(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047207
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20240329BHJP
C10B 49/00 20060101ALI20240329BHJP
H10N 10/13 20230101ALI20240329BHJP
【FI】
H02N11/00 A
C10B49/00
H01L35/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152707
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今里 和樹
(72)【発明者】
【氏名】太田 道広
(72)【発明者】
【氏名】石田 敬雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳
(72)【発明者】
【氏名】馬場 宗明
(72)【発明者】
【氏名】范 勇
(57)【要約】
【課題】バイオマスを加熱する加熱室の熱を利用して容易に発電する発電装置を提供する。
【解決手段】バイオマスを加熱させる加熱室の筐体に配置され、前記加熱室から前記筐体に伝導する熱を利用して発電する熱電デバイスを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを加熱させる加熱室の筐体に配置され、前記加熱室から前記筐体に伝導する熱を利用して発電する熱電デバイスを備える発電装置。
【請求項2】
前記筐体は、加熱時に温度が最も高くなる高温領域を有し、
前記熱電デバイスは、少なくとも前記高温領域に配置される請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記筐体は、第1領域と、前記第1領域より加熱時の温度が低い第2領域とを有し、
前記熱電デバイスは、前記第2領域より前記第1領域の設置面積が広くなるように配置される請求項1に記載の発電装置。
【請求項4】
加熱時における前記筐体の温度に基づいて、前記熱電デバイスの発電を制御する発電制御部をさらに有する請求項1に記載の発電装置。
【請求項5】
前記筐体は、第1領域と、前記第1領域より加熱時の温度が低い第2領域とを有し、
前記発電制御部は、前記第2領域に配置された前記熱電デバイスより、前記第1領域に配置された前記熱電デバイスの発電量が高くなるように制御する請求項4に記載の発電装置。
【請求項6】
前記発電制御部は、前記熱電デバイスの発電量に基づいて前記加熱室の温度を算出し、前記加熱室における前記バイオマスの加熱を制御する加熱装置の装置制御部に前記加熱室の温度を出力する請求項4に記載の発電装置。
【請求項7】
前記筐体を断熱する断熱部をさらに有する請求項1に記載の発電装置。
【請求項8】
前記熱電デバイスは、移動可能に構成された加熱装置の前記筐体に配置される請求項1に記載の発電装置。
【請求項9】
前記熱電デバイスで発電された電力を前記加熱装置に配置された電気部品に供給する発電制御部をさらに有する請求項8に記載の発電装置。
【請求項10】
前記熱電デバイスで発電された電力を前記加熱装置と異なる装置に供給する発電制御部をさらに有する請求項8に記載の発電装置。
【請求項11】
前記加熱装置は、移動体に搭載され、
前記発電制御部は、前記熱電デバイスで発電された電力を前記移動体に供給する請求項10に記載の発電装置。
【請求項12】
前記熱電デバイスは、前記バイオマスを炭化するように加熱する前記加熱室の前記筐体に配置される請求項1~11のいずれか一項に記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンニュートラルの実現にむけて、二酸化炭素を回収および固定する技術が提案されている。例えば、バイオ炭は、バイオマスを低酸素濃度下で加熱することにより生成され、比較的安価で大量の二酸化炭素を回収および固定することが可能な技術として期待されている。このバイオ炭による二酸化炭素の回収量は、2050年に1,432万トン/年になると試算されている。しかしながら、従来の大型炭化炉またはバイオマス発電プラント、バイオガス・燃料生成プラント、および炭化炉は、バイオ炭生成または二酸化炭素回収を主な目的としておらず、バイオ炭の収量および生成効率ともに改善の余地がある。特に、産業化に際して問題となるのは、原料となるバイオマスの輸送費用であり、全コストの約71%を占めるとの試算もある。これを解決するために移動式炭化炉の性能向上が求められる。
【0003】
そこで、特許文献1には、運搬可能な炭化処理設備を用いてバイオマス処理の現場でバイオマスを燃料化するバイオマス燃料の製造方法が提案されている。この炭化処理設備は、炭化処理時に炭化室に熱風を導く熱流路を、炭化処理後に炭化室に冷風を導く流路として用いて設備をコンパクト化することで、トレーラに積載可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の炭化処理設備では、バイオマスを燃料化する際に生じる熱を外部に放出しており、その熱をエネルギーとして利用することは考えられていなかった。
【0006】
本開示は、バイオマスを加熱する加熱室の熱を利用して容易に発電する発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る発電装置は、バイオマスを加熱させる加熱室の筐体に配置され、前記加熱室から前記筐体に伝導する熱、および外部に放熱される熱を利用して発電する熱電デバイスを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、バイオマスを加熱する加熱室の熱を利用して容易に発電することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る発電装置を備えた加熱装置の構成を示す図である。
【
図4】実施の形態1の変形例に係る熱電デバイスの構成を示す図である。
【
図5】断熱部により筐体からの放熱量が改善した実施例を示す図である。
【
図6】実施の形態3に係る熱電デバイスの構成を示す図である。
【
図7】実施の形態3の変形例に係る熱電デバイスの構成を示す図である。
【
図8】実施の形態4に係る発電装置を備えた加熱装置の構成を示す図である。
【
図9】実施の形態5において加熱装置が移動可能に構成された様子を示す図である。
【
図10】実施の形態6において加熱装置が移動体に搭載された様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
(実施の形態1)
図1に、本開示の実施の形態1に係る発電装置を備えた加熱装置の構成を示す。加熱装置は、筐体1と、供給管2と、排気管3と、空気供給部4と、排気部3aと、発電装置5と、装置制御部6とを有する。装置制御部6は、制御信号などを出力するために、発電装置5、空気供給部4および排気部3aにそれぞれ電気的に接続されている。また、発電装置5は、電力を供給するために、空気供給部4および排気部3aに電気的に接続されている。
【0012】
加熱装置は、バイオマスを加熱するもので、例えばバイオマスを加熱してバイオ炭を生成する装置から構成される。バイオ炭は、例えば、バイオマスが燃焼しない酸素濃度下で、350℃を超える温度にバイオマスを加熱して生成することができる。また、バイオマスは、動植物などの生物由来の有機性資源であり、例えば、もみ殻、木質材料(廃材、林地残材、流木、間伐材等を含む)、廃棄物(例えばコーヒーかす、家庭ごみ、汚泥)などが挙げられる。
【0013】
筐体1は、バイオマスを加熱させる加熱室が内部に形成され、その加熱室を囲む壁部7が金属などの耐熱材料から構成されている。壁部7は、例えば、1つの上壁部7aと、4つの側壁部7bと、1つの底壁部7cとから構成される。ここで、筐体1は、バイオマスの加熱時に加熱室から伝導される熱により温度が上昇するが、その位置に応じて異なる温度に上昇することになる。例えば、バイオマスを300℃~600℃で加熱すると、上壁部7aは300℃~400℃に上昇する一方、側壁部7bは150℃~200℃と上壁部7aより低い温度になる場合がある。この場合、上壁部7aは、加熱時の温度が高い領域R1となり、側壁部7bは、加熱時の温度が低い領域R2となる。
【0014】
供給管2は、空気供給部4から供給される空気を筐体1内の加熱室に導くもので、管形状を有し、空気供給部4と筐体1を接続するように配置されている。
排気管3は、筐体1の加熱室から外部に排気するもので、管形状を有し、筐体1から外部に延びるように形成されている。
【0015】
空気供給部4は、筐体1内の加熱室に空気を供給するものである。空気供給部4は、バイオマスの加熱時に、供給管2を介して、加熱した空気を筐体1内の加熱室に供給する。空気供給部4は、例えば、燃焼加熱した空気を加熱室に供給する。なお、空気供給部4は、バイオマスの加熱時以外の処理において、空気を加熱室に供給してもよい。例えば、空気供給部4は、バイオマスの冷却時に、加熱室より低温の空気(例えば外気)を加熱室に供給してもよい。空気供給部4は、例えば、送風機またはバーナーなどから構成される。
【0016】
排気部3aは、筐体1内の加熱室の空気を強制的に排気管3から外部に排出するもので、例えば排気ファンなどから構成される。排気部3aは、炭化する材料に応じて、例えば、バイオマスが細かい材料、または水分量が多い材料から構成される場合、そのバイオマスの加熱開始時に駆動して、筐体1内の圧力を制御してもよい。また、排気部3aは、バイオマスの加熱時、炭化時に駆動することで、加熱室の温度、圧力条件等を制御してもよい。また、排気部3aは、加熱室の空気を循環させるために、生成された炭、バイオマス材料の冷却時に駆動してもよい。
【0017】
装置制御部6は、加熱装置の各部を制御してバイオマスを加熱処理する。
【0018】
発電装置5は、発電部8と、蓄電部9と、発電制御部10とを有する。発電制御部10は、制御信号などを出力するために、発電部8および蓄電部9にそれぞれ電気的に接続されている。また、発電制御部10は、装置制御部6に電気的に接続されている。また、蓄電部9は、電力を伝送するために、発電部8、空気供給部4および排気部3aにそれぞれ電気的に接続されている。
【0019】
発電部8は、加熱室から筐体1に伝導する熱を利用して発電するものである。
蓄電部9は、発電部8で発電された電力を蓄電するもので、例えばバッテリなどから構成されている。
【0020】
発電制御部10は、バイオマスの加熱時における筐体1の温度に基づいて、発電部8による発電を制御する。また、発電制御部10は、装置制御部6の制御の下、蓄電部9から空気供給部4への電力の供給を制御する。また、発電制御部10は、装置制御部6の制御の下、蓄電部9から排気部3aへの電力の供給を制御する。
【0021】
なお、装置制御部6および発電制御部10の機能は、コンピュータプログラムにより実現させることもできる。例えば、コンピュータの読取装置が、装置制御部6および発電制御部10の機能を実現するためのプログラムを記録した記録媒体からそのプログラムを読み取り、記憶装置に記憶させる。そして、CPU(Central Processing Unit)が、記憶装置に記憶されたプログラムをRAM(Random Access Memory)にコピーし、そのプログラムに含まれる命令をRAMから順次読み出して実行することにより、装置制御部6および発電制御部10の機能を実現することができる。
【0022】
次に、発電部8の構成について詳細に説明する。
【0023】
図2に示すように、発電部8は、熱電デバイス11と、冷媒供給部12と、流通路13とを有する。発電制御部10は、制御信号を出力するために、冷媒供給部12に電気的に接続されている。また、蓄電部9は、電力を電送するために、熱電デバイス11および冷媒供給部12にそれぞれ電気的に接続されている。
【0024】
熱電デバイス11は、筐体1において加熱時の温度が領域R2より高い領域R1、例えば上壁部7aに配置されている。なお、加熱室Raには、例えば、バイオマスBを載置する複数の載置台1aが配置されている。
【0025】
熱電デバイス11は、一対のカバー14aおよび14bと、熱電変換モジュール15とを有する。熱電変換モジュール15は、加熱室Raから筐体1に伝導する熱を利用して発電するもので、筐体1の上壁部7aに広がるように配置されている。熱電変換モジュール15で発電された電力は、蓄電部9に供給される。カバー14aおよび14bは、熱電変換モジュール15を保護するもので、熱電変換モジュール15の表面と裏面をそれぞれ覆うように配置されている。カバー14aは、流通路13に当接するように配置され、カバー14bは、筐体1の上壁部7aに当接するように配置されている。
【0026】
冷媒供給部12は、発電制御部10の制御の下、熱電デバイス11の表面を冷却する冷媒を流通路13に流通させるもので、流通路13に接続するように配置されている。冷媒としては、例えば、空気または水などの流体が挙げられる。また、冷媒供給部12は、例えば、送風機またはポンプなどが挙げられる。冷媒供給部12は、例えば、蓄電部9から供給される電力により駆動される。
【0027】
流通路13は、冷媒供給部12から供給される冷媒を熱電デバイス11の表面に沿って流通させるもので、熱電デバイス11の表面全体にわたるように配置されている。
【0028】
次に、熱電変換モジュール15の構成について詳細に説明する。
【0029】
図3に示すように、熱電変換モジュール15は、基板15aと、冷却側接続部15bと、加熱側接続部15cと、複数の熱電素子15dとを有する。
基板15aは、熱電変換モジュール15の各部を支持するものである。冷却側接続部15bは、導電体から構成され、筐体1側において複数の熱電素子15dを電気的に順次接続する。加熱側接続部15cは、導電体から構成され、流通路13側において複数の熱電素子15dを電気的に順次接続する。
【0030】
熱電素子15dは、n型半導体から構成された熱電素子15d1と、p型半導体から構成された熱電素子15d2とを有する。熱電素子15d1と熱電素子15d2は、交互に並ぶように基板15a上に配置されている。そして、熱電素子15d1と熱電素子15d2は、冷却側接続部15bと加熱側接続部15cとにより順次直列に接続される。すなわち、互いに異なる熱電素子15d1と熱電素子15d2とが、交互に電気的に接続されることになる。これにより、筐体1側と流通路13側との温度差に応じて熱電素子15dに電力が生じ、その電力が冷却側接続部15bの端子から蓄電部9に供給される。
【0031】
次に、本実施の形態の動作について説明する。
【0032】
まず、
図2に示すように、筐体1内の加熱室Raに設けられた載置台1aにバイオマスBを載置する。ここで、バイオマスBの加熱時に、筐体1において温度が他の領域と比べて高くなる領域R1は、筐体1の構造などに基づいて予め把握することができる。例えば、載置台1aが、筐体1の上壁部7aの近傍に配置されている場合、その上壁部7aが側壁部7bなどと比べて加熱時の温度が高くなることが把握される。この場合、熱電デバイス11は、筐体1の上壁部7a、すなわち領域R1に配置される。
【0033】
ここで、熱電デバイス11は、筐体1に対して取り外し可能に構成されてもよい。これにより、筐体1の構成に応じて、加熱時の温度が高くなる領域R1に熱電デバイス11を容易に配置することができる。また、熱電デバイス11は、複数の部分に分割して構成されてもよい。これにより、筐体1の形状、温度分布に応じて熱電デバイス11を容易に配置することができる。
【0034】
このように、筐体1内にバイオマスBが載置されると、装置制御部6が、操作者の操作に応じて、図示しない着火装置によりバイオマスBを燃焼させる。これにより、バイオマスBの加熱が開始される。このとき、装置制御部6は、供給管2を介して、酸素を含む空気(例えば外気)を筐体1内の加熱室Raに供給するように空気供給部4を制御してもよい。これにより、バイオマスBを速やかに燃焼、炭化させることができる。また、装置制御部6は、燃焼により生じた排気ガスを排気管3から外部に排出するように排気部3aを駆動してもよい。
【0035】
バイオマスBの燃焼に従って加熱室Raの酸素は消費され、低酸素、無酸素状態となる。装置制御部6は、バイオマスBの炭化が進行するにつれて、加熱室Raの酸素濃度をバイオマスBの炭化に適した値、例えば無酸素状態に近い値まで低下するように空気供給部4を制御する。装置制御部6は、例えば、加熱室Raの温度または加熱時間などに基づいて、バイオマスBの炭化の終了を判定してもよい。また、装置制御部6は、操作者の操作に応じてバイオマスBの炭化の終了を認識してもよい。なお、装置制御部6は、排気部3aを駆動して加熱室Raの排気、生成するバイオガス等を排出してもよい。また、装置制御部6は、排気口を閉じるように排気管3を制御してもよい。このように、装置制御部6が、加熱室Raを低酸素濃度に制御することにより、バイオ炭の収量を高めることができる。
【0036】
装置制御部6は、バイオマスBの炭化が終了すると、低酸素濃度の加熱室Raを所定の温度に維持するように空気供給部4、および排気部3aを制御する。すなわち、空気供給部4は、装置制御部6の制御の下、加熱された空気を加熱室Raに供給することになる。装置制御部6は、例えば、加熱室Raの温度を300℃~600℃に維持するように空気供給部4、および排気部3aを制御する。このように、加熱室Raが高温で維持されることにより、加熱室Ra内のバイオマスBの炭化が進行する。例えば、バイオマスBが木質材料である場合、木質材料に含まれるセルロース、リグニン、またはヘミセルロースなどの繊維成分が熱分解して炭素成分が生成される。このとき、装置制御部6は、高温且つバイオガスを含む排気ガスが加熱室Raに循環するように空気供給部4を制御してもよい。これにより、バイオ炭の収量を高めることができる。
【0037】
そして、装置制御部6は、バイオマスBの炭化を開始すると、開始信号を発電制御部10に出力する。発電制御部10は、発電制御部10から開始信号を受信すると、冷媒供給部12を駆動させる。これにより、冷媒供給部12が、熱電デバイス11の表面を冷却する冷媒を流通路13に供給する。一方、熱電デバイス11の裏面には、高温に維持された加熱室Raの熱が筐体1の上壁部7aを介して伝導される。これにより、熱電デバイス11の表面側と裏面側との間で温度差が生じ、その温度差に応じた電力が熱電素子15dで生成されることになる。熱電デバイス11は、熱電素子15dで生じた電力を蓄電部9に順次供給する。これにより、蓄電部9には、熱電デバイス11から供給される電力が蓄電される。
【0038】
このように、熱電デバイス11が、加熱室Raの筐体1に配置されて、加熱室Raから筐体1に伝導する熱を利用して発電する。このため、バイオマスBを加熱する加熱室Raの熱を利用して容易に発電することができる。
【0039】
ここで、熱電デバイス11は、筐体1において加熱時の温度が領域R2より高くなる領域R1、例えば側壁部7bより高くなる上壁部7aに配置されている。これにより、熱電デバイス11が、より高い温度を有する上壁部7aの熱を奪うため、筐体1の温度が均一化されて、バイオマスBを効果的に加熱することができる。このように、熱電デバイス11を上壁部7aに配置することで、筐体1の温度を均一化しつつ熱電デバイス11の発電量を高めることができる。
【0040】
また、熱電デバイス11は、筐体1において加熱時の温度が最も高くなる高温領域R1、すなわち筐体1の全ての壁部7において加熱時の温度が最も高くなる上壁部7aに配置される。このように、熱電デバイス11が、筐体1の複数の領域のうち少なくとも高温領域R1に配置されることにより、筐体1の温度をより均一化しつつ熱電デバイス11の発電量を高めることができる。そして、加熱室Raの温度を一定にすることで高品質のバイオ炭を生成することができる。
【0041】
なお、熱電デバイス11は、筐体1の全ての壁部7に配置してもよい。ただし、筐体1から熱電デバイス11への熱の供給に伴い、バイオマスBの加熱量、例えば空気供給部4の駆動量が熱電デバイス11の配置前と比べて大きく増加するおそれがある。この場合、熱電デバイス11は、筐体1の一部に配置してもよい。例えば、熱電デバイス11は、空気供給部4によるバイオマスBの加熱量が所定の閾値を超えない範囲で、筐体1の壁部7に配置してもよい。このとき、熱電デバイス11は、上記のように筐体1の複数の領域のうち少なくとも高温領域R1に配置してもよい。
【0042】
また、上記の実施の形態では、発電制御部10は、バイオマスBの炭化が開始された時点から熱電デバイス11による発電を開始したが、加熱室Raから筐体1に伝導する熱を利用して発電できればよく、これに限定されない。例えば、発電制御部10は、バイオマスBの加熱開始時から熱電デバイス11による発電を開始してもよい。
【0043】
このとき、発電制御部10は、加熱時における筐体1の温度に基づいて、熱電デバイス11の発電を制御してもよい。例えば、発電制御部10は、加熱室Raが所定の温度まで上昇するのを待って発電を開始するように熱電デバイス11を制御してもよい。ここで、所定の温度は、例えば、筐体1の温度に対する熱電デバイス11の発電量、または、熱電デバイス11の発電に応じた筐体1の温度の低下量などに基づいて設定することができる。なお、筐体1の温度は、図示しない温度計により検出してもよいし、バイオマスBの加熱時間などに基づいて算出されてもよい。
【0044】
このようにして、バイオマスBが加熱室Raにおいて所定時間加熱されることにより、バイオマスBの熱分解が完了してバイオ炭が生成される。装置制御部6は、例えばバイオマスBの加熱時間に基づいて加熱終了を判定し、加熱室Raの加熱を停止するように空気供給部4、排気部3aを制御する。
【0045】
この加熱終了により、加熱室Raのバイオ炭は順次冷却される。このとき、発電制御部10は、バイオ炭の冷却処理において熱電デバイス11による発電を継続してもよい。これにより、熱電デバイス11が、筐体1の熱を奪うため、電力を発生しつつバイオ炭を速やかに冷却することができる。
【0046】
なお、発電制御部10は、熱電デバイス11に電力を供給するように蓄電部9を制御してもよい。これにより、熱電デバイス11が、ペルチェ効果により筐体1を冷却するため、バイオ炭をより速やかに冷却することができる。
【0047】
そして、装置制御部6は、図示しない温度計で検出される加熱室Raの温度が所定の値まで低下したところで、加熱装置の各部の稼働を停止し、バイオ炭の生成を終了する。
【0048】
炭は主に炭素から構成されるため、例えば300kgの炭には1トンの二酸化炭素が固定されると考えられる。このため、カーボンニュートラルを達成するためには、一人当たり300kgの炭を燃やさずに保存する必要がある。その方法として有望視されている一つがバイオ炭の農地への施用である。たい肥や化学肥料の代わりに、バイオ炭を農地にすきこむことで100年以上にわたり炭素を固定できると考えられる(ネガティブエミッション)。また、炭の多孔質形状は植物の生育に必要な地中微生物の活動を促進するとともに、土壌の保水力、保肥力を向上させることで、農作物の収量の増加、化学肥料の使用量減につながる。
【0049】
上記のように、バイオ炭の生成では、加熱室Raは600℃以上、筐体1も約200℃-300℃に達する。例えば、加熱装置は、約10時間にわたってバイオマスBを炭化処理し、その後2日かけてバイオ炭を冷却する。この過程で、加熱装置から、膨大な熱が外部に捨てられているため、その効率化と有効利用が必要となる。従来の炭化炉は、二酸化炭素の回収を目的としておらず、バイオ炭の収量およびエネルギー効率ともに改善の余地がある。
【0050】
そこで、上記のように、熱電デバイス11を筐体1に配置することで、炭化時に排出される熱エネルギーを電気として回収し、エネルギー効率を高めることができる。また、発電した電気を直接利用または蓄電部9に充電し、バイオ炭の生成プロセスを効率化することができる。
【0051】
なお、本実施の形態では、装置制御部6は、バイオマスBの加熱処理または冷却処理において、図示しない温度計で検出される温度に基づいて制御したが、加熱室Raの温度に基づいて制御することができればよく、これに限定されない。例えば、発電制御部10は、熱電デバイス11の発電量に基づいて加熱室Raの温度を算出してもよい。発電制御部10は、算出した加熱室Raの温度を装置制御部6に出力する。そして、装置制御部6が、発電制御部10で算出された加熱室Raの温度に基づいて、加熱室RaにおけるバイオマスBの加熱処理または冷却処理を制御してもよい。これにより、加熱装置の構成を簡単化することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、熱電デバイス11は、筐体1において加熱時の温度が最も高くなる領域R1に配置されたが、筐体1に配置されていればよく、これに限定されない。例えば、熱電デバイス11は、加熱時において底壁部7cと比べて側壁部7bの温度が高くなる場合には、温度が最も高くなる上壁部7aに配置せずに、側壁部7bに配置してもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、領域R1およびR2は、筐体1の上壁部7aおよび側壁部7bの全面に設定されたが、上壁部7a、側壁部7bおよび底壁部7cの一部に設定してもよい。すなわち、熱電デバイス11は、上壁部7aの一部に配置してもよい。
【0054】
また、領域R1と領域R2は、筐体1の同じ壁部7に設定されてもよい。例えば、
図4に示すように、筐体1の上壁部7aに加熱時の温度が異なる部分が生じる場合、温度が高い部分を領域R1に設定し、温度が低い部分を領域R2と設定してもよい。そして、熱電デバイス11は、筐体1の上壁部7aの複数の領域R1およびR2のうち、少なくとも領域R1に配置されることになる。
【0055】
また、本実施の形態において、熱電デバイス11は、筐体1に加えて、加熱装置の他の部分に配置されてもよい。例えば、熱電デバイス11は、排気管3に配置されてもよい。また、熱電デバイス11は、図示しない廃熱パイプなどに配置されてもよい。
【0056】
また、発電装置5は、地震などで停電が生じた場合、木材などを加熱装置で加熱することにより発電して、電力を供給することもできる。
【0057】
本実施の形態によれば、熱電デバイス11が、バイオマスBを加熱させる加熱室Raの筐体1に配置され、加熱室Raから筐体1に伝導する熱を利用して発電する。このため、バイオマスBを加熱する加熱室Raの熱を利用して容易に発電することができる。
【0058】
(実施の形態2)
以下、本開示の実施の形態2について説明する。ここでは、上記の実施の形態1との相違点を中心に説明し、上記の実施の形態1との共通点については、共通の参照符号を使用して、その詳細な説明を省略する。
【0059】
実施の形態2は、筐体1を断熱する断熱部をさらに配置する実施の形態である。
【0060】
例えば、断熱部は、筐体1において熱電デバイス11の配置箇所以外の箇所、すなわち側壁部7bおよび底壁部7cに配置してもよい。断熱部は、側壁部7bおよび底壁部7cを覆うように形成され、筐体1に対して取り外し可能に配置することができる。
【0061】
図5に、筐体1からの放熱量が断熱部により改善した実施例を示す。
【0062】
ここで、比較例1は、断熱部および熱電デバイス11を配置していない、金属製(熱伝導率k=16.3W/mK)の筐体1から構成されるものである。筐体1の体積Vは8m3、筐体1の表面積Sは24m2とする。比較例2は、断熱材(熱伝導率k=0.03W/mK)から構成される断熱部16を、筐体1の6つの壁部7を覆うように配置したものである。実施例1は、筐体1の6つの壁部7を覆うように熱電デバイス11を配置したものである。実施例2は、筐体1の上壁部7aに熱電デバイス11を配置し、筐体1において上壁部7a以外の壁部7に断熱部16を配置、すなわち4つの側壁部7bと底壁部7cに断熱部16を配置したものである。
【0063】
表1に、8時間でバイオマスBの炭化反応を完了させたときの熱損失を算出した結果を示す。ここで、加熱室Raの温度を600℃、筐体1の熱伝導率k=16.3W/mK、断熱部16の熱伝導率k=0.03W/mK、筐体1内部の熱伝達率h1=10W/m2K、筐体1内部の輻射率ε1=0.3、筐体1の壁部7の外面の温度T3=200℃、外気Tcool=25℃、外気の自然対流による熱伝達率hcool=6.5W/m2Kと仮定する。
【0064】
【0065】
その結果、比較例1では、外壁面からの放熱量が27.1kWであるのに対し、比較例2では、外壁面からの放熱量が3.7kWであり、断熱部16により放熱量が約1/7に低減されたことがわかる。同様に、実施例1および2の熱損失を算出したところ、実施例1では、外壁面からの放熱量が66.3kWであるのに対し、実施例2では、外壁面からの放熱量が14.2kWであり、断熱部16により放熱量が大きく低減されることがわかる。
【0066】
また、バイオマスBとして100kgのミズナラの木材を用い、この木材の炭化反応を8時間で完了すると仮定すると、その炭化の反応熱は約10.8kWと算出される。このとき、炭化の反応熱で足りない熱量を燃焼熱で補足するものとして、燃焼熱と空気供給部4による空気の加熱量を算出した。その結果、比較例1では、燃焼熱が19.9kW、空気の加熱量が3.6kWであるのに対し、比較例2では、炭化の反応熱のみで炭化反応が完了することがわかった。また、実施例1では、燃焼熱が67.6kW、空気の加熱量が4.1kWであるのに対し、実施例2では、燃焼熱が4.1kW、空気の加熱量が0.7kWであり、断熱部16によりバイオマスBを加熱する熱量を大きく低減できることがわかった。
【0067】
また、熱電デバイス11の発電量を算出したところ、実施例1では1.5kWであるのに対し、実施例2では0.7kWであり、実施例1の発電量が大きいことがわかった。しかしながら、実施例1は、比較例1および実施例2と比較して、熱損失(例えば外壁面からの放熱量など)および燃焼熱が大きくなることがわかる。一方、実施例2は、比較例1と比較して熱損失および燃焼熱を低減しつつ、熱電デバイス11により発電できることがわかる。
【0068】
このことから、熱電デバイス11は、熱損失または燃焼熱が所定の閾値を超えない範囲で、少なくとも高温領域R1を含む筐体1の複数の領域に配置されることにより、熱損失および燃焼熱を低減しつつ効率的に発電できることがわかる。
【0069】
また、断熱部16は、筐体1に対して取り外し可能に配置されている。このため、バイオマスBの冷却時に断熱部16を筐体1から取り外すことにより、バイオマスBを速やかに冷却することができる。
【0070】
本実施の形態によれば、断熱部16が、筐体1を断熱するため、熱損失を低減することができる。
【0071】
(実施の形態3)
以下、本開示の実施の形態3について説明する。ここでは、上記の実施の形態1および2との相違点を中心に説明し、上記の実施の形態1および2との共通点については、共通の参照符号を使用して、その詳細な説明を省略する。
【0072】
上記の実施の形態1および2では、熱電デバイス11は、1つの領域R1(上壁部7a)に配置されたが、複数の領域に配置してもよい。実施の形態3は、熱電デバイス11を上壁部7aと側壁部7bの2つの領域R1およびR2に配置する実施の形態である。
【0073】
例えば、
図6に示すように、熱電デバイス11aが、筐体1において加熱時の温度が高い上壁部7aに配置され、熱電デバイス11bが、上壁部7aより加熱時の温度が低い側壁部7bに配置されてもよい。すなわち、熱電デバイス11aは、領域R1に配置され、熱電デバイス11bは、領域R1より加熱時の温度が低い領域R2に配置される。また、熱電デバイス11aは、領域R2に配置された熱電デバイス11bより、設置面積が広くなるように配置してもよい。
【0074】
これにより、熱電デバイス11aが、筐体1の領域R2に配置された熱電デバイス11bより多くの熱を領域R1から奪うことになる。このため、熱電デバイス11aおよび11bは、筐体1の温度を均一化しつつ発電量を高めることができる。
【0075】
なお、筐体1の同じ壁部7において加熱時の温度が異なる領域R1と領域R2が生じる場合には、熱電デバイス11aおよび11bは、領域R2より領域R1の設置面積が広くなるように配置されてもよい。例えば、
図7に示すように、筐体1の上壁部7aにおいて、領域R1と、領域R1より加熱時の温度が低い領域R2とが生じる場合、熱電デバイス11aは、領域R2に配置された熱電デバイス11bより、設置面積が広くなるように配置してもよい。
【0076】
本実施の形態によれば、熱電デバイス11aおよび11bは、領域R2より領域R1の設置面積が広くなるように配置されるため、筐体1の温度を均一化しつつ発電量を高めることができる。
【0077】
(実施の形態4)
以下、本開示の実施の形態4について説明する。ここでは、上記の実施の形態1~3との相違点を中心に説明し、上記の実施の形態1~3との共通点については、共通の参照符号を使用して、その詳細な説明を省略する。
【0078】
実施の形態4は、発電制御部10が、領域R2に配置された熱電デバイス11bより、領域R1に配置された熱電デバイス11aの発電量が高くなるように発電装置5を制御する実施の形態である。
【0079】
例えば、
図8に示すように、熱電デバイス11aが、筐体1において加熱時の温度が高い上壁部7aに配置され、熱電デバイス11bが、上壁部7aより加熱時の温度が低い側壁部7bに配置される。このとき、熱電デバイス11aおよび11bは、ほぼ同じ設置面積で配置されるものとする。
【0080】
まず、実施の形態1と同様に、装置制御部6が、低酸素濃度の加熱室Raを所定の温度に維持するように空気供給部4を制御して、バイオマスBの炭化処理を開始する。そして、発電制御部10が、冷媒供給部12を駆動させて流通路13に冷媒を供給することにより、熱電デバイス11aおよび11bが発電を開始する。
【0081】
このとき、発電制御部10は、領域R2に配置された熱電デバイス11bより、領域R1に配置された熱電デバイス11aの発電量が高くなるように発電装置5を制御する。例えば、発電制御部10は、熱電デバイス11bに対応する流通路13を流通する冷媒の温度より、熱電デバイス11aに対応する流通路13を流通する冷媒の温度が低くなるように冷媒供給部12を制御してもよい。また、発電制御部10は、熱電デバイス11bの発電を間欠的に停止するように制御してもよい。発電制御部10は、例えば、冷媒供給部12を停止、または、熱電デバイス11bと蓄電部9との接続をOFFにすることにより、熱電デバイス11bの発電を停止することができる。
【0082】
これにより、熱電デバイス11aが、筐体1の領域R2に配置された熱電デバイス11bより多くの熱を領域R1から奪うため、筐体1の温度を均一化しつつ発電量を高めることができる。
【0083】
なお、発電制御部10は、上記の実施の形態1~3と同様に、熱損失または燃焼熱が所定の閾値を超えない範囲で、熱電デバイス11aおよび11bの発電量を制御してもよい。
【0084】
本実施の形態によれば、発電制御部10は、領域R2に配置された熱電デバイス11bより、領域R1に配置された熱電デバイス11aの発電量が高くなるように制御する。これにより、熱電デバイス11aおよび11bは、筐体1の温度を均一化しつつ発電量を高めることができる。
【0085】
(実施の形態5)
以下、本開示の実施の形態5について説明する。ここでは、上記の実施の形態1~4との相違点を中心に説明し、上記の実施の形態1~4との共通点については、共通の参照符号を使用して、その詳細な説明を省略する。
【0086】
実施の形態5は、発電装置5を備える加熱装置が移動可能に構成される実施の形態である。
【0087】
加熱装置は、例えば、トラックまたは重機などで移動可能に構成されてもよい。例えば、
図9に示すように、バイオマスBの原料となる木材を切り出す現場S1~S3は、山奥などの系統電源の設備が不十分な環境である場合がある。このため、従来、複数の現場S1~S3で切り出された木材Wは、系統電源の設備が整った場所に立てられた工場などに運ばれて、その工場でバイオ炭が生成されていた。しかしながら、このような輸送費用は、バイオ炭を生成する全コストの約71%を占めるとの試算もあり、輸送量を低減することが求められている。
【0088】
そこで、移動可能に構成された加熱装置21a~21cをそれぞれの現場S1~S3に配置する。これにより、現場S1~S3から加熱装置21a~21cへの木材Wの輸送量を低減することができる。このとき、熱電デバイス11が、加熱装置21a~21cの筐体1に配置されている。このため、系統電源の設備が不十分な環境でも、熱電デバイス11で発電された電力を蓄電部9に蓄電するなどして、加熱装置21a~21cに配置された空気供給部4などの電気部品を駆動させることができる。
【0089】
また、加熱装置21a~21cに新たに電気部品を取り付けて高性能化してもよい。例えば、加熱装置21a~21cにセンサ類を取り付けてもよい。これにより、加熱装置21a~21cにIoT(Internet of Things)の機能を付加することで、加熱装置21a~21cを効率的に制御することができる。また、加熱装置21a~21cに小型の温度センサを取り付けることで、詳細な温度プロファイルを収集することができる。これにより、加熱条件がバイオ炭の質に与える影響を定量的に解析することができる。例えば、筐体1の上壁部7aまたは側壁部7bなどに温度センサを取り付け、その温度センサを空気供給部4、排気部3a(例えばファンまたはブロア)と同期させることで、加熱条件をモニタリングすることができる。
【0090】
また、装置制御部6は、熱電デバイス11で発電された電力により、加熱装置の各部を効率的に制御できる。例えば、装置制御部6は、空気供給部4および吸引器を制御して、着火時には加熱室Raに酸素を供給し、炭化時には加熱室Raを無酸素状態とする。これにより、水分が多いバイオマスBまたはサイズが小さいバイオマスBであっても確実に炭化させることができる。
【0091】
また、加熱装置21a~21cは、開口を塞ぐ蓋、例えば加熱室Raにバイオマスを出し入れするための開口を塞ぐ蓋を昇降または開け閉めなどする駆動装置を配置してもよい。この駆動装置は、電気的に駆動する電気部品である。発電制御部10は、熱電デバイス11で発電された電力、もしくは熱電デバイス11で発電した電力を蓄電部9に蓄電し、駆動装置に供給してもよい。
【0092】
また、装置制御部6は、ブロアによる吸気またはエジェクタによる排気などを制御して、バイオマスBの着火時には酸素の供給、炭化時には無酸素状態とすることで、系統電源が利用できない従来の加熱装置では処理できなかった水分量が多いまたは粒径の小さい原料(細かい木材チップなど)の炭化が可能となる。
【0093】
また、装置制御部6は、炭化開始時に必要な酸素の量をファンによって制御することで、バイオ炭の収量を高めることができる。
【0094】
また、装置制御部6は、排気ガスを循環させるブロアを制御して高温且つバイオガスを含む排気ガスを再利用することで、バイオ炭の収量を向上させることができる。
【0095】
また、加熱装置21a~21cは、移動可能に構成されるため、例えば、海辺の流木、建材、剪定枝またはコーヒーかすなど、様々な場所において炭化処理することができる。
【0096】
このようにして、現場S1~S3においてバイオ炭が生成されると、その現場S1~S3から、農地Fなどのバイオ炭の使用目的地にバイオ炭を直接輸送することができる。このため、バイオ炭の輸送量をより低減することができる。このとき、バイオ炭の容積および重さは、木材Wと比べて約1/5に低減されるため、バイオ炭の輸送量をさらに低減することができる。
【0097】
本実施の形態によれば、熱電デバイス11が、移動可能に構成された加熱装置21a~21cの筐体1に配置される。このため、熱電デバイス11で発電された電力により、加熱装置21a~21cに配置された電気部品を容易に駆動させることができる。
【0098】
(実施の形態6)
以下、本開示の実施の形態6について説明する。ここでは、上記の実施の形態1~5との相違点を中心に説明し、上記の実施の形態1~5との共通点については、共通の参照符号を使用して、その詳細な説明を省略する。
【0099】
上記の実施の形態1~5では、発電制御部10は、熱電デバイス11で発電された電力を加熱装置に配置された電気部品に供給したが、熱電デバイス11で発電された電力を加熱装置と異なる装置に供給してもよい。
【0100】
例えば、
図10に示すように、加熱装置31は、車両Vに搭載されてもよい。ここで、車両Vとしては、例えば、トラックなどの商用車が挙げられる。加熱装置31は、例えば、着脱式コンテナの規格に応じたサイズで形成されてもよい。
【0101】
これにより、現場S1で切り出された木材Wを加熱装置31で加熱しつつ農地Fなどに輸送することができる。このため、バイオ炭の輸送量をさらに低減することができる。このとき、熱電デバイス11が、加熱装置31の筐体1に配置されている。このため、車両Vの移動中においても、熱電デバイス11で発電された電力を加熱装置31の電気部品に供給して加熱装置31の各部を駆動させることができる。
【0102】
ここで、発電制御部10は、熱電デバイス11で発電された電力、例えば蓄電部9に蓄電された電力を、加熱装置31と異なる車両Vに供給するように発電装置5を制御してもよい。例えば、車両Vが電気エネルギーを利用して走行する電動車両の場合、発電制御部10は、車両Vの走行用モータを駆動させるバッテリに対して、熱電デバイス11で発電された電力を供給するように制御してもよい。なお、電動車両としては、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、または燃料電池自動車などが挙げられる。これにより、輸送時の化石燃料の使用量が低減するため、バイオ炭生成から施用までの全体プロセスにおける正味の二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【0103】
また、蓄電部9は、車両Vのバッテリと共通化してもよい。これにより、発電装置5の構成を簡単化することができる。
【0104】
また、流通路13は、車両Vの走行風が流通するように形成してもよい。これにより、熱電デバイス11が効率的に冷却されることで、熱電デバイス11の発電量を向上させることができる。また、冷媒供給部12の駆動エネルギーを低減することができる。
【0105】
このとき、発電制御部10は、車両Vの速度に基づいて、バイオマスBの加熱温度を維持しつつ熱電デバイス11において最大電力が得られるように、流通路13における走行風の流通量を制御してもよい。
【0106】
また、熱電デバイス11の外面側にヒートシンクを取り付けることにより、熱電デバイス11の外面を効率的に冷却し、熱電デバイス11の発電量を大きく増加させることができる。また、流通路13の蓋または空気穴にヒートパイプを取り付けることにより、冷媒の熱を取り出し、熱電デバイス11による発電量を増やすことができる。
【0107】
また、バイオマスBの冷却時は、車両Vの走行風により冷却されるため、バイオ炭を速やかに取り出すことができ、加熱装置31におけるバイオ炭の生成量(回転率)を固定型の加熱装置と比べて高めることができる。
【0108】
なお、本実施の形態では、加熱装置31は、車両Vに搭載されたが、移動体に搭載できればよく、これに限定されない。例えば、加熱装置31は、船または列車などに搭載されてもよい。加熱装置31が船に搭載された場合、流通路13は、船が移動する海または川の水が流通するように形成してもよい。これにより、熱電デバイス11がより効率的に冷却されることで、熱電デバイス11の発電量をさらに向上させることができる。また、冷媒供給部12の駆動エネルギーを低減することができる。
【0109】
また、発電制御部10は、水の温度に基づいて、バイオマスBの加熱温度を維持しつつ熱電デバイス11において最大電力が得られるように流通路13における水の流通量を制御してもよい。
【0110】
また、熱電デバイス11の外面側に移動体を接触させ、移動体をヒートシンクとして利用することで、熱電デバイス11の外面を効率的に冷却し、熱電デバイス11の発電量を大きく増加させることができる。
【0111】
また、発電制御部10は、熱電デバイス11で発電された電力、または熱電デバイスで発電された電力を蓄電部9に蓄電した電力、を現場S1で使用する電気装置に供給してもよい。例えば、発電制御部10は、木材回収ロボット、森林検査用ドローンなどの電気装置に電力を供給して、現場S1の作業を効率化することができる。また、発電制御部10は、ベルトコンベア、スクリューコンベア、工具、小型重機、粉砕機などに電力を供給し、化石燃料の使用量を低減することもできる。また、発電制御部10は、加熱装置31からバイオ炭を取り出すための取出装置、例えばバイオ炭を掻き出す装置、または加熱装置31からバイオ炭をダンプする装置に電力を供給してもよい。また、発電制御部10は、木材を切断する電動切断装置に電力を供給してもよい。また、発電制御部10は、炭の品質や種類を測定するためのセンサ、または検出機器へ電力を供給してもよい。また、発電制御部10は、蓄電部9に貯めた電力を非常用電源として、電気装置の利用や充電に使用してもよい。
【0112】
本実施の形態によれば、加熱装置31が移動体に搭載され、発電制御部10が、熱電デバイス11で発電された電力を移動体に供給する。これにより、バイオ炭を輸送するのに必要となるエネルギー量を低減することができる。
【0113】
その他、上記の実施の形態は、何れも本発明の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。例えば、上記の実施の形態で説明した各部の形状や個数などについての開示はあくまで例示であり、適宜変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本開示に係る発電装置は、バイオマスを加熱させる加熱装置に利用できる。
【符号の説明】
【0115】
1 筐体
1a 載置台
2 供給管
3 排気管
4 空気供給部
5 発電装置
6 装置制御部
7 壁部
7a 上壁部
7b 側壁部
7c 底壁部
8 発電部
9 蓄電部
10 発電制御部
11,11a,11b 熱電デバイス
12 冷媒供給部
13 流通路
14a,14b カバー
15 熱電変換モジュール
15a 基板
15b 冷却側接続部
15c 加熱側接続部
15d,15d1,15d2 熱電素子
21a,21b,21c,31 加熱装置
B バイオマス
F 農地
R1,R2 領域
Ra 加熱室
S1,S2,S3 現場
V 車両
W 木材