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特開2024-46825液体燃料製造システム及び液体燃料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046825
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】液体燃料製造システム及び液体燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 69/12 20060101AFI20240329BHJP
   C10G 50/00 20060101ALI20240329BHJP
   C10G 47/00 20060101ALI20240329BHJP
   C10G 45/58 20060101ALI20240329BHJP
   C25B 3/26 20210101ALI20240329BHJP
   C25B 3/03 20210101ALI20240329BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240329BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240329BHJP
   C25B 3/07 20210101ALI20240329BHJP
   C25B 1/23 20210101ALN20240329BHJP
【FI】
C10G69/12
C10G50/00
C10G47/00
C10G45/58
C25B3/26
C25B3/03
C25B1/04
C25B9/00 G
C25B9/00 A
C25B3/07
C25B1/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152138
(22)【出願日】2022-09-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ムーンショット型研究開発事業/地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志村 光則
(72)【発明者】
【氏名】松本 純
(72)【発明者】
【氏名】武田 大
【テーマコード(参考)】
4H129
4K021
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129CA14
4H129KA04
4H129KA11
4H129KA12
4H129KC03Y
4H129KC10Y
4H129KC13Y
4H129KD10Y
4H129KD24Y
4H129KD26Y
4H129KD31Y
4H129MA01
4H129MA07
4H129MA12
4H129MB12A
4H129MB19B
4H129MB20B
4H129NA13
4H129NA22
4H129NA23
4H129NA43
4K021AA01
4K021AC02
4K021AC04
4K021BC04
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC11
(57)【要約】
【課題】 水素ガスの使用量を低減することができる液体燃料製造システム及び液体燃料の製造方法を提供する。
【解決手段】 液体燃料製造システム1は、二酸化炭素及び水の電解還元によって、混合ガスと、酸素ガスとを得る電解還元装置2と、混合ガスから二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置3と、混合ガスから水を分離する水分離装置4と、混合ガスを、エチレンと、水素と、残余のオフガスとに分離する深冷分離装置5と、深冷分離装置で得られたエチレンのオリゴメリゼーションによって第1混合物を得る第1反応装置6と、第1混合物から軽質炭化水素を分離する第1分離装置7と、第1混合物を水素化分解及び水素化異性化することによって液体燃料を含む第2混合物を得る第2反応装置8と、第2混合物を、少なくとも液体燃料と、分解ガスと、重質炭化水素とに分離する第2分離装置9とを有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素及び水の電解還元によって、少なくともエチレン及び水素を含む生成ガスと未反応の前記二酸化炭素とを少なくとも含む混合ガスと、酸素ガスとを得る電解還元装置と、
前記混合ガスから前記二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置と、
前記二酸化炭素が分離された前記混合ガスから水を分離する水分離装置と、
前記二酸化炭素及び前記水が分離された前記混合ガスを、前記エチレンと、前記水素と、残余のオフガスとに分離する深冷分離装置と、
前記深冷分離装置で得られた前記エチレンのオリゴメリゼーションによってα-オレフィンを含む第1混合物を得る第1反応装置と、
前記第1混合物から軽質炭化水素を分離する第1分離装置と、
前記軽質炭化水素が分離された前記第1混合物を水素化分解及び水素化異性化することによって液体燃料を含む第2混合物を得る第2反応装置と、
前記第2混合物を、少なくとも液体燃料と、分解ガスと、重質炭化水素とに分離する第2分離装置とを有する液体燃料製造システム。
【請求項2】
前記深冷分離装置で得られた前記オフガスと、前記第1分離装置で得られた前記軽質炭化水素と、前記第2分離装置で得られた前記分解ガス及び前記重質炭化水素と、前記電解還元装置で得られた酸素とを燃焼させ、生成された二酸化炭素及び水を前記電解還元装置に原料として供給する酸素燃焼装置を有する請求項1に記載の液体燃料製造システム。
【請求項3】
前記酸素燃焼装置で発生した熱が、前記二酸化炭素分離装置、前記水分離装置、前記第1反応装置、前記第1分離装置及び前記第2分離装置の少なくとも1つに供給される請求項2に記載の液体燃料製造システム。
【請求項4】
前記深冷分離装置で得られた前記水素が前記第2反応装置に供給される請求項1~3のいずれか1つの項に記載の液体燃料製造システム。
【請求項5】
前記二酸化炭素分離装置で得られた前記二酸化炭素が前記電解還元装置に原料として供給される請求項1~3のいずれか1つの項に記載の液体燃料製造システム。
【請求項6】
前記電解還元装置で副生する低級アルコールが前記酸素燃焼装置に燃料として供給される請求項2又は3に記載の液体燃料製造システム。
【請求項7】
二酸化炭素及び水の電解還元によって、少なくともエチレン及び水素を含む生成ガスと未反応の前記二酸化炭素とを少なくとも含む混合ガスと、酸素ガスとを得る電解還元工程と、
前記混合ガスから前記二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離工程と、
前記二酸化炭素が分離された前記混合ガスから水を分離する水分離工程と、
前記二酸化炭素及び前記水が分離された前記混合ガスを、前記エチレンと、前記水素と、残余のオフガスとに分離する深冷分離工程と、
前記深冷分離工程で得られた前記エチレンのオリゴメリゼーションによってα-オレフィンを含む第1混合物を得る第1反応工程と、
前記第1混合物から軽質炭化水素を分離する第1分離工程と、
前記軽質炭化水素が分離された前記第1混合物を水素化分解及び水素化異性化することによって液体燃料を含む第2混合物を得る第2反応工程と、
前記第2混合物を、少なくとも液体燃料と、分解ガスと、重質炭化水素とに分離する第2分離工程とを有する液体燃料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料製造システム及び液体燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、二酸化炭素を用いて一酸化炭素を製造する第1工程と、一酸化炭素と水素とを用いて炭化水素からなる液体燃料を製造する第2工程とを有する液体燃料の製造方法を開示している。第1工程は、二酸化炭素と水素とを原料とした逆シフト反応、又は二酸化炭素の電解還元によって行われる。第2工程は、フィッシャー・トロプシュ反応(FT反応)によって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2022/138910号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、FT反応によって液体燃料を生成するため、多量の水素ガスを原料として使用する。水素ガスは、それ自体で燃料として有用な物質である。そのため、水素ガスを原料として液体燃料を製造することは効率が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、水素ガスの使用量を低減することができる液体燃料製造システム及び液体燃料の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、二酸化炭素及び水の電解還元によって、少なくともエチレン及び水素を含む生成ガスと未反応の前記二酸化炭素とを少なくとも含む混合ガスと、酸素ガスとを得る電解還元装置(2)と、前記混合ガスから前記二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離装置(3)と、前記二酸化炭素が分離された前記混合ガスから水を分離する水分離装置(4)と、前記二酸化炭素及び前記水が分離された前記混合ガスを、前記エチレンと、前記水素と、残余のオフガスとに分離する深冷分離装置(5)と、前記深冷分離装置で得られた前記エチレンのオリゴメリゼーションによってα-オレフィンを含む第1混合物を得る第1反応装置(6)と、前記第1混合物から軽質炭化水素を分離する第1分離装置(7)と、前記軽質炭化水素が分離された前記第1混合物を水素化分解及び水素化異性化することによって液体燃料を含む第2混合物を得る第2反応装置(8)と、前記第2混合物を、少なくとも液体燃料と、分解ガスと、重質炭化水素とに分離する第2分離装置(9)とを有する液体燃料製造システム(1)を提供する。
【0007】
この態様によれば、二酸化炭素の電気還元によってエチレンが生成され、エチレンのオリゴメリゼーションによってα-オレフィンが生成され、α-オレフィンの水素分解及び水素化異性化によって液体燃料が生成される。そのため、FT反応により液体燃料を生成する場合に比べて、原料として使用する水素ガス量を低減することができる。また、二酸化炭素を原料として電解還元によってエチレンを生成する場合の理論電解電圧は、二酸化炭素を原料として電解還元によって一酸化炭素を生成する場合の理論電解電圧よりも小さいため、エネルギー効率を向上させることができる。
【0008】
上記の態様において、液体燃料製造システムは、前記深冷分離装置で得られた前記オフガスと、前記第1分離装置で得られた前記軽質炭化水素と、前記第2分離装置で得られた前記分解ガス及び前記重質炭化水素と、前記電解還元装置で得られた酸素とを燃焼させ、生成された二酸化炭素及び水を前記電解還元装置に原料として供給する酸素燃焼装置(11)を有してもよい。
【0009】
この態様によれば、液体燃料を生成するときに生じる副生物を、原料の二酸化炭素ガスとして再利用することができる。また、副生物を燃焼させるときに空気を使用しないため、窒素酸化物が発生しない。更に、二酸化炭素ガスと窒素の分離が不要になる。
【0010】
上記の態様において、前記酸素燃焼装置で発生した熱が、前記二酸化炭素分離装置、前記水分離装置、前記第1反応装置、前記第1分離装置及び前記第2分離装置の少なくとも1つに供給されてもよい。
【0011】
この態様によれば、酸素燃焼装置で発生する熱が有効利用されるため、液体燃料製造システムのエネルギー効率が向上する。
【0012】
上記の態様において、前記深冷分離装置で得られた前記水素が前記第2反応装置に供給されてもよい。
【0013】
この態様によれば、電解還元装置で副生する水素を有効利用することができる。
【0014】
上記の態様において、前記二酸化炭素分離装置で得られた前記二酸化炭素が前記電解還元装置に原料として供給されてもよい。
【0015】
この態様によれば、未反応の二酸化炭素を回収して電解還元装置に戻すことができる。
【0016】
上記の態様において、前記電解還元装置で副生する低級アルコールが前記酸素燃焼装置に燃料として供給されてもよい。
【0017】
この態様によれば、電解還元装置において副生する低級アルコールを有効利用することができる。
【0018】
本発明の他の態様は、二酸化炭素及び水の電解還元によって、少なくともエチレン及び水素を含む生成ガスと未反応の前記二酸化炭素とを少なくとも含む混合ガスと、酸素ガスとを得る電解還元工程と、前記混合ガスから前記二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離工程と、前記二酸化炭素が分離された前記混合ガスから水を分離する水分離工程と、前記二酸化炭素及び前記水が分離された前記混合ガスを、前記エチレンと、前記水素と、残余のオフガスとに分離する深冷分離工程と、前記深冷分離工程で得られた前記エチレンのオリゴメリゼーションによってα-オレフィンを含む第1混合物を得る第1反応工程と、前記第1混合物から軽質炭化水素を分離する第1分離工程と、前記軽質炭化水素が分離された前記第1混合物を水素化分解及び水素化異性化することによって液体燃料を含む第2混合物を得る第2反応工程と、前記第2混合物を、少なくとも液体燃料と、分解ガスと、重質炭化水素とに分離する第2分離工程とを有する液体燃料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
以上の態様によれば、水素ガスの使用量を低減することができる液体燃料製造システム及び液体燃料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】液体燃料製造システムの概略説明図
図2】液体燃料製造システムの詳細説明図
図3】液体燃料製造システムの詳細説明図
図4】電解還元装置の一例を示す説明図
図5】二酸化炭素分離装置の一例を示す説明図
図6】電解還元装置の他の例を示す説明図
図7】二酸化炭素分離装置の他の例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る液体燃料製造システム及び液体燃料の製造方法について説明する。図1に示すように、液体燃料製造システム1は、電解還元装置2と、二酸化炭素分離装置3と、水分離装置4と、深冷分離装置5と、第1反応装置6と、第1分離装置7と、第2反応装置8と、第2分離装置9とを有する。また、液体燃料製造システム1は、酸素燃焼装置11を有する。
【0022】
電解還元装置2は、二酸化炭素及び水の電解還元によって、少なくともエチレン及び水素を含む生成ガスと未反応の前記二酸化炭素とを少なくとも含む混合ガスと、酸素ガスとを得る。二酸化炭素分離装置3は、混合ガスから二酸化炭素を分離する。水分離装置4は、二酸化炭素が分離された混合ガスから水を分離する。深冷分離装置5は、二酸化炭素及び水が分離された混合ガスを、エチレンと、水素と、残余のオフガスとに分離する。第1反応装置6は、深冷分離装置5で得られたエチレンのオリゴメリゼーションによってα-オレフィンを含む第1混合物を得る。第1分離装置7は、第1混合物から軽質炭化水素を分離する。第2反応装置8は、軽質炭化水素が分離された第1混合物を水素化分解及び水素化異性化することによって液体燃料を含む第2混合物を得る。第2分離装置9は、第2混合物を、少なくとも液体燃料と、分解ガスと、重質炭化水素とに分離する。酸素燃焼装置11は、深冷分離装置5で得られたオフガスと、第1分離装置7で得られた軽質炭化水素と、第2分離装置9で得られた分解ガス及び重質炭化水素と、電解還元装置2で得られた酸素とを燃焼させ、生成された二酸化炭素及び水を電解還元装置2に原料として供給する。また、酸素燃焼装置11は、電解還元装置2で副生する低級アルコールが燃料として使用してもよい。
【0023】
酸素燃焼装置11で発生した熱は、二酸化炭素分離装置3、水分離装置4、第1反応装置6、第1分離装置7、第2反応装置8、及び第2分離装置9の少なくとも1つに供給される。深冷分離装置5で得られた水素が第2反応装置8に供給される。二酸化炭素分離装置3で得られた二酸化炭素は電解還元装置2に原料として供給される。
【0024】
液体燃料製造システム1は、各装置を制御する制御装置12を有する。制御装置12は、プロセッサ、メモリ、プログラムを記憶する記憶装置を有し、プログラムを実行することによって各装置等を制御する。
【0025】
図2及び図3を参照して、液体燃料製造システム1の詳細な構成について説明する。図2及び図3は、液体燃料製造システム1を分割して示す図であり、図中の深冷分離装置5、符号A、B、Cにおいて互いに接続している。
【0026】
電解還元装置2は、二酸化炭素及び水の供給を受け、二酸化炭素を電解還元することによって、炭化水素、一酸化炭素、及び水素の少なくとも1つを含む生成ガスと未反応の二酸化炭素とを少なくとも含む混合ガスを生成する。混合ガスは、電解還元装置2のカソード側から排出される。電解還元装置2のカソードでは、以下の化学式(1)~(4)で表されるように、電極に付加された触媒種や運転条件によって、二酸化炭素が還元されて、エチレンを主生成物として含み、一酸化炭素、メタン、水素等の副生成物を含む生成物が得られる。
2CO+12H+12e→C+4HO ...(1)
CO+8H+8e→CH+2HO ...(2)
CO+2H+2e→CO+HO ...(3)
2H+2e→H...(4)
電解還元装置2のアノードでは、以下の化学式(5)で表されるように、水が酸化されて酸素が生成される。
2HO→O+4H+4e ...(5)
【0027】
電解還元装置2は、ガス拡散電極であるカソードによって区画されたカソードガス室及びカソード液室と、セパレータによってカソード液室に対して区画され、アノードが配置されたアノード液室とを有する3室型の電解還元装置や、電解質膜等の隔膜をカソードとアノードとで挟んだ膜電極複合体(MEA)を使用した電解還元装置等であるとよい。
【0028】
図4に電解還元装置2の一例を示す。電解還元装置2は、膜電極複合体30によって互いに区画されたカソード室31及びアノード室32を有する電解セル34を有する。膜電極複合体30は、隔膜35と、隔膜35の一方の面に設けられたカソード36と、隔膜35の他方の面に設けられたアノード37とを有する。カソード室31には、気体の二酸化炭素が供給される。アノード室32には、電解液が供給される。カソード室31はガス室、アノード室32は液室と称してもよい。カソード36及びアノード37は直流電源39に接続されている。
【0029】
電解液は、電解質が溶解した水溶液である。電解質は、カリウム、ナトリウム、リチウム、又はこれらの化合物の少なくとも1つを含む。電解質は、例えば、LiOH、NaOH、KOH、LiCO、NaCO、KCO、LiHCO、NaHCO、及びKHCOからなる群から選択される少なくとも1つを含むとよい。
【0030】
隔膜35は、アニオン交換膜又はカチオン交換膜であってよい。隔膜35は、例えば、固体高分子電解質膜であってよく、イミダゾリウム基を有するスチレン系のアニオン交換膜やスルホン酸基を有するフッ素樹脂系の陽イオン交換樹脂膜であるとよい。
【0031】
カソード36は、ガス拡散電極である。カソード36は、二酸化炭素を含む気体を透過する。カソード36は、例えばカーボンペーパーやカーボンフェルト、カーボンクロス等の多孔質の導電性基材の表面に、ポリテトラフルオロエチレン等の撥水性被膜を形成したものであってよい。導電性基材は、直流電源39の負極に接続され、電子の供給を受ける。カソード36には触媒が担持されている。触媒は、公知の二酸化炭素還元触媒であってよく、例えば銅等の第11族元素、亜鉛等の第12族元素、ガリウム等の第13族元素、ゲルマニウム等の第14族元素、又はこれらの金属化合物の少なくとも1種を含む。金属化合物は、酸化物、硫化物、リン化物の少なくとも1つを含む。触媒は、二酸化炭素を還元してエチレンを生成するために適したものが好ましく、例えば銅又は銅化合物に第11族元素、第12族元素、第13族元素、及び第14族元素の金属、及びそれらの金属化合物を組み合せた材料を用いることが好ましい。
【0032】
アノード37は、例えば、チタニウム、ニッケル、イリジウム、マンガン、白金、金、等の金属材料又はこれらの金属合金材料や金属酸化物、カーボン等の炭素系材料又は導電性セラミックで構成されている。アノード37の形状は、複数の開口を備えた平板、メッシュ、及び多孔体であってよい。
【0033】
直流電源39は、火力発電や原子力発電、太陽光発電、風力発電、水力発電等によって得られた電力を、必要に応じて直流に変換し、カソード36及びアノード37に供給する。二酸化炭素排出量の削減の観点から、自然エネルギー(再生可能エネルギー)を利用した太陽光発電や風力発電、水力発電等によって得られた電力を直流電源39として使用することが好ましい。直流電源39は、アノード37に対してカソード36が負電位になるように電圧を印加する。直流電源39は、参照電極を使用してカソード36の電位を取得し、カソード36の電位が所定の範囲内となるように印加する電圧を制御するとよい。
【0034】
カソード室31は、入口44及び出口45を有する。図2及び図4に示すように、カソード室31の入口44は、第1供給通路46を介して二酸化炭素供給源47に接続されている。二酸化炭素供給源47は、二酸化炭素ガスを供給可能な設備であれば特に限定されることは無く、好ましくは貯蔵するタンク等であるとよい。カソード室31の出口45は、ガス循環通路48を介して第1供給通路46に接続されている。
【0035】
アノード室32は、入口51及び出口52を有する。アノード室32の入口51は、第2供給通路53を介して水供給源54に接続されている。水供給源54は、液体の水を第2供給通路53に供給する。アノード室32の出口52は、電解液循環通路55を介して第2供給通路53に接続されている。また、第2供給通路53は、通路56によって第1供給通路46と接続され、水がカソード室31へ供給できるようにしてもよい。これにより、隔膜35にアニオン膜を使用した場合にアニオン膜のカソード側を湿潤することができる。
【0036】
ガス循環通路48には、気液分離装置57と、内部を循環するガスの一部を排出するガス循環流量調節装置58が設けられている。気液分離装置57は、ガス循環通路48を流れる流体から液体成分を分離する。気液分離装置57で分離された液体は、通路59を介して電解液循環通路55に送られる。
【0037】
ガス循環流量調節装置58の排出口は、カソード出口通路60に接続されている。ガス循環流量調節装置58は、カソード出口通路60にガスを排出することによって、ガス循環通路48及びカソード室31を循環するガスの流量及び圧力を調節する。
【0038】
電解液循環通路55には、気液分離装置61が設けられている。気液分離装置61は、電解液から気体を分離し、気体をアノード出口通路62に送出する。また、電解液循環通路55には、電解液の電解質濃度を所定の範囲に調節するための電解質濃度制御装置63が設けられているとよい。電解質濃度制御装置63は、電解液の電解質濃度を検出するセンサと、所定の濃度の新しい電解液を供給する電解質液供給機と、循環する電解液の一部を排出する排水装置とを含むとよい。
【0039】
カソード室31の二酸化炭素はカソード36の内部に拡散し、還元される(化学式(1)参照)。これにより、エチレンを主生成物として含み、メタン、水素、一酸化炭素、エタノール等の低級アルコール等の副生成物を含む生成物が得られる。生成物は、カソード室31内の未反応の二酸化炭素と混合し、混合物となる。また、混合物には、膜電極複合体30を通過してカソード室31に漏出した電解液の一部が混入する。混合物は、気液分離装置57において液体の低級アルコール及び電解液が分離され、混合ガスとなる。混合ガスの主成分は、エチレン及び二酸化炭素である。混合ガスは、水、一酸化炭素、及びメタン等の炭化水素を含んでよい。気液分離装置57で分離された低級アルコール及び電解液は、通路59を介して電解液循環通路55に送られる。
【0040】
二酸化炭素の還元反応によって生成した生成物と未反応の二酸化炭素とを含む生成ガスは、ガス循環通路48を循環し、ガス循環流量調節装置58からカソード出口通路60に送出される。
【0041】
アノード37では、電解液中の水及び水酸化物イオンが酸化し、気体の酸素が発生する(化学式(5)参照)。気体の酸素は、電解液循環通路55の気液分離装置61によって電解液から分離され、アノード出口通路62に送出される。
【0042】
また、電解質濃度制御装置63は、循環通路66を介して分離装置67と接続されている。電解質濃度制御装置63は、循環通路66を介して電解液の一部を分離装置67に循環させる。分離装置67は、電解液から低級アルコールを分離する。分離装置67は、例えば蒸留によって電解液から低級アルコールを分離する。分離装置67には、酸素燃焼装置11で加熱された後述するパージガスが供給される。分離装置67は、パージガスの熱量を利用して蒸留を行うとよい。分離装置67で分離された低級アルコールは通路68を介して後述する燃料通路157に送られる。
【0043】
アノード出口通路62を流れるガスは、主に酸素である。なお、アノード出口通路62を流れるガスに、二酸化炭素が混入する場合もある。
【0044】
図2に示すように、電解還元装置2のカソード出口通路60から排出される混合ガスは二酸化炭素分離装置3に供給される。二酸化炭素分離装置3は、混合ガスから二酸化炭素を分離する。
【0045】
図5に二酸化炭素分離装置3の一例を示す。図5に示すように、二酸化炭素分離装置3は、二酸化炭素ガス吸収部101と、電気化学セル102と、第1通路103と、第2通路104と、第3通路105と、気液分離装置106とを有する。
【0046】
二酸化炭素ガス吸収部101は、酸化還元に伴ってプロトンを吸脱着する化合物を含む電解液と混合ガスとを接触させ、電解液に混合ガス中の二酸化炭素を吸収させる。
【0047】
電解液は、溶質と、溶質が溶解される溶媒とから構成される。溶質は、溶媒に溶解した際に炭酸を生じるか、電離により炭酸水素イオン、炭酸イオンを生じる。溶質は、例えばアルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸水素塩、炭酸塩からなる群から選択される少なくとも1つを含むとよい。溶質は、具体的には、NaHCO、KHCO、LiHCO、NaCO、KCO、LiCOであるとよい。溶媒は、水であるとよい。
【0048】
電解液には、酸化還元に伴ってプロトンを吸脱着する化合物が溶解していると良い。化合物は、pH7における標準水素電極電位基準での酸化還元電位が-1.0V~1.0Vの有機化合物が良い。化合物は、例えば、キノン系化合物、インドフェノール系化合物、インディゴ系化合物等であり、キノン系化合物が好ましい。化合物は、例えば、クロラミン-T、o-トリジン、2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゾキノン、p-アミノジメチルアニリン、o-キノン、1,2-ジフェノール、p-アミノフェノール、1,4-ベンゾキノン、2,6,2′-トリクロロインドフェノール、インドフェノール、フェノールブルー、2,6-ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)、2,6-ジブロモ-2′-メトキシインドフェノ-ル、1,2-ナフトキノン、1-ナフトール-2-スルホン酸インドフェノール、トルイレンブルー、デヒドロアスコルビン酸/アスコルビン酸、N-メチルフェナジニウムメトサルフェート(PMS)、チオニン、フェナジンエトスルフェート、1,4-ナフトキノン、トルイジンブルー、チオインジゴジスルホン酸塩、メチレンブルー、2-メチル-1,4-ナフトキノン(ビタミンK)、インディゴテトラスルホン酸塩、メチルカプリブルー、インジゴトリスルホン酸塩、インディゴジスルホン酸塩、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2-アミノ-N-メチルフェナジンメトサルフェート、インディゴモノスルホン酸塩、ブリリアントアリザリンブルー、2-メチル-3-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、9-メチル-イソアロキサジン、アントラキノン-2,6-ジスルフェート、ニュートラルブルー、リボフラビン、アントラキノン-1-スルフェート、フェノサフラニン、サフラニンT、リポ酸、アクリジン、ニュートラルレッド、シスチン/システイン、ベンジルビオロゲン、1-アミノアクリジン、メチルビオロゲン、2-アミノアクリジン、2,8-ジアミノアクリジン、5-アミノアクリジンの群から選択される少なくとも1つを含むと良い。
【0049】
キノン系化合物は、ヒドロキシ基を含むヒドロキノン系化合物と、ヒドロキノン系化合物の酸化により得られ、かつカルボニル基を含むベンゾキノン系化合物とを含む。電解液に含まれるキノン系化合物は、酸素と比べて相対的に高い電子求引性の官能基を備えている。これにより、還元反応後のヒドロキノン系化合物がすぐさま酸素により酸化されることが回避される。即ち、電子求引基を備えたヒドロキノン系化合物は酸素による酸化に対して耐性がある。
【0050】
キノン系化合物の官能基は、一例として、スルホン酸塩であるとよい。スルホン酸塩は、スルホ基(-SO)とアルカリ金属元素とを有し、例えばスルホン酸ナトリウム又はスルホン酸カリウムであるとよい。また、電子求引性を高める観点から官能基の数は1つ以上あればよく、2つ以上4つ以下であることが好ましい。
【0051】
キノン系化合物は、還元反応後において、上記官能基に加えてヒドロキシ基を含むヒドロキノン系化合物である。ヒドロキシ基の数は、芳香族性の確保の観点から、2つ以上4つ以下であるとよい。ヒドロキノン系化合物は、例えば、4,5-ジヒドロキシ-1,3-ベンゼンジスルホン酸二ナトリウム(タイロン)、又はヒドロキノンスルホン酸カリウムであるとよい。
【0052】
また、キノン系化合物は、酸化反応後において、上記官能基に加えてカルボニル基を含むベンゾキノン系化合物である。ベンゾキノン系化合物は、酸化反応により、ヒドロキシ基がカルボニル基に置換された化合物になる。以下に、ベンゾキノン系化合物の化学式(6)を示す。ここでR~Rは、H(水素)や官能基等である。
【化1】
【0053】
ベンゾキノン系化合物(Q)及びヒドロキノン系化合物(QH)の酸化還元反応は、以下の式(7)によって表される。
Q+2H+2e⇔QH ...(7)
【0054】
ヒドロキノン系化合物(QH)が酸化されると、プロトン(H)が放出され、電解液のpHが低下する。ベンゾキノン系化合物(Q)が還元されると、プロトン(H)がヒドロキノン系化合物(QH)に吸蔵され、電解液のpHが上昇する。
【0055】
二酸化炭素ガス吸収部101は、例えば、向流接触、並流接触、バブリング、又は二酸化炭素ガスのマイクロバブル化等によって混合ガスと電解液とを接触させるとよい。二酸化炭素ガス吸収部101は、混合ガスに向けて電解液をスプレーしてもよく、中空糸膜を使用して混合ガスと電解液とを接触させてもよい。
【0056】
二酸化炭素ガス吸収部101は、混合ガスが供給されるガス入口111と、混合ガスを排出するガス出口112と、電解液の供給を受ける電解液入口113と、電解液を排出する電解液出口114とを有する。
【0057】
電気化学セル102は、膜電極複合体116によってカソード室117及びアノード室118に区画されている。膜電極複合体116は、電解質膜等から形成される隔膜116Aと、隔膜116Aの両面に設けられ、電源119に接続されたカソード116B及びアノード116Cとを含む。カソード116Bはカソード室117に配置され、アノード116Cはアノード室118に配置されている。カソード116Bは電源119の負極に接続され、アノード116Cは電源119の正極に接続されている。隔膜116A、カソード116B、及びアノード116Cは、電解還元装置2の隔膜35、カソード36、及びアノード37と同様の構成であってもよい。
【0058】
第1通路103は、二酸化炭素ガス吸収部101の電解液出口114と電気化学セル102のアノード室118とを接続している。第1通路103は、電解液を二酸化炭素ガス吸収部101からアノード室118に流す。第1通路103には、電解液を輸送するためのポンプが設けられるとよい。
【0059】
第2通路104は、アノード室118とカソード室117とを接続し、電解液をアノード室118からカソード室117に流す。第2通路104には気液分離装置106が設けられている。気液分離装置106は、電解液と電解液中のガス成分と分離する。
【0060】
第3通路105は、電気化学セル102のカソード室117と二酸化炭素ガス吸収部101の電解液入口113とを接続している。第3通路105は、電解液をカソード室117から二酸化炭素ガス吸収部101に流す。第3通路105には、電解液を輸送するためのポンプが設けられるとよい。
【0061】
二酸化炭素分離装置3では、電解液は、二酸化炭素ガス吸収部101、第1通路103、アノード室118、第2通路104及び気液分離装置106、カソード室117、第3通路105の順番で循環する。電解液中の上記の化合物がカソード室117において還元され、pHが上昇する。
【0062】
二酸化炭素ガス吸収部101では、pHが比較的高い電解液と混合ガスとが接触することによって、混合ガス中の二酸化炭素ガスが電解液中に溶解する。そして、以下の化学式(8)~(10)の反応により、電解液中において二酸化炭素は炭酸水素イオンになる。化学式(8)~(10)は平衡反応である。
CO+HO⇔HCO...(8)
CO⇔H+HCO ...(9)
HCO ⇔H+CO 2- ...(10)
これにより、混合ガスから二酸化炭素ガスが除去される。二酸化炭素ガスが除去された混合ガスは、ガス出口112から排出され、通路123を介して水分離装置4に送られる。
【0063】
二酸化炭素が溶解した電解液は第1通路103を介してアノード室118に送られる。アノード室118では、電解液中の上記の化合物が酸化され、電解液のpHが低下する。アノード室118から第2通路104に流れる電解液のpHは、カソード室117から第3通路105に流れる電解液のpHよりも低くなる。電解液のpHが低下すると、電解液中の炭酸水素イオンはプロトンを受け取り、二酸化炭素に変化する。このときの化学反応は、上記の化学式(8)~(10)と同様である。これにより、二酸化炭素は気体になって、電解液から脱離する。
【0064】
アノード室118において電解液から分離した二酸化炭素ガスと電解液とは、第2通路104を介して気液分離装置106に送られる。気液分離装置106では、二酸化炭素ガスと、電解液とが分離される。電解液は気液分離装置106から第2通路104を介してカソード室117に流れる。二酸化炭素ガスは、気液分離装置106から二酸化炭素戻し通路121を介して電解還元装置2に流れる。カソード室117において、電解液中の上記の化合物が還元され電解液のpHが上昇し、再び二酸化炭素ガスを吸収可能な状態になる。
【0065】
図2に示すように、二酸化炭素分離装置3において二酸化炭素が分離された混合ガス(以下、第1処理ガスという)は、ガス出口112から通路123を介して水分離装置4に送られる。通路123には、第1処理ガスを水分離装置4に向けて圧送する圧縮機125が設けられている。水分離装置4は、第1処理ガスから水を分離する。
【0066】
水分離装置4は、水分吸着剤が充填された吸着塔であってよい。水分吸着剤は、加熱処理を受けることによって、水分を放出(脱離)する。水分吸着剤は、結晶性ゼオライト(モレキュラーシーブ)等の乾燥剤であるとよい。
【0067】
水分離装置4の入口は、通路123に接続されている。水分離装置4の出口には通路127が接続されている。通路127は、深冷分離装置5の入口に接続されている。
【0068】
また、水分離装置4は、パージガス循環通路131を介して酸素燃焼装置11に接続されている。パージガス循環通路131には、酸素燃焼装置11で加熱されるパージガスが流れている。パージガス循環通路131には、酸素燃焼装置11、流量制御弁132、水分離装置4、第1熱交換器134、第2熱交換器135、気液分離装置136、ブロア137、流量制御弁138、第1熱交換器134が記載の順序で設けられている。パージガス循環通路131の流量制御弁138と第1熱交換器134との間の部分は、通路141を介して通路127に接続されている。通路141には流量制御弁142が設けられている。パージガス循環通路131のブロア137と流量制御弁138との間の部分は、通路143を介して通路123の圧縮機125と水分離装置4との間の部分に接続されている。通路143には、流量制御弁144が設けられている。パージガス循環通路131の酸素燃焼装置11と流量制御弁132との間の部分は、通路139によって、パージガス循環通路131の第1熱交換器134と酸素燃焼装置11との間の部分に接続されている。通路139には流量制御弁133が設けられている。
【0069】
酸素燃焼装置11の燃焼室は、通路151を介して電解還元装置2のアノード出口通路62に接続されている。通路151には、二酸化炭素分離装置152が設けられているとよい。二酸化炭素分離装置152は、アノード出口通路62から供給される酸素ガス中の二酸化炭素を分離する。二酸化炭素分離装置152において分離された二酸化炭素ガスは、二酸化炭素戻し通路153を介して電解還元装置2の第1供給通路46に戻される。二酸化炭素分離装置152は、二酸化炭素分離装置3と同様の構成であってよい。二酸化炭素分離装置152は、必須の構成ではなく、省略されてもよい。
【0070】
通路151の二酸化炭素分離装置152と酸素燃焼装置11との間の部分には第3熱交換器155が設けられている。通路151の電解還元装置2と第3熱交換器155との間の部分には、燃料通路157が接続されている。燃料通路157には、深冷分離装置5、第1分離装置7、第2分離装置9で分離された水素、一酸化炭素、メタン、分解ガス、重質留分等の燃料が流れる。また、燃料通路157には、燃料供給源が接続されていてもよい。燃料供給源は、天然ガスや水素等のガス燃料を供給するタンクやパイプラインであってよい。電解還元装置2から供給される酸素ガスと燃料通路157を流れる燃料とは通路151において混合され、第3熱交換器155において加熱された後に酸素燃焼装置11に供給される。通路151の二酸化炭素分離装置152と第3熱交換器155との間の部分には、酸素取り出し通路158が設けられている。酸素取り出し通路158には流量制御弁が設けられているとよい。酸素取り出し通路158は酸素を貯留するタンクに接続されてもよい。
【0071】
酸素燃焼装置11は、酸素燃焼炉である。酸素燃焼装置11の燃焼室において、通路151から供給される酸素と、水素、一酸化炭素、及び炭化水素ガス等を含む燃料とが燃焼する。燃焼によって生じた排ガスは、主に二酸化炭素と水とを含む。排ガスは、酸素燃焼装置11から排ガス通路161を介して気液分離装置162に供給される。排ガス通路161には第3熱交換器155が設けられている。これにより、排ガス通路161を流れる排ガスと、通路151を流れる酸素ガス及び燃料とが熱交換し、排ガスは冷却され、酸素ガス及び燃料が加熱される。排ガスは、気液分離装置162において、二酸化炭素ガスと、液体の水とに分離され、二酸化炭素ガスは電解還元装置2の第1供給通路46に戻され、水は電解還元装置2の第2供給通路53に戻される。これにより、排ガスに含まれる二酸化炭素及び水が、電解還元装置2において原料の一部として再利用される。
【0072】
水分離装置4は、複数の吸着部を有する。各吸着部は、第1処理ガスから水を吸着する吸着工程と、酸素燃焼装置11で発生した熱を受けて吸着工程において吸着した水を放出する脱離工程とを交互に切り替えて運転する。いくつかの吸着部が吸着工程を実行し、同時に他の吸着部が脱離工程を実行する。これにより、水分離装置4は、吸着工程と脱離工程とを連続的に実行することができる。水分離装置4の各吸着部は、所定の時間間隔で吸着工程及び脱離工程を切り替えるとよい。
【0073】
通路123を流れる第1処理ガスは、水分離装置4を通過し、水分が除去される。水分離装置4によって水分が除去された第1処理ガスを第2処理ガスという。第2処理ガスの大部分は、通路127を介して深冷分離装置5に送られる。このとき、流量制御弁142が開くことによって、第2処理ガスの一部が通路141を通過してパージガス循環通路131に供給される。第2処理ガスの一部は、パージガスとしてパージガス循環通路131を循環する。
【0074】
パージガス循環通路131を流れるパージガスは、酸素燃焼装置11において加熱される。このとき、パージガスは、燃料、酸素、及び排ガスと混合せずに熱交換する。
【0075】
流量制御弁132が開かれることによって、水分離装置4が脱離工程を実行する。これにより、酸素燃焼装置11において加熱されたパージガスは、パージガス循環通路131を介して水分離装置4に供給される。これにより、水分離装置4の水分吸着剤がパージガスによって加熱され、水分が水分吸着剤から脱離する。これにより、水分離装置4の水分吸着剤が再生される。
【0076】
水分吸着剤から脱離した水分はパージガスと共に、第1熱交換器134及び第2熱交換器135を通過し、冷却される。第2熱交換器135は、通路145を介して深冷分離装置5と接続され、深冷分離装置5から冷媒の供給を受ける。水分を含むパージガスは、第1熱交換器134において流量制御弁138を通過した後のパージガスと熱交換して冷却される。また、水分を含むパージガスは、第2熱交換器135において更に冷却され、水分が液化する。
【0077】
第2熱交換器135を通過した水分を含むパージガスは気液分離装置136において液体の水が分離される。気液分離装置136において分離された液体の水は、通路165を介して第2供給通路53に供給され、電解還元装置2のアノード室32に送られる。
【0078】
深冷分離装置5は、第2処理ガスから炭化水素を分離する。深冷分離装置5は、第2処理ガスを、少なくともエチレンと、水素と、オフガス(残余の成分)とに分離する。オフガスは、例えば、メタン及び一酸化炭素を含む。メタン及び一酸化炭素は、互いに分離されてもよい。
【0079】
図3に示すように、深冷分離装置5で分離されたエチレンは、通路181を介して第1反応装置6に供給される。深冷分離装置5で分離されたオフガスは、燃料通路157に供給される。深冷分離装置5で分離された水素の一部は、通路182を介して第2反応装置8に供給される。また、深冷分離装置5で分離された水素の一部は、燃料通路157に供給される。
【0080】
通路181には、第4熱交換器183が設けられている。第4熱交換器183には酸素燃焼装置11で加熱されたパージガスが供給される。第4熱交換器183において、通路181を流れるエチレンはパージガスと熱交換して加熱される。
【0081】
第1反応装置6では、エチレンのオリゴメリゼーションによってα-オレフィンが生成される。エチレンのオリゴメリゼーションは公知の手法を用いて行われるとよい。第1反応装置6には、例えば、エチレン重合用触媒として、公知のトリエチルアルミニウムやニッケル、ジルコニウム、チタニウムなどの遷移金属化合物を用いたチーグラー・ナッタ型触媒や、ジルコニウムビスフェノレート複合体触媒、鉄ピリジン複合体触媒等が設けられているとよい。代表的な反応条件は、反応温度50~250℃、反応圧力3~20MPaであり、反応器としては、槽型反応器や固定床反応器等が使用される。第1反応装置6には、酸素燃焼装置11で加熱されたパージガスが供給されている。第1反応装置6の原料ガスは、パージガスによって加熱される。
【0082】
第1反応装置6から排出される第1混合物には、α-オレフィンと、未反応のエチレンとが含まれる。α-オレフィンの炭素数は、例えば4~36である。α-オレフィンは、主として炭素数α-オレフィンの内で炭素数が小さいもの(プロペン、ブテン)は、室温において気体である。そのため、第1反応装置6から排出される第1混合物は、液体と気体との混合物である。
【0083】
第1反応装置6から排出された第1混合物は、通路185を介して第1分離装置7に供給される。通路185には、第5熱交換器186が設けられている。第5熱交換器186には酸素燃焼装置11で加熱されたパージガスが供給される。第5熱交換器186において、通路185を流れる混合物はパージガスと熱交換して加熱される。
【0084】
第1分離装置7は、第1混合物から軽質炭化水素を分離する。軽質炭化水素は、例えば炭素数が6以下の炭化水素である。第1分離装置7は、蒸留装置や気液分離装置であるとよい。第1分離装置7には、酸素燃焼装置11で加熱されたパージガスが供給されている。第1分離装置7は、パージガスによって加熱される。
【0085】
第1分離装置7で分離された軽質炭化水素は、通路188を介して燃料通路157に送られる。通路188には第6熱交換器189が設けられている。第6熱交換器189には酸素燃焼装置11で加熱されたパージガスが供給される。第6熱交換器189において、通路188を流れる軽質炭化水素はパージガスと熱交換して加熱される。
【0086】
第1分離装置7で軽質炭化水素が分離された第1混合物は、通路192を介して第2反応装置8に送られる。通路192には第7熱交換器191が設けられている。第7熱交換器191には酸素燃焼装置11で加熱されたパージガスが供給される。第7熱交換器191において、通路192を流れる第1混合物はパージガスと熱交換して加熱される。
【0087】
第2反応装置8は、α-オレフィンを含む混合物と水素とを原料としてα-オレフィンの水素化分解・水素化異性化反応を行う。水素化分解・水素化異性化反応は、石油精製プロセス、GTL(Gas To Liquid)プロセスなどで既に使用されている公知の手法を適用するとよい。第2反応装置8には、白金、ニッケル等の金属をアルミナ、シリカ・アルミナなどに担持した触媒や、ゼオライト系触媒等の水素化分解用の触媒及び水素化異性化用の触媒が設けられている。代表的な反応条件は、反応温度200~400℃、反応圧力2~10MPaであり、反応器としては、固定床反応器等が使用される。第2反応装置8において、第1混合物が水素分解及び水素化異性化されることによって第2混合物が得られる。第2混合物は、液体燃料、分解ガス、及び重質炭化水素を含む。液体燃料は、ガソリン、ジェット燃料、灯油、軽油を含む。重質炭化水素は、例えば炭素数が20以上である。分解ガスは、例えば炭素数が6以下の炭化水素である。
【0088】
第2反応装置8で得られた第2混合物は、通路195を介して第2分離装置9に送られる。通路195には、第8熱交換器196が設けられている。第8熱交換器196には酸素燃焼装置11で加熱されたパージガスが供給される。第8熱交換器196において、通路195を流れる第2混合物はパージガスと熱交換して加熱される。
【0089】
第2分離装置9は、例えば蒸留装置(蒸留塔)であるとよい。第2分離装置9は、第2混合物を、少なくとも液体燃料と、分解ガスと、重質炭化水素とに分離する。本実施形態では、第2分離装置9は、液体燃料をガソリン、灯油(ジェット燃料)、軽油に分離する。第2分離装置9には、酸素燃焼装置11で加熱されたパージガスが供給されている。第2分離装置9に供給された第2混合物は、パージガスによって加熱される。
【0090】
第2分離装置9で分離されたガソリン、灯油、軽油は、製品として貯蔵される。第2分離装置9で分離された分解ガス及び重質炭化水素は、通路201を介して燃料通路157に送られる。通路201には、第9熱交換器202が設けられている。第9熱交換器202には酸素燃焼装置11で加熱されたパージガスが供給される。第9熱交換器202において、通路201を流れる分解ガス及び重質炭化水素はパージガスと熱交換して加熱される。
【0091】
深冷分離装置5で分離された水素、一酸化炭素、及びメタンと、第1分離装置7で分離された軽質炭化水素と、第2分離装置9で分離された分解ガス及び重質炭化水素とは、燃料通路157を介して酸素燃焼装置11に供給され、燃料として使用される。
【0092】
パージガス循環通路131には、第1分岐通路211が接続されている。第1分岐通路211は、パージガス循環通路131の酸素燃焼装置11と流量制御弁132との間の部分に接続された上流端と、パージガス循環通路131の第1熱交換器134と酸素燃焼装置11との間の部分に接続された下流端とを有する。第1分岐通路211には、上流側から順に、流量制御弁212、第8熱交換器196、第2分離装置9、第9熱交換器202、ポンプ213が設けられている。酸素燃焼装置11で加熱されたパージガスは、流量制御弁212、第8熱交換器196、第2分離装置9、第9熱交換器202、ポンプ213を順に通過する。
【0093】
第1分岐通路211には、第2分岐通路221が接続されている。第2分岐通路221は、第1分岐通路211の流量制御弁212の上流側部分に接続された上流端と、第1分岐通路211の第2分離装置9と第9熱交換器202との間の部分に接続された下流端とを有する。第2分岐通路221は、上流側から順に、流量制御弁223、第4熱交換器183、第1反応装置6、第6熱交換器189が設けられている。酸素燃焼装置11で加熱されたパージガスは、流量制御弁223、第4熱交換器183、第1反応装置6、第6熱交換器189を順に通過する。
【0094】
第1分岐通路211には、第3分岐通路231が接続されている。第3分岐通路231は、第1分岐通路211の第2分岐通路221の上流端と流量制御弁212との間の部分に接続された上流端と、第2分岐通路221の第6熱交換器189より下流側の部分に接続された下流端とを有する。第3分岐通路231は、上流側から順に、流量制御弁233、第5熱交換器186、第1分離装置7が設けられている。酸素燃焼装置11で加熱されたパージガスは、流量制御弁233、第5熱交換器186、第1分離装置7を順に通過する。
【0095】
第1分岐通路211には、第4分岐通路241が接続されている。第4分岐通路241は、第1分岐通路211の第3分岐通路231の上流端と流量制御弁212との間の部分に接続された上流端と、第1分岐通路211の第2分離装置9と第9熱交換器202との間の部分に接続された下流端とを有する。第4分岐通路241は、上流側から順に、流量制御弁243、第7熱交換器191、第2反応装置8が設けられている。酸素燃焼装置11で加熱されたパージガスは、流量制御弁243、第7熱交換器191、第2反応装置8を順に通過する。
【0096】
図2及び図3の各部P1~P19における各物質の重量の試算結果を表1に示す。
【表1】
【0097】
本実施形態に係る液体燃料製造システム1は、次の液体燃料の製造方法を実行する。液体燃料の製造方法は、二酸化炭素及び水の電解還元によって、少なくともエチレン及び水素を含む生成ガスと未反応の前記二酸化炭素とを少なくとも含む混合ガスと、酸素ガスとを得る電解還元工程と、前記混合ガスから前記二酸化炭素を分離する二酸化炭素分離工程と、前記二酸化炭素が分離された前記混合ガスから水を分離する水分離工程と、前記二酸化炭素及び前記水が分離された前記混合ガスを、前記エチレンと、前記水素と、残余のオフガスとに分離する深冷分離工程と、前記深冷分離工程で得られた前記エチレンのオリゴメリゼーションによってα-オレフィンを含む第1混合物を得る第1反応工程と、前記第1混合物から軽質炭化水素を分離する第1分離工程と、前記軽質炭化水素が分離された前記第1混合物を水素化分解及び水素化異性化することによって液体燃料を含む第2混合物を得る第2反応工程と、前記第2混合物を、少なくとも液体燃料と、分解ガスと、重質炭化水素とに分離する第2分離工程とを有する。電解還元工程は電解還元装置2によって実行され、二酸化炭素分離工程は二酸化炭素分離装置3によって実行され、水分離工程は水分離装置4によって実行され、深冷分離工程は深冷分離装置5によって実行され、第1反応工程は第1反応装置6によって実行され、第1分離工程は第1分離装置7によって実行され、第2反応工程は第2反応装置8によって実行され、第2分離工程は第2分離装置9によって実行される。
【0098】
以上の実施形態に係る液体燃料製造システム1は、二酸化炭素の電気還元によってエチレンを生成し、エチレンのオリゴメリゼーションによってα-オレフィンを生成し、α-オレフィンを水素分解及び水素化異性化することによって液体燃料を生成する。そのため、FT反応により液体燃料を生成する場合に比べて、原料として使用する水素ガス量を低減することができる。また、二酸化炭素を原料として電解還元によってエチレンを生成する場合の理論電解電圧は、二酸化炭素を原料として電解還元によって一酸化炭素を生成する場合の理論電解電圧よりも小さいため、エネルギー効率を向上させることができる。
【0099】
また、液体燃料を生成するときに生じる副生物を、原料の二酸化炭素ガスとして再利用することができる。また、副生物を燃焼させるときに空気を使用しないため、窒素酸化物が発生しない。更に、二酸化炭素ガスと窒素の分離が不要になる。酸素燃焼装置11で発生した熱は、電解還元装置2、二酸化炭素分離装置3、水分離装置4、第1反応装置6、第1分離装置7、及び第2分離装置9に供給されて有効利用される。そのため、液体燃料製造システム1のエネルギー効率が向上する。
【0100】
電解還元装置2で副生し、かつ深冷分離装置5で分離された水素が、第2反応装置8で使用される。すなわち、電解還元装置2で副生する水素が有効利用される。これにより、原料として調達する水素量を低減することができる。
【0101】
未反応の二酸化炭素ガスが二酸化炭素分離装置3で回収され、電解還元装置2に原料の二酸化炭素ガスとして供給されるため、液体燃料製造システム1から排出される二酸化炭素量を低減することができる。
【0102】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、電解還元装置2及び二酸化炭素分離装置3は他の様々な構成を適用してもよい。以下に、電解還元装置2及び二酸化炭素分離装置3の他の例について説明する。
【0103】
図6に、3室型の電解還元装置300の一例を示す。電解還元装置300は、互いに区画されたカソードガス室301、カソード液室302、及びアノード液室303を有する電解セル304を有するとよい。カソードガス室301とカソード液室302とはガス拡散電極としてのカソード306によって区画されている。カソード液室302とアノード液室303とはイオン伝導性を有する隔壁307によって区画されている。アノード308は、アノード液室303に配置されている。カソードガス室301には、気体の二酸化炭素が供給される。カソード液室302には、カソード液が供給される。アノード液室303には、アノード液が供給される。アノード308及びカソード306は直流電源309に接続されている。
【0104】
アノード液及びカソード液は、電解質が溶解した水溶液である。電解質は、カリウム、ナトリウム、リチウム、又はこれらの化合物の少なくとも1つを含む。電解質は、例えば、LiOH、NaOH、KOH、LiCO、NaCO、KCO、LiHCO、NaHCO、及びKHCOからなる群の少なくとも1つを含むとよい。
【0105】
カソード306は、ガス拡散電極であり、ガス拡散層311と、マイクロポーラス層312とを有する。ガス拡散層311は、二酸化炭素を含む気体を透過するが、カソード液を含む水溶液の透過を抑制する。マイクロポーラス層312は、二酸化炭素を含む気体とカソード液を含む水溶液とを共に透過させる。ガス拡散層311及びマイクロポーラス層312はそれぞれ平面状に形成されている。ガス拡散層311はカソードガス室301側に配置され、マイクロポーラス層312はカソード液室302側に配置されている。
【0106】
ガス拡散層311は、例えばカーボンペーパーやカーボンフェルト、カーボンクロス等の多孔質の導電性基材の表面に、ポリテトラフルオロエチレン等の撥水性被膜を形成したものであってよい。導電性基材は、直流電源309の負極に接続され、電子の供給を受ける。マイクロポーラス層312は、ガス拡散層311の表面にカーボンブラック等を用いて形成され、触媒を担持している。触媒は、公知の二酸化炭素還元触媒であってよく、例えば銅等の第11族元素、亜鉛等の第12族元素、ガリウム等の第13族元素、ゲルマニウム等の第14族元素、又はこれらの金属化合物の少なくとも1種を含む。金属化合物は、酸化物、硫化物、リン化物の少なくとも1つを含む。触媒は、二酸化炭素を還元してエチレンを生成するために適したものが好ましく、例えば銅又は銅化合物が好ましい。マイクロポーラス層312にはイオン交換樹脂等のバインダーが加えられてもよい。
【0107】
アノード308は、例えば、チタニウム、ニッケル、イリジウム、マンガン、白金、金、銀、銅、鉄、鉛等の金属材料又はこれらの金属合金材料や金属酸化物、カーボン等の炭素系材料又は導電性セラミックで構成されている。アノード308の形状は、平板、複数の開口を備えた平板、メッシュ、及び多孔体であってよい。平板に形成される開口の形状は、円形、ひし形、星形等であってよい。平板は、波形や湾曲に形成されてもよく、表面に凹凸を有してもよい。アノード308には、白金やイリジウム等の酸素発生触媒が担持されている。アノード308は、隔壁307のアノード液室303側の面に設けられてもよい。
【0108】
直流電源309は、火力発電や原子力発電、太陽光発電、風力発電、水力発電等によって得られた電力を、必要に応じて直流に変換し、カソード306及びアノード308に供給する。二酸化炭素排出量の削減の観点から、自然エネルギー(再生可能エネルギー)を利用した太陽光発電や風力発電、水力発電等によって得られた電力を直流電源309として使用することが好ましい。直流電源309は、アノード308に対してカソード306が負電位になるように電圧を印加する。直流電源309は、参照電極を使用してカソード306の電位を取得し、カソード306の電位が所定の範囲内となるように印加する電圧を制御するとよい。
【0109】
カソードガス室301は、入口314及び出口315を有する。二酸化炭素ガスは、入口314から供給され、出口315から排出される。カソードガス室301の出口315は、ガス循環路316を介して入口314に接続されている。入口314は、第1供給通路46に接続されるとよい。
【0110】
カソード液室302は、入口317及び出口318を有する。カソード液室302の入口317及び出口318は、カソード液循環路319によって接続されている。同様に、アノード液室303は、入口321及び出口322を有する。アノード液室303の入口321及び出口322は、アノード液循環路323によって接続されている。入口321は、第2供給通路53に接続されるとよい。カソード液循環路319には、カソード側気液分離装置325が設けられている。アノード液循環路323には、アノード側気液分離装置326が設けられている。また、カソード液循環路319及びアノード液循環路323のそれぞれには、カソード液及びアノード液の電解質濃度を所定の範囲に調節するための電解質濃度制御装置327、328が設けられているとよい。電解質濃度制御装置327、328は、カソード液及びアノード液の電解質濃度を検出するセンサと、所定の濃度の新しいカソード液及びアノード液を供給する電解質液供給機と、循環するカソード液及びアノード液の一部を排出する排水装置とを含むとよい。
【0111】
また、ガス循環路316には内部を循環するガスの一部を排出するガス循環流量調節装置330が設けられている。ガス循環流量調節装置330の排出口は、カソード側出口通路331に接続されている。カソード側出口通路331には、カソード側気液分離装置325のガス排出通路が接続されている。ガス循環流量調節装置330は、カソード側出口通路331にガスを排出することによって、ガス循環路316及びカソードガス室301を循環するガスの流量及び圧力を調節する。ガス循環流量調節装置330によって、カソードガス室301のガス圧は、カソード液室302の液圧よりも所定値高くなるように維持されている。これにより、カソード液室302のカソード液がカソード306を通過してカソードガス室301に流入することが抑制されている。カソードガス室301内のガスの一部は、カソード306を通過してカソード液室302に流入する。カソードガス室301内からカソード液室302に流入するガスの量は、少ないことが好ましい。
【0112】
カソードガス室301の二酸化炭素はカソード306のガス拡散層311の内部に拡散し、マイクロポーラス層312において還元され、生成物が得られる。生成物は、エチレン及びメタンを主生成物として含み、水素、一酸化炭素、エタノール、ギ酸等の副生成物を微小量含む。生成物の大部分は、カソード306のカソードガス室301側に発生する。なお、生成物の一部は、カソード306のカソード液室302側に発生する。カソード液室302内の生成物には、カソード液室302内に流入した未反応の二酸化炭素が混入する。同様に、カソードガス室301内の生成物には、未反応の二酸化炭素が混入する。
【0113】
カソード306のカソード液室302側に発生した生成物の内、エチレン、メタン、水素、一酸化炭素は気体であり、未反応の二酸化炭素と共にカソード液循環路319のカソード側気液分離装置325によってカソード液から分離され、カソード側出口通路331に流れる。生成物の内のエタノール、ギ酸は、液体でありカソード液と共にカソード液循環路319を循環し、電解質濃度制御装置327からカソード液と共に排出される。カソード液中のエタノールは蒸留等によって分離され、酸素燃焼装置11に供給されるとよい。
【0114】
カソード306のカソードガス室301側に発生した生成物の内、エチレン、メタン、水素、一酸化炭素は、未反応の二酸化炭素と共にガス循環路316を循環し、ガス循環流量調節装置330からカソード側出口通路331に排出される。カソード側出口通路331は、二酸化炭素分離装置3に接続されるとよい。
【0115】
アノード308では、アノード液中の水及び水酸化物イオンが酸化され、酸素が発生する。酸素は、気体であり、アノード液循環路323のアノード側気液分離装置326によってアノード液から分離され、アノード側出口通路332に流れる。アノード側出口通路332は、二酸化炭素分離装置152に接続されるとよい。
【0116】
図7に、二酸化炭素分離装置3の他の例を示す。二酸化炭素分離装置400は、カソードである第1ガス拡散電極401と、アノードである第2ガス拡散電極402と、第1ガス拡散電極401及び第2ガス拡散電極402の間に形成され、酸化還元に伴ってプロトンを吸脱着する化合物を含む電解液が供給される液室403と、第1ガス拡散電極401によって液室403に対して区画され、生成ガスが供給される第1室404と、第2ガス拡散電極402によって液室403に対して区画され、生成ガスから分離された二酸化炭素が流れる第2室405とを有する。本実施形態では、二酸化炭素分離装置400は、第2ガス拡散電極402、液室403、第1ガス拡散電極401の順に配置された第1ユニットと、第1ガス拡散電極401、液室403、第2ガス拡散電極402の順に配置された第2ユニットとが互いに間隔をおいて交互に複数積層されたスタック409を有する。互いに隣り合う2つの第1ガス拡散電極401の間には第1室404が形成され、互いに隣り合う2つの第2ガス拡散電極402の間には第2室405が形成されている。
【0117】
第1ガス拡散電極401及び第2ガス拡散電極402のそれぞれは、多孔質導電体を有する。多孔質導電体は、反応面積を増大させるために比表面積が大きいことが好ましい。好ましくは、多孔質導電体の比表面積はBET吸着測定において1m/g以上、より好ましくは100m/g以上、更に好ましくは500m/g以上である。多孔質導電体の表面抵抗は低いほど好ましく、1kΩ/□以下、より好ましくは200Ω/□以下である。多孔質導電体は、例えば、カーボンシート、カーボンクロス、カーボンペーパーであるとよい。
【0118】
第1ガス拡散電極401及び第2ガス拡散電極402は、溶液抵抗による電圧降下(IRドロップ)をできる限り小さくするため、互いに接触しない程度の距離で可能な限り近接させることが好ましい。第1ガス拡散電極401及び第2ガス拡散電極402の間に、セパレータが挿入されてもよい。セパレータは、絶縁性を有し、かつ電解液を透過させる。セパレータは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンに代表されるポリオレフィン多孔質膜、ポリエステル、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミドの多孔質膜及び不織布等から選択されるとよい。
【0119】
複数の第1ガス拡散電極401は直流電源411の負極に接続され、複数の第2ガス拡散電極402は直流電源411の正極に接続されている。
【0120】
電解還元装置2のカソード出口通路60は、混合ガス入口通路412を介して各第1室404の入口に接続されている。混合ガス入口通路412の下流部は、各第1室404に対応して分岐している。混合ガス入口通路412の上流部には、生成ガスを各第1室404に向けて送出するブロア413が設けられている。
【0121】
各第1室404の出口のそれぞれは、複数の第1生成ガス出口通路414を介して第1ベッセル415に接続されている。第1ベッセル415は、第2生成ガス出口通路416に接続されている。各第1室404から排出された生成ガスは、複数の第1生成ガス出口通路414のいずれか1つ、第1ベッセル415、第2生成ガス出口通路416を通過して二酸化炭素分離装置400から排出される。第2生成ガス出口通路416には、第1ベッセル415側から順に圧力制御弁418、圧力制御弁419が設けられている。各第1室404の出口のそれぞれは、各第1室404の入口のそれぞれより上方に配置されているとよい。
【0122】
各第2室405の入口と出口とは、二酸化炭素循環通路421によって接続されている。各第2室405の出口のそれぞれは、各第2室405の入口のそれぞれよりも下方に配置されているとよい。二酸化炭素循環通路421には、第2室405の出口側から入口側にかけて、第2ベッセル422、ブロア423、第3ベッセル424が順に設けられている。各第2室405及び二酸化炭素循環通路421には、主として二酸化炭素ガスが流れている。
【0123】
第2ベッセル422は、気液分離装置として機能する。第2ベッセル422の底部は各第2室405の出口のそれぞれよりも下方に配置され、二酸化炭素循環通路421は各第2室405の出口のそれぞれから第2ベッセル422に向けて下っているとよい。これにより、各液室403から各第2室405に電解質液が漏出した場合、漏出した液体は第2ベッセル422の底部に滞留する。
【0124】
第2ベッセル422内の気体成分は、第2ベッセル422の頂部からブロア423に流れる。ブロア423は、二酸化炭素循環通路421内のガスを第3ベッセル424側に向けて送出する。二酸化炭素循環通路421には、循環する二酸化炭素ガスを電解還元装置2のカソード室31の入口44に戻すための二酸化炭素戻し通路425が接続されている。二酸化炭素戻し通路425は、第3ベッセル424と第1供給通路46とに接続されているとよい。二酸化炭素戻し通路425には、圧力制御弁426が設けられている。
【0125】
各液室403の入口のそれぞれは、電解液供給通路431を介して電解液タンク432に接続されている。電解液供給通路431は、各液室403に対応して分岐している。電解液供給通路431には、電解液タンク432側から順に、ポンプ433、流量制御弁(圧力制御弁)434、及び温度調節器435が設けられている。ポンプ433は、電解液を電解液タンク432から各液室403に送出する。温度調節器435は、電解液の温度を調節する。温度調節器435は、電解液を例えば常温から80℃以下に調節する。各液室403の出口のそれぞれは、第1電解液戻し通路437を介して電解液タンク432に接続されている。これにより、電解液は、電解液タンク432、電解液供給通路431、各液室403、及び第1電解液戻し通路437を循環する。
【0126】
電解液供給通路431におけるポンプ433と流量制御弁434との間の部分は、循環通路438を介して電解液タンク432に接続されている。
【0127】
電解液タンク432は、電解液補給通路441を介して高濃度電解液タンク442に接続されている。高濃度電解液タンク442には、高濃度電解液が貯留されている。高濃度電解液は、電解液タンク432に貯留されている電解液よりも電解質及び後述する酸化還元に伴ってプロトンを吸脱着する化合物の濃度が高い。電解液補給通路441には、高濃度電解液を高濃度電解液タンク442から電解液タンク432に向けて送出するポンプ443が設けられている。
【0128】
第2ベッセル422の底部は、第2電解液戻し通路445を介して電解液タンク432に接続されている。第2電解液戻し通路445には、第2ベッセル422から電解液タンク432に向けて電解液を送出するポンプ446が設けられている。これにより、二酸化炭素ガスから分離され、第2ベッセル422の底部に溜まった電解液は、第2電解液戻し通路445を介して電解液タンク432に戻される。
【0129】
電解液タンク432の頂部は、ガス戻し通路447を介して第2生成ガス出口通路416における圧力制御弁418と圧力制御弁419との間の部分に接続されている。ガス戻し通路447には温度調節器448が設けられている。電解液タンク432の気相の圧力は、圧力制御弁419によって制御され、電解液タンク432内のガスは第2生成ガス出口通路416に流れる。
【0130】
電解液は、二酸化炭素分離装置3の電解液と同様であってよい。また、電解液には、酸化還元に伴ってプロトンを吸脱着する化合物が溶解しているとよい。電解液に溶解した化合物は、二酸化炭素分離装置3の電解液に溶解した化合物と同様であってよい。
【0131】
次に、図7を参照して二酸化炭素分離装置400の動作について説明する。各液室403のカソードとしての第1ガス拡散電極401では、上記の化学式(7)のように、電解液中のベンゾキノン系化合物(Q)が還元してヒドロキノン系化合物(QH)になる。
【0132】
このとき、第1ガス拡散電極401の近傍においてプロトン(H)がヒドロキノン系化合物に吸蔵されるため、第1ガス拡散電極401の近傍の電解液のpHが還元反応前と比べて相対的に高くなる。pHが相対的に高くなると、二酸化炭素は、その性質により、電解液の溶媒としての水に溶け易くなる。これにより、各第1室404の生成ガス中の二酸化炭素が第1ガス拡散電極401を介して各液室403内の電解液に溶解する。そして、上記の化学式(8)~(10)の反応により、電解液中において二酸化炭素は炭酸水素イオンになる。
【0133】
各液室403のアノードとしての第2ガス拡散電極402では、電解液中のヒドロキノン系化合物(QH)が酸化してベンゾキノン系化合物(Q)になる。
【0134】
このとき、第2ガス拡散電極402の近傍においてヒドロキノン系化合物由来のプロトン(H)が放出されるため、第2ガス拡散電極402の近傍の電解液のpHが酸化反応前と比べて相対的に低くなる。pHが相対的に低くなると、上記の化学式(8)~(10)において、炭酸水素イオン、炭酸の平衡状態が炭酸側に偏る。これにより、二酸化炭素が生成される。これにより、電解液中の二酸化炭素が、各第2ガス拡散電極402を介して各第2室405に放出される。このようにして、各第1室404内の混合ガス中の二酸化炭素ガスが、各第2室405にガス状態で分離される。このとき、混合ガス中の炭化水素、酸素、水素等は電解液に溶解せず、第1室404に維持される。これにより、二酸化炭素分離装置400は、混合ガスから二酸化炭素を分離することができる。
【0135】
キノン系化合物の酸化還元反応により、第1ガス拡散電極401側のpHが相対的に高くなり、第2ガス拡散電極402側のpHが相対的に低くなる。これにより、電解液においてpH勾配が形成され、炭酸水素イオン、炭酸、炭酸イオンを第2ガス拡散電極402側に移動させることができる。これにより、第2室405に分離することができる二酸化炭素のガス流量を増加させることができる。
【0136】
二酸化炭素が分離された混合ガス(生成ガス)は、各第1室404から第1ベッセル415を介して第2生成ガス出口通路416に流れる。第2室405に分離された二酸化炭素ガスは、二酸化炭素循環通路421及び各第2室405を循環する。このとき、第2ベッセル422において電解液が二酸化炭素ガスから分離され、第2電解液戻し通路445を介して電解液タンク432に戻される。二酸化炭素循環通路421を流れる二酸化炭素ガスは、圧力制御弁426が開かれることによって、二酸化炭素戻し通路425及び第1供給通路46を介して電解還元装置2に戻される。電解還元装置2は、二酸化炭素分離装置400において生成ガスから分離された二酸化炭素を原料の一部として使用する。
【符号の説明】
【0137】
1 :液体燃料製造システム
2 :電解還元装置
3 :二酸化炭素分離装置
4 :水分離装置
5 :深冷分離装置
6 :第1反応装置
7 :第1分離装置
8 :第2反応装置
9 :第2分離装置
11 :酸素燃焼装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7