すなわち、活性水素の数が3以上である開始剤の2種以上の混合物を開始剤として使用してもよい。
【0026】
開始剤に環状エーテルを開環付加重合させる際の、開環付加重合触媒としては、従来公知の触媒を用いることができ、例えば、KOHのようなアルカリ触媒、有機アルミニウム化合物とポルフィリンとを反応させて得られる錯体のような遷移金属化合物-ポルフィリン錯体触媒、複合金属シアン化物錯体触媒、ホスファゼン化合物からなる触媒が挙げられる。
開環付加重合触媒としては、前駆重合体、ひいては重合体Aの分子量分布を狭くすることができ、粘度の低い硬化性組成物が得られやすい点から、複合金属シアン化物錯体触媒が好ましい。複合金属シアン化物錯体触媒は、従来公知の化合物を用いることができ、複合金属シアン化物錯体を用いた重合体の製造方法も公知の方法を採用することができる。例えば、国際公開公報第2003/062301号、国際公開公報第2004/067633号、特開2004-269776号公報、特開2005-15786号公報、国際公開公報第2013/065802号、特開2015-010162号公報に開示される化合物及び製造方法を用いることができる。
【0027】
前記方法(a)で用いられるシリル化剤であるヒドロシラン化合物としては、具体的には、例えば、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジメトキシシラン、メトキシメチルジエトキシシラン、メトキシメチルジメトキシシラン、メチルジイソプロポキシシラン、クロロメチルジメトキシシラン、クロロメチルジエトキシシランが挙げられる。活性が高く良好な硬化性が得られる点から、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシランが好ましく、メチルジメトキシシランがより好ましい。
なお、前記方法(b)及び前記方法(c)で用いられるシリル化剤及びそれらシリル化剤を用いた重合体Aの製造方法としては、反応性ケイ素基の相違以外は後述の重合体Bの製造に用いられるシリル化剤と同様のシリル化剤を用いる、後述の重合体Bの製造方法と同様の方法が好ましい。
重合体Aの製造方法は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、特公昭45-36319号、特開昭50-156599号、特開昭61-197631号、特開平3-72527号、特開平8-231707号、米国特許3632557、米国特許4960844号の各公報に提案されている方法が挙げられる。
【0028】
重合体Aのシリル化率としては50モル%超100モル%以下が好ましく、50~97モル%がより好ましく、52~95モル%がさらに好ましい。
硬化性組成物が、2種以上の重合体Aを含む場合、重合体A全体における平均のシリル化率が上記の範囲内であればよい。
【0029】
<重合体B>
本発明の硬化性組成物は、重合体Bを含む。
重合体Bは、末端基に式(2)で表わされる反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体である。本発明の硬化性組成物における重合体Bは1種でもよく、2種類以上でもよい。
-SiX3 ・・・(2)
式(2)中、Xは水酸基又は加水分解性基を示し、Xは互いに同一でも異なってもよい。
Xの好ましい態様は、上記式(1)と同様である。
重合体Bは式(2)で表される反応性ケイ素基を有するため、重合体Bを含有する硬化性組成物による硬化物は、復元性が良好となり、被着体への追随性に優れる。
重合体Bにおけるポリオキシアルキレン鎖は、重合体Aにおけるポリオキシアルキレン鎖と同様であり、好ましい態様も同様である。
重合体Bの各末端基は、式(2)で表される反応性ケイ素基を有する基、水酸基、アルケニルオキシ基、アルコキシ基等であり、少なくとも一部は式(2)で表される反応性ケイ素基を有する基である。式(2)で表される反応性ケイ素基を有する基以外の末端基は、水酸基又はアリルオキシ基であることが好ましい。重合体Bの1分子中の複数の末端基は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
重合体Bは、式(2)で表される反応性ケイ素基を1つの末端基あたりに平均して0.5個超1.0個以下有する。引張強度が良好となりやすいため、反応性ケイ素基を1つの末端基あたりに平均して0.55~0.98個有する重合体Bがより好ましい。
重合体Bの1分子中の末端基の数は、2個以上であり、2~6個であることが好ましい。硬化物の伸びが良好となりやすいため、重合体Bとしては1分子中に2個の末端基を有するものが特に好ましい。
【0031】
重合体BのMnとしては5,000~30,000が好ましく、6,000~28,000がより好ましく、7,000~27,000がさらに好ましく、12,000~26,000が特に好ましい。上記範囲内であると、硬化物の伸びがより優れ、粘度が充分に低くなりやすい。
重合体BのPS換算Mnとしては7,000~40,000が好ましく、8,000~36,000がより好ましく、9,000~35,000がさらに好ましく、17,500~34,000が特に好ましい。上記範囲内であると、硬化物の伸びがより優れ、粘度が充分に低くなりやすい。
重合体Bの分子量分布は1.8以下であることが好ましい。良好な伸びが得られやすいため、分子量分布としては小さいほうが好ましく、1.0~1.5がより好ましく、1.02~1.4がさらに好ましく、1.04~1.2が特に好ましい。
【0032】
重合体Bは、前駆重合体の水酸基を式(2)で表される反応性ケイ素基を有する基に変換して得られる。
重合体Bは、シリル化剤として式(2)で表される反応性ケイ素基を有する基を形成しうるシリル化剤を使用する以外は前記重合体Aの製造方法と同様の方法で、製造することができる。特に、シリル化剤の相違以外は、前記方法(a)又は前記方法(b)と同様の方法で製造されることが好ましい。
1分子中に3個以上の末端基を有する重合体Bは、重合体Aと同様に、水酸基を3個以上有する前駆重合体を用いて製造することができる。
重合体Bの末端基数が2であること、すなわち、重合体Bとしては線状重合体であること、が好ましいことより、重合体Bを得るための前駆重合体としては、活性水素を2個有する開始剤に、開環付加重合触媒の存在下で、環状エーテルを開環付加重合させて得られる、両末端基が水酸基であるオキシアルキレン重合体であることが好ましい。活性水素を2個有する開始剤としては水酸基を2個有する化合物が好ましい。開始剤は1種類を使用してもよく2種類以上を併用してもよい。
水酸基を2個有する化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、低分子量のポリオキシプロピレングリコールが例示できる。
【0033】
重合体Bは、上記重合体Bの前駆重合体、及び、シリル化剤として式(2)で表わされる反応性ケイ素基を有するシリル化剤を用いる他は、重合体Aの製造方法と同様に製造することができる。具体的には、前記方法(a)~方法(c)に対応する以下の製造方法が挙げられる。
方法(a):前駆重合体の水酸基をアルケニルオキシ基に変換し、次いでアルケニルオキシ基の不飽和基に-SiX3を導入しうるシリル化剤を反応させて-SiX3を有するアルコキシ基とする方法。
方法(b):前駆重合体の水酸基に該水酸基と反応しうる官能基と-SiX3とを有するシリル化剤を反応させて、水酸基を-SiX3を有する基に変換する方法。
方法(c):前駆重合体の水酸基をイソシアネート基を有する基に変換し、次いでイソシアネート基と反応し得る反応性基と-SiX3とを有するシリル化剤を反応させて、水酸基を-SiX3を有する基に変換する方法。
【0034】
方法(a)に使用するシリル化剤としては、不飽和基と反応して結合を形成し得る基(例えばスルファニル基)及び-SiX3の両方を有する化合物、ヒドロシラン化合物(例えばHSiX3)が例示できる。具体的には、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリス(2-プロペニルオキシ)シラン、トリアセトキシシランが例示できる。活性が高く良好な硬化性が得られる点から、トリメトキシシラン及びトリエトキシシランが好ましく、トリメトキシシランがより好ましい。
【0035】
方法(b)に使用するシリル化剤としては、下記式(3)で表されるイソシアネートシラン化合物が好ましい。
OCN-(CH2)n-SiX3 ・・・(3)
式(3)中のXは上記式(2)と同じである。nは1~8の整数であり、好ましくは1~3である。
前駆重合体の水酸基と上記イソシアネートシラン化合物との反応により、前駆重合体の水酸基が-O-C(=O)NH-(CH2)n-SiX3で表される、ウレタン結合(-O-C(=O)NH-)と-SiX3を有する末端基に変換される。
イソシアネートシラン化合物としては、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートメチルトリメトキシシラン、イソシアネートメチルトリエトキシシランが挙げられる。
イソシアネートシラン化合物としては、前駆重合体との反応性や取扱いのし易さから、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが好ましい。
この反応はウレタン化触媒の存在下に行ってもよい。ウレタン化触媒としては、特に限定されず、公知のウレタン化触媒を適宜用いることができる。例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機錫化合物、ビスマス化合物等の金属触媒、有機アミン等の塩基触媒が挙げられる。反応温度としては、20~200℃が好ましく、50~150℃がより好ましい。また、ウレタン化反応は、不活性ガス雰囲気下に行われることが好ましい。不活性ガスとしては窒素が好ましい。
【0036】
方法(c)では、前駆重合体の水酸基にポリイソシアネート化合物を反応させて、水酸基を、結合末端側にウレタン結合(-O-C(=O)NH-)を有する、イソシアネート基含有1価有機基に変換し、次いで、イソシアネート基含有1価有機基にイソシアネート基と反応し得る反応性基と-SiX3とを有するシリル化剤を反応させて、末端にウレタン結合(-O-C(=O)NH-)を有し、イソシアネート基と反応したシリル化剤残基を有する1価有機基とする。
以下、上記ポリイソシアネート化合物を下記式(4)で表されるジイソシアネート化合物とし、イソシアネート基と反応し得る反応性基と-SiX3とを有するシリル化剤を下記式(5)で表される化合物として、方法(c)を説明するが、これに限定されるものではない。
OCN-R1-NCO ・・・(4)
式(4)中のR1は2価の有機基を示す。
W-R2-SiX3 ・・・(5)
式(5)中のWは1価の反応性基(活性水素1個以上を有する)、R2は2価の有機基、-SiX3は前記式(2)と同じである。
前記結合末端側にウレタン結合(-O-C(=O)NH-)を有する、イソシアネート基含有1価有機基は、-O-C(=O)NH-R1-NCOで表される基である。イソシアネート基と反応したシリル化剤残基を有する1価有機基は、-O-C(=O)NH-R1-NHC(=O)-W’-R2-SiX3(ただし、W’は活性水素1個が除かれたWである。)で表される基である。例えば、Wが水酸基である場合、後者の基は-O-C(=O)NH-R1-NHC(=O)-O-R2-SiX3で表される基である。この場合、後者の基は2個のウレタン結合を有する。
R1としては炭素数2~20の2価の有機基が好ましく、アルキレン基、シクロアルキレン基、ビシクロアルキレン基、単環もしくは多環の2価の芳香族炭化水素基、側鎖炭化水素基含有シクロアルアルカンの側鎖基の炭素原子と環を構成する炭素原子にそれぞれに結合手を有する2価の基、側鎖炭化水素基含有芳香族炭化水素の2つの側鎖基の炭素原子にそれぞれに結合手を有する2価の基、等が挙げられる。
式(4)で表されるジイソシアネート化合物及びそれ以外のポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、無黄変性芳香族ポリイソシアネート(芳香族環を構成する炭素原子に直接結合したイソシアネート基を有しない化合物をいう。)、脂肪族ポリイソシアネート及び脂環族ポリイソシアネート、並びに、上記ポリイソシアネートから得られるウレタン変性体、ビュレット変性体、アロファネート変性体、カルボジイミド変性体、及びイソシアヌレート変性体が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、及び2,6-トリレンジイソシアネートが挙げられる。
無黄変性芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2個有するものが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネートが好ましく、硬化物の強度が得られやすいため、トリレンジイソシアネートがより好ましい。ポリイソシアネート化合物は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
式(5)で表されるイソシアネート基と反応し得る反応性基と-SiX3とを有するシリル化剤におけるR2としては、炭素数1~20の2価の有機基が好ましく、炭素数1~10の芳香族炭化水素基、炭素数1~4のアルキル基で置換された炭素数1~10の芳香族炭化水素基、炭素数1~10の環状炭化水素基、炭素数1~12の直鎖の炭化水素基がより好ましく、炭素数1~8の直鎖の炭化水素基がさらに好ましく、炭素数1~6の直鎖の炭化水素基が特に好ましい。
Wとしては水酸基、カルボキシ基、メルカプト基、アミノ基、1つの水素原子が炭素数1~6のアルキル基で置換されたアミノ基から選ばれる、活性水素を1又は2個有する基が好ましく、水酸基、メルカプト基、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基及びブチルアミノ基が好ましく、水酸基、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基及びブチルアミノ基がより好ましい。
【0038】
重合体Bが前記方法(b)や前記方法(c)で得られた重合体Bである場合、その重合体Bは通常ウレタン結合(-O-C(=O)NH-)を含む末端基を有する。重合体Bがウレタン結合を含む場合には、重合体B中のウレタン結合の含有量は0.33ミリモル/g以下であることが好ましく、0.29ミリモル/g以下であることがより好ましい。また、重合体B中のウレタン結合の含有量は、0.01ミリモル/g以上であることが好ましく、0.02ミリモル/g以上であることがより好ましく、0.05ミリモル/g以上であることがさらに好ましい。上記範囲内であれは、伸びと復元性がより良好となり、耐熱性が向上しやすい。ウレタン結合の濃度(ミリモル/g)は、NMRにより算出されるウレタン結合のモル数を、GPCで求めたMnで除すことにより算出することができる。
重合体Bのシリル化率としては50モル%超100モル%以下が好ましく、51~97モル%がより好ましく、52~95モル%がさらに好ましい。
硬化性組成物が、2種以上の重合体Bを含む場合、重合体B全体における平均のシリル化率が上記の範囲内であればよい。
【0039】
<重合体C>
本発明の硬化性組成物は、さらに重合体Cを含んでもよい。
重合体Cは、1分子中に2個の末端基を有し、1つの末端に平均して上記式(1)又は式(2)で表される反応性ケイ素基を0個超0.5個以下有するオキシアルキレン重合体である。
硬化性組成物は、2種類以上の重合体Cを含んでもよい。重合体Cは反応性可塑剤として働き、硬化性組成物の低粘度化及び塗料汚染性の向上に寄与する。重合体Cにおける反応性ケイ素基は式(2)で表される反応性ケイ素基であることが好ましい。
【0040】
重合体CのMnとしては2,000~12,000が好ましく、2,200~10,000がより好ましく、2,500~9,000がさらに好ましい。上記範囲内であると、硬化物の伸びがより優れ、硬化物の塗料汚染性やブリードアウトが良好になりやすい。
重合体CのPS換算Mnとしては2,600~16,000が好ましく、2,800~14,000がより好ましく、3,000~13,000がさらに好ましい。上記範囲内であると、硬化物の伸びがより優れ、硬化物の塗料汚染性やブリードアウトが良好になりやすい。
重合体Cの分子量分布は1.8以下であることが好ましい。粘度低減の点から、分子量分布としては小さいほうが好ましく、1.0~1.6がより好ましく、1.02~1.5がさらに好ましく、1.04~1.4が特に好ましい。
【0041】
重合体Cは、水酸基を2個又は1個有する前駆重合体に、上記反応性ケイ素基を、末端基当たりに平均して0個超0.5個以下導入して得られる。水酸基を2個有する前駆重合体としては、重合体Bの前駆重合体と同様の水酸基を2個有する線状の前駆重合体が挙げられる。水酸基を1個有する前駆重合体としては、活性水素を1個有する開始剤に環状エーテルを開環付加重合して得られる、開始剤残基とポリオキシアルキレン鎖とポリオキシアルキレン鎖末端の炭素原子に結合した水酸基とを有する、線状の前駆重合体が挙げられる。重合体Cの前駆重合体としては、後者の水酸基を1個有する前駆重合体が好ましい。
活性水素を1個有する開始剤としては、R10-O-H(R10は1価の炭化水素基)が好ましい。水酸基を1個有する前駆重合体を得るための環状エーテルとしては、重合体Aや重合体Bと同様に、アルキレンオキシドが好ましく、プロピレンオキシドが特に好ましい。これらを使用して得られる水酸基を1個有する前駆重合体は、ポリオキシアルキレン鎖と、ポリオキシアルキレン鎖の末端炭素原子に結合したR10-O-と、ポリオキシアルキレン鎖の末端酸素原子に結合した活性水素(ただし、末端基は、末端酸素原子を含めて水酸基とみなす。)と、を有する前駆重合体である。この前駆重合体の水酸基の平均して0個超1個以下を、前記重合体Aや重合体Bと同様に、方法(a)~方法(c)により反応性ケイ素基を有する基に変換することにより、重合体Cを製造することができる。得られた重合体Cの一方の末端基がR10-O-、他方の末端基の平均して0個超1個以下が反応性ケイ素基を有する基であることにより、重合体Cは末端基当たりに平均して0個超0.5個以下の反応性ケイ素基を有する。
【0042】
R10-O-Hで表される開始剤としては、R10が直鎖状又は分岐状の炭化水素基である1価のアルコールが好ましい。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、1-プロピルアルコール、2-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、2-エチルヘキサノール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデカノール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールが例示できる。R10としては、飽和炭化水素基が好ましく、炭素数10以下のアルキル基がより好ましく、炭素数6以下のアルキル基がより好ましい。
重合体Cの製造方法は、従来公知の方法を用いることができ、重合体A又はBと同様の方法(a)~方法(c)を用いることができる。
【0043】
重合体Cは、1分子中あたりに2個の末端基を有し、その末端基は、上記反応性ケイ素基を有する基、開始剤残基、水酸基、アルケニルオキシ基、アルコキシ基等であり、少なくとも一部は反応性ケイ素基を有する基である。重合体Cとしては、その末端基の1個が開始剤残基であるものが好ましい。
重合体Cのシリル化率としては45モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、55モル%以上がさらに好ましい。
硬化性組成物が、2種以上の重合体Cを含む場合、重合体C全体における平均のシリル化率が上記の範囲内であればよい。
【0044】
硬化性組成物が重合体Cを含む場合の重合体Cの含有量は、重合体A及び重合体Bの合計100質量部に対して、1~600質量部であることが好ましく、5~500質量部であることがより好ましく、10~300質量部であることがさらに好ましい。重合体Cの含有量が上記範囲内であると低粘度になりやすく、作業性がより優れ、硬化物においてブリードアウトが起こりにくい。
【0045】
<重合体D>
本発明の硬化性組成物は、1分子中に1個以上の式(1)又は式(2)で表される反応性ケイ素基を有するビニル重合体(以下、「重合体D」という。)を1種以上含んでもよい。
重合体Dにおける反応性ケイ素基は、ビニル重合体の主鎖末端に導入されていても、側鎖に導入されていても、主鎖末端と側鎖の両方に導入されていてもよい。
重合体Dの1分子あたりの反応性ケイ素基の数の平均は1.0個以上であることが好ましい。反応性ケイ素基の数の平均としては、硬化後の強度の点から1.2個以上が好ましく、1.6個以上がより好ましい。硬化物の伸びが良好となる点から4.0個以下が好ましく、3.0個以下がより好ましい。
重合体Dの1分子あたりの反応性ケイ素基の数の平均は「重合体D中の反応性ケイ素基の濃度[モル/g]×重合体DのPS換算Mn」で算出される。重合体D中の反応性ケイ素基の濃度[モル/g]は、NMRにより測定できる。
重合体Dの主鎖を構成する単量体としては、例えば、特公平3-14068号公報、特開平6-211922号公報、特開平11-130931号公報に記載される、従来公知の単量体を用いることができる。
上記単量体と共重合させる反応性ケイ素基及び重合性不飽和基を含む単量体としては、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)ビニルシラン、3-(メチルジメトキシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレートが例示できる。これらは1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
重合体Cを構成する全単量体単位に対して、(メタ)アクリレート単位の含有量としては50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%でもよい。
【0046】
重合体Dは、特開2006-257405号公報、特開2006-37076号公報、特開2008-45059号公報などに記載の従来公知の重合方法で重合できる。重合に必要な開始剤などの副資材についても従来公知のものを用いることができ、反応温度や反応圧力などの反応条件も適宜選択できる。
重合方法としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合又はバルク重合によるラジカル重合開始剤を用いた重合方法やリビングラジカル重合が例示できる。リビングラジカル重合法としては、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)、1994年、116巻、7943頁に示されているようなコバルトポルフィリン錯体を用いるもの、特表2003-500378号公報に示されているようなニトロオキサイドラジカルを用いるもの、特開平11-130931号公報に示されているような有機ハロゲン化物やハロゲン化スルホニル化合物などを開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP法)が例示できる。リビングラジカル重合で得られる重合体は、分子量分布が狭く、低粘度である傾向がある。
市販の重合体Dを用いることもできる。市販品としては、例えばXMAPシリーズ(カネカ社製品名)、ARUFON US-6000シリーズ(例えば、US-6110、US-6120等、いずれも東亜合成社製品名)、アクトフロー NEシリーズ(例えば、NE-1000、NE-3000、いずれも綜研化学社製品名)等を用いることができる。
【0047】
重合体DのPS換算Mnとしては、10,000~100,000が好ましく、12,000~80,000がより好ましく、13,000~60,000がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、硬化物の伸びや耐候性により優れ、上限値以下であると、作業性により優れる。
重合体Dの分子量分布としては、4.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましい。上記範囲の上限値以下であると、作業性により優れる。
硬化性組成物が重合体Dを含む場合の重合体Dの含有量としては、重合体A及び重合体Bの合計100質量部に対して、1~600質量部が好ましく、5~500質量部がより好ましく、10~300質量部がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、表面の汚染性が低下しやすく、上限値以下であると低粘度となりやすく、作業性により優れる。
【0048】
<重合体E>
本発明の硬化性組成物は、反応性ケイ素基を有しない、PS換算Mnが1,000以上の重合体(以下、「重合体E」という。)を1種以上含んでもよい。
重合体Eは、硬化物の表面の汚染低減、硬化物の表面上の塗料の乾燥性向上、塗料表面の汚染低減に寄与する。
重合体Eとしては、不飽和炭化水素重合体、(メタ)アクリレート重合体及び反応性ケイ素基を有しないオキシアルキレン重合体が好ましい。
【0049】
不飽和炭化水素重合体は、不飽和炭化水素単量体に基づく単位を含む重合体であり、ポリエチレン、ポリプロピレンが例示できる。
(メタ)アクリレート重合体としては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートを含む単量体の重合体又は共重合体が例示できる。市販の(メタ)アクリレート重合体としては、ARUFON UP-1000、ARUFON UP-1110、ARUFON UP-1171(いずれも東亜合成社製品名)が例示できる。
オキシアルキレン重合体としては、ポリエーテルポリオール(例えばポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール)、上記ポリエーテルポリオールの水酸基を封止してエステル又はエーテルにした誘導体が例示できる。市販のオキシアルキレン重合体としては、プレミノールS3011、プレミノールS4012、プレミノールS4013F(いずれもAGC社製品名)が例示できる。
【0050】
重合体EのPS換算Mnとしては、1,000~40,000が好ましく、1,500~35,000がより好ましく、2,000~30,000がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると熱や降雨による流出が防止されやすく、上限値以下であると粘度が低く、作業性により優れる。
重合体Eの分子量分布としては、(メタ)アクリレート重合体の場合、6.0未満が好ましく、5.5以下がより好ましく、5.0以下がさらに好ましい。オキシアルキレン重合体の場合、2.0未満が好ましく、1.8以下がより好ましく、1.6以下がさらに好ましい。
硬化性組成物が重合体Eを含む場合の重合体Eの含有量としては、重合体A及び重合体Bの合計100質量部に対して、1~600質量部が好ましく、5~500質量部がより好ましく、10~300質量部がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、表面の汚染性が低下しやすく、上限値以下であると低粘度となりやすく、作業性により優れる。
【0051】
<シラノール縮合触媒>
本発明の硬化性組成物は、重合体Aと重合体Bの合計100質量部に対して0.5質量部未満のシラノール縮合触媒を含有する。硬化性組成物は、上記硬化触媒を1種類以上含んでもよい。
シラノール縮合触媒は、式(1)及び式(2)で表される反応性ケイ素基における水酸基や加水分解性基における加水分解反応を促進することにより、シラノール結合の形成において触媒として作用する。
シラノール縮合触媒としては、例えば、錫、ビスマス等の金属と有機酸との塩、アルキル系錫触媒等が挙げられる。
有機酸との塩は、例えば、オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ラウリン酸錫、フェルザチック酸錫、トリス(2-エチルヘキサン酸)錫、ビスマスやチタンのカルボン酸塩が挙げられる。
アルキル系錫触媒としては、例えば、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫ビス(2-エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ビス(メチルマレエート)、ジブチル錫ビス(エチルマレエート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレエート)、ジブチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジブチル錫ビス(トリデシルマレエート)、ジブチル錫ビス(ベンジルマレエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ビス(エチルマレエート)、ジオクチル錫ビス(オクチルマレエート)、ジブチル錫ジメトキサイド、ジブチル錫ビス(ノニルフェノキサイド)、ジブテニル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(エチルアセトアセトナート)、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジオクチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物が挙げられる。
シラノール縮合触媒としては、良好な硬化性を得やすいため、オクチル酸錫やアルキル系錫触媒が好ましく、施工の容易さから、アルキル系錫触媒がより好ましく、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫フタレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(エチルアセトアセトナート)、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、及び、ジオクチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物がさらに好ましい。
これらのシラノール縮合触媒は単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。更にラウリルアミン等の従来公知の助触媒を併用しても良い。
硬化性組成物におけるシラノール縮合触媒の含有量としては、重合体A及び重合体Bの合計100質量部に対して、0.01~0.5質量部が好ましく、0.05~0.4質量部がより好ましく、0.1~0.3質量部がさらに好ましい。上記範囲内であると、硬化反応が充分に進行しやすく、硬化時に局部的な発熱や発泡が生じにくく、良好な硬化物が得られやすい。
【0052】
<硬化性組成物>
硬化性組成物は、重合体A、重合体B及びシラノール縮合触媒と、後述のその他の成分を混合して得られる。硬化性組成物中に共存する重合体が反応性ケイ素基を有する場合は、それぞれの反応性ケイ素基は互いに同じでもよく、異なってもよい。
硬化性組成物における、重合体Bに対する重合体Aの質量比は、重合体Aの質量/重合体Bの質量として、99/1~50/50であり、98/2~60/40であることが好ましく、95/5~70/30であることがより好ましい。上記範囲内であれば、硬化物の伸びと復元性が良好となる。
硬化性組成物における、重合体Aの含有割合としては3~80質量%が好ましく、5~60質量%がより好ましく、10~50質量%がさらに好ましい。上記範囲内であると、伸びがより優れる。
硬化性組成物における、重合体Bの含有割合としては0.5~50質量%が好ましく、0.7~40質量%がより好ましく、1~30質量%がさらに好ましい。上記範囲内であると、硬化物の伸び及び復元性により優れる。
硬化性組成物における、重合体A及び重合体Bの含有割合としては3.5~80.5質量%が好ましく、5.7~60.7質量%がより好ましく、11~51質量%がさらに好ましい。上記範囲内であると、硬化性が良好となりやすく、硬化物の伸び及び復元性により優れる。
後述の実施例に示すように、本発明の硬化性組成物から得られる硬化物のJIS A 1439 5.2(2016)の建築用シーリング材の試験方法に準拠した弾性復元率は70%以上となりやすく、さらには72%以上となりやすい。70%以上であれば良好な復元性が得られ、経時的な被着物の構造変化にも追随しやすく、硬化性組成物の追随性が得られやすい。
また、後述の実施例に示すように、本発明の硬化性組成物から得られる硬化物のJIS A 1439(2016)の建築用シーリング材の試験方法に準拠した耐久性試験体1形での引張特性試験における最大伸びの値は、500%以上となりやすく、さらには580%以上となりやすい。500%以上であれば良好な伸びが得られ、建築用のシーリング材として好適である。
【0053】
硬化性組成物は、すべての配合成分を予め配合し密封保存して、施工後に空気中の湿気により硬化させる1液型でもよく、少なくとも反応性ケイ素基を有する成分を含む主剤組成物と、少なくとも硬化触媒を含む硬化剤組成物とを別々に保存し、使用前に硬化剤組成物と主剤組成物を混合する2液型でもよい。施工が容易であるため、1液型の硬化性組成物が好ましい。
【0054】
1液型の硬化性組成物は水分を含まないことが好ましい。水分を含む配合成分を予め脱水乾燥するか、また配合混練中に減圧して脱水することが好ましい。
2液型の硬化性組成物において、硬化剤組成物は水を含んでもよい、主剤組成物は少量の水分を含んでもゲル化し難いが、貯蔵安定性の点からは配合成分を予め脱水乾燥することが好ましい。
貯蔵安定性を向上させるために、1液型の硬化性組成物又は2液型の主剤組成物に脱水剤を添加してもよい。
【0055】
[その他の成分]
硬化性組成物は、上記重合体A~E及びシラノール縮合触媒以外のその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、硬化性化合物、充填剤、可塑剤、チクソ性付与剤、安定剤、接着性付与剤、物性調整剤、粘着性付与樹脂、フィラーなどの補強材、表面改質剤、難燃剤、発泡剤、溶剤、シリケートが例示できる。
その他の成分は、それぞれ、国際公開第2013/180203号、国際公開第2014/192842号、国際公開第2016/002907号、特開2014-88481号公報、特開2015-10162号公報、特開2015-105293号公報、特開2017-039728号公報、特開2017-214541号公報などに記載される従来公知のものを、限定なく組み合わせて用いることができる。
【0056】
[作用機序]
本発明の硬化性組成物は、重合体Aと重合体Bを特定の割合で含有し、特定の量未満のシラノール縮合触媒を含む。該硬化性組成物は、後述の実施例に示されるように、硬化性に優れ、得られた硬化物は、伸びと復元性が良好となるため、長期間屋外に曝露される外壁用のシーリング材に特に好適である。本発明の硬化性組成物を外壁用のシーリング材に用いた場合には、経時的な被着物の構造変化にも追随し、亀裂が生じにくいため、外観が良好に維持されやすい。
【0057】
[用途]
硬化性組成物の用途としては、シーリング材(例えば建築用弾性シーリング材、複層ガラス用シーリング材、ガラス端部の防錆・防水用封止材、太陽電池裏面封止材、建造物用密封材、船舶用密封材、自動車用密封材、道路用密封材)、電気絶縁材料(電線・ケーブル用絶縁被覆材)、接着剤が好適である。
特に、硬化物の伸びと復元性が要求される用途に好適であり、例えば、屋外に施工されるシーリング材が挙げられる。
【実施例0058】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0059】
[前駆重合体の分子量]
開始剤にアルキレンオキシドを重合させて得られた、末端基が水酸基であるオキシアルキレン重合体である前駆重合体の分子量は、JIS K 1557(2007)に基づいて算出された水酸基価より、「56,100/(前駆重合体の水酸基価)×開始剤の活性水素の数」の式に基づいて算出した(以下、「水酸基換算分子量」という)。
【0060】
[Mn及びMw/Mn]
HLC-8220GPC(東ソー社製品名)を用いて、水酸基換算分子量既知のオキシアルキレン重合体を用いて、水酸基換算分子量に対する検量線を作成し、Mw、Mnを求め、Mw/Mnを算出した。
【0061】
[PS換算Mn]
HLC-8220GPC(東ソー社製品名)を用いて、分子量既知のポリスチレン重合体を用いて、ポリスチレン換算分子量に対する検量線を作成し、PS換算Mnを算出した。
【0062】
[シリル化率、シリル基数]
前駆重合体の末端水酸基を塩化アリルを用いてアリルオキシ基に変換し、シリル化剤であるヒドロシラン化合物を上記アリルオキシ基と反応させて反応性ケイ素基を導入する方法において、アリルオキシ基に対する、シリル化剤の仕込み当量(モル比)をシリル化率とした。
アリルオキシ基とシリル化剤の反応において、副反応によりシリル化剤と反応しないアリルオキシ基はおよそ10%である。したがってアリルオキシ基の90モル%未満に相当するシリル化剤と反応させる場合には、上記仕込み当量がシリル化率と同等となる。
【0063】
[タックフリータイム(TFT)]
タックフリータイム(TFT)は、23℃においてJIS A 1439(2016)に従って測定した指触乾燥時間のことである。TFTは組成物の硬化性を示す指標であり、小さいほど硬化速度が速く、硬化性に優れていることを表す。
【0064】
[引張特性の評価]
被着体として、表面にプライマーのMP-2000(セメダイン社製品名)を塗工した表面陽極酸化アルミニウム板を使用し、JIS A 1439(2016)の建築用シーリング材の試験方法に準拠して耐久性試験体1形を作製し引張特性試験を行った。
具体的には、硬化性組成物を、2枚の上記アルミニウム板の間にスペーサーを挟み込んで形成された空間に、硬化性組成物を流し入れ、温度23℃、湿度50%で7日間養生し、更に温度50℃、湿度65%で7日間養生して耐久性試験体1形を得た。得られた耐久性試験体1形について、テンシロン試験機にて引張特性試験を行い、100%伸張した時の応力(以下、「M100」という。単位:N/mm2)、最大点凝集力(単位:N/mm2)、最大点伸び(単位:%)を測定した。
M100の値は小さいほど硬化物が柔らかく、最大点凝集力の値は大きいほど硬化物の引張強度が高く、最大点伸びの値は大きいほど硬化物の伸びが良い。最大点伸びは500%以上であれば、良好な伸びを示す。
【0065】
[弾性復元性の評価]
被着体として、表面にプライマーのMP-2000(セメダイン社製品名)を塗工した表面陽極酸化アルミニウム板を使用し、JIS A 1439 5.2(2016)の建築用シーリング材の試験方法に準拠してアルミニウム被着体を作製し弾性復元性を評価した。
具体的には、上記引張特性の評価と同様に、2枚の上記アルミニウム板の間に硬化性組成物を流し込み、温度23℃、湿度50%で7日間養生し、更に温度50℃、湿度65%で7日間養生して、アルミニウム被着体を得た。得られたアルミニウム被着体の2枚のアルミニウム板の間の距離をL0とした。所定の治具を使用し、温度23℃、湿度50%の環境下において、2枚のアルミニウム板の間の距離をL0に対して100%伸長させた。このときの2枚のアルミニウム板の間の距離をL1とした。2枚のアルミニウム板の間の距離をL1としたまま24時間保持した後、治具を外し、1時間静置して、2枚のアルミニウム板の間の距離をL2として測定した。上記L0、L1及びL2の値から、下記式(5)により弾性復元率(単位:%)を求めた。弾性復元率の値が高いほど、復元性に優れる。弾性復元率は70%以上であれば、復元性が良好となる。
弾性復元率=(L1-L2/L1-L0)×100 ・・・(5)
【0066】
[重合体A、重合体B及び重合体Cの合成]
(合成例1:重合体A1)
グリセリンを開始剤とし、配位子がt-ブチルアルコールの亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体(以下、「TBA-DMC触媒」という。)を触媒として使用してプロピレンオキシドを重合し、オキシプロピレン重合体(前駆重合体)を得た。前駆重合体の水酸基換算分子量は24,000であった。次いで、前駆重合体の水酸基に対して1.05モル当量のナトリウムメトキシドのメチルアルコール溶液を添加して前駆重合体をアルコラート化した。次に、加熱減圧によりメチルアルコールを留去し、さらに前駆重合体の水酸基量に対して過剰量の塩化アリルを添加して前駆重合体の水酸基をアリルオキシ基に変換した。次に、塩化白金酸六水和物の存在下、アリルオキシ基に対して0.75モル当量のメチルジメトキシシランを添加し、70℃にて5時間反応させて、前駆重合体の水酸基を-OCH2CH2CH2-Si(OCH3)2CH3に変換したオキシプロピレン重合体(重合体A1)を得た。
得られた重合体A1のMn、末端基あたりのMn、Mw/Mn、PS換算Mn、末端基あたりの反応性ケイ素基の平均数を表1に示す。以下の合成例2~7で得られた重合体についても同様に表1に示す。
【0067】
(合成例2:重合体a1)
グリセリンを開始剤とし、合成例1と同様にTBA-DMC触媒の存在下に、プロピレンオキシドを重合し、水酸基換算分子量が16,500の前駆重合体を得た。次いで、合成例1と同様にして前駆重合体の水酸基をアリルオキシ基に変換し、該アリルオキシ基に対して0.70モル当量のメチルジメトキシシランを添加し、前駆重合体の水酸基を-OCH2CH2CH2-Si(OCH3)2CH3に変換したオキシプロピレン重合体(重合体a1)を得た。
【0068】
(合成例3:重合体a2)
グリセリンを開始剤とし、合成例1と同様にTBA-DMC触媒の存在下に、プロピレンオキシドを重合し、水酸基換算分子量が10,000の前駆重合体を得た。次いで、合成例1と同様にして前駆重合体の水酸基をアリルオキシ基に変換し、該アリルオキシ基に対して0.60モル当量のメチルジメトキシシランを添加し前駆重合体の水酸基を-OCH2CH2CH2-Si(OCH3)2CH3に変換したオキシプロピレン重合体(重合体a2)を得た。
【0069】
(合成例4:重合体B1)
プロピレングリコールを開始剤とし、TBA-DMC触媒の存在下に、プロピレンオキシドを重合し、水酸基換算分子量が12,000の前駆重合体を得た。次いで、前駆重合体の水酸基に対して0.97モル当量の3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランをU860(ジオクチル錫ビス(イソオクチルチオグリコレート)、日東化成社製品名)を用いて反応させて、前駆重合体の水酸基を-OC(=O)NH-CH2CH2CH2Si(OCH3)3に変換したオキシプロピレン重合体(重合体B1)を得た。重合体B1は0.16ミリモル/gのウレタン結合を有していた。
【0070】
(合成例5:重合体B2)
プロピレングリコールを開始剤とし、TBA-DMC触媒の存在下に、プロピレンオキシドを重合し、水酸基換算分子量が18,000の前駆重合体を得た。次いで、合成例4と同様にして、前駆重合体の水酸基に対して0.97モル当量の3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランを反応させて、前駆重合体の水酸基を-OC(=O)NH-CH2CH2CH2Si(OCH3)3に変換したオキシプロピレン重合体(重合体B2)を得た。重合体B2は0.11ミリモル/gのウレタン結合を有していた。
【0071】
(合成例6:重合体B3)
プロピレングリコールを開始剤とし、TBA-DMC触媒の存在下に、プロピレンオキシドを重合し、水酸基換算分子量が12,000の前駆重合体を得た。次いで、合成例1と同様にして前駆重合体の水酸基をアリルオキシ基に変換し、該アリルオキシ基に対して0.75モル当量のトリメトキシシランを添加し、前駆重合体の水酸基を-OCH2CH2CH2-Si(OCH3)3に変換したオキシプロピレン重合体(重合体B3)を得た。重合体B3はウレタン結合を有していなかった。
【0072】
(合成例7:重合体C1)
n-ブチルアルコールを開始剤とし、TBA-DMC触媒の存在下に、プロピレンオキシドを重合し、ポリオキシプロピレンを得た。ポリオキシプロピレンは末端に水酸基を有し、水酸基換算分子量が5,000の前駆重合体を得た。次いで、合成例1と同様にして前駆重合体の水酸基をアリルオキシ基に変換し、該アリルオキシ基に対して0.80モル当量のメチルジメトキシシランを添加し、前駆重合体の水酸基を-OCH2CH2CH2-Si(OCH3)2CH3に変換したオキシプロピレン重合体(重合体C1)を得た。
【0073】
[その他成分]
表2に記載の添加剤は以下のとおりである。
ホワイトンSB:重質炭酸カルシウム、白石工業社製品名。
CCR:膠質炭酸カルシウム、白艶化CCR、白石工業社製品名
R-820:酸化チタン、石原産業社製品名
UP-1110:ARUFON UP-1110、Mn=1,500のアクリルポリマー、東亜合成社製品名。
EL3020:エクセノール 3020、1分子あたり水酸基を2個有し、水酸基換算分子量が3000であるオキシアルキレン重合体、AGC社製品名。
DINP:ビニサイザー90、ジイソノニルフタレート、花王社製品。
N-12D:カクタスノルマルパラフィンN-12D、n-ドデカン、純度98.0%、JXTGエネルギー社製品。
サンソサイザーEPS:4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸-ジ-2-エチルヘキシル、新日本理化社製品名。
グリセリンモノステアレート:試薬、東京化成工業社製。
KBM-202:ジフェニルジメトキシシラン、信越化学社製品名。
IRGANOX1135:ヒンダードフェノール系酸化防止剤、BASF社製品名。
TINUVIN327:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、BASF社製品名。
TINUVIN770:ヒンダードアミン系光安定剤、BASF社製品名。
LA-63P:アデカスタブLA-63P、ADEKA社製品名。
KBM-1003:ビニルトリメトキシシラン、信越化学社製品名。
KBM-403:3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学社製品名。
KBM-603:3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、信越化学社製品名。
ラウリルアミン:試薬、純正化学社製。
ファーミンCS:ココナットアミン、花王社製品名。
U-220H:ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、錫触媒、日東化成社製品名。
【0074】
[硬化性組成物の調整]
例1~例6及び例14~例29は実施例であり、例7~例13は比較例である。
【0075】
(例1~例13)
表3に示す配合の反応性ケイ素を有する重合体及び表2に示す配合量の添加剤を添加して硬化性組成物を調製した。
得られた硬化性組成物を引張特性試験及び弾性復元性試験を実施した。結果を表3に示す。
【0076】
(例14~例29)
表3の例1に示す配合において、添加剤処方を表2に示す添加剤1から添加剤4~添加剤11にそれぞれ変更して硬化性組成物を調製し、上記と同様にして例14~例21の硬化物を得た。表3の例2に示す配合において、添加剤処方を表2に示す添加剤1から添加剤4~添加剤11にそれぞれ変更して硬化性組成物を調製し、上記と同様にして例22~例29の硬化物を得た。例14~例29の硬化性組成物は良好に硬化した。得られた硬化物はいずれも、上記引張特定試験及び弾性復元性試験において、伸びと復元性が良好であった。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
表3に示すように、例1~6で得られた硬化物は、TFTが短く硬化性が良好であり、伸びが良好であり、弾性復元率が高く、十分な復元性が発現した。重合体Bを含まないか又はシラノール縮合触媒の含有量が多い例7、8及び例11で得られた硬化物では、弾性復元率が低く、十分な復元性が発現しなかった。また、重合体Aの末端基1個当たりの数平均分子量が6,000未満である例9及び例10で得られた硬化物、重合体Aと重合体Bとの質量比が本発明の範囲を外れる例12及び例13でえられた硬化物は、伸びが劣り、復元率を測定している間に破断が見られ、復元性が劣っていた。
なお、2018年09月26日に出願された日本特許出願2018-180111号の明細書、特許請求の範囲及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。