(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046508
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/318 20060101AFI20240327BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240327BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H01L21/318 M
H01L21/31 B
C23C16/455
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151942
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 孝暁
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA02
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA18
4K030BA40
4K030BA44
4K030EA04
4K030KA04
4K030KA41
5F045AA06
5F045AB31
5F045AB33
5F045AC03
5F045AC05
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5F045AC16
5F045AC17
5F045AD08
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5F045AD10
5F045AD11
5F045AE17
5F045AE19
5F045AE21
5F045BB02
5F045DC51
5F045DP19
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5F045DQ05
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5F045GB05
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5F058BD01
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5F058BD12
5F058BF04
5F058BF24
5F058BF27
5F058BF30
5F058BF37
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基板上に所望の厚さの膜を形成する基板処理方法、装置及びプログラム並びに半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】基板処理方法は、基板に対して所定元素を含む原料ガスを供給し、所定元素を含む第1層を形成する工程と、第1層と反応する反応ガスを供給し、第2層に改質する工程と、を含むサイクルを第1の条件下において第1の所定回数行い、基板上に所定元素を含む第1膜を形成する工程と、基板に対して原料ガスを供給し、所定元素を含む第3層を形成する工程と、反応ガスを供給し、第4層に改質する工程と、を含むサイクルを、第1の条件とは異なる第2の条件下において第2の所定回数行い、基板上に所定元素を含む第2膜を形成する工程と、を行うことにより、第1膜及び第2膜で構成される所定元素を含む膜を形成する。第1の条件及び第2の条件は、形成される第2層の厚さよりも、改質される第4層の厚さが薄くなる条件である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(a-1)基板に対して所定元素を含む原料ガスを供給することにより、前記基板上に前記所定元素を含む第1層を形成する工程と、
(a-2)前記第1層が形成された前記基板に対して前記第1層と反応する反応ガスを供給することにより、前記第1層を前記所定元素を含む第2層に改質する工程と、
を含むサイクルを第1の条件下において第1の所定回数行うことにより、前記基板上に前記所定元素を含む第1膜を形成する工程と、
(b)(b-1)前記基板に対して前記原料ガスを供給することにより、前記基板上に前記所定元素を含む第3層を形成する工程と、
(b-2)前記第3層が形成された前記基板に対して前記反応ガスを供給することにより、前記第3層を前記所定元素を含む第4層に改質する工程と、
を含むサイクルを、前記第1の条件とは異なる第2の条件下において第2の所定回数行うことにより、前記基板上に前記所定元素を含む第2膜を形成する工程と、
を行うことにより、前記第1膜及び前記第2膜で構成される前記所定元素を含む膜を形成し、
前記第1の条件および前記第2の条件は、(a-2)において形成される前記第2層の厚さよりも、(b-2)において形成される前記第4層の厚さが薄くなる条件である、
基板処理方法。
【請求項2】
前記第1膜と前記第2膜は同一の組成を有している、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
(a)および(b)は、同一処理温度下において行う、請求項1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記第1の条件は、(a-1)において前記基板に対して前記原料ガスを供給する条件であり、
前記第2の条件は、(b-1)において前記基板に対して前記原料ガスを供給する条件であり、
前記第2の条件は、前記第1層の厚さよりも前記第3層の厚さが薄くなる条件である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第2の条件としての(b-1)における前記原料ガスの供給流量は、前記第1の条件としての(a-1)における前記原料ガスの供給流量よりも少ない、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第2の条件としての(b-1)における1サイクル当たりの前記原料ガスの供給時間は、前記第1の条件としての(a-1)における1サイクル当たりの前記原料ガスの供給時間よりも短い、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記第2の条件としての(b-1)における前記原料ガスの供給濃度は、前記第1の条件としての(a-1)における前記原料ガスの供給濃度よりも薄い、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項8】
(a-1)および(b-1)では、それぞれ前記原料ガスの供給期間の少なくとも一部の期間の間、前記基板に対して不活性ガスを供給し、前記第2の条件としての(b-1)における前記不活性ガスの供給流量は、前記第1の条件としての(a-1)における前記不活性ガスの供給流量よりも多い、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項9】
(a-1)および(b-1)では、それぞれ前記原料ガスの供給期間の少なくとも一部の期間の間、前記基板に対して不活性ガスを供給し、前記第2の条件としての(b-1)における前記原料ガスの供給流量に対する前記不活性ガスの供給流量の比率は、前記第1の条件としての(a-1)における前記原料ガスの供給流量に対する前記不活性ガスの供給流量の比率よりも大きい、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記不活性ガスは、前記原料ガスとは異なる供給口から前記基板に対して供給される、請求項8又は9に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記不活性ガスは、前記原料ガスと混合された後に前記基板に対して供給される、請求項8又は9に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記原料ガスと前記不活性ガスの供給ライン上にはタンク及びその下流側に設けられたバルブが設けられ、(a-1)および(b-1)ではそれぞれ、前記バルブを閉じることにより前記原料ガス及び前記不活性ガスを前記タンクに貯留し、前記バルブを開けることにより前記貯留された前記原料ガス及び前記不活性ガスを前記基板に対して供給する、請求項8又は9に記載の基板処理方法。
【請求項13】
(b-1)における前記不活性ガスに対する前記原料ガスの流量比を、(a-1)における前記不活性ガスに対する前記原料ガスの流量比よりも少なくすることにより、(b-1)において形成される前記第3層の厚さを(a-1)において形成される前記第1層の厚さよりも薄くする、請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
(b)において形成される前記第2膜の厚さは、(a)において形成される前記第1膜の厚さよりも薄い、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記第1の所定回数は、前記第2の所定回数よりも多い、請求項1又は14に記載の基板処理方法。
【請求項16】
(b)は(a)の後に行い、前記第2膜は前記第1膜上に形成される、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項17】
(a-2)において1サイクル当たりに形成される前記第2層の厚さのn倍(nは任意の自然数)と目標膜厚とがとり得る差の最小値よりも、前記目標膜厚と前記第1膜及び前記第2膜で構成される前記所定元素を含む膜の厚さとの差が小さくなるように、前記第1の所定回数及び前記第2の所定回数が設定される、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項18】
(a)(a-1)基板に対して所定元素を含む原料ガスを供給することにより、前記基板上に前記所定元素を含む第1層を形成する工程と、
(a-2)前記第1層が形成された前記基板に対して前記第1層と反応する反応ガスを供給することにより、前記第1層を前記所定元素を含む第2層に改質する工程と、
を含むサイクルを第1の条件下において第1の所定回数行うことにより、前記基板上に前記所定元素を含む第1膜を形成する工程と、
(b)(b-1)前記基板に対して前記原料ガスを供給することにより、前記基板上に前記所定元素を含む第3層を形成する工程と、
(b-2)前記第3層が形成された前記基板に対して前記反応ガスを供給することにより、前記第3層を前記所定元素を含む第4層に改質する工程と、
を含むサイクルを、前記第1の条件とは異なる第2の条件下において第2の所定回数行うことにより、前記基板上に前記所定元素を含む第2膜を形成する工程と、
を行うことにより、前記第1膜及び前記第2膜で構成される前記所定元素を含む膜を形成し、
前記第1の条件および前記第2の条件は、(a-2)において形成される前記第2層の厚さよりも、(b-2)において形成される前記第4層の厚さが薄くなる条件である、
半導体装置の製造方法。
【請求項19】
(a)(a-1)基板処理装置の処理室内に収容された基板に対して所定元素を含む原料ガスを供給することにより、前記基板上に前記所定元素を含む第1層を形成する手順と、
(a-2)前記第1層が形成された前記基板に対して前記第1層と反応する反応ガスを供給することにより、前記第1層を前記所定元素を含む第2層に改質する手順と、
を含むサイクルを第1の条件下において第1の所定回数実行させることにより、前記基板上に前記所定元素を含む第1膜を形成する手順と、
(b)(b-1)前記基板に対して前記原料ガスを供給することにより、前記基板上に前記所定元素を含む第3層を形成する手順と、
(b-2)前記第3層が形成された前記基板に対して前記反応ガスを供給することにより、前記第3層を前記所定元素を含む第4層に改質する手順と、
を含むサイクルを、前記第1の条件とは異なる第2の条件下において第2の所定回数実行させることにより、前記基板上に前記所定元素を含む第2膜を形成する手順と、
を行うことにより、前記第1膜及び前記第2膜で構成される前記所定元素を含む膜を形成し、
前記第1の条件および前記第2の条件は、(a-2)において形成される前記第2層の厚さよりも、(b-2)において形成される前記第4層の厚さが薄くなる条件である手順を、
コンピュータにより前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項20】
処理室内に所定元素を含む原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記処理室内に反応ガスを供給する反応ガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
(a)(a-1)前記処理室内に収容された基板に対して前記原料ガスを供給することにより、前記基板上に前記所定元素を含む第1層を形成する処理と、
(a-2)前記第1層が形成された前記基板に対して前記反応ガスを供給することにより、前記第1層を前記所定元素を含む第2層に改質する処理と、
を含むサイクルを第1の条件下において第1の所定回数行うことにより、前記基板上に前記所定元素を含む第1膜を形成する処理と、
(b)(b-1)前記基板に対して前記原料ガスを供給することにより、前記基板上に前記所定元素を含む第3層を形成する処理と、
(b-2)前記第3層が形成された前記基板に対して前記反応ガスを供給することにより、前記第3層を前記所定元素を含む第4層に改質する処理と、
を含むサイクルを、前記第1の条件とは異なる第2の条件下において第2の所定回数行うことにより、前記基板上に前記所定元素を含む第2膜を形成する処理と、
を行うことにより、前記第1膜及び前記第2膜で構成される前記所定元素を含む膜を形成し、
前記第1の条件および前記第2の条件は、(a-2)において形成される前記第2層の厚さよりも、(b-2)において形成される前記第4層の厚さが薄くなる条件である処理を行うように、前記原料ガス供給系、前記反応ガス供給系、および前記排気系を制御することが可能なように構成された制御部と、
有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板に対して、原料ガスを供給する工程と、窒素含有ガスを供給する工程と、を含むサイクルを行って、基板の表面に窒化膜を形成する処理が行われることがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板上に膜を形成する際に、所望の膜厚に対する精度が求められる場合がある。
【0005】
本開示は、基板上に所望の厚さの膜を形成することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
(a)(a-1)基板に対して所定元素を含む原料ガスを供給することにより、前記基板上に前記所定元素を含む第1層を形成する工程と、
(a-2)前記第1層が形成された前記基板に対して前記第1層と反応する反応ガスを供給することにより、前記第1層を前記所定元素を含む第2層に改質する工程と、
を含むサイクルを第1の条件下において第1の所定回数行うことにより、前記基板上に前記所定元素を含む第1膜を形成する工程と、
(b)(b-1)前記基板に対して前記原料ガスを供給することにより、前記基板上に前記所定元素を含む第3層を形成する工程と、
(b-2)前記第3層が形成された前記基板に対して前記反応ガスを供給することにより、前記第3層を前記所定元素を含む第4層に改質する工程と、
を含むサイクルを、前記第1の条件とは異なる第2の条件下において第2の所定回数行うことにより、前記基板上に前記所定元素を含む第2膜を形成する工程と、
を行うことにより、前記第1膜及び前記第2膜で構成される前記所定元素を含む膜を形成し、
前記第1の条件および前記第2の条件は、(a-2)において形成される前記第2層の厚さよりも、(b-2)において形成される前記第4層の厚さが薄くなる条件である、
技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板上に所望の厚さの膜を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を
図1のA-A線断面図で示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の一態様の基板処理工程におけるフローチャートを示す図である。
【
図5】
図5(A)は、本開示の一態様の基板処理工程により形成される膜を示す図である。
図5(B)及び
図5(C)は、本開示の一態様の基板処理工程の比較例により形成される膜を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の他の態様における基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、
図1~
図5を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱系(温度調整部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0012】
処理室201内には、ノズル249a,249bが、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a,249bには、ガス供給管(配管)232a,232bが、それぞれ接続されている。
【0013】
ガス供給管232a,232bには、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a,232bのバルブ243a,243bよりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管232c,232dがそれぞれ接続されている。ガス供給管232c,232dには、上流側から順に、MFC241c,241dおよびバルブ243c,243dがそれぞれ設けられている。
【0014】
ノズル249a,249bは、
図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給する供給口であるガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0015】
ガス供給管232aからは、所定元素を含む原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0016】
ガス供給管232bからは、原料ガスと反応する反応ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0017】
ガス供給管232c,232dからは、不活性ガスが、それぞれMFC241c,241d、バルブ243c,243d、ガス供給管232a及びガス供給管232b、ノズル249a及びノズル249bを介して処理室201内へ供給される。ガス供給管232c,232dから供給される不活性ガスは、原料ガスと同時に供給される際には、原料ガスを希釈する希釈ガスとして用いられる。
【0018】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、原料ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、反応ガス供給系が構成される。原料ガス供給系、反応ガス供給系を合わせてガス供給系と称することもできる。また、主に、ガス供給管232c,232d、MFC241c,241d、バルブ243c,243dにより、不活性ガス供給系が構成される。不活性ガス供給系をガス供給系に含めてもよい。
【0019】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a~243dやMFC241a~241d等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232dのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232d内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a~243dの開閉動作やMFC241a~241dによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232d等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0020】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができる。更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めてもよい。
【0021】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0022】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0023】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263はL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0024】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0025】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する成膜処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に記録され、格納されている。プロセスレシピは、後述する成膜処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0026】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241d、バルブ243a~243d、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0027】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241dによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243dの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0028】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)123に記録され、格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0029】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置(例えばIC等)の製造方法における基板処理の一工程として、ウエハ200上に所定元素を含む膜を形成するシーケンス例について、
図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0030】
本明細書において用いる「ウエハ」という用語は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面上に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において用いる「ウエハの表面」という言葉は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0031】
(ウエハ搬入ステップ)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0032】
(圧力・温度調整ステップ)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内のウエハ200が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。また、回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217およびウエハ200の回転は、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0033】
(第1膜形成工程:高速成膜処理)
先ず、以下のステップS11~S14を順次実行する。
【0034】
[ステップS11]
このステップでは、処理室201内のウエハ200に対して、第1の条件である高速成膜条件下で原料ガスを供給して排気する。具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内に原料ガスを流す。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ243cを開き、ガス供給管232c内へ不活性ガスを流す。不活性ガスは、MFC241cにより流量調整され、原料ガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。また、ノズル249b内への原料ガスの侵入を防止するため、および/または処理室201内に供給された原料ガスを希釈するため、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へ不活性ガスを流す。不活性ガスは、ガス供給管232d、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0035】
ガス供給管232cから供給される不活性ガスは、ガス供給管232aで原料ガスと混合されて原料ガスを希釈した後にノズル249aのガス供給孔250aからウエハ200に対して供給される。また、ガス供給管232dから供給される不活性ガスは、原料ガス供給とは異なる供給口である、ノズル249bのガス供給孔250bからウエハ200に対して供給される。ガス供給管232c,232dから供給される不活性ガスにより、原料ガスを希釈すると共に、ウエハ200の表面上における原料ガスの供給量分布を調整することができる。
【0036】
本ステップでは、不活性ガスは、ガス供給管232cとガス供給管232dの少なくともいずれか一方から不活性ガスを供給するようにしてもよい。また、原料ガスの供給期間の少なくとも一部の期間の間に、ウエハ200に対してガス供給管232cとガス供給管232dの少なくともいずれか一方から不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0037】
本ステップにて原料ガスを供給する際における処理条件としては、
処理温度:400~750℃、好ましくは500~650℃
処理圧力:5~4000Pa、好ましくは10~1333Pa
原料ガス供給流量:1~2000sccm、好ましくは50~500sccm
不活性ガス供給流量(総流量):1~10000sccm、好ましくは100~5000sccm
処理時間:0.1~240秒、好ましくは1~120秒
が例示される。
【0038】
なお、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、処理時間とは、その処理を継続する時間を意味する。これらは、以下の説明においても同様である。また、本明細書における「400~750℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「400~750℃」とは「400℃以上750℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0039】
高速成膜条件下でウエハ200に対して所定元素を含む原料ガスを供給することにより、ウエハ200上に所定元素を含む第1層400aを形成する。
【0040】
原料ガスとして、例えばシリコン(Si)を含む原料ガス(Si含有ガス)を用いることができる。Siを含む原料ガスとして、例えばジクロロシラン(SiH2Cl2)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3)、テトラクロロシラン(SiCl4)、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)等のクロロシラン系ガスや、テトラフルオロシラン(SiF4)ガス等のフルオロシラン系ガスや、ジシラン(Si2H6)等の無機シラン系ガスや、トリスジメチルアミノシラン(Si[N(CH3)2]3H)等のアミノシラン系ガス等を用いることができる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0041】
不活性ガスとして、例えば窒素(N2)ガスや、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、キセノン(Xe)等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0042】
[ステップS12]
ステップS11が終了した後、処理室201内の残留ガスを除去する。
【0043】
具体的には、ステップS11により第1層400aが形成された後、バルブ243aを閉じ、原料ガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第1層400aの形成に寄与した後の原料ガスや副生成物を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243c,243dは開いたままとして、不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。不活性ガスはパージガスとして作用する。
【0044】
[ステップS13]
ステップS12が終了した後、処理室201内のウエハ200に対して反応ガスを供給する。具体的には、バルブ243aを閉じた状態でバルブ243bを開き、ガス供給管232b内に反応ガスを流す。バルブ243c,243dの開閉制御は、ステップS11におけるそれらと同様に制御する。反応ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対して反応ガスが供給される。不活性ガスは、MFC241dにより流量調整され、反応ガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。また、ノズル249a内への反応ガスの侵入を防止するため、および/または処理室201内に供給された反応ガスを希釈するため、バルブ243cを開き、ガス供給管232c内へ不活性ガスを流す。不活性ガスは、ガス供給管232c、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0045】
本ステップにて反応ガスを供給する際における処理条件としては、
反応ガス供給流量:100~30000sccm、好ましくは500~10000sccm
不活性ガス供給流量(総流量):1~10000sccm、好ましくは100~5000sccm
処理時間:1~240秒、好ましくは1~120秒
が例示される。
その他の条件は、ステップS11と同様とすることが好ましい。
【0046】
第1層400aが形成されたウエハ200に対して第1層400aと反応する反応ガスを供給することにより、第1層400aの少なくとも一部と反応して、第1層400aを、所定元素を含む第2層400bに改質する。
【0047】
反応ガスとして、例えば窒素(N)を含むN含有ガスを用いることができる。本ステップでは、N含有ガスは窒化ガスとして作用し、第1層400aを、所定元素を含む窒化層としての第2層400bに改質(窒化)する。N含有ガスとして、例えばアンモニア(NH3)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等の窒化水素系のガス等を用いることができる。反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0048】
[ステップS14]
ステップS13が終了した後、処理室201内の残留ガスを除去する。具体的には、第2層400bが形成された後、バルブ243bを閉じ、反応ガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第2層400bの形成に寄与した後の反応ガスや副生成物を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243c,243dは開いたままとして、不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。不活性ガスはパージガスとして作用する。
【0049】
[所定回数実施]
上述したステップS11~S14を1サイクルとし、このサイクルを第1の所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200上に、所定元素を含む第1膜400を形成する。第1膜400として、例えばシリコン窒化膜(SiN膜)を形成することができる。
【0050】
(第2膜形成工程:低速成膜処理)
次に、上述したステップS11~14と同一処理温度下において、以下のステップS21~S24を順次実行する。
【0051】
ここで、同一の処理温度とは、実質的に同一の処理温度を含む。例えば、同一の処理温度となるようにヒータ207を制御する場合において生じ得る処理温度の変動や揺らぎは、実質的に同一の処理温度の範囲内に含めることができる。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味する。これは、以下の説明においても同様である。
【0052】
[ステップS21]
このステップでは、処理室201内のウエハ200に対して、第2の条件である低速成膜条件下で、上述したステップS11における原料ガスと同じ原料ガスを供給して排気する。
【0053】
具体的には、上述したステップS11におけるそれらと同様に、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内に原料ガスを流す。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ243cを開き、ガス供給管232c内へ不活性ガスを流す。不活性ガスは、MFC241cにより流量調整され、原料ガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。また、ノズル249a内への反応ガスの侵入を防止するため、および/または処理室201内に供給された原料ガスを希釈するため、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へ不活性ガスを流す。不活性ガスは、ガス供給管232d、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0054】
ガス供給管232cから供給される不活性ガスは、ガス供給管232aで原料ガスと混合されて原料ガスを希釈した後にノズル249aのガス供給孔250aからウエハ200に対して供給される。また、ガス供給管232dから供給される不活性ガスは、原料ガスとは異なるノズル249bのガス供給孔250bからウエハ200に対して供給される。ガス供給管232c,232dから供給される不活性ガスにより、原料ガスを希釈すると共に、ウエハ200の表面上における原料ガスの供給量分布を調整することができる。
【0055】
なお、不活性ガスは、ガス供給管232cとガス供給管232dの少なくともいずれか一方から不活性ガスを供給するようにしてもよい。また、原料ガスの供給期間の少なくとも一部の期間の間に、ウエハ200に対してガス供給管232cとガス供給管232dの少なくともいずれか一方から不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0056】
本ステップにて原料ガスを供給する際における処理条件としては、
原料ガス供給流量:1~1000sccm、好ましくは25~250sccm
不活性ガス供給流量(総流量):1~20000sccm、好ましくは200~10000sccm
処理時間:0.1~120秒、好ましくは1~60秒
が例示される。
その他の条件は、ステップS11と同様とすることが好ましい。
【0057】
表面に第1膜400が形成されたウエハ200に対して、低速成膜条件下で原料ガスを供給することにより、第1膜400の上に、第1膜に含まれる所定元素と同じ所定元素を含む第3層500aを形成する。
【0058】
ここで、低速成膜条件は、高速成膜条件による上述したステップS11において形成される第1層400aの厚さよりも、本ステップにおいて形成される第3層500aの厚さが薄くなる条件である。また、低速成膜条件は、高速成膜条件による上述したステップS13において形成される第2層400bの厚さよりも、後述するステップS23において形成される第4層500bの厚さが薄くなる条件でもある。言い換えれば、低速成膜条件は、上述した高速成膜条件時よりもサイクルレートが小さくなる条件である。サイクルレートとは、1サイクル当たりに形成される膜(または層)の厚さをいう。
【0059】
具体的には、本ステップにおける原料ガスの供給流量を、上述したステップS11における原料ガスの供給流量よりも少なくする。例えば本ステップにおける原料ガスの供給流量を、上述したステップS11における原料ガスの供給流量の50%程度にする。
【0060】
また、本ステップにおける1サイクル当たりの原料ガスの供給時間を、上述したステップS11における1サイクル当たりの原料ガスの供給時間よりも短くしてもよい。例えば本ステップにおける1サイクル当たりの原料ガスの供給時間を、上述したステップS11における1サイクル当たりの原料ガスの供給時間の半分程度にする。
【0061】
また、本ステップにおける原料ガスの供給濃度を、上述したステップS11における原料ガスの供給濃度よりも薄くしてもよい。例えば、本ステップにおける不活性ガスの供給流量を、上述したステップS11における不活性ガスの供給流量よりも多くする。これにより、ステップS11における原料ガス供給時よりも本ステップにおける原料ガスの希釈量を多くして、原料ガスの供給濃度を薄くする。例えば本ステップにおける不活性ガスの供給流量を、上述したステップS11における不活性ガスの供給流量の倍にする。また、本ステップにおける原料ガスの供給流量に対する不活性ガスの供給流量の比率を、上述したステップS11における原料ガスの供給流量に対する不活性ガスの供給流量の比率よりも大きくして、原料ガスの供給濃度を薄くする。例えば本ステップにおける原料ガスの供給流量に対する不活性ガスの供給流量の比率を、上述したステップS11における原料ガスの供給流量に対する不活性ガスの供給流量の比率の倍程度にする。この場合、ステップS11においてウエハ200に供給される原料ガスと不活性ガスの合計流量と、ステップS21においてウエハ200に供給される原料ガスと不活性ガスの合計流量とを同じにすることが好ましい。合計流量を同じにすることにより、処理室201内の圧力等の条件を変化させることなく、ウエハ200に対する原料ガスの曝露量を調整することができる。同様に、本ステップにおけるウエハ200の存在する空間内における原料ガスの分圧(例えば処理室201内の原料ガスの分圧)を、上述したステップS11における原料ガスの分圧よりも低くしてもよい。
【0062】
すなわち、上述したステップS11と本ステップにおける、原料ガスの供給流量、原料ガスの供給時間及び不活性ガスの供給流量の少なくともいずれか一つを制御することにより、原料ガスの曝露量が調整され、本ステップにおいて形成される第3層500aの厚さを、上述したステップS11において形成される第1層400aの厚さよりも薄くすることができる。つまり、本ステップにおけるサイクルレートを、上述したステップS11におけるサイクルレートと比べて小さくすることができる。
【0063】
また、本ステップを、上述したステップS11における処理温度と実質的に同一処理温度下において、原料ガスの供給量、供給時間又は供給濃度(分圧)を調整することにより、膜質変化をさせない、若しくは膜質変化を最小限にしてサイクルレートを制御することができる。
【0064】
すなわち、原料ガス供給によって形成される所定元素を含む層の厚さを調整するように本ステップにおける低速成膜条件及び上述したS11における高速成膜条件を設定する。
【0065】
[ステップS22]
ステップS21が終了した後、処理室201内の残留ガスを除去する。具体的には、第3層500aが形成された後、バルブ243aを閉じ、原料ガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第3層500aの形成に寄与した後の原料ガスや副生成物を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243c,243dは開いたままとして、不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。不活性ガスはパージガスとして作用する。
【0066】
[ステップS23]
ステップS22が終了した後、処理室201内のウエハ200に対して上述したステップS13と同じガスを、ステップS13と同様の条件および手順で流す。具体的には、バルブ243aを閉じた状態でバルブ243bを開き、ガス供給管232b内に反応ガスを流す。バルブ243c,243dの開閉制御は、ステップS13におけるそれらと同様に制御する。反応ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対して反応ガスが供給される。不活性ガスは、MFC241dにより流量調整され、反応ガスと一緒に処理室201内へ供給され、排気管231から排気される。
【0067】
第3層500aが形成されたウエハ200に対して反応ガスを供給することにより、第3層500aの少なくとも一部を所定元素を含む第4層500bに改質する。例えば反応ガスとしてN含有ガスを用いることで、第1層400aを、所定元素を含む窒化層としての第4層500bに改質(窒化)する。
【0068】
[ステップS24]
ステップS23が終了した後、処理室201内の残留ガスを除去する。具体的には、第4層500bが形成された後、バルブ243bを閉じ、反応ガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは第4層500bの形成に寄与した後の反応ガスや副生成物を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243c,243dは開いたままとして、不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。不活性ガスはパージガスとして作用する。
【0069】
[所定回数実施]
上述したステップS21~S24を1サイクルとし、このサイクルを第2の所定回数(m回、mは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200の第1膜400上に所定元素を含む第2膜500を形成する。
【0070】
つまり、上述したステップS11~S14を1サイクルとし、このサイクルを第1の所定回数行う工程と、上述したステップS21~S24を1サイクルとし、このサイクルを第2の所定回数行う工程と、を行うことにより、第1膜400及び第2膜500で構成される所定元素を含む膜を形成する。第1膜400と第2膜500は、同じ所定元素を含み、同一の組成を有する。第1膜400として例えばSiN膜を形成した場合、第1膜400と第2膜500から構成される膜はSiN膜である。ここで、同一とは、実質的に同一を含む。実質的に同一の組成を有する第1膜400と第2膜500を積層することにより、組成を実質的に変化させずに膜厚のみを制御することができる。
【0071】
また、上述したステップS21における処理温度を、上述したステップS11における処理温度と実質的に同一の処理温度で行うことにより、第1膜400と第2膜500の膜質の変化を抑制することができる。
【0072】
(アフターパージ・大気圧復帰ステップ)
ガス供給管232c,232dのそれぞれから不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。不活性ガスはパージガスとして作用する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0073】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態で、マニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出される(ボートアンロード)。処理済のウエハ200は、ボート217より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0074】
例えば、原料ガスとしてSi含有ガスを用いて、反応ガスとしてN含有ガスを用いて、SiN膜を形成する場合に、上述した成膜シーケンスは、以下のように示すことができる。
【0075】
(Si含有ガス→N含有ガス)×n→(Si含有ガス→N含有ガス)×m ⇒ SiN
【0076】
図5(B)は、上述した高速成膜条件のみによりステップS11~S14を行うサイクルを所定回数行ってウエハ200上に膜400を形成した場合を示す図である。高速成膜条件のみにより成膜を行う場合、サイクルレートが大きく、1サイクル当たりに形成される層400bの厚さが大きくなるため、目標膜厚Tまで、少ないサイクル数で膜を形成することができる。このため、成膜時間が短縮されることによりスループットが向上する。一方で、高速成膜条件のみにより形成される膜の膜厚は、層400bの層厚のp倍(pは1以上の整数)の値しかとることができない。このため、目標膜厚Tが、層400bの層厚のp倍と異なる場合に、それ以上目標膜厚Tに近づけることができない。
【0077】
図5(C)は、上述した低速成膜条件のみによりステップS21~S24を行うサイクルを所定回数行ってウエハ200上に膜500を形成した場合を示す図である。低速成膜条件のみにより成膜を行う場合、高速成膜条件時と比較して、サイクルレートが小さく、1サイクル当たりに形成される層500bの厚さが小さくなるため、目標膜厚Tまで、高速成膜条件時と比較して多いサイクル数で膜を形成しなければならない。つまり、高速成膜条件時と比較して成膜時間が増えるため、スループットが低下する。一方で、目標膜厚Tとの誤差は高速成膜条件時と比較して小さくすることができる。
【0078】
本態様では、
図5(C)に示すように、高速成膜条件によりステップS11~S14を行うサイクルを第1の所定回数行って第1膜400を形成し、低速成膜条件によりステップS21~S24を行うサイクルを第2の所定回数行って第2膜500を形成する。すなわち、第1の所定回数と、第2の所定回数を、調整する。言い換えれば、サイクルレートが異なる2つの処理を行う。これにより、目標膜厚Tとの誤差を小さくしてウエハ200上に所定元素を含む膜を形成することができる。また、低速成膜条件のみにより膜を形成した場合と比較して、成膜時間を短くすることができ、スループットを向上させることができる。
【0079】
すなわち、サイクルレートが異なる2つの処理を行って、所定元素を含む膜を形成する。具体的には、例えば所望の膜厚である目標膜厚Tの95%程度までは、サイクルレートの大きい高速成膜条件下で第1膜400を形成し、残りの5%程度を、サイクルレートの小さい低速成膜条件下で第2膜500を形成して膜厚の微調整を行う。これにより、ウエハ200上に第1膜400及び第2膜500で構成される、目標膜厚Tの所定元素を含む膜を形成する。よって、所望の膜厚に対する高い精度が求められる場合であっても、スループットを向上させつつ、高い精度で膜を形成することができる。
【0080】
ここで、第1の所定回数と第2の所定回数は、第1膜400と第2膜500の合計膜厚と、目標膜厚Tとの誤差が小さくなるように設定(選択)され、特にこの誤差が最小となるように設定されることが望ましい。
【0081】
例えば、ステップS21~S24のサイクルを第2の所定回数行うことにより形成される第2膜500の厚さを、ステップS11~S14のサイクルを第1の所定回数行うことにより形成される第1膜400の厚さよりも薄くなるように設定する。つまり、第1の所定回数は、第2の所定回数よりも多くし、例えば2以上とする。サイクルレートの大きい高速成膜条件で成膜する第1膜400の膜厚を厚くして、サイクルレートの小さい低速成膜条件で成膜する第2膜500で膜厚を調整して目標膜厚Tの膜を形成することにより、スループットを向上させることができる。また、サイクルレートの大きい高速成膜条件による成膜のサイクル数を、サイクルレートの小さい低速成膜条件による成膜のサイクル数よりも多くすることにより、スループットを向上させることができる。
【0082】
具体的には、第1の所定回数と第2の所定回数は、ステップS13において形成される第2層400bの厚さのN倍(Nは任意の自然数)と目標膜厚Tとがとり得る差の最小値よりも、目標膜厚Tと、第1膜400と第2膜500の合計膜厚との差が小さくなるように設定される。これにより、目標膜厚Tに対する誤差を小さくすることができる。
【0083】
また、第1の所定回数と第2の所定回数は、低速成膜条件下で形成される第2膜500の厚さが、高速成膜条件下で1サイクル当たりに形成される第2層400bの厚さよりも薄くなるように設定することができる。これにより、目標膜厚Tに対する誤差を小さくするとともに、第2の所定回数を最小限にしてスループットを向上させることができる。
【0084】
また、高速成膜条件下でステップS11~S14のサイクルを所定回数行って、1サイクル当たりに形成される第2層400bの膜厚よりも、目標膜厚Tまでの膜厚が小さくなったら、低速成膜処理を行うようにしてもよい。この場合、高速成膜条件下でステップS11~S14のサイクルを行う回数は、高速成膜条件下で1サイクル当たりに形成される第2層400bの厚さのn倍(nは任意の自然数)が目標膜厚T以下となる最大数となるように設定される。第1膜400を形成した後は、低速成膜処理により形成される第2膜500の膜厚で微調整して、目標膜厚Tとの誤差が最小となる厚さを有する膜を形成する。
【0085】
なお、上述の例では、高速成膜条件下でステップS11~S14のサイクルを第1の所定回数行った後に、低速成膜条件下でステップS21~S24のサイクルを第2の所定回数行うことにより、第1膜400の上に第2膜500を形成する場合について説明した。本開示はそのような場合に限らず、低速成膜条件下でステップS21~S24のサイクルを第2の所定回数行った後に、高速成膜条件下でステップS11~S14のサイクルを第1の所定回数行うことにより、第2膜500の上に第1膜400を形成するようにしてもよい。
【0086】
また、高速成膜条件下でステップS11~S14のサイクルを所定回数行って、形成された第1膜400と目標膜厚Tとの誤差が小さくなったら、第1膜400の膜厚を測定し、その測定結果に基づいて、目標膜厚Tとの誤差が最小となるような第2の所定回数を算出して、低速成膜処理を行うようにしてもよい。
【0087】
<本開示の他の態様>
(第2態様)
次に、上述した基板処理装置の第2態様について、
図6を用いて説明する。なお、第2態様における基板処理装置は、
図1で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0088】
第2態様では、
図6に示すように、原料ガス供給系である、ガス供給管232aのバルブ243aの下流側であって、不活性ガス供給系である、ガス供給管232cとの合流部との下流側に、ガス流の上流側から順に、バルブ302と、ガスを貯留する貯留部であるタンク300と、バルブ304が設けられる。すなわち、原料ガスと不活性ガスの供給ライン上にタンク300とバルブ302,304が設けられる。
【0089】
タンク300は、上流側のバルブ302および下流側のバルブ304を開閉することにより、ガス供給管232aから供給される原料ガスと、ガス供給管232cから供給される不活性ガスを、タンク300内に一時的に貯留する。タンク300内では、原料ガスと不活性ガスが混合され、原料ガスが不活性ガスで希釈される。そして、タンク300に貯留され、不活性ガスで希釈された原料ガスが、ウエハ200に対して一度に大量に供給される。
【0090】
第2態様では、上述した態様の基板処理工程の、ステップS11とステップS21における原料ガス供給において、実質的に同一処理温度下において、それぞれタンク300、バルブ302,304を用いたフラッシュ供給を行う。
【0091】
具体的には、ステップS11とステップS21の原料ガス供給において、予めバルブ304を閉じて、バルブ243a,243c,302を開けることにより、MFC241a,241cでそれぞれ流量調整された原料ガスと不活性ガスをタンク300に貯留する。そして、バルブ304を開けることによりタンク300に貯留された原料ガスと不活性ガスの混合ガスを、ウエハ200に対して一度に大量に供給する。すなわち、希釈された原料ガスをウエハ200に対して一度に大量に供給する。
【0092】
このとき、ステップS11とステップS21では、MFC241a,241c、バルブ243a,243cをそれぞれ制御することにより、原料ガスの供給流量と不活性ガスの供給流量を制御して、タンク300内の原料ガスの供給濃度(すなわち、タンク300内の原料ガスの分圧)を調整する。つまり、上述したステップS11における原料ガスと不活性ガスの流量比率と、上述したステップS21における原料ガスと不活性ガスの流量比率を調整する。
【0093】
例えば、ステップS21における不活性ガスに対する原料ガスの流量比を、ステップS11における不活性ガスに対する原料ガスの流量比よりも少なくするように原料ガスの供給濃度を調整してタンク300に貯留する。言い換えれば、ステップ21における原料ガスの供給流量に対する不活性ガスの供給流量の比率を、上述したステップS11における原料ガスの供給流量に対する不活性ガスの供給流量の比率よりも多くする。これにより、ステップ21において形成される第3層500aの厚さを、ステップS11において形成される第1層400aの厚さよりも薄くすることができる。すなわち、ステップS21におけるサイクルレートを、ステップS11におけるサイクルレートと比べて小さくすることができる。この場合、ステップS11においてタンクに予め貯留される原料ガスと不活性ガスの合計流量と、ステップS21においてタンクに予め貯留される原料ガスと不活性ガスの合計流量とを同じにする。合計流量を同じにすることにより、処理室201内の圧力等の条件を変化させることなく、ウエハ200に対する原料ガスの曝露量を調整することができる。
【0094】
本態様においても、上述の態様と同様の効果が得られる。また、本態様においては、さらに短時間で大量の原料ガスにウエハ200を曝露させることにより、段差被覆性(ステップカバレッジともいう)を向上させることができる。
【0095】
以上、本開示の一態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は、上述した態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【0096】
例えば、上述の態様では、反応ガスとして、N含有ガスを用いる場合を例にして説明したが、これに限らず、例えば酸素(O)を含有するO含有ガスを用いることができる。O含有ガスとして、例えばO2ガス、O3ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス等を用いることができる。これらのうち1以上を用いることができる。
【0097】
また、原料ガスとしてSi含有ガス、反応ガスとしてO含有ガスを用いる場合、シリコン酸化膜(SiO膜)が形成され、基板上に、SiO膜を形成する場合にも、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0098】
また、反応ガスとして、プラズマ励起された反応ガスを用いる場合にも、上述の態様と同様の効果が得られる。例えば、プラズマ励起された反応ガスとして、N含有ガスをプラズマ励起して用いてもよい。
【0099】
また、上述の態様では、原料ガス供給と反応ガス供給とを行う場合を例にして説明したが、これに限らず、例えば原料ガス供給と反応ガス供給の他に、膜質を改質する改質ガス供給を行って、ウエハ200上に所定元素を含む膜を形成する場合にも、適用することが可能である。具体的には、原料ガスとして例えばSi含有ガスを用い、反応ガスとして例えばN含有ガスを用い、改質ガスとして例えばH2ガスなどの水素(H)含有ガスを用いて、原料ガス供給時において高速成膜条件下で下記のサイクルをn回行う工程と、原料ガス供給時において低速成膜条件下で下記のサイクルをm回行う処理と、を行う成膜シーケンスにより、基板上に、SiN膜を形成する場合にも、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0100】
(Si含有ガス→H含有ガス→N含有ガス)×n→(Si含有ガス→H含有ガス→N含有ガス)×m ⇒ SiN
【0101】
また、原料ガスとして例えばSi含有ガスを用い、反応ガスとして例えばO含有ガスを用い、改質ガスとして例えばH含有ガスを用いて、原料ガス供給時において高速成膜条件下で下記のサイクルをn回行う工程と、原料ガス供給時において低速成膜条件下で下記のサイクルをm回行う工程と、を行う成膜シーケンスにより、基板上に、SiO膜を形成する場合にも、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0102】
(Si含有ガス→H含有ガス→O含有ガス)×n→(Si含有ガス→H含有ガス→O含有ガス)×m ⇒ SiO
(Si含有ガス→H含有ガス+O含有ガス)×n→(Si含有ガス→H含有ガス+O含有ガス)×m ⇒ SiO
【0103】
上述の態様では、所定元素を含む膜としてSiを含む膜を形成する場合を例に挙げて説明したが、本開示はこれに限定されない。所定元素を含む膜は、例えばチタン窒化膜(TiN膜)、タングステン膜(W膜)、タングステン窒化膜(WN膜)、ハフニウム窒化膜(HfN膜)、ジルコニウム窒化膜(ZrN膜)、タンタル窒化膜(TaN膜)、モリブデン膜(Mo膜)、モリブデン窒化膜(MoN膜)、アルミニウム膜(Al膜)、アルミニウム窒化膜(AlN膜)、ルテニウム膜(Ru膜)、コバルト膜(Co膜)、チタン膜(Ti膜)等の金属元素を含む膜であってもよい。これらの場合においても上述の態様と同様の効果が得られる。
【0104】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0105】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0106】
上述の態様は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【実施例0107】
上述した基板処理装置を用いて、上述した基板処理工程を行って、ウエハ上にSiN膜を形成した。原料ガスとして上述の態様で例示したクロロシラン系ガスを用い、反応ガスとして上述の態様で例示した窒化水素系ガスを用い、不活性ガスとしてN2ガスを用いた。目標膜厚Tを100Åとした。
【0108】
ウエハに対して原料ガス100%で高速成膜処理を行った場合のサイクルレートは1.018Å/サイクルだった。これに対して、ウエハに対して原料ガス50%、不活性ガス50%で低速成膜処理を行った場合のサイクルレートは、0.76Å/サイクルだった。先ず、高速成膜条件下でステップS11~S14のサイクルを96サイクル行って、目標膜厚Tの95%程度である97.7Åの膜厚のSiN膜を形成した。次に、低速成膜条件下でステップS21~S24のサイクルを3サイクル行って、2.3Åの膜厚のSiN膜を形成した。つまり、合計膜厚は100Åとなり、高速成膜条件下による処理と低速成膜条件下による処理を行うことにより、目標膜厚Tとの差異がない膜厚が形成されることが確認された。