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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047021
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】積層体および包装袋
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240329BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240329BHJP
   B65D 33/00 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B32B27/00 C
B65D65/40 D
B65D33/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152432
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】桑原 弘嗣
【テーマコード(参考)】
3E064
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E064AA03
3E064AD15
3E064BA26
3E064BB03
3E064EA23
3E064HM01
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB62
3E086CA01
3E086CA11
3E086CA28
3E086CA29
3E086CA35
3E086DA08
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100BA03
4F100CB00A
4F100CB00B
4F100CC00A
4F100CC00B
4F100DB01
4F100EH17A
4F100EH17B
4F100GB15
4F100HB31C
4F100JB06A
4F100JB06B
4F100JB09C
4F100JL16
(57)【要約】
【課題】樹脂をリサイクルしてもインキの混入を抑制することが可能な積層体および包装袋を提供する。
【解決手段】非水溶性である複数の樹脂層の層間に、水溶性インク(例えば水溶性印刷層14)がパートコートされている積層体10である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶性である複数の樹脂層の層間に、水溶性インクがパートコートされていることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記複数の樹脂層は、樹脂フィルム、接着剤、押出樹脂、コート層から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
接着層を介してラミネートされた複数の樹脂フィルムと、
前記複数の樹脂フィルムの層間において、前記複数の樹脂フィルムの少なくとも一方に、前記水溶性インクがパターン印刷された水溶性印刷層と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記水溶性印刷層と前記積層体の端部との間で、前記複数の樹脂フィルムの間が前記水溶性印刷層を介在しないで前記接着層により接着されている端部接着領域を有することを特徴とする請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記端部接着領域の内側では、前記水溶性印刷層がベタ印刷されていることを特徴とする請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
樹脂フィルムの外面に前記水溶性インクがパターン印刷された水溶性印刷層と、
前記水溶性印刷層を覆うコート層と、を有し、
前記コート層が、前記水溶性印刷層の周囲で前記樹脂フィルム上を覆う端部コート領域を有することを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
前記複数の樹脂層に含まれる樹脂フィルムが、ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂のみからなることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
少なくとも1の部材が、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体から形成された包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体および包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、印刷付き包装材料の製造方法において、フィルムの片面にインキで印刷して文字や模様を施し、印刷面にインキでベタ印刷層を形成させ、ベタ印刷層の上に接着剤層を介してシーラント層を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-314723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、プラスチック製容器包装の使用後の回収に関して、2種以上の樹脂を含む包装袋は、プラスチック製容器包装としてのリサイクルが難しいという問題がある。リサイクルを容易にするため、ポリエチレン系樹脂など、単一の樹脂を用いるモノマテリアルの容器包装が提唱されている。
【0005】
プラスチック製容器包装に印刷層が含まれていると、リサイクル樹脂にインクが混入し得る。この場合、リサイクル樹脂の利用可能な用途が制約されたり、リサイクル樹脂の物性が低下したりするおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、樹脂をリサイクルしてもインキの混入を抑制することが可能な積層体および包装袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を含む。
第1の態様は、非水溶性である複数の樹脂層の層間に、水溶性インクがパートコートされていることを特徴とする積層体である。
第2の態様は、第1の態様において、前記複数の樹脂層は、樹脂フィルム、接着剤、押出樹脂、コート層から選択される1種以上であることを特徴とする。
【0008】
第3の態様は、第1または第2の態様において、接着層を介してラミネートされた複数の樹脂フィルムと、前記複数の樹脂フィルムの層間において、前記複数の樹脂フィルムの少なくとも一方に、前記水溶性インクがパターン印刷された水溶性印刷層と、を有することを特徴とする。
【0009】
第4の態様は、第3の態様において、前記水溶性印刷層と前記積層体の端部との間で、前記複数の樹脂フィルムの間が前記水溶性印刷層を介在しないで前記接着層により接着されている端部接着領域を有することを特徴とする。
第5の態様は、第4の態様において、前記端部接着領域の内側では、前記水溶性印刷層がベタ印刷されていることを特徴とする。
【0010】
第6の態様は、第1~5のいずれか1の態様において、樹脂フィルムの外面に前記水溶性インクがパターン印刷された水溶性印刷層と、前記水溶性印刷層を覆うコート層と、を有し、前記コート層が、前記水溶性印刷層の周囲で前記樹脂フィルム上を覆う端部コート領域を有することを特徴とする。
【0011】
第7の態様は、第1~6のいずれか1の態様において、前記複数の樹脂層に含まれる樹脂フィルムが、ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂のみからなることを特徴とする。
第8の態様は、少なくとも1の部材が、第1~7のいずれか1の態様の積層体から形成された包装袋である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水溶性インクがパートコートされているので、積層体を粉砕してから水洗することにより、水溶性インクを溶出させることができ、樹脂をリサイクルしてもインキの混入を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態の積層体を例示する断面図である。
図2】第1実施形態の積層体を粉砕した状態を例示する断面図である。
図3】第1実施形態の積層体を粉砕後に水洗した状態を例示する断面図である。
図4】積層体の端部に沿ってパターン化した水溶性印刷層を例示する平面図である。
図5】部材の形状に沿ってパターン化した水溶性印刷層を例示する平面図である。
図6】内部接着領域を有する積層体を粉砕した状態を例示する断面図である。
図7】第2実施形態の積層体を例示する断面図である。
図8】包装袋の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0015】
実施形態の積層体は、非水溶性である複数の樹脂層の層間に、水溶性インクがパートコートされていることを特徴とする積層体である。パートコートは、積層体の全面にコートされているのではなく、積層体の一部にコートされていることをいう。このため、積層体は、少なくとも一部の領域に、水溶性インクがコートされていない領域を有する。
【0016】
複数の樹脂層の層間に水溶性インクがパートコートされていることから、水溶性インクの周囲は全部または大部分が樹脂層で覆われて、水溶性インクの溶出が抑制される。また、樹脂層の層間に水溶性インクが積層されていることから、積層体を粉砕すれば、非水溶性である樹脂中に水溶性成分を分散、混練する場合と比べて、水溶性インクを容易に溶出させることができる。
【0017】
複数の樹脂層としては、特に限定されないが、樹脂フィルム、接着剤、押出樹脂、コート層から選択される1種以上が挙げられる。これらの樹脂層は、水に対して不溶性または難溶性の樹脂を含む。非水溶性である樹脂層が、一部に水溶性の成分を含んでもよい。
【0018】
水溶性インクの配置される層間は、少なくとも一方の樹脂層が樹脂フィルムからなり、樹脂フィルムを印刷基材とした上に水溶性インクが印刷されることが好ましい。印刷基材が表面に接着剤、コート層等を有する上に水溶性インクを印刷することもできる。溶融した押出樹脂の上に非接触の方式で、水溶性インクをインクジェット、塗布等により成膜することも可能である。水溶性インクを印刷した上に、接着剤、コート層等を有する樹脂フィルムをラミネートすることも可能である。
【0019】
水溶性インクとしては、特に限定されないが、水性溶媒中に水溶性樹脂、着色料等を溶解または分散させて含有する組成物が挙げられる。水性溶媒としては、特に限定されないが、水を主体とする溶媒であればよく、水以外の有機溶媒、酸、アルカリ等が添加されていてもよい。また、水溶性インクには、必要に応じて各種の添加剤が添加されてもよい。
【0020】
水溶性インクに用いられる水溶性樹脂としては、特に限定されないが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリオール化合物、ポリアクリル酸、アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の多糖類誘導体などが挙げられる。
【0021】
水溶性インクに用いられる着色料としては、特に限定されないが、有機顔料、無機顔料、カーボン顔料、染料等が挙げられる。水溶性インキが2種以上の着色料を含有してもよい。耐久性等の観点から、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、金属レーキ顔料、ローダミン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料が好ましい。
【0022】
実施形態の積層体は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂を主体とすることが好ましい。これにより、実施形態の積層体を用いて、モノマテリアルの容器包装を実現することができる。この場合、樹脂フィルムまたは押出樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂から形成することが好ましい。
【0023】
図1に、第1実施形態の積層体10を例示する。この積層体10は、接着層13を介してラミネートされた複数の樹脂フィルム11,12と、複数の樹脂フィルム11,12の層間において、水溶性インクがパターン印刷された水溶性印刷層14と、を有する。水溶性印刷層14は、複数の樹脂フィルム11,12の少なくとも一方に印刷される。
【0024】
図示例の水溶性印刷層14は、樹脂フィルム12を印刷基材として印刷されているが、樹脂フィルム11に印刷されてもよく、樹脂フィルム11,12の両方に印刷されてもよい。水溶性印刷層14のパターン印刷は、樹脂フィルム11,12の全面に印刷されるのではなく、水溶性印刷層14が印刷基材となる樹脂フィルム11,12上で印刷されていない領域を含む。水溶性印刷層14の印刷方法は、特に限定されないが、グラビア印刷、凸版印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、インクジェット等が挙げられる。
【0025】
接着層13は、接着剤、アンカーコート剤、押出樹脂等の1種または2種以上から形成されてもよい。接着剤の接着層13は、例えばドライラミネートに用いられる。押出樹脂の接着層13は、例えば押出ラミネートに用いられる。接着層13は2層以上を積層してもよい。例えば、樹脂フィルム11,12上に接着剤を積層した上で、さらに押出樹脂を積層してもよい。
【0026】
接着剤またはアンカーコート剤としては、特に限定されないが、ウレタン系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、ポリエチレンイミン、チタンアルコキシド等の有機チタン化合物等が挙げられる。接着剤やアンカーコート剤等を用いた接着層13の厚さは、例えば、0.1~10μm程度、1~6μm程度、3~4μm程度が挙げられる。
【0027】
接着層13が押出樹脂から形成される場合、押出樹脂としては特に限定されないが、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、接着性樹脂などが挙げられる。押出樹脂を用いた接着層の厚さは3~30μm程度、5~25μm程度、7~20μm程度が挙げられる。樹脂フィルムまたは溶融状態の押出樹脂に対して、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理を施してもよい。
【0028】
水溶性印刷層14と積層体10の端部10aとの間には、複数の樹脂フィルム11,12の間が水溶性印刷層14を介在しないで接着層13により接着されている端部接着領域13aを有する。これにより、水溶性印刷層14は、積層体10の端部10aに露出されず、積層体10の内部に封入される。このため、積層体10を使用する際に、積層体10が水にぬれても、水溶性印刷層14が水に触れて溶解することがない。端部接着領域13aは、積層体10の周囲の全周または一部に形成することができる。
【0029】
積層体10またはその製品を使用した後、積層体10の樹脂をリサイクルする場合は、水溶性印刷層14が水に接触可能な処理が施される。例えば、図2に示すように、積層体10を粉砕することにより、水溶性印刷層14は、粉砕された積層体10の切断部15から露出される。
【0030】
積層体10の粉砕品を水で洗浄すると、切断部15から水溶性印刷層14が溶出して、図3に示すように、樹脂フィルム11,12および接着層13の間に溶出部16が形成される。これにより、積層体10から水溶性インクを容易に溶出させることができ、樹脂をリサイクルしてもインキの混入を抑制することが可能になる。
【0031】
断片17,18を洗浄したとき、端部接着領域13aを含む断片18は、複数の樹脂フィルム11,12の間が接着されたままであるが、端部接着領域13aを含まない断片18は、複数の樹脂フィルム11,12が物理的に分離されてもよい。樹脂フィルム11,12がモノマテリアルであれば、両者が混在していても、分離されても、同様にリサイクルが可能である。
【0032】
図示例の積層体10の場合、端部接着領域13aの内側では、水溶性印刷層14がベタ印刷されている。この場合、断片17,18の洗浄後に、端部接着領域13aを含まない断片18において、複数の樹脂フィルム11,12が分離されやすくなる。例えば、樹脂フィルム11,12が比重等の物性に差異を有する場合は、一方の樹脂フィルム11の破片と、他方の樹脂フィルム12とを分別することも可能になる。
【0033】
積層体10に含まれる樹脂フィルム11,12は、2層に限らず、3層以上であってもよい。樹脂層が3層以上の場合は、樹脂層の層間が2箇所以上に生じるが、そのうち少なくとも1箇所の層間に水溶性印刷層14が積層されればよい。図示例では、樹脂フィルム12と接着層13との層間に、水溶性インクがパートコートされている。
【0034】
図4に、積層体10の端部10aに沿ってパターン化した水溶性印刷層14を例示する平面図である。水溶性印刷層14から積層体10の端部10aまでの距離、すなわち端部接着領域13aの幅は、特に限定されないが、例えば、0.1mm~10mm程度や1mm~5mm程度が挙げられる。積層体10の平面形状は特に限定されず、円形、楕円形、多角形等の単純な図形でもよく、包装袋等の各種製品に用いられる所望の形状にすることも可能である。
【0035】
図5に示すように、積層体10を製品化する際、原反20となる積層体10から、所定の形状を有する部材21を形成する場合は、部材21の形状に沿って水溶性印刷層14をパターン化してもよい。特に図示しないが、同一の積層体10上に、複数の部材21に対応して、複数の水溶性印刷層14のパターンが配置されてもよい。
【0036】
部材21の形状は、例えば打ち抜き、型抜き、裁断、トリミング等で形成することができる。部材21を所定の形状に形成すると、図4に示すように、端部10aに沿って水溶性印刷層14をパターン化した積層体10と同様なものが得られる。
【0037】
図1に示す積層体10は、端部接着領域13a以外では、複数の樹脂フィルム11,12の層間において、水溶性印刷層14がベタ印刷され、接着層13が複数の樹脂フィルム11,12の間を直接には接着していない構造となっている。第1実施形態の積層体10は、上述の構造に限定されるものではなく、例えば図6に示すように、接着層13が積層体10の端部10aに接しない内部接着領域13bを有してもよい。
【0038】
内部接着領域13bでは、複数の樹脂フィルム11,12の間が水溶性印刷層14を介在しないで接着層13により接着されている。この場合も、積層体10の粉砕品を水で洗浄すると、切断部15から水溶性印刷層14を溶出させることができる。内部接着領域13bを設けることにより、樹脂フィルム11,12の層間の接着を向上しやすくなる。内部接着領域13bの幅は、特に限定されないが、例えば、0.1mm~10mm程度や1mm~5mm程度が挙げられる。
【0039】
また、第1実施形態の積層体10は、樹脂フィルム11,12の層間に水溶性印刷層14が印刷されているが、図7に示す第2実施形態の積層体22のように、樹脂フィルム11,12のいずれかの外面に水溶性印刷層14を印刷してもよい。
【0040】
図示例では、樹脂フィルム12の外面12aに水溶性インクがパターン印刷されて水溶性印刷層14が形成され、水溶性印刷層14は、非水溶性のコート層23で覆われている。つまり、樹脂フィルム12とコート層23との層間に、水溶性インクがパートコートされている。
【0041】
コート層23は、水溶性印刷層14の周囲で樹脂フィルム12上を覆う端部コート領域23aを有する。これにより、水溶性印刷層14は、積層体22の端部22aに露出されず、積層体22の内部に封入される。このため、積層体22を使用する際に、積層体22が水にぬれても、水溶性印刷層14が水に触れて溶解することがない。また、積層体22の粉砕品を水で洗浄すると、水溶性印刷層14を溶出させることができる。
【0042】
コート層23は、非水溶性の樹脂等を含有するコート剤を塗布し、必要に応じて乾燥、硬化等の処理を施し、皮膜化することで形成することができる。コート剤は、溶媒を含有する溶媒型でもよく、乾燥が不要な無溶媒型でもよい。
【0043】
コート剤に使用される樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂(塩酢ビ)、エポキシ樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状オレフィン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース(硝化綿)樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。
【0044】
コート剤の種類は、特に限定されないが、組成物があらかじめ混合された状態で供給される1液タイプ、主剤と添加剤とが別々に供給されて使用時に混合される2液反応タイプなどが挙げられる。コート剤は、濃縮状態で供給されてもよく、適宜の濃度または粘度が得られるように使用時に希釈してもよい。コート剤の溶剤は、塗布する際の性能等を考慮して、適宜選択することができる。コート剤は、樹脂を硬化させる硬化剤、架橋剤等を含有してもよい。
【0045】
コート剤の塗布装置は、特に限定されないが、グラビアコーター、ナイフコーター、リバースコーター、バーコーター、スプレーコーター、スピンコーター、ダイコーター、スリットコーター、ロールコーター、ディップコーター等が挙げられる。コート層23は、2層以上または2回以上重ねて塗布されてもよい。
【0046】
端部コート領域23aは、積層体22の周囲の全周または一部に形成することができる。また、コート層23が積層体22の端部22aに接しない内部コート領域23bを有してもよい。端部コート領域23aおよび内部コート領域23bでは、コート層23が水溶性印刷層14を介在しないで樹脂フィルム12上に積層されている。端部コート領域23aおよび内部コート領域23bの幅は、端部接着領域13aおよび内部接着領域13bの幅と同様にして、適宜設定することができる。
【0047】
同一の積層体が、積層体22と同様に、樹脂フィルム12の外面でコート層23に保護された水溶性印刷層14に加えて、積層体10と同様に、樹脂フィルム11,12の層間に配置された水溶性印刷層14を有してもよい。
【0048】
実施形態の積層体10,22において、複数の樹脂層に含まれる樹脂フィルム11,12が、ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂のみからなる構成としてもよい。さらに接着層13が押出樹脂を含む場合は、押出樹脂がポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂のみらなる構成としてもよい。
【0049】
積層体10,22に含まれるポリエチレン系樹脂層の全重量または樹脂成分全体におけるポリエチレン系樹脂の割合は、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、100重量%であってもよい。ポリエチレン系樹脂層は、樹脂成分以外に添加剤を含有していてもよい。
【0050】
積層体10,22に含まれるポリプロピレン系樹脂層の全重量または樹脂成分全体におけるポリプロピレン系樹脂の割合は、80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、100重量%であってもよい。ポリプロピレン系樹脂層は、樹脂成分以外に添加剤を含有していてもよい。
【0051】
ポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体(ホモポリマー)でもよく、エチレンを主体とする共重合体(コポリマー)でもよい。エチレン以外のモノマー(コモノマー)としては、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン、ノルボルネン等の環状オレフィン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸等のビニル系モノマー等の1種または2種以上が挙げられる。ポリエチレン系樹脂が、酢酸ビニル等のエステル基を有するモノマーを共重合している場合は、エステル基の一部がケン化されて、ビニルアルコールを含む共重合体となっていてもよい。
【0052】
ポリエチレン系樹脂の構成モノマーにおけるエチレンの割合は、50重量%以上が好ましく、例えば、80~100重量%でもよい。エチレンまたはコモノマーは、石油等の化石資源に由来する化合物でもよく、植物等のバイオマスに由来する化合物でもよい。ポリエチレン系樹脂層に含まれる樹脂が、ポリエチレン系樹脂のみでもよい。ポリエチレン系樹脂の少なくとも一部が、リサイクルされたポリエチレン系樹脂を含んでもよい。
【0053】
上述のポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体(ホモPP)でもよく、プロピレン-エチレン共重合体等におけるランダム共重合体(ランダムPP)またはブロック共重合体(ブロックPP)でもよい。プロピレン以外のモノマー(コモノマー)としては、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸等のビニル系モノマー等の1種または2種以上が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂にコモノマーを用いる場合は、コモノマーが1種でも、2種以上でもよい。
【0054】
ポリプロピレン系樹脂の構成モノマーにおけるプロピレンの割合は、50重量%以上が好ましく、例えば、80~100重量%でもよい。プロピレンまたはコモノマーは、石油等の化石資源に由来する化合物でもよく、植物等のバイオマスに由来する化合物でもよい。ポリプロピレン系樹脂層に含まれる樹脂が、ポリプロピレン系樹脂のみでもよい。ポリプロピレン系樹脂の少なくとも一部が、リサイクルされたポリプロピレン系樹脂を含んでもよい。
【0055】
積層体10,22に含まれる樹脂層は、樹脂以外の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、着色剤、架橋剤等が挙げられる。添加剤は、樹脂に相溶する成分でもよく、樹脂に相溶しない成分でもよい。
【0056】
樹脂フィルム11が最内層である場合は、最内層がシーラント樹脂から形成されてもよい。シーラント樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。シーラント樹脂層の厚さは、特に限定されないが、例えば、60~180μm程度が挙げられる。シーラント樹脂層は単層でもよく、共押出等による多層の積層構造を有してもよい。
【0057】
樹脂フィルム12は、積層体10,22の基材フィルムであってもよい。基材フィルムとしては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。基材フィルムの厚さは、特に限定されないが、例えば、10~50μm程度が挙げられる。
【0058】
樹脂フィルム11,12を形成する材料が、1種のポリオレフィン系樹脂でもよく、2種以上のポリオレフィン系樹脂のブレンドでもよい。樹脂フィルム11,12が無延伸樹脂でもよく、延伸樹脂でもよい。
【0059】
特定樹脂によるモノマテリアルの容器包装のためには、積層体10,22の全重量に対し、特定樹脂の合計が80重量%以上であり、特定樹脂以外の材料の合計が20重量%以下であることが好ましく、特定樹脂の合計が90重量%以上であり、特定樹脂以外の材料の合計が10重量%以下であることがより好ましい。これにより、特定樹脂のモノマテリアル材料を実現することができる。この場合、ポリエチレン系樹脂を特定樹脂としてもよく、ポリプロピレン系樹脂を特定樹脂としてもよく、ポリオレフィン系樹脂を特定樹脂としてもよい。
【0060】
実施形態の積層体10,22は、包装袋等の包装体の作製に用いることができる。包装体の少なくとも1の部材が、積層体10,22から形成されていればよく、他の部材が例えば水溶性印刷層14を有しないフィルムでもよい。
【0061】
包装体の用途は、使い捨て用、詰め替え用、貯蔵用、物品等の収納用など、特に限定されないが、液体を内封する用途に好適であり、内容物を消費する際に使用される本体容器に対して、1回または複数回、内容物を詰め替える用途には特に好適である。この場合、本体容器を長期間の使用に耐久可能にして、詰め替え容器の包装を簡易にすることができる。また、内容物を使い終えた後の詰め替え容器を処分する際、リサイクルが容易になる。
【0062】
包装体としては、パウチ、バッグなどの包装袋、チューブ、コンテナ、スリーブ包装、ストリップ包装、蓋材等が挙げられる。包装袋の具体例としては、特に限定されないが、三方シール袋、四方シール袋、ピロー袋、平袋、ガセット袋、スタンディングパウチ等が挙げられる。積層体が柔軟な積層フィルムである場合は、軟包装の包装体を形成することができる。
【0063】
図8に、スタンディングパウチとなる包装袋30の一例を示す。この包装袋30は、一対の胴部材31と、折り線33により二つ折りにした底部材32とから形成されている。胴部材31は、前後に1枚ずつ配置されている。前後の胴部材31の平面形状が同一でもよい。底部材32は、折り線33により外面が対向するように折り込まれている。折り線33より上側では、左右に胴シール部34が形成されて、前後の胴部材31の内面が互いに接合されている。
【0064】
底部材32は、折り線33を上側にして、前後の胴部材31の間に挟み込まれている。折り線33より下側では、底部材32の内面が胴部材31の内面に接合された底シール部35が形成されている。底シール部35は、底部材32の折り線33で区画される領域を、それぞれ前後方向で同じ側の胴部材31と接合している。折り線33に対して底部材32を広げて、包装袋30を自立させることができる。
【0065】
包装袋30が胴部材31と底部材32とを有する場合は、実施形態の積層体10,22を胴部材31と底部材32のいずれか一方に使用してもよく、両方に使用してもよい。水溶性印刷層14を有する積層体10,22を胴部材31または底部材32に用いて、包装袋30の表面に図柄、文字等を含む画像を表示することができる。印刷を必要としない部材では、水溶性印刷層14を有しない樹脂フィルム等を用いてもよい。
【0066】
包装袋30は、充填口、注出口等を有してもよい。例えば、胴部材31の成形により、注出口36が包装袋30の上部または隅部で細く突出する形状に形成されてもよい。包装袋30は、積層体10,22とは別に成形した部材からなるスパウトタイプでもよい。
【0067】
包装袋30は、積層体10,22のみから形成してもよく、スパウト、チューブ、ラベル、タグ、ストロー、外箱等の付属部材と組み合わせてもよい。リサイクルの観点では、付属部材を包装袋30から分離できることが好ましい。あるいは、付属部材を積層体10,22と同種の樹脂から形成して、全体をモノマテリアルにすることも可能である。
【0068】
包装袋30の上部で前後の胴部材31の間に開口部37が形成されて、内容物の充填または注出に用いることができる。内容物の充填後に開口部37を接合して、包装袋30を密封してもよい。
【0069】
包装体の寸法は、特に限定されるものではないが、例えば詰め替え容器の用途では、上下方向の高さが100~500mm程度、左右方向の幅が70~300mm程度、充填量としては100cm~5000cm程度が挙げられる。内容物の状態としては、液体、粉体、粒体等の流体、あるいは物品等の固形物が挙げられる。内容物の種類としては、特に限定されないが、洗剤、薬剤、化粧品、医薬品、飲料、調味料、インキ、塗料、燃料等が挙げられる。
【0070】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。
【0071】
実施形態の積層体10,22は、ポリオレフィン系樹脂を主体とした積層フィルム状であり、包装袋、包装フィルム等の包装用積層体に限られず、ラベル、タグ、印刷フィルムなど、種々の用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0072】
10,22…積層体、10a,22a…積層体の端部、11,12…樹脂フィルム、12a…樹脂フィルムの外面、13…接着層、13a…端部接着領域、13b…内部接着領域、14…水溶性印刷層、15…切断部、16…溶出部、17,18…断片、20…原反、21…部材、23…コート層、23a…端部コート領域、23b…内部コート領域、30…包装袋、31…胴部材、32…底部材、33…折り線、34…胴シール部、35…底シール部、36…注出口、37…開口部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8