(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046486
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】調理済み冷蔵パスタ
(51)【国際特許分類】
A23L 7/113 20160101AFI20240327BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20240327BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20240327BHJP
【FI】
A23L7/113
A23L7/109 E
A23L29/256
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151911
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】株式会社日清製粉ウェルナ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 竜介
(72)【発明者】
【氏名】菅野 明彦
【テーマコード(参考)】
4B041
4B046
【Fターム(参考)】
4B041LC03
4B041LD01
4B041LE08
4B041LH10
4B041LK17
4B041LK23
4B041LP25
4B046LA06
4B046LB09
4B046LC01
4B046LG18
4B046LG20
4B046LG60
4B046LP41
4B046LP51
4B046LP64
4B046LP71
4B046LP80
(57)【要約】
【課題】冷蔵保存中におけるパスタの品質低下が抑制された調理済み冷蔵パスタ食品を提供すること。
【解決手段】調理済みパスタ及び水ゲルが容器に収容されている調理済み冷蔵パスタであって、該調理済みパスタの水分量が55~60質量%であり、該水ゲルのゲル溶解温度が20~70℃であり、該調理済みパスタと該水ゲルとが部分的に接している、調理済み冷蔵パスタ。前記調理済みパスタは、グルテンバイタリティ25%以下の乾パスタを茹で調理したものであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理済みパスタ及び水ゲルが容器に収容されている調理済み冷蔵パスタであって、該調理済みパスタの水分量が55~60質量%であり、該水ゲルのゲル溶解温度が20~70℃であり、該調理済みパスタと該水ゲルとが部分的に接している、調理済み冷蔵パスタ。
【請求項2】
前記調理済みパスタが、グルテンバイタリティ25%以下の乾パスタを茹で調理したものである、請求項1に記載の調理済み冷蔵パスタ。
【請求項3】
前記水ゲルの水分量が90質量%以上である、請求項1又は2に記載の調理済み冷蔵パスタ。
【請求項4】
前記調理済みパスタと前記水ゲルとの含有質量比が、前者:後者として6:1~8:1である、請求項1~3のいずれか1項に記載の調理済み冷蔵パスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵状態で保存され、電子レンジ等で加熱した後、ソースをかける等して喫食する調理済み冷蔵パスタに関する。
【背景技術】
【0002】
スパゲティやマカロニのようなパスタは、麺類の中でも歯ごたえのある独特の食感を有していて、種々のソースとよくマッチして人気がある食品である。パスタは茹で調理した後、ソースと合わせて喫食されるが、一般的に茹で調理には沸騰した湯中で十数分の時間を要するため、一人分を調理する場合等にはエネルギー的に無駄が多い。近年は個食化の傾向が高く、このような無駄を低減させるため、予め調理済みのパスタをソースと共に容器詰めしたパスタ食品が市販されている。
【0003】
パスタをはじめとする麺類は調理後に時間が経過すると、いわゆる茹で伸びが発生して品質が低下する。特にパスタは、茹でた直後では、表面側は水分量が高く中心部側は水分量が低い、水分勾配が生じた状態になっていて、これが所謂、髪の毛1本分芯が残った、最上のアルデンテの状態とされている。しかし、調理後に時間が経過すると、水分勾配がなくなって全体に水分量が平均化してしまい、弾力が感じられにくい硬い食感になってしまう。また、調理済みのパスタをソースと接触した状態で保存する場合、ソースからパスタに余分な水分が移動してさらに弾力が低下する場合がある。
【0004】
調理済み冷蔵パスタ食品の品質向上に関し、特許文献1には、乾燥パスタを標準茹で時間の30~50%の茹で時間で茹でた半生パスタ麺と、通常よりも5~25質量%水分量の多い冷蔵パスタソースとを含む冷蔵パスタセットが記載されている。
特許文献2には、水分含量40~60%の半生パスタをマイクロ波加熱して調理する方法において、加熱時に食用固化剤により固化されている水を共存させることを特徴とする調理方法が記載されている。
特許文献3には、直火で調理するための食品として、アルミ箔製容器の底面に直接ゲル状の調味液を配置し、該ゲル状の調味液の上に直接麺類等の半調理食材を配置したことを特徴とする半調理食品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-197919号公報
【特許文献2】特開平10-295302号公報
【特許文献3】特開2010-81897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3に記載の改良技術は、いずれも調理済み麺類の品質向上を図ったものであるが、調理済み冷蔵パスタ食品の品質には未だ改良の余地があり、より品質の高い食品が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、冷蔵保存中におけるパスタの品質低下が抑制された調理済み冷蔵パスタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、調理済みパスタ及び水ゲルが容器に収容されている調理済み冷蔵パスタであって、該調理済みパスタの水分量が55~60質量%であり、該水ゲルのゲル溶解温度が20~70℃であり、該調理済みパスタと該水ゲルとが部分的に接している調理済み冷蔵パスタである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冷蔵保存中におけるパスタの品質低下が抑制され、良好な食感が維持された調理済み冷蔵パスタを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の調理済み冷蔵パスタは、調理済みパスタが、その表面の一部に水ゲルが付着した状態で容器に収容されて、保存のために冷蔵されているものである。該容器はこの種の調理済み食品を保存可能なものであれば特に限定されず、プラスチック製、金属製、陶器製の容器を例示することができる。本発明では冷蔵で保存される食品を扱うため、食品の品質を低下させたり保存性に影響を及ぼさない限り、密閉性や密封性は極限までの性能を確保しなくてもよい。容器のコストやバリエーションの多様性、また調理済み冷蔵パスタを見栄え良く保存する観点からは、プラスチック製容器を用いることが好ましい。
【0011】
本発明の調理済み冷蔵パスタに含まれている調理済みパスタは、パスタを茹で調理したものである。パスタの種類は、特に限定されず、ロングパスタ、ショートパスタ、シート状パスタ等の一般的に喫食されるパスタを用いることができる。ロングパスタの具体例としては、スパゲティ、リングイネ、フェットチーネ、ブカティーニ等が挙げられる。ショートパスタの具体例としては、マカロニ、ペンネ、リガトーニ、フジッリ、コンキリエ、ファルファッレ、ラビオリ、トルテッリ等が挙げられる。シート状パスタの具体例としては、ラザニア等が挙げられる。
【0012】
茹で調理に供するパスタは、生パスタであってもよく、乾パスタであってもよい。生パスタは、パスタ用生地からパスタ形状に成型したもので、成型後に乾燥処理を行っていないパスタであり、未調理状態での水分量は38~46質量%程度である。乾パスタは、生パスタを乾燥処理してなるものであり、未調理状態での水分量は10~14質量%程度である。生パスタは乾燥処理を行わないため、調理する前の状態で既に水分量が高い。そのため、生パスタを茹で調理して調理済みパスタを得る際に、水分量を本発明に係る特定範囲内(55~60質量%)にしようとすると、加熱が不十分になり喫食に適さなくなってしまう場合がある。そのため、本発明では、乾パスタを用いることが好ましく、特に水分量13質量%以下の乾パスタを用いることが好ましい。
【0013】
本発明の調理済み冷蔵パスタの食感を更に高める観点から、乾パスタとして、グルテンバイタリティ(GV)が25%以下であるものを用いることが好ましく、GVは、さらに好ましくは22%以下、より一層好ましくは20%以下である。GVは、低すぎるとパスタの食感が脆くなったりパスタの色が赤くなる等の影響が出る傾向にあるため、好ましくは18%以上である。尚、一般的な生パスタのGVは42~48%、乾パスタのGVは36~45%程度である。
【0014】
このような好ましいGVを有する乾パスタを得るためには、例えば、高温下で加熱処理する方法が挙げられ、具体的には、好ましくは60~85℃、より好ましくは75~85℃の温度で加熱処理を行うことが効率的である。加熱時間は、所望のGVが達成されるよう、加熱温度に応じて適宜決定すればよい。
【0015】
乾パスタのGVは、測定対象の乾パスタを粉砕して調製した粉砕物を試料として、以下の方法によって測定される。下記のGVの測定方法は、(i)粉砕物の可溶性粗蛋白質含有量の測定、(ii)粉砕物の全粗蛋白質含有量の測定、及び(iii)GVの算出、の順で行われる。尚、前記(i)及び(ii)それぞれにおける粗蛋白質含有量の測定法は、ケルダール法や燃焼法等の公知の方法を採用することができる。以下に測定方法として、ケルダール法を例にとり説明する。
【0016】
<グルテンバイタリティ(GV)の測定方法>
(i)粉砕物の可溶性粗蛋白質含有量の測定:
(a)100mL容量のビーカーに試料(粉砕物)を2g精秤して入れる。
(b)前記ビーカーに0.05規定酢酸40mLを加えて、室温で60分間攪拌して懸濁液を調製する。
(c)前記(b)で得た懸濁液を遠沈管に移して、5000rpmで5分間遠心分離を行った後、濾紙を用いて濾過し、濾液を回収する。
(d)前記ビーカーを0.05規定酢酸40mLで洗い、その洗液を遠沈管に移して、5000rpmで5分間遠心分離を行った後、濾紙を用いて濾過し、濾液を回収する。
(e)前記(c)及び(d)で回収した濾液を一緒にして100mLにメスアップする。
(f)ティケーター社(スウェーデン)のケルテックオートシステムのケルダールチューブに前記(e)で得られた液体の25mLをホールピペットで入れて、分解促進剤(日本ゼネラル株式会社製「ケルタブC」;硫酸カリウム:硫酸銅=9:1(質量比)1錠及び濃硫酸15mLを加える。
(g)前記ケルテックオートシステムに組み込まれているケルテック分解炉(DIGESTION SYSTEM 20 1015型)を用いて、ダイヤル4で1時間分解処理を行い、さらにダイヤル9又は10で1時間分解処理を自動的に行った後、この分解処理に続いて連続的に且つ自動的に、同じケルテックオートシステムに組み込まれているケルテック蒸留滴定システム(KJELTEC AUTO 1030型)を用いて、その分解処理を行った液体を蒸留及び滴定して(滴定には0.1規定硫酸を使用)、下記数式(A1)により、試料(粉砕物)中の可溶性粗蛋白質含有量を求める。
【0017】
可溶性粗蛋白質含有量(%)=0.14×(T1-B1)×F1×N1×(100/S1)×(1/25) ・・・(A1)
前記数式(A1)中、記号は以下の内容を示す。
T:滴定に要した0.1規定硫酸の量(mL)
B:ブランクの滴定に要した0.1規定硫酸の量(mL)
F:滴定に用いた0.1規定硫酸の力価(用時に測定するか又は力価の表示のある市販品を用いる)
N:窒素蛋白質換算係数(5.70)
S:試料(粉砕物)の秤取量(g)
【0018】
(ii)粉砕物の全粗蛋白質含有量の測定:
(a)前記(i)の測定で用いたものと同じティケーター社のケルテックオートシステムのケルダールチューブに、試料(粉砕物)を0.5g精秤して入れ、これに前記(i)の測定における前記(f)で用いたものと同じ分解促進剤1錠及び濃硫酸5mLを加える。
(b)前記(i)の測定で用いたケルテックオートシステムのケルテック分解炉を用いて、ダイヤル9又は10で1時間分解処理を行った後、この分解処理に続いて連続的に且つ自動的に、同じケルテックオートシステムに組み込まれている前記(i)で用いたものと同じケルテック蒸留滴定システムを用いて、前記で分解処理を行った液体を蒸留及び滴定して(滴定には0.1規定硫酸を使用)、下記数式(A2)により、試料(粉砕物)の全粗蛋白質含有量を求める。
【0019】
全粗蛋白質含有量(%)=(0.14×T×F×N)/S ・・・(A2)
前記数式(A2)中、記号は以下の内容を示す。
T:滴定に要した0.1規定硫酸の量(mL)
F:滴定に用いた0.1規定硫酸の力価(用時に測定)
N:窒素蛋白質換算係数(5.70)
S:試料(粉砕物)の秤取量(g)
【0020】
(iii)GVの算出:
前記(i)の測定で求めた試料(粉砕物)の可溶性粗蛋白質含有量、及び前記(ii)の測定で求めた試料(粉砕物)の全粗蛋白質含有量から、下記数式(A3)により、試料(粉砕物)のGVを求める。
GV(%)=(可溶性粗蛋白質含有量/全粗蛋白質含有量)×100 ・・・(A3)
【0021】
前記生パスタ又は乾パスタの茹で調理は、常法によって行うことができ、典型的には、大量の湯の中にパスタを投入して加熱調理する。本発明の調理済み冷蔵パスタに含まれている調理済みパスタは、水分量が55~60質量%、好ましくは56~59質量%、より好ましくは57~58質量%であり、このような水分量となるように茹で調理する。水分量が55質量%未満であると、調理済みパスタの食感が硬くなりすぎる場合がある。また水分量が60質量%を超えると、調理済みパスタの食感が柔らかくなりすぎる場合がある。
【0022】
本明細書において、調理済みパスタの水分量は、以下の<水分量の求め方>に従って求める。
<水分量の求め方>
先ず、測定サンプル(調理済みパスタ)の質量を測定する。次いで、絶乾法に準じて測定サンプルを80℃で12時間乾燥させた後、乾燥させた測定サンプルの質量を測定する。乾燥の前後の質量差を水分質量とし、乾燥前の測定サンプルの質量に対する水分質量を百分率で求め、その値を測定サンプルの水分量とする。
【0023】
本発明の調理済み冷蔵パスタに含まれる水ゲルは、ゲル溶解温度が20~70℃の水ゲルである。つまり、該水ゲルは、冷蔵温度から、その水ゲルのゲル溶解温度(従って、少なくとも20℃)の極近傍までの温度領域では、ゲル状で流動性がほとんどなく、加熱してその水ゲルのゲル溶解温度以上になって初めて流動性のあるゾル状態となる。従って、本発明の調理済み冷蔵パスタにおいて、水ゲルは冷蔵状態ではほぼ固形化しており、調理済みパスタと部分的に接したままの状態となっていて、水分の移動がほとんど起こらない。そして、調理済み冷蔵パスタを例えば電子レンジで加熱調理することで、品温がゲル溶解温度以上になると、水ゲルが流動化して調理済み冷蔵パスタのより多くの部分に付着し、調理済みパスタに水分が移行して、喫食に好ましい状態になる。
【0024】
水ゲルのゲル溶解温度は、パスタの良好な食感をより高いレベルで維持する観点からは、20~60℃であることが好ましい。また、調理済み冷蔵パスタを流通している間に水ゲルが溶解してしまうことを確実に防止する観点からは、ゲル溶解温度の下限については、25℃以上であることが好ましい。
【0025】
本発明において、ゲル溶解温度とは、水ゲルが加熱されてゾル状になる際の温度をいう。より詳細には、日本工業規格JIS K 6503:2001「にかわ及びゼラチン」における「5.8 融点」に記載される融点測定方法に準拠して測定される温度をいう。以下に測定方法の具体例を説明する。
<ゲル溶解温度の測定>
ガラス製の融点測定管に、加熱してゾル状態とした水ゲルを入れ、氷冷してゲル化させ、下端に気泡を含んだ水ゲルが充填された融点測定管を作成する。これを15℃の水を入れた恒温水槽にセットし、加温装置で恒温水槽内の水が1℃/1分で上昇するように加温する。水ゲルの気泡が上昇して融点測定管の標線に達したときの水温をゲル溶解温度とする。
【0026】
前記水ゲルは、水性液体にゲル化剤を配合し、必要に応じて加熱して、ゲル化剤を溶解させた後、ゲル溶解温度未満に冷却することにより、前述の範囲内のゲル溶解温度を有するゲルとしたものである。該水性液体は、典型的には清水である。清水は、パスタの風味に影響しにくい点で好ましい。水性液体としては、酸性水、アルカリ水、食塩水等、微量成分(酸性剤、アルカリ剤、食塩等)を含む水を使用してもよい。水に微量成分が含まれる場合、その量は少ない方が望ましく、具体的には水ゲル中での含有量が10質量%以下となることが望ましい。
【0027】
ゲル化剤としては、ローカストビーンガム、キサンタンガム、カラギーナン、寒天、タラガム、ジェランガム、LMペクチン、HMペクチン等の澱粉以外の多糖類や、ゼラチン、ヒアルロン酸等の蛋白質が挙げられる。これらの中でも、喫食時のパスタの口当たりが良くなる観点から、ゼラチンが好ましい。ゲル溶解温度が前述の範囲となる限りにおいて、上に挙げた各種ゲル化剤からなる群より選択されるいずれか1種を単独で又はいずれか2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
水ゲルにおけるゲル化剤の含有量(2種以上を用いる場合は合計含有量)は、水ゲルの全質量中、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは1~7質量%、さらに好ましくは2~4質量%である。ゲル化剤の含有量が多すぎると、パスタの喫食時にべたつく場合があり、少なすぎると、パスタの喫食時に水っぽくなる場合がある。
また、水ゲルにおける水分量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは92質量%以上、さらに好ましくは96質量%以上である。尚、水ゲルから水分を除いた残部は、上述のゲル化剤及び必要に応じて用いられる微量成分である。
【0029】
本発明の調理済み冷蔵パスタは、以上に説明した調理済みパスタと水ゲルとを、両者が部分的に接している状態で容器に収容することで製造することができる。調理済みパスタの表面に水ゲルを部分的に接するようにする方法は、特に限定されず、所望のパスタ食品の形態に合わせればよい。例えば、調理済みパスタ及び水ゲルをそれぞれ塊状に成型して、両者が容器内で互いに部分的に接するようにすればよい。より具体的には、塊状の調理済みパスタと塊状の水ゲルとを、容器内において水平方向に隣り合って接するように配置してもよいが、好ましくは、塊状の調理済みパスタの上に塊状の水ゲルを載置する。このようにすることで、調理済み冷蔵パスタを電子レンジ等で加熱したときに、ゾル化した水ゲルが調理済みパスタ全体に行きわたりやすくなる。より好ましくは、調理済みパスタを大きな塊状に成型して容器内に配置し、その上に、調理済みパスタの塊に対して相対的に小さな水ゲルの塊を部分的に載置する。
【0030】
さらに好ましい具体例においては、塊状の調理済みパスタの上方からの平面視での面積を100%としたとき、5~50%の面積を覆うように、調理済みパスタの上に水ゲルを載置する。その際、水ゲルは、1個の中型(調理済みパスタの塊より小さいサイズ)の塊状にしてもよく、あるいは、複数個(例えば2~8個)の小型の塊状にしてもよいが、ゾル化した水ゲルを調理済みパスタの全体に一層行きわたりやすくさせる観点から、後者がより好ましい。後者の場合、小型の水ゲルの塊1つ当たりの大きさは、使用する調理済みパスタの絶対量や後述の調理済みパスタとの質量比等にもよるが、例えば水ゲルの塊1つ当たり0.5~5.0gであると、取り扱いが容易であると共に、調理済みパスタ上での均等な分散配置が容易になる。また塊状の水ゲルは、その形状に特に制限はなく、例えば、直方体、立方体、板状、円盤状等であってよい。
【0031】
本発明の調理済み冷蔵パスタにおいて、前記調理済みパスタと前記水ゲルとの質量比は特に制限されるものではないが、本発明の効果を十分に得ることができ且つ水っぽくならない分量として、含有質量比(前者:後者)で6:1~8:1であることが好ましい。
【0032】
尚、調理済みパスタと水ゲルとを、両者が部分的に接した状態で容器に収容する際に、調理済みパスタが茹で調理してから間もない温かい状態だと、調理済みパスタに接した水ゲルが直ぐ溶解してしまう場合がある。そのため、調理済みパスタと水ゲルとを容器に収容するのは、調理済みパスタを冷ましてから、好ましくは冷蔵装置等で十分冷却してからにするとよい。
【0033】
本発明の調理済み冷蔵パスタは、調理済みパスタ及び水ゲルに加えて更に、他の食材を容器中に含んでいてもよい。他の食材としては、例えば具材が挙げられる。具材の種類は特に限定されず、所望の風味や食感に応じて、肉類、魚介類、野菜類(根菜類、葉菜類、キノコ類等)等を用いることができる。
【0034】
本発明の調理済み冷蔵パスタは、容器に収容して冷蔵される。容器は先に述べた通りであり、本発明の調理済み冷蔵パスタは容器ごと冷蔵される。冷蔵温度は0℃~15℃、好ましくは1℃~12℃であり、標準的な冷蔵装置を用いて冷蔵することができる。
【0035】
本発明の調理済み冷蔵パスタは、喫食の際には、冷蔵装置から取り出した後、典型的には、電子レンジで加熱し、パスタソースをかける等することにより調味して喫食する。電子レンジによる加熱は、パスタの量や電子レンジの出力等に応じて、一般的な食品の温め方に準じて行えばよい。このようにして加熱することにより、水ゲルが流動化して調理済み冷蔵パスタのより多くの部分に付着し、調理済みパスタに水分が移行して、喫食に好ましい状態になる。
【0036】
喫食の際の調味方法は、特に限定されず、例えば、本発明の調理済み冷蔵パスタとは別に用意したパスタソースをかけたり絡めたりしてもよいし、あるいは、本発明の調理済み冷蔵パスタの容器中に、仕切り等を用いて調理済みパスタとは接しない状態でソースも含めておいてもよい。
【実施例0037】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例における「%」は、特に断らない場合、質量基準である。
【0038】
〔実施例1~5、比較例1~2〕
市販の乾燥スパゲティ(ロングパスタ)を用いて、以下の手順で調理済み冷蔵パスタを製造した。
所定量の乾燥スパゲティを、適宜茹で時間を調整しながら茹でて、表1に記載の水分量の調理済みスパゲティを得た。調理済みスパゲティの水分量の測定は、前述の<水分量の求め方>に従って行った。また、乾燥スパゲティのGVを、前述の<グルテンバイタリティ(GV)の測定方法>に従って測定した。それらの結果を表1に示す。
これとは別に、表1に記載の水ゲル配合に従いゲル化剤と清水とを合わせ、加熱しながらよく撹拌してゲル化剤を溶解させ、その後、10℃に冷却して水ゲルを調製した。得られた水ゲルのゲル溶解温度を、前述の<ゲル溶解温度の測定>に従って測定した。その結果を表1に示す。尚、用いたゲル化剤は以下の通りである。
・ゼラチン(ゲル溶解温度=28℃:新田ゼラチン製APH-200)
・カラギーナン(ゲル溶解温度=60℃:三栄源エフ・エフ・アイ製 カラギニン)
・寒天(ゲル溶解温度=75℃:伊那食品工業製 伊那寒天UP-26)
【0039】
次に、市販の耐熱性のポリプロピレン製容器に、前記調理済みスパゲティ210gをひと塊になるよう充填し、容器に蓋をして冷蔵庫で冷却した。これとは別に、前記で調製した水ゲルを1個5gの略直方体状に複数個切出した。冷蔵庫から容器入りスパゲティを取り出し、調理済みスパゲティの塊の上に、6個(合計30g)の略直方体状の水ゲルを、スパゲティ上にできるだけ均等に分散配置するように個別に離しながら載置し、再度容器に蓋をして調理済みスパゲティとした。このとき、調理済みスパゲティの塊の上方からの平面視での面積を100%とすると、40%の面積が水ゲルで覆われていた。これを冷蔵庫に入れて5℃に冷蔵し、調理済み冷蔵パスタ(調理済み冷蔵スパゲティ)を得た。
【0040】
〔試験例1〕
各実施例及び比較例の調理済み冷蔵パスタを5℃で24時間保管した後、冷蔵庫から取り出し、電子レンジを用いて600Wで2分間加熱した。得られたスパゲティを10名の専門パネラーに食してもらい、下記の評価基準に従ってその食感を評価してもらった。その結果を10名の平均値として表1に示す。
【0041】
<スパゲティ食感の評価基準>
5点:弾力と歯ごたえがあり、茹でたてのスパゲティと遜色なく、非常に良好。
4点:弾力と歯ごたえがあり、茹でたてのスパゲティには劣るが、良好。
3点:わずかに硬すぎる感じがあるものの、許容範囲。
2点:やや硬すぎていて弾力を感じにくく、不良。
1点:硬すぎて弾力が感じられず、非常に不良。
【0042】
【0043】
〔実施例6~9及び比較例3~4〕
乾燥スパゲティの茹で時間を調節して、調理済みスパゲッティの水分量を表2に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様に調理済み冷蔵パスタを製造し、試験例1と同様に評価した。それらの結果を表2に示す。尚、表2には、実施例1の結果を再掲する。
【0044】
【0045】
〔実施例10~13〕
乾燥スパゲティを、80℃の恒温槽に入れて加熱処理を行い、表3に記載のGVとしてから茹で調理した以外は、実施例1と同様に調理済み冷蔵パスタを製造し、試験例1と同様に評価した。それらの結果を表3に示す。尚、表3には、実施例1の結果を再掲する。
【0046】
【0047】
〔実施例14~17〕
容器に充填する調理済みスパゲッティの量を変更することにより、調理済みパスタと水ゲルとの質量比を表4に記載の通り変えた以外は、実施例1と同様に調理済み冷蔵パスタを製造し(但し、実施例14~17においては、調理済みスパゲティの塊の上方からの平面視での面積を100%とすると、実施例1と同じく40%の面積が水ゲルで覆われるようにするため、容器に調理済みパスタをひと塊にして充填する際に塊の厚みを微調整した)、試験例1と同様に評価した。それらの結果を表4に示す。尚、表4には、実施例1の結果を再掲する。
【0048】