(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046875
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】地上デジタル放送信号の信号評価装置及び学習モデル生成装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/005 20060101AFI20240329BHJP
H04B 17/309 20150101ALI20240329BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H04B7/005
H04B17/309
H04L27/26 410
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152215
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】川島 祥吾
【テーマコード(参考)】
5K046
【Fターム(参考)】
5K046AA05
(57)【要約】
【課題】誤り訂正復号や白色雑音付加装置を必要とすることなく、所要C/N又は等価要C/Nを推定する。
【解決手段】学習モデル生成装置は、OFDM方式の受信信号の伝送路応答に基づくデータを説明変数とし、伝送路での所要C/N劣化量を目的変数として、学習モデルを生成する機械学習部と、伝送路での所要C/Nを所要C/N劣化量に変換して機械学習部に出力するデータ変換部と、を備える。信号評価装置は、学習モデル生成装置により生成された学習モデルを備えた学習モデル部と、学習モデル部から出力される、伝送路での所要C/N劣化量を所要C/Nに変換するデータ変換部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
OFDM方式の受信信号の伝送路応答又は該伝送路応答に基づくデータを説明変数とし、伝送路での所要C/N劣化量を目的変数として、学習モデルを生成する機械学習部と、
伝送路での所要C/Nを前記所要C/N劣化量に変換して前記機械学習部に出力するデータ変換部と、
を備えた学習モデル生成装置。
【請求項2】
前記データ変換部を第1のデータ変換部としたときに、
複素数の前記伝送路応答の絶対値を正規化して、複素数の前記伝送路応答を実数部と虚数部に分けて、又は複素数の前記伝送路応答を時間信号領域の遅延プロファイルに変換して、前記機械学習部に前記データとして出力する第2のデータ変換部を備えた、請求項1に記載の学習モデル生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の学習モデル生成装置により生成された学習モデルを備えた学習モデル部と、
前記学習モデル部から出力される、伝送路での所要C/N劣化量を所要C/Nに変換する第3のデータ変換部と、を備えた信号評価装置。
【請求項4】
請求項2に記載の学習モデル生成装置により生成された学習モデルを備えた学習モデル部と、
前記学習モデル部から出力される、伝送路での所要C/N劣化量を所要C/Nに変換する第3のデータ変換部と、
OFDM方式の受信信号の複素数の前記伝送路応答の絶対値を正規化して、前記複素数の伝送路応答を実数部と虚数部に分けて、又は前記複素数の伝送路応答を時間信号領域の遅延プロファイルに変換して前記学習モデル部に出力する第4のデータ変換部と、を備えた信号評価装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の信号評価装置において、前記第3のデータ変換部によって変換された前記所要C/Nを用いて等価C/Nを算出する等価C/N算出部を備えた信号評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上デジタル放送信号の信号評価装置及び学習モデル生成装置に関わり、特に、地上デジタル放送における受信信号の品質評価を行う信号評価装置及び信号評価用の学習モデル生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送の高品質化及び高機能化に向けて、現行の地上デジタル放送の伝送方式であるISDB-T方式の特長を継承した次世代地上放送の伝送方式(以下、「地上放送高度化方式」又は単に「高度化方式」と呼ぶ)の検討が進められている(例えば、非特許文献1参照)。
高度化方式は、現行の地上デジタル放送と同様に、マルチパス耐性の高いOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)伝送方式を採用しており、SFN(Single Frequency Network)による単一周波数による放送ネットワークの構築が可能である。高度化方式は、内符号にLDPC(Low-Density-Parity-Bit)符号、外符号にBCH符号を用いることで伝送耐性をISDB-Tから向上させている。
OFDMは、マルチパス(多重波伝播又は多重波伝送路という)を有する受信環境においては、受信信号の周波数特性にひずみ(リプル)が生じ、これに伴いサブキャリア毎のC/Nが変化し、ビット誤り率が変動する。主波に対して遅延波の電力が大きく、リプルが大きいほどビット誤り率は大きくなり、基準となるビット誤り率を達成するための受信C/Nは増加する。
【0003】
受信信号の周波数特性のひずみは、送信局からの信号をエリアで受信する場合や、SFN放送波中継において回り込みが生じた場合に生じる。SFN放送波中継とは、中継局において上位局からの放送波を受信して再送信する中継方法であり、回り込みとは、再送信した信号が再度中継局の受信アンテナに入り込み、上位局からの受信信号に対するマルチパスとなり、周波数特性にひずみを生じさせる現象である。
【0004】
マルチパスの影響を評価する指標として、MER(Modulation Error Ratio)や等価C/Nがある。このうち等価C/Nはマルチパスによる受信特性の劣化を白色雑音に換算したものであり、放送ネットワーク設計に用いられる指標である(例えば、非特許文献2参照)。
等価C/Nであるγ
eqは、マルチパスのない理想的な環境で特定のBER(Bit Error Rate)を与えるC/N(所要C/N)をγ
ref、マルチパスを含んだ伝送路での所要C/Nをγとして、下記の数式1(以下の数1)を用いて得られる。
【数1】
そのため等価C/Nであるγ
eqを測定するためには、受信機に対してC/Nを調整しながら入力し、その時のBERを測定して所要C/Nであるγを求める必要がある。
【0005】
過去に、等価C/Nを周波数特性から理論的に算出する方法が提案されている(非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】NHK技研 R&D No.172 P2~P47 2018.11
【非特許文献2】平川他 “地上デジタル放送における回線設計の一考察” 映情学総大 4-10 2003
【非特許文献3】三木 “地上デジタルテレビジョン放送の伝送特性と放送波中継SFNの回り込み波に関する一検討” 映情学誌 54 (4), 609-614, 2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の非特許文献3で提案された方法では、地上デジタル放送の運用パラメータである64QAMを前提とした理論式を用いているため、より多値の変調多値数、不均一なコンスタレーションでの運用が想定される高度化方式には直接適用できない。また、この方法は誤り訂正を含めていない、遅延波が単一波である、といった条件で検討されている。実運用では誤り訂正を含めた評価が必要であり、また実環境では
図7-
図9の周波数特性に示すようにマルチパスが単一でなく、複数のマルチパスの場合が多く、この手法が直接適用できないという課題がある。
図7はマルチパスがない場合の周波数特性、
図8は単一のマルチパスの場合の周波数特性、
図9は複数のマルチパス場合の周波数特性を示す。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、誤り訂正復号や白色雑音付加装置を必要とすることなく、誤り訂正を含み、また遅延波が単一でない場合の信号にも対応した信号評価装置及び学習モデル生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明に係る学習モデル生成装置は、OFDM方式の受信信号の伝送路応答又は該伝送路応答に基づくデータを説明変数とし、伝送路での所要C/N劣化量を目的変数として、学習モデルを生成する機械学習部と、
伝送路での所要C/Nを前記所要C/N劣化量に変換して前記機械学習部に出力するデータ変換部と、
を備えた学習モデル生成装置である。
【0010】
(2) 上記(1)に記載の学習モデル生成装置においては、前記データ変換部を第1のデータ変換部としたときに、
複素数の前記伝送路応答の絶対値を正規化して、複素数の前記伝送路応答を実数部と虚数部に分けて、又は複素数の前記伝送路応答を時間信号領域の遅延プロファイルに変換して、前記機械学習部に前記データとして出力する第2のデータ変換部を備えてもよい。
【0011】
(3) 本発明に係る第1の信号評価装置は、上記(1)に記載の学習モデル生成装置により生成された学習モデルを備えた学習モデル部と、前記学習モデル部から出力される、伝送路での所要C/N劣化量を所要C/Nに変換する第3のデータ変換部と、を備えた信号評価装置である。
【0012】
(4) 本発明に係る第2の信号評価装置は、上記(2)に記載の学習モデル生成装置により生成された学習モデルを備えた学習モデル部と、前記学習モデル部から出力される、伝送路での所要C/N劣化量を所要C/Nに変換する第3のデータ変換部と、OFDM方式の受信信号の複素数の前記伝送路応答の絶対値を正規化して、前記複素数の伝送路応答を実数部と虚数部に分けて、又は前記複素数の伝送路応答を時間信号領域の遅延プロファイルに変換して前記学習モデル部に出力する第4のデータ変換部と、を備えた信号評価装置である。
(5) 上記(3)又は(4)に記載の信号評価装置において、前記第3のデータ変換部によって変換された前記所要C/Nを用いて等価C/Nを算出する等価C/N算出部を備えた信号評価装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、誤り訂正復号や白色雑音付加装置を必要とすることなく、所要C/N又は等価C/Nを推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態となる学習モデル生成装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】マルチパスのない理想的な環境、マルチパスを含む伝送路でのビット誤り率及びより多くのマルチパスを含む伝送路でのビット誤り率を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態となる信号評価装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】実測値Yに対する予測値Ypredの結果を示す図である。
【
図6】予測値Ypredに対する予測誤差Ypred-Yの結果を示す図である。
【
図7】マルチパスがない場合の周波数特性を示す図である。
【
図8】単一のマルチパスの場合の周波数特性を示す図である。
【
図9】複数のマルチパスの場合の周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態となる学習モデル生成装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、学習モデル生成装置10は、入力データ変換部101、出力データ変換部102及び機械学習部103を備えている。入力データ変換部101は第2のデータ変換部、出力データ変換部102はデータ変換部又は第1のデータ変換部となる。
【0016】
学習モデル生成装置10に入力される、様々な受信信号の伝送路応答Hと、伝送路応答Hに対応するγ(マルチパスを含んだ伝送路での所要C/N)とが、次のように準備される。
本実施形態では、様々な伝送路応答Hとして、実環境で取得したデータおよび計算により生成したデータを合計して220種類の伝送路応答を用いた。
図2に示す系統を用いて、220種類の伝送路応答を再現した伝送路、および白色雑音を用いて、γを測定する。
図2は、γ測定系統を示す図である。
図2に示すように、変調部201で発生させたOFDM信号に対して、220種類の伝送路応答を再現した模擬伝送路202で伝送路応答Hを再現した。その後、加算器203が伝送路応答Hと、白色雑音発生部204で生成した白色雑音とを加算し、復調部205で、信号の復調を行い、γ測定部206でγを測定する。
以上のように、220種類のHとγの対応関係を得て、220種類のHとγとを学習モデル生成装置10に入力する。
図1において、入力データ変換部101に入力されるHは、OFDM信号のサブキャリア数分の複素数であり、マルチパスのある伝送路応答となる。例えば、伝送路応答Hは、15121個の複素数である。入力データ変換部101は、複数数の伝送路応答Hを入力データXに変換する。
入力データ変換部101は、例えば、伝送路応答Hの複数数の絶対値を正規化し、15121個の実数値とし、機械学習部103に、入力データXとして入力する。
入力データ変換部101は、要素数を2倍にして、前半部分を実数部、後半部分を虚数部として、入力データXとしてもよい。また入力データ変換部101は、複素数の伝送路応答Hを時間信号領域の遅延プロファイルに変換して、入力データXとしてもよい。
【0017】
出力データ変換部102は、複素数の伝送路応答Hに対応するγを、γ-γrefに変換して、機械学習部103に、出力データYとして入力する。γ-γrefは、マルチパスのない伝送路応答からの劣化量である。
【0018】
本実施形態では、γは内符号復号後のBER<10
-7を与えるC/Nの値とした。γ
refは、マルチパスのない理想的な環境で特定のBER(ビット誤り率)を与えるC/N(所要C/N)であり、次のようにして求められる。
変調信号(OFDM信号)に対して白色雑音を付加することでC/Nを設定し、その信号を復調器に入力したときBER(ビット誤り率)を測定する。C/Nをパラメータとすることで、C/Nに対するBERが
図3のように得られる。
図3には、マルチパスのない理想的な環境でのビット誤り率、マルチパスを含む伝送路でのビット誤り率及びより多くのマルチパスを含む伝送路でのビット誤り率に対するγとγ
refが示されている。マルチパスのない理想的な環境でビット誤り率がある基準以下(例えば10
-7以下)となる最小のC/Nがγ
refとなる。γ
A-γ
refはマルチパスのない理想的な環境でのC/Nから、マルチパスを含む伝送路R
AのC/Nへの劣化量、γ
B-γ
refはマルチパスのない理想的な環境でのC/Nから、より多くのマルチパスを含む伝送路R
BのC/Nへの劣化量を示す。
BER(ビット誤り率)は、計算機シミュレーション上で変調器、白色雑音発生器、復調器を模擬することで算出する場合、又は実機を用いる場合があるが測定系統としては同じとなる。
測定系統は、例えば、平林祐紀他 “地上デジタルテレビジョン放送高度化方式の伝送特性評価-フィールドで取得したチャネル応答に対する固定受信特性-” 映情学技報,vol.46, No.17, pp.5-8(Jun. 2022)に室内実験系統(
図2)として記載されている。
【0019】
例えば、マルチパスのない伝送路応答におけるγrefを20.0dBとすると、複素数のある伝送路応答Hiに対応するγiが20.3dBの場合は、出力データY(γi-γref)として0.3dBを機械学習部103に入力する。
【0020】
機械学習部103は、入力データ変換部101から入力された入力データX、及び出力データ変換部102から入力された出力データYの組である教師データに基づいて教師あり学習を行うことにより、入力データX(変換処理された伝送路応答H)に基づいて規定される、出力データY(マルチパスのない伝送路応答からの劣化量(γ-γref))を求める学習モデルを生成する。入力データ変換部101から入力された入力データXは、「OFDM方式の受信信号の伝送路応答に基づくデータ」となる。
【0021】
教師あり学習は、例えば、リッジ回帰を用いることができる。リッジ回帰は、正則化された線形回帰の一つで、過学習を防ぐために、線形回帰に、学習した重みの二乗(L2正則化項)を加えたものである。線形回帰とは、説明変数(例えば、入力データX)に対して目的変数(例えば、出力データY)を線形またはそれから近い値で表すための数式(学習モデル)をいう。
教師あり学習は、リッジ回帰に限定されず、その他の方法、例えば、中間層を利用する順伝播型ニューラルネットワーク(FFNN)を用いることができる。
リッジ回帰及び順伝播型ニューラルネットワークは、当業者にとってよく知られているので詳細な説明を省略する。
【0022】
なお、入力データ変換部101は、伝送路応答Hを機械学習部103に直接入力する場合には無くともよく、その場合、説明変数は伝送路応答Hとなる。
説明変数を伝送路応答Hとした場合、機械学習部103は、伝送路応答H、及び出力データ変換部102から入力された出力データYの組である教師データに基づいて教師あり学習を行うことにより、伝送路応答Hに基づいて規定される、出力データY(マルチパスのない伝送路応答からの劣化量(γ-γref))を求める学習モデルを生成する。
【0023】
次に、学習モデル生成装置10により生成された学習モデルを用いた信号評価装置について説明する。信号評価装置は、所要C/N推定装置となる。
図4は本発明の一実施形態となる信号評価装置の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、信号評価装置30は、FET(Fast Fourier Transformation)部301、チャネル推定部302、入力データ変換部303、学習モデル部304、出力データ変換部305及び等価C/N算出部306を備えている。説明変数を伝送路応答Hとした学習モデルが生成され、学習モデル部304がこの学習モデルを用いる場合は、入力データ変換部303は設けない。
【0024】
FET部301は、OFDM信号を受信し、周波数領域に変換する。
チャネル推定部302は、SP(Scattered Pilot)信号等を用いることで信号の伝送路応答Hを取得する。
入力データ変換部303は、入力データ変換部101と同様な構成を有し、例えば、得られた複素数の伝送路応答Hの絶対値を正規化し、15121個の実数値として、学習モデル部304に入力する。入力データ変換部303は第4のデータ変換部となる。
【0025】
学習モデル部304は、学習モデルを用いてマルチパスのない伝送路応答からの劣化量(γ-γref)を出力する。
出力データ変換部305は、出力データ(γ-γref)にγrefの値を加算して、マルチパスを含んだ伝送路での所要C/Nであるγを出力する。出力データ変換部305は、出力データ変換部102とは逆のデータ変換を行う、第3のデータ変換部となる。
等価C/N算出部306は、出力データ変換部305から出力されるγから、数式1を用いてγeq(等価C/N)を取得する。等価C/N算出部306は等価C/Nを求める場合に設けられ、信号評価装置30からγeq(等価C/N)でなく、γ(所要C/N)を出力する場合は設けなくともよい。
【0026】
信号評価装置30を用いた所要C/Nの推定と、評価結果とについて以下に説明する。
学習データとして前述の220通りのHとγの組み合わせと、学習データと独立したテストデータとして、計算による環境と実環境との合計30通りのHとγの組み合わせと、を用いて、この推定手法の評価を実施した。
機械学習で一般的に用いられるk-分割交差検証により評価を実施した。手順は以下の通りである。
(1)学習データと独立したテストデータとを用意する。
(2)220個の学習データをk個に分割する。分割された学習データの1つを検証用、残りのk-1個をトレーニングとしてk回、検証用のデータを残りのk-1個のうちの1つに順次替えて、学習と検証を繰り返す。学習では、トレーニング用データを用いてモデルを構築し、検証では、検証用データ用いてモデルの予測性能を推定する。
(3)k回の検証で優れた学習モデルを用いて、上記(1)で用意した独立のテストデータを評価する。評価指標として、学習モデルを含む信号評価装置30を用いた所要C/Nの予測値Ypredと、所要C/Nの実測値Yとの差分(Ypred-Y)、及び以下の数式2(以下の数2)の決定係数R
2を用いた。
【数2】
決定係数R
2は回帰モデルの当てはまりの良さを示す値で、1に近いほど良好にモデル化できていることを示す。
【0027】
具体例を示すと、上記のk-分割交差検証において、k=5として試行し、決定係数が最も良好となった学習モデルの場合の決定係数R
2は0.96であった。
決定係数が最も良好となった学習モデルを用いて独立の30個のテストデータを評価した結果を
図5及び
図6に示す。
図5は、実測値Yに対する予測値Ypredの結果を示し、
図6は予測値Ypredに対する予測誤差Ypred-Yの結果を示す。
【0028】
計算による環境と実環境とを含む30個のテストデータにおける決定係数は0.95であり、学習データと同等の値となった。予測誤差は概ね実測値から±0.25dB以内となり、学習データから独立したデータに対しても所要C/Nを予測できることを確認した。
【0029】
以上説明した実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記実施形態及び実施例のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 学習モデル生成装置
101 入力データ変換部
102 出力データ変換部
103 機械学習部
20 γ測定系統
201 変調部
202 模擬伝送路
203 加算器
204 白色雑音発生部
205 復調部
206 γ測定部
30 信号評価装置
301 FET部
302 チャネル推定部
303 入力データ変換部
304 学習モデル部
305 出力データ変換部
306 等価C/N算出部