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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004564
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】信号処理装置及び信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/772 20230101AFI20240110BHJP
   H04N 25/78 20230101ALI20240110BHJP
【FI】
H04N5/3745 500
H04N5/378
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104206
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100171446
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 尚幸
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100171930
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 郁一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正英
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CY16
5C024GX03
5C024GX15
5C024GX16
5C024GY39
5C024GY41
5C024GY45
5C024HX01
5C024HX23
5C024HX32
(57)【要約】
【課題】映像信号と、映像信号に所定の変化があったことを示す差分信号とを容易に取得する。
【解決手段】信号処理装置は、経時的に変化する値を取得する取得部と、
第1期間と第2期間とを含む周期において、前記第1期間又は前記第2期間のいずれであるかに応じてアップカウント又はダウンカウントするカウンタ部と、
前記カウンタ部がアップカウントした値に応じた第1信号と、前記カウンタ部がアップカウントした値とダウンカウントした値との差分に応じた第2信号とを出力する出力部と
を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経時的に変化する値を取得する取得部と、
第1期間と第2期間とを含む周期において、前記第1期間又は前記第2期間のいずれであるかに応じてアップカウント又はダウンカウントするカウンタ部と、
前記カウンタ部がアップカウントした値に応じた第1信号と、前記カウンタ部がアップカウントした値とダウンカウントした値との差分に応じた第2信号とを出力する出力部と
を備える信号処理装置。
【請求項2】
前記カウンタ部は、
前記第1期間ではアップカウントし、前記第2期間ではダウンカウントする第1カウンタ部と、
前記第1期間ではダウンカウントし、前記第2期間ではアップカウントする第2カウンタ部とを備え、
前記出力部は、
前記第1期間において前記第1カウンタ部がアップカウントした値に応じた値、又は前記第2期間において前記第2カウンタ部がアップカウントした値に応じた値の少なくとも一方を前記第1信号として出力し、
前記第1期間において前記第1カウンタ部がアップカウントした値と前記第2期間において前記第1カウンタ部がダウンカウントした値との差分に応じた値、又は前記第2期間において前記第2カウンタ部がアップカウントした値と前記第1期間において前記第2カウンタ部がダウンカウントした値との差分に応じた値の少なくとも一方を前記第2信号として出力する
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記カウンタ部は、複数ビットのカウンタ素子を含み、
前記第2信号は、前記カウンタ部に含まれるいずれかの前記カウンタ素子の出力値が0又は1のいずれであるかに応じて出力されるトリガ信号を含む
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記第2信号は、前記カウンタ部に含まれる前記カウンタ素子のうち、最上位ビットの前記カウンタ素子の出力値である符号信号を含む
請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記カウンタ部に含まれる前記カウンタ素子のうち、最下位ビットの前記カウンタ素子は、入力信号が有効であるか否かを決定するイネーブル端子を有する
請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記取得部は、経時的に値が1又は0のデジタル値に変化するパルス信号を取得する
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記取得部は、値が連続的に変化するアナログ値を取得し、
前記アナログ値と所定の閾値との比較結果に応じてデジタル値に変換するA/D変換部を更に備える
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項8】
前記取得部は、フォトダイオードに光が入射した結果に応じた電圧値を取得する
請求項7に記載の信号処理装置。
【請求項9】
前記A/D変換部により出力されるデジタル値に応じて、前記フォトダイオードにリセット電圧を印加するか否かを決定するリセットトランジスタを更に備える
請求項8に記載の信号処理装置。
【請求項10】
経時的に変化する値を取得する取得工程と、
第1期間と第2期間とを含む周期において、前記第1期間又は前記第2期間のいずれであるかに応じてアップカウント又はダウンカウントするカウンタ工程と、
前記カウンタ工程によりアップカウントした値に応じた第1信号と、前記カウンタ工程によりアップカウントした値とダウンカウントした値との差分に応じた第2信号とを出力する出力工程と
を有する信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アナログ値で表現されるセンサ値をモニターし続けることに代えて、アナログ値の変化量が閾値以上となった場合にトリガ信号を取得することにより、通信量を減らし、高速な応答を可能にする技術が知られている。当該技術で用いられるアナログ値としては、フォトダイオードにより検出される光量等を例示することができる。また、このようなアナログ値を扱うセンサとしては、動画像センサ等を例示することができる。
【0003】
近年、動画像センサの技術分野において、複数のフレーム画を連続して高速取得する映像信号に代えて、画素値の変化に応じた信号(以下、差分信号と記載する)を出力することにより、被写体の動きを検知するイベントベースのセンサの開発が進んでいる。このような技術を用いたセンサは、ダイナミックビジョンセンサなどとも呼ばれている。
【0004】
非特許文献1に記載された技術によれば、画素に対数応答の電流電圧変換回路と差分検出回路を搭載してイベントトリガを発生し、値が時間的に変化した画素の情報が出力される。したがって、非特許文献1に記載されたセンサは高速での応答が可能であり、省電力が実現でき、車載などへの応用などが期待できる。しかしながら、このようなセンサは、差分信号だけを出力するものであり、映像信号を出力するには別のカメラを併用する必要がある。したがって、映像信号と差分信号とを用いるシステムを構築しようとした場合、システムが大型化するといった問題があった。また、非特許文献1に記載された技術によれば、フォトダイオードにより得られた信号を、差分検出回路の入力範囲に収めるために対数圧縮しており、情報が圧縮されて線形性が失われてしまうといった問題があった。
【0005】
差分信号と映像信号の両方を取得するための装置として、非特許文献2に記載された技術を例示することができる。非特許文献2に記載された技術によれば、各画素が、差分検出回路によるイベントトリガ発生機能に加えて、通常のAPS(Active Pixel Sensor)方式での読み出し機能も備えており、差分信号と映像信号の両方を出力することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T. Finateu et al., “A 1280×720 Back-Illuminated Stacked Temporal Contrast Event-Based Vision Sensor with 4.86μm Pixels, 1.066GEPS Readout, Programmable Event-Rate Controller and Compressive Data-Formatting Pipeline”ISSCC, 5.10, pp.112-113(2020)
【非特許文献2】G. Taverni et al., “Front and Back Illuminated Dynamic and ActivePixel Vision Sensors Comparison”IEEE Transactions on Circuits and Systems-II: Express Briefs, Vol. 65, No. 5 pages 677-681, (2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、非特許文献2に記載の技術により出力される差分信号はデジタル信号であるのに対し、映像信号はアナログ値により出力される。映像信号をデジタル信号として取り出すためには、画素エリアの外(例えば同一レイヤーの周辺部、あるいは異なるレイヤー)又はセンサチップの外(例えば異なるチップ)でA/D変換することが考えられる。いずれの構成を採用した場合であっても、システムが大型化し、差分信号との同期を取らなければならない。すなわち、非特許文献2に記載の技術を用いて、差分信号と映像信号の両方をデジタル値として用いる場合、システムが大型化し、差分信号との同期を取る制御が複雑化するといった問題があった。また、非特許文献2に記載された技術は、非特許文献1に記載された技術と同様に、フォトダイオードにより得られた信号を、差分検出回路の入力範囲に収めるために対数圧縮しており、情報が圧縮されて線形性が失われてしまうといった問題があった。
【0008】
そこで本発明は、映像信号と、映像信号に所定の変化があったことを示す差分信号とをデジタル値として容易に取得可能な信号処理装置及び信号処理方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]上記の課題を解決するため、本発明の一態様による信号処理装置は、経時的に変化する値を取得する取得部と、第1期間と第2期間とを含む周期において、前記第1期間又は前記第2期間のいずれであるかに応じてアップカウント又はダウンカウントするカウンタ部と、前記カウンタ部がアップカウントした値に応じた第1信号と、前記カウンタ部がアップカウントした値とダウンカウントした値との差分に応じた第2信号とを出力する出力部とを備えるものである。
【0010】
[2]また、本発明の一態様は、上記[1]に記載の信号処理装置において、前記カウンタ部は、前記第1期間ではアップカウントし、前記第2期間ではダウンカウントする第1カウンタ部と、前記第1期間ではダウンカウントし、前記第2期間ではアップカウントする第2カウンタ部とを備え、前記出力部は、前記第1期間において前記第1カウンタ部がアップカウントした値に応じた値、又は前記第2期間において前記第2カウンタ部がアップカウントした値に応じた値の少なくとも一方を前記第1信号として出力し、前記第1期間において前記第1カウンタ部がアップカウントした値と前記第2期間において前記第1カウンタ部がダウンカウントした値との差分に応じた値、又は前記第2期間において前記第2カウンタ部がアップカウントした値と前記第1期間において前記第2カウンタ部がダウンカウントした値との差分に応じた値の少なくとも一方を前記第2信号として出力するものである。
【0011】
[3]また、本発明の一態様は、上記[1]又は[2]に記載の信号処理装置において、前記カウンタ部は、複数ビットのカウンタ素子を含み、前記第2信号は、前記カウンタ部に含まれるいずれかの前記カウンタ素子の出力値が0又は1のいずれであるかに応じて出力されるトリガ信号を含むものである。
【0012】
[4]また、本発明の一態様は、上記[3]に記載の信号処理装置において、前記第2信号は、前記カウンタ部に含まれる前記カウンタ素子のうち、最上位ビットの前記カウンタ素子の出力値である符号信号を含むものである。
【0013】
[5]また、本発明の一態様は、上記[3]又は[4]に記載の信号処理装置において、前記カウンタ部に含まれる前記カウンタ素子のうち、最下位ビットの前記カウンタ素子は、入力信号が有効であるか否かを決定するイネーブル端子を有するものである。
【0014】
[6]また、本発明の一態様は、上記[1]から[5]に記載の信号処理装置において、前記取得部は、経時的に値が1又は0のデジタル値に変化するパルス信号を取得するものである。
【0015】
[7]また、本発明の一態様は、上記[1]から[5]に記載の信号処理装置において、前記取得部は、値が連続的に変化するアナログ値を取得し、前記アナログ値と所定の閾値との比較結果に応じてデジタル値に変換するA/D変換部を更に備えるものである。
【0016】
[8]また、本発明の一態様は、上記[7]に記載の信号処理装置において、前記取得部は、フォトダイオードに光が入射した結果に応じた電圧値を取得するものである。
【0017】
[9]また、本発明の一態様は、上記[8]に記載の信号処理装置において、前記A/D変換部により出力されるデジタル値に応じて、前記フォトダイオードにリセット電圧を印加するか否かを決定するリセットトランジスタを更に備えるものである。
【0018】
[10]また、本発明の一態様による信号処理方法は、経時的に変化する値を取得する取得工程と、第1期間と第2期間とを含む周期において、前記第1期間又は前記第2期間のいずれであるかに応じてアップカウント又はダウンカウントするカウンタ工程と、前記カウンタ工程によりアップカウントした値に応じた第1信号と、前記カウンタ工程によりアップカウントした値とダウンカウントした値との差分に応じた第2信号とを出力する出力工程とを有するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、映像信号と、映像信号に所定の変化があったことを示す差分信号とをデジタル値として容易に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態に係る固体撮像素子を三次元構造化した場合の一例を示す模式図である。
図2】第1の実施形態に係る画素回路の回路構成の一例を示す回路図である。
図3】第1の実施形態に係るフォトダイオードに光が入射した際のパルス発生タイミングについて説明するタイミングチャートである。
図4】第1の実施形態に係る信号処理装置により出力される第1信号及び第2信号の出力タイミングと、カウンタ値の変化について説明するタイミングチャートである。
図5】第2の実施形態に係る画素回路の回路構成の一例を示す回路図である。
図6】第2の実施形態に係る信号処理装置により出力される第1信号及び第2信号の出力タイミングと、カウンタ値の変化について説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施形態]
まず、実施形態の前提となる事項を説明する。本実施形態に係る信号処理装置及び信号処理方法は、経時的に値が変化する信号を対象として、処理を行う。経時的に値が変化する信号とは、連続的に値が変化するアナログ値及び離散的に値が変化するデジタル値の両方を含む。値が離散的に変化するデジタル値には、値が複数の離散値(例えば、8ビット=256)で表現されるデジタル値の他、0又は1の2値で表現されるパルス信号も含まれる。
【0022】
以下の説明において、本実施形態に係る信号処理装置及び信号処理方法は、一例として、センサから出力された信号を対象とする場合について説明する。センサとは、例えば、撮像装置に用いられるイメージセンサや、ロボット制御に用いられる触覚センサ等であってもよい。その他の例としては、圧力センサ、加速度センサ、光センサ、湿度センサ、温度センサ、ホールセンサ等であってもよい。また、本実施形態に係る信号処理装置及び信号処理方法は、時間的変動をとらえるセンサや計測装置にも適用でき、広くロジック回路、駆動回路、通信回路、記録素子、ディスプレイ、アクチュエータ等にも応用することができる。
以下の一例においては、本実施形態に係る信号処理装置及び信号処理方法が、フォトダイオードの光電効果を用いて出力される信号を処理する固体撮像素子に適用される場合の一例について説明する。当該固体撮像素子は、撮像装置等に用いられる。
【0023】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、第1の実施形態に係る固体撮像素子を三次元構造化した場合の一例を示す模式図である。固体撮像素子5は、複数の階層構造を有する。同図に示す一例では、第1階層L1、第2階層L2及び第3階層L3の3層構造を有する場合の一例について図示している。各階層には、半導体構造物により回路素子が形成される。各階層間は、層間絶縁膜により絶縁される。層間絶縁膜にヴィアホール(コンタクトホール)を形成することにより、各階層に形成された回路素子が接続される。
【0025】
第1階層L1には、複数のフォトダイオード(画素)が形成される。フォトダイオードは、入射した光を電気信号に変換する。具体的には、フォトダイオードは、光電効果により、入射した光の強さに応じた電気信号を出力する。ここで、フォトダイオードにより出力された電気信号を取り出すためには、A/D変換回路等の所定の電気回路を要する。図1に示すような階層構造を有せず、単層構造を採用する場合、当該所定の電気回路をフォトダイオードと同一面に形成することになるため、複数のフォトダイオード間の配置間隔が大きくなってしまう。しかしながら、図1に示すような階層構造を採用することにより、複数のフォトダイオード間に所定の電気回路を設けることを要せず、複数のフォトダイオード間の配置間隔を小さくすることができる。したがって、階層構造を採用することにより、より高密度でフォトダイオードを配置することができる。すなわち高解像度の固体撮像素子5を提供することができる。
【0026】
第2階層L2には、フォトダイオードにより出力された電気信号をパルス信号に変換するための回路が形成される。そのため、第2階層L2に形成される回路を、A/D変換回路と記載することもできる。第2階層L2に形成される回路は、例えば複数のインバータを直列接続したインバータ―チェーン回路であってもよい。インバータチェーン回路は、フォトダイオードに接続されるインバータ素子の入力閾値電圧に応じてHレベル又はLレベルの電圧を出力する。
なお、第2階層L2には、インバータチェーン回路が形成される場合の一例に代えて、コンパレータ回路が形成されていてもよい。コンパレータ回路は、フォトダイオードにより出力された電気信号と、所定の基準電圧とを比較し、比較した結果に応じてHレベル又はLレベルの電圧を出力する。
なお、第2階層L2には、所定の遅延回路が含まれていてもよい。
【0027】
第3階層L3には、カウンタ回路が形成される。当該カウンタ回路は、第2階層L2に形成された回路により出力されるパルス信号の数をカウントする。当該カウンタ回路は、例えば8ビットのカウンタ素子を有し、0から255までの値をカウントする。固体撮像素子5が映像信号を出力する場合、当該カウンタ回路は、所定期間内に入力されたパルス数をカウントし、カウントした値を不図示の制御回路に出力する。固体撮像素子5が作動信号を出力する場合、当該カウンタ回路は、入力されたパルス信号の数が所定の閾値を超えたか否かを検出し、閾値を超えたと検出された場合にトリガ信号を不図示の制御回路に出力する。
【0028】
なお、固体撮像素子5が複数のカウンタ回路を有する場合、カウンタ回路が形成される階層は複数あってもよい。例えば、1つの画素につき2つのカウンタを有する場合、第3階層L3に加えて、第4階層L4にもカウンタ回路を形成してもよい。すなわち、固体撮像素子5は、同図に示した3層構造を有する場合の一例に限定されず、4層以上の階層構造を有していてもよいし、階層構造を有していなくてもよい(すなわち、単相基板上に各素子が形成されていてもよい)。
【0029】
以下の説明において、1つの画素及び当該画素に対応する周辺回路(例えば、A/D変換回路やカウンタ回路)を含む構成を、画素回路1と記載する。図1に示す一例では、画素回路1は、第1階層L1から第3階層L3の一部を含む3層構造を有している。画素回路1は、同図に示すように複数の階層構造を有して構成されてもよいし、単層基板上に形成されてもよい。
【0030】
図2は、第1の実施形態に係る画素回路の回路構成の一例を示す回路図である。同図を参照しながら、画素回路1の回路構成の一例について説明する。画素回路1は、信号処理装置10と光量検出装置20とを備える。信号処理装置10は第3階層L3に、光量検出装置20は第1階層L1及び第2階層L2に形成されてもよい。
なお、以下の説明において、画素回路1の機能を便宜上、信号処理装置10と光量検出装置20とに分けて説明するが、光量検出装置20の構成の一部又は全部は、信号処理装置10に含まれていてもよい。
【0031】
まず、光量検出装置20の構成について説明する。光量検出装置20は、フォトダイオード21と、インバータチェーン22と、リセットトランジスタ23とを備える。フォトダイオード21は第1階層L1に、インバータチェーン22及びリセットトランジスタ23は第2階層L2に形成されてもよい。光量検出装置20は、フォトダイオード21に入射した光の量に応じてパルス信号を出力する。したがって、所定時間内に出力されたパルス信号の数をカウントすることにより、光量検出装置20に入射した光の量を検出することができる。
【0032】
フォトダイオード21は、アノード端子とカソード端子とを有する。アノード端子は接地され、カソード端子はインバータチェーン22の入力端子に接続される。フォトダイオードは、入射した光の量に応じて電荷を生成する。フォトダイオードにより生成された電荷は、生成された電荷の量に応じた電圧値としてインバータチェーン22に入力される。具体的には、フォトダイオードにより生成された電荷は、フォトダイオード21のカソード端子と、インバータチェーン22の入力端子との間に存在する不図示の容量成分に蓄積される。蓄積された電荷は、当該容量成分の大きさに応じて電圧となって現れ、インバータチェーン22の入力端子に入力される。当該容量成分をフローティングディフュージョンとも記載する。また、フォトダイオード21のカソード端子の電圧を電圧VPDとも記載する。
【0033】
インバータチェーン22は、複数の直列接続されたインバータ素子を備える。当該インバータ素子は、具体的には、CMOS(Complementary metal―oxide―semiconductor)インバータであってもよい。図2に示す一例では、インバータチェーン22は、インバータ221と、インバータ222と、…、インバータ22nとを備える(nは1以上の自然数)。各インバータ素子は、それぞれ入力端子と出力端子とを有しており、出力端子には入力端子の電圧レベルと逆の電圧レベルが出力される。例えば、各インバータ素子の入力端子に1(ハイレベル)が入力されると、当該インバータ素子の出力端子には0(ローレベル)が出力される。また、インバータ素子の入力端子に0が入力されると、当該インバータ素子の出力端子には1が出力される。各インバータ素子は、入力閾値電圧を有し、入力端子に入力される電圧値と閾値とに応じた値を出力する。
【0034】
ここで、インバータチェーン22に備えられるインバータ素子の数は奇数個である。すなわち、インバータチェーン22全体として、インバータチェーン22の入力端子に入力された電圧レベルを反転させ、出力端子に出力する。インバータチェーン22により出力される電圧を、出力電圧VOUTとも記載する。
【0035】
また、インバータチェーン22に備えられるインバータ素子の数は、光量検出装置20に出力させたいパルス信号のパルス幅に応じて設定されてもよい。例えば、インバータチェーン22に備えられるインバータ素子の数を多くすることによりパルス幅を長くすることができる。また、インバータチェーン22に備えられるインバータ素子の数を少なくすることによりパルス幅を短くすることができる。
【0036】
また、インバータ素子(特にインバータ221)の入力閾値電圧を調整することにより、光量検出装置20により出力される1パルスに応じた光の量を調整することができる。例えば入力閾値電圧を小さくすることにより、フォトダイオード21により多くの光が入射してからパルスが出力されるようになる。また、入力閾値電圧を大きくすることにより、フォトダイオード21により少ない光が入射してからパルスが出力されるようになる。
【0037】
なお、インバータチェーン22に接続される初段のインバータ素子(フォトダイオード21に近い側のインバータ、すなわちインバータ221)に代えて、不図示のコンパレータ回路を用いてもよい。当該コンパレータ回路の入力端子の一端には、フォトダイオード21のカソード端子が接続される。また、当該コンパレータ回路の入力端子の他端には、所定の基準電圧が入力される。当該コンパレータ回路は、フォトダイオード21のカソード端子に接続された入力端子の電圧と基準電圧とに応じた電圧を出力端子に出力する。当該コンパレータ回路の後段には、所定の遅延回路が設けられていてもよい。
【0038】
リセットトランジスタ23は、インバータチェーン22の出力電圧に応じて、フォトダイオード21にリセット電圧VRSTを供給することによりフォトダイオード21をリセットする。換言すれば、リセットトランジスタ23は、インバータチェーン22により出力されるデジタル値に応じて、フォトダイオード21にリセット電圧を印加するか否かを決定する。リセットトランジスタ23は、例えばNチャネル型のMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ:metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)であってもよい。リセットトランジスタ23がNチャネル型のMOSFETである場合、ゲート端子は、インバータチェーン22の出力端子に接続される。ソース端子は、リセット電圧VRSTを供給する電源に接続される。ドレイン端子は、フォトダイオード21のカソード端子に接続される。
ここで、リセットトランジスタ23をエンハンスメント型のNチャネル型MOSFETとする場合、リセット電圧VRSTがリセットトランジスタ23の閾値分だけ減少してフォトダイオード21に伝わる。そこで、リセットトランジスタ23をデプレッション型のNチャネル型MOSFETとしてもよい。
なお、リセットトランジスタ23をPチャネル型のMOSFETとすることも可能である。この場合、リセットトランジスタ23のゲート端子にインバータ回路を挿入する。Pチャネル型のMOSFETを用いることにより、リセット電圧VRSTがリセットトランジスタ23の閾値分だけ減少してフォトダイオード21に伝わることを抑止することができる。
【0039】
通常時、すなわちフォトダイオード21に光が入射していない場合、フォトダイオード21の電圧VPDはハイレベルである。フォトダイオード21の電圧VPDが光入射により低下し、インバータ221の入力閾値電圧に達すると、インバータチェーン22の出力電圧VOUTが反転し、ローレベルからハイレベルになる。インバータチェーン22によりハイレベルが出力されると、リセットトランジスタ23のソース-ドレイン間がオンし、フォトダイオード21にリセット電圧VRSTが供給され、フォトダイオード21の電圧VPDは、リセット電圧VRSTとなる。再びインバータチェーンが反転し、インバータチェーン22の出力電圧VOUTがローレベルとなると、リセットトランジスタ23のソース-ドレイン間がオフする。この動作を繰り返すことでインバータチェーン22の出力端子にはパルス信号が現れる。
【0040】
なお、フォトダイオード21は、埋め込みフォトダイオードであってもよい。フォトダイオード21が埋め込みフォトダイオードである場合、フォトダイオード21とインバータチェーン22との間には、不図示の転送トランジスタが設けられていてもよい。当該転送トランジスタは、不図示の制御部により制御され、フォトダイオード21により生成された電荷をインバータチェーン22(詳細には、転送トランジスタとインバータチェーン22との間に設けられたフローティングディフュージョン)に転送する。
【0041】
次に、信号処理装置10の構成について説明する。信号処理装置10には、経時的に値が変化する信号が入力される。信号処理装置10は、入力された信号について、入力された信号に応じたカウンタ値(例えばセンサの出力値)と、カウントされたカウンタ値が所定の閾値を超えた場合に出力される差分信号とを出力する。図2に示す一例では、信号処理装置10が、光量検出装置20により出力されたパルス信号をカウントする場合の一例について説明する。
信号処理装置10は、パルス信号取得部11と、カウンタ部12と、トリガ信号発生回路13とを備える。
【0042】
パルス信号取得部11は、経時的に変化する値を取得する。図2に示す一例において、パルス信号取得部11には、光量検出装置20から出力された信号であって、経時的に値が1又は0のデジタル値に変化するパルス信号(出力電圧VOUT)が入力される。以下の説明において、パルス信号取得部11を単に取得部と記載する場合がある。
【0043】
なお、信号処理装置10が光量検出装置20の構成の一部又は全部を含む場合、フォトダイオード21とインバータチェーン22の接続部を取得部としてもよい。この場合、取得部は、値が連続的に変化するアナログ値を取得する。更にこの場合、信号処理装置10には、インバータチェーン22も含まれる。インバータチェーン22は、アナログ値をデジタル値に変換するA/D変換部としての役割を有する。A/D変換部としてのインバータチェーン22は、フォトダイオード21の出力に応じたアナログ値と、所定の閾値(例えばインバータ素子の入力閾値電圧)との比較結果に応じて、アナログ値をデジタル値に変換する。
【0044】
また、本実施形態において取得部は、経時的に変化する様々な値を取得可能であるが、以下に示す一例は、固体撮像素子5に用いられる画素回路1の一例であるため、取得部は、フォトダイオード21に光が入射した結果に応じた電圧値を取得する。
【0045】
カウンタ部12は、所定の期間に入力されたパルス信号の数をカウントする非同期式のカウンタ回路を含む。当該カウンタ回路は、複数ビットのカウンタ素子を含んで構成される。図2を参照しながら、複数ビットのカウンタ素子の一例として、9ビットのカウンタ素子121乃至カウンタ素子129を含む場合の一例について説明する。カウンタ部12に備えられるカウンタ素子のビット数は、カウント可能な最大値に1ビットを加えた数であってもよい。すなわち、9ビットのカウンタ素子を備える場合、9ビットから1ビットを引いた8ビットのカウンタ素子により0から255までカウントすることができる。
【0046】
複数ビットのカウンタ素子に共通する構成について、カウンタ素子121を例に挙げて説明する。カウンタ部12は、既存の技術を使って任意に設計可能であるが、以下の説明では、カウンタ素子としてTフリップフロップ(T―FF)を用いる場合の一例について説明する。なお、Dフリップフロップ等を用いて、Tフリップフロップの構成を実現してもよい。
【0047】
カウンタ素子121は、入力端子1211と、第1出力端子1212と、第2出力端子1213とを備える。入力端子1211には、パルス信号が入力される。最下位ビットであるカウンタ素子121には、光量検出装置20の出力信号が入力される。カウンタ素子122からカウンタ素子129の入力端子には、それぞれ前段のカウンタ素子の出力信号が入力される。第1出力端子1212及び第2出力端子1213は、Tフリップフロップの非反転出力端子又は反転出力端子のいずれかの信号が出力される。第1出力端子1212は、次段のカウンタ素子に出力するための端子であり、第2出力端子1213は、カウンタ値を出力するための端子である。第1出力端子1212及び第2出力端子1213は共通の端子であってもよい。
【0048】
各カウンタ素子には、U/D信号が入力される。U/D信号とは、アップカウント又はダウンカウントのいずれを行うかを制御するための信号である。各カウンタ素子は、U/D信号が1であるか、0であるかに応じて、アップカウント又はダウンカウントする。U/D信号は、複数ビットのカウンタ素子に共通して入力される信号である。各カウンタ素子は、U/D信号が1であるか0であるかに応じて、非反転出力端子又は反転出力端子のいずれの端子による出力信号を次段のカウンタ素子に出力するかを切り替えてもよい。
【0049】
9ビットのカウンタ素子121乃至カウンタ素子129のうち、最下位ビットであるカウンタ素子121には、イネーブル端子1214が備えられる。イネーブル端子1214は、入力信号が有効であるか否かを決定する。具体的には、イネーブル端子1214は、入力される電圧レベルに応じて、入力端子1211の入力を有効又は無効に制御することができる。最下位ビットのみ無効にすることにより、最下位ビットがカウントを行わなくなるため、カウンタ部12に備えられる他のカウンタ素子についても、カウントを無効化することができる。
【0050】
また、各カウンタ素子には、不図示のカウンタリセット信号CRSTが入力されてもよい。カウンタリセット信号CRSTがハイレベルの時には、各カウンタ素子のカウンタの値が初期値に設定され、ローレベルの時には、各カウンタ素子は通常のカウンタ動作を行う。
【0051】
トリガ信号発生回路13は、カウンタ部12によりアップカウントされた値及びダウンカウントされた値に基づき、トリガ信号T及び符号信号Sを生成する。
トリガ信号Tとは、所定期間にカウンタ部12に入力されるパルス信号の数が、所定の閾値以上であるか否かを示す信号である。すなわち、トリガ信号Tとは差分信号である。ここで、トリガ信号Tとして差分を検出するための閾値は、ビット数として設定されてもよい。たとえば4ビットを閾値とする場合、所定期間にカウンタ部12によりアップカウントされた値とダウンカウントされた値との差分の絶対値を、上位ビットから順に見て何ビット目で初めて1が現れるかを検出し、それが4ビット目以上であればトリガ信号Tを1とする。具体的には、閾値である4ビット目より上位のビットのいずれか1であればトリガ信号Tを1とする。すなわちトリガ信号Tとは、カウンタ部12に含まれる複数のカウンタ素子のうち、閾値とするビットより上位のビットのいずれかのカウンタ素子の出力値が0又は1のいずれであるかに応じて出力されてもよい。
【0052】
トリガ信号Tを出力するか否かを決定するための閾値は、どの程度の光量差でトリガを発生するかの要求によって設定することができる。例えば閾値とするビットを最下位ビットに近づけることにより、より少ない光量で(換言すれば、より敏感に)トリガ信号Tを出力する。また、閾値とするビットを最上位ビットに近づけることにより、より多い光量で(換言すれば、より鈍感に)トリガ信号Tを出力する。
【0053】
ここで、カウンタ部12は、9ビットのカウンタ素子を備えるため、0から512までカウントを行うことが可能である。しかしながら、カウンタ部12はアップカウント及びダウンカウントを行うため、0を初期値として-255から255の範囲でアップカウント及びダウンカウントを行うものとして記載する。すなわち、1ビット目から8ビット目(カウンタ素子121からカウンタ素子128)は、カウンタ部12によりカウントされる値(以下、カウンタ値と記載する。)の絶対値を決定し、9ビット目(カウンタ素子129)は符号を決定する。符号信号Sは、カウンタ値の符号を示す信号である。具体的には、符号信号Sは、9ビット目の出力がそのまま出力される。すなわち、符号信号Sとは、カウンタ部12に含まれる複数のカウンタ素子のうち、最上位ビットのカウンタ素子の出力値である。符号信号Sが1である場合カウンタ値は正、符号信号Sが0である場合カウンタ値は負である。カウンタ値が正である場合、アップカウントした値がダウンカウントした値より大きいことを示す。カウンタ値が負である場合、アップカウントした値がダウンカウントした値より小さいことを示す。
【0054】
なお、カウンタ部12がアップカウントした値に応じて出力される信号を第1信号S1と記載する場合がある。第1信号S1とは、具体的には、カウンタ素子121が備える第2出力端子1213から、カウンタ素子129が備える第2出力端子1293により出力される9ビットの信号であってもよい。
また、トリガ信号発生回路13により出力される出力信号を第2信号S2と記載する場合がある。第2信号S2には、トリガ信号Tと符号信号Sとが含まれる。
第1信号S1と第2信号S2とを出力する構成を、出力部と記載する場合がある。すなわち出力部は、カウンタ部12がアップカウントした値に応じた第1信号S1と、カウンタ部12がアップカウントした値とダウンカウントした値との差分に応じた第2信号S2とを出力する。
【0055】
図3は、第1の実施形態に係るフォトダイオードに光が入射した際のパルス発生タイミングについて説明するタイミングチャートである。同図を参照しながら、フォトダイオード21に光が入射した際にインバータチェーン22が出力する出力電圧VOUTのパルス発生タイミングについて説明する。同図には、横軸を時間として、フォトダイオード21の電圧VPDの変化を波形W11として示す。また、インバータチェーン22の出力電圧VOUTを波形W12として示す。同図には、フォトダイオード21に一定の光量の光が入射し続ける場合の一例について説明する。
なお、リセットトランジスタ23により供給される電圧をリセット電圧VRST、インバータチェーン22の入力閾値電圧を閾値電圧VTHと記載する。また、インバータチェーン22が出力する出力電圧VOUTは、L又はHの2値で記載する。
【0056】
時刻t0以前において、フォトダイオード21に光は入射していないので、フォトダイオード21の電圧VPDはリセット電圧VRSTである。また、この状態においてインバータチェーン22にはHが入力されるため、出力電圧VOUTはLである。
時刻t0から時刻t11にかけて、フォトダイオード21に光が入射する。図3に示す一例では、フォトダイオード21に一定の光量の光が入射し続けるため、フォトダイオード21の電圧VPDは直線的に低下する。
時刻t11においてフォトダイオード21の電圧VPDが閾値電圧VTHまで低下すると、インバータチェーン22の出力電圧VOUTが反転し、Hを出力する。インバータチェーン22の出力電圧VOUTがHになると、リセットトランジスタ23がオンし、フォトダイオード21の電圧VPDはリセット電圧VRSTとなる。電圧VPDがリセット電圧VRSTとなると、インバータチェーン22にはHが入力され、出力電圧VOUTは再度反転してLとなる。
【0057】
時刻t11から時刻14においても当該動作を繰り返し、結果としてインバータチェーン22の出力電圧VOUTはパルス信号を出力する。
インバータチェーンが反転を開始してから、電圧VPDがリセット電圧VRSTとなるまでの応答時間(遅延時間)により、インバータチェーン22の出力電圧VOUTのパルス幅が決定される。したがって、インバータチェーン22に含まれるインバータ素子それぞれの遅延時間の合計がパルス幅となる。
【0058】
図4は、第1の実施形態に係る信号処理装置により出力される第1信号及び第2信号の出力タイミングと、カウンタ値の変化について説明するタイミングチャートである。同図を参照しながら、信号処理装置10により出力される第1信号S1及び第2信号S2の出力タイミングと、カウンタ部12により出力されるカウンタ値の変化について説明する。
【0059】
ここで、カウンタ部12がアップカウントを行う期間を第1期間T1、カウンタ部12がダウンカウントを行う期間を第2期間T2と記載する場合がある。第1期間T1及び第2期間T2は同一の長さであってもよい。第1期間T1及び第2期間T2は繰り返し交互に行われる。例えば、第1期間T1は奇数フレームでああって、第2期間T2は偶数フレームであってもよい。
なお、本実施形態では信号処理装置10が固体撮像素子5に適用される一例について説明しているため、各期間をフレームと記載する場合がある。具体的には、第1期間T1を第1フレーム、第2期間T2を第2フレーム、と記載する場合がある。
【0060】
図4には、横軸を時間として、カウンタ部12が出力するカウンタ値の変化を示す。同図に示す一例において、カウンタ部12が備える9ビットのカウンタ素子のうち、1ビット目から8ビット目はカウンタの絶対値として、カウンタ値の9ビット目は符号として扱われる。同図には、カウンタ部12によりカウントされたカウンタ値を0から512として記載する。
【0061】
また、同図には、カウンタ部12に入力されるU/D信号、カウンタリセット信号CRST、イネーブル信号ENの値をL又はHの2値により示す。カウンタ部12はU/D信号がLの場合アップカウントをし、Hの場合ダウンカウントをする。U/D信号のレベルは、第1期間T1又は第2期間T2に切り替わることに連動して切り替わる。すなわち、カウンタ部12は、第1期間T1と第2期間T2とを含む周期において、第1期間T1又は第2期間T2のいずれであるかに応じてアップカウント又はダウンカウントする。
カウンタリセット信号CRSTがHである期間、各ビットの出力値が0に固定され、Lである期間、カウンタ部12はカウント動作を行う。イネーブル信号ENがLである期間、パルス信号が入力されてもカウンタ部12はカウント動作を行わず、Hである期間、カウンタ部12はパルス信号に応じたカウント動作を行う。
【0062】
また、同図には、第1信号S1の読み込みタイミングを映像信号読み込みタイミングV_READとして、第2信号の読み込みタイミングを差分信号読み込みタイミングT_READとして記載する。映像信号読み込みタイミングV_READ及び差分信号読み込みタイミングT_READは、いずれもHを読み込みタイミングとしてL又はHの2値により示す。
【0063】
時刻t21において、イネーブル信号ENがオフし、カウンタ値がリセットされた(すなわち、カウンタリセット信号CRSTとして1パルス入力される)後、イネーブル信号ENがオンする(すなわち、LからHに切り替わる。)。その後、カウンタ値は、フォトダイオード21に入射する光の量に応じたアップカウント動作を行う。
時刻t21から時刻t22はカウンタ部12がアップカウントを行う第1周期T1である。すなわち時刻t21から時刻t22において、U/D信号はアップカウントを示すLに固定される。
【0064】
時刻t21から時刻t22にかけて、カウンタ部12は256から順にアップカウントを行う。時刻t22になると、第1信号S1が読み出される。すなわち、映像信号読み込みタイミングV_READがHとなり、時刻t22におけるカウンタ値が読み出される。図4に示す一例では、時刻t22におけるカウンタ値は、500程度である。ここで、カウンタ部12には、第1期間T1においてカウントされた値に256を足した値が保持されている。カウンタの値から256を引いた値を出力するためには、1ビット目から8ビット目におけるカウンタ値(すなわち、符号ビットである9ビット目を除いた値)を出力すればよい。
カウンタ値の読出し期間において、誤動作を防ぐため、カウント動作を無効に設定してもよい。すなわち、イネーブル信号ENをLにしてもよい。
【0065】
ここで、画素回路1が固体撮像素子5に備えられる場合、固体撮像素子5に備えられた複数の画素回路1からカウンタ値を読み出す必要がある。例えば、各画素回路1に備えられるカウンタ部12からの出力は、XYアドレス方式等が用いられてもよい。XYアドレス方式等を用いる場合、画素を順次選択して読み出される。また、全画素についてのカウンタ値(すなわち映像信号)を読み出すのではなく、後述のトリガ信号を用いて差分があった画素についてのカウンタ値(すなわち映像信号)のみを読み出してもよい。
【0066】
時刻t22から時刻t23は、カウンタ部12がダウンカウントを行う第2周期T2である。すなわち時刻t22から時刻t23において、U/D信号はダウンカウントを示すHに固定される。カウンタ部12は、時刻t22において読み出されたカウンタ値を始点としてダウンカウントを行う。第1期間T1の長さと、第2期間T2の長さは同一であるため、フォトダイオード21に入射する光の量が同一であれば、時刻t23におけるカウンタ値は理論上0(9ビットで表現した場合は256)になる。第1期間T1にフォトダイオード21に入射する光の量が、第2期間T2に比べて多ければ、時刻t23におけるカウンタ値は正になる(すなわち9ビットで表現した場合256より大きくなる)。第1期間T1にフォトダイオード21に入射する光の量が、第2期間T2に比べて小さければ、時刻t23におけるカウンタ値は負になる(すなわち9ビットで表現した場合256より小さくなる)。
【0067】
時刻t23になると、第2信号S2が読み出される。すなわち、差分信号読み込みタイミングT_READがHとなり、閾値として設定された何ビット目かのカウンタ素子の出力信号であるトリガ信号Tと、9ビット目の出力信号である符号信号Sとが読み出される。第2信号S2の読出し期間において、誤動作を防ぐため、カウント動作を無効に設定してもよい。すなわち、イネーブル信号ENをLにしてもよい。カウンタ部12からの出力には一定の時間を要するため、その時間がパルス出力の周期よりも長い場合には、カウンタ値が変化してしまう場合がある。したがって、イネーブル信号ENをLにすることによりカウンタ値が変化してしまう不具合を抑止することができる。図4に示す一例では、時刻t23におけるカウンタ値は350程度であり、9ビットで表現した場合256より大きい。
【0068】
なお、画素回路1が固体撮像素子5に用いられる場合、トリガ信号Tは画素アレイの周辺又は画素内に備えられるアドレス生成回路に送られてもよい。当該アドレス生成回路は、トリガ信号Tが1であった画素のアドレス情報(XY座標)を、符号Sとともに出力してもよい。
また、符号信号Sは必ずしも必須ではなく、トリガ信号Tのみを生成し、出力してもよい。
【0069】
第1周期T1と第2周期T2とを含む周期が終わると、カウンタ値が0(すなわち、256)にリセットされる(すなわち、カウンタリセット信号CRSTがHとなる)。
【0070】
時刻t23から時刻t24にかけて再度第1周期T1となる。U/D信号は再度Lに固定される。時刻t23において、イネーブル信号ENがオフし、カウンタ値がリセットされる。その後、イネーブル信号ENがオンし、カウンタ値は、フォトダイオード21に入射する光の量に応じたアップカウント動作を行う。時刻t24になると、第1信号S1が読み出される。図4に示す一例では、時刻t24におけるカウンタ値は、400程度である。
【0071】
時刻t24から時刻t25にかけて再度第2周期T2となる。U/D信号は再度Hに固定される。カウンタ部12は、時刻t24において読み出されたカウンタ値を始点としてダウンカウント動作を行う。時刻t25になると、第2信号S2が読み出される。図4に示す一例では、時刻t23におけるカウンタ値は200程度であり、9ビットで表現した場合256より小さい。
【0072】
なお、第1周期T1の直前の第2周期T2においてトリガ信号Tが1であった画素のアドレス情報を用いて、第1周期T1において映像情報を読み出すよう構成してもよい。この構成により、変化のあった映像情報だけを読み出すことができ、有効な情報を削減せずにデータを低減することができる。
【0073】
[第1の実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、信号処理装置10は、パルス信号取得部11を備えることにより経時的に変化する値を取得し、カウンタ部12を備えることにより第1期間T1と第2期間T2とを含む周期において、第1期間T1又は第2期間T2のいずれであるかに応じてアップカウント又はダウンカウントし、出力部を備えることによりカウンタ部12がアップカウントした値に応じた第1信号S1と、カウンタ部12がアップカウントした値とダウンカウントした値との差分に応じた第2信号S2とを出力する。第1期間T1及び第2期間T2は繰り返し交互に行われる。第1期間T1(すなわち奇数フレーム)ではパルスのアップカウントにより映像信号が出力され、第2期間T2(すなわち、偶数フレーム)ではパルスのアップカウントとダウンカウントの結果を用いて差分信号が出力される。したがって、本実施形態によれば、映像信号と差分信号とを、デジタル値により容易に取得することができる。
【0074】
また、上述した実施形態によれば、カウンタ部12は、複数ビットのカウンタ素子を含み、第2信号S2に含まれるトリガ信号Tは、カウンタ部12に含まれるいずれかのカウンタ素子の出力値が0又は1のいずれであるかに応じて出力される。具体的には、カウンタ部12は、閾値とするビットより上位のビットのいずれかのカウンタ素子の出力値が0又は1のいずれであるかに応じてトリガ信号Tを出力する。すなわち、本実施形態によれば、何ビット目のカウンタを閾値とするかを決定し、当該ビットより上位ビットにおける変化の有無に応じて差分信号の閾値を変更することができる。したがって、本実施形態によれば、容易に差分信号の閾値を設定することができる。
【0075】
また、上述した実施形態によれば、複数ビットのカウンタ素子を含み、第2信号S2に含まれる符号信号Sは、カウンタ部12に含まれるカウンタ素子のうち、最上位ビットのカウンタ素子(図2に示した一例では、カウンタ素子129)の出力値である。すなわち、本実施形態によれば、最上位ビットのカウンタ素子の出力値により、第1期間T1においてカウントされた値と、第2期間T2においてカウントされた値とのいずれが大きいかを検出することができる。また、本実施形態によれば、1ビット目から8ビット目までを絶対値として9ビット目を符号として扱う。ダウンカウントの場合は、256を中心として、512から0までカウント可能である。しがって、本実施形態によれば、第2期間T2における入射量の方が第1期間T1における入射量より大きい場合であっても、オーバーフローすることなくカウントすることができる。
【0076】
また、上述した実施形態によれば、カウンタ部12に含まれる複数のカウンタ素子のうち、最下位ビットのカウンタ素子(図2に示した一例では、カウンタ素子121)は、入力信号が有効であるか否かを決定するイネーブル端子1214を有する。カウンタ素子121は、イネーブル端子1214に入力される電圧レベルに応じて、入力されるパルス信号が有効であるか否かを決定する。最下位ビットのカウンタ素子の入力信号が有効にされない限り、後段のカウンタ素子には信号が入力されないため、カウンタ部12全体としてカウント動作を行うことができない。したがって、本実施形態によれば、最下位ビットのみ無効にすることにより、カウンタ部12に備えられる他のカウンタ素子(カウンタ素子122からカウンタ素子129)についても、カウント動作を無効化することができる。
【0077】
また、上述した実施形態によれば、パルス信号取得部11は、経時的に値が1又は0のデジタル値に変化するパルス信号を取得する。したがって、本実施形態によれば、信号処理装置10は、2値で出力されるセンサの出力値についてパルス数をカウントした値と、差分信号とを出力することができる。
【0078】
また、上述した実施形態によれば、信号処理装置10に光量検出装置20が含まれる場合、取得部は、値が連続的に変化するアナログ値を取得する。また、インバータチェーン22は、アナログ値と所定の閾値との比較結果に応じてデジタル値に変換するA/D変換部として機能する。したがって、本実施形態によれば、インバータチェーン22を備えることにより、アナログ値を出力するセンサについても、パルス信号に変換し、パルス数をカウントした値と、差分信号とを出力することができる。
【0079】
また、上述した実施形態によれば、取得部は、フォトダイオード21に光が入射した結果に応じた電圧値を取得する。したがって、本実施形態によれば、映像信号と差分信号とを出力可能な固体撮像素子5を提供することができる。
【0080】
また、上述した実施形態によれば、信号処理装置10に光量検出装置20が含まれる場合、信号処理装置10はリセットトランジスタ23を備えることにより、A/D変換部としてのインバータチェーン22により出力されるデジタル値に応じて、フォトダイオード21にリセット電圧VRSTを印加するか否かを制御することができる。したがって、フォトダイオード21が飽和した場合であっても、フォトダイオード21をリセットすることができる。
【0081】
また、上述した実施形態によれば、信号処理装置10は、インバータチェーン22と、カウンタ部12(1ビットカウンタの直列接続)という、比較的少ないトランジスタ数からなるシンプルな回路構成を採用している。本実施形態によれば、このようなシンプルな回路構成であるにもかかわらず、2種類のデジタル信号を出力することができる。また、信号処理装置10は、シンプルな回路構成であるため、画素サイズの増大を抑止することができ、高解像度な映像信号と差分情報とを出力する固体撮像素子5を提供することができる。
【0082】
また、本実施形態による信号処理装置10を備える固体撮像素子5を撮像装置に適用することにより、用途に応じて、常時差分情報だけを出力するモード、差分情報に加えて全画素の映像信号を出力するモード、差分情報と変化のあった映像信号だけを出力するモードを切り替え可能な撮像装置を提供することができる。当該撮像装置は、通常の撮像装置と比較して、差分情報を出力することができるため、動き情報の検出をすることができるようになる。また、全画素の映像信号を出力するモード以外では、有効な情報を削減せずに、データ量を削減することができる。
【0083】
また、本実施形態によれば、フォトダイオード21により得られた信号を対数圧縮等していないため、光量とパルス数の関係は線形である。したがって、本実施形態によれば、撮影対象を反映した正確な映像情報および差分情報を得ることができる。
【0084】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について説明する。まず、第2の実施形態が解決しようとする課題の概要について説明する。第1の実施形態に係る画素回路1によれば、映像信号と差分信号とをデジタル値により出力することができる。しかしながら、第1の実施形態に係る画素回路1によれば、第1期間T1(偶数フレーム)で映像信号を、第2期間T2(奇数フレーム)で差分信号を出力するため、第2期間T2における映像信号が失われてしまう(すなわち情報量が半減してしまう)といった問題があった。そこで、第2の実施形態においては、第2期間T2においても映像信号を取得することを目的とする。
【0085】
図5は、第2の実施形態に係る画素回路の回路構成の一例を示す回路図である。同図を参照しながら、第2の実施形態に係る画素回路1Aの回路構成の一例について説明する。画素回路1Aの説明において、画素回路1と同様の構成については同様の符号を付して説明を省略する場合がある。画素回路1Aは、光量検出装置20を備える点において画素回路1と同様である。画素回路1Aは、信号処理装置10に代えて信号処理装置10Aを備える点において画素回路1とは異なる。信号処理装置10Aは、信号処理装置10と同様の構成を2組備える。すなわち、信号処理装置10Aは、第1信号処理部110と、第2信号処理部120とを備える。第1信号処理部110と、第2信号処理部120とは、同様の構成を有していてもよく、それぞれ第1の実施形態において説明した信号処理装置10と同様の構成であってもよい。
【0086】
第1信号処理部110は、第1カウンタ部111を備える。第2信号処理部120は、第2カウンタ部112を備える。信号処理装置10Aの構成において、第1カウンタ部111及び第2カウンタ部112を総称して、カウンタ部12と記載する。すなわち信号処理装置10Aにおいてカウンタ部12は、第1カウンタ部111と第2カウンタ部112とを備える。第1カウンタ部111は、第1期間T1ではアップカウントし、第2期間T2ではダウンカウントする。第2カウンタ部112は、第1期間T1ではダウンカウントし、第2期間T2ではアップカウントする。すなわち第1カウンタ部111が備えるU/D端子に入力される信号をインバートした信号が、第2カウンタ部112が備えるU/D端子に入力されるように構成されていてもよい。
【0087】
信号処理装置10Aの出力部は、第1期間T1において第1カウンタ部111がアップカウントした値に応じた値、又は第2期間T2において第2カウンタ部112がアップカウントした値に応じた値の少なくとも一方を第1信号S1として出力する。
また、信号処理装置10Aの出力部は、第1期間T1において第1カウンタ部111がアップカウントした値と第2期間T2において第1カウンタ部111がダウンカウントした値との差分に応じた値、又は第2期間T2において第2カウンタ部112がアップカウントした値と第1期間T1において第2カウンタ部112がダウンカウントした値との差分に応じた値の少なくとも一方を第2信号S2として出力する。
【0088】
すなわち画素回路1Aは、第1信号処理部110に加えて第2信号処理部120を備えることにより、第1期間T1と第2期間T2の動作を、図4を参照しながら説明した動作と逆相にする。このような構成を採用することにより、第1期間T1においては第1信号処理部110から第1信号S1を、第2信号処理部120から第2信号S2を取得する。また、第2期間T2においては第1信号処理部110から第2信号S2を、第2信号処理部120から第1信号S1を取得する。すなわち第2の実施形態では、第1信号処理部110及び第2信号処理部120の2系統を備えることにより、2系統合わせて毎フレームの映像信号と差分信号を出力することができるようになる。
【0089】
図6は、第2の実施形態に係る信号処理装置により出力される第1信号及び第2信号の出力タイミングと、カウンタ値の変化について説明するタイミングチャートである。同図を参照しながら、信号処理装置10Aにより出力される第1信号S1及び第2信号S2の出力タイミングと、カウンタ部12により出力されるカウンタ値の変化について説明する。
【0090】
第2の実施形態においては、第1期間(第1フレーム)T1において、第1カウンタ部111がアップカウントを行い、第2カウンタ部112がダウンカウントを行う。また、第2期間(第2フレーム)T2において、第1カウンタ部111がダウンカウントを行い、第2カウンタ部112がアップカウントを行う。第1期間T1及び第2期間T2は同一の長さであってもよい。第1期間T1及び第2期間T2は繰り返し交互に行われる。例えば、第1期間T1は奇数フレームであって、第2期間T2は偶数フレームであってもよい。
【0091】
図6には、横軸を時間として、第2カウンタ部112が出力するカウンタ値の変化を示す。第1カウンタ部111が出力するカウンタ値の変化については、図4を参照しながら説明した一例と同様である。
また、図6に示される、U/D信号、カウンタリセット信号CRST、及びイネーブル信号ENは、第2信号処理部120に入力される値であり、映像信号読み込みタイミングV_READ、及び差分信号読み込みタイミングT_READは、第2信号処理部120により信号が出力されるタイミングである。第1信号処理部110による入出力信号は、図4を参照しながら説明した一例と同様である。また、第2信号処理部120による入出力信号の定義については、対応する第1信号処理部110による入出力信号の定義であるため説明を省略する。
【0092】
時刻t31から時刻t32は、第2カウンタ部112がダウンカウントを行う第2周期T2である。すなわち時刻t31から時刻t32において、U/D信号はダウンカウントを示すHに固定される。カウンタ部12は、直前の第1期間T1(不図示)において読み出されたカウンタ値を始点としてダウンカウントを行う。直前の第1期間T1におけるカウンタ値は、9ビットで表現した場合400程度である。
【0093】
時刻t32において、第2信号S2が読み出される。すなわち、差分信号読み込みタイミングT_READがHとなり、閾値として設定された何ビット目かのカウンタ素子の出力信号であるトリガ信号Tと、9ビット目の出力信号である符号信号Sとが読み出される。第2信号S2の読出し期間において、誤動作を防ぐため、イネーブル信号ENがLに設定され、カウント動作が無効にされる。図6に示す一例では、時刻t32におけるカウンタ値は200程度であり、9ビットで表現した場合256より小さい。
【0094】
時刻t32において、イネーブル信号ENがオフし、カウンタ値がリセットされた後(すなわち、カウンタリセット信号CRSTとして1パルス入力される)、イネーブル信号ENがオンする(すなわち、LからHに切り替わる)。その後、カウンタ値は、フォトダイオード21に入射する光の量に応じたアップカウント動作を行う。
時刻t32から時刻t33はカウンタ部12がアップカウントを行う第1周期T1である。すなわち時刻t32から時刻t33において、U/D信号はアップカウントを示すLに固定される。
【0095】
時刻t32から時刻t33にかけて、第2カウンタ部112は256から順にアップカウントを行う。時刻t33になると、第1信号S1が読み出される。すなわち、映像信号読み込みタイミングV_READがHとなり、時刻t32におけるカウンタ値が読み出される。図6に示す一例では、時刻t33におけるカウンタ値は、9ビットで表現した場合500程度である。カウンタ値の読出し期間において、誤動作を防ぐため、イネーブル信号ENをLに設定することにより、カウント動作が無効にされる。
【0096】
時刻t33から時刻t34にかけて再度第2周期T2となる。U/D信号は再度Hに固定される。カウンタ部12は、時刻t33において読み出されたカウンタ値を始点としてダウンカウント動作を行う。時刻t34になると、第2信号S2が読み出される。図6に示す一例では、時刻t34におけるカウンタ値は350程度であり、9ビットで表現した場合256より大きい。
【0097】
時刻t34から時刻t35にかけて再度第1周期T1となる。U/D信号は再度Lに固定される。時刻t34において、イネーブル信号ENが解除され、カウンタ値がリセットされる。その後、カウンタ値は、フォトダイオード21に入射する光の量に応じたアップカウント動作を行う。時刻t35になると、第1信号S1が読み出される。図6に示す一例では、時刻t35におけるカウンタ値は、9ビットで表現した場合400程度である。
【0098】
[第2の実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、画素回路1Aが備えるカウンタ部12は、第1期間T1ではアップカウントし第2期間T2ではダウンカウントする第1カウンタ部111と、第1期間T1ではダウンカウントし第2期間T2ではアップカウントする第2カウンタ部112とを備える。画素回路1Aが備える出力部は、第1期間T1において第1カウンタ部111がアップカウントした値に応じた値、又は第2期間T2において第2カウンタ部112がアップカウントした値に応じた値の少なくとも一方を第1信号S1として出力し、第1期間T1において第1カウンタ部111がアップカウントした値と第2期間T2において第1カウンタ部111がダウンカウントした値との差分に応じた値、又は第2期間T2において第2カウンタ部112がアップカウントした値と第1期間T1において第2カウンタ部112がダウンカウントした値との差分に応じた値の少なくとも一方を第2信号S2として出力する。すなわち、信号処理装置10Aによれば、第2カウンタ部112が第1カウンタ部111と逆相となる動きをすることにより、1つの周期で互いのカウンタ部がそれぞれ映像信号と差分信号とを出力する。したがって、本実施形態によれば、奇数フレーム及び偶数フレームのいずれにおいても、映像信号及び差分信号の両方を取得することができる。
【0099】
なお、第2の実施形態に係る画素回路1Aは、画素回路1に比べて回路規模が大きくなってしまう欠点がある。したがって、図1に示したような3次元構造を採用することにより、カウンタを画素ごとに信号処理装置10Aを搭載しても画素サイズの増大を避けることでき、高解像度な撮像が実現できる。
【0100】
なお、第2の実施形態では、2つのカウンタを逆相に備える構成としたが、カウンタを増やさずに(すなわち第1の実施形態と同様のハードウェア構成により)、奇数フレーム及び偶数フレームの両方において映像信号及び差分信号の両方を取得したいという要望も考えられる。この場合、隣接する画素のカウンタを逆相で駆動することにより、実現可能である。すなわち、隣接する画素のいずれかを用いることにより空間的な解像度を落とす代わりに、時間的な解像度を上げることができる。この場合、失われた空間的な解像度を向上させるため、隣接する画素どうしで既存の画像補間処理技術を適用してもよい。
【0101】
本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。また、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0102】
5 固体撮像素子
1 画素回路
10 信号処理装置
11 パルス信号取得部
12 カウンタ部
13 トリガ信号発生回路
20 光量検出装置
21 フォトダイオード
22 インバータチェーン
23 リセットトランジスタ
S1 第1信号
S2 第2信号
110 第1信号処理部
120 第2信号処理部
111 第1カウンタ部
112 第2カウンタ部
T1 第1期間
T2 第2期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6