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特開2024-45606光学用粘着剤組成物、粘着フィルム、粘着シート、及び粘着剤層付き光学フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045606
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】光学用粘着剤組成物、粘着フィルム、粘着シート、及び粘着剤層付き光学フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/14 20060101AFI20240326BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240326BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C09J133/14
C09J7/38
C09J4/02
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024022704
(22)【出願日】2024-02-19
(62)【分割の表示】P 2022205059の分割
【原出願日】2019-04-26
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 史恵
(72)【発明者】
【氏名】塚田 高士
(72)【発明者】
【氏名】大津賀 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】廣神 萌美
(57)【要約】
【課題】被着体の枠印刷などの段差に対する段差追従性、リワーク時のハンドリング性、及び優れた湿熱耐久性を兼ね備えた粘着剤層を形成できる光学用粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルム、粘着シート、粘着剤層付き光学フィルムを提供する。
【解決手段】アルキル基、水酸基、アルコキシ基、芳香族基のいずれかを有する共重合性ビニルモノマー、及び窒素含有ビニルモノマーの化合物群から選択された少なくとも2種類以上を共重合させて得られた、酸価が1.0以下の共重合体と、(F)1分子内に(メタ)アクリロイル基とアリルエーテル基を有し、且つエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーと、(G)アルキレンオキサイド基を有する1分子内にエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーと、(E)熱架橋剤と、(H)光架橋剤とを含有する光学用粘着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基、水酸基、アルコキシ基、芳香族基のいずれかを有する共重合性ビニルモノマー、及び窒素含有ビニルモノマーの化合物群から選択された少なくとも2種類以上を、共重合させて得られた、酸価が1.0以下の共重合体と、(F)1分子内に(メタ)アクリロイル基とアリルエーテル基を有し、且つエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーと、(G)アルキレンオキサイド基を有する1分子内にエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーと、(E)熱架橋剤と、(H)光架橋剤とを含有し、
前記(E)熱架橋剤が、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルミニウムキレート系架橋剤からなる群の中から選択される1種以上であり、
前記(H)光架橋剤がラジカル開始剤であることを特徴とする光学用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記共重合体が、
(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計の100重量部に対して、
(B)窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計を2.0~10重量部と、
(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~10重量部と、
(D)水酸基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.5~10重量部と、
を共重合させた重量平均分子量20万~100万の共重合体であり、
前記光学用粘着剤組成物が、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計の100重量部に対して、前記(E)熱架橋剤を0.01~5重量部と、前記(F)1分子内に(メタ)アクリロイル基とアリルエーテル基を有し、且つエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーを0.1~10重量部と、前記(G)アルキレンオキサイド基を有する1分子内にエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーを0.1~10重量部と、前記(H)光架橋剤を0.01~5重量部との割合で含有することを特徴とする請求項1に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記共重合体が、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計の100重量部のうち、アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートが50重量部以上の割合で含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記共重合体が、(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノマーを共重合してなり、前記光学用粘着剤組成物が、(G)アルキレンオキサイド基を有する1分子内にエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーを含有してなり、
前記(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノマーの、アルキレンオキサイドの平均繰り返し数が4~14であり、前記(G)アルキレンオキサイド基を有する1分子内にエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーの、アルキレンオキサイドの平均繰り返し数が4~14であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学用粘着剤組成物。
【請求項5】
基材の片面上に、請求項1又は2に記載の光学用粘着剤組成物を用いて、前記(E)熱架橋剤により架橋されてなる粘着剤層、又は、前記(E)熱架橋剤による架橋に続いて前記(H)光架橋剤による架橋の2段階で架橋されてなる粘着剤層が積層されてなる粘着フィルム。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の光学用粘着剤組成物を用いて、前記(E)熱架橋剤により架橋されてなる粘着剤層が、2枚の離型処理された離型フィルムの間に、積層されてなる粘着シート。
【請求項7】
光学フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1又は2に記載の光学用粘着剤組成物を用いて、前記(E)熱架橋剤により架橋されてなる粘着剤層、又は、前記(E)熱架橋剤による架橋に続いて前記(H)光架橋剤による架橋の2段階で架橋されてなる粘着剤層が積層されてなる粘着剤層付き光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルム、粘着シートに関する。さらに詳細には、被着体の枠印刷などの段差に対する段差追従性、リワーク時のハンドリング性(被着体から剥離し易いこと)、及び優れた湿熱耐久性を兼ね備えた粘着剤層を形成できる光学用粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルム、粘着シートを提供することに関する。
また、本発明に係わる光学用粘着剤組成物を用いて、熱架橋剤により架橋した粘着剤層は、被着体の表面に配設された枠印刷などの段差(凹凸)に対する段差追従性、及びリワーク時のハンドリング性が良好であり、さらに、該熱架橋剤による架橋に続いて光架橋剤による架橋の2段階で架橋した後の粘着剤層は、湿熱耐久性に優れている。
また、本発明の光学用粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルム、粘着シートは、各種ディスプレイに光学フィルムを貼り合せる場合、光学フィルム同士を貼り合せて光学フィルムの積層体を作製する場合、及び各種の電子機器に組み込まれる光学部品・電子部品を固定する場合などに使用することができる。
なお、本発明において、粘着剤層の「湿熱耐久性」とは、粘着剤層を湿熱環境下に長期間放置した後、室温環境(温度23℃×50%RH)下に取り出しても水分による著しい発泡を起こさないで透明性を維持する耐久性のことを意味している。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ(画像表示装置)と、入力装置としてタッチパネルとを組み合わせた電子機器が普及している。タッチパネルが適用されるディスプレイ(画像表示装置)としては、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(無機EL、有機EL)などが挙げられる。また、入力装置としてタッチパネルが利用される具体的な電子機器としては、液晶テレビ、無機ELテレビ、有機ELテレビ、携帯端末、携帯電話、電子ペーパー、電子書籍端末、パソコンなどが挙げられる。
これらの電子機器においては、タッチパネルを構成する光学部材を貼り合せるための粘着剤層には、段差追従性、湿熱耐久性などの機能を備えることが求められている。
【0003】
従来から、段差追従性を有する粘着剤層を得るため、種々の提案がされている(特許文献1~3)。また、段差追従性及び湿熱耐久性を有する粘着剤層を得るための提案もされている(特許文献4)。
特許文献1には、透明パネルと画像表示装置との固定に際し、透明パネル表面や画像表示装置表面に設けられた装飾部により生じる段差での密着性に優れ、かつ、高温環境下において、段差部分での発泡や剥がれを抑制できる両面粘着シートが記載されている。
また、特許文献2には、印刷段差に起因する、粘着剤層形成時の印刷キワの気泡が少なく、かつ、被着体に貼り合せる時の気泡の発生が生じなく、荷重を加えても窪みが生じ難い加飾印刷層付き表面保護フィルムが記載されている。
また、特許文献3には、金属あるいは金属酸化物からなる導電膜を有するタッチパネル用の光重合性粘着剤において、耐湿熱安定性および耐発泡性に優れることにより白化や発泡が抑えられ、また臭気の発生や皮膚刺激がなく、さらには金属あるいは金属酸化物に対する腐食性のない光重合性粘着剤、粘着シートが記載されている。
また、特許文献4には、透明性、接着性、耐久性、耐腐食性、段差追従性、高誘電率、塗工性に優れたタッチパネル用粘着剤組成物に用いるアクリル系高分子化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-211282号公報
【特許文献2】特開2015-221531号公報
【特許文献3】特開2013-256552号公報
【特許文献4】特開2012-041456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の両面粘着シートでは、粘着剤層の貯蔵弾性率の値を特定の数値範囲に抑えて柔らかい粘着剤層としていることから、印刷段差追従性に関する性能を満たしている。しかし、粘着剤層の粘着力を高めると、被着体に光学部材を貼り合せた後に、貼り直す必要が生じた場合に、剥がし難いことがあり、いわゆるリワーク時のハンドリング性(貼り直しの操作性)が劣る。逆に、粘着剤層のリワーク時のハンドリング性を高めると、被着体に光学部材を貼り合せた後の粘着力が低過ぎて剥がれる恐れが生じる。そのため、特許文献1に記載の両面粘着シートでは、粘着剤層の、リワーク時のハンドリング性を確保すること、並びに、被着体に光学部材を貼り合せた後の粘着力を高くすることの両立が困難であるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2には、透明樹脂フィルムの片面に、図形、文字など加飾印刷層が形成されており、該加飾印刷層の形成されていない部分の上部、及び前記加飾印刷層の上部に、光重合開始剤を含む流動性を有する光硬化性樹脂組成物を塗布した後、UV照射して光硬化させてなる粘着剤層を形成して、加飾印刷層付き表面保護フィルムを得ることが開示されている。特許文献2の加飾印刷層付き表面保護フィルムは、光重合開始剤を含む流動性を有する光硬化性樹脂組成物を塗布した後、UV照射して光硬化させてなる粘着剤層が形成されることから、UV硬化させた後の粘着剤層の柔軟さに関係なく印刷段差を埋めることができるとしている。しかし、特許文献2の発明に係わる粘着剤層は、液体状の粘着剤組成物を塗布するため、厚膜の粘着剤層を形成することが困難であるという問題があった。また、液体状の光硬化性樹脂組成物を、印刷段差の部分に塗布して印刷段差を埋めることは、取扱いが煩雑であるという課題を有している。
【0007】
また、特許文献3には、(a-1)アルキル(メタ)アクリレート40~92重量%、(a-2)水酸基含有モノマー5~20重量%、(a-3)水溶性N置換アクリルアミド3~25重量%を含有し、かつ酸性基含有モノマーを実質的に含有しないモノマー群(A)(全モノマーを100重量%とする)またはその部分重合物(A’)100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤および/または多官能モノマー(B)0.01~2重量部と、光重合開始剤(C)0.1~2重量部とを含有する光重合性粘着剤が開示されている。特許文献3の光重合性粘着剤であれば、段差追従性および再剥離性がよいとしている。特許文献3の実施例1~6によると、基材に、光重合性粘着剤を塗布して厚みが300μmの塗布膜を形成し、この塗布膜の表面上に離型処理された厚みが25μmのPETフィルムを離型処理面が当接するように設置し、窒素ガス雰囲気下でUV照射により光重合をして粘着シートを作製している。しかし、得られた粘着シートの粘着力の値が14~25N/25mmの範囲であることから、被着体に貼り合せた粘着シートを貼り直すときに、被着体から粘着シートを剥離するのが困難であり、リワーク時のハンドリング性に劣っているという問題があった。
【0008】
また、特許文献4には、(a)炭素数1~12の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(b)ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(c)アミド基を含有する単量体、及び(d)ビニルエステル系単量体を含む単量体成分を共重合して得られ、樹脂酸価が0.1mgKOH/g以下であり、重量平均分子量が40万~200万であり、Tgが-80~0℃であり、誘電率が3~6である、タッチパネル用粘着剤組成物に用いるアクリル系高分子化合物が開示されている。特許文献4のアクリル系高分子化合物においては、「ヒドロキシル基含有アクリル酸エステル系単量体が好ましく、架橋剤との反応部位となる官能基を高分子化合物に与えることができ、架橋して得られた架橋物が粘着剤としての適切な弾性を付与して凝集力を高めると共に、誘電率を高め、さらに粘着シートの耐湿熱性の向上に寄与することができるという理由から、2-ヒドロキシエチルアクリレート及び4-ヒドロキシブチルアクリレートが特に好ましい」(引用文献4の段落〔0021〕)としている。
また、特許文献4の粘着シートにおいては、「製品の意匠性を高め差別化を図るため保護透明板に印刷層を設けることが多い。この印刷インク層、各種回路に使用される銀ペーストなどの層、またFPD部分に発生する段差など、基材シートやフィルムに10~30μm程度の段差を有する場合が多く、粘着シートによる貼り合わせ時に気泡が発生するという問題がある。これは粘着剤層の段差追従性の不足によるものである。この段差追従性は粘着剤組成物から得られる粘着シートの粘着特性において、適度なTgとゲル分率が密接に関係する。粘着剤のゲル分率は30~70%程度が好ましく、より好ましくは40~65%程度である。」(引用文献4の段落〔0081〕)としている。
しかし、引用文献4の実施例1~12の粘着シートのうち、実施例1、2、5、6、8、10の粘着シートは、粘着剤層の厚みが50μmと薄いにも拘らず、耐湿熱試験後のヘイズ値が4.0%を超えていることから、さらに耐湿熱性を向上させる必要があるという問題があった。
【0009】
このように、従来技術では、被着体の枠印刷などの段差に対する段差追従性、リワーク時のハンドリング性が良好であり、且つ優れた湿熱耐久性を有する粘着剤層を形成できる光学用粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルム、粘着シートを得ることが困難であった。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、被着体の枠印刷などの段差に対する段差追従性、リワーク時のハンドリング性、及び優れた湿熱耐久性を兼ね備えた粘着剤層を形成できる光学用粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルム、粘着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題について鋭意探究し、アクリル系ポリマーと、1分子内に(メタ)アクリロイル基とアリルエーテル基を有し、且つエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーと、アルキレンオキサイド基を有する1分子内にエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーと、熱架橋剤と、光架橋剤とを含有する光学用粘着剤組成物を、熱架橋剤により架橋させた粘着剤層であって、且つ光架橋剤により架橋させる前の粘着剤層(第1段階)が、段差追従性、リワーク時のハンドリング性に優れていること、さらに、前記光学用粘着剤組成物を、前記熱架橋剤による架橋に続いて光架橋剤による架橋の2段階で架橋させて形成した粘着剤層(第2段階)が、湿熱耐久性に優れていることを見出したことにより、本発明を完成させることができた。
本発明に係わる光学用粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーと、1分子内に(メタ)アクリロイル基とアリルエーテル基を有し、且つエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーと、アルキレンオキサイド基を有する1分子内にエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーと、熱架橋剤と、光架橋剤とを含有する光学用粘着剤組成物を、熱架橋剤による架橋と光架橋剤による架橋との2段階で架橋させて、物性の異なる粘着剤層を2段階で形成できるという特徴を有する。
すなわち、本発明は、被着体の枠印刷などの段差に対する段差追従性、リワーク時のハンドリング性が良好である前記第1段階の粘着剤層と、優れた湿熱耐久性を有する前記第2段階の粘着剤層とからなる、物性の異なる粘着剤層を2段階で形成できる光学用粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルム、粘着シートを提供することを技術思想としている。
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、官能基にカルボキシル基を有しておらず、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、芳香族基のいずれかを有する共重合性ビニルモノマー、及び窒素含有ビニルモノマーの化合物群から選択された少なくとも2種類以上を、共重合させて得られた共重合体と、(F)1分子内に(メタ)アクリロイル基とアリルエーテル基を有し、且つエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーと、(G)アルキレンオキサイド基を有する1分子内にエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーと、(E)熱架橋剤と、(H)光架橋剤とを含有することを特徴とする光学用粘着剤組成物を提供する。
【0013】
また、前記共重合体が、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計の100重量部に対して、(B)窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計を2.0~10重量部と、(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~10重量部と、(D)水酸基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.5~10重量部と、を共重合させた重量平均分子量20万~100万の共重合体であり、前記光学用粘着剤組成物が、前記(A)の100重量部に対して、前記(E)熱架橋剤を0.01~5重量部と、前記(F)1分子内に(メタ)アクリロイル基とアリルエーテル基を有し、且つエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーを0.1~10重量部と、前記(G)アルキレンオキサイド基を有する1分子内にエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーを0.1~10重量部と、前記(H)光架橋剤を0.01~5重量部との割合で含有することが好ましい。
【0014】
また、前記光学用粘着剤組成物を、前記(E)熱架橋剤による架橋に続いて前記(H)光架橋剤による架橋の2段階で架橋させて形成された厚みが250μmの粘着剤層の、全光線透過率が90%以上であり、且つヘイズ値が1.0%以下であることが好ましい。
【0015】
また、前記光学用粘着剤組成物を、前記(E)熱架橋剤による架橋に続いて前記(H)光架橋剤による架橋の2段階で架橋させて形成された厚みが250μmの粘着剤層を、温度60℃×90%RHの雰囲気下で240時間放置した後、室温環境(温度23℃×50%RH)に取り出した際のヘイズ値が4.0%以下であることが好ましい。
【0016】
また、前記共重合体が、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計の100重量部のうち、アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートが50重量部以上の割合で含有することが好ましい。
【0017】
また、前記共重合体が、(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノマーを共重合してなり、前記光学用粘着剤組成物が、(G)アルキレンオキサイド基を有する1分子内にエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーを含有してなり、前記(C)及び前記(G)の、アルキレンオキサイドの平均繰り返し数が4~14であることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、基材の片面上に、上記の光学用粘着剤組成物を用いて、前記(E)熱架橋剤により架橋されてなる粘着剤層、又は、前記(E)熱架橋剤による架橋に続いて前記(H)光架橋剤による架橋の2段階で架橋されてなる粘着剤層が積層されてなる粘着フィルムであり、前記(E)熱架橋剤により架橋した後の前記粘着剤層は、ソーダガラスに対する粘着力が10N/25mm以下であり、さらに、前記(E)熱架橋剤による架橋に続いて前記(H)光架橋剤による架橋の2段階で架橋した後の前記粘着剤層は、ソーダガラスに対する粘着力が25N/25mm以上であることを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0019】
また、本発明は、厚みが188μmのポリエチレンフタレート樹脂フィルムの片面上に、上記の光学用粘着剤組成物を用いて、前記(E)熱架橋剤により架橋されてなる粘着剤層が積層されてなる粘着フィルムであり、前記粘着フィルムを、厚みが100μmの前記粘着剤層を介して、厚みが42μmの印刷層の印刷段差を有するガラスに貼り合せたときに、前記印刷段差に対する追従性が良好で、前記印刷段差の周囲に発泡が全く無いことを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0020】
また、本発明は、上記の粘着フィルムが用いられた、タッチパネル用フィルムを提供する。
【0021】
また、本発明は、上記の光学用粘着剤組成物を用いて、前記(E)熱架橋剤により架橋されてなる粘着剤層が、2枚の離型処理された離型フィルムの間に、積層されてなる粘着シートを提供する。
【0022】
また、本発明は、光学フィルムの少なくとも一方の面に、上記の光学用粘着剤組成物を用いて、前記(E)熱架橋剤により架橋されてなる粘着剤層、又は、前記(E)熱架橋剤による架橋に続いて前記(H)光架橋剤による架橋の2段階で架橋されてなる粘着剤層が積層されてなる粘着剤層付き光学フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係わる光学用粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーと、1分子内に(メタ)アクリロイル基とアリルエーテル基を有し、且つエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーと、アルキレンオキサイド基を有する1分子内にエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーと、熱架橋剤と、光架橋剤とを含有する光学用粘着剤組成物である。ここで、1分子内に(メタ)アクリロイル基とアリルエーテル基を有し、且つエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーは、光架橋剤により光架橋させると環状化合物を形成することから、熱架橋剤による架橋に続いて光架橋剤による架橋の2段階で架橋させた後の粘着剤層は、優れた湿熱耐久性を備えたものとなる。
【0024】
また、本発明に係わる粘着フィルム、及び粘着シートは、アクリル系ポリマーと、1分子内に(メタ)アクリロイル基とアリルエーテル基を有し、且つエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーと、アルキレンオキサイド基を有する1分子内にエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーと、熱架橋剤と、光架橋剤とを含有する光学用粘着剤組成物を用いて架橋させた粘着剤層が形成されている。該粘着剤層は、熱架橋剤により架橋されてなる粘着剤層であって、熱架橋剤による架橋に続いて光架橋剤による架橋の2段階で架橋させることができる粘着剤層、又は、熱架橋剤による架橋に続いて光架橋剤による架橋の2段階で架橋させた粘着剤層である。
このことから、本発明によれば、被着体の枠印刷などの段差に対する段差追従性、リワーク時のハンドリング性、及び優れた湿熱耐久性を兼ね備えた粘着フィルム、及び粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0026】
本実施形態の光学用粘着剤組成物は、官能基にカルボキシル基を有しておらず、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、芳香族基のいずれかを有する共重合性ビニルモノマー、及び窒素含有ビニルモノマーの化合物群から選択された少なくとも2種類以上を、共重合させて得られた共重合体と、(F)1分子内に(メタ)アクリロイル基とアリルエーテル基を有し、且つエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーと、(G)アルキレンオキサイド基を有する1分子内にエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーと、(E)熱架橋剤と、(H)光架橋剤とを含有することを特徴とする。
【0027】
本明細書中、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。また、(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称である。本実施形態の光学用粘着剤組成物に係わる共重合体は、例えば、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上と、(B)窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上と、(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上と、(D)水酸基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上と、を共重合させた共重合体である。
【0028】
前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等の少なくとも1種以上が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれでもよい。炭素数がC3以上の直鎖状のアルキル(メタ)アクリレートモノマーに属する具体的な化合物について、分枝の存在を明記しない場合は、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート等を、単に、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等という場合がある。
【0029】
前記(A)のうち、分枝状のアルキルアクリレートモノマー(分岐構造アルキル基含有モノマー)としては、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソウンデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソトリデシル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート、イソペンタデシル(メタ)アクリレート、イソヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソヘプタデシル(メタ)アクリレート、イソオクタデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどの少なくとも1種以上が挙げられる。分岐構造アルキル基含有モノマーは、t-ブチル基のように、アルキル基が2以上の分岐構造(例えば主鎖に対する2以上の側鎖)を有してもよい。
【0030】
前記(A)のうち、環状のアルキルアクリレートモノマー(脂環族含有モノマー)としては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロヘプチル(メタ)アクリレート、ビシクロオクチル(メタ)アクリレート、ジメチルビシクロヘプチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどの少なくとも1種以上が挙げられる。
【0031】
前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計の100重量部のうち、アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートが50重量部以上の割合であることが好ましい。アルキル基の炭素数がC8~C18のアルキル(メタ)アクリレートのなかでも、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の分岐構造アルキル基含有モノマーが好ましい。
【0032】
前記(B)のうち、窒素含有ビニルモノマーとしては、アミド結合を含有するビニルモノマー、アミノ基を含有するビニルモノマー、窒素含有の複素環式構造を有するビニルモノマー等の少なくとも1種以上が挙げられる。窒素含有ビニルモノマーとしては、水酸基を含有しないものが好ましく、水酸基及びカルボキシル基を含有しないものがより好ましい。このようなモノマーとしては、上に例示したモノマー、例えば、N,N-ジアルキル置換アミノ基やN,N-ジアルキル置換アミド基を含有するアクリル系モノマー;N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニル-2-ピペリドンなどのN-ビニル置換ラクタム類;N-(メタ)アクリロイルモルホリンやN-(メタ)アクリロイルピロリジンなどのN-(メタ)アクリロイル置換環状アミン類が好ましい。
【0033】
N,N-ジアルキル置換アミノ基を含有するアクリル系モノマーとしては、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノイソプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-エチル-N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-イソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノ(メタ)アクリレート;ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-プロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の、N,N-ジアルキル置換アミノアルキル基を含有する(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0034】
N,N-ジアルキル置換アミド基を含有するアクリル系モノマーとしては、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアクリルアミド、ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジブチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル置換(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0035】
N-ビニル置換ラクタム類としては、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルラウリロラクタム等が挙げられる。
N-ビニル置換の複素環式ビニル化合物としては、N-ビニルピリジン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルモルホリン等が挙げられる。
N-(メタ)アクリロイル置換環状アミン類としては、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペラジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、N-(メタ)アクリロイルアゼチジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルアゼパン、N-(メタ)アクリロイルアゾカン等が挙げられる。
【0036】
その他の窒素含有ビニルモノマーとしては、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-N-メチルアセトアミド等のN-ビニルカルボン酸アミド類;無置換(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の、(メタ)アクリルアミド類;N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド等の不飽和カルボン酸イミド類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和カルボン酸ニトリル等が挙げられる。前記窒素含有ビニルモノマーは、イソシアネート基を含有しないことが好ましい。また、前記窒素含有ビニルモノマーは、第四級アンモニウム等の第四級カチオン構造を含有しないことが好ましい。前記窒素含有ビニルモノマーは、酸性とならない程度にN,N-ジアルキル置換アミノ基が中和された第三級カチオン構造を含有してもよい。
【0037】
前記(B)のうち、アルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2-イソプロポキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、2-イソプロポキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、3-イソプロポキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、4-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-エトキシブチル(メタ)アクリレート、4-プロポキシブチル(メタ)アクリレート、4-イソプロポキシブチル(メタ)アクリレート、4-ブトキシブチル(メタ)アクリレート等の少なくとも1種以上が挙げられる。これらのアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、アルキル(メタ)アクリレートにおけるアルキル基の原子がアルコキシ基で置換された構造を有する。
【0038】
前記共重合体が、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計の100重量部に対して、(B)窒素含有ビニルモノマーまたはアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計を2.0~10重量部の割合で共重合していることが好ましく、2.0~9重量部の割合で共重合していることがより好ましく、2.5~9重量部の割合で共重合していることが特に好ましい。窒素含有ビニルモノマー及びアルコキシ基含有アルキル(メタ)アクリレートモノマーを、それぞれ1種類または2種類以上を併用することもできる。
【0039】
前記(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノマーは、ポリアルキレングリコール鎖を有するモノ(メタ)アクリレートモノマーであって、ポリアルキレングリコールの有する複数の水酸基のうち、一つの水酸基が(メタ)アクリル酸エステルとしてエステル化された化合物であればよい。(メタ)アクリル酸エステル基が重合性基となるので、前記共重合体に共重合させることができる。他の水酸基は、OHのままでもよく、メチルエーテルやエチルエーテル等のアルキルエーテルや、酢酸エステル等の飽和カルボン酸エステル等となっていてもよい。
【0040】
前記(C)において、ポリアルキレングリコールの有するアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられるが、これらに限定されない。ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール等、1分子中に2種類以上のアルキレン基を有するポリアルキレングリコールであってもよい。
また、前記(C)において、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が4~14であることが好ましい。ここで、「アルキレンオキサイドの平均繰り返し数」とは、「ポリアルキレングリコール鎖」の部分において、アルキレンオキサイド単位が繰り返す平均の数である。
【0041】
前記(C)としては、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。より具体的には、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリブチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記共重合体が、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計の100重量部に対して、(C)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計を1.0~10重量部の割合で共重合していることが好ましく、1.5~9重量部の割合で共重合していることがより好ましく、2.0~9重量部の割合で共重合していることが特に好ましい。
【0042】
前記(D)水酸基を有する共重合性ビニルモノマーとしては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート類や、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などの少なくとも1種以上が挙げられる。
前記共重合体が、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計の100重量部に対して、(D)水酸基を有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.5~10重量部の割合で共重合していることが好ましく、0.8~9重量部の割合で共重合していることがより好ましく、0.8~8重量部の割合で共重合していることが特に好ましい。前記(C)が水酸基を有してもよい場合は、前記(D)がポリアルキレングリコール鎖を有しないことが好ましい。
【0043】
前記共重合体は、前記(A)~(D)の少なくとも1種以上に加えて、芳香族基を有する共重合性ビニルモノマーを共重合してもよい。芳香族基を有する共重合性ビニルモノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、2-(1-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、6-(1-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(2-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、8-(1-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレート、8-(2-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレート等の、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーや、スチレン、メチルスチレン等のスチレン系モノマー等の少なくとも1種以上が挙げられる。前記(A)~(D)は、芳香族基を有しない共重合性ビニルモノマーであってもよい。
【0044】
前記共重合体の重合方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。前記共重合体は、(メタ)アクリレートモノマー等のアクリル系モノマーを50~100重量%含むアクリル系ポリマーであることが好ましい。前記共重合体は、重量平均分子量20万~100万の共重合体であることが好ましい。前記共重合体は、カルボキシル基を有する共重合性のビニルモノマーを共重合させない共重合体であることが好ましい。また、透明導電性フィルムのITO表面などの腐食し易い被着体に対する腐食性を抑制する観点から、カルボキシル基を有する共重合性のビニルモノマーを共重合させない共重合体とすることにより、前記共重合体の酸価を1.0以下とすることが好ましい。
【0045】
前記(E)熱架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アルミニウムキレート系架橋剤等の少なくとも1種以上が挙げられる。
イソシアネート系架橋剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の2官能イソシアネート(ジイソシアネート化合物)や、これらのビュレット変性体、イソシアヌレート変性体、アダクト体等の3官能以上のポリイソシアネート化合物が挙げられる。ここで、3官能以上のアダクト体は、ジイソシアネート化合物と、トリメチロールプロパン、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体が挙げられる。前記(E)熱架橋剤として、イソシアネート化合物のみを用いてもよい。
前記共重合体が、前記(E)熱架橋剤と反応することが可能な官能基として、水酸基を有することが好ましく、特に、前記(D)を共重合してなることが好ましい。
また、前記光学用粘着剤組成物は、前記(A)の100重量部に対して、前記(E)熱架橋剤を0.01~5重量部の割合で含有していることが好ましい。
【0046】
前記(F)としては、1分子内に(メタ)アクリロイル基とアリルエーテル基を有する(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種以上が挙げられる。(メタ)アクリロイル基及びアリルエーテル基は、それぞれエチレン性不飽和基を有することから、前記(F)は、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する。前記(F)が1分子内に有する(メタ)アクリロイル基の個数は1又は2以上であり、前記(F)が1分子内に有するアリルエーテル基の個数は1又は2以上である。前記(F)が1分子内に有する(メタ)アクリロイル基の個数と、アリルエーテル基の個数とは、異なってもよいが、同数であることが好ましい。
【0047】
また、本実施形態に係わる光学用粘着剤組成物において、前記(F)は、粘着剤層の湿熱耐久性を著しく高める機能を有する。光学用粘着剤組成物に、前記(F)を含有させると、粘着剤層の湿熱耐久性が著しく高まる理由は明確ではないが、次のようなことが、その理由の1つではないかと考えられる。
その理由として、前記(F)は、前記(H)光架橋剤による架橋をさせる時に(メタ)アクリロイル基とアリルエーテル基とが環状構造を形成する。そして、前記(F)が、前記(H)光架橋剤による架橋をさせる時に(メタ)アクリロイル基とアリルエーテル基とが形成した環状構造を有する重合体となること、及び/又は、当該環状構造が、前記アクリル系ポリマーの共重合体と架橋すること等により、湿熱環境下に長期間放置した粘着剤層において、湿熱環境下の水分がこの環状構造の内部に閉じ込められており、その後に粘着剤層を室温環境(温度23℃×50%RH)下に取り出しても、水分の自由な移動が妨げられて水分の凝集による発泡を抑えているものと推測される。
これらの理由から、前記(E)熱架橋剤による架橋に続いて前記(H)光架橋剤による架橋の2段階で架橋させた後の粘着剤層は、優れた湿熱耐久性を備えたものとなると考えられる。前記(F)が、前記(H)光架橋剤により架橋させて粘着剤層を形成する際に、環状構造を形成するためには、前記(E)熱架橋剤により架橋されてなる粘着剤層が、前記(F)を含有し、前記(F)が、2つ以上のエチレン性不飽和基の反応性を維持していることが好ましい。このため、前記光学用粘着剤組成物は、前記(E)熱架橋剤による架橋に際して、熱重合開始剤を含有しないことが好ましい。
【0048】
また、前記(F)としては、アリルエーテル基含有アルキル(メタ)アクリレート〔CH=C(R)COO-R-OCHCH=CH;ここで、Rは水素原子又はメチル基、Rはアルキレン基等の2価基〕、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸アルキルエステル〔CH=CHCHOCHC(=CH)COOR;ここで、Rはアルキル基〕などが挙げられる。特に、環状構造として安定性が高い5員環または6員環を形成できることが好ましい。
前記(F)の具体例としては、アリルオキシエチル(メタ)アクリレート、アリルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸エチル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸プロピル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸ブチル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸ペンチル、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸ヘキシル等が挙げられる。
また、前記光学用粘着剤組成物は、前記(A)の100重量部に対して、前記(F)を0.1~10重量部の割合で含有していることが好ましい。
【0049】
前記(G)としては、アルキレンオキサイド基を有する1分子内にエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種以上が挙げられる。
また、前記(G)は、例えば、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール等の有する複数の水酸基のうち、2つ以上の水酸基が(メタ)アクリル酸エステルとしてエステル化された化合物であればよい。
また、前記(G)において、ポリアルキレングリコール鎖を構成するアルキレンオキサイドの平均繰り返し数が4~14であることが好ましい。ここで、「アルキレンオキサイドの平均繰り返し数」とは、「ポリアルキレングリコール鎖」の部分において、アルキレンオキサイド単位が繰り返す平均の数である。前記(G)のアルキレンオキサイドの平均繰り返し数は、前記(C)のアルキレンオキサイドの平均繰り返し数と同一でもよく、異なってもよい。
【0050】
前記(G)において、前記アルキレンオキサイド基としては、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、ブチレンオキサイド基等の少なくとも1種以上が挙げられる。前記(G)の有するアルキレンオキサイド基は、前記(C)の有するアルキレンオキサイド基と同一でもよく、異なってもよい。前記(G)の具体例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、前記光学用粘着剤組成物は、前記(A)の100重量部に対して、前記(G)を0.1~10重量部の割合で含有していることが好ましい。
【0051】
前記(H)光架橋剤としては、例えば光ラジカル開始剤等の光開始剤が挙げられる。前記光学用粘着剤組成物を、前記(E)熱架橋剤により架橋させた後に、前記(H)光架橋剤により架橋させて粘着剤層を形成するためには、前記(E)熱架橋剤により架橋させた後の段階でも前記(H)光架橋剤が反応性を維持することが好ましい。このような(H)光架橋剤としては、例えば、アセトフェノン系光架橋剤、ベンゾイン系光架橋剤、ベンゾフェノン系光架橋剤、チオキサントン系光架橋剤、アシルホスフィンオキシド系光架橋剤等が挙げられる。
また、前記光学用粘着剤組成物は、前記(A)の100重量部に対して、前記(H)光架橋剤を0.01~5重量部の割合で含有していることが好ましい。
【0052】
アセトフェノン系光架橋剤としては、アセトフェノン、p-(tert-ブチル)1’,1’,1’-トリクロロアセトフェノン、クロロアセトフェノン、2’,2’-ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシルアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2’-フェニルアセトフェノン、2-アミノアセトフェノン、ジアルキルアミノアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等が挙げられる。
ベンゾイン系光架橋剤としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等が挙げられる。
ベンゾフェノン系光架橋剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシルベンゾフェノン、ヒドロキシルプロピルベンゾフェノン、アクリルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
チオキサントン系光架橋剤としては、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ジメチルチオキサントン等が挙げられる。
アシルホスフィンオキサイド系光架橋剤としては、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
その他の光架橋剤としては、α-アシルオキシムエステル、ベンジル-(o-エトキシカルボニル)-α-モノオキシム、フェニルグリオキシル酸エステル、3-ケトクマリン、2-エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシピバレート等が挙げられる。
【0053】
前記光学用粘着剤組成物は、任意の成分として、酸化防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、架橋触媒、架橋遅延剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することができる。これらの添加剤は、単独で、もしくは2種類以上を併せて用いてもよい。
【0054】
本実施形態の粘着剤層は、前記光学用粘着剤組成物を、基材や離型フィルムに塗布した後に、前記(E)熱架橋剤による架橋と、前記(H)光架橋剤による架橋とにより、前記光学用粘着剤組成物が架橋することで作製ができる。本実施形態の粘着剤層において、前記(E)熱架橋剤により架橋させた後で、前記(H)光架橋剤により架橋させる前の粘着剤層(第1段階)は、段差追従性、リワーク時のハンドリング性に優れている。さらに、前記(E)熱架橋剤による架橋に続いて前記(H)光架橋剤による架橋の2段階で架橋されてなる粘着剤層(第2段階)は、湿熱耐久性に優れている。本実施形態の粘着剤層は、用途、目的等に応じて、第1段階の粘着剤層を被着体に貼り合せてもよく、第2段階の粘着剤層を被着体に貼り合せてもよい。
第1段階の粘着剤層は、前記(H)光架橋剤を含有しており、前記(H)光架橋剤により架橋させることが可能である。第1段階の粘着剤層を被着体に貼り合せた場合は、被着体に貼り合せたままの粘着剤層を、前記(H)光架橋剤により架橋させてもよい。
前記(H)光架橋剤により架橋させる際に照射するエネルギー線としては、紫外線、電子線、場合によっては可視光線などが挙げられるが、簡便性の点から紫外線が好適に使用される。しかし、本発明においては、紫外線に限定されるものではない。エネルギー線の照射を行う際に、粘着剤層を露出させてもよいが、粘着剤層に積層されている離型フィルム又は被着体が、エネルギー線の透過性を有していれば、離型フィルム又は被着体を通して粘着剤層にエネルギー線の照射を行うことが好ましい。
【0055】
本実施形態の光学用粘着剤組成物は、粘着剤層を作製したときの光学特性に優れることが好ましい。前記光学用粘着剤組成物は、透明であることが好ましい。前記添加剤は、機能や分量等において、前記粘着剤層の透明性を阻害しないこと(非着色性)が好ましい。また、前記光学用粘着剤組成物から作製される粘着剤層(第1段階の粘着剤層、又は、第2段階の粘着剤層)が、透明であることが好ましい。
具体的には、前記光学用粘着剤組成物を、前記(E)熱架橋剤による架橋に続いて前記(H)光架橋剤による架橋の2段階で架橋させて形成された厚みが250μmの粘着剤層の、全光線透過率が90%以上であることが好ましく、全光線透過率が91%以上であることがより好ましい。
また、前記光学用粘着剤組成物を、前記(E)熱架橋剤による架橋に続いて前記(H)光架橋剤による架橋の2段階で架橋させて形成された厚みが250μmの粘着剤層の、ヘイズ値が1.0%以下であることが好ましく、ヘイズ値が0.6%以下であることがより好ましい。
また、前記光学用粘着剤組成物を、前記(E)熱架橋剤による架橋に続いて前記(H)光架橋剤による架橋の2段階で架橋させて形成された厚みが250μmの粘着剤層を、温度60℃×相対湿度90%RHの雰囲気下で240時間放置した後、室温環境(温度23℃×50%RH)に取り出した際の、ヘイズ値が4.0%以下であることが好ましく、ヘイズ値が3.5%以下であることがより好ましい。
【0056】
前記(E)熱架橋剤により架橋した後(前記(H)光架橋剤により架橋する前)の前記粘着剤層は、ソーダガラスに対する粘着力が10N/25mm以下であることが好ましい。これにより、粘着剤層のリワーク時のハンドリング性を高めることができる。
さらに、前記(E)熱架橋剤による架橋に続いて前記(H)光架橋剤による架橋の2段階で架橋した粘着剤層は、ソーダガラスに対する粘着力が25N/25mm以上であることが好ましい。第1段階の粘着剤層を被着体に貼り合せた後で、前記(H)光架橋剤により架橋させた場合も、第2段階の粘着剤層を作製した後で、被着体に貼り合せた場合と同様に、高い粘着力を得ることができる。
厚みが188μmのポリエチレンフタレート樹脂フィルムの片面上に、前記光学用粘着剤組成物を用いて、前記(E)熱架橋剤により架橋されてなる粘着剤層が積層されてなる粘着フィルムにおいて、前記粘着フィルムを、厚みが100μmの前記粘着剤層を介して、厚みが42μmの印刷層の印刷段差を有するガラスに貼り合せたときに、前記印刷段差に対する追従性が良好で、前記印刷段差の周囲に発泡が全く無いことが好ましい。
【0057】
本実施形態の粘着フィルム及び粘着シートは、前記粘着剤層を、基材又は離型フィルムの片面上に形成することで製造することができる。なお、JIS Z0109(粘着テープ・粘着シート用語)の2015年版では、「粘着シート」を「基材の片面又は両面に粘着剤層を設けた板状のもので、かつ、剥離ライナーが貼り合わされたものの総称。」と定義し、「基材の片面又は両面に粘着剤層を設け、ロール状に巻いたものの総称。」と定義される「粘着テープ」と区別されているが、本実施形態の粘着フィルム及び粘着シートは、これらに限定されるものではない。前記粘着フィルム及び粘着シートにおける粘着剤層の厚みは特に限定されるものではないが、例えば10~3000μmが好ましく、50~2000μmがより好ましい。
【0058】
前記粘着剤層の形成に用いる基材フィルムや、粘着面を保護する離型フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
基材フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
離型フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。1つの粘着剤層の両面に、それぞれ離型フィルムの離型処理が施された面を合わせることで、「離型フィルム/粘着剤層/離型フィルム」の構成からなる粘着シートとすることもできる。この場合、両側の離型フィルムを、順次、あるいは同時に剥離して粘着面を表出することにより、光学フィルム等の光学部材をガラス等の被着体に貼り合せることが可能になる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。
【0059】
前記粘着剤層は、カバーガラスとセンサーガラスのような、ガラスとガラスとの貼り合せでも良好な段差追従性が得られるので、タッチパネルのカバーガラスとセンサーガラスとを貼り合せる際に、好適に用いることができる。また、フィルム部材とガラス部材とを貼り合せる場合には、前記粘着剤層をフィルム部材の片面に積層して得られる、前記粘着フィルムは、カバーガラス、センサーガラス等のガラス部材に貼り合せることもできる。前記粘着剤層及び粘着フィルムは、タッチパネル用粘着剤層及びタッチパネル用粘着フィルムとして好適である。前記粘着フィルムが用いられたタッチパネル用フィルムとしては、タッチパネル用粘着フィルムのほか、後述するタッチパネル用の各種光学フィルム等が挙げられる。
【0060】
前記粘着フィルム及び前記粘着シートは、偏光板を主とする液晶表示装置の周辺部材用の各種光学フィルム、タッチパネル用の各種光学フィルム、電子ペーパー用の各種光学フィルム、有機EL用の各種光学フィルム等の貼り合せに用いることができる。
また、これらの光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤層が積層されている粘着剤層付き光学フィルムとすることができる。具体的には、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「離型フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」等の構成が挙げられる。
例えば、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」のように、離型フィルムで保護された粘着剤層を有する場合、離型フィルムを剥がして、「光学フィルム/粘着剤層」のように粘着剤層を表出させ、他の光学フィルムと貼り合せることにより、粘着剤層が層間の貼り合せに用いられた「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」のような構成が得られる。
【0061】
前記粘着フィルム及び粘着シートは、偏光板とディスプレイパネルとの貼り合せに好適に用いられる。ディスプレイパネルとしては、例えば、液晶パネル又は有機ELパネルが挙げられる。前記粘着フィルム及び粘着シートは、粘着剤層付き偏光板の粘着剤層として好適に用いることができる。偏光板の構成材料として、λ/4又はλ/2の位相差を持つ位相差フィルムが用いられてもよい。位相差フィルムと偏光板との貼り合せに、前記粘着剤層を使用することができる。前記粘着フィルム及び粘着シートによれば、粘着剤層が低誘電率であることから、カラーフィルタと偏光板の間にタッチセンサーが設けられたオンセル方式の表示装置において、偏光板とバックライトユニットとの間における光学部材の貼り合せに好適に使用できる。また、前記粘着フィルム及び粘着シートは、各種の電子機器に組み込まれる光学部品及び電子部品を固定する場合に、使用することができる。
【実施例0062】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0063】
<アクリル系ポリマーの製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置に2-エチルヘキシルアクリレート70重量部、エチルアクリレート10重量部、イソボルニルアクリレート20重量部、N-ビニルピロリドン5重量部、ポリプロピレングリコールモノアクリレート(アルキレンオキサイドの平均繰り返し数n=12)4重量部、6-ヒドロキシヘキシルアクリレート3.0重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を60重量部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、実施例1に用いるアクリル系ポリマー溶液を得た。
[実施例2~5及び比較例1~3]
モノマーの組成を各々、表1の(A)群~(D)群の記載のようにする以外は、上記の実施例1に用いるアクリル系ポリマー溶液と同様にして、実施例2~5及び比較例1~3に用いるアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0064】
<粘着剤組成物、粘着剤層及び粘着シートの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造した実施例1のアクリル系ポリマー溶液に対して、コロネートHX0.5重量部、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル5重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(アルキレンオキサイドの平均繰り返し数n=4)5重量部、光架橋剤(Omnirad(登録商標)184)0.5重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を、離型フィルム(1)(離型剤層としてシリコーン樹脂コートされた、基材の厚みが100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)の上に、乾燥後の粘着剤層の厚みが所定の値となるように塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去した後、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングすることにより、粘着剤組成物を熱架橋剤により架橋させた粘着剤層を形成した。さらに、前記粘着剤層の表面に、前記の離型フィルム(1)よりも軽い剥離力の離型剤層を有する、基材の厚みが75μmの離型フィルム(2)を貼り合せて、離型フィルム(1)/粘着剤層/離型フィルム(2)から構成された実施例1の粘着シートA(第1段階の粘着剤層が形成されている。)を得た。この熱架橋剤により架橋させた後の粘着剤層に、さらに、紫外線(UV)を照射して光架橋剤により架橋させた。これにより、熱架橋による架橋と、光架橋による架橋とが2段階に施されてなる粘着剤層を、2枚の離型フィルムにより挟持した、実施例1の粘着シートB(第2段階の粘着剤層が形成されている。)を得た。
[実施例2~5及び比較例1~3]
添加剤の組成を各々、表1の(E)群~(H)群の記載のようにする以外は、上記の実施例1の粘着シートA~Bと同様にして、実施例2~5及び比較例1~3の粘着シートA~Bを得た。
【0065】
【表1】
【0066】
表1では、(A)群の合計を、100重量部として求めた、重量部の数値を示す。また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。なお、コロネート(登録商標)は東ソー株式会社の商品名であり、デュラネート(登録商標)は旭化成株式会社の商品名であり、Omnirad(登録商標)はIGM社の商品名である。Omnirad 184は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを主成分とする光架橋剤である。Omnirad 651は、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンを主成分とする光架橋剤である。Omnirad TPOは、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキサイドを主成分とする光架橋剤である。
【0067】
【表2】
【0068】
<試験方法及び評価>
実施例1~5及び比較例1~3における粘着シートA~Bから、必要に応じて、離型フィルム(1)~(2)を剥がして、粘着剤層を表出させ、下記の試験方法及び測定方法により、評価した。
なお、実施例1~5及び比較例1~3における粘着シートA~Bについて、下記の測定方法及び試験方法に応じるために、粘着剤層の厚みが異なり、さらに、第1段階の粘着剤層が形成されている複数種類の粘着シートA、又は第2段階の粘着剤層が形成されている複数種類の粘着シートBを用意した。第1段階の粘着剤層を試験する場合は、粘着シートAを用いた。また、第2段階の粘着剤層を試験する場合は、粘着シートBを用いた。
【0069】
<全光線透過率の測定方法>
光透過率の測定方法:JIS K7105、「プラスチックの光学的特性試験方法」により、厚みが250μmの粘着剤層(第2段階の粘着剤層)の、全光線透過率(%)を測定し、表3の「全光線透過率」とした。
【0070】
<ヘイズ値の測定方法>
ヘイズ値の測定方法:JIS K7136、「プラスチック-透明材料のヘーズの求め方」により、厚みが250μmの粘着剤層(第2段階の粘着剤層)の、ヘイズ値(%)を測定し、表3の「初期のヘイズ値」とした。さらに、温度60℃×90%RHの雰囲気下で240時間放置した後、室温環境(23℃、50%RH)に取り出した。取り出してから5分後に、前記剥離フィルム(1)~(2)で粘着剤層の両面を覆った状態でヘイズ値(%)を測定し、表3の「湿熱後のヘイズ値」とした。
【0071】
<湿熱耐久性の評価>
実施例1~5及び比較例1~3における粘着シートBに形成された粘着剤層の湿熱耐久性の評価は、上記のヘイズ値の測定方法により測定した「湿熱後のヘイズ値」を用いて行った。なお、湿熱耐久性の判定基準は、次のとおりとし、その評価結果を、表3の「湿熱耐久性」とした。
○:「湿熱後のヘイズ値」が、4.0%以下である。
△:「湿熱後のヘイズ値」が、4.0%超過6.0%以下である。
×:「湿熱後のヘイズ値」が、6.0%超過である。
【0072】
<粘着力の測定方法>
厚みが50μmのポリエステルフィルムの片面に、粘着シートA~Bから、厚みが175μmの粘着剤層(第1段階の粘着剤層、又は第2段階の粘着剤層)を転写して、試料となる粘着フィルム(粘着剤層付き光学フィルム)を得た。それぞれ得られた粘着フィルムを、アセトンで洗浄した無アルカリガラスの非錫面に圧着ロールで貼り合せ、50℃、0.5MPa×20分間の条件でオートクレーブ処理した後、23℃×50%RHの空気雰囲気下に戻し、1時間経過させた。その後の粘着フィルムの剥離強度を、引張試験機によって、JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠して測定し、180°方向に300mm/minの速度で剥離した時の剥離強度を測定し、それぞれの粘着剤層の粘着力(N/25mm)とした。表3では、第1段階の粘着剤層を用いて測定した粘着力を「熱架橋後の粘着力」とし、第2段階の粘着剤層を用いて測定した粘着力を「光架橋後の粘着力」とした。
【0073】
<段差追従性の試験方法>
厚みが188μmのポリエチレンフタレート樹脂フィルムの片面上に、粘着シートAから、熱架橋剤により架橋されてなる、厚みが100μmの粘着剤層(第1段階の粘着剤層)を転写して貼り合せ、試料となる粘着フィルムを得た。その後、厚みが42μmの印刷層の印刷段差を有する厚みが1.1mmのカバーガラスを、前記粘着剤層(第1段階の粘着剤層)の上から圧力80kPa、真空度が-100kPaの条件で、真空貼り合せ装置で貼り合せた。さらに、温度60℃、6気圧、30分の条件でオートクレーブ処理した後の、段差追従性を目視で確認した。目視確認の判定基準は、次のとおりとし、その評価結果を、表3の「段差追従性」とした。
○:印刷段差に追従し印刷段差の周囲に発泡が全く無い。
△:印刷段差の周囲に発泡がわずかにある。
×:印刷段差の周囲に発泡がある。
【0074】
表3に、実施例1~5の粘着シートA~B、及び比較例1~3の粘着シートA~Bの評価結果を示す。
【0075】
【表3】
【0076】
本発明に係わる実施例1~5の粘着シートBは、熱架橋剤による架橋に続いて光架橋剤による架橋の2段階で架橋した後の厚みが250μmの粘着剤層の、全光線透過率が90%以上であり、且つ「初期のヘイズ値」が1.0%以下であり、且つ「湿熱後のヘイズ値」が4.0%以下であり、粘着剤層を湿熱環境下に長期間放置した後、室温環境(温度23℃×50%RH)下に取り出しても、光学特性に優れていることから、湿熱耐久性に優れていた。
また、本発明に係わる実施例1~5の粘着シートA~Bを用いて作製した粘着フィルムは、ソーダガラスに対する粘着力が、熱架橋剤により架橋した後に10N/25mm以下であり、さらに熱架橋剤による架橋に続いて光架橋剤による架橋の2段階で架橋した後に25N/25mm以上である。したがって、熱架橋剤により架橋した後の粘着剤層は、リワーク時のハンドリング性(被着体から剥離し易いこと)に優れていて、熱架橋剤による架橋に続いて光架橋剤による架橋の2段階で架橋した後の粘着剤層は、高い粘着力を有していた。
また、本発明に係わる実施例1~5の粘着シートAを用いて作製した粘着フィルムは、厚みが100μmの粘着剤層(第1段階の粘着剤層)が形成されている場合の、前記段差追従性の試験の結果は、厚みが42μmの印刷段差に追従していて、前記印刷段差の周囲に発泡が全く無く、段差追従性にも優れていた。
すなわち、本発明に係わる実施例1~5の粘着シートA~B、及びこれらを用いて作製した粘着フィルムによれば、本発明の課題である被着体の枠印刷などの段差に対する段差追従性、リワーク時のハンドリング性が良好であり、且つ優れた湿熱耐久性を有する粘着剤層であることが達成できた。
【0077】
一方、比較例1の粘着シートA~Bに形成された粘着剤層は、2種類以上のモノマーを共重合させて得た共重合体を、(F)群のモノマーを含有させ、(G)群のモノマーを含有させないで架橋させたものであるが、比較例1の粘着シートBは、「湿熱後のヘイズ値」が低く、透明性が高いことから、湿熱耐久性が優れていた。また、比較例1の粘着シートAを用いて作製した粘着フィルムは、「熱架橋後の粘着力」が高く、リワーク性が劣っており、印刷段差の周囲に発泡があり、段差追従性が劣っていた。
また、比較例2の粘着シートA~Bに形成された粘着剤層は、2種類以上のモノマーを共重合させて得た共重合体を、(F)群のモノマーを含有させないで、且つ(G)群のモノマーを含有させて架橋させたものであるが、比較例2の粘着シートBは、「湿熱後のヘイズ値」が高く、透明性が低いことから、湿熱耐久性が劣っていた。また、比較例2の粘着シートBを用いて作製した粘着フィルムは、「光架橋後の粘着力」が極めて低かった。また、比較例2の粘着シートAを用いて作製した粘着フィルムは、印刷段差の周囲に発泡があり、段差追従性が劣っていた。
また、比較例3の粘着シートA~Bに形成された粘着剤層は、2種類以上のモノマーを共重合させて得た共重合体を、(F)群及び(G)群のモノマーを含有させて架橋させたものであるが、比較例3の粘着シートBは、「湿熱後のヘイズ値」が低く、透明性が高いことから、湿熱耐久性が優れていた。また、比較例3の粘着シートBを用いて作製した粘着フィルムは、「光架橋後の粘着力」がやや低かった。また、比較例3の粘着シートAを用いて作製した粘着フィルムは、印刷段差の周囲に発泡があり、段差追従性が劣っていた。
このように、比較例1~3の粘着シートA~B、及びこれらを用いて作製した粘着フィルムでは、本発明の課題である被着体の枠印刷などの段差に対する段差追従性、リワーク時のハンドリング性が良好であり、且つ優れた湿熱耐久性を有する粘着剤層であることが達成できなかった。
【0078】
上記の比較例1~3の粘着シートBにおいて、2種類以上のモノマーを共重合させて得た共重合体を、(F)群のモノマーを含有させて架橋させた比較例1、及び比較例3の粘着シートBでは、「湿熱後のヘイズ値」が低く、粘着剤層の湿熱耐久性が優れていた。しかし、2種類以上のモノマーを共重合させて得た共重合体を、(F)群のモノマーを含有させないで架橋させた比較例2の粘着シートBでは、「湿熱後のヘイズ値」が高く、粘着剤層の湿熱耐久性が劣っていた。したがって、本発明に係わる光学用粘着剤組成物において、優れた湿熱耐久性を備えた粘着剤層を得るための有用な成分が、(F)1分子内に(メタ)アクリロイル基とアリルエーテル基を有し、且つエチレン性不飽和基を2つ以上有する(メタ)アクリレートのモノマーであることが実証された。