(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047173
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ハーネスプロテクタ
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20240329BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20240329BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240329BHJP
F16B 37/08 20060101ALI20240329BHJP
F16B 5/07 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H02G3/04 062
H02G3/30
B60R16/02 623T
F16B37/08 B
F16B5/07 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152646
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】加島 正隆
【テーマコード(参考)】
3J001
5G357
5G363
【Fターム(参考)】
3J001FA02
3J001GB01
3J001GC02
3J001HA02
3J001HA07
3J001JD29
3J001KB02
5G357DA06
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G363AA16
5G363BA02
5G363DA13
5G363DC02
(57)【要約】
【課題】ハーネスプロテクタ側と車体側の寸法誤差が累積的に作用した場合であっても、その影響を吸収可能なハーネスプロテクタを提供する。
【解決手段】ハーネスプロテクタは、収容部と、固定部3と、を備える。収容部は、ワイヤハーネスを収容する。固定部3は、収容部に接続されており、車体に固定される。固定部3は、クランプ部5と、ホルダ4と、を備える。クランプ部5は、車体から突出方向に突出する突出部が挿入されることで、突出部をクランプして固定する。ホルダ4は、クランプ部5を取付可能であり、突出方向に垂直な第1垂直方向からクランプ部5を挿入可能な開口部20が形成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスを収容する収容部と、
前記収容部に接続されており、車体に固定される固定部と、
を備え、
前記固定部は、
前記車体から突出方向に突出する突出部が挿入されることで、当該突出部をクランプして固定するクランプ部と、
前記クランプ部を取付可能であり、前記突出方向に垂直な第1垂直方向から前記クランプ部を挿入可能な開口部が形成されたホルダと、
を備えることを特徴とするハーネスプロテクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のハーネスプロテクタであって、
前記クランプ部と前記ホルダの一方には、係合孔が形成され、
前記クランプ部と前記ホルダの他方には、前記係合孔と係合可能な係合爪が形成され、
前記突出方向に垂直な平面において前記第1垂直方向に垂直な方向を第2垂直方向と称したときに、
前記係合孔の前記第1垂直方向のサイズは、前記係合爪の前記第1垂直方向のサイズよりも大きく、
前記係合孔の前記第2垂直方向のサイズは、前記係合爪の前記第2垂直方向のサイズよりも大きいことを特徴とするハーネスプロテクタ。
【請求項3】
請求項1に記載のハーネスプロテクタであって、
前記突出方向に垂直な平面において前記第1垂直方向に垂直な方向を第2垂直方向と称したときに、
前記クランプ部は、
前記突出部をクランプする本体部と、
前記本体部のうち前記車体から遠い側の端部に接続されており、前記第2垂直方向のサイズが前記本体部よりも大きい補強部と、
を備えることを特徴とするハーネスプロテクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のハーネスプロテクタであって、
前記クランプ部と前記ホルダの一方には、係合孔が形成され、
前記クランプ部と前記ホルダの他方には、前記係合孔と係合可能な係合爪が形成され、
前記補強部は、前記本体部よりも前記第2垂直方向の外側に位置する第1補強部及び第2補強部を備え、
前記クランプ部の前記第1補強部と前記第2補強部の両方に、前記係合孔又は前記係合爪が形成されることを特徴とするハーネスプロテクタ。
【請求項5】
請求項4に記載のハーネスプロテクタであって、
前記ホルダは、
前記第1補強部と面接触する第1保持面と、
前記第2補強部と面接触する第2保持面と、
を備え、
前記ホルダの前記第1保持面と前記第2保持面の両方に、前記係合孔又は前記係合爪が形成されることを特徴とするハーネスプロテクタ。
【請求項6】
請求項1に記載のハーネスプロテクタであって、
前記ホルダは、前記クランプ部のうち前記車体から遠い側の端面の少なくとも一部を覆う保護面を備えることを特徴とするハーネスプロテクタ。
【請求項7】
請求項6に記載のハーネスプロテクタであって、
前記保護面のうち、前記突出部に応じた位置には、覗き孔が形成されていることを特徴とするハーネスプロテクタ。
【請求項8】
請求項1に記載のハーネスプロテクタであって、
前記開口部の少なくとも一部を覆うカバーを備えることを特徴とするハーネスプロテクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、車体に固定されるワイヤハーネスを保護するハーネスプロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車体の床下に固定されるハーネス固定具を開示する。ハーネス固定具は、ハーネスを保持する本体部品と、車体に固定するための固定部品と、を備える。車体には、スタッドボルトが設けられている。また、固定部品には、スタッドボルトを固定可能な固定孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のハーネス固定具及び車体には、それぞれ個別に寸法誤差が生じ得る。そのため、双方の寸法誤差が累積的に作用した場合、ハーネス固定具を車体に固定することが困難になったり、ハーネス固定具が過剰に変形したりする可能性がある。しかし、特許文献1のハーネス固定具は、双方の寸法誤差の重なりに起因する影響を解消する構造を有していない。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、ハーネスプロテクタ側と車体側の寸法誤差が累積的に作用した場合であっても、その影響を吸収可能なハーネスプロテクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成のハーネスプロテクタが提供される。即ち、ハーネスプロテクタは、収容部と、固定部と、を備える。前記収容部は、ワイヤハーネスを収容する。前記固定部は、前記収容部に接続されており、車体に固定される。前記固定部は、クランプ部と、ホルダと、を備える。前記クランプ部は、前記車体から突出方向に突出する突出部が挿入されることで、当該突出部をクランプして固定する。前記ホルダは、前記クランプ部を取付可能であり、前記突出方向に垂直な第1垂直方向から前記クランプ部を挿入可能な開口部が形成される。
【0008】
クランプ部がホルダに対して第1垂直方向に移動可能であるため、その方向の可動域が大きくなり易いため、車体とハーネスプロテクタの第1垂直方向の寸法誤差を吸収できる。
【0009】
前記のハーネスプロテクタにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記クランプ部と前記ホルダの一方には、係合孔が形成される。前記クランプ部と前記ホルダの他方には、前記係合孔と係合可能な係合爪が形成される。前記突出方向に垂直な平面において前記第1垂直方向に垂直な方向を第2垂直方向と称したときに、前記係合孔の前記第1垂直方向のサイズは、前記係合爪の前記第1垂直方向のサイズよりも大きい。前記係合孔の前記第2垂直方向のサイズは、前記係合爪の前記第2垂直方向のサイズよりも大きい。
【0010】
係合孔が2つの方向において係合爪よりも大きいため、車体とハーネスプロテクタの第1垂直方向と第2垂直方向の寸法誤差を吸収できる。
【0011】
前記のハーネスプロテクタにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記突出方向に垂直な平面において前記第1垂直方向に垂直な方向を第2垂直方向と称する。前記クランプ部は、本体部と、補強部と、を備える。前記本体部は、前記突出部をクランプする。前記補強部は、前記本体部のうち前記車体から遠い側の端部に接続されており、前記第2垂直方向のサイズが前記本体部よりも大きい。
【0012】
クランプ部が補強部を備えることにより、耐衝撃性を高くすることができる。
【0013】
前記のハーネスプロテクタにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記クランプ部と前記ホルダの一方には、係合孔が形成される。前記クランプ部と前記ホルダの他方には、前記係合孔と係合可能な係合爪が形成される。前記補強部は、前記本体部よりも前記第2垂直方向の外側に位置する第1補強部及び第2補強部を備える。前記クランプ部の前記第1補強部と前記第2補強部の両方に、前記係合孔又は前記係合爪が形成される。
【0014】
比較的離れた2箇所に係合孔又は係合爪を形成できるので、クランプ部をホルダに安定的に取り付けることができる。
【0015】
前記のハーネスプロテクタにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ホルダは、第1保持面と、第2保持面と、を備える。前記第1保持面は、前記第1補強部と面接触する。前記第2保持面は、前記第2補強部と面接触する。前記ホルダの前記第1保持面と前記第2保持面の両方に、前記係合孔又は前記係合爪が形成される。
【0016】
クランプ部とホルダとが2箇所で面接触するため、ホルダがクランプ部を安定的に保持することができる。
【0017】
前記のハーネスプロテクタにおいては、前記ホルダは、前記クランプ部のうち前記車体から遠い側の端面の少なくとも一部を覆う保護面を備えることが好ましい。
【0018】
保護面を備えることにより、路面で跳ねた石等からクランプ部を保護できる。
【0019】
前記のハーネスプロテクタにおいては、前記保護面のうち、前記突出部に応じた位置には、覗き孔が形成されていることが好ましい。
【0020】
覗き孔があるため、固定部に突出部を挿入する作業を容易に行うことができる。
【0021】
前記のハーネスプロテクタにおいては、前記開口部の少なくとも一部を覆うカバーを備えることが好ましい。
【0022】
開口部がカバーで覆われることにより、路面で跳ねた石等からクランプ部を保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係るハーネスプロテクタが車体に固定される様子を示す斜視図。
【
図5】ハーネスプロテクタの固定部の断面図(
図2のA-A断面図)。
【
図6】ハーネスプロテクタの固定部を突出方向で見た図(
図5のB-B矢視図)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。自動車には、ワイヤハーネスが配索される。ワイヤハーネスとは、電線を束ねて当該電線にコネクタ又は端子を接続した自動車部品である。本実施形態のハーネスプロテクタ1は、ワイヤハーネスを覆って保護するとともに、ワイヤハーネスを自動車の車体90に固定する。
【0025】
具体的には、ハーネスプロテクタ1は、収容部2と、固定部3と、を備える。収容部2は、内部に空間が形成された部材である。収容部2の空間にハーネスが収容されることで、当該ハーネスが保護される。
図1に示す収容部2の形状は一例であり、本実施形態とは異なっていてもよい。固定部3は、収容部2に接続されている。収容部2と固定部3は一体成型されていてもよいし、スナップフィット又は固定具等により連結されていてもよい。固定部3は、車体90の突出部91に固定される。収容部2及び固定部3は、樹脂製である。ただし、収容部2と固定部3の少なくとも一部に、樹脂とは異なる材料が用いられていてもよい。
【0026】
ハーネスプロテクタ1は、複数箇所で車体90に固定される。具体的には、
図1に示す第1固定箇所において、ハーネスプロテクタ1の固定部3は、車体90から突出する突出部91に固定される。第2固定箇所において、収容部2の一部は、固定具92を用いて車体90に固定される。固定具92は、例えば、ボルト、リベット、又はピンである。なお、ハーネスプロテクタ1は、1箇所又は3箇所以上で車体90に固定されてもよい。
【0027】
ここで、車体90とハーネスプロテクタ1は、それぞれ別の部品であり、それぞれに寸法誤差が生じ得る。上述したように、従来のハーネス固定具では、車体とハーネス固定具の寸法誤差が累積的に作用した場合、ハーネス固定具を車体に固定することが困難になったり、ハーネス固定具が過剰に変形したりする可能性がある。この点、本実施形態のハーネスプロテクタ1は、固定部3が後述する構造を有することにより、車体90とハーネスプロテクタ1の寸法誤差が累積的に作用しても、ハーネスプロテクタ1を車体90に適切に固定できる。
【0028】
次に、
図2から
図6を参照して、ハーネスプロテクタ1の固定部3について詳細に説明する。以下の説明では、
図2等に示すように、突出部91が突出する方向を単に「突出方向」と称し、突出方向に垂直な方向のうちの一方向(詳細は後述)を「第1垂直方向」と称し、突出方向に垂直な平面において第1垂直方向に垂直な方向を「第2垂直方向」と称する。
【0029】
図2及び
図3に示すように、固定部3は、ホルダ4と、クランプ部5と、カバー6と、を備える。
【0030】
ホルダ4の内部にはクランプ部5を配置するための空間が形成されている。この空間にクランプ部5が配置されることにより、路面から跳ねた石等からクランプ部5が保護される。本実施形態のホルダ4は略直方体状であり、ホルダ4には、保護面10と、第1側面11と、第2側面12と、第3側面13と、取付面14と、が形成されている。保護面10を端面(上面又は下面)としたときに、第1側面11、第2側面12、第3側面13、及び取付面14は、側面に相当する。
【0031】
図1に示すように、保護面10は下方向を向く面であり、言い換えれば、保護面10は路面に対向する面である。従って、ホルダ4に保護面10を形成することにより、路面から跳ねた石等からクランプ部5を保護できる。また、保護面10には、覗き孔10aが形成されている。覗き孔10aは、固定部3を突出部91に固定する際に、クランプ部5と突出部91の位置関係を確認するための孔である。
【0032】
第1側面11、第2側面12、及び第3側面13には、孔は形成されていない。取付面14には、取付孔14aが形成されている。取付孔14aは、カバー6を固定部3に取り付けるために用いられる。更に、取付面14には、開口部20が形成されている。開口部20は、クランプ部5を挿入して取り付けるための部分である。ここで、第1垂直方向は、クランプ部5をホルダ4に挿入する方向である。言い換えれば、第1垂直方向は、取付面14に垂直な方向である。
【0033】
開口部20は、略T字状であり、第1開口部21と、第2開口部22と、に区分できる。第1開口部21はT字の縦棒の部分であり、第2開口部22はT字の横棒の部分である。そのため、第1開口部21の第2垂直方向のサイズは、第2開口部22の第2垂直方向のサイズよりも小さい。また、第1開口部21よりも突出側(突出方向の下流側)に第2開口部22が形成されている。
【0034】
ホルダ4の内部には、第1保持面25及び第2保持面26が形成されている。第1保持面25及び第2保持面26は、第2垂直方向において、第1開口部21の外側に形成されている。第1保持面25及び第2保持面26は、第2開口部22の内壁面を構成する。第1保持面25及び第2保持面26は、突出方向に垂直な平面である。第1保持面25及び第2保持面26には、クランプ部5を取り付けるための係合孔27がそれぞれ形成されている。
【0035】
図3に示すように、クランプ部5は、本体部30と、補強部40と、を備える。
【0036】
本体部30には、貫通孔31が形成されている。貫通孔31の軸方向は突出方向と平行である。貫通孔31の内壁面には、
図5に示すように、複数の引掛け部30aが形成されている。貫通孔31に突出部91を挿入することにより、複数の引掛け部30aが突出部91の表面に引っ掛かり、突出部91をクランプする。これにより、クランプ部5が突出部91を固定する。突出部91がスタッドボルトである場合、引掛け部30aの先端がスタッドボルトの溝に入り込む。なお、突出部91を固定可能であれば、本体部30の構成は本実施形態と異なっていてもよい。
【0037】
補強部40は、本体部30のうち車体90から遠い側の端部に接続されている。補強部40は、第1補強部41と、第2補強部42と、を備える。第1補強部41及び第2補強部42は、第2垂直方向において、本体部30の外側に位置する部分である。以上により、クランプ部5は略T字状となる。これにより、本体部30だけでクランプ部5を構成する場合と比較して、クランプ部5の強度を高くすることができる。
【0038】
クランプ部5は、第1垂直方向に沿ってホルダ4に挿入可能である。クランプ部5をホルダ4に挿入することにより、本体部30が第1開口部21に挿入され、第1補強部41及び第2補強部42が第2開口部22に挿入される。これにより、クランプ部5を突出方向の逆方向に移動させようとしても、第1補強部41と第1保持面25が干渉する(更に第2補強部42と第2保持面26が干渉する)ため、クランプ部5は移動できない。つまり、クランプ部5の取付作業中において、クランプ部5がホルダ4から離れにくくなる。従って、クランプ部5の取付作業を簡単に行うことができる。
【0039】
また、ホルダ4にクランプ部5を挿入することにより、第1保持面25と第1補強部41が対向又は面接触し、第2保持面26と第2補強部42が対向又は面接触する。また、第1補強部41のうち車体90を向く側の面(言い換えれば、第1保持面25を向く側の面)には、
図4に示すように、係合爪43が形成されている。同様に、第2補強部42の同じ側の面にも係合爪43が形成されている。係合爪43は係合孔27と係合可能である。係合爪43が係合孔27に係合されることにより、クランプ部5をホルダ4に取り付けることができる。また、本実施形態では、第1補強部41に複数(2つ)の係合爪43が形成され、第2補強部42にも複数(2つ)の係合爪43が形成されている。これにより、クランプ部5をホルダ4に強固に取り付けることができる。
【0040】
このように、本実施形態では、本体部30を挟んで一側と他側で、ホルダ4とクランプ部5を係合させることができる。そのため、係合箇所同士が近い場合と比較して、ホルダ4にクランプ部5を強固に取り付けることができる。更に、本実施形態では、本体部30を挟んで一側と他側で、ホルダ4とクランプ部5が面接触するため、ガタツキが生じにくくなり、ホルダ4に対してクランプ部5を安定させることができる。
【0041】
ここで、ホルダ4とクランプ部5は、取付作業中において、第1垂直方向に相対移動可能である。そのため、ホルダ4にクランプ部5を取り付けた後においても、係合部分に隙間を設けておくだけで、ホルダ4とクランプ部5を第1垂直方向に若干相対移動させることができる。そのため、例えば突出部91の位置のズレに第1垂直方向のズレが含まれており、貫通孔31の位置のズレにも第1垂直方向のズレが含まれており、双方のズレが累積的に作用する場合であっても、それらのズレを、ホルダ4とクランプ部5の相対移動で吸収することができる可能性がある。従って、上記のズレが生じていても、ホルダ4に対して無理なく(過度な変形を抑制して)クランプ部5を取り付けることができる。
【0042】
係合爪43と係合孔27の隙間について、更に具体的に説明する。
図6に示すように、係合孔27の第1垂直方向のサイズは、係合爪43の第1垂直方向のサイズよりも大きい。具体的には、
図6の長さLa+Lbに相当する分だけ、第1垂直方向において、係合孔27は係合爪43よりも大きい。そのため、上述した第1垂直方向のズレが生じていた場合であっても、このズレがLa+Lb以下であれば、ホルダ4に対して無理なくクランプ部5を取り付けることができる。長さLa+Lbは、例えば1mm以上3mm以下であるが、この範囲外の数値であってもよい。
【0043】
本実施形態では、更に、第2垂直方向の寸法誤差の影響についても吸収可能である。
図6に示すように、係合孔27の第2垂直方向のサイズは、係合爪43の第2垂直方向のサイズよりも大きい。具体的には、
図6の長さLc+Ldに相当する分だけ、第2垂直方向において、係合孔27は係合爪43よりも大きい。そのため、第2垂直方向のズレの長さがLc+Ld以下であれば、ホルダ4に対して無理なくクランプ部5を取り付けることができる。長さLc+Ldは、例えば1mm以上3mm以下であるが、この範囲外の数値であってもよい。
【0044】
なお、ホルダ4とクランプ部5の取付構造は一例であり、変更可能である。例えば、ホルダ4に係合爪が形成されて、クランプ部5に係合孔が形成されてもよい。第1保持面25及び第2保持面26とは異なる位置に係合孔27が形成されてもよい。係合爪と係合孔を用いてクランプ部5をホルダ4に取り付ける構成に代えて、別の固定具を用いてクランプ部5をホルダ4に取り付けてもよい。
【0045】
カバー6は平板状であり、ホルダ4に取り付けるための取付爪51が形成されている。取付爪51は、取付孔14aに係合可能である。取付爪51を取付孔14aに係合させることにより、カバー6をホルダ4に取り付けることができる。なお、この取付構造は一例であり、ホルダ4に取付爪が形成されており、カバー6に取付孔が形成されていてもよい。係合爪と係合孔を用いてカバー6をホルダ4に取り付ける構成に代えて、別の固定具を用いて、カバー6をホルダ4に取り付けてもよい。
【0046】
次に、クランプ部5の保護について説明する。クランプ部5の本体部30が外力を受けることにより、引掛け部30aが変形して、突出部91との固定が解除されたり、固定力が弱くなったりする可能性がある。従って、固定部3のうち特に本体部30を、路面から跳ねた石等から保護する必要がある。
【0047】
この点、本実施形態では、本体部30は、ホルダ4の保護面10、第1側面11、第2側面12、第3側面13、及びカバー6により覆われている。これにより、本体部30を十分に保護できる。また、仮に路面から跳ねた石が覗き孔10aを抜けてクランプ部5に衝突した場合であっても、突出部91又は補強部40に衝突する。補強部40は本体部30よりも強度が高いため、衝突の影響は軽微である。
【0048】
なお、覗き孔10aは、ハーネスプロテクタ1を車体90に固定する際に、突出部91と貫通孔31の位置を確認するために形成されている。そのため、覗き孔10aは突出部91に対応する位置に形成されている。言い換えれば、突出方向で見たときに、覗き孔10aの内側に突出部91が配置される。従って、覗き孔10aを介して突出部91に石が衝突し得る。突出部91は本体部30と比較すると強度が高いが、突出部91に石が衝突することも避けることが好ましい。この点、本実施形態では、
図5に示すように、突出部91が覗き孔10aの外側に突出しないように配置されている。従って、路面から跳ねた石等が突出部91に衝突しにくい。
【0049】
このように、本実施形態のハーネスプロテクタ1を用いることにより、路面から跳ねた石等による本体部30等の損傷を抑制できる。
【0050】
以上に説明したように、本実施形態のハーネスプロテクタ1は、収容部2と、固定部3と、を備える。収容部2は、ワイヤハーネスを収容する。固定部3は、収容部2に接続されており、車体90に固定される。固定部3は、クランプ部5と、ホルダ4と、を備える。クランプ部5は、車体90から突出方向に突出する突出部91が挿入されることで、突出部91をクランプして固定する。ホルダ4は、クランプ部5を取付可能であり、突出方向に垂直な第1垂直方向からクランプ部5を挿入可能な開口部20が形成される。
【0051】
クランプ部5がホルダ4に対して第1垂直方向に移動可能であるため、その方向の可動域が大きくなり易いため、車体90とハーネスプロテクタ1の第1垂直方向の寸法誤差を吸収できる。
【0052】
本実施形態のハーネスプロテクタ1において、クランプ部5とホルダ4の一方には、係合孔27が形成される。クランプ部5とホルダ4の他方には、係合孔27と係合可能な係合爪43が形成される。係合孔27の第1垂直方向のサイズは、係合爪43の第1垂直方向のサイズよりも大きい。係合孔27の第2垂直方向のサイズは、係合爪43の第2垂直方向のサイズよりも大きい。
【0053】
係合孔27が2つの方向において係合爪43よりも大きいため、車体90とハーネスプロテクタの第1垂直方向と第2垂直方向の寸法誤差を吸収できる。
【0054】
本実施形態のハーネスプロテクタ1において、クランプ部5は、本体部30と、補強部40と、を備える。本体部30は、突出部91をクランプする。補強部40は、本体部30のうち車体90から遠い側の端部に接続されており、第2垂直方向のサイズが本体部30よりも大きい。
【0055】
クランプ部5が補強部40を備えることにより、耐衝撃性を高くすることができる。
【0056】
本実施形態のハーネスプロテクタ1において、クランプ部5とホルダ4の一方には、係合孔27が形成される。クランプ部5とホルダ4の他方には、係合孔27と係合可能な係合爪43が形成される。補強部40は、本体部30よりも第2垂直方向の外側に位置する第1補強部41及び第2補強部42を備える。クランプ部5の第1補強部41と第2補強部42の両方に、係合孔27又は係合爪43が形成される。
【0057】
比較的離れた2箇所に係合孔27又は係合爪43を形成できるので、クランプ部5をホルダ4に安定的に取り付けることができる。
【0058】
本実施形態のハーネスプロテクタ1において、ホルダ4は、第1保持面25と、第2保持面26と、を備える。第1保持面25は、第1補強部41と面接触する。第2保持面26は、第2補強部42と面接触する。ホルダ4の第1保持面25と第2保持面26の両方に、係合孔27又は係合爪43が形成される。
【0059】
クランプ部5とホルダ4とが2箇所で面接触するため、ホルダ4がクランプ部5を安定的に保持することができる。
【0060】
本実施形態のハーネスプロテクタ1において、ホルダ4は、クランプ部5のうち車体90から遠い側の端面の少なくとも一部を覆う保護面10を備える。
【0061】
保護面10を備えることにより、路面で跳ねた石等からクランプ部5を保護できる。
【0062】
本実施形態のハーネスプロテクタ1では、保護面10のうち、突出部91に応じた位置には、覗き孔10aが形成されている。
【0063】
覗き孔10aがあるため、固定部3に突出部91を挿入する作業を容易に行うことができる。
【0064】
本実施形態のハーネスプロテクタ1は、開口部20の少なくとも一部を覆うカバー6を備える。
【0065】
開口部20がカバー6で覆われることにより、路面で跳ねた石等からクランプ部5を保護できる。
【符号の説明】
【0066】
1 ハーネスプロテクタ
2 収容部
3 固定部
4 ホルダ
5 クランプ部
6 カバー