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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046264
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】超音波プローブ及び超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20240327BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A61B8/00
H04R1/02 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151552
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 敦
【テーマコード(参考)】
4C601
5D019
【Fターム(参考)】
4C601BB06
4C601EE14
4C601EE19
4C601GB04
4C601GB24
5D019AA17
5D019FF04
(57)【要約】
【課題】被検体との接触面近傍で生じる熱が被検体に伝達されるのを抑制することのできる超音波プローブ及び超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波プローブ100は、振動子10と、振動子10が超音波を送受信する側の第1面とは反対側の第2面を支持する支持部11Aと、振動子10に対して支持部11A側と反対側に配置された音響レンズ13と、振動子10と音響レンズ13の間に配置された音響整合部12と、を備え、音響整合部12のうちの少なくとも第3音響整合層12Cと支持部11Aを接続する接続部11Bを備え、支持部11Aと接続部11Bと第3音響整合層12Cは、熱伝導率及び音響インピーダンスが同一である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子と、
前記振動子が超音波を送受信する側の第1面とは反対側の第2面を支持する支持部と、
前記振動子に対して前記支持部側と反対側に配置された音響レンズと、
前記振動子と前記音響レンズの間に配置された音響整合部と、を備え、
前記音響整合部のうち、前記音響レンズから前記振動子に向かう第1方向における少なくとも一部の範囲を第1範囲とし、
前記第1範囲と前記支持部を接続する接続部を備え、
前記支持部と前記接続部と前記第1範囲は、熱伝導率及び音響インピーダンスが同一である、超音波プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波プローブであって、
前記第1範囲と前記接続部と前記支持部は、同一材料により構成される、超音波プローブ。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波プローブであって、
前記第1範囲は、前記音響レンズとの接触面を含む、超音波プローブ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波プローブであって、
前記振動子は、前記第1方向に交差する平面に沿った第2方向に複数配列されており、
前記平面に沿い且つ前記第2方向に交差する方向を第3方向とし、
前記第3方向における前記接続部の長さは、前記第1方向における前記第1範囲の長さよりも大きい、超音波プローブ。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波プローブであって、
前記接続部は、前記音響レンズと更に接触する、超音波プローブ。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波プローブであって、
前記音響整合部は、前記第1方向に積層された複数層により構成され、
前記第1範囲は、前記音響整合部における前記音響レンズに最も近い層である、超音波プローブ。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波プローブであって、
前記振動子は、前記第1方向に交差する平面に沿った第2方向に複数配列されており、
前記平面に沿い且つ前記第2方向に交差する方向を第3方向とし、
前記支持部及び前記接続部の前記第3方向における端面に対向配置された放熱部材を備え、
前記支持部及び前記接続部の少なくとも一方は、前記放熱部材と接続されている、超音波プローブ。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波プローブであって、
前記支持部は、前記振動子側と反対側の端部の形状が、前記振動子から前記端部側に放射される超音波を散乱可能な形状となっている、超音波プローブ。
【請求項9】
請求項1に記載の超音波プローブを備える超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波プローブ及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、整合体と、この整合体と圧電性の変換器素子との間に挿入された補償体と、減衰エレメントとを備えた超音波変換器において、減衰エレメントが、流体媒体に向けられた放射側で整合体を取り囲んでいて、半径方向で整合体と補償体とを取り囲む構成が記載されている。
【0003】
特許文献2には、複数の凸状部が形成されたバッキング材を含む超音波探触子が記載されている。
【0004】
特許文献3には、バッキング材と、上記バッキング材の表面上に配列される複数の圧電素子と、上記バッキング材の内部において厚み方向に延在し且つ上記複数の圧電素子の下面に対向する上記バッキング材の表面から先端部が露出する少なくとも1つの熱伝導路を有し、上記バッキング材より熱伝導率が高い材料から構成されて、上記複数の圧電素子から熱を取り込む集熱部と、上記集熱部に接続され、上記集熱部に取り込まれた熱を外部に排出する排熱部とを備える超音波探触子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2012-513714号公報
【特許文献2】特開2004-329495号公報
【特許文献3】特開2015-181541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
医療用の超音波診断装置では、超音波プローブから被検体に向けて超音波ビームを送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信し、その受信信号を電気的に処理することにより超音波画像が生成される。近年では、超音波プローブ及び超音波診断装置の高性能化に伴い、超音波プローブ内部の振動子に対して多種多様な駆動を施すようになっている。その結果、超音波プローブにおける被検体との接触面近傍での発熱量が増加する傾向にある。このため、超音波プローブで発生する熱が被検体に伝わらないようにすることが求められる。特許文献1は、医療用の超音波診断装置を想定した技術ではない。
【0007】
本開示の目的は、被検体との接触面近傍で生じる熱が被検体に伝達されるのを抑制することのできる超音波プローブ及びこれを備えた超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の超音波プローブは、振動子と、上記振動子が超音波を送受信する側の第1面とは反対側の第2面を支持する支持部と、上記振動子に対して上記支持部側と反対側に配置された音響レンズと、上記振動子と上記音響レンズの間に配置された音響整合部と、を備え、上記音響整合部のうち、上記音響レンズから上記振動子に向かう第1方向における少なくとも一部の範囲を第1範囲とし、上記第1範囲と上記支持部を接続する接続部を備え、上記支持部と上記接続部と上記第1範囲は、熱伝導率及び音響インピーダンスが同一である、ものである。
【0009】
本開示の一態様の超音波診断装置は、上記超音波プローブを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、被検体との接触面近傍で生じる熱が被検体に伝達されるのを抑制することのできる超音波プローブ及びこれを備えた超音波診断装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示に係る一態様の超音波プローブ100の先端部分を部分的に示した斜視図である。
図2図2は、ユニットUの左右方向Xに垂直な断面を示す模式図である。
図3図3は、超音波プローブ100の第一変形例を示す図であり、図2に対応する断面模式図である。
図4図4は、超音波プローブ100の第二変形例を示す図であり、図2に対応する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本開示に係る一態様の超音波プローブ100の先端部分を部分的に示した斜視図である。図1には、超音波プローブ100における方向として、互いに直交する3つの方向(左右方向X、前後方向Y、及び上下方向Z)が示されている。上下方向Zの一方を上方向Z1と記載し、上方向Z1の反対方向を下方向Z2と記載する。前後方向Yの一方を後方向Y1と記載し、後方向Y1の反対方向を前方向Y2と記載する。超音波プローブ100は、上側の端面を被検体に接触させて用いられる。左右方向Xと前後方向Yは、それぞれ、上下方向Zに垂直な平面(上下方向Zに交差する平面の1つ)に沿う方向である。本明細書において、上下方向Zは、後述の音響レンズ13から振動子10に向かう第1方向を構成し、左右方向Xは、第2方向を構成し、前後方向Yは、第2方向に交差する第3方向を構成する。
【0013】
超音波プローブ100は、超音波診断装置に含まれる画像生成用のデバイスである。超音波診断装置には、被検体の外表面に超音波プローブ100を近接させながら超音波画像を生成して記録する装置、又は、内視鏡の挿入部先端に内蔵された超音波プローブ100を被検体の臓器に近接させながら超音波画像を生成して記録する装置等が含まれる。
【0014】
図1に示すように、超音波プローブ100は、左右方向Xに配列された複数のユニットUと、この複数のユニットUに対して上側に、この複数のユニットUで共通に設けられた音響レンズ13と、を備える。隣り合うユニットUは、分離層14によって分離されている。分離層14は、絶縁性を有する樹脂材料等により形成される。ユニットUは、前後方向Yの幅が左右方向Xの幅よりも大きくなっている。
【0015】
ユニットUは、振動子10と、振動子10に対して上側に配置された音響整合部12と、振動子10及び音響整合部12の周囲に設けられた機能部11と、を備える。なお、図1では図示省略されているが、音響レンズ13、複数のユニットU、及び分離層14は、ケース15(図2参照)に支持される。
【0016】
振動子10は、圧電体10Aと、圧電体10Aの下側の面に固着された信号電極10Bと、圧電体10Aの上側の面に固着されたグランド電極10Cと、を備える。圧電体10Aは、超音波を電圧印加により生成し、超音波の反射波を受け取った場合は受信電圧を生成するものである。圧電体10Aは、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミクス、又は、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の高分子材料等の圧電材料により構成される。圧電体10Aは、半導体素材をベースとした、CMUT(Capacitive Micro Ultrasound Transducers)等により構成されてもよい。
【0017】
音響整合部12は、圧電体10Aと被検体との音響インピーダンスを整合して、超音波の送受信を効率よく行うために設けられている。音響整合部12は、圧電体10Aの音響インピーダンスより小さく、且つ、被検体の音響インピーダンスより大きい値の音響インピーダンスを有する材料により形成することが好ましい。
【0018】
本形態では、このような材料により形成された複数の層を上下方向Zに積層することにより、音響整合部12が形成されている。具体的には、音響整合部12は、振動子10の上側の面に固着された第1音響整合層12Aと、第1音響整合層12Aの上側の面に固着された第2音響整合層12Bと、第2音響整合層12Bの上側の面に固着された第3音響整合層12Cと、を備える。音響整合部12は、振動子10から被検体に向かって、音響インピーダンスが段階的に小さくなる層構造となっていることが好ましい。第3音響整合層12Cは、絶縁性素材で構成されており、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、又はシリコーン樹脂等を主体として構成される。
【0019】
音響レンズ13は、屈折を利用して超音波ビームを集束し、分解能を向上するために設けられる。音響レンズ13は、一般的には凸型で構成される。音響レンズ13は、例えば、シリコーン樹脂又はプラスチック等により構成される。音響レンズ13は、全てのユニットUにおける音響整合部12の上面及びこれらユニットU間の分離層14の上面に、接着剤等によって固着されている。
【0020】
超音波プローブ100では、複数の振動子10のグランド電極10Cと信号電極10Bの間に、パルス状あるいは連続波状の電圧をそれぞれ印加することで、それぞれの圧電体10Aが伸縮してパルス状あるいは連続波状の超音波が発生する。これらの超音波は、音響整合部12及び音響レンズ13を介して被検体内に入射されると、互いに合成されて超音波ビームを形成し、被検体内を伝搬する。被検体内を伝搬して反射した超音波エコーが、音響レンズ13及び音響整合部12を介してそれぞれの圧電体10Aに入射されると、それぞれの圧電体10Aが変形し、この変形に応じてグランド電極10Cと信号電極10Bの間に信号電圧が発生する。複数の振動子10において発生した信号電圧は、それぞれの振動子10のグランド電極10C及び信号電極10Bの間から取り出されて、受信信号として受信され、この受信信号を基に超音波画像が生成される。
【0021】
図2は、ユニットUの左右方向Xに垂直な断面を示す模式図である。図2に示すように、機能部11は、振動子10が超音波を送受信する側の第1面(上側の面)とは反対側の第2面(下側の面)を支持する支持部11Aと、支持部11Aと音響整合部12の少なくとも一部とを接続する接続部11Bと、を備える。支持部11Aは、信号電極10Bの下面、圧電体10Aの前後の端面、及びグランド電極10Cの前後の両端部の下面に接触して、振動子10の下面を支持している。図2には、音響整合部12の前後方向Yの両端面として、第1端面S1と第2端面S2と、が示されている。
【0022】
接続部11Bは、図2の例では、第1端面S1の全体及び第2端面S2の全体と支持部11Aとを接続している。より詳細には、接続部11Bは、支持部11Aの前後の両端部の上面から、第1端面S1及び第2端面S2のそれぞれに沿って上方向Z1に延びて、第1端面S1及び第2端面S2に接触している。接続部11Bは、ケース15と第1端面S1及び第2端面S2との間を埋める形で設けられている。本形態では、音響レンズ13が、接続部11Bの上面も覆っている。つまり、接続部11Bは、音響整合部12と接触すると共に、音響レンズ13の下面とも接触している。
【0023】
支持部11Aは、複数の振動子10を支持すると共に、振動子10から下方向Z2に向かう超音波が、再度、振動子10内に戻ることがないように、吸収性を有し、且つ、振動子10の振動成分から不要な微弱振動を除去する制振性を有する絶縁性素材で構成される。支持部11Aは、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、又はシリコーン樹脂等を主体として構成される。支持部11A内には、グランド電極10Cと信号電極10Bのそれぞれと接続される電極16が設けられている。
【0024】
接続部11Bは、絶縁性素材で構成されており、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、又はシリコーン樹脂等を主体として構成される。
【0025】
本形態では、支持部11Aと、接続部11Bと、音響整合部12のうち上下方向Zにおける一部の範囲を構成している第3音響整合層12Cが、それぞれ、熱伝導率及び音響インピーダンスが同一(公差程度の差はあるものの実質的に同一)となるように、それぞれの材料等が調整されている。支持部11A、接続部11B、及び第3音響整合層12Cのそれぞれの熱伝導率は、音響レンズ13の熱伝導率よりも高いことが好ましい。
【0026】
このように、支持部11A、接続部11B、及び第3音響整合層12Cは、熱伝導率及び音響インピーダンスが同一になっていることで、音響レンズ13と音響整合部12の境界付近で発生した熱は、音響レンズ13と比較して熱伝導率の高い接続部11Bへと伝達されやすくなる。そして、接続部11Bに伝達された熱は、ユニットUにおいて大半の体積を占める支持部11Aへと伝達される。したがって、音響レンズ13に伝わる熱を減らして、被検体に対する安全性を高めることができる。また、接続部11Bと音響レンズ13は接触しているため、音響レンズ13に移動した上記熱を、音響レンズ13と接続部11Bとの接触面を介して、接続部11B及び支持部11Aに逃がすことができる。これにより、音響レンズ13と接する被検体へ伝わる熱を、より減らすことができる。
【0027】
また、支持部11A、接続部11B、及び第3音響整合層12Cの熱伝導率及び音響インピーダンスが同一になっていることで、例えば、支持部11A、接続部11B、及び第3音響整合層12Cを同一材料によって一体成形できるため、製造コストを下げることができる。
【0028】
第3音響整合層12Cと支持部11Aでは、求められる機能(超音波の吸収性)が異なるため、音響インピーダンスは異なるのが一般的である。そして、音響インピーダンスが異なるということは、第3音響整合層12Cと支持部11Aとで材料組成が異なることとなるため、結果として、第3音響整合層12Cと支持部11Aとで熱伝導率も異なるのが一般的である。
【0029】
本形態では、第3音響整合層12Cと支持部11Aと接続部11Bを、例えば同一材料且つ同一組成で構成することで、第3音響整合層12Cと支持部11Aと接続部11Bで、音響インピーダンス及び熱伝導率を同一にしている。第3音響整合層12Cと支持部11Aと接続部11Bの音響インピーダンスは、例えば、音響整合部12として要求される条件を満たすように設計される。この場合、支持部11Aにおいては、超音波の吸収性を十分に確保できなくなる懸念がある。しかし、支持部11Aについては、例えば、その上下方向Zの厚み等を調整したり、後述する変形例(図3)のように、その形状を工夫したりすることで、超音波の吸収性を高めることが可能である。つまり、第3音響整合層12Cと支持部11Aとで音響インピーダンスを同一にしても、実用上問題ない程度の超音波画像を得ることは可能である。
【0030】
なお、第3音響整合層12Cと支持部11Aと接続部11Bの音響インピーダンスを、例えば、支持部11Aとして要求される条件を満たすように設計することも可能である。この場合には、音響整合部12において超音波の吸収性が高まることになる。しかし、超音波の送受信効率よりも、振動子10に対する高性能な駆動を採用できることの方が、メリットがある場合もある。振動子10に対する高性能な駆動を採用すると、発熱量が増加する傾向にあるが、第3音響整合層12Cと支持部11Aと接続部11Bの熱伝導率が同一になっていることで、熱が被検体へ伝わるのを抑制できる。
【0031】
このように、第3音響整合層12Cと支持部11Aと接続部11Bの音響インピーダンス及び熱伝導率を同一にすることで、超音波診断装置に要求される性能を満たしつつも、安全性を高めることができる。
【0032】
なお、接続部11Bの前後方向Yの厚みD3は、音響レンズ13の上下方向Zの平均厚さと音響レンズ13に接触する第3音響整合層12Cの上下方向Zの厚さの平均値以上とし、接続部11Bの厚み影響により、超音波プローブ100の前後方向の厚さに影響が出ない大きさ以下とすることが好ましい。このような構成とすることで、接続部11B及び支持部11Aによる放熱性能を十分に確保でき、超音波プローブ100の医療機器としての制約条件を満たすことができ、製造を容易に行うことができる。
【0033】
また、厚みD3は、第3音響整合層12Cの上下方向Zの厚みD2によりも大きいことが好ましい。このような関係となっていることで、第3音響整合層12Cから支持部11Aへの熱伝達を効率よく行うことができ、放熱性能をより高めることができる。
【0034】
また、支持部11Aの上下方向Zの厚みD1は、入射した超音波が厚みD1の2倍伝播した際に音響減衰量が40dB以上となる厚さ以上とすることが好ましい。このような構成とすることで、支持部11Aの超音波の吸収性を高めることができる。
【0035】
超音波プローブ100では、接続部11Bが、第1端面S1の全体と第2端面S2の全体に接触しているが、接続部11Bと音響整合部12との接触形態は様々なものを採用できる。例えば、接続部11Bは、第1端面S1及び第2端面S2のうち、第3音響整合層12Cの端面に接触し、第1音響整合層12A及び第2音響整合層12Bの端面には非接触となっていてもよい。
【0036】
また、超音波プローブ100では、第1端面S1とケース15の間と、第2端面S2とケース15の間とに接続部11Bが設けられる構成であるが、第1端面S1とケース15の間の接続部11Bを省略したり、第2端面S2とケース15の間の接続部11Bを省略したりしても、第3音響整合層12Cと支持部11Aと接続部11Bによる放熱性能は確保可能である。
【0037】
また、音響整合部12において、第1音響整合層12Aと第2音響整合層12Bの一方又は両方を、第3音響整合層12Cと同じ材料で構成してもよい。このようにした場合には、放熱性能をより高めることができる。
【0038】
図3は、超音波プローブ100の第一変形例を示す図であり、図2に対応する断面模式図である。図3に示す超音波プローブ100は、支持部11Aの振動子10側と反対側の端部(下端部)の形状が異なる点を除いては、図2と同じ構成である。
【0039】
この変形例では、支持部11Aの下端部の形状が、振動子10からこの下端部側に放射される超音波を散乱可能な形状となっている。具体的には、支持部11Aの下端面11aには、下方向Z2に突出する断面三角形状の凸部が前後方向Yに複数配列されている。凸部の断面形状は、三角形に限らず、三角形以上の多角形状となっていてもよい。
【0040】
図3に示す変形例によれば、振動子10から支持部11Aの下端部側に放射された超音波を、その下端部の形状によって、振動子10側に戻りにくくすることができる。このため、被検体へ超音波を効率よく入射させるべく、音響整合部12の第3音響整合層12Cの音響インピーダンスを低くする(すなわち、支持部11Aの音響インピーダンスを低くする)場合でも、超音波プローブ100によって取得できる画像の感度や解像度を高めることができる。
【0041】
図4は、超音波プローブ100の第二変形例を示す図であり、図2に対応する断面模式図である。図4に示す超音波プローブ100は、ケース15と機能部11との間に、音響レンズ13と一体的に形成された支持部が充填されて、音響レンズ13の一部が各ユニットUを保持している点と、ケース15と機能部11との間にある上記支持部には前後方向Yに貫通する貫通孔13Aが複数設けられ、この貫通孔13A内に音響レンズ13よりも熱伝導率の高い材料で構成された充填層11Dが設けられている点と、銅板17が追加された点を除いては、図2に示す構成と同じである。
【0042】
銅板17は、厚み方向が前後方向Yと一致しており、ケース15と音響レンズ13の一部で構成された支持部との間に設けられている。銅板17は、支持部11A及び接続部11Bの前後方向Yにおける端面に対向配置された放熱部材を構成する。銅板17は、銅以外の金属等で構成されていてもよい。
【0043】
充填層11Dは、例えば、支持部11A又は接続部11Bと同じ材料によって構成される。充填層11Dは、前後方向Yの一端面が銅板17と接触し、前後方向Yの他端面が支持部11A及び接続部11Bに接触している。
【0044】
図4に示す超音波プローブ100では、機能部11と熱伝導率の高い銅板17とが充填層11Dによって接続されているため、音響レンズ13と音響整合部12の境界付近で発生した熱を銅板17にも逃がすことができ、放熱性能をより高めることができる。
【0045】
充填層11Dは、前後方向Yに見て接続部11Bと重なる領域と、前後方向Yに見て支持部11Aと重なる領域とで、その設置数(或いは設置面積)を変えてもよい。つまり、接続部11Bと充填層11Dとの接触面積と、支持部11Aと充填層11Dとの接触面積とを異ならせてもよい。
【0046】
例えば、前後方向Yに見て接続部11Bと重なる領域には、前後方向Yに見て支持部11Aと重なる領域よりも多くの数の充填層11Dを設けることで、より効率的に放熱を行うことができる。なお、前後方向Yに見て支持部11Aと重なる領域と、前後方向Yに見て接続部11Bと重なる領域のいずれか一方には、充填層11Dを設けない構成としてもよい。
【0047】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。
【0048】
(1)
振動子と、
上記振動子が超音波を送受信する側の第1面とは反対側の第2面を支持する支持部と、
上記振動子に対して上記支持部側と反対側に配置された音響レンズと、
上記振動子と上記音響レンズの間に配置された音響整合部と、を備え、
上記音響整合部のうち、上記音響レンズから上記振動子に向かう第1方向における少なくとも一部の範囲を第1範囲とし、
上記第1範囲と上記支持部を接続する接続部を備え、
上記支持部と上記接続部と上記第1範囲は、熱伝導率及び音響インピーダンスが同一である、超音波プローブ。
【0049】
(1)によれば、音響整合部と音響レンズの境界付近で生じる熱を、音響整合部の第1範囲から接続部を経由して支持部へと逃がすことができる。これにより、音響レンズと接する被検体へ伝わる熱を減らすことができ、振動子の駆動方法の制約を減らすことができる。例えば、振動子の駆動電圧を高めることも可能となり、超音波プローブを用いて生成される超音波画像の画質や感度の向上を図ることができる。
【0050】
(2)
(1)に記載の超音波プローブであって、
上記第1範囲と上記接続部と上記支持部は、同一材料により構成される、超音波プローブ。
【0051】
(2)によれば、第1範囲と接続部と支持部を一体的に形成できるため、製造を容易に行うことができる。また、第1範囲と接続部と支持部の熱伝導率及び音響インピーダンスを容易に同じにすることができる。
【0052】
(3)
(1)又は(2)に記載の超音波プローブであって、
上記第1範囲は、上記音響レンズとの接触面を含む、超音波プローブ。
【0053】
(3)によれば、より多くの熱が生じ得る音響整合部と音響レンズとの接触面の熱を支持部へと逃がすことができるため、音響レンズと接する被検体へ伝わる熱を効果的に減らすことができる。
【0054】
(4)
(1)から(3)のいずれかに記載の超音波プローブであって、
上記振動子は、上記第1方向に交差する平面に沿った第2方向に複数配列されており、
上記平面に沿い且つ上記第2方向に交差する方向を第3方向とし、
上記第3方向における上記接続部の長さは、上記第1方向における上記第1範囲の長さよりも大きい、超音波プローブ。
【0055】
(4)によれば、音響整合部と音響レンズの境界付近で生じる熱を、より効率よく支持部へと逃がすことができる。
【0056】
(5)
(1)から(4)のいずれかに記載の超音波プローブであって、
上記接続部は、上記音響レンズと更に接触する、超音波プローブ。
【0057】
(5)によれば、音響整合部と音響レンズの境界付近で生じる熱を、より効率よく支持部へと逃がすことができる。
【0058】
(6)
(1)から(5)のいずれかに記載の超音波プローブであって、
上記音響整合部は、上記第1方向に積層された複数層により構成され、
上記第1範囲は、上記音響整合部における上記音響レンズに最も近い層である、超音波プローブ。
【0059】
(6)によれば、音響整合部と音響レンズの境界付近で生じる熱を、より効率よく支持部へと逃がすことができる。また、被検体と振動子との間で音響インピーダンスの整合を良好に行うことができ、超音波の送受信を効率よく行うことができる。
【0060】
(7)
(1)から(6)のいずれかに記載の超音波プローブであって、
上記振動子は、上記第1方向に交差する平面に沿った第2方向に複数配列されており、
上記平面に沿い且つ上記第2方向に交差する方向を第3方向とし、
上記支持部及び上記接続部の上記第3方向における端面に対向配置された放熱部材を備え、
上記支持部及び上記接続部の少なくとも一方は、上記放熱部材と接続されている、超音波プローブ。
【0061】
(7)によれば、音響整合部と音響レンズの境界付近で生じる熱を放熱部材にも逃がすことができる。このため、支持部、接続部、及び第1範囲の熱伝導率や音響インピーダンスの制約を緩和可能となり、製造を容易とすることができる。
【0062】
(8)
(1)から(7)のいずれかに記載の超音波プローブであって、
上記支持部は、上記振動子側と反対側の端部の形状が、上記振動子から上記端部側に放射される超音波を散乱可能な形状となっている、超音波プローブ。
【0063】
(8)によれば、振動子から支持部の端部側に放射された超音波を、その端部の形状によって、振動子側に戻りにくくすることができる。このため、被検体へ超音波を効率よく入射させるべく、音響整合部の第1範囲の音響インピーダンスを低くする場合でも、超音波プローブによって取得できる画像の感度や解像度を高めることができる。
【0064】
(9)
(1)から(8)のいずれかに記載の超音波プローブを備える超音波診断装置。
【符号の説明】
【0065】
S1 第1端面
S2 第2端面
10A 圧電体
10B 信号電極
10C グランド電極
10 振動子
11A 支持部
11B 接続部
11D 充填層
11a 下端面
11 機能部
12A 第1音響整合層
12B 第2音響整合層
12C 第3音響整合層
12 音響整合部
13A 貫通孔
13 音響レンズ
14 分離層
15 ケース
16 電極
17 銅板
100 超音波プローブ
図1
図2
図3
図4